説明

セラミック部材の製造方法、並びにセラミック部材、ガスセンサ素子、燃料電池素子、積層型圧電素子、噴射装置、及び燃料噴射システム

【課題】金属層の焼結が十分に進行し、金属層中に樹脂等の不純物残渣が少なく、かつ、金属層の空隙率が高いセラミック部材の製造方法を提供する。
【解決手段】金属成分Mを含む複数の金属ペースト層22a,24aがセラミックグリーンシート26aを介して積層された積層成形体28aを作製する工程と、この積層成形体28aを焼成する工程とを含み、金属ペースト層22a,24aに含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、積層成形体28aを作製する工程において、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層24aよりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層22aとする。第2金属ペースト層24aが焼結してなる第2金属層24が、第1金属ペースト層22aが焼結してなる第1金属層22よりも空隙が多いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック部材の製造方法及びこれにより得られるセラミック部材に関する。より詳しくは、本発明は、例えば屋内の雰囲気検知、洞窟やトンネル内の雰囲気検知、排気ガス検知等に用いられるガスセンサ素子、発電等に用いられる燃料電池素子、自動車エンジンの燃料噴射装置、微少駆動装置、圧電センサ装置、圧電回路等に用いられる積層型圧電素子等のセラミック部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサ素子や燃料電池素子は、これらを構成するセラミック部材に気体を接触させて気体中の特定成分をセラミック表面に吸着させたり、透過させたりする機能を備えている。このような機能を付与するために、金属層(電極)を空隙率の高い構造にしてガスの通気性を高めたり、緻密な電極であっても電極形状を櫛型等のパターン形状にして電極による被覆面積を制御する試みがなされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
空隙率の高い金属層を作製する方法としては、セラミックスの焼結温度よりも高温でなければ焼結しない金属を用いて電極パターンを印刷した後、セラミックスと電極金属を同時焼成する方法が挙げられる。
【0004】
また、電極金属の焼成温度では焼結しないセラミック原料を金属粉末に混合して電極ペーストを作製し、この電極ペーストを印刷した後、同時焼成する方法もある。また、空隙率の高い金属層を作製する他の方法としては、例えば特許文献3に記載されているPt圧膜電極の焼成方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−317555号公報
【特許文献2】特開平6−258281号公報
【特許文献3】特開平11−51899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空隙率の高い金属層を形成する従来の方法では、同時焼成でセラミックスが十分に焼結しても電極部分の焼結が不十分である場合がある。また、金属粒界に電気伝導特性の低い成分が介在することで、電極本来の機能である電気伝導性を阻害して電極の抵抗が高くなり、電極から伝わる電気信号の感度が低下することがある。このため、印加電圧を大きくする必要があるので、消費電力の高い素子になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分Mを含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とすることを特徴とする。
【0008】
本発明のセラミック部材の製造方法は、金属成分Mを含む複数の金属ペースト層がセ
ラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とする。
【0009】
本発明のセラミック部材は、金属成分Mを含む第1金属層と、前記第1金属層より空隙が多い第2金属層と、これらの金属層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセラミック部材の製造方法は、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とすることを特徴とする。セラミックグリーンシートを介して隣り合う金属ペースト層間で金属成分Mの質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた状態で積層成形体を焼成することによって、焼成中にセラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分Mを拡散させることができる。これにより、第2金属ペースト層が焼結してなる第2金属層は、金属成分Mが拡散することで体積が減少するので、第1金属ペースト層が焼結してなる第1金属層よりも空隙が多くなる。このように本発明のセラミック部材の製造方法によれば、セラミックグリーンシートを介して隣り合う第1金属ペースト層と第2金属ペースト層との間で質量百分率Xに差をつけた積層成形体を作製して焼成することにより、空隙の多い金属層を備えたセラミック部材を得ることができる。
【0011】
本発明のセラミック部材の製造方法は、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とする。セラミックグリーンシートを介して複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域と、積層方向に隣り合う金属ペースト層との間で、金属成分Mの質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた状態で積層成形体を焼成することによって、焼成中にセラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分Mを拡散させることができる。これにより、複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域の質量百分率Xは、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高いので、一部の領域が焼結してなる金属層は、金属成分Mが積層方向に隣り合う金属ペースト層へ拡散することで体積が減少する。すなわち、一部の領域の金属成分Mは、同一面内での拡散よりも優先的に積層方向に隣り合う金属ペースト層へ拡散するので、一部の領域が焼結してなる金属層は空隙が多いものとなる。このように本発明のセラミック部材の製造方法によれば、セラミックグリーンシートを介して複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層の一部の領域と、積層方向に隣り合う金属ペースト層との間で質量百分率Xに差をつけた積層成形体を作製して焼成することにより、複数の金属層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域が空隙の多いセラミック部材を得ることができる。
【0012】
本発明のセラミック部材は、金属成分Mを含む第1金属層と、第1金属層より空隙が多い第2金属層と、これらの金属層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造である。これにより、金属層の焼結が十分に進行し、金属層中に樹脂等の不純物残渣が少なく、かつ、金属層の空隙率が高いセラミック部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の最も基本的な構造を備えたセラミック部材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の一実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。
【図3】図1のセラミック部材の側面に外部電極を形成した形態を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は図4に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図7】図6の実施形態の特徴を模式的に表したグラフである。
【図8】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は図8に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。
【図11】(a)〜(c)は図10に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材をそれぞれ示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図16】本発明のさらに他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図20】本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図21】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図22】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図23】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図24】(a)は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層との積層状態を説明するための部分斜視図である。
【図25】図24に示す素子における周縁部を示す断面図である。
【図26】本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。
【図27】本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す断面図である。
【図28】本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかるセラミック部材及びその製造方法について詳細に説明する。図1は本発明の最も基本的な構造を備えたセラミック部材17の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、このセラミック部材17は、2つの金属層(第1金属層13,第2金属層11)がセラミック層15を介して積層されたものである。
【0015】
第2金属層11は、積層方向に隣り合う第1金属層13よりも空隙が多い。この第2金属層11は、内部に複数の独立気泡を有する多孔質なものであってもよく、図12及びそ
の説明箇所で後述するような、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体により構成されたものであってもよい。以下、これらの形態を総称して第2金属層11のことを多孔質金属層11という。なお、本発明において「空隙」とは、金属層内に形成された隙間のことである。具体的には、多孔質な金属層の場合は上記気泡のことをいい、複数の金属塊状体により構成される場合は金属塊状体間に形成された隙間のことをいう。
【0016】
このセラミック部材17は、金属成分Mを含む金属層13(第1金属層23)と、金属層13より空隙が多い多孔質金属層11(第2金属層11)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層15とからなる3層構造を備えている。
【0017】
このような多孔質金属層11を備えたセラミック部材17を作製するための本発明の一実施形態にかかる製造方法は以下の通りである。図2(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材の製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層11a,13aがセラミックグリーンシート15aを介して積層された積層成形体17aを作製する工程と、この積層成形体17aを焼成する工程とが含まれている。
【0018】
図2(a)に示すように、セラミックグリーンシート15aの両方の主面に第1金属ペー
スト層13a及び第2金属ペースト層11aをそれぞれ積層し積層成形体17aを作製する。第1金属ペースト層13aと第2金属ペースト層11aは積層方向に対向する位置に配設される。第1金属ペースト層13a及び第2金属ペースト層11aには主成分として金属成分Mが含まれている。
【0019】
一つの金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、第2金属ペースト層11aは、積層方向に隣り合う第1金属ペースト層13aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、第2金属ペースト層11aのことを高率金属ペースト層11aということがある。
【0020】
セラミックグリーンシート15aの作製方法は次の通りである。まず、セラミックスの原料粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオクチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法によりシート形状に成形してセラミックグリーンシート15aを得る。
【0021】
高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの作製方法は次の通りである。まず、金属粉末、合金粉末等にバインダー、可塑剤等を添加し混合して金属ペーストを作製する。このとき、高率金属ペースト層11a用の金属ペーストは、金属成分Mの質量百分率Xが金属ペースト層13a用の金属ペーストよりも高くなるように調製される。
【0022】
ついで、得られた各金属ペーストをセラミックグリーンシート15aの一方の主面及び他方の主面にスクリーン印刷等の手法で印刷して高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aを形成し、乾燥させる。こうして得られた積層成形体17aを、必要に応じて裁断して所望の形状にしてもよい。高率金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの厚みは例えば1〜40μm程度の範囲に調製される。
【0023】
また、セラミックグリーンシートを2枚準備し、一方のシートの主面に高率金属ペースト層11aを形成し、他方のシートの主面に金属ペースト層13aを形成する。ついで、金属ペースト層を形成していない主面同士を合わせるようにして2枚のセラミックグリーンシートを積層することによっても積層成形体17aを作製することができる。
【0024】
次に、上記のようにして得られた積層成形体17aを所定の温度で脱バインダー処理を
行った後、800〜1500℃程度で焼成する。図2(b)は焼成途中の積層成形体17b
を示し、図2(c)は焼成後のセラミック部材17を示している。上記のようにセラミック
グリーンシート15aを介して隣り合う金属ペースト層11a,13a間で金属成分Mの質量百分率Xに差(濃度勾配)をつけた積層成形体を焼成することによって、セラミック層を通じて質量百分率Xの高い方から低い方へ金属成分Mを拡散させることができる。
【0025】
これにより、セラミック部材の所望の位置に空隙の多い金属層を形成することができる。しかも、このセラミック部材では、金属層の焼結を十分に進行させることができ、従来のようにアクリル樹脂等を用いなくてもいいので金属層中に樹脂等の不純物残渣を極めて少なくできる。
【0026】
