説明

センシンレン(Andrographispaniculata)由来の粗抽出物

【課題】本発明は、センシンレン(Andrographis paniculata)抽出物を用いて、TNFα又はIL−1β発現を阻害する方法に関する。
【解決手段】本発明は、センシンレンの抽出物が、TNFα及びIL−1β両方の発現を阻害するという驚くべき発見に基づく。前記抽出物は、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲンアンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対するクロスリファレンス)
35USC§119(e)に準拠して、本出願は、2004年4月28日に出願された米国特許仮出願第60/566,477号の優先権を主張し、該仮出願の内容は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子α(TNF−α)は、単核細胞サイトカインであり、主に単球及びマクロファージにより産生される。TNF−αは多様な生物学的活性、すなわち:(1)癌細胞を殺す、又は癌細胞の増殖を阻害する活性、(2)好中性顆粒球の食作用を増進する活性、(3)感染性病原体を殺す活性、及び(4)炎症反応中、血管内皮細胞上の接着分子の発現を増加させる活性を有する。
【0003】
TNF−αの発現に関連した障害は、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、骨関節症、脊椎関節症、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、慢性心不全、全身エリテマトーデス、硬皮症、類肉腫症、多発性筋炎/皮膚筋炎、乾癬、多発性骨髄腫、脊髄形成異常の症候群、急性骨髄性白血病、パーキンソン病、ADDS痴呆複合体、アルツハイマー病、うつ病、敗血症、膿皮症壊疽、血敗血症、感染性ショック、ベーチェット症候群、移植片対宿主病、ブドウ膜炎、ヴェゲナーの肉芽腫症、シェーグレン症候群、慢性閉塞性肺疾患、喘息、急性膵炎、歯周病、悪液質、中枢神経系損傷、癌(例えば肺癌腫、食道癌、胃腺癌及び前立腺癌)、ウィルス性呼吸器疾患及び肥満を含むが、これに限定されるものではない。詳細は、非特許文献1から25を参照のこと。
【0004】
インターロイキン−1β(IL−1β)は、単球、マクロファージ及び樹状細胞などの細胞により分泌されるサイトカインであり、広範囲の免疫反応及び炎症反応を仲介する。IL−1β産生を調節することにより、種々の障害(例えば慢性関節リウマチ、血敗血症、歯周病、慢性心不全、多発性筋炎/皮膚筋炎、急性膵炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、骨関節症、細菌性感染症、多発性骨髄腫、脊髄形成異常の症候群、ブドウ膜炎、中枢神経系損傷、ウィルス性呼吸器疾患、喘息、低下及び硬皮症)を治療することが可能となる。詳細は、非特許文献26から45を参照のこと。
【0005】
【非特許文献1】Ogata H.ら、Curr Pharm Des.2003;9(14):1107−13
【非特許文献2】Moller D.R.ら、J Intern Med.2003;253(1):31−40
【非特許文献3】Taylor PC.ら、Curr Pharm Des.2003;9(14):1095−106
【非特許文献4】Wilkinson N.ら、Arch Dis Child.2003;88(3):186−91
【非特許文献5】Nishimura F.ら、J Periodontal.2003;74(1):97−102
【非特許文献6】Weinberg J.M.ら、Cutis.2003;71(1):41−5
【非特許文献7】Burnham E.ら、Crit Care Med.2001;29(3):690−1
【非特許文献8】Sack M.ら、Pharmacol Then 2002;94(1−2):123−35
【非特許文献9】Barnes PJ.ら、Annu Rev Pharmacol Toxicol.2002;42:81−98
【非特許文献10】Mageed R.A.ら、Lupus 2002;11(12):850−5
【非特許文献11】Tsimberidou A.M.ら、Expert Rev Anticancer Ther.2002;2(3):277−86
【非特許文献12】Muller T.ら、Curr Opin Investig Drugs.2002;3(12):1763−7
【非特許文献13】Calandra T.ら、Curr Clin Top Infect Dis.2002;22:1−23
【非特許文献14】Girolomoni Gら、Curr Opin Investig Drugs.2002;3(11):1590−5
【非特許文献15】Tutuncu Z.ら、Clin Exp Rheumatol.2002;20(6 Suppl 28):S146−51
【非特許文献16】Braun J.ら、Best Pract Res Clin Rheumatol.2002;16(4):631−51
【非特許文献17】Barnes PJ.ら、Novartis Found Symp.2001;234:255−67;discussion267−72
【非特許文献18】Brady M.ら、Baillieres Best Pract Res CHn Gastroenterol.1999;13(2):265−89
【非特許文献19】Goldring M.B.ら、Expert Opin Biol Ther.2001;1(5):817−29
【非特許文献20】Mariette X.Rev Prat.2003;53(5):507−11
【非特許文献21】SharaiaR.ら、M J Cardiol.2002;85(1):161−71
【非特許文献22】Wang CX.ら、Prog Neurobiol.2002;67(2):161−72
【非特許文献23】Van Reeth K.ら、Vet Immunol Immunopathol.2002;87(3−4):161−8
【非特許文献24】Leonard B.E.ら、lnt J Dev Neurosci.2001;19(3):305−12
【非特許文献25】Hays SJ.ら、CurrPharm Des.1998;4(4):335−48
【非特許文献26】Taylor P.C.ら、CurrPharm Des.2003;9(14):1095−106
