説明

センサーの較正及び品質制御を実行する方法、並びに、該方法を実行する装置

【解決手段】
本発明は、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法を提供し、該方法では、較正及び品質制御サイクルが繰り返される。サイクルは、独立した参照材料を使用してセンサーの較正及び品質制御を実行する工程を備えている。本方法では、参照材料は、一つのサイクルで、品質制御工程で使用され、別のサイクルでは、較正工程で使用される。本発明は、上記方法を実行するための装置を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法、並びに、該方法を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テスト流体中のパラメータを測定するためのセンサーが様々な産業分野で幅広く使用されている。これらの産業の例には、食品産業、環境産業、並びに、医療及び臨床産業、特に臨床試験産業などがある。
【0003】
センサーの測定値が正確であることを確実にするため、センサーを定期的に較正することが必要とされている。この較正は、即ち、センサーの応答と、通常、1つ以上の参照材料に関する測定により求められた参照材料の所定のパラメータ値と、の間の対応関係を実験的に決定することである。
【0004】
多くの場合には、センサー性能の品質を定期的に制御すること、即ち、センサー測定値が正確及び/又は精度が高いことを実験的に確証することも要求されている。これは、通常、参照材料の測定パラメータ値を同じ参照材料の許容可能な範囲と比較することにより、なされる。
【0005】
食品産業において、較正及び品質制御のようなルーチンは、例えばミルク品質を評価するためのセンサーに対して実行される。医療及び臨床産業では、そのような較正及び品質制御のルーチンは、例えば生理学的な流体中のパラメータを決定するためのセンサーに対して実行される。
【0006】
米国特許番号6,171,865B1は、サンプル分析中に、インジケータ及び参照流れが流れるところの層流チャンネルを備える参照センサーシステムを開示している。これに記載されている方法では、別個の較正流れが、システムを較正するため使用される。参照流れは、制御流れ及び内部標準流れの両方として機能することができる。即ち、参照流体に関する測定値が最初に品質制御で使用され、該測定値が許容可能な範囲内にある場合、これと同じ測定値を内部標準測定値として使用することができる。同様に、DE4104302が、生理学的流体中のパラメータを決定するためのセンサーの品質制御を実行し該センサーをオプションで較正する方法を開示している。本方法によれば、同じ体積の参照溶液を、測定細胞を制御し、必要とあらば較正するため使用することができる。その利点は、ヘマトクリット値を決定するための測定細胞及び生理学的電解質を決定するための細胞の両方において同じ参照溶液を使用することができるということである。しかし、当該方法では、同じ体積の参照溶液が、センサーの較正及び品質制御の両方に対して使用される。
【0007】
上記文献のいずれにおいても、センサーの品質制御のための参照材料を使用し、該品質制御が、別の段階では、センサー性能の独立した評価を維持する仕方でセンサーの較正のために使用されることに対して、何らの示唆もヒントも与えられていない。
【0008】
較正及び品質制御ルーチンを実行するための参照材料の一般的な要請は、センサーの品質制御で使用される参照材料が、較正のため使用される参照材料とは異ならなければならず、これによって該品質制御は、品質制御処置がセンサー性能の独立した評価を提供するということを確実にすることを基礎としているということである。
【0009】
臨床及び医療産業では、センサーが定期的な較正処置に加えて品質制御処置をなされるということが法律により要求されている。品質制御処置は、使用されたセンサーがその測定範囲全体で信頼性の高いデータを提供することができるということを任意の時刻で実証することができるのに十分に頻繁に且つ十分広いパラメータ範囲で実行されなければならない。このことは、センサーが、センサーの通常の較正システムから独立したシステムを用いてチェックされなければならないことを意味している。
【0010】
従って、連続品質制御サイクルでは、センサーの品質が、様々に異なるパラメータレベル(しばしば、ロー、ミドル及びハイとして表される)を表す幾つかの参照材料を使用して制御されるということが推奨される。
【0011】
同じ参照材料は、ある時刻で幾つかの異なるパラメータを表すことができる。このようにして較正及び/又は品質制御を、たった一つの参照材料を使用して同時に幾つかのセンサーに関して実行することができる。一つのパラメータの一つのレベルを、他のパラメータの任意のレベルと組み合わせることができる。そのような参照材料の一例が、生理学的液体に関する測定用の電子化学的測定装置の品質制御処置で使用するための品質制御液体を開示している米国特許番号5,910,445号で見出される。
【0012】
更には、米国特許番号4,701,417号は、脂質診断で使用するための血清の較正及び制御法を開示している。血液分析器内のセンサーを較正及び/又は品質制御するための解決法は、例えば、米国特許番号5,422,278号及び5,910,445号に開示されている。全ての場合において、較正のための参照材料及び品質制御のための材料は、参照材料の2つの別々のグループとして説明されている。
【0013】
血液分析のための自動装置において、夫々のセンサーの較正及び品質制御における少なくとも5つの異なる参照材料を使用することが標準的な処置である。その一例が、ラジオメータ・メディカルA/Sにより製造されたABL(R)725血液分析器である。この装置では、幾つかの異なる血液パラメータが決定される。それは、2つの較正溶液コンテナを備え、該コンテナは、装置内に一体化され、1ヶ月に約1回更新される必要がある。
【0014】
ABL(R)725血液分析器では、アンプルから参照溶液を吸引することにより、特定の時間で特別に訓練されたオペレータにより手動で品質制御を実行することができる。アンプルを振り動かして破壊開放した後に、入口に取り付けるためのアダプターが該アンプルに備え付けられ、そのとき、自動品質制御処置が開始される。オペレータが測定結果を得たとき、彼又は彼女は、その結果が、アンプルの挿入に関して与えられる一定の許容範囲内に含まれるか否かを決定しなければならない。少なくとも3つの異なるパラメータレベルの参照材料が使用されることが推奨される。
【0015】
