説明

センサ装置

【課題】センサ出力に混入したノイズ成分によって、センサ出力の精度が低下することを抑制する。
【解決手段】コントローラ20は、短絡部SW1によって第1の入力端子In1と第2の入力端子In2とを短絡させた状態で蓄積処理部OTによって第1処理を行うことによって、第1のコンデンサCLへ、少なくとも、センサ部2から出力された電圧信号に重畳したノイズ成分に相当する電荷を蓄積させ、さらに、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2との間の短絡を解除させた状態で蓄積処理部OTによって第2処理を行うことによって、少なくともノイズ成分に相当する電荷が蓄積された第1のコンデンサCLから、ノイズ成分、及び、電圧信号に相当する電荷を放電させる蓄積放電処理と、蓄積放電処理が行われた第1のコンデンサCLを放電させて、放電された電荷の変化を第1の積分部7によって積分させる積分処理とを交互に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出して電圧信号を出力するセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物理量を電気量に変換するセンサ部と、センサ部の出力を検出する検出部とを備えたセンサ装置が知られている。
【0003】
この種のセンサ装置に用いられるセンサ部として、電気量の変化に応じた電流値の変化を出力するいわゆる電流検出型のものと、電気量の変化に応じた電圧値の変化を出力するいわゆる電圧検出型のものとがある。
【0004】
電流検出型のセンサ部と共に用いられる検出部は、センサ部から出力される電荷をサンプリング期間内に蓄積する容量成分と、オンオフ動作により容量成分に蓄積された電荷の充放電を行うスイッチング素子とを具備し、容量成分の両端電圧を出力電圧として出力することが一般的である(たとえば特許文献1参照)。なお、特許文献1において、容量成分として、センサ部と検出部とを接続する信号線と、回路グランドまたは電源と、の間の寄生容量を用いることが記載されている。
【0005】
また、この種の検出部において、スイッチング素子のスイッチングにより発生するノイズを低減するために、一般的にローパスフィルタが用いられている(たとえば特許文献2参照)。
【0006】
一方、電圧検出型のセンサ部と共に用いられる検出部においても、図9に示すように、特許文献1と同様の構成の検出部3を用いることが知られている。図9の構成では、スイッチング素子SW1をオンすることで容量成分C1’の蓄積電荷をリセットし、その後、所定のサンプリング期間にスイッチング素子SW1をオフしてセンサ部2の出力により容量成分C1’を充電する。これにより、センサ部2の出力を容量成分C1’の両端電圧として取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−65847号公報
【特許文献2】特開2007−57449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、センサ装置では、センサ部から出力される電圧信号に、オフセット誤差、フリッカ雑音、サーマルノイズ、スイッチングノイズなどの各種のノイズ成分が混入することがある。このようなノイズ成分が混入していると、センサ出力の検出精度が低下してしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであって、センサ出力に混入したノイズ成分によって、センサ出力の精度が低下することを抑制することができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係るセンサ装置は、基準電圧値を表す基準電圧信号を出力する基準電圧源に接続され、物理量を変換して得られた電圧値を表す電圧信号を、前記基準電圧信号に重畳させて出力するセンサ部と、電荷の蓄積及び電荷の放電を行う第1のコンデンサと、前記センサ部に接続された第1の入力端子と、前記基準電圧源に接続された第2の入力端子と、を備え、前記第1の入力端子に入力された信号で表される電圧値から前記第2の入力端子に入力された前記基準電圧信号で表される前記基準電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を前記第1のコンデンサに蓄積させる第1処理と、前記第2の入力端子に入力された前記基準電圧信号で表される電圧値から、前記第1の入力端子に入力された信号で表される電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を前記第1のコンデンサに蓄積させる第2処理と、を選択的に行う蓄積処理部と、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子とを短絡させる短絡部と、前記第1のコンデンサから放電される電荷の変化を積分する第1の積分部と、前記短絡部によって前記第1の入力端子と前記第2の入力端子とを短絡させた状態で前記蓄積処理部によって前記第1処理を行うことによって、前記第1のコンデンサへ、少なくとも、前記センサ部から出力された前記電圧信号に重畳したノイズ成分に相当する電荷を蓄積させ、さらに、前記短絡部による前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間の短絡を解除させた状態で前記蓄積処理部によって前記第2処理を行うことによって、少なくとも前記ノイズ成分に相当する電荷が蓄積された前記第1のコンデンサから、前記ノイズ成分、及び、前記電圧信号に相当する電荷を放電させる蓄積放電処理と、該蓄積放電処理が行われた前記第1のコンデンサを放電させて、放電された電荷の変化を前記第1の積分部によって積分させる積分処理と、を交互に行うコントローラと、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
第1の入力端子が、基準電圧値を表す基準電圧信号が入力されている第2の入力端子との間で短絡すると、第1の入力端子に基準電圧値が入力される。その結果、第1の入力端子が第2の入力端子との間で短絡している状態で、第1の入力端子にノイズ成分が混入したときには、第1の入力端子側の電圧値が、ノイズ成分の電圧値と基準電圧値との和となる。
【0012】
この構成によれば、コントローラが、第1の入力端子と第2の入力端子とを短絡させた状態で蓄積放電部に第1処理を行わせることによって、第1の入力端子に入力された、ノイズ成分が重畳した状態の基準電圧信号で表される電圧値と第2の入力端子に入力された基準電圧信号で表される電圧値との差分に応じた電荷を、第1のコンデンサに蓄積させる。これにより、第1のコンデンサは、少なくともノイズ成分に相当する電荷が蓄積された状態となる。
【0013】
その後、コントローラが、第1の入力端子と第2の入力端子との間の短絡を解除させた状態で蓄積放電部に第2処理を行わせることによって、少なくともノイズ成分に相当する電荷が蓄積された状態の第1のコンデンサに対して、ノイズ成分、及び、センサ部からの電圧信号に相当する電荷を放電させる。これにより、第1のコンデンサには、蓄積放電部による第1処理が終了した時点の極性とは逆の極性の、センサ部からの電圧信号に相当する電荷が蓄積された状態となる。
【0014】
そして、コントローラが、以上の第1処理及び第2処理を経て第1のコンデンサに蓄積された、電圧信号に相当する電荷を放電させて、放電された電荷の変化を第1の積分部によって積分する。コントローラは、以上の処理を繰り返して行う。
