説明

ゾル−ゲル法

本発明は、式Xm−M−(OR)n-mを有する少なくとも1つの化合物の溶液を調製し、ドーパントの溶液に添加し、該化合物を加水分解してゾルを形成し、場合により、酸化物を添加し、ゾルをゲル化し、前記液体を再循環し、かつ液体のpH値を調節して、アクアゲル中のドーパントを固定させ、ゲルを乾燥させ、かつ密度を高めてガラスを得ることから成るゾル−ゲル法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切に監視し、かつ所望する最終材料に実質的に化学的に変性した関連する液相の再循環により、アクアゲル(通常はシリカのもの)中のイオン種、特にカチオン種のコントロールと測定に本質的に基づく改善したゾル−ゲル法に関する。
【0002】
さらに本発明は、公知の最も価値のあるものの中から値を設定して限定できる、所定の特徴を有して得られるエーロゲル製品にも関し、これらはシラノールの数ならびにゲル化に先行する処理の前の加工段階の際に生じる共有結合の数を極めて慎重にコントロールすることにより達成される。
【0003】
本発明の方法は、ゾル−ゲル材料の調製の分野で多目的意味を有する;しかし、確固たる光学特性ゆえに、シリカガラスの調製で特に良好であるように思われる。従って、一例の見地からシリカガラスの調製に関して言えば、コントロールされた光学特性の変性を達成するガラスドーピングは、昔から光学材料工業の第一の目的であることは公知である。
【0004】
この分野で得られる製品は、トップクラスの企業により100年にわたり断固として行われてきた特殊化され進歩した研究の結果であり、かつ材料の立場からも光学デザイナーにとって、ただ1つの有効な任意選択である。
【0005】
サーマルガラス固化の通常の方法から得られるこれらの製品の完全なインベントリーは、通常は細かく砕かれ、かつ慎重に混合された混合物の形状である固形成分の適切な調製物の炉溶融に基づく。
【0006】
このような技術の限界は、高い溶融温度(≧2200℃)により系の粘度が下がることで、幾つかの成分が混合物から分離する傾向があることにより生じる。
【0007】
ゾル−ゲル法は、溶融法において熱力学的に好都合である。なぜならば、関連する温度が極めて低く(<1400℃)、かつ中間体の粘度が相当に高いからである。
【0008】
"デザイナー託された光空間を広げる"歴史的目的で、ドープしたガラスの製造における熱力学的な最先端を開発するために、特に屈折率、光学分散及び光学的均質性に関してゾル−ゲル化学法の慎重な考察と研究が行われてきた。
【0009】
80年代から関連文献や学術文献ならびに特許には、多くの参考文献や実施例ならびに結果が含まれている。しかし、単なるシリカガラスに対して変更した光学的性質を有するゾル−ゲルガラスの製造に関する問題は、いまも未解決のままである。最近の市場には、関連する光学特性を変更できる調製物を用いてゾル−ゲル法により製造したバルク光学ガラスは無い。ゾル−ゲル法のドーピングの問題は、まさにゾルの製造で使用されている化学にありそうである。
【0010】
複酸化物ゾルの製造では、沈殿物又は濁り形成を回避するために、一般に高い注意を払って全ての前駆体を均質に加水分解するか、又は少なくとも均質に溶解させていることが知られている。もし、これらが存在すると均質な状態のゾルを示さず、場合によっては不均質ガラスの原因にもなる。しかし複酸化物ゾルの多くの前駆体は、極めて様々な加水分解時間を有し、このことが問題になる。それというのも、これが補償処置を行うように働き、全ての前駆体を同時に溶解させてしまうからである。
【0011】
より安定な前駆体、すなわち比較的に遅い加水分解を有する前駆体の予備加水分解も使用される。極めて不安定なゾルは、必然的に短時間でゲル化することにより得られる。得られたゲル、アクアゲル又はアルコゲルは、全てのゾル成分を含有する:シリカ網目構造に共有結合により結合するか、又は単にこれらの中もしくはこれらの内側の液相中に溶解するか、又はそれらの細孔を充填する。ドープしたガラスのゾル−ゲル合成に関する限り、記載文献に挙げられた方法の大部分によれば、ゲルに溶剤交換を行うか、又は洗浄する場合に、この2つの操作は大規模なガラスを合成するゾル−ゲル法の際に義務的であるにもかかわらず、アクアゲル(又はアルコゲル中)中で元の濃度を保持しないことに注目した。簡単に証明できるが、このことは固定されていない調製物の形成を引き起こし、方法手順により変化してしまい、これにより殆ど制御不可能である;その結果、予測不能の光学特性を有する最終的なガラスならびに信頼できない製品が得られてしまう。
【0012】
これにより製造される光学ガラスに関する更に大きな問題は、ゲルからガラスへの変形が行われる熱処理の際に生じる。複酸化物ガラスの幾つかの成分が材料塊から分離し、かつ結晶化したことが観察され、かつ文献により良く支持されている[Journal of Non-Crystalline solids 145 (1992) 175-179]。それらの熱力学的利点が相応の溶融法に勝ったとしても、このことはゾル−ゲル法では生じてはならない。このような出来事は、使用した実験方法がゾル−ゲル法を確実に提供する有利な熱力学的条件を活用できないという結論に達する。
【0013】
更に、ドープしたゾル−ゲル材料の熱処理の結果として観察される全ての分離及び結晶化現象は、熱処理の際に前記材料中に存在する結合していない動く部分の簡単な仮定と一致する。
【0014】
ドープしたシリカガラスの製造における従来技術のゾル−ゲルで記載した問題の殆ど、おそらく全ては、事実上アクアゲルによる再循環に基づき、ゲル酸化物網目構造への関連カチオンの化学結合を達成した新たに開発された方法を利用することにより克服できることを出願者は発見した。
【0015】
更に、ドープしたゾル−ゲル材料の熱処理の結果として観察される全ての分離と結晶化現象は、熱処理の際に前記材料中に存在する結合していない動く部分の簡単な仮定と一致する。
【0016】
有利には光学に利用できる同じゾル−ゲルの進歩性が、核廃棄物、特に高レベル放射性液体のもののガラス固化にも同様に利用できることも出願人は認識した。これは本発明の更なる対象であり、適切な貯蔵箇所内で長期貯蔵するために該方法が特に示されている。
【0017】
基本的な方法は同じであり、かつ適切な条件下での適切なゾル及び/又は元の液体廃棄物のゲル化、適切なアクアゲルの液相中に存在するイオン種のコントロールと測定、適切に監視し、かつ実質的に変性した液相のアクアゲルへの再循環、アクアゲル自体の中で関心のあるイオンの固定化ならびにドープしたゲルの最終的処理、公知技術を利用するモノリシック体中でのそのガラス固化、モノリシックなエーロゲルの高密度化からエーロゲル断片及び/又はキセロゲル断片への焼結、他のガラスの不在又はその存在で、適切に粉砕かつ混合した固形断片として、又は相対的に流体の液体溶融物としてのエーロゲル及び/又はキセロゲル断片の溶融までを含む。
【0018】
明確にするために、ここで本特許明細書の内容を以下に定義する:
− エーロゲルとは、超臨界又は殆ど超臨界に等しい条件下での液相の抽出によりウェットゲルから得られる多孔質のドライゲルである;
− キセロゲルとは、大気圧又は超臨界よりも相当に低い圧力で、液相の蒸発により、ウェットゲルから得られる多孔質のドライゲルである;
− モノリシックなエーロゲルとは、破損又は亀裂、むしろミクロな亀裂もなく、高密度化のプロセスを首尾良く行い、その材料の調製物から予測される密度の理論値にすることができるエーロゲルである;
− 融合プロセスとは、材料のモノリシック体を得るための、その溶融である;
− 焼結プロセスとは、単体、大抵の場合には多孔質のものを得るための粉末材料、一般にセラミック又は金属性、大抵の場合は結晶質の材料の熱処理である;
− 高密度化プロセスとは、粘性流により、その調製物に予測された理論密度の非晶質材料(ガラス)を生成するための非晶質、多孔質ゲルの熱処理である。
【0019】
二者択一的に、ガラス対セメントの適切な比率でドライゲルをコンクリート人工物内に封入できる。
【0020】
核廃棄物としても知られる放射性廃棄物は、更に利用できない放射性物質である。これらは、周囲や人類への損害を避けるために、あらゆる注意を払って適切に貯蔵もしくは処理されなくてはならない。
【0021】