代替例として、ABL(R)725血液分析器には、当該装置の品質制御のためのアンプルから制御流体を自動吸引するためのモジュール(AutoCheck(R))が備えられてもよい。このモジュールでは、オペレータの操作が減少され、当該装置からホルダーを取り外し、ホルダーにアンプルを載せ、それを再挿入する各工程へと減少される。これは、1週間のうち約1回なされなければならない。オペレータは、彼又は彼女がホルダーに載せる各レベルのアンプルの数に注意を払う必要がある。
【0016】
かくして、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する既知の方法では、実質的な数の異なる参照材料が要求される。また、既知の方法は、特別に訓練されたオペレータが品質制御ルーチンを実行するか又は少なくとも1週間に一度、品質制御流体の自動吸引のためのアンプルをホルダーに載せることを要求している。
【特許文献1】米国特許番号6,171,865B1
【特許文献2】DE4104302
【特許文献3】米国特許番号5,910,445号
【特許文献4】米国特許番号4,701,417号
【特許文献5】米国特許番号5,422,278号
【特許文献6】米国特許番号5,910,445号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の一つの目的は、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法を提供することであり、該方法によれば、センサーの較正及び品質制御において同じ精度及び正確さをなおも維持すると共に、品質制御で使用される参照材料が、品質制御が基づいている較正において使用される参照材料とは異なっているという要求をなおも充足しつつ、参照材料の数を減らすことができる。
【0018】
本発明の別の目的は、テスト流体中のパラメータを決定するための装置を提供することであり、該装置は、該装置内に備えられるセンサーの較正及び品質制御を実行するため本発明に係る方法を用いることとする。
【0019】
本発明の更なる目的は、センサーの品質制御処置の自動的操作を可能にする方法及び装置を提供することである。これにより、要求されたメンテナンス、並びに、そのような装置を操作するため特別に訓練されたオペレータの必要性を最小限に抑える。更には、人間のエラーのおそれも最小限に抑える。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、本目的は、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する次の方法を提供することにより達成される。本方法は、較正及び品質制御サイクルが繰り返され、一つのサイクルは、パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用してセンサーの較正を実行し、該パラメータの、該較正工程におけるものとは別のパラメータレベルを表す参照材料を使用して較正されるようにセンサーの品質制御を実行し、少なくとも2つのサイクルに亘って上記工程を繰り返す、各工程を備えることを特徴とし、該方法では、一つのサイクルにおいて、参照材料が品質制御工程で使用され、較正工程では別のサイクルが使用された。
【0021】
本発明の本実施形態に係る方法は、較正及び品質制御の品質を減じることなく且つ較正システム及び品質制御システムの間の独立性をなおも維持しつつ、較正及び品質制御の両目的のため同じ参照材料を使用することにより、参照材料の使用数を減少させることができるという利点を有する。唯一の要請は、一つの同じ参照材料が、品質制御工程、並びに、該品質制御が基づく較正工程の両方では使用されないということである。
【0022】
参照材料の数の減少は、参照材料のための格納空間を減少させることを可能とする。この空間が、センサーが備え付けられた装置の内部にある場合、装置のサイズを小さくすることができる。
【0023】
センサーの品質制御処置の完全自動操作は、そのような装置を操作するため特別に訓練されたオペレータの要請並びに人間の誤差のリスクが、軽減されるという利点を有する。
分析されるべきテスト流体は、パラメータを決定することが望まれる任意流体であってもよい。その例として、例えばビール、ミルク及び肉加工処理流体等の食品処理流体や、全血、血漿、血清、脳脊髄流体、唾液及び尿等の生理学的流体等が挙げられる。
【0024】
センサーが特有に関連するパラメータは、関心のある任意のパラメータであってもよい。例えば、粘性率、密度、圧力、伝導度及び表面張力等がある。
特別に関心のある事項には、例えばLi、Na、K、Ca2+、Mg2+、Cl、HCO及びNH(NH)等の電解質のpHや濃度、分解ガス、特に酸素及び二酸化炭素(分圧の形態、例えばρO、ρCOで便利に報告される)の濃度、ヘマトクリット(Hct)、例えばオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、カルボキシヘモグロビン、サルフヘモグロビン及び胎児性ヘモグロビン等のヘモグロビン及びヘモグロビン誘導体の濃度、例えばグルコース、クリアチニン、クリアチン、尿素(BUN)、尿酸、乳酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、リン酸塩、タンパク質、ビリルビン、コレステロール、トリグルセリド、フェニルアラニン及びチロシン等の新陳代謝の因子の濃度、例えば乳酸脱水素酵素(LDH)、リパーゼ、アミラーゼ、コリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノ基トランスフェラーゼ(ASAT)、及び、クレアチニンキナーゼ(CK)等の酵素の濃度、並びに、例えば抗体及びヌクレオチドフラグメント等のリガンドの濃度等の生理学的流体のパラメータがある。
【0025】
本文中で使用されるように、「センサー」という用語は、任意種類の装置を指しており、本願の文脈で検出部と称されるその一部は、次の工程のうちいずれかを可能としている。即ち、関心のある化学的種と選択的に相互作用し、これにより、当該化学的種の所望の特性の関数である良好に画定された測定可能な応答を生成し、かくして所望の特性が該応答から導出可能となる工程か、又は、流体のバルク属性に応答し、該応答は特有の化学的種に関して選択的ではないが、液体中の1つ以上の化学的種の総濃度の関数であり、かくして所望の特性が該応答から導出可能となる工程のいずれかである。
【0026】
