センサの方位ずれ検出装置
【課題】前方物体検知センサの向きのずれを検出する。
【解決手段】自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ30と、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサ31と、前方物体検知センサ31により検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識部10と、前方物体認識部10により認識された固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定する横移動量測定部12と、ヨーレートセンサ30により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、前方物体検知センサ31の向きのずれを検出するずれ検出部13とを設ける。
【解決手段】自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ30と、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサ31と、前方物体検知センサ31により検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識部10と、前方物体認識部10により認識された固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定する横移動量測定部12と、ヨーレートセンサ30により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、前方物体検知センサ31の向きのずれを検出するずれ検出部13とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方物体検知センサの向きのずれを検出するセンサの方位ずれ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ等の前方物体検知センサを用いて自車両の前方の先行車を検知するようにした先行車認識装置が従来技術として知られており、その検知した先行車に追従する追従制御等を行う。この先行車認識装置には、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値と、自車両の車速を検出する車速センサの検出値とに基づいて、自車両の進行路を推定するものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このものでは、ヨーレートと車速とから自車両の旋回半径を算出し、この旋回半径を自車両の進行路の曲率半径であるとしている。そして、先行車に追従する追従制御を行っている場合、上記推定した進行路上に、上記検知した先行車が存在するか否かを判定して、その先行車が上記進行路上に存在していると判定したときには、そのまま追従制御を続行する一方、上記進行路上に存在しないと判定したときには、乗員が設定した目標車速で走行させる定速制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−161697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前方物体検知センサは、その向きが車両の軽衝突などの影響を受けてずれる場合がある。このため、追従制御を行っている場合、先行車を誤検知する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、前方物体検知センサの向きのずれを検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、上記前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、上記前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
これによれば、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、この前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、この前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えるため、前方物体検知センサの向きのずれを検出することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれに加えて、上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
ところで、ヨーレートセンサの検出値はヨーレートセンサの経時劣化や温度ドリフト、ノイズなどの影響を受けて変動するため、誤検出される場合がある。このため、追従制御を行っている場合、自車両の進行路を誤推定して、先行車が自車両の進行路に隣接する隣接路線上に存在しているにも拘わらず、自車両の進行路上に存在していると誤判定する虞がある。
【0010】
ここで、本発明によれば、ずれ検出手段により、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれに加えて、ヨーレート検出値のずれを検出することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、最小二乗法を用いて上記前方物体検知センサの向きのずれ及び上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
これによれば、本発明の最良の実施形態を実現することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、上記ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0014】
ところで、前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が短い場合、自車両から固定物までの距離が偏り、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行えない虞がある。つまり、自車両から固定物までの距離に広がりがある方が、その検出精度が高くなる。
【0015】
ここで、本発明によれば、前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段を備えるため、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行うことができる。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれか1つの発明において、上記ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、上記前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、前方物体検知センサに異常があるとして、前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段を備えるため、自車両の前方の物体を誤検知することを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、この前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、この前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えるため、前方物体検知センサの向きのずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサの方位ずれ検出装置を備える車両走行制御装置のブロック図である。
【図2】自車両が走行している様子を示す模式図である。
【図3】自車両が走行しているときに、固定物が自車両に対して相対的に移動する様子を説明する図であり、(a)は自車両が直進走行している場合であって、前方物体検知センサの光軸が車両前方を向いているときの図、(b)は自車両が直進走行している場合であって、前方物体検知センサの光軸向きが自車両の中心軸方向からずれているときの図である。
【図4】自車両が直進走行している場合であって、ヨーレートセンサのゼロ点がずれているときの、固定物が自車両に対して相対的に移動する様子を説明する図である。
【図5】自車両の求心加速度によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図である。
【図6】自車両の自転によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサの検知周期一周期開始時における自車両を示す図、(b)はその一周期終了時における自車両を示す図である。
【図7】自車両の横滑り角によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサの検知周期一周期開始時及び終了時における自車両を示す図、(b)は自車両の横滑り角を示す図である。
【図8】前方物体検知センサの光軸向きのずれによって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図である。
【図9】(x,y)の近似直線を示すグラフである。
【図10】自車両から固定物までの距離を説明する図である。
【図11】車両走行制御装置による車両走行制御を示すフローチャートである。
【図12】センサの方位ずれ検出制御を示すフローチャートである。
【図13】ACC制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサの方位ずれ検出装置を備える車両走行制御装置のブロック図を示す。符号1は、自車両Vの車速や先行車Wとの車間距離を自動的に制御するクルーズコントローラである(自車両Vと先行車Wは図2を参照)。このクルーズコントローラ1は、自車両Vに発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ30(図3及び図4も参照)、自車両Vの前方の物体を検知する前方物体検知センサ31(図3及び図4も参照)、及び自車両Vの車速を検出する車速センサ32等から信号が入力され、エンジンECU50及びDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)ユニット52を制御することによって、先行車Wが存在しない場合は目標車速での定速制御を行う一方、先行車Wが存在する場合にはその先行車Wとの車間距離が目標車間距離となるような追従制御を行うと共に、前方に障害物が存在する場合にはその障害物との衝突を回避するように衝突回避制御を行うACC制御を行う。
【0022】
前方物体検知センサ31は、スキャン式のミリ波レーダによって構成されている。このミリ波レーダは、自車両Vの前端部の車幅方向略中央位置においてその光軸o(図3等を参照)が車両前方を向くように配設されていて、自車両Vの前方の所定範囲(図3及び図10の破線を参照)にミリ波を発信し、その反射波を受信することによって自車両Vの前方に物体が存在するか否かを検知することができる。また、前方物体検知センサ31は、自車両Vの前方の物体を複数個(例えば8個)、同時に検知することができる。
【0023】
尚、前方物体検知センサ31は、ミリ波レーダ以外であってもよく、レーザレーダや超音波レーダや赤外線レーダやカメラ等を採用することもできる。
【0024】
上記エンジンECU50は、主にエンジン(図示省略)を制御し、その機能の1つとしてスロットル51のスロットル開度を調節して自車両Vを加速させる。
【0025】
上記DSCユニット52は、急ハンドルや急カーブ走行時などに、自車両Vの安定した走行姿勢を確保するアクティブセーフティシステムであって、エンジン出力と4輪の各輪に別個に付与するブレーキ力とを統合的にコントロールすることにより、自車両Vの横滑りを抑制するものである。このDSCユニット52は、各輪に設けられたブレーキ装置にブレーキ圧を供給する液圧ユニット(Hydraulic Unit;以下HUという)53を制御することによってブレーキ力を調節して自車両Vを減速させる。
【0026】
上記クルーズコントローラ1は、上記前方物体検知センサ31の検知信号が入力される前方物体認識部10(前方物体認識手段)と、上記車速センサ32の検出信号が入力される車速認識部11と、横移動量測定部12(移動軌跡算出手段)と、上記ヨーレートセンサ30の検出信号が入力されるずれ検出部13(ずれ検出手段)と、ずれ検出禁止部14(ずれ検出禁止手段)と、進行路推定部15と、車両走行制御部16と、ACC制御制限部17(使用禁止手段)と、ゼロ点補正部18とを有する。
【0027】
前方物体認識部10は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、前方物体検知センサ31からの検知信号(検知結果)から自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この認識された物体の自車両Vに対する相対速度から、その物体が固定物F(例えば電柱やガードレール等。図3等を参照)であるのか、移動物であるのかを認識する。例えば、認識された物体の自車両Vに対する相対速度が5km/h以下であるときには、その物体が固定物Fであると認識する。また、前方物体認識部10は、前方物体検知センサ31からの検知信号から自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この結果から、進行路推定部15によって推定した自車両Vの進行路S(図2を参照)上に物体が存在するか否かを認識する。さらには、認識された物体の相対速度から、その物体が障害物であるのか、前方を走行する先行車Wであるのかを認識する。
【0028】
上記車速認識部11は、車速センサ32からの検出信号から車速を認識し、後述する定速制御において、この検出された検出車速と目標車速との車速偏差を算出する。
【0029】