【非特許文献27】Dellinger R.P.ら、Clin Infect Dis.2003;36(10):1259−65
【非特許文献28】Takashiba S.ら、J Periodontal.2003;74(1):103−10
【非特許文献29】Diwan A.ら、Curr MoI Med.2003;3(2):161−82
【非特許文献30】Lundberg I.E.ら、Rheum Dis Clin North Am.2002;28(4):799−822
【非特許文献31】Makhija R.ら、J Hepatobiliary Pancreat Surg.2002;9(4):401−10
【非特許文献32】Chung K.F.ら、Eur Respir J Suppl.2001;34:50s〜59s
【非特許文献33】Hallegua D.S.ら、Ann Rheum Dis.2002;61(11):960−7
【非特許文献34】Goldring M.B.ら、Expert Opin Biol Ther.2001;1(5):817−29
【非特許文献35】Mrak R.E.ら、Neurobiol Aging.2001;22(6):903−8
【非特許文献36】Brady M.ら、Baillieres Best Pract Res Clin Gastroenterol.1999;3(2):265−89
【非特許文献37】Van der Meer J.W.ら、Ann N Y Acad Sd.1998;856:243−51
【非特許文献38】RameshwarP.ら、Acta Haematol.2003;109(1):1−10
【非特許文献39】de Kozak Yら、Int Rev Immunol.2002;21(2−3):231−53
【非特許文献40】Wang CX.ら、Prog Neurobiol.2002;67(2):161−72
【非特許文献41】Van Reeth K.ら、Vet Immunol Immunopathol.2002;87(3−4):161−8
【非特許文献42】Stirling R.G.ら、BrMed Bull.2000;56(4):1037−53
【非特許文献43】Leonard B.E.ら、bit JDev Neurosci.2001;19(3):305−12
【非特許文献44】Allan S.M.ら、Ann N Y Acad Sci.2000;917:84−93
【非特許文献45】Cafagna D.ら、Minerva Med.1998;89(5):153−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被験者において、TNFα又はIL−1βの発現を阻害する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、センシンレンの抽出物が、TNFα及びIL−1β両方の発現を阻害するという驚くべき発見に基づく。センシンレンの地上部分から得られる前記抽出物は、アンドログラフォリド、14−デオキシアンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド及びネオアンドログラフォリドである。望ましくは、前記抽出物は、2から20重量%を含むアンドログラフォリド、1から6重量%の14−デオキシアンドログラフォリド、1から12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド及び1から5重量%のネオアンドログラフォリドを含む。より望ましくは、前記抽出物は3から8重量%のアンドログラフォリド、3から5重量%の14−デオキシアンドログラフォリド、7から9重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド及び2から4重量%のネオアンドログラフォリドを含む。特に望ましくは、4.2重量%のアンドログラフォリド、4.4重量%の14−デオキシアンドログラフォリド、8重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲンアンドログラフォリド、2.1重量%のネオアンドログラフォリドを含む。
【0008】
本発明の1つの実施態様は、被験者において、TNFα又はIL−1βの発現を阻害する方法に関する。該方法は、被験者に、有効量の前記の抽出物を投与することを含む。
【0009】
本発明の他の実施態様は、TNFα又はIL−1βに関連した障害、すなわち:クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、慢性心不全、真性糖尿病、全身エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎、乾癬、急性骨髄性白血病、エイズ痴呆複合体、血敗血症、感染性ショック、移植片対宿主病、ブドウ膜炎、喘息、急性膵炎又は歯周病を治療する方法に関する。該方法は、治療の必要がある被験者に、有効量の前記の抽出物を投与することを含む。
【0010】
また、TNFα関連障害及びIL−1β関連障害の治療において使用するため、並びにこれらの障害を治療する薬剤製造に使用するための、前記の本発明の抽出物を含有する組成物も、本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の幾つかの態様の詳細について、以下に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、TNFα又はIL−1βの発現を阻害し、TNFα関連障害を治療し、並びにIL−1β関連障害を治療する方法であって、TNFαの発現を阻害する必要がある被験者に、有効量の前記の抽出物を投与することにより治療する方法を含む。用語「有効量」とは、被験者において、前記の効果の1つを与えるのに必要な抽出物の量を指す。有効量は、当業者に認識されるように、投与経路、賦形剤使用、及び他の剤の同時使用の可能性に応じて、適宜調節することが可能である。用語「治療する」とは、TNFα関連障害又はIL−1β関連障害を有するか、あるいは該障害の症状を有するか、あるいは該障害に対する素因を有する被験者に、該障害、該障害の症状、又は該障害に対する素因を治癒、軽減、緩和、変化、修復、改善、好転、又はこれらに影響を及ぼす目的で、該抽出物を投与することを指す。
【0013】
本発明で使用するための抽出物を調製するため、センシンレンの地上部分を、1以上の適切な溶媒、例えばエタノール、メタノール、及びアセトンに浸し;固体残渣から液体を分離し;そして該液体を濃縮することが可能である。こうして得た抽出物を更に処理することも可能である。例えば、クロマトグラフィーによって不純物を取り除くか、又は構成要素の比を調節することも可能である。
