説明

タイヤ用モールド

【課題】高品質なタイヤが得られるモールドの提供。
【解決手段】モールドのセグメント18は、そのキャビティ面24に上側主山26及び下側主山28を備えている。このセグメント18は、左側分割面34と右側分割面36とを備えている。左側分割面34は、第一面38、第二面40、第三面42、第四面44及び第五面46を有している。第二面40により、第一面38と第三面42との間に段差が形成されている。第四面44により、第三面42と第五面46との間に段差が形成されている。右側分割面36は、第六面48、第七面50、第八面52、第九面54及び第十面56を有している。第七面50により、第六面48と第八面52との間に段差が形成されている。第九面54により、第八面52と第十面56との間に段差が形成されている。これら段差は、上側主山又は下側主山に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用のモールドに関する。詳細には、本発明は、複数のセグメントを備えたモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程には、モールドが用いられている。加硫工程では、予備成形で得られたローカバーが、モールドに投入される。このローカバーは、モールドとブラダーとに囲まれたキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0003】
モールドは、割モールド及びツーピースモールドに大別される。トレッドパターンの自由度が高いとの観点から、近年は割モールドが主として用いられている。割モールドは、複数のトレッドセグメントを備えている。図11は、従来のセグメント2が示された正面図である。このセグメント2は、キャビティ面4に2本の主山6と多数の副山8とを備えている。平面視において、このセグメント2は円弧状である。多数のセグメント2が並べられることで、リング状のキャビティが形成される。このセグメント2の、隣接するセグメント2に当接する面10は、「分割面」と称されている。分割面10は、タイヤの軸方向に沿って延在している。
【0004】
このセグメント2を備えたモールドにて得られたタイヤは、主溝と副溝とを備える。主溝は、主山6の形状が反転した形状を有する。主溝は、タイヤの周方向に延在する。副溝は、副山8の形状が反転した形状を有する。主溝及び副溝は、濡れた路面をタイヤが走行するときの水はけに寄与する。特に主溝は、周方向に延在するので、後方への水はけに大いに寄与する。
【0005】
セグメントを備えたモールドの一例が、特開平9−99435号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−99435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加硫工程では、セグメント2の分割面10に圧力が加わる。この圧力は、分割面10の圧縮変形を招来する。モールドが繰り返し使用されることにより、セグメント2と他のセグメント2との間のクリアランスが成長する。大きなクリアランスを有するモールドにより、タイヤにバリが生じる。バリは、分割面10に沿って存在する。
【0008】
図12には、バリ12を有するタイヤ14の一部が示されている。分割面10が軸方向に延在するので、バリ12も軸方向に延在している。バリ12は、主溝16を横切っている。バリ12は、主溝16を閉塞している。このバリ12は、主溝16による水はけを阻害する。このバリ12は、タイヤ14の静寂性を損なうおそれがある。さらにバリ12は、クラックの起点となるおそれもある。このバリ12は、タイヤ14の品質を損なう。
【0009】
本発明の目的は、高品質なタイヤが得られるモールドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤ用モールドは、タイヤのトレッド面を形成するための複数のセグメントを備える。これらセグメントは、周方向に沿って並んでいる。それぞれのセグメントは、そのキャビティ面に、タイヤの主溝を形成するための主山を有する。この主山は、実質的に周方向に延在する。セグメントは、隣接する他のセグメントと当接する分割面を有する。主山において、分割面は段差を有する。
【0011】
好ましくは、段差の幅は1mm以上50mm以下である。好ましくは、段差を形成する面の、周方向に対する角度は、45°以下である。好ましくは、このモールドは、主山を分断する分割面を有さない。
【0012】
本発明に係るタイヤ製造方法は、
(1)予備成形によってローカバーが得られる工程、
(2)タイヤのトレッド面を形成するための複数のセグメントを備えており、これらセグメントが周方向に沿って並んでおり、それぞれのセグメントがそのキャビティ面にタイヤの主溝を形成するための主山を有しており、上記主山が実質的に周方向に延在しており、上記セグメントが隣接する他のセグメントと当接する分割面を有しており、上記主山において分割面が段差を有するモールドに、ローカバーが投入される工程、
並びに
(3)このローカバーがモールド内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るモールドでは、バリが主溝を閉塞しない。このモールドで得られたタイヤは、高品質である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ用モールドの一部が示された平面図である。
【図2】図2は、図1のモールドのセグメントが示された模式的斜視図である。