上記横移動量測定部12は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、前方物体検知センサ31からの検知信号から、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する移動軌跡を算出し、この算出された移動軌跡から、その固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期(例えば100msec)一周期当たりに自車両Vに対してその横方向(幅方向)に相対的に移動する横移動量を、その検知周期毎に測定する。つまり、自車両Vが走行しているときに、前方物体検知センサ31によって固定物Fを観察することにより、その固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量を算出する。このとき、便宜上、左側に横移動する場合は正の符号を、右側に横移動する場合は負の符号を付するようにする(尚、正負の符号は逆であってもよい)。そして、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが複数個であるときには、その個数分の固定物Fの横移動量を測定する。ここで、自車両Vの横方向とは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期終了時における前方物体検知センサ31の光軸oの方向と直角な方向である。つまり、前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸(正面軸)aの方向(車両前後方向)と一致しているときには、前方物体検知センサ31の検知周期一周期終了時における自車両Vの中心軸方向と直角な方向である。
【0030】
尚、横移動量測定部12は、前方物体検知センサ31の光軸方向(前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸方向と一致しているときには、自車両Vの中心軸方向でもある)に関する自車両Vから固定物Fまでの距離が所定距離よりも短いときには、自車両Vのヨーレートを正確に推定するため、その固定物Fの横移動量を測定しない。
【0031】
上記ずれ検出部13は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12によって測定された、固定物Fの横移動量から、車両平面視に関する前方物体検知センサ31の光軸aの向きの、自車両Vの中心軸方向からのずれ(前方物体検知センサ31の光軸oの方位誤差)とヨーレート検出値のヨーレート真値からのずれ(誤差)を検出する。具体的には、ヨーレート検出値と固定物Fの横移動量から、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ(前方物体検知センサ31のゼロ点の、自車両Vの横方向のずれ)とヨーレート検出値のずれを検出する。以下、このずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出について図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3は、自車両Vが走行しているときに、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する様子を説明する図であり、(a)は自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸oが車両前方を向いているときの図、(b)は自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれているときの図である。図4は、自車両Vが直進走行している場合であって、ヨーレートセンサ30のゼロ点がずれているときの、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する様子を説明する図である。つまり、図3及び図4では、自車両Vが固定されている基準の座標系に対して固定物Fが相対的に移動する様子を示している。
【0032】
図3(a)に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸oが車両前方を向いているときには、固定物Fは自車両Vに対してまっすぐ近付いてくる一方、図3(b)に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれている(図3(b)では右側にずれている)ときには、前方物体検知センサ31からの検知信号から、固定物Fが自車両Vに対してそのずれ方向と同じ方向に相対的に横移動していると誤認識される。このとき、その横移動量は、自車両Vから固定物Fまでの距離の大きさに拘わらず、一定である。
【0033】
一方、図4に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、ヨーレートセンサ30のゼロ点がずれている(図4では右旋回方向にずれている)ときには、ヨーレートセンサ30の検知信号から、自車両Vの中心軸aが回転し(自車両Vが旋回走行し)且つ、固定物Fが自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動していると誤認識される。このとき、その横移動量は、自車両Vから固定物Fまでの距離が長いほど、大きくなる。
【0034】
以上のように、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる固定物Fの横移動量は、その固定物Fまでの距離の大きさに拘わらず、一定であるのに対して、ヨーレートセンサ30のゼロ点のずれによる固定物Fの横移動量は、その固定物Fまでの距離が長いほど、大きくなる点で、両者は相違する。この相違点から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを切り分けることができる。
【0035】
ところで、自車両Vが走行しているときに、前方物体検知センサ31からの検知信号から、固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すると認識される要因として、自車両Vの求心加速度によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、自車両Vの自転によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、自車両Vの横滑り角によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、及び前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動することがある。つまり、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期のある一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM(m)、自車両Vの求心加速度によって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM1(m)、自車両Vの自転によって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM2(m)、自車両Vの横滑り角によって固定物Fがある一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM3(m)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM4(m)とすると、LMは次の式で表される。
LM=LM1+LM2+LM3+LM4…(1)
【0036】
以下、自車両Vの求心加速度による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM1について図5を用いて詳細に説明する。図5は、自車両Vの求心加速度によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM1を説明する図である。図5では、自車両Vが旋回走行(図5では右旋回走行。図6及び図7も同様)しているときを示しており、前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸方向と一致している(図6及び図7も同様)。また、図5では、前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における自車両Vを実線で、その一周期終了時における自車両Vを二点鎖線で表している(図7(a)及び図8も同様)。
【0037】
図5に示すように、自車両Vが旋回走行(図5では右旋回走行。図6及び図7も同様)しているときには、その求心加速度によって自車両Vはその旋回方向に横移動するため、固定物Fは自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動する。ここで、自車両Vの求心加速度をα(m/s2)、前方物体検知センサ31の検知周期をt(s)、自車両Vの旋回半径をr(m)、自車両Vの車速をv(m/s)、自車両Vのヨーレート真値をψ(rad/sec)とすると、LM1は次の式で表される。
LM1=1/2・α・t2 …(2)
【0038】
また、αは次の式で表される。
α=r・ψ2 =v・ψ…(3)
【0039】
式(2)に式(3)を代入すると、LM1は次の式で表される。
LM1=1/2・v・ψ・t2 …(4)
【0040】
以下、自車両Vの自転による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM2について図6を用いて詳細に説明する。図6は、自車両Vの自転によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM2を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における自車両Vを示す図、(b)はその一周期終了時における自車両Vを示す図である。
【0041】
図6に示すように、自車両Vが旋回走行しているときには、自車両Vはその旋回方向に自転するため、固定物Fは自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動する。ここで、前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における、前方物体検知センサ31の光軸方向に関する自車両Vから固定物Fまでの距離をLd、自車両Vの自転によって該自車両Vがその一周期の間に回転する回転角度をθとすると、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・sinθ
【0042】
ここで、θ<<1であるため、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・θ…(5)
【0043】
また、θは次の式で表される。
θ=ψ・t…(6)
【0044】
式(5)に式(6)を代入すると、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・ψ・t…(7)
【0045】
以下、自車両Vの横滑り角による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM3について図7を用いて詳細に説明する。図7は、自車両Vの横滑り角によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM3を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時及び終了時における自車両Vを示す図、(b)は自車両Vの横滑り角を示す図である。
【0046】
図7に示すように、自車両Vが旋回走行しているときには、自車両Vの進行方向と自車両Vの中心軸方向は一致しない。そして、自車両Vの旋回姿勢は、その車速に応じて変化する。このため、固定物Fは自車両Vに対して相対的に横移動する。ここで、自車両Vの横滑り角をβ(rad)、この横滑り角を示す、自車両Vの中心軸方向に関する自車両Vの重心の、自車両Vの旋回中心からのずれ量をd(m)とすると、自車両Vは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期の間にv・t(m)だけ進むため、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・sinβ
【0047】
ここで、β<<1であるため、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・β…(8)
【0048】
また、βは次の式で表される。
β=tan(d/r)
【0049】
ここで、β<<1であるため、βは次の式で表される。
β=d/r…(9)
【0050】
式(8)に式(9)を代入すると、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・(d/r)…(10)
【0051】
また、v/rは次の式で表される。
v/r=ψ…(11)
【0052】
式(10)に式(11)を代入すると、LM3は次の式で表される。
LM3=d・ψ・t…(12)
【0053】
尚、dは、vを用いて次の式で表される。
d=a・v2+b
【0054】
この定数aは、自車両Vの実際の走行データから予め決定される。定数bは、自車両Vの中心軸方向に関する自車両Vの重心と自車両Vの後輪の中心との距離であり、自車両Vの実際のデータから予め決定される。
【0055】
以下、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM4について図8を用いて詳細に説明する。図8は、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM4を説明する図である。図8では、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれている(図8では右側にずれている)ときを示している。
【0056】
