説明

センサ付非接触ICタグおよび環境保障方法

【課題】暗号やキ一ワードによらずに、測定結果の改ざんを不可能または困難にするとともに、再利用を可能としたセンサ付非接触ICタグおよび環境保障方法を提供することを目的とする。
【解決手段】制御部2からクロック11に出力されるクロックセット信号は、制御部2とクロック11との間にタグ有効期間判定部12を備えた電気回線を介して出力される。そして、このタグ有効期間判定部12には、制御部2からタグ有効期間設定信号が出力されるように構成されている。このように制御部2とクロック11との間にタグ有効期間判定部12を介在させることで、タグ有効期間におけるクロック11の操作を不能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で情報を交信するセンサ付非接触ICタグおよびこのセンサ付非接触ICタグを用いた環境保障方法に関し、特に情報の改ざんを防止するセンサ付非接触ICタグおよび環境保障方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物の輸送または保管中における環境保障方法として、荷物にセンサ付非接触ICタグを装着して、輸送または保管中の荷物の環境の変化をICに記憶させ輸送または保管を終えた後、記憶内容を読出して輸送中または保管中の環境が予め設定された許容範囲内であったことを確認する方法が提案されている。
【0003】
このようなセンサ付非接触ICタグの例としては、温度記録デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この温度記録デバイスは、電池を電源として駆動し、一定時間間隔で温度を計測して半導体メモリに結果を記憶し、外部からの読み出し命令により記録データを外部に出力する機能を備えている。そして、改ざん防止方法として、外部からのコマンド、書き込み情報、内部からの情報を暗号化し、デバイスの操作に関してキーワードを設定して不正操作に対する安全牲を高める方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000-258254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような暗号化やキーワードによる改ざん防止方法は、改ざんしようとする側に暗号の「鍵」や「キーワード」を知られてしまえば無力となってしまう。また、このような温度記録デバイスを再セットができないようにする方法も考えられるが、この場合、一回の輸送や保管ごとに新しいセンサ付非接触ICタグを必要とするため、環境保障コストが高くなる上に、その都度廃棄することになるため環境負荷を大きくするという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、暗号やキーワードによらずに、測定結果の改ざんを不可能または困難にするとともに、再利用を可能としたセンサ付非接触ICタグおよび環境保障方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のセンサ付非接触ICタグは、外部の環境を検出して、その検出結果を出力するセンサと、時刻データを出力するクロックと、少なくとも前記センサからの検出結果と前記クロックに基づく時刻とを書込み/読出し可能なメモリと、前記メモリに対して前記検出結果および前記時刻の書込み/読出しを行う制御部と、タグ有効期間を設定するタグ有効期間設定信号入力手段と、外部環境の検出を開始させる検出開始信号入力手段と、少なくとも前記クロックを駆動するための電力源である電池とを具備し、前記クロックは、前記タグ有効期間の間、操作不能とされていることを特徴とする。
【0007】
ここで、本明細書において、「非接触ICタグ」、「時刻データ」、「検出結果」、「検出開始」および「タグ有効期間」は、それぞれ次のものまたは次のことを意味している。
【0008】
「非接触ICタグ」は、少なくとも、メモリ、メモリへの情報の書込み/読み出しを行う制御部および送受信用のアンテナを備え、メモリから読み出された情報をアンテナを介して送信し得るように構成されたタグをいう。
【0009】
「時刻データ」は、年月日、時分秒等の時間データ、または所定の周波数のパルスをカウントしたカウント数のような時間データと対応づけられるデータをいう。
【0010】
「検出結果」は、センサの出力、たとえば温度センサの場合には温度データのようにセンサの測定データ(測定結果)、または測定データに基づいて計算された良否の判定結果のような測定データに基づく2次データなどをいう。また、検出結果には、その検出データが得られた検出時刻も、必要に応じて含める。
【0011】
「検出開始」は、センサ付非接触ICタグを初期状態から作動させること、またはメモリに検出結果(測定結果)、検出時刻(測定時刻)等の情報が書込まれているときに、以前に書込まれた内容を消去して初期状態とした後作動させることをいう。ただし、時刻データは、検出開始信号では初期化されず、クロックを初期設定するクロックセット信号で初期化される。なお、検出は、設定された所定の時間間隔で行われる。
【0012】
「タグ有効期間」は、センサ付非接触ICタグのクロックへの操作を不能とする期間である。
【0013】
なお、「検出」は、単に検出器などで検出することや、測定器などで測定することなどを意味する。また、実施の形態の説明の中では温度測定を例に説明しているので、「検出開始」を「測定開始」、「検出結果」を「測定結果」、「検出時間」を「測定時間」、「検出終了」を「測定終了」と記述している。
【0014】
本発明のセンサ付非接触ICタグに用いられるセンサとしては、例えば温度センサ(サーミスタ、半導体温度センサ等)、湿度センサ、加速度センサ、光センサなどが例示され、これらは1種または2種以上の組合せで用いられる。