関連する種類のセンサーは、前述したパラメータのうち任意のものを決定するように構成されたセンサーである。例えば、選択されたイオン化学的種の濃度の固有測定のためのイオン選択性電極等の水性媒体で使用するためのセンサーであって、その応答が電位の形態にある電位差センサー、酸素の分圧を決定するためのセンサーであって、その分圧が電流の形態にある電流測定センサー、特定の化学的種に対する色応答を生成するセンサーであって、その応答が反射率又は透過率を使用して分光学的に測定され、該色応答は、色強度か又は色強度の減衰である光学センサー、圧電センサー、温度センサー、圧力変化センサー、音波センサー、酵素反応を用い、例えば上述したセンサー種類で用いられる原理の例である任意の関連する物理原理に基づいて応答を発生する、酵素をベースとしたセンサーであって、その例は、グルコース、尿素、クレアチニン、ダクテート等の新陳代謝生成物の濃度を測定する際に使用するための酵素ベースのサーミスター及び酵素ベースの電流センサーである、酵素ベースセンサー、並びに、親和性対、例えば抗原/抗体対又は2つの相補的なヌクレオチド破片の一方の片割れを含み、他方の片割れが関心のある化学的種である、親和力センサーなどがある。
【0027】
センサーは、任意の設計であってもよい。従って、小型化されて平坦であるセンサー及び従来のセンサーの両方は、本発明に係る方法により、適切に較正され、品質制御される。
【0028】
センサーは、一般に、検出部の表面で発生する変化に伴うエネルギーの形態を、電気エネルギー又は電磁放射エネルギーへと変換する変換機能を実行し、これにより、そのセンサー応答は電気信号又は光学信号の形態で記録可能となる。
【0029】
測定されたセンサー応答は、1点測定値、僅かにばらついた信号の平均値、過渡応答、又は、過渡応答に基づく推定値のいずれであってもよい。幾つかの応答を得て、それらの平均値を使用することが好ましい。
【0030】
センサーの「較正」は、センサー応答と参照材料の所定のパラメータ値との間の対応関係を実験的に決定することとして理解されるべきである。通常、該対応関係は、所定のパラメータ値を有する1つ以上の参照材料に対するセンサー応答を得、それらの間の対応関係を決定することにより見出される。
【0031】
上記対応関係は、非常に頻繁に、所定のパラメータ値と、対応するセンサー応答とから計算された回帰関数として表される。その代わりに、測定結果が、目盛りを付けられたスケールで直接示される場合、目盛り付きスケールを、参照材料の所定のパラメータ値を示すように移動してもよい。
【0032】
上記較正で決定された対応関係は、テスト流体中のパラメータが決定されるべきときに使用される。第1に、テスト流体へのセンサー応答が得られる。次に、センサー応答は、決定された対応関係を使用することにより測定されたパラメータ値へと変換される。
【0033】
当該変換は、測定されたパラメータ値を提供するためのアルゴリズムを備えるプログラムされた制御手段によりもたらすことができる。該アルゴリズムは、各較正工程で調整される。
【0034】
任意数の参照材料が較正工程で使用されてもよい。センサーの信頼性の高い較正を得るため要求される参照材料の数は、センサーの性質と、正確さ及び/又は精度に対する要請の性質とに依存している。かくして、較正工程において1乃至5つの異なるパラメータレベルを表す参照材料を使用することが好ましい。2つ又は3つの異なるレベルは、多くの例においてより好ましい。ほとんどのセンサーに対して、これは、十分に信頼性の高い結果を提供すると同時に異なる参照材料の数を制限するからである。例えば多くのバイオセンサー等のように、センサーによっては、十分に信頼性の高い結果を得るために4又は5つの参照材料を使用することが要求される。
【0035】
1つより多い参照材料を使用して一度センサーを初期に較正するだけで十分とすることができる。任意の引き続く較正を、一つだけの参照材料を使用して実行してもよく、該参照材料は、センサー応答と所定パラメータ値との間の前記決定された対応関係を修正するため単に使用されるだけである。
【0036】
しかし、多くのセンサーは、定期的に、しばしば、少なくとも2つのパラメータレベルを表す参照材料を使用して較正されることを必要としている。2つより多いパラメータレベルルを使用する参照材料を使用する較正は、場合によっては、より信頼性の高い較正を提供することができる。例えば、酸素濃度モジュールは、しばしば1点で較正され、多くのイオン選択性センサーは2点で較正され、多くの酵素センサーは3点で較正される。
【0037】
センサーの較正で使用される参照材料の一つは、空の部分であってもよい。即ち、それはゼロのパラメータレベルを表すことができる。
センサーの「品質制御」は、センサーの測定値が正確で及び/又は精度が高いという実験的検証として理解されるべきである。通常、そのような検証は、参照材料の測定されたパラメータ値がその許容範囲内にあるか否かを決定することにより実行される。参照材料の測定されたパラメータ値は、上述されたような較正上の対応関係を使用してセンサー応答値を測定されたパラメータ値へと変換することにより得られる。次に、測定されたパラメータ値が参照材料の許容範囲内にあるか否かが決定される。
【0038】
許容範囲は、一般には、所定のパラメータ値付近に集められる。当該範囲の限界は、例えば、センサーのばらつき、品質制御及び較正の両方に対する参照材料の所定のパラメータ値を最小にするときのばらつき、及び/又は、正確さ及び精度の要請に依存している。
【0039】
「較正及び品質制御サイクル」は、当該較正で決定される対応関係が品質制御の参照材料へのセンサー応答を測定されたパラメータ値へと変換するためのサイクルで使用されるところの一つの較正及び一つの品質制御として理解されるべきものである。
【0040】
当該方法では、全ての参照材料を、各々の較正及び品質制御サイクルで使用することができる。全部で2より多くの参照材料が当該方法で使用される場合、全ての参照材料を各々の較正及び品質制御サイクルで使用してもよく、或いは、全部の参照材料の中から選択したものを、各サイクルで使用することができる。唯一の要請は、参照材料の合計数が、少なくとも所望される品質制御レベルの数に等しいということである。
【0041】
較正及び品質制御の間の時間間隔や2つのサイクルの間の時間間隔のいずれに関しても要請は存在しない。センサー及び装置の性能、並びに、参照材料の品質を制御することが望ましい場合、品質制御は、好ましくは、該品質制御が基づいている較正の後、かなり短い時間内で実行されるべきである。センサーの特性変化を所定期間内で制御することが望ましい場合、好ましくは、品質制御が基づいている較正は、該期間の開始時に実行され、品質制御は、当該期間の終了時に実行されるべきである。
【0042】
