説明

タイヤ昇温装置

【課題】本発明の課題は、タイヤの温度を高め、その高めた温度を維持する熱効率に優れ、エンジンに対して余分な負担を掛けることなく自動車の燃費を確実に向上させることができるタイヤ昇温装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のタイヤ昇温装置Aは、エンジンアンダカバー30に、走行風Wを左右に振り分けるガイド31を有していることを特徴とする。このタイヤ昇温装置Aは、従来のタイヤ昇温装置と異なって、ホイールハウスH,H内に滞留させたエンジン排熱によってタイヤT,Tの温度を高め、そしてその高めた温度を維持するので、温風をタイヤT,Tの表面に噴き付けるためのファンや圧縮装置を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤの温度を高めるタイヤ昇温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、省エネルギや低環境負荷の要請から従来よりも増して自動車の燃費の向上が求められている。そして、タイヤに係る技術分野においては、自動車の燃費の向上を目的としたタイヤ昇温装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
このタイヤ昇温装置は、タイヤの表面に温風を噴き付けるように構成されており、タイヤの温度を高めることでタイヤの転がり抵抗を低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−290916号公報
【特許文献2】実開平4−31605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、タイヤ周りにおいては、走行風と、高速で回転するタイヤに引っ張られてタイヤの表面で回転方向に流れる表面気流とが存在する。
したがって、従来のタイヤ昇温装置では、噴射した温風がタイヤ周りの走行風や表面気流に抗してタイヤに到達するように、ファンや圧縮装置を使用して温風を加速しなければならない。その結果、ファンや圧縮装置の駆動に費やされる電力を供給するためにエンジンに余分な負荷を掛けることとなって、却って燃費が悪化する恐れがある。
また、従来のタイヤ昇温装置では、主にタイヤのトレッド部の表面に温風を噴き付けることでタイヤの表面の温度を高めているために、タイヤの表面の熱は路面やタイヤ周りの雰囲気に逃げやすい。言い換えれば、従来のタイヤ昇温装置では、タイヤの温度を高める加熱効率が悪い。
【0005】
そこで、本発明の課題は、タイヤの温度を高める加熱効率に優れ、エンジン等の原動機に対して余分な負担を掛けることなく自動車の燃費を確実に向上させることができるタイヤ昇温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決した本発明のタイヤ昇温装置は、原動機アンダカバーに、走行風を左右に振り分けるガイドを有していることを特徴とする。
自動車が走行すると、自動車の前側で受けた走行風の一部はエンジンやモータ等の原動機が配置される原動機室内に入り込むと共に、原動機排熱を伴って原動機室の後方で床下等から原動機室外に抜けていく。
一方、本発明のタイヤ昇温装置においては、原動機アンダカバーに、走行風を左右に振り分けるガイドを有しているので、原動機排熱を伴った走行風が原動機室からホイールハウス内に導かれて滞留する。その結果、タイヤ昇温装置は、ホイールハウス内に滞留した原動機排熱でタイヤの温度を高め、そして高めたタイヤの温度を維持するという2つの機能を発揮することによってタイヤの転がり抵抗を低減する。
【0007】
また、本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)のようにタイヤの表面に温風を噴き付けてタイヤの温度を高めるものと異なって、ホイールハウス内に滞留させた原動機排熱によってタイヤの温度を高め、そしてその高めた温度を維持するので、温風をタイヤの表面に噴き付けるためのファンや圧縮装置を必要としない。したがって、本発明のタイヤ昇温装置によれば、ファンや圧縮装置の駆動による余分な負荷を原動機に掛けることがない。
【0008】
そして、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)は、温風を噴き付けることでタイヤの表面の温度を高めているために、タイヤの表面の熱が路面やタイヤ周りの雰囲気に逃げやすい。これに対して、本発明のタイヤ昇温装置によれば、ホイールハウス内に滞留させた原動機排熱によってタイヤの温度を高め、そして高めたタイヤの温度を維持するので、タイヤに寄与する総熱量が大きく、かつタイヤに熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができる。
【0009】