【0015】
また、本発明のセンサ付非接触ICタグの制御部は、前記メモリに対して検出開始時刻の書込み/読出しを行うことができる。なお、この際、制御部は、その検出開始時刻における検出結果をメモリに対して書込み/読出しを行ってもよい。また、制御部は、検出開始時刻以後の検出結果をメモリに対して書込み/読出しを行う。
【0016】
なお、ICタグ識別コードは、制御部を構成する、例えば読み出し専用メモリ(ROM)に予め記憶されている。また、検出開始時刻は、再度、検出開始信号を入力すること(再初期化)によるメモリの記憶内容の改ざんの有無をチェックするためのものである。また、タグ有効期間開始時刻によっても、メモリの記憶内容の改ざんの有無をチェックすることができる。なお、メモリに電池から電力が供給される場合には、メモリとして揮発性メモリを用いることができ、一方、メモリに電池から電力が供給されない場合には、メモリとして不揮発性メモリが用いられる。
【0017】
また、本発明のセンサ付非接触ICタグでは、前記制御部における前記検出結果の前記メモリに対する書込みは、少なくとも前記検出結果が、予め設定された環境保障範囲から外れた時に行われる。
【0018】
ここで、センサとして、例えば温度センサが用いられ、環境保障範囲が0℃以下に設定された場合に、その環境保障範囲を外れる温度を検出結果として得たときには、その検出時刻およびその時の温度がメモリに書込まれる。
【0019】
さらに別の検出結果のメモリへの書き込み方法としては、センサ出力の最大値および最小値の一方もしくは両方を検出結果としてメモリに書き込み、検出終了時(荷物の引渡し時)にメモリに書き込まれたセンサ出力の最大値と最小値を読み出し、環境保障範囲内であったか否かを判定する方法もある。
【0020】
また、前記タグ有効期間設定信号入力手段は、前記タグ有効期間を設定する信号を受信するアンテナを備えている。さらに、前記タグ有効期間設定信号入力手段は、前記所定期間における前記クロックの操作を不能にするためのタグ有効期間判定部を備えている。
【0021】
また、本発明のセンサ付非接触ICタグでは、前記検出開始信号入力手段は、検出開始信号を受信するアンテナを備えている。
【0022】
ここで、上記した、タグ有効期間設定信号入力手段のタグ有効期間を設定する信号を受信するアンテナ、および検出開始信号入力手段の検出開始信号を受信するアンテナとして、上記した非接触ICタグに備えられた送受信用のアンテナを併用させてもよい。
【0023】
なお、本発明のセンサ付非接触ICタグは、合成樹脂シートで挟持して加熱加圧して全体を一体化し、または樹脂モールドして全体を一体化して、例えばカード状、テープ状、ボタン状、コイン状、その他、荷物の形態に応じた任意の形態に成形したものであり、必要に応じて荷物へ装着するための紐や粘着層等の取り付け手段が設けられる。
【0024】
上記したように、本発明のセンサ付非接触ICタグによれば、タグ有効期間中、クロックの操作が不能となるように構成されているので、メモリに記憶された内容が改ざんされるおそれがない。これによって、例えば、このセンサ付非接触ICタグを荷物などに装着した場合には、荷物の輸送中または保管中の環境条件を確実に保障することができる。
【0025】
また、検出開始信号入力手段およびタグ有効期間設定信号入力手段を備えているので、センサ付非接触ICタグを、使用後回収し、電池寿命、タグの機能を確認した後、再度新たな荷物に装着し、再び検出開始信号およびタグ有効期間設定信号を受信して再使用することができる。これによって、1回あたりの環境保障コストを安くすることができ、また、その都度廃棄しないので環境負荷を小さくすることができる。
【0026】
さらに、検出開始信号を受信し、検出結果および検出時刻などを送信するアンテナを設けているので、非接触でセンサ付非接触ICタグの検出開始時刻および環境の検出データを読み出すことができ、輸送または保管の工程の妨げとならずに環境保障を行うことができる。
【0027】
また、制御部による検出結果のメモリに対する書込みは、少なくとも検出結果が環境保障範囲から外れた時に行われてもい。これによって、メモリの容量を有効に利用することができる。また、センサ出力の最大値および最小値をメモリに書き込む方法も、記憶に必要なメモリは常に一定で検出回数に応じて増えることは無いので、メモリを有効に利用することができる。
【0028】
次に、本発明の環境保障方法は、上記したセンサ付非接触ICタグが装着された荷物の輸送または保管中における環境を保障する環境保障方法であって、前記センサ付非接触ICタグのアンテナを介して、前記センサ付非接触ICタグにタグ有効期間設定信号を送信するタグ有効期間設定信号送信工程と、前記有効期間設定信号に基づいて、タグ有効期間フラグを設定するフラグ設定工程と、前記センサ付非接触ICタグのアンテナを介して、前記センサ付非接触ICタグに検出開始信号を送信する検出開始信号送信工程と、前記検出開始信号に基づいて、少なくとも、前記センサ付非接触ICタグに備えられたセンサからの検出結果およびクロックに基づく検出開始時刻をメモリに書込む書込み工程と、前記センサ付非接触ICタグからアンテナを介して、少なくとも前記メモリに書込まれた検出開始時刻および検出結果を読出す読出工程とを具備することを特徴とする。
【0029】
アンテナを介した信号の送信/読出しの具体的な方法は、アンテナを備えたゲートにセンサ付非接触ICタグが装着された荷物を通過させて実現する。このゲートは、荷物の輸送の場合には、荷物を輸送するコンベアまたは車両の通路の始点に検出開始信号などの信号を送信するためのゲートが、終点にメモリに書込まれた内容を読み出すためのゲートがそれぞれ設置される。また、保管の場合には、保管倉庫等の入口と出口が異なる場合には、入り口に検出開始信号を送信するためのゲートが、出口にメモリに書込まれた内容を読み出すためのゲートが設置されるが、入口と出口が共通の場合には、共通のゲートで検出開始信号の送信とメモリに書込まれた内容の読み出しが行われる。
