説明

タイヤ成型方法及びタイヤ成型装置

【課題】リボン状ゴムの積層部の外表面に形成される凹凸を精度よく修正し、グリーンタイヤのRROを効果的に改善して製品タイヤのユニフォーミティを向上させる。
【解決手段】未加硫のリボン状ゴムを成型ドラム2の外周に巻回して積層し、所定のタイミングで積層を停止して積層部30の外形形状を測定手段20により測定する。制御装置21は、測定結果から積層部30外表面の凹部の位置及び形状情報を取得し、その情報に基づき、リボン状ゴムを凹部の断面形状に対応した断面形状に形成して凹部に積層充填し、積層部30外表面の凹凸を修正する。このリボン状ゴムの積層及び凹凸の修正を繰り返して所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンタイヤ(生タイヤ)を成型するためのタイヤ成型方法及びタイヤ成型装置に関し、特に、リボン状ゴムを積層して成型するグリーンタイヤのRRO(Radial Run Out:タイヤ半径方向の寸法的な不均一性(真円からの縦方向ずれ))を改善するタイヤ成型方法及びタイヤ成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般に、ゴム部材であるトレッドやサイドウォール等の複数のタイヤ構成部材から構成され、これら各部材を組み合わせてグリーンタイヤを成型し、加硫成型して所定形状に成型される。従来、このグリーンタイヤの成型装置として、未加硫のリボン状ゴムを成型ドラムの外周に螺旋状に巻回して積層し、所定の断面形状に形成するタイヤ成型装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図4は、特許文献に記載されたものではないが、このような従来のタイヤ成型装置80の概略構成を模式的に示す側面図である。
このタイヤ成型装置80は、図示のように、円筒状又はトロイダル状の軸線回りに回転可能な成型ドラム81と、成型ドラム81をドラム軸方向(図では前後方向)等に移動させる移動手段82と、所定の断面形状のリボン状ゴム(例えば、厚さ約1mm程度の長尺なゴム)を連続して押出成形する押出機(図示せず)とを備え、成型ドラム81を回転駆動手段(図示せず)により回転させつつ移動手段82によりドラム軸方向に移動させる等し、リボン状ゴムを成型ドラム81の外周に、その一部を重ねながら螺旋状に巻回して貼り合わせ、ゴム部材89を成型する。
【0004】
また、このタイヤ成型装置80は、回転自在なステッチャーロール83と、ステッチャーロール83の外周面をゴム部材89の外周面に押し付けながら、その外周面に沿って移動させるステッチャーユニット84とを備え、成型ドラム81の外周に巻回されるリボン状ゴムの外表面を回転移動するステッチャーロール83の外周面で押圧し、リボン状ゴム同士や、リボン状ゴムとその内周側に巻き付けられた他のタイヤ構成部材とを圧着する。以上のリボン状ゴムの積層を、予め定められた積層プログラムに基づいて行い、リボン状ゴムを1層又は複数層積層してトレッド等のタイヤ構成部材を形成し、他のタイヤ構成部材と組み合わせてグリーンタイヤを成型する。
【0005】
図5は、この従来のタイヤ成型装置80により成型したグリーンタイヤのトレッドの一部を模式的に示すタイヤ幅方向の断面図である。
トレッド50は、図示のように、リボン状ゴム51(ここでは、厚さ約1mm)が複数層重ね合わせて積層され、グリーンタイヤの外周面に所定の断面形状に形成される。従って、このタイヤ成型装置80によれば、積層プログラムを変更してリボン状ゴム51の巻回数や重なり量等の積層態様を変化させることで、各種断面形状のトレッド50を形成できるため、多品種少量生産に柔軟に対応できる。
【0006】
しかしながら、この従来のタイヤ成型装置80では、トレッド50の外表面にリボン状ゴム51の厚さや断面形状等に応じた凹凸が形成されることがある。例えばリボン状ゴム51の積層開始部と終了部では、リボン状ゴム51の端部の段差を埋めるためにリボン状ゴム51を余分に巻き付ける必要がある等、その積層数が他の部分に比べて多くなりトレッド50が厚くなる傾向がある。また、他の部分でも、リボン状ゴム51の積層位置が所定位置から僅かにずれる等して外表面に凹凸が形成されることがある。その結果、トレッド50の断面形状や厚さが不均一化し、グリーンタイヤの外形形状も不均一化してそのRRO等を悪化させる恐れがある(図5参照:リボン状ゴム51の一断面に斜線を付す)。積層途中で生じたこのような凹凸を放置したまま積層を続行した場合には、凹部又は凸部が累積して大きくなり、一層RROを悪化させる。
【0007】