【図3】図3は、図1のモールドのセグメントが示された拡大正面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1のモールドによって得られたタイヤの一部が示された断面斜視図である。
【図6】図6は、図3のセグメントの一部が示された拡大図である。
【図7】図7は、図3のセグメントの一部が示された拡大図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメントが示された正面図である。
【図9】図9は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメントが示された正面図である。
【図10】図10は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメントが示された正面図である。
【図11】図11は、従来のタイヤ用モールドのセグメントが示された正面図である。
【図12】図12は、図11のモールドによって得られたタイヤの一部が示された断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示されたモールド16は、多数のトレッドセグメント18と、上下一対のサイドプレート20と、上下一対のビードリング22とを備えている。それぞれのセグメント18の平面形状は、実質的に円弧状である。多数のセグメント18が、リング状に配置されている。図2に示されるように、このモールド16は9個のセグメント18を備えている。それぞれのサイドプレート20は、実質的にリング状である。それぞれのビードリング22は、実質的にリング状である。このモールド16は、いわゆる「割モールド」である。
【0017】
図3において、矢印Xで示されているのはモールド16の周方向であり、矢印Yで示されているのはモールド16の軸方向である。図3及び4に示されるように、セグメント18は、そのキャビティ面24に上側主山26及び下側主山28を備えている。上側主山26及び下側主山28は、それぞれ、周方向(図3における左右方向)に延在している。セグメント18はさらに、そのキャビティ面24に多数の副山30を備えている。図4から明らかなように、上側主山26、下側主山28及び副山30は、ベース面32から突出している。
【0018】
図3に示されるように、このセグメント18は、左側分割面34と右側分割面36とを備えている。モールド16が締められたとき、左側分割面34は、このセグメント18の左側に位置する他のセグメント18(図示されず)の右側分割面36と当接する。モールド16が締められたとき、右側分割面36は、このセグメント18の右側に位置する他のセグメント18(図示されず)の左側分割面34と当接する。
【0019】
左側分割面34は、第一面38、第二面40、第三面42、第四面44及び第五面46を有している。第一面38、第三面42及び第五面46は、それぞれ軸方向に延在している。第二面40及び第四面44は、それぞれ周方向に延在している。右側分割面36は、第六面48、第七面50、第八面52、第九面54及び第十面56を有している。第六面48、第八面52及び第十面56は、それぞれ、軸方向に延在している。第七面50及び第九面54は、周方向に延在している。
【0020】
モールド16が締められたとき、第一面38は他のセグメント18の第六面48と当接し、第二面40は他のセグメント18の第七面50と当接し、第三面42は他のセグメント18の第八面52と当接し、第四面44は他のセグメント18の第九面54と当接し、第五面46は他のセグメント18の第十面56と当接し、第六面48は他のセグメント18の第一面38と当接し、第七面50は他のセグメント18の第二面40と当接し、第八面52は他のセグメント18の第三面42と当接し、第九面54は他のセグメント18の第四面44と当接し、第十面56は他のセグメント18の第五面46と当接する。
【0021】
第二面40は、第一面38と第三面42との間に位置している。第二面40により、第一面38と第三面42との間に段差が形成されている。第四面44は、第三面42と第五面46との間に位置している。第四面44により、第三面42と第五面46との間に段差が形成されている。第七面50は、第六面48と第八面52との間に位置している。第七面50により、第六面48と第八面52との間に段差が形成されている。第九面54は、第八面52と第十面56との間に位置している。第九面54により、第八面52と第十面56との間に段差が形成されている。
【0022】
第二面40は、上側主山26に相当する位置にある。左側分割面34は、上側主山26において、第二面40によって形成される段差を有する。換言すれば、左側分割面34は上側主山26を分断していない。
【0023】
第四面44は、下側主山28に相当する位置にある。左側分割面34は、下側主山28において、第四面44によって形成される段差を有する。換言すれば、左側分割面34は下側主山28を分断していない。
【0024】
第七面50は、上側主山26に相当する位置にある。右側分割面36は、上側主山26において、第七面50によって形成される段差を有する。換言すれば、右側分割面36は上側主山26を分断していない。
【0025】
第九面54は、下側主山28に相当する位置にある。右側分割面36は、下側主山28において、第九面54によって形成される段差を有する。換言すれば、右側分割面36は下側主山28を分断していない。このモールド16は、主山26、28を分断する分割面を全く有していない。一部の分割面が、主山を分断してもよい。
【0026】