【0030】
アンテナを近づける別の方法としては、荷物の受け入れ時に個々の荷物にリーダ/ライタを近づけて検出開始信号を与え、荷物の引き渡し時に個々の荷物にリーダ/ライタを近づけてメモリに書込まれた内容を読み出してもよい。
【0031】
この本発明の環境保障方法によれば、タグ有効期間中、クロックに対する操作をすることが不能になるように構成されているので、メモリに記憶された内容が改ざんされるおそれがない。これによって、荷物の輸送中または保管中の環境条件を確実に保障することができる。
【0032】
また、検出開始信号送信工程およびタグ有効期間設定信号送信工程を備えているので、センサ付非接触ICタグを、使用後回収し、電池寿命、タグの機能を確認した後、再度新たな荷物に装着し、再び検出開始信号およびタグ有効期間設定信号を送信して再使用することができる。これによって、1回あたりの環境保障コストを安くすることができ、また、その都度廃棄しないので環境負荷を小さくすることができる。
【0033】
さらに、非接触でセンサ付非接触ICタグの少なくともメモリの情報を読み出すことができ、輸送または保管の工程の妨げとならずに環境保障を行うことができる。
【0034】
また、前記書込み工程における前記測定結果の前記メモリに対する書込みは、少なくとも前記検出結果が、予め設定された環境保障範囲から外れた時に行われてもよい。また、前記書込み工程における前記測定結果の前記メモリに対する書込みは、少なくとも前記検出結果が、検出開始時刻以降で最大値または最小値となった時に行われてもよい。これによって、メモリの容量を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のセンサ付非接触ICタグおよび環境保障方法によれば、暗号やキーワードによらずに、測定結果の改ざんを不可能または困難にするとともに、再利用を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、この一実施の形態のセンサ付非接触ICタグの構成を透視的に示した平面図である。
この一実施の形態のセンサ付非接触ICタグの回路部は、環境温度を測定するための所定の温度係数を持つサーミスタなどの温度センサ1、各部を制御する制御部2、パルス源である水晶振動子3を備えたクロック11、測定開始時刻、測定時刻および測定された温度などが書き込まれるメモリ4、アンテナ5および電池6から構成されている。
【0038】
これらの回路部のうちアンテナ5と配線部分は、図示を省略した絶縁基板上に公知のホトリソグラフィ技術もしくは印刷技術により直接パターニングされており、他の受動・能動素子および電池は、これらの配線部分と電気的に接続させて絶縁基板上に実装されている。これらの配線部分と実装部品は、例えば図示を省略した合成樹脂フィルムによって被覆され、加圧加熱により一体化されている。
【0039】
次に、図2を参照して、センサ付非接触ICタグの構成について詳細に述べる。
【0040】
図2は、センサ付非接触ICタグ用チップの主要なブロック構成を示す。
ここで、制御部2は、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)から主に構成され、CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。また、ROMには、タグの製造時にICタグ識別コードが記憶され、このICタグ識別コードは書き換え不能となっている。また、RAMには、例えばタグ有効期間フラグや、適宜に設定可能な環境保障範囲などが記憶される。ここで、環境保障範囲とは、温度センサ1で測定された測定結果に対して環境保障する管理温度範囲であり、例えば、0℃以下などの設定がされる。ここでは、温度センサ1で測定された測定結果が、この環境保障範囲を外れた場合に、その測定された温度と測定時刻がメモリ4に書込まれる。なお、センサとして温度センサ1が用いられた場合について示したが、他のセンサを用いる場合には、各センサに対応した環境保障範囲が設定される。
【0041】
また、制御部2は、センサI/F(インターフェース)10を介して温度センサ1と電気的に接続されている。さらに、制御部2は、メモリ4およびパルス源である水晶振動子3を備えたクロック11と電気的に接続されている。
【0042】
ここで、制御部2からクロック11に出力されるクロックセット信号は、図2に示すように、制御部2とクロック11との間にタグ有効期間判定部12を備えた電気回線を介して出力される。そして、このタグ有効期間判定部12には、制御部2からタグ有効期間設定信号が出力されるように構成されている。このように制御部2とクロック11との間にタグ有効期間判定部12を介在させることで、タグ有効期間におけるクロック11の操作を不能にすることができる。なお、このタグ有効期間判定部12は、制御部2に構成されてもよい。
【0043】
次に、センサ付非接触ICタグのタグ有効期間を設定し、その期間内でクロック11の改ざんを不能化して環境保障データに対する改ざんを防止する方法について、図3を参照して説明する。
【0044】
図3には、その改ざんを防止する方法の概要が示されている。
図3に示したタグ有効期間による環境保障データへの改ざん防止方法は、(1)クロック11に対して変更を不能化し、環境測定データに測定時刻を付す方法と、(2)メモリ4に記憶されている情報の消去、上書きなど直接改ざんに利用可能な操作をタグ有効期間中不能化する方法の2種類が挙げられる。
【0045】
ここで保障を実現するための必須条件は、環境保障開始(測定開始信号)から環境保障終了(測定結果の読出し)までの期間が、タグ有効期間内であることと、少なくともクロック11に対してはタグ有効期間中操作が不能となっていることである。
