タイヤコードの解析モデル作成方法、装置、プログラム、及びタイヤ性能解析方法
【課題】計算上でタイヤコードの解析を高精度で実施することを可能とする。
【解決手段】ステップ200では、解析モデルとして作成するモデル化対象のタイヤコードが指定されると(ステップ200)、撚り方向毎の各層のフィラメント(断面)、各層間に設けられたバッファ層を要素分割して2次元モデルを作成し(ステップ202)、内層から外層に向けて順に2次元モデルを長手方向に撚り回転させつつ展開することにより3次元形状を作成して(ステップ204)、解析モデルを得る。
【解決手段】ステップ200では、解析モデルとして作成するモデル化対象のタイヤコードが指定されると(ステップ200)、撚り方向毎の各層のフィラメント(断面)、各層間に設けられたバッファ層を要素分割して2次元モデルを作成し(ステップ202)、内層から外層に向けて順に2次元モデルを長手方向に撚り回転させつつ展開することにより3次元形状を作成して(ステップ204)、解析モデルを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に使用されるタイヤを数値解析するときに用いられるタイヤコードに係るタイヤコードの解析モデル作成方法、装置、プログラム、及びタイヤ性能解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ挙動についての解析は、実際に設計・製造したタイヤを計測したり自動車に装着して得た性能試験結果を用いたりしたものから、計算機(コンピュータ)環境の発達に伴って、計算機上でシミュレーションによって実現できるようになってきている。このタイヤ挙動をシミュレーションによって解析する主要な方法としては、有限要素法(FEM)等の数値解析手法が主に用いられている。FEMは、構造体を有限個の要素でモデル化して、コンピュータを用いて構造体の挙動を解析する手法であり、その特徴から構造体を有限個の要素に分割する(以下、メッシュ分割、または要素分割という。)ことが必要である。予測精度の高いタイヤ挙動をシミュレーションするためには、有限個の要素で構成されるシミュレーション用のタイヤモデル(数値データから構成されている)を如何に実際のタイヤ形状と同じように製作するかが重要である。
【0003】
ところで、タイヤは、ゴム材料はもとより、タイヤコードを数多く含んで構成されている。このタイヤコードは、複数の芯(フィラメント)が複雑に撚られて束ねられて形成されて用いられる。そこで、タイヤをFEMによりシミュレーションするときにはタイヤコードの部分もモデル化することが好ましい。タイヤコードのモデル化を可能とする技術には、タイヤコードを等価な剛性を有するように簡素化してモデル化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、タイヤ中のケーブルビードのように、線状部材をリング状部材の周りに螺旋状に巻き付けて母材中に埋設した複合材のモデルを作成する方法において、リング状モデルが母材モデルと接する接触面が、母材モデルの接触面に対して相対変位を生じさせないように拘束条件をリング状モデルに付与する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−102424号公報
【特許文献2】特開2007−11474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたように、タイヤコードを等価な剛性を有するように簡素化したモデルに置き換えることでは、高精度の解析が困難である。すなわち、タイヤをモデル化する場合、タイヤ断面の要素を3次元展開してモデル化することが多い。ところが、タイヤコードは、数本の針金や繊維等のフィラメントが複数撚られながら束なって構成されていることが普通であり、この1本1本のフィラメントの撚り方向は様々であり、これを考慮しつつタイヤコードの断面からそのまま丁寧に有限要素モデル化することは複雑かつ要素数の増大を招き、事実上困難である。例えば図20には2層のフィラメントを撚りながら束ねたものを3個束ねたタイヤコードをモデル化した例を示したが、このようなタイヤコードをモデル化するのは困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術では、例えば線状部材とリング状部材との間の隙間についてはモデルとして考慮されていないため、高精度の解析が困難である。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、有限要素法(FEM)等の数値解析手法によるタイヤの解析等において、計算上でタイヤコードの解析を高精度で実施することを可能とするタイヤコードの解析モデル作成方法、装置、プログラム、及びタイヤ性能解析方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成方法であって、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する工程と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する工程と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第2の2次元領域を定義する工程と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する工程と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記バッファ層を、数値計算可能な所定分割要素に分割する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点との少なくとも一方について、各々相対的に移動しないように拘束する拘束条件を設定して関連付ける工程をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法であって、前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点とについて、各々の相対的な移動の制限を規定する接触条件を設定して関連付ける工程をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記第2層の外側の第3層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第2層との間にバッファ層が形成されるように第3の2次元領域を設定する工程と、前記第3の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第3層を形成する工程と、をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
なお、本発明は、中心から外側に向かい3層を超える複数の分類層で構成されるタイヤコードに適用することができる。すなわち、請求項5を4層から最外層の分類層まで繰り返し適用する、もしくは、複数の分類層の最外層または途中の層に適用すればよい。例えば、n(nは4以上の自然数)個の分類層で構成されるタイヤコードは、第1層から第n層まで順次バッファ層を介して構成される。そこで、第4層以降の各層(第k層:3<k<n)について、第(k−1)層を第3層としかつ第(k−2)層を第2層と置き換えることで、各層について本発明を適用することができる。この場合、第1層から第n層までの全ての層の各々に本発明を適用することに限定されない。すなわち、第1層から第n層までの途中の第k番目(3<k<n)の分類層にのみ本発明を適用することができる。
【0014】
また、本発明は、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。すなわち、複数の分類層で構成されるタイヤコードを、単一層と定義することにより、本発明を、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記2次元領域は、フィラメント要素と充填材との各領域から構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記バッファ領域を、メッシュレス法によりモデル化したバッファ層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記メッシュレス法は、フリーメッシュ法又はエレメントフリーガラーキン法であることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成装置であって、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデルを作成するためのコンピュータを、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、として機能させるタイヤコードの解析モデル作成プログラムである。
【0020】
請求項11記載の発明は、前記請求項2〜請求項6の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法により作成されたタイヤコードの解析モデルに基づいて、タイヤコード又は当該タイヤコードを含むタイヤについて変形計算を行う工程と、前記変形計算において前記バッファ層の所定分割要素の変形が許容範囲外となった場合に、前記バッファ層を再度所定分割要素に分割し直す工程と、を含むタイヤ性能解析方法である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、計算上でタイヤコードの解析を高精度で実施することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、タイヤの挙動解析のための解析モデルの作成に本発明を適用したものである。
【0023】
(装置構成)
【0024】
図1にはタイヤコードの解析モデルを作成すると共に作成した解析モデルを用いてタイヤの挙動シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤの性能を予測するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
【0025】
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフレキシブルディスク(FD)が挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフレキシブルディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述するプログラムや処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらに、対応する装置を用いればよい。また、パーソナルコンピュータの他に、ワークステーションやスーパーコンピュータをタイヤ解析に用いてもよいことは勿論である。
【0026】
(タイヤコード)
【0027】
まず、タイヤに含まれるタイヤコード、特にスチールコードは、複数の細いコード(以下、フィラメントという。)を撚り合せて1本のタイヤコードになっている。この場合、複数本のフィラメントを撚り合せてできたタイヤコードを第1層(単層撚り)タイヤコードとして、その周囲に第2層のフィラメントを撚り合せて2層撚りのタイヤコードを作ることができる。このとき、第1層と第2層では撚り合せる回転方向を逆にすることが行われる。また撚りのピッチ、フィラメント径は第1層目と第2層で同一とは限らない。これを繰り返すことで複数層のタイヤコードを作成することができる。
【0028】
また、タイヤコードのフィラメント間にはゴムなどの充填材(マトリックス)を入れることで、タイヤ内で使用されかつ外傷でコード周囲に水分が付着した場合の錆を抑制し耐久性能を向上することができる。これらの単数または複数層の撚りタイヤコードをさらに撚り合せることで、より太いタイヤコードを作成することができる。
【0029】
一方、フィラメント間の充填材をモデル化しない場合、フィラメント間の接触有無に関わらず、フィラメントだけをモデル化すればよく、簡単に形状モデルを作成できる。この場合、フィラメント相互に接触を定義しておけば、フィラメントの挙動を解析できる。
【0030】
図8に示すように、例えば、単撚りコードの場合、フィラメント周囲に充填材をモデル化し、ソリッド要素でモデル作成することは容易である。また、複数層撚りの場合、撚り合わせる方向とピッチが層間で同じであればフィラメント相互の位置関係はタイヤコードの長手方向を軸として回転させればどの場所でも同じになる。従って、フィラメント周囲に充填材がある場合でも、その断面で要素分割できれば、これをタイヤコード長手方向に押し出すことでタイヤコードの全体モデルを作成することができる。
【0031】
しかしながら、通常のコードは撚り合わせる方向とピッチが層間で異なっており、上記のように簡単に押し出してタイヤコードのモデルを作成することができない。また、CADなどを用いて3次元のソリッドモデルを作成することは可能である。ところが、フィラメント間の充填材形状が非常に複雑なことから要素分割した分割要素(メッシュ)を作成することは非常に困難である。具体的には、自動的に要素分割するものでは、4面体を作成することができない場合がある。また、タイヤ用コードの充填材として通常使われるゴムはほぼ非圧縮性を持ち、ポアソン比が0.5に近い。このような材料を精度良く有限要素法で解析する場合、6面体や5面体(例えば、三角柱)が必要なことが有限要素法上では知られている。このような5、6面体をCADデータで得られた充填材部分に自動的に要素生成することは、事実上不可能であるので、タイヤコードを考慮して解析精度を向上させることはできなかった。
【0032】
(タイヤコードのモデル化)
【0033】
上記の事実を考慮して、本実施形態では、タイヤコードを層別に分類してモデル化して各層間に関係を持たせることで、タイヤコード全体をモデル化する。
【0034】
