説明

ゼブラフィッシュのヘテロ三量体Gタンパク質γ2サブユニット(GNG2)

本発明は、ゼブラフィッシュのヘテロ三量体Gタンパク質γ2サブユニット(GNG2)の配列を提供する。また本発明は、新脈管形成に関連する疾病を処置するために、ヒトを含む、脊椎動物、特に哺乳動物においてGNG2依存性新脈管形成を抑制および促進する方法を提供する。また本発明は、GNG2と化合物の相互作用をとおして新脈管形成を促進または抑制する化合物を同定する方法を提供する。本発明は、さらに、両GNG2およびVEGFの調節をとおして新脈管形成を調節する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス・リファレンス
本出願は、2004年12月29日提出の米国暫定出願第60/640,802号、および2005年12月28日提出の米国非暫定出願(番号未指定)の利益を請求するものであり、これらの各々の開示は完全に引用によって本明細書に組み入れられている。
【0002】
政府認可に対するリファレンス
本明細書における開示の部分は、国立保健研究所補助金番号GM58191によって一部支援されてきた。米国政府は本出願において一定の権利を有するであろう。
【0003】
技術分野
本発明は、抗新脈管形成(anti−angiogenesisおよびプロ新脈管形成(pro−angiogenesis)に関連する治療のための薬物標的としての、いかなる種に由来してもよいヒト、マウス、ゼブラフィッシュおよび他の脊椎動物を含む、脊椎動物のヘテロ三量体Gタンパク質γ2サブユニット(GNG2)に関する。
【背景技術】
【0004】
新脈管形成は、新しい血管が、先在する(pre−existing)血管から形成されるプロセスである。これは、内皮細胞ならびに血管系において見出される可能性のある他の細胞類、例えば平滑筋細胞および繊維芽細胞の増殖、分化および移動を伴う。強化によっても、また抑制によっても、このプロセスの変更は、ヒトの疾病、例えばがん、黄斑変性、リウマチ様関節炎、アルツハイマー病、創傷治癒、アテローム性動脈硬化症および虚血の処置のために有用であろう。
【0005】
新脈管形成の抑制はがん治癒に対する強力な新アプローチを代表する。がんの処置のためのこの道筋の潜在性を完全に実現するためには、抗新脈管形成活性について化合物を迅速にスクリーニングできるアッセイが必須である。固形腫瘍は、生残し、成長し、そして転移するためには血液からの栄養素の十分な供給を要する(非特許文献1;非特許文献2)。存在する血管から出芽する(sprouting)ことによって成長する腫瘍に栄養を与える新しい血管は、新脈管形成として知られるプロセスである。近年、新脈管形成は、がんを標的とする新規なプロセスとしてかなりの注目を受けた。既に臨床試行中の多数の薬物が、抗新脈管形成活性を有することが示されており、そして新しい薬物がそのような血管の成長を停止させる能力について具体的に開発されつつある(非特許文献3)。
【0006】
抗新脈管形成薬物は臨床的応用において混同した成功を有した。多くの新しい化合物が、広範囲の腫瘍を処置できる薬物を同定するためにインビボで試験される必要があろう。したがって、潜在的な抗新脈管形成化合物をスクリーニングするために適当なインビボのアッセイが益々重要になる。特許文献1は、ゼブラフィッシュ(ダニオ・レビオ(Danio revio))を使用するアッセイ提供し、これはインビボ環境との関連性ならびに高処理能の薬物スクリーニングに対する可能性を与える。この技術は、血管において特異的に発現されるレポータータンパク質、例えば緑色造礁サンゴ(reef coral)蛍光タンパク質(G−RCFP,非特許文献4)または赤色蛍光タンパク質(dsRed2)を発現するゼブラフィッシュのトランスジェニック系を生成することを伴う。
【0007】
ゼブラフィッシュは脊椎動物発生の研究用に十分に許容されるモデルになった。マウスとは異なり、ゼブラフィッシュの胚は母体の外部で発生し、そして透明であるので、分化
する組織および器官の観察を容易にする。ゼブラフィッシュの脈管系は、特に、良く記述されており、ゼブラフィッシュからヒトまで高度に保存されていることが分っている(非特許文献5;非特許文献6)。さらにまた、ゼブラフィッシュの胚は有意な血液供給なしに数日間生存することができるので、血管欠損のある胚の研究を容易にする。腫瘍の新脈管形成およびこのプロセスに非常に類似する新脈管形成性発芽(angiogenic sprouting)によるゼブラフィッシュ胚形態における体節間の血管は、哺乳動物における血管成長のために必要であることが示された同じタンパク質を要求するようである。例えば、抗新脈管形成化合物PTK787/ZK222584、血管内皮成長因子(VEGF)受容体のチロシンキナーゼの阻害剤は、ゼブラフィッシュ血管の形成に影響を与えることが分っている(非特許文献7)。ゼブラフィッシュにおける血管を可視化する現在の方法は、血管内皮細胞マーカーの全載(whole mount)インサイチューハイブリダイゼーション(非特許文献8;非特許文献9)、血管における内因性アルカリホスファターゼ活性の検出および循環する心臓血管系の微細血管造影法を含む。後者の技術は、生存するゼブラフィッシュ幼生の循環中への蛍光ビーズの注入(非特許文献10)を伴い、そして完全な循環系における血管の可視化のために有用である。VEGF受容体を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤の適用によってブロックされる体節間血管の形成は、血管系中で蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックフィッシュにおいて容易に可視化できることが見出された。ヘテロ三量体Gタンパク質は、真核細胞における受容体シグナル伝達(signaling)のために要求される膜会合タンパク質である。適当なリガンドの結合に応じて、受容体はαサブユニットにおいて結合GDPのGTPへの交換を刺激して、βおよびγサブユニットからαサブユニットの解離をもたらす。GTP結合αサブユニットは、下流のエフェクターの活性を直接調節することが示されている(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。Gilmanは、GTP結合αサブユニットからの解離後、βγサブユニットはインビボで緊密に会合された複合体として存在することを例証した。この複合体は、アデニリルシクラーゼ・サブタイプIIおよびIV、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼCサブタイプβ1,2,3および種々のKおよびCa2+イオンチャンネルを含む、下流のエフェクターの特定のサブセットの活性を調節することが見出された(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。かくして、Gタンパク質αおよびβγサブユニットは、これらのエフェクターの機能を調節する二又状シグナルを生じる。さらに、βγサブユニットは受容体に直接結合でき(非特許文献17)、そして膜に対してβ−アドレナリン作動性(β−ARK)キナーゼを直接相互作用させ、そして回復させることによってアゴニスト依存性リン酸化および脱感作を増進することができる(非特許文献18;非特許文献19)。かくして、βγサブユニットはエフェクター調節と受容体認識の両方のために重要である。
【0008】
Gタンパク質のα、βおよびγサブユニット各々の多数のイソタイプが広範な真核生物種において見出された。5種の明確な哺乳動物βサブユニット(β−β)をコードしている完全なcDNAが、これまでに同定されている(非特許文献20)。近年同定されたラット心臓のcDNAは、第6のβサブユニットをコードしているようであり、これはヒトβサブユニットに96%同一である(非特許文献21)。アミノ酸レベルでは、βサブユニットは高度に保存されている。
【0009】
これに対して、γサブユニットは、より一層多岐にわたる。ヒトおよびマウスでは、少なくとも16種のα、5種のβおよび12種のγサブユニットが存在し、これらは960の異なる組み合わせ物を形成する可能性を有する(非特許文献22)。多数のα、βおよびγサブユニットは、存在することが知られている数百の受容体シグナル伝達経路の特異性を制御するために、いかにしてGタンパク質が集合されるかに関して根本的な疑問を高めた。すべての可能な組み合わせ物がインビボで存在するか否か、あるいは種々の組み合わせ物がどんな特殊な役割を有するかは知られていない(非特許文献22)。かくして、γサブユニットがβγサブユニット複合体の機能的特異性を決定すると信じられている。
γサブユニットの異なるcDNAが単離された、例えば、ウシ網膜からのγサブユニット(非特許文献23)、ウシの脳からのγ、γおよびγサブユニット(非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27)、およびウシおよびラット肝臓からのγサブユニット(非特許文献28)。また、推定されるγサブユニットの存在は、マウス腎臓および網膜からPCRフラグメントの単離により報告された(非特許文献26)。さらに、RobishawおよびKunschは、ヒトのγ、γ、γ、γ、γ、γ10およびγ11サブユニットのクローニングおよび特性決定を報告した(特許文献2)。
【0010】
多数のGタンパク質サブユニット組み合わせ物は、費用および労力の集中するマウスにおける遺伝子操作に基づく解析についての挑戦を与える。しかしながら、ゼブラフィッシュ(ダニオ・レリオ)は、多数の卵を産み、短い世代時間を有し、かつ遺伝子操作に関して容易に接近できる卵であり、結果的にそのような解析を容易にさせる。この応用は、ヘテロ三量体Gタンパク質γ2サブユニット(GNG2)が新脈管形成において必須の機能を有することを初めて例証し、その結果、動物において新脈管形成を調節するためのGNG2に対する関連ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および化学物質の可能性のある応用についての根本的基礎を与える。
【特許文献1】Rubinstein et al.米国特許出願公開第20040143865号
【特許文献2】WO96/37513
【非特許文献1】Hanahan,D.& J.Folkman(1996)Cell 86:353−364
【非特許文献2】Li,C.Y.et al.,(2000)Cancer Met,Rev.19:7−11
【非特許文献3】Rosen,L.(2000)Oncologist 5(suppl.1):20−27
【非特許文献4】Matz,M.V.et al.(2000)Nat.Biotechnol.17:969−973
【非特許文献5】Isogai,S.et al.(2001)Dev.Biol.230(2):278−301
【非特許文献6】Vogel,A.M.&B.M.Weinstein(2000)Trends Cardiovasc.Med.10(8):352−360
【非特許文献7】Chan,J.et al.(2001)Cancer Cell 1:257−267
【非特許文献8】Fouquet,B.et al.(1997)Dev.Biol.183:37−48
【非特許文献9】Liao,W.et al.(1997)Development 124:381−389
【非特許文献10】Weinstein,B.M.et al.(1996)Nat.Med.1:1143−1147
【非特許文献11】Gilman,A.G.(1987)Ann,Rev.Biochem.56:615−649
【非特許文献12】Simon et al.(1991)Science 252:802−808
【非特許文献13】Birnbaumer,L.(1992)Cell 71:1069−1072
【非特許文献14】Tang,W.J.and Gilman,A.G.(1991)Science 254:1500−1503
【非特許文献15】Wickman et al.(1994)Nature 368:254−257
【非特許文献16】Clapham,D.E.and Neer,E.J.(1993)Nature 365:403−406
【非特許文献17】Phillips,W.J.and Cerione,R.A.(1992)J.Biol.Chem.24:1703−17039
【非特許文献18】Haga,K.and T.Haga(1992)J.Biol.Chem.(1992)267:2222−2227
【非特許文献19】Pitcher et al.(1992)Science 257:1264−1267
【非特許文献20】Watson et al.(1994)J.Biol.Chem.269:22150−22156
【非特許文献21】Ray,K.and Robishaw,J.D.(1994)Gene 149:337−340
【非特許文献22】Cheng et al.(2003)Developmental Dynamics 228:555−567
【非特許文献23】Hurley et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci USA 81:6948−6952
【非特許文献24】Robishaw et al.(1989)J.Biol.Chem.264:15758−15761
【非特許文献25】Gautam et al.(1989)Science 244:971−974
【非特許文献26】Gautam et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci USA(1990)87:7973−7977
【非特許文献27】Cali et al.(1992)J.Biol.Chem.267:24023−24027
【非特許文献28】Fisher,K.and N.N.Aronson,(1992)Mol.Cell Biol.12:1585−1591
【発明の開示】
【0011】
本発明は、ゼブラフィッシュのGNG2タンパク質をコードしている単離された核酸配列を提供する。ある実施態様では、核酸をコードしているGNG2は配列番号:1のポリヌクレオチド配列を有する。また本発明は、本発明の方法における使用のための他の脊椎動物種からのGNGをコードしているポリヌクレオチドならびにその部分、同族体およびフラグメントを提供する。ある実施態様では、ポリヌクレオチドは、例えば、ヒト、マウス、ラットおよびウシのような種から得られる。ある実施態様では、GNG2をコードしているポリヌクレオチドは、配列番号:7、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:59または配列番号:60の核酸配列を有する。
【0012】
また本発明は、単離されたゼブラフィッシュGNG2ポリペプチドを提供する。ある実施態様では、ポリペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を有する。また本発明は、本発明の方法における使用のための他の脊椎動物種からのGNGポリペプチドならびにその部分、同族体およびフラグメントを提供する。ある実施態様では、ポリペプチドは、例えば、ヒト、マウス、ウシおよびラットのような種から得られる。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:57のアミノ酸配列を有する。
【0013】
また本発明は動物おける新脈管形成を促進する方法を提供する。ある実施態様では、本方法はGNG2ポリペプチドの有効量を動物に投与することを含む。ポリペプチドは、細胞膜バリヤーの通過を促進するために種々の有効な送達試薬と共役されてもよい。GNG2ポリペプチドはいかなる脊椎動物GNG2ポリペプチドであってもよい(すなわち、すべての種に由来する)。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:6の共通
アミノ酸配列を含む。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:4のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:5のアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明の他の実施態様では、新脈管形成を促進する方法は、GNG2ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの有効量を、単独でまたはすべてのGタンパク質βサブユニットポリヌクレオチド/ポリペプチドとの組み合わせにおいて、新脈管形成の必要な動物に投与することを含む。ポリヌクレオチドはいかなるGNG2ポリペプチドをコードしていてもよい。ある実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:1の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:7の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:11の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:12の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:15の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:56の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:58の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:59の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:60の核酸配列を含む。
【0015】
また本発明は、GNG2ポリペプチドをコードしている第1のポリヌクレオチドの有効量およびVEGFポリペプチドをコードしている第2のポリヌクレオチドの有効量を動物に投与することを含んでなる、それを必要とする動物において新脈管形成を促進する方法を提供する。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは、配列番号:2、配列番号:4、配列番号;5および配列番号:6からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む。ある実施態様では、VEGFポリペプチドは、配列番号:36、配列番号:38、配列番号;40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50および配列番号:52からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0016】
また本発明は動物おける新脈管形成を抑制する方法を提供する。ある実施態様では、本方法は、GNG2ポリペプチドの発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなポリヌクレオチドの有効量を動物に投与することを含む。GNG2ポリペプチドはいかなる脊椎動物のGNG2ポリペプチド(ヒト、マウス、ウシ、ラット、ゼブラフィッシュおよびすべての他の脊椎動物を含む)であってもよい。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:6の共通アミノ酸配列を含む。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:4のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドは配列番号:5のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:3の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:6の核酸配列を含む。他の実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:57の核酸配列を含む。
【0017】
また本発明は、新脈管形成を抑制するのに十分な量において、あるいは抗VEGFと化学療法のような治療のすべての組み合わせ療法の効力を増進するであろう量において、GNG2の発現を抑制するポリヌクレオチドをそのような処置の必要な患者に投与することを含んでなる、新脈管形成に関連する疾病を処置する方法を提供する。新脈管形成に関連する疾病は、限定されるものではないが、新脈管形成に依存するがん;良性腫瘍;リウマチ様関節炎;乾癬;眼の新脈管形成疾患;Osler−Webber症候群;心筋新脈管形成;プラーク新生新脈管形成;末梢血管拡張症;血友病性関節;線維性血管腫;創傷肉芽;腸癒着、アテローム性動脈硬化症、強皮症、肥大瘢痕、ネコ掻爬疾患およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)潰瘍を含む。
【0018】
それ自体、本方法は、腫瘍の退行またはがん症状の安定化を惹起するのに十分な量にお
いて、あるいは治療のすべての組み合わせ療法の効力を増進するであろう量において、GNG2の発現を抑制するポリヌクレオチド、改変ポリヌクレオチドを単独で、または細胞または組織中にポリヌクレオチドの有効な送達を可能にする担体と組み合わせて投与することによって、新脈管形成依存性腫瘍を有する患者を処置することを包含する。ポリヌクレオチドまたは改変ポリヌクレオチドは、GNG2をコードしている核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、モルホリノ(morpholino)オリゴヌクレオチドまたはリボザイムであってもよい。また本発明は、GNG2と他のαまたはβサブユニット、上流の受容体または下流のエフェクターとの相互作用を抑制する細胞透過性ペプチドにより患者を処置する方法を提供する。本発明の方法は、VEGF活性の細胞透過性ペプチド抑制をさらに含んでもよい。
【0019】
ある実施態様では、本発明は、GNG2の発現を抑制する第1の試薬およびVEGFの発現を抑制する第2の試薬をそのような処置の必要な患者に投与することを含んでなる新脈管形成に関連する疾病を処置する方法であって、第1の試薬および第2の試薬が一緒になて新脈管形成を抑制するように相乗的に作用する方法を提供する。第1の試薬は、GNG2をコードしているポリヌクレオチドに対向されるポリヌクレオチド(アンチセンス分子、例えばRNAi、siRNA、miRNA、改変核酸、PNA、またはモルホリノオリゴヌクレオチドまたはリボザイムなどを含む)を含んでもよい。ある実施態様では、第1の試薬は、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:12およびそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる配列を有する。アンチセンスモルホリノまたは他のsiRNAに対して標的とされる配列の小領域のみを定義することは率直ではない。翻訳をブロックするアンチセンスモルホリノオリゴ(oligo)は、ATG開始コドンの5’非翻訳領域から25bp下流までのいずれの場所においても働く。さらに、スプライシング抑制アンチセンスモルホリノオリゴは、エクソン/イントロン境界間で働く。それ故、GNG2遺伝子のいずれかのエクソン/イントロン境界が標的配列である。したがって、翻訳をブロックするアンチセンスのためのGNG2mRNA転写物のいかなる領域およびスプライシング抑制のためのGNG2遺伝子のいかなるゲノム領域が使用されてもよい。ヒトGNG2mRNAアクセッション・ナンバーは、NM 053064、Unigene Cluster Hs.112928(Ensembl Gene ID:ENSG00000186469 from the Sanger Institute)である。第2の試薬は、VEGFをコードしているポリヌクレオチドに対向されるポリヌクレオチド(アンチセンス分子、RNAi、siRNA、miRNA、改変核酸、PNA、またはモルホリノオリゴヌクレオチドまたはリボザイムなどを含む)を含んでもよい。ある実施態様では、第1の試薬は、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55およびそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる配列を有する。ヒトVEGFアクセッション・ナンバーは、NM 003376、Unigene Cluster:Hs.73793(Ensembl Gene ID:ENSG00000112715)である。ある実施態様では、新脈管形成関連の疾病は腫瘍またはがんの進行に関している。
【0020】
GNG2および/またはVEGFの機能を破壊するオリゴヌクレオチドを設計するためには、RNA発現を抑制する所望の効果を有すると思われる推定配列について、当該技術分野において既知であるような種々のコンピューターに基づくアルゴリズムが使用できる。そのようなアルゴリズムの例は、限定されるものではないが、sfold.wadsworth,orgのドメインアドレスの下で世界的ウェブにおけるSfoldウェブサーバーにおいて利用できるSfoldを含む。このアルゴリズムはまた、Ding,Y.et al.(2004)Nucl.Acids Res.32:W135−W141において記述されている。
【0021】
ある実施態様では、第1の試薬は、GNG2またはVEGFの発現または機能を抑制する、低分子、天然化合物または組み合わせ(combinatorial)化学からの合
成化合物である。そのような化合物は当該技術分野において既知の化合物であってもよく、または本明細書に記述されるスクリーニング方法を用いて同定されてもよい。そのような化合物は、例えば、GNG2の発現、GNG2の翻訳後の修飾(例えば、プレニル化に影響)を抑制しても、GNG2のアロステリックコンホメーションを変えても、そして/またはβγ二量体の相互作用に影響を与えてもよい。