【0046】
タグ有効期間の実現方法は、大別し、(a)クロック11やタイマーに基づいて有効期間を実現する方法と、(b)単に有効期間を示すフラグを、有効期間開始信号を与えてセット(例えば、FLG=1に設定)し、有効期間終了信号を与えてそのフラグをクリア(例えば、FLG=0に設定)して実現する方法の2つがある。どちらの方法においても、タグ有効期間フラグを設け、これを読み出してタグ有効期間であることを知ることができる。
【0047】
タグ有効期間開始の処理は、(a)の方法の場合は、タイマーのセットまたは有効期間のセット、(b)の方法の場合は、タグ有効期間フラグのセットである(改ざんの防止に必要であればタグ有効時間開始時刻をセンサ付非接触ICタグのメモリ4に書き込む)。なお、実施の形態としては、タグ有効期間開始の処理は、測定開始の処理と一体化して同時に行うのが都合がよい。この場合、タグ有効時間開始時刻は、測定開始時刻と一致するので、測定開始時刻のみをメモリ4に記憶して、タグ有効期間開始時刻は、この時刻を使用する。
【0048】
タグ有効期間の終了は、(a)の方法の場合は、クロック11の時刻がタグ有効期限に達したこと、またはタイマーの経過時間が設定値に達したことで検知する。(b)の方法の場合は、センサ付非接触ICタグの使用を終了する時点でタグ有効期間フラグをクリアする。(b)の方法の場合、タグの有効期間終了の処理(タグ有効期間フラグのクリア)を、下記の改ざんの有無の判定処理と共に測定終了処理に含めることができる。一方(a)の方法は、有効期間がクロック11もしくはタイマーで定まるため測定終了処理に含めることはできない。
【0049】
(a)の方法は、有効期間がクロック11やタイマーで決まるため有効期間に対する改ざんは不可能であるが、(b)の方法で有効期間を構成する場合は、有効期間への改ざんの有無は、測定結果読み出し時にタグ有効期間経過時間を調べ、輸送期間や保管期間に対応した所定の期間に対し、十分長いタグ有効期間であったかを確認する。具体的には、タグ有効期間開始の処理時にタグ有効期間開始時刻を外部のシステム制御装置に記録し、検出(測定)結果の読み出し時にタグ有効期間フラグがセットされていることを確認し、次にタグ有効期間経過時間を読み出し、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いてタグ有効期間開始時刻を逆算し、この逆算したタグ有効期間開始時刻が、外部のシステム制御装置に記録されているタグ有効期間開始時刻と合理的な誤差範囲で一致するかを判定して、タグ有効期間に対する改ざんをの有無を判定することができる。
【0050】
ここで、改ざんの有無の確認に使用するタグ有効期間経過時間は、例えば水晶振動子から出力されるような所定の周波数のパルスをカウントするカウンタを設け、タグ有効期間開始時に「0」にリセットし、その後のパルス数をカウントする方法で得ることができる。この方法では、回路から直接得られる値であるため改ざんが困難である。
【0051】
メモリ4への改ざんの有無の確認には、荷物引き渡し時に上記したようにタグ有効期間の改ざんが無い事を確認した後、測定開始時刻を読み出し、測定開始処理時に予め外部のシステム制御装置に記録しておいた測定開始時刻と一致するか照合してメモリが初期化されていないことを確認する。
【0052】
次に、図2および4を参照して、この実施の形態のセンサ付非接触ICタグにおける動作を説明する。図4は、センサ付非接触ICタグにおける動作の流れ図を示す。
【0053】
ここでは、タグ有効期間の実現方法として、上記した(b)の方法、つまり、単に有効期間を示すフラグを、有効期間開始信号を与えてセットし、有効期間終了信号を与えてそのフラグをクリアして実現する方法の一例を示す。また、この一例では、測定開始処理とタグ有効期間開始、測定終了処理とタグ有効期間終了は、同時に一体で処理する場合を示している。
【0054】
荷物の輸送または保管に先だって、センサ付非接触ICタグを荷物に装着し、所定の環境温度に保った後、アンテナ5を介して測定開始信号が入力されるのを待つ(ステップS100)。
【0055】
制御部2は、アンテナ5を介して測定開始信号を受信したと判定すると、クロック11の初期設定を行う(ステップS101)。なお、クロック11の初期設定は、クロック11を所定の時刻に合わせても良いし、単に水晶振動子3から得られるクロックパルスをカウウントするカウンタを「0」にセットするだけでも良い。
【0056】
続いて、制御部2は、クロックセット信号を遮断した後、タグ有効期間フラグの設定(例えば、FLG=1に設定)を行う(ステップS102)。
【0057】
続いて、制御部2は、メモリ4に書込まれている測定結果に関する情報を初期化(消去)し、クロック11の時刻を測定開始時刻(タグ有効期間開始時刻と同じ)としてメモリ4に書き込む(ステップS103)。さらに、タグ有効期間開始時刻を外部のシステム制御装置にアンテナ5を介して送信し記録する。このとき同時に温度センサ1により環境温度を測定し、測定開始時の環境温度としてメモリ4にその測定温度を記憶してもよい。図2では、測定開始時刻として2004年4月15日9時5分、測定開始時の環境温度として−10℃がメモリ4に記録されている。さらに、以降の環境温度を所定の時間間隔で測定するために図示を省略した測定タイマーに測定時間間隔(例えば5分)をセットし、さらに、測定結果の良否を判定するための環境保障範囲として管理温度範囲(例えば0℃以下)を設定する(ステップS103)。これらの測定時間間隔および管理温度範囲の設定情報は、測定開始信号と同様に、アンテナ5を介して受信される。
【0058】
続いて、制御部2は、測定タイマーからの情報に基づいて、測定時間間隔の経過を判定し(ステップS104)、その経過した時点で環境温度の測定を行う。他方、アンテナ5を介して読み出し信号や測定終了信号を受信した場合、それぞれの信号に対応した処理を行う(ステップS104)。