【0015】
このように、センサ部からの電圧信号に相当する電荷の蓄積と、これに続く電荷の変化の積分と、を一連の処理として繰り返し行うため、コントローラが、一連の処理を行う周期を変更すれば、センサ部からの電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期が必然的に変更される。
【0016】
したがって、コントローラが、センサ部からの電圧信号に相当する電荷の蓄積と、これに続く電荷の変化の積分とからなる一連の処理の周期を変更することで、センサ部からの電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期を容易に変更することができる。
【0017】
これにより、コントローラは、センサ部からの電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期を短くすることによって、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を増加させることが容易となる。
【0018】
このように、センサ部からの電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期を短くすることによって、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が除去された電圧信号が反映された積分値の数を容易に増加させることができる。
【0019】
ここにおいて、一般には、センサ部から出力される電圧信号にはノイズ成分が混入しやすいため、当該電圧信号の増幅率を高めるとノイズ成分までもが増幅されてしまう。このため、従来では、当該電圧信号の増幅率をあまり高くすることはできなかった。
【0020】
しかしながら、先述されたように、この構成によれば、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を容易に増加させることができる。したがって、センサ部から出力される電圧信号の増幅率を高めた分だけ、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を増加させることが容易となる。
【0021】
これにより、センサ部から出力される電圧信号の増幅率を高めながら、精度の良いセンサ出力を得ることが容易となる。
【0022】
その結果、センサ出力をデジタル変換するデジタル変換部として、高い分解能を持つ高性能のデジタル変換部を設けることが要されなくなる。結果として、コストの削減を図ることができる。
【0023】
以上により、この構成によれば、センサ出力に混入したノイズ成分によって、センサ出力の精度が低下することを抑制することができるセンサ装置を、低コストで提供することができる。
【0024】
上記構成において、前記第1の積分部は、前記第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサに接続された充電スイッチと、前記第1のコンデンサが前記充電スイッチを介して反転入力端子に接続される一方で、基準電圧を表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力される第1のオペアンプと、一端が前記第1のオペアンプの反転入力端子に接続される一方で、他端が前記第1のオペアンプの出力端子に接続された第2のコンデンサと、を備えることが好ましい(請求項2)。
【0025】
この構成によれば、第1の積分部は、第1のコンデンサに蓄積された電荷を、充電スイッチの制御によって、第1のオペアンプの非反転入力端子と出力端子との間に介在する第2のコンデンサに入力させて第2のコンデンサを充電させる。この第2のコンデンサに充電された電荷の大きさは、最終的に第1の積分部の出力電圧の形で反映される。
【0026】
このように、第1のコンデンサに蓄積された電荷を、充電スイッチの制御によって、第1のオペアンプの非反転入力端子と出力端子との間に介在する第2のコンデンサに蓄積させ、最終的に第1の積分部の出力電圧の形で反映させる積分器は、いわゆるスイッチトキャパシタ積分器と呼ばれる。
【0027】
この種のスイッチトキャパシタ積分器は、一般に、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサ)の静電容量を積分用のコンデンサ(第2のコンデンサ)の静電容量で除して得られた増幅率で、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサ)からの出力電圧を増幅する。
【0028】
これにより、この種の第1の積分部だけで、第1のコンデンサの端子間電圧の大きさを増幅する増幅回路と、第1のコンデンサから放電された電荷の変化を積分する積分回路との双方の機能が実現される。結果として、2つの回路を設けるスペースが要されないため、センサ装置の小型化を図ることができる。
【0029】
上記構成において、前記第1のコンデンサから放電された電荷を増幅する増幅部が設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0030】
この構成によれば、第1のコンデンサから放電された電荷を増幅する増幅部が設けられているため、高い増幅率を得ることができる。したがって、高い分解能を持つ高性能のデジタル変換部を設けることが要されなくなるため、コストの削減を図ることができる。
【0031】
上記構成において、前記第1の積分部には、電荷の蓄積及び放電を行う第3のコンデンサと、前記第3のコンデンサに接続された充電スイッチと、前記第3のコンデンサが前記充電スイッチを介して反転入力端子に接続される一方で、基準電圧を表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力される第2のオペアンプと、一端が前記第2のオペアンプの反転入力端子に接続される一方で、他端が前記第2のオペアンプの出力端子に接続された第4のコンデンサと、からなる1又は複数の第2の積分部が接続されていることが好ましい(請求項4)。
【0032】
一般に、スイッチトキャパシタ積分器は、先述されたように、サンプリング用のコンデンサ(第3のコンデンサ)の静電容量を積分用のコンデンサ(第4のコンデンサ)の静電容量で除して得られた増幅率で、サンプリング用のコンデンサ(第3のコンデンサ)からの出力電圧を増幅する。
【0033】
この構成によれば、第1の積分部には、この種のスイッチトキャパシタ積分器が1又は複数設けられているため、第1のコンデンサの出力電圧を第1の積分部だけで増幅するよりも、高い増幅率を得ることができる。したがって、デジタル変換部に要求される分解能がより低くなるため、コストをより削減することができる。
【0034】
上記構成において、前記第1の積分部の前記第2のコンデンサの静電容量は、前記第1のコンデンサの静電容量よりも小さいことが好ましい(請求項5)。
【0035】
先述されたように、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサ)の静電容量を積分用のコンデンサ(第2のコンデンサ)の静電容量で除して得られた増幅率で、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサ)からの出力電圧を増幅する。
【0036】
したがって、第2のコンデンサの静電容量が第1のコンデンサの静電容量よりも小さい場合に、1を超える増幅率が得られる。
【0037】