このように金属成分Mが拡散するのは、次のような理由に基づいていると推測される。すなわち、セラミックグリーンシートを介して高率金属ペースト層とこれに隣り合う金属ペースト層との間で金属成分Mの質量百分率Xに差をつけることで、フィックの法則に従って金属成分Mの質量百分率差を駆動力として、高率金属ペースト層からこれに隣り合う金属ペースト層に向かってより多くの金属成分Mが拡散するものと推測される。
【0027】
高率金属ペースト層11aには、金属成分Mを含む「合金粉末」及び金属成分Mからなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。高率金属ペースト層11aに積層方向に隣り合う金属ペースト層13aには、金属成分Mと金属成分Mとを含む「合金粉末」及び金属成分Mからなる金属粉末と金属成分Mからなる金属粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。以下、金属粉末、合金粉末及び混合粉末を総称して「金属粉末等」ということがある。
【0028】
金属成分Mと金属成分Mは、これらの間で合金が形成される組み合わせであるのが好ましい。また、これらの金属成分の間で金属間化合物を形成しにくい組み合わせであるのがより好ましい。これらの金属成分が全率固溶する組み合わせであるのがさらに好ましい。
【0029】
具体的には、本発明では、金属成分Mが周期表第11族元素であり、金属成分Mが周期表第10族元素であるのが好ましい。これら第11族元素と第10族元素との合金は全率固溶するので、任意の濃度の合金を形成でき、金属成分の安定な拡散が可能になる。また、融点がセラミックスの焼結温度よりも高く、酸化雰囲気でも焼成が可能であるからである。これらの中でもセラミックスと同時焼成が可能な銀白金合金や銀パラジウム合金であるのが好ましい。
【0030】
特に、金属成分Mが銀であり、金属成分Mがパラジウムであるのがより好ましい。その理由は、銀を加熱したときに生じる酸化銀がセラミックスの液相を低温で形成する物質であるからである。したがって、銀を含有することでセラミック層15の焼結が低温で進行する。また、パラジウムと銀は全率固溶系であるとともに、液相線と固相線が接近していることから容易に相互に固溶できる。このため、液相を介して銀濃度が高い多孔質金属層11bから金属層13bへ銀成分が拡散する際には、選択的に引きつけ合って種々の組成比で合金化することが可能となる。その結果、パラジウムに比べて融点の低い銀が、パラジウムより先に拡散し、この拡散が短時間で進行することになる(図2(b)参照)。
【0031】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率X((金属成分M(質量)/金属成分総量(質量))×100)は、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X≦100の範囲にあるのが好ましい。質量百分率Xが85以上であることにより金属層の比抵抗が大きくなるのを抑制することができる。
【0032】
焼成後の焼結体(セラミック部材)において金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、高率金属ペースト層11aにおける質量百分率Xは、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0033】
金属ペースト層13aにおける質量百分率Xは、セラミック部材の電気特性を安定させる点で、85≦X<100の範囲にあるのが好ましい。また、金属層中の11族元素がセラミック層へイオンマイグレーションするのを抑制するためには、85≦X≦99.999の範囲にあるのがより好ましい。セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、90≦X≦99.9の範囲にあるのがさらに好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合には、90.5≦X≦99.5の範囲にあるのが特に好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には92≦X≦98の範囲にあるのがよい。
【0034】
高率金属ペースト層11aにおける質量百分率Xは積層方向に隣り合う金属ペースト層13aよりも高く設定すればよい。これらの質量百分率差(高率金属ペースト層11aの質量百分率XH−金属ペースト層13aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0035】
金属成分Mが銀であり、金属成分Mがパラジウム又は白金である場合を例に挙げると、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分Mの拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分Mが金属ペースト層13aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0036】
金属成分Mの拡散速度が遅いときには、高率金属ペースト層11aに隣接するセラミックグリーンシート15a中のセラミックスの焼結が完了した時点で、このセラミックス中に多くの金属成分Mが残留することがある。セラミックス中に金属成分Mが残留するのを抑制するには、質量百分率差を大きくして金属成分Mの拡散速度を速くすればよい。金属成分Mの拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。
【0037】
前述のように、高率金属ペースト層11aと金属ペースト層13aとの間に質量百分率差をつけると、これらのペースト層間の濃度勾配を小さくする方向に銀の拡散が生じる。質量百分率差がある程度大きくなると高率金属ペースト層11aから金属ペースト層13aへの銀の拡散とともに、金属ペースト層13aから高率金属ペースト層11aへのパラジウムの拡散も生じやすくなる。このような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0038】
金属成分Mの拡散速度が速くなると、金属層の焼結が完了するタイミングも早くなり、セラミック層の焼結温度よりも低温で金属層が焼結することがある。焼成時に金属層から発生した液相が少なくなると、セラミックスの焼結密度が小さくなる傾向にある。したがって、金属成分Mの拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が10以下であるのがより好ましい。したがって、質量百分率差は、1以上10以下であるのが好ましく、2以上10以下であるのがより好ましい。
【0039】
質量百分率差は、応力緩和機能と絶縁性とを両立させることができる点で、3以上5以下であるのが特に好ましい。質量百分率差が3以上5以下であることにより銀の拡散が適度に起こるので、焼成後に得られる第2金属層11が、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体で構成されることになる。これらの金属塊状体は、互いに電気的に絶縁された状態でセラミック層間に点在する。したがって、このような第2金属層11は、電極としては機能しない絶縁性に優れた層となる。しかも、複数の金属塊状体がセラミック層間に適度な大きさと適度な量で分散するので、焼成時に隣接する両側のセラミック層が接合されてしまうのを防止できる。
【0040】
上記のように複数の金属塊状体が点在してなる第2金属層11は、例えば積層型圧電素子として用いた場合に、駆動時の応力を緩和する機能に極めて優れている。このような第2金属層11は素子中の他の部分よりも剛性が低くなるため、この第2金属層11に駆動時の応力が集中しやすくなる。特に、複数の金属塊状体と圧電体との境界付近に応力が集中しやすい。この境界部分の圧電体が応力により局所的に変形することで応力が緩和されるものと推測される。
【0041】
ここで、金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をZとする。金属成分Mが周期表第8〜10族元素である場合、質量百分率Z((金属成分M(質量)/金属成分総量(質量))×100)が15以下であることにより、金属層の比抵抗が大きくなるのを抑制できる。これにより、セラミック部材に通電した際、金属層が発熱するのを抑制することができる。その結果、温度依存性を有するセラミック層に熱が作用して電気特性を変化させるのを抑制できる。よって、センサ、燃料電池、積層型圧電素子等の特性が使用中に変動するのを抑制できる。
【0042】
また、金属層が第11族元素のみでは、長期間の高湿度環境下ではイオンマイグレーションが生じやすくなるので、質量百分率Zは、好ましくは0.001≦Z≦15の範囲にあるのがよい。セラミック部材の耐久性を向上させるという点では、0.1≦Z≦10の範囲にあるのがより好ましい。熱伝導に優れより高い耐久性を必要とする場合には、0.5≦Z≦9.5の範囲にあるのがさらに好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には、2≦Z≦8の範囲にあるのが特に好ましい。上記金属層中の金属成分M,Mの含有量(質量)は、例えばEPMA(Electron Probe Micro Analysis)で特定できる。
【0043】
拡散が平衡状態になるように長時間加熱すると、パラジウムも拡散が可能となり、多孔質金属層11と金属層13の組成が近づいていく。このように多孔質金属層11と金属層13の組成が近くなるまで焼成したセラミック部材は、高温条件下で使用した場合であっても金属成分のイオンマイグレーションが抑制され、電極が安定した性能を発揮する。
【0044】
銀はパラジウムと結合しやすい。また、銀を加熱したときに生じる酸化物(酸化銀)はAgの融点よりもかなり低温で形成される。この酸化物はセラミックスの成分とともに液相を形成する成分である。したがって、高率金属ペースト層11aに銀粉末を配合し、金属ペースト層13aに銀パラジウム合金粉末を配合した場合、低温での拡散がより生じやすくなり、かつ、選択的に銀を拡散移動させることができる。
【0045】
銀は溶融するとセラミック層との濡れ性が低いので銀同士が凝集する特性を有している。したがって、拡散によって体積が減少した銀(または銀合金)はセラミック層の表面に薄膜状に広がるのではなく、銀(または銀合金)が凝集してセラミック層の表面に点在することになる。すなわち、ある程度の大きさに凝集してなる金属塊状体がセラミック層の表面(または2つのセラミック層間)に点在しやすい。これにより、空隙率の高い金属層を形成することができる。
【0046】
高率金属ペースト層11aに銀とともに白金が配合されていること、金属ペースト層13aにパラジウムとともに白金が配合されていることが好ましい。焼成により銀は選択的にパラジウムとの合金化が進行する。同一温度ではパラジウムよりも拡散速度が遅い白金が存在することで、銀の一部は白金と合金を形成する。したがって、焼成中に積層成形体17a内に大きな温度分布が生じる焼成や昇温速度の大きな焼成を行った場合であっても、銀が過度に拡散するのを抑制できる。
【0047】
このように銀の一部と白金が合金を形成することで、金属ペースト中の全ての銀およびパラジウムが拡散して金属層が完全に消失するのを抑制できる。これにより、拡散を可能にする焼成条件の範囲を大幅に広げることができるとともに、金属層の消失を抑制できる。特に、金属ペースト層11a及び金属ペースト層13aの両方に白金を配合することが好ましい。
【0048】
金属成分Mが銀(Ag)で、金属成分Mがパラジウム(Pd)である場合を例に挙げてより具体的に説明すると、次のようになる。高率金属ペースト層11aには、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金などのAgを含む「合金粉末」及びAgからなる「金属粉末」の少なくとも一方が配合される。金属ペースト層13aには、Ag−Pd合金などのAgとPdとを含む「合金粉末」及びAg粉末とPd粉末とを含む「混合粉末」の少なくとも一方が配合される。
【0049】
Pd粉末は、Ag−Pd合金中のPdと比較して低温で酸化されやすい傾向にある。このため、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いた場合と比較して、Pd粉末を用いると焼成中の酸化に起因して金属層の体積増加が見られることがある。したがって、金属成分Mがパラジウム(Pd)である場合には、金属ペーストの原料としてAg−Pd合金を用いるのが好ましい。特に、Ag粉末とAg−Pd合金粉末とを混合した粉末であれば、Agの融点が低いことから、Agが先に拡散を開始して、Ag−Pd合金のAg濃度を増加させて拡散を誘発するため、速く安定した拡散を実現することができる。
【0050】
焼成前のセラミックグリーンシート15aはセラミックスの原料粉末の粒子間にバインダーが充填された状態であるが、図2(b)に示す焼結途中の段階では、加熱されることで
バインダーが揮発してセラミックスの粒子間に微細な隙間が生じる。焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子同士が焼結を開始し、印刷された金属ペースト層に含まれる金属粉末等も焼結を開始する。
【0051】
その後、セラミック粒子間や金属粒子間に液相が形成され、粒子間の拡散速度が増加し、焼結が進行する。このとき、セラミック粒子間に微細な隙間があることと、金属粒子間やセラミック粒子間に液相が存在することで、焼結途中の多孔質金属層11bと金属層13bの間でセラミック層15bを通じて金属成分の相互拡散が可能な状態となる。
【0052】
本実施形態では、多孔質金属層11bの質量百分率Xが金属層13bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、銀の質量百分率差に応じて、多孔質金属層11bの銀が焼結途中のセラミック層15bを通過して金属層13bに拡散移動するものと推測される。
【0053】
その後、焼成温度がさらに上昇すると、セラミック粒子間の隙間が減少又は消滅するので、図2(c)に示すようにセラミック層15を介した銀の拡散移動が終了する。そして、
セラミック粒子の焼結が完了し、多孔質金属層11及び金属層13の焼結も完了する。
【0054】
以上のようにして多孔質金属層11は金属層13へ銀が拡散移動して体積が減少したことに加え、焼結途中の液相状態のときの流動性が高いことで銀又は銀パラジウム合金が凝
集する。これにより、多孔質金属層11は、セラミック層15の表面に金属成分が一様に被覆されたものではなく、内部に複数の独立気泡を有する多孔質なもの、又は後述する図12及びその説明箇所のような、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体により構成されたものとなる。
【0055】
一方、金属層13は、多孔質金属層11から銀が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となる。なお、焼結中に液相が形成されやすいように、セラミックグリーンシート15aや金属ペースト中に焼結助剤を添加することが好ましい。
【0056】
多孔質金属層11及び金属層13には、金属成分Mが含まれている。一つの金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をYとするとき、多孔質金属層11は、積層方向に隣り合う金属層13よりも質量百分率Yが高く設定されているのが好ましい。
【0057】
セラミック部材を高温に晒されるような環境に設置して使用した場合、金属層間に組成の濃淡があるとマイグレーションが進行する場合がある。多孔質金属層11の質量百分率Yが金属層13よりも高いときには、金属層13から多孔質金属層11に向かって金属成分Mが移動してくるのを抑制できる。したがって、多孔質金属層11の高い空隙率が維持される。これにより、高い空隙率により発現するセンサ機能や応力緩和機能が維持されて、耐久性の高いセラミック部材とすることができる。
