説明

ゼオライト、それを用いた吸着素子、吸着材モジュール、吸着ヒートポンプおよびデシカントローター

【課題】ペルチェ素子が発生する熱で吸着材に吸着した水蒸気を容易に再生することができ、かつ十分な加湿量を取ることができるようなゼオライトを提供すること、および除加湿装置の装置構成を簡素化、小型化し且つ十分な水分吸脱着量を備えた吸着材モジュールを提供することを課題とする。
【解決手段】骨格構造にアルミニウムとリンと、鉄またはチタンを含むゼオライトであって、かつ、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.08以上0.15以下の範囲における水の吸着量の変化が0.12g/g以上であることを特徴とするゼオライト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトおよびそれを用いた吸着素子、吸着材モジュール、吸着ヒートポンプおよびデシカントローターに関するものであり、詳しくは、吸着材の吸着、脱着機能により室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に好適に使用されるゼオライトとそれを用いた吸着材モジュールに関するものである。
本発明のゼオライトと吸着材モジュールは、特に室内の除加湿を行う湿度調節装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
室内の空調技術の1つとして、室内をより快適にし、且つ省エネルギー化を図るため、吸着材の水蒸気吸脱着を行う除湿・加湿技術が種々検討されている。
斯かる技術のうち、特許文献1に記載のようなペルチェ素子の熱電変換機能を利用した技術が提案されている。ペルチェ素子は通常の電熱ヒータを利用する場合に比べ、吸着材の加熱と冷却を同時に行うことが出来るため、吸着材の吸着効率を高めることが出来る。
しかしペルチェ素子を利用する場合も、特許文献1に記載のように吸着ロータと組み合わせた装置の場合、一旦、当該ペルチェ素子の両側の熱伝導部を介して送風路の空気を加熱、冷却し、そして、吸着ローターを通過する空気自体を介して吸着材を加熱、冷却するため、熱効率が低く、ペルチェ素子自体もその発熱量に比べて大型化すると言う問題がある。
【0003】
そこで装置の小型化を図る目的で、吸湿材を具備した伝熱板をペルチェ素子で直接加熱冷却することにより、水蒸気を除去する様にした装置が提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、特許文献2の装置では、吸湿材が吸着した水分を脱着(以下、「脱着」を再生ともいう)して、加湿用途に利用するためには高温での再生が必要であるが、この装置においては、ペルチェ素子を長時間高温にする必要があるため、十分に作動しなかったり、脱着を促すため、伝熱面への吸着材の塗布量を下げて伝熱効率を上げる必要があり、十分な加湿性能が得られない、具体的には十分な加湿に要する水分量が得られないと言う問題がある。更に、ペルチェ素子に長時間高い温度を繰り返しかける必要があるために、高温に耐えられる素子を用いなければならず、かつ、耐久性も落ちるという問題がある。
【0004】
また特許文献3では上述の装置に吸着材として水蒸気の吸脱着の容易なアルミノフォスフェート類を用いることで、長時間高温にすることなしに、水蒸気の脱着(再生)を可能にする吸着材モジュールが提案されている。
しかし、これらの吸着材を用いても、吸着材モジュールに搭載した際に、室内に十分な加湿量を提供する目的には未だ不十分であった。
すなわち、ペルチェ素子が発生する熱程度でも吸着材に吸着した水蒸気を脱着することはできても、十分な除加湿量がとれるような水蒸気吸着量を有する吸着材は見出されておらず、その開発が嘱望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−146220号公報
【特許文献2】特開2001−097038号公報
【特許文献3】特開2008−100144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ペルチェ素子が発生する熱でも、吸着材に吸着した水蒸気を容易に再生することができ、かつ十分な加湿量を取ることができるようなゼオライトを提供すること、および除加湿装置の装置構成を簡素化、小型化し且つ十分な水分吸脱着量を備えた吸着材モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、上記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、骨格構造にアルミニウムとリンと、特定の元素を有し、特定の吸着特性を有するゼオライトが本課題を解決するに極めて好適であることを見出した。具体的には、アルミニウムとリンと、鉄またはチタンを有するゼオライトであり、前記ゼオライトの25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、特定の吸着量の変化量を有するゼオライトである。好ましくはIZA(International Zeolite Association)の定める構造のコードでS
OD型、またはATS型構造を有するゼオライトである。
本発明のゼオライトを、吸着材を担持させた一対の吸着素子をペルチェ素子の吸熱部および放熱部として機能する一対の板面にそれぞれ直接配置することにより構成した吸着材モジュールに使用した際、ペルチェ素子の発生する熱量でも再生ができ、かつ十分な加湿量を取ることができ、吸着材モジュールに好適であることを見出し、発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第一の要旨は、骨格構造にアルミニウムとリンと、鉄またはチタンを含むゼオライトであり、前記ゼオライトの25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.08以上0.15以下の範囲におけるゼオライトの水吸着量の変化が0.12g/g以上であることを特徴とするゼオライトに存する。
本発明の第二の要旨は、前記ゼオライトにおいて、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧が0.1のときの水蒸気吸着量が0.03g/g以上であるゼオライトに存する。
【0009】
本発明の第三の要旨は、前記ゼオライトにおいて、骨格構造がIZA(International Zeolite Association)の定める構造のコードでSOD型、またはATS型構造を有するゼオライトに存する。
本発明の第四の要旨は、前記ゼオライトを用いた吸着素子に存する。
【0010】
本発明の第五の要旨は、空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に使用される吸着材モジュールであって、前記モジュールは吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面を備えたペルチェ素子と、当該ペルチェ素子の各板面にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子および第2の吸着素子とを有し、これら第1及び第2の吸着素子が、通気可能なエレメントに吸着材としての以下のゼオライトを担持させて構成されている吸着材モジュールであり、かつゼオライトに前記ゼオライトを用いた吸着材モジュールに存する。
本発明の第六の要旨は、前記吸着材モジュールにおいて、ペルチェ素子に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を入れ替えることにより、各吸着素子における吸着操作と脱着操作を切替え可能になされている吸着材モジュールに存する。
【0011】
本発明の第七の要旨は、前記吸着材モジュールにおいて、第1及び第2の吸着素子のエレメントが、略波板状の基材シート及び略平板状の基材シートから成る通気セル形成シートを複数積層したコルゲート型のエレメントであり、かつ、当該エレメントは、前記各通気セル形成シートの略平板状の基材シートがペルチェ素子の板面と平行に、または直交して配置された構造を備えている吸着材モジュールに存する。
【0012】