RROの大きなグリーンタイヤを加硫成型した場合には、加硫後のタイヤのRROも大きくなり、製品タイヤのユニフォーミティが低下して車両走行時に振動や騒音の原因になる等、タイヤの品質が低下する。そこで、従来から、成型後のグリーンタイヤからサンプルを抜き出してトレッド50等の断面形状や寸法等を測定検査したり、測定結果に基づいてリボン状ゴム51の積層の仕方(プログラム等)を変更する等して外表面の凹凸を減少させ、グリーンタイヤのRRO特性等を改善することが行われている。
【0008】
しかしながら、この従来の方法では、グリーンタイヤを成型ドラム81から取り外して測定を行うため、成型ドラム81上での正確な断面形状等を把握できないという問題がある。即ち、成型ドラム81からの取り外し前後でリボン状ゴム51にかかる張力等が変化するため、その幅方向や厚さ方向、又は長手方向の伸縮量も変化してグリーンタイヤ(トレッド50)の断面形状も変化する。
そこで、従来、リボン状ゴムを積層しながら積層部の外形形状や積層厚さを測定し、成型ドラム上での積層の状態を把握できるようにしたタイヤ成型装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
この従来のタイヤ成型装置は、前記タイヤ成型装置の成型ドラム外周の変位量を測定するレーザ変位計等を備え、リボン状ゴムの積層位置の変位量を測定し、その測定データ等から積層終了までの積層部の外形形状や厚さ等を連続的に算出して、その算出結果と規格値とを比較し、積層部の表面に規格値以上の凹凸等が生じた場合には、成型を停止して当該グリーンタイヤを排除している。
【0010】
しかしながら、この従来の装置では、単に規格に合わないグリーンタイヤを排除するだけで、個々のグリーンタイヤのRROの改善は行っていない。そのため、製品タイヤ全体のユニフォーミティを効果的に向上するのは難しく、また、グリーンタイヤの成型停止までに要した材料や作業が無駄になるという問題も生じる。
そこで、従来、成型後のグリーンタイヤのRROを測定し、測定結果に基づいてトレッドの外表面を切削して個々のグリーンタイヤのRRO特性を改善する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【0011】
しかしながら、この従来の方法は、トレッドの外表面を切削するだけであるから凹部を埋めることはできず、グリーンタイヤ外表面の凹凸の修正精度やRROの改善効果が充分ではなく、切削したゴム材料が無駄になるという問題もある。
【0012】
【特許文献1】特開2004−216603号公報
【特許文献2】特開2004−299184号公報
【特許文献3】特開2005−47154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、リボン状ゴムの積層部の外表面に形成される凹凸を精度よく、かつ無駄なく修正し、グリーンタイヤのRROを効果的に改善するとともに、製品タイヤのユニフォーミティ及び品質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、未加硫のリボン状ゴムを成型ドラムの外周に巻回して積層する工程を有し、前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型方法であって、前記リボン状ゴムを積層した積層部の外形形状を測定する工程と、該外形形状の測定結果から前記積層部の外表面の凹部の位置及び形状情報を取得する工程と、該取得した情報に基づき、前記凹部にリボン状ゴムを積層して充填する工程とを有し、前記リボン状ゴムの凹部への充填により前記積層部の外表面の凹凸を修正することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたタイヤ成型方法において、前記リボン状ゴムの凹部への充填を、前記タイヤ構成部材の形成途中に又は形成完了時に行うことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載されたタイヤ成型方法において、前記凹部の形状情報に基づき、前記凹部に充填するリボン状ゴムを該凹部の断面形状に対応した断面形状に形成する工程を有することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載されたタイヤ成型方法において、前記リボン状ゴムを積層して形成するタイヤ構成部材は、トレッドであることを特徴とする。