図8に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれているときには、固定物Fが自車両Vに対してそのずれ方向と同じ方向に相対的に横移動していると誤認識される。ここで、前方物体検知センサ31の光軸向きの、自車両Vの中心軸方向からのずれ量(ずれ角)をθerr(rad)とすると、自車両Vは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期の間にv・t(m)だけ進むため、LM4は次の式で表される。
LM4=v・t・sinθerr
【0057】
ここで、θerr<<1であるため、LM4は次の式で表される。
LM4=v・t・θerr…(13)
【0058】
そして、式(1)に式(4)、式(7)、式(12)及び式(13)を代入すると、LMは次の式で表される。
LM=1/2・v・ψ・t2+Ld・ψ・t+d・ψ・t+v・t・θerr…(14)
【0059】
また、ヨーレート検出値をψdef(rad/sec)、ヨーレート検出値のヨーレート真値からのずれ量をψerr(rad/sec)とすると、ψは次の式で表される。
ψ=ψdef−ψerr…(15)
【0060】
式(14)に式(15)を代入して、その式を次の通り変形する。
ψdef・(1/2・v・t+Ld+d)/v−LM/(v・t)=ψerr・(1/2・v・t+Ld+d)/v−θerr…(16)
【0061】
ここで、
(1/2・v・t+Ld+d)/v=x…(17)、
ψdef・(1/2・v・t+Ld+d)/v−LM/(v・t)=y…(18)、
ψerr=a…(19)、
−θerr=b…(20)
とすると、式(16)は次の一次関数式で表される。
y=ax+b…(21)
【0062】
(x,y)のデータ数をnとすると、式(21)の傾きaと切片bは、次の、最小二乗法の公式で算出することができる。
【数1】
b=Y−aX…(23)
【0063】
ここで、Xはxの平均値、Yはyの平均値であり、それぞれ次の式で表される。
【数2】
【数3】
【0064】
そして、式(17)及び式(18)の左辺の変数に実測値を代入することによって、(x,y)を算出する。この(x,y)のデータを収集し、この収集された(x,y)のデータから、式(22)及び式(23)を用いて、傾きaと切片bを算出する。こうして、図9に示すように、(x,y)のデータから、最小二乗法を用いて、xとyの関係が線形関数で近似される。尚、(x,y)のデータ数nが所定数(例えば50個)よりも小さいときには、傾きaと切片bを算出しない。
【0065】
それから、傾きaと切片bの算出値から、式(19)及び式(20)を用いて、ヨーレート検出値のずれ量ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量θerrを算出する。
【0066】
図9では、その破線よりも上側部分がヨーレート検出値のずれによる成分を、下側部分が前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる成分を示しており、このように、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれが切り分けられている。
【0067】
続いて、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行う。具体的には、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値に、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrを前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値に所定割合(例えば1/8)だけそれぞれ反映させるなまし処理を行う。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値をψerr_filter(今回値)、ヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値をψerr_filter(前回値)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値をθerr_filter(今回値)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値をθerr_filter(前回値)とすると、ψerr_filter(今回値)とθerr_filter(今回値)は次の式で表される。
ψerr_filter(今回値)=(7・ψerr_filter(前回値)+ψerr)/8
θerr_filter(今回値)=(7・θerr_filter(前回値)+θerr)/8
【0068】
そして、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値ψerr_filter(今回値)をヨーレート検出値のずれ量として、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値をθerr_filter(今回値)を前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量としてそれぞれ用いる。
【0069】
以上のようにして、ずれ検出部13は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12によって測定された、固定物Fの横移動量から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出する。
【0070】
尚、LM3はLM1、LM2、LM4と比べて微小であるため、LMは次の式で表されてもよい。
LM=LM1+LM2+LM4
【0071】
このとき、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれは、上述と同様、最小二乗法を用いて検出する。
【0072】
また、ずれ検出部13は、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行っているが、このフィルタ処理を行わなくてもよい。このとき、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをそのままヨーレート検出値のずれ量として、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrをそのまま前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量としてそれぞれ用いる。
【0073】
上記ずれ検出禁止部14は、前方物体認識部10によって認識された最も離れた固定物F,Fの間の、前方物体検知センサ31の光軸方向に関する距離が所定距離(例えば100m)よりも短いときには、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。つまり、図10に示すように、最も近い固定物Fまでの距離をLd_min(m)、最も遠い固定物Fまでの距離をLd_max(m)とすると、Ld_max−Ld_min<100mのときには、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。
【0074】
上記進行路推定部15は、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と車速認識部11によって認識された車速とから自車両Vのヨーレート旋回半径(例えば、ヨーレート旋回半径=車速/ヨーレート)を算出し、この算出されたヨーレート旋回半径によって自車両Vの進行路Sを推定する。
【0075】
上記車両走行制御部16は、進行路推定部15によって推定された自車両Vの進行路S上に存在する、自車両Vの前方の先行車Wとの車間距離が所定の目標車間距離に維持されるようにアクセル制御又はブレーキ制御を行って自車両Vを先行車Wに追従走行させる追従制御を行うACC制御を行う。具体的には、車両走行制御部16は、自車両Vを加速させるべくアクセル制御を行う。このアクセル制御では、所望のエンジン出力が得られるように、車両走行制御部16が所定のアクセル制御量に応じたアクセル制御量信号をエンジンECU50に出力する。このアクセル制御量信号を受けたエンジンECU50は、アクセル制御量信号に応じて制御信号をスロットル51に出力して、所定のアクセル制御量に応じたスロットル開度となるようにスロットル51を制御する。所定のアクセル制御量は、追従制御及び定速制御毎にそれぞれ設定されている。
【0076】
また、車両走行制御部16は、自車両Vを減速させるべくブレーキ制御を行う。このブレーキ制御では、所望のブレーキ力が得られるように、車両走行制御部16が所定のブレーキ制御量に応じたブレーキ制御量信号をDSCユニット52に出力する。このブレーキ制御量信号を受けたDSCユニット52は、ブレーキ制御量信号に応じて制御信号をHU53に出力して、所定のブレーキ制御量に応じたブレーキ力が発生するようにHU53を制御する。所定のブレーキ制御量は、追従制御、定速制御及び衝突回避制御毎にそれぞれ設定されている。
【0077】
上記ACC制御制限部17は、ずれ検出部13によって検出された、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が所定値(例えば2deg)よりも大きいときには、前方物体検知センサ31の検知信号を用いることを禁止する。具体的には、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときには、車両走行制御部16による前方物体検知センサ31の検知信号を用いたACC制御を禁止するとともに、作動信号を車内に設けられた警報装置54に出力する。この作動信号を受けた警報装置54は、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両の運転者に報知する。
【0078】
また、ACC制御制限部17は、ずれ補正部13によって検出された、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値(例えば3deg/sec)よりも大きいときには、車両走行制御部16によるACC制御を禁止するとともに、作動信号を警報装置54に出力する。この作動信号を受けた警報装置54は、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両Vの運転者に報知する。
【0079】
尚、ACC制御制限部17は、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値よりも大きいときには、ACC制御を縮退してもよい。ここで、ACC制御の縮退とは、例えば、先行車Wとの目標車間距離を小さくすることによって、自車両Vの進行路Sに隣接する隣接路T上にある車両Zを先行車であると誤認識することを防止したり(隣接路Tと車両Zは図2を参照)、ブレーキ力を小さくすることによって、誤ったブレーキ制御を行ったときに、乗員に違和感を与えることを防止したりすることをいう。
【0080】
上記ゼロ点補正部18は、イグニッションオンで且つ、自車両Vが安定して停車しているときには、ヨーレートセンサ30のゼロ点のずれ(オフセット)を高速で補正する。ここで、「自車両Vが安定して停車している」ときとは、例えば、自車両Vが停車し且つ、自車両Vが駐車場のターンテーブルや船など不安定なものに乗っていないときをいう。
【0081】
以上の如く構成された車両走行制御装置は、前方物体検知センサ31及び前方物体認識部10によって自車両Vの前方の先行車Wを認識し、その車間距離が予め設定された目標車間距離となるように追従制御を行う。
【0082】
以下、車両走行制御装置による車両走行制御について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
始めに、ステップS1において、センサの方位ずれ検出制御が行われ、続いて、ステップS2において、上記方位ずれ検出に基づいてACC制御が行われる。
【0084】
まずは、ステップS1におけるセンサの方位ずれ検出制御について図12のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
ヨーレートのずれ検出制御ルーチンでは、まずステップSA1においてイグニッションオンか否かを判定する。イグニションオンである場合(YES)にはステップSA2へ進む一方、イグニッションオフである場合(NO)はステップSA18へ進む。
【0086】
ステップSA2においては、車速認識部11によって認識された車速から、自車両Vが停車しているか否かを判定する。走行している場合(NO)にはステップSA3へ進む一方、停車している場合(YES)はステップSA14へ進む。
【0087】
ステップSA3においては、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上であるか否かを判定する。10km/h以上の場合(YES)にはステップSA4へ進む一方、10km/h未満の場合(NO)はリターンへ進む。このように、10km/h未満の場合はリターンへ進むのは、超低速であると、自車両Vの前方の物体が固定物Fであるのか、移動物であるのかを認識することが難しくなるとともに、ヨーレートセンサ30の検出精度が低くなるからである。
【0088】
ステップSA4においては、前方物体認識部10によって、前方物体検知センサ31からの検知信号から、自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この認識された物体の自車両Vに対する相対速度から、その物体が固定物Fであるのか、移動物であるのかを認識する。
【0089】
続くステップSA5においては、横移動量測定部12によって、前方物体検知センサ31からの検知信号から、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期一周期当たりに自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LMを測定する。
【0090】