また、このようなタイヤ昇温装置においては、前記ガイドは、前記原動機アンダカバー上に突出する整流リブであってもよい。このタイヤ昇温装置は、ガイドを簡素な構造とすることができると共に、原動機と原動機アンダカバーとの間隔が僅かであってもガイドを配置することができる。
【0010】
また、このようなタイヤ昇温装置においては、ストレーキを更に有しているものが望ましい。ストレーキは、本来、ドラッグ(Cd値)を低減する空力デバイスとして知られているが、本発明においては、この作用に加えて原動機排熱をホイールハウス内に、より安定して滞留させるように作用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置と異なって温風を加速する必要がなく原動機に余分な負荷を掛けることがないので自動車の燃費を確実に向上させることができる。また、本発明のタイヤ昇温装置は、タイヤに寄与する総熱量が大きく、かつタイヤに熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができるので、タイヤの温度を高め、そしてその高めた温度を維持するための熱効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のタイヤ昇温装置を搭載する自動車の前側を部分的に示す斜視図であり、自動車の右斜め後方から自動車の前側を見下ろした図である。
【図2】(a)は、本発明のタイヤ昇温装置を構成するガイドの斜視図であり、ガイドを左斜め前方から見下ろした図、(b)は、(a)中のII−II断面図である。
【図3】図1中のIII−III断面図である。
【図4】自動車の前側における走行風の流れを説明する斜視図であって、自動車の前側を自動車の左寄り前方から見下ろした様子を部分的に示す図である。
【図5】走行風がガイドで左右に振り分けられる様子を示す斜視図であって、自動車の前下側を左後方から見上げた様子を部分的に示す斜視図である。
【図6】(a)は、走行する自動車のタイヤ周りにおける気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、(b)は、走行する自動車のホイールハウス内における気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、(c)は、ホイールハウス内における気流の分布を模式的に示す図であって、図1中のVI−VI断面に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のタイヤ昇温装置の実施形態について図を参照しながら詳細に説明する。本発明のタイヤ昇温装置は、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)と異なって、温風をタイヤにアクティブ(能動的)に噴き付けるためのファンや圧縮装置を使用せずに、原動機排熱であるエンジン排熱(トランスミッションの発熱を含む)をホイールハウス内に導くように構成されている。更に具体的に説明すると、本発明のタイヤ昇温装置は、エンジン排熱を走行風によってパッシブ(受動的)に左右に振り分けてホイールハウス内に導くと共に滞留させるように構成されている。
【0014】
ここでは主に図1から図3を参照する。なお、図3には、ラジエータ、シュラウド、ストレーキ等を仮想線で示している。そして、以下の説明において、前後上下左右の方向は自動車の前後上下左右の方向に一致させた図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のタイヤ昇温装置Aは、エンジンアンダカバー30に、走行風を左右に振り分けるガイド31を有していることを主な特徴としている。なお、エンジンアンダカバー30は、特許請求の範囲にいう原動機アンダカバーに相当する。
【0016】
エンジンアンダカバー30は、自動車Mのフロントサイドフレーム12a,12a及びバルクヘッドロアクロスメンバ12bの下方に配置されることで、図示しないエンジンの下側(底側)を覆うこととなる。図1中、符号6はホイールハウスHを区画するインナフェンダを示し、符号TはホイールハウスH内に配置されるタイヤ(ホイール)を示し、符号10は、ラジエータを示している。
【0017】
本実施形態でのガイド31は、図1及び図2(a)に示すように、エンジンアンダカバー30上に突出して走行風を左右に振り分ける整流リブで形成されている。
このガイド31は、平面視で略くの字状になだらかに屈曲しており、前方に凸であって左右に延びるにしたがってなだらかに後方に変位するように形成されている。そして、ガイド31は、図2(b)に示すように、断面視でL字状の板体で形成されており、エンジンアンダカバー30の上面から立ち上がる縦壁部分33と、この縦壁部分33から前方に屈曲して張り出す横壁部分34とを備えている。
【0018】
このようなガイド31は、図1に示すように、左右に延びる延長線上にホイールハウスH,Hが位置するように配置されている。