【0022】
さらに本発明は、GNG2の機能または発現を抑制する第1の化合物ならびにVEGFの受容体および下流のシグナル伝達分子を含むVEGFシグナル伝達の発現または機能を抑制する第2の化合物を、そのような処置の必要な患者に投与することを含んでなる新脈管形成に関連する疾病を処置する方法であって、該第1の化合物および該第2の化合物が新脈管形成を抑制するのに十分な量において提供される方法を提供する。ある実施態様では、VEGFの機能を抑制する化合物は、VEGFを特異的に結合する抗体である。
【0023】
本発明の特定の実施態様では、本発明は、GNG2の発現または機能を抑制する第1の化合物ならびにVEGFの発現または機能を抑制する第2の化合物(天然化合物、組み合わせ化学からの合成化合物または低分子を含む)を、そのような処置の必要な患者に投与することを含んでなる新脈管形成依存性腫瘍を有する患者を処置する方法であって、該第1の化合物および該第2の化合物が腫瘍の退行を惹起するのに十分な量において提供される方法を提供する。ある実施態様では、GNG2の発現または機能を抑制する化合物は、GNG2ポリペプチドをコードしている配列を含んでなる核酸に特異的にハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンス、モルホリノオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。他の実施態様では、GNG2の発現または機能を抑制する化合物はGNG2ポリペプチドに特異的を結合する抗体である。ある実施態様では、VEGFの発現または機能を抑制する化合物は、VEGFポリペプチドをコードしている配列を含んでなる核酸に特異的にハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンス、モルホリノオリゴヌクレオチドまたはリボザイムである。他の実施態様では、VEGFの機能を抑制する化合物はVEGFポリペプチドを特異的に結合する抗体である。ある実施態様では、GNG2および/またはVEGFの発現および/または機能を抑制する化合物はポリヌクレオチドおよび抗体の組み合わせ物である。
【0024】
[図面の簡単な説明]
図1は、ゼブラフィッシュGNG2(配列番号:1)のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸配列(配列番号:2)の整列を示す。
【0025】
図2は、ゼブラフィッシュGNG2(配列番号:2)および共通配列(配列番号:5)とともにヒトGNG2(配列番号:4)のアミノ酸配列の整列を示す。空白スペースは非共通アミノ酸の差異を指す。「+」は共通アミノ酸の差異を指す。
【0026】
図3は、マウスGNG2(配列番号:5)およびゼブラフィッシュGNG2(配列番号:2)とともにヒトGNG2(配列番号:4)のアミノ酸配列の整列を示す。空白スペースは非共通アミノ酸の差異を指す。星印は共通アミノ酸の差異を指す。gng2の配列および発現解析。(A)ゼブラフィッシュGγ2タンパク質は哺乳動物タンパク質に対して94%同一である。
【0027】
図4は、アミノ酸残基の保存を図によって示すヒトGNGファミリーのメンバーの整列を示す。配列は、AAH29367(GNGT1)(配列番号:18);AAM12592(GNG11)(配列番号:19);AAB70039(GNGT2)(配列番号:20);AAM12590(GNG9)(配列番号:21);AAM12585(GNG3)(配列番号:22);AAM12586(GNG4)(配列番号:23);AAF04569(GNG8)(配列番号:24);AAM12588(GNG7)(配列番号:2
5);AAF04571(GNG12)(配列番号:26);AAM12587(GNG5)(配列番号:27);AAF04568(GNG5L)(配列番号:28);AAM12591(GNG10)(配列番号:29);AAM12594(GNG13)(配列番号:30)である。
【0028】
図5は、ヒトGNGファミリーの系統図(phylogram)を示す。配列は、AAH29367(GNGT1)(配列番号:18);AAM12592(GNG11)(配列番号:19);AAB70039(GNGT2)(配列番号:20);AAM12590(GNG9)(配列番号:21);AAM12585(GNG3)(配列番号:22);AAM12586(GNG4)(配列番号:23);AAF04569(GNG8)(配列番号:24);AAM12588(GNG7)(配列番号:25);AAF04571(GNG12)(配列番号:26);AAM12587(GNG5)(配列番号:27);AAF04568(GNG5L)(配列番号:28);AAM12591(GNG10)(配列番号:29);AAM12594(GNG13)(配列番号:30)である。
【0029】
図6(A)は、ゼブラフィッシュGγ2タンパク質が脊椎動物において高度に保存されていることを表す系統図を示す。Gγ2タンパク質は、Gγ2タンパク質ファミリーにおいて保存されているC末端におけるCAA(L/S)ボックス(長方形ボックス、ここでAはいずれかの脂肪族アミノ酸であった)を含有する。(B)は、1細胞〜128細胞期からの母性gng2転写物および1dpfまで進んだ高い段階からの接合(zygotic)転写物のRT−PCR検出を示す。
【0030】
図7は、受精後24時間(hpf)の神経管および軸血管系組織におけるGNG2発現を示す。パネルAは側面画像であり;パネルBは背側の画像である(挿入画像:拡大)。パネルAおよびBは、1dpfの神経管および軸血管系組織におけるgng2発現を示し、そしてパネルCは、全載インサイチューハイブリダイゼーションによって検出されるゼブラフィッシュ胚における2dpfの耳胞を示す(v.m.h.腹側の中脳および後脳;tel.終脳(telecephalon);a.v.軸血管系;s.n.脊髄ニューロン;o.v.耳胞;f.b.前脳;h.b.後脳;p.p.咽頭嚢;o.t.流出管;s.v.発芽する血管)。すべてのスケールバーは100μmである。
【0031】
図8は、GNG2に対する翻訳抑制モルホリノを示す。MO−gng2(翻訳)(配列番号:8)はGNG2(センス)(配列番号:9)の逆相補物(complement)である。配列番号:9(MO−gng2(アンチセンス)は3’〜5’方向において示される配列番号:8と同じである。MO−gng2(翻訳)(配列番号:8)は太字かつ下線を付されたゼブラフィッシュGNG2遺伝子(配列番号:11)の背景内に示される。
【0032】
図9は、GNG2mRNAスプライシングに対するスプライシングモルホリノを示す。MO−GNG2(スプライシング)(配列番号:12)もまたゼブラフィッシュGNG2遺伝子エクソン−イントロン−エクソン(配列番号:13)の背景内に示される。エクソンは二重下線において示され、そしてMO−GNG2(スプライシング)(配列番号:12)は太字大文字において示される。
【0033】
図10は、ゼブラフィッシュ身体軸の短縮、ならびに中胚葉および神経の異常をもたらすGNG2の標的化抑制を示す。パネルAは野生型の胚を示し;パネルBはMO−GNG2翻訳モルホリノによる処理後の胚を示し;そしてパネルCはMO−GNG2スプライシングモルホリノによる処理後の胚を示す。
【0034】
図11は、ゼブラフィッシュ胚におけるスプライシングモルホリノを用いるgng2の標的化ノックダウンを示す。(A)gng2エクソン−イントロン境界に対して標的にさ
れるスプライス結合モルホリノ。(B)cDNAおよびゲノムPCR産物に対してモルホリノ注入された胚における潜在性スプライス転写物を比較して、野生型(WT)およびgng2−MO(100μM)モルホリノ注入された胚における尾芽期のgng2転写物のRT−PCR。
【0035】
図12は、野生型GNG2mRNAおよびゼブラフィッシュRNAのMO−GNG2に導かれたミススプライシングから得られるスプライス変異体mRNAを示す。野生型GNG2(配列番号:15)およびミススプライスされたGNG2(配列番号:16)のヌクレオチド配列が、それぞれの推定されるアミノ酸配列(野生型、配列番号:2;スプライス変異体、配列番号:17)とともに示される。
【0036】
図13は、インビボの新脈管形成のためのGタンパク質γ2の必須機能を示す。(A)および(D)1dpfのWTゼブラフィッシュ胚における、全載インサイチューハイブリダイゼーションによる軸血管系および体節間血管(IS)(D,矢印)におけるflk1発現。(B−C)および(E−F)gng2−スプライシングノックダウン(gng2−MO,100μM)が体節間血管の形成、新脈管形成のプロセスを抑制し、(B)および(E)はISの完全な喪失、胚の53%であり、(C)および(F)はISの部分的喪失、胚の43%であり、(A−F)はN=110,5実験の結果であった。(G−H)アンチセンスモルホリノを用いる両Gタンパク質(gng2−MO、40μM)およびvegf(vegf−MO、25μM)の標的化は、1dpfゼブラフィッシュ胚の背側大動脈からの体節間の発芽の喪失によって、可視化されるように抗新脈管形成の効率を劇的に増大した(H)。有効以下の用量におけるvegfノックダウン単独(vegf−MO、25μM)は効果を示さなかった(G)。(G−H)における挿入画像はISのより高い拡大画像である、(G,H矢印)。注入容量は約1nlであった。全スケールは100μmである(A−H)。
【0037】
図14は、VEGF−mRNA過発現に誘導された1dpfにおけるflkの内皮発現を示す。パネルAは野生型、1dpfを示し(側面画像);パネルBはVEGF−mRNA、1dpfを示し(側面画像);パネルCは野生型、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルDはVEGF−mRNA、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルEは野生型、1dpfを示し(背面画像);そしてパネルFはVEGF−mRNA、1dpfを示す(背面画像)。
【0038】
図15は、Gタンパク質γ2で調節されるインビボのVEGFシグナル伝達経路を示す。(A−C)vegfmRNA(20ng/μl)過発現が、ゼブラフィッシュ胚における軸血管系および体節間血管におけるflk1転写物のレベルを増加できる(図13Aおよび13DにおけるWT対照に比較して)。(D−F)vegfmRNA過発現と、それに続くGタンパク質(gng2−MO、100μM)の標的化ノックダウンは、背側大動脈からの体節間血管の発芽を特異的に抑制し、そして驚くべきことに、卵黄の総主静脈は完全に抑制された(F,矢印)。(G−H)vegfmRNAの過発現は、WT対照(G)に比較して、抗ホスホPLCγ1抗体(H,矢印)により検出されるように、PLCγ1を活性化することができる。(I)gng2−MOスプライシングモルホリノを用いるgng2のノックダウンは、PLCγ1のvegf活性化を特異的に抑制した(I,矢印)。(J−K)またvegfmRNA過発現は、WT対照(J)に較べて、抗ホスホAKT抗体によって検出されるようにAKTを活性化できる(K,矢印)。(L)gng2のノックダウンはAKTのvegf活性化を特異的に抑制した(L,矢印)。vegfmRNA(20ng/μl)およびgng2−MOスプライシングモルホリノ(100μM)が1細胞期の胚に約1nl容量において注入され、続いて1dpfにおいて全載免役組織化学的染色が実施された。WT対照(G)および(J)、vegfmRNA過発現(A−C,H−K)、およびvegfmRNAとgng2−MOの同時注入(D−F.I−L)。全スケールバーは100μmである。
【0039】
図16は、GNG2(MO−GNG2)の抑制が、flk発現によって表されるように、VEGFシグナル伝達(MO−VEGF)をブロックすることの抗新脈管形成効果を増進することを示す。パネルAはMO−GNG2(40μM)+MO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像);パネルBはMO−GNG2(40μM)+MO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルCはMO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像);パネルDはMO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルEは野生型、1dpfを示し(側面画像);そしてパネルFはMO−GNG2(40μM)、1dpfを示す(側面画像)。
【0040】
図17は、新脈管形成の間のVEGFシグナル伝達におけるGタンパク質の必須機能のモデルを示す。α、βおよびγ2サブユニットからなるヘテロ三量体Gタンパク質が、VEGFシグナル伝達経路におけるPLCγ1およびAKTの活性化のために必須であることが仮定される。
【0041】
図18は、インビトロの細胞溶解物アッセイによって検出されるgng2−ATGモルホリノによる翻訳ブロッキングを示す。(A)V5−6Xヒスチジンエピトープに融合された、gng2オープン読み枠のATG開始コドンにまたがる5’UTRに対して標的化された翻訳ブロッキングモルホリノ。(B)インビトロの細胞溶解物を用いるgng2−ATGモルホリノによるgng2翻訳の用量依存性抑制。5塩基ミスマッチの対照モルホリノによる抑制なし。抗V5抗体がgng2−V5融合タンパク質のインビトロ翻訳を検出するために使用された。(C)1dpfにおけるWT対照ゼブラフィッシュ胚。(D)1dpfにおけるgng2−ATG−MOノックダウン胚。全スケールバーは100μmである(C−D)。
【0042】
図19は、ゼブラフィッシュの胚における血流の映像からの静止画を示す。gng2の機能喪失はゼブラフィッシュ胚の発生みおいて体節間の血管において血流欠如をもたらした。血管系における血液循環はゼブラフィッシュ胚における血管発生の機能的アッセイとして追跡された。gng2に対する種々のモルホリノが1細胞期のゼブラフィッシュ胚中に微量注入された。背側の大動脈および主静脈においては血管循環があるけれども、ノックダウン胚が体節間血管への血流の減少または不足を示した場合は、新脈管形成欠如の第1の形態学的兆候が約3dpfにおいて検出された。体節間血管は、背側の大動脈および主静脈からの発芽によって発達し、このプロセスは生理学的および病理生理学的プロセスにおける新脈管形成に類似するので、それらは特に興味がある。映画S1−S4は拡大された胴領域である。全スケールバーは100μmである。パネルAは、3dpfにおけるWT対照ゼブラフィッシュ胚における血液循環を示す(この場合、血液は体節間血管中を流れる)。パネルBは、3dpfにおけるgng2−MOスプライシングノックダウン胚における血液流動を示す(背側大動脈および主静脈における血液流動を示すが、体節間血管への流動は遮断または低下される);パネルCは、3dpfにおけるgng2−ATG−MO翻訳ブロッキングモルホリノノックダウン胚における血液流動を示す(背側大動脈および主静脈における血液流動を示すが、体節間血管への流動は遮断または低下される);パネルDは、3dpfにおける5塩基ミスマッチ対照モルホリノ(5−ミスマッチ−MO)ノックダウン胚における血液循環を示す(体節間血管中の正常な血液流動を示す)。
【0043】
図20は、E9.5期の前脳、中脳、後脳、脊髄および発生中の血管系におけるマウスgng2の発現を表すマウス胚のインサイチューハイブリダイゼーションを示す。
【0044】
アデニリルシクラーゼ・サブタイプIIおよびIV、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼCサブタイプβ、β、βを含む下流のエフェクターの特定のサブセット、およびKおよびCa2+チャンネル、および受容体認識の活性を調節するGタンパク質βγ二量体の役割は、これらのタンパク質を同定および特性決定することの重要性を増大させた。これらの二量体の機能的特異性はγサブユニットによって決定されると考えられる。網膜および脳のβγサブユニット間の顕著な相違は、膜会合(Lee et al.(1992)J.Biol.Chem.267:24776−24781)、Gタンパク質αサブユニット、受容体との相互作用(Fawzi et al.(1991)J.Biol.Chem.266:12194−12200)、受容体キナーゼ(Pitcher et al.(1992)Science 257:1264−1267)およびエフェクターに関して報告されてきた。網膜および脳のβγサブユニットは共通のβサブユニットを共有するので、これらの相違はそれらの独特なγサブユニットによると思われる。
【0045】
γサブユニットのアミノ酸配列の保存の解析は、そのサブユニットファミリーが4種の別々なサブクラス、γ、γ11、γT1、γT2およびγ14を含有する第1、γおよびγ12サブユニットを含有する第2、γおよびγ10サブユニットを含有する第3、およびγ13サブユニットを含有する第4のサブクラスに分けることができることを示唆する(Robishaw,J.D.,Schwindinger,W.F.and Hansen,C.A.(2003)Specificity of G protein
βγ dimer signaling.Elsevier,USA.Handbook of Cell Signaling,v.2.pp623−629)(参照、図4および5)。これらのサブクラスは、アミノ酸相同性のみならず、機能的類似性にもまた基づいている。かくして、サブクラス内で、メンバーは、類似する翻訳後修飾およびGタンパク質のβおよびαサブユニットと相互作用する類似能力を表す。例えば、γサブユニットはゲラニルゲラニル基によって修飾され、βサブユニットと相互作用し、そしてαサブユニットと、少なくともある程度まで相互作用すると考えられる。
【0046】
本発明は、ゼブラフィッシュγ2サブユニット(GNG2)のためのポリヌクレオチドおよびポリペプチド、ならびにGNG2センスおよびアンチセンスポリヌクレオチド、およびいずれかの脊椎動物種、特にヒト、マウス、ラット、ウシおよびゼブラフィッシュ由来のポリペプチドを用いて動物における新脈管形成を促進および抑制する方法を提供する。
【0047】
本明細書に引用されるGenBankデータベース配列へのアクセッション・ナンバーを含む、参考業績、特許、特許出願および科学文献は、当業者の知識を確認し、そして各々が引用によって組み入れられるように具体的かつ個々に指示されたように、同程度に完全に引用によって本明細書に組み入れられている。本明細書に引用されるいずれかの引用文献と本明細書の特定の教示との間のいかなる矛盾も後者の利益になるように解決されるであろう。
【0048】
種々の定義が本文書をとおして作成される。ほとんどの単語は当業者によってそれらの単語に帰せられる意味を有する。これ以降でも、また本文書のいずれの箇所でも具体的に定義される単語は、全体として、かつ当業者によって典型的に理解されるような本発明に関して与えられる意味を有する。単語または熟語の技術的に理解される定義と、本明細書において具体的に教示されるような単語または熟語との間のいかなる矛盾も後者の利益になるように解決されるであろう。本明細書に使用される表題は便宜上であり、そして制約として考えるべきではない。
【0049】
当業者には既知である組み換えDNA技術の一般原理を記述している標準参考業績は、Ausbel et al.,Current Protocols In Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1998;Sambrook etal.,Molecular Cloning:A
Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York,1989;Kaufman et al.,Eds.,Handbook of Molecular And Cellular Methods In Biology And Medicine,CRC Press,Boca Raton,1995;McPherson,Ed.,Directed Mutagenesis:A Pratical Approach,IRL Press,Oxford,1991を含む。当業者には既知であるゼブラフィッシュを用いる研究のための一般原理およびプロトコルを記述している標準業績は、限定されるものではないが、The Zebrafish Book:A Guide for the Laboratory Use of Zebrafish(Danio Rerio),Westerfield,M.,4th ed.,Univ.of Oregon Press,Eugene,2000を含む。
【0050】
本明細書で使用されるように、「単離される」は、物質がその最初の環境(例えば、それが自然に存在しているならば、自然環境)から移転されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する自然に存在しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、自然システム中に共存する材料の若干またはすべてのものから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、そして/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であってもよく、そしてそのようなベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではない場合にはなお単離されてもよい。
【0051】
「精製された」または「実質的に精製された」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、生来の(または野生型)核酸またはポリペプチドが自然に随伴する他の細胞成分から、および/または他の不純物(例えば、アガロースゲル)から実質的に分離されている。精製されたポリペプチドまたはタンパク質は、サンプルの約60%〜99%w/w以上を含み、約90%、約95%、または約98%純粋であってもよい。
【0052】
本明細書で使用されるように、「約」は、参照値の+/−10%を指す。
【0053】
本明細書で使用されるように、「変異体(variant)」核酸またはアミノ酸配列は、例えば、関心のある配列のイソ型、種変異体、対立遺伝子変異体およびフラグメントを含む、同族体を指す。「相同性ヌクレオチド配列」または「相同性アミノ酸配列」またはその変異体は、参照配列、または機能的ドメインをコードしているかまたは有するその部分またはフラグメントに関して、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%、より好ましくは100%のパーセント同一性(ポリヌクレオチドに関する場合)または相同性(ポリペプチドに関する場合)を特徴とする配列を指す。
【0054】
GNG2アンタゴニスト、例えばGNG2アンチセンスオリゴヌクレオチドの用語「治療学的有効量」は、疾病状態(例えば、腫瘍に適用される場合、腫瘍)において、または全身的に投与される場合は、血漿において、治療学的に有効なレベルを達成かつ維持して、新脈管形成を抑制する(そして、がんに適用される場合、がん細胞の増殖を抑制する)ように計算された量を意味する。例としては、インビボでがん細胞、例えばKS細胞の約50%以上の増殖を抑制するのに十分な治療学的量。もちろん、治療学的用量は、インビトロでのがん細胞増殖の抑制における各GNG2アンタゴニストの効力、ならびに腫瘍組織および/または血漿において身体によるGNG2アンタゴニストの排除または代謝の速度により変化するであろう。また治療学的用量は、治療のすべての組み合わせ療法、例えば抗VEGFおよび化学療法の効力を増進するであろうGNG2アンタゴニストの量に適合する。
【0055】
1.ポリヌクレオチド
A.脊椎動物GNG2
本発明は、ゼブラフィッシュGNG2をコードしているポリヌクレオチドを提供し、そしてまた、本発明の方法における使用のための他の脊椎動物由来のGNG2をコードしているポリヌクレオチドを提供する。本明細書で使用されるように、「ポリヌクレオチド」は、核酸分子を指し、そしてゲノムDNA、cDNA、RNA、mRNA、混合ポリマー、組み換え核酸、それらのフラグメントおよび変異体などを含む。本発明において有用なポリヌクレオチドのフラグメントは、参照ポリヌクレオチドの少なくとも10、好ましくは少なくとも12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、75または100個の連続するヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドはセンスおよびアンチセンス鎖を含む。本発明のポリヌクレオチドは、自然に存在するか、または自然には存在しないポリヌクレオチドであってもよい。本明細書で使用されるように、「合成されたポリヌクレオチド」は、酵素的方法とは別に、純粋に化学的方法によって作成されたポリヌクレオチドを指す。したがって、「完全に」合成されたDNA配列は、完全に化学的手段によって作成され、そして「部分的に」合成されたDNAは、選られるDNAの一部分のみが化学的手段によって作成されたDNAを包含する。本発明のポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であってもよい。本発明のポリヌクレオチドは、化学的に改変されてもよく、そして当業者には容易に評価できるように、非天然または誘導ヌクレオチド塩基であってもよい。そのような改変は、例えば、標識、メチル化、類似体による1個以上のヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間の改変、例えば非荷電の結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエートなど)、ペンデント部分(pendent moiety)(例えば、ポリペプチドなど)、インターカレーター(intercalator)(例えば、アクリジン、プソラレン(psoralen)など)、キレーター、アルキレーター、および改変結合(例えば、α−アノマー核酸など)を含む。また、水素結合および他の化学的相互作用を介して指定された配列に結合する能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子が含まれる。そのような分子は当該技術分野において既知であり、そして例えば、ペプチド結合が分子の骨格におけるホスフェート結合を置換している分子を含む。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:2のポリペプチド配列をコードしているそれらを含む(参照、例えば図1)。ある実施態様では、ポリヌクレオチドは配列番号:1の核酸配列を含む。ポリヌクレオチドは、同類的であっても非同類的であってもアミノ酸置換をもたらす突然変異を含有してもよい。突然変異は、標準技術、例えば部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発によって本発明の核酸配列中に導入することができる。同類アミノ酸置換は、1個以上の予想される非必須アミノ酸残基においてなされてもよい。「同類アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。かくして、予想される非必須アミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーからのその他のアミノ酸残基により置換される。あるいはまた、突然変異は、コーディング配列の全部または一部にそって、例えば飽和変異によ
