説明

ゼラチン含有食品及びカプセル体

【課題】従来品に比して見た目や食感に優れたグミ類等のゼラチン含有食品やカプセル製品を提供する。
【解決手段】グミ1は、ゼラチンにて成形されたグミ原料2中にシームレスカプセル3を分散させた形態となっている。グミ原料2は、ゼラチンに液糖や果汁、香料、色素などを添加したものであり、加熱溶解させたゼラチンに砂糖等を添加させて形成する。グミ1は、グミ原料2中にシームレスカプセル3を添加し、それを型内に流し込み、冷却固化させて形成する。シームレスカプセル3は、糖類や果汁、香料、色素などを外皮膜内に封入した微小シームレスカプセルであり、外皮膜は、溶融状態のグミ原料2中に添加可能なように、耐熱性の物質にて形成されている。シームレスカプセル3の直径は約0.3〜1.5mm程度に形成されており、マイクロカプセルよりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる成分や性質、効能を有する物質を内封可能なシームレスカプセルを含んだゼラチン含有食品及びカプセル体に関し、特に、直径0.3〜1.5mm程度の微小シームレスカプセルにて形成した核を多数含有したゼラチン含有食品及びカプセル体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゼラチンや寒天などを用いた食品の一種として、粉糖や液糖に果汁や香料などを添加し、それをゼラチンや寒天、こんにゃく、カラギーナン等で固めたグミやゼリー、ソフトキャンディ等のグミ類が多く出回っている。このようなグミ類は、多彩な色感や形状、噛み応えのある食感などに人気がある一方、ゼラチンを使用したグミ類では、周囲温度により表面が融解して製品同士が付着してしまう場合がある。このため、従来のグミ類では、表面に植物油コーティングを施したり、特許文献1のように、グミ表面に所定の処理を施した後、顆粒やゼラチンカプセルを付着させたりする対策が採られている。
【0003】
また、グミ類の風味や食感、効能などを調整すべく、グミ内に顆粒状の材料を添加することも広く行われている。例えば、特許文献2には、血中コルチゾール濃度を低下させる食品組成物を添加したグミが、特許文献3には、香料等が還元パラチノースに担持された食用顆粒状材料を添加されたグミキャンディが記載されている。この場合、特許文献3には、従来技術として、香料等を包含させたマイクロカプセルを添加した食品が例示されており、そこでは、マイクロカプセルは、香料の立ち上がりが早いが、その性質を調整することは困難であり、経済的にも不利とされている。
【0004】
一方、医薬品や食品、機能性食品、健康食品などの分野では、薬剤や香料、香辛料等の充填物質を、ゼラチンや寒天等を含む皮膜によって被覆したシームレスカプセルが広く用いられている。このようなシームレスカプセルには、単一の充填物質を被覆したものの他、異なる成分等よりなる核を1個または複数個封入したものも存在しており、例えば、特許文献4には、軟カプセルの内部にさらに軟カプセルを内包させた多重軟カプセルが記載されている。また、特許文献5には、カプセル内に、成分の異なる充填物質からなる複数の核を独立密封したシームレスカプセルが記載されている。さらに、特許文献6には、水にも油にも難溶な有効成分を油中に懸濁させた内封液を、親水性の外皮にて内封したシームレスカプセルが記載されている。これらのシームレスカプセルは、特許文献4〜6に示されているように、多重ノズルを用いたいわゆる滴下法によって製造される。
【特許文献1】特開2003-79317号公報
【特許文献2】特開平10-42790号公報
【特許文献3】特開平7-241174号公報
【特許文献4】特開昭59-131355号公報
【特許文献5】特開昭61-151119号公報
【特許文献6】特開平9-155183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のようなグミ類やシームレスカプセルでは、顆粒やゼラチンカプセルを付着したり、添加したりしただけでは、見た目や食感、風味などが従来の製品と余り変化がなく、商品として従来品との差別化が十分に図れないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、従来品に比して見た目や食感に優れたグミ類等のゼラチン含有食品やカプセル製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のゼラチン含有食品は、ゼラチンを含有する原料基材中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したことを特徴とする。この場合、前記ゼラチン含有食品がグミや、ゼリー、ソフトキャンディなどのグミ類であっても良い。