言い換えれば、ガイド31は、図3に示すように、ホイールハウスHの後端Zよりも前方寄りに配置されている。なお、ガイド31は、ホイールハウスHの前後方向の中間位置Yよりも前方に配置されることが望ましく、この中間位置YとホイールハウスHの前端Xとの間に配置されることが更に望ましい。このように配置されたガイド31は、後記するように、ラジエータ10を通過した走行風WがエンジンE(トランスミッションを含む)の前側からエンジンアンダカバー30に向かって流れる際に、この走行風WをホイールハウスH内に効率よく導くことができる。
【0019】
本実施形態でのガイド31は、例えば金属、樹脂等の材料で形成することができる。そして、エンジンアンダカバー30に対するガイド31の接合は、材料に応じて好適な接合法を選択すればよく、接合方法としては、例えば、溶接、接着、締結具等が挙げられる。
【0020】
図3中、符号6はインナフェンダを示し、符号Tはタイヤを示している。
本実施形態でのインナフェンダ6は、広義のインナフェンダを意味しており、タイヤTが配置されるホイールハウスHを区画している。なお、本実施形態でのインナフェンダ6は、作図の便宜上一体に描かれているが、ホイールハウスHを区画しているものであれば、複数の部材が組み合わされて形成されたものであってもよい。また、車体の骨格を形成するフレーム(図示省略)の一部がインナフェンダ6の一部を兼ねていてもよい。
【0021】
本実施形態でのタイヤ昇温装置Aは、図3に示すように、ストレーキ14を更に備えている。このストレーキ14は、タイヤTの直前に配置される空力デバイスであって、本実施形態でのストレーキ14は、タイヤTの直前で下垂する板状体で形成されている。このストレーキ14は、本来、タイヤTのトレッド部に走行風が直接当たることによって生じるドラッグ(Cd値)を低減するものとして知られている。そして、本実施形態におけるストレーキ14は、後記するように、この作用に加えてエンジン排熱を伴わない走行風がタイヤTの前方及びタイヤTの内側方部(ホイールハウスH内のタイヤTが存在しないゾーン)からホイールハウスH内に流入する風量を減少させる。その結果、ストレーキ14は、エンジン排熱をホイールハウスH内に、より安定して滞留させることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係るタイヤ昇温装置Aの作用効果について説明する。ここで参照する図4は、自動車の前側における走行風の流れを説明する斜視図であって、自動車の前側を自動車の左寄り前方から見下ろした様子を部分的に示す図である。図5は、走行風がガイドで左右に振り分けられる様子を示す斜視図であって、自動車の前下側を左後方から見上げた様子を部分的に示す斜視図である。図6(a)は、走行する自動車のタイヤ周りにおける気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、図6(b)は、走行する自動車のホイールハウス内における気流を模式的に示す自動車の前側の部分側面図、図6(c)は、ホイールハウス内における気流の分布を模式的に示す図であって、図1中のVI−VI断面に対応する断面図である。この図6(c)には、タイヤを装着するホイール、ハブ、ドライブシャフト、ナックル、ロアアーム、アッパアーム、ダンパ等を仮想線で示している。
【0023】
図4に示すように、自動車Mが走行すると、自動車Mの前側で受けてラジエータ(図示省略)を通過した走行風Wは、エンジンルームR内に配置されたエンジンE(トランスミッションを含む)の前側に突き当たった後に、その一部がエンジンEの下側(底側)に向かって流れる。なお、エンジンEの前側に突き当たった走行風Wの一部は、図示しないが、エンジンEの上側及び左右両脇の車体骨格とエンジンの間隙を通ってエンジンルームRの後方で床下等からエンジンルームR外に抜けていく。図4中、符号Tはタイヤを示している。
【0024】
そして、エンジンEの前側から下側(底側)に向かって流れた走行風Wは、図3に示すように、エンジンアンダカバー30に向って流れる。
この際、走行風Wはラジエータ10を通過することで、エンジン排熱を伴うと共に、エンジンEの前側から下側(底側)に向かって流れることで、走行風Wには更にエンジン排熱が加わる。ちなみに、エンジンEの前側から下側(底側)に向かって流れる走行風Wには、エンジンEからの熱伝達(対流熱伝達)、及び熱放射(輻射)によってエンジン排熱が移動する。
【0025】
そして、エンジンアンダカバー30に向かって流れた走行風Wは、図5に示すように、ガイド31によって左右に振り分けられる。この際、振り分けられた走行風Wは、左右に延びたガイド31の延長線上にホイールハウスH,Hが位置するので、このガイド31に案内されることでホイールハウスH,Hに向かって流れる。
【0026】