この構成によれば、第1の積分部の第2のコンデンサの静電容量は、第1のコンデンサの静電容量よりも小さいため、1を超える増幅率が得られる。これにより、別途、増幅部を設けることが要されない。結果として、コストの低減を図ることができる。
【0038】
上記構成において、前記第2の積分部の前記第4のコンデンサの静電容量は、第3のコンデンサの静電容量よりも小さいことが好ましい(請求項6)。
【0039】
先述されたように、サンプリング用のコンデンサ(第3のコンデンサ)の静電容量を積分用のコンデンサ(第4のコンデンサ)の静電容量で除して得られた増幅率で、サンプリング用のコンデンサ(第3のコンデンサ)からの出力電圧を増幅する。
【0040】
したがって、第4のコンデンサの静電容量が第3のコンデンサの静電容量よりも小さい場合に、1を超える増幅率が得られる。
【0041】
この構成によれば、第2の積分部の第4のコンデンサの静電容量は、第3のコンデンサの静電容量よりも小さいため、1を超える増幅率が得られる。これにより、別途、増幅部を設けることが要されない。結果として、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、センサ出力に混入したノイズ成分によって、センサ出力の精度が低下することを抑制することができる、低コストのセンサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置の回路構成の一例を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るセンサ装置で用いられる電圧電流変換器の回路構成の一例を示した図である。
【図3】スイッチ信号について説明するための図である。
【図4】選択部の他の構成例を示した図である。
【図5】電圧電流変換器の第1処理及び第2処理について詳細に説明するための図である。
【図6】センサ装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るセンサ装置の回路構成の他の例を示した図である。
【図8】センサ装置の参考例を示した図である。
【図9】従来のセンサ装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明者は、センサ出力に混入したノイズ成分によって、センサ出力の精度が低下することを抑制することができる様々なセンサ装置を開発してきた。図8に示されるセンサ装置100は、この種のセンサ装置の一例である。
【0045】
この種のセンサ装置100は、センサ部2のセンサ出力と基準電圧Vreffとの電圧差に応じた電流を出力する電圧電流変換器OT’を備える。この種の電圧電流変換器OT’として、一般的に、gm素子(トランスコンダクタンス素子)あるいはOTA(Operational Transconductance Amplifier)と呼ばれるものが用いられる。
【0046】
電圧電流変換器OT’は、センサ部2の出力側に接続された第1の入力端子In1と、基準電圧Vrefを表す基準電圧信号が印加された第2の入力端子In2とを備えており、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2との間の電圧差に相当する大きさの電流を出力端子Toから出力する。
【0047】
この種のセンサ装置100は、相関2重サンプリング(Correlated Double Sampling:以下、CDSという)を行うことによって、ノイズ成分が混入したセンサ出力と、ノイズ成分との間の差分をサンプリングすることで、センサ出力に及ぼすノイズ成分の影響を軽減する。
【0048】
センサ装置100において、図8に示されるように電圧電流変換器OT’の出力端子Toの後段に、コンデンサC1およびスイッチング素子SW1を具備する信号検出部11と、当該信号検出部11と同様にコンデンサC2およびスイッチング素子SW2を具備するオフセット検出部12とが接続されている。信号検出部11並びにオフセット検出部12は、出力端子Toに対してそれぞれスイッチSW3,SW4を介して接続されている。
【0049】
信号検出部11およびオフセット検出部12の後段には差分部13が設けられている。検出増幅部3の出力電圧Voffは、差分部13によって、信号検出部11のコンデンサCLの両端電圧V1からノイズ検出部12のコンデンサC2の両端電圧V2を差し引いた電圧値とされる。電圧電流変換器4において、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2との間には、ノイズ検出部12側のスイッチSW4と同時にオンされるスイッチSW5が設けられている。
【0050】
この種のセンサ装置100では、コントローラ20が、所定のタイミングでスイッチング素子SW0〜SW5を制御することによって、コンデンサC1へノイズ成分を含むセンサ出力に対応する電荷を蓄積させるとともに、コンデンサC2へノイズ成分に対応する電荷を蓄積させ、その後、コンデンサC1及びC2の各々に蓄積されている電荷の差分を取る。これにより、ノイズ成分による影響が軽減されたセンサ出力を得る。
【0051】
ところで、この種のセンサ装置100では、ノイズ成分による影響が軽減されたセンサ出力を得るために、2つのコンデンサC1及びC2が設けられている。これらのコンデンサC1及びC2は、差分によりノイズ成分による影響を軽減するために、同じ静電容量を有することが要されている。
【0052】
しかしながら、コンデンサC1及びC2の各々の温度特性が異なると、同じだけ周辺温度が変動しても、静電容量が同じだけ変動するとは限らない。また、コンデンサC1及びC2の各々の製造時におけるプロセスばらつきが生じると、各々の静電容量に相違が生じる。
【0053】
このように、コンデンサC1及びC2の各々の静電容量に相違が生じると、ノイズ成分の軽減効率が低下するため、センサ出力を精度良く検出することができない事態が生じることが考えられる。本発明の一実施形態に係るセンサ装置は、このようなおそれを排除したセンサ装置である。
【0054】
以下に、本発明の一実施形態に係るセンサ装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置の回路構成の一例を示した図である。図2は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置で用いられる電圧電流変換器の回路構成の一例を示した図である。
【0055】
図1に示されるセンサ装置1は、基準電圧値Vrefを表す基準電圧信号を出力する基準電圧源に接続され、物理量を変換して得られた電圧値を表す電圧信号を、基準電圧信号に重畳させて出力する電圧検出型のセンサ部2と、センサ部2から出力される電圧信号を検出する検出部3と、検出部3により検出された電圧信号をデジタル変換するADコンバータADと、このセンサ装置1を統括的に制御するコントローラ20と、を備える。
【0056】
このセンサ装置1では、センサ部2と検出部3との間にはスイッチSW0が設けられており、センサ部2からの電圧信号を検出する際には、コントローラ20がスイッチSW0をオン状態とする。
【0057】
検出部3は、入力された電圧値に応じた大きさの電流を後段に出力する電圧電流変換器(蓄積処理部)OTと、電荷の蓄積及び放電を行うコンデンサ(第1のコンデンサ)CLと、コンデンサCLに蓄積されている電荷が放電されたときにその電荷の変化を積分する積分部(第1の積分部)7と、を備える。
【0058】