【0008】
本発明のゼラチン含有食品にあっては、マイクロカプセルに比して大径のシームレスカプセルが包含されているため、それを噛んだときにカプセルの存在をはっきりと認識でき、プチプチとした食感が楽しめる。また、カプセル内の封入物も多いため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きい。さらに、外観上も、シームレスカプセルが食品内にて浮かんでいるような形態にもできるため、見た目が良く、意匠的にも優れた美しい食品を提供できる。加えて、シームレスカプセルは、マイクロカプセルに比して外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くでき、食品内でカプセルが潰れにくく、その中身も漏れ出しにくい。
【0009】
本発明のカプセル体は、ゼラチンを含有する外皮内に所定の内封物質を封入してなるカプセル体であって、前記外皮中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したことを特徴とする。
【0010】
本発明のカプセル体にあっては、外皮に微小シームレスカプセルを多数存在させることができ、内封物質とは異なる成分や性質、効能を有する物質を外皮中に包含させることが可能となる。その際、シームレスカプセル内の物質は外皮中に個別に保持されるため、内封物質と融和することがなく、異なる複数種類の物質を各々独立した核としてカプセル内に封入できる。さらに、シームレスカプセルは、外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くでき、外皮内でカプセルが潰れにくく、その中身も漏れ出しにくい。加えて、外皮中に散在するシームレスカプセルの色調変化等により、様々な外観を持つカプセルを作成できる。また、カプセル体を噛んだときにシームレスカプセルの存在をはっきりと認識でき、プチプチとした食感が楽しめる。さらに、カプセル内の封入物も多いため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きい。
【0011】
前記カプセル体は、外皮用シート内に前記内封物質を封入して成形したソフトカプセルであっても良く、この場合、ゼラチンを含有する原料基材中に前記微小シームレスカプセルを添加して前記外皮用シートを形成しても良い。さらに、前記カプセル体は、複層の液滴を硬化液中に吐出して成形したシームレスカプセルであっても良く、この場合、前記液滴を、前記内封物質を含む内層液と、ゼラチンを含有する原料基材中に前記微小シームレスカプセルを添加した外層液とを備えた構成としても良い。
【0012】
一方、前記カプセル体において、前記微小シームレスカプセルと前記外層液の比重が0.95〜1.35としても良い。また、前記微小シームレスカプセルの前記外皮膜に、前記外皮と少なくとも1種類以上の共通成分を配合しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゼラチン含有食品によれば、ゼラチンを含有する原料基材中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したので、食品中に、マイクロカプセルに比して大径のシームレスカプセルが包含されることとなり、食品を噛んだときにシームレスカプセルの存在をはっきりと認識でき、食感の向上が図られる。また、カプセル内の封入物も多くできるため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きく、この点においても食感の向上が図られる。さらに、食品内にシームレスカプセルが内封されるため、見た目が良く、意匠的にも優れた美しい食品を提供することが可能となる。加えて、シームレスカプセルは、マイクロカプセルに比して外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くでき、食品内でカプセルが潰れにくくなり、シームレスカプセルによる食感や風味、外観が維持し易く、消費者の元に渡るまで製品の仕様や特徴を確実に保持することが可能となる。このため、従来のゼラチン含有食品に比して、食感や風味、外観等を向上させることができ、従来製品に対し差別化を図ることが可能となる。
【0014】