一方、図6(a)に示すように、走行する自動車MのタイヤT周りにおいては、走行風Wが流入する。また、タイヤT周りには、高速で回転するタイヤTに引っ張られてその表面で回転方向に流れる表面気流Sが存在する。
【0027】
これに対して、図6(b)に示すように、ホイールハウスH内においては、ハブ20の車幅方向の内側で、走行風Wが図示しないバンパ下部や床下から流入する。
しかしながら、走行中の自動車Mであっても、ホイールハウスHの前部及び上部(後記する気流領域C3(図6(c)参照))における気流Fは、その速度が著しく小さく、流れる方向も無秩序な渦流に似た流れを形成することを本発明者らは確認している。具体的には、本発明者らが行ったシミュレーションによる計測では、30km/hで走行する自動車のホイールハウスH内の上部における気流の速度は、1.0〜2.0m/s程度であり、90km/hで走行する自動車のホイールハウスH内の上部における気流の速度は、3.0〜5.0m/s程度であった。
【0028】
つまり、図6(c)に示すように、ホイールハウスH内においては、主に、タイヤT周りに形成される気流領域C1と、ハブ20の内側で走行風W(図6(b)参照)が流れ込む気流領域C2と、気流の速度が著しく小さい気流領域C3とに分れている。
なお、図6(c)中、符号21はタイヤTを装着するホイールを示し、符号22はドライブシャフトを示し、符号23はナックルを示し、符号24はロアアームを示し、符号25はアッパアームを示し、符号26はダンパを示している。
【0029】
そして、前記したように、ガイド31で左右に振り分けられた走行風W(図5参照)は、気流の速度が著しく小さい気流領域C3(図6(c)参照)に導かれることとなる。その結果、エンジン排熱は気流の速度が著しく低い気流領域C3で滞留する。
つまり、本実施形態のタイヤ昇温装置Aでは、図6(c)に示すように、気流領域C3に滞留したエンジン排熱がタイヤTの温度を高める。特に、タイヤTの内側面(車両の幅方向内側のサイドウォール部)が効率的に加熱される。ちなみに、トレッド部よりもゴム厚が薄いサイドウォール部は、熱容量を大きく確保できるタイヤ空気室内に対する熱移動を容易にしている。そして、気流領域C3に滞留したエンジン排熱は、高めたタイヤTの温度を維持する。
【0030】
以上のようなタイヤ昇温装置Aによれば、ホイールハウスH内に滞留したエンジン排熱によってタイヤTの温度を高め、その高めた温度を維持するので、タイヤTの転がり抵抗を低減することができる。その結果、自動車Mの燃費が向上する。
【0031】
また、タイヤ昇温装置Aは、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)のようにタイヤの表面に温風を噴き付けてタイヤの温度を高めるものと異なって、ホイールハウスH内に滞留させたエンジン排熱によってタイヤTの温度を高め、そしてその高めた温度を維持するので、温風をタイヤの表面に噴き付けるために加速するファンや圧縮装置を必要としない。したがって、タイヤ昇温装置Aによれば、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)と異なって、温風を加速するファンや圧縮装置の駆動に費やされる電力を供給するためにエンジンに余分な負荷を掛けることがないので、自動車Mの燃費を確実に向上させることができる。
【0032】
また、タイヤ昇温装置Aは、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)と異なって、温風を加速するファンや圧縮装置を必要としないので、これらのファンや圧縮装置の制御システムも必要としない。その結果、タイヤ昇温装置Aによれば、従来のタイヤ昇温装置よりも簡素な構成となるので、部品点数や製造コストを低減することができる。そして、部品点数を少なくして自動車Mの重量を低減することによってもタイヤ昇温装置Aは燃費の向上に寄与することができる。
【0033】
また、従来のタイヤ昇温装置(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)では、温風を噴き付けることでタイヤの表面の温度を高めているために、タイヤの表面の熱は路面やタイヤを取り巻く雰囲気に逃げやすい。これに対して、タイヤ昇温装置Aは、ホイールハウスH内に滞留させたエンジン排熱によって、常時タイヤTの温度を高め、そして高めたタイヤTの温度を維持するので、タイヤTに寄与する総熱量(気流領域C3での総熱量)が大きく、タイヤTに対し熱を連続的に(間断なく)安定して供給することができる。その結果、タイヤ昇温装置Aは、従来のタイヤ昇温装置と比較して、タイヤTの温度を高め、そしてその高めた温度を維持する熱効率が優れている。
【0034】
また、タイヤ昇温装置Aによれば、エンジン排熱を伴う走行風Wの案内経路をエンジンアンダカバー30の上面に沿うようにレイアウトすることができるので、エンジンEとエンジンアンダカバー30との間のスペースを有効利用することができる。
