説明

タイヤ内圧センサモジュールの製造方法、及びタイヤ内圧センサモジュール

【課題】タイヤ内圧センサモジュール1の製品不良を十分に抑えつつ、外装モールド15の内部の気泡を少なくして、タイヤ内圧センサモジュール1の品質向上を図ること。
【解決手段】タイヤ内圧センサモジュール1の半製品1hを製造した後に、溶融樹脂Pを成型ケース17内に供給すると共に、エア導入パイプ13を位置決め部材として利用しつつ、半製品1hを直立した状態で成型ケース17内にセットすることにより、モールド成型を開始する。そして、成型ケース17内の溶融樹脂を硬化させることにより、圧力センサ7、電池9、及び送信アンテナ11を含めて回路基板3全体を覆う外装モールド15をモールド成型によって回路基板3に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内圧を検出して外部に内圧情報として送信するタイヤ内圧センサモジュールを製造する方法、及びタイヤ内圧センサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの内圧を監視するタイヤ内圧監視システム、特に、このタイヤ内圧監視システムの主要な構成要素であるタイヤ内圧センサモジュールについて開発が進んでおり、タイヤ内圧センサモジュールは、一般に、次のように製造される。
【0003】
即ち、送信回路を有した回路基板に、タイヤの内圧を検出する圧力センサ、送信回路及び圧力センサに電力を供給する電池、及び圧力センサによって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナをそれぞれ実装する。また、回路基板に、タイヤ内のエアを圧力センサに導入可能なエア導入パイプを回路基板の表面に略平行かつ送信アンテナの反対側に突出するように直接的又は間接的に取付ける。これにより、タイヤ内圧センサモジュールの半製品を製造する。
【0004】
次に、成型ケースを用い、溶融樹脂を成型ケース内に供給し、半製品を水平な状態で成型ケース内にセットする。これにより、モールド成型を開始する。
【0005】
そして、半製品を成型ケースにセットした状態で加熱炉によって所定時間だけ高温に保持して、成型ケース内の溶融樹脂を熱硬化させる。これにより、圧力センサ、電池、及び送信アンテナを含めて回路基板全体を覆う外装モールドをモールド成型によって回路基板に形成する。
【0006】
以上により、タイヤ内圧センサモジュールを製造することができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1に示すものがある。
【特許文献1】特開2005−346675
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述のように、タイヤ内圧センサモジュールを製造する場合にあっては、半製品を水平な状態で成型ケース内にセットしているため、モールド成型中に半製品と成型ケースの底面との間にエアが溜まり易く、外装モールドの内部に多くの気泡を含むことになり、タイヤ内圧センサモジュールの品質低下を招くという問題がある。
【0009】
一方、半製品を直立した状態で成型ケース内にセットすること考えられるが、モールド成型中において成型ケース内おける半製品の保持安定性を十分に確保できず、タイヤ内圧センサモジュールの製品不良を招くことになる。
【0010】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができるため、モールド成型中において成型ケース内の半製品の保持安定性を十分に確保しつつ、半製品と成型ケースの底面との間にエアを溜まり難くすることができる、新規な構成のタイヤ内圧センサモジュールの製造方法及びタイヤ内圧センサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴(請求項1に記載の発明の特徴)は、タイヤの内圧を検出して外部に内圧情報として送信するタイヤ内圧センサモジュールを製造する方法において、送信回路を有した回路基板に、前記タイヤの内圧を検出する圧力センサ、前記送信回路及び前記圧力センサに電力を供給する電池、及び前記圧力センサによって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナをそれぞれ実装する共に、前記タイヤ内のエアを前記圧力センサに導入可能なエア導入パイプを前記回路基板の表面に略平行かつ前記送信アンテナの反対側に突出するように直接的又は間接的に取付けることにより、前記タイヤ内圧センサモジュールの半製品を製造する第1工程と、前記第1工程の終了後に、内側面が前記タイヤ内圧センサモジュールの外形に近似した成型ケースを用い、溶融樹脂を前記成型ケース内に供給すると共に、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、前記半製品を直立した状態で前記成型ケース内にセットすることにより、モールド成型を開始する第2工程と、前記第2工程の終了後に、前記成型ケース内の溶融樹脂を硬化させることにより、前記圧力センサ、前記電池、及び前記送信アンテナを含めて前記回路基板全体を覆う外装モールドをモールド成型によって前記回路基板に形成する第3工程と、を具備したことを要旨とする。
【0012】
第1の特徴によると、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、前記半製品を直立した状態で前記成型ケース内にセットしているため、モールド成型中において前記成型ケース内の前記半製品の保持安定性を十分に確保しつつ、前記半製品と前記成型ケースの底面との間にエアを溜まり難くすることができる。
【0013】