本発明のカプセル体によれば、ゼラチンを含有する外皮内に所定の内封物質を封入してなるカプセル体にて、前記外皮中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したので、外皮にシームレスカプセルを多数存在させることができ、内封物質とは異なる成分や性質、効能を有する物質を外皮中に包含させることが可能となる。また、シームレスカプセルは、外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くでき、外皮内でカプセルが潰れにくくなり、シームレスカプセルによる食感や風味、外観が維持し易く、消費者の元に渡るまで製品の仕様や特徴を確実に保持することが可能となる。さらに、カプセル体の外皮内にシームレスカプセルが内封されるため、見た目が良く、意匠的にも優れた美しいカプセル体を提供することが可能となる。加えて、カプセル体を噛んだときにシームレスカプセルの存在をはっきりと認識でき、食感の向上が図られる。また、カプセル内の封入物も多くできるため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きく、この点においても食感の向上が図られる。このため、従来のカプセル体に比して、用法を拡大できると共に、食感、風味、外観等を向上させることができ、従来製品に対し差別化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1であるグミの外観を示す説明図、図2は、図1のグミの製造工程を示す説明図である。本発明によるグミ(ゼラチン含有食品)1は、ゼラチンにて成形されたグミ原料(原料基材)2中に微小なシームレスカプセル3を分散させた形態となっている。グミ原料2は、ゼラチンに液糖や果汁、香料、色素などを添加したものであり、加熱溶解させたゼラチンに砂糖等を添加して形成する。図2(a)に示すように、グミ1は、加熱溶解されたグミ原料2中にシームレスカプセル3を添加し、それを成形型4内に流し込み(図2(b))、冷却固化させることにより形成される。
【0017】
グミ1内に含まれるシームレスカプセル3は、糖類や果汁、香料、色素などの充填物質を外皮膜内に封入した微小シームレスカプセルである。このシームレスカプセル3の外皮膜は、溶融状態のグミ原料2中に添加可能なように、耐熱性の物質(例えば、寒天、ジェランガム、カラギーナン等)にて形成されている。シームレスカプセル3の平均粒子径は1mm程度(好ましくは、0.3mm〜1.5mm)に形成されており、マイクロカプセル(通常3μm程度〜50μm程度)よりも約10倍〜100倍程度大きくなっている。また、その製造方法も、マイクロカプセルが乳化重合などの化学的方法であるのに対し、シームレスカプセル3は、ゾル−ゲル変化による物理的方法となっており、外皮膜厚も適宜調整可能である。
【0018】
このようなグミ1は、マイクロカプセルに比して大径のシームレスカプセル3が包含されているため、マイクロカプセルの場合と異なり、グミを噛んだときにカプセルの存在をはっきりと認識できる。このため、グミ1を噛むと、シームレスカプセル3を潰すプチプチとした食感が楽しめ、しかも、カプセル内の封入物も多いため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きい。また、外観上も、シームレスカプセル3がグミ1内に散在し、粒々が浮かんでいるように見えるため、見た目が良く、意匠的にも優れた美しいグミとなる。特に、シームレスカプセル3の色彩を多色化したり、直径を変化させたりすることにより、多彩な外観を演出することができ、従来製品に対し、食感のみならず、外観上でも差別化を図ることができる。
【0019】
さらに、シームレスカプセル3は、マイクロカプセルに比して外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くできる。このため、グミ内でカプセルが潰れにくく、その中身も漏れ出しにくい。従って、シームレスカプセル3による食感や風味、外観が維持し易く、消費者の元に渡るまで製品の仕様や特徴を確実に保持することが可能となる。
【実施例2】
【0020】
次に、本発明の実施例2であるソフトカプセルについて説明する。図3は、その外観を示す説明図、図4は、図3のソフトカプセルの製造工程を示す説明図である。本発明によるソフトカプセル(カプセル体)11は、ビタミン等の薬剤や香料、香辛料、ミネラル、エキス類などの内封物質を含んだ芯液(内層液)12を、ゼラチンの外皮13にて内封した形態となっている。
【0021】