本発明の第八の要旨は、前記ゼオライトを用いた吸着ヒートポンプ、好ましくは吸着ヒートポンプの再生温度が90℃以下であり、吸着温度が30℃以上で得られる冷熱が7℃以下である吸着ヒートポンプに存する。
本発明の第九の要旨は、前記ゼオライトを用いたデシカントローター、好ましくはデシカントローターの再生温度が90℃以下であるデシカントローターに存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゼオライトによれば、ペルチェ素子が発生する熱量でも、吸着した水分の再生が可能であることに加え、低い相対湿度でも十分な水蒸気吸着量が得られるため、再生を開始した当初から十分な加湿量を得ることが可能となる。
そのため、本発明の吸着材モジュールによれば、一対の吸着素子に担持させる吸着材が、より低温での吸脱着が可能で且つ、少量でも十分な水蒸気量を吸脱着可能になるため、モジュールを小型化でき、これにより、湿度調節装置の装置構成を簡素化でき且つ装置全体を一層小型化することが出来る。また、より低温での吸脱着が可能であるため、ペルチェ素子の発熱温度も低温に抑えることが出来、その結果、ペルチェ素子、ならび吸着材モジュールの耐久性を向上させることも出来る。
さらに本発明のゼオライトは、前記の効果により、従来公知の吸着ヒートポンプやデシカントローターにも当然適用できる。吸着ヒートポンプに適用した場合は、「90℃以下の再生温度、30℃以上の吸着温度」で得られる冷水が7℃以下の運転が可能であり、かつゼオライトの水蒸気吸着量が多いため、吸着ヒートポンプの小型化が可能となる。デシカントローターで使用した場合は、低い再生温度での運転が可能となり、また小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1記載のゼオライトの吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。
【図2】実施例2記載のゼオライトの吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。
【図3】実施例3記載のゼオライトの吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。
【図4】比較例1記載のゼオライトの吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。
【図5】本発明の吸着材モジュールの一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の吸着材モジュールの他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の吸着材モジュールの使用例としての湿度調節装置の構成を示す模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。 本発明は、特定の吸着特性を有するゼオライトと、それを用いた吸着材モジュール等その用途についての発明である。まずは本発明のゼオライトについて詳述する。
【0016】
(1)ゼオライト
本発明のゼオライトは、骨格構造にアルミニウム、リンと、鉄またはチタンを含むゼオライトであり、好ましくは鉄またはチタンを含む結晶性アルミノフォスフェート類であり、より好ましくは、合成が容易で製造コストも有利な点で、鉄を含む結晶性アルミノフォスフェートである。具体的には、骨格構造内にアルミニウム、リンを含むゼオライトにおいて、アルミニウム原子またはリン原子の一部が、鉄原子またはチタン原子で置換されているゼオライトであり、好ましくは鉄原子で置換されているゼオライトである。 本発明のゼオライトは、骨格構造中に、アルミニウム原子、リン原子、鉄原子またはチタン原子以外の原子を含んでいてもよく、具体的には骨格構造中のアルミニウム原子、リン原子の一部が、鉄原子、チタン原子以外の他の原子と置換されていてもよい。
置換される原子の種類は特に限定されるものではないが、通常アルミニウム原子が、周
期表第三または第四周期に属し、2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く)、4B族(Si,Geを除く)の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素で置換されているものであり、好ましくはCo、Ga、Mg、Zn、Sn(2価)で置換されるもの、または、通常リン原子が周期表第三または第四周期に属する4B族の元素で置換されているものであり、好ましくはSi、Sn(4価)で置換されているものであり、好ましくはアルミニウムとリンの両方がそれぞれ前記の元素で置換されているものである。より好ましくはGa、Mg、Si、Snで置換されているものであり、さらに好ましくはGa,Si、Snで置換されているものである。
【0017】
本発明のゼオライトにおける、鉄原子、またはチタン原子のモル比は、特に限定されるものではないが、鉄またはチタン原子の含有モル量をM、アルミ原子の含有モル量をAl、リン原子の含有モル量をP、としたとき、モル比 M/(M+Al+P)が通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。
【0018】
本発明のゼオライトのフレームワーク密度(FD)は特に限定されるものではないが、通常、13.0T/nm以上、好ましくは13.5T/nm、更に好ましくは14.0T/nm以上であり、通常20.0T/nm以下、好ましくは19.0T/nm以下、さらに好ましくは17.2/nm以下である。前記下限未満では、構造が不安定となる傾向があり、耐久性が低下することがある。一方、前記上限超過では吸着容量が小さくなり、吸着材としての使用に適さなくなることがある。なお、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、単位体積(nm)あたりに存在するT原子(ゼオライト1nm当たりの酸素以外の骨格を構成する元素の数)を意味する。
【0019】
本発明のゼオライトの構造は、特に限定されるものではないが、IZA(International Zeolite Association)が定める構造のコードで示すと、AEI、AEL、AET、A
FI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、SOD、VFIなどが挙げられる。中でも、吸着特性、耐久性の点からは、AEI型、AEL型、AFI型、CHA型、LEV型、SOD型構造の何れかが好ましく、特に耐久性と吸着特性の面からSOD型、ATS型が好ましい。
また、これらは単独で用いても、2種類以上の構造のゼオライトを組み合わせて使用することもできる。
【0020】
本発明のゼオライトの粒子の大きさ(平均粒径)は、特に限定されるものではないが、通常は0.1〜300μm、吸着材個々の粒子における水蒸気の拡散を高める観点から、好ましくは0.5〜250μm、更に好ましくは1〜200μm、最も好ましくは2〜100μmである。
本発明のゼオライトは以下に示すような吸着特性を有するものである。
【0021】
すなわち、本発明のゼオライトは、ゼオライトの25℃の水蒸気吸着等温線における相対蒸気圧0.08以上、0.15以下の範囲における水の吸着量の変化が0.12g/g以上、好ましくは0.13g/ g以上、より好ましくは0.14g/g以上の吸着特性
を有する。吸着量の変化量は大きいほどよく、上限は特に限定されるものではないが、通常は0.30g/g以下、好ましくは0.25g/g以下である。
本発明のゼオライトの水蒸気吸着量は特に限定されるものではないが、ゼオライトの25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧が0.1のときの水蒸気吸着量が通常0.03g/g以上であり、好ましくは0.04g/g以上である。水蒸気吸着量は大きいほどよく、上限は特に限定されるものではないが、通常は0.20g/g以下、好ましくは0.10g/g以下である。
【0022】