【0058】
図3は側面に外部電極19が形成されたセラミック部材を示す断面図である。この外部電極は例えば次のようにして形成すればよい。金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを所定の部位に印刷し乾燥させた後、焼成する。このとき、セラミック部材に金属ペーストをそのまま印刷してもよいが、研磨等の加工を行って印刷面を平坦化してから印刷を行うのが好ましい。なお、他の部位については、図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施形態において「空隙が多い」とは、金属層の断面において空隙が占める総面積が大きいことをいう。多孔質金属層11とこれに隣り合う金属層13の空隙の多さを比較するには、次のようにすればよい。走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などを用いて多孔質金属層11の断面及び金属層13の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)を観察して断面画像を得、この断面画像を評価すればよい。この断面画像において、多孔質金属層11と金属層13の空隙の多さに明らかな差が認められる場合には、目視で比較すればよい。また、多孔質金属層11と金属層13の空隙の多さを目視で判別することができない場合には、以下に示す方法により空隙率をそれぞれ測定して比較すればよい。
【0060】
セラミック部材の金属層の空隙率は、例えば以下のようにして測定することができる。すなわち、まず、空隙率を測定したい金属層の断面(積層方向に平行な断面又は積層方向に垂直な断面)が露出するまで、公知の研磨装置を用いてセラミック部材を積層方向に研磨する。具体的には、例えば研磨装置としてケメット・ジャパン(株)社製卓上研磨機KEMET−V−300を用いてダイヤモンドペーストで研磨することができる。
【0061】
この研磨処理により露出した断面を、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、金属顕微鏡、光学顕微鏡などにより観察して断面画像を得、この断面画像を画像処理することによって空隙率を測定できる。SEM等の観察における拡大倍率は1000倍〜10000倍程度に設定するのがよい。
【0062】
なお、金属層の断面を観察する際には、これらの金属層の厚みの約1/2の位置まで研
磨し、これにより露出した断面を観察するのが好ましい。ただし、金属層の厚みが薄く、かつ、厚みのばらつきが比較的大きな場合には、研磨処理により金属層の断面全体を露出させることができないことがある。このような場合には、金属層の一部が露出するまで研磨処理した時点で、その露出部分を観察して断面画像を得た後、さらに研磨を進めて観察済み以外の他の部分を観察するという操作を複数回繰り返してもよい。このようにして複数回の操作で得た観察画像を足し合わせて金属層の断面全体が観察できればよい。
【0063】
画像処理の具体例を挙げると次のようになる。例えば光学顕微鏡にて撮影した断面画像に対して、空隙部分を黒色に塗りつぶし、空隙以外の部分を白色に塗りつぶし、黒色部分の比率、即ち、(黒色部分の面積)/(黒色部分の面積+白色部分の面積)を求め、比率で表すことにより空隙率を算出することができる。
【0064】
また、撮影した断面画像データをコンピューターにとりこみ、画像処理ソフトウェアにて空隙率を測定できる。なお、断面画像がカラーである場合は、グレースケールに変換して黒色部分と白色部分に分けるとよい。このとき、黒色部分と白色部分に2階調化するための境界の敷居値を設定する必要がある場合には、画像処理ソフトウェアや目視により境界の敷居値を設定して2値化すればよい。
【0065】
図4は、本発明の他の実施形態にかかるセラミック部材27を示す断面図である。図4に示すように、このセラミック部材27は、金属層21,23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。
【0066】
金属層21は、積層方向に隣り合う両側の金属層23,23よりも空隙率が高い。以下、金属層21のことを多孔質金属層21ということがある。金属層21,23には、金属成分Mが含まれている。ここで、金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をYとする。このとき、金属層21は、積層方向に隣り合う両側の金属層23,23よりも質量百分率Yが高いことが好ましい。
【0067】
このセラミック部材27は、金属成分Mを含む金属層23(第1金属層23)と、金属層23より空隙が多い多孔質金属層21(第2金属層21)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層25とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材27は、多孔質金属層21(第2金属層21)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0068】
このような多孔質金属層21を備えたセラミック部材27を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図5(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、第1金属ペースト層23aと第2金属ペースト層21aがセラミックグリーンシート25aを介して積層された積層成形体27aを作製する工程と、この積層成形体27aを焼成する工程とが含まれている。
【0069】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート25aを複数枚作製し、各グリーンシート25aの一方の主面に第1金属ペースト層23a又は第2金属ペースト層21aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、第2金属ペースト層21aの積層方向両側に第1金属ペースト層23aが配置されるように各グリーンシートを積層することによって積層成形体27aが得られる(図5(a))。
【0070】
第1金属ペースト層23a及び第2金属ペースト層21aには主成分として金属成分Mが含まれている。第2金属ペースト層21aは、積層方向に隣り合う両側の第1金属ペースト層23a,23aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、第
2金属ペースト層21aのことを高率金属ペースト層21aという。
【0071】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは高率金属ペースト層21aの積層方向両側に金属ペースト層23aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層23aが配置されている場合には、積層成形体27aを焼成することによって高率金属ペースト層21aの金属成分Mが両側の金属ペースト層23aに拡散することになる。
【0072】
図5(a)に示す積層成形体27aは、上述したのと同様に、図5(b)に示す焼結途中の段階を経て、図5(c)に示すセラミック部材27となる。金属層23,23は、多孔質金属
層21から金属成分が拡散移動してくるので、比較的緻密な金属層となっている。
【0073】
図6は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図6に示すように、このセラミック部材37は、多孔質金属層21及び金属層23がセラミック層25を介してそれぞれ積層されたものである。このセラミック部材37では、多孔質金属層21が積層方向に複数配設されている。これらの多孔質金属層21は金属層23を複数層挟んでそれぞれ配設されている。これらの多孔質金属層21は積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配設されている。具体的には、多孔質金属層21は所定の層数の金属層23を介して配置されている。
【0074】
このように複数の多孔質金属層21を備えたセラミック部材37を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。すなわち、上記した方法と同様にしてセラミックグリーンシート25a、金属ペースト層23a及び高率金属ペースト層21aをそれぞれ作製し、セラミックグリーンシート25aの主面に金属ペースト層23a又は高率金属ペースト層21aを印刷する。
【0075】
ついで、各高率金属ペースト層21aが金属ペースト層23aを複数層挟んでそれぞれ配設され、かつ、各高率金属ペースト層21aが積層方向に規則的に配設されるように各グリーンシート25aを積層して積層成形体を作製する。ついで、この積層成形体を焼成することによりセラミック部材37が得られる。
【0076】
焼成条件を調整して高率金属ペースト層21aから金属ペースト層23aに拡散する金属成分M1の量を調節することで、図7に示すような特徴を有するセラミック部材37を作製することができる。図7に示す特徴を有するセラミック部材37では、質量百分率Yが、多孔質金属層21にピークを有し、この多孔質金属層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少している。質量百分率Yが図7に示すような特徴を示すのは、以下の理由からである。
【0077】
すなわち、多孔質金属層21bの質量百分率Xは、前述の通り金属層23bの質量百分率よりも高くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、多孔質金属層21bの金属成分が焼結途中のセラミック層25bを通過して金属層23bに拡散移動する。この金属層23bは、該金属層23bの隣りにある金属層23bよりも金属成分Mの質量百分率Yが高い状態にあるので、これらの金属層23b,23b間にも濃度勾配が生まれる。
【0078】
したがって、この濃度勾配を駆動力にして金属層23bから金属層23bへの金属成分の拡散移動が生じることになる。このような拡散移動は、多孔質金属層21bから積層方向両側の2層以上の金属層23bにわたって順次生じていく。これにより、質量百分率Yが、多孔質金属層21にピークを有し、この多孔質金属層21から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層23にわたって漸次減少した構造を有するセラミック部材37を得ることができる。焼成時間を長くすると、各金属層の質量百分率Yの差が小さくなり、最
終的にはほぼ同じ値に近づいていく。
【0079】
このような構造を有しているセラミック部材37は、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少しているので、耐熱衝撃性が強いという利点がある。これは、セラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、金属成分濃度が急激に変化することなく漸次減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の変化を抑制することができる。
【0080】
図8は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図8に示すように、このセラミック部材28は、金属層22,24がセラミック層26を介してそれぞれ積層されたものである。金属層22,24には、金属成分Mが含まれている。金属層22を両側から挟んで隣り合う金属層24は、金属層22よりも質量百分率Yが低くかつ空隙率が高い。以下、金属層24のことを多孔質金属層24という。
【0081】
このセラミック部材28は、金属成分Mを含む金属層22(第1金属層22)と、金属層22より空隙が多い多孔質金属層24(第2金属層24)と、これらの金属層に挟まれたセラミック層26とからなる2つの3層構造を含んでいる。また、このセラミック部材28は、金属層22(第1金属層22)を共有する2つの3層構造からなる5層構造を備えている。
【0082】
このような多孔質金属層24を備えたセラミック部材28を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図9(a)〜(c)は、図8に示す実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。この製造方法には、金属ペースト層22a,24aがセラミックグリーンシート26aを介して積層された積層成形体28aを作製する工程と、この積層成形体28aを焼成する工程とが含まれている。
【0083】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート26aを複数枚作製し、各グリーンシート26aの一方の主面に金属ペースト層22a又は24aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層22aの積層方向両側に金属ペースト層24aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体28aが得られる(図9(a))。
【0084】
金属ペースト層22a及び金属ペースト層24aには主成分として金属成分Mが含まれている。金属ペースト層22aは、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層24a,24aよりも質量百分率Xが低くなるように調製されている。以下、金属ペースト層22aのことを低率金属ペースト層22aという。
【0085】
本実施形態が上記した基本構造と異なるのは低率金属ペースト層22aの両側に金属ペースト層24aが配置されている点である。このように両側に金属ペースト層24aが配置されている場合には、積層成形体28aを焼成することによって両側の金属ペースト層24aの金属成分Mが低率金属ペースト層22aに拡散する。
【0086】
本実施形態では、多孔質金属層24bに挟まれる金属層22bの質量百分率Xが金属層24b,24bの質量百分率よりも低くなるように調製されている。このように金属層間で同一金属の質量百分率に差があることで、金属成分の質量百分率差に応じて、両側の多孔質金属層24bの金属成分が焼結途中のセラミック層26bを通過して金属層22bの両側から拡散移動する(図9(b))。これにより、図9(c)に示すようなセラミック部材28が得られる(図9(c))。金属層22は、多孔質金属層24から金属成分が拡散移動し
てくるので、比較的緻密な金属層となる。
【0087】
低率金属ペースト層22aにおける質量百分率Xは積層方向に両側に隣り合う金属ペースト層24aよりも低く設定すればよい。これらの質量百分率差(金属ペースト層24aの質量百分率XH−低率金属ペースト層22aの質量百分率XL)は、特に限定されるものではない。
【0088】
金属成分Mが銀であり、金属成分Mがパラジウム又は白金である場合を例に挙げると、質量百分率差は以下の範囲であるのが好ましい。金属成分Mの拡散が進行しやすくなるという点で質量百分率差は0.1以上であるのが好ましい。また、金属成分Mが低率金属ペースト層22aに過度に拡散して隣接するセラミック層同士が接合するのを抑制するという点で、質量百分率差が30以下であるのが好ましい。したがって、質量百分率差は0.1以上30以下であるのがよい。
【0089】
上記したように金属成分Mの拡散速度を速くするという点で、質量百分率差は1以上であるのが好ましい。また、上記したような相互拡散の現象をより活発に生じさせるという点で、質量百分率差は2以上であるのが好ましい。
【0090】