ソフトカプセル11は、長径8mm×短径6mm程度のラグビーボール状の形態となっており、外皮13中には、実施例1のシームレスカプセル3と同様の微小なシームレスカプセル14(以下、微小カプセル14略記する)が多数散在している。この場合、微小カプセル14と外層液(ゾル状態の外皮13)の比重は0.95〜1.35が好ましい。また、微小カプセル14の外皮膜には、外皮13と同一の成分が一種類以上含まれていることが好ましい。
【0022】
外皮13は、微小カプセル14を多数含んだゼラチンシート(外皮用シート)15にて形成される。ゼラチンシート15は、ゼラチンを原料基材としたシート原材料16から形成され、図4(a)に示すように、ここではまず、シート原材料16を加熱溶解し、そこに耐熱性の微小カプセル14を添加する。その後、溶融状態のシート原材料16を型内に流し込み、シート状に冷却固化させる(図4(b))。これにより、微小カプセル14を多数含んだゼラチンシート15が形成される。
【0023】
ゼラチンシート15は、図4(c)に示したカプセル成形装置17に供給され、ソフトカプセル11が形成される。カプセル成形装置17には、一対のダイロール18が設けられており、左右のダイロール18の間には2枚のゼラチンシート15が供給される。ダイロール18の上方には、図示しない液タンクに接続された芯液供給ポンプ19が設置されている。カプセル成形装置17では、2枚のゼラチンシート15を一対のダイロール18に供給しつつ、シート間にポンプ19から芯液12を供給することにより、ソフトカプセル11が形成される。
【0024】
ダイロール18の表面にはディンプル状の凹部18aが形成されており、ダイロール18の回転により、ゼラチンシート15が略円形に打ち抜かれる。また、シート打ち抜きと同時に、打ち抜かれたゼラチンシート15の間に、ポンプ19より芯液12が充填される。芯液12が規定量に達し、ゼラチンシート15が加熱されると、両シートがダイロール18の圧力により圧着される。その後、ダイロール18の下方に設置された、打ち抜きネット20により、ゼラチンシート15からカプセル部分が分離され、ソフトカプセル11が形成される。
【0025】
このようなソフトカプセル11は、外皮13に微小カプセル14が多数存在する形となる。このため、外皮13中に、芯液12とは異なる成分や性質、効能を有する物質を包含させることができる。従って、異なる複数種類の物質を同一カプセル内に包含させることができ、用法を拡大することが可能となる。また、その際、微小カプセル14内の物質は外皮13中に個別に保持されるため、芯液12と融和することがなく、異なる複数種類の物質を各々独立した核としてカプセル内に封入することが可能となる。さらに、微小カプセル14は、外皮膜厚を大きくできるため、その分、カプセル強度を高くできる。従って、外皮13内でカプセルが潰れにくく、消費者の元に渡るまで製品の仕様や特徴を確実に保持することができる。
【0026】
さらに、当該ソフトカプセル11では、外皮13中に散在する微小カプセル14の色調を変えたり、色自体を変えて多色化したりすることもできる。このため、様々な外観を持つカプセル(例えば、図3のように2色(赤や青など)の粒々が浮かぶカプセルや、水玉模様状のカプセルなど)を作成でき、見た目が良く、意匠的にも優れた美しいカプセルを容易に製造することも可能である。
【0027】
加えて、ソフトカプセル11を菓子等の食品として供する場合、ソフトカプセル11を噛んだときに微小カプセル14の存在をはっきりと認識できる。このため、ソフトカプセル11を噛むと、微小カプセル14を潰すプチプチとした食感が楽しめ、しかも、カプセル内の封入物も多いため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きい。このため、多彩な外観のみならず、食感の上でも従来のソフトカプセルと差別化を図ることができる。
【実施例3】
【0028】
さらに、本発明の実施例3であるシームレスカプセルについて説明する。図5は、本発明の実施例3であるシームレスカプセルの外観を示す説明図、図6は、図5のシームレスカプセルを製造するためのシームレスカプセル製造装置の構成を示す説明図である。図5に示すように、実施例3のシームレスカプセル(カプセル体)SCは、ビタミン等の薬剤や香料、香辛料、ミネラル、エキス類などの内封物質を含んだ芯液(内層液)21を外皮29内に封入した一般的な構成となっているが、従来のシームレスカプセルとは異なり、外皮29中に微小なシームレスカプセルからなる微小カプセル51が多数含まれている。なお、微小カプセル51としては、実施例1のシームレスカプセル3と同様のものが使用される。
【0029】