って導入することができ、そして得られる突然変異体が活性を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。突然変異に続いて、コードされているタンパク質が、当該技術分野において既知のいずれかの組み換え技術によって発現されてもよく、そしてタンパク質の活性が決定できる。
【0057】
ヌクレオチド配列は、左から右へ、5’〜3’方向において、一本鎖のみによって提示される。ヌクレオチドは、IUPAC−IUB Biochemical Nomendlature Commissionによって推奨される方式で表される。
【0058】
本発明のある実施態様では、突然変異は、タンパク質の翻訳後修飾または生物学的活性を有意には変えないであろう。例えば、GNG2ポリペプチドは、ゲラニルゲラニル基によって改変される機能を保持し、そしてGタンパク質のβサブユニットおよび少なくともある程度αサブユニットと相互作用しなければならない。
【0059】
B.発現ベクター
本発明のその他の態様は、ゼブラフィッシュGNG2ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、類似体もしくは同族体をコードしている核酸を含有する、ベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で使用されるように、用語「ベクター」は、それが結合されたその他の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは付加されるDNAセグメントが結合できる環状二本鎖DNAループを指す。ベクターのその他のタイプは、ウイルスベクターであり、この場合、付加されるDNAセグメントはウイルスゲノム中に結合できる。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際し宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが操作可能に結合された遺伝子の発現を指導することができる。そのようなベクターは、ここでは「発現ベクター」として言及される。一般に、組み換えDNA技術における有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態で存在する。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターのもっとも普通に使用される形態物であるので、交換可能に使用することができる。しかしながら、本発明は、発現ベクターのそのような他の形態物、例えばウイルスベクター(例えば、複製能欠陥レトロウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含むことが意図され、これらは等価の機能を果たす。
【0060】
本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞での核酸の発現のために適当な形態物における本発明の核酸を含み、これは、組み換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選ばれる、すなわち、発現される核酸配列に操作可能に結合される、1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組み換え発現ベクターにおいて、「操作可能に結合される」は、関心のあるヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロの転写/翻訳システムにおいて、またはベクターが宿主細胞に導入される場合の宿主細胞において)調節配列に結合されることを意味するよう意図される。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Metods in Enzymology 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)において記述されている。調節配列は、多くの宿主細胞類においてヌクレオチド配列の構成的発現を指導する配列、およびある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指導する配列(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルのようなファクターに依存してもよいことは、当業者によって評価できる。本発明の発現ベクターは宿主細胞中に導入され、それによって、いかなる脊椎動物種からも本明細書に記述されるような核酸によってコードされた、融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチド(例えば、GNG2ポリペプチド、GNG2の変異形態物、融合タンパク質など)を生産することができる。ある実施態様では、GNG2は哺乳動物から得られる。ある実施態様では、GNG2はマウスまたはラットから得られる。他の実施態様では、GNG2はヒトから得られる。他の実施態様では、GNG2はゼブラフィッシュから得られる。ヒトおよびゼブラフィッシュgng2のアミノ酸配列の比較が図2において示される。ヒト、マウスおよびゼブラフィッシュgng2のアミノ酸配列の整列は図3において示される。
【0061】
本発明の組み換え発現ベクターは、原核または真核細胞における脊椎動物GNG2の発現のために設計することができる。例えば、ゼブラフィッシュGNG2は、細菌細胞、例えばエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、昆虫細胞(バクロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現されてもよい。適当な宿主細胞は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)においてさらに議論されている。あるいはまた、組み換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いてインビトロで転写および翻訳されてもよい。
【0062】
原核生物におけるタンパク質の発現は、もっともしばしば、いずれか融合または非融合タンパク質の発現を指導する構成または誘導プロモーターを含有するベクターによりE.コリにおいて実施される。融合ベクターは、そこにコードされたタンパク質、普通には組み換えタンパク質のアミノ末端に、多数のアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、3つの目的:(1)組み換えタンパク質の発現を増強する;(2)組み換えタンパク質の溶解度を増大する;および(3)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによって組み換えタンパク質の精製を助けるために役立つ。しばしば、融合発現ベクターでは、タンパク質分解的切断部位が融合部分および組み換えタンパク質の連結点に導入されて、融合部分からの組み換えタンパク質の分離と、それに続く融合タンパク質の精製を可能にする。そのような酵素およびそれらの同族の認識配列は、Factor Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターは、標的組み換えタンパク質に、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを融合する、pGEX(Pharmacia Biotech Inc.;Smith and Johnson(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)を含む。
【0063】
適当な誘導性非融合E.コリ発現ベクターは、pTrc(Amrann et al.,(1988)Gene 69:301−315)およびpET11d(Studier et al.,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)pp.60−89)を含む。
【0064】
E.コリにおける組み換えタンパク質発現を最大化する1つの戦略は、組み換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力の損傷された宿主細菌においてタンパク質を発現することである。参照、Gottesman、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic press,San Diego,Calif.(1990)119−128。そ
の他の戦略は、各アミノ酸のための個々のコドンがE.コリにおいて優先的に利用されるものであるように、発現ベクター中に挿入される核酸の核酸配列を変えることである(Wada et al.,(1992)Nucleic acids Res.20:2111−2118)。本発明の核酸配列のそのような変更は、標準DNA合成技術によって実施することができる。
【0065】
その他の実施態様では、脊椎動物のGNG2発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現のためのベクターの例は、pYepSec1(Baldari,et al.,(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Sechutz et al.,(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)およびpicZ(Invitrogen Corp.San Diego,CA)を含む。
【0066】
あるいはまた、脊椎動物GNG2はバクロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞において発現することができる。培養昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)SF9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用できるバクロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smith et al.,(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers(1989)Virorlogy 170:31−39)を含む。
【0067】
なおその他の実施態様では、本発明の核酸は哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al.,(1987)EMBO J.6:187−195)を含む。哺乳動物において使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしばウイルスの調節要素によって提供される。例えば、共通に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルのウイルス40から得られる。プロモーターの代表的例は、限定されるものではないが、LTRまたはSV40プロモーター、E.コリ、lacまたはtrp、λファージPプロモーターおよび原核または真核細胞またはそれらのウイルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られる他のプロモーターを含む。両原核または真核細胞のための他の適当な発現系は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989のChapter16および17,参照。多数の適当なベクターおよびプロモーターは当業者には既知であり、そして市販されている。次のベクターが例として提供される;細菌:pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pBluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223−3、pDR540、pRITS(Pharmacia);真核生物:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかしながら、いかなる他のプラスミドまたはベクターも、それらが宿主において複製かつ生存可能である限り使用されてもよい。さらに、完全な哺乳動物の転写単位および選択可能なマーカーが原核生物のプラスミド中に挿入されてもよい。次いで、得られるベクターが細菌において増幅され、その後培養哺乳動物細胞中にトランスフェクトされる。この種のベクターの例はpTK2、pHygおよびpRSVneoを含む。
【0068】
その他の実施態様では、組み換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞種において優先的に核酸の発現を指導することができる(例えば、組織特異的調節要素が核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節要素は当該技術分野において既知である。適当な組織特異的調節要素の非限定的な例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al.,(1987)Gene Dev.1:268−277)、類リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、特にT細胞受容体(Winoto and Baltomore(1989)EMBO J.8:729−733)および免役グロブリン(Banerji et al.(1983)Cell 33:729−740;Queen
and Baltimore(1983)Cell 33:741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;Byme and Ruddle(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.,(1985)Science 230:912−916)および乳腺特異的プロモーター(例えば、乳漿プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)を含む。また、発生上調節されるプロモーターは、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss(1990)Science 249:374−379)およびα−フェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman(1989)Gene Dev.3:537−546)を包含する。適当なベクターおよびプロモーターの選択は当業者のレベル内で周知である。
【0069】
また発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含有してもよい。またベクターは発現を増幅するための適当な配列を含んでもよい。さらに、ある実施態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型特徴、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)または真核細胞培養のためのネオマイシン(NEO)耐性、あるいはE.コリにおけるテトラサイクリン(TET)またはアンピシリン(AMP)耐性を提供するために、1種以上の選択可能なマーカー遺伝子を含有する。
【0070】
さらに、本発明は、アンチセンス方向において発現ベクター中にクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組み換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、脊椎動物GNG2mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で調節配列に操作可能に連結される。種々の細胞種におけるアンチセンスRNA分子の連続発現を指導する、アンチセンス方向においてクローン化された核酸に操作可能に連結される調節配列、例えばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーが選ばれてもよく、あるいはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的または細胞種特異的発現を指導する調節配列が選ばれてもよい。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率調節領域の制御下で生産される組み換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態で存在してもよく、この活性はベクターが導入される細胞種によって決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の議論では、Weintraub et al.,(1986)“Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,”Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1):22−25を参照。
【0071】
C.アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトにおける疾病状態の処置において治療学的部分として使用されてもよい。リボザイムを含むアンチセンスオリゴヌクレオチ
ド薬物は、ヒトに安全かつ有効に投与されており、そして多くの臨床試行が現在進行中である。かくして、オリゴヌクレオチドが、細胞、組織および動物、特にヒトの処置のための処置法において有用であるように構成することができる有用な治療学的モダリティー(modality)になり得ることが確立される。
【0072】
本発明の文脈上、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの擬似物のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語は、自然に存在する核酸塩基、糖およびヌクレオシド間(骨格)共有結合からなるオリゴヌクレオチドならびに類似に機能する自然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。そのような改変または置換オリゴヌクレオチドは、所望の特性、例えば細胞の取り込み増進、核酸標的に対する親和力増進およびヌクレアーゼの存在下での安定性増大のために、しばしば本来の形態物以上に好適である。
【0073】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが本発明によって熟考されるが、限定されるものではないが下記のようなオリゴヌクレオチド擬似物を含む、他のオリゴマーのアンチセンス化合物もまた含まれる。本発明によるアンチセンス化合物は、好ましくは、約8〜約50個の核酸塩基(すなわち、約8〜約50個の連結ヌクレオシド)を含む。ある実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約8〜約15個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約16〜約25個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約20〜約30個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約25〜約35個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約30〜約45個の核酸塩基を含む。他の実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約40〜約50個の核酸塩基を含む。アンチセンス化合物は、標的核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を調節する、リボザイム、エクスターナルガイド(external guide)配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、および他の短い触媒RNAまたは触媒オリゴヌクレオチドを含む。
【0074】
当該技術分野において既知であるように、ヌクレオシドは塩基−糖組み合わせ物である。ヌクレオシドの塩基部分は正常には複素環式塩基である。そのような複素環式塩基の2種のもっとも普通の種類はプリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むそれらのヌクレオシドでは、リン酸基は糖の2’,3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合することができる。オリゴヌクレオチドの形成では、リン酸基は隣接するヌクレオシドをその他のヌクレオシドに共有結合して、直線状ポリマー化合物を形成する。順に、この直線状ポリマー構造物のそれぞれ末端がさらに連結されて、環状構造物が形成されてもよいが、開放された直線状構造物が一般に好適である。オリゴヌクレオチド構造物において、リン酸基は通常、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格の形成に向けられる。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3’〜5’ホスホジエステル結合である。
【0075】
本発明において有用な好適なアンチセンス化合物の特定の例は、改変骨格または非天然のヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドを含む。本明細書で定義されるように、改変骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格中にリン原子を保持するもの、および骨格中にリン原子を有しないものを含む。本明細書の目的のために、そして当該技術分野において時々引用されるように、それらのヌクレオシド間骨格中にリン原子を有しない改変オリゴヌクレオチドもまたオリゴヌクレオチドであると考えてもよい。
【0076】
ある実施態様では、改変オリゴヌクレオチド骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル
ホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、正常な3’−5’結合を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2’−5’結合類似体、および1個以上のヌクレオチド間結合が3’〜3’,5’〜5’または2’〜2’結合である反転極性を有するそれらのものを含む。反転極性を有する好適なオリゴヌクレオチドは、3’−大多数ヌクレオチド間結合における単一の3’〜3’結合、すなわち、塩基性であってもよい単一の反転ヌクレオシド残基(核酸塩基が失われているか、またはその代わりにヒドロキシル基を有する)を含む。
【0077】
他の好適なオリゴヌクレオチド擬似物では、両糖およびヌクレオシド間の結合、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が、新規の基により置換される。塩基単位は、適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのそのようなオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド擬似物は、ペプチド核酸(PNA)として言及される。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、骨格、特にアミノエチルグリシン骨格を含有するアミドにより置換される。核酸塩基は保有され、そして骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許は、限定されるものではないが米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号を含み、これらの各々は引用によって本明細書に組み入れられている。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.(1991)Science 254:1497−1500において見出される。