【0059】
まず、測定時間間隔の経過を判定し、その経過した時点で環境温度の測定を行う場合について説明する。
【0060】
前述の測定タイマーに従って所定の測定時間間隔を経過すると、制御部2は、温度をセンサ1から温度の測定信号を入力する(ステップS105)。
【0061】
続いて、制御部2は、入力した温度の測定信号に基づいて、その温度が予め設定された管理温度範囲を越えた異常状態であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0062】
ステップS106の判定で、正常であると判定した場合(ステップS106の正常)には、ステップS104の処理へ戻る。
【0063】
一方、ステップS106の判定で、異常であると判定した場合(ステップS106の異常)には、制御部2は、クロック11から入力したその測定時刻と、測定された温度とをメモリ4に書込む(ステップS107)。ここで、異常を検知した場合のメモリ4への書込みは、図2に示すように、2004年4月15日15時30分の4℃、2004年4月15日15時35分の5℃のように行われる。そして、ステップS107の処理後、ステップS104の処理へ戻る。
【0064】
なお、ステップS106の判定で、測定された温度が管理温度範囲内で正常と判定された場合には、測定時刻や測定温度のメモリ4への書き込みは行わずに、直ちにステップS104の処理へ戻るので、メモリ4の容量の節約でき、容量を有効に利用することができる。
【0065】
次に、ステップS104において、アンテナ5を介して読み出し信号が受信された場合について説明する。
【0066】
アンテナ5を介して読み出し信号を受信すると、制御部2は、ICタグの識別コード、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、測定開始時刻と測定結果の内容(異常状態の測定温度、測定温度の最大値または最小値など)、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間経過時間などを読み出し、その情報をアンテナ5を介して送出する(ステップS108)。そして、ステップS108の処理後、ステップS104の処理へ戻る。
【0067】
この読み出し処理において、測定温度が管理温度範囲を越えた場合には、ICタグの識別コード、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、タグ有効期間経過時間、測定開始時刻とそのときの温度、測定温度が管理温度範囲を越えたときの時刻とその測定温度が読み出される。一方、測定温度が管理温度範囲を越えなかった場合には、異常状態の記録は無く、ICタグの識別コード、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、タグ有効期間経過時間、測定開始時刻とそのときの温度が読み出され、荷物が、タグの有効期間内で、かつ管理温度範囲内に維持されたことが確認されることになる。
【0068】
次に、ステップS104において、アンテナ5を介して測定終了信号が受信された場合について説明する。
【0069】
アンテナ5を介して測定終了信号を受信すると、制御部2は、測定タイマや温度センサ1を停止させ、回路の消費電力をもっとも低い状態として電池の消耗を防ぐ(ステップS109)。なお、測定終了信号を受信時に、制御部2は、ICタグの識別コード、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、測定開始時刻と測定結果(異常状態の測定温度など)、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間経過時間を読み出し、その情報をアンテナ5を介して送出してもよい。
【0070】
続いて、測定を終了した後(ステップS109の処理後)、制御部2は、タグ有効期間フラグの情報を消去(例えば、FLG=0に設定)する(ステップS110)。
【0071】
タグ有効期間フラグの情報が消去された後(ステップS110の処理後)には、再び測定開始信号待ちの状態(ステップS100)となり、測定開始信号を受けて、ステップS101からの処理を再度開始する。
【0072】
なお、上記したセンサ付非接触ICタグにおける動作の一例では、測定開始処理とタグ有効期間開始、測定終了処理とタグ有効期間終了は、同時に一体で処理する場合を示したが、この場合に限られるものではない。例えば、タグ有効期間開始信号を受信後、測定開始信号を受信することもある。この場合には、上記したステップS100〜ステップS102の処理は、タグ有効期間開始信号を受信後、タグ有効期間フラグの設定を行い、クロック11の初期設定を行ってからクロックセット信号を遮断して、測定開始信号が入力されるのを待つという処理に置き換わる。
【0073】
また、測定終了信号を受信後、タグ有効期間終了信号を受信することもある。この場合には、上記したステップS110の処理は、タグ有効期間終了信号の受信後に行われる。
【0074】
さらに、上記したセンサ付非接触ICタグにおける動作の一例では、タグ有効期間の実現方法として、上記した(b)の方法、つまり、単に有効期間を示すフラグを、有効期間開始信号を与えてセットし、有効期間終了信号を与えてそのフラグをクリアして実現する方法の一例を示したが、上記した(a)の方法、つまり、クロック11やタイマーに基づいて有効期間を実現する方法においても、基本的に上記したセンサ付非接触ICタグにおける動作と同じである。この(a)の方法の場合には、上記したステップS100〜ステップS102の処理は、クロック11の初期設定後、タグ有効期間判定部12にタグ有効期間を設定すると、自動的にタグ有効期間のフラグを設定しクロックセット信号を遮断して測定開始信号が入力されるのを待つという処理に置き換わる。また、この(a)の方法の場合には、上記したステップS110の処理は、クロック11の時刻を基にタグ有効期間判定部12によりタグ有効期間が終了したと判定されるのを待つステップとなる。タグ有効期間が終了するとタグ有効期間のフラグは解除され(タグ無効)、クロックセット信号が接続されてクロックの初期設定が可能となる。