このような吸着特性を有するゼオライトの達成手段は特に限定されるものではないが、具体的には、ゼオライトの骨格構造に含む元素としてアルミニウム、リンと、鉄またはチタンを選択し、必要に応じ前記のアルミニウム、リン原子を置換する周期表第三または第四周期に属し、2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く)、4B族(Si,Geを除く)の元素を適宜選択すること、ゼオライトの骨格構造としてIZA(International Zeolite Association)が定める構造のコードで示すと、AEI、AEL
、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、SOD、VFIなどの中から適宜選択すること、ゼオライトの製造の際、下記するテンプレート(構造規定剤)を適宜選択すること、水性出発原料の組成を適宜選択すること等によって、得られるゼオライトの構造、組成等を最適化することによって得られる。
【0023】
本発明のゼオライトの製造方法は、特に限定されるものではないが、通常、アルミニウム原子源、リン原子源、鉄原子源またはチタン原子源、必要に応じてSi等の他の原子源、および、テンプレート(構造規定剤)を混合した後、水熱合成して製造される。また、結晶性アルミノフォスフェートは、例えば特公平1−57041、特開2003−183020、特開2004−136269等の公報に記載の公知の合成法を利用して合成することが出来る。
【0024】
(水熱合成)
水熱合成の方法は、特に限定されるものではなく、通常、水性出発原料を耐圧容器に入れて反応させる。反応圧力は特に限定されないが、通常、自己発生圧下、または結晶化を阻害しない気体の加圧下で行われる。水熱合成の温度条件は、特に限定されないが、通常100〜300℃であり、合成のしやすさの観点からは150〜250℃が好ましく、160〜210℃がより好ましい。
【0025】
反応時間は、特に限定されるものではないが、3時間〜30日であり、合成のしやすさの観点からは5時間〜15日が好ましく、6時間〜5日がより好ましい。水熱合成後、生成物を分離し、水洗、乾燥し、焼成等の方法により、含有する有機物の一部又は全部を除去し、ゼオライトを得る。
【0026】
(構成原料)
(アルミニウム原子源)
本発明のゼオライト合成に用いられるアルミニウム原子源は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウムなどが挙げられるが、擬ベーマイトが取り扱い易く、反応性が高い点で好ましい。
【0027】
(リン原子源)
本発明のゼオライト合成に用いられるリン源としては特に限定されるものではないが、通常リン酸が用いられるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。
【0028】
(鉄原子源)
本発明のゼオライト合成に用いられる鉄原子源としては特に限定されるものではないが、通常、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等の無機酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄等の有機酸鉄、鉄ペンタカルボニル、フェロセン等の鉄有機金属化合物などが挙げられる。これらのうち、無機酸鉄、有機酸鉄が水に溶けやすい点で好ましく、なかでも硝酸第二鉄、硫酸第一鉄などの無機酸鉄化合物がより好ましい。場合によってはコロイド状の鉄水酸化物等を用いても良い。
(チタン原子源)
チタン原子源は特に限定されるものではないが、通常、硫酸チタン、シュウ酸チタン、塩化チタン、チタンのアルコキシドなどが用いられる。なかでもチタンのアルコキシドが好ましい。場合によってはコロイド状のチタンの酸化物等を用いても良い。
(その他の原子源)
他の原子源としては、ケイ素、リチウム、マグネシウム、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、スズ、カルシウム、硼素などが挙げられる。他の原子源は、反応やゼオライトの性能を阻害しない限り、種々の原子源の形で使用することができる。
例えばケイ素原子を骨格構造内に含める場合にはケイ素源としては特に限定されないが、ヒュームドシリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチルなどが用いられる。
【0029】
(テンプレート)
本発明のゼオライトの合成には、必要に応じてテンプレート(構造規定剤)を用いることができ、好ましくはテンプレートを用いる。用いるテンプレートは特に限定されるものではないが、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の4級アンモニウム塩、モルホリン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、シクロヘキシルアミン、2−メチルピリジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、コリン、N,N‘−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、N−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、キヌクリジン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)オクタンイオン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ピロリジン、2−イミダゾリドン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン、ヘキサメチレンイミン、ベンジルアミン等の1級アミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミンが挙げられる。これらは混合して用いてもよい。このなかでも、トリ−n−プロピルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドが反応性の点で好ましく、これらは単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0030】
(水性出発原料の調製)
上述のアルミニウム原子源、リン原子源、鉄原子源またはチタン原子源および、好ましくはテンプレートを混合して水性出発原料を調合する。
【0031】
水性出発原料の組成は、好ましくはアルミニウム原子源の量をAl(アルミナ)として含んでいるとして換算した時の、Alに対する鉄またはチタンのモル比が通常0.01以上、好ましくは0.03以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。また、水の割合の下限としては、同様にAl23に対するモル比で3以上であり、合成のしやすさの観点からは5以上が好ましく、10以上がより好ましい。水の割合の上限としては、モル比で200以下、合成のしやすさ、生産性の高さの観点からは150以下が好ましく、120以下がより好ましい。水性出発原料のpHは、2〜10であり、合成のしやすさの観点からは3〜9が好ましく、3.5〜8.5がより好ましい。
【0032】
なお、各水性出発原料中には、所望により、上記以外の成分を共存させても良い。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の
親水性有機溶媒が挙げられる。
【0033】
本発明のゼオライトの製造において、水性出発原料の組成は、添加したリン原子源、アルミニウム原子源、鉄原子源またはチタン原子源、テンプレートの原料の質量から算出している。実際の水性出発原料の組成は、例えば、元素分析により確認することが出来る。
本発明のゼオライトの製造方法の順序は特に限定されるものではないが、アルミニウム原子源、リン原子源、鉄原子源またはチタン原子源、必要に応じてケイ素等の他の原子源、および、テンプレートを混合した後に水熱合成を行い、一旦層状化合物を合成し、それを原料の少なくとも一部に使用してさらに上記記載のように、水熱合成を行ってゼオライトを合成してもよい。この方法を用いることにより、相対湿度が高い領域での吸着量が多くなり、特に後述する高湿度の処理を行うデシカント用途に好適なゼオライトが製造できる点で好ましい。
