説明

タイヤ用モールド

【課題】生産性を損なうことなく、高品質なタイヤが得られるモールド6の提供。
【解決手段】このタイヤ用モールド6は、その内面がキャビティ面52を有するセグメント16と、このセグメント16の半径方向外側に位置するセクターシュー14と、このセグメント16をこのセクターシュー14に固定する締結部材とを備えている。このセグメント16の外面は、凸部42を備えている。このセクターシュー14の内面は、この凸部42に対応する凹部24を備えている。この締結部材の締め付けにより、この凸部42がこの凹部24に嵌め合わされ、このセグメント16の中心がこのセクターシュー14の中心と半径方向において一致する。好ましくは、このモールド6では、上記凸部42は頂面と、一対の斜面とを備えている。上記凹部24は、底面と、一対の斜面とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程では、モールドが用いられる。この加硫工程では、予備成形されたローカバー(未加硫タイヤとも称される)が、モールドに投入される。このローカバーは、モールドとブラダーとによって形成されるキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0003】
モールドは、割モールドとツーピースモールドとに大別される。割モールドは、円弧状のセグメントを有する。複数のセグメントが並べられることで、リング状のキャビティ面が形成される。セグメントの、隣接するセグメントに対する面は、「分割面」と称されている。分割面とこの分割面に隣接する他の分割面との間には、間隙が生じる。この間隙を通じて、エアーが排出される。このようなモールドの一例が、特開2001−1345公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−1345公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
割りモールドでは、複数のセグメントがリング状に配置されるので、隙間は複数生じる。このモールドにおいて、各セグメントの位置が適正な位置から外れると、過大な隙間が生じることがある。過大な隙間にゴム組成物が流入すると、タイヤにスピューが生じる。このスピューは、タイヤの外観を損なう。スピューは切削によって除去されうるが、この切削には手間がかかる。
【0006】
スピューの発生防止の観点から、各隙間にシムを挿通して各セグメントが適正な位置に配置されることがある。このシムは、セグメントの配置が完了した時点で取り外される。このシムを用いた隙間の調整作業は、煩雑である。この作業には、時間がかかる。この作業は、タイヤ製造時のリードタイムに影響する。このモールドでは、タイヤの生産性を向上させるには限界がある。
【0007】
本発明の目的は、生産性を損なうことなく、高品質なタイヤが得られるモールドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤ用モールドは、その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えている。このセグメントの外面は、凸部を備えている。このセクターシューの内面は、この凸部に対応する凹部を備えている。この締結部材の締め付けにより、この凸部がこの凹部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致する。
【0009】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、上記凸部は頂面と、一対の斜面とを備えている。この凸部は、両斜面間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されている。上記凹部は、底面と、一対の斜面とを備えている。この凹部は、両斜面間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されている。
【0010】
本発明に係る他のタイヤ用モールドは、その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えている。このセグメントの外面は、凹部を備えている。このセクターシューの内面は、この凹部に対応する凸部を備えている。この締結部材の締め付けにより、この凹部がこの凸部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致する。
【0011】
好ましくは、このタイヤ用モールドでは、上記凹部は、底面と、一対の斜面とを備えている。この凹部は、両斜面間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されている。上記凸部は、頂面と、一対の斜面とを備えている。この凸部は、両斜面間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されている。
【0012】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
(1)予備成形によって、ローカバーが得られる工程、
(2)その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えており、このセグメントの外面が凹部を備えており、このセクターシューの内面がこの凹部に対応する凸部を備えており、この締結部材の締め付けにより、この凹部がこの凸部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致するタイヤ用モールドに、ローカバーが投入される工程