【0075】
また、上記したセンサ付非接触ICタグにおける動作の一例において、測定終了処理を実行後タグ有効期間が過ぎ、測定開始信号待ちの状態で、読み出し信号を受けた場合、応答しないか、タグ有効期間が過ぎた旨のメッセージ情報を返送し、すでに環境保障ができない状態であることを外部にシステムに知らせるようにしてもよい。
【0076】
次に、本発明のセンサ付非接触ICタグを用いた輸送での環境保障方法について、図5および表1を参照して説明する。
【0077】
図5は、センサ付非接触ICタグ200を用いた輸送での環境保障方法の概要を示した図である。表1は、センサ付非接触ICタグ200を用いて、荷物201の輸送または保管を行った場合の環境保障システムを管理するシステム制御装置(図示しない)における記憶情報の一例を示したものである。なお、ここでも、測定開始処理とタグ有効期間開始、測定終了処理とタグ有効期間終了は、同時に一体で処理する場合を示している。
【0078】
この実施の形態では、センサ付非接触ICタグ200の電池寿命や機能が正常であることを確認した後、そのセンサ付非接触ICタグ200を荷物201に装着する。そして、荷物201の置かれる環境温度を所定の温度(0℃以下)としてから、アンテナを備えた受け入れゲート203を通過させて測定開始信号を受信させる。
【0079】
測定開始信号を受信したセンサ付非接触ICタグ200は、測定時間間隔および環境保障範囲の設定、メモリの記憶を消去するとともに、測定開始信号を受けた時刻(タグ有効期間開始時刻と同じ)と、その時刻での環境温度を測定し、その測定結果をメモリに記憶して、タグ有効期間フラグを設定する。さらに、センサ付非接触ICタグ200は、ICタグ識別コード、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、測定開始時刻、測定開始時刻における測定された環境温度などの情報を必要に応じ受け入れゲート203に送出する。
【0080】
受け入れゲート203は、センサ付非接触ICタグ200から送出された情報を受信して照合用データとして記憶し、その照合用データを引渡しゲート204に出力する。出力する照合用データとしては、ICタグ識別コード、測定開始時刻、タグ有効期間開始時刻などが例示できる。なお、受け入れゲート203および引渡しゲート204は、システム制御装置(図示しない)と電気的に接続され、このシステム制御装置によって、受け入れゲート203および引渡しゲート204において送信する情報や受信した情報などを管理している。
【0081】
また、センサ付非接触ICタグ200は、測定温度が管理温度範囲を越えた場合には、ICタグの識別コード、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、タグ有効期間経過時間、測定開始時刻とそのときの温度、測定温度が管理温度範囲を越えたときの時刻とその測定温度などの情報を引渡しゲート204に送出する。一方、センサ付非接触ICタグ200は、測定温度が管理温度範囲を越えなかった場合には、異常状態の記録は無く、ICタグの識別コード、タグ有効期間フラグ、タグ有効期間開始時刻(測定開始時刻と同じ)、タグ有効期間経過時間、測定開始時刻とそのときの温度などの情報を引渡しゲート204に送出する。
【0082】
受け入れゲート203でセンサ付非接触ICタグ200から読み出された情報と、引渡しゲート204でセンサ付非接触ICタグ200から読み出された情報に基づいて作成された記憶情報の一例を表1の(A)〜(E)に示し、その内容をまとめたものを次に示す。
(A)ICタグ識別コード同一、 測定開始時刻同一、 異常温度記録無し、 タグ有効期間開始時刻一致、 タグ有効期間内
(B)ICタグ識別コード同一、 測定開始時刻同一、 異常温度記録有り、 タグ有効期間開始時刻一致、 タグ有効期間内
(C)ICタグ識別コード同一、 測定開始時刻不一致、異常温度記録無し、 タグ有効期間開始時刻不一致、タグ有効期間内
(D)ICタグ識別コード不一致、測定開始時刻同一、 異常温度記録無し、 タグ有効期間開始時刻一致、 タグ有効期間内
(E)ICタグ識別コード同一、 測定開始時刻同一、 異常温度記録無し、 タグ有効期間開始時刻一致、 タグ有効期間外(タグ無効)
【0083】
【表1】

【0084】
(A)の場合は、荷物201が輸送または保管中を通じて環境温度以下に維持され、ICタグ識別コード、測定開始時刻は、受け入れゲート203と引渡しゲート204とで読み込まれた情報が一致している。また、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いて算出されたタグ有効期間開始時刻と、受け入れゲート203で記録されているタグ有効期間開始時刻とが一致し、輸送または保管がタグ有効期間の範囲内である。したがって、この場合には、荷物201が正規な環境に置かれていたことが保障される。
【0085】
(B)の場合は、ICタグ識別コード、測定開始時刻は、受け入れゲート203と引渡しゲート204とで読み込まれた情報が一致し、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いて算出されたタグ有効期間開始時刻と、受け入れゲート203で記録されているタグ有効期間開始時刻とが一致し、輸送または保管がタグ有効期間の範囲内である。しかし、荷物201が輸送または保管中を通じて環境温度以下に維持されておらず、環境保障はされない。