次に本発明のゼオライトを用いた吸着材モジュール等、その用途について詳述する。
【0034】
(2)吸着材モジュール
本発明の吸着材モジュールは、空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置において使用される。本発明の吸着材モジュールは、駆動機構を必要とせず且つ熱効率が高いため、殊に、車両室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置などの比較的小型の装置に好適である。
【0035】
本発明の吸着材モジュール(1)の作動においては、後述する様に、第1の吸着素子(31)と第2の吸着素子(32)とで吸着操作と脱着操作とを交互に切り替えるが、吸着・脱着操作の切替数を12回/h行うとすると、各吸着素子(31)、(32)の1回の吸着操作ならびに脱着操作において、吸着材により約0.72gの水分を吸着、脱着する必要がある。しかも、実用上、小型の車両用湿度調節装置に組み込むため、各吸着素子(31)、(32)の小型化を図る必要があり、各エレメント(33)における有効体積(吸着材を担持した状態における見かけ体積)の合計を33cmに設計した場合、両方のエレメント(33)に担持させ得る吸着材の合計質量は6g程度となる。従って、吸着材においては、少なくとも0.12g/gの吸脱着量が求められる。
【0036】
本発明の吸着材モジュールは、図5及び図6に符号(1)で示す様に、吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面(3a)、(3b)を備えたペルチェ素子(30)と、通気可能なエレメント(33)に吸着材を担持させて成り、且つエレメント(33)は、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)とから構成される。
【0037】
吸着材モジュール(1)は、図5及び図6に示す様に扁平な直方体に形成されてもよいし、あるいは、適用する装置の構造に応じて曲面を備えた形状に形成されてもよい。また、吸着材モジュール(1)において、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)に対し、空気層や他の機械部品などの断熱要素が介在することなく、ペルチェ素子(30)で生成された温熱および冷熱が熱伝導によって伝わる様に配置されていればよく、銀ペースト、グリス等の熱伝導材料を介して配置されてもよい。
【0038】
上記の吸着材モジュール(1)において、ペルチェ素子(30)は、周知の通り、ペルチェ効果を利用した素子であり、コンピュータ等の電子機器の冷却装置として使用される
電子部品である。すなわち、ペルチェ素子は、2種の金属板の間にP型半導体とN型半
導体を多数配置すると共に、一方の金属板によってN−P接合を構成し且つ他方の金属板によってP−N接合を構成した素子であり、斯かる素子においては、PN接合部分に電流を流すことにより熱移動が起こり、一方の金属板で吸熱現象が生じ、他方の金属板で放熱
現象が生じる。
【0039】
本発明の吸着材モジュール(1)においては、より小型化を図るため、各板面(3a)、(3b)がそれぞれ吸熱部、放熱部として機能する例えば平板状のペルチェ素子(30)が使用される。例えば車両用湿度調節装置などに使用する場合のペルチェ素子(30)の消費電力は1.4〜120W、発熱最高温度は80〜90℃、最大温度差は64〜83℃である。本発明では、ペルチェ素子(30)を設計するに当たり、当該ペルチェ素子に求められる放熱容量(W)及び吸熱容量(W)を次式に基づいて算出される。
【0040】
【数1】

【0041】
本発明の吸着素子とは、金属等の平板、波板、金属や無機材料で形成したハニカム構造体、熱交換器等の通気可能なエレメント(33)に、本発明のゼオライトを塗布して構成されるものをいい、ゼオライトの吸着特性を発揮するのに支障がない限り、形状やエレメントの材質は制限されるものではない。
本発明の吸着素子は、通常、吸着ヒートポンプの構成部品、デシカントローターの構成部品、下記する本発明の吸着材モジュールの構成部品として使用することができ、本発明の吸着材モジュールの構成部品として使用するのが好ましい。デシカント用の吸着素子の構成部品として用いる場合は、高い相対圧で吸着量の大きい吸着性能を持つ吸着材が好ましい。
【0042】
第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、各々、通気可能なエレメント(33)に吸着材を担持させて構成され、車両用湿度調節装置などに収容するため、通常は外形形状を扁平な箱状に形成される。勿論、湿度調節装置などの適用装置の形状に応じた曲面を含む外形形状を備えていてもよい。各吸着素子(31)、(32)は、エレメント(33)とペルチェ素子(30)との間で熱(温熱および冷熱)を効率的に伝達するため、エレメント(33)を金属製ケーシングに収容して構成されることが好ましい。
【0043】
エレメント(33)としては、小型化を図ることが出来、しかも、大きな吸着面積を確保でき且つ一層多量の粉体状の吸着材を保持し得る限り、各種の構造のものを使用できる。斯かるエレメント(33)の構造としては、例えば、波板状の基材シートによって通気セルの開口形状が略三角形に形成された図示する様ないわゆるコルゲート型、通気セルの開口形状が略六角形に形成されたハニカム型、通気セルの開口形状が四角形に形成された格子型などの構造が挙げられる。また、通過する空気の圧力損失を低減するため、通気セルの開口形状が他の多角形に形成された構造でもよい。エレメント(33)は、いわゆるヒートシンクや略波板状の基材がペルチェ素子(30)の板面に直交する様な形状のものでもよい。
【0044】
例えば、コルゲート型のエレメント(33)は、図5に示す様に、略波板状に形成された基材シート及び略平板状に形成された基材シートを交互に積層して通気セルを多数構成したものである。すなわち、各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)は、平
板状の基材シートに波板状の基材シートを重ねることにより一列のセルを形成した通気セル形成シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して平行に複数隣接配置された構造、換言すれば、各通気セル形成シートの略平板状の基材シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)と平行となる様に配置された構造を備えており、通気セルは、波板状の基材シートの各凸部と隣接する平板状の基材シートとを接合することにより、エレメント端面側(通気方向の両端面側)の開口形状が略三角形に形成される。
【0045】
また、コルゲート型のエレメント(33)は、図6に示す様に構成されてもよい。図6に示すエレメント(33)は、平板状の基材シートに波板状の基材シートを重ねることにより一列のセルを形成した通気セル形成シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して直交する状態で複数隣接配置された構造、すなわち、上記の通気セル形成シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に沿って配列された構造を備えている。換言すれば、エレメント(33)は、各通気セル形成シートの略平板状の基材シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に直交する状態に配置された構造を備えている。上記の様に、吸着素子(31)、(32)として、エレメント(33)の通気セル形成シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して垂直に配置された素子を使用した場合には、各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)を構成する各通気セル形成シートに対し、ペルチェ素子(30)の温熱および冷熱を均一に且つ効率的に伝えることが出来、ペルチェ素子(30)による加熱、冷却効果を一層高めることが出来る。
【0046】