放射性廃棄物は、固体、液体又は気体であることができ、とりわけ原子炉、研究センター及び放射性同位体の使用者により生産される。放射性廃棄物の処理とコンディショニング、特に液体の高レベル放射性廃棄物は、しばしば高度に特殊化された解決法を要する複雑な技術的問題を生じる。核燃料処理用のプラントを運転することから生じる基本的な問題の1つは、ウラン及びプルトニウムの核分裂生成物含有の大量の液体廃棄物を長期間貯蔵する必要性である。
【0022】
一般に、このような処理は適切に密閉された容器内で濃縮し、かつ引き続き放射能が安全なレベルに減退するまで濃縮した材料を貯蔵することにある。特に、使用済核燃料の再生プロセスから生じる高レベル放射性液体核廃棄物に関しては、濃縮と乾燥後の残留物は、適切な容器内に貯蔵され、かつ最後には地下廃棄保管所内に収められ、安全な放射能レベルまで減退させるのに十分に長期間貯蔵するために、厚いコンクリート壁で適切に密閉される。
【0023】
このようなプログラムに関わる問題は、汚染された塩の多くのフラクション、それらの結果として生じる水への溶解度、関連する移動性ならびに放射性同位体の拡がる高い可能性から生じる。
【0024】
この問題の対応策は、一般にガラスモノリシック体に存在する品質である高い化学安定性と十分な耐熱加工性により特徴付けられる固形モノリシック体中に、乾燥材料を固定化することである。しかし、一般に高い塩含有量はガラス固化に障害となる:固体をガラス化する通常の方法は、細かく細分した固体を十分な量の溶融ガラスへ封入することに基づく。塩含有量が最も低い場合に、長期封入の効率は最も高くなる。実際のところ、塩がガラス内に封入されたとしても、ガラスの酸化物網目構造へは化学的に相容れないままであり、かつ材料の表面上で水の侵蝕に対して弱点を作る。塩は溶解後に、ガラスの内部に向かって表面積を伸ばす多孔質網目構造を後にして、より親水性の侵蝕への道を開く。
【0025】
問題の原点は、使用済燃料処理の方法の手前にあり、これは濃無機酸中の燃料の溶解による。
【0026】
元の液体廃棄物の高い酸度は、特に蒸発工程及び/又はソーダによる連続した中和工程により部分的にコントロールされるが、しかし結果としてより汚染された固形素材を生じる。
【0027】
このような理由で、高い塩含有量は一般に障害であり、融合による通常のガラス固化からゾル−ゲルガラス固化、コンクリートやポリマー材料中への封入ならびにアスファルト中への封入まで、多くの廃棄物封入の技術に関わる。高い放射性、熱蒸気の放射性スプラッシュの形成、結晶質塩のエンクラステーションの僅かな熱伝導性は、更なる困難の原因となる。当然ながら、液体核廃棄物の長期貯蔵の問題は、幅広く解決調査に直面した。使用される方法と技術の中でも、放射性崩壊の熱効率を活用する溶液の濃縮は述べる価値がある;残念ながらこの技術が結果をもたらすまでに数年は必要であろう。他の方法も提案されたが、しかしそれらの利用は小規模又は実験的条件に制限されたままである。
【0028】
これらの中でも次のものが挙げられる:
− 放射性水を使用してコンクリートブロックを製造する:
− ゼオライト処理をして活性金属のイオンを固定し、かつ得られた生成物を連続的に焼結する;
− 乾燥するまで蒸発させ、かつガラス中に連続的に封入する;
− コンポジットエーロゲルを使用し、放射性材料の細孔中に閉じこめる;
− 比較的に低温に保持した金属るつぼ中で、乾燥するまで蒸発させる;
− 低レベル放射性又は低濃度の放射性同位体の液体核廃棄物をゾル−ゲルガラス固化する。
【0029】
このような全ての方法は、コントロールが困難な煩わしい操作、大量の生成物を上手く処理するための特別に装備された空間、その結果として高い輸送コストを暗示している。
【0030】
PCT出願WO 2005/040053の中には、ゾル−ゲル法が記載され、かつ請求されている。これには、連続した経済的操作でゲル化をコントロールするための、2つの混合不可能な液体の相互析出の正確な処置ならびに加水分解とゲル化工程の際のpHの正確な制御が含まれている。これらを液体放射性廃棄物のゲル化に利用する場合には、従来技術で記載した方法における全ての不都合を未然に防ぐことができ、廃棄物中に存在する金属カチオン、かつ特に放射性同位体から非放射性液体を分離するコストを削減できる可能性を提供できる。
【0031】
核廃棄物のガラス固化に利用するための、このような方法の限界は、ゲル中の酸化物網目構造へ元の廃棄物の関連するカチオン内容物を化学結合させるための最適条件に、液相を連続的に合わせるメカニズムの欠如である。このような手段無しに、液体廃棄物から出される様々な調製物において、全ての放射性同位体から液相の回収を達成することは難しい。このように関連するカチオンを酸化物網目構造中へ化学結合させるための最適条件に液相を連続的に合わせることは、分析的な監視と、液相の適切な変性を伴うアクアゲルによる再循環により提供され、この特許明細書の出願者により提出された。
【0032】
ゾル−ゲル法の一般的意味に関しては、ゲルという用語は著しい量の液体を含有する硬質の又は半硬質のコロイドを意味する。ゲルの粒子は、液体を効率的に固定化する三次元網目構造中に結合する:従って、ゲルは固形物質、多少なりともプラスチック(非晶質)であると考えてもよい。
【0033】
例えば、化学的理由で、粘度が増大することにより、又は溶剤の部分的蒸発によって濃度が増大するような初めの物理的理由で、コロイド分散液が変化によりゲル形成が行われることは一般に知られている;より一般的にはゾル−ゲル技法が利用され、これは酸化物がコロイド溶液又は分散液("ゾル"と称される)から出発して製造される様々な化学プロセスを意味し、このような酸化物は単体であるか、又は三次元固体の形又は支持体上の薄層の形で混合される。
【0034】
ゾル−ゲル法は、幾つかの特許刊行物の対象であり、かつ例えば次のものに記載されている:米国特許第4574063号;同第4680048号;同第4810074号;同第4961767号;同第5207814号。
【0035】
出発溶液の溶剤は、一般に水、アルコール又は水アルコール混合物の中から選択される。前駆体は金属又はメタロイド可溶塩、例えば、ニトレート、クロリド、アセテートであってよく、更に一般的に使用されるのは、一般式M(−OR)m[式中、Mは金属又はメタロイド原子であり、−ORは、アルコール基(通常は1〜4個の炭素原子を含有するアルコールからの)であり、かつnはMの原子価である]を有する化合物である。最も頻繁に使用される前駆体は、式Si(OCH34を有するテトラメトキシオルトシラン(TMOSとして公知)と、式Si(OCH2CH34を有するテトラエトキシオルトシラン(TEOSとして公知)である。
【0036】
ゾル−ゲル法の第一の工程は、下記の式のような水による前駆体の加水分解であり、前記水は溶剤であってよく、またアルコール溶液の場合には添加される。
【0037】
M(−OR)n+nH2O → M(OH)n + nROH (I)
反応は一般に低いpH値、3未満の値、有利には1〜2の値が好まれる。
【0038】
第二段階は、先に得られたM(OH)nの濃縮である。
【0039】
M(OH)n+M(OH)n → (OH)n-1 M−O−M(OH)n-1+H2O(II)
全てのM(OH)n種をカバーする上記の反応は、開始時は溶液の形であり、オープン構造を有する無機酸化物ポリマーを生成する。その多孔質は出発溶剤と反応(I)で得られたアルコールを含有する:この無機ポリマーは定義したゲルである。
【0040】
大量のガラス製造において利用するために、細孔の内側に存在する液相の抽出によりゲルを乾燥させなくてはならない。
【0041】
1つの乾燥法は、溶剤の蒸発である:これにより得られるドライゲルは"キセロゲル"と称される。蒸発の際に、多くの毛管力により溶剤が細孔壁上を移動し、これが時にはゲルを破壊するので、専門家にはキセロゲルの製造が著しく難しいことが周知である。
【0042】
ドライゲルを生成するもう1つの二者択一的な方法は、溶剤の超臨界もしくは極超臨界抽出に基づく:これにより得られるドライゲルは"エーロゲル"として知られている。極超臨界乾燥により、臨界のものよりも高い圧力と温度になるまでゲルの細孔液は適切なオートクレーブ中に入れられる。引き続き全ての液体量は、液相から超臨界液相まで通り、かつ細孔内の毛細管圧は、徐々に出発値から減少した値を通り、その結果、キセロゲル製造では典型的な蒸発により生じるメニスカス破壊張力を回避する。