続くステップSA6においては、(x,y)のデータ数nが50個以上になったか否かを判定する。50個以上の場合(YES)にはステップSA7へ進む一方、50個未満の場合(NO)はリターンへ進む。
【0091】
ステップSA7においては、ずれ検出部13によって、xやyなどの値を算出する。具体的には、上記式(17)及び式(18)の左辺の変数に実測値を代入することによって、(x,y)を算出する。そして、算出した(x,y)と(x,y)のデータ数nから、
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
を算出する。さらに、最も近い固定物Fまでの距離Ld_minと最も遠い固定物Fまでの距離Ld_minを算出する。
【0092】
続くステップSA8においては、最も近い固定物Fまでの距離Ld_minから最も遠い固定物Fまでの距離Ld_minを引いた差が100m以上であるか否かを判定する。100m以上の場合(YES)にはステップSA9へ進む一方、100m未満の場合(NO)はリターンへ進む。つまり、100m未満の場合は、ずれ検出禁止部14によって、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。
【0093】
ステップSA9においては、ずれ検出部13によって、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出する。具体的には、ステップSA6において算出した算出値から、上記式(22)〜式(25)を用いて、傾きaと切片bを算出し、この傾きaと切片bの算出値から、上記式(19)及び式(20)を用いて、ヨーレート検出値のずれ量ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量θerrを算出する。
【0094】
続くステップSA10においては、ずれ検出部13によって、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行う。具体的には、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値ψerr_filter(前回値)に、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrを前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値θerr_filter(前回値)に1/8だけそれぞれ反映させるなまし処理を行う。
【0095】
続くステップSA11においては、ステップSA6において算出した算出値をリセットする(ゼロにする)。続くステップSA12においては、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量ψerr及びヨーレート検出値のずれ量θerrの算出回数が100回以上になったか否かを判定する。100回以上の場合(YES)にはステップSA13へ進む一方、100回未満の場合(NO)はリターンへ進む。
【0096】
ステップSA13においては、走行時学習完了フラグをセットする。その後、リターンへ進む。
【0097】
また、ステップSA2で停車していると判定されて進んだステップSA14においては、自車両Vの停車状態を判定する。
【0098】
続くステップSA15においては、自車両Vが安定して停車しているか否かを判定する。安定して停車している場合(YES)にはステップSA16へ進む一方、不安定に停車している場合(NO)はリターンへ進む。
【0099】
ステップSA16においては、ゼロ点補正部18によってヨーレートセンサ30のゼロ点のずれを補正する。続くステップSA17においては、停車時学習完了フラグをセットする。その後、リターンへ進む。
【0100】
また、ステップSA1でイグニッションオフと判定されて進んだステップSA18においては、停車時学習完了フラグ及び走行時学習完了フラグをリセットする。その後、リターンへ進む。
【0101】
次に、ステップS2におけるACC制御について図13のフローチャートを用いて説明する。
【0102】
ACC制御ルーチンでは、まずステップSB1において、−2deg≦前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量(すなわち、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値θerr_filter(今回値))≦2degを満たすか否かを判定する。つまり、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が上記所定値以下であるか否かを判定する。満たす(所定値以下の)場合(YES)にはステップSB2へ進む一方、満たさない(所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB8へ進む。
【0103】
ステップSB2においては、−3deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量(すなわち、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値をψerr_filter(今回値))≦3deg/secを満たすか否かを判定する。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が上記第1所定値以下であるか否かを判定する。満たす(第1所定値以下の)場合(YES)にはステップSB3へ進む一方、満たさない(第1所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB8へ進む。
【0104】
SB3においては、−0.4deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量≦0.4deg/secを満たすか否かを判定する。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値よりも小さい第2所定値以下であるか否かを判定する。満たす(第2所定値以下の)場合(YES)にはステップSB4へ進む一方、満たさない(第2所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB5へ進む。
【0105】
ステップSB4においては、停車時学習完了フラグから、停車時学習が完了しているか否かを判定する。完了していない場合(NO)にはステップSB5へ進む一方、完了している場合(YES)はSB6へ進む。
【0106】
ステップSB5においては、走行時学習完了フラグから、走行時学習が完了しているか否かを判定する。完了している場合(YES)にはステップSB6へ進む一方、完了していない場合(NO)はSB7へ進む。
【0107】
ステップSB6においては、車両走行制御部16によるACC制御を許可する。そして、ACCメインスイッチがオンされているときには、車両走行制御部16によってACC制御を行う。具体的には、進行路推定部15によって推定された自車両Vの進行路S上に存在する、自車両Vの前方の先行車Wとの車間距離が所定の目標車間距離に維持されるようにアクセル制御又はブレーキ制御を行って自車両Vを先行車Wに追従走行させる追従制御を行う。その後、リターンへ進む。
【0108】
また、ステップSB5で走行時学習が完了していないと判定されて進んだステップSB7においては、ACC制御制限部17によって、車両走行制御部16によるACC制御を縮退するとともに、作動信号を警報装置54に出力することにより、この作動信号を受けた警報装置54によって、車両走行制御部16によるACC制御を縮退した旨を自車両Vの運転者に報知する。その後、リターンへ進む。
【0109】
また、ステップSB1で−2deg≦前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量≦2degを満たさないと判定されて、又は、ステップSB2で−3deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量≦3deg/secを満たさないと判定されて進んだステップSB8においては、ACC制御制限部17によって車両走行制御部16によるACC制御を禁止するとともに、作動信号を警報装置54に出力することにより、この作動信号を受けた警報装置54によって、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両Vの運転者に報知する。その後、リターンへ進む。
【0110】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、自車両Vのヨーレートを検出するヨーレートセンサ31と、自車両Vの前方の物体を検知する前方物体検知センサ31と、この前方物体検知センサ31により検知された物体が固定物Fであるのかを認識する前方物体認識部10と、この前方物体認識部10により認識された固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定する横移動量測定部12と、ヨーレートセンサ31により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、最小二乗法を用いて前方物体検知センサ31の向きのずれを検出するずれ検出部13とを備えるため、前方物体検知センサ31の向きのずれを検出することができる。
【0111】
ところで、ヨーレートセンサ31の検出値はヨーレートセンサ31の経時劣化や温度ドリフト、ノイズなどの影響を受けて変動するため、誤検出される場合がある。このため、追従制御を行っている場合、自車両Vの進行路Sを誤推定して、先行車Wが自車両Vの進行路Sに隣接する隣接路T上に存在しているにも拘わらず、自車両Vの進行路S上に存在していると誤判定する虞がある。
【0112】
ここで、本実施形態によれば、ずれ検出部13により、ヨーレートセンサ31により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の向きのずれに加えて、ヨーレート検出値のずれを検出することができる。
【0113】
ところで、前方物体認識部10により認識された最も離れた固定物F,Fの間の距離が短い場合、自車両Vから固定物Fまでの距離が偏り、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行えない虞がある。つまり、自車両Vから固定物Fまでの距離に広がりがある方が、その検出精度が高くなる。
【0114】
ここで、本実施形態によれば、前方物体認識部10により認識された最も離れた固定物F,Fの間の距離が所定距離よりも短いときに、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止部14を備えるため、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行うことができる。
【0115】
また、ずれ検出部13により検出された前方物体検知センサ31の向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、前方物体検知センサ31に異常があるとして、前方物体検知センサ31の検知信号を用いることを禁止するACC制御制限部17を備えるため、自車両Vの前方の物体を誤検知することを確実に抑制することができる。
【0116】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、ずれ検出部13は、前方物体検知センサ31の向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出するが、前方物体検知センサ31の向きのずれだけ検出してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定し、この横移動量とヨーレート検出値から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出しているが、これに限らず、例えば、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する移動ベクトルを算出し、この移動ベクトルとヨーレート検出値から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出してもよい。
【0118】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0119】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明したように、本発明に係るセンサの方位ずれ検出装置は、前方物体検知センサの向きのずれを検出することが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 クルーズコントロール
10 前方物体認識部(前方物体認識手段)
12 横移動量測定部(移動軌跡算出手段)
13 ずれ検出部(ずれ検出手段)
14 ずれ検出禁止部(ずれ検出禁止手段)
17 ACC制御制限部(使用禁止手段)
30 ヨーレートセンサ
31 前方物体検知センサ
F 固定物