上記の図5及び図6に示す様な各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)に使用される通気セル形成シートは、長さの異なる2種類の基材シートを交互に積層し且つ長い方の基材シートを引き寄せながら一定間隔で接合する所謂各種成形機によって作製することが出来、その際、隣接する平板状の基材シートと波板状の基材シートは、加熱溶着、超音波溶着または接着剤を使用した接着などにより接合される。そして、エレメント(33)は、基材シートとしてのセラミックペーパー等から成る例えばコルゲート型などの通気セル形成シートを上記の様な方法で作製し、通気セル形成シートを積層してエレメントの構造体を作製した後、吸着材とバインダーと溶剤とから成るスラリーに前記の構造体を浸漬して製造される。なお、通気セル形成シートの製造方法自体は、公知であり、例えば特開2004−209420号公報に開示されている。
【0047】
また、上記の第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)においては、各々、通気面積(エレメント(33)の通気方向に直交する総開口面積)が、例えば湿度調節装置内の吸着材モジュール(1)の上流側および下流側の流路の最小の断面積(通気方向に直交する開口面積)以上に設定されるのが好ましい。吸着素子(31)、(32)の通気面積を上記の様に設定した場合には、各吸着素子(31)、(32)内において通過する空気の流速を小さくすることが出来、吸着および脱着機能を一層高めることが出来る。
【0048】
更に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、各々、空気の入口および出口の開口面積に対して、内部の通気方向に直交する断面の面積が大きく形成されていてもよい。上記の様に、吸着素子(31)、(32)の内部の断面積を大きくした場合には、出入口近傍の幅方向側(平面視して左右)の側縁部分における通気時の圧力損失を低減できるため、各吸着素子(31)、(32)における吸脱着効率を高めることが出来る。
【0049】
また、各吸着素子(31)、(32)内の空気の流速を小さくして吸着および脱着機能を高めるため、図示しないが、吸着材モジュール(1)は、例えば湿度調節装置内の流路の幅よりも大きな幅に形成され、吸着材モジュール(1)への入口部分の流路は、吸着材
モジュール(1)の入口に向うに従い幅が漸次広くなる様に形成され、そして、吸着材モジュール(1)の下流側の部分の流路は、湿度調節装置の吹出口に向う従い幅が漸次狭くなる様に形成されてもよい。同様に、吸着材モジュール(1)は、例えば湿度調節装置内の流路の高さよりも厚く形成され、吸着材モジュール(1)への入口部分の流路は、吸着材モジュール(1)の入口に向って従い高さが漸次高くなる様に形成され、そして、吸着材モジュール(1)の下流側の部分の流路は、湿度調節装置の吹出口に向う従い高さが漸次低くなる様に形成されてもよい。
【0050】
本発明の吸着材モジュール(1)においては、例えば、室内の湿度調節装置に適用し、外気が乾燥する冬季おいて、窓ガラス防曇用に吹き出す空気を十分に除湿し、また、乗員側に吹き出す空気を効果的に加湿するため、エレメント(33)に担持される吸着材としては、以下の様な吸着特性を備えた本発明のゼオライトが使用される。
【0051】
すなわち、冬季において暖房時に室内を循環する空気は、その温度を25℃とした場合、相対湿度が25〜50%程度と比較的低湿度であるが、室内湿度調節装置から吹き出す空気によって例えば3℃の低温の窓ガラスに対する防曇効果を達成するため、吸着材は、前記の様な低湿度においても十分に水分を吸着し、そして、吹き出す空気の相対湿度を更に15%程度以下まで低減し得る特性を備えていることが望まれる。
【0052】
一方、吸着材の再生においては、前述のペルチェ素子(30)が使用されるが、消費電力低減のため、吸着材は、温度が90℃以下、好ましくは60℃以下の比較的低い温度で水分を脱着できることが望まれる。そして、車室内が適度に快適な状態にある場合、例えば温度が25℃、湿度が50%の場合、エレメント(33)を通過する空気をペルチェ素子(30)で90℃に加熱した際の相対湿度は2%、60℃に加熱した際の相対湿度は8%となる。従って、吸着材においては、相対湿度が好ましくは8〜15%の範囲で、すなわち相対蒸気圧0.08〜0.15の範囲で容易に吸着・脱着し得る特性が望まれる。
【0053】
更に、車室内の空気を加湿して不快感を与えることなく乗員側に供給しようとすると、例えば1〜2m/sの風速で且つ4.7m/h以上の風量で空気を吹き出すのが望ましい。その際、図示しないが吸込口から吸い込む空気の温度が25℃、相対湿度が30%、絶対湿度が5.92g/kg(DA)であって、図示しないが第2の吹出口から乗員側へ温度が25℃、相対湿度が38%、絶対湿度が7.46g/kg(DA)以上の加湿空気を吹き出そうとすると、絶対湿度を1.54g/kg(DA)以上高めることが求められ、上記の風量では水分量で8.6g/h以上加湿することが求められる。
【0054】
一方、吸着材モジュール(1)の作動においては、後述する様に、第1の吸着素子(31)と第2の吸着素子(32)とで吸着操作と脱着操作とを交互に切り替えるが、吸着・脱着操作の切替数を12回/h行うとすると、各吸着素子(31)、(32)の1回の吸着操作ならびに脱着操作において、吸着材により約0.6gの水分を吸着、脱着する必要がある。しかも、実用上、小型の車両用湿度調節装置に組み込むため、各吸着素子(31)、(32)の小型化を図る必要があり、各エレメント(33)における有効体積(吸着材を担持した状態における見かけ体積)の合計を33cmに設計した場合、両方のエレメント(33)に担持させ得る吸着材の合計質量は6g程度となる。従って、吸着材においては、相対蒸気圧0.08以上0.15以下の範囲においては、ゼオライトの水吸着量の変化、すなわち吸脱着量の差が少なくとも0.12g/gの吸脱着量が求められる。
さらに室内の湿度の調整において、湿度が急激に変化することは好ましくないので、ある湿度で水蒸気の吸着、再生が急激に開始したりしないような吸着性能が好ましい。これは吸着等温線の特性で表現すると、吸着等温線が急峻に立ち上がるようなものではなく、相対圧の変化とともに0.08から0.15の相対圧の間でなだらかな吸着をおこなうようなものが好ましい。さらに吸着等温線において、相対蒸気圧が0.1のときに吸着量が
0.03g/g以上であることが好ましい。
【0055】
従来の吸着材では上記の吸着モジュール用として要求される特性を満たすものが見出されていなかった。しかし、本発明のゼオライトが、本発明の吸着材モジュール(1)の各エレメント(33)に担持する吸着材として求められる吸着特性を有するものであることがわかり、吸着モジュールの性能を向上させるに適したものであることを見出した。
【0056】
因に、本発明のゼオライトは、本発明の吸着材モジュール(1)に好適な特性を有している。例えば結晶性鉄アルミノフォスフェート(Fe−SOD)は、図1に示す様な吸着特性を備えており、25℃の水蒸気吸着等温線において、相対湿度8%から相対湿度15%の間で吸着量が急激に変化し、その吸着量の差が0.12g/g以上であり、かつ相対湿度10%での水蒸気吸着量が0.03g/g以上である。すなわち、吸着、脱着の際、より多くの水分を上記の相対蒸気圧の範囲において吸脱着し、かつ低い相対蒸気圧域でより多くの水分を脱着することができる。これに対し、従来の吸着材、例えば、A型シリカゲルや活性炭は、25℃の水蒸気吸着等温線において、相対湿度8%から相対湿度15%の間で吸着量の変化が小さく、その差がFe−SODの1/2以下程度である。換言すれば、本発明に適用される吸着材は、低い湿度範囲においてより多くの水分を吸着・脱着する特性を備えている。
【0057】
また、本発明の吸着材モジュール(1)においては、保守管理を容易にするため、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)がそれぞれ交換可能に構成される。具体的には、吸着材モジュール(1)は、ペルチェ素子(30)に対して各吸着素子(31)、(32)を固定することなく密着させた状態で湿度調節装置などに装置に取外し可能に収容される。すなわち、吸着材を担持させた吸着素子、好ましくはゼオライトを担持させた吸着素子、より好ましくはアルミノフォスフェート類を担持させた吸着素子(31)、(32)をそれぞれ独立に取外し可能に収容される。これにより、吸着材の吸着能が低下した場合などに吸着材が担持された吸着素子(31)、(32)だけを交換できる。