【0086】
(C)の場合は、荷物201が輸送または保管中を通じて環境温度以下に維持され、ICタグ識別コードは、受け入れゲート203と引渡しゲート204とで読み込まれた情報が一致し、輸送または保管中のICタグは同一である。しかし、測定開始時刻が不一致であり、さらに現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いて算出されたタグ有効期間開始時刻と、受け入れゲート203で記録されているタグ有効期間開始時刻とが不一致である。したがって、測定開始信号が再入力されたことになり、環境保障はされない。
【0087】
この場合には、センサ付非接触ICタグ200のクロックを荷物201の受け入れ時刻に書き換えた後、測定開始信号を入力してメモリ4を消去し、再度クロックの時刻を現在の値に戻す改ざん方法が考えられるが、本発明では、タグ有効期間中クロックの操作を不能にしているため、上記した改ざんはできないか、タグ有効期間開始時刻の不一致として発見される。
【0088】
(D)の場合は、荷物201が輸送または保管中を通じて環境温度以下に維持され、測定開始時刻は、受け入れゲート203と引渡しゲート204とで読み込まれた情報が一致し、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いて算出されたタグ有効期間開始時刻と、受け入れゲート203で記録されているタグ有効期間開始時刻とが一致し、輸送または保管がタグ有効期間の範囲内である。しかし、ICタグ識別コードが不一致であり、センサ付非接触ICタグ200が付け替えられたことになり、環境保障はされない。
【0089】
(E)の場合は、荷物201が輸送または保管中を通じて環境温度以下に維持され、ICタグ識別コード、測定開始時刻は、受け入れゲート203と引渡しゲート204とで読み込まれた情報が一致している。また、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いて算出されたタグ有効期間開始時刻と、受け入れゲート203で記録されているタグ有効期間開始時刻とが一致している。しかし、輸送または保管がタグ有効期間の範囲外(タグ無効)であるため、環境保障はされない。
【0090】
ここで、受け入れゲート203、引渡しゲート204が単一のリーダ/ライタで構成されていても、アンチコリジョン方式を採用することにより、検出範囲内で、荷物201に装着されるセンサ付非接触ICタグ200は、例えば、荷物201の種類に対応させて、複数種用いることができる。この方式を採用することによって、荷物201に装着された各センサ付非接触ICタグ200を衝突することなく的確に検出することができ、情報の送受信を確実に行うことができる。なお、この方式に限らず、例えば、受け入れゲート203、引渡しゲート204のリーダ/ライタを、荷物201に装着されたセンサ付非接触ICタグ200の種類に対応させて複数種備えてもよい。
【0091】
また、上記した実施の形態では、センサ付非接触ICタグ200は、タグ有効期間開始時刻を記憶し、例えば、読み出し信号が受信された場合にその情報を外部に送信する処理を行う一例を示したが、この処理に限らず、例えばセンサ付非接触ICタグ200は、タグ有効期間開始時刻の情報を記憶せず、システム制御装置によってその情報を管理するものとしてもよい。
【0092】
上記したように、本発明のセンサ付非接触ICタグおよびこのセンサ付非接触ICタグを用いた環境保障方法によれば、タグ有効期間中、クロックの操作を不能に構成されているので、メモリに記憶された内容が改ざんされるおそれが少ない。これによって、例えば、このセンサ付非接触ICタグを荷物などに装着した場合には、荷物の輸送中または保管中の環境条件を確実に保障することができる。
【0093】
また、測定終了信号の機能としてタグ有効期間を終了する機能を持たせた場合は、測定終了信号を与えてタグ有効期間を終了させてクロックセット信号を用いて改ざんする可能性が生じる。しかしながら、本発明のセンサ付非接触ICタグおよびこのセンサ付非接触ICタグを用いた環境保障方法によれば、タグ有効期間に関する不正を防止するには、測定開始信号受信後のタグ有効期間設定時に有効期間の長さが輸送または保管期間に対して妥当な長さで設定されているか確認する方法や、メモリからの測定結果の読み出し時に、タグ有効期間開始時刻とタグ有効期間経過時間を読み出し、現在時刻からタグ有効期間経過時間を差し引いてタグ有効期間開始時刻を逆算し、メモリに記憶されているタグ有効期間開始時刻と合理的な誤差範囲で一致するかを判定する方法で、改ざんをの有無を判定することができる。
【0094】
さらに、本発明における、センサ付非接触ICタグのタグ有効期間を設定し、その期間内でクロックに対して改ざんを不能化する方法では、タグ有効期間外であればクロックの設定が任意に可能であるため、クロックを常に正確な時刻に合わせる事が可能であるとともに、ソフト的に確実な改ざん防止が可能であり、この方法は、実現が容易で優れている。
【0095】
また、本発明のセンサ付非接触ICタグは、測定開始信号およびタグ有効期間開始信号を受信することができるので、センサ付非接触ICタグを、使用後回収し、電池寿命、タグの機能を確認した後、再度新たな荷物に装着し、再び測定開始信号およびタグ有効期間開始信号を受信して再使用することができる。これによって、1回あたりの環境保障コストを安くすることができ、また、その都度廃棄しないので環境負荷を小さくすることができる。
【0096】
さらに、測定開始信号を受信し、測定結果および測定時刻を送信するアンテナを設けているので、非接触でセンサ付非接触ICタグの測定開始時刻および環境の測定データを読み出すことができ、輸送または保管の工程の妨げとならずに環境保障を行うことができる。