較正及び品質制御の一つのサイクルと、較正及び品質制御の別のサイクルとの間で、増補の較正及び/又は品質制御を、同じか又は異なる参照材料に関して実行してもよい。
この文脈では、「別のサイクル」とは、問題とするサイクルの前又は後に任意数のサイクルで実行されるサイクル、即ち、以前か又は後に続くサイクルを指している。
【0043】
本方法の個々の工程が実行される順番は、重要ではない。唯一の要請は、品質制御が基づいている較正の対応関係が、品質制御の測定されたパラメータ値を得ることができる前に得られなければならないということである。
【0044】
「参照材料」は、厳密なパラメータ値を表す材料である。参照材料は、長期間に亘って一定値を保持することが好ましい。同じサイクルで使用するための参照材料を、センサー性能の独立した評価を提供するため互いから独立して準備しなければならない。
【0045】
上述のような参照材料は、「所定のパラメータ値」を持つのが好ましい。これは、パラメータ値それ自体の実験的決定であってもよく、又は、測定方法の様々な系統的誤差を考慮するため同じく調整されてもよい。測定結果に系統的に影響を与えるそのような誤差の例は、テスト流体や、該テスト流体を分析する手段である装置及びセンサー、並びに、センサー表面近傍の残余物や、平衡がセンサー表面で得られる前に実行された測定の性質である。
【0046】
較正を実行する手続きは、品質制御のそれとは逸脱し得るので、一つの参照材料が、品質制御で使用するための一つの所定のパラメータ値と、較正で使用するための別の所定のパラメータ値と、を持つことができる。これらの2つの値は、異なる系統的誤差を考慮している。
【0047】
参照材料は、パラメータ「レベル」を表すか又は該レベルを有するものとして言及されてもよい。このレベルは、与えられた参照材料のおおよそのパラメータ値として理解されるべきであり、厳密なパラメータ値は、当該レベルの近傍にある。
【0048】
参照材料は、流体又は固定形態にあってもよく、前述されたパラメータか又はその任意の擬似的なパラメータを含んでいてもよい。流体形態の場合、参照材料は、密封されたコンテナで提供されるのが好ましい。
【0049】
流体を分析するため設計された装置では、参照材料は、例えば液体、ガス又はその組み合わせ等の流体であるのが好ましい。
参照材料が流体である場合、当該流体は、すすぎ作用を有する組成分を含んでいてもよい。かくして、別個のすすぎ又は洗浄溶液を省いたり、又はより稀にしか使用しないで済むようにできる。
【0050】
光学センサーによっては、参照材料は、色誘導材料を含む、煉瓦又はフィルターとすることができる。
テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法は、典型的には、多数の較正及び品質制御のサイクルを備えている。このとき、当該サイクルの少なくとも1つにおいて、センサーの較正を実行する工程は、パラメータの第1のパラメータレベルを表す第1の参照材料に対応するセンサー応答を得る工程を備え、センサーの品質制御を実行する工程は、パラメータの第2のパラメータレベルを表す第2の参照材料に対応するセンサー応答を得る工程を備え、第1のパラメータレベルと第2のパラメータレベルとは異なっている。当該サイクルの少なくとも別のサイクルにおいて、品質制御を実行する工程は、第1の参照材料に対応するセンサー応答を得る工程を備えている。
【0051】
完全な較正及び品質制御ルーチンでは、サイクルは、全ての参照材料が、センサー性能の品質制御に対して少なくとも一度使用されるまで繰り返される。かくして、センサーの性能は、該センサーのより信頼性の高い品質制御を提供する一つのルーチンにおいて全ての異なるパラメータレベルで制御される。
【0052】
好ましくは、このルーチンは、系統的に繰り返され、当該方法を自動的に実行するのにより適したものにする。
上記較正工程で決定された対応関係は、センサーの品質制御を実行するための第1の較正とすることができる。引き続いて、第2の較正を、第1の較正及び品質制御で使用されたものと同じ参照材料に基づいて同じサイクルで実行することができる。第2の較正の対応関係を、テスト流体中のパラメータが決定されるべきときに使用することができる。
【0053】
上記工程を実行することにより、参照材料の合計数を増大させることなく第1のものより多くの較正点を備える第2の較正が得られる。そのような較正は、場合によっては、例えば多数の血液測定において、第1の較正よりも少ないばらつきで測定されたパラメータ値を提供する。
【0054】
第2の較正を、様々な方法で実行することができる。一実施例では、サイクルは、第1の較正工程及び品質制御工程で使用された参照材料に対するセンサー応答を取得し、品質制御工程で使用される参照材料に対する更なるセンサー応答を取得し、第1の較正工程で得られたセンサー応答並びに得られた更なるセンサー応答に基づいて第2の較正を実行する、各工程を備えている。本実施形態は、品質制御測定を実行する手続きが、較正測定を実行する手続きとは異なるのが好ましい。
【0055】
別の実施形態によれば、第1の較正は、第1の較正工程及び品質制御工程で得られるセンサー応答に基づいている。かくして、第2の較正を実行する工程は、センサー応答と所定のパラメータ値との間の対応関係についての第2の計算を実行する工程のみを備え、測定の第2のラウンドを備えていない。
【0056】
第2の較正を、参照材料の前述した周期的使用無しにセンサーの較正及びセンサーの品質制御へと実行する工程の導入は、同じ参照材料が第1の較正で使用されたように第2の較正で使用される場合、参照材料の使用を減少させることができる。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、本目的は、テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する、次の工程を備える方法を提供することにより更に達成することができる。即ち、本方法は、パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用してセンサーの第1の較正を実行し、前記較正工程のものではない、該パラメータの別のパレメータレベルを表す別の参照材料を使用して較正されるようにセンサーの品質制御を実行し、第1の較正及び品質制御を実行する工程で使用されたときと同じ参照材料を使用してセンサーの第2の較正を実行する各工程を備える。
【0058】
本発明の実施形態に係る方法は、第1の較正及び品質制御目的で使用されたときと同じである第2の較正における参照材料を使用することにより、較正の及び品質制御の品質を落とすこと無く、なおも較正システムと品質制御システムとの間の独立性を維持しつつ、参照材料の数を減らすことができるという利点を有する。改善された較正は、増補の参照材料を使用すること無く得られる。