V 自車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方物体検知センサの向きのずれを検出するセンサの方位ずれ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ等の前方物体検知センサを用いて自車両の前方の先行車を検知するようにした先行車認識装置が従来技術として知られており、その検知した先行車に追従する追従制御等を行う。この先行車認識装置には、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値と、自車両の車速を検出する車速センサの検出値とに基づいて、自車両の進行路を推定するものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このものでは、ヨーレートと車速とから自車両の旋回半径を算出し、この旋回半径を自車両の進行路の曲率半径であるとしている。そして、先行車に追従する追従制御を行っている場合、上記推定した進行路上に、上記検知した先行車が存在するか否かを判定して、その先行車が上記進行路上に存在していると判定したときには、そのまま追従制御を続行する一方、上記進行路上に存在しないと判定したときには、乗員が設定した目標車速で走行させる定速制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−161697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前方物体検知センサは、その向きが車両の軽衝突などの影響を受けてずれる場合がある。このため、追従制御を行っている場合、先行車を誤検知する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、前方物体検知センサの向きのずれを検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、上記前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、上記前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
これによれば、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、この前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、この前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えるため、前方物体検知センサの向きのずれを検出することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれに加えて、上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
ところで、ヨーレートセンサの検出値はヨーレートセンサの経時劣化や温度ドリフト、ノイズなどの影響を受けて変動するため、誤検出される場合がある。このため、追従制御を行っている場合、自車両の進行路を誤推定して、先行車が自車両の進行路に隣接する隣接路線上に存在しているにも拘わらず、自車両の進行路上に存在していると誤判定する虞がある。
【0010】
ここで、本発明によれば、ずれ検出手段により、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれに加えて、ヨーレート検出値のずれを検出することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、最小二乗法を用いて上記前方物体検知センサの向きのずれ及び上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
これによれば、本発明の最良の実施形態を実現することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、上記ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0014】
ところで、前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が短い場合、自車両から固定物までの距離が偏り、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行えない虞がある。つまり、自車両から固定物までの距離に広がりがある方が、その検出精度が高くなる。
【0015】
ここで、本発明によれば、前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段を備えるため、ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行うことができる。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれか1つの発明において、上記ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、上記前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、前方物体検知センサに異常があるとして、前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段を備えるため、自車両の前方の物体を誤検知することを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、この前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、この前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えるため、前方物体検知センサの向きのずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るセンサの方位ずれ検出装置を備える車両走行制御装置のブロック図である。
【図2】自車両が走行している様子を示す模式図である。
【図3】自車両が走行しているときに、固定物が自車両に対して相対的に移動する様子を説明する図であり、(a)は自車両が直進走行している場合であって、前方物体検知センサの光軸が車両前方を向いているときの図、(b)は自車両が直進走行している場合であって、前方物体検知センサの光軸向きが自車両の中心軸方向からずれているときの図である。
【図4】自車両が直進走行している場合であって、ヨーレートセンサのゼロ点がずれているときの、固定物が自車両に対して相対的に移動する様子を説明する図である。
【図5】自車両の求心加速度によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図である。
【図6】自車両の自転によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサの検知周期一周期開始時における自車両を示す図、(b)はその一周期終了時における自車両を示す図である。
【図7】自車両の横滑り角によって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサの検知周期一周期開始時及び終了時における自車両を示す図、(b)は自車両の横滑り角を示す図である。
【図8】前方物体検知センサの光軸向きのずれによって固定物が自車両に対してその横方向に相対的に移動する横移動量を説明する図である。
【図9】(x,y)の近似直線を示すグラフである。
【図10】自車両から固定物までの距離を説明する図である。
【図11】車両走行制御装置による車両走行制御を示すフローチャートである。
【図12】センサの方位ずれ検出制御を示すフローチャートである。
【図13】ACC制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るセンサの方位ずれ検出装置を備える車両走行制御装置のブロック図を示す。符号1は、自車両Vの車速や先行車Wとの車間距離を自動的に制御するクルーズコントローラである(自車両Vと先行車Wは図2を参照)。このクルーズコントローラ1は、自車両Vに発生するヨーレートを検出するヨーレートセンサ30(図3及び図4も参照)、自車両Vの前方の物体を検知する前方物体検知センサ31(図3及び図4も参照)、及び自車両Vの車速を検出する車速センサ32等から信号が入力され、エンジンECU50及びDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)ユニット52を制御することによって、先行車Wが存在しない場合は目標車速での定速制御を行う一方、先行車Wが存在する場合にはその先行車Wとの車間距離が目標車間距離となるような追従制御を行うと共に、前方に障害物が存在する場合にはその障害物との衝突を回避するように衝突回避制御を行うACC制御を行う。
【0022】
前方物体検知センサ31は、スキャン式のミリ波レーダによって構成されている。このミリ波レーダは、自車両Vの前端部の車幅方向略中央位置においてその光軸o(図3等を参照)が車両前方を向くように配設されていて、自車両Vの前方の所定範囲(図3及び図10の破線を参照)にミリ波を発信し、その反射波を受信することによって自車両Vの前方に物体が存在するか否かを検知することができる。また、前方物体検知センサ31は、自車両Vの前方の物体を複数個(例えば8個)、同時に検知することができる。
【0023】
尚、前方物体検知センサ31は、ミリ波レーダ以外であってもよく、レーザレーダや超音波レーダや赤外線レーダやカメラ等を採用することもできる。
【0024】
上記エンジンECU50は、主にエンジン(図示省略)を制御し、その機能の1つとしてスロットル51のスロットル開度を調節して自車両Vを加速させる。
【0025】
上記DSCユニット52は、急ハンドルや急カーブ走行時などに、自車両Vの安定した走行姿勢を確保するアクティブセーフティシステムであって、エンジン出力と4輪の各輪に別個に付与するブレーキ力とを統合的にコントロールすることにより、自車両Vの横滑りを抑制するものである。このDSCユニット52は、各輪に設けられたブレーキ装置にブレーキ圧を供給する液圧ユニット(Hydraulic Unit;以下HUという)53を制御することによってブレーキ力を調節して自車両Vを減速させる。
【0026】
上記クルーズコントローラ1は、上記前方物体検知センサ31の検知信号が入力される前方物体認識部10(前方物体認識手段)と、上記車速センサ32の検出信号が入力される車速認識部11と、横移動量測定部12(移動軌跡算出手段)と、上記ヨーレートセンサ30の検出信号が入力されるずれ検出部13(ずれ検出手段)と、ずれ検出禁止部14(ずれ検出禁止手段)と、進行路推定部15と、車両走行制御部16と、ACC制御制限部17(使用禁止手段)と、ゼロ点補正部18とを有する。
【0027】
前方物体認識部10は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、前方物体検知センサ31からの検知信号(検知結果)から自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この認識された物体の自車両Vに対する相対速度から、その物体が固定物F(例えば電柱やガードレール等。図3等を参照)であるのか、移動物であるのかを認識する。例えば、認識された物体の自車両Vに対する相対速度が5km/h以下であるときには、その物体が固定物Fであると認識する。また、前方物体認識部10は、前方物体検知センサ31からの検知信号から自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この結果から、進行路推定部15によって推定した自車両Vの進行路S(図2を参照)上に物体が存在するか否かを認識する。さらには、認識された物体の相対速度から、その物体が障害物であるのか、前方を走行する先行車Wであるのかを認識する。
【0028】
上記車速認識部11は、車速センサ32からの検出信号から車速を認識し、後述する定速制御において、この検出された検出車速と目標車速との車速偏差を算出する。
【0029】
上記横移動量測定部12は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、前方物体検知センサ31からの検知信号から、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する移動軌跡を算出し、この算出された移動軌跡から、その固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期(例えば100msec)一周期当たりに自車両Vに対してその横方向(幅方向)に相対的に移動する横移動量を、その検知周期毎に測定する。つまり、自車両Vが走行しているときに、前方物体検知センサ31によって固定物Fを観察することにより、その固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量を算出する。このとき、便宜上、左側に横移動する場合は正の符号を、右側に横移動する場合は負の符号を付するようにする(尚、正負の符号は逆であってもよい)。そして、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが複数個であるときには、その個数分の固定物Fの横移動量を測定する。ここで、自車両Vの横方向とは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期終了時における前方物体検知センサ31の光軸oの方向と直角な方向である。つまり、前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸(正面軸)aの方向(車両前後方向)と一致しているときには、前方物体検知センサ31の検知周期一周期終了時における自車両Vの中心軸方向と直角な方向である。
【0030】
尚、横移動量測定部12は、前方物体検知センサ31の光軸方向(前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸方向と一致しているときには、自車両Vの中心軸方向でもある)に関する自車両Vから固定物Fまでの距離が所定距離よりも短いときには、自車両Vのヨーレートを正確に推定するため、その固定物Fの横移動量を測定しない。
【0031】