このモールド16の型締めにより、左側分割面34に圧力が加わる。この圧力の向きは、主として周方向である。第一面38、第三面42及び第五面46は、前述の通り軸方向に延在している。従って、第一面38、第三面42及び第五面46には大きな圧力がかかる。第二面40及び第四面44には、これらが周方向に延在しているので、大きな圧力はかからない。モールド16が繰り返し使用されることにより、第一面38、第三面42及び第五面46は圧縮変形を起こす。
【0027】
このモールド16の型締めにより、右側分割面36に圧力が加わる。この圧力の向きは、主として周方向である。第六面48、第八面52及び第十面56は、前述の通り軸方向に延在している。従って、第六面48、第八面52及び第十面56には大きな圧力がかかる。第七面50及び第九面54には、これらが周方向に延在しているので、大きな圧力はかからない。モールド16が繰り返し使用されることにより、第六面48、第八面52及び第十面56は圧縮変形を起こす。
【0028】
圧縮変形が生じたモールド16が締められたとき、第一面38と第六面48とのクリアランスが大きく、第三面42と第八面52とのクリアランスが大きく、第五面46と第十面56とのクリアランスが大きい。このモールド16で得られたタイヤの表面には、これらクリアランスに相当する位置に、大きなバリが生じる。
【0029】
圧縮変形が生じたモールド16で得られたタイヤ58の一部が、図5に示されている。図5には、主溝60と、バリ62aと、他のバリ62bとが示されている。バリ62aは、第一面38(図3参照)と第六面48とのクリアランスで形成されたものである。バリ62bは、第三面42と第八面52とのクリアランスで形成されたものである。主溝60は、上側主山26によって形成されたものである。上側主山26は第二面40及び第七面50によって形成される段差を有するので、図5に示されるように、バリ62aとバリ62bとは周方向においてずれている。図示されていないが、このタイヤ58は下側主山28によって形成された主溝も備えている。この主溝では、第三面42と第八面52とのクリアランスで形成されたバリと、第五面46と第十面56とのクリアランスで形成されたバリとが、周方向においてずれている。
【0030】
バリ62aとバリ62bとがずれているので、これらのバリ62は隔壁を形成しない。バリ62は、主溝60を閉塞していない。この主溝60では、水が後方へと円滑に流れる。このタイヤ58は、排水性に優れる。隔壁を形成しないバリ62は、タイヤ58の静寂性を阻害しない。さらにこのバリ62は、クラックの起点となりにくい。
【0031】
図3において矢印Wで示されているのは、段差の幅である。幅Wは、1mm以上50mm以下が好ましい。幅Wが1mm以上であるセグメント18により、主溝60を閉塞するバリ62がないタイヤ58が得られうる。この観点から、幅Wは3mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。幅Wが50mm以下であるセグメント18の製作は、容易である。この観点から、幅Wは30mm以下がより好ましく、20mm以下が特に好ましい。
【0032】
第二面40、第四面44、第七面50及び第九面54は、前述の通り、周方向に延在している。これらの面の周方向に対する角度は、ゼロである。これらの面が、周方向に対して多少傾斜してもよい。傾斜の角度は45°(degree)以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。理想的には、角度はゼロである。
【0033】
図6に示されるように、第一面38と第二面40との間のコーナーには、ベベル64aが形成されている。図7に示されるように、第六面48と第七面50との間には、面取り66aが形成されている。モールド16が締められたとき、ベベル64aは、他のセグメント18の面取り66aと当接する。
【0034】
図6に示されるように、第二面40と第三面42との間のコーナーには、面取り66bが形成されている。図7に示されるように、第七面50と第八面52との間には、ベベル64bが形成されている。モールド16が締められたとき、面取り66bは、他のセグメント18のベベル64bと当接する。
【0035】
図6に示されるように、第三面42と第四面44との間のコーナーには、面取り66cが形成されている。図7に示されるように、第八面52と第九面54との間には、ベベル64cが形成されている。モールド16が締められたとき、面取り66cは、他のセグメント18のベベル64cと当接する。
【0036】
図6に示されるように、第四面44と第五面46との間のコーナーには、ベベル64dが形成されている。図7に示されるように、第九面54と第十面56との間には、面取り66dが形成されている。モールド16が締められたとき、ベベル64dは、他のセグメント18の面取り66dと当接する。
【0037】
面取り66により、セグメント18のコーナーの破損が防止される。破損防止の観点から、面取り66の幅Cは1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。主溝60を閉塞するバリ62が生じにくいとの観点から、幅Cは5.0mm以下が好ましい。面取り66に代えて、丸み面取り(いわゆるアール)が形成されてもよい。コーナーの破損防止の観点から、丸み面取りの半径は1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。主溝60を閉塞するバリ62が生じにくいとの観点から、このアールは5.0mm以下が好ましい。
【0038】