【0059】
参照材料は、1つより多いパラメータを表すことができる。このことは、テスト流体の一つのサンプル中の幾つかの異なるパラメータを決定し、かくして一つより多いセンサーを同時に較正又は品質制御することが望ましい場合には、利点となる。参照材料が様々な関連レベルで異なるパラメータを表す場合には、全てのセンサーを一作業で一つのレベルで較正又は品質制御することが可能となる。多くの自動分析器は、同時的な多分析決定を実行する。その一例が、例えば上述したABL725(R)等の血液分析器である。
【0060】
参照材料のパラメータレベルの全範囲は、本方法においてセンサーの特有の測定範囲を事実上網羅するべきである。これは、測定が当該範囲で信頼性が高いことを確認するためである。
【0061】
また、様々な参照材料の夫々のパラメータレベルの全範囲内の分布は、品質制御の信頼性に影響を及ぼし得る。当該較正で決定された対応関係が、センサー応答を較正範囲の外側にある測定パラメータへと変換するため使用される場合、当該決定の不確実性は、測定されたパラメータ値又は所定のパラメータ値が較正値から離れるほど、大きくなる。
【0062】
一サイクルにおいて、品質制御が基づいている較正を実行するため使用される参照材料のパラメータレベルが較正範囲を画定し、且つ、当該サイクルで使用される全ての参照材料のパラメータレベルが全範囲を画定する場合、該較正範囲は、上記全範囲の少なくとも四分の一であるのが好ましい。該較正範囲は、上記全範囲の少なくとも三分の一であるのが特に好ましい。
【0063】
本発明に係る方法は、血液パラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行するのに特に適している。それは、臨床分野における較正及び品質制御に対する法的要請を充足し、信頼性が高く、且つ、オペレータからの制限されたメンテナンスだけで済み、その日の特定の時間に拘束されないからである。参照流体のコンテナは、1ヶ月に1又は2回更新するだけで十分である。
【0064】
更には、コンテナはカートリッジ内に設けられてもよく、かくして、該コンテナの選択に関して又は該コンテナの当該装置への正確な接続に関する事前の知識を有するオペレータ無しに、該コンテナを更新することができる。
【0065】
かくして、本発明の好ましい実施形態によれば、決定されるべきパラメータは、例えばpH,ρCO及びρO等の血液パラメータ、例えばLi、Na、K、Ca++、Mg++、Cl、HCO及びNH等の電解質、ヘモグロビン、ヘモグロビン誘導体、Hct、又は、ビルリビン、グルコース、ラクテート若しくはクレアチニン等の新陳代謝因子等である。
【0066】
本発明の別の態様によれば、テスト流体中のパラメータを決定するための装置が提供される。本装置は、テスト流体中のパラメータを検知してセンサー応答を提供するセンサーと、前記パラメータの少なくとも2つの異なるパラメータレベルを表す参照材料と、該装置の機能を制御するためのプログラム可能な装置とを備え、該プログラム可能な装置は、本発明の方法に従ってセンサーの構成及び品質制御を実施する方法の実行を制御する。
【0067】
本発明に係る装置は、較正及び品質制御のものと同じ正確さ及び精度を維持しつつ、なおも較正に基づく品質制御で使用される参照材料が同じ較正で使用される参照材料とは異なるという要求を充足すると共に、参照材料の数を減らすことができる。
【0068】
参照材料の数の減少は、参照材料のための格納空間を減少させることを可能にする。本装置の内部では、格納要求も減少させることができ、かくして、本装置のサイズを小さくすることができる。
【0069】
更には、本発明に係る方法は、本装置に、完全自動品質制御ルーチンを提供し、かくして、メンテナンス要求を最小にすると共に、そのような装置を作働するための特別に訓練されたオペレータのための必要性を最小限に抑える。
【0070】
「パラメータ」、「テスト流体」、「センサー」及び「参照材料」という用語は、上記に説明されたのと同じ意味を持つものとして理解されるべきである。
センサーの「応答」は、検知表面で発生する変化に伴って形成されたエネルギー、又は、従来のコンバータにより記録可能である電気エネルギー若しくは電磁放射エネルギーへと変換されたエネルギーとして理解されるべきである。
【0071】
本装置の機能及び作用を実行する「プログラム可能なデバイス」は、例えば、マイクロプロセッサ若しくは並列プロセッサー、メモリバス、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、リードオンリーメモリ(ROM)を備えていてもよい。プロセッサーは、プログラム可能なデバイスの作動を制御する一般目的のデジタルプロセッサであってもよい。メモリから引き出された指令を使用して、プロセッサーは、入力データや、出力及び表示データの受け取り及び操作を制御する。しかし、当業者は、本発明の方法及びシステムを、様々なハードウェア形態で有利に実施させることができる。
【0072】
制御するため該デバイスをプログラム可能である本装置の機能及び作用は、例えば、テスト流体及び参照材料にセンサーをさらすと共に、センサー応答を記録、処理するための手段の制御を含んでいる。センサー応答の処理は、例えば、較正材料に対応する記録されたセンサー応答に基づいて較正対応関係を決定し、品質制御に対応する記録されたセンサー応答を該較正対応関係と比較し、決定された較正対応関係に基づいて記録されたセンサー応答から測定パラメータ値を取得する、各工程を備えていてもよい。かくして、プログラム可能なデバイスは、測定パラメータ値を決定するための手段を備えるのが好ましい。
【0073】
センサーのセンサー応答を測定パラメータ値へと処理するために、本装置は、センサー応答を増幅、変換するためのオペアンプ、並びに、信号の処理を実行するための適切なアルゴリズム及びソフトウェアを備えるのが好ましい。センサー応答を増幅するための増幅器の選択は、本来的にはセンサーの性質に依存している。増幅されたセンサー応答を測定パラメータ値へと変換するためのアルゴリズムは、測定方法における分散的な系統的誤差を考慮に入れた、較正及び適切な調整で決定される対応関係を備えていてもよい。それらの例は上記に与えられている。
【0074】
本発明に係る装置は、全体として、センサーをテスト流体にさらすための手段と、センサーを参照材料にさらすための手段と、応答を得るための手段と、測定パラメータ値を記録するための手段と、を更に備える。