【0078】
改変オリゴヌクレオチドはまた、1個以上の置換糖部分を含有してもよい。
【0079】
さらなる改変は、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’または4’炭素原子に結合されて、二環式糖部分を形成するLocked Nucleic Acids(LNA)を含む。結合は、好ましくは、2’酸素原子と4’炭素原子を架橋しているメチレン(−CH−)基[式中、nは1または2である]であり、そしてそれの調製はWO98/39352およびWO99/14226に記述されている。
【0080】
他の改変は、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−CH−CH=CH)、2’−O−アリル(2’−O−CH−CH=CH)および2’−フルオロ(2’−F)を含む。2’−改変は、アラビノ(up)位置またはリボ(down)位置に存在してもよい。好適な2’−アラビノ改変は2’−Fである。類似の改変もまた、オリゴヌクレオチドにおける他の位置、具体的には3’末端ヌクレオチドにおける糖の3’位または2’−5’結合オリゴヌクレオチドおよび5’末端ヌクレオチドの5’位において作成されてもよい。またオリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分のような糖擬似物を有してもよい。
【0081】
また、オリゴヌクレオチドは核酸塩基(しばしば、当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれる)改変物または置換物を含む。本明細書で使用されるように、「未改変」または「自然の」核酸塩基は、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G),およびピリミジン塩基チミン(T),シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変核酸塩基は、他の合成および自然の核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5ーme−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C=C−CH)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキル誘導体、6−アゾ ウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−ヒドロキシルおよび8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニンおよび3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンを含む。さらなる改変核酸塩基は、三環式ピリミジン、例えばフェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−clamps、例えば置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[5,4−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)を含む。また改変核酸塩基は、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環式化合物、例えば7−デアザアデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリミジンおよび2−ピリドンにより置換されるものを含んでもよい。さらなる核酸塩基は、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,pages858−859,Kroschwitz,J.J.,ed.John Wiley & Sons,1990に開示されるもの、Englisch et al.Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613によって開示されるもの、およびSanghvi,Y.S.,Chapter15,Antisense Research and Applications,pages289−302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ed.,CRC Press,1993に開示されるものを含む。これらの核酸塩基のあるものは、本発明のオリゴマー化合物の結合親和力を増大するために特に有用である。これらは、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンおよびN−2,N−6およびO−6置換プリンを含む。5−メチルシトシン置換物は、0.6〜1.2℃だけ核酸二重らせんの安定性を増強することが示され(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T.and Lebleu,B.eds.,Antisense Research and Applications,CRC Press,Boca Raton,1993,pp.276−278)、そしてなおより特別には、2’−O−メトキシエチル糖改変と組み合わされた場合、現在、好適な塩基置換物である。
【0082】
本発明のオリゴヌクレオチドのその他の改変は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分配または細胞取り込みを増進する1個以上の部分または結合物(conjugate)をオリゴヌクレオチドに化学的に結合することを伴う。本発明の化合物は、官能基、例えば第1または第2ヒドロキシル基に共有結合された結合基を含んでもよい。本発明の結合基は、インターカレーター、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的性質を増進する基、およびオリゴマーの薬動学的性質を増進する基を含む。典型的な結合基は、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン(phenazine)、ホレート(folate)、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、ローダミン、クマリンおよび染料を含む。本発明の文脈上、薬力学的性質を増進する基は、オリゴマーの取り込みを改良し、分解に対するオリゴマーの抵抗性を増進し、そして/またはRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基を含む。本発明の文脈上、薬動学的性質を増進する基は、オリゴマーの取り込み、分配、代謝または排泄を改良する基を含む。結合部分は、限定されるものではないが、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsinger et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−6556)、コール酸(Manoharan et al.(1994)Bioorg.Med.Chem.Let.4:1053−1060)、チオエーテル、例えばヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharan et al.,(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:306−309;Manoharan et al.,(1993)Bioorg.Med.Chem.Let.3:2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,(1992)Nucl.Acids Res.20:533−538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoaras et al.,(1991)EMBO J.10:1111−1118;Kabanov et al.,(1990)FEBS Lett.259:327−330;Svinarchuk et al.,(1993)Biochimie 75:49−54)、リン脂質、例えばジーヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルーアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.36:3651−3654;Shea et al.,(1990)Nucl.Acids Res.18:3777−3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,(1995)Nucleosides & Nucleotides 14:969−973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,(1995)Tetrahedron Lett.36:3651−3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,(1995)Biochim.Biophys.Acta 1264:229−237)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crooke et al.,(1996)J.Pharmacol Exo.Ther.277:923−937)を含む。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、活性薬物物質、例えば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナミン酸(flufenamic acid),ベンゾチアジアジド、クロロチアジアジド、ジアゼピン、インドメチシン、バルビタール酸塩、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗菌剤または抗生物質に結合されてもよい。
【0083】
特定の化合物の全ての位置について均一に改変されることは必ずしも必要ではなく、事実、1つ以上の前記改変は、オリゴヌクレオチド内の単一の化合物または単一のヌクレオチドにおいてさえ組み入れられてもよい。また本発明はキメラ化合物であるアンチセンス化合物を含む。本発明の文脈上、「キメラの」アンチセンス化合物または「キメラ」は、各々が少なくとも1個のモノマー単位、すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合にはヌクレオチドから作成された、2個以上の化学的に異なる領域を含有するアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の増大、細胞取り込みの増大および/または標的核酸への結合親和力の増大をオリゴヌクレオチドに与えるようにオリゴヌクレオチドが改変される、少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドのさらなる領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを開裂できる酵素のための基質として働いてもよい。例を挙げれば、RNアーゼHは、RNA:DNA二重らせんのRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがって、RNアーゼHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のオリゴヌクレオチド抑制の効力を大きく増進する。結果的に、同じ標的領域へハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドに比較して、キメラオリゴヌクレオチドが使用される場合、匹敵する結果が、しばしば、より短いオリゴヌクレオチドを用いて得ることができる。RNA標的の切断は、日常的にはゲル電気泳動と、必要であれば当該技術分野において既知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって検出できる。
【0084】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、前記のような2個以上のオリゴヌクレオチド、改変オリゴヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド擬似物の複合体構造物として形成されてもよい。そのような化合物もまたハイブリッドまたはギャップマー(gapmer)として当該技術分野において言及されている。
【0085】
本発明にしたがって使用されるアンチセンス化合物は、便利かつ日常的には、周知の固相技術の技術により作成されてもよい。そのような合成の機器は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,Calif.)を含むいくつかの販売元によって販売されている。当該技術分野において既知のそのような合成のためのいずれか他の手段が、追加的または代替的に使用されてもよい。ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体のようなオリゴヌクレオチドを調製するために類似技術を使用することは周知である。
【0086】
本発明のアンチセンス化合物はインビトロで合成され、そして生物学的起源のアンチセンス組成物、またはアンチセンス分子のインビボ合成を指導するように設計された遺伝ベクター構築物を含まない。また本発明の化合物は、取り込み、分配および/または吸収を助けるために、例えば、リポソーム、受容体標的分子、経口、肛門、局所または他の調合物として、他の分子、分子構造物または化合物の混合物とともに、混合、カプセル化、結合または他に会合されてもよい。
【0087】
D.モルホリノ−改変オリゴヌクレオチド
アンチセンス技術の特定の形態物はモルホリノオリゴヌクレオチドである(Summerton,J.and D.Weller(1997)Antisense Ncul.Acid Drug Dev.7:187−195;Nasevicius,A.and
S.C.Ekker(2000) Nat.Genet.26:216−220;Yan,Y−K.et al.(2002)Development 129:5065−5079)。モルホリノオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAと比較して変更された骨格結合をもつDNA類似体であるが、相補的配列をもつWatson−Crick塩基対にしたがう。典型的には、モルホリノは少なくとも長さ約18〜25ヌクレオチドであり、ある実施態様では、モルホリノは少なくとも長さ約25〜30ヌクレオチドであり、あるなおさらなる実施態様では、モルホリノは少なくとも長さ約30〜35ヌクレオチド以上である。脊椎動物の発生を研究するための道具としてのモルホリノの長さは、Ekker S.C.(2000)Yeast 17:302−306による最近の説に十分記述されており、この開示は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0088】
モルホリノは、RNアーゼHの基質にはならないRNA−モルホリノハイブリッドを形成する。Ekkerおよび共同研究者は、蛍光標識されたモルホリノオリゴヌクレオチドが球体期(sphere stage)のゼブラフィッシュ胚中に注入でき、そして均質な分配を達成することを報告している。緑色蛍光タンパク質(GFP)のために開始コドンに対して標的化されたモルホリノオリゴマーはGFP発現をブロックするが、これに対して、GFPに相補的である対照オリゴマーはブロックしなかった。これは、配列に特異的な様式で遺伝子発現を明瞭にブロックするモルホリノオリゴマーの機能を確立した。またEkkerおよび共同研究者は、数種のゼブラフィッシュ遺伝子の抑制を報告した。
【0089】
本発明は、GNG2ポリヌクレオチドの5’非翻訳領域またはGNG2ポリヌクレオチドのスプライス部位を標的とするモルホリノ改変オリゴヌクレオチドを提供する。そのようなモルホリノ改変オリゴヌクレオチドは、GNG2の発現を抑制するのに有効であり、
そしてこれらの改変オリゴヌクレオチドにより処置された動物における新脈管形成を妨害する。
【0090】
モルホリノは高度に無極性である。したがって、改変または未改変モルホリノオリゴは、細胞/組織中にモルホリノオリゴの送達を促進するいずれか既知の送達担体/ベクターと組み合わせて投与されてもよい。
【0091】
E.細胞への核酸の送達
本発明の核酸構築物は当該技術分野において既知のいずれの手段によって送達されてもよい。ある実施態様では、核酸はエクスビボ戦略を用いて細胞中に送達される。他の実施態様では、核酸はインビボ戦略を用いて細胞中に送達される。
【0092】
エクスビボ遺伝子療法では、細胞は、実験操作前に宿主生物、例えばヒトから除去される。これらの細胞が次に、当該技術分野において周知の方法を用いてインビトロで核酸をトランスフェクトされる。次いで、これらの遺伝的に操作された細胞が宿主生物中に再導入される。一方、インビボの遺伝子治療アプローチは宿主生物からの標的細胞の除去を必要としない。むしろ、核酸は、試薬、例えばリポソームまたはレトロウイルスと複合され、続いて既知の方法を用いて生物内の標的細胞に投与されてもよい。参照、例えば、Morgan et al.,(1987)Science 237:1476、1987;Gerrard et al.(1993)Nat.Genet.3:180。
【0093】
細胞をトランスフェクトするための数種の異なる方法が、エクスビボまたはインビボいずれかの遺伝子治療アプローチのために使用することができる。既知のトランスフェクション法は、標的細胞中に選ばれた核酸を送達するように使用される作用物にしたがって分類されてもよい。これらのトランスフェクション作用物は、ウイルス依存性、脂質依存性、ペプチド依存性、および直接トランスフェクション(「裸DNA」)アプローチを含む。トランスフェクションのために使用される他のアプローチは、カルシウム共沈およびエレクトロポレーションを含む。
【0094】
ウイルスアプローチは、宿主細胞を感染させるために遺伝的に工作されたウイルスを使用し、それによって、外因性核酸により細胞を「トランスフェクトする」。既知のウイルスベクターには、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルスを含む、この例が既に開示されている組み換えウイルスが存在する。そのような組み換え体は、プロモーターまたはエンハンサー要素の制御下で異種の遺伝子を担持でき、そしてベクターで感染された宿主細胞においてそれらの発現を惹起することができる。ワクシニアおよび他の種類の組み換えウイルスは、Mackett et al.(1994)J.Virol.49:3によって概説されており;またKotani et al.(1994)Hun.Gene Ther.5:19を参照。
【0095】
非ウイルスベクター、例えばリポソームもまた遺伝子治療において核酸送達のための媒介物として使用されてもよい。ウイルスベクターに比較して、リポソームは安全であり、比較的高い能力を有し、比較的低い毒性であり、種々の核酸に基づく分子を送達でき、そして比較的非免疫原性である。参照、Felger,P.L.and Ringold,G.M.,(1989)Nature 337:387−388。これらのベクターの中では、カチオン性リポソームが、インビトロの哺乳動物細胞トランスフェクションの媒介におけるそれらの有効性に因りもっとも研究されている。リポフェクション(lipofection)として既知の1つの技術は、核酸および細胞へのトランスフェクションを促進するカチオン性脂質から作成されるリポプレックス(lipoplex)を使用する。脂質/核酸複合体は、原形質またはエンドソーム膜を融合するか、さもなくば破壊し、そして細胞中に核酸を移送する。リポフェクションは、典型的には、リン酸カルシウムトランスフェクション法よりも細胞へのDNAの導入において一層効率的である。Changet al.,(1988)Focus 10:66。
【0096】
1つの既知タンパク質依存のアプローチは、核酸と混合されたポリリジンの使用を伴う。ポリリジン/核酸複合体は、次いで侵入のために標的細胞に曝露される。参照、例えば、Verma and Somia(1997)Nature 389:239;Wolff et al.(1990)Science 247:1465。
【0097】
「裸のDNA」トランスフェクションアプローチは、核酸がインビボで直接投与される方法を伴う。参照、Germanらへの米国特許第5,837,693号。核酸の投与は、筋肉または皮膚のような、器官における組織の間質空間中への注入、血流中、所望の体腔中への直接導入によって、あるいはまた吸入によって実施できる。これらの所謂「裸のDNA」アプローチでは、核酸は注入されるか、さもなくばいかなる補助剤もなしに動物と接触される。体組織、例えば骨格筋または皮膚中へ直接、遊離の(「裸の」)プラスミドDNAの注入がタンパク質の発現をもたらすことが報告されている。参照、Ulmer et al.(1993)Science 259:1745−1749;Wang et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:4157−4160;Raz et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9519−9523。
【0098】
エレクトロポレーションはその他のトランスフェクション法である。参照、Szoka,Jr.らへの米国特許第4,394,448号およびHauserへの米国特許第4,619,794号。種々の動物および植物細胞への短い高電圧電気パルスの印加は、原形質膜にナノメーターサイズの孔の形成をもたらす。DNAは、これらの小孔を通してまたは孔の閉鎖を伴う膜構成成分の再分配の結果として細胞原形質中に直接侵入できる。
【0099】
2.宿主細胞
本発明のその他の態様は、本発明の組み換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」および「組み換え宿主細胞」は、本明細書においては交換可能に使用される。そのような用語は特定の細胞のみならず、またそのような細胞の子孫または潜在的子孫を指す。ある種の改変が、突然変異または環境の影響によって後続世代において起きるかもしれないので、そのような子孫は、実際に、親細胞と同一でなくてもよいが、なお本明細書に使用される用語の範囲内に含まれる。
【0100】
宿主細胞はいずれの原核または真核細胞であってもよい。例えば、脊椎動物のGNG2ポリペプチドは細菌細胞、例えばE.コリ、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)において発現することができる。他の適当な宿主細胞は当業者には既知である。
【0101】
ベクターDNAは慣用の形質転換またはトランスフェクション技術を介して原核または真核細胞中に導入できる。本明細書で使用されるように、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、宿主細胞中に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための種々の技術的に認識された技術を指すことを意図している。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適当な方法は、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)および他の実験室マニュアルにおいて見出すことができる。
【0102】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションでは、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、小部分の細胞しか、それらのゲノム中に外来DNAを組込むことができないことが知られている。これらの組込み体を同定し、選択するためには、安定なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードしている遺伝子が、一般に、関心のある遺伝子とともに宿主細胞中に導入される。種々の選択可能なマーカーは、薬物、例えばG418、ハイグロマオシンおよびメトトレキセートに対する耐性を付与するものを含む。選択可能なマーカーをコードしている核酸が、脊椎動物GNG2をコードしている同じベクターにおいて宿主細胞中に導入できるか、または別々のベクターにおいて導入することができる。導入された核酸により安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組込まれた細胞は、他の細胞が死滅するのに対して生残するであろう)。
【0103】
培養物における本発明の宿主細胞、例えば原核または真核宿主細胞が脊椎動物GNG2ポリペプチドを生産する(すなわち、発現する)ために使用できる。したがって、本発明は、さらに、本発明の宿主細胞を用いて脊椎動物GNG2ポリペプチドを生産する方法を提供する。1つの実施態様では、本方法は、脊椎動物GNG2ポリペプチドが生産されるような適当な培地において、本発明の宿主細胞(脊椎動物GNG2をコードしている組み換え発現ベクターが導入された)を培養することを含む。その他の実施態様では、本方法は、さらに、培地または宿主細胞から脊椎動物GNG2を単離することを含む。
