説明

タイヤ成型ドラム

【課題】成型ドラム10は、折返しブラダやセンタブラダの内圧の制御、ならびに/もしくは、内圧異常の発信を正確に行わせることのできる成型ドラムを提供する。
【解決手段】折返しブラダ3、4やセンタブラダ6のうち少なくとも1つのブラダについて、その内腔部23、24、26の圧力を検知する内圧センサ31を内蔵したセンサモジュール30を内腔部23、24、26内に設け、これらセンサモジュール31を、ドラム本体の外周面より半径方向内側に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム本体と、このドラム本体の半径方向外側に取り付けられエアを給気することにより膨出して、両側のビードコアの周りにカーカスバンドの側部を折り返し、および/または、両側のビードコアの間に延在するカーカスバンドの中央部をトロイダル状に膨出させるのに用いられるブラダとを具えたタイヤ成型ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤを成型する工程において、図1に断面図で示すように、成型ドラム90上にカーカスバンド14を配置したあと、カーカスバンドの半径方向外側に両方のビードコア15およびフィードフィラ16よりなるプリセットビード17を位置させ、次いで、成型ドラム90に設けられた両ビードロック機構2を拡径しすることにより、カーカスバンド14を間に挟んだ状態のビードコア12を成型ドラム90に固定したあと、ビードロック機構2を軸方向中央に移動させながらセンタブラダ6に内圧を供給して膨出させることにより、図2に断面図で示すように、両ビードコア12間に延在するカーカスバンド中央部14aをトロイダル状に膨出させ、次に、成型ドラム90の軸方向両端に配置された折返しブラダ3、4に内圧を供給してこれを膨出させることにより、カーカスバンド両側部14bを折り返すことが行われている。
【0003】
これらのブラダ6、3、4に内圧を供給してこれらを膨出させる際、安定したグリーンタイヤを得るためには、それらのブラダ6、3、4の膨出に際してブラダ内圧の時間変化が予測値と実行値との間で隔離するのを防止しなければならない。この目的のためには、ブラダがパンクしたりブラダにエアを供給する管路にリークや詰まりが生じたり場合これらを早期に発見するために内圧を監視することが重要であり、そのため、図3に模式図で示すように、元圧からブラダ6、3、4に至るまでの管路20に圧力センサ98を設け、検出した圧力が異常値を示した場合には、警報を発することが行われ、また、ブラダ内圧の時間変化が正確に所定のパターンに従うよう制御するため、管路20に設けた圧力センサ98からの信号をフィードバックして内圧を制御することも提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、圧力センサを管路20に設けた場合には、配管抵抗等によりブラダ内の実際の圧力とは異なる情報に基づいて、警報や制御が行われることになり、その正確さの点において改良が求められていた。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、折返しブラダやセンタブラダの内圧の制御、ならびに/もしくは、内圧異常の発信を正確に行わせることのできる成型ドラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>は、ドラム本体と、このドラム本体の半径方向外側に取り付けられエアを給気することにより膨出して、両側のビードコアの周りにカーカスバンドの側部を折り返し、および/または、両側のビードコアの間に延在するカーカスバンドの中央部をトロイダル状に膨出させるのに用いられるブラダとを具えたタイヤ成型ドラムにおいて、
それらのブラダのうち少なくとも1つのブラダについて、その内腔部の圧力を検知する内圧センサを具えたセンサモジュールを内腔部内に設け、これらセンサモジュールを、ドラム本体の外周面より半径方向内側に配置してなるタイヤ成型ドラムである。
【0007】
<2>は、<1>において、前記センサモジュールは、内圧センサで検知した圧力を、前記成型ドラムの外部に設けられた内圧情報受信器に無線で送信する送信手段を内蔵してなるタイヤ成型ドラムである。
【0008】
<3>は、<2>において、前記送信手段は、所定平面上を1周するループアンテナを具えてなるタイヤ成型ドラムである。