【0014】
上記方法の1つを実施するため、こうした方法を必要とする被験者に、前記の抽出物のみ、又は該抽出物及び薬理学的に許容できる担体の混合物いずれかである組成物を、経口投与、直腸投与、非経口投与するか、吸入スプレーによって投与するか、又は移植容器を介して投与する。用語「非経口」は、本明細書において、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、鞘内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。
【0015】
経口組成物は、限定されるわけではないが、錠剤、カプセル、エマルジョン及び水性懸濁物、分散物及び溶液を含む、経口的に許容しうるいずれかの投薬型であってもよい。錠剤に一般的に用いられる担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤もまた、錠剤に添加される。カプセルとして経口投与する際に用いられる使用可能な希釈剤には、ラクトース及び乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁物又はエマルジョンとして経口投与する場合、乳化剤又は懸濁剤と組み合わせて、油性相中に活性成分を懸濁又は溶解することも可能である。必要に応じて特定の甘味剤、香味剤又は着色剤を添加することも可能である。
【0016】
適切な分散剤又は湿潤剤(例えばTween80など)及び懸濁剤を用いて、当該技術分野における公知技術に従って、無菌の注射可能な組成物(例えば水性又は油性懸濁物)として配合することも可能である。前記の無菌の注射可能な組成物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のように、非毒性の、非経口的に許容しうる希釈剤又は溶媒中の、無菌注射可能溶液又は懸濁物であることも可能である。使用可能な、許容しうる賦形剤及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。更に、溶媒又は懸濁媒体として、無菌不揮発性油が慣用的に使用される(例えば合成モノ−又はジ−グリセリド)。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射用組成物の調製に有用であり、オリーブ油又はヒマシ油などの薬理学的に許容できる天然の油、特にそのポリオキシエチル化型も使用可能である。これらの油又は懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、あるいはカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤を含有することも可能である。
【0017】
薬剤配合の技術分野に周知の技術に従って、吸入組成物を調製することも可能であり、また生理食塩水の溶液として、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物学的利用能を増進する吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当該技術分野に知られる他の可溶化剤又は分散剤を添加して調製することも可能である。
【0018】
油、クリーム、ローション、軟膏等の形で、局所組成物を配合することも可能である。組成物の適切な担体には、植物油又はミネラルオイル、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分枝鎖脂肪又は油脂、動物脂肪及び高分子量アルコール(炭素数C12より大きい)が含まれる。好ましい担体は、活性成分が可溶性のものである。乳化剤、安定化剤、湿潤剤及び酸化防止剤、並びに望ましい場合、色又は芳香を与える物質を含有させることも可能である。更に、これらの局所配合物に、経皮浸透増進剤を使用することも可能である。こうした増進剤の例は、米国特許第3,989,816号及び第4,444,762号に記載されている。好ましくは、ミネラルオイル、自己乳化蜜蝋及び水の混合物からクリームを調製し、この混合物中で、少量のアーモンド油などの油に溶解した活性成分を混合する。こうしたクリームの例として、約40重量部の水、約20重量部の蜜蝋、約40重量部のミネラルオイル及び約1重量部のアーモンド油を含むものが挙げられる。アーモンド油などの植物油中に活性成分を溶解させた溶液と加温したソフトパラフィンを混合し、そして混合物を冷却することによって、軟膏を配合することも可能である。こうした軟膏の例は、約30重量%のアーモンド油及び約70重量%の白色ソフトパラフィンを含むものである。
【0019】
医薬組成物中の担体は、配合物の活性成分と適合し(そして好ましくは活性成分を安定化させることが可能であり)、治療しようとする被験者にとって有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。例えば、活性化合物の送達のため、シクロデキストリンなどの可溶化剤(抽出物の1以上の活性化合物と、特定のより可溶性である複合体を形成する)を、薬剤賦形剤として利用することも可能である。他の担体の例には、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、及びD&C Yellow#10が含まれる。
【0020】
適切なin vitroアッセイを用いて、前記の抽出物が、TNFα又はIL−1β発現を阻害する有効性を予備的に評価することも可能である。in vivoアッセイによって、抽出物のTNFα関連障害又はIL−1β関連障害を治療する際の有効性に関して解析することも可能である。例えば、TNFα又はIL−1βに関連する障害を有する動物(例えば実験用マウス)に抽出物を投与し、その療法効果を評価することも可能である。そのようにして得られた結果に基づいて、適切な投薬量範囲及び投与経路を決定することも可能である。
【0021】
更に詳述することなく、上記説明により本発明の実施が十分可能になったと考えられる。したがって、以下の具体的な実施例は、単に例示として解釈されるべきであり、そしていかなる意味でも、本開示以外の部分を除外するものと解釈してはならない。本明細書に引用する、特許を含む刊行物は全て、本明細書に完全に援用される。
【実施例】
【0022】
<センシンレンの抽出物の調製>