【0104】
3.トランスジェニック動物
また、本発明の宿主細胞は、非ヒト・トランスジェニック動物を作成するために使用することができる。例えば、1つの実施態様では、本発明の宿主細胞は、脊椎動物GNG2をコードしている配列が導入された受精卵母細胞または胚性幹細胞である。そのような宿主細胞は、次に、内因性の脊椎動物GNG2配列が変更されているそれらのゲノムまたは相同の(homologous)組み換え動物中に、外因性の脊椎動物GNG2配列が導入された非ヒト・トランスジェニック動物を作成するために使用できる。そのような動物は、脊椎動物GNG2の機能および/または活性を研究するため、および脊椎動物GNG2活性のモジュレーターを同定および/または評価するために有用である。本明細書で使用されるように、「トランスジェニック動物」は非ヒト動物であり、ある実施態様では、動物は魚であり、他の実施態様では、動物は哺乳動物(例えば、ラットまたはマウスのような齧歯類)であり、この場合、動物の1個以上の細胞がトランスジーンを含む。トランスジェニック動物の他の例は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などを含む。トランスジーンは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組み込まれた外因性DNAであり、そしてこれが成熟動物のゲノム中に留まって、トランスジェニック動物の1種以上の細胞タイプまたは組織においてコードされた遺伝子産物の発現を指導する。本明細書で使用されるように、「相同の組み換え動物」は非ヒト動物、例えば哺乳動物(例えば、マウス)であり、この動物では、内因性GNG2遺伝子は、内因性遺伝子と、動物の細胞、例えば、動物の発生前の動物の胚性細胞中に導入された外因性DNAとの間の相同組み換えによって変更されている。
【0105】
本発明のトランスジェニック動物は、受精卵母細胞の雄性前核中に、例えば、ミクロインジェクション、レトロウイルス感染によって脊椎動物GNG2をコードしている核酸を導入し、そして偽妊娠のメス養育動物において卵母細胞を発生させることによって創成することができる。配列番号:1、配列番号:7、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:59または配列番号:60の脊椎動物GNG2cDNA配列または人工的構築物が、非ヒト動物のゲノム中にトランスジーンとして導入することができる。ある実施態様では、脊椎動物GNG2の変異体が導入されるが、この変異体では、脊椎動物GNG2は1個以上のドメインを欠如しているか、または野生型配
列の相同染色体による置換物を有する。あるいはまた、脊椎動物GNG2遺伝子の相同染色体が脊椎動物GNG2cDNAに対するハイブリダイゼーション(さらなる前記)に基づいて単離され、そしてトランスジーンとして使用されてもよい。また、イントロン配列およびポリアデニル化シグナルがトランスジーンに含まれてトランスジーンの発現効率が増強されてもよい。組織特異的調節配列が操作可能に脊椎動物GNG2トランスジーンに連結されて、特定の細胞に対して脊椎動物GNG2ポリペプチドの発現を指導してもよい。胚の操作およびミクロインジェクションを介するトランスジェニック動物、特にマウスのような動物の作成方法は、当該技術分野において慣用になっており、例えば、米国特許第4,736,866号;同第4,870,009号および同第4,873,191号;およびHogan 1986,In:Manipulating The Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.において記述されている。同様の方法は他のトランスジェニック動物の作成のために使用される。トランスジェニック創始動物は、そのゲノムにおける脊椎動物GNG2トランスジーンの存在および/または動物の組織または細胞における脊椎動物GNG2mRNAの発現に基づいて同定することができる。トランスジェニック創始動物は、次いで、トランスジーンを担持しているさらなる動物の繁殖のために使用できる。さらに、脊椎動物GNG2をコードしているトランスジーンを担持するトランスジェニック動物は、他のトランスジーンを担持している他のトランスジェニック動物とさらに交配させられてもよい。
【0106】
相同組み換え動物を創成するために、欠失、付加または置換が導入されて脊椎動物GNG2遺伝子が変更された、例えば機能的に破壊された、脊椎動物GNG2遺伝子の少なくとも一部分を含有するベクターが調製される。脊椎動物GNG2遺伝子は、配列番号:1、配列番号:7、配列番号:11、配列番号:15、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:59または配列番号:60のcDNAであってもよい。次いで、脊椎動物GNG2は、脊椎動物または他の脊椎動物のゲノム中に導入されてもよい。1つの実施態様では、ベクターは、相同組み換えにおいて、内因性脊椎動物GNG2遺伝子が機能的に破壊されるように設計される(すなわち、機能的タンパク質をもはやコードしていない;また「ノックアウト」ベクターと呼ばれる)。
【0107】
あるいはまた、ベクターは、相同組み換えにおいて、内因性の脊椎動物GNG2遺伝子が突然変異されるか、または他の方法で変更されて、内因性脊椎動物GNG2ポリペプチドの発現が変えられるが、なお機能的タンパク質をコードしているように設計されてもよい(例えば、上流の調節領域が変更されて、内因性脊椎動物GNG2ポリペプチドの発現が変えられてもよい)。相同組み換えベクターでは、脊椎動物GNG2遺伝子の変更部分は、その5’および3’末端においてさらなる脊椎動物GNG2遺伝子の核酸に隣接されて、そのベクターに担持された外因性脊椎動物GNG2遺伝子と、胚性幹細胞における内因性脊椎動物GNG2遺伝子との間に相同組み換えを生じさせる。さらなる隣接する脊椎動物GNG2核酸は、内因性遺伝子との成功裏の相同組み換えのために十分な長さを有する。典型的には、隣接するDNA(両5’および3’末端における)の数キロベースがベクターに含まれる。参照、例えば、相同組み換えベクターの記述について、Thomas
et al.(1987)Cell 51:503。ベクターは胚性幹細胞系中に(例えば、エレクトロポレーションによって)導入され、そして導入された脊椎動物GNG2遺伝子が内因性脊椎動物GNG2遺伝子と相同的に組み換えられた細胞が選ばれる(参照、例えば、Li et al.(1992)Cell 69:915)。トランスジェニック非ヒト動物を作成する方法は当該技術分野において周知である(マウスについては、参照、Brinster et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4438−42;米国特許第4,736,866号、同4,870,009第号、同第4,873,191号、同第6,127,598号;Hogan,B.,Manipulating The Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);相同組み換えについては、参照、Capecchi(1989)Science 244:1288−1292;Joyner et al.(1989)Nature 338:153−156;粒子衝撃については、参照、米国特許第4,945,050号;ドロソフィラ(Drosophila)については、参照、Rubin and Spradling(1982)Science 218:348−53、米国特許第4,670,388号;トランスジェニック昆虫については、参照、Berghmmer A.J.et al.(1999)Nature 402:370−37;ゼブラフィッシュについては、参照、Lin S.(2000)Methods Mol.Biol.136:375−3830;魚、両生類および鳥については、参照、Houdebine and Chourrout,(1991)Experientia 47:397−905;ラットについては、参照、Hammer et al,(1990)Cell 63:1099−1112;胚性幹(ES)細胞については、参照、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells,a Pratical Approach,E.J.Robertson,ed.,IRL Press(1987);家畜については、参照、Pursel et al.(1989)Science 244:1281−1288;非ヒト動物クローンについては、参照、Wilmut、I.et al.(1997)Nature 385:810−813、PCT公開WO97/07668およびWO97/07669;調節されたトランスジーン発現のためのリコンビナーゼ系については、参照、Lakso et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.89:6232−6236;米国特許第4,959,317号(cre.loxPについて)およびO’Gorman et al.(1991)Science 251:1351−1355;米国特許第5,654,182号(FLP/FRTについて))。cre/loxPリコンビナーゼ系がトランスジーンの発現を調節するために使用される場合、両Creリコンビナーゼと選ばれたタンパク質をコードしているトランスジーンを含有する動物が要求される。そのような動物は、「二重の」トランスジェニック動物の構築をとおして、例えば、2種のトランスジェニック動物、選ばれたタンパク質をコードしているトランスジーンを含有する一方と、リコンビナーゼをコードしているトランスジーンを含有する他方との交配によって提供できる。
【0108】
4.脊椎動物のポリペプチド
また本発明は、脊椎動物のGNG2ポリペプチドを提供する。GNG2ポリペプチド、その変異体、フラグメントおよび抗原部分は、いかなる脊椎動物種から得られてもよい。ある実施態様では、GNG2ポリペプチドはマウスまたはラットから得られる。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドはヒトから得られる。他の実施態様では、GNG2ポリペプチドは魚、例えばゼブラフィッシュから得られる。ある実施態様では、ポリペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を有する。
【0109】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では交換可能に使用される。「ポリペプチド」は、一定の長さを指すことなくアミノ酸のポリマーを指す。本発明のポリペプチドは、ペプチドフラグメント、誘導体および融合タンパク質を含む。ペプチドフラグメントは、好ましくは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90または100個のアミノ酸を有する。本発明の若干のペプチドフラグメントは生物学的に活性である。生物学的活性は、免疫原性、リガンド結合および参照ペプチドに関連する活性を含む。本発明の免疫原性ペプチドおよびフラグメントは、エピトープ特異的免疫応答を生成し、ここで、「エピトープ」はペプチドの免疫原性決定基を指し、そして好ましくは。少なくとも3、5、8、9、10、15、20、30、40、45または50個のアミノ酸を含有する。本発明の若干の免疫原性ペプチドはそのペプチドに特異的な免疫応答を生じる。本発明のポリペプチドは、自然に存在するペプチドおよび自然には存在しないペプチドを含む。この用語は、改変ポリペプチド(この場合、そのような改変の例は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、カルボン酸化、ユビキチン化、標識化などを含む)、類似体(例えば自然に存在しないアミノ酸、置換結合など)および機能的擬似物を含む。ポリペプチドを標識する種々の方法は当該技術分野において周知であり、そして放射性アイソトープ、例えば32Pまたは35S、標識されたアンチリガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、蛍光団、化学発光剤、酵素およびアンチリガンドを含む。
【0110】
本明細書で使用されるように、用語「アミノ酸」は、両、アミノ基およびカルボキシル基を含有する分子を言う。ある実施態様では、アミノ酸は、それらの立体異性体およびラセミ化合物を含む、α−、β−、γ−またはδ−アミノ酸である。本明細書で使用されるように、用語「L−アミノ酸」は、α−炭素の周囲にL立体配置を有するα−アミノ酸、すなわち、L−立体配置を有する一般式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸を指す。用語「D−アミノ酸」は、同様に、α−炭素の周囲にD−立体配置を有する一般式CH(COOH)(NH)−(側鎖)のカルボン酸を指す。L−アミノ酸の側鎖は、自然に存在する部分および自然に存在しない部分を含む。自然に存在しない(すなわち、非天然)アミノ酸側鎖は、例えば、アミノ酸類似体における自然に存在するアミノ酸側鎖の代わりに使用される部分である。アミノ酸置換体は、例えば、それらのカルボニル基、その酸素またはカルボニル炭素、またはそれらのアミノ基、またはそれらの側鎖部分に存在する官能基をとおして結合されてもよい。
【0111】
アミノ酸配列は、右から左へ、アミノ(N)〜カルボキシ(C)方向において示される。N−末端α−アミノ基およびC−末端β−カルボキシ基は配列において描かれない。アミノ酸は、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される方式で表されるか、またはアミノ酸は、それらの3文字コード指名によって表される。
【0112】
また本発明は細胞透過性ペプチドの使用を意図する。細胞透過性ペプチドは、ニューロン変性(Borsello T,and C.Bonny(2004)“Use of cell−permiable peptides to prevent neuronal degeneration”Trends Mol.Med.10(5):239−44)およびAbetal−40原線維発生(Gordon D.J.et al.(2002)“Design and characterization of a membrane permeable N−methyl amino acid−containing peptide that inhibits Abetal−40 fibrillogenesis”J.Pept.Res.60(1):37−55)を含む種々の経路の機能を抑制するように設計された。細胞透過性ペプチドを設計する方法は当該技術分野において既知であり、そして例えば、Du C.et al.(1998)“Conformational and topological requirement of cell−permeable peptide function”J.Pept.Res.51:(3):235−243において記述されている。GNG2および/またはVEGF由来の細胞透過性ペプチドもまた、被験者における新脈管形成を抑制し、そして新脈管形成関連の疾病および新脈管形成依存性腫瘍を処置するために本発明の方法において使用されてもよい。どのペプチドがそのような目的のために有用であるかを決定するために、本明細書で記述されるスクリーニング手法が使用されて、日常的に、機能的な細胞透過性ペプチドをスクリーニングすることができる。
【0113】
5.脊椎動物GNG2を特異的に認識する種々の抗体
本発明は、脊椎動物GNG2、またはエピトープが配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4配列番号:5、配列番号:6および/または配列番号:57のアミノ酸配列の少
なくとも一部分を含む脊椎動物GNG2のフラグメントを、特異的に認識するCDR配列を含む化合物を含む、抗体(例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二価/二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体および相補性決定部(CDR)をグラフトされた抗体)を提供する。
【0114】
Fab、Fab’、F(ab’)およびFvを含む、抗体フラグメントもまた、本発明によって提供される。本発明の抗体を記述するために使用される場合、用語「に対して特異的」は、本発明の抗体の可変部が、独占的に脊椎動物GNG2を認識し、かつ結合することを示す(すなわち、脊椎動物GNG2と他のγサブユニットファミリーメンバーとの間に局限される配列の同一性、相同性または類似性の可能な存在にもかかわらず、結合親和力における測定可能な差異のために他の異なるGタンパク質γサブユニットから脊椎動物GNG2を区別することができる)。「高い結合親和力」は、約5x10−8Mを超える、好ましくは約5x10−8M〜約5x10−12Mの結合親和力を指し、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−9M〜約5x10−11Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−7M〜約5x10−8Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−8M〜約5x10−9Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−9M〜約5x10−10Mであり、ある実施態様では、結合親和力は約5x10−10M〜約5x10−11Mである。
【0115】
また、特異的抗体は、抗体の可変部の外側、特に分子の定常部における配列との相互作用を介して他のタンパク質(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインAまたはELISA技術における他の抗体)と相互作用してもよいことが理解できる。本発明の抗体の結合特異性を決定するスクリーニングアッセイは周知であり、かつ当該技術分野において日常的に実施されている。そのようなアッセイの包括的な議論については、Harlow et al.(Eds.),Antibodies:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor,N.Y.,1988.Chapter 6、参照。抗体が脊椎動物GNG2に対して特異的であれば、脊椎動物GNG2のフラグメントを認識し、結合する抗体もまた考慮される。本発明の抗体は、当該技術分野において周知であり、かつ日常的に実施されるいかなる方法を用いても作成することができる。
【0116】
ポリクローナル抗体の生産では、種々の適当な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)が、生来のポリペプチド、またはその合成変異体、または前者の誘導体を注射することによって免疫化されてもよい。適当な免疫原性調製物は、例えば、組み換え技術により発現された脊椎動物GNG2ポリペプチド、または化学的に合成された脊椎動物GNG2ポリペプチドを含んでもよい。調製物はアジュバントをさらに含む。免疫学的応答を増強するために使用される種々のアジュバントは、限定されるものではないが、Freund’s(完全および不完全)、金属ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性剤(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol),ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノールなど)、ヒト・アジュバント、例えばBacille Calmette−Guerinおよびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)または類似の免疫刺激剤を含む。所望であれば、脊椎動物GNG2に対向される抗体分子は、哺乳動物(例えば、血液から)から単離でき、さらに周知の技術、例えばIgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーによって精製できる。
【0117】
本明細書で使用されるように、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、脊椎動物GNG2の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位の1種のみを含有する抗体分子の集団を指す。したがって、モノクローナル抗体組
成物は、典型的には、それが免疫反応する特定の脊椎動物GNG2ポリペプチドに対する単一の結合親和力を表す。特定のGNG2ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、類似体または同族体に対向されるモノクローナル抗体の調製のためには、連続細胞系培養による抗体分子の生産のために提供するいかなる技術が利用されてもよい。そのような技術は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術(参照、Kohler & Milstein,1975 Nature 256:495−497);トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(参照、Kozbor,et al.,(1983)Immunol Today 4:72)およびヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ技術(参照、Cole,et al,.1985 In:Monoclonal Antiodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)を含む。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において利用されてもよく、そしてヒトハイブリドーマを使用することによって(参照、Cote,et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−2030)またはインビトロにおいてエプスタイン・バールウイルスによるヒトB細胞の形質転換によって(参照、Cole,et al.(1985)In:Monoclonal Antiodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)生産されてもよい。
【0118】
本発明によれば、技術は、脊椎動物GNG2ポリペプチドに特異的な一本鎖の抗体の生産のために適用できる(参照、例えば、米国特許第4,946,778号)。さらに、方法は、Fab発現ライブラリーの構築のために適用されて(参照、例えば、Huse,et al.(1989)Science 246:1275−1281)、GNG2ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、類似体または同族体に対する所望の特異性をもつモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効率的な同定を可能にする。非ヒト抗体は、当該技術分野における周知の技術によって「ヒト化」することができる。参照、例えば、米国特許第5,225,539号。GNG2ポリペプチドに対するイディオタイプを含有する抗体フラグメントは、限定されるものではないが、(i)抗体分子のペプシン消化によって生産されるF(ab’)フラグメント;(ii)F(ab’)フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFabフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤による抗体分子の処理によって生成されるFabフラグメント;および(iv)Fvフラグメントを含む、当該技術分野において既知の技術によって生産されてもよい。
【0119】
さらに、組み換え抗脊椎動物GNG2抗体、例えば標準の組み換えDNA技術を用いて作成できる、両ヒトおよび非ヒト部分を含んでなる、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、本発明の範囲内にある。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えば、国際特許出願PTC/US86/02269;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際特許WO86/01533;米国特許第4,816,567号;米国特許第5,225,529号;欧州特許出願第125,023号;Better et al.(1988)Science 240:1041−1043;Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu etal.(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999−1005;Wood et al.(1985)Nature 314:446−449;Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1533−1559;Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oi et al.(1986)BioThechniques 4:214;Jones et al.(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534;およびBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記述される方法を用いる、当該技術分野において既知の組み換えDNA技術において生産することができる。
