説明

センサ出力検出回路

【課題】センサからの入力電圧のずれを検出して、出力信号レベルを基準レベルに自動的に補正し得るセンサ出力検出回路を提供する。
【解決手段】センサ11の出力電圧Vsを増幅して出力する増幅部13と、増幅部13の出力信号としきい値Vtとを比較する比較部14と、しきい値Vtを調整するしきい値調整部15と、比較部14の比較結果に基づいて出力信号Voutを調整する出力信号調整回路18とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力センサや加速度センサの出力信号を検出する検出回路に関するものである。
ブリッジ型の圧力センサ等は、センサ素子が金属等で形成されているため、経時劣化等によりブリッジのバランスが崩れ、出力電圧が基準値からずれることがある。すると、センサ出力を検出して増幅する検出回路の出力信号も初期の基準値からずれてしまうため、そのずれを補正する必要がある。従って、このようなセンサ検出回路では、出力信号の補正処理を確実に行う必要がある。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のセンサ出力検出回路を示す。ブリッジ回路で構成されるセンサ1の出力信号は検出回路2に入力され、検出回路2はセンサ1の出力信号を増幅して出力信号Voutを出力する。
【0003】
このようなセンサ出力検出回路において、センサ1は経時劣化等によりブリッジのバランスが崩れ、出力電圧が基準値からずれることがある。センサ1の出力電圧が基準値からずれると、検出回路2の出力信号にもずれが生じるため、そのずれを補正するように検出回路2の出力信号レベルを人為的に調整する作業が必要である。
【0004】
近年、センサの出力レベルが益々微小化しているため、検出回路の利得を高く設定する必要がある。このような状況では、センサ出力のずれが検出回路の出力信号に大きな影響を及ぼすようになっている。
【0005】
特許文献1には、温度センサの出力信号のサンプリング値と、サンプリング時間の積を累算し、その累算値とあらかじめメモリに設定されたしきい値とを比較し、その比較結果に基づいて警告を発する寿命検出装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、製造時の無信号基準値と、点検時の無信号基準値を保持する記憶部を備え、点検時には点検時の無信号基準値を更新して、出力レベルを補正可能としたセンサ出力信号処理回路が開示されている。
【特許文献1】特開平11−273330号公報
【特許文献2】特開平8−128851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示すセンサ検出回路では、出力信号のずれを人為的に補正する必要があるため、その作業が煩雑であるとともに、適正な補正処理を施さないと基準値からずれた出力信号しか得られないという問題点がある。
【0008】
特許文献1には、比較結果に基づいて警告を発するのみで、比較結果に基づいて補正処理を行う思想は開示されていない。
特許文献2には、点検時に基準値を更新する思想は開示されているが、基準値を自動的に補正する構成は開示されていない。
【0009】
この発明の目的は、センサからの入力電圧のずれを検出して、出力信号レベルを基準レベルに自動的に補正し得るセンサ出力検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、センサの出力電圧を増幅して出力する増幅部と、前記増幅部の出力信号としきい値とを比較する比較部と、前記しきい値を調整するしきい値調整部と、前記比較部の比較結果に基づいて前記増幅部の出力信号を調整する出力信号調整回路とを備えたセンサ出力検出回路により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサからの入力電圧のずれを検出して、出力信号レベルを基準レベルに自動的に補正し得るセンサ出力検出回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第一の実施の形態)
図1は、この発明の原理図を示す。ブリッジ型のセンサ11の出力電圧は、検出回路12に入力される。検出回路12は、センサ11の出力電圧Vsを増幅して出力する増幅部13と、前記増幅部13の出力信号Voutとあらかじめ設定されたしきい値電圧Vtとを比較して、増幅部13の出力信号Voutを調整する比較部14と、外部からの設定信号Sに基づいて、その比較部14のしきい値を調整するしきい値調整部15とから構成される。また、必要に応じて、比較部14から判定信号Yが出力される。