本実施形態の場合、低率金属ペースト層22aに対して積層方向両側に位置する金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへ銀が拡散してくる。この形態の場合において、金属成分Mの拡散速度を抑えてセラミックスの焼結密度を高める点では、質量百分率差が25以下であるのがより好ましい。
【0091】
また、質量百分率Xにより拡散開始温度が変動することから、焼成炉の昇温加熱中にセラミック部材の温度分布が不均一になった場合でも、2層の金属ペースト層24aから低率金属ペースト層22aへの金属成分Mの拡散開始のタイミングを安定させるためには、質量百分率差は10以上であるのがよい。したがって、質量百分率差は、10以上25以下であるのがさらに好ましい。
【0092】
図10は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材127を示す断面図である。図10に示すように、このセラミック部材127は、金属層121,123がセラミック層125を介してそれぞれ積層されたものである。
【0093】
金属層121,123には、金属成分Mが含まれている。金属層121は、この金属層121の一部に他の領域122よりも空隙が多い一部の領域124を備えている。一部の領域124は、他の領域122及び金属層123よりも質量百分率Yが高くかつ空隙率が高いことが好ましい。以下、一部の領域124のことを多孔質領域124という。
【0094】
このような金属層121中に多孔質領域124を備えたセラミック部材127を作製するための本発明の製造方法は以下の通りである。図11(a)〜(c)は本実施形態にかかるセラミック部材を作製するための製造方法を示す概念図である。
【0095】
この製造方法には、金属ペースト層121a,123aがセラミックグリーンシート125aを介して積層された積層成形体127aを作製する工程と、この積層成形体127aを焼成する工程とが含まれている。
【0096】
セラミックグリーンシート及び金属ペーストの作製方法は上記と同様である。まず、セラミックグリーンシート125aを複数枚作製し、各グリーンシート125aの一方の主面に金属ペースト層121a又は123aをスクリーン印刷等の方法により印刷し、金属ペースト層121aの積層方向両側に金属ペースト層123aが配置されるように、各グリーンシートを積層することにより積層成形体127aが得られる(図11(a))。この
とき、金属ペースト層121aは、他の領域122用の金属ペースト層122aと一部の
領域124用の金属ペースト層124aとからなる。
【0097】
金属ペースト層121a(122a,124a)及び金属ペースト層123aには主成分として金属成分Mが含まれている。金属ペースト層124aは、金属ペースト層122aよりも質量百分率Xが高くなり、かつ、積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層123a,123aよりも質量百分率Xが高くなるように調製されている。以下、金属ペースト層124aのことを高率金属ペースト層121aという。
【0098】
高率金属ペースト層124aの両側に金属ペースト層123aが配置されている場合には、積層成形体127aを焼成することによって高率金属ペースト層124aの金属成分Mが同一面内での拡散よりも優先的に両側の金属ペースト層123aに拡散することになる。
【0099】
図11(a)に示す積層成形体127aは、上述したのと同様に、図11(b)に示す焼結途中の段階を経て、図11(c)に示すセラミック部材127となる。このようにして、同一
層内に空隙率の異なる領域(多孔質領域124および他の領域122)を形成することができる。
【0100】
図12は、本発明のさらに他の実施形態にかかるセラミック部材を示す断面図である。図12に示すように、このセラミック部材27′では、多孔質金属層29が、この多孔質金属層29に対して積層方向に隣接するセラミック層25,25間に点在した複数の金属塊状体(部分金属層)29a,29a,・・・により構成され、これらの金属塊状体29aは互いに離隔して配置されている。
【0101】
複数の金属塊状体29aは、空隙29bを介して互いに電気的に絶縁された状態にある。すなわち、多孔質金属層29は、この多孔質金属層29を平面視したときに、セラミック層25上に複数の金属塊状体29aが点在したような形態である。このように金属塊状体29aが空隙を介して配置されていることで、この多孔質金属層29は優れた応力緩和層として機能するとともに、優れた絶縁性をも有している。
【0102】
上記のようなセラミック部材は、例えば、セラミック層にZnO、SnO、TiO、ZrOなどのガスセンサに採用されるセラミック材料を用いて、金属層及び多孔質金属層に通電してセラミック層の電気抵抗を計測することでガスセンサとして用いることができる。また、セラミック層にZrOに代表される固体電解質材料のセラミック材料を用いて、所定の雰囲気にさらして金属層及び多孔質金属層から起電力を得ることで燃料電池として用いることができる。さらに、セラミック層に、BaTiOやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ZnOなどの圧電材料を用いて、金属層及び多孔質金属層に通電して駆動させるか、逆に起電力を得ることができる圧電素子として用いることができる。
【0103】
本発明のセラミック部材における多孔質金属層の空隙率は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。空隙率は、質量百分率X、焼成時間、焼成温度等を適宜調整することによって変化させることができる。
【0104】
<ガスセンサ素子>
図1に示したセラミック部材17はガスセンサ素子として用いることができる。このセラミック部材17をガスセンサ素子に適用する場合、セラミック層15を構成する材料として、例えばZnO、SnO、TiOに代表される酸化物半導体特性を示すセラミック材料を用いることができる。上記のような酸化物半導体セラミック材料を用いて、金属層13及び多孔質金属層11に通電してセラミック層15の電気抵抗を計測するとガスセンサとして機能する。
【0105】
また、セラミック層15を構成する材料として、ZrOに代表される固体電解質を用いることもできる。セラミック層15を挟んで異なる酸素濃度を有する気体が接すると、酸素濃度の差、すなわち酸素濃淡の差に起因してセラミック層15中の酸素イオンと自由電子の移動が生じる。
【0106】
高温雰囲気下で使用する場合、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層13と、空隙率が高い金属層11とは、金属成分Mを主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを極力抑えることができるので、安定に使用できる耐久性の高い素子とすることができる。
【0107】
セラミック層15に常に大気と接するようにして、セラミック層15を挟んで反対側の面に測定したいガスを接するようにすると、酸素センサとして機能する。このとき、空隙率が高い多孔質金属層11に検知したいガスが接するようにして、金属層13に参照ガスとして大気が接するようにすればよい。
【0108】
図13は、優れた特性を有する本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。このガスセンサ素子41は、セラミック層43にZrOに代表される固体電解質を用いている。空隙率の高い金属層45に検知したいガスが接するようにして、空隙率が高い多孔質金属層47には大気が接するようにする。金属層45に接するガスが金属層47に接することがないように、外部電極49とセラミック層51で多孔質金属層47を周囲から封じる。これにより、固体電解質であるセラミック層43の両側の主面に酸素濃度の異なる気体が接するようにすることができる。
【0109】
比較的緻密な金属層53を外部電極49に接続することで、検知した信号を緻密な電極(金属層53)を通じて高速で伝達することができる。すなわち、外部電極49は参照ガスである大気を導くガイドとしても機能し、さらに、信号を高速伝送させる機能をも有している。
【0110】
セラミック層51とセラミック層55との間に金属層53を埋設させることで、たとえガスセンサ素子が高温雰囲気に晒されたとしても、金属層53の酸化が抑制されるので、耐久性の高い素子とすることができる。
【0111】
セラミック層51,55を、耐熱特性があり熱伝導性能の高いアルミナセラミック材料で構成すると、ガスセンサ素子を加熱して用いる際に急速加熱が可能で、立ち上がり速度の速い酸素センサとすることができる。
【0112】
さらに、セラミック層43,51,55をZrOに代表される固体電解質で構成することで、焼成時のセラミックスの収縮をほぼ同一にすることができるので、焼成が容易になり、焼成後の熱膨張の差から生じる応力の発生が低減される。これにより、耐久性の高い素子とすることができる。
【0113】
図14は、ガスセンサ素子の他の実施形態を示す断面図である。このようにセラミック層55に発熱体57が内蔵されたヒータ一体型酸素センサとすることもできる。
【0114】
次に、図13に示すガスセンサ素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrOセラミック(安定化ジルコニア)の粉末を上記バインダーおよび上記可塑剤と混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてスラリーをセラミックグリーンシートに成形する。
【0115】
次に、金属層53を形成するための金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0116】
ついで、空隙率の高い多孔質金属層47を形成するための金属ペースト(高率金属ペースト)を作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得られる。この金属ペーストをグリーンシートにスクリーン印刷等によって印刷する。
【0117】
そして、これらの金属ペースト層が形成されたグリーンシートを積層し、高率金属ペーストの上にさらにもう一枚のグリーンシートを積層し乾燥することで積層成形体を得る。金属ペースト層の厚みは1〜40μm程度であるのがよい。
【0118】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。これにより、銀濃度の高い金属層47から金属層53へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される。
【0119】
次に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して金属ペーストを作製する。これを上記焼結体に金属層45となる箇所にスクリーン印刷等によって印刷して800〜1000℃で焼成すると、セラミックス層を緻密に焼結することはできるが、セラミックスよりも液相点が高温である白金は緻密な焼結体とはならず、空隙率の高い金属層45が形成される。さらに高い空隙率を得るためには、平均粒径1μm白金粉末に平均粒径5μmのアクリルビーズを同量程度添加した金属ペーストを用いれば、さらにポーラスな電極を作製できる。
【0120】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した後、外部電極49を形成する。外部電極49は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0121】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0122】
また、図14に示すガスセンサ素子を作製するには、上記の工程に加えて、セラミック層55を形成するセラミックグリーンシート中に、主に白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して作製した金属ペーストを発熱体パターン形状に印刷する工程を設ければよい。
【0123】
また、図15,16は、本発明の他の実施形態にかかるガスセンサ素子を示す断面図である。これらのガスセンサ素子には、ガス導入孔がそれぞれ設けられている。
【0124】
多孔質金属層(空隙率の高い金属層)の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成するとガス検知機能を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0125】
また、多孔質金属層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であるとセンサ起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速いセンサとすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0126】
<燃料電池素子>
図17は、本発明の一実施形態にかかる燃料電池素子を示す断面図である。前述のように固体電解質に酸素濃度の異なる気体を接触させることで発生した起電力を集めて燃料電池とすることができる。大電流を得るためには、いかに少ない体積で多くの燃料電池素子を格納して結合し、効率良く起電力を集積するかが重要になる。
【0127】
図17に示すように、この燃料電池素子61では、酸素が流れる層(いわゆる空気極)に空隙率の高い電極層63を用い、酸素濃度が極めて低い層(いわゆる燃料極)にも空隙率の高い電極層65を用いている。その間のセラミック層67にはZrOに代表される固体電解質をはさみこむ。これで燃料電池の基本部分は形成できる。
【0128】
外部電極69とセラミック層67,71とで空気極となる電極層63を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極63中に酸素を大量に流すことができる。また、外部電極69を介して緻密な電極層73が空隙率の高い電極層63と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0129】
外部電極69とセラミック層67,75とで燃料極となる電極層65を周囲から封じることができるので、空隙率の高い電極層65中を酸素濃度が極めて少ないガス(例えば天然ガス)を大量に流すことができる。さらに、外部電極69を介して緻密な電極77が空隙率の高い電極65と接続しているので、起電力を効率良く伝送することができる。
【0130】
燃料電池は、加熱して使用することで、発電効率が向上する。その際、高温雰囲気化で使用していると、従来は電極成分が拡散して移動する問題があったが、金属層73,77と、空隙率が高い金属層63,65とは、金属成分Mを主成分としているので、イオン化傾向の差や電気陰性度の差も小さく抑えることができる。
【0131】
このため、電池として機能させた際に金属イオンが移動したり、金属が拡散するのを抑制できるので、安定した耐久性を有する素子となる。さらに、図18に示すように燃料電池素子を積層して、同極の外部電極同士を接続することで、小型高密度の燃料電池素子を作製することもできる。
【0132】
次に、図17に示す燃料電池素子の製造方法について説明する。まず、CaやYを添加したZrOセラミック(安定化ジルコニア)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリーを作製する。ついで、上述と同様にしてセラミック層67,71,75,79,81用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0133】
ついで、金属層73,77用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0134】