電圧電流変換器OTは、図2に示されるように、センサ部2からの電圧信号が、基準電圧信号が重畳した状態で入力される第1の入力端子In1と、基準電圧信号が入力される第2の入力端子In2と、を備える。電圧電流変換器OTにおいて、スイッチ(短絡部)SW1は、コントローラ20によって制御され、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2とを短絡させる機能を有する。
【0059】
電圧電流変換器OTにおいて、第1及び第2の入力端子In1及びIn2には、PチャネルMOSFETからなるトランジスタTr1及びTr2のゲートがそれぞれ接続されている。トランジスタTr1及びTr2には直流電圧源VDDからの直流電圧が印加されており、トランジスタTr1及びTr2のソース電位が等しくなるようにそれぞれのソースが共通の定電流源5に接続されている。
【0060】
これにより、トランジスタTr1及びTr2の各々で流れるドレイン電流の電流値が、それぞれのゲート電圧の大きさに従って決定される。つまり、トランジスタTr1のドレイン電流の電流値がセンサ部2からの信号の電圧値に従って決定される一方で、トランジスタTr2のドレイン電流の電流値が基準電圧信号の電圧値に従って決定される。
【0061】
トランジスタTr1のドレインは、第1のカレントミラーM1の入力側となるトランジスタTr3を通して接地点GNDに接続されており、トランジスタTr2のドレインは、第2のカレントミラーM2の入力側となるトランジスタTr4を通して接地点GNDに接続されている。
【0062】
具体的には、トランジスタTr3及びTr4はNチャネルMOSFETからなる。トランジスタTr3のドレインがトランジスタTr1のドレインに接続されている一方で、トランジスタTr4のドレインがトランジスタTr2のドレインに接続されている。
【0063】
さらに、トランジスタTr3及びトランジスタTr4の各々のゲートが接地点GNDに接続されている。
【0064】
これにより、トランジスタTr3のドレイン−ソースが、トランジスタTr1のソース−ドレインに直列に接続されることになる。その一方で、トランジスタTr4のドレイン−ソースが、トランジスタTr2のソース−ドレインに直列に接続されることになる。その結果、トランジスタTr1で流れるドレイン電流がトランジスタTr3のドレイン電流となる一方で、トランジスタTr2で流れるドレイン電流がトランジスタTr4のドレイン電流となる。
【0065】
第1のカレントミラーM1は、NチャネルMOSFETからなるトランジスタTr3及びTr5からなる。トランジスタTr3は第1のカレントミラーM1の入力側のトランジスタであり、このトランジスタTr3のドレイン電流がそのまま出力側のトランジスタTr5のドレイン電流となる。
【0066】
また、第2のカレントミラーM2は、NチャネルMOSFETからなるトランジスタTr4及びTr6からなる。トランジスタTr4は第2のカレントミラーM2の入力側のトランジスタであり、このトランジスタTr4のドレイン電流がそのまま出力側のトランジスタTr6のドレイン電流となる。
【0067】
そして、トランジスタTr5のドレインは、スイッチング素子Q1を介してトランジスタTr7に接続されており、さらに、スイッチング素子Q3を介してトランジスタTr8に接続されている。また、トランジスタTr6のドレインは、スイッチング素子Q2を介してトランジスタTr8に接続されており、さらに、スイッチング素子Q4を介してトランジスタTr7に接続されている。
【0068】
トランジスタTr7及びTr8の各々はPチャネルMOSFETからなる。トランジスタTr7及びTr8は、トランジスタTr7を入力側トランジスタ、トランジスタTr8を出力側トランジスタとする第3のカレントミラーM3を形成している。
【0069】
第3のカレントミラーM3では、トランジスタTr7のゲートと、トランジスタTr8のゲートとが接続されている。また、トランジスタTr7のソースと、トランジスタTr8のソースとが、直流電圧源VDDに接続されている。
【0070】
トランジスタTr7のドレインは、スイッチング素子Q1を通じてトランジスタTr5のドレインに接続されている。その一方で、トランジスタTr8のドレインは、スイッチング素子Q2を通じてトランジスタTr6のドレインに接続されている。
【0071】
さらに、第3のカレントミラーM3のトランジスタTr8のドレインと、スイッチング素子Q2との間の接続点には、コンデンサCLが接続されており、このコンデンサCLの両端電圧が出力電圧として取り出される。
【0072】
また、電圧電流変換部OTは、以下の機能を有する選択部6を備える。この選択部6は、スイッチング素子Q1〜Q4で構成されている。
【0073】
スイッチング素子Q1及びQ3は、トランジスタTr5とトランジスタTr7とを接続するか、及び、トランジスタTr5とトランジスタTr8とを接続するかのいずれか一方を選択する。
【0074】
また、スイッチング素子Q2及びQ4は、トランジスタTr6とトランジスタTr7とを接続するか、及び、トランジスタTr6とトランジスタTr8とを接続するかのいずれか一方を選択する。
【0075】
スイッチング素子Q1、Q2はいずれもコントローラ20から出力されるスイッチ信号φ1によってオンオフ制御される一方で、スイッチング素子Q3、Q4はいずれもコントローラ20から出力されるスイッチ信号φ2によってオンオフ制御される。具体的には、スイッチング素子Q1〜Q4はそれぞれNチャネルMOSFETからなり、ゲートにスイッチ信号φ1、φ2が入力されることにより、対応するスイッチ信号φ1、φ2がH(ハイ)レベルのときにオンし、L(ロー)レベルのときにオフする。
【0076】
ここに、スイッチング素子Q1及びQ2の組み合わせと、スイッチング素子Q3及びQ4の組み合わせとが同時にオンすることのないように、図3に示すように互いに逆位相のスイッチ信号φ1、φ2がスイッチング素子Q1〜Q4のゲートに入力される。
【0077】
電圧電流変換器OTは、コントローラ20による制御を受け付けて、後述される第1処理及び第2処理を行う。コントローラ20は、電圧電流変換器OTに第1処理を行わせる際には、スイッチ信号φ1のハイレベル信号をスイッチング素子Q1及びQ2に出力する一方で、電圧電流変換器OTに第2処理を行わせる際には、スイッチ信号φ2のハイレベル信号をスイッチング素子Q3及びQ4に出力する。
【0078】
以下、電圧電流変換部OTによる第1処理及び第2処理の基本動作について、図1及び図2を用いて説明する。ここでは、コンデンサCLは、後述されるスイッチSW4及びSW5がオン状態とされて基準電圧Vrefに相当する電荷が蓄積されているものとする。
【0079】
電圧電流変換部OTが第1処理を行うために、コントローラ20からのスイッチ信号φ1によってスイッチング素子Q1及びQ2がオン状態とされる一方で、スイッチング素子Q3及びQ4はオフ状態とされる。これにより、電圧電流変換部OTによる第1処理が開始される。
【0080】
電圧電流変換部OTでは、第1のカレントミラーM1の出力側のトランジスタTr5のドレインと、第3のカレントミラーM3のトランジスタTr7のドレインとが導通し、第2のカレントミラーM2の出力側のトランジスタTr6のドレインと、第3のカレントミラーM3のトランジスタTr8のドレインとが導通する。
【0081】
このような状態で、入力端子In1に電圧信号が入力されると、トランジスタTr1でドレイン電流が流れる。このトランジスタTr1のドレイン電流の電流値は、第1のカレントミラーM1の出力側のトランジスタTr5のドレイン電流の電流値を決定する。