請求項5の発明は、成型ドラムと、該成型ドラムに未加硫のリボン状ゴムを供給するゴム供給手段と、前記リボン状ゴムを前記成型ドラムの外周に巻回して積層する積層手段とを備え、該積層手段により前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型装置であって、前記リボン状ゴムを積層した積層部の外形形状を測定する測定手段と、該測定手段の測定結果から前記積層部の外表面の凹部の位置及び形状情報を取得し、該取得した情報に基づき、前記積層手段を制御して前記凹部にリボン状ゴムを積層して充填する制御装置とを備え、前記リボン状ゴムの凹部への充填により前記積層部の外表面の凹凸を修正することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載されたタイヤ成型装置において、前記成型ドラムに供給するリボン状ゴムの断面形状を変化させる可変手段と、前記凹部の形状情報に基づき、前記可変手段を制御して前記凹部に充填するリボン状ゴムを該凹部の断面形状に対応した断面形状に形成する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リボン状ゴム積層部の外表面に形成される凹凸を精度よく、かつ材料等を無駄にすることなく修正でき、グリーンタイヤのRROを効果的に改善できるとともに、製品タイヤのユニフォーミティ及び品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のタイヤ成型装置は、図4に示す従来のタイヤ成型装置80と同様の、未加硫のリボン状ゴムを成型ドラムの外周に積層してタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型する装置を用いて、これにリボン状ゴムを積層した積層部外表面の凹部にリボン状ゴムを積層・充填し、外表面の凹凸を修正する機能を付加している。
【0017】
図1は、本実施形態のタイヤ成型装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
このタイヤ成型装置1は、図示のように、軸線回りに回転可能な成型ドラム2と、成型ドラム2が載置された移動手段3と、リボン状ゴムを供給するゴム供給手段(図示せず)と、成型ドラム2の一方の外周側(図では左側)に配置されたステッチャーユニット10と、ステッチャーユニット10に設けられた周方向に回転自在なステッチャーロール11等を備える。
【0018】
成型ドラム2は、略円筒状又は成型するグリーンタイヤの形状に対応したトロイダル状の外周面を有し、電動モータ等からなる回転駆動手段(図示せず)により軸線回りに回転し、外周にタイヤ構成部材やリボン状ゴムを巻回する。移動手段3は、成型ドラム2をドラム軸方向(図では前後方向)等に移動させるものであり、空気圧式又は油圧式のピストン・シリンダ機構等のアクチュエータ等からなる。
【0019】
ゴム供給手段は、所定の断面形状の未加硫のリボン状ゴム(例えば、厚さ約1mm程度の長尺なゴム)を成型ドラム2に連続的に供給するとともに、供給するリボン状ゴムの断面形状(幅や厚さ等)を変化させる可変手段を有する。本実施形態では、ゴム供給手段として、ゴム部材を押出ヘッドの口金開口部から連続して押出成形する押出機を使用し、その口金の上下の金型と左右の金型をそれぞれ相互に接近・離間可能にし、かつ、各金型にアクチュエータ等を設けて可変手段を構成する。即ち、前記アクチュエータ等により各金型を相互に接近・離間させて口金開口部の上下方向及び左右方向の開口幅を独立に変化させ、そこから押し出されるリボン状ゴムの断面形状を連続的に変化させる。
【0020】
なお、ゴム供給手段としては、一対のロール間でゴム材料を圧延して所定の断面形状に形成するカレンダー装置等の、他のゴム成形装置を使用してもよく、この場合には、一対のロール間の間隔を調節可能にする等してリボン状ゴムの断面形状を変化させる。また、前記可変手段は、例えば上記した押出機の口金と同様な構成の金型を押出ヘッドや一対のロールのゴム吐出口側に設ける等、既存の装置を大きく改造することなくゴム供給手段と別個に設けてもよい。
【0021】
ステッチャーロール11は、円筒状や円盤状等のロール状をなし、ステッチャーユニット10に回転自在に支持されている。ステッチャーユニット10は、ステッチャーロール11の外周面を成型ドラム2の外周に沿って押し付けながら移動させ、成型ドラム2の外周に巻回されるリボン状ゴムの表面を回転するステッチャーロール11の外周面で押圧し、積層したリボン状ゴム同士や、リボン状ゴムとその内周側の他のタイヤ構成部材とを圧着する。また、本実施形態では、ステッチャーロール11の外周面に複数のキリ状の突起物(図示せず)を設け、それらでリボン状ゴムを押圧してゴム間の圧着強度等を増加させている。
【0022】
また、このタイヤ成型装置1は、成型ドラム2の外周側(図では上方側)に配置されたリボン状ゴムを積層した積層部30の外形形状等を測定する測定手段20と、装置全体の制御を行う制御装置21とを備える。