【0009】
<4>は、<3>において、前記所定平面は、これに垂直な直線が前記センサモジュールに対応する周方向位置においてドラム周面に接する平面と平行に向くように配置されていることを特徴とするタイヤ成型ドラムである。
【発明の効果】
【0010】
<1>によれば、折返しブラダやセンタブラダの内腔部の圧力を検知する内圧センサを具えたセンサモジュールを内腔部内に設けたので、ブラダの内圧を直接検知することができ、それらのブラダの内圧の制御、ならびに/もしくは、内圧異常の発信を正確に行わせることのでき、また、これらセンサモジュールを、ドラム本体の外周面より半径方向内側に配置したので、センサモジュールをブラダの内面等、成型ドラムの半径方向外側に取り付けた場合には、センサモジュールが、その部分だけ成型ドラムの外周面より出っ張ることになり成型されるグリーンタイヤの形状が不均一になったり、成型作業によってブラダやセンサモジュールが破損してしまったりする危険性が高まるという問題を防止することができる。
【0011】
<2>によれば、前記センサモジュールは、内圧センサで検知した圧力を、前記成型ドラムの外部に設けられた内圧情報受信器に無線で送信する送信器を内蔵するので、センサモジュールを電池で駆動すれば電源線も不要となるので、センサモジュールに対して出入りするワイヤリングは全く要らなくなり、回転する成型ドラムの配線がすっきりし、これを有線で外部と接続した場合に対比して構造が簡素となり大幅なコストダウンが可能となる。
【0012】
<3>によれば、前記送信手段は、所定平面上を1周するループアンテナを具えたので、金属よりなる成型ドラムの一部を切り欠いた凹部に設けられるセンサモジュールからは半径方向外側にしか発信されない電波の強度を高め、センサモジュールと外部との内圧情報受信器との通信における信頼性を高めることができる。
【0013】
<4>によれば、前記所定平面は、これに垂直な直線が前記センサモジュールに対応する周方向位置においてドラム周面に接する平面と平行に向くように配置されているので、ループアンテナからの信号を成型ドラムの半径方向外側に向かって発信することができ、電波信号の強度を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図4、図5は、それぞれ異なる状態における成型ドラムを模式的に示す断面図であり、成型ドラム10は、ドラム本体9と、このドラム本体9の半径方向外側に取り付けられエアを給気することにより膨出して、両側のビードコア15の周りにカーカスバンド14の側部14bを折り返す折り返す折返しブラダ3、4、および、同様にこのドラム本体9の半径方向外側に取り付けられエアを給気することにより膨出して、両側のビードコア15の間に延在するカーカスバンド14の中央部14aをトロイダル状に膨出させるのに用いられるセンタブラダ6とを具える。
【0015】
なお、カーカスバンド14としては、図示のようにインナライナ11、インナライナ11の軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム13、および、その半径方向外側に配置されたカーカスプライ12とよりなるものとすることもできるが、サイドウォールゴム13を含まなくともよい。
【0016】
また、成型ドラム10は、両側のビードコア15を、カーカスバンド14を間に挟んで、半径方向内側から支持固定するそれぞれのビードロック機構2を具えるのが好ましい。
【0017】
ドラム本体9は、センタブラダ6の軸方向両端を固定するとともにセンタブラダ6の内腔部26に接するそれぞれの中央リング21と、折返しブラダ3、4の基端を固定するとともに、折返しブラダ3、4の内腔部23、24を具えるそれぞれのエンドリング25とを具えて構成される。エンドリング25には、内腔部23、24内の空気を出し入れする空気流出入穴27、28が形成されている。
【0018】