図5は、パーソナルコンピュータ(図1)で実行される本実施の形態にかかるタイヤコードの解析モデル作成プログラムの処理ルーチンを示すものである。図5の処理が実行されることによって、タイヤコード単体またはタイヤ設計案に含まれるタイヤコードを数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤコードの解析モデルが作成され、そのデータをパーソナルコンピュータに記憶することができる。このタイヤコードの解析モデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとし、作成するタイヤコードの解析モデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤコードを小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。
【0035】
まず、図5のステップ200では、解析モデルとして作成するモデル化対象のタイヤコードが指定される。このステップ200では、解析モデル作成の対象となるタイヤコードまたは、それを含むタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。なお、上記ではタイヤ設計案に限定されるものではなく、現存するタイヤを解析する場合を含む。すなわち、現存するタイヤに含まれるタイヤコードそのものを対象のモデルとして設定してもよい。
【0036】
例えば、ステップ200では、タイヤモデルに含まれるタイヤコードのうちの何れか1つのタイヤコードを選択することによって指定する。この指定は、ユーザのキーボード入力値を読み取って対応するタイヤ内の部位をタイヤコードとして設定したり、タイヤの設計案のデータから予めタイヤコードとして定めた部位を自動的に設定したりすることができる。なお、このステップ200は、指定されたタイヤコードについてのヤング率、せん断弾性率、及びポアソン比等の材料特性や、フィラメントの直径や撚り方向そして層構成等の形状に関するデータを、取得するものとする。
【0037】
図4はタイヤ断面モデルの一例を示すもので、複数のゴム部材毎に分割されたカーカス22を有する空気入りタイヤ20を示している。このカーカス22はビード26により折り返されている。このカーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24に延長上にはビードゴム36が配置している。また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置しており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置し、カーカス22の軸方向外側にはサイドゴム34が配置している。なお、タイヤ断面モデルをゴム部材毎に複数分割した例を挙げたが、設計目的によって3角形等の任意の形状に分割してもよい。これらのタイヤを構成する部材に含まれるタイヤコードのうちの何れか1つのタイヤコードを選択するようにすればよい。
【0038】
次に、詳細は後述するが、図5のステップ202では、指定されたタイヤコードの2次元形状(断面形状または2次元モデルという場合がある)を作成し、次のステップ204においてその作成された2次元形状をタイヤコードの長手方向に展開して3次元形状を作成する。指定したタイヤコードのモデル化が終了すると、タイヤモデルに含まれる全てのタイヤモデルについて上記処理が終了したか否かを判断し(ステップ206)、肯定されると、本処理ルーチンを終了する。一方、ステップ206で否定されると、ステップ200へ戻り、他のタイヤコードについて上記処理を繰り返し実行する。
【0039】
以下、説明を簡単にするために、タイヤコードとしてベルトが指定され、ベルトに含まれる1本のタイヤコードについて数値計算可能な解析モデルとしてモデル化する場合の一例を詳細に説明する。なお、本発明は、タイヤコードをベルトに限定するものではなく、金属線等のフィラメントを複数束ねたものであれば任意のものに適用できる。ベルトは、数本の針金等のフィラメントが複数束なって構成されているコードを含むことが多い。このベルトについて、1本1本の針金毎にモデル化して解析モデルを得る。すなわち、本実施の形態では、フィラメントである金属線を束ねたベルトをタイヤコードの一例として、各フィラメントの撚り方向を含めて詳細にモデル化してタイヤコードの解析モデルを得る。
【0040】
(タイヤコードの2次元モデル作成)
【0041】
上記ステップ202の断面形状(2次元モデル)を作成する処理では、図6の作成処理ルーチンが実行される。ステップ210では、上記ステップ200で指定されたタイヤコードの断面構造及び材料特性を読み取り、次のステップ212においてフィラメントを層別に分類する。この分類は、指定されたタイヤコードに含まれる複数のフィラメントを、同一の撚り方向のフィラメント毎に層別に分類するものである。図9には、一例として最内層42、中間層44、及び最外層46の各々に同一の撚り方向のフィラメント48を有する3層構造のタイヤコード40を示した。
【0042】
次のステップ214では、第1層のフィラメント(断面)について所定形状となるように要素分割し、次のステップ216において第1層のフィラメント群の周囲を囲む外接形状を定める。図10(A)には、第1層としてタイヤコード40の最内層42に含まれるフィラメント48の各々が要素分割されると共に、フィラメント群の周囲を囲む外接形状としてフィラメント48の外接円50が定められた場合が示されている。上記では第1層を最内層42に定めたが、第1層は最外層46でもよい。
【0043】
なお、図10の例では外接形状として外接円50を採用した場合を示したが、外接形状は、円形に限らず楕円、四角、三角形、多角形等の形状でも良い。またフィラメント間で凹形状や凸形状になっていても良い。
【0044】
次に、ステップ218では、フィラメント48の周囲に存在する充填材について所定形状となるように要素分割する(図10(B)参照)。なお、この充填材の要素分割は、フィラメント48の周囲に存在する場合を考慮するときにのみ実行する。すなわち、タイヤコード40をモデル化する場合、少なくともフィラメント48をモデル化することで充分な場合もあるため、充填材の要素分割は、必ずしも必要ではない。すなわちフィラメント単体の解析を行う場合等は、定義する必要はない。
【0045】
以上のようにして第1層の断面形状の設定が終了すると、第1層の隣接層について順次上記と同様に断面形状を設定する。詳細には、ステップ222へ進み、外方向の隣接層、ここでは第2層について上記ステップ214と同様に要素分割する。次のステップ224では上記ステップ216と同様に外方向隣接層(ここでは第2層)のフィラメント群の周囲を囲む外接形状を定める。また、外方向隣接層(ここでは第2層)のフィラメント群の内側に内接形状を定める。この内接形状は、内方向隣接層(ここでは第1層)の外接形状との間に隙間、すなわちバッファ層が形成されるように定める。
【0046】
図11(A)には、第2層としてタイヤコード40の中間層44に含まれるフィラメント48の各々が要素分割されると共に、フィラメント群の周囲を囲む外接形状としてフィラメント48の外接円56が定められかつ内接形状として内接円54が定められた場合が示されている。
【0047】
なお、図11の例では外接形状として円形状を採用した場合を示したが、円形状に限らず楕円、四角、三角形、多角形等の形状でも良い。またフィラメント間で凹形状や凸形状になっていても良い。
【0048】
次のステップ226では、上記ステップ218と同様に、フィラメント48の周囲に存在する充填材について所定形状となるように要素分割する(図11(B)参照)。なお、この充填材の要素分割は、上記と同様にフィラメント単体の解析を行う場合等は、定義する必要はない。
【0049】
また、図12には、第1層及び第2層を要素分割した場合が示されている。同図に示すように、第1層の外接円50と第2層の内接円54との間にバッファ層57が設けられている。このように第1層と第2層との間にバッファ層57を設けることにより、バッファ層を設けずに第1層と第2層とを拘束させるモデル等の場合と比較して、モデル作成が容易となる。
【0050】
次のステップ228では、バッファ層57を要素分割する。例えば図13(A)に示すように、第1層のフィラメントや充填剤について要素分割した際に生成された節点と、第2層のフィラメントや充填剤について要素分割した際に生成された節点と、を接続することによりバッファ層57を要素分割することができる。なお、充填剤について要素分割しない場合には、第1層の外接円50上と第2層の内接円54上に節点を適宜設定し、これらを接続することでバッファ層57を要素分割することができる。
【0051】
以上のようにして外側隣接層(ここでは第2層)の断面形状の設定が終了すると、ステップ230へ進み、タイヤコード40の全層についての断面形状の設定が終了したか否かを判断し、否定の場合、さらに隣接層について順次上記と同様に断面形状を設定する。すなわち、図9の例では、3層構造のため、最外層46についてステップ222乃至ステップ228の処理を実行する。一方、ステップ230で肯定されると、本処理ルーチンを終了する。
【0052】
上記断面形状の2次元モデルを作成するときには、断面形状の全体を同時に作成することも可能だが、断面内の一部について2次元モデルを作成した後に、作成した2次元モデルを複写することにより、短時間かつ高精度に断面形状の2次元モデルを作成することができる。例えば、図10に示すように、最内層42は回転方向への対称性を有しており、最内層42では3本のフィラメントが等間隔に配置されているので120度毎に同一の形状となる。これを考慮して、基本形状となる一部を要素分割した断面形状を作成後、回転方向に展開することで同じ形状の要素分割を周期的に作成することができる。このように作成すると要素サイズを揃えることで精度を向上させることができる。また要素生成を短い時間でできる。
【0053】
なお、上記処理(図6)では、タイヤコード40の最内層から最外層までの各層間について全てバッファ層を定義する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッファ層を設ける層間を指定できるようにしてもよい。
【0054】
図13(B)には、上記のようにして作成した2次元モデルを示した。このように、各層間にバッファ層を設けて要素分割するだけなので、モデル化は非常に容易に可能である。
【0055】
(タイヤコードの3次元モデル作成)
【0056】
上記ステップ204の3次元形状を作成する処理では、図7の作成処理ルーチンが実行される。ステップ240では、上記ステップ202(図6の処理ルーチンの実行結果)で求められたタイヤコードの2次元形状である断面形状(2次元モデル)を読み取り、その2次元形状のうち第1層である最内層42を、次のステップ242においてタイヤコード40の長手方向に沿いかつ撚り方向に回転させつつ展開する。なお、このステップ242の処理は、要素分割の処理を含むものである。
【0057】
すなわち、第1層は、単撚りのタイヤコードであるので、タイヤコードの長手方向を軸として断面形状(2次元モデル)を回転させつつ、所定距離づつタイヤコード長手方向に押し出すことで3次元モデルを作成することができる(図8参照)。
【0058】
例えば、該当する層(つまり第1層)の撚り方向は既知であり、タイヤコードの長手方向の所定距離を定めれば、要素分割された断面形状(2次元モデル)をタイヤコードの長手方向に押し出すことでタイヤコードの第1層について3次元モデルを作成することができる。この長手方向の所定距離は、予め定めたピッチに対応して分割するときの要素の長さに対応させることが好ましい。この長手方向の所定距離だけ離間した位置に撚り方向に応じて回転された断面形状(2次元モデル)を形成し、両方の断面形状(2次元モデル)の間の断面形状(2次元モデル)の軌跡位置をつなぐべくソリッド要素でモデル作成すればよい。
【0059】
なお、第1層のフィラメント周囲に充填材を備える場合は、フィラメント周囲の充填材をモデル化して、ソリッド要素でモデル作成することは容易である。つまり、フィラメント周囲に充填材がある場合でも、その断面形状で要素分割されていれば、これをタイヤコード長手方向に押し出すことで該当層の3次元モデルを作成することができる。
【0060】
図14は、一例としてフィラメント48を3本有してそれらが同一の撚り方向に撚られた最内層42についての3次元モデルを示したものである。図14(A)は、フィラメント48のみで最内層42を構成した場合を示し、図14(B)は、フィラメント周囲に充填材を備えて最内層42を構成した場合を示す。
【0061】
図14に示すように、第1層(最内層42)は長手方向から見て時計回りに回転されて撚られている。1ピッチ当たり数分割して撚りながら長手方向に展開することで、3次元モデルを作成することができる。このモデル化では、フィラメントとその周囲の充填材は節点を共有しているので、フィラメントと充填材のコード長手方向の要素分割は同じになる。このとき、1ピッチ当たりの要素分割数を減らすと充填材表面の凹凸が増加するが要素数を減らすことで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。一方、要素分割数を増加すると表面は滑らかになり、要素数が増加することで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。図14の例では1ピッチ当たり10分割している。
【0062】
なお、フィラメント周囲に充填材が存在しない場合、充填材部分を空間としてモデル化することで、作成する3次元モデルを滑らかな形状にすることができる。すなわち、この場合、最内層42のフィラメントと、外表面(外接円50)の間の充填材部分を空白にすれば良い。言い換えれば、図14(B)に示す3次元モデルは、複数フィラメントから層を構成するフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードと扱うことができる。このフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードの外表面は、フィラメント単体のフィラメント群の3次元モデル(図14(A)参照)の外表面に比べて非常に滑らかなことが理解できる。
