説明

センサおよびその製造方法

【課題】検出素子の出力の信頼性を高めるセンサを提供する。
【解決手段】センサ1は、ホールIC10、ケース40、ターミナル20、カバー30およびハウジング50を備える。ケース40は、底部41及びこの底部の外縁から一方に延びる筒部42を有する。筒部42の底部側にホールIC10が収容される。カバー30にモールドされたターミナル20は、一端がホールIC10に接続され、他端がケース40の外側に延びる。カバー30は、筒部42の底部41と反対側の開口を塞ぐ。ハウジング50は、筒部42、カバー30およびターミナル20をモールドする。これにより、ハウジング50を射出成形するとき、ハウジング50を形成する樹脂が筒部42の内側に入り込むことがカバー30によって抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するセンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁束密度または温度などの物理量を検出するセンサが知られている。
特許文献1のセンサは、検出素子(特許文献1では「センシング部10」)がケース(特許文献1では「モールド樹脂15」)によって樹脂モールドされ、そのケースがハウジング(特許文献1では「コネクタ部用ケース部30」)によって樹脂モールドされている。ケースとハウジングとは、共に熱可塑性樹脂からなり、射出成形によって形成される。このため、ケースを一次成形した後、そのケースをインサートしてハウジングを二次成形すると、二次成形時の熱によりケースとハウジングとが溶着する。これにより、センサは、ケースとハウジングとの間に水などが浸入することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−198240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のセンサは、ケースを一次成形するとき、射出成形による過大な圧力が検出素子に作用することが懸念される。また、ハウジングを二次成形するとき、射出成形による過大な圧力がケースを伝わり、検出素子に作用することが懸念される。このため、検出素子の出力の信頼性が低下するおそれがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、検出素子の出力の信頼性を高めるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明によると、センサは、検出素子、ケース、ターミナル、カバーおよびハウジングを備える。
検出素子は、物理量を検出する。ケースは、底部及びこの底部の外縁から一方に延びる筒部を有し、筒部の底部側に検出素子を収容する。ターミナルは、一端が検出素子に接続され、他端がケースの外側に延びる。カバーは、ターミナルをモールドすると共に、筒部の底部と反対側の開口を塞ぐ。ハウジングは、筒部、カバーおよびターミナルをモールドする。
これにより、ハウジングを射出成形するとき、ハウジングを形成する樹脂が筒部の内側に入り込むことがカバーによって抑制される。このため、ハウジングを射出成形するときの圧力が検出素子に作用することが防がれる。したがって、検出素子の出力の信頼性を高めることができる。
なお、検出素子としては、磁束密度を検出するホールICまたは磁気抵抗素子、温度を検出するサーミスタ、あるいは、加速度または角速度を検出する可動体を備える素子など、物理量を検出する種々の素子が相当する。
【0006】
請求項2に係る発明によると、ケースの筒部は、底部側で検出素子を収容する小径部、この小径部の底部と反対側で内径が小径部の内径よりも大きい大径部、および、小径部と大径部との間に設けられる段差を有する。カバーは、大径部の内側に挿入され、底部側の端面が段差に当接する。
これにより、ハウジングを射出成形するとき、ハウジングを形成する樹脂の圧力がカバーの底部と反対側の端面に作用する。このため、カバーの底部側の端面が段差に押圧され、カバーの底部側の端面と段差とが液密に当接する。したがって、ハウジングを形成する樹脂がケースの内側に侵入することを確実に抑制することができる。
【0007】
請求項3に係る発明によると、ケースは、カバーと検出素子との間に空間を有する。
これにより、カバーを射出成形するとき、カバーを形成する樹脂の圧力が検出素子に作用することが防がれる。したがって、検出素子の出力の信頼性を高めることができる。
【0008】
請求項4に係る発明によると、ケースは、底部と検出素子との間に空間を有する。
これにより、底部から検出素子に圧力が作用することが防がれるので、検出素子の出力の信頼性を高めることができる。
【0009】
請求項5に係る発明によると、ケース及びハウジングは、熱可塑性樹脂から形成される。ハウジングは、筒部、カバーおよびターミナルをインサートし、射出成形によって形成される。