【0082】
そして、第1のカレントミラーM1の出力側のトランジスタTr5のドレイン電流の電流値は、第3のカレントミラーM3の入力側のトランジスタTr7のドレイン電流の電流値を決定するため、結果として、第3のカレントミラーM3の出力側のトランジスタTr8のドレイン電流の電流値を決定する。
【0083】
その一方で、入力端子In2に基準電圧信号が入力されると、トランジスタTr2でドレイン電流が流れる。このトランジスタTr2のドレイン電流の電流値は、第2のカレントミラーM2の出力側のトランジスタTr6のドレイン電流の電流値を決定する。
【0084】
その結果、トランジスタTr8は、第1の入力端子In1への入力に応じた大きさの電流を供給電流としてコンデンサCLに供給する一方で、トランジスタTr6は、第2の入力端子In2への入力に応じた大きさの電流をコンデンサCLから引き抜く。
【0085】
結果として、電圧電流変換器OTは、第1の入力端子In1に入力された電圧信号で表される電圧値から、第2の入力端子In2に入力された基準電圧信号で表される基準電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を、コンデンサCLに蓄積させる。
【0086】
一方、電圧電流変換部OTが第2処理を行うために、コントローラ20からのスイッチ信号φ2によってスイッチング素子Q3及びQ4がオン状態とされる一方で、スイッチング素子Q1及びQ2はオフ状態とされる。これにより、電圧電流変換部OTによる第2処理が開始される。
【0087】
電圧電流変換器OTでは、第1のカレントミラーM1の出力側のトランジスタTr5のドレインと、第3のカレントミラーTr8のドレインとが導通し、第2のカレントミラーM2の出力側のトランジスタTr6のドレインと、第3のカレントミラーTr7のドレインとが導通する。
【0088】
このような状態で、入力端子In2に基準電圧信号が入力されると、トランジスタTr2でドレイン電流が流れる。このトランジスタTr2のドレイン電流の電流値は、第2のカレントミラーM2の出力側のトランジスタTr6のドレイン電流の電流値を決定する。
【0089】
そして、第2のカレントミラーM2の出力側のトランジスタTr6のドレイン電流の電流値は、第3のカレントミラーM3の入力側のトランジスタTr7のドレイン電流の電流値を決定するため、結果として、第3のカレントミラーM3の出力側のトランジスタTr8のドレイン電流の電流値を決定する。
【0090】
その一方で、入力端子In1に電圧信号が入力されると、トランジスタTr1でドレイン電流が流れる。このトランジスタTr1のドレイン電流の電流値は、第1のカレントミラーM1の出力側のトランジスタTr5のドレイン電流の電流値を決定する。
【0091】
その結果、トランジスタTr8は、第2の入力端子In2への入力に応じた大きさの電流を供給電流としてコンデンサCLに供給する一方で、トランジスタTr5は、第1の入力端子In1への入力に応じた大きさの電流をコンデンサCLから引き抜く。
【0092】
結果として、電圧電流変換器OTは、第2の入力端子In2に入力された基準電圧信号で表される電圧値から、第1の入力端子In1に入力された電圧信号で表される電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を、コンデンサCLに蓄積させる。
【0093】
ところで、選択部6において、スイッチング素子Q1〜Q4の各々に代えて、NチャネルMOSFET(図中QX)とPチャネルMOSFET(図中QY)とを逆直列に接続して構成されたスイッチング素子QQを設けてもよい。
【0094】
この種のスイッチング素子QQがスイッチング素子Q1及びQ2に代えて設けられた場合には、NチャネルMOSFET(QX)及びPチャネルMOSFET(QY)の各ゲートにはスイッチ信号φ1が入力される。その一方で、スイッチング素子QQがスイッチング素子Q3及びQ4に代えて設けられた場合には、NチャネルMOSFET(QX)及びPチャネルMOSFET(QY)の各ゲートにはスイッチ信号φ2が入力される。
【0095】
ここにおいて、スイッチング素子QQでは、NチャネルMOSFET(QX)のドレインが、トランジスタTr7又はトランジスタTr8のドレインに接続される。その一方で、NチャネルMOSFET(QX)のソースが、トランジスタTr5又はトランジスタTr6のドレインに接続されている。
【0096】
その一方で、PチャネルMOSFET(QY)のドレインが、トランジスタTr5又はトランジスタTr6のドレインに接続される。その一方で、PチャネルMOSFET(QY)のソースが、トランジスタTr7又はトランジスタTr8のドレインに接続されている。
【0097】
一般に、NチャネルMOSFETでは、ゲート電圧がソース電圧より高い時にドレイン電流が流れる。これに対してPチャネルMOSFETでは、ゲート電圧がソース電圧より低い時にドレイン電流が流れる。
【0098】
したがって、図2に示されるように、NチャネルMOSFETからなるスイッチング素子Q1〜Q4の各々では、ゲート電圧がソース電圧より低い場合にはドレイン電流が流れない。そのため、スイッチング素子Q1〜Q4の各々に入力されるスイッチ信号φ1、φ2のハイレベル信号の電圧値がソース電圧より低いと、スイッチング素子Q1〜Q4の各々において適切なスイッチング動作が行われなくなる。
【0099】
これに対して、NチャネルMOSFET(QX)及びPチャネルMOSFET(QY)からなるスイッチング素子QQでは、両MOSFET(QX及びQY)に、スイッチ信号φ1及びφ2が入力されるため、スイッチ信号φ1及びφ2のハイレベル信号の電圧値が仮にソース電圧よりも低くても、PチャネルMOSFET(QY)において適切なスイッチング動作が行われる。
【0100】
以上に示されるように、図2に示されるスイッチング素子Q1〜Q4の各々に代えて、図4に示されるスイッチング素子QQを設けた場合には、スイッチ信号φ1及びφ2のハイレベル信号が十分な電圧値を有していない場合でも、各スイッチング素子QQにおいて適切なスイッチング動作が行われるという利点を有する。
【0101】
以下、図1に戻って、センサ装置1の説明を続ける。
【0102】
検出部3において、電圧電流変換器OTと、コンデンサCLとの間には、スイッチSW2〜SW4が設けられている。また、コンデンサCLと積分部7との間にはスイッチSW5及び充電スイッチSW6が設けられている。
【0103】
積分部7は、コンデンサCLと、コンデンサに接続された充電スイッチSW6と、充電スイッチSW6が反転入力端子に接続される一方で、基準電圧Vrefを表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力されるオペアンプ(第1のオペアンプ)OPと、一端がオペアンプOPの反転入力端子に接続される一方で、他端がオペアンプOPの出力端子に接続されたコンデンサ(第2のコンデンサ)CFと、コンデンサCFの両端を短絡させてコンデンサCFに蓄積されている電荷を放電させるためのスイッチSW7と、を備える。
【0104】
この積分部7は、コンデンサCLに蓄積された電荷を、充電スイッチSW6の制御によって、オペアンプOPの非反転入力端子と出力端子との間に介在するコンデンサCFに入力させてコンデンサCFを充電させる。このコンデンサCFに充電された電荷の大きさは、最終的に積分部7の出力電圧の形で反映される。
【0105】