ついで、空隙率の高い金属層63,65用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0135】
次に、各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図17に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0136】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成される。
【0137】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極69を形成する。外部電極69は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0138】
なお、銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。図18に示す形態の場合、さらに、上記の工程のうち必要な工程をさらに追加すればよい。
【0139】
多孔質金属層の空隙率は、ガス供給が安定して行われ、金属層自体の耐久性を兼ね備える点で30〜90%であるのが好ましい。また、空気層のクッション効果で、電極とセラミックスとの間の熱膨張率の差から生じる応力を緩和できる点で50〜90%であるのがより好ましい。
【0140】
さらには、供給されるガスが乱流となって攪拌され、かつ、空隙のなかでも金属やセラミックスとの境界部分に層流を形成すると固体電解質が酸素濃度を検知する精度を向上させる点から、乱流が流れる部分と層流の部分とを併せ持つ空間が生まれる70〜90%であるのがさらに好ましい。
【0141】
また、多孔質金属層以外の金属層の空隙率は、緻密であるほど電気伝導度が高くなり、高速で信号が伝達可能となるので0.1〜40%であるのが好ましい。また、金属がセラミックスより熱伝導性が高いので、金属層が緻密であると燃料電池起動時にも金属層が熱をセラミックスに伝えて、立ち上がり速度の速い燃料電池素子とすることができる。この点で空隙率は0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0142】
<積層型圧電素子>
図19は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す断面図である。この積層型圧電素子91は、内部電極として機能する複数の第1金属層93及び第2金属層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。積層体の積層方向両端側には、圧電駆動に寄与しないセラミック層(不活性層)99をそれぞれ配設してもよい。
【0143】
第2金属層95は、積層方向に隣り合う第1金属層93よりも空隙が多い。この第2金属層95は、多孔質な金属層であってもよく、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体により構成されているものであってもよい。以下、これらの形態を総称して第2金属層95のことを多孔質金属層11という。
【0144】
セラミック層97の材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料を用いる。金属層93及び多孔質金属層95は、積層体の対向する側面に交互に露出するように配置されている。これにより、金属層93間に配置されたセラミック層97に外部電
極101を通じて電圧を印加することができる。電圧が印加されることで素子が伸縮して圧電アクチュエータとして機能する。
【0145】
この積層型圧電素子91では、多孔質金属層95は空隙率が高く、金属層93は比較的緻密になるように形成されているので、緻密で信号伝達速度の速い金属層93に電圧が集中しやすい。空隙率が高く抵抗が大きい多孔質金属層95には、比較的小さな電圧しか印加されない。
【0146】
多孔質金属層95の空隙率が高いことから、この多孔質金属層95が隣接するセラミック層97と接触する電極面積が小さくなるので、電圧を印加したときに逆圧電効果で変形するセラミック層97の領域が、緻密な金属層93に隣接するセラミック層97よりも小さくなる。したがって、金属層93に挟まれたセラミック層97の圧電変位量は大きくなり、隣接する金属層の少なくとも一方が空隙率の高い多孔質金属層95であるセラミック層97の圧電変位量は小さくなる。
【0147】
本実施形態では、変位する領域と変位しない領域の境界部分に存在する不活性層であるセラミック層99に、上記のような空隙率の高い多孔質金属層95を隣接させて配置しているので、この多孔質金属層95が応力緩和層として機能する。このようにセラミック層97を挟む内部電極の少なくとも一方が、空隙率が高く抵抗が大きい多孔質金属層95であることにより、これに隣接するセラミック層97の圧電変位量が小さくなって応力緩和効果が得られる。これにより、耐久性の高い積層型圧電素子が得られる。
【0148】
図20は、本発明の他の実施形態にかかる積層型圧電素子91′を示す断面図である。この積層型圧電素子91′が積層型圧電素子91と異なる点は、空隙率の高い多孔質金属層95が積層方向に隣り合う金属層93と同極の外部電極101に接続されている点である。このような構成にすることで、多孔質金属層95及びこれに隣り合う金属層93に挟まれたセラミック層97には電圧が印加されないので圧電変位を起こさない。素子内に変位する箇所と変位しない箇所が存在するとその境目に応力が集中するが、この境目に圧電体からなるセラミック層97が存在すると、応力に応じて圧電体が変形して応力が緩和される。
【0149】
仮に、隣り合う緻密な金属層を同極の外部電極に接続しこれらの間にセラミック層を配置した場合、セラミック層は金属層に強く拘束されるので応力緩和効果が小さく、応力が集中しやすくなる。一方、本実施形態のように、セラミック層97を挟む金属層の少なくとも一方が空隙率の高い多孔質金属層95であると、セラミック層97と空隙率が高い多孔質金属層95との接合面積が少ないことに起因して拘束力も小さくなる。また、同極で挟まれたセラミック層97だけでは応力が吸収しきれないときであっても、空隙率が高い多孔質金属層95のクッション効果で応力緩和効果をより高めることができる。
【0150】
また、想定外の大きな応力が加わって金属層93にクラックが入ったり、同極で挟まれたセラミック層97にクラック等が入ったとしても、同極同士でセラミック層97を挟んでいるので短絡する等の不具合が生じるのを抑制できる。
【0151】
また、このときには空隙率が高い多孔質金属層95が電極として機能し、異なる電極でセラミック層97を2層挟むことになるので、厚みあたりの印加電圧が半分になって駆動変形が小さくなる分、応力緩和効果が大きくなる。これにより、性能の安定した積層型圧電素子とすることができる。
【0152】
次に、図19に示す積層型圧電素子91の製造方法について説明する。まず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の粉末と、上記バインダーと、上記可塑剤とを混合してスラリー
を作製する。ついで、このスラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法を用いて、セラミック層97,99用のセラミックグリーンシートを作製する。
【0153】
ついで、金属層93用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、主に銀パラジウムからなる金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。一方で、空隙率の高い多孔質金属層95用の金属ペーストを作製する。この金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して得る。この金属ペーストを上記グリーンシートの片面にスクリーン印刷等によって印刷する。
【0154】
次に各金属ペーストが印刷されたグリーンシートを図19に示す構造となるように積層して乾燥することで、焼成前の積層成型体を得る。このとき、セラミック層厚みをさらに必要とする場合は、金属ペーストを印刷していないグリーンシートのみを厚みの必要な箇所に部分的に積層すればよい。また積層成型体は、裁断して所望の形態にすることができる。金属ペースト層の厚みは、スクリーン印刷であれば1〜40μm程度にすることができる。
【0155】
ついで、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、800〜1000℃で焼成する。すると、銀濃度の高い金属層から合金層へ銀が拡散して、空隙率の高い多孔質金属層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される。
【0156】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極101を形成する。外部電極101は、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して金属ペーストを作製し、この金属ペーストを上記焼結体の側面にスクリーン印刷等によって印刷して600〜800℃で焼成することにより形成できる。
【0157】
銀濃度の高い金属ペースト層から銀濃度の低い金属ペースト層へ銀が拡散して空隙率の高い多孔質金属層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成される工程以外は、上記工程以外の従来周知の他の方法であってもよい。
【0158】
図21は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子111を示す断面図である。図21に示すように、本実施形態の積層型圧電素子111は、複数の金属層93及び複数の多孔質金属層95がセラミック層97を介して積層された積層体を備え、この積層体の側面に一対の外部電極101,101が形成された構造を有している。
【0159】
この積層型圧電素子111では、積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも空隙が多い(空隙率の高い)多孔質金属層95が、複数の金属層93を介して配置されている。複数の多孔質金属層95は積層体の積層方向に規則的に配置されている。このように空隙率の高い多孔質金属層95が複数の金属層(比較的緻密な金属層)93を介して配置されることで、積層体の強度が低下するのを抑制している。また、複数の多孔質金属層95が積層方向に規則的に(所定の規則に従って)配置されていることで、積層方向に満遍なく応力緩和効果を発現させることができる。
【0160】
ここで、多孔質金属層が「規則的に配置されている」とは、複数の多孔質金属層が配置される間隔がすべて同じである場合はもちろんのこと、積層体に生じる応力を積層方向に効果的に分散させることができる程度に、各多孔質金属層の配置間隔が近似している場合も含む概念である。具体的には、多孔質金属層の配置間隔は、各多孔質金属層の配置間隔の平均値に対して好ましくは±20%の範囲内、より好ましくは±15%の範囲内、さらに好ましくはすべて同数であるのがよい。
【0161】
多孔質金属層95は、この多孔質金属層95に対して積層方向に隣接する2つの圧電体層97,97間に点在した複数の金属塊状体により構成されたもの(塊状体含有層)であってもよい。これらの金属塊状体は空隙を介して互いに離隔して配置されているのが好ましい。このように多孔質金属層95が塊状体含有層の場合には、空隙を介して互いに独立した複数の金属塊状体で構成されているので、金属層中に独立した多数の空隙を有するスポンジ状の形態である場合と比較して応力緩和層が著しく向上する。他の部位については、図19と同じ符号を付して説明を省略する。
【0162】
この積層型圧電素子111における多孔質金属層95は、該多孔質金属層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも厚みが薄くなっているのが好ましい。厚みの小さい金属層(多孔質金属層95)は厚みの大きい金属層(金属層93)よりも変形しやすい。金属層が変形する際には、圧電体層97の変位により生じる応力を吸収することができる。したがって、厚みが薄い多孔質金属層95を図21のように規則的に配置することにより、積層型圧電素子111の変位により生じる応力を効果的に吸収することができる。
【0163】
多孔質金属層用の金属ペースト層における質量百分率Xが他の金属層用の金属ペースト層における質量百分率Xよりも高くなるように調製することにより、金属成分の質量百分率差に応じて、多孔質金属層の金属成分が焼結途中のセラミック層を通過して隣り合う金属層に拡散移動することを利用することができる。すなわち、例えば焼成前に金属ペースト層の厚みが同程度であっても、金属成分が拡散した後の多孔質金属層の厚みは、他の金属層の厚みよりも薄くなる。
【0164】
また、多孔質金属層95の厚みを小さくする他の方法としては、次のようなものがある。例えば、セラミックグリーンシートに金属ペースト層を印刷する際に、多孔質金属層用の金属ペースト層の厚みを他の金属層用の金属ペースト層の厚みよりも薄くする方法が挙げられる。
【0165】
また、積層型圧電素子111における多孔質金属層95は、この多孔質金属層95に対して積層方向に隣り合う両側の金属層93,93よりも電気抵抗が高くなっているのが好ましい。電気抵抗の高い金属層(多孔質金属層95)に隣接する圧電体層97は、電気抵抗の低い金属層(金属層93)に隣接する圧電体層97と比較して変位量が小さくなる。このような変位の小さな圧電体層97が積層型圧電素子111中に複数存在することによって、変位によって生じる応力の分布を分散させることができるので、クラック等の不具合が発生するのを抑制することができる。
【0166】
多孔質金属層95の電気抵抗を他の金属層93よりも高くするには、いくつかの方法がある。すなわち、多孔質金属層95の断面積を他の金属層93よりも小さくする方法が挙げられる。具体的には、厚みを薄くしたり、空隙を多くすることにより断面積を小さくすることができる。また、多孔質金属層95の材料として抵抗値の高いものを用いる方法もある。
【0167】
また、積層型圧電素子111における多孔質金属層95は、質量百分率Yが積層方向に隣り合う両側の金属層93よりも高くなっているのが好ましい。特に、質量百分率Yが、多孔質金属層95にピークを有し、この多孔質金属層95から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層93にわたって漸次減少しているのがよい。
【0168】
このような構造を有している積層型圧電素子111は、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に変化しているので、耐熱衝撃性が優れているという利点がある。これは、セ
ラミックスよりも金属の方が熱伝導特性に優れていることと、金属組成により熱伝導特性が変化するということに起因している。すなわち、複数の金属層において金属成分濃度が徐々に減少していることで、セラミック部材内の熱伝導特性の急激な変化を抑制することができる。
【0169】
図22は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子112を示す断面図である。図22に示すように、積層型圧電素子112は、多孔質金属層95と該多孔質金属層95以外の金属層93とが交互に配置されている。これにより、各圧電体層97は、多孔質金属層95と金属層93に挟まれることになる。応力緩和効果に優れた多孔質金属層95が、駆動変位する全ての圧電体層97に接していることにより、応力緩和効果をより高めることができる。多孔質の金属層と緻密質の金属層とが交互に存在することで、金属層93は圧電体層97に電圧を引加して圧電変位を可能とする。
【0170】