【0075】
「センサーをテスト流体にさらすための手段」は、例えば、テスト流体を本装置内に導入するための入口手段を備えている。入口手段は、例えば注射器、毛細管又は特別に設計されたサンプルコンテナ等のサンプルコンテナの出口開口を受け入れるように設計されてもよい。
【0076】
センサーをテスト流体にさらすための手段は、テスト流体のサンプルを装置内に吸引するための入口プローブを更に備えていてもよい。代替例として、入口は、測定チャンバーに特設導くことができる。入口又は入口プローブは、導管と緊密に流体連通されていてもよい。該導管は、測定チャンバーを備えていてもよい。該相関は、該導管を介した流体の輸送のための流体密封経路を提供する配管若しくはチャンネルであるのが好ましい。流体は、ポンプを使って導管を介して輸送することができる。
【0077】
本センサーは、導管内か又は測定チャンバー内のいずれかで直接テスト流体にさらされている。センサーのテスト流体への露出は、センサー表面とテスト流体との間の直接的な物理的接触であっても、又は、導管又は測定チャンバーの壁がテスト流体から検知表面を分離するように、間接的な接触であってもよい。光学的な検出方法が用いられた場合、壁のこの部分は、この壁の一部分は、使用される種類の放射に対して透明であるべきである。
【0078】
参照材料は、上述された性質を持っていてもよく、例えば、上述されたパラメータの任意のものを含んでいてもよい。合計で2又は3つの参照材料が好ましいが、センサーを較正するため1つ以上の更なる参照材料が含まれていてもよい。
【0079】
「センサーを参照材料にさらすための手段」は、「センサーをテスト流体にさらすための手段」と同じであってもよい。しかし、参照材料を、その格納位置から、センサー表面と参照材料との間の作働的連通を提供する位置へと移動することができる機械的装置を更に備えるべきである。参照材料が流体である場合、その装置は、ポンプであるのが好ましく、該参照材料が固体である場合には、その装置は、ロボットアーム等であるのが好ましい。
【0080】
「測定パラメータを記録するための手段」は、例えばスケール、ディスプレイ、プリンター、又は、処理手段から得られた測定パラメータ値を記録するデジタル音声であってもよい。
【0081】
本装置は、1つより多くのセンサーを備えることができる。各々のセンサーは、上述したパラメータの各々一つに対して特有のものであるのが好ましい。
センサーは、小型化された平面センサーであってもよい。これらは、全てのセンサーを同時に更新するためカセット内に配置されてもよい。
【0082】
テスト流体及び/又は参照流体と接触している、上記のような装置の一部は、しばしば、本装置の「湿り区分」に属するものとして参照される。この湿り区分は、本装置と一体の部分であってもよく、又は、例えばカセット等の別個のユニットの形態で提供されてもよい。該カセットは、幾つかの測定チャンバー及び/又はセンサーを備えていてもよい、
好ましくは、全ての参照材料は、カートリッジ内に配置されているのがよい。かくして、一つの参照材料を一回毎に変更する代わりに、2つの以上の参照材料を一回の作業で更新することができる。これによって、特に参照材料がコンテナ内に提供された流体である場合には、参照材料の更新がよりユーザーフレンドリーなものとなる。該カートリッジは、消費コンテナを備えていてもよく、該消費コンテナ内には、使用済みの参照材料及びテスト流体の使用済みサンプルが廃棄される。
【0083】
テスト流体のパラメータレベルが決定されるべきとき、テスト流体のサンプルは、上述したような装置内に導入され、サンプルの分析は自動的に実行される。記録された測定パラメータ値は、本装置から得られる。
【0084】
本発明に係る装置は、血液分析器であるのが好ましい。
本発明に係る方法及び装置は、例えば、工業実験場、診療所又は病院、研究センター又は大学を始めとした多数の異なるセッティングで使用することができる。そのようなセッティングにおける本装置の通常の使用は別として、本発明に係る方法は、本装置の製造、試験、販売、及び、設置の間に実行されてもよい。
【0085】
以下、本発明を、図面を参照しつつ次の実施例を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0086】
本発明の好ましい実施例によれば、センサーの較正及び品質制御の方法は、図1に示されるように湿り区分を有する血液分析器に適用される。
図1では、入口モジュール1は、テスト流体の当該装置へのアクセスを提供する。入口モジュール1は、注入器のルアーを受け入れるための円錐部と、毛細管を受け入れるための円錐部とが設けられた入口ガスケット2を備えている。チャンネルが、これらの円錐部からガスケット2を通って入口プローブ3へと導いている。テスト流体を含んだ注入器が入口ガスケット2に接続された場合、入口プローブ3は、注入器、及び、当該装置内に吸引されたテスト流体のサンプル内に移動され得る。入口ガスケット2には、こぼれたサンプルを消費コンテナ10内に収集するための配管4及びポンプ5が更に設けられている。
【0087】
サンプルは、測定区分の後に配置されたポンプを用いて配管6を介して測定区分7へと輸送される。該ポンプは、ポンプ8として表されている。測定区分7は、37℃の温度に自動調節されている。測定区分7は、pH、CO、O、Cl、Ca、Na、K、グルコースを各々選択的に検出する各センサー、ラクテートセンサー、参照センサー、及び、酸素測定センサーを備えている。
【0088】
分析後には、サンプルは、ポンプ8を用いて配管9を介して消費コンテナ10へと輸送される。
湿り区分は、参照流体コンテナ11、12又は13を収容する液体カートリッジ14、配管15、ポンプ16、及び、空気入口17を備える。
【0089】
較正又は品質制御測定が実行されたとき、参照流体のサンプルは、ポンプ16及び8を用いて、液体カートリッジに収容された各々の参照流体コンテナ11、12又は14の一つから配管15を介して測定区分7へと輸送される。分析後には、サンプルは、上述されたように消費コンテナ10へと輸送される。
【0090】
各測定の後、すすぎ処置が実行される。測定区分7は、すすぎ作用を備えた成分を更に含む参照流体11、12又は13のうち一つを用いて洗浄される。すすぎ処置が実行されるとき較正溶液の流れに空気の泡を導入するため、空気入口17が使用される。これは、より良好なクリーニング作用を提供する。
【0091】
次の例では、参照流体が米国特許番号5,910,445号で記載されているように準備されるが、これに限定されるものではない。その構成は、次の通りである。
【0092】
【表1】