これにより、ハウジングを形成するとき、射出成形の熱によりケースとハウジングとが溶着する。したがって、ケースの内側に水などが浸入することを抑制することができる。
【0010】
請求項6に係る発明によると、ターミナルに取り付けられ、カバーにモールドされる電子部品をセンサは備える。
これにより、電子部品がカバーによって密封される。このため、電子部品に水などが浸入することを抑制することができる。
なお、電子部品としては、コンデンサ、抵抗、コイルまたはICなど、種々のものが相当する。
【0011】
請求項7に係る発明によると、センサの製造方法は、下記の工程を含む。
一次成形工程では、ターミナルをインサートし、カバーを射出成形する。
接続工程では、ターミナルの一端に検出素子を接続する。
一次成形工程および接続工程の後、挿入工程では、ケースの筒部の底部側に検出素子を挿入すると共に、ケースの開口をカバーで塞ぐ。
挿入工程の後、二次成形工程では、筒部、カバーおよびターミナルをインサートし、ハウジングを射出成形する。
これにより、一次成形工程および二次成形工程において、射出成形時の圧力が検出素子に作用することが抑制されるので、検出素子の出力の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態によるセンサの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるセンサの斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるセンサの製造工程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態によるセンサの断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態によるセンサの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるセンサを図1〜図8に示す。
本実施形態のセンサ1は、ストロークセンサとして適用され、図示しない車両のトランスミッションに取り付けられる。図示しないトランスミッションの備える係合部材は、磁気回路を有している。センサは、係合部材の移動によって変化する磁界を検出する。センサの出力する信号は、車両の電子制御装置(ECU)に伝送される。ECUは、その信号に基づいて係合部材の位置を検出する。
【0014】
図1に示すように、センサ1は、検出素子としてのホールIC10、ターミナル20、カバー30、ケース40およびハウジング50などを備えている。
図1および図4に示すように、ホールIC10は、ホール効果により磁界を検出する図示しないホール素子、このホール素子が出力する信号を処理する図示しない集積回路(IC)、この集積回路に接続される3本のリード11、およびこれらをモールドするモールド樹脂12などから構成される。ホールIC10は、磁界の変化に応じて出力電圧が変化する。
【0015】
図1および図2に示すように、ターミナル20は、3本の導体から形成される。ターミナル20は、一端がホールIC10のリード11に溶接などにより接続され、他端がケース40の外側に延びている。
図1および図3に示すように、カバー30は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂から形成され、ターミナル20をモールドしている。カバー30は、円盤状に形成された当接部31、この当接部31からターミナル20に沿ってホールIC側へ延びる延伸部32、当接部31からターミナル20に沿ってホールIC10と反対側へ延びる保護部33、および、保護部33および当接部31と略垂直に設けられた固定部34を有する。
ターミナル20の板厚方向の一方の面は、延伸部32から露出している。図1および図4に示すように、ターミナル20の露出した面には、電子部品としてのコンデンサ60が取り付けられている。コンデンサ60は、ノイズを吸収する。
【0016】
図1および図5に示すように、ケース40は、熱可塑性樹脂から形成され、底部41及びこの底部41の外縁から一方に延びる筒部42を有する。その筒部42は、底部側から小径部43、段差44および大径部45をこの順に有する。
小径部43には、ホールIC10が収容される収容室46が設けられる。収容室46の内幅とホールIC10の板厚は略同一である。ホールIC10と底部41との間には、空間70が設けられている。また、ホールIC10とカバー30との間にも、空間71が設けられている。
大径部45は、小径部43の底部41と反対側に設けられ、内径が小径部43よりも大きい。大径部45の径外方向の外壁には、周方向に連続して突起47が形成されている。この突起47は、ハウジング50の射出成形時に溶けてハウジング50と密着する。
【0017】