このように、コンデンサCLに蓄積された電荷を、充電スイッチSW6の制御によって、オペアンプOPの非反転入力端子と出力端子との間に介在するコンデンサCFに蓄積させ、最終的に積分部7の出力電圧の形で反映させる積分器は、いわゆるスイッチトキャパシタ積分器と呼ばれる。
【0106】
この種のスイッチトキャパシタ積分器は、一般に、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサCL)の静電容量を積分用のコンデンサ(第2のコンデンサCF)の静電容量で除して得られた増幅率で、サンプリング用のコンデンサ(第1のコンデンサCL)からの出力電圧を増幅する。
【0107】
これにより、この種の積分部7だけで、コンデンサCLの端子間電圧の大きさを増幅する増幅回路と、コンデンサCLから放電された電荷の変化を積分する積分回路との双方の機能が実現される。結果として、2つの回路を設けるスペースが要されないため、センサ装置の小型化を図ることができる。
【0108】
また、コンデンサCFの静電容量は、コンデンサCLの静電容量よりも小さくされている。
【0109】
先述されたように、積分部7では、コンデンサCLの端子間電圧を、コンデンサCLの静電容量をコンデンサCFの静電容量で除して得られた値で定められる増幅率で増幅して、出力電圧として出力する。したがって、コンデンサCFの静電容量がコンデンサCLの静電容量よりも小さければ、少なくとも1を超える増幅率が得られる。この構成によれば、積分部7のコンデンサCFの静電容量は、コンデンサCLの静電容量よりも小さいので、別途、増幅部を要さずに増幅率を得ることができる。
【0110】
以下に、電圧電流変換器OTの第1処理及び第2処理について、図1及び図5を用いて詳細に説明する。ここにおいて、電圧電流変換器OTにおいて効率良く抑制できるノイズとしては、例えば、回路オフセット及びフリッカノイズがある。以下の説明では、電圧電流変換器OTによる抑制の対象となるノイズを、回路オフセットとする。このような回路オフセットを、以下の説明において、ノイズ成分Voffとして説明する。
【0111】
図5(a)に示すように、第1の入力端子In1はセンサ部2に接続されており、第2の入力端子In2は、基準電圧値Vrefを表す基準電圧信号を出力する基準電圧源Vref(VDD>Vref>GND)に接続されている。尚、コンデンサCLは、第1処理が行われる前提として、基準電圧源による基準電圧信号で表されている基準電圧値Vrefに相当する電荷が蓄積されているものとする。
【0112】
コントローラ20は、電圧電流変換器OTに第1処理を行わせる際には、短絡スイッチSW1をオン状態として第1の入力端子In1と第2の入力端子In2とを短絡させる。この状態では、第1および第2の入力端子In1、In2に、基準電圧値Vrefで表される基準電圧信号が入力されることになる。
【0113】
その一方で、コントローラ20は、電圧電流変換器OTに第2処理を行わせる際には、短絡スイッチSW1をオフ状態として、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2との短絡を解除させる。この状態では、第1の入力端子In1にはセンサ部2からの電圧信号Vsigが、基準電圧信号が重畳した状態で入力される一方で、第2の入力端子In2には基準電圧信号が入力されることになる。
【0114】
ここに、基準電圧値Vrefは赤外線を受光していない状態でのセンサ部2の出力と同じ大きさに設定されている。したがって、センサ部2の出力と基準電圧値Vrefとの差分は、赤外線を受光したことによるセンサ部2の出力変化に相当し、言い換えればセンサ部2での赤外線受光量に相当する。
【0115】
電圧電流変換器OTは、第1処理を開始したときには、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2とが短絡した状態であるから、第1および第2の入力端子In1及びIn2に基準電圧値Vrefで表される基準電圧信号が入力される。したがって、理想的には、第1の入力端子In1における電圧値と第2の入力端子In2における電圧値が同じとなるから、コンデンサCLの両端電圧(出力電圧)は変化しないはずである。
【0116】
しかしながら、実際には、入力端子In1に入力される電圧信号には、ノイズ成分Voffが混入しているため、第1の入力端子In1における電圧値と第2の入力端子In2における電圧値との間に差が生じるので、コンデンサCLに対して、その差に応じた電荷が蓄積されることになる。
【0117】
これにより、図5(b)に示されるように、第1の入力端子In1における電圧値と第2の入力端子In2における電圧値との差であるノイズ成分Voffの電圧値に相当する電荷が、基準電圧値Vrefに相当する電荷が蓄積された状態のコンデンサCLに順次蓄積される。
【0118】
その後、電圧電流変換器OTが第2処理を開始したときには、第1の入力端子In1と第2の入力端子In2との短絡が解除されているから、第1の入力端子In1にはセンサ部2の出力が入力される一方で、第2の入力端子In2には基準電圧値Vrefを表す基準電圧信号が入力される。
【0119】
電圧電流変換器OTは、第2処理では、第2の入力端子In2に入力された基準電圧信号で表される電圧値から、第1の入力端子In1に基準電圧信号が重畳した状態で入力された電圧信号Vsigで表される電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を、ノイズ成分Voff及び基準電圧値Vrefに相当する電荷が蓄積された状態のコンデンサCLに蓄積させる。
【0120】
その結果、ノイズ成分Voff及び基準電圧値Vrefに相当する電荷が蓄積された状態のコンデンサCLから、ノイズ成分Voff、基準電圧値Vref、及び、電圧信号Vsigに相当する電荷が放電されることになる。その結果、コンデンサCLには、電圧信号Vsigに相当する電荷が、基準電圧値Vrefに対する負の極性の電荷として蓄積された状態となる。
【0121】
このような構成のセンサ装置1は、コントローラ20の制御によって、以下に示されるように動作する。これについて、図1及び図6を用いて説明する。
【0122】
コントローラ20は、短絡スイッチSW1、スイッチSW3及びSW5をオン状態とさせる一方で、スイッチSW2及びSW4、及び、充電スイッチSW6をオフ状態とさせる。この状態で、コントローラ20は、電圧電流変換器OTにより第1処理を行って、基準電圧値Vrefに相当する電荷を蓄積した状態のコンデンサCLにノイズ成分に相当する電荷を蓄積させる。この処理は、図6において、“Offset sample”で表されており、Ts秒間の間に行われる。
【0123】
尚、コンデンサCLを、基準電圧値Vrefに相当する電荷を蓄積した状態とする処理(いわゆるコンデンサCLのリセット処理)として、例えば、スイッチSW0〜SW7のうち、スイッチSW4及びSW5をオン状態とさせて、コンデンサCLの一端を基準電圧源Vrefに接続する一方でその他端を接地点GNDに接続することが挙げられる。
【0124】
ついで、コントローラ20は、短絡スイッチSW1をオフ状態とし、この状態で、電圧電流変換器OTにより第2処理を行う。その結果、コンデンサCLにはノイズ成分による影響が軽減された電圧信号に相当する電荷が蓄積される。この処理は、図6において、“Signal sample”で表されており、Ts秒間の間に行われる。
【0125】
以上に示される処理が、蓄積放電処理である。この蓄積放電処理が終了すると、コントローラ20は、以下の処理を行う。
【0126】