上記構成は、表2で以下の通りに与えられるように較正目的のための所定のパラメータ値を参照流体に提供する。
【0093】
【表2】

表2: 較正目的のための参照流体の所定のパラメータ値(PPV)

品質制御目的のためのこれらの参照流体の許容可能な範囲は、以下の通りである。
【0094】
【表3】

表3: 品質制御目的のための参照流体の許容範囲(PPV)

較正及び品質制御の第1のサイクルは、3つの参照流体Ref.1、Ref.2、Ref.3の各々の分析を実行することにより開始される。
【0095】
測定チャンバーを備える湿り区分は、湿り区分の体積の約2倍に対応する量で、参照流体1を用いて洗浄される。湿り区分は再び充填され、センサー測定値が30秒間に亘って秒毎に記録される。これは、較正測定(Cal)である。
【0096】
上記のことは、参照流体Ref.2に関して繰り返される。
次に、湿り区分は、参照流体Ref.3のサンプルを用いて一旦充填され、センサー測定値が30秒間に亘って秒毎に記録される。湿り区分は、湿り区分のおおよその体積に対応する量の参照流体Ref.3で洗浄される。湿り区分は、再び、Ref.3で充填され、センサー測定値は、別の30秒間に亘って秒毎に記録される。当該測定の第1の測定は、品質制御測定(QC)であり、第2の測定は、較正測定(Cal)である。
【0097】
約8時間後、上記サイクルは、二重測定がRef.2に関して実行されることを除いて繰り返される。別の8時間後には、上記サイクルは、二重測定がRef.1に関して実行されることを除いて繰り返される。
【0098】
次では、パラメータpHに関してのみ当該例が説明される。しかし、他のパラメータの任意の測定結果を、同様に処理することができる。pHの得られた測定パラメータ値は、次の表の通りとなる。
【0099】
【表4】


表4: サイクル1、2及び3におけるpHの測定パラメータ値

サイクル1では、第1の較正が、所定のパラメータ値(PPV)と、Ref.1及びRef.2の測定されたパラメータ値(MPV)との間の対応関係を推定することにより得られる。第1の較正を使用して得られるRef.3の測定されたQCパラメータレベル(MPV)は、許容限界を備えた、割り当てられたパラメータレベル(PPV)と比較される。これは,図2に表されている。
【0100】
図2に示されるように、pHのQCパラメータレベルは、許容限界内にあり、品質制御が許容される。
引き続いて、第2の較正は、3つの較正測定値の全てに基づいて得られる。第2の較正は、テスト流体のパラメータ測定値で使用することができる。この第2の較正曲線も、図2に表されている。
【0101】
他の2つのサイクルの結果を同様に処理することができる。全ての品質制御は、表4から導き出すことができる許容限界内に属する。
3つの参照材料が使用される場合、較正及び品質制御の全てのルーチンは、少なくとも3つのサイクルを備えている。参照材料は、多数の仕方で組み合わせることができる。数個の組み合わせが以下に例示される。サイクルA、B及びCは、任意の順番で実行されてもよい。
【0102】
【表5】


表5:全てのサイクルにおいて、品質制御が2点較正に基づく

【0103】
【表6】


表6:3つの参照材料が使用されるが、全てのサイクルにおいて1つの参照番号が
「ダミー」である

【0104】
【表7】


表7: 品質制御が全てのサイクルで2点で実行され、較正が1点で実行される
【0105】
【表8】


表8: 全範囲のうち幾つかの領域で、品質制御が2点較正に基づき、他の領域では、
1点較正で十分となる

3より多い参照材料が本方法で使用される場合、更なる較正点を導入することができ、及び/又は、第2の品質制御を実行することができる。オプションで、較正及び品質制御の完全なルーチンのうち幾つかのサイクルは、更なる参照材料を含んでいてもよく、その一方で、それらの参照材料は他のサイクルでは除外される。
【0106】
4つの参照材料が使用される場合、較正及び品質制御の完全なルーチンは、少なくとも4つのサイクルを備えている。参照材料は、多数の仕方で組み合わされてもよい。数個の組み合わせが以下に例示されている。サイクルA、B、C及びDは、任意の順番で実行されてもよい。
【0107】
【表9】