【0043】
溶剤の超臨界抽出技法は、例えば、米国特許第4432956号と5395805号に記載されている。これらの主な問題は、形成された後に通常はゲルの細孔内に存在するアルコールが一般に60〜70バールよりも高い臨界圧(Pc)と250℃よりも高い臨界温度(Tc)を有することにある。これらの臨界値は、著しく耐性があり、かつ費用のかかるオートクレーブの使用を強いることになる;さらに、ゲルが支持体上で薄層の形である場合には(例えば集積回路の製造で、エーロゲルの誘電体層を1相として製造するために)、アルコールとエステルの臨界温度は高すぎ、支持体又はその上の他の材料と適合しない。
【0044】
この問題を克服する方法は、抽出する前に細孔の液体をより低い臨界定数、特に低いTcを有する液体と交換することにある。例えば、約200℃のTc値を示すペンタン又はヘキサンを使用することができる。更なる交換は、例えばアセトンのような中間生成物の液体で実施してもよく、又は一般的方法からは、ゲルの細孔溶剤は、どの乾燥作業の前でも非プロトン溶媒で直接に交換される。
【0045】
最後に挙げるが、重要なことは、低温の臨界抽出の任意選択である。CO2の臨界圧と臨界温度の値は、それぞれ72.9atmと31℃である。これらの値では、超臨界抽出を室温で実施してもよい。
【0046】
アクアゲルの超臨界抽出を何故室温で行わなくてはならないかという理由は、引き続く熱処理(高密度化)の際に、核形成と結晶化を導くことになる1つ以上の成分の分離を複酸化物のアクアゲル中で妨げるためである。
【0047】
温度が液相と共に強力なコファクターである場合には、報告された利点は、超臨界乾燥の際に分離を妨げるか、又は少なくとも制限することにおいて重要である。
【0048】
明確にするために、主にシリカであるゲルの完全なガラス固化を得るのに必要な温度は、例えば結合していない分子種として移動性ドーパント成分を含有する試料に、結晶化を生じさせるような温度であることを認識しなくてはならない。例えば、アナターゼ又はルチルのような結晶質の二酸化チタンは、チタンアルコキシド含有のゾルから由来するゲルの高密度化段階で頻繁に得られるが、しかし、ドーパント核形成の範囲は乾燥条件に応じて相当に異なる:これは300℃で乾燥させたエーロゲル中で最大であり、室温で乾燥させたゲル中、特にCO2中で乾燥させたエーロゲル中で最小である。
【0049】
幾つかの他の任意選択に従い、より有利な条件で超臨界乾燥を実施することも可能である:例えば、特許明細書US 2005/0244323(発明の名称"Method for the preparation of aero-gels")によれば、同じことを臨界条件を有する液体キセノン中で行うことは、CO2で行うよりも有利である。市場調査からの示唆は、エーロゲルの実現可能な広い用途と一致する。例えば、これらは熱音響分野や触媒分野ならびにガラス又はガラスセラミックの製造における中間体を目的にすることができる;さらに、これらのエーロゲルは集積回路の製造で極めて少ない誘電率を有する絶縁層としても使用できる。
【0050】
記載した方法論によれば、ゾルを適切なモールドに注ぐことにより、又はゾルを適切な支持体上に注ぎフィルムを形成することにより、更に関心のある材料、また光ファイバー用の複合材料プレフォームのモノリスを製造することができる。この場合に、同じフォームの多くの成分の中で、屈折率の適切な差を達成するために、ベース組成物に添加される適切なドーピング剤を使用することもできる。
【0051】
ゾル−ゲル法は、例えば米国特許第5494863号又はWO 2005/040053に記載されているもののように、放射性廃棄物を回収ならびに貯蔵するためにも利用できる。これらによれば、放射性物質の流出水溶液はゲル化され、次に適切に貯蔵されている。
【0052】
上記の明細書によれば、光学ガラスについて広く記載されているケースならびに前述の利用の殆どについて、ゲル化段階は極めて重要であるように思われる。それというのも、乾燥又は場合により高密度化作業後の将来の利用、工業的使用又は簡易な貯蔵を考慮して、ゲルのミクロ構造がその中で形成され、かつ関連する組成物が同時に固まるからである。ゲル化が構造を固定し、それらの同じ機能性を生じ、かつ引き続く製品を導き出す利点を促進又は抑制するために重要であることが周知である。従って、開始したばかりの時点で、又は最終的には後で、ゲル化が加水分解段階に存在するあらゆる種に関わり、特殊な性質を最終生成物に与えること、ならびに高い濃度又は短すぎる吸収時間、又は最終的なガラス特性に寄与し損なうような他のいずれかの理由で、このような種のいずれか1つもゲル構造から放出されないことが重要である:例えば、光ファイバーのドーピング剤が挙げられるが、その欠如は修復できないほど特性を傷つけてしまい、また放射性廃棄物の場合には、ゲル網目構造から外れ出てしまうと環境に強い損害を引き起こし得る;特殊な光学ガラスの場合には、ドープした光学グレードのガラスの大量生産に関して、現在のゾル−ゲル法に影響を与える問題が強調されている。その問題は、まさに何故ゾル−ゲル技法が商品グレードの光学ガラスを製造できないかという理由である。
【0053】
特にアクアゲル液相処理の際のドーピング剤の欠如に関係する限り、特殊な光学ガラスの場合に、上記問題を回避する改善したゾル−ゲル法を実施でき、かつ所望する目的に極めて相応する組成物を有するゲルを製造できることを見出した。これは例えば、高い屈折率と低い分散のガラス(高い"アッベ"数)を得るか、又は光ファイバーコアを得るか、又は廃棄物処理の場合には全ての放射性同位体を有するガラスを得ることが予測されるあらゆるドーピング剤を含み、その結果、全ての残留放射能を液相から除去し、かつこれが環境に戻るのを妨げることができる。
【0054】
従って、本発明はプログラムされた調製物の全成分が不可逆的にアクアゲル内に確実に固定されるように、ゲル化モールド中のアクアゲル液相を注意深く監視した後に、場合によりゲル溶剤交換とゲル乾燥を実施するゾル−ゲル法に関する。
【0055】
簡単な液相再循環スキームは、図1中に例示されていて、図示は次の通りである:
1)アクアゲルドーピング反応器;
2)反応器1の内部にドープすべき列に並んだアクアゲル;
3)3つの位置スイッチャ"リサイクリング"−"サンプリング"−"オフ";
4)アウトレットバルブ;
5)耐酸性ポンプ;
6)連結部;
7)インレットバルブ;
8)頻繁に開閉する反応器フランジ。
【0056】
当然ながら、図1のスキームは、実験室規模で使用するために例示したに過ぎない。これを工業的用途に規模を大きくすることは、更に工業的なものを使用することを意味し、これはインレットの後ろに適切な混合領域(これは、種々の箇所に位置していてもよい)ならびにライン上に幾つかの分析センサー及びオートメーション(これも全体にわたってよい)を含む。放射性同位体に関わる利用の場合には、この装置は適切に遮閉され、かつ遠隔操作されるであろう。
【0057】
ゲル化成形中のアクアゲル液相の監視は、実質的に次のものから成る:
−液体をゲル化モールドから分析工程へ移し、それらの組成物を測定し、
−必要な場合には、前記液体組成物を変性して、アクアゲルの関心のあるイオン種を適切に固定化する条件を保証し、
−必要な場合には、所望の組成物に達するまで前記液体をドーピング反応器へ再循環し、
−必要な場合には、ゾル前駆体を構成する元素の適切な濃度のヒドロキシル誘導体を媒体に添加し、
−必要な場合には、更にドーピング剤を添加し、
−必要な場合には、更に分析し、かつ再循環液の化学組成物/濃度と、所望の特性を有する最終生成物との適切な相関の観点から、溶出液がゲル化処理後に適切であるという結果が出るまでアクアゲル相などに再循環する:当然ながら、このような最終材料も本発明の第二の対象であり、かつ本発明の主要な部分であり、これらは、公知の最も価値のあるものの中から値を設定して限定できる、所定の特徴を有するドープしたゲル生成物である。価値のあるドライゲルの品質を特徴付けるこのような値は、次のプロセスにより生じる:
−場合によっては10質量%を十分に越える金属の必要濃度でドライゲル中に存在する関連する金属ドーパントを分析し;
−特殊な試験条件下に、ゲルによって特に何の金属も放出されないことを示す浸出試験を行う。