【0013】
前記検出回路12の具体的構成を図2に示す。前記増幅部13は、センサ11の出力電圧が入力される入力段アンプ16a,16bと、各入力段アンプ16a,16bの出力信号が入力され、その出力信号の差電圧を増幅した出力信号Voutを出力する出力段アンプ17と、前記出力段アンプ17の出力信号Voutの電圧レベルを調整する出力信号調整回路18とを備えている。
【0014】
前記出力信号調整回路18は、抵抗を介して出力段アンプ17の一方の入力端子に接続され、その出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcに基づいて出力段アンプ17の出力信号Voutの出力レベルが調整される。
【0015】
前記出力信号調整回路18は、図3に示すように、高電位側電源V1と低電位側電源V2との間で例えば8本の抵抗R1〜R8が直列に接続され、各抵抗R1〜R8にはそれぞれスイッチ19a〜19hが並列に接続されている。
【0016】
前記各スイッチ回路19a〜19hは、前記比較部14から出力される4ビットの制御信号C1に基づいて開閉制御される。前記抵抗R1〜R8は、例えば抵抗R1,R5が2kΩ、抵抗R2,R6が4kΩ、抵抗R3,R7が8kΩ、抵抗R4,R8が16kΩに設定される。
【0017】
スイッチ回路19a,19eと、同19b,19f,同19c,19g、同19d,19hにはそれぞれ相補信号が入力され、同19a,19b,19c,19dが導通状態となるとき、同19e,19f,19g,19hは不導通状態となる。そして、抵抗R4,R5間のノードN1の電圧がアンプ20を介して前記調整電圧Vcとして出力される。
【0018】
このような構成により、制御信号C1で各スイッチ19a〜19hを開閉制御することにより、アンプ20から出力される調整電圧Vcが16段階に制御される。従って、調整電圧Vcにより前記出力段アンプ17のオフセット電圧が16段階に制御可能となる。
【0019】
前記しきい値調整部15は、メモリを備えたしきい値設定部21としきい値電圧調整回路22とで構成される。しきい値設定部21には外部からしきい値電圧Vtの設定値として格納される。しきい値電圧調整回路22は、図4に示すように、定電流源23と電源Vssとの間に例えば4本の抵抗R11〜R14が直列に接続され、各抵抗R11〜R14にスイッチ24a〜24dが並列に接続されている。抵抗R11〜R14の抵抗値は、抵抗R11が2kΩ、抵抗R12が4kΩ、抵抗R13が8kΩ、抵抗R14が16kΩに設定される。
【0020】
そして、定電流源抵抗R11とスイッチ24aとの間のノードN2の電位がアンプ25を介してしきい値電圧Vtとして出力される。
各スイッチ24a〜24dは、前記しきい値設定部21から出力される4ビットの制御信号C2に基づいて開閉制御される。従って、ノードN2の電位すなわちしきい値電圧Vtは、しきい値設定部21に設定された設定値に基づいて、16段階に制御される。
【0021】
前記比較部14は、比較回路26と、アップダウンカウンタ27と、制御部28とを備える。比較回路26には、前記出力信号Voutと前記しきい値電圧Vtが入力される。そして、比較回路26は出力信号Voutがしきい値電圧Vtより高くなるとHレベルの出力信号CRを出力し、出力信号Voutがしきい値電圧Vtより低くなるとLレベルの出力信号CRを出力する。
【0022】
前記アップダウンカウンタ27は、クロック発生回路を備えると共に、比較回路26の出力信号CRが入力される。そして、比較回路26の出力信号CRがクロック信号の周期を超えてHレベルに維持されると、そのクロック信号の立ち上がりに基づいてカウントアップ動作を行い、比較回路26の出力信号CRがクロック信号の周期を超えてLレベルに維持されると、そのクロック信号の立ち上がりに基づいてカウントダウン動作を行う。
【0023】
前記アップダウンカウンタ27のクロック信号の周期は、センサ11の出力電圧Vsの変動の周期と略等しく設定される。
また、アップダウンカウンタ27はカウントアップ動作及びカウントダウン動作によるカウント値がオーバーフローしたとき、オーバーフロー信号OFを前記制御部28に出力してカウント値をリセットする。この実施の形態では、カウント値が+4となった時、オーバーフロー信号OF1を出力し、カウント値が−4となったときオーバーフロー信号OF2を前記制御部28に出力するようになっている。
【0024】