【0023】
測定手段20は、積層部30の外形形状、即ち、リボン状ゴムの積層に伴い生じる外表面の凹凸や積層部30のRROを測定する。この測定手段20は、測定対象が変形しやすい未加硫のゴムであるため、レーザ変位計等の非接触で各測定を行えるものが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、例えば、回転する積層部30の外表面にセンサ部を押し付けて、その変位から積層部30の凹凸やRRO等を測定する接触式の変位計等を用いて各測定を行うこともできる。
【0024】
本実施形態では、レーザ変位計を測定手段20として用い、その測定軸をドラム軸芯に向けて配置して、回転する積層部30の外表面にレーザ光を照射して、その反射光から外表面までの距離を測定し、その変位から積層部30の外形形状等を測定する。
即ち、測定時には、リボン状ゴムの積層を所定のタイミングで停止し、成型ドラム2を回転させつつ成型ドラム2を移動手段3により軸方向に徐々に移動させる等して、積層部30全体の外形形状等を測定し、測定データを制御装置21に送信する。
【0025】
制御装置21は、成型ドラム2や移動手段3、ステッチャーユニット10に接続される他、ゴム供給手段や、リボン状ゴムの断面形状を変化させる可変手段等、タイヤ成型装置1の各駆動部に接続され、制御信号をD/Aコンバータ23等を介してD/A変換して出力し、タイヤ成型装置1全体の制御を行う。
制御装置21は、例えば、各種のデータ処理や解析、演算等を行うマイクロプロセッサ(MPU)等の演算手段や、各種プログラムを格納したROM、処理のための一時的なデータの保存等を行うRAMを備えたマイクロコンピュータ、及び測定手段20の測定結果等の各種データを保存するための外部記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ(HDD))や外部機器との接続のための各種インターフェース等を有する。
【0026】
また、制御装置21は、成型ドラム2に設けられた回転位置検知センサや軸方向位置検知センサ等、装置1の各部に設けられた各種センサ(図示せず)に接続され、それらから送信されるデータをそれぞれの目標値と対比しながら、装置1の各駆動部の制御情報を取得し、この制御情報に基づき、例えば成型ドラム2を回転させる電動モータのインバータを制御して成型ドラム2の回転位置や速度を制御し、移動手段3のアクチュエータの電磁弁を開閉制御して成型ドラム2の軸方向位置を制御し、また、ゴム供給手段や可変手段を制御して所定の断面形状のリボン状ゴムの供給及び断面形状の変更を行う等、リボン状ゴムの積層や圧着等のグリーンタイヤの成型動作をフィードバック制御する。
【0027】
次に、このタイヤ成型装置1によりトレッドを形成してグリーンタイヤを成型する手順について説明する。
図2は、トレッド形成の流れを示すフローチャートである。
なお、以下の各手順は、所定の積層プログラムに基づいて、制御装置21によりタイヤ成型装置1を制御して実行される。
【0028】
まず、所定の断面形状の未加硫のリボン状ゴムを押出機(ゴム供給手段)により押出成形して成型ドラム2に供給する。同時に、成型ドラム2を回転及び軸方向移動等させ、ステッチングロール11で押圧しつつ、リボン状ゴムを成型ドラム2の外周に、その一部を重ね合わせて螺旋状に巻回して積層する(S101)。次に、リボン状ゴムの積層を、例えば所定の厚さや時間、又は所定の巻回数行った時点等、所定のタイミングで停止し、測定手段20によりリボン状ゴムの積層部30の外形形状やRROを測定し(S102)、測定データをA/Dコンバータ22によりA/D変換して制御装置21に送信する(S103)。
【0029】
測定データを受信した制御装置21は、外形形状の測定結果から積層部30の外表面の凹部の位置及び形状情報を取得し(S104)、その情報に基づき、装置1の各駆動部を制御して積層部30外表面の凹部にリボン状ゴムを積層して充填する。具体的には、ゴム供給手段やリボン状ゴムの断面形状を変化させる可変手段、成型ドラム2等への制御信号をD/Aコンバータ23によりD/A変換して出力し(S105)、凹部の形状情報に基づき、凹部に充填するリボン状ゴムを、充填すべき凹部の断面形状に対応した断面形状(例えば凹部の深さ及び幅と略同一の厚さ及び幅)に形成して成型ドラム2に供給するとともに、凹部の位置情報に基づき、成型ドラム2を回転及び軸方向移動等させる(S106)。また、ステッチャーユニット10も同時に制御し、これら凹部の各情報に基づく制御を連動して行い、積層部30外表面の凹部にリボン状ゴムを積層して充填する(S107)。