カバー30の当接部31は、ケース40の大径部45の内側に挿入される。保護部33と固定部34は、大径部45の径内方向の内壁に当接可能である。小径部43と大径部45とを接続する段差44に、当接部31のホールIC側の端面が当接する。これにより、ケース40が閉塞される。
大径部45には、径方向に通じる孔48が設けられている。この孔48にカバー30の固定部34に設けられた爪37が嵌合する。
段差44には、底部41と反対側へ突出する凸部49が設けられている。この凸部49に、カバー30の底部側の端面に設けられた凹部35が嵌合する。これにより、カバー30が周方向に位置決めされるので、ケース40とカバー30との誤組付けが防がれる。
【0018】
図1および図6に示すように、ハウジング50は、熱可塑性樹脂から形成され、ハウジング本体51、フランジ部52およびコネクタ53を有している。
ハウジング本体51は、筒部42の大径部45、カバー30およびターミナル20をモールドしている。図1および図7に示すように、ハウジング本体51の外周に形成された溝54には、Oリング55が取り付けられている。
フランジ部52は、ハウジング本体51から外側に延びている。フランジ部52には、取付穴56が設けられており、図示しないトランスミッションの構成部材に取り付け可能である。
コネクタ53の内側にターミナル20が露出している。コネクタ53には、図示しない外部端子が嵌め込まれる。ホールIC10の出力した信号は、コネクタ53に露出するターミナル20から車両のECUに伝送される。
【0019】
センサ1の製造方法を図8のフローチャート及び図3〜図7に基づいて説明する。
最初のステップS1(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、一次成形工程として、ターミナル20をインサートし、カバー30を射出成形する(図3参照)。これにより、3本のターミナル20が互いに固定される。
次にS2では、接続工程として、ホールIC10のリード11とターミナル20の一端とを溶接固定する。
続いてS3では、電子部品接続工程として、コンデンサ60をターミナル20に半田によって接続する(図4参照)。
【0020】
続いてS4では、挿入工程として、ケース40の収容室46にホールIC10を挿入する(図1および図5参照)。これと共に、ケース40の大径部45の内側にカバー30の当接部31を挿入し、ケース40の段差44と当接部31のホールIC側の端面とを当接させる。このとき、ケース40の凸部49とカバー30の凹部35とが嵌合し、ケース40の大径部45の孔48にカバー30の爪37が嵌合する。これにより、ケース40の開口がカバー30によって塞がれる。
【0021】
次にS5では、二次成形工程として、筒部42、カバー30およびターミナル20をインサートし、ハウジング50を射出成形する(図1および図6参照)。このとき、ハウジング50を形成する樹脂の圧力が、カバー30の当接部31の底部41と反対側の端面に作用する。これにより、当接部31の底部側の端面が段差44に押圧される。このため、当接部31の底部側の端面と段差44とが液密に当接するので、ハウジング50を形成する樹脂がケース40の内側に侵入することが防がれる。
その後、ハウジング本体51にOリング55などが取り付けられる(図7参照)。そして、性能検査および外観検査の後、センサ1が完成する。
【0022】
本実施形態では、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態では、カバー30を射出成形した後、ホールIC10とターミナル20とを接続する。このため、一次成形工程において、カバー30を形成する樹脂の圧力がホールIC10に作用することが防がれる。したがって、ホールIC10の出力の信頼性を高めることができる。
(2)本実施形態では、二次成形工程において、ハウジング50を形成する樹脂が筒部42の内側に入り込むことがカバー30によって抑制される。このため、ハウジング50を形成する樹脂の圧力がホールIC10に作用することを防ぐことができる。
(3)本実施形態では、ハウジング50を射出成形するとき、その樹脂の圧力がカバー30の当接部31に作用し、その当接部31がケース40の段差44に押圧される。このため、当接部31と段差44とが液密に当接するので、ハウジング50を形成する樹脂がケース40の内側に侵入することを確実に防ぐことができる。
(4)本実施形態では、ケース40は、カバー30とホールIC10との間、および、底部41とホールIC10との間に空間70、71を有する。これにより、挿入工程および二次成形工程において、ホールIC10に圧力が作用することが防がれるので、検出素子の出力の信頼性を高めることができる。
(5)本実施形態では、ケース40の外壁に設けられた突起47がハウジング50の射出成形時に溶け、ハウジング50と密着する。したがって、ケース40の内側に水などが浸入することを抑制することができる。