図6のシームレスカプセル製造装置は、特許文献6と同様に、多重構造のノズル24を有しており、このノズル24から流路管31内に液滴を吐出してシームレスカプセルSCを製造する。当該シームレスカプセル製造装置では、外皮液(外層液)25は、外皮液供給装置22から外皮液供給管23を介してノズル24に供給される。外皮液供給装置22内には外皮液25が貯留されており、外皮液25は、カプセルの製造状況に応じて適宜補充される。外皮29内に封入される芯液21は、ギヤポンプ等を用いた芯液供給ポンプ26から供給される。芯液供給ポンプ26は、芯液21が貯留された芯液用タンク27と接続されている。芯液21は、芯液供給ポンプ26によって、芯液用タンク27から芯液供給管28を介してノズル24に供給される。
【0030】
流路管31の上端入口部には、硬化用液30の流入部31Aが設けられている。流入部31Aには、ポンプ42より管路43を介して硬化用液30が供給される。当該シームレスカプセル製造装置は液中ノズル式となっており、流入部31Aの入口部44内にはノズル24が挿入設置されている。ノズル24からは、カプセル形成用液体である芯液21と外皮液25が吐出される。ノズル24には加振装置35により振動が付与されており、吐出された液体は振動により適宜切断され、外皮液25が芯液21の全周囲を被覆した多層液滴45(以下、液滴45と略記する)を形成する。そして、この液滴45が硬化用液30内を移動しつつ冷却硬化され、シームレスカプセルSCが形成される。
【0031】
流路管31は曲折形状の筒体として形成され、略J字形の流入部31Aと、流入部31Aと入れ子式に接合された逆J字形の流出部31Bとから構成されている。流入部31Aと流出部31Bは、嵌合部31Cにて密封状態で嵌合固定されている。なお、嵌合部31Cにおいて流入部31Aと流出部31Bを互いに上下方向に相対移動可能に接合しても良い。これにより、流入部31Aの液面と流出部31Bの液面との高さの差Δhが調節可能となり、流路管31内における硬化用液30の流速を調節できる。
【0032】
流入部31Aの上端部には、ノズル24に臨んで円筒状の入口部44が設けられている。流出部31Bの出口端下方には、略漏斗形状の分離器32が配設されている。分離器32内には、シームレスカプセルSCは通過させず、かつ硬化用液30のみを通過させるメッシュ33が張設されている。この分離器32により、流路管31から一緒に流出したシームレスカプセルSCと硬化用液30が分離される。分離器32にてシームレスカプセルSCから分離された硬化用液30は、下方の分離タンク34の中に回収される。分離タンク34内の硬化用液30は、ポンプ36により管路37を経て冷却タンク38に圧送される。硬化用液30は、冷却タンク38内にて冷却器41により所定の温度に冷却される。冷却タンク38内の硬化用液30は、ポンプ42によって流路管31に戻される。
【0033】
ここで、当該シームレスカプセル製造装置では、外皮液25として、微小カプセル51を含んだカプセル分散液が使用される。微小カプセル51は、ビタミン等の薬剤や、香料、香辛料、ミネラル、エキス類などの充填物質をゼラチンの外皮膜内に封入した微小なシームレスカプセルであり、実施例1のシームレスカプセル3と同様のものが使用される。この場合も、微小カプセル51とゾル状態の外層液25の比重は0.95〜1.35が好ましく、微小カプセル51の外皮膜には、外皮29と同一の成分が一種類以上含まれていることが好ましい。
【0034】
外皮液25には、ゼラチンの他、寒天等の海藻由来多糖類、ペクチン等の植物系物質、キサンタンガム等の微生物由来物質、メチルセルロース等の繊維系物質、澱粉加水分解物などを原料基材として使用することができ、これは、微小カプセル51の外皮膜も同様である。本実施例では、外皮液25にゼラチンを使用しており、図6の装置では、外皮液25を溶液状態でノズル24に供給するため、外皮液供給管23の外側に加熱器が装着されている。なお、外皮液25には、可塑剤として、グリセリンやソルビット、エチレングリコール等の水溶性多価アルコールや、その水溶性誘導体を含ませても良い。
【0035】
図7は、外皮液25をノズル24に供給するための外皮液供給装置22の構成を示す説明図である。前述のような外皮液25は、その中に微小カプセル51を含んでいるため、通常使用されるギヤポンプやスクリューフィーダ型のスネークポンプでは、内部にカプセルが詰まってしまい、外皮液25をノズル24に安定供給することができない。そこで、本発明者は、図7のような外皮液供給装置22を考案し、これにより、カプセル詰まりなく外皮液25を安定供給することが可能となった。
【0036】