【0058】
本発明の吸着材モジュール(1)は、ペルチェ素子に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を機能的に入れ替えることにより、前記各吸着素子における吸着操作と脱着操作を切替え可能になされている。これにより、吸着材モジュール(1)においては、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)において互いに交互に吸着操作と脱着操作を行う様になされている。従って、上記の吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置においては、吸着操作と脱着操作の反転に応じて、第1の吸着素子(31)を通過した空気と第2の吸着素子(32)を通過した空気の吹出流路を切り替えることにより、除湿された空気と加湿された空気を所定の吹出口から連続して吹き出すことが出来る。
【0059】
次に、本発明の吸着材モジュール(1)の使用例を説明する。本発明の吸着材モジュール(1)は、図7に示す様な構成の湿度調節装置に適用することができる。斯かる湿度調節装置は、外気が乾燥する例えば冬季において、窓ガラスに防曇用の除湿空気を供給し、乗員側に加湿空気を供給するために使用される。また、上記の湿度調節装置は、後述する流路切替装置の作動設定の変更により、外気が高湿度となる夏季において、乗員側に除湿空気を供給するために使用される。 なお、図7に示すような湿度調節装置およびその動
作機構は、特許文献3に開示されている。
【0060】
図7(a)に例示する湿度調節装置は、送風機(2)、吸着材モジュール(1)及び流路切替装置(4)を順次に配置して構成される。送風機(2)は、吸着材モジュール(1)の一対の吸着素子(31)、(32)に対応させて2基設けられる。送風機(2)としては、通常、直流方式の遠心ファンが使用される。斯かる遠心ファンの回転数は3000
〜6000rpm程度、最大静圧は100〜300Pa程度、最大風量は0.1〜0.5
/min程度である。なお、湿度調節装置においては、共通の1基の送風機により
、一対の吸着素子(31)、(32)に空気を供給する様に構成されてもよい。
【0061】
吸着材モジュール(1)においては、各吸着素子(31)、(32)の吸着操作、脱着操作を交互に切り替える。従って、上記の湿度調節装置においては、除湿された空気および加湿された空気を各別個に連続的に吹き出すため、上記の各空気を所定の吹出口に振向ける流路切替装置(4)が吸着材モジュール(1)の下流側に配置される。空気の吹出流路を切り替える機構としては、2つの可撓性管路を移動させてその接続先を変更する様な機構、リンク等によって同期作動する2つのシャッターを交互に開閉してその接続先を変更する機構、互いに隣接し且つ側面視して直交する同軸の2枚の回転シャッターを90度づつ回動させてその接続先を変更する機構なども使用できるが、装置構成を簡素化し且つ小型化を図る観点から、上記の流路切替装置(4)は、例えばアクチュエータによって回動するダンパーにより、上記の各空気の振向け先を切り替える様になされている。
【0062】
上記の様な湿度調節装置においては、図7(a)に示す様に、例えば、第1の吹出口(11)から除湿された空気を連続して吹き出し、第2の吹出口(12)から加湿された空気を連続して吹き出すため、前述の様に、吸着材モジュール(1)においてペルチェ素子(30)に流れる電流を一定時間ごとに逆転させて当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部とを入れ替えると共に、流路切替装置(4)において前記の電流の逆転に応じて、吸着材モジュール(1)の第1の吸着素子(31)を通過した空気と第2の吸着素子(32)を通過した空気との振向け先を切り替える様に構成される。
【0063】
すなわち、吸着材モジュール(1)においては、各吸着素子(31)、(32)の吸着・脱着操作に準じた時間間隔、例えば30〜600秒間隔でペルチェ素子(30)に流れる電流を逆転させ、ペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)における吸熱機能と放熱機能とを入れ替える様になされている。また、流路切替装置(4)においては、ペルチェ素子(30)の電流の逆転と同時または逆転させて一定時間経過後、図示しないが(4)の中のダンパー(44)が作動し、吸着材モジュール(1)で処理された上記の各空気の振向け先を一方は第1の吹出口(11)から第2の吹出口(12)へ、他方は第2の吹出口(12)から第1の吹出口(11)へ切り替える様になされている。流路切替装置(4)を作動させるタイミングは、ペルチェ素子(30)の電流を逆転させて以降、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)の温度が高低逆転するまでの間である。
【0064】
上記の湿度調節装置においては、吸着材モジュール(1)で吸脱着操作を一定のタイミングで切り替えると共に、これに応じて、除湿された空気と加湿された空気の吹出流路を流路切替装置(4)によって切り替え、これにより、例えば、第1の吹出口(11)から除湿された空気を連続して吹き出し、第2の吹出口(12)から加湿された空気を連続して吹き出すことが出来る。そして、除湿された空気を窓ガラスの防曇用に使用でき、加湿された空気を快適性向上のために使用できる。
【0065】
本発明の吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置は、図7(b)に示す様に構成することも出来る。図7(b)に例示する湿度調節装置は、送風機(2)、流路切替装置(4)、吸着材モジュール(1)、流路切替装置(4)及び送風機(2)を順次に配置して構成される。すなわち、吸着材モジュール(1)を中心として、当該吸着材モジュール(1)の前後にそれぞれ流路切替装置(4)と送風機(2)を対称的に配置して構成される。そして、各流路切替装置(4)は、これらの導入口(51)、(52)を吸着材モジュール(1)の各吸着素子(31)、(32)に対向する状態に配置され、各送風機(2)は、各流路切替装置(4)に対し、前述の例えば第2の吹出口(12)に相当する通気穴から室内空気を送気する様に構成されている。
【0066】
図7(b)に示す湿度調節装置においても、吸着材モジュール(1)のペルチェ素子(30)へ流す電流の逆転によって吸熱部と放熱部を機能的に入れ替えて各吸着素子(31)、(32)に対する冷却と加熱を反転させ、各吸着素子(31)、(32)の吸着操作と脱着操作を一定のタイミングで切り替えると共に、これに応じて、除湿された空気と加湿された空気の吹出流路を各流路切替装置(4)によって切り替えることにより、例えば、一方(例えば図7(b)中の左側)の流路切替装置(4)の、図示しないが第1の吹出口から除湿された空気を連続して吹き出し、他方(例えば図7(b)中の右側)の流路切替装置(4)の、第1の吹出口から加湿された空気を連続して吹き出すことが出来る。
【0067】
上記の様に、本発明の吸着材モジュール(1)は、固定方式の一対の吸着素子(31)、(32)をペルチェ素子(30)の吸熱部および放熱部として機能する各板面にそれぞれ直接配置して構成され、しかも、吸着素子(31)、(32)に担持させる吸着材として、より低温での吸脱着が可能で且つ少量でも十分な水蒸気量を吸脱可能な特定のゼオライトを使用しており、ペルチェ素子(30)へ流す電流の逆転によって吸熱部と放熱部を機能的に入れ替え、各吸着素子(31)、(32)に対する冷却と加熱を反転させて吸着操作と脱着操作を切り替えることにより、除湿された空気と加湿された空気を連続して製造する。
【0068】