(6)本実施形態では、カバー30の延伸部32によってターミナル20がモールドされる。これにより、3本のターミナル20の位置が固定されるので、コンデンサ60を容易に取り付けることができる。
【0023】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるセンサを図9および図10に示す。第2実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、コンデンサ60がカバー30の延伸部32にモールドされている。ターミナル20は、延伸部32からホールIC側にのみ露出している。
第2実施形態のセンサの製造方法を図10のフローチャートに示す。
最初に、電子部品接続工程として、ターミナル20にコンデンサ60を接続する(S3)。
次に、一次成形工程として、ターミナル20とコンデンサ60をインサートし、カバー30を射出成形する(S1)。
その後の製造工程S2、S4及びS5は、第1実施形態と同じである。
第2実施形態では、コンデンサ60がカバー30によって密封されるので、コンデンサ60に水などが浸入することを抑制することができる。
【0024】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、本発明をストロークセンサに適用したものについて説明した。これに対し、本発明は、温度、加速度又は角速度などの種々の物理量を検出するセンサとして適用することが可能である。この場合、検出素子は、例えば温度センサの場合はサーミスタ、磁気センサの場合は磁気抵抗素子、加速度または角速度センサの場合は加速度や角速度に応じて変位する可動体を備える素子とすることが可能である。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ・・・センサ
10・・・ホールIC(検出素子)
20・・・ターミナル
30・・・カバー
40・・・ケース
41・・・底部
42・・・筒部
43・・・小径部
44・・・段差
45・・・大径部
50・・・ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出する検出素子と、
底部及びこの底部の外縁から一方に延びる筒部を有し、前記筒部の前記底部側に前記検出素子を収容するケースと、
一端が前記検出素子に接続され、他端が前記ケースの外側に延びるターミナルと、
前記ターミナルをモールドすると共に、前記筒部の前記底部と反対側の開口を塞ぐカバーと、
前記筒部、前記カバーおよび前記ターミナルをモールドするハウジングと、を備えることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記ケースの前記筒部は、前記底部側で前記検出素子を収容する小径部、この小径部の前記底部と反対側で内径が前記小径部の内径よりも大きい大径部、および、前記小径部と前記大径部との間に設けられる段差を有し、
前記カバーは、前記大径部の内側に挿入され、前記底部側の端面が前記段差に当接することを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記ケースは、前記カバーと前記検出素子との間に空間を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記ケースは、前記底部と前記検出素子との間に空間を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ケース及び前記ハウジングは、熱可塑性樹脂から形成され、
前記ハウジングは、前記筒部、前記カバーおよび前記ターミナルをインサートし、射出成形によって形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ターミナルに取り付けられ、前記カバーにモールドされる電子部品を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサの製造方法であって、
前記ターミナルをインサートし、前記カバーを射出成形する一次成形工程と、
前記ターミナルの一端に前記検出素子を接続する接続工程と、
前記一次成形工程および前記接続工程の後、前記ケースの前記筒部の前記底部側に前記検出素子を挿入すると共に、前記ケースの前記開口をカバーで塞ぐ挿入工程と、
前記挿入工程の後、前記筒部、前記カバーおよび前記ターミナルをインサートし、前記ハウジングを射出成形する二次成形工程と、を含むことを特徴とするセンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36886(P2013−36886A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173830(P2011−173830)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】