【0030】
図3は、以上のように積層した積層部30外表部の一部を模式的に示すタイヤ幅方向の断面図である。
図示のように、リボン状ゴム31の積層に伴い生じる凹部35に、その断面形状に対応した形状のリボン状ゴム32を充填して外表面の凹凸を修正する。本実施形態では、この凹凸の修正を積層部30の全外表面に亘って行い外表面を平滑化するが、凹部の断面形状がドラム周方向に沿って変化する場合には、その変化に合わせて充填するリボン状ゴム32の断面形状も連続的に変化させる。なお、リボン状ゴム32の充填は、外表面全ての凹部に対して行ってもよいが、グリーンタイヤの成型効率の観点からは、凹部の深さや幅等の凹凸の程度を所定の基準値と比較し、基準値以上の凹部のみに対して行うのがより好ましい。
【0031】
以上の凹凸の修正終了後、トレッドの形成が完了したか否かを判断し(S108)、完了していない場合(S108、NO)には、S101に戻って以上の各手順を再び実行し、これらを所定の断面形状のトレッドの形成完了(S108、YES)まで繰り返す。このように、トレッドの形成途中と形成完了時に外表面の凹部にリボン状ゴムを充填(凹凸を修正)してトレッドを形成し、他のタイヤ構成部材と組み合わせてグリーンタイヤを成型する。その後、グリーンタイヤを成型ドラム2から取り外して図示しない搬送装置により次工程の加硫成型装置に搬送し、加硫成型して製品タイヤを製造する。一方、タイヤ成型装置1では、図2に示す各手順等を繰り返してグリーンタイヤの成型を自動で連続して行う。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、リボン状ゴムの積層部30や形成完了時のトレッドを成型ドラム2上で測定するため、その外形形状やRRO等の積層の状態を正確に把握でき、積層部30外表面の凹部の位置及び形状情報等の、積層部30に関する各情報の正確性を向上させることができる。また、そのような正確な情報に基づいて、リボン状ゴムの凹部への積層・充填を行うため、リボン状ゴムの積層位置等を正確に制御でき、積層部30外表面の凹凸の修正を精度よく行うことができる。同時に、凹部に充填するリボン状ゴムを凹部の断面形状に対応した断面形状に形成するため、ゴムの凹部からのはみ出し等を抑制できるとともに、上記したように凹部の正確な断面形状も把握できるため、その情報に基づいて形成するリボン状ゴムの断面形状と充填すべき凹部の断面形状との差をより小さくできる。従って、積層部30外表面の凹凸の修正精度を更に向上させることができる。
【0033】
また、トレッドの形成完了時に加えて、形成途中に所定のタイミングでリボン状ゴムの積層を停止して凹凸を修正するため、凹部又は凸部が累積して大きくなる前の凹凸が小さい段階でその修正を行うことができる。従って、大きな凹部を充填する際には、複数回のリボン状ゴムの積層を要する場合もあるが、本実施形態では凹部へのリボン状ゴムの積層回数が少なくなり修正時間を短縮でき、かつ、より正確に修正も行える等、修正を無駄なく行うことができる。
【0034】
以上のように、積層部30外表面の凹凸を精度よく修正できるため、トレッド外表面をより平滑化できるとともに、トレッド及びグリーンタイヤの断面形状や厚さ等もより均一化でき、グリーンタイヤのRROを効果的に改善することができる。その結果、加硫成型後の製品タイヤのユニフォーミティを向上させることができ、それに伴い車両走行時の振動や騒音も減少する等、タイヤの品質も向上させることができる。更に、RROの大きなグリーンタイヤ及び製品タイヤが製造されるのが抑制できるため、RROの検査等で不良品として廃棄されるタイヤを減少させることができ、材料や作業工数等の無駄や品質コストを削減することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、積層部30の外形形状等の測定を、リボン状ゴムの積層によるトレッドの形成を一旦停止してから行ったが、リボン状ゴムの積層と同時に停止させずに測定を行ってもよく、この場合には、測定に要する時間だけグリーンタイヤの成型時間を短縮させることができる。また、凹凸の修正は、トレッドの形成を何段階に区切って実行してもよく、又は、常にリボン状ゴムを積層部30の凹部に充填しながら徐々に積層数を増加させてトレッドを形成してもよい。
【0036】
また、以上の実施形態の説明では、リボン状ゴムでグリーンタイヤのトレッドを形成する場合を例に採り説明したが、トレッドは、リボン状ゴムを他のタイヤ構成部材上に直接積層して形成してもよく、又は、リボン状ゴムを成型ドラムの外周に積層してトレッドを形成した後、成型ドラムから取り外して他の成型ドラム上のタイヤ構成部材の外周面に貼り合わせてもよい。従って、リボン状ゴムを積層する成型ドラムの外周には、成型ドラムの外周面の他に、既に成型ドラム上に形成した他のタイヤ構成部材の外周面も含む。