すなわち、本発明の吸着材モジュール(1)においては、平板状のペルチェ素子(30)に各吸着素子(31)、(32)が直接配置されており、吸着素子(31)、(32)を加熱・冷却する際のペルチェ素子(30)と吸着素子との間の熱伝導性が高く、しかも、低い温度域での吸脱着性能に優れた特定のゼオライトを吸着材として各吸着素子(31)、(32)に使用しているため、従来の吸着ローター方式の様な回転駆動部を設ける必要がなく、吸着素子(31)、(32)及びペルチェ素子(30)を一層小型化できる。その結果、湿度調節装置を構成した場合、装置構成を簡素化でき、装置全体を一層小型化することが出来る。また、より低温での吸脱着が可能であるため、ペルチェ素子(30)の発熱温度も低温に抑えることが出来、その結果、ペルチェ素子(30)の耐久性を向上させることも出来る。
【0069】
更に、本発明の吸着材モジュール(1)は、前述の様に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)がそれぞれ交換可能に構成されていることにより、目詰まりや水蒸気以外の物質の吸着によって吸着能が低下した場合、湿度調節装置から吸着材モジュール(3)を取り出し、各吸着素子(31)、(32)を交換することが出来る。これにより、吸着素子(31)、(32)の交換だけで装置性能を回復できる。また、フィルターを使用せずに例えば数年単位で吸着素子を交換することにより、装置を長期に渡って維持でき、メンテナンス費用も低減できる。
【0070】
また、上記の水蒸気以外の物質としては、例えば、VOC13物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ダイアジノン、フェノブカルブ、クロルピリホス)、酢酸、脂肪酸(n−酪酸)、アミン、アンモニア等の臭気物質が挙げられるが、上記の様に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)が交換可能に構成されている場合には、室内が高温になった際に濃縮された前記の臭気物質などが室内に再放出されるのを防止することが出来る。
【0071】
なお、吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置においては、図示しないが流路切替装置(4)内のダンパー(44)の作動設定を切り替えることにより、例えば夏季において、第2の吹出口(12)から除湿された空気を乗員側へ吹き出すことも出来る。また、湿度調節装置においては、吸着材モジュール(3)の第1の吸着素子(31)で除湿
(又は加湿)された空気と第2の吸着素子(32)で加湿(又は除湿)された空気との間で顕熱交換を行うため、吸着材モジュール(3)の下流側、好ましくは流路切替装置(4)の下流側にフィン型熱交換器や直交型熱交換器などの熱交換器が配置されてもよい。熱交換器を配置した場合には、ペルチェ素子(30)で加熱された高温の加湿空気と、ペルチェ素子(30)で冷却された低温の除湿空気との間で熱交換できるため、例えば冬季には、加湿され且つ適度に温度の低下した快適な空気を乗員側へ吹き出すことが出来る。更に、吸着材モジュール(1)の上流側または下流側には、室内で発生した臭気成分を捕捉するための脱臭用フィルターが配置されてもよい。
【0072】
(3)吸着ヒートポンプ
本発明のゼオライトは、吸着ヒートポンプ用にも適用できる。通常、公知の吸着ヒートポンプに適用することができる。
一般に遠心圧縮機を用いたターボ冷凍機は10℃よりも低温の冷熱を製造することが可能である。このようなターボ冷凍機に置き換わるような省エネ型の圧縮機を用いない冷凍機が望まれている。すなわち、10℃よりも低温の冷熱が製造でき、しかも90℃以下の排熱などが利用できる吸着ヒートポンプが望まれている。
本発明の吸着ヒートポンプは、好ましくは生成する冷熱として、9℃以下、好ましくは7℃以下、より好ましくは5℃以下であり、再生に用いる熱としては、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、最も好ましくは70℃以下である吸着ヒートポンプである。前記の場合の吸着材の温度としては、30℃以上、好ましくは35℃以上となっても稼動できるものが求められる。例えば、5℃の冷水を35℃の吸着温度で生成させるためには、相対蒸気圧0.15となり、7℃の冷水を37℃の吸着温度で生成させるためには、相対蒸気圧が0.16となる。また、再生については、例えば、再生温度が90℃、吸着材の温度が35℃の場合は相対蒸気圧は0.08となり、再生温度が80℃、吸着温度が30℃の場合は、相対蒸気圧は0.09となる。したがって、このような吸着ヒートポンプに対応できる吸着材としては、相対蒸気圧0.08以上0.15以下の範囲における水の吸着量の変化が0.12g/g以上、好ましくは、0.13g/g以上、より好ましくは0.14g/g以上であることが好ましい。
【0073】
(4)デシカントローター
本発明のゼオライトは、デシカントローターに適用することもできる。通常、本発明のゼオライトを吸着素子、またはハニカム構造を有するローターに担持して、デシカントローターとして使用することができ、好ましくは低温で、具体的には90℃以下の再生温度での水蒸気の再生が可能なデシカントローターとして利用することができる。
【実施例】
【0074】
(実施例1)
水15gと85%リン酸水溶液9.2gの混合物に、25%水含有擬ベーマイト(サソール社製)5gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、これに硫酸第一鉄7水和物1.7gを水6gに溶かした水溶液を加え、さらにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物3.6gを水6gに溶かしたものと40wt%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液10.2gを混合した液をこれに加えて混合して1時間攪拌し出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100ccのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、190℃、24時間反応させた。反応後、冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管にいれ、室温から1℃/分で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性鉄アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、SOD型(フレームワーク密度は17.2T/1000Å3)であった。
得られたSOD型ゼオライトについて、25℃における吸着等温線を吸着等温線測定装
置(ベルソープ18:日本ベル社製)で測定した。なお前処理は、前処理温度120℃、真空下にて5時間処理した。空気恒温槽温度50℃、吸着温度25℃、初期導入圧力3torr、飽和蒸気圧23.755torr、平衡時間500秒で行った。この結果を図1に示した。
【0075】
(実施例2)
水15gと85%リン酸水溶液9.2gの混合物に、25%水含有擬ベーマイト(サソール社製)4.9gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、これに硫酸第一鉄7水和物2.2gを水18gに溶かした水溶液を加え、さらにトリn−プロピルアミン10.3gを混合して1時間攪拌し出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100ccのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、100℃で3日間加熱後、150℃で24時間反応させた。反応後、冷
却して、デカンテーションにより上澄みを除いて、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管にいれ、室温から1℃/分で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性鉄アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、ATS型(フレームワーク密度は16.4T/1000Å3)であった。
得られたATS型ゼオライトについて25℃における吸着等温線を実施例1と同様に、吸着等温線測定装置(ベルソープ18:日本ベル製)で測定した。
結果を図2に示す。