上記ずれ検出部13は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12によって測定された、固定物Fの横移動量から、車両平面視に関する前方物体検知センサ31の光軸aの向きの、自車両Vの中心軸方向からのずれ(前方物体検知センサ31の光軸oの方位誤差)とヨーレート検出値のヨーレート真値からのずれ(誤差)を検出する。具体的には、ヨーレート検出値と固定物Fの横移動量から、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ(前方物体検知センサ31のゼロ点の、自車両Vの横方向のずれ)とヨーレート検出値のずれを検出する。以下、このずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出について図3及び図4を用いて詳細に説明する。図3は、自車両Vが走行しているときに、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する様子を説明する図であり、(a)は自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸oが車両前方を向いているときの図、(b)は自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれているときの図である。図4は、自車両Vが直進走行している場合であって、ヨーレートセンサ30のゼロ点がずれているときの、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する様子を説明する図である。つまり、図3及び図4では、自車両Vが固定されている基準の座標系に対して固定物Fが相対的に移動する様子を示している。
【0032】
図3(a)に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸oが車両前方を向いているときには、固定物Fは自車両Vに対してまっすぐ近付いてくる一方、図3(b)に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれている(図3(b)では右側にずれている)ときには、前方物体検知センサ31からの検知信号から、固定物Fが自車両Vに対してそのずれ方向と同じ方向に相対的に横移動していると誤認識される。このとき、その横移動量は、自車両Vから固定物Fまでの距離の大きさに拘わらず、一定である。
【0033】
一方、図4に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、ヨーレートセンサ30のゼロ点がずれている(図4では右旋回方向にずれている)ときには、ヨーレートセンサ30の検知信号から、自車両Vの中心軸aが回転し(自車両Vが旋回走行し)且つ、固定物Fが自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動していると誤認識される。このとき、その横移動量は、自車両Vから固定物Fまでの距離が長いほど、大きくなる。
【0034】
以上のように、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる固定物Fの横移動量は、その固定物Fまでの距離の大きさに拘わらず、一定であるのに対して、ヨーレートセンサ30のゼロ点のずれによる固定物Fの横移動量は、その固定物Fまでの距離が長いほど、大きくなる点で、両者は相違する。この相違点から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを切り分けることができる。
【0035】
ところで、自車両Vが走行しているときに、前方物体検知センサ31からの検知信号から、固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すると認識される要因として、自車両Vの求心加速度によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、自車両Vの自転によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、自車両Vの横滑り角によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動すること、及び前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動することがある。つまり、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期のある一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM(m)、自車両Vの求心加速度によって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM1(m)、自車両Vの自転によって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM2(m)、自車両Vの横滑り角によって固定物Fがある一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM3(m)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fがその一周期の間に自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量をLM4(m)とすると、LMは次の式で表される。
LM=LM1+LM2+LM3+LM4…(1)
【0036】
以下、自車両Vの求心加速度による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM1について図5を用いて詳細に説明する。図5は、自車両Vの求心加速度によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM1を説明する図である。図5では、自車両Vが旋回走行(図5では右旋回走行。図6及び図7も同様)しているときを示しており、前方物体検知センサ31の光軸方向が自車両Vの中心軸方向と一致している(図6及び図7も同様)。また、図5では、前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における自車両Vを実線で、その一周期終了時における自車両Vを二点鎖線で表している(図7(a)及び図8も同様)。
【0037】
図5に示すように、自車両Vが旋回走行(図5では右旋回走行。図6及び図7も同様)しているときには、その求心加速度によって自車両Vはその旋回方向に横移動するため、固定物Fは自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動する。ここで、自車両Vの求心加速度をα(m/s2)、前方物体検知センサ31の検知周期をt(s)、自車両Vの旋回半径をr(m)、自車両Vの車速をv(m/s)、自車両Vのヨーレート真値をψ(rad/sec)とすると、LM1は次の式で表される。
LM1=1/2・α・t2 …(2)
【0038】
また、αは次の式で表される。
α=r・ψ2 =v・ψ…(3)
【0039】
式(2)に式(3)を代入すると、LM1は次の式で表される。
LM1=1/2・v・ψ・t2 …(4)
【0040】
以下、自車両Vの自転による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM2について図6を用いて詳細に説明する。図6は、自車両Vの自転によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM2を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における自車両Vを示す図、(b)はその一周期終了時における自車両Vを示す図である。
【0041】
図6に示すように、自車両Vが旋回走行しているときには、自車両Vはその旋回方向に自転するため、固定物Fは自車両Vに対してその旋回方向とは反対方向に相対的に横移動する。ここで、前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時における、前方物体検知センサ31の光軸方向に関する自車両Vから固定物Fまでの距離をLd、自車両Vの自転によって該自車両Vがその一周期の間に回転する回転角度をθとすると、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・sinθ
【0042】
ここで、θ<<1であるため、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・θ…(5)
【0043】
また、θは次の式で表される。
θ=ψ・t…(6)
【0044】
式(5)に式(6)を代入すると、LM2は次の式で表される。
LM2=Ld・ψ・t…(7)
【0045】
以下、自車両Vの横滑り角による固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM3について図7を用いて詳細に説明する。図7は、自車両Vの横滑り角によって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM3を説明する図であり、(a)は前方物体検知センサ31の検知周期一周期開始時及び終了時における自車両Vを示す図、(b)は自車両Vの横滑り角を示す図である。
【0046】
図7に示すように、自車両Vが旋回走行しているときには、自車両Vの進行方向と自車両Vの中心軸方向は一致しない。そして、自車両Vの旋回姿勢は、その車速に応じて変化する。このため、固定物Fは自車両Vに対して相対的に横移動する。ここで、自車両Vの横滑り角をβ(rad)、この横滑り角を示す、自車両Vの中心軸方向に関する自車両Vの重心の、自車両Vの旋回中心からのずれ量をd(m)とすると、自車両Vは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期の間にv・t(m)だけ進むため、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・sinβ
【0047】
ここで、β<<1であるため、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・β…(8)
【0048】
また、βは次の式で表される。
β=tan(d/r)
【0049】
ここで、β<<1であるため、βは次の式で表される。
β=d/r…(9)
【0050】
式(8)に式(9)を代入すると、LM3は次の式で表される。
LM3=v・t・(d/r)…(10)
【0051】
また、v/rは次の式で表される。
v/r=ψ…(11)
【0052】
式(10)に式(11)を代入すると、LM3は次の式で表される。
LM3=d・ψ・t…(12)
【0053】
尚、dは、vを用いて次の式で表される。
d=a・v2+b
【0054】
この定数aは、自車両Vの実際の走行データから予め決定される。定数bは、自車両Vの中心軸方向に関する自車両Vの重心と自車両Vの後輪の中心との距離であり、自車両Vの実際のデータから予め決定される。
【0055】
以下、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる固定物Fの自車両Vに対する相対的な横移動量LM4について図8を用いて詳細に説明する。図8は、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによって固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LM4を説明する図である。図8では、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれている(図8では右側にずれている)ときを示している。
【0056】
図8に示すように、自車両Vが直進走行している場合であって、前方物体検知センサ31の光軸向きが自車両Vの中心軸方向からずれているときには、固定物Fが自車両Vに対してそのずれ方向と同じ方向に相対的に横移動していると誤認識される。ここで、前方物体検知センサ31の光軸向きの、自車両Vの中心軸方向からのずれ量(ずれ角)をθerr(rad)とすると、自車両Vは、前方物体検知センサ31の検知周期一周期の間にv・t(m)だけ進むため、LM4は次の式で表される。
LM4=v・t・sinθerr
【0057】
ここで、θerr<<1であるため、LM4は次の式で表される。
LM4=v・t・θerr…(13)
【0058】
そして、式(1)に式(4)、式(7)、式(12)及び式(13)を代入すると、LMは次の式で表される。
LM=1/2・v・ψ・t2+Ld・ψ・t+d・ψ・t+v・t・θerr…(14)
【0059】
また、ヨーレート検出値をψdef(rad/sec)、ヨーレート検出値のヨーレート真値からのずれ量をψerr(rad/sec)とすると、ψは次の式で表される。
ψ=ψdef−ψerr…(15)
【0060】
式(14)に式(15)を代入して、その式を次の通り変形する。
ψdef・(1/2・v・t+Ld+d)/v−LM/(v・t)=ψerr・(1/2・v・t+Ld+d)/v−θerr…(16)
【0061】
ここで、
(1/2・v・t+Ld+d)/v=x…(17)、
ψdef・(1/2・v・t+Ld+d)/v−LM/(v・t)=y…(18)、
ψerr=a…(19)、
−θerr=b…(20)
とすると、式(16)は次の一次関数式で表される。
y=ax+b…(21)
【0062】
(x,y)のデータ数をnとすると、式(21)の傾きaと切片bは、次の、最小二乗法の公式で算出することができる。
【数1】
b=Y−aX…(23)
【0063】
ここで、Xはxの平均値、Yはyの平均値であり、それぞれ次の式で表される。
【数2】
【数3】
【0064】
そして、式(17)及び式(18)の左辺の変数に実測値を代入することによって、(x,y)を算出する。この(x,y)のデータを収集し、この収集された(x,y)のデータから、式(22)及び式(23)を用いて、傾きaと切片bを算出する。こうして、図9に示すように、(x,y)のデータから、最小二乗法を用いて、xとyの関係が線形関数で近似される。尚、(x,y)のデータ数nが所定数(例えば50個)よりも小さいときには、傾きaと切片bを算出しない。
【0065】
それから、傾きaと切片bの算出値から、式(19)及び式(20)を用いて、ヨーレート検出値のずれ量ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量θerrを算出する。
【0066】
図9では、その破線よりも上側部分がヨーレート検出値のずれによる成分を、下側部分が前方物体検知センサ31の光軸向きのずれによる成分を示しており、このように、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれが切り分けられている。