【0063】
上記のようにして第1層の3次元モデルの作成を終了すると、ステップ244へ進み、現在層の外方向の隣接する位置に、バッファ層及び外方向隣接層の2次元形状を設定する。ここでは、上記ステップ240で読み取ったタイヤコードの2次元形状である断面形状(2次元モデル)のうちバッファ層及び第2層である中間層44の2次元モデルを、最内層42の周囲に設定する。
【0064】
次のステップ246では、上記ステップ242と同様に外方向隣接層(ここでは第2層)についてタイヤコード40の長手方向に沿いかつ撚り方向に回転させつつ展開する。
【0065】
なお、第1層に対する第2層の撚り方向は、同一でも逆でもよい。この撚り方向は、第1層と第2層との関係に限定されるものではなく、各層の撚り方向が限定されないことであり、以下の説明で規定する撚り方向の規定は、それに限定されるものではない。つまり、撚り方向は、時計回りであっても反時計回りであっても良いもので、任意の撚り方向の組み合わせによりコードを構成することができる。
【0066】
図15は、一例としてフィラメント48を9本有してそれらが最内層42の周囲に同一の撚り方向に撚られた中間層44のみについての3次元モデルを示したものである。図15(A)は、フィラメント48のみで中間層44を構成した場合を示し、図15(B)は、フィラメント周囲に充填材を備えて中間層44を構成した場合を示す。
【0067】
図15に示すように、第2層(中間層44)は長手方向から見て反時計回りに回転されて撚られている。図15の例では撚りピッチは第1層の2倍に設定されている。1ピッチ当たり数分割して撚りながら長手方向に展開することで、3次元モデルを作成することができる。このモデル化では、フィラメントとその周囲の充填材は節点を共有しているので、フィラメントと充填材のコード長手方向の要素分割は同じになる。このとき、1ピッチ当たりの要素分割数を減らすと充填材表面の凹凸が増加するが要素数を減らすことで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。一方、要素分割数を増加すると表面は滑らかになり、要素数が増加することで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。図15の例では1ピッチ当たり20分割している。
【0068】
なお、フィラメント周囲に充填材が存在しない場合、上述のように充填材部分を空間としてモデル化することで、作成する3次元モデルを滑らかな形状にすることができる。すなわち、この場合、中間層44のフィラメントと、内外表面(内接円54,外接円56)の間の充填材部分を空白にすれば良い。言い換えれば、図15(B)に示す3次元モデルは、複数フィラメントから層を構成するフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードと扱うことができる。このフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードの内外表面は、フィラメント単体のフィラメント群の3次元モデル(図15(A)参照)の内外表面に比べて非常に滑らかなことが理解できる。
【0069】
以上のようにして外側隣接層(ここでは第2層)の3次元モデル作成が終了すると、ステップ250へ進み、タイヤコード40の全層についての3次元モデルの作成が終了したか否かを判断し、否定の場合、さらに隣接層について順次上記と同様に3次元モデルを作成する。すなわち、図9の例では、3層構造のため、最外層46についてステップ244乃至ステップ248の処理を実行する。一方、ステップ250で肯定されると、本処理ルーチンを終了する。
【0070】
なお、一例として、図16には第2層までモデル化した3次元モデルを、図17には第3層(最外層)までモデル化した3次元モデルを示した。
【0071】
以上の処理によって、内層から外層に向けて順次フィラメント群からなる層を形成し、隣り合う層間にバッファ層が設けられた複数層からなる3次元モデルを作成することができる。
【0072】
なお、上記処理(図7)では、タイヤコード40の最内層から最外層までの各層間について全てバッファ層を設ける場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッファ層が設けられる層間を指定することができるようにしてもよい。
【0073】
このように、本実施形態は、中心から外側に向かい2層以上複数の分類層で構成されるタイヤコードに容易に適用することができる。すなわち、ステップ222〜230の処理およびステップ244〜250の処理で説明したように、2層から最外層の分類層まで繰り返し適用するので、2層,3層,4層・・・、というように複数の層について適用できる。また、何れかの層を指定して適用することもできる。
【0074】
また、本実施形態では、各層間にバッファ層を設けてモデル化するので、各層間を拘束させたモデルを作成する場合と比較してモデル作成を容易かつ短時間に行うことができる。
【0075】
また、本発明は、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。すなわち、複数の分類層で構成されるタイヤコードを、単一層と定義することにより、本実施形態を、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。
【0076】
なお、図示は省略したが、上記と同様の処理によってスパイラル形状のタイヤコードについても3次元モデルを作成することができる。
【0077】
(挙動シミュレーション)
【0078】
次に、上記の3次元モデルのタイヤコードを用いて、タイヤモデルを形成し、タイヤの挙動について解析を行う一例を説明する。
【0079】
図2は、タイヤの挙動解析プログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、挙動解析の対象となるタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。なお、ステップ100における設定はタイヤ設計案に限定されるものではなく、現存するタイヤを解析する場合を含む。すなわち、現存するタイヤそのものを対象のモデルとして設定してもよい。次のステップ102では、タイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤのタイヤモデルを作成する。このタイヤモデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとする。従って、上記ステップ102で作成するタイヤモデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤ、及び路面(後述)等の対象物を小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。
【0080】
上記ステップ102のタイヤモデルの作成では、図3に示すタイヤモデル作成ルーチンが実行される。まず、ステップ112では、タイヤ径方向断面のモデル(タイヤ断面モデル、すなわちタイヤ断面データ)を作成する。また、タイヤ断面内のゴム、補教材(ベルト、プライ等、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねたもの等)をそれぞれ有限要素法のモデル化手法に応じてモデル化する。次のステップ114では、2次元データであるタイヤ断面データ(タイヤ径方向断面のモデル)を周方向に一周分(360度)展開し、タイヤの3次元(3D)モデルを作成する。
【0081】
なお、補教材(ベルト、プライ等、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねたもの等)を含むタイヤコードについては、後述するように詳細な解析モデルを作成するので、ここでは、一様なタイヤコードとしてモデルを作成すればよい。
【0082】
次に、図3のステップ116では、タイヤ各部のゴムの構成材料を設定する。このステップでは、タイヤの各部位に応じた剛性などの材料特性の構成材料を選択する。次のステップ118では、タイヤコードを詳細にモデル化するタイヤコードの解析モデルの作成処理を実行して本ルーチンを終了する。なお、ステップ118のタイヤコードの解析モデルの作成処理では、上述のタイヤコードの解析モデルを作成する処理ルーチン(図5参照)が実行される。
【0083】
上記のようにして作成したタイヤコード40の有限要素モデル(解析モデル)を含むタイヤモデルを作成した後には、図2のステップ104へ進み、路面の設定すなわち路面モデルの作成と共に路面状態の入力がなされる。このステップ104では、路面をモデル化し、そのモデル化した路面を実際の路面状態に設定するために入力するものである。路面のモデル化は、路面形状を要素分割してモデル化し、路面の摩擦係数μを選択設定することで路面状態を入力する。例えば、路面状態により乾燥(DRY)、濡れ(WET)、氷上、雪上、非舗装等に対応する路面の摩擦係数μが存在するので、摩擦係数μについて適正な値を選択することで、実際の路面状態を再現させることができる。
【0084】
なお、流体モデルを作成して、路面とタイヤモデルの間に設けても良い。流体モデルは、タイヤの一部(または全部)および接地面、タイヤが移動・変形する領域を含む流体領域を分割し、モデル化するものである。
【0085】
このようにして、路面状態の入力がなされると、次のステップ106において、境界条件の設定がなされる。この境界条件とは、タイヤモデルに解析上すなわちタイヤの挙動をシミュレートする上で必要なものであり、タイヤモデルに付与する各種条件である。このステップ106の境界条件の設定では、まず、タイヤモデルには内圧を与えて、タイヤモデルに回転変位及び直進変位(変位は力、速度でも良い)の少なくとも一方と、予め定めた負荷荷重と、の少なくとも1つを与える。なお、路面との摩擦を考慮する場合は、回転変位(または力、速度でもよい)もしくは直進変位(または力、速度でもよい)のどちらか一方のみでよい。
【0086】
次に、ステップ106までに作成されたり設定されたりした数値モデルをもとに、解析としてのタイヤモデルの変形計算を行う。すなわち、上記ステップ106で境界条件の設定が終了すると、ステップ108へ進み、タイヤモデルの変形計算を行う。このステップ108では、タイヤモデルおよび与えた境界条件より、有限要素法に基づいてタイヤモデルの変形計算を行う。この変形計算は、タイヤ転動時の状態を得るために(過渡的な状態を得るために)、タイヤモデルの変形計算を繰り返し(例えば1msec以内の計算を繰り返して行い)、その度に境界条件を更新するようにしてもよい。また、変形計算は、タイヤ変形が定常状態となることを想定した予め定めた計算時間を採用することができる。
【0087】
なお、タイヤモデルの変形計算を行うと、弾性率の高いフィラメント部の変形は小さくなり、弾性率の低いフィラメント周囲の仮想充填材の変形は大きくなる。また、バッファ層は各層の撚り回転方向や撚りピッチが異なる場合には変形が非常に大きくなり、要素が歪んで変形計算を行うことができなくなる場合がある。例えば図18(A)に示すように解析当初はバッファ層の要素がそれほど歪んでいない場合でも、解析が進むうちに同図(B)、(C)に示すようにバッファ層の要素の変形(歪み)が大きくなり解析が困難になる場合がある。
【0088】
このような場合、バッファ層の要素の変形が許容範囲外となるか否かを判断し、許容範囲外となる場合にはバッファ層のみ再度要素分割(リメッシュ)するようにしてもよい。これにより、同図(D)に示すようにバッファ層の要素の歪みを解消して解析を継続することが可能となる。このように、バッファ層のみをリメッシュすることにより、タイヤモデル全体をリメッシュする場合と比較してリメッシュに要する時間を短縮することができる。
【0089】
なお、リメッシュするか否かの判断、すなわち要素の変形が許容範囲外となるか否かの判断については、バッファ層のメッシュの捩れ角度やアスペクト比等の判断基準に基づいて判断することができ、例えばJAMA/JAPIA(日本自動車工業会/日本自動車部品工業会)のPDQ(Product Data Quality)ガイドラインV4.1のメッシュの品質に関する項目に基づいて判断することができる。
【0090】
次のステップ110では、上述の計算結果を出力する。この計算結果とは、タイヤ変形時の物理量を採用する。具体的には、サイドのたわみ量や接地形状、接地圧分布、タイヤ中心に作用する横力等である。
【0091】
なお、計算結果の出力は、タイヤの接地部の形状や接地圧の分布、タイヤ中心に作用する力等の値または分布を可視化することを採用してもよい。これらは計算結果の値や変化量または変化率、力の向き(ベクトル)そして分布から導出することができ、それらをタイヤモデル周辺やパターン周辺と共に線図等で表せば、把握しやすく提示可能な可視化をすることができる。
【0092】
このように、本実施の形態では、タイヤに含まれるタイヤコードを、詳細に有限要素モデルでモデル化して、そのモデル(解析モデル)を含むタイヤモデルでタイヤの挙動をより実際形状に沿った解析をすることが可能になる。従って、タイヤコードを簡略化した要素により解析するのに比べて高精度で解析することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、各層間にバッファ層を設けてモデル化するので、各層間において撚り回転方向や撚りピッチが異なる場合でも高精度に解析することが可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点とを接続することによりバッファ層を要素分割する場合について説明したが、このような方法では要素の生成が困難となる場合がある。
【0095】