このモールド16が用いられたタイヤ製造方法では、予備成形によってローカバー(未加硫タイヤ)が得られる。このローカバーが、モールド16が開いておりブラダーが収縮している状態で、モールド16に投入される。モールド16が締められ、ブラダーが膨張する。ローカバーはブラダーによってモールド16のキャビティ面24に押しつけられ、加圧される。同時にローカバーは、加熱される。加圧と加熱とによりゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ58が得られる。ローカバーが加圧及び加熱される工程は、加硫工程と称される。ブラダーに代えて、又はブラダーと共に、中子が用いられてもよい。
【0039】
加硫工程において、タイヤ58の表面に2つの主溝60(図5参照)及び多数の副溝が形成される。一方の主溝60は、上側主山26に対応する。他方の主溝60は、下側主山28に対応する。それぞれの副溝は、副山30に対応する。タイヤ58の表面には、さらに、第一面38と第六面48とのクリアランスで形成されたバリ62a、第三面42と第八面52とのクリアランスで形成されたバリ62b及び第五面46と第十面56とのクリアランスで形成されたバリ62が存在する。前述の通り、これらのバリ62は、主溝60を閉塞しない。この製造方法により、品質に優れたタイヤ2が得られる。
【0040】
図8には、本発明の他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメント68が示されている。このセグメント68は、そのキャビティ面70に上側主山72及び下側主山74を備えている。上側主山72及び下側主山74は、それぞれ、ジグザグ形状を有する。上側主山72及び下側主山74は、それぞれ、実質的に周方向に延在している。
【0041】
このセグメント68は、左側分割面76と右側分割面78とを備えている。左側分割面76は、上側主山72において段差を有する。換言すれば左側分割面76は、上側主山72を分断していない。左側分割面76は、下側主山74において段差を有する。換言すれば、左側分割面76は、下側主山74を分断していない。右側分割面78は、上側主山72において段差を有する。換言すれば、右側分割面78は、上側主山72を分断していない。右側分割面78は、下側主山74において、段差を有する。換言すれば、右側分割面78は、下側主山74を分断していない。このモールドで得られたタイヤでは、主溝を閉塞するバリが生じない。
【0042】
このセグメント68でも、段差の幅Wは、1mm以上50mm以下が好ましい。幅Wは3mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。幅Wは30mm以下がより好ましく、20mm以下が特に好ましい。
【0043】
このセグメント68でも、段差を形成する面79の周方向に対する角度は45°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。理想的には、角度はゼロである。
【0044】
このセグメント68でも、コーナーに面取り又は丸み面取りがなされることが好ましい。
【0045】
図9には、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメント80が示されている。このセグメント80は、そのキャビティ面82に上側主山84、下側主山86及び多数の副山88を備えている。上側主山84及び下側主山86は、それぞれ、周方向に延在している。
【0046】
このセグメント80は、左側分割面90と右側分割面92とを備えている。左側分割面90は、上側主山84において段差を有する。換言すれば左側分割面90は、上側主山84を分断していない。左側分割面90は、下側主山86において段差を有する。換言すれば、左側分割面90は、下側主山86を分断していない。右側分割面92は、上側主山84において段差を有する。換言すれば、右側分割面92は、上側主山84を分断していない。右側分割面92は、下側主山86において、段差を有する。換言すれば、右側分割面92は、下側主山86を分断していない。このモールドで得られたタイヤでは、主溝を閉塞するバリが生じない。
【0047】
このセグメント80でも、段差の幅Wは、1mm以上50mm以下が好ましい。幅Wは3mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。幅Wは30mm以下がより好ましく、20mm以下が特に好ましい。
【0048】
このセグメント80でも、段差を形成する面94の周方向に対する角度は45°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。理想的には、角度はゼロである。
【0049】
このセグメント80でも、コーナーに面取り又は丸み面取りがなされることが好ましい。
【0050】
図10には、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤ用モールドのセグメント96が示されている。このセグメント96は、そのキャビティ面98に上側主山100、下側主山102及び多数の副山104を備えている。上側主山100及び下側主山102は、それぞれ、周方向に延在している。
【0051】