【0120】
1つの実施態様では、所望の特異性をプロセスする抗体のスクリーニング方法は、限定されるものではないが、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)および当該技術分野において既知の他の免疫学的に媒介される技術を含む。特定の実施態様では、ゼブラフィッシュGNG2ポリペプチドの特定のドメインに特異的である抗体の選択は、脊椎動物GNG2ポリペプチドのフラグメントに結合して、そのようなドメインをプロセスするハイブリドーマの生成によって容易になる。脊椎動物GNG2ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、類似体または同族体におけるIg様ドメインに特異的である抗体もまた本明細書において提供される。
【0121】
抗GNG2抗体は、脊椎動物GNG2ポリペプチドの局在性(localization)および/または定量に関する当該技術分野において既知の方法において使用されてもよい(例えば、適当な生理学的サンプルにおける脊椎動物GNG2ポリペプチドのレベルの測定における使用、診断方法における使用、ポリペプチドの造影における使用などのために)。一定の実施態様では、抗体由来の結合ドメインを含有する脊椎動物GNG2ポリペプチド、またはその誘導体、フラグメント、類似体または同族体に関する抗体は、薬理学的に活性のある化合物(これ以降、「治療剤(therpeutics)」)として利用される。
【0122】
抗GNG2抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、標準技術、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降によってゼブラフィッシュGNG2を単離するために使用することができる。抗GNG2抗体は、細胞からの天然のGNG2および宿主細胞において発現された組み換え体として生産される脊椎動物GNG2の精製を容易にすることができる。さらに、抗GNG2抗体は、脊椎動物GNG2ポリペプチドの発現の量およびパターンを評価する目的で、脊椎動物GNG2ポリペプチド(例えば、細胞溶解物における)を検出するために使用できる。抗GNG2抗体は、臨床試験手法の部分として組織におけるタンパク質レベルを追跡するために、例えば、特定の治療法の効能を決定するために診断的に使用することができる。検出は、検出可能な物質に抗体を結合(すなわち、物理的に連結すること)させることによって容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子基、蛍光材料、発光材料、生物発光材料および放射性材料を含む。適当な酵素の例は、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な蛍光材料の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびアセクォリン(acequorin)を含み、そして適当な放射性材料の例は、ヨウ素−125、ヨウ素−131、硫黄−35またはトリチウムを含む。さらに、本発明の抗体は、毒物、例えば放射性アイソトープ、タンパク質毒素および化学毒物に複合されてもよい。そのような毒物は、限定されるものではないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111、ホウ素−10、アクチニド,リシン、アドリアマイシン、カリケアミシン(calicheamicin)および5−フルオロウラシルを含む。
【0123】
6.製薬学的組成物
GNG2核酸分子、GNG2ポリペプチド(タンパク質の細胞透過性改変バージョンを含む)および抗GNG2抗体(また、本明細書では「有効成分」と呼ばれる)、およびその誘導体、フラグメント、類似体および同族体は、投与のために適当な治療学的に有効な量において製薬学的組成物中に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質または抗体および製薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用されるように、「製薬学的に許容され得る担体」は、製薬学的投与に適合する、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことを意図している。適当な担体は、Remington’s Pharmaceutical Science、当該分野における標準的参考テキストの最新版に記述されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。そのような担体または賦形剤の好適な例は、限定されるものではないが、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンを含む。リポソームおよび非水性媒質、例えば不揮発油がまた使用されてもよい。製薬学的活性物質のためのそのような媒質および作用物の使用は当該技術分野においては周知である。いずれか慣用の媒質または作用物が活性化合物と適合しない限りそれを除いて、組成物におけるその使用が考えられる。補足的な活性化合物がまた組成物中に組み入れられてもよい。
【0124】
本発明の製薬学的組成物は、その意図される投与経路に適合するように調合される。投与経路の例は、非経口的、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜および肛門投与を含む。非経口、皮内または皮下適用のために使用される液剤または懸濁剤は次の成分を含む:無菌希釈剤、例えば注射用の水、無菌食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸塩、および等張性調節用作用物、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムにより調節することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスまたはプラスチック製の多用量バイアル中に封入することができる。
【0125】
注射用途のために適当な製薬学的組成物は、無菌の水性液剤(ここでは水溶性)または分散剤、および無菌の注射用液剤または分散剤の即席調製のための無菌散剤を含む。静脈内投与では、適当な担体は、生理学的食塩水、静菌性水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸バッファー食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は無菌であらねばならず、そして容易に注射可能である程度に流体でなければならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して防御されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合液を含有する溶媒または分散媒質であってもよい。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散剤の場合に要求される粒径の維持および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用防御は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトールおよび塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の遅延吸収は、吸収を遅らせる作用物、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされる。
【0126】
無菌の注射用液剤は、要求される先に列挙された成分の1種または組み合わせ物を含む適当な溶媒中に要求される量において活性化合物(例えば、GNG2ポリペプチドまたは抗GNG2抗体)を組み入れ、続いての無菌ろ過によって調製できる。一般に、分散剤は
、基剤の分散媒質および先に列挙されたものからの要求される他の成分を含有する無菌媒質中に活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌散剤の場合には、調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、この方法は、予め無菌濾過された溶液から、有効成分プラスいずれかさらなる所望の成分の粉末を生成する。
【0127】
経口組成物は、一般に、不活性な賦形剤および食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入されるかまたは錠剤に圧縮することができる。経口的治療投与の目的では、活性化合物は添加物とともに組み入れられ、そして錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用することができる。また経口組成物は、口内洗浄液としての使用のために流体担体を用いて調製されてもよく、この場合、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、そしてスウィッシュ(swish)され,そして吐き出すかまたは飲み下される。製薬学的に適合する結合剤および/または補助材料は組成物の一部として含まれてもよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などはいずれの次の成分または類似の性質をもつ化合物を含有してもよい:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン;添加物、例えば澱粉またはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;滑り剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0128】
吸入による投与では、化合物は、適当な噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含有する加圧容器またはディスペンサー、またはネブライザーからのエアゾル噴霧の形態で送達される。
【0129】
また全身投与が経粘膜または経皮手段によってあってもよい。経粘膜または経皮投与のためには、透過されるべきバリヤーに適する浸透剤が調合物において使用される。そのような浸透剤は、一般に当該技術分野において既知であり、そして例えば、経粘膜投与では、洗剤、胆汁塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻内噴霧剤または坐剤の使用によって達成できる。経皮投与では、活性化合物は、当該技術分野において一般に既知の軟膏剤(ointments)、塗擦剤(salves)、ゲル剤またはクリーム剤に調合される。
【0130】
また化合物は、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドのような慣用の坐剤基剤を用いて)または直腸送達のための保持浣腸剤の形態で調製されてもよい。
【0131】
1つの実施態様では、活性化合物は、身体からの急速な排除に対して化合物を保護するであろう担体とともに調製される、例えば、移植物および微小内包送達システムを含む、徐放性調合物。生体分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド(polyanhydride),ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル(polyorthoester)およびポリ乳酸が使用されてもよい。そのような調合物の製造方法は、当業者には明らかである。また材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.からの市販品を得ることができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を含有する感染細胞に対して標的化されたリポソームを含む)もまた、製薬学的に許容され得る担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記述されるような当業者に既知の方法にしたがって製造することができる。
【0132】
投与の容易さおよび用量の均一性のために用量単位形態物において経口または非経口組成物を調合することは特に得策である。本明細書で使用されるような用量単位形態物は、処置される被験者のために単位用量として適合された物理的に区別された単位物を指し;
各単位物は、要求される製薬学的担体と合わせて所望される治療効果を生じるように計算された活性化合物の予定量を含有する。本発明の用量単位形態物に関する明細は、活性化合物の独特な特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個人の処置のためにそのような活性化合物を調合することの技術上固有の制約によって指示され、そしてそれらに直接依存する。
【0133】
本発明の核酸分子はベクター中に挿入され、そして遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(参照、米国特許第5,328,470号)または定位注射(参照、例えば、Chen et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057)によって被験者に送達できる。遺伝子治療ベクターの製薬学的調製物は、許容できる賦形剤中に遺伝子治療ベクターを含むか、または遺伝子送達担体が包埋されている徐放性マトリックスを含むことができる。あるいはまた、完全な遺伝子送達ベクターが組み換え細胞からインタクトに生産できる、例えばレトロウイルスベクターの場合は、製薬学的調製物は、遺伝子送達システムを生産する1種以上の細胞を含むことができる。
【0134】
製薬学的組成物は、投与についての指示書とともに、容器、包装物またはディスペンサー中に包含されてもよい。
【0135】
7.新脈管形成を調節する方法
新脈管形成に関連する疾病は、治療剤の開発のための薬物標的として、本発明の脊椎動物GNG2タンパク質を用いて診断および処置されてもよい。新脈管形成に関連する疾病は、限定されるものではないが、例えば、固形腫瘍、血液発生の(blood born)腫瘍、例えば白血病、および腫瘍転移物を含む、新脈管形成依存性のがん;良性腫瘍、例えば血管腫、聴覚性神経腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫;リウマチ様関節炎;乾癬;眼の新脈管形成疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖、皮膚潮紅;Osler−Webber症候群;心筋新脈管形成;プラーク新生新脈管形成;末梢血管拡張症;血友病性関節;線維性血管腫;創傷肉芽を含む。ある実施態様では、最終目的は被験者における新脈管形成を促進することである。かくして、GNG2またはその生産物は、限定されることなく、創傷治癒を促進し、血管移植手術における内皮形成を促進し、そして心筋梗塞後の血管損傷を治癒するように内皮形成を促進するために使用することができる。
【0136】
本発明は、動物における新脈管形成を調節する方法を提供する。ある実施態様では、本方法は新脈管形成を促進する。ある実施態様では、本方法は新脈管形成を抑制する。
【0137】
(A)プロ新脈管形成
本発明のある実施態様では、新脈管形成はGNG2の発現を増強することによって細胞において促進される。本発明の方法では、GNG2をコードしている核酸配列は、GNG2の増強された発現を促進するように細胞に投与される。核酸配列は、GNG2核酸分子が生物活性を有するGNG2をコードしていれば、いかなるGNG2であってもよい(すなわち、いかなる種から得られてもよい)。GNG2をコードしているポリヌクレオチドは本明細書に記述されるような発現ベクターの一部であってもよい。細胞および動物中に核酸を導入する方法は当該技術分野において既知である。GNG2をコードしている使用されてもよいポリヌクレオチドは、限定されるものではないが配列番号:1、配列番号;7、配列番号:11、配列番号:13および配列番号:15を含む。他の配列は、他の種のGNG2をコードしているそれらの配列、例えばウシ(配列番号:56)、マウス(配列番号:58および配列番号:60)およびヒト(配列番号:59)を含む。GNG2発現の量は、プロモーターの強さ、および適当な系のために選ばれる組織特異的因子によって指導されてもよい。一般に、発現量は新脈管形成が促進されるようでなければならない
。ある実施態様では、GNG2単独が十分であり、しかし、他の実施態様では、GNG2の発現に加えて特異的なGタンパク質βサブユニットの同時発現が生物学的経路を活性化するために使用される。かくして、また本発明は新脈管形成の促進のためのGNG2およびGタンパク質βサブユニットの同時発現を含む。2種のサブユニットの同時発現は、当該技術分野における既知のいかなる手段によって達成されてもよい。2種のサブユニットをコードしている核酸は、同じ発現ベクター中に組込まれてもよく、または別々の発現ベクターにおいて存在してもよい。細胞へのベクターのトランスフェクションは同時でも連続であってもよい。2種のサブユニットの発現は、1種または両サブユニットの制御発現を可能にするために、同じ調節要素または異なる調節要素の制御下に存在してもよい。あるいはまた、いずれかまたは両サブユニットの発現は構成的であるように作成されてもよい。
【0138】
(B)抗新脈管形成
本発明のある実施態様では、新脈管形成は、GNG2の発現を減少させるか、またはGNG2の機能を抑制することによって細胞において抑制される。新脈管形成は、GNG2に対して標的化される化合物、例えば天然または合成の低分子を含む化学化合物、アンチセンスGNG2分子またはGNG2に対する抗体の使用をとおして抑制されてもよい。新脈管形成を抑制するポリヌクレオチドは、GNGポリヌクレオチドに結合し、そしてGNG2の発現またはGNG2RNAの正確なスプライシングを抑制するそれらのものである。GNG2発現を抑制するアンチセンス分子の例は、限定されるものではないが配列番号:8 MO−gng2(翻訳):5’−gccatgaggctggcggttcaggc−3’(配列番号:8)、GNG2(センス):5’−gcctgaaccgccagcctcatggc−3’(配列番号:9)、MO−gng2(アンチセンス):5’−gccatgaggctggcggttcaggc−3’(配列番号:10)、およびMO−GNG2(スプライシング):5’−tatgctctttctgacctttattctg−3’(配列番号:12)を含む。
【0139】
GNG2の機能を抑制するために投与されてもよい化合物は、天然または合成低分子を含む化学化合物、特異的にGNG2を結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。被験者に投与された場合、抗体が被験者の細胞によって産生されるGNG2を特異的結合するならば、抗体はいかなる既知のGNG2を結合する抗体であってもよい。
【0140】
(C)抗新脈管形成組み合わせ療法
本発明の他の実施態様では、新脈管形成は、血管内皮成長因子(VEGF)の発現および/または機能の調節と組み合わせて、GNG2の発現および/または機能を操作することによって調節される。ある実施態様では、新脈管形成は、VEGFをコードしている核酸と組み合わせて、GNG2をコードしている核酸を投与することによって刺激される。GNG2およびVEGF核酸は、単一の発現ベクターまたは別々の発現ベクターにおいて存在してもよい。VEGFおよびGNG2核酸は同時または別々に投与されてもよい。他の実施態様では、新脈管形成は、GNG2の発現または機能を低下させる化合物およびVEGFの発現または機能を低下させる化合物を投与することによって抑制される。ある実施態様では、GNG2の発現を低下させる化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、GNG2の発現を低下させる化合物はGNG2に対向されるモルホリノである。ある実施態様では、VEGFの発現を低下させる化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の実施態様では、VEGFの発現を低下させる化合物はVEGFに対向されるモルホリノである。ある実施態様では、GNG2の機能を抑制する化合物は抗GNG2ポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。ある実施態様では、VEGFの機能を抑制する化合物は抗VEGFポリクローナルまたはモノクローナル抗体である。
【0141】
VEGFはクローン化され、かつ配列決定されており、そしてVEGF−A、VEGF−B、VEGF−CおよびVEGF−Dを含む、多くの異なるVEGFは既知である。生物学的に活性なVEGFを生産するいかなるVEGFをコードしている核酸が使用されてもよい。例えば、限定されるものではないが、使用されてもよいVEGFをコードしている核酸は、ヒトVEGF(配列番号:35)(タンパク質:配列番号:36)、ヒトVEGF−B(配列番号:37)(タンパク質:配列番号:38)、ヒトVEGF−C(配列番号:45)(タンパク質:配列番号:46)、ヒトVEGF−D(配列番号:47)(タンパク質:配列番号:48);マウスVEGF−A(配列番号:41)(タンパク質:配列番号:42)、マウスVEGF−B(配列番号:39)(タンパク質:配列番号:40)、マウスVEGF−C(配列番号:49)(タンパク質:配列番号:50)、マウスVEGF−D(配列番号:51)(タンパク質:配列番号:52);ゼブラフィッシュVEGF(配列番号:43)(タンパク質:配列番号:44)などのVEGFコーディング核酸を含む。
【0142】
ある実施態様では、VEGFの発現および/または機能はアンチセンス配列を投与することによって抑制される。アンチセンス配列は、GNG2アンチセンス配列について記述された一般的性質を有する。特定の実施態様では、例えば、アンチセンス配列は、gtatcaaataaacaaccaagtcat(配列番号:53)、gtaacaattaaacaaccatgtgat(配列番号:54)、およびtaagaaagcgaagctgctgggtatg(配列番号:53)の配列を有する。配列番号:53および配列番号:55アンチセンス配列はゼブラフィッシュVEGFを標的とする。ヒトVEGF配列は、アクセッション・ナンバー:NM 003376,Unigene cluster:Hs.73793(Ensembl gene ID:ENSG00000112715)の下で見出される。
【0143】
ある実施態様では、VEGF機能は、抗VEGFポリクローナルまたはモノクローナル抗体の投与によって抑制される。抗VEGFモノクローナル抗体の例は、AVASTINTM(Genentech)およびBioCarta Catalog Nos.09−06−16460および09−06−11335を含む。VEGFシグナル伝達経路はまた、VEGFシグナル伝達を破壊する当該技術分野において既知のいかなるチロシンキナーゼ阻害剤、または当該技術分野において既知のVEGFについてのいかなる他の種類の阻害剤によって抑制されてもよい。これらの阻害剤は、GNG2の発現または活性を調節するための本明細書に記述される戦略と組み合わせて使用されてもよい。
【0144】
GNG2およびVEGFの機能を抑制するための実施態様では、機能または生物学的活性を抑制するために使用される化合物は、低分子化合物、ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスおよびモルホリノ、リボザイムなど);VEGFおよびGNG2に対する抗体;GNG2と他の受容体(上流の受容体)、Gタンパク質パートナーおよび下流のエフェクターとの相互作用をブロックする細胞透過性ペプチド;およびこれらのアプローチの組み合わせ物を含む。
【0145】
新脈管形成を促進または抑制する化合物のスクリーニング:
本発明のその他の態様は、GNG2またはGNG2をコードしている核酸分子を試験化合物と接触させ、そして試験化合物がGNG2またはGNG2をコードしている核酸分子を結合するか否かを決定することを含んでなる、いずれかGNG2またはGNG2をコードしている核酸分子に結合する化合物を同定する方法に対向される。
【0146】
結合は、限定されるものではないがゲル−シフトアッセイ、ウエスタン・ブロット、放射能標識競合アッセイ、ファージに基づく発現クローニング、クロマトグラフィーによる同時分画、共沈、架橋、相互作用トラップ(trap)/2−ハイブリッド解析、サウス
ウエスタン解析、ELISAなどを含む、当該技術分野において既知のいかなる結合アッセイによっても決定することができ、これらは、例えば、Current Protocols In Molecular Biology,1999,John Wiley
& Sons,N.Y.に記述されている。そのような試験において使用されるGNG2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、溶液中で遊離であっても、固体支持体に接着されていても、または細胞内に局在していても、または細胞画分と会合されていてもよい。本発明の1つの実施態様では、GNG2に対して適当な結合親和力を有する化合物の高処理能スクリーニング(「HTS」)が用いられる。多数の試験化合物が固定されたGNG2に曝露されてもよい。結合されたGNG2が、次に当該技術分野において周知の方法によって検出される。