ついで、コントローラ20は、短絡スイッチSW1、SW3、及び、SW5をオフ状態とさせる一方で、スイッチSW4及び充電スイッチSW6をオン状態とさせる。この状態では、基準電圧源から、スイッチSW4、コンデンサCL、及び、充電スイッチSW6を通じて積分部7に至る電荷経路が形成される。
【0127】
その結果、コンデンサCLに蓄積されている、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号に相当する電荷が放電されて積分部7に達するので、積分部7は、その電荷を順次受け付ける(以上、積分処理)。この処理は、図6において、“Sample”で表されている。また、この処理において、積分部7に達した電荷が順次オペアンプOPで増幅されてコンデンサCFに蓄積されるため、図6において、“Signal amplification”で表されている。この処理は、Tamp秒間の間に行われる。
【0128】
以上の蓄積放電処理及び積分処理をコントローラ20がサンプリング期間Tcdsの間行う。コントローラ20は、以上の処理を、コンデンサCLのリセット処理(先述)を挟みながら繰り返し行う。
【0129】
また、コントローラ20は、適宜、スイッチSW2をオン状態とさせて、電圧電流変換器OTをリセットして、電圧電流変換器OTの寄生容量を除去する。
【0130】
ここにおいて、図6に示されている“Hold”は、コンデンサCFがコンデンサCLから放電された電荷の全てをコンデンサCFが受け付けたときにその電荷を保持する処理である。コントローラ20は、このようにコンデンサCFが保持している電荷を、適宜、スイッチSW7をオン状態とすることによって放電させて、ADコンバータADへ入力させる。
【0131】
このように、コントローラ20が、以上の第1処理及び第2処理を経て第1のコンデンサCLに蓄積された、電圧信号に相当する電荷を放電させて、放電された電荷の変化を積分部7によって積分する。コントローラ20は、以上の処理を繰り返して行う。
【0132】
このように、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号に相当する電荷の蓄積と、これに続く電荷の変化の積分と、を一連の処理として繰り返し行うため、コントローラ20が、一連の処理を行う周期を変更すれば、電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期が必然的に変更される。
【0133】
したがって、コントローラ20が、電圧信号に相当する電荷の蓄積と、これに続く電荷の変化の積分とからなる一連の処理の周期を変更することで、電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期を容易に変更することができる。
【0134】
これにより、コントローラ20は、電圧信号に相当する電荷を蓄積する周期、及び、これに続く電荷の変化の積分を行う周期を短くすることによって、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を増加させることが容易となる。
【0135】
ここにおいて、一般には、センサ部から出力される電圧信号にはノイズ成分が混入しやすいため、当該電圧信号の増幅率を高めるとノイズ成分までもが増幅されてしまう。このため、従来では、当該電圧信号の増幅率をあまり高くすることはできなかった。
【0136】
しかしながら、先述されたように、この構成によれば、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を容易に増加させることができる。したがって、センサ部2から出力される電圧信号の増幅率を高めた分だけ、単位時間当たりに得られる、ノイズ成分による影響が軽減された電圧信号が反映された積分値の数を増加させることが容易となる。
【0137】
これにより、センサ部2から出力される電圧信号の増幅率を高めながら、精度の良いセンサ出力を得ることが容易となる。その結果、高い分解能を持つ高性能のADコンバータADを設けることが要されなくなる。結果として、コストの削減を図ることができる。
【0138】
図7は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置の他の回路構成の一例を示した図である。このセンサ装置1Aでは、コンデンサCLから放電された電荷の変化を積分する積分部7の後段には、スイッチ群を介して、コンデンサ(第3のコンデンサ)CL1から放電された電荷の変化を積分する積分部(第2の積分部)70が接続されている。センサ装置1Aにおいて、コンデンサCL1は、積分部7のコンデンサCFから放電された電荷の蓄積及び放電を行う。
【0139】
積分部70は、コンデンサCL1と、コンデンサCL1に接続された充電スイッチSW11と、充電スイッチSW11が反転入力端子に接続される一方で、基準電圧Vrefを表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力されるオペアンプ(第2のオペアンプ)OP1と、一端がオペアンプOP1の反転入力端子に接続される一方で、他端がオペアンプOP1の出力端子に接続されたコンデンサ(第4のコンデンサ)CF1と、コンデンサCF1の両端を短絡させてコンデンサCF1に蓄積されている電荷を放電させるためのスイッチSW12と、を備える。
【0140】
この積分部70は、コンデンサCL1に蓄積された電荷を、充電スイッチSW11の制御によって、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子との間に介在するコンデンサCF1に入力させてコンデンサCF1を充電させる。このコンデンサCFに充電された電荷の大きさは、最終的に積分部70の出力電圧の形で反映される。
【0141】
このように、コンデンサCL1に蓄積された電荷を、充電スイッチSW11の制御によって、オペアンプOP1の非反転入力端子と出力端子との間に介在するコンデンサCF1に蓄積させ、最終的に積分部70の出力電圧の形で反映させる積分器は、いわゆるスイッチトキャパシタ積分器と呼ばれる。
【0142】
また、積分部7と積分部70との間に介在するスイッチ群は、積分部7のオペアンプOPの出力端子に一端が接続されたスイッチSW8と、スイッチSW8の他端とコンデンサCL1の一端との間を接続点として一端が接続される一方で、他端が回路グランドに接続されるスイッチSW9と、コンデンサCL1の他端と充電スイッチSW11の一端との間を接続点として一端が接続される一方で、他端が基準電圧源Vrefに接続されるスイッチSW10と、充電スイッチSW11と、で構成されている。
【0143】
この構成によれば、積分部7における積分処理でコンデンサCFに蓄積された電荷が放電し、放電した電荷がコンデンサCL1に蓄積される。積分部70は、コンデンサCL1に蓄積された電荷を用いて積分を行う。
【0144】
以下、センサ装置1の動作を、図7とともに説明する。コントローラ20は、積分部70による積分処理を行うにあたり、スイッチSW9、SW10、及びSW12をオン状態とさせて、コンデンサCL1及びコンデンサCF1をリセットする。このとき、コンデンサCL1及びコンデンサCF1には、基準電圧値Vrefに相当する電荷が蓄積された状態となる。
【0145】
ついで、コントローラ20は、スイッチSW9、SW10、及びSW12をオフ状態としてから、スイッチSW8及びSW11をオン状態とする。すると、積分部7のオペアンプOPの出力端子からコンデンサCL1を経て積分部70のオペアンプOP1の反転入力端子に通じる経路が形成される。