【0058】
特に、本発明は次の工程:
a)式 Xm−M−(OR)n-m
[式中、Mは元素の周期系の第3、第4及び第5族のカチオンであり、
nは、カチオンの原子価であり;
mは、0、1又は2であり、
Xは、R1又はOR1であり;
RとR1は、1個から12個までの炭素原子数を有する、同種又は異種の炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの化合物の水溶液又は水アルコール溶液又は懸濁液を調製し、
b)場合により、IIA、ランタノイド及びアクチノイド系を含むIIIB族、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、IIB、ホウ素を除くIIIA族のものに続き、IVA族のゲルマニウム、スズ及び鉛まで達する全ての元素として特定された周期表74元素のセットから選択される所望の金属前駆体を加水分解可能な形で含有する、溶液の形又は可溶性の粉末としての所望のドーパントの溶液に添加又は混合し;
c)上記化合物を加水分解して、いわゆるゾルを形成し;
d)場合により、適切な形態の微粉末の形で酸化物MOn/2["M" と"n"は工程a)と同じ意味を有する]を添加し;
e)ゾルをゲル化し;
f)アクアゲルをゲル化及び硬化した後に、液体(すなわち、一般に水)をコントロールした量で添加し(アクアゲル液相の適切な外部再循環を保証する);
g)前記液体をゲル化モールド、又はドーピング反応器から分析工程に移し(組成物と関連濃度を測定する);
h)場合により、液体中で測定した同じ濃度を変更し、アクアゲル中の分析イオン種(一般にカチオン)の固定化が適切な条件になるように保証し;
i)組成物が所望の最終生成物に不適切であると思われる場合には、場合により前記液体をアクアゲルに再循環し(工程f));
j)場合により、適切な濃度のMヒドロキシル誘導体を媒体に添加し;
k)配合を変更又は完成させるために、場合により適正濃度の適切な金属の誘導体又はアニオン基を添加し、このような添加は、工程b)で記載した74元素のセットで特定した元素の金属カチオンから選択される;
l)場合により、アクアゲル溶出液の分析が、必要な特性を有する最終生成物を得ることが予測されるパラメーターに適合するまで工程f)、g)、h)、i)、j)を繰り返し;
m)場合により、ゲル細孔中の溶剤を置換し;
n)ゲルを乾燥させ;超臨界条件下では、このドライゲルはエーロゲルである;
o)場合により、更に乾燥したゲルを処理する
から成る改善したゾル−ゲル法に関する。
【0059】
本発明によれば、式
m−M−(OR)n-m
を有する少なくとも1つの化合物は、機械的に強力に撹拌しながらb)で定義したようなドーパントの溶液又はコロイド懸濁液に添加される。その際、このようなドーパント溶液もしくは分散液中では、M化合物の加水分解と、それに引き続きくゲル化のpH条件は既に存在する。
【0060】
本発明によれば、工程b)で加水分解が行われ、かつ時間的に加水分解をゲル化から離すために十分な特異的かつ強力な撹拌を伴う。
【0061】
本発明によれば、加水分解を行う該化合物は、有利にはシリコン誘導体である。
【0062】
本発明によれば、工程e)でコントロールした量で添加される液体は有利には水である。
【0063】
本発明によれば、加水分解は−2と+1の間のpH範囲で実施される。
【0064】
本発明によれば、エーロゲルは関連する特性の全てが予め決められ、かつ可能な用途に関連して、出来る限り良い値を有する点において特徴付けられる。例えば、6cc/g以上の細孔体積、1200m2/g以上の比表面積、6m.e.q./g以上のシラノール濃度、5N/m2以上の十分な機械抵抗を加えて圧縮し、かつ数ミリメーターのオーダーの厚さを有するスライドで観察可能である90゜角間隔の偏光に対する完全な吸光度のような、非晶質材料では希な光学特性などである。
【0065】
本発明によれば、エーロゲルがドープしていない単なる二酸化ケイ素である場合には、次のことに特徴付けられる:
− 2cc/g〜8cc/gの全細孔体積、
− 300〜1300m2/gの表面積、
− 2〜11m.mole/gのヒドロキシル濃度。
【0066】
本発明によれば、光学ガラスを製造する同じ目的で、ケイ素をベースとするアクアゲル組成物は、アルミニウム又はランタン誘導体の添加により変更される[工程k)]。
【0067】
本発明によれば、例7で説明するようなアルミニウムでドープしたシリカガラスは、同じ配合の通常のガラスの値に対して、一貫して125%以上の数値のナトリウムdライン(587.56nm)で測定した屈折率を示す。
【0068】
工程b)で定義したようなドーパントの溶液又はコロイド懸濁液は、工程k)のようにアクアゲルの液相の変性剤として投入でき、次に工程l)により加工される。
【0069】
本発明によれば、工程a)で使用される化合物は適切なシリコン誘導体、有利にはシリコンアルコキシドであり、かつ液体核廃棄物のガラス固化に利用し、極めて長期間の安全性を保証して該廃棄物を安全に貯蔵する場合には、前記液体又は懸濁液は、遊離無機酸の存在で金属塩を≧0.5mole/lの濃度で有する。
【0070】
本発明の更なる対象は、放射性同位体を含む金属含有の液体放射性廃棄物をガラス固化することにより、ガラス酸化物の網目構造内に永久に固定化される酸化物として製造されるガラスであり、これは金属及び主に放射性同位体のガラス濃度の均質性により特徴付けられる。
【0071】
本発明の更なる対象は、本発明の改善したゾル−ゲル法を用いて得られる場合のガラスであり、ドープした乾燥ゲルがキセロゲルの形であるか、又は破砕したキセロゲルの形であるか、又は破砕したエーロゲルの形であり、かつモノリシック体が、前記ゲルを通常のガラスと配合し、かつそれを炉内で溶融することにより得られるか、又はドープしたゲルを通常のガラスの低粘性の溶融物中に封入することにより得られるか、又はガラス対セメントの適切な比率でコンクリート人工物内に適切に封入することにより得られる場合のガラスである。
【0072】
加水分解反応を行う金属前駆体は、従来技術によれば、これに適切などの化合物であってもよい。
【0073】
従って、例えば、ニトレート、クロリド又はアセテートのような可溶性塩を使用することもでき;更に、上記の一般式によるアルコキシド又はアルコキシド混合物を使用することもでき、かつこれは有利な実施態様である。この中でも特に適切であるものは、シリコンアルコキシド、例えば、テトラメトキシオルトシラン、テトラエトキシオルトシラン及びテトラプロポキシオルトシランである。
【0074】
加水分解は酸触媒の存在で実施され、かつ水は溶剤であることができ、又はこれを関心のある前駆体のアルコール溶液に添加することができる:加水分解については、条件と方法は、例えば米国特許第5207814号のような従来技術に記載されているものである。これによれば、加水分解は周囲温度で実施され、かつ有利な酸触媒は、塩酸、硝酸、硫酸及び酢酸であることができる。金属酸化物及び特に酸化ケイ素をゾルで乳化でき、それにより例えば、米国特許第5207814号に従って特性を変更させて調製することができる。加水分解は、引き続くゲル化/凝縮を特徴付けるものと同じ又は異なるpH値(−2から+1の範囲)で、周囲温度にて実施される:pH値の選択は当業者の職務であり、加水分解がゲル化するものに近い条件下に実施されるかどうかを評価しなくてはならない。
【0075】
また、加水分解プロセス全体の間に、系は強力に撹拌されたまま保持され、ゾルが瞬間にゲル化するのを防ぐために注意深く分散がコントロールされる。
【0076】
このように、加水分解とゲル化の通常の方法に特異なpH条件、例えば1÷4に倣い(撹拌には、例えばシリコンアルコキシドと水のような混合不可能な2種の液体をより接触させることにより加水分解を促進させる目的がある)、又は単に例えば、WO2005/040053による"加水分解−ゲル化pH条件"に倣って、従来技術では決して見られなかった物理及び機械的特性を有するエーロゲルが得られる。後者の場合には、ゾル素材の瞬間の凝縮を回避するために撹拌を調節しなくてはならない。強力に撹拌することにより、時間的に間隔があいた加水分解とゲル化が得られたことは意外である。そうでなければ、これらは同時に起きてしまうことになる。
【0077】