表9: 全てのサイクルで3点較正が実行される
【0108】
【表10】


表10: 4つの参照材料が使用されるが、全てのサイクルで、1つの参照材料が
「ダミー」である

【0109】
【表11】


表11: 品質制御が全てのサイクルで2つのレベルで実行される
【0110】
【表12】

表12: 全範囲のうち幾つかの領域で、3点較正が実行されるのが好ましく、他の領域では、2点較正で十分となる
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の自動血液分析器の修正された湿り区分の概略図である。
【図2】図2は、第1の較正曲線及びこれに対応する品質制御、並びに、pHセンサーのための第2の較正曲線を表す、グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法であって、
前記方法では、較正及び品質制御サイクルが繰り返され、該サイクルは、
パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用してセンサーの較正を実行し、
前記パラメータの、該較正工程におけるものとは別のパラメータレベルを表す参照材料を使用して、較正された前記センサーの品質制御を実行し、
少なくとも2つのサイクルに亘って前記較正及び品質制御の工程を繰り返す、各工程を備え、
一つのサイクルにおいて、参照材料が前記品質制御工程で使用され、該参照材料は、別のサイクルでは前記較正工程で使用されたものである、方法。
【請求項2】
前記パラメータの2つの異なるパラメータレベルを表す参照材料が、前記較正工程で使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータの1つ以上の更なるパラメータレベルを表す追加の参照材料が、前記較正工程で使用されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サイクルは、前記参照材料の各々が前記センサーの品質制御のため一度使用されるまで、繰り返されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一つのサイクルにおいて、前記較正工程で実行される前記較正は第1の較正であり、前記サイクルは、
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用されたものと同じ参照材料を使用して前記センサーの第2の較正を実行する工程を更に備えることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
一つのサイクルにおいて、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関してセンサー応答が得られ、
前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関して更なるセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程で得られた前記センサー応答と、得られた前記更なるセンサー応答とに基づくことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一つのサイクルにおいて、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関してセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で得られた前記センサー応答に基づくことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
1つのサイクルにおいて、前記品質制御が基づいている前記較正を実行するため使用された前記参照材料の前記パラメータレベルが較正範囲を画定し、
前記サイクルで使用された前記参照材料の全ての前記パラメータレベルが全範囲を画定し、
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも四分の一であることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも三分の一であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法であって、
前記パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用して前記センサーの第1の較正を実行し、
前記較正工程とは異なる前記パラメータの別のパラメータレベルを表す別の参照材料を使用して較正された前記センサーの品質制御を実行し、
前記第1の較正及び前記品質制御を実行する工程で使用されたものと同じ参照材料を使用して前記センサーの第2の較正を実行する、各工程を備える、方法。
【請求項11】
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対してセンサー応答が得られ、
前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対して更なるセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程で得られた前記センサー応答と、前記のように得られた更なるセンサー応答と、に基づくことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対してセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で得られた前記センサー応答に基づくことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記品質制御が基づく前記較正を実行するため使用される前記参照材料の前記パラメータレベルは、較正範囲を画定し、
使用された全ての前記参照材料の前記パラメータレベルは、全範囲を画定し、
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも四分の一であることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記パラメータは、血液パラメータであることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記参照材料は、密封されたコンテナ内に保持された流体であることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
テスト流体中のパラメータを決定するための装置であって、
前記テスト流体中の前記パラメータを検出してセンサー応答を提供するセンサーと、
前パラメータの少なくとも2つの異なるパラメータレベルを表す複数の参照材料と、
前記装置の機能を制御するためのプログラム可能な装置と、
を備え、
前記プログラム可能な装置は、上記請求項のいずれか1項に記載の、前記センサーの較正及び品質制御を行う方法の実行を制御する、装置。
【請求項17】
前記装置は、
前記テスト流体に前記センサーをさらすための手段と、
前記参照材料に前記センサーをさらすための手段と、
測定されたパラメータ値を記録するための手段と、
を更に備えることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、前記パラメータの少なくとも3つの異なるパラメータレベルを表す複数の参照材料を備えることを特徴とする、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
前記参照材料は、密封されたコンテナ内に保持された流体であることを特徴とする、請求項16乃至18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも2つの参照材料が一つの同じカートリッジ内に配置されていることを特徴とする、請求項16乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記センサーは、小型化された平面センサーであることを特徴とする、請求項16乃至20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記センサーは、カセット内に配置されていることを特徴とする、請求項16乃至21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、血液分析器であることを特徴とする、請求項16乃至22のいずれか1項に記載の装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法であって、
前記方法では、較正及び品質制御サイクルが繰り返され、該サイクルは、
パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用してセンサーの較正を実行し、
前記パラメータの、該較正工程におけるものとは別のパラメータレベルを表す参照材料を使用して、較正された前記センサーの品質制御を実行し、
少なくとも2つのサイクルに亘って前記較正及び品質制御の工程を繰り返す、各工程を備え、
一つのサイクルにおいて、参照材料が前記品質制御工程で使用され、該参照材料は、別のサイクルでは前記較正工程で使用されたものである、方法。
【請求項2】
前記パラメータの2つの異なるパラメータレベルを表す参照材料が、前記較正工程で使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータの1つ以上の更なるパラメータレベルを表す追加の参照材料が、前記較正工程で使用されていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サイクルは、前記参照材料の各々が前記センサーの品質制御のため一度使用されるまで、繰り返されることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一つのサイクルにおいて、前記較正工程で実行される前記較正は第1の較正であり、前記サイクルは、
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用されたものと同じ参照材料を使用して前記センサーの第2の較正を実行する工程を更に備えることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
一つのサイクルにおいて、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関してセンサー応答が得られ、
前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関して更なるセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程で得られた前記センサー応答と、得られた前記更なるセンサー応答とに基づくことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一つのサイクルにおいて、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に関してセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で得られた前記センサー応答に基づくことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
1つのサイクルにおいて、前記品質制御が基づいている前記較正を実行するため使用された前記参照材料の前記パラメータレベルが較正範囲を画定し、
前記サイクルで使用された前記参照材料の全ての前記パラメータレベルが全範囲を画定し、
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも四分の一であることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも三分の一であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
テスト流体中のパラメータを決定するためのセンサーの較正及び品質制御を実行する方法であって、
前記パラメータのパラメータレベルを表す参照材料を使用して前記センサーの第1の較正を実行し、
前記較正工程とは異なる前記パラメータの別のパラメータレベルを表す別の参照材料を使用して較正された前記センサーの品質制御を実行し、
前記第1の較正及び前記品質制御を実行する工程で使用されたものと同じ参照材料を使用して前記センサーの第2の較正を実行する、各工程を備える、方法。
【請求項11】
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対してセンサー応答が得られ、
前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対して更なるセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程で得られた前記センサー応答と、前記のように得られた更なるセンサー応答と、に基づくことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で使用された前記参照材料に対してセンサー応答が得られ、
前記第2の較正は、前記第1の較正工程及び前記品質制御工程で得られた前記センサー応答に基づくことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記品質制御が基づく前記較正を実行するため使用される前記参照材料の前記パラメータレベルは、較正範囲を画定し、
使用された全ての前記参照材料の前記パラメータレベルは、全範囲を画定し、
前記較正範囲は、前記全範囲の少なくとも四分の一であることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記パラメータは、血液パラメータであることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記参照材料は、密封されたコンテナ内に保持された流体であることを特徴とする、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記参照材料は、1つ以上のパラメータを表す、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
テスト流体中のパラメータを決定するための装置であって、
前記テスト流体中の前記パラメータを検出してセンサー応答を提供するセンサーと、
前パラメータの少なくとも2つの異なるパラメータレベルを表す複数の参照材料と、
前記装置の機能を制御するためのプログラム可能な装置と、
を備え、
前記プログラム可能な装置は、上記請求項のいずれか1項に記載の、前記センサーの較正及び品質制御を行う方法の実行を制御する、装置。
【請求項18】
前記装置は、
前記テスト流体に前記センサーをさらすための手段と、
前記参照材料に前記センサーをさらすための手段と、
測定されたパラメータ値を記録するための手段と、
を更に備えることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、前記パラメータの少なくとも3つの異なるパラメータレベルを表す複数の参照材料を備えることを特徴とする、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記参照材料は、密封されたコンテナ内に保持された流体であることを特徴とする、請求項17乃至19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
少なくとも2つの参照材料が一つの同じカートリッジ内に配置されていることを特徴とする、請求項17乃至20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記参照材料は、1つ以上のパラメータを表す、請求項17乃至21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記センサーは、小型化された平面センサーであることを特徴とする、請求項17乃至22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記センサーは、カセット内に配置されていることを特徴とする、請求項17乃至23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、血液分析器であることを特徴とする、請求項17乃至24のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2006−504936(P2006−504936A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547442(P2004−547442)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000728
【国際公開番号】WO2004/040284
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(500554782)ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス (20)
【Fターム(参考)】