【0146】
このとき、積分部7のコンデンサCFには、基準電圧値Vrefよりも低い電圧値のセンサ出力成分Vsigに相当する電荷が蓄積されているため(図5(b)参照)、コンデンサCFの電荷が放電されて、コンデンサCL1の方向へ向かう。これにより、コンデンサCL1には、センサ出力成分Vsigと基準電圧値Vsigに相当する電荷が順次蓄積される。
【0147】
すると、積分部70のオペアンプOP1の反転入力端子の電圧値が、コンデンサCL1の電荷の変化に応じて順次変化する。このとき、オペアンプOP1は、反転入力端子の電圧値を、非反転入力端子の基準電圧値Vrefに近づけるべく、出力端子と非反転入力端子との間に電荷を流す。これにより、積分部70のコンデンサCF1には、コンデンサCL1の電荷の変化に応じた電荷が順次蓄積される。
【0148】
ところで、このセンサ装置1Aのように、いわゆるスイッチトキャパシタからなる積分部70が、充電スイッチSW11を介してコンデンサCL1に接続されている場合、積分部70で得られる出力電圧の値として、コンデンサCL1の端子間電圧の値を“CL1/CF1”倍した値が得られる。ここにおいて、“CL1”をコンデンサCL1の静電容量であり、“CF1”はコンデンサCFの静電容量である。
【0149】
図7に示される構成では、コンデンサCF1の静電容量は、コンデンサCL1の静電容量よりも小さくされている。
【0150】
先述されたように、積分部70では、コンデンサCL1の端子間電圧を、コンデンサCL1の静電容量をコンデンサCF1の静電容量で除して得られた値で定められる増幅率で増幅して、出力電圧として出力する。したがって、コンデンサCF1の静電容量がコンデンサCL1の静電容量よりも小さければ、少なくとも1を超える増幅率が得られる。
【0151】
図7に示される構成によれば、コンデンサCF1の静電容量がコンデンサCL1の静電容量よりも小さく設定されているので、ADコンバータADには、電圧値が増幅されたセンサ信号成分Vsigが入力されるため、高い分解能を持つ高性能のADコンバータADを設けることが要されなくなる。その結果、コストの削減を図ることができる。
【0152】
尚、以上の説明において、積分部として、積分部7および積分部70を設けた構成を例示しているが、複数の積分部7及び70に代えて、積分部7の前段に、コンデンサCLから放電された電荷を増幅する増幅部(図示せず)が設けられていても、同様に、高い増幅率を得ることができる。
【0153】
さらに、積分部70は1つのみ設けられているが、複数の積分部70が順次直列に接続された場合には、さらなる増幅率が得られる。
【符号の説明】
【0154】
1,1A センサ装置
2 センサ部
7 第1の積分部
70 第2の積分部
20 コントローラ
CL 第1のコンデンサ
CF 第2のコンデンサ
CL1 第3のコンデンサ
CF1 第4のコンデンサ
In1 第1の入力端子
In2 第2の入力端子
OT 電圧電流変換器
SW1 短絡スイッチ
SW6 充電スイッチ
OP 第1のオペアンプ
OP1 第2のオペアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧値を表す基準電圧信号を出力する基準電圧源に接続され、物理量を変換して得られた電圧値を表す電圧信号を、前記基準電圧信号に重畳させて出力するセンサ部と、
電荷の蓄積及び電荷の放電を行う第1のコンデンサと、
前記センサ部に接続された第1の入力端子と、前記基準電圧源に接続された第2の入力端子と、を備え、前記第1の入力端子に入力された信号で表される電圧値から前記第2の入力端子に入力された前記基準電圧信号で表される前記基準電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を前記第1のコンデンサに蓄積させる第1処理と、前記第2の入力端子に入力された前記基準電圧信号で表される電圧値から、前記第1の入力端子に入力された信号で表される電圧値を減算して得られた値に応じた電荷を前記第1のコンデンサに蓄積させる第2処理と、を選択的に行う蓄積処理部と、
前記第1の入力端子と前記第2の入力端子とを短絡させる短絡部と、
前記第1のコンデンサから放電される電荷の変化を積分する第1の積分部と、
前記短絡部によって前記第1の入力端子と前記第2の入力端子とを短絡させた状態で前記蓄積処理部によって前記第1処理を行うことによって、前記第1のコンデンサへ、少なくとも、前記センサ部から出力された前記電圧信号に重畳したノイズ成分に相当する電荷を蓄積させ、さらに、前記短絡部による前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間の短絡を解除させた状態で前記蓄積処理部によって前記第2処理を行うことによって、少なくとも前記ノイズ成分に相当する電荷が蓄積された前記第1のコンデンサから、前記ノイズ成分、及び、前記電圧信号に相当する電荷を放電させる蓄積放電処理と、
当該蓄積放電処理が行われた前記第1のコンデンサを放電させて、放電された電荷の変化を前記第1の積分部によって積分させる積分処理と、を交互に行うコントローラと、
を備えることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記第1の積分部は、
前記第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに接続された充電スイッチと、
前記第1のコンデンサが前記充電スイッチを介して反転入力端子に接続される一方で、基準電圧を表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力される第1のオペアンプと、
一端が前記第1のオペアンプの反転入力端子に接続される一方で、他端が前記第1のオペアンプの出力端子に接続された第2のコンデンサと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1のコンデンサから放電された電荷を増幅する増幅部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記第1の積分部には、
電荷の蓄積及び放電を行う第3のコンデンサと、
前記第3のコンデンサに接続された充電スイッチと、
前記第3のコンデンサが前記充電スイッチを介して反転入力端子に接続される一方で、基準電圧を表す基準電圧信号が非反転入力端子に入力される第2のオペアンプと、
一端が前記第2のオペアンプの反転入力端子に接続される一方で、他端が前記第2のオペアンプの出力端子に接続された第4のコンデンサと、からなる1又は複数の第2の積分部が接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1の積分部の前記第2のコンデンサの静電容量は、前記第1のコンデンサの静電容量よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記第2の積分部の前記第4のコンデンサの静電容量は、前記第3のコンデンサの静電容量よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−127908(P2011−127908A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283868(P2009−283868)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】