第二のプロセスのタイプ、すなわち、pHの変化無しに生じる加水分解−ゲル化は、特に本発明の標的に相応する物理及び化学的特性を有するエーロゲルを製造することを目的にしている。例えば、細孔の全体積と表面積は、両方とも極めて高い値である。より重要なことに、ヒドロキシル含有量、特にシラノールは、材料のmoles/gで表現される著しく高い値に達する。アクアゲルの液相内で、ヒドロキシル誘導体のような化学変性剤を使用する場合には、本発明の有利な実施態様はケイ酸Si(OH)4を意味する:添加する濃度は、ゲル化段階の流出液の監視作業の際に実施される分析結果に基づき、専門のオペレーターにより評価される。前記のように、ゲル化段階の際の流出液の分析は、化学(組成物及び/又は濃度)が所望の特徴を有する最終材料のものと相関することを確認することを目的とする。すなわち:
− 液相中、不可逆的にアクアゲル内に固定されると思われるイオン種が何も無いこと;
− イオン種を固定して、アクアゲル酸化物の網目構造にイオン種を固定可能にするような状況に液相があること、例えば、pHに特異的な固定化に関する最良の値;
− 更なる種を添加するか、又はしないかを考えることができるようにするために、問題の金属カチオンが、アクアゲル酸化物の網目構造のヒドロキシル基、特にシラノールへの固定化に実質的に達した平衡状態であること
である。
【0078】
これに関連して、当業者は最も適切な方法と機器を選択できる。簡単な例示のために、次のものを引用することができる:
− ドーピングプロセスの"開始時に" 関連するアクアゲルで利用可能なヒドロキシル含有量をコントロールする。それはエーロゲル上で行われる:適切に乾燥させたエーロゲルは、実験的にヒドロキシル含有量が測定される関連するモデルであると仮定される。エーロゲルのヒドロキシル含有量の数は、ガス容量分析によりmoles/gで評価できる。1番目のものをチェックするために、又はその代わりとして使用すべき2番目の直接的方法は、NMRによるヒドロキシル定量分析である。3番目の直接的方法は、周囲温度から800℃までの熱処理の間の重量損失に基づく。重量損失がヒドロキシルだけによるものであることを確実にするために、エーロゲルは慎重に調製されなくてはならない。全ての有機残留物を適切な熱−酸化処理により予め除去し、次にエーロゲルを適切に再水和し、かつ化学的に吸収された水を、赤外分光検査を用いる校正温度で真空下に除去しなくてはならない。この時点では、エーロゲルはヒドロキシル熱重量分析を出来る状態に整っている。
【0079】
−ドーピング剤レベルの測定、一般には金属カチオンはアクアゲル内に不可逆的に固定される。
【0080】
比較的簡単な方法は、外部からアクアゲルモールドへの循環液体の系統的分析から出発する。溶液中での関心のあるドーピング剤濃度の減少は、アクアゲル内での可能性としてあり得るそれらの固定化を意味する。次の工程では、アクアゲルは明らかにドープされる:再循環液相を排出し、かつ適量の(等しい)再蒸留水と交換する。液相を平衡に戻す1番目のサイクルは、ドーピング剤の最小濃度(一般には、アクアゲル濃縮から可能性として到達可能な値の1%÷2%以下)により特徴付けられる。再循環を数百時間にわたり延長した場合でも、液相内で関連濃度の0増大を一般に示す。この結果は、液体組成物中には無い全てのドーピング剤が、アクアゲル内に永久に固定化されたことを述べるのに十分な証明である(物質収支)。
【0081】
最終的な証拠は、特異的ドーピング剤である限りアクアゲルの分析(破壊)により達成される。物質収支は、カチオンの含有量が不可逆的にアクアゲル網目構造に結合していることを量的に示している。
【0082】
また、ドーピング剤の種類は、望む最終化合物に関連して当業者により選択される。再び簡単な例を示すが、屈折光学を目的とした光学ガラスの場合には、ケイ素ベースのアクアゲル組成物は、はじめにAl3+、La3+により変性してそれらの屈折率を増大させることができる;他方で、F-により屈折率を低くすることもできる。
【0083】
本特許明細書の初めの部分で記載したように、革新的な光学材料を得る目的で、又はガラス内に廃棄物の不所望な成分を固定化する目的で、本発明はドーピングガラスにおいて広い用途がある。
【0084】
全ての金属カチオンは酸化物を形成しやすく、かつ適切な条件下、特に適切なpHと十分な近接の条件下に酸化物、特に酸化ケイ素の固体網目構造に共有結合しやすい。これらは、元素の周期表の中でIA族の元素の場合だけ、この法則に例外を作るかもしれない。本発明により提出された金属カチオンのリストは、IIA族の元素(Be、Mg・・・など)により得られたもので開始し、続いてランタノイド及びアクチノイド系を含むIIIB族、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、IIB族から、ホウ素を除くIIIA族のものに続き、IVA族のゲルマニウム、スズ及び鉛まで全部で74元素に達する。
【0085】
前記のように、本発明による方法は所定の特徴を有する最終生成物を得ることを可能にし、これらは全て、目的の使用に関して公知の最も価値のあるものの中から同じ値を設定された値にあり、かつこれらの生成物が全体としてこのような特性により特徴付けられることが本発明の重要な部分であり、かつ本特許明細書ならびに将来の相応する特許に関係する主な権利に完全に属する。
【0086】
最終生成物、すなわち、実質的なエーロゲルならびにこの後処理により得られる密度の高いガラスは、特有の性質により特徴付けられる。例えば、ドープしていない元のエーロゲルは、これを特有にさせ、かつ特異的使用に最適化した材料として分類できる3つの重要な構造特性により特徴付けられる。これに関連して、本発明の方法により以下の実験箇所の仕様に従って得られたドープしていないエーロゲルに関して報告された値がある。
【0087】
ドープしていない単なる二酸化ケイ素のエーロゲル
細孔の全体積 6.20cc/g
表面積 1250m2/g
ヒドロキシル濃度 10.53m.mole/g
先に挙げたエーロゲルは、既に出発アクアゲルにある特性を有し、これは本発明で記載したような、再循環工程の際の金属カチオンの固定化では活性であると思われる特に高いヒドロキシル含有量(シラノール)、又は同じ再循環工程で液体を流させることができる著しい全多孔度を提供する方法に特に好ましい。
【0088】
一般的観点から見て、本発明の方法の有利な実施態様は、ドープしていない状態でアクアゲルを使用する場合にあり、以下の特性を有するエーロゲルを生じる:
細孔の全体積 ≧2cc/g ≦8cc/g
表面積 ≧300m2/g ≦1300m2/g
ヒドロキシル濃度 ≧2m.mole/g≦11m.mole/g
ドープしていないエーロゲルは、ドープしたエーロゲルの評価において基準点として考えることができる。その際、ヒドロキシル含有量、ならびに特に微細構造特性はドーピング剤の固定化プロセスにより変性される。
【0089】
金属カチオンの固定化プロセスによりゲル中で生じる変性は、ドーピングプロセス後のエーロゲルの特徴的値を、ドープする前の同じタイプのエーロゲル(ドープしていない単なる二酸化ケイ素のエーロゲル)の元の値と比較して証明され、このためにポロシメーターによる分析が使用される。
【0090】
プロセス後の二酸化ケイ素エーロゲル:
アルミニウム16.5質量%の固定化
細孔の全体積 3.34%
比表面積 436。
【0091】
同じタイプのエーロゲルであるアルミドープシリカは、適切に凝縮[本発明の方法の工程n)]されて、高い光学的均一性、高いアッベ数、高い化学安定性ならびに特徴的な一連の物理特性を有する、例えば新規な物として、かつ市場基準に従って最高の値を有する相対的品質を有する物として分類されるような光学ガラスを形成できる。後処理プロセスにより得られる光学ガラスの一例を示すために、次のものが挙げられる:
一般的調製物SiO2:Al23
モル比 6.52:1
屈折率 nd 1.52
アッベ数 77
密度 2.45。
【0092】
複酸化物ガラスを慎重に調製することを目的とする本発明によるゾル−ゲル法は、適切に監視され、かつ最終的に変性された関連する液相の再循環による、アクアゲル中のイオン種、特にカチオン種のコントロールと測定に基づく。そのために、特殊なアクアゲルが使用され、これらは非常に高い値のシラノール濃度、全細孔体積及び比表面積を提供できる点に特徴付けられる。