このような、成型ドラム10を用いてタイヤを成型するに際しては、図4に示すように、成型ドラム10上にカーカスバンド14を配置したあと、カーカスバンド14の半径方向外側に両方のビードコア15およびフィードフィラ16よりなるプリセットビード17を位置させ、次いで、成型ドラム10に設けられた両ビードロック機構2を拡径しすることにより、カーカスバンド14を間に挟んだ状態のビードコア12を成型ドラム10に固定したあと、ビードロック機構2を軸方向中央に移動させながらセンタブラダ6に内圧を供給して膨出させることにより、図5に断面図で示すように、両ビードコア12間に延在するカーカスバンド中央部14aをトロイダル状に膨出させ、次に、成型ドラム10の軸方向両端に配置された折返しブラダ3、4に内圧を供給してこれを膨出させることにより、両側のカーカスバンド側部14bを折り返し、このあと、圧着ドラムで折返しブラダ4を軸方向中央側に押圧することによりカーカスバンド側部14bをカーカスバンド中央部14aに圧着し、最後に、トロイダル状に膨出したカーカスバンド中央部14aの半径方向外側にベルトとトレッドとを配置することが行われ、以上の工程を経てグリーンタイヤが形成される。
【0019】
本発明の成型ドラム10は、その特徴として、センタブラダ6、折返しブラダ3、4の少なくとも1つについて、その内腔部26、23、24の圧力を検知する内圧センサ31を具えたセンサモジュール30を内腔部内に設け、これらセンサモジュール30を、ドラム本体9の外周面より半径方向内側に配置している。ここで、内圧センサ31は、センサモジュール30に内蔵されていてもよく、また、センサモジュールにこれとは別体に取り付けられていても良い。
【0020】
なお、本発明は、こららのブラダ6、3、4の少なくとも1つを具えていればよいが、
上記の説明においては、成形ブラダ10は、1個のセンタブラダ6、2対の折返しブラダ3、4の合計5個を具えるものとして説明した。以下の説明においては、成形ブラダ10は、1個のセンタブラダ6、2対の折返しブラダ3、4の合計5個を具えることに加えて、それらのブラダ6、3、4のそれぞれに対応して合計5個のセンサモジュール31が具えられているものとして説明する。
【0021】
本発明の成型ドラム10は、各ブラダ6、3、4の内腔部26、23、24にその内腔部26、23、24の内圧を検知する内圧センサ31を具えるので、それらのブラダ6、3、4の内圧を直接検知することができ、よってそれらの内圧の制御、ならびに/もしくは、内圧異常の発信を正確に行わせることができる。
【0022】
また、各センサモジュール30は、ドラム本体9の外周面より半径方向内側に配置されている。図6に、成型ドラムの断面図で示すように、もし、センサモジュール30Aを、例えばブラダ6、3、4の内面等、成型ドラム10の半径方向外側に取り付けた場合には、センサモジュール30Aが、その部分だけ成型ドラムの外周面より出っ張ることになりカーカスバンドに凹凸が生じて成型されるグリーンタイヤの形状が不均一になったり、成型作業によってブラダやセンサモジュールが破損してしまったりする危険性が高まるという問題を生じてしまう。本発明のセンサモジュール30は上記のように構成されているので、この問題を解消することができる。
【0023】
具体的には、センタブラダ6の内圧を検知するセンサモジュール30は、センタブラダ6両端を支持する中央リング21の、内腔部26に接する部分に形成された凹部21aにはめ込まれて固定され、同様に、折返しブラダ3、4の内圧を検知するそれぞれのセンサモジュール30は、折返しブラダ3、4の両端を支持するエンドリング25の、対応する各内腔部23、24に接する部分に形成された凹部25aにはめ込まれて固定されている。
【0024】
凹部21a、25aの例として、図7に、折返しブラダ3に対応する凹部25aを斜視図で示す。凹部25aは、空気流出入穴27と周方向に並んで配置されるのが好ましい。
【0025】
図8(a)は、凹部26a、25aに配置された状態のセンサモジュール30を成型ドラム10の軸線と平行な方向から見た概略配置図、図8(b)は、これを成型ドラム10の軸線と直交する方向から見た概略配置図、そして、図9は、センサモジュール30の構成を示すブロック線図であり、センサモジュール30は、内圧センサ31の他、内圧センサ31で検知された信号をデータとして外部に電波で発信するための送信回路32とアンテナ33とよりなる送信手段、および、内圧センサ32から得られた信号を前記データに変換するとともに、センサモジュール内のそれらの機器を制御する制御回路34を具え、センサ31、送信回路32、および、制御回路34は、基板上に配置されて全体として基板部35を構成する。
【0026】