【0076】
(実施例3)
(アルミノフォスフェート(AlPO)レイヤーの合成)
水8.9gと85%リン酸水溶液9.2gの混合物に、25%水含有擬ベーマイト(サソール社製)5.4gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、これにベンジルアミン8.6gを加え、さらに水10.0gを混合して1時間攪拌し出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100ccのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、190℃で24時間反応させた。反応後、冷却して、生成物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。こうして得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ層状化合物であった(層間距離d=19.5A)。これをAlPO4レイヤーとする。
(AlPOレイヤー添加FAPSO−SODの合成)
水12.5gと85%リン酸水溶液8.8gの混合物に、25%水含有擬ベーマイト(サソール社製)5.2gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、これに硫酸第一鉄7水和物2.2gを水18gに溶かした水溶液およびフュームドシリカ0.24gを加え、さらにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(25%水溶液)14.5gを加
えて攪拌した。これを1時間攪拌し、これに上記で合成したAlPOレイヤー5.0gを加え、さらに1時間攪拌して出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100ccのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、190℃で24時間反応させた。反応後、冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管にいれ、室温から1℃/分で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性鉄シリカアルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、SOD型(フレームワーク密度は17.2T/1000Å3)であった。
前記SOD型ゼオライトの25℃における吸着等温線を実施例1と同様に吸着等温線測定装置(ベルソープ18:日本ベル製)で測定した。結果を図3に示す。なお、空気恒温槽温度50℃、吸着温度25℃、初期導入圧力3torr、飽和蒸気圧23.755torr、平衡時間500秒で行った。
【0077】
(比較例1)
水15gと85%リン酸水溶液9.2gの混合物に、25%水含有擬ベーマイト(サソール社製)5.2gをゆっくりと加えて攪拌した。これを1時間攪拌し、次いで、硫酸第一鉄7水和物2.2gを水10gに溶かした水溶液を加え、更にトリエチルアミン4.8gを混合した後、1時間攪拌して出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100mlのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、190℃で12時間反応させた。反応後、冷却して、デカンテーションにより上澄みを除き、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管に入れ、室温から1℃/分の昇温速度で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性鉄アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型(フレームワーク密度は17.3T/1000Å3)であった。
前記AFI型ゼオライトの25℃における吸着等温線を実施例1と同様に、吸着等温線測定装置(ベルソープ18:日本ベル製)で測定した。結果を図4に示す。
【符号の説明】
【0078】
1 :吸着材モジュール
2 :送風機
30:ペルチェ素子
3a:ペルチェ素子の板面(吸熱部または放熱部)
3b:ペルチェ素子の板面(放熱部または吸熱部)
31:第1の吸着素子
32:第2の吸着素子
33:エレメント
4 :流路切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格構造にアルミニウムとリンと、鉄またはチタンを含むゼオライトであり、前記ゼオライトの25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧
0.08以上0.15以下の範囲におけるゼオライトの水吸着量の変化が
0.12g/g以上であることを特徴とするゼオライト。
【請求項2】
前記ゼオライトの25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧が0.1のときの水蒸気吸着量が0.03g/g以上である請求項1記載の
ゼオライト。
【請求項3】
ゼオライトの骨格構造がIZA(International Zeolite Association)の定める構造
のコードでSOD型、またはATS型構造を有する請求項1または2に記載のゼオライト。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライトを用いた吸着素子。
【請求項5】
空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に使用される吸着材モジュールであって、前記モジュールは吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面を備えたペルチェ素子と、当該ペルチェ素子の各板面にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子および第2の吸着素子とを有し、これら第1及び第2の吸着素子が、通気可能なエレメントに吸着材としてのゼオライトを担持させて構成されている吸着材モジュールであり、
かつゼオライトに、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライトを用いることを特徴とする吸着材モジュール。
【請求項6】
ペルチェ素子に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を入れ替えることにより、各吸着素子における吸着操作と脱着操作を切替え可能になされている請求項5に記載の吸着材モジュール。
【請求項7】
第1及び第2の吸着素子のエレメントの少なくとも一方が、略波板状の基材シート及び略平板状の基材シートから成る通気セル形成シートを複数積層したコルゲート型のエレメントであり、かつ、当該エレメントは、前記各通気セル形成シートの略平板状の基材シートがペルチェ素子の板面と平行に、または直交して配置された構造を備えている請求項5または6に記載の吸着材モジュール。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライトを用いた吸着ヒートポンプ。
【請求項9】
吸着ヒートポンプの再生温度が90℃以下であり、吸着温度が30℃以上で得られる冷熱が7℃以下である請求項8に記載の吸着ヒートポンプ。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼオライトを用いたデシカントローター。
【請求項11】
デシカントローターの再生温度が、90℃以下である請求項10に記載のデシカントローター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93734(P2011−93734A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248069(P2009−248069)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】