図7に示すように、外皮液供給装置22は、フラスコ状の液容器52にエア供給管(第1管路)53と外皮液供給管(第2管路)23を取り付けた構成となっている。液容器52の上端には、容器を密封するための封止栓54が取り付けられており、エア供給管53と外皮液供給管23はこの封止栓54に気密状態で固定されている。エア供給管53は、封止栓54内を通って液容器52内に延び、外皮液25の液面より上方の空間に開口している。エア供給管53は、エアポンプ55と接続されており、エアポンプ55からはエア供給管53を介して液容器52内に圧縮空気を供給できるようになっている。一方、外皮液供給管23は、封止栓54から外皮液25内まで延びており、その一端側は外皮液25内にて開口している。外皮液供給管23の他端側は、ノズル24に接続されている。
【0037】
液容器52内には、微小カプセル51が含まれた外皮液25が貯留されており、外皮液25は、カプセル製造状況に応じて適宜補充される。なお、液容器52に、外皮液25を補充供給する芯液補充管を設けても良く、その場合、皮膜液補充管は、例えば、封止栓54や液容器52の側面や底面等に、液容器52内の気密性を保持可能な形で設置される。また、液容器52の底面には、撹拌部材として、マグネティックスターラ56が配されている。マグネティックスターラ56は、回転電磁石を有する駆動ユニット(図示せず)によって、容器外部から回転駆動される。これにより、外皮液25は常時撹拌され、微小カプセル51が外皮液25中に均等に分散される。
【0038】
このようなシームレスカプセル製造装置では、次のようにしてシームレスカプセルが製造される。まず、ノズル24に対し芯液21と外皮液25を供給する。前述のように、芯液21は芯液供給ポンプ26から芯液供給管28を介して、また、外皮液25は外皮液供給装置22から外皮液供給管23を介してノズル24に供給される。その際、外皮液供給装置22には、エアポンプ55から圧縮空気が供給され、その圧力によって外皮液25がノズル24に圧送される。すなわち、エアポンプ55から液容器52内に圧縮空気が供給されると、エア供給管53から液容器52の上方空間に圧縮空気が流入し、外皮液25の液面がその圧力を受ける。この圧力により、外皮液25中の外皮液供給管23内に外皮液25が押し出され、外皮液供給管23を介してノズル24側に供給される。なお、外皮液供給管23の内径(4mm程度)は、微小カプセル51の外径(1mm程度)よりもかなり大きいため、管内にカプセルが詰まることはない。
【0039】
ノズル24に供給された芯液21と外皮液25はノズル先端部から噴出し、流路管31内の硬化用液30中に球形の液滴45が形成される。この液滴45は、流路管31内にて冷却され、外皮液25が硬化して直径6mm程度のシームレスカプセルSCとなる。その後、シームレスカプセルSCは、流出部31Bの出口端から分離器32のメッシュ33の上に硬化用液30と共に流下する。シームレスカプセルSCはメッシュ33で硬化用液30から分離され、適当な量に達した時にバッチ式に図示しない製品回収容器の中に回収される。一方、硬化用液30はメッシュ33を通過して分離タンク34の中に回収される。
【0040】
このようにして形成されたシームレスカプセルSCは、ゼラチン等の外皮液25が硬化した外皮中に芯液21が封入されたシームレスカプセルとなる。この場合、外皮液25中には微小カプセル51が多数含まれており、シームレスカプセルSCは、その外皮中に微小カプセル51の粒が多数存在する形となる。従って、本発明のシームレスカプセルSCでは、微小カプセル51内に成分や性質、効能等が異なる物質を封入しておくことにより、異なる複数種類の物質を同一カプセル内に包含させることができ、用法を拡大することが可能となる。また、その際、各物質は微小カプセル51内に個別に保持されて外皮29中に封止されるため、シームレスカプセルSC内で融和することもなく、異なる複数種類の物質を各々独立した核としてカプセル内に含有させることが可能である。
【0041】
さらに、当該シームレスカプセルSCでは、外皮29中に散在する微小カプセル51の色調を変えたり、色自体を変えて多色化したりすることもできる。このため、様々な外観を持つカプセル(例えば、図5のように2色(赤や青など)の粒々が浮かぶ透明カプセルや、水玉模様状のカプセルなど)を作成でき、見た目が良く、意匠的にも優れた美しいカプセルを容易に製造することも可能である。加えて、本発明のシームレスカプセルSCは、特殊なノズルが不要なため、図6のように既存の設備を流用でき、多大な設備投資を行うことなく製造可能である。
【0042】