ここで、圧力センサ31は、基板上に配置されてるものの、その感圧部は、空気穴37を介して内腔部26、23、24に連通していて、この構成により、圧力センサ31は、正確に、内腔部26、23、24の内圧を検知することができる。また、センサモジュール30は、それらの機器に電源を供給するための電池36を具える。
【0027】
なお、外部には、アンテナ33からのデータを受信する内圧情報受信器を具えたブラダ制御システム(図示せず)が設けられ、このブラダ制御システムによって、ブラダ6、3、4を膨出させる際のモニタタリングを含む制御が行われる。
【0028】
ここで、アンテナ32は、所定平面上を1周するループアンテナで構成するのが好ましく、この所定平面を、これに垂直な直線が前記センサモジュール30に対応する周方向位置においてドラム周面に接する平面と平行に向くように配置されているのが、さらに好ましく、このことによって、凹部21a、25aからは半径方向外側にしか発信されない電波の強度を高めることができ、内圧データの確実な送信を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の防振装置の一例を示す断面図である。
【図2】従来の防振装置の他の例を示す断面図である。
【図3】元圧からブラダに至るまでの管路を示す概略図である。
【図4】本発明に係る成型ドラムを、ブラダを収縮させ外周面上にカーカスバンドを配置した状態で示す模式的断面図である。
【図5】本発明に係る成型ドラムを、センタブラダを膨出させてカーカスバンド中央部をトロイダル状にするとともに折返しブラダを膨出させてカーカスバンド側部を折り返した状態で示す模式的断面図である。
【図6】センサモジュールをブラダの内面に貼り付けて配置した場合における成型ドラムを示す断面図である。
【図7】折返しブラダに対応する凹部を示す斜視図である。
【図8】センサモジュールの、成型ドラムの軸線と平行な方向、および直角の方向から見た断面における概略配置図である。
【図9】センサモジュールの構成を示すブロック線図である。
【符号の説明】
【0030】
2 ビードロック機構
3、4 折返しブラダ
5 圧着ドラム
9 ドラム本体
10 成型ドラム
14 カーカスバンド
14a カーカスバンド中央部
14b カーカスバンド側部
15 ビードコア
20 管路
21 中央リング
21a 中央リングの凹部
23、24 折返しブラダの内腔部
25 エンドリング
25a エンドリングの凹部
26 センタブラダの内腔部
27、28 空気流出入穴
30 センサモジュール
31 内圧センサ
32 送信回路
33 アンテナ
34 制御回路
35 基板部
36 電池
37 空気穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム本体と、このドラム本体の半径方向外側に取り付けられエアを給気することにより膨出して、両側のビードコアの周りにカーカスバンドの側部を折り返し、および/または、両側のビードコアの間に延在するカーカスバンドの中央部をトロイダル状に膨出させるのに用いられるブラダとを具えたタイヤ成型ドラムにおいて、
それらのブラダのうち少なくとも1つのブラダについて、その内腔部の圧力を検知する内圧センサを具えたセンサモジュールを内腔部内に設け、これらセンサモジュールを、ドラム本体の外周面より半径方向内側に配置してなるタイヤ成型ドラム。
【請求項2】
前記センサモジュールは、内圧センサで検知した圧力を、前記成型ドラムの外部に設けられた内圧情報受信器に無線で送信する送信手段を内蔵してなる請求項1に記載のタイヤ成型ドラム。
【請求項3】
前記送信手段は、所定平面上を1周するループアンテナを具えてなる請求項2に記載のタイヤ成型ドラム。
【請求項4】
前記所定平面は、これに垂直な直線が前記センサモジュールに対応する周方向位置においてドラム周面に接する平面と平行に向くように配置されていることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ成型ドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−89392(P2010−89392A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262170(P2008−262170)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】