圧電体層97を介して反対側の多孔質金属層95では、多孔質であるがゆえに金属層が圧電体層97をクランプする力が弱いので応力の発生が少ない。したがって、圧電体層97はクランプされていないような状態となるので、大きな変位を発生させることができるとともに、金属層93と圧電体層97との間で生じた応力をも緩和することができる。
【0171】
積層型圧電素子112では、多孔質金属層95を内部電極として機能させる場合には、多孔質金属層95の空隙率が7%以上70%以下であるのが好ましい。空隙率が70%以下であることにより、多孔質金属層95の導電性が低下するのを抑制し、隣接する圧電体層に十分な電界を与えることができ、変位量を大きくすることができる。一方、空隙率が7%以上であることにより、この多孔質金属層95に隣接する圧電体層との接合力が過度に強くなるのを抑制することができる。その結果、駆動時に多孔質金属層95と圧電体層97との界面にクラックが発生しやすくなるので、クラックが圧電体層自体に発生するのを抑制できる。
【0172】
多孔質金属層95の絶縁性を高める場合には、多孔質金属層95の空隙率が24〜98%、より好ましくは24〜90%であるのがよい。これにより、絶縁性を高めることができる。また、金属層が圧電体を拘束する力を小さくして、駆動時の応力を減少させることができる。
【0173】
圧電体を駆動変位が大きくできる点で50〜90%であるのがより好ましい。さらには、空隙の空気層が断熱効果を生み、積層型圧電素子の耐熱衝撃特性が優れる点で70〜90%であるのがさらに好ましい。また、より高い絶縁性を付与する点で空隙率が70%以上であるのがよい。
【0174】
多孔質金属層以外の金属層の空隙率は、電気伝導特性を高め、圧電体の駆動電圧を効率的に印加できる点で0.1〜40%であるのが好ましい。また、さらに電気伝導を高めて、圧電体を大きく変位させることができる点で0.1〜20%であるのがより好ましい。
【0175】
また、この積層型圧電素子112では、複数の金属層の積層方向両端に、多孔質金属層95がそれぞれ配置されているのが好ましい。積層型圧電素子112では、セラミック層(不活性層)99との境界部分に特に高い応力がかかりやすい。したがって、セラミック層99に隣接する金属層を多孔質金属層95とするのが好ましい。さらに、複数の多孔質金属層95の中でも、セラミック層99に隣接する多孔質金属層95の空隙率をより高くするのが好ましい。
【0176】
この積層型圧電素子112では、多孔質金属層95が正極であることが望ましい。応力の集中する圧電体層と金属層との境界部分では、エッジ効果により、局所的に電界の集中
が生じて局所的な駆動変形が生じる。これとともに、応力による圧電体の結晶構造の相転移とが併発して、局所的に発熱することがある。この時、発熱した温度での圧電体の酸素イオンが解離する酸素分圧よりも、積層型圧電素子周囲の酸素分圧が低いという条件が成立すると、局所的に圧電体にイオン伝導体となる酸素空孔が発生し、積層型圧電素子の特性が変化する原因となることがある。
【0177】
さらに、イオン化した酸素空孔はマイナスの電荷を有しているので、正極側の金属層は、負極側と比較してイオン化した酸素空孔のマイグレーションが生じやすい。すなわち、正極側の金属層の空隙率を高めることで、圧電体周囲に酸素が供給されやすくなるので、酸素空孔の発生が抑制され、耐久性の低下を抑制できる。
【0178】
図23は、本発明のさらに他の実施形態にかかる積層型圧電素子113を示す断面図である。図23に示すように、積層型圧電素子113は、金属成分Mを含む複数の金属層が圧電体層97を介して積層されたものである。複数の金属層は、積層方向に隣り合う両側の金属層95′よりも空隙が少ない緻密質金属層93′を複数含んでいる。金属層95′は多孔質金属層である。
【0179】
応力緩和効果に優れた多孔質金属層95′が、1層だけのときには素子に加わる応力がその周辺に集中しやすい傾向にある。多孔質金属層95′の隣の金属層93に接する圧電体層97は駆動変位することから、多孔質金属層95′の隣の金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分に応力が集中しやすくなる。
【0180】
このため、この金属層93と素子表面との間に挟まれた圧電体部分を、応力緩和効果に優れた多孔質金属層95′ではさみこむことで、局所的に集中した応力を緩和させることができる。しかも、近接した2層の応力緩和層(多孔質金属層95′)で応力が緩和されるため、応力緩和効果が非常に高い。
【0181】
さらに、図23のように、多孔質金属層95′に挟まれた緻密質金属層93′が接続される外部電極の極性を素子の積層方向に互い違いにすることで、緻密質金属層93′が外部電極に拘束されることによって生じる応力を均一に分散することができる。これにより、応力緩和効果を著しく高めることができる。
【0182】
本発明の積層型圧電素子においては、第2金属層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの第1金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されているのが好ましい。素子の駆動時に第2金属層が積層体に生じる応力をより効果的に吸収することができる。第2金属層が隣り合う同極の内部電極に挟まれた2つの圧電体層間に配置されているときには、第2金属層に隣接する圧電体層は内部電極に電圧が印加されても駆動しない。このように第2金属層が同極に挟まれている場合には、駆動する部分と駆動しない部分ができてその境界付近に応力が集中しやすくなる。一方、第2金属層が隣り合う異極の内部電極に挟まれているときには、上記のような応力集中が生じにくい。
【0183】
図24(a)は、本実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、図24(b)は、この積層型圧電素子における圧電体層と内部電極層(金属層)との積層状態を説明するための部分断面図である。
【0184】
図24(a)、(b)に示すように、この積層型圧電素子は、複数の圧電体層107が内部電極層102を介して積層された積層体104を有している。積層体104の側面には、複数の内部電極層102が一層おきに接続された一対の外部電極105が形成されている。複数の内部電極層102は、圧電体層107の主面全体には形成されておらず、圧電体層107の主面の面積よりも内部電極層102の面積が小さい構造、いわゆる部分電極構造
となっている。これらの内部電極層102は、積層体104の互いに対向する側面に交互に露出するように積層されている。
【0185】
この積層型圧電素子では、上記したように内部電極層102が部分電極構造となっているため、外部電極105,105に電圧を印加すると、圧電体層107の上下に位置する2枚の内部電極層102に挟まれた部分、すなわち一方の内部電極層102が他方の内部電極層102に対して積層方向に重なり合う領域(変位部170)のみが変位する。一方、圧電体層107のうち、図24(b)に示すように内部電極層102が形成されていない
部分(周縁部131)では、圧電体層107は変位しない(非変位部171)。
【0186】
本発明の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、半田により外部電極105にリード線106を接続固定し、リード線106を外部電圧供給部に接続すればよい。この外部電圧供給部からリード線106を通じて外部電極105,105に所定の電圧を印加することで、各圧電体層107を逆圧電効果により変位させることができる。
【0187】
図24(b)に示すように、この積層型圧電素子は、積層方向に隣り合う2つの圧電体層
107,107間に位置し、かつ、内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間に位置する周縁部131を備えている。本実施形態の積層型圧電素子では、複数の周縁部131のうち、圧電体層107と圧電体層107との間の周縁部131には、金属からなる金属塊状体(部分金属層)103が複数点在した領域が形成されている。
【0188】
図24(b)に示すように、これらの金属塊状体103は、周縁部131のほぼ全体に点
在している。金属塊状体103に代えて、圧電性セラミックスよりも変形しやすい他の物質を点在させてもよい。ここでいう「変形」とは、弾性変形、塑性変形、脆性変形などのいずれの形態の変形であってもよい。
【0189】
上記したように本実施形態における金属塊状体103は金属からなる。これらの金属塊状体103は、周縁部131に内部電極層102と絶縁された状態で点在している。ここで、「内部電極層102と絶縁された状態で点在している」とは、複数の金属塊状体103が内部電極層102と電気的に導通していない状態にあり、かつ、金属塊状体103同士が互いに離隔して電気的に導通していない状態のことをいう(図25)。
【0190】
積層体104にある複数の周縁部131のうち、金属塊状体103を積層体104のどの位置に点在させるかは特に限定されない。例えば、全ての周縁部131(全ての内部電極層102に隣接する周縁部131)に金属塊状体103を点在させてもよく、任意に選定した周縁部131に点在させてもよい。この実施形態では、金属塊状体103が点在している周縁部131が複数存在し、これらが、積層体104の積層方向に、2層以上の圧電体層107を隔ててそれぞれ配置されている。
【0191】
金属塊状体103を構成する材料としては、例えば内部電極層102と同様のものが使用でき、好ましくは銀パラジウム合金であるのがよい。銀パラジウム合金は、金属の中でも柔らかく変形しやすいので、少量でも非変位部の拘束力を低減させる効果が高い。また、銀パラジウム合金は、金属疲労しにくく、耐酸化性も高いので、積層型圧電素子の耐久性が低下するのを抑制することができる。金属塊状体103の形状、大きさ、周縁部131に存在する個数などについては特に限定されるものではなく、少なくとも上記のように点在した状態にあればよい。
【0192】
具体的には、金属塊状体103が点在した周縁部131を積層体104の積層方向から
見たときに、周縁部131の面積に対して複数の金属塊状体103の合計面積が占める割合は、好ましくは0.1〜50%、より好ましくは5〜30%であるのがよい。
【0193】
金属塊状体103の占める割合が0.1%以上であると、変位部の変位を拘束する拘束力を低減する効果が得られる。金属領域103の占める割合が50%以下であると、抗折強度および絶縁性が過度に低下するのを抑制できる。
【0194】
金属塊状体103を積層体104の積層方向から見たときの金属塊状体103の最大径rは、特に限定されるものではない。好ましい金属塊状体103の最大径rは、周縁部131における内部電極層102と外部電極105の最短距離Lの1/2以下、好ましくは1/10以下であるのがよい。具体例を挙げると、例えば最短距離Lが約1mm程度の場合、領域3の最大径rは、500μm以下、好ましくは100μm以下であるのがよい。これにより、適度な抗折強度および絶縁性を維持できる。
【0195】
また、本実施形態では、金属塊状体103が点在した周縁部131において、隣り合う金属塊状体103間の一部または全部には絶縁性セラミック領域が存在し、該絶縁性セラミック領域が、隣り合う圧電体層107,107間を連結している。隣り合う金属塊状体103間に存在し圧電体層107同士を連結するセラミックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは圧電体層107と同じ材料であるのがよい。
【0196】
圧電体層107の材料としてチタン酸ジルコン酸鉛を使用する場合には、周縁部131において圧電体層107同士を連結する絶縁性セラミックスとしてチタン酸ジルコン酸鉛を使用するのが好ましい。これにより、熱膨張差に起因する不具合の発生を防止できることに加え、圧電体層107同士を結合する高い接合強度を得ることができる。
【0197】
金属塊状体103が点在した周縁部131は、積層体104の積層方向に等間隔に配置されるのがより好ましい。すなわち、複数の内部電極層102のうち、2層以上の圧電体層107を隔てて等間隔に選ばれた複数の内部電極層102の側端部102aと積層体104の側面104aとの間の複数の周縁部131に、複数の金属領域103が点在しているのがよい。このように等間隔に選ばれた複数の周縁部131に金属塊状体103を点在させているので、変位性能と抗折強度をよりバランスよく設定することができる。
【0198】
圧電体層107の材料としては、種々の圧電性セラミックスを用いることができ、特に限定されるものではなく、例えばBi層状化合物(層状ペロブスカイト型化合物)、タングステンブロンズ型化合物、Nb系ペロブスカイト型化合物(Nb酸ナトリウムなどのNb酸アルカリ化合物(NAC)、Nb酸バリウムなどのNb酸アルカリ土類化合物(NAEC))、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛等のペロブスカイト型化合物などを例示できる。
【0199】
これらのうち、特に、少なくともPbを含むペロブスカイト型化合物であるのがよい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN系)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN系)、Pbを含有するジルコン酸チタン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛等を含有する物質が好ましい。これらの中でもチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸鉛が、大きな変位を付加する上で好適である。圧電セラミックスは、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。
【0200】
内部電極層102の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウムやこれらの合金などを用いることができる。合金の具体例としては、銀パラジウム合金などが挙げられる。内部電極層102の厚みは、導電性を有しかつ変位を妨げない程度で
ある必要があり、一般に、0.5〜7μm程度、好ましくは1〜5μm程度であるのがよい。
【0201】
圧電体層1の厚み、つまり内部電極層2間の距離は50〜200μm程度であるのが望ましい。圧電体層107の厚みが上記範囲にあることによりアクチュエータの小型化および低背化が達成でき、絶縁破壊も抑制できる。外部電極105の材料としては、例えば金、銀、パラジウム、白金、銅、アルミニウム、ニッケルやこれらの合金などを用いることができる。
【0202】
次に、本実施形態にかかるセラミック部材を積層型圧電素子とするために、銀粉末にガラス粉末とバインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを積層体104の対向する側面104a、104aにスクリーン印刷等の方法で印刷し乾燥させる。その後、500〜800℃で焼付けることにより外部電極105を形成することができる。この際、印刷のかわりに、上記銀ガラスペーストを乾燥させた5μm以下のシートを焼付けてもよい。
【0203】
次に、外部電極105を形成した積層体4をシリコーンゴム溶液に浸漬し、このシリコーンゴム溶液を真空脱気した後、シリコーンゴム溶液から積層体104を引き上げ、積層体104の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、積層体104の側面にコーティングしたシリコーンゴムを硬化させることにより本実施形態にかかる積層型圧電素子が完成する。
【0204】