そこで、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点又はバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点と、これらの節点とは独立して前記外周上又は内周上に設けた節点との各々について拘束要素を定義し、この拘束要素が相対的に移動しないように拘束する拘束条件を付与したモデルを作成するようにしてもよい。
【0096】
この拘束条件を付与する処理は、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが相対的に移動しないように、また、バッファ層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上に設けた節点とが相対的に移動しないように互いに拘束する拘束条件を設定して関連付ける処理である。これにより、内方向隣接層、バッファ層、外方向隣接層の拘束を維持したまま容易に要素分割することができる。
【0097】
また、拘束条件を付与するのではなく、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点又はバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点と、これらの節点とは独立して前記外周上又は内周上に設けた節点との各々について接触要素を定義し、この接触要素について接触条件を付与したモデルを作成するようにしてもよい。
【0098】
この接触条件とは、隣接する内方向隣接層、バッファ層、外方向隣接層の各層について相対的な移動の制限を規定するものである。そして、接触条件を付与する処理は、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが接触しつつ相対的に移動可能にする接触条件を設定して関連付ける処理、また、バッファ層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上に設けた節点とが接触しつつ相対的に移動可能にする接触条件を設定して関連付ける処理である。
【0099】
接触条件の一例は、摺動抵抗による接触条件、摩擦係数による接触条件、及び形状保存による接触条件の3種類がある。摺動抵抗による接触条件は、隣接する層の相対移動に対して予め定めた特性(関数)を有する摺動抵抗を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を摺動抵抗で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この摺動抵抗は、線形関数、徐々に大きくなる漸近特性の関数、徐々に小さくなる双曲線関数、入力に応じて摺動抵抗の値が段階的に変化する多項式による関数、そして非線形関数等及びこれらの組み合わせの関数によって定めることができる。例えば、所定の入力値までは、大きい摺動抵抗の所定値で、同一の位置を維持して移動する拘束状態となり、これを超える入力値以上で各々が所定量ズレを生じて離間する摺動状態となるように、関数を定めることができる。
【0100】
また、摩擦係数による接触条件は、隣接する層の相対移動(摺動)に対して予め定めた値の摩擦係数を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を摩擦係数で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この摩擦係数は、一定値であってもよく、上記と同様の各種関数で定めてもよい。
【0101】
形状保存による接触条件は、隣接する層の相対移動に対して予め定めた値の弾性係数等の形状保存係数を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を形状保存係数で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この形状保存係数は、一定値であってもよく、上記と同様の各種関数で定めてもよい。なお、形状保存係数は、層の変更を考慮すると、3次元の各方向に対して規定することが好ましい。これにより、3次元の各方向について接触条件を定めることができる。
【0102】
このように接触条件を付与した場合、各層の間で力や変位を伝達することができる。また、完全に拘束しないので、特に仮想充填材を使った場合等に摩擦係数を実測により求めたり、全体の変形が実測と合うように摩擦係数を設定することで全体の変形の精度を維持したままバッファ層の変形を低減することができる。
【0103】
なお、拘束条件や接触条件を付与する場合も、バッファ層のメッシュ品質が悪化した場合には、バッファ層のみリメッシュすることが好ましい。
【0104】
また、本実施の形態では、バッファ層を要素分割する場合について説明したが、これに限らず、要素分割を行わないメッシュレス法によりバッファ層をモデル化するようにしてもよい。メッシュレス法としては、例えばフリーメッシュ法やエレメントフリーガラーキン法等がある。
【0105】
この場合、バッファ層に任意の複数の点を定義し、公知のフリーメッシュ法やエレメントフリーガラーキン法等を用いて点同士の相互作用を演算することにより、バッファ層の変形を解析することができる。
【実施例】
【0106】
次に、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0107】
本実施例としてモデル化・試作したタイヤコードは、フィラメント直径(2r)が全て0.25mm、第1層がフィラメントを{2r/3・(3)1/2・0.125}mmの円周上に均等配置で3本並べ、第2層は第1層に接するように9本、第3層は第2層に接するように15本を配列したものである。撚りピッチは第1層から、5,10、15mmとし、タイヤコード長手方向の要素分割は第1層から10,20,30個/ピッチとした。このタイヤコードを長さ30mmだけモデル化した。また、フィラメント周囲に充填剤としてゴムを用いた。解析は両端平面内で固定し、長手方向に引っ張ることを行った。
【0108】
図19には、変形前後の3次元モデルを示した。同図(A)は変形前の3次元モデルであり、同図(B)は変形後の3次元モデルである。図から理解されるように、引張り変形によりフィラメントがコード長手方向となす角度が小さくなり、長手方向の節点間隔が大きくなるという実際形状に則した結果を得た。
【0109】
このように、本実施形態の解析モデルを用いることで、より高精度にタイヤコードを解析できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態にかかる、タイヤコードの解析モデルを作成すると共に作成した解析モデルを用いてタイヤの挙動シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータの概略図である。
【図2】本実施の形態にかかる、タイヤの挙動解析プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】タイヤモデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】タイヤ断面モデルを示す線図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる、タイヤコードの解析モデルを作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】タイヤコードの2次元モデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】タイヤコードの3次元モデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】単撚りのタイヤコードのモデル化の説明図である。
【図9】タイヤコードのフィラメント層を示すイメージ図である。
【図10】タイヤコードの最内層42のモデル化の説明図で、(A)は要素分割されたフィラメント、(B)は要素分割した充填材、(C)は外接円50に定めた拘束要素52を示している。
【図11】タイヤコードの中間層44のモデル化の説明図で、(A)は要素分割されたフィラメント、(B)は要素分割した充填材、(C)は外接円58に定めた拘束要素58を示している。
【図12】2次元モデルを示すイメージ図であり、(A)は3層のタイヤコード、(B)は2層のタイヤコードを示している。
【図13】3層のタイヤコードを3本束ねて構成したタイヤコードを示すイメージ図である。
【図14】最内層についての3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)はフィラメントのみ、(B)はフィラメント周囲に充填材を備えたものを示している。
【図15】中間層についての3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)はフィラメントのみ、(B)はフィラメント周囲に充填材を備えたものを示している。
【図16】第2層まで3次元モデル化したタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【図17】第3層まで3次元モデル化したタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【図18】バッファ層の要素の変形の様子を示すイメージ図である。
【図19】実施例にかかる変形前後の3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)は変形前の3次元モデル、(B)は変形後の3次元モデルである。
【図20】2層のフィラメントを撚って束ねたものを3個束ねたタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0111】
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
30 タイヤモデル
FD フレキシブルディスク(記録媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に使用されるタイヤを数値解析するときに用いられるタイヤコードに係るタイヤコードの解析モデル作成方法、装置、プログラム、及びタイヤ性能解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ挙動についての解析は、実際に設計・製造したタイヤを計測したり自動車に装着して得た性能試験結果を用いたりしたものから、計算機(コンピュータ)環境の発達に伴って、計算機上でシミュレーションによって実現できるようになってきている。このタイヤ挙動をシミュレーションによって解析する主要な方法としては、有限要素法(FEM)等の数値解析手法が主に用いられている。FEMは、構造体を有限個の要素でモデル化して、コンピュータを用いて構造体の挙動を解析する手法であり、その特徴から構造体を有限個の要素に分割する(以下、メッシュ分割、または要素分割という。)ことが必要である。予測精度の高いタイヤ挙動をシミュレーションするためには、有限個の要素で構成されるシミュレーション用のタイヤモデル(数値データから構成されている)を如何に実際のタイヤ形状と同じように製作するかが重要である。
【0003】
ところで、タイヤは、ゴム材料はもとより、タイヤコードを数多く含んで構成されている。このタイヤコードは、複数の芯(フィラメント)が複雑に撚られて束ねられて形成されて用いられる。そこで、タイヤをFEMによりシミュレーションするときにはタイヤコードの部分もモデル化することが好ましい。タイヤコードのモデル化を可能とする技術には、タイヤコードを等価な剛性を有するように簡素化してモデル化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、タイヤ中のケーブルビードのように、線状部材をリング状部材の周りに螺旋状に巻き付けて母材中に埋設した複合材のモデルを作成する方法において、リング状モデルが母材モデルと接する接触面が、母材モデルの接触面に対して相対変位を生じさせないように拘束条件をリング状モデルに付与する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−102424号公報
【特許文献2】特開2007−11474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたように、タイヤコードを等価な剛性を有するように簡素化したモデルに置き換えることでは、高精度の解析が困難である。すなわち、タイヤをモデル化する場合、タイヤ断面の要素を3次元展開してモデル化することが多い。ところが、タイヤコードは、数本の針金や繊維等のフィラメントが複数撚られながら束なって構成されていることが普通であり、この1本1本のフィラメントの撚り方向は様々であり、これを考慮しつつタイヤコードの断面からそのまま丁寧に有限要素モデル化することは複雑かつ要素数の増大を招き、事実上困難である。例えば図20には2層のフィラメントを撚りながら束ねたものを3個束ねたタイヤコードをモデル化した例を示したが、このようなタイヤコードをモデル化するのは困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術では、例えば線状部材とリング状部材との間の隙間についてはモデルとして考慮されていないため、高精度の解析が困難である。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、有限要素法(FEM)等の数値解析手法によるタイヤの解析等において、計算上でタイヤコードの解析を高精度で実施することを可能とするタイヤコードの解析モデル作成方法、装置、プログラム、及びタイヤ性能解析方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成方法であって、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する工程と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する工程と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第2の2次元領域を定義する工程と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する工程と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記バッファ層を、数値計算可能な所定分割要素に分割する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点との少なくとも一方について、各々相対的に移動しないように拘束する拘束条件を設定して関連付ける工程をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法であって、前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点とについて、各々の相対的な移動の制限を規定する接触条件を設定して関連付ける工程をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記第2層の外側の第3層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第2層との間にバッファ層が形成されるように第3の2次元領域を設定する工程と、前記第3の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第3層を形成する工程と、をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