このセグメント96は、左側分割面106と右側分割面108とを備えている。左側分割面106は、上側主山100において段差を有する。換言すれば左側分割面106は、上側主山100を分断していない。左側分割面106は、下側主山102において段差を有する。換言すれば、左側分割面106は、下側主山102を分断していない。右側分割面108は、上側主山100において段差を有する。換言すれば、右側分割面108は、上側主山100を分断していない。右側分割面108は、下側主山102において、段差を有する。換言すれば、右側分割面108は、下側主山102を分断していない。このモールドで得られたタイヤでは、主溝を閉塞するバリが生じない。
【0052】
このセグメント96でも、段差の幅Wは、1mm以上50mm以下が好ましい。幅Wは3mm以上がより好ましく、5mm以上が特に好ましい。幅Wは30mm以下がより好ましく、20mm以下が特に好ましい。
【0053】
このセグメント96では、左側分割面106は、段差を形成する2つの面110を備えている。それぞれの面110は、面112に向かって軸方向内向きに傾斜している。右側分割面108は、段差を形成する2つの面114を備えている。それぞれの面114は、面116に向かって軸方向内向きに傾斜している。傾斜の傾斜の角度θは45°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。理想的には、角度はゼロである。
【0054】
このセグメント96でも、コーナーに面取り又は丸み面取りがなされることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0056】
[実施例1]
図3に示されたセグメントを備えたモールドを用意した。このモールドの分割面の段差の幅Wは、10mmである。段差を形成する面の、周方向に対する角度は0°である。
【0057】
[実施例2−5]
下記表1に示される幅Wを有するモールドを用意した。
【0058】
[実施例6]
図10に示されたセグメントを備えたモールドを用意した。このモールドの分割面の段差の幅Wは、10mmである。段差を形成する面の、周方向に対する角度θは3°である。
【0059】
[実施例7−8]
下記表1に示される角度θを有するモールドを用意した。
【0060】
[比較例]
分割面が段差を有さないモールドを用意した。このモールドは、図11に示されたセグメントを備えている。
【0061】
[排水性]
モールドの開閉を1000回行った。このモールドにローカバーを投入し、タイヤを得た。このタイヤの主溝に水を噴射し、排水性を目視で判定した。判定基準に従って、格付けした。
A:良好
B:やや不良
C:不良
【0062】
[製作の容易性]
セグメントの製作の容易性を、下記の基準に従って格付けした。
A:極めて容易
B:容易
C:困難
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示されるように、各実施例のモールドでは排水性に優れたタイヤが得られる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るモールドは、種々のタイヤの製造に適している。
【符号の説明】
【0066】
16・・・モールド
18、68、80、96・・・セグメント
26、72、84、100・・・上側主山
28、74、86、102・・・下側主山
30、88、104・・・副山
34、76、90、106・・・左側分割面
36、78、92、108・・・右側分割面
38・・・第一面
40・・・第二面
42・・・第三面
44・・・第四面
46・・・第五面
48・・・第六面
50・・・第七面
52・・・第八面
54・・・第九面
56・・・第十面
58・・・タイヤ
60・・・主溝
62・・・バリ
64・・・ベベル
66・・・面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面を形成するための複数のセグメントを備えており、
これらセグメントが、周方向に沿って並んでおり、
それぞれのセグメントが、そのキャビティ面に、タイヤの主溝を形成するための主山を有しており、
上記主山が、実質的に周方向に延在しており、
上記セグメントが、隣接する他のセグメントと当接する分割面を有しており、
上記主山において、分割面が段差を有するタイヤ用モールド。
【請求項2】
上記段差の幅が1mm以上50mm以下である請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
上記段差を形成する面の、周方向に対する角度が45°以下である請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項4】
上記主山を分断する分割面を有さない請求項1から3のいずれかに記載のモールド。
【請求項5】
(1)予備成形によってローカバーが得られる工程、
(2)タイヤのトレッド面を形成するための複数のセグメントを備えており、これらセグメントが周方向に沿って並んでおり、それぞれのセグメントがそのキャビティ面にタイヤの主溝を形成するための主山を有しており、上記主山が実質的に周方向に延在しており、上記セグメントが隣接する他のセグメントと当接する分割面を有しており、上記主山において分割面が段差を有するモールドに、ローカバーが投入される工程、
並びに
(3)このローカバーがモールド内で加圧及び加熱される工程
を含むタイヤ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−37188(P2011−37188A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188174(P2009−188174)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】