【0067】
続いて、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行う。具体的には、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値に、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrを前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値に所定割合(例えば1/8)だけそれぞれ反映させるなまし処理を行う。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値をψerr_filter(今回値)、ヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値をψerr_filter(前回値)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値をθerr_filter(今回値)、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値をθerr_filter(前回値)とすると、ψerr_filter(今回値)とθerr_filter(今回値)は次の式で表される。
ψerr_filter(今回値)=(7・ψerr_filter(前回値)+ψerr)/8
θerr_filter(今回値)=(7・θerr_filter(前回値)+θerr)/8
【0068】
そして、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値ψerr_filter(今回値)をヨーレート検出値のずれ量として、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値をθerr_filter(今回値)を前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量としてそれぞれ用いる。
【0069】
以上のようにして、ずれ検出部13は、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上のときには、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12によって測定された、固定物Fの横移動量から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出する。
【0070】
尚、LM3はLM1、LM2、LM4と比べて微小であるため、LMは次の式で表されてもよい。
LM=LM1+LM2+LM4
【0071】
このとき、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれは、上述と同様、最小二乗法を用いて検出する。
【0072】
また、ずれ検出部13は、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行っているが、このフィルタ処理を行わなくてもよい。このとき、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをそのままヨーレート検出値のずれ量として、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrをそのまま前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量としてそれぞれ用いる。
【0073】
上記ずれ検出禁止部14は、前方物体認識部10によって認識された最も離れた固定物F,Fの間の、前方物体検知センサ31の光軸方向に関する距離が所定距離(例えば100m)よりも短いときには、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。つまり、図10に示すように、最も近い固定物Fまでの距離をLd_min(m)、最も遠い固定物Fまでの距離をLd_max(m)とすると、Ld_max−Ld_min<100mのときには、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。
【0074】
上記進行路推定部15は、ヨーレートセンサ30によって検出されたヨーレート検出値と車速認識部11によって認識された車速とから自車両Vのヨーレート旋回半径(例えば、ヨーレート旋回半径=車速/ヨーレート)を算出し、この算出されたヨーレート旋回半径によって自車両Vの進行路Sを推定する。
【0075】
上記車両走行制御部16は、進行路推定部15によって推定された自車両Vの進行路S上に存在する、自車両Vの前方の先行車Wとの車間距離が所定の目標車間距離に維持されるようにアクセル制御又はブレーキ制御を行って自車両Vを先行車Wに追従走行させる追従制御を行うACC制御を行う。具体的には、車両走行制御部16は、自車両Vを加速させるべくアクセル制御を行う。このアクセル制御では、所望のエンジン出力が得られるように、車両走行制御部16が所定のアクセル制御量に応じたアクセル制御量信号をエンジンECU50に出力する。このアクセル制御量信号を受けたエンジンECU50は、アクセル制御量信号に応じて制御信号をスロットル51に出力して、所定のアクセル制御量に応じたスロットル開度となるようにスロットル51を制御する。所定のアクセル制御量は、追従制御及び定速制御毎にそれぞれ設定されている。
【0076】
また、車両走行制御部16は、自車両Vを減速させるべくブレーキ制御を行う。このブレーキ制御では、所望のブレーキ力が得られるように、車両走行制御部16が所定のブレーキ制御量に応じたブレーキ制御量信号をDSCユニット52に出力する。このブレーキ制御量信号を受けたDSCユニット52は、ブレーキ制御量信号に応じて制御信号をHU53に出力して、所定のブレーキ制御量に応じたブレーキ力が発生するようにHU53を制御する。所定のブレーキ制御量は、追従制御、定速制御及び衝突回避制御毎にそれぞれ設定されている。
【0077】
上記ACC制御制限部17は、ずれ検出部13によって検出された、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が所定値(例えば2deg)よりも大きいときには、前方物体検知センサ31の検知信号を用いることを禁止する。具体的には、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときには、車両走行制御部16による前方物体検知センサ31の検知信号を用いたACC制御を禁止するとともに、作動信号を車内に設けられた警報装置54に出力する。この作動信号を受けた警報装置54は、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両の運転者に報知する。
【0078】
また、ACC制御制限部17は、ずれ補正部13によって検出された、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値(例えば3deg/sec)よりも大きいときには、車両走行制御部16によるACC制御を禁止するとともに、作動信号を警報装置54に出力する。この作動信号を受けた警報装置54は、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両Vの運転者に報知する。
【0079】
尚、ACC制御制限部17は、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値よりも大きいときには、ACC制御を縮退してもよい。ここで、ACC制御の縮退とは、例えば、先行車Wとの目標車間距離を小さくすることによって、自車両Vの進行路Sに隣接する隣接路T上にある車両Zを先行車であると誤認識することを防止したり(隣接路Tと車両Zは図2を参照)、ブレーキ力を小さくすることによって、誤ったブレーキ制御を行ったときに、乗員に違和感を与えることを防止したりすることをいう。
【0080】
上記ゼロ点補正部18は、イグニッションオンで且つ、自車両Vが安定して停車しているときには、ヨーレートセンサ30のゼロ点のずれ(オフセット)を高速で補正する。ここで、「自車両Vが安定して停車している」ときとは、例えば、自車両Vが停車し且つ、自車両Vが駐車場のターンテーブルや船など不安定なものに乗っていないときをいう。
【0081】
以上の如く構成された車両走行制御装置は、前方物体検知センサ31及び前方物体認識部10によって自車両Vの前方の先行車Wを認識し、その車間距離が予め設定された目標車間距離となるように追従制御を行う。
【0082】
以下、車両走行制御装置による車両走行制御について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0083】
始めに、ステップS1において、センサの方位ずれ検出制御が行われ、続いて、ステップS2において、上記方位ずれ検出に基づいてACC制御が行われる。
【0084】
まずは、ステップS1におけるセンサの方位ずれ検出制御について図12のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
ヨーレートのずれ検出制御ルーチンでは、まずステップSA1においてイグニッションオンか否かを判定する。イグニションオンである場合(YES)にはステップSA2へ進む一方、イグニッションオフである場合(NO)はステップSA18へ進む。
【0086】
ステップSA2においては、車速認識部11によって認識された車速から、自車両Vが停車しているか否かを判定する。走行している場合(NO)にはステップSA3へ進む一方、停車している場合(YES)はステップSA14へ進む。
【0087】
ステップSA3においては、車速認識部11によって認識された車速が10km/h以上であるか否かを判定する。10km/h以上の場合(YES)にはステップSA4へ進む一方、10km/h未満の場合(NO)はリターンへ進む。このように、10km/h未満の場合はリターンへ進むのは、超低速であると、自車両Vの前方の物体が固定物Fであるのか、移動物であるのかを認識することが難しくなるとともに、ヨーレートセンサ30の検出精度が低くなるからである。
【0088】
ステップSA4においては、前方物体認識部10によって、前方物体検知センサ31からの検知信号から、自車両Vの前方に物体が存在するか否かを認識し、この認識された物体の自車両Vに対する相対速度から、その物体が固定物Fであるのか、移動物であるのかを認識する。
【0089】
続くステップSA5においては、横移動量測定部12によって、前方物体検知センサ31からの検知信号から、前方物体認識部10によって認識された固定物Fが前方物体検知センサ31の検知周期一周期当たりに自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量LMを測定する。
【0090】
続くステップSA6においては、(x,y)のデータ数nが50個以上になったか否かを判定する。50個以上の場合(YES)にはステップSA7へ進む一方、50個未満の場合(NO)はリターンへ進む。
【0091】
ステップSA7においては、ずれ検出部13によって、xやyなどの値を算出する。具体的には、上記式(17)及び式(18)の左辺の変数に実測値を代入することによって、(x,y)を算出する。そして、算出した(x,y)と(x,y)のデータ数nから、
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
を算出する。さらに、最も近い固定物Fまでの距離Ld_minと最も遠い固定物Fまでの距離Ld_minを算出する。
【0092】
続くステップSA8においては、最も近い固定物Fまでの距離Ld_minから最も遠い固定物Fまでの距離Ld_minを引いた差が100m以上であるか否かを判定する。100m以上の場合(YES)にはステップSA9へ進む一方、100m未満の場合(NO)はリターンへ進む。つまり、100m未満の場合は、ずれ検出禁止部14によって、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止する。
【0093】
ステップSA9においては、ずれ検出部13によって、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出する。具体的には、ステップSA6において算出した算出値から、上記式(22)〜式(25)を用いて、傾きaと切片bを算出し、この傾きaと切片bの算出値から、上記式(19)及び式(20)を用いて、ヨーレート検出値のずれ量ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量θerrを算出する。
【0094】
続くステップSA10においては、ずれ検出部13によって、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrと前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrに対してフィルタ処理を行う。具体的には、ヨーレート検出値のずれ量の算出値ψerrをヨーレート検出値のずれ量の、前回のなまし処理値ψerr_filter(前回値)に、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の算出値θerrを前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、前回のなまし処理値θerr_filter(前回値)に1/8だけそれぞれ反映させるなまし処理を行う。
【0095】
続くステップSA11においては、ステップSA6において算出した算出値をリセットする(ゼロにする)。続くステップSA12においては、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量ψerr及びヨーレート検出値のずれ量θerrの算出回数が100回以上になったか否かを判定する。100回以上の場合(YES)にはステップSA13へ進む一方、100回未満の場合(NO)はリターンへ進む。