本発明の第2の特徴(請求項2に記載の発明の特徴)は、第1の特徴に加えて、前記第2工程は、蓋部材を用い、該蓋部材によって前記エア導入パイプを保持した状態の下で、前記蓋部材を前記成型ケースの開口側に取付けることにより、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、前記半製品を直立した状態で前記成型ケース内にセットするようになっていることを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴(請求項3に記載の発明の特徴)は、タイヤの内圧を検出して外部に内圧情報として送信するタイヤ内圧センサモジュールにおいて、送信回路を有した回路基板と、前記回路基板に実装され、前記タイヤの内圧を検出する圧力センサと、前記回路基板に実装され、前記送信回路及び前記圧力センサに電力を供給する電池と、前記回路基板に実装され、前記圧力センサによって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナと、前記回路基板に直接的又は間接的に設けられ、前記回路基板の表面に対して略平行かつ前記送信アンテナの反対側に突出してあって、前記タイヤ内のエアを前記圧力センサに導入可能なエア導入パイプと、前記回路基板にモールド成型によって形成され、前記圧力センサ、前記電池、及び前記送信アンテナを含めて前記回路基板全体を覆う外装モールドと、を具備したことを要旨とする。
【0015】
第3の特徴によると、前記エア導入パイプが前記回路基板の表面に対して略平行かつ前記送信アンテナの反対側に突出してあるため、前記タイヤ内圧センサモジュールの製造中において、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、モールド成型に用いられる成型ケース内に前記タイヤ内圧センサモジュールの半製品を直立した状態でセットすることができる。そのため、モールド成型中において前記成型ケース内の前記半製品の保持安定性を十分に確保しつつ、前記半製品と前記成型ケースの底面との間にエアを溜まり難くすることができる。
【0016】
第4の特徴(請求項4に記載の発明の特徴)は、第3の特徴に加えて、前記エア導入パイプは、前記外装モールドをモールド成型によって形成するときに位置決め部材として兼用可能になっていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の発明によれば、モールド成型中において前記成型ケース内の前記半製品の保持安定性を十分に確保しつつ、前記半製品と前記成型ケースの底面との間にエアを溜まり難くすることができるため、前記タイヤ内圧センサモジュールの製品不良を十分に抑えつつ、前記外装モールドの内部の気泡を少なくして、前記タイヤ内圧センサモジュールの品質向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
【0019】
ここで、図1及び図2は、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの製造方法を説明する図、図3(a)は、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの斜視図、図3(b)は、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの半製品の斜視図である。
【0020】
図3(a)(b)に示すように、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュール1は、タイヤ(図示省略)の内圧を検出して外部に内圧情報として送信するものであって、回路基板3を備えており、この回路基板3は、送信回路5を有している。また、回路基板3の裏面には、タイヤ内圧を検出する圧力センサ7が実装されており、回路基板3の表面には、送信回路5及び圧力センサ7に電力を供給する一対の乾電池9が実装されている。
【0021】
回路基板3における乾電池9の一側には、圧力センサ7によって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナ11が実装されており、この送信アンテナ11は、一方向へ延びている。また、回路基板3における乾電池9の近傍には、タイヤ内のエアを圧力センサ7に導入可能なエア導入パイプ13が直接的又は間接的に設けられており、このエア導入パイプ13は、回路基板3の表面に対して略平行かつ他方側(送信アンテナ11の反対側)に突出してある。そして、回路基板3には、外装モールド15がモールド成型によって形成されており、この外装モールド15は、圧力センサ7、一対の乾電池9、及び送信アンテナ11を含めて回路基板3全体を覆うようになっている。ここで、エア導入パイプ13は、外装モールド15をモールド成型によって形成するときに位置決め部材として兼用可能になっている。
【0022】
従って、エア導入パイプ13が回路基板3の表面に対して略平行かつ送信アンテナ11の反対側に突出してあって、エア導入パイプ13が外装モールド15をモールド成型によって形成するときに位置決め部材として兼用可能になっているため、タイヤ内圧センサモジュール1の製造中において、エア導入パイプ13を位置決め部材として利用しつつ、モールド成型に用いられる図1に示すような成型ケース17内にタイヤ内圧センサモジュール1の半製品1hを直立した状態でセットすることができる。なお、成型ケース17の内側面は、タイヤ内圧センサモジュール1の外形に近似している。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの製造方法について説明する。
【0024】
本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの製造方法は、タイヤ内圧センサモジュール1を製造する方法でであって、次のような第1工程から第2工程を備えている。
【0025】
第1工程
回路基板3の裏面に圧力センサ7、回路基板3の表面に一対の乾電池9、回路基板3の一側部に送信アンテナ11をそれぞれ実装する。また、回路基板3における乾電池9の近傍に、エア導入パイプ13を回路基板3の表面に略平行かつ他方側(送信アンテナ11の反対側)に突出するように直接的又は間接的に取付ける。これにより、図3(b)4に示すように、タイヤ内圧センサモジュール1の半製品1hを製造する。
【0026】
第2工程