【0035】
また、タイヤ昇温装置Aにおいては、ガイド31がエンジンアンダカバー30上に突出する整流リブで形成されているので、ガイド31を簡素な構造とすることができると共に、エンジンEとエンジンアンダカバー30との間隔が僅かであってもガイド31を配置することができる。
【0036】
また、タイヤ昇温装置Aは、図3に示すように、タイヤTの直前にストレーキ14を有しているので、バンパ下部や床下等を流れることでエンジン排熱を伴わない走行風がタイヤTの正面から当たることを回避している。つまり、ストレーキ14は、エンジン排熱を伴わない走行風がタイヤTに衝突し、かつその後にホイールハウスH内に流入する風量を減少する。更に詳しく説明すると、ストレーキ14は、図6(a)に示すタイヤT周りに流入するエンジン排熱を伴わない走行風Wを減少させることにより、表面気流Sと走行風Wが衝突し、乱流となってホイールハウスHの外部に漏れ出る流量を減少させる。また、ストレーキ14は、図6(b)に示す場合においても、エンジン排熱を伴わない走行風WがホイールハウスHの上部に流入する流量を抑制することができる。これを言い換えれば、図6(c)に示す気流領域C2が縮小すると共に、ホイールハウスH内で気流の速度が著しく小さい気流領域C3が拡大する。その結果、このタイヤ昇温装置Aは、エンジン排熱をホイールハウスH内に、より大きな領域で、より安定して滞留させる。したがって、このタイヤ昇温装置Aによれば、タイヤTの温度を高め、そして高めたタイヤTの温度を維持する熱効率が更に優れることとなる。
【0037】
また、タイヤ昇温装置Aにおいては、ガイド31が平面視で略くの字状になだらかに屈曲すると共に、エンジンアンダカバー30の上面から立ち上がる縦壁部分33と、この縦壁部分33から前方に屈曲して張り出す横壁部分34とを備えているので、このタイヤ昇温装置Aによれば、ファンや圧縮装置を使用しなくとも、エンジン排熱を伴った走行風Wを円滑にホイールハウスH,H内に導くことができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、ガイド31をエンジンアンダカバー30に接合して設けることを想定しているが、本発明はガイド31がエンジンアンダカバー30と一体に成形されたものであってもよい。また、ガイド31はエンジンアンダカバー30の切り起し切片で形成されてもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、ガイド31が平面視で略くの字状を呈するものについて説明したが、本発明はガイド31がエンジンアンダカバー30上で走行風Wを左右に振り分けることができればその形状に特に制限はない。したがって、ガイド31は、エンジンアンダカバー30上で車幅方向に直線状に延びる縦壁で構成されていてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、ガイド31が自動車Mの前後方向に延びる中心線に対して平面視で線対称となるものを想定して説明したが、本発明の目的(課題)を阻害しない限り、ガイド31は中心線に対して非対称の形状であってもよい。
【0041】
また、前記実施形態では、エンジン自動車に適用するタイヤ昇温装置について説明したが、本発明は原動機がモータである電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む)に適用されるものであってもよい。さらにバッテリボックスなどの原動機以外の排熱源がある場合は同様の考え方でその排熱を前輪又は後輪に導入してもよい。
【符号の説明】
【0042】
6 インナフェンダ
10 ラジエータ
14 ストレーキ
30 エンジンアンダカバー(原動機アンダカバー)
31 ガイド
A タイヤ昇温装置
M 自動車
H ホイールハウス
T タイヤ
W 走行風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機アンダカバーに、走行風を左右に振り分けるガイドを有していることを特徴とするタイヤ昇温装置。
【請求項2】
前記ガイドは、前記原動機アンダカバー上に突出する整流リブであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ昇温装置。
【請求項3】
ストレーキを更に有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤ昇温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179729(P2010−179729A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23635(P2009−23635)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】