最後に、外部電極105にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極105に3kV/mmの直流電圧を印加して積層体104を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータが完成する。リード線は、外部の電圧供給部に接続され、リード線及び外部電極105を介して金属層102に電圧を印加することで、各圧電体層107は逆圧電効果によって大きく変位する。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
<噴射装置>
図27は、本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す概略断面図である。図27に示すように、本実施形態にかかる噴射装置は、一端に噴射孔333を有する収納容器331の内部に上記実施形態に代表される本発明の積層型圧電素子が収納されている。収納容器331内には、噴射孔333を開閉することができるニードルバルブ335が配設されている。
【0205】
噴射孔333には燃料通路337がニードルバルブ335の動きに応じて連通可能に配設されている。この燃料通路337は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路337に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ335が噴射孔333を開放すると、燃料通路337に供給されていた燃料が一定の高圧で図示しない内燃機関の燃料室内に噴出されるように構成されている。
【0206】
また、ニードルバルブ335の上端部は内径が大きくなっており、収納容器331に形成されたシリンダ339と摺動可能なピストン341が配置されている。そして、収納容器331内には、上記した積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータ343が収納されている。
【0207】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ343が電圧を印加されて伸長すると、ピストン341が押圧され、ニードルバルブ335が噴射孔333を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ343が収縮し、皿バネ345がピストン341を押し返し、噴射孔333が燃料通路337と連通して燃料
の噴射が行われるようになっている。
【0208】
また、本発明の噴射装置は、噴出孔を有する容器と、上記積層型圧電素子とを備え、容器内に充填された液体が積層型圧電素子の駆動により噴射孔から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、素子が必ずしも容器の内部にある必要はなく、積層型圧電素子の駆動によって容器の内部に圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本発明において、液体とは、燃料、インクなどの他、種々の液状流体(導電性ペースト等)が含まれる。
<燃料噴射システム>
図28は、本発明の一実施形態にかかる燃料噴射システムを示す概略図である。図28に示すように、本実施形態にかかる燃料噴射システム351は、高圧燃料を蓄えるコモンレール352と、このコモンレール352に蓄えられた燃料を噴射する複数の上記噴射装置353と、コモンレール352に高圧の燃料を供給する圧力ポンプ354と、噴射装置353に駆動信号を与える噴射制御ユニット355と、を備えている。
【0209】
噴射制御ユニット355は、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量やタイミングを制御するものである。圧力ポンプ354は、燃料タンク356から燃料を1000〜2000気圧程度、好ましくは1500〜1700気圧程度にしてコモンレール352に送り込む役割を果たす。
【0210】
コモンレール354では、圧力ポンプ354から送られてきた燃料を蓄え、適宜噴射装置353に送り込む。噴射装置353は、上述したように噴射孔333から少量の燃料を燃焼室内に霧状に噴射する。
【実施例1】
【0211】
(ガスセンサ)
本発明のセラミック部材からなるガスセンサ素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y含有−ZrO)を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0212】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表1の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。このとき、発熱体を形成する部分には、折り返して蛇行した形状に発熱体パターンを印刷した。ついで、図14に示す形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0213】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い多孔質金属層47が形成され、比較的緻密な金属層53が形成された。
【0214】
次に、図14の構造となるように空隙率の高い金属層45を形成するために、主に平均粒径1μmの白金からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末を添加混合して導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを上記焼結体の金属層45を形成する箇所にスクリーン印刷等によって印刷した。800〜1000℃で焼成すると、セラミックス層を緻密に焼結することはできるが、セラミックスよりも液相点が高温である白金は緻密な焼結体とはならず、空隙率の高い金属層45が形成される。
【0215】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主成分が銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面にスクリーン印刷して600〜800℃で焼成して外部電極49を形成した。これにより、ヒータ一体型酸素センサを得た。
【0216】
この後、ヒータに電圧を印加することで、ガスセンサ素子の温度を700℃に保ち、次に、水素、メタン、窒素、酸素の混合ガスを用いて、空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けた。このとき、センサが起電力を生じるか否かでセンサが機能しているかを確認した。その後、空燃比12と23の混合ガスを0.5秒間隔で1×10回、交互にセンサに吹付けて、空燃比の差で起電力が変化することを確認した。その後、1×10回のサイクル試験後に、再び空燃比12の混合ガスをセンサに吹付けて、センサが起電力を生じるか否かでセンサが機能しているかを確認した。結果を表1に示す。
【0217】
【表1】

【0218】
表1より、金属層47が緻密である試料No.1は、センサを機能させる固体電解質であるセラミック層43に金属層47を介して空気を供給することができないので起電力が生じず、酸素センサとして機能しなかった。一方、試料No.2〜11は酸素センサとして機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率が85%以上で、これらの金属ペースト層の質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属層45,47の銀の質量百分率Xが90%以上で、質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5,6
,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例2】
【0219】
(燃料電池)
本発明のセラミック部材からなる燃料電池素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmの安定化ジルコニア(5モル%Y含有−ZrO)粉末を主成分とするジルコニア粉末、ガラス粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0220】
ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表2の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。ついで、図17に示す形状になるようにグリーンシートを積層して積層成形体を得た。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0221】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダーを行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成さ
れている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い金属層63,65が形成され、比較的緻密な金属層73,77が形成された。
【0222】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した上で外部電極を形成した。まず、主成分が銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面にスクリーン印刷した。その後、これを600〜800℃で焼成して外部電極を形成し燃料電池素子を得た。
【0223】
この後、空気極側に酸素を、燃料極側に水素を供給して、800℃に保った状態で発電の出力密度を測定した。その後、800℃の連続運転を1000時間行い、再び発電の出力密度を測定した。結果を表2に示す。
【0224】
【表2】

【0225】
表2より、金属層63,65が緻密である試料No.1は、発電機能させる固体電解質であるセラミック層67に金属層63,65を介して酸素も水素も供給することができないので、起電力が生じず、燃料電池として機能しなかった。一方、試料No.2〜11が燃料電池として機能した。金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が大きいものほど耐久性がよいという結果となった。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3〜5%の試料No.3,5
,6,10,11が最も優れた耐久性を有していた。
【実施例3】
【0226】
(積層型圧電素子)
本発明のセラミック部材からなる積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を主成分とする原料粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表3の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。
【0227】
ついで、図19の形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。駆動領域については、金属層の両端部に高率金属ペーストを印刷したグリーンシートを配置するようにして、金属層の層数が100となるように積層し、セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。性能比較用としてポーラスな電極を作製するために、平均粒径1μm白金粉末に平均粒径5μmのアクリルビーズを同量添加した金属ペーストを用いポーラスな電極を作製した(試料No.32)。また、緻密な電極を作製するためにスパッタリング法を用いて厚み1μmの
銀パラジウム合金層を形成した(試料No.33)。
【0228】
次に、積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理を行った後、800〜1200℃で焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い多孔質金属層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成された。
【0229】
次に、焼結体を所望の寸法に加工した後、次のようにして外部電極を形成した。まず、主に銀からなる金属粉末にバインダー、可塑剤、ガラス粉末等を添加混合して外部電極用の導電性ペーストを作製した。この導電性ペーストを、上記焼結体側面の外部電極101を形成する箇所にスクリーン印刷した。ついで、600〜800℃で焼成して外部電極を形成し、積層型圧電素子を得た。
【0230】
その後、外部電極101にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極101にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、試料No.32以外のすべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表3〜表4に示すとおりである。
【0231】
【表3】

【0232】
【表4】

【0233】
表3〜表4から、比較例である試料No.1と33では、積層界面に剥離が生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。
【0234】
さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。なお、試料No.32では、金属層のクッション効果により圧電体の変位変形は、金属層が変形して吸収したため、素子全体では変形が生じなかった。
【0235】
これらに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜31では、1×10回連続駆動させた後も素子変位量があまり低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有していた。
【0236】
また、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが85%以上で、質量百分率差が2%以上10%以下であるものは耐久性が優れていた。特に、金属ペースト層の銀の質量百分率Xが90%以上で、これらの金属層の質量百分率差が3%以上5%以下の試料No.4,9,1
0,15,16,21,22,27,28が最も優れた耐久性を有していた。これらの試料の塊状体含有層は、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体で構成されていた。
【実施例4】
【0237】
(積層型圧電素子)
積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)粉末を主成分とする原料粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表4の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。
【0238】
ついで、図26の形状になるように各グリーンシートを積層して積層成形体を得た。複数の金属層のうち、積層方向の両端からそれぞれ2番目の位置に低率金属ペーストが配置されるようにした。金属層の層数は100層とした。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層した。
【0239】
次に、積層成形体を上記と同様に脱バインダー処理し、焼成して焼結体を得た。これにより、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、空隙率の高い多孔質金属層95が形成され、比較的緻密な金属層93が形成された。次に、実施例3と同様にして外部電極を形成し、積層型圧電素子を得た。ついで、実施例3と同様にしてリード線を接続し、分極処理を行った得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表5に示すとおりである。