【0096】
ステップSA13においては、走行時学習完了フラグをセットする。その後、リターンへ進む。
【0097】
また、ステップSA2で停車していると判定されて進んだステップSA14においては、自車両Vの停車状態を判定する。
【0098】
続くステップSA15においては、自車両Vが安定して停車しているか否かを判定する。安定して停車している場合(YES)にはステップSA16へ進む一方、不安定に停車している場合(NO)はリターンへ進む。
【0099】
ステップSA16においては、ゼロ点補正部18によってヨーレートセンサ30のゼロ点のずれを補正する。続くステップSA17においては、停車時学習完了フラグをセットする。その後、リターンへ進む。
【0100】
また、ステップSA1でイグニッションオフと判定されて進んだステップSA18においては、停車時学習完了フラグ及び走行時学習完了フラグをリセットする。その後、リターンへ進む。
【0101】
次に、ステップS2におけるACC制御について図13のフローチャートを用いて説明する。
【0102】
ACC制御ルーチンでは、まずステップSB1において、−2deg≦前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量(すなわち、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の、今回のなまし処理値θerr_filter(今回値))≦2degを満たすか否かを判定する。つまり、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量の絶対値が上記所定値以下であるか否かを判定する。満たす(所定値以下の)場合(YES)にはステップSB2へ進む一方、満たさない(所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB8へ進む。
【0103】
ステップSB2においては、−3deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量(すなわち、ヨーレート検出値のずれ量の、今回のなまし処理値をψerr_filter(今回値))≦3deg/secを満たすか否かを判定する。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が上記第1所定値以下であるか否かを判定する。満たす(第1所定値以下の)場合(YES)にはステップSB3へ進む一方、満たさない(第1所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB8へ進む。
【0104】
SB3においては、−0.4deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量≦0.4deg/secを満たすか否かを判定する。つまり、ヨーレート検出値のずれ量の絶対値が第1所定値よりも小さい第2所定値以下であるか否かを判定する。満たす(第2所定値以下の)場合(YES)にはステップSB4へ進む一方、満たさない(第2所定値よりも大きい)場合(NO)はステップSB5へ進む。
【0105】
ステップSB4においては、停車時学習完了フラグから、停車時学習が完了しているか否かを判定する。完了していない場合(NO)にはステップSB5へ進む一方、完了している場合(YES)はSB6へ進む。
【0106】
ステップSB5においては、走行時学習完了フラグから、走行時学習が完了しているか否かを判定する。完了している場合(YES)にはステップSB6へ進む一方、完了していない場合(NO)はSB7へ進む。
【0107】
ステップSB6においては、車両走行制御部16によるACC制御を許可する。そして、ACCメインスイッチがオンされているときには、車両走行制御部16によってACC制御を行う。具体的には、進行路推定部15によって推定された自車両Vの進行路S上に存在する、自車両Vの前方の先行車Wとの車間距離が所定の目標車間距離に維持されるようにアクセル制御又はブレーキ制御を行って自車両Vを先行車Wに追従走行させる追従制御を行う。その後、リターンへ進む。
【0108】
また、ステップSB5で走行時学習が完了していないと判定されて進んだステップSB7においては、ACC制御制限部17によって、車両走行制御部16によるACC制御を縮退するとともに、作動信号を警報装置54に出力することにより、この作動信号を受けた警報装置54によって、車両走行制御部16によるACC制御を縮退した旨を自車両Vの運転者に報知する。その後、リターンへ進む。
【0109】
また、ステップSB1で−2deg≦前方物体検知センサ31の光軸向きのずれ量≦2degを満たさないと判定されて、又は、ステップSB2で−3deg/sec≦ヨーレート検出値のずれ量≦3deg/secを満たさないと判定されて進んだステップSB8においては、ACC制御制限部17によって車両走行制御部16によるACC制御を禁止するとともに、作動信号を警報装置54に出力することにより、この作動信号を受けた警報装置54によって、車両走行制御部16によるACC制御を禁止した旨を自車両Vの運転者に報知する。その後、リターンへ進む。
【0110】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、自車両Vのヨーレートを検出するヨーレートセンサ31と、自車両Vの前方の物体を検知する前方物体検知センサ31と、この前方物体検知センサ31により検知された物体が固定物Fであるのかを認識する前方物体認識部10と、この前方物体認識部10により認識された固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定する横移動量測定部12と、ヨーレートセンサ31により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、最小二乗法を用いて前方物体検知センサ31の向きのずれを検出するずれ検出部13とを備えるため、前方物体検知センサ31の向きのずれを検出することができる。
【0111】
ところで、ヨーレートセンサ31の検出値はヨーレートセンサ31の経時劣化や温度ドリフト、ノイズなどの影響を受けて変動するため、誤検出される場合がある。このため、追従制御を行っている場合、自車両Vの進行路Sを誤推定して、先行車Wが自車両Vの進行路Sに隣接する隣接路T上に存在しているにも拘わらず、自車両Vの進行路S上に存在していると誤判定する虞がある。
【0112】
ここで、本実施形態によれば、ずれ検出部13により、ヨーレートセンサ31により検出されたヨーレート検出値と横移動量測定部12により測定された横移動量とに基づいて、最小二乗法を用いて、前方物体検知センサ31の向きのずれに加えて、ヨーレート検出値のずれを検出することができる。
【0113】
ところで、前方物体認識部10により認識された最も離れた固定物F,Fの間の距離が短い場合、自車両Vから固定物Fまでの距離が偏り、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行えない虞がある。つまり、自車両Vから固定物Fまでの距離に広がりがある方が、その検出精度が高くなる。
【0114】
ここで、本実施形態によれば、前方物体認識部10により認識された最も離れた固定物F,Fの間の距離が所定距離よりも短いときに、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止部14を備えるため、ずれ検出部13による前方物体検知センサ31の向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を正確に行うことができる。
【0115】
また、ずれ検出部13により検出された前方物体検知センサ31の向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、前方物体検知センサ31に異常があるとして、前方物体検知センサ31の検知信号を用いることを禁止するACC制御制限部17を備えるため、自車両Vの前方の物体を誤検知することを確実に抑制することができる。
【0116】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、ずれ検出部13は、前方物体検知センサ31の向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出するが、前方物体検知センサ31の向きのずれだけ検出してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、固定物Fが自車両Vに対してその横方向に相対的に移動する横移動量を測定し、この横移動量とヨーレート検出値から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出しているが、これに限らず、例えば、固定物Fが自車両Vに対して相対的に移動する移動ベクトルを算出し、この移動ベクトルとヨーレート検出値から、前方物体検知センサ31の光軸向きのずれとヨーレート検出値のずれを検出してもよい。
【0118】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0119】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明したように、本発明に係るセンサの方位ずれ検出装置は、前方物体検知センサの向きのずれを検出することが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 クルーズコントロール
10 前方物体認識部(前方物体認識手段)
12 横移動量測定部(移動軌跡算出手段)
13 ずれ検出部(ずれ検出手段)
14 ずれ検出禁止部(ずれ検出禁止手段)
17 ACC制御制限部(使用禁止手段)
30 ヨーレートセンサ
31 前方物体検知センサ
F 固定物
V 自車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、
上記前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、
上記前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、
上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれに加えて、上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項3】
請求項2記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、最小二乗法を用いて上記前方物体検知センサの向きのずれ及び上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項4】
請求項3記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、上記ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段をさらに備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、上記前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段をさらに備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項1】
自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両の前方の物体を検知する前方物体検知センサと、
上記前方物体検知センサにより検知された物体が固定物であるのかを認識する前方物体認識手段と、
上記前方物体認識手段により認識された固定物が自車両に対して相対的に移動する移動軌跡を算出する移動軌跡算出手段と、
上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれを検出するずれ検出手段とを備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、上記前方物体検知センサの向きのずれに加えて、上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項3】
請求項2記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段は、上記ヨーレートセンサにより検出されたヨーレート検出値と上記移動軌跡算出手段により算出された移動軌跡とに基づいて、最小二乗法を用いて上記前方物体検知センサの向きのずれ及び上記ヨーレート検出値のずれを検出するように構成されていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項4】
請求項3記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記前方物体認識手段により認識された最も離れた固定物の間の距離が所定距離よりも短いときに、上記ずれ検出手段による前方物体検知センサの向きのずれ及びヨーレート検出値のずれの検出を禁止するずれ検出禁止手段をさらに備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のセンサの方位ずれ検出装置において、
上記ずれ検出手段により検出された前方物体検知センサの向きのずれ量の絶対値が所定値よりも大きいときに、上記前方物体検知センサの検知結果を用いることを禁止する使用禁止手段をさらに備えていることを特徴とするセンサの方位ずれ検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−68216(P2012−68216A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215624(P2010−215624)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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