センシンレンの地上部分の乾燥粉末(1kg)を85%エタノールに懸濁した。懸濁物を2時間還流し、濾過した。残渣を85%エタノールで再び抽出した。これらのエタノール溶液を混合・冷却し、更に濃縮して、105gの目的抽出物を得た。HPLC分析によって、該抽出物が4.0%のアンドログラフォリドを含有することが示された。
【0023】
<in vitroアッセイ>
in vitroアッセイを行って、センシンレン抽出物のTNFα及びIL−1β発現を阻害する効果を評価した。
【0024】
業者が推奨するプロトコルに従って、Ficoll−Paque Plus(Amersham Bioscience社)を用いて、末梢血単核球(PBMC)細胞を新鮮血液から単離した。10%FBSを含有するRPMI1640培地中に、1×10細胞/mlの濃度で細胞を懸濁し、96ウェルプレートに散布した(各ウェル中に総数1×10細胞)。3つのウェル中で各反応を行った。
【0025】
DMSO中に溶解した10μlのセンシンレン抽出物を各ウェルに添加した(最終濃度:0.1、0.3、1、3、10、及び30μg/ml)。10μMの最終濃度でデキサメタゾン(CalBiochem)を添加したウェルを陽性対照として用いた。10μlの培地を添加したウェルを陰性対照として用いた。前記プレートを5%CO条件下、37℃で15分間インキュベーションした。100μg/mlのリポ多糖を含む溶液10μlを、陰性対照を除く全てのウェルに添加した後、プレートを、5%CO条件下、37℃で一晩インキュベーションした。
【0026】
プレートを1000rpmで15分間回転し、上清を収集した。TNFα ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)キット及びIL−1β ELISAキット(Jingmei Bioengineer Technology)を用い、TNFα及びIL−1βの濃度を測定した。
【0027】
阻害比を以下のように計算した:
【数1】

式中、C抽出物は、抽出物及びLPSで処理したPBMC細胞中のTNFα又はIL−1βの濃度であり、CLPSは、LPS及びデキサメタゾンで処理したPBMC細胞中のTNFα又はIL−1βの濃度であり、C対照は、LPS又は抽出物で処理していないPBMC細胞中のTNFα又はIL−1βの濃度である。
【0028】
上記試験の結果、抽出物が、TNFα及びIL−1β双方の発現を有意に阻害したことが示された。
【0029】
<in vivoアッセイ>
in vivoアッセイを行い、炎症性腸疾患(IBD)を治療する際のセンシンレン抽出物の有効性を評価した。
【0030】
Balb/c雄マウス(18〜24g)を、0.05mg/10gの1%ペントバルビタールナトリウムで麻酔した。IBDを誘導するため、50%エタノール中の1.5mgの2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS;Sigma)を、カテーテルを通じて、各マウス(ブランクの対照マウスを除く)に徐々に投与した。ブランク対照マウスには、0.1mlの50%エタノールのみを投与した。TNBS投与の24時間前及び2時間前、ならびに投与後の各5日間、前記センシンレン抽出物でマウスを処置した。
【0031】
TNBS投与前及び投与後の毎日、各マウスの体重を測定した。抽出物の最後の投与の24時間後、マウスを屠殺した。結腸を取り除き、重量測定した。更に体重に対する結腸重量比を計算し、結腸及び他の臓器間の癒着もまた観察した。
【0032】
肛門管の正確に2cm上に位置する結腸組織の試料を得て、10%緩衝リン酸中で固定し、パラフィンに包埋し、切片を作製し、ヘマトキシリン/エオジンで染色した。顕微鏡横断切片上の炎症の度合いを、次の通り0から4に等級分けした(0:炎症の徴候なし;1:非常に低レベルの炎症;2:低レベルの白血球浸潤;3:高レベルの白血球浸潤、高密度の血管、及び結腸壁の肥厚;並びに4:貫壁性浸潤、杯細胞の欠失、高密度の血管、及び結腸壁の肥厚)。
【0033】
以上の試験の結果、150mg/kgのTNBSのみでマウスを処置すると、下痢、顕著かつ持続的な体重減少、体重に対する結腸重量比の有意な増加、及び50%の死亡率により特徴付けられる重度の疾病が観察された。また、顕微鏡観察によって、各マウスの結腸が腸壁の全ての層で、貫壁性炎症を有することが観察された。対照的に、IBDの誘導前に、マウスをセンシンレン抽出物(500mg/kg/日)で処置すると、全体の死亡率が減少し、消耗症候群の重症度がより低く、体重に対する結腸重量比がより低く、IBDの度合いがより低かった。また大腸壁は滑らかであり、周囲組織との癒着はなかった。
【0034】
雄ウィスター・ラットを用いた別のアッセイを、前記と類似の方法に従って、IBDに対するセンシンレン抽出物の有効性を評価した。IBDを誘導するため、TNBSの代わりにラットに2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸を投与した。
【0035】
以上の試験の結果、同様の結果が得られた。具体的には、センシンレン抽出物で処置したラットは、未処理のラットと比較しての死亡率が減少し、消耗症候群の重症度がより低く、体重に対する結腸重量比がより低く、IBDの度合いが低かった。
【0036】
(他の実施態様)
以上において本発明の幾つかの態様を記載したが、本発明の技術思想及び範囲から逸脱することなく、多様な変更が可能であることが理解されるであろう。したがって、そのような他の実施態様もまた、特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFαの発現を阻害する必要がある被験者において、TNFαの発現を阻害する方法であって、有効量のセンシンレン(Andrographis paniculata)の抽出物を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記抽出物が、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物が、2〜20重量%のアンドログラフォリド、1〜6重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、1〜12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び1〜5重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出物が、3〜8重量%のアンドログラフォリド、3〜5重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、7〜9重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2〜4重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出物が、4.2重量%のアンドログラフォリド、4.4重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、8重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2.1重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