【0093】
該方法は、ゲル酸化物の網目構造に化学結合することにより、分子レベルで大量のドーパントをシステマチックに固定化できる程のゾル−ゲル技法の技術革新である。
【0094】
この方法は、より良い光学ガラスのように広範囲に及ぶ多様化した用途ならびに特殊なゾル−ゲルガラス中に永久に閉じ込められた放射性廃棄物の長期貯蔵に扉を開く。
【0095】
実施例
例1:ゾルレベルでのドーピング(通常)
次のように、pH2で加水分解し、かつTEOSとして1.60モルをpH2.5で滴定し、1.06モルのAl3+でドープすることによりゾルを調製した。
【0096】
再蒸留水302.2gを大きな"duran"ガラス実験室カップ中に計量して入れ、かつこれに70%濃度のHNO30.3gを添加した。回転アンカーをカップの内側の液体に浸して、カップの上に実験室用のRW20 IKA-WERK機械撹拌機をセットした。実験開始時(時間0)に、約250r/mに等しい撹拌速度"1"でミキサーを作動させた。記録された液体温度は33℃であった。5分後(時間5)に、液体にAl(HO339H2O114.1gを加えた:撹拌速度を約500r/mに相応するレベル"2"に上げた。記録された液体温度は32℃であった。時間10で、ドーピング剤の添加を完了させ、温度は25℃であり、速度"1.5"で撹拌した。時間40でかつ温度25℃で、TEOS101.1gを浸漬漏斗を通して添加し始め、撹拌速度を"2"まで上げた。
【0097】
時間45:TEOS添加の終わり、温度27℃、撹拌速度レベル2で維持。
【0098】
時間60:温度27℃、超音波ガス除去。
【0099】
時間75:温度52℃、脱気終了、氷浴にカップを入れる。
【0100】
時間110:温度21℃、pH1、1.52モルNH3で滴定開始。
【0101】
時間115:pH2.51、ゾル−ゲル化。添加したNH3の全量175ml。
アクアゲルを再蒸留水100mlで覆い、かつ容器中に気密密閉した。48時間後に上層の水を同体積の再蒸留水と取り替えた。はじめの洗浄水中に存在したアルミニウム含有量は、ICP(100ml)で測定してゾル全体の29.6%に等しかった。
【0102】
この例1は、出発ゾル中に含まれていて、かつ米国特許第5207814号による通常の方法によりゲル化したドーピング剤の相当量が、はじめの洗浄水によりアクアゲルから失われたことを示した。
【0103】
例2:ゾルレベルでのドーピング(1つのpH条件)
次のように1モルHNO3、1.60モルTEOS中でゾルを調製し、1.06モルAl3+でドープし、加水分解し、かつゲル化した:
再蒸留水273.8gを"Duran"ガラス実験室カップ中に計量して入れ;これにHNO329.4g、70質量%を添加した。回転アンカーをカップ内に含まれる液体に浸して、カップの上に実験室用のRW20 IKA-WERK機械撹拌機をセットした。実験開始時(時間0)に、250rpmに等しい速度"1"にミキサーを設定した。記録された液体温度は36℃であった。5分後(時間5)に、114.4gのAl(HO339H2Oを加え始めた:ミキサーは速度3であった。
【0104】
時間20:温度27℃でドーピング剤の添加を完了させた。溶かした氷入りの適切な容器をカップの周囲に付けた。
【0105】
時間125:温度12℃で、ミキサーの速度"4"で、100gTEOSを浸漬漏斗を通して添加し始めた。
【0106】
時間130:温度19℃で、TEOS添加を完了させ、かつミキサー速度"4"を維持した。
【0107】
時間140:速度"0"(オフ)、超音波により脱気しながらカップをセットし、かつこのカップを氷浴中で冷やした。
【0108】
時間155:ゾルを完成させ、かつ円柱状モールドへ注いだ。ゲル化は約15〜17時間にわたり生じた。アクアゲルを再蒸留水100mlで覆い、かつ密封した。48時間後に、水の部分の体積を同体積の再蒸留水と取り替え、分析した。
【0109】
ICP測定で、はじめの洗浄水中に存在するアルミニウム含有量は、ゾルの全体に対して37.3%に等しかった。
【0110】
例2は、出発ゾル中に含まれていて、かつWO 2005/040053による1つのpH条件で加水分解するゲル化法によってゲル化したドーピング剤の相当量が、はじめの洗浄水によりアクアゲルから失われたことを示す。
【0111】
例3:再循環法を用いるゾルレベルでのドーピング
例2で記載した同じ方法により、ゾルを1M HNO3、160モルTEOS中で調製し、かつ1.06モルAl3+でドープした。一旦ゾルが完成すると、90mm直径の円柱状モールド2個を充填し、かつ密閉した。
【0112】
ゲル化プロセスは15時間にわたり生じた。ゲル化後に、図1のアクアゲルドーピング反応器にセットするカラムに、洗浄水と共に2つのアクアゲルを移した。再蒸留水の添加により、カラム液を全体積1000mlに増大させた。再循環ポンプエンジンを時間"0"で作動し、かつ溶液中で、どのような形であってもアクアゲルを通して再循環した液体を経時的にpH値とAl濃度について監視した。図1のように、液相の監視は適切な取り出し点を通して周期的な試料抽出により実施した。pH測定後、試料抽出した液体を同じバルブを通して再び再循環に供給したが、しかし、電気化学的方法、すなわち破壊分析によるAl測定で分析するためフラクションを少し取っておいた(DL-50, Mettler Toledo)。
【0113】
収集したデータは図2に記載されていて、pH値は右の目盛りに、Alに関する値は左の目盛りに全重量パーセントで示されている:
両方の値は横軸に示された時間(h)に対してプロットしてある。
【0114】
図2のデータは、開始時点で完全にエーロゲル中に含有されていた出発硝酸(点線)と硝酸アルミニウム(実線)が、80〜100時間にわたるバランスが揺らぐことなく、アクアゲルから再循環液相へ拡散していることを概要している。一旦バランスが保たれると、再循環液相中のアルミニウムは、できるだけ高い値の88%に等しい濃度に達する。データは、例3の実験条件下では、最大12%のAl3+がアクアゲル中に固定化し、88%のAl3+は溶液中に遊離していることを明らかに示している。
【0115】
例3は、先の2例から分かったデータを裏付けた:すなわち、ゾルのドーピング剤は、必ずしも結果としてアクアゲル中で固定化されず、洗浄水中に拡散する傾向がある。
【0116】
例4:本発明による再循環法を用いるアクアゲルレベルでのドーピング
条件は、例3で設定したものと同じであった。
【0117】
再循環の際に一旦平衡が得られると、基本的なパラメーターのうちの1つが再循環液の中で変化した:この場合では、それはpHであった。インレット7から、時間160時間で、濃縮アンモニアを添加して、アクアゲル液相中のpH値を上げた。1.099モルに相当するアンモニア70cc(30%NH3)をゆっくり添加した。pHの変化は、平衡時に液相中でAl3+濃度の相当な変化を生じた。収集したデータは図3に示してある。その際、右の縦座標はpH値であり、かつAl3+濃度(質量%)は左の目盛りにあり、両方の値は、横軸に示した時間(h)に対してプロットしてある。実線グラフは[Al]を意味し、点線グラフはpHを意味する。
【0118】
再循環主導のドーピング実験を中断した後に、標準的方法、すなわち溶剤交換、超臨界乾燥及び炉内高密度化により、ガラスになるまでアクアゲルを処理した。エーロゲルを元素分析(破壊的)に利用し、存在するアルミニウムを測定し;他のエーロゲルの密度を高めてガラスにした。これにより、屈折率1.52を有する比較的に稠密なガラスが得られた(密度2.20のシリカガラスと比較して密度2.45)。
【0119】
図3のデータは次のことを概要している:
−再循環の液相溶液中のアルミニウムは、アンモニア添加(pH変性)後に相当に減少する;
−ドープしたアクアゲルを再蒸留水で洗浄しても(更に200時間延長)、再循環液相中でアルミニウム濃度の増大を引き起こさなかった:
ΔAl=[Al]500−[AL]300=0;
−明らかに、実験終了時には、60%に等しい出発アルミニウムの殆どのフラクションが液相溶液から失われていて、かつ更に200時間再蒸留水で洗浄した後も溶液に戻って来なかった。液相中で失われたアルミニウムの量が、実際にアクアゲル中で固定化されたという証拠は、アクアゲルの処理によって得られたエーロゲルの元素分析により得られた。関連する分析結果は表1にある。