【0147】
標的タンパク質のリガンドを同定するその他の方法は、Wieboldt et al.,Anal.Chem.,69:1683−1691(1997)において記述されている。この技術は、標的タンパク質への結合について溶液相において同時に20〜30の作用物の組み合わせライブラリーをスクリーニングする。フィルター上に保持されている標的タンパク質に特異的に結合する作用物は、続いて標的タンパク質から遊離され、HPLCおよび空気圧によるエレクトロスプレー(イオンスプレー)イオン化質量分光法によって分析される。この手法は、標的タンパク質に対する最大親和力をもつライブラリー構成成分を選択し、かつ低分子ライブラリーのために特に有用である。
【0148】
本発明の他の実施態様は、抗体に基づく競合スクリーニングアッセイの使用を含む。1つの実施態様では、GNG2に結合する特異的な中和抗体が、GNG2への結合について試験化合物と特異的に競合する。この方式では、抗体は、GNG2とともに1種以上の抗原決定基を共有するいずれかのペプチドの存在を決定するために使用することができる。そのような結合の研究は、標識された抗体および/または標識された試験化合物を使用してもよい。そのような手法の例は、例えば、Lin,A.H.et al.(1997)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 41(10):2127−2131において見出すことができる。
【0149】
本発明のその他の態様は、GNG2の生物学的活性を調節する(すなわち、増大または減少する)化合物を同定する方法に対向される。そのような方法は、試験化合物とGNG2を接触させ、そして化合物が、試験化合物の不在下でのGNG2の活性に比較して、ポジティブ(アゴニスト)またはネガティブ(アンタゴニスト)な方式でGNG2の生物学的活性に影響を与えるか否かを決定することを含む。
【0150】
ある実施態様では、GNG2の発現または生物学的活性を調節する化合物は、試験化合物が、GNG2ポリペプチドを発現するかまたはGNG2ポリヌクレオチドを有する、細胞とともにインキュベートされ、そして試験化合物がGNG2発現または生物学的活性に及ぼす効果を決定する、インビトロの細胞アッセイにおいて同定されてもよい。GNG2活性のモジュレーターは、新脈管形成を伴う疾病の処置において治療学的に有用であろう。インビトロで生物学的活性のGNG2発現を調節するとして同定された化合物は、関連する、かつ有効な活性を確認するためにインビボにおいてさらに試験されてもよい。
【0151】
また本発明は、試験化合物の存在または不在下でGタンパク質βサブユニットおよびGNG2を接触させ、そしてβサブユニットとGNG2の結合に及ぼす効果を検出することによってGNG2モジュレーターを同定する方法を提供する。アゴニストは、βサブユニットとGNG2の結合を促進するそれらの化合物であり、一方アンタゴニストは、βサブユニットとGNG2の結合を抑制するそれらの試験化合物である。これらの試験化合物は、関連する、かつ有効な活性を確認するために他のインビボ・アッセイにおいてさらに試験されてもよい。
【0152】
本発明によって考慮される試験化合物は、天然生産物および/または組み合わせ化学合成からの合成生成物を含む、化学ライブラリーからの化合物を含む。そのような化合物は、ランダムペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機分子を含んでもよい。
【0153】
ある実施態様では、GNG2プロモーターに指導されるGFPトランスジーンを担持しているトランスジェニックゼブラフィッシュは、化合物、低分子または遺伝子生産物が、GFPの発現の変更をもたらす、GNG2遺伝子のプロモーターに及ぼす調節活性を有するか否かを検出するために使用される。活性の増大または減少は、生存ゼブラフィッシュ内で生成された蛍光シグナルによって検出できるので、その結果、生物学的に活性のある薬物、低分子および遺伝子生産物をスクリーニングするためのインビボモデルを提供する。
【0154】
本スクリーニング法によって同定された化合物は、単独でも、またはVEGFを促進または抑制する化合物と組み合わせても、新脈管形成を促進または抑制するために本発明の方法において使用されてもよい。
【0155】
次に示す実施例は、本発明を具体的に説明するためにのみあり、いかなる点においても本発明を限定するものと考えてはならない。
【実施例】
【0156】
例1
保存魚
ダニオ・レリオ(Danio rerio):Florida野生種(Lancaster,Pennsylvania)およびLongfin種(Scientific Hatcheries,Huntington Beach,California)。
【0157】
ゼブラフィッシュのアンチセンスGNG2モルホリノオリゴヌクレオチド(Gene Tools,LLC,Philomath,Oregonにて合成)は、次に示す配列を有した:翻訳抑制アンチセンス:5’−gccatgaggctggcggttcaggc−3’(配列番号:8)(参照、図8);スプライシングアンチセンス:5’−tatgctctttctgacctttattctg−3’(配列番号:12)(参照、図9)。
【0158】
mRNAおよびモルホリノアンチセンスオリゴのミクロインジェクション:
VEGFmRNA過発現構築物は、Dr.Brant Weinstein(Lawson,N.D.et al.(2003)Genes Dev.17(11):1346−1351)によって親切に提供された。キャップ構造のセンスRNAは、SP6RNAポリメラーゼおよびmMESSAGEmMACHINE系(Ambion)を用いて合成された。VEGFmRNAまたはモルホリノアンチセンスオリゴのミクロインジェクションでは、ゼブラフィッシュ胚が、早期1細胞期の卵黄中に0.25〜0.5nlを注射され、続いて、28.5℃で0.3xDanieau’s培地においてインキュベートされた。胚は、それらが発芽期(bud stage)または受精後24時間に達するまで上記条件下で維持され、次いで、RNA調製のために回収されるか、または全載(whole−mount)インサイチューハイブリダイゼーションのために4%パラホルムアルデヒドにおいて固定された。
【0159】
インサイチューハイブリダイゼーション:
flkインサイチュー構築物は、Dr.Brant Weinstein(Lawson,N.D.et al.(2003)Genes Dev.17(11):1346−
1351)によって親切に提供された。インサイチューハイブリダイゼーション手法は、Leung,T.et al.(2003)Development 130(6):3639−3649から改変された。簡単に言えば、胚が、68℃で一夜ハイブリダイズされ、次いで66%Hyb/33%2XSSCにより30分間洗浄され、次いで33%Hyb/66%2XSSCによって68℃で30分間、次いで2XSSCによって68℃で15分間、続いて0.2XSSCによって68℃で1時間洗浄された。ハイブリダイズされたプローブは、NBT/BCIP染色(Roche)によって検出された。カラー染色後、胚は100%エタノール中で1時間洗浄された。
【0160】
Trizol(Invitrogen Life Technologies)が使用されて、10個の未注射(野生型)の胚および100μMモルホリノアンチセンスオリゴ(配列番号:10)を注射された10個の胚からのRNAを単離した。RNAはRQ1 DNアーゼにより処理され、そして1μgがMMLV逆転写酵素(Promega)を用いて逆転写された。PCRは,それぞれGNG2プライマーおよび28Sリボソームサブユニットプライマーとともに30および26サイクル、Titanium Taq(BD
Biosciences)を用いてcDNAにおいて実施された。GNG2プライマーは、次のとおりである:
正:5’−atcgatatggccaccaacaacacagcta−3’(配列番号:31)および逆:ttacaggatggcacagaagaac−3’(配列番号:32)。28Sサブユニットプライマーは次のとおりである:
正:5’−cctcacgatccttctggctt−3’(配列番号:33)および逆:5’−attctgcttcacaatgata−3’(配列番号:34)。GNG2ゲノム配列またはcDNA配列を含有するプラスミドは正の対照として増幅された。PCR産物は臭化エチジウムを含有する2%アガロースゲルにおいて展開された。
【0161】
インビトロ系によるMOブロッキング機能の検出
MOの効能および特異性が、インビトロの転写および翻訳共役系(TNT Coupled Reticlocyte Lysate Systems,Promega)において調査された。BamHI/XhoIgng2PCRフラグメントが、pcDNA3.1/V5−His−TOPO(Invitrogen)中にクローン化された。gng2cDNAの0.5μgが鋳型として使用され、そして種々のMOオリゴが添加された。ウエスタンブロッティングは抗V5抗体(Invitrogen)を用いて実施された。免疫反応性タンパク質は、増進された化学発光(Amersham Pharmacia)によって検出された。
【0162】
全載免疫染色
胚は、4%パラホルムアルデヒドにおいて一夜固定され、PBST中で洗浄され、そして2%ヤギ血清および2%BSAを含有するPBST中で4℃で2時間ブロックされた。ホスホ−AKTおよびホスホ−PLCγ1(Cell Signaling Technology)に対する第1抗体が、4℃で一夜、ブロッキングバッファー中で1:100希釈において使用された。PBST中で洗浄後、第2抗体が4℃で一夜1:300希釈において使用された。全上記溶液は20mMフッ化ナトリウムおよび2mMオルトバナジン酸ナトリウム(Sigma)を含有する。発色検出はDAB染色(Sigma)によって実施された。
【0163】
ゼブラフィッシュgng2遺伝子の同定
第1段階として、本研究者らは、ゼブラフィッシュ胚の発生中の血管系において特異的に発現されるそれらのGγサブタイプを同定しようと努めた。ゼブラフィッシュ配列データベースをプローブするためにヒトおよびマウスのGタンパク質配列を用いて、脊椎動物中で高度に保存されている71のアミノ酸γ2タンパク質をコードしているゼブラフィッ
シュgng2遺伝子が同定された(図2およびA)。ゼブラフィッシュgng2の発現パターンは、胚の発生において非常に劇的であった。RT−PCR分析で示されたgng2転写物は、1細胞期から母性系で(maternally)提供され(B)、そして原腸胚形成および胚形成を通じて接合体として(zygotically)検出された。アンチセンスプローブを用いる全載インサイチューハイブリダイゼーションは、gng2が原腸胚形成中に至る所で発現されることを表した(データ未記載)。続いて、転写物は、形態形成の間、終脳、腹側の間脳、腹側の後脳および脊髄ニューロンを含む、中枢神経系(CNS)に空間的に限定された。CNSの外は、転写物はまた、体節間の血管に沿って検出可能なシグナルはなかったけれども、受精後(dpf)1日における背側大動脈を含む軸血管系において発現された(図7Aおよび図7B)。2dpfでは、転写物は、血管系では下方調節されたが、それらは、腹側の中脳、後脳および耳胞(耳内)のような他の組織ではなお検出された(図7C)。3dpfでは、転写物は全載インサイチューハイブリダイゼーションによってはほとんど検出できなかった(データ未記載)。gng2の発現をその哺乳動物の対応部分と比較するために、E8.5およびE9.5マウス胚の全載インサイチューハイブリダイゼーションが実施された。マウス胚発生のこの期には、軸血管系は確立されつつあり、そして体節間血管は背側大動脈からの新脈管形成発芽を続けつつある。このプロセスにおける可能な役割と一致して、これらの結果は、マウスgng2転写物が、E9.5期の胚における血管系および発芽中の血管において検出されたことを示した(図20)。新脈管形成プロセスのこの発生段階は、1dpfのゼブラフィッシュ胚に非常に類似している。かくして、保存されたタンパク質配列および発現パターンにおける類似性は、ゼブラフィッシュGγ2がマウスタンパク質の真のオーソローガス体であるという考えを強めた。
【0164】
ゼブラフィッシュgng2の標的化ノックダウンは新脈管形成を抑制する
新脈管形成におけるgng2の可能な役割を明らかにするために、ゼブラフィッシュ胚においてモルホリノアンチセンス・ノックダウンアプローチが使用された(Nasevicius,A.and SC Ekker(2000)Nat.Genet.26:216−220)。インビボにおける抑制の効力を例証するために、第1のコーディングエクソン−イントロン境界に対して標的化されたスプライシング部位モルホリノが設計された(図11A)。ゼブラフィッシュ胚中に注入された場合、スプライシングモルホリノは、RT−PCR産物の配列決定によって確認されるように、gng2のコーディング配列の末端切断をもたらす潜在性スプライシング部位を誘導した(図11Bおよび図12)。新脈管形成欠如の最初の形態学的兆候は3dpfに検出され、この場合、ノックダウン胚は体節間血管を通しての血流の低下または不足を示したが、背側大動脈と主静脈には血液循環は存在した(図19、映画S1,WT;映画S2,gng2−MOスプライシングノックダウン)。このノックダウンアプローチの特異性は、翻訳を抑制するようにATG開始コドンにまたがる5’UTRに対向される第2のモルホリノを用いて確認された(図18A;図18CおよびD;図19;映画S3)。翻訳ブロッキングモルホリノは、インビトロの翻訳アッセイによって評価されるように、Gγ2タンパク質発現を特異的に抑制した(図18B)。両モルホリノ戦略は、インビボで類似する血液循環表現型を生じ、これは、5塩基ミスマッチの対照モルホリノを注入された胚では観察されなかった(図19、映画S4、ミスマッチ対照モルホリノ)。したがって、2つの独立したモルホリノおよびミスマッチ対照を用いて、gng2遺伝子が特異的に標的化されること、ならびにgng2の標的化ノックダウンがゼブラフィッシュ胚の軸血管系からの体節間血管の発芽を破壊することが例証された(また参照、図10)。
【0165】
これらの体節間血管は、背側大動脈および主静脈からの新脈管形成発芽によって発達し、そのプロセスは腫瘍の新脈管形成に非常に類似する(Bergers G,and LE Benjamin(2003)Nature Rev,Cancer 3:401−410)ので、体節間血管は特に興味がある。
【0166】
gng2ノックダウン表現型の分子解析
gng2ノックダウン胚における新脈管形成欠如の性質を試験するために、本研究者らは、VEGFR−2受容体(Flk−1/KDR)をコードしている内皮の特異的マーカーflk1を使用して、発生する血管系を可視化した(Liao W et al.(1997)Development 124:381−389)。1dpfの対照胚のインサイチューハイブリダイゼーションによって示されるように、flk1転写物は、頭蓋血管、軸血管系(背側大動脈および主静脈を含む)において、そしてより重要には、背側大動脈から発芽する体節間血管において豊富に発現された(図13Aおよび図13D)。同期におけるgng2ノックダウン胚のインサイチューハイブリダイゼーション解析は、背側大動脈および主静脈に沿ってflk1転写物の発現を表し、これは、軸血管系に沿った内皮細胞分化が欠損してなかったことを示している。しかしながら、gng2ノックダウン胚は、軸血管系から発芽する体節間血管の非常に低下した染色を示した(図13C、図13E−F;図13E−Fにおいてより拡大)ので、この欠損が新脈管形成プロセスに特異的であったことを示唆している。定量的分析は、すべてが正常でかつ十分に確立された背側大動脈からの体節間血管の発芽を示した対照の胚(図13Aおよび図13D)に較べて、gng2ノックダウン胚の96%が、体節間血管の部分的(図13Cおよび図13F)ないし完全な(図13Bおよび図13E)喪失を示したことを表した。この表現型は受精後30時間においてさえ持続し(データ未掲載)、このことは、gng2ノックダウン胚における体節間血管の確立の遅延というよりむしろ事実上の欠如を示唆する。gng2が新脈管形成において絶対的な役割を演じているという本研究者らの発見は、生体(organismo)レベルにおけるこのプロセスにおけるGタンパク質シグナル伝達の研究への進入点を提供する。さらにまた、それは、インビボのGγ2サブタイプに対して特異的な機能は、他のファミリーメンバーによって置き換えることができないことを例証している。さらなる研究は、他のGγサブタイプがこの機能を置換できないことが、生体に関して、その特徴的発現パターンによるか、またはその独特の機能によるか否かを探査するであろう。
【0167】
gng2はvegf経路と発生的に相互作用する
gng2ノックダウン表現型は、vegfノックダウン胚のそれと驚くべき類似性を共有しており(Nasevicius A.et al.(2000)Yeast 17:294−301;Childs S.et al.(2002)Development
129:973−982)、これは、それらが、共通または収斂する経路において機能しているかもしれないことを示唆する。この可能性を探究するために、対照およびgng2抑制胚においてvegfに対する新脈管形成応答が比較された。興味あることには、両vegfおよびgng2転写物のモルホリノノックダウンは、ゼブラフィッシュ胚における新脈管形成に相乗効果を現した(図13G−H)。いずれのモルホリノ単独の有効以下の用量では、新脈管形成に及ぼす影響はなかった(図13G、vegfノックダウン;gng2ノックダウンデータは未記載)。しかしながら、同じ有効以下の用量における両vegfおよびgng2の同時抑制は、ゼブラフィッシュモデルにおける新脈管形成発芽のプロセスを有意に除去した(図13H)。
【0168】
その他の実験では、vegfmRNAの過発現が使用されて、発生中のゼブラフィッシュ胚の軸血管系および体質間血管における内皮細胞増殖、管形態形成およびflk1の発現増大が誘導された(図15A−B)。そのプロ新脈管形成特性にもかかわらず、vegf過発現と、それに続くgng2のモルホリノノックダウンは、背側大動脈から発芽する体質間血管を特異的に抑制した(図15D−E)。より驚くべきことには、背側大動脈から卵黄の総主静脈への発芽プロセスは、vegf過発現後においてさえgng2抑制によって完全に抑制された(図15F、vegfmRNAに続くgng2−MO;図15C、vegfmRNA単独)。まとめれば、これらの結果は、gng2がvegf経路と発生的に相互作用し、そしてgng2の喪失がvegfのプロ新脈管形成効果を抑制することを示している(また参照、図14および16)。
【0169】
Gタンパク質γ2機能はPLCγ1およびAKTのVEGF依存性活性化のためには極めて重要である
VEGFR−2受容体(Flk−1/KDR)の活性化は、血管内皮細胞におけるAKTキナーゼおよびPLCγ1シグナル伝達分子を刺激する(Tanimoto T.et
al.(2002)J.Biol.Chem.277:42997−43001;Claesson−Welsh L.(2003)Biochem.Soc.Trans.31:20−24;Takahashi T.et al.(2001)EMBO J.20:2768−2778)。新脈管形成中にGγ2がVEGFR−2と相互作用する分子経路を精査するために、発生中のゼブラフィッシュ胚の血管系におけるAKTキナーゼおよびPLCγ1の活性形態物を検出する特異的な抗ホスホ抗体が使用された。ゼブラフィッシュ胚におけるvegfmRNAの過発現において、全載免疫組織化学によって軸血管系におけるPLCγ1およびAKTキナーゼの活性化を検出した(図15Iおよび図15L)。かくして、Gγ2は、インビボのvegfシグナル伝達経路の下流構成要素をブロックすることによって新脈管形成において決定的かつ特異的な役割を演じることが示された。
【0170】
新脈管形成におけるVEGFシグナル伝達のためのGタンパク質γ2の必須役割
本研究者らは、発生中のゼブラフィッシュ胚における新脈管形成中の新規プレイヤーとしてのGγ2を確立した。さらに、gng2の喪失が、PLCγ1およびAKTへの下流シグナル伝達を破壊することによって新脈管形成発芽を促進するVEGFの能力をブロックすることが示された。図17に示されるように、メカニズムまたは実施可能性のいかなる特定の理論によっても拘束されないことを願えば、本研究者らは、Gγ2−およびVEGF依存性のシグナル伝達経路の間の相互作用を説明する3つの可能なシナリオ:1)VEGF発現の誘導;2)VEGFR−2(Flk−1/KDR)のトランスアクチベーション(transactivation);および/または3)VEGFR−2への直接カップリングを考慮した。第1の可能なシナリオに関しては、数種の研究は、トロンビン、アンギオテンシンおよびエンドテリン(endothelin)によるGPCRの活性化がVEGF発現を誘導することによって血管の改造を調節できることを示した(Bagnato A,and F.Spinella(2003)Trends Endocrinol.Metab.14:44−50;Richard DE et al.(2000)J.Biol.Chem.275:26765−26771;Willams B.et al.(1995)Hypertension 25:913−917)。しかしながら、vegfが過発現され、そして明らかに速度限定的ではない条件下でさえも、gng2の喪失がvegfシグナル伝達における欠如を生じたので、この説明は、近年の研究ではあり得ないように思われる。
【0171】
第2の可能なシナリオに関しては、若干の研究は、多数のこれらの同じGPCRの活性化がまた、その発現を誘導し、そして/またはそのチロシンリン酸化を刺激することによってVEGFR−2受容体を活性化できることを見出した(Tanimoto T.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:42997−43001;Miura S.et al.(2003)Hypertension 41:1118−1123;Maragoudakis ME et al.(2002)Biochemical Society Transactions 30:173−177;Imanishi T.et al.(2004)Hypertens Res.27:101−108)。他の研究は、ヒト内皮細胞におけるFlk−1/KDRとGαq/11との物理的相互作用を記述している1つの報告(Zeng H.et al.(2003)J.Biol.Chem.278:20738−20745)とともに、これらのプロセスにおけるGタンパク質の類似の関与を指摘した(Zeng H.et al.(2003)J.Biol.Chem.278:20738−20745;Albig AR and WP Schiermann(2005)Mol.Biol.Cell 16:609−625)。しかしながら、近年の研究は異なるシナリオを指摘している、何故ならば、たとえ背側大動脈と主静脈に沿ったflk−1の発現が影響されなかったとしても、gng2の標的化ノックダウンは、軸血管系からの体節間血管の発芽を破壊するからである。
【0172】
事実、gng2ノックダウン胚におけるvegfmRNAの異所性過発現は、たとえ胚がなお体節間血管の発生ができなかったとしても、さらに、背側大動脈と主静脈に沿ったflk−1の発現を誘導した。かくして、VEGFとその受容体の自己調節ループ(autoregulatory loop)は、gng2ノックダウン胚においてインタクトであるように思われたので、Gγ2が、リガンドまたは受容体の発現レベルにおいてVEGFシグナル伝達と相互作用する可能性を低くさせる。第3のシナリオに関しては、VEGFR−2(Flk−1/KDR)は受容体チロシンキナーゼ・スーパーファミリーに属する。このスーパーファミリーの若干のメンバーは、それらの下流のシグナル伝達のためにGタンパク質を利用することが示されていた。例えば、血小板由来の成長因子β受容体は、Gαiの直接的チロシンリン酸化を介してMAPKおよびDNA合成を活性化し(Alderton F.et al.(2001)J.Biol.Chem.276:28578−28585);インスリン受容体はGαqの活性化をとおしてホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)およびグルコース輸送を刺激し;27およびインスリン様成長因子受容体は、Gαiとの相互作用をとおしてMAPKおよび細胞増殖を活性化する(Kuemmerle JF et al.(2001)J.Biol.Chem.276:7187−7194)。VEGFR−2シグナル伝達におけるGタンパク質について類似の要件を示せば、Gγ2の喪失が、新脈管形成中のPLCγ1およびAKTのVEGF誘導の活性化を弱めることが示された。Gγ2の喪失が、このプロセスに必要である特異的なGαβγヘテロ三量体の合成および集合を破壊すると推測される。この可能性は、Gγ構成成分が特異的なGαβγヘテロ三量体の安定性および膜取引(trafficking)のために要求されることを示す近年の証拠と一致する(Schwindinger WF et al.(2003)J.Biol.Chem.278:6575−6579;Schwindinger WF et al.(2004)Mol.Cell.Biol.24:7758−7768;Hynes TR et al.(2004)J.Biol.Chem.279:30279−30286)。Gαβγヘテロ三量体の受容体活性化が2つの活性なシグナル伝達部分(GαおよびGβγ)を生じるので、その喪失は2つの結末を有するであろう。第1は、活性なGβγ部分によるシグナル伝達がブロックされるであろう。これに関して、異型の発現および組み換え研究は、Gβγが、腸の上皮細胞においてPLCγ1に結合し、そして活性化できることを示した(Thodeti CK et al.(2000)J.Biol.Chem.275:9849−9853)。同様に、GβγはPI3Kのp110触媒サブユニットを活性化でき、これが順に、チャイニース・ハムスター卵巣(CHO)細胞におけるAKTを活性化する(Suire S.et al.(2005)Curr.Biol.15:566−570;Kubo H.et al.(2005)Biochem.J.Aug 10[Epub ahead of print])。可能なメカニズムを示唆するけれども、これらのプロセスに関与するGβγサブユニットの特定の組み合わせ物はインビボでは決定されなかった。この近年の研究の結果に基づいて、Gγ2を含有するGβγ二量体が血管の内皮細胞におけるこれらの酵素の1つまたは両方の活性化に関与しているかもしれないということが推測される。Gβγ媒介のシグナル伝達の破壊に加えて、特異的なGαβγヘテロ三量体が受容体による活性化のために要求されるので、その喪失がまた、Gα部分によるシグナル伝達をブロックするであろう(Schwindinger WF et al.(2001)Oncogene 20:1653−1660;Wang Q.et al.(1999)J.Biol.Chem.274:17365−17371;Robillard L.et al.(2000)Cell Signal 12:673−682;Lim WK et al.(2001)Biochemistry 40:10532−10541)。Gγ2サブユニットと複合されるGαサブユニットの同定は未知である。しかしながら、ノックダウンマウスの表現型の類似性を含む、多数の証拠の列に基づいて、本研究者らは、Gα3またはGαq/11が伴われるであろうと推測する(Offermanns S.et al.(1997)Science 275:533−536;Ruppel KM et al.(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:8287−8286;Offermanns S.et al.(1998)EMBO J.17:4304−4312)。この可能性はさらなる研究において探究されるであろう。