【0240】
【表5】

【0241】
表5から、比較例である試料No.1は、積層界面に剥離が生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。
【0242】
これに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜14では、1×10回連続駆動させた後も素子変位量がほとんど低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有し、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できた。
【0243】
さらに、耐久性に着目すると、空隙率の高いものほど耐久性が良い積層型圧電素子であった。試料No.2〜9および11〜14のように質量百分率差が3以上25以下であるものは、サイクル試験後も変位量がほとんど変化しない優れた積層型圧電素子であった。
【0244】
特に質量百分率差が10以上25以下である試料No.6〜9および11〜14は、銀の拡散が適度に起こり、焼成後の高率金属ペースト層は、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体で構成されることになった。これらの金属塊状体は、互いに電気的に絶縁された状態でセラミック層間に点在した。したがって、電極としては機能しない絶縁性に優れた層となる。しかも、複数の金属塊状体がセラミック層間に適度な大きさと適度な量で分散するので、焼成時に隣接する両側のセラミック層が接合されてしまうのを防止できる優れた応力緩和層として機能した。
【実施例5】
【0245】
(積層型圧電素子)
積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、実施例3と同様にして厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表6の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。ついで、図21の形状になるように、金属層の層数が300となるように各グリーンシートを積層した。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層して、積層成形体を得た。この積層成形体中には、高率金属ペーストを印刷したグリーンシートを表6に示す位置に配置した。
【0246】
次に、実施例3と同様にして脱バインダーを行った後、焼成して焼結体を得た。これにより、銀濃度に差がある金属層がセラミック層を介して構成されている場合、濃度の高い金属層から濃度の低い金属層へ銀が拡散して、高率金属ペーストを印刷した金属層が、空隙率の高い多孔質金属層95となり、比較的緻密な金属層93が形成された。
【0247】
次に、実施例3と同様にして積層型圧電素子を得、さらにこれを分極処理して圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表5に示すとおりである。
【0248】
【表6】

【0249】
表6から、比較例である試料No.1は、積層界面に剥離が生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。
【0250】
これらに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜4では、1×10回連続駆動させた後も素子変位量がほとんど低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有し、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できた。
【実施例6】
【0251】
(積層型圧電素子)
積層型圧電素子を以下のようにして作製した。まず、実施例3と同様にして厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、表6の組成からなる銀合金粉末などの原料粉末にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により30μmの厚みになるように印刷した。ついで、図24の
形状になるように、金属層の層数が200となるように各グリーンシートを積層した。セラミック層の厚みが必要な箇所は、導電性ペーストを印刷せずにグリーンシートのみを必要枚数積層して、積層成形体を得た。
【0252】
このとき、この積層成形体中には、表7に示す積層箇所には、図24(b)のように周縁部131に、焼成後、複数の金属隗状体103が離隔して点在するように、周縁部131の形状にマスクパターンを施したスクリーン製版を用いて、高率金属ペーストを印刷した。
【0253】
次に、実施例3と同様にして脱バインダーを行った後、焼成して焼結体を得た。これにより、周縁部131に印刷した高率金属ペーストの領域から銀濃度の低い、積層方向に隣り合う金属ペースト層へ銀が拡散することになる。焼成後、周縁部131は、複数の金属隗状体103が離隔して点在していた。他の金属層には、比較的緻密な金属層93が形成された。
【0254】
次に、実施例3と同様にして積層型圧電素子を得、さらにこれを分極処理して圧電アクチュエータを作製した。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。さらに、この圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表7に示すとおりである。
【0255】
【表7】

【0256】
表7から、比較例である試料No.1は、積層界面に剥離が生じた。さらに圧電アクチュエータの高速応答性を確認するために駆動周波数を150Hzから徐々に上昇させていくと、1kHz以上で、素子がうなり音を発することがわかった(耳で聞こえた)。さらに、うなり音が発生する素子において、駆動周波数を確認するためにヨコガワ製オシロスコープDL1640Lでパルス波形を確認すると、駆動周波数の整数倍の周波数に相当する箇所に高調波ノイズが確認できた。
【0257】
これらに対して、本発明の実施例である試料番号No.2〜4では、1×10回連続駆動させた後も素子変位量がほとんど低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有し、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できた。
【符号の説明】
【0258】
11 第2金属層
11a 第2金属ペースト層
13 第1金属層
13a 第1金属ペースト層
15 セラミック層
15a セラミックグリーンシート
17 セラミック部材
17a 積層成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成分Mを含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、
前記積層成形体を作製する工程において、前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層を、積層方向に隣り合う両側の第2金属ペースト層よりも前記質量百分率Xが低い第1金属ペースト層とすることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属ペースト層における質量百分率XをXL、積層方向に隣り合う第2金属ペースト層における質量百分率XをXHとするとき、XH−0.1≧XL≧XH−30を満足するように質量百分率XH及び質量百分率XLを設定することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項3】
前記複数の金属ペースト層における質量百分率Xを85≦X≦100の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項4】
前記積層成形体を作製する工程において、前記第1金属ペースト層を複数配置することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属ペースト層以外の複数の金属ペースト層を介して前記複数の第1金属ペースト層をそれぞれ配置することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の第1金属ペースト層を前記積層成形体の積層方向に所定の規則にしたがって配置することを特徴とする請求項5に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属ペースト層と第1金属ペースト層以外の金属ペースト層とを交互に配置することを特徴とする請求項5に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項8】
金属成分Mを含む複数の金属ペースト層がセラミックグリーンシートを介して積層された積層成形体を作製する工程と、この積層成形体を焼成する工程とを含み、
前記金属ペースト層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をXとするとき、
前記複数の金属ペースト層のうちの少なくとも1層において、その一部の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とするセラミック部材の製造方法。
【請求項9】
前記一部の領域における質量百分率Xを積層方向に隣り合う両側の金属ペースト層の質量百分率Xよりも高くすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項10】
前記一部の領域以外の他の領域における質量百分率Xを、積層方向に隣り合う金属ペースト層の質量百分率Xと同じにすることを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項11】
前記金属成分Mを周期表第11族元素とし、他の金属成分として周期表第10族元素含むことを特徴とする請求項8に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項12】
前記金属成分Mを銀とし、前記他の金属成分をパラジウムとすることを特徴とする請求項11に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項13】
前記金属ペースト層に白金を配合することを特徴とする請求項12に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項14】
金属成分Mを含む第1金属層と、
前記第1金属層より空隙が多い第2金属層と、
これらの金属層に挟まれたセラミック層と、からなる3層構造を含むことを特徴とするセラミック部材。
【請求項15】
少なくとも2つの前記3層構造を含むことを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項16】
前記第1金属層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項15に記載のセラミック部材。
【請求項17】
前記第2金属層を共有する2つの3層構造からなる5層構造を含むことを特徴とする請求項15に記載のセラミック部材。
【請求項18】
前記金属層に含まれる金属成分総量に対する金属成分Mの質量百分率をYとするとき、前記第2金属層は、前記第1金属層よりも質量百分率Yが高いことを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項19】
前記第2金属層は前記第1金属層よりも空隙率が高いことを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項20】
前記第2金属層は、この第2金属層に対して積層方向に隣接する前記セラミック層上に、空隙を介して互いに離隔した複数の金属塊状体により構成されていることを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項21】
前記質量百分率Yは、前記第2金属層にピークを有し、この第2金属層から積層方向両側の少なくとも2層以上の金属層にわたって漸次減少していることを特徴とする請求項14記載のセラミック部材。
【請求項22】
前記第2金属層は前記第1金属層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項23】
前記第2金属層は前記第1金属層よりも電気抵抗が高いことを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項24】
複数の前記第2金属層が所定の規則に従って配置されていることを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項25】
複数の前記第2金属層が、第2金属層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項24に記載のセラミック部材。
【請求項26】
前記第2金属層と前記第1金属層とが交互に配置されていることを特徴とする請求項24に記載のセラミック部材。
【請求項27】
前記複数の金属層のうち積層方向の両端の位置に、前記第2金属層がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項24に記載のセラミック部材。
【請求項28】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記第2金属層が正極の外部電極に接続されていることを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項29】
前記複数の金属層に電気的に接続された一対の外部電極を備え、前記第2金属層に対して積層方向の両側に隣り合う2つの第1金属層は互いに異なる極の外部電極に接続されていることを特徴とする請求項14に記載のセラミック部材。
【請求項30】
請求項14〜29のいずれかに記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする積層型圧電素子。
【請求項31】
請求項14に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項32】
請求項14に記載のセラミック部材を備えたことを特徴とする燃料電池素子。
【請求項33】
噴出孔を有する容器と、請求項30に記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に充填された液体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から噴射するように構成されたことを特徴とする噴射装置。
【請求項34】
高圧燃料を蓄えるコモンレールと、
このコモンレールに蓄えられた燃料を噴射する請求項33に記載の噴射装置と、
前記コモンレールに高圧の燃料を供給する圧力ポンプと、
前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットと、
を備えたことを特徴とする燃料噴射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−210809(P2012−210809A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67646(P2012−67646)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2008−503795(P2008−503795)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】