【0120】
表1:再循環液体中のAl濃度
(Vl=再循環液の体積; Vg=アクアゲルの体積)
理論的に均一な全体の体積(Vl+Vg)7850ppm
出発時の再循環液(Vl)中 0ppm
平衡時の再循環液(Vl)中 7100ppm
NH3添加後の新たなバランス(Vl) 2658ppm
NH3添加後の平衡時のVl中のAl欠損 4442ppm
新たな洗浄液中 392ppm
200時間後の洗浄液中 426ppm
エーロゲル中 10.9質量%
エーロゲル(Vl中のppmに相応) 6160.6ppm
ガラス中 11.3質量%
ガラス中(Vl中のppmに相応) 4313.1ppm。
【0121】
表1に収集したデータは、プロセス条件下にモデルカチオン(Al3+)が再循環液(出発バランスで7100ppm)からアクアゲルへ移動したことを意味する:NH3添加後に、溶液から失われたアルミニウムは4442ppmであり、これはアクアゲル中で測定したアルミニウム4160.6ppm、又はこれに相当するガラス中で測定したアルミニウム4313ppmに一致する。
【0122】
例5:ゾルレベル又はアクアゲルレベルでのドーピングにより得られるそれぞれのアクアゲルの違い
ドープしたアクアゲルの中の著しい構造的違いは、ゲルを大気圧下に蒸発法に課すことにより概略できる。大気蒸発法(atmospheric evaporation process)は、いわゆる"キセロゲル"を製造するために当業者に周知である。大気圧下に乾燥させたゲルであるキセロゲルは、一般的条件がそれらの製造を可能にし、それらの用途が調製法の多くの制限と適合する場合に限って、商業的に魅力的である。金属ニトレートで強くドープした特殊なアクアゲルの場合には、大気圧蒸発法は、本発明による液相再循環法によってゾルレベルで調製した試料と、アクアゲルレベルで調製した試料の間で著しい違いを概略できる。
【0123】
実験は、ドープした2つのアクアゲルを大気圧で蒸発乾燥することから成る:1つは、通常の方法により調製し、もう1つは再循環法により調製したものである。通常の試料の調製物(試料1)は、例1で記載したものであり;再循環法によりドープした試料(試料2)は例4の調製物を有した。含有していたドーピング剤が、アクアゲル体から出て出発ゲルに対して大きなサイズを有する極めて大きなインフローレンス体(inflorescence body)を形成したので、同じ蒸発条件下では大気圧下に試料1を蒸発させる可能性は無かった。それに対して、本願の方法によりアクアゲルレベルでドープした試料2では、視覚的検査により判定して良質なガラスに乾燥することができ、とりわけインフローレンスの痕跡が無かった。
【0124】
例6:酸塩溶液のガラス固化
高レベル液体放射性核廃棄物の調製物は、同じ核施設に応じて、又は先行する安定化経路で行われる工業プロセス処理に応じて極めて幅広い。
【0125】
しかし幾つかの一般的な特徴は、全ての高レベル放射性核廃棄物に共通であり、かつこれらは次のものである:
− 約1mole/l濃度での遊離無機酸、主に硝酸の存在;
− 比較的に高濃度での金属カチオンの存在:一般に約2質量%;
− 約9質量%の塩濃度での無機塩、一般にはニトレート中での金属カチオンの安定化;
− 放射性同位体、一般に核分裂生成物の極めて低い濃度での存在、5〜10ppmのプルトニウム濃度に相応する放射性。この種の廃棄物を決定的に安定化し、かつ極めて長期間貯蔵するための多くの超国家的又は国家プログラムは、ガラス固化に基づいている。これを考慮して、硝酸中の塩溶液を処理し、高レベル放射性液体核廃棄物をシミュレートした;
− 液体無機酸は1モルHNO3である;
− 硝酸アルミニウムから成る2%b.w.濃度の金属カチオン;
− 硝酸アルミニウムから成る28%b.w.の塩濃度;
− Ce3+とNd3+により化学的にシミュレートした放射性同位体の痕跡、それぞれニトレートの形(10ppmの濃度)で。
【0126】
予め記載した高レベル放射性液体核廃棄物の一般的特徴を有する溶液を調製した:適正な機械撹拌機を備えた適切なDuranガラス反応器中で、再蒸留水275gに70%b.w.HNO330gを加えた。ドーピング剤とキレート剤を添加する前に、このミキサーを予め適切な強さで作動させておいた。以下の物質を順番にゆっくり加えた:115gAl(HO3)39H2O、9.68mgCe(NO33 6H2O及び9.40mgNd(NO33 6H2O。
【0127】
ニトレート塩として添加したCe3+とNd3+により示された放射性同位体20ppmのシミュレーションで、調製した溶液は、液体核廃棄物の化学的な一般的特徴を再現し、文献による化学親和性を十分に再現した(T. Woignies and others, Proc. Int. Congr. Class, Vol. 2 Extended Abstract, Edinburgh, 1-6 July 2001, pp.13-14)。
【0128】
溶液調製物は以下の通りである:
HNO3 0.344mole/l 94340ppm
AL3+ 0.312mole/l 43082ppm
Ce3+ 0.0713mole/l×10-3 10ppm
Nd3+ 0.0693 mole/l×10-3 10ppm
溶液を次のようにゲル化した:
反応器の外側に氷を溶かすことにより液体温度を10℃に設定した。ガラス撹拌機/ホモジナイザーの速度を適切に増大させ、かつ浸漬漏斗を通してテトラエトキシシラン(TEOS)100gを添加した。準備した溶液からのゾルを調製するまでの全体の時間は、30分未満であった。
【0129】
一旦TEOSの添加が完了すると、明らかに単相の透明な液体が得られた。10分間にわたる超音波処理により液体(ゾル)から気体を適切に除き、次に気密密閉性を備えたポリカーボネートの円柱状モールドに注いだ。
【0130】
試料のゲル化は15時間にわたり生じた;アクアゲル三つ(3)をそれぞれ再蒸留液100ccで覆った。48時間後に3つ全てのアクアゲルを先に示した本発明による再循環反応器に移した。再循環法は、徐々に90mlNH3を30%濃度で添加することにより完了した。例3の説明に従って再循環法を分析的に行った。
【0131】
分析データは、CeとNd濃度の発生を監視するICPマスから作成された。液相中のアルミニウム濃度が7300ppmから310ppmへ減少するまで実験を行った。CeとNd濃度は、装置検出レベルのもとで減少した。
【0132】
再循環段階の後に、アクアゲルに溶剤交換、超臨界乾燥及びガラス高密度化を行った。視覚検査では通常である2.481g/cm3の密度を有する極めて密なガラスが得られた。
【0133】
例6には、相当の金属イオン濃度でシリカガラスをドープし、永久にガラス酸化物の網目構造中に固定化するように開発された技術が、液体核廃棄物のガラス固化と安全な貯蔵に利用できることが明らかに示されている。
【0134】
例7:本発明の方法で合成した新規材料
実験は例4で示したように行った。アルミニウム11.3質量%含有のガラスが得られた。587.56mmでガラスの調製物を正確に測定し、かつ1.52を得た。測定したアッベ数は77であった。
【0135】
正確に測定したガラスの密度は2.45であった。例7で製造したガラスで測定した上記物理特性を、市販のガラス及び/又は関連文献で報告した実験ガラスの特性と比較した。関連する屈折率の値の比較は図4で行った。縦軸にはλ=587.56mmでの屈折率が、横軸には質量%でAl23の濃度が示されている。個々の値は、赤い点で示されている。例7で記載したガラスの値を表に重ね、黒いバツで示した。
【0136】
図4に示されたデータから、本発明の例7に記載されたガラスが図4中の関連文献で示された同じ組成物のどのガラスよりも相当に高い屈折率の値を有することが明らかである。材料密度の関連値の比較を同様の方法により図5で行った:関連する密度の値は、縦軸に、かつ横軸には質量%でAl23の濃度が示されている。例7に記載したガラスの密度の値を図表に重ね、かつ黒いバツで示した。図4と図5に示されたデータから、本発明の例7に記載したガラスは、報告された同じ配合のガラスとは相当に異なる実験的に測定された関連する物理特性を有することが明らかである。例7に記載された方法で製造したガラスが物質を凝集する新しい形であると結論づけるのが適当である。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、液相再循環スキームを示す図である。