前記制御部28は、前記オーバーフロー信号OF1,OF2の入力に基づいて前記出力信号調整回路18に出力する制御信号C1を変化させる。すなわち、オーバーフロー信号OF1が入力されると、出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcを1ステップ下げる制御信号C1を出力し、オーバーフロー信号OF2が入力されると、出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcを1ステップ上げる制御信号C1を出力するようになっている。
【0025】
次に、上記のように構成された検出回路12の動作を図5に従って説明する。同図において、センサ11からの入力電圧Vsは一定の振幅でかつ一定周期で変動する信号として示し、検出回路12の出力信号Voutは、入力電圧Vsを増幅した信号として出力される。なお、出力信号Voutは検出回路12の利得を無視して図示している。
【0026】
入力電圧Vsは、常には基準値Vxを含む範囲で変動する信号として入力され、出力信号Voutは基準値Vxに対応するしきい値Vtを含む電圧範囲で変動する信号として出力される。言い換えれば、入力電圧Vsが基準値Vxを含む範囲で変動しているとき、出力信号Voutがしきい値Vtを含む電圧範囲で変動する信号となるように、しきい値Vtが設定される。
【0027】
この状態では、比較回路26の出力信号CRはセンサ11の出力電圧Vsの変動の周期でHレベルとLレベルを繰り返す。従って、アップダウンカウンタ27ではカウントアップ動作及びカウントダウン動作は行われず、オーバーフロー信号OF1,OF2は出力されない。
【0028】
センサ11の出力信号Vsの電圧レベルが低下して基準値Vxより低くなり、出力信号Voutが低下してしきい値Vtより低くなると、比較回路26の出力信号CRはLレベルに維持された状態となる。すると、アップダウンカウンタ27はカウントダウン動作を行い、そのカウント値が−4となるとオーバーフロー信号OF2を制御部28に出力し、カウント値をリセットする。
【0029】
制御部28は、オーバーフロー信号OF2に基づいて制御信号C1を1ステップ切り替える。すると、出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcが1ステップ引き上げられる。
【0030】
調整電圧Vcが1ステップ引き上げられても、出力信号Voutがしきい値Vtに達しないと、比較回路26の出力信号CRはLレベルに維持されているので、アップダウンカウンタ27はカウントダウン動作を繰り返し、オーバーフロー信号OF2が制御部28に出力される。そして、出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcが再び1ステップ引き上げられる。
【0031】
このような動作により、調整電圧Vcがしきい値Vtを含むレベルまで上昇すると、比較回路26の出力信号CRがHレベルとLレベルを繰り返し出力する状態となるため、アップダウンカウンタ27のカウントダウン動作が停止され、調整電圧Vcは変化しない。
【0032】
出力信号Voutが上昇してしきい値Vtより高くなると、比較回路26の出力信号CRがHレベルに維持される状態となるため、アップダウンカウンタ27ではカウントアップ動作が行われ、そのカウント値が+4となると、オーバーフロー信号OF1が制御部28に出力される。
【0033】
そして、出力信号調整回路18から出力される調整電圧Vcが1ステップ引き下げられ、出力信号Voutがしきい値Vtを含むレベルまで低下すると、オーバーフロー信号OF1は出力されず、調整電圧Vcは変化しない。
【0034】
上記のような検出回路12では、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)センサ11からの入力電圧Vsの基準値Vxからのずれを検出して、出力信号Voutのレベルを基準レベルを含む範囲、すなわちしきい値Vtを含む範囲に自動的に補正することができる。
(2)アップダウンカウンタ27の動作周波数あるいはオーバーフロー値を変更することにより、出力信号Voutをしきい値Vtを含む範囲に合わせこむ速度を任意に設定することができる。
(3)出力信号調整回路18の電圧調整ステップを変更すれば、出力信号Voutをしきい値Vtを含む範囲に合わせこむ速度を変更することができる。
(4)しきい値Vtを外部から任意に設定することができる。従って、センサ11の特性に応じたしきい値Vtを容易に設定することができる。
(第二の実施の形態)