第1工程の終了後に、図1に示すように、成型ケース17を用い、溶融樹脂Pを成型ケース17内に供給する。そして、図1及び図2に示すように、弾性変形可能な保持リング19を有した蓋部材21を用い、この蓋部材21の保持リング19の弾性力によってエア導入パイプ13を保持した状態の下で、蓋部材21を成型ケース17の開口側に取付けることにより、エア導入パイプ13を位置決め部材として利用しつつ、半製品1hを直立した状態で成型ケース17内にセットする。これにより、モールド成型を開始する。なお、溶融樹脂Pを成型ケース17内に供給した後に、半製品1hを成型ケース17内にセットする代わりに、半製品1hを成型ケース17内にセットした後に、溶融樹脂Pを成型ケース17内に供給しても構わない。
【0027】
第3工程
第2工程の終了後に、半製品1hを成型ケース17にセットした状態で加熱炉(図示省略)にセットする。そして、加熱炉によって半製品1hを所定時間(本発明の実施形態にあっては」、8時間)だけ高温(本発明の実施形態にあっては、50°)に保持して、成型ケース17内の溶融樹脂を熱硬化させる。これにより、圧力センサ7、一対の乾電池9、及び送信アンテナ11を含めて回路基板3全体を覆う外装モールド15をモールド成型によって回路基板3に形成する。
【0028】
以上により、図3(a)に示すようなタイヤ内圧センサモジュール1を製造することができる。
【0029】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
蓋部材21の保持リング19の弾性力によってエア導入パイプ13を保持した状態の下で、蓋部材21を成型ケース17の開口側に取付けることにより、エア導入パイプ13を位置決め部材として利用しつつ、半製品1hを直立した状態で成型ケース17内にセットしているため、モールド成型中において成型ケース17内の半製品1hの保持安定性を十分に確保しつつ、半製品1hと成型ケース17の底面との間にエアを溜まり難くすることができる。
【0031】
従って、本発明の実施形態によれば、タイヤ内圧センサモジュール1の製品不良を十分に抑えつつ、外装モールド15の内部の気泡を少なくして、タイヤ内圧センサモジュール1の品質向上を図ることができる。
【0032】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの製造方法を説明する図である。
【図3】図3(a)は、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの斜視図、図3(b)は、本発明の実施形態に係るタイヤ内圧センサモジュールの半製品の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
P 溶融樹脂
1 タイヤ内圧センサモジュール
1h 半製品
3 回路基板
5 送信回路
7 圧力センサ
9 乾電池
11 送信アンテナ
13 エア導入パイプ
17 成型ケース
19 保持リング
21 蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内圧を検出して外部に内圧情報として送信するタイヤ内圧センサモジュールを製造する方法において、
送信回路を有した回路基板に、前記タイヤの内圧を検出する圧力センサ、前記送信回路及び前記圧力センサに電力を供給する電池、及び前記圧力センサによって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナをそれぞれ実装する共に、前記タイヤ内のエアを前記圧力センサに導入可能なエア導入パイプを前記回路基板の表面に略平行かつ前記送信アンテナの反対側に突出するように直接的又は間接的に取付けることにより、前記タイヤ内圧センサモジュールの半製品を製造する第1工程と、
前記第1工程の終了後に、内側面が前記タイヤ内圧センサモジュールの外形に近似した成型ケースを用い、溶融樹脂を前記成型ケース内に供給すると共に、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、前記半製品を直立した状態で前記成型ケース内にセットすることにより、モールド成型を開始する第2工程と、
前記第2工程の終了後に、前記成型ケース内の溶融樹脂を硬化させることにより、前記圧力センサ、前記電池、及び前記送信アンテナを含めて前記回路基板全体を覆う外装モールドをモールド成型によって前記回路基板に形成する第3工程と、
を具備したことを特徴とするタイヤ内圧センサモジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程は、蓋部材を用い、該蓋部材によって前記エア導入パイプを保持した状態の下で、前記蓋部材を前記成型ケースの開口側に取付けることにより、前記エア導入パイプを位置決め部材として利用しつつ、前記半製品を直立した状態で前記成型ケース内にセットするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ内圧センサモジュールの製造方法。
【請求項3】
タイヤの内圧を検出して外部に内圧情報として送信するタイヤ内圧センサモジュールにおいて、
送信回路を有した回路基板と、
前記回路基板に実装され、前記タイヤの内圧を検出する圧力センサと、
前記回路基板に実装され、前記送信回路及び前記圧力センサに電力を供給する電池と、
前記回路基板に実装され、前記圧力センサによって検出された内圧を示す内圧情報を外部に送信する送信アンテナと、
前記回路基板に直接的又は間接的に設けられ、前記回路基板の表面に対して略平行かつ前記送信アンテナの反対側に突出してあって、前記タイヤ内のエアを前記圧力センサに導入可能なエア導入パイプと、
前記回路基板にモールド成型によって形成され、前記圧力センサ、前記電池、及び前記送信アンテナを含めて前記回路基板全体を覆う外装モールドと、
を具備したことを特徴とするタイヤ内圧センサモジュール。
【請求項4】
前記エア導入パイプは、前記外装モールドをモールド成型によって形成するときに位置決め部材として兼用可能になっていることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ内圧センサモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−157628(P2008−157628A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343091(P2006−343091)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】