【0037】
更に、本実施形態では、タイヤ構成部材として、特にタイヤのユニフォーミティへの影響が大きいトレッドを形成する場合を例に示したが、サイドウォール等の他のゴムからなるタイヤ構成部材も同様の方法で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態のタイヤ成型装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【図2】本実施形態のタイヤ成型装置によるトレッド形成の流れを示すフローチャートである。
【図3】積層部外表部の一部を模式的に示すタイヤ幅方向の断面図である。
【図4】従来のタイヤ成型装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【図5】従来のタイヤ成型装置で成型したグリーンタイヤのトレッドの一部を模式的に示すタイヤ幅方向の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・タイヤ成型装置、2・・・成型ドラム、3・・・移動手段、10・・・ステッチャーユニット、11・・・ステッチャーロール、20・・・測定手段、21・・・制御装置、22・・・A/Dコンバータ、23・・・D/Aコンバータ、30・・・積層部、31・・・リボン状ゴム、32・・・リボン状ゴム、35・・・凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫のリボン状ゴムを成型ドラムの外周に巻回して積層する工程を有し、前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型方法であって、
前記リボン状ゴムを積層した積層部の外形形状を測定する工程と、
該外形形状の測定結果から前記積層部の外表面の凹部の位置及び形状情報を取得する工程と、
該取得した情報に基づき、前記凹部にリボン状ゴムを積層して充填する工程とを有し、
前記リボン状ゴムの凹部への充填により前記積層部の外表面の凹凸を修正することを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたタイヤ成型方法において、
前記リボン状ゴムの凹部への充填を、前記タイヤ構成部材の形成途中に又は形成完了時に行うことを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたタイヤ成型方法において、
前記凹部の形状情報に基づき、前記凹部に充填するリボン状ゴムを該凹部の断面形状に対応した断面形状に形成する工程を有することを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたタイヤ成型方法において、
前記リボン状ゴムを積層して形成するタイヤ構成部材は、トレッドであることを特徴とするタイヤ成型方法。
【請求項5】
成型ドラムと、
該成型ドラムに未加硫のリボン状ゴムを供給するゴム供給手段と、
前記リボン状ゴムを前記成型ドラムの外周に巻回して積層する積層手段とを備え、
該積層手段により前記リボン状ゴムを積層して所定の断面形状のタイヤ構成部材を形成し、グリーンタイヤを成型するタイヤ成型装置であって、
前記リボン状ゴムを積層した積層部の外形形状を測定する測定手段と、
該測定手段の測定結果から前記積層部の外表面の凹部の位置及び形状情報を取得し、該取得した情報に基づき、前記積層手段を制御して前記凹部にリボン状ゴムを積層して充填する制御装置とを備え、
前記リボン状ゴムの凹部への充填により前記積層部の外表面の凹凸を修正することを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたタイヤ成型装置において、
前記成型ドラムに供給するリボン状ゴムの断面形状を変化させる可変手段と、
前記凹部の形状情報に基づき、前記可変手段を制御して前記凹部に充填するリボン状ゴムを該凹部の断面形状に対応した断面形状に形成する制御装置と、
を備えたことを特徴とするタイヤ成型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−223229(P2007−223229A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49158(P2006−49158)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】