【図2】図2は、硝酸(点線)と硝酸アルミニウム(実線)の関係を示す図である。
【図3】図3は、アルミニウムの濃度(実線)とpH値の関係を示す図である。
【図4】図4は、本発明のガラスの屈折率を市販のものと比較した結果を示す図である。
【図5】図5は、ガラスの密度とAl23の濃度の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0140】
図1 1.アクアゲルドーピング反応器、2.列に並んだアクアゲル、 3.位置スイッチャ"リサイクリング"−"サンプリング"−"オフ"、 4.アウトレットバルブ、 5.耐酸性ポンプ、 6. 連結部、 7.インレットバルブ、 8.反応器フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)式 Xm−M−(OR)n-m
[式中、Mは元素の周期系の第3、第4及び第5族に属するカチオンであり、
nは、カチオンの原子価であり;
mは、0、1又は2であり、
Xは、R1又はOR1であり;
RとR1は、12個までの炭素原子数を有する同種又は異種の炭化水素基である]
を有する少なくとも1つの化合物の懸濁液として、水溶液又は水アルコール溶液を調製し、
b)場合により、IIA、ランタノイド及びアクチノイド系を含むIIIB族、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、IIB、ホウ素を除くIIIA族のものに続き、IVA族のゲルマニウム、スズ及び鉛まで達する全ての元素として特定された周期表74元素のセットから選択される所望の金属前駆体を加水分解可能な形で含有する、溶液の形又は可溶性の粉末としての所望のドーパントの溶液に添加又は混合し、
c)上記化合物を加水分解して、いわゆるゾルを形成し;
d)場合により、適切な形態の微粉末の形で酸化物MOn/2(Mとnは工程a)と同じ意味を有する)を添加し;
e)ゾルをゲル化し;
f)アクアゲルを適切にゲル化及び硬化した後に、液体をコントロールした量で添加し;
g)前記液体をゲル化モールドから分析工程に移し;
h)場合により、液体中で測定した同じ濃度を変更し、アクアゲル中の関連イオン種の固定化が、より適切な条件になるように保証し;
i)場合により前記液体をアクアゲルに再循環し(工程f));
j)場合により、適切な濃度のMヒドロキシル誘導体を媒体に添加し;
k)配合を変更又は完成させるために、場合により適正濃度の適切な金属の誘導体又はアニオン基を添加し、このような添加は、工程b)で記載した74元素のセットで特定した元素の金属カチオンから選択される;
l)場合により、アクアゲル溶出液の分析が、必要な特性を有する最終生成物を得ることが予測される所望のパラメーターに適合するまで工程g)、h)、i)、j)、k)を繰り返し;
m)場合により、ゲル細孔中の溶剤を置換し;
n)ゲルを乾燥させ;
o)場合により、更に乾燥したゲルを処理する
から成るゾル−ゲル法。
【請求項2】
請求項1に定義したような
式 Xm−M−(OR)n-m
を有する少なくとも1つの化合物を、請求項1の工程b)で定義したドーパントの溶液、又はコロイド懸濁液に機械的に強力に撹拌しながら添加し、その際、このようなドーパント溶液もしくは分散液中では、M化合物の加水分解と、それに引き続くゲル化のpH条件が既に存在する、請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項3】
工程b)の加水分解が先行し、かつ特異的かつ強力な撹拌を伴い、該加水分解が請求項1に記載のゲル化から時間的に十分に離れている、請求項1又は2に記載のゾル−ゲル法。
【請求項4】
加水分解を行う化合物は、有利にはシリコン誘導体である、請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項5】
工程e)でコントロールされた量で添加される液体は、有利には水である、請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項6】
加水分解は−2と+1の間のpH範囲で実施される、請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項7】
光学ガラスを製造する同じ目的で、ケイ素ベースのアクアゲル組成物は、アルミニウム又はランタン誘導体の添加により変更される[工程k)]、請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項8】
請求項1の工程b)で定義したようなドーパントの溶液又はコロイド懸濁液を、請求項1の工程k)のようなアクアゲルの液相の変性剤として投入し、かつ請求項1の工程l)により処理する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項9】
工程a)で使用される化合物は、適切なシリコン誘導体、有利にはシリコンアルコキシドであり、かつ液体核廃棄物のガラス固化に利用してこれらの極めて長期間の安全性を保証して安全に貯蔵する場合には、溶液又は懸濁液は遊離無機酸の存在で、≧0.5mole/lの濃度で金属塩を有する、請求項1又は請求項2に記載のゾル−ゲル法。
【請求項10】
関連する特性の全てが予め決められていて、かつ6cc/g以上の細孔体積、1200m2/g以上の比表面積、6m.e.q./g以上のシラノール濃度、5N/m2以上の十分な機械抵抗を加えて圧縮し、かつ数ミリメーターのオーダーの厚さを有するスライドで観察可能である90゜角間隔の偏光に対する完全な吸光度のような、非晶質材料では希な光学特性のように、可能性として有り得るどの用途に関しても出来る限り良い値を有することを特徴とする、エーロゲル。
【請求項11】
ドープしていない単なる二酸化ケイ素から成っている場合には、
− 2cc/g〜8cc/gの全細孔体積、
− 300〜1300m2/gの表面積、
− 2〜11m.mole/gのヒドロキシル濃度
に特徴付けられる、請求項10に記載のエーロゲル。
【請求項12】
例7で実証したような、同じ配合の通常のガラスの値に対して、ナトリウムdライン(587.56nm)で測定して125%以上の数値の屈折率の値を一貫して示す、アルミニウムでドープしたシリカガラス。
【請求項13】
放射性同位体を含む金属含有の放射性液体廃棄物のガラス固化により、ガラス酸化物網目構造中に永久に固定化された酸化物として請求項12により製造されるガラスにおいて、金属及び主に放射性同位体のガラス濃度の均一性を特徴とする、請求項12により製造されたガラス。
【請求項14】
請求項11に記載の改善したゾル−ゲル法を用いて得られ、ドープした乾燥ゲルがキセロゲルの形であるか、又は破砕したキセロゲルの形であるか、又は破砕したエーロゲルの形であり、かつモノリシック体が、前記ゲルを通常のガラスと配合し、かつそれを炉内で溶融することにより得られるか、又はドープしたゲルを通常のガラスの低粘性の溶融物中に封入することにより得られるか、又はガラス対セメントの適切な比率でコンクリート人工物内に適切に封入することにより得られる場合の、請求項13に記載のガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504825(P2009−504825A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525554(P2008−525554)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064995
【国際公開番号】WO2007/017454
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(501094502)デグサ ノヴァラ テクノロジー ソチエタ ペル アツィオーニ (15)
【氏名又は名称原語表記】Degussa Novara Technology S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pisacane 7/B, I−20016 Pero (MI), Italy
【Fターム(参考)】