【0097】
また、制御部による測定結果および測定時刻のメモリに対する書込みは、少なくとも測定結果が環境保障範囲から外れた時に行われるので、メモリの容量を有効に利用することができる。
【0098】
ここで、上記の実施の形態では、センサの測定値として環境保障範囲を外れる測定結果を得たときに、その測定値および測定時刻を異常データとしてメモリに書込み、測定終了時(荷物の引渡し時)に、環境保障範囲内であったか否かを判定する方法を説明したが、別の測定結果の判定方法としては、センサの測定値の最大値および最小値の一方もしくは両方を測定結果としてメモリに書き込み、測定終了時にメモリに書き込まれたセンサの測定値の最大値と最小値を読み出し、環境保障範囲内であったか否かを判定する方法もある。この方法における場合も、メモリに書き込まれているのは測定値の最大値と最小値のみであるから、メモリの容量を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施の形態のセンサ付非接触ICタグの構成を透視的に示した平面図。
【図2】センサ付非接触ICタグ用チップの主要なブロック構成を示す図。
【図3】改ざんを防止する方法の概要を示す図。
【図4】センサ付非接触ICタグにおける動作の流れ図。
【図5】センサ付非接触ICタグを用いた輸送での環境保障方法の概要を示した図。
【符号の説明】
【0100】
1…温度センサ、2…制御部、3…水晶振動子、4…メモリ、5…アンテナ、6…電池、10…センサI/F(インターフェース)、11…クロック、12…タグ有効期間判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の環境を検出して、その検出結果を出力するセンサと、
時刻データを出力するクロックと、
少なくとも前記センサからの検出結果と前記クロックに基づく時刻とを書込み/読出し可能なメモリと、
前記メモリに対して前記検出結果および前記時刻の書込み/読出しを行う制御部と、
タグ有効期間を設定するタグ有効期間設定信号入力手段と、
外部環境の検出を開始させる検出開始信号入力手段と、
少なくとも前記クロックを駆動するための電力源である電池と
を具備し、
前記クロックは、前記タグ有効期間の間、操作不能とされていることを特徴とするセンサ付非接触ICタグ。
【請求項2】
前記制御部は、前記メモリに対して検出開始時刻の書込み/読出しをさらに行うことを特徴とする請求項1記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項3】
前記制御部における前記検出結果の前記メモリに対する書込みは、少なくとも前記検出結果が、予め設定された環境保障範囲から外れた時に行われることを特徴とする請求項1または2記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項4】
前記制御部における前記検出結果の前記メモリに対する書き込みは、少なくとも前記検出結果が、検出開始時刻以降で最大値または最小値となった時に行われることを特徴とする請求項1または2記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項5】
前記タグ有効期間設定信号入力手段は、前記タグ有効期間を設定する信号を受信するアンテナを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項6】
前記タグ有効期間設定信号入力手段は、前記所定期間における前記クロックの操作を不能にするためのタグ有効期間判定部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項7】
前記検出開始信号入力手段は、検出開始信号を受信するアンテナを備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のセンサ付非接触ICタグ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンサ付非接触ICタグが装着された荷物の輸送または保管中における環境を保障する環境保障方法であって、
前記センサ付非接触ICタグのアンテナを介して、前記センサ付非接触ICタグにタグ有効期間設定信号を送信するタグ有効期間設定信号送信工程と、
前記有効期間設定信号に基づいて、タグ有効期間フラグを設定するフラグ設定工程と、
前記センサ付非接触ICタグのアンテナを介して、前記センサ付非接触ICタグに検出開始信号を送信する検出開始信号送信工程と、
前記検出開始信号に基づいて、少なくとも、前記センサ付非接触ICタグに備えられたセンサからの検出結果およびクロックに基づく検出開始時刻をメモリに書込む書込み工程と、
前記センサ付非接触ICタグからアンテナを介して、少なくとも前記メモリに書込まれた検出開始時刻および検出結果を読出す読出工程と
を具備することを特徴とする環境保障方法。
【請求項9】
前記書込み工程における前記検出結果の前記メモリに対する書込みは、少なくとも前記検出結果が、予め設定された環境保障範囲から外れた時に行われることを特徴とする請求項8記載の環境保障方法。
【請求項10】
前記書込み工程における前記検出結果の前記メモリに対する書き込みは、少なくとも前記検出結果が、検出開始時刻以降で最大値または最小値となった時に行われることを特徴とする請求項8記載の環境保障方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−72727(P2006−72727A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255689(P2004−255689)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】