さらに、シームレスカプセルSCを菓子等の食品として供する場合、シームレスカプセルSCの外皮29に微小カプセル51が含まれているため、カプセルを噛んだときに微小カプセル51の存在をはっきりと認識できる。このため、シームレスカプセルSCを噛むと、微小カプセル51を潰すプチプチとした食感が楽しめ、しかも、カプセル内の封入物も多いため、噛んだときの風味の変化や刺激も大きい。このため、多彩な外観のみならず、食感の上でも従来のソフトカプセルと差別化を図ることができる。
【0043】
また、シームレスカプセルSCでは、外皮29の乾燥収縮に伴い、外皮29中の微小カプセル51を外皮表面から突出させ、図8のように、表面に小さな突起57が多数突出した状態のシームレスカプセル58を形成することもできる。このようなシームレスカプセル58は、突起57の効果により、球状のシームレスカプセルよりも転がりにくくなる。このため、カプセルが転がって床面に落ちてしまったり、紛失してしまったりするのを防止でき、特に、処方・用量が定まった薬剤では、紛失による投与量不足などを防止することが可能となる。
【0044】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0045】
例えば、前述の実施例に示した、グミ原料2や、芯液12,21、外皮13,29の材料、微小シームレスカプセル3,14,51の内容物や外皮膜材料などは、前述の物質には限定されず、グミやソフトカプセル、シームレスカプセルの用途・機能に応じて他の物質を適宜使用することが可能である。また、ソフトカプセル11、シームレスカプセルSCの形状や大きさはあくまでも例示であり、それらの寸法は前述のものには限定されない。
【0046】
さらに、図6のシームレスカプセル製造装置では、ノズル24への液供給管23,28を、芯液用と皮膜液用の2本設けた構成としたが、内側に芯液、外側に皮膜液を流通させる二重管を用いても良い。加えて、実施例3では、外皮液供給装置22の液容器52としてフラスコ状のものを示したが、容器形状はこれには限定されず、エア供給管53と外皮液供給管23が気密状態で取り付けられる容器であれば良く、容器形状は任意である。
【0047】
また、前述の実施例では、芯液供給装置としてフラスコタイプのものについて説明したが、芯液供給装置の形態はそれには限定されず、例えば、図9のようなピストンタイプの装置を用いても良い。図9の外皮液供給装置61は、シリンジポンプと呼ばれる注射器型のポンプであり、円筒状のシリンジ容器62と、シリンジ容器62内に配された押し子63とを備えた構成となっている。シリンジ容器62は、図示しない架台に載置されており、その先端部(図中右端)62aには、外皮液供給管23が接続される。
【0048】
押し子63は、ピストン63aとロッド63bを備えており、ロッド63bの端部にはフランジ63cが設けられている。フランジ63cは、ネジ棒64に取り付けられたホルダ65に当接している。ホルダ65は、ホルダガイド66によって、軸方向に移動自在に支持されており、ネジ棒64の回転に伴って軸方向に移動する。ネジ棒64は、減速ギヤ67を介して、モータ68によって回転駆動される。
【0049】
このような外皮液供給装置61では、まず、シリンジ容器62内に、微小カプセル51を多数含んだ外皮液25を吸引し貯留する。すなわち、図示しない容器に別途貯留されている外皮液25(微小カプセル51を多数含む)内に挿入し、押し子63を引いてシリンジ容器62内に外皮液25を吸い込む。次に、外皮液25が収容されたシリンジ容器62を架台にセットし、その際、押し子63のフランジ63cをホルダ65に当接させる。シリンジ容器62をセットした後、モータ68を適宜駆動させる。モータ68が駆動されると、ネジ棒64が回転し、それに伴ってホルダガイド66が軸方向に移動してフランジ63cが押圧される。これにより、押し子63がシリンジ容器62内に押し込まれ、先端部62aから外皮液供給管23に外皮液25が押し出され、微小カプセル51と共にノズル4に供給される。
【0050】
シリンジポンプを用いた外皮液供給装置61では、吐出量は、押し子63を押す速度、すなわち、モータ68の回転数に依存する。このため、モータ回転数を制御することにより、ポンプ吐出量を自在に制御でき、流量の制御を高精度で行うことができる。但し、シリンジ容器62の体積が一般に余り大きくないため(大きいものでも200ml程度)、外皮液供給装置61は、原料が少ない場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1であるグミの外観を示す説明図である。