IL−1βの発現を阻害する必要がある被験者において、IL−1βの発現を阻害する方法であって、有効量のセンシンレンの抽出物を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項7】
前記抽出物が、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出物が、2〜20重量%のアンドログラフォリド、1〜6重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、1〜12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び1〜5重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出物が、3〜8重量%のアンドログラフォリド、3〜5重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、7〜9重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2〜4重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出物が、4.2重量%のアンドログラフォリド、4.4重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、8重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2.1重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炎症性腸疾患を治療する必要がある被験者において、炎症性腸疾患を治療する方法であって、有効量のセンシンレンの抽出物を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項12】
前記抽出物が、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抽出物が、2〜20重量%のアンドログラフォリド、1〜6重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、1〜12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び1〜5重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出物が、3〜8重量%のアンドログラフォリド、3〜5重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、7〜9重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2〜4重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出物が、4.2重量%のアンドログラフォリド、4.4重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、8重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び2.1重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性腸疾患がクローン病である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記抽出物が、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抽出物が、2〜20重量%のアンドログラフォリド、1〜6重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、1〜12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び1〜5重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記抽出物が、アンドログラフォリド、14−デオキシ−アンドログラフォリド、14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及びネオアンドログラフォリドを含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抽出物が、2〜20重量%のアンドログラフォリド、1〜6重量%の14−デオキシ−アンドログラフォリド、1〜12重量%の14−デオキシ−11,12−デヒドロゲン−アンドログラフォリド、及び1〜5重量%のネオアンドログラフォリドを含有する、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2007−535542(P2007−535542A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510891(P2007−510891)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/014288
【国際公開番号】WO2005/104722
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506361683)ハッチソン メディファーマ エンタープライジズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】