なお、本発明は、中心から外側に向かい3層を超える複数の分類層で構成されるタイヤコードに適用することができる。すなわち、請求項5を4層から最外層の分類層まで繰り返し適用する、もしくは、複数の分類層の最外層または途中の層に適用すればよい。例えば、n(nは4以上の自然数)個の分類層で構成されるタイヤコードは、第1層から第n層まで順次バッファ層を介して構成される。そこで、第4層以降の各層(第k層:3<k<n)について、第(k−1)層を第3層としかつ第(k−2)層を第2層と置き換えることで、各層について本発明を適用することができる。この場合、第1層から第n層までの全ての層の各々に本発明を適用することに限定されない。すなわち、第1層から第n層までの途中の第k番目(3<k<n)の分類層にのみ本発明を適用することができる。
【0014】
また、本発明は、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。すなわち、複数の分類層で構成されるタイヤコードを、単一層と定義することにより、本発明を、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記2次元領域は、フィラメント要素と充填材との各領域から構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記バッファ領域を、メッシュレス法によりモデル化したバッファ層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法の発明であって、前記メッシュレス法は、フリーメッシュ法又はエレメントフリーガラーキン法であることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成装置であって、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデルを作成するためのコンピュータを、前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、として機能させるタイヤコードの解析モデル作成プログラムである。
【0020】
請求項11記載の発明は、前記請求項2〜請求項6の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法により作成されたタイヤコードの解析モデルに基づいて、タイヤコード又は当該タイヤコードを含むタイヤについて変形計算を行う工程と、前記変形計算において前記バッファ層の所定分割要素の変形が許容範囲外となった場合に、前記バッファ層を再度所定分割要素に分割し直す工程と、を含むタイヤ性能解析方法である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、計算上でタイヤコードの解析を高精度で実施することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、タイヤの挙動解析のための解析モデルの作成に本発明を適用したものである。
【0023】
(装置構成)
【0024】
図1にはタイヤコードの解析モデルを作成すると共に作成した解析モデルを用いてタイヤの挙動シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータの概略が示されている。このパーソナルコンピュータは、データ等を入力するためのキーボード10、予め記憶された処理プログラムに従ってタイヤの性能を予測するコンピュータ本体12、及びコンピュータ本体12の演算結果等を表示するCRT14から構成されている。
【0025】
なお、コンピュータ本体12には、記録媒体としてのフレキシブルディスク(FD)が挿抜可能なフレキシブルディスクユニット(FDU)を備えている。なお、後述する処理ルーチン等は、FDUを用いてフレキシブルディスクFDに対して読み書き可能である。従って、後述するプログラムや処理ルーチンは、予めFDに記録しておき、FDUを介してFDに記録された処理プログラムを実行してもよい。また、コンピュータ本体12にハードディスク装置等の大容量記憶装置(図示省略)を接続し、FDに記録された処理プログラムを大容量記憶装置(図示省略)へ格納(インストール)して実行するようにしてもよい。また、記録媒体としては、CD−ROMやDVD等の光ディスクや、MD,MO等の光磁気ディスクがあり、これらを用いるときには、上記FDUに代えてまたはさらに、対応する装置を用いればよい。また、パーソナルコンピュータの他に、ワークステーションやスーパーコンピュータをタイヤ解析に用いてもよいことは勿論である。
【0026】
(タイヤコード)
【0027】
まず、タイヤに含まれるタイヤコード、特にスチールコードは、複数の細いコード(以下、フィラメントという。)を撚り合せて1本のタイヤコードになっている。この場合、複数本のフィラメントを撚り合せてできたタイヤコードを第1層(単層撚り)タイヤコードとして、その周囲に第2層のフィラメントを撚り合せて2層撚りのタイヤコードを作ることができる。このとき、第1層と第2層では撚り合せる回転方向を逆にすることが行われる。また撚りのピッチ、フィラメント径は第1層目と第2層で同一とは限らない。これを繰り返すことで複数層のタイヤコードを作成することができる。
【0028】
また、タイヤコードのフィラメント間にはゴムなどの充填材(マトリックス)を入れることで、タイヤ内で使用されかつ外傷でコード周囲に水分が付着した場合の錆を抑制し耐久性能を向上することができる。これらの単数または複数層の撚りタイヤコードをさらに撚り合せることで、より太いタイヤコードを作成することができる。
【0029】
一方、フィラメント間の充填材をモデル化しない場合、フィラメント間の接触有無に関わらず、フィラメントだけをモデル化すればよく、簡単に形状モデルを作成できる。この場合、フィラメント相互に接触を定義しておけば、フィラメントの挙動を解析できる。
【0030】
図8に示すように、例えば、単撚りコードの場合、フィラメント周囲に充填材をモデル化し、ソリッド要素でモデル作成することは容易である。また、複数層撚りの場合、撚り合わせる方向とピッチが層間で同じであればフィラメント相互の位置関係はタイヤコードの長手方向を軸として回転させればどの場所でも同じになる。従って、フィラメント周囲に充填材がある場合でも、その断面で要素分割できれば、これをタイヤコード長手方向に押し出すことでタイヤコードの全体モデルを作成することができる。
【0031】
しかしながら、通常のコードは撚り合わせる方向とピッチが層間で異なっており、上記のように簡単に押し出してタイヤコードのモデルを作成することができない。また、CADなどを用いて3次元のソリッドモデルを作成することは可能である。ところが、フィラメント間の充填材形状が非常に複雑なことから要素分割した分割要素(メッシュ)を作成することは非常に困難である。具体的には、自動的に要素分割するものでは、4面体を作成することができない場合がある。また、タイヤ用コードの充填材として通常使われるゴムはほぼ非圧縮性を持ち、ポアソン比が0.5に近い。このような材料を精度良く有限要素法で解析する場合、6面体や5面体(例えば、三角柱)が必要なことが有限要素法上では知られている。このような5、6面体をCADデータで得られた充填材部分に自動的に要素生成することは、事実上不可能であるので、タイヤコードを考慮して解析精度を向上させることはできなかった。
【0032】
(タイヤコードのモデル化)
【0033】
上記の事実を考慮して、本実施形態では、タイヤコードを層別に分類してモデル化して各層間に関係を持たせることで、タイヤコード全体をモデル化する。
【0034】
図5は、パーソナルコンピュータ(図1)で実行される本実施の形態にかかるタイヤコードの解析モデル作成プログラムの処理ルーチンを示すものである。図5の処理が実行されることによって、タイヤコード単体またはタイヤ設計案に含まれるタイヤコードを数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤコードの解析モデルが作成され、そのデータをパーソナルコンピュータに記憶することができる。このタイヤコードの解析モデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとし、作成するタイヤコードの解析モデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤコードを小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。
【0035】
まず、図5のステップ200では、解析モデルとして作成するモデル化対象のタイヤコードが指定される。このステップ200では、解析モデル作成の対象となるタイヤコードまたは、それを含むタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。なお、上記ではタイヤ設計案に限定されるものではなく、現存するタイヤを解析する場合を含む。すなわち、現存するタイヤに含まれるタイヤコードそのものを対象のモデルとして設定してもよい。
【0036】
例えば、ステップ200では、タイヤモデルに含まれるタイヤコードのうちの何れか1つのタイヤコードを選択することによって指定する。この指定は、ユーザのキーボード入力値を読み取って対応するタイヤ内の部位をタイヤコードとして設定したり、タイヤの設計案のデータから予めタイヤコードとして定めた部位を自動的に設定したりすることができる。なお、このステップ200は、指定されたタイヤコードについてのヤング率、せん断弾性率、及びポアソン比等の材料特性や、フィラメントの直径や撚り方向そして層構成等の形状に関するデータを、取得するものとする。
【0037】
図4はタイヤ断面モデルの一例を示すもので、複数のゴム部材毎に分割されたカーカス22を有する空気入りタイヤ20を示している。このカーカス22はビード26により折り返されている。このカーカス22の内側はインナーライナー24とされ、インナーライナー24に延長上にはビードゴム36が配置している。また、折り返されたカーカス22により形成される略三角形状の領域はビードフィラー28とされている。カーカス22の上方には、ベルト30が配置しており、このベルト30の半径方向外側には溝が形成されたトレッドゴム32が配置し、カーカス22の軸方向外側にはサイドゴム34が配置している。なお、タイヤ断面モデルをゴム部材毎に複数分割した例を挙げたが、設計目的によって3角形等の任意の形状に分割してもよい。これらのタイヤを構成する部材に含まれるタイヤコードのうちの何れか1つのタイヤコードを選択するようにすればよい。
【0038】
次に、詳細は後述するが、図5のステップ202では、指定されたタイヤコードの2次元形状(断面形状または2次元モデルという場合がある)を作成し、次のステップ204においてその作成された2次元形状をタイヤコードの長手方向に展開して3次元形状を作成する。指定したタイヤコードのモデル化が終了すると、タイヤモデルに含まれる全てのタイヤモデルについて上記処理が終了したか否かを判断し(ステップ206)、肯定されると、本処理ルーチンを終了する。一方、ステップ206で否定されると、ステップ200へ戻り、他のタイヤコードについて上記処理を繰り返し実行する。
【0039】
以下、説明を簡単にするために、タイヤコードとしてベルトが指定され、ベルトに含まれる1本のタイヤコードについて数値計算可能な解析モデルとしてモデル化する場合の一例を詳細に説明する。なお、本発明は、タイヤコードをベルトに限定するものではなく、金属線等のフィラメントを複数束ねたものであれば任意のものに適用できる。ベルトは、数本の針金等のフィラメントが複数束なって構成されているコードを含むことが多い。このベルトについて、1本1本の針金毎にモデル化して解析モデルを得る。すなわち、本実施の形態では、フィラメントである金属線を束ねたベルトをタイヤコードの一例として、各フィラメントの撚り方向を含めて詳細にモデル化してタイヤコードの解析モデルを得る。
【0040】
(タイヤコードの2次元モデル作成)
【0041】
上記ステップ202の断面形状(2次元モデル)を作成する処理では、図6の作成処理ルーチンが実行される。ステップ210では、上記ステップ200で指定されたタイヤコードの断面構造及び材料特性を読み取り、次のステップ212においてフィラメントを層別に分類する。この分類は、指定されたタイヤコードに含まれる複数のフィラメントを、同一の撚り方向のフィラメント毎に層別に分類するものである。図9には、一例として最内層42、中間層44、及び最外層46の各々に同一の撚り方向のフィラメント48を有する3層構造のタイヤコード40を示した。