図6は、第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、前記第一の実施の形態の比較回路26とアップダウンカウンタ27との間にスイッチ29を介在させたものである。第一の実施の形態と同一構成部分は、同一符号を付して説明する。
【0035】
前記スイッチ29を導通状態とすれば、第一の実施の形態と同様に動作する。スイッチ29を不導通状態とすると、しきい値Vtに対する出力信号Voutの電圧レベルを検出する検出回路として機能する。
【0036】
例えば、センサ11が断線した場合には出力信号Voutは0V(出力段アンプ17の低電位側電源電圧が0Vであるとき)に等しい電圧レベルとなる。このような場合にはスイッチ29を不導通とし、しきい値Vtが通常の出力信号Voutの下限値である0.5Vとなるような設定信号Sを入力する。
【0037】
すると、比較回路26から出力される判定信号Yに基づいてセンサ11の断線を検出可能となる。すなわち、判定信号YがLレベルとなると、センサ11が断線していることになる。
【0038】
その他、しきい値Vtを適宜に設定することにより、センサ11の動作状態、あるいは検出信号の種類に応じて種々の検出回路に応用することができる。
また、センサ11の出力電圧Vsとして外部から基準値を入力し、その場合の出力信号Voutをあらかじめ設定されたしきい値Vtと比較して判定信号Yを出力することにより、入力段アンプ16a,16b及び出力段アンプ17のトータルゲインの判定を行うこともできる。
【0039】
上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・しきい値設定部21には、種々のしきい値に対応する設定値をあらかじめ多数設定し、その中から適宜読み出して制御信号C2として出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の検出回路を示す原理説明図である。
【図2】第一の実施の形態を示す回路図である。
【図3】出力信号調整回路を示す回路図である。
【図4】しきい値電圧調整回路を示す回路図である。
【図5】第一の実施の形態の検出回路の動作を示す波形図である。
【図6】第二の実施の形態を示す回路図である。
【図7】従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0041】
11 センサ
12 検出回路
13 増幅部
14 比較部
15 しきい値調整部
18 出力信号調整回路
21 しきい値設定部
22 しきい値電圧調整回路
26 比較回路
27 アップダウンカウンタ
28 制御部
29 スイッチ
Vs 出力電圧
Vt しきい値
Vout 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの出力電圧を増幅して出力する増幅部と、
前記増幅部の出力信号としきい値とを比較する比較部と、
前記しきい値を調整するしきい値調整部と、
前記比較部の比較結果に基づいて前記増幅部の出力信号を調整する出力信号調整回路と
を備えたことを特徴とするセンサ出力検出回路。
【請求項2】
前記しきい値調整部は、
しきい値の設定値を格納するしきい値設定部と、
前記設定値に基づいてしきい値を生成するしきい値電圧調整回路と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のセンサ出力検出回路。
【請求項3】
前記比較部は、
前記出力信号としきい値とを比較する比較回路と、
前記比較回路の出力信号が所定時間以上Hレベル若しくはLレベルに維持されるとき、カウントアップ動作若しくはカウントダウン動作に基づくオーバーフロー信号を出力するアップダウンカウンタと、
前記オーバーフロー信号に基づいて、前記出力信号調整回路に制御信号を出力する制御部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のセンサ出力検出回路。
【請求項4】
前記比較回路の出力信号を判定信号として出力することを特徴とする請求項3記載のセンサ出力検出回路。
【請求項5】
前記比較回路とアップダウンカウンタとの間にスイッチを介在させたことを特徴とする請求項4記載のセンサ出力検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−225515(P2007−225515A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48928(P2006−48928)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】