【0173】
例2
インサイチューのマウスgng2は、cDNA配列(NM 010315、2692bpmRNA、ムス・ムスクラス(Mus musculus)グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)、γ2サブユニット(Gng2)、mRNA)(配列番号:60)のフラグメントに対するRNAプローブ相補性を用いて実施された。
【0174】
【化1】

【0175】
cDNAフラグメントは、PCRのためのプライマー(上記配列における下線部分):Mus GNG2 70F(5’−ggagccaagcaagtcagatc−3’)(配列番号:61)およびMus GNG2 1194R(5’−ggatgcgatgtagggacatg−3’)(配列番号:62)を用いて成熟マウスの脳cDNAから増幅された。マウスgng2の発現は、眼原基および脊髄ニューロンを含む、前脳、中脳および後脳において検出された。もっとも重要なことには、それがまた、胚日数9.5(E9.5)のマウス胚の発生中の体節間血管において発現された(図20)。かくして、gng2のタンパク質配列および発現パターンは、また、魚類と哺乳類との間で保存されている。標準的マウスインサイチュープロトコルに関する代表的引用文献は、Belo,JA,T.Bouwmeester,L.Leyns,N.Kertesz,M.Gallo,M.Follettie,and EM De Robertis(1999)“Cerberus−like is a secreted factor with neutralizing activity expressed in the anterior primitive endoderm of the mouse gastrula”Mech.Dev.68(1−2):45−57である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】ゼブラフィッシュGNG2(配列番号:1)のヌクレオチド配列およびコードされたアミノ酸配列(配列番号:2)の整列を示す。
【図2】ゼブラフィッシュGNG2(配列番号:2)および共通配列(配列番号:5)とともにヒトGNG2(配列番号:4)のアミノ酸配列の整列を示す。空白スペースは非共通アミノ酸の差異を指す。「+」は共通アミノ酸の差異を指す。
【図3】マウスGNG2(配列番号:5)およびゼブラフィッシュGNG2(配列番号:2)とともにヒトGNG2(配列番号:4)のアミノ酸配列の整列を示す。空白スペースは非共通アミノ酸の差異を指す。星印は共通アミノ酸の差異を指す。gng2の配列および発現解析。(A)ゼブラフィッシュGγ2タンパク質は哺乳動物タンパク質に対して94%同一である。
【図4】アミノ酸残基の保存を図によって示すヒトGNGファミリーのメンバーの整列を示す。配列は、AAH29367(GNGT1)(配列番号:18);AAM12592(GNG11)(配列番号:19);AAB70039(GNGT2)(配列番号:20);AAM12590(GNG9)(配列番号:21);AAM12585(GNG3)(配列番号:22);AAM12586(GNG4)(配列番号:23);AAF04569(GNG8)(配列番号:24);AAM12588(GNG7)(配列番号:25);AAF04571(GNG12)(配列番号:26);AAM12587(GNG5)(配列番号:27);AAF04568(GNG5L)(配列番号:28);AAM12591(GNG10)(配列番号:29);AAM12594(GNG13)(配列番号:30)である。
【図5】ヒトGNGファミリーの系統図(phylogram)を示す。配列は、AAH29367(GNGT1)(配列番号:18);AAM12592(GNG11)(配列番号:19);AAB70039(GNGT2)(配列番号:20);AAM12590(GNG9)(配列番号:21);AAM12585(GNG3)(配列番号:22);AAM12586(GNG4)(配列番号:23);AAF04569(GNG8)(配列番号:24);AAM12588(GNG7)(配列番号:25);AAF04571(GNG12)(配列番号:26);AAM12587(GNG5)(配列番号:27);AAF04568(GNG5L)(配列番号:28);AAM12591(GNG10)(配列番号:29);AAM12594(GNG13)(配列番号:30)である。
【図6A】ゼブラフィッシュGγ2タンパク質が脊椎動物において高度に保存されていることを表す系統図を示す。Gγ2タンパク質は、Gγ2タンパク質ファミリーにおいて保存されているC末端におけるCAA(L/S)ボックス(長方形ボックス、ここでAはいずれかの脂肪族アミノ酸であった)を含有する。
【図6B】1細胞〜128細胞期からの母性gng2転写物および1dpfまで進んだ高い段階からの接合(zygotic)転写物のRT−PCR検出を示す。
【図7】受精後24時間(hpf)の神経管および軸血管系組織におけるGNG2発現を示す。パネルAは側面画像であり;パネルBは背側の画像である(挿入画像:拡大)。パネルAおよびBは、1dpfの神経管および軸血管系組織におけるgng2発現を示し、そしてパネルCは、全載インサイチューハイブリダイゼーションによって検出されるゼブラフィッシュ胚における2dpfの耳胞を示す(v.m.h.腹側の中脳および後脳;tel.終脳(telecephalon);a.v.軸血管系;s.n.脊髄ニューロン;o.v.耳胞;f.b.前脳;h.b.後脳;p.p.咽頭嚢;o.t.流出管;s.v.発芽する血管)。すべてのスケールバーは100μmである。
【図8】GNG2に対する翻訳抑制モルホリノを示す。MO−gng2(翻訳)(配列番号:8)はGNG2(センス)(配列番号:9)の逆相補物(complement)である。配列番号:9(MO−gng2(アンチセンス)は3’〜5’方向において示される配列番号:8と同じである。MO−gng2(翻訳)(配列番号:8)は太字かつ下線を付されたゼブラフィッシュGNG2遺伝子(配列番号:11)の背景内に示される。
【図9】GNG2mRNAスプライシングに対するスプライシングモルホリノを示す。MO−GNG2(スプライシング)(配列番号:12)もまたゼブラフィッシュGNG2遺伝子エクソン−イントロン−エクソン(配列番号:13)の背景内に示される。エクソンは二重下線において示され、そしてMO−GNG2(スプライシング)(配列番号:12)は太字大文字において示される。
【図10】ゼブラフィッシュ身体軸の短縮、ならびに中胚葉および神経の異常をもたらすGNG2の標的化抑制を示す。パネルAは野生型の胚を示し;パネルBはMO−GNG2翻訳モルホリノによる処理後の胚を示し;そしてパネルCはMO−GNG2スプライシングモルホリノによる処理後の胚を示す。
【図11】ゼブラフィッシュ胚におけるスプライシングモルホリノを用いるgng2の標的化ノックダウンを示す。(A)gng2エクソン−イントロン境界に対して標的にされるスプライス結合モルホリノ。(B)cDNAおよびゲノムPCR産物に対してモルホリノ注入された胚における潜在性スプライス転写物を比較して、野生型(WT)およびgng2−MO(100μM)モルホリノ注入された胚における尾芽期のgng2転写物のRT−PCR。
【図12】野生型GNG2mRNAおよびゼブラフィッシュRNAのMO−GNG2に導かれたミススプライシングから得られるスプライス変異体mRNAを示す。野生型GNG2(配列番号:15)およびミススプライスされたGNG2(配列番号:16)のヌクレオチド配列が、それぞれの推定されるアミノ酸配列(野生型、配列番号:2;スプライス変異体、配列番号:17)とともに示される。
【図13】インビボの新脈管形成のためのGタンパク質γ2の必須機能を示す。(A)および(D)1dpfのWTゼブラフィッシュ胚における、全載インサイチューハイブリダイゼーションによる軸血管系および体節間血管(IS)(D,矢印)におけるflk1発現。(B−C)および(E−F)gng2−スプライシングノックダウン(gng2−MO,100μM)が体節間血管の形成、新脈管形成のプロセスを抑制し、(B)および(E)はISの完全な喪失、胚の53%であり、(C)および(F)はISの部分的喪失、胚の43%であり、(A−F)はN=110,5実験の結果であった。(G−H)アンチセンスモルホリノを用いる両Gタンパク質(gng2−MO、40μM)およびvegf(vegf−MO、25μM)の標的化は、1dpfゼブラフィッシュ胚の背側大動脈からの体節間の発芽の喪失によって、可視化されるように抗新脈管形成の効率を劇的に増大した(H)。有効以下の用量におけるvegfノックダウン単独(vegf−MO、25μM)は効果を示さなかった(G)。(G−H)における挿入画像はISのより高い拡大画像である、(G,H矢印)。注入容量は約1nlであった。全スケールは100μmである(A−H)。
【図14】VEGF−mRNA過発現に誘導された1dpfにおけるflkの内皮発現を示す。パネルAは野生型、1dpfを示し(側面画像);パネルBはVEGF−mRNA、1dpfを示し(側面画像);パネルCは野生型、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルDはVEGF−mRNA、、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルEは野生型、1dpfを示し(背面画像);そしてパネルFはVEGF−mRNA、1dpfを示す(背面画像)。
【図15】Gタンパク質γ2で調節されるインビボのVEGFシグナル伝達経路を示す。(A−C)vegfmRNA(20ng/μl)過発現が、ゼブラフィッシュ胚における軸血管系および体節間血管におけるflk1転写物のレベルを増加できる(図13Aおよび13DにおけるWT対照に比較して)。(D−F)vegfmRNA過発現と、それに続くGタンパク質(gng2−MO、100μM)の標的化ノックダウンは、背側大動脈からの体節間血管の発芽を特異的に抑制し、そして驚くべきことに、卵黄の総主静脈は完全に抑制された(F,矢印)。(G−H)vegfmRNAの過発現は、WT対照(G)に比較して、抗ホスホPLCγ1抗体(H,矢印)により検出されるように、PLCγ1を活性化することができる。(I)gng2−MOスプライシングモルホリノを用いるgng2のノックダウンは、PLCγ1のvegf活性化を特異的に抑制した(I,矢印)。(J−K)またvegfmRNA過発現は、WT対照(J)に較べて、抗ホスホAKT抗体によって検出されるようにAKTを活性化できる(K,矢印)。(L)gng2のノックダウンはAKTのvegf活性化を特異的に抑制した(L,矢印)。vegfmRNA(20ng/μl)およびgng2−MOスプライシングモルホリノ(100μM)が1細胞期の胚に約1nl容量において注入され、続いて1dpfにおいて全載免役組織化学的染色が実施された。WT対照(G)および(J)、vegfmRNA過発現(A−C,H−K)、およびvegfmRNAとgng2−MOの同時注入(D−F.I−L)。全スケールバーは100μmである。
【図16】GNG2(MO−GNG2)の抑制が、flk発現によって表されるように、VEGFシグナル伝達(MO−VEGF)をブロックすることの抗新脈管形成効果を増進することを示す。パネルAはMO−GNG2(40μM)+MO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像);パネルBはMO−GNG2(40μM)+MO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルCはMO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像);パネルDはMO−VEGF(25μM)、1dpfを示し(側面画像、拡大);パネルEは野生型、1dpfを示し(側面画像);そしてパネルFはMO−GNG2(40μM)、1dpfを示す(側面画像)。
【図17】新脈管形成の間のVEGFシグナル伝達におけるGタンパク質の必須機能のモデルを示す。α、βおよびγ2サブユニットからなるヘテロ三量体Gタンパク質が、VEGFシグナル伝達経路におけるPLCγ1およびAKTの活性化のために必須であることが仮定される。
【図18】インビトロの細胞溶解物アッセイによって検出されるgng2−ATGモルホリノによる翻訳ブロッキングを示す。(A)V5−6Xヒスチジンエピトープに融合された、gng2オープン読み枠のATG開始コドンにまたがる5’UTRに対して標的化された翻訳ブロッキングモルホリノ。(B)インビトロの細胞溶解物を用いるgng2−ATGモルホリノによるgng2翻訳の用量依存性抑制。5塩基ミスマッチの対照モルホリノによる抑制なし。抗V5抗体がgng2−V5融合タンパク質のインビトロ翻訳を検出するために使用された。(C)1dpfにおけるWT対照ゼブラフィッシュ胚。(D)1dpfにおけるgng2−ATG−MOノックダウン胚。全スケールバーは100μmである(C−D)。
【図19】ゼブラフィッシュの胚における血流の映像からの静止画を示す。gng2の機能喪失はゼブラフィッシュ胚の発生みおいて体節間の血管において血流欠如をもたらした。血管系における血液循環はゼブラフィッシュ胚における血管発生の機能的アッセイとして追跡された。gng2に対する種々のモルホリノが1細胞期のゼブラフィッシュ胚中に微量注入された。背側の大動脈および主静脈においては血管循環があるけれども、ノックダウン胚が体節間血管への血流の減少または不足を示した場合は、新脈管形成欠如の第1の形態学的兆候が約3dpfにおいて検出された。体節間血管は、背側の大動脈および主静脈からの発芽によって発達し、このプロセスは生理学的および病理生理学的プロセスにおける新脈管形成に類似するので、それらは特に興味がある。映画S1−S4は拡大された胴領域である。全スケールバーは100μmである。パネルAは、3dpfにおけるWT対照ゼブラフィッシュ胚における血液循環を示す(この場合、血液は体節間血管中を流れる)。パネルBは、3dpfにおけるgng2−MOスプライシングノックダウン胚における血液流動を示す(背側大動脈および主静脈における血液流動を示すが、体節間血管への流動は遮断または低下される);パネルCは、3dpfにおけるgng2−ATG−MO翻訳ブロッキングモルホリノノックダウン胚における血液流動を示す(背側大動脈および主静脈における血液流動を示すが、体節間血管への流動は遮断または低下される);パネルDは、3dpfにおける5塩基ミスマッチ対照モルホリノ(5−ミスマッチ−MO)ノックダウン胚における血液循環を示す(体節間血管中の正常な血液流動を示す)。
【図20】E9.5期の前脳、中脳、後脳、脊髄および発生中の血管系におけるマウスgng2の発現を表すマウス胚のインサイチューハイブリダイゼーションを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号:1および
(b)配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている配列:
からなるポリヌクレオチドを含んでなる単離された発現ベクター。
【請求項2】
請求項1の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項3】
配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに高い親和力により特異的に結合するが、配列番号:4または配列番号:5のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドには高い親和力で結合しない抗体。
【請求項4】
抗体がモノクローナルである、請求項3の抗体。
【請求項5】
抗体がポリクローナルである、請求項3の抗体。
【請求項6】
ゼブラフィッシュGNG2の発現のために適当な条件下で請求項2の宿主細胞を培養し、そして該GNG2を単離することを含んでなる、ゼブラフィッシュGNG2の生産方法。
【請求項7】
ゼブラフィッシュGNG2をコードしている核酸配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチドおよび製薬学的に許容され得る担体を含んでなる、治療学的組成物。
【請求項8】
核酸配列が配列番号:2のポリペプチドをコードしている、請求項7の治療学的組成物。
【請求項9】
請求項3の抗体および製薬学的に許容され得る担体を含んでなる治療学的組成物。
【請求項10】
配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドおよび製薬学的に許容され得る担体を含んでなる治療学的組成物。
【請求項11】
新脈管形成を抑制するのに十分な量において、GNG2の発現を抑制するポリヌクレオチドを、新脈管形成に関連する疾病の処置を必要とする患者に投与することを含んでなる、新脈管形成に関連する疾病の処置方法。
【請求項12】
新脈管形成に関連する疾病が、新脈管形成依存性がん;良性腫瘍;リウマチ様関節炎;乾癬;眼の新脈管形成疾患;オスラー−ウェーバー(Osler−Webber)症候群;心筋新脈管形成;プラーク新生新脈管形成;毛細血管拡張症;血友病性関節;線維性血管腫;創傷肉芽;腸癒着、アテローム性動脈硬化症、強皮症、肥大瘢痕、ネコ掻爬疾患およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)潰瘍からなる群から選ばれる、請求項11の方法。
【請求項13】
新脈管形成に関連する疾病が新脈管形成依存性がんである、請求項11の方法。
【請求項14】
新脈管形成に関連する疾病が新脈管形成依存性腫瘍であり、そして該ポリヌクレオチドが腫瘍の退行を惹起するのに十分な量において投与される、請求項11の方法。
【請求項15】
GNG2ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの有効量を動物に投与することを含んでなる、血管形成の促進を必要とする動物における新脈管形成の促進方法。
【請求項16】
GNG2ポリペプチドが、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5および配列番号:6からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項15の方法。
【請求項17】
GNG2ポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸配列を含む、請求項15の方法。
【請求項18】
GNG2の発現を抑制する第1のポリヌクレオチドおよびVEGFの発現を抑制する第2のポリヌクレオチドを、新脈管形成に関連する疾病の処置を必要とする患者に投与することを含んでなる新脈管形成に関連する疾病の処置方法であって、該第1のポリヌクレオチドおよび該第2のポリヌクレオチドが新脈管形成を抑制するのに十分な量において提供される、方法。
【請求項19】
該第1のポリヌクレオチドが、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:12およびそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる核酸配列を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
該第2のポリヌクレオチドが、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:55およびそれらの組み合わせ物からなる群から選ばれる核酸配列を含む、請求項18の方法。
【請求項21】
新脈管形成に関連する疾病が新脈管形成依存性がんである、請求項18の方法。
【請求項22】
GNG2の発現または機能を抑制する第1の化合物およびVEGFの発現または機能を抑制する第2の化合物を、新脈管形成依存性腫瘍の処置を必要とする患者に投与することを含んでなるそのような腫瘍を有する患者の処置方法であって、該第1の化合物および該第2の化合物が腫瘍の退行を惹起するのに十分な量において提供される、方法。
【請求項23】
GNG2ポリペプチドをコードしている第1のポリヌクレオチドの有効量およびVEGFポリペプチドをコードしている第2のポリヌクレオチドの有効量を動物に投与することを含んでなる、血管形成の促進を必要とする動物における新脈管形成の促進方法。
【請求項24】
GNG2ポリペプチドが、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5および配列番号:6からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
VEGFポリペプチドが、配列番号:36、配列番号:38、配列番号;40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50および配列番号:52からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項26】
GNG2ポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸配列を含み、そして該VEGFポリペプチドが、配列番号:36、配列番号:38、配列番号;40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50および配列番号:52のアミノ酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項27】
第2の化合物がVEGFに特異的に結合する抗体である、請求項22の方法。
【請求項28】
GNG2の機能を抑制する第1の化合物およびVEGFの機能を抑制する第2の化合物を、新脈管形成に関連する疾病の処置を必要とする患者に投与することを含んでなる新脈管形成に関連する疾病の処置方法であって、該第1の化合物および該第2化合物が新脈管形成を抑制するのに十分な量において提供される、方法。
【請求項29】
該第2の化合物がVEGFに特異的に結合する抗体である、請求項28の方法。
【請求項30】
試験化合物をGNG2ポリペプチドと接触させ、そして該試験化合物がGNG2の活性を抑制するか否かを決定することを含んでなる、GNG2活性を抑制する化合物の同定方法であって、GNG2の活性を抑制する化合物がGNG2のアンタゴニストとして同定される、方法。
【請求項31】
GNG2の生物学的活性が、GNG2に対する該試験化合物の結合によって測定される、請求項30の方法。
【請求項32】
GNG2の生物学的活性が、βサブユニットに対するGNG2の結合の抑制によって測定される、請求項30の方法。
【請求項33】
GNG2の生物学的活性が、モデル系における新脈管形成の抑制によって測定される、請求項30の方法。
【請求項34】
該モデル系がゼブラフィッシュ発生系である、請求項33の方法。
【請求項35】
該モデル系がトランスジェニック動物系である、請求項33の方法。
【請求項36】
該モデル系がインビトロ細胞系である、請求項33の方法。
【請求項37】
GNG2の生物学的機能を抑制する細胞透過性ペプチドの有効量を細胞に投与することを含んでなる、新脈管形成を抑制する方法。
【請求項38】
VEGFの発現または生物学的機能を抑制する化合物の投与をさらに含む、請求項37の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−525050(P2008−525050A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549595(P2007−549595)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/047288
【国際公開番号】WO2006/071949
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507220682)
【Fターム(参考)】