【0042】
次のステップ214では、第1層のフィラメント(断面)について所定形状となるように要素分割し、次のステップ216において第1層のフィラメント群の周囲を囲む外接形状を定める。図10(A)には、第1層としてタイヤコード40の最内層42に含まれるフィラメント48の各々が要素分割されると共に、フィラメント群の周囲を囲む外接形状としてフィラメント48の外接円50が定められた場合が示されている。上記では第1層を最内層42に定めたが、第1層は最外層46でもよい。
【0043】
なお、図10の例では外接形状として外接円50を採用した場合を示したが、外接形状は、円形に限らず楕円、四角、三角形、多角形等の形状でも良い。またフィラメント間で凹形状や凸形状になっていても良い。
【0044】
次に、ステップ218では、フィラメント48の周囲に存在する充填材について所定形状となるように要素分割する(図10(B)参照)。なお、この充填材の要素分割は、フィラメント48の周囲に存在する場合を考慮するときにのみ実行する。すなわち、タイヤコード40をモデル化する場合、少なくともフィラメント48をモデル化することで充分な場合もあるため、充填材の要素分割は、必ずしも必要ではない。すなわちフィラメント単体の解析を行う場合等は、定義する必要はない。
【0045】
以上のようにして第1層の断面形状の設定が終了すると、第1層の隣接層について順次上記と同様に断面形状を設定する。詳細には、ステップ222へ進み、外方向の隣接層、ここでは第2層について上記ステップ214と同様に要素分割する。次のステップ224では上記ステップ216と同様に外方向隣接層(ここでは第2層)のフィラメント群の周囲を囲む外接形状を定める。また、外方向隣接層(ここでは第2層)のフィラメント群の内側に内接形状を定める。この内接形状は、内方向隣接層(ここでは第1層)の外接形状との間に隙間、すなわちバッファ層が形成されるように定める。
【0046】
図11(A)には、第2層としてタイヤコード40の中間層44に含まれるフィラメント48の各々が要素分割されると共に、フィラメント群の周囲を囲む外接形状としてフィラメント48の外接円56が定められかつ内接形状として内接円54が定められた場合が示されている。
【0047】
なお、図11の例では外接形状として円形状を採用した場合を示したが、円形状に限らず楕円、四角、三角形、多角形等の形状でも良い。またフィラメント間で凹形状や凸形状になっていても良い。
【0048】
次のステップ226では、上記ステップ218と同様に、フィラメント48の周囲に存在する充填材について所定形状となるように要素分割する(図11(B)参照)。なお、この充填材の要素分割は、上記と同様にフィラメント単体の解析を行う場合等は、定義する必要はない。
【0049】
また、図12には、第1層及び第2層を要素分割した場合が示されている。同図に示すように、第1層の外接円50と第2層の内接円54との間にバッファ層57が設けられている。このように第1層と第2層との間にバッファ層57を設けることにより、バッファ層を設けずに第1層と第2層とを拘束させるモデル等の場合と比較して、モデル作成が容易となる。
【0050】
次のステップ228では、バッファ層57を要素分割する。例えば図13(A)に示すように、第1層のフィラメントや充填剤について要素分割した際に生成された節点と、第2層のフィラメントや充填剤について要素分割した際に生成された節点と、を接続することによりバッファ層57を要素分割することができる。なお、充填剤について要素分割しない場合には、第1層の外接円50上と第2層の内接円54上に節点を適宜設定し、これらを接続することでバッファ層57を要素分割することができる。
【0051】
以上のようにして外側隣接層(ここでは第2層)の断面形状の設定が終了すると、ステップ230へ進み、タイヤコード40の全層についての断面形状の設定が終了したか否かを判断し、否定の場合、さらに隣接層について順次上記と同様に断面形状を設定する。すなわち、図9の例では、3層構造のため、最外層46についてステップ222乃至ステップ228の処理を実行する。一方、ステップ230で肯定されると、本処理ルーチンを終了する。
【0052】
上記断面形状の2次元モデルを作成するときには、断面形状の全体を同時に作成することも可能だが、断面内の一部について2次元モデルを作成した後に、作成した2次元モデルを複写することにより、短時間かつ高精度に断面形状の2次元モデルを作成することができる。例えば、図10に示すように、最内層42は回転方向への対称性を有しており、最内層42では3本のフィラメントが等間隔に配置されているので120度毎に同一の形状となる。これを考慮して、基本形状となる一部を要素分割した断面形状を作成後、回転方向に展開することで同じ形状の要素分割を周期的に作成することができる。このように作成すると要素サイズを揃えることで精度を向上させることができる。また要素生成を短い時間でできる。
【0053】
なお、上記処理(図6)では、タイヤコード40の最内層から最外層までの各層間について全てバッファ層を定義する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッファ層を設ける層間を指定できるようにしてもよい。
【0054】
図13(B)には、上記のようにして作成した2次元モデルを示した。このように、各層間にバッファ層を設けて要素分割するだけなので、モデル化は非常に容易に可能である。
【0055】
(タイヤコードの3次元モデル作成)
【0056】
上記ステップ204の3次元形状を作成する処理では、図7の作成処理ルーチンが実行される。ステップ240では、上記ステップ202(図6の処理ルーチンの実行結果)で求められたタイヤコードの2次元形状である断面形状(2次元モデル)を読み取り、その2次元形状のうち第1層である最内層42を、次のステップ242においてタイヤコード40の長手方向に沿いかつ撚り方向に回転させつつ展開する。なお、このステップ242の処理は、要素分割の処理を含むものである。
【0057】
すなわち、第1層は、単撚りのタイヤコードであるので、タイヤコードの長手方向を軸として断面形状(2次元モデル)を回転させつつ、所定距離づつタイヤコード長手方向に押し出すことで3次元モデルを作成することができる(図8参照)。
【0058】
例えば、該当する層(つまり第1層)の撚り方向は既知であり、タイヤコードの長手方向の所定距離を定めれば、要素分割された断面形状(2次元モデル)をタイヤコードの長手方向に押し出すことでタイヤコードの第1層について3次元モデルを作成することができる。この長手方向の所定距離は、予め定めたピッチに対応して分割するときの要素の長さに対応させることが好ましい。この長手方向の所定距離だけ離間した位置に撚り方向に応じて回転された断面形状(2次元モデル)を形成し、両方の断面形状(2次元モデル)の間の断面形状(2次元モデル)の軌跡位置をつなぐべくソリッド要素でモデル作成すればよい。
【0059】
なお、第1層のフィラメント周囲に充填材を備える場合は、フィラメント周囲の充填材をモデル化して、ソリッド要素でモデル作成することは容易である。つまり、フィラメント周囲に充填材がある場合でも、その断面形状で要素分割されていれば、これをタイヤコード長手方向に押し出すことで該当層の3次元モデルを作成することができる。
【0060】
図14は、一例としてフィラメント48を3本有してそれらが同一の撚り方向に撚られた最内層42についての3次元モデルを示したものである。図14(A)は、フィラメント48のみで最内層42を構成した場合を示し、図14(B)は、フィラメント周囲に充填材を備えて最内層42を構成した場合を示す。
【0061】
図14に示すように、第1層(最内層42)は長手方向から見て時計回りに回転されて撚られている。1ピッチ当たり数分割して撚りながら長手方向に展開することで、3次元モデルを作成することができる。このモデル化では、フィラメントとその周囲の充填材は節点を共有しているので、フィラメントと充填材のコード長手方向の要素分割は同じになる。このとき、1ピッチ当たりの要素分割数を減らすと充填材表面の凹凸が増加するが要素数を減らすことで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。一方、要素分割数を増加すると表面は滑らかになり、要素数が増加することで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。図14の例では1ピッチ当たり10分割している。
【0062】
なお、フィラメント周囲に充填材が存在しない場合、充填材部分を空間としてモデル化することで、作成する3次元モデルを滑らかな形状にすることができる。すなわち、この場合、最内層42のフィラメントと、外表面(外接円50)の間の充填材部分を空白にすれば良い。言い換えれば、図14(B)に示す3次元モデルは、複数フィラメントから層を構成するフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードと扱うことができる。このフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードの外表面は、フィラメント単体のフィラメント群の3次元モデル(図14(A)参照)の外表面に比べて非常に滑らかなことが理解できる。
【0063】
上記のようにして第1層の3次元モデルの作成を終了すると、ステップ244へ進み、現在層の外方向の隣接する位置に、バッファ層及び外方向隣接層の2次元形状を設定する。ここでは、上記ステップ240で読み取ったタイヤコードの2次元形状である断面形状(2次元モデル)のうちバッファ層及び第2層である中間層44の2次元モデルを、最内層42の周囲に設定する。
【0064】
次のステップ246では、上記ステップ242と同様に外方向隣接層(ここでは第2層)についてタイヤコード40の長手方向に沿いかつ撚り方向に回転させつつ展開する。
【0065】
なお、第1層に対する第2層の撚り方向は、同一でも逆でもよい。この撚り方向は、第1層と第2層との関係に限定されるものではなく、各層の撚り方向が限定されないことであり、以下の説明で規定する撚り方向の規定は、それに限定されるものではない。つまり、撚り方向は、時計回りであっても反時計回りであっても良いもので、任意の撚り方向の組み合わせによりコードを構成することができる。
【0066】
図15は、一例としてフィラメント48を9本有してそれらが最内層42の周囲に同一の撚り方向に撚られた中間層44のみについての3次元モデルを示したものである。図15(A)は、フィラメント48のみで中間層44を構成した場合を示し、図15(B)は、フィラメント周囲に充填材を備えて中間層44を構成した場合を示す。
【0067】
図15に示すように、第2層(中間層44)は長手方向から見て反時計回りに回転されて撚られている。図15の例では撚りピッチは第1層の2倍に設定されている。1ピッチ当たり数分割して撚りながら長手方向に展開することで、3次元モデルを作成することができる。このモデル化では、フィラメントとその周囲の充填材は節点を共有しているので、フィラメントと充填材のコード長手方向の要素分割は同じになる。このとき、1ピッチ当たりの要素分割数を減らすと充填材表面の凹凸が増加するが要素数を減らすことで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。一方、要素分割数を増加すると表面は滑らかになり、要素数が増加することで解析時間を短縮できる3次元モデルを提供できる。図15の例では1ピッチ当たり20分割している。
【0068】
なお、フィラメント周囲に充填材が存在しない場合、上述のように充填材部分を空間としてモデル化することで、作成する3次元モデルを滑らかな形状にすることができる。すなわち、この場合、中間層44のフィラメントと、内外表面(内接円54,外接円56)の間の充填材部分を空白にすれば良い。言い換えれば、図15(B)に示す3次元モデルは、複数フィラメントから層を構成するフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードと扱うことができる。このフィラメント群と仮想充填材とから構成したタイヤコードの内外表面は、フィラメント単体のフィラメント群の3次元モデル(図15(A)参照)の内外表面に比べて非常に滑らかなことが理解できる。
【0069】
以上のようにして外側隣接層(ここでは第2層)の3次元モデル作成が終了すると、ステップ250へ進み、タイヤコード40の全層についての3次元モデルの作成が終了したか否かを判断し、否定の場合、さらに隣接層について順次上記と同様に3次元モデルを作成する。すなわち、図9の例では、3層構造のため、最外層46についてステップ244乃至ステップ248の処理を実行する。一方、ステップ250で肯定されると、本処理ルーチンを終了する。
【0070】
なお、一例として、図16には第2層までモデル化した3次元モデルを、図17には第3層(最外層)までモデル化した3次元モデルを示した。
【0071】
以上の処理によって、内層から外層に向けて順次フィラメント群からなる層を形成し、隣り合う層間にバッファ層が設けられた複数層からなる3次元モデルを作成することができる。
【0072】
なお、上記処理(図7)では、タイヤコード40の最内層から最外層までの各層間について全てバッファ層を設ける場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、バッファ層が設けられる層間を指定することができるようにしてもよい。
【0073】
このように、本実施形態は、中心から外側に向かい2層以上複数の分類層で構成されるタイヤコードに容易に適用することができる。すなわち、ステップ222〜230の処理およびステップ244〜250の処理で説明したように、2層から最外層の分類層まで繰り返し適用するので、2層,3層,4層・・・、というように複数の層について適用できる。また、何れかの層を指定して適用することもできる。
【0074】
また、本実施形態では、各層間にバッファ層を設けてモデル化するので、各層間を拘束させたモデルを作成する場合と比較してモデル作成を容易かつ短時間に行うことができる。