【図2】図1のグミの製造工程を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例2であるソフトカプセルの外観を示す説明図である。
【図4】図3のソフトカプセルの製造工程を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例3であるシームレスカプセルの外観を示す説明図である。
【図6】図5のシームレスカプセルを製造するためのシームレスカプセル製造装置の構成を示す説明図である。
【図7】皮膜液をノズルに供給するための外皮液供給装置の構成を示す説明図である。
【図8】表面に小さな突起が多数突出した状態のシームレスカプセルの外観を示す説明図である。
【図9】外皮液供給装置の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 グミ(ゼラチン含有食品)
2 グミ原料(原料基材)
3 シームレスカプセル
4 成形型
11 ソフトカプセル(カプセル体)
12 芯液
13 外皮
14 シームレスカプセル
15 ゼラチンシート
16 シート原材料
17 カプセル成形装置
18 ダイロール
18a 凹部
19 芯液供給ポンプ
20 打ち抜きネット
21 芯液(内層液)
22 外皮液供給装置
23 外皮液供給管(第2管路)
24 ノズル
25 外皮液(外層液)
26 芯液供給ポンプ
27 芯液用タンク
28 芯液供給管
29 外皮
30 硬化用液
31 流路管
31A 流入部
31B 流出部
31C 嵌合部
32 分離器
33 メッシュ
34 分離タンク
35 加振装置
36 ポンプ
37 管路
38 冷却タンク
41 冷却器
42 ポンプ
43 管路
44 入口部
45 多層液滴
51 微小カプセル
52 液容器
53 エア供給管(第1管路)
54 封止栓
55 エアポンプ
56 マグネティックスターラ
57 突起
58 シームレスカプセル(カプセル体)
61 芯液供給装置
62 シリンジ容器
62a 先端部
63 押し子
63a ピストン
63b ロッド
63c フランジ
64 ネジ棒
65 ホルダ
66 ホルダガイド
67 減速ギヤ
68 モータ
SC シームレスカプセル(カプセル体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを含有する原料基材中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したことを特徴とするゼラチン含有食品。
【請求項2】
請求項1記載のゼラチン含有食品において、前記ゼラチン含有食品がグミ類であることを特徴とするゼラチン含有食品。
【請求項3】
ゼラチンを含有する外皮内に所定の内封物質を封入してなるカプセル体であって、
前記外皮中に、外皮膜内に充填物質を封入した平均粒子径0.3mm〜1.5mmの微小シームレスカプセルを内封したことを特徴とするカプセル体。
【請求項4】
請求項3記載のカプセル体において、前記カプセル体は、外皮用シート内に前記内封物質を封入して成形したソフトカプセルであり、前記外皮用シートは、ゼラチンを含有する原料基材中に前記微小シームレスカプセルを添加して形成されることを特徴とするカプセル体。
【請求項5】
請求項3記載のカプセル体において、前記カプセル体は、複層の液滴を硬化液中に吐出して成形したシームレスカプセルであり、前記液滴は、前記内封物質を含む内層液と、ゼラチンを含有する原料基材中に前記微小シームレスカプセルを添加した外層液とを備えてなることを特徴とするカプセル体。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項に記載のカプセル体において、前記微小シームレスカプセルと前記外層液の比重が0.95〜1.35であることを特徴とするカプセル体。
【請求項7】
請求項3〜6の何れか1項に記載のカプセル体において、前記微小シームレスカプセルの前記外皮膜は、前記外皮と少なくとも1種類以上の共通成分を有することを特徴とするカプセル体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−118811(P2009−118811A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298405(P2007−298405)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【出願人】(000101651)アリメント工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】