【0075】
また、本発明は、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。すなわち、複数の分類層で構成されるタイヤコードを、単一層と定義することにより、本実施形態を、複数の分類層で構成されるタイヤコードを複数束ねて構成したタイヤコード群または複数撚りつつ構成したタイヤコード群に適用することができる。
【0076】
なお、図示は省略したが、上記と同様の処理によってスパイラル形状のタイヤコードについても3次元モデルを作成することができる。
【0077】
(挙動シミュレーション)
【0078】
次に、上記の3次元モデルのタイヤコードを用いて、タイヤモデルを形成し、タイヤの挙動について解析を行う一例を説明する。
【0079】
図2は、タイヤの挙動解析プログラムの処理ルーチンを示すものである。ステップ100では、挙動解析の対象となるタイヤの設計案(タイヤ形状、構造、材料など)を定める。なお、ステップ100における設定はタイヤ設計案に限定されるものではなく、現存するタイヤを解析する場合を含む。すなわち、現存するタイヤそのものを対象のモデルとして設定してもよい。次のステップ102では、タイヤ設計案を数値解析上のモデルに落とし込むためのタイヤのタイヤモデルを作成する。このタイヤモデルの作成は、用いる数値解析手法により若干異なる。本実施の形態では数値解析手法として有限要素法(FEM)を用いるものとする。従って、上記ステップ102で作成するタイヤモデルは、有限要素法(FEM)に対応した要素分割、例えば、メッシュ分割によって複数の要素に分割され、タイヤを数値的・解析的手法に基づいて作成されたコンピュータプログラムヘのインプットデータ形式に数値化したものをいう。この要素分割とはタイヤ、及び路面(後述)等の対象物を小さな幾つかの(有限の)小部分に分割することをいう。この小部分ごとに計算を行い全ての小部分について計算した後、全部の小部分を足し合わせることにより全体の応答を得ることができる。
【0080】
上記ステップ102のタイヤモデルの作成では、図3に示すタイヤモデル作成ルーチンが実行される。まず、ステップ112では、タイヤ径方向断面のモデル(タイヤ断面モデル、すなわちタイヤ断面データ)を作成する。また、タイヤ断面内のゴム、補教材(ベルト、プライ等、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねたもの等)をそれぞれ有限要素法のモデル化手法に応じてモデル化する。次のステップ114では、2次元データであるタイヤ断面データ(タイヤ径方向断面のモデル)を周方向に一周分(360度)展開し、タイヤの3次元(3D)モデルを作成する。
【0081】
なお、補教材(ベルト、プライ等、鉄・有機繊維等でできた補強コードをシート状に束ねたもの等)を含むタイヤコードについては、後述するように詳細な解析モデルを作成するので、ここでは、一様なタイヤコードとしてモデルを作成すればよい。
【0082】
次に、図3のステップ116では、タイヤ各部のゴムの構成材料を設定する。このステップでは、タイヤの各部位に応じた剛性などの材料特性の構成材料を選択する。次のステップ118では、タイヤコードを詳細にモデル化するタイヤコードの解析モデルの作成処理を実行して本ルーチンを終了する。なお、ステップ118のタイヤコードの解析モデルの作成処理では、上述のタイヤコードの解析モデルを作成する処理ルーチン(図5参照)が実行される。
【0083】
上記のようにして作成したタイヤコード40の有限要素モデル(解析モデル)を含むタイヤモデルを作成した後には、図2のステップ104へ進み、路面の設定すなわち路面モデルの作成と共に路面状態の入力がなされる。このステップ104では、路面をモデル化し、そのモデル化した路面を実際の路面状態に設定するために入力するものである。路面のモデル化は、路面形状を要素分割してモデル化し、路面の摩擦係数μを選択設定することで路面状態を入力する。例えば、路面状態により乾燥(DRY)、濡れ(WET)、氷上、雪上、非舗装等に対応する路面の摩擦係数μが存在するので、摩擦係数μについて適正な値を選択することで、実際の路面状態を再現させることができる。
【0084】
なお、流体モデルを作成して、路面とタイヤモデルの間に設けても良い。流体モデルは、タイヤの一部(または全部)および接地面、タイヤが移動・変形する領域を含む流体領域を分割し、モデル化するものである。
【0085】
このようにして、路面状態の入力がなされると、次のステップ106において、境界条件の設定がなされる。この境界条件とは、タイヤモデルに解析上すなわちタイヤの挙動をシミュレートする上で必要なものであり、タイヤモデルに付与する各種条件である。このステップ106の境界条件の設定では、まず、タイヤモデルには内圧を与えて、タイヤモデルに回転変位及び直進変位(変位は力、速度でも良い)の少なくとも一方と、予め定めた負荷荷重と、の少なくとも1つを与える。なお、路面との摩擦を考慮する場合は、回転変位(または力、速度でもよい)もしくは直進変位(または力、速度でもよい)のどちらか一方のみでよい。
【0086】
次に、ステップ106までに作成されたり設定されたりした数値モデルをもとに、解析としてのタイヤモデルの変形計算を行う。すなわち、上記ステップ106で境界条件の設定が終了すると、ステップ108へ進み、タイヤモデルの変形計算を行う。このステップ108では、タイヤモデルおよび与えた境界条件より、有限要素法に基づいてタイヤモデルの変形計算を行う。この変形計算は、タイヤ転動時の状態を得るために(過渡的な状態を得るために)、タイヤモデルの変形計算を繰り返し(例えば1msec以内の計算を繰り返して行い)、その度に境界条件を更新するようにしてもよい。また、変形計算は、タイヤ変形が定常状態となることを想定した予め定めた計算時間を採用することができる。
【0087】
なお、タイヤモデルの変形計算を行うと、弾性率の高いフィラメント部の変形は小さくなり、弾性率の低いフィラメント周囲の仮想充填材の変形は大きくなる。また、バッファ層は各層の撚り回転方向や撚りピッチが異なる場合には変形が非常に大きくなり、要素が歪んで変形計算を行うことができなくなる場合がある。例えば図18(A)に示すように解析当初はバッファ層の要素がそれほど歪んでいない場合でも、解析が進むうちに同図(B)、(C)に示すようにバッファ層の要素の変形(歪み)が大きくなり解析が困難になる場合がある。
【0088】
このような場合、バッファ層の要素の変形が許容範囲外となるか否かを判断し、許容範囲外となる場合にはバッファ層のみ再度要素分割(リメッシュ)するようにしてもよい。これにより、同図(D)に示すようにバッファ層の要素の歪みを解消して解析を継続することが可能となる。このように、バッファ層のみをリメッシュすることにより、タイヤモデル全体をリメッシュする場合と比較してリメッシュに要する時間を短縮することができる。
【0089】
なお、リメッシュするか否かの判断、すなわち要素の変形が許容範囲外となるか否かの判断については、バッファ層のメッシュの捩れ角度やアスペクト比等の判断基準に基づいて判断することができ、例えばJAMA/JAPIA(日本自動車工業会/日本自動車部品工業会)のPDQ(Product Data Quality)ガイドラインV4.1のメッシュの品質に関する項目に基づいて判断することができる。
【0090】
次のステップ110では、上述の計算結果を出力する。この計算結果とは、タイヤ変形時の物理量を採用する。具体的には、サイドのたわみ量や接地形状、接地圧分布、タイヤ中心に作用する横力等である。
【0091】
なお、計算結果の出力は、タイヤの接地部の形状や接地圧の分布、タイヤ中心に作用する力等の値または分布を可視化することを採用してもよい。これらは計算結果の値や変化量または変化率、力の向き(ベクトル)そして分布から導出することができ、それらをタイヤモデル周辺やパターン周辺と共に線図等で表せば、把握しやすく提示可能な可視化をすることができる。
【0092】
このように、本実施の形態では、タイヤに含まれるタイヤコードを、詳細に有限要素モデルでモデル化して、そのモデル(解析モデル)を含むタイヤモデルでタイヤの挙動をより実際形状に沿った解析をすることが可能になる。従って、タイヤコードを簡略化した要素により解析するのに比べて高精度で解析することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、各層間にバッファ層を設けてモデル化するので、各層間において撚り回転方向や撚りピッチが異なる場合でも高精度に解析することが可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点とを接続することによりバッファ層を要素分割する場合について説明したが、このような方法では要素の生成が困難となる場合がある。
【0095】
そこで、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点又はバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点と、これらの節点とは独立して前記外周上又は内周上に設けた節点との各々について拘束要素を定義し、この拘束要素が相対的に移動しないように拘束する拘束条件を付与したモデルを作成するようにしてもよい。
【0096】
この拘束条件を付与する処理は、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが相対的に移動しないように、また、バッファ層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上に設けた節点とが相対的に移動しないように互いに拘束する拘束条件を設定して関連付ける処理である。これにより、内方向隣接層、バッファ層、外方向隣接層の拘束を維持したまま容易に要素分割することができる。
【0097】
また、拘束条件を付与するのではなく、バッファ層の内方向隣接層の外周上の節点又はバッファ層の外方向隣接層の内周上の節点と、これらの節点とは独立して前記外周上又は内周上に設けた節点との各々について接触要素を定義し、この接触要素について接触条件を付与したモデルを作成するようにしてもよい。
【0098】
この接触条件とは、隣接する内方向隣接層、バッファ層、外方向隣接層の各層について相対的な移動の制限を規定するものである。そして、接触条件を付与する処理は、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが接触しつつ相対的に移動可能にする接触条件を設定して関連付ける処理、また、バッファ層の外周上の節点とバッファ層の外方向隣接層の内周上に設けた節点とが接触しつつ相対的に移動可能にする接触条件を設定して関連付ける処理である。
【0099】
接触条件の一例は、摺動抵抗による接触条件、摩擦係数による接触条件、及び形状保存による接触条件の3種類がある。摺動抵抗による接触条件は、隣接する層の相対移動に対して予め定めた特性(関数)を有する摺動抵抗を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を摺動抵抗で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この摺動抵抗は、線形関数、徐々に大きくなる漸近特性の関数、徐々に小さくなる双曲線関数、入力に応じて摺動抵抗の値が段階的に変化する多項式による関数、そして非線形関数等及びこれらの組み合わせの関数によって定めることができる。例えば、所定の入力値までは、大きい摺動抵抗の所定値で、同一の位置を維持して移動する拘束状態となり、これを超える入力値以上で各々が所定量ズレを生じて離間する摺動状態となるように、関数を定めることができる。
【0100】
また、摩擦係数による接触条件は、隣接する層の相対移動(摺動)に対して予め定めた値の摩擦係数を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を摩擦係数で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この摩擦係数は、一定値であってもよく、上記と同様の各種関数で定めてもよい。
【0101】
形状保存による接触条件は、隣接する層の相対移動に対して予め定めた値の弾性係数等の形状保存係数を付加するものである。具体的には、例えばバッファ層の内周上の節点とバッファ層の内方向隣接層の外周上に設けた節点とが、3次元的に離間するための座標関係を形状保存係数で規定することを接触条件として、これらの節点を関連付ける。この形状保存係数は、一定値であってもよく、上記と同様の各種関数で定めてもよい。なお、形状保存係数は、層の変更を考慮すると、3次元の各方向に対して規定することが好ましい。これにより、3次元の各方向について接触条件を定めることができる。
【0102】
このように接触条件を付与した場合、各層の間で力や変位を伝達することができる。また、完全に拘束しないので、特に仮想充填材を使った場合等に摩擦係数を実測により求めたり、全体の変形が実測と合うように摩擦係数を設定することで全体の変形の精度を維持したままバッファ層の変形を低減することができる。
【0103】
なお、拘束条件や接触条件を付与する場合も、バッファ層のメッシュ品質が悪化した場合には、バッファ層のみリメッシュすることが好ましい。
【0104】
また、本実施の形態では、バッファ層を要素分割する場合について説明したが、これに限らず、要素分割を行わないメッシュレス法によりバッファ層をモデル化するようにしてもよい。メッシュレス法としては、例えばフリーメッシュ法やエレメントフリーガラーキン法等がある。
【0105】
この場合、バッファ層に任意の複数の点を定義し、公知のフリーメッシュ法やエレメントフリーガラーキン法等を用いて点同士の相互作用を演算することにより、バッファ層の変形を解析することができる。
【実施例】
【0106】
次に、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0107】
本実施例としてモデル化・試作したタイヤコードは、フィラメント直径(2r)が全て0.25mm、第1層がフィラメントを{2r/3・(3)1/2・0.125}mmの円周上に均等配置で3本並べ、第2層は第1層に接するように9本、第3層は第2層に接するように15本を配列したものである。撚りピッチは第1層から、5,10、15mmとし、タイヤコード長手方向の要素分割は第1層から10,20,30個/ピッチとした。このタイヤコードを長さ30mmだけモデル化した。また、フィラメント周囲に充填剤としてゴムを用いた。解析は両端平面内で固定し、長手方向に引っ張ることを行った。
【0108】
図19には、変形前後の3次元モデルを示した。同図(A)は変形前の3次元モデルであり、同図(B)は変形後の3次元モデルである。図から理解されるように、引張り変形によりフィラメントがコード長手方向となす角度が小さくなり、長手方向の節点間隔が大きくなるという実際形状に則した結果を得た。
【0109】
このように、本実施形態の解析モデルを用いることで、より高精度にタイヤコードを解析できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態にかかる、タイヤコードの解析モデルを作成すると共に作成した解析モデルを用いてタイヤの挙動シミュレーションを実施するためのパーソナルコンピュータの概略図である。
【図2】本実施の形態にかかる、タイヤの挙動解析プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】タイヤモデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】タイヤ断面モデルを示す線図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる、タイヤコードの解析モデルを作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】タイヤコードの2次元モデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】タイヤコードの3次元モデル作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】単撚りのタイヤコードのモデル化の説明図である。
【図9】タイヤコードのフィラメント層を示すイメージ図である。
【図10】タイヤコードの最内層42のモデル化の説明図で、(A)は要素分割されたフィラメント、(B)は要素分割した充填材、(C)は外接円50に定めた拘束要素52を示している。
【図11】タイヤコードの中間層44のモデル化の説明図で、(A)は要素分割されたフィラメント、(B)は要素分割した充填材、(C)は外接円58に定めた拘束要素58を示している。
【図12】2次元モデルを示すイメージ図であり、(A)は3層のタイヤコード、(B)は2層のタイヤコードを示している。
【図13】3層のタイヤコードを3本束ねて構成したタイヤコードを示すイメージ図である。
【図14】最内層についての3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)はフィラメントのみ、(B)はフィラメント周囲に充填材を備えたものを示している。
【図15】中間層についての3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)はフィラメントのみ、(B)はフィラメント周囲に充填材を備えたものを示している。
【図16】第2層まで3次元モデル化したタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【図17】第3層まで3次元モデル化したタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【図18】バッファ層の要素の変形の様子を示すイメージ図である。
【図19】実施例にかかる変形前後の3次元モデルを示すイメージ図であり、(A)は変形前の3次元モデル、(B)は変形後の3次元モデルである。
【図20】2層のフィラメントを撚って束ねたものを3個束ねたタイヤコードの一例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
【0111】
10 キーボード
12 コンピュータ本体
14 CRT
30 タイヤモデル
FD フレキシブルディスク(記録媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成方法であって、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する工程と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する工程と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第2の2次元領域を定義する工程と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する工程と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する工程と、
を含むことを特徴とするタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項2】
前記バッファ層を、数値計算可能な所定分割要素に分割する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項3】
前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点との少なくとも一方について、各々相対的に移動しないように拘束する拘束条件を設定して関連付ける工程
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項4】
前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点とについて、各々の相対的な移動の制限を規定する接触条件を設定して関連付ける工程
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項5】
前記第2層の外側の第3層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第2層との間にバッファ層が形成されるように第3の2次元領域を設定する工程と、
前記第3の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第3層を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項6】
前記2次元領域は、フィラメント要素と充填材との各領域から構成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項7】
前記バッファ層を、メッシュレス法によりモデル化する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項8】
前記メッシュレス法は、フリーメッシュ法又はエレメントフリーガラーキン法であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項9】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成装置であって、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、
を備えたことを特徴とするタイヤコードの解析モデル作成装置。
【請求項10】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデルを作成するためのコンピュータを、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、
として機能させるタイヤコードの解析モデル作成プログラム。
【請求項11】
前記請求項2〜請求項6の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法により作成されたタイヤコードの解析モデルに基づいて、タイヤコード又は当該タイヤコードを含むタイヤについて変形計算を行う工程と、
前記変形計算において前記バッファ層の所定分割要素の変形が許容範囲外となった場合に、前記バッファ層を再度所定分割要素に分割し直す工程と、
を含むタイヤ性能解析方法。
【請求項1】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成方法であって、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する工程と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する工程と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第2の2次元領域を定義する工程と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する工程と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する工程と、
を含むことを特徴とするタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項2】
前記バッファ層を、数値計算可能な所定分割要素に分割する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項3】
前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点との少なくとも一方について、各々相対的に移動しないように拘束する拘束条件を設定して関連付ける工程
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項4】
前記第1層の外周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の内周の節点と、前記第2層の内周の節点及び当該節点に対応する位置の前記バッファ層の外周の節点とについて、各々の相対的な移動の制限を規定する接触条件を設定して関連付ける工程
をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項5】
前記第2層の外側の第3層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第2層との間にバッファ層が形成されるように第3の2次元領域を設定する工程と、
前記第3の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第3層を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項6】
前記2次元領域は、フィラメント要素と充填材との各領域から構成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項7】
前記バッファ層を、メッシュレス法によりモデル化する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項8】
前記メッシュレス法は、フリーメッシュ法又はエレメントフリーガラーキン法であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法。
【請求項9】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデル作成装置であって、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、
を備えたことを特徴とするタイヤコードの解析モデル作成装置。
【請求項10】
タイヤを数値計算モデルに対応させて計算するために用いられるタイヤモデルの一部を構成するタイヤコードの解析モデルを作成するためのコンピュータを、
前記タイヤコードが複数のフィラメント要素を所定方向に撚りつつ束ねて形成されかつ前記フィラメント要素の撚り方向に対応して中心から外側に向かい複数の分類層で構成されるときに、該分類層のうち内側の第1層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含む第1の2次元領域を定義する第1定義手段と、
前記第1の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素に分割した第1層を形成する第1形成手段と、
前記第1層の外側の第2層について、長手方向と交差する方向のフィラメント要素断面形状を少なくとも含むと共に、前記第1層との間にバッファ層が形成されるように第2の2次元領域を定義する第2定義手段と、
前記第2の2次元領域を、対応する撚り方向に撚りながら長手方向に3次元展開しつつ数値計算可能な所定分割要素で分割した第2層を形成する第2形成手段と、
として機能させるタイヤコードの解析モデル作成プログラム。
【請求項11】
前記請求項2〜請求項6の何れか1項に記載のタイヤコードの解析モデル作成方法により作成されたタイヤコードの解析モデルに基づいて、タイヤコード又は当該タイヤコードを含むタイヤについて変形計算を行う工程と、
前記変形計算において前記バッファ層の所定分割要素の変形が許容範囲外となった場合に、前記バッファ層を再度所定分割要素に分割し直す工程と、
を含むタイヤ性能解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−308801(P2008−308801A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160323(P2007−160323)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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