及び
(3)このローカバーがモールド内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタイヤ用このモールドでは、各セグメントは適正な位置に配置される。このモールドでは、過大な隙間の形成が防止される。このモールドは、スピューの発生を防止する。このモールドは、高品質なタイヤの生産に寄与する。このモールドでは、隙間の調整が容易である。このモールドは、タイヤ製造時のリードタイムを削減する。このモールドは、タイヤの生産性に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ用加硫装置の一部が示された平面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図3のセクターシューが示された断面図である。
【図5】図5は、図3のセグメントが示された断面図である。
【図6】図6は、セグメント及びセクターシューの組み立て状況が示された斜視図である。
【図7】図7は、モールドの開閉に伴うセグメント及びセクターシューの動きを説明するための断面図である。
【図8】図8は、図2のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ用加硫装置の一部が示された断面図である。
【図10】図10は、図9のセクターシューが示された断面図である。
【図11】図11は、図9のセグメントが示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示された加硫装置2は、コンテナー4と、タイヤ用モールド6とを備えている。図示されていないが、この加硫装置2は、下側プレート(ベースプレート)、上側プレート、加熱板等をさらに備えている。この図1には、この加硫装置2の上面が示されている。図2には、この加硫装置2と共に、ローカバー8(未架橋タイヤとも称される。)も示されている。図3には、このローカバー8は示されていない。図1及び図3において、両矢印Yで示された方向がモールド6の周方向である。図2の左右方向が、モールド6の半径方向である。
【0017】
コンテナー4は、リング状である。コンテナー4は、分割されていない。図2に示されているように、このコンテナー4の内周面10は上下方向に対して傾斜している。この内周面10は、上側から下側に向かって半径方向外向きに傾斜している。この内周面10は、テーパー面である。図1及び図3に示されているように、コンテナー4の内周面10には、複数のスライドキー12が設けられている。これらスライドキー12は、周方向に等間隔に配置されている。各スライドキー12は、この内周面10から突出している。このスライドキー12は、この内周面10に沿って上下方向に延在している。このスライドキー12の断面形状は、略T字状である。
【0018】
モールド6は、コンテナー4の半径方向内側に位置している。このモールド6は、複数のセクターシュー14と、複数のセグメント16と、上下一対のサイドプレート18と、上下一対のビードリング20とを備えている。
【0019】
セクターシュー14の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセクターシュー14は、リング状に配置されている。これらセクターシュー14は、コンテナー4の内周面10に沿って周方向に配列している。各セクターシュー14は、コンテナー4の半径方向内側に位置している。このモールド6では、全てのセクターシュー14は互いに同等の形状を有している。
【0020】
図4に示されているのは、セクターシュー14の断面である。この断面は、図3に示されたセクターシュー14のそれと同等である。この図4において、一点鎖線C1はこのセクターシュー14の中心線を表している。図示されているように、この中心線C1はこのセクターシュー14の内面22において、その幅の中心を通る。このセクターシュー14は、この中心線C1に対して左右対称の形状を呈している。図4中、点P1はこの中心線C1とこの内面22との交点を表している。本明細書では、この交点P1がセクターシュー14の中心である。
【0021】
セクターシュー14の内面22は、凹部24を備えている。この凹部24は、この内面22の中心部分である。この凹部24は、この内面22の基準面26から窪んでいる。この凹部24は、底面28と、一対の斜面30とを備えている。この凹部24は、両斜面30の間の距離が底面28の側からこの内面22の基準面26の側に向かって漸増するように構成されている。図示されていないが、この凹部24は上下方向に延在している。
【0022】
セクターシュー14の外面32は、キー溝34及び案内面36をさらに備えている。図示されていないが、キー溝34はこのモールド6の上側から下側に向かって半径方向外向きに傾斜して延在している。図示されているように、このキー溝34の断面形状は、略T字状である。この断面形状は、コンテナー4のスライドキー12の断面形状に対応している。このモールド6では、このキー溝34にこのスライドキー12が挿入される。
【0023】
案内面36は、キー溝34の縁から周方向に拡がっている。図2に示されているように、案内面36は上下方向に対して傾斜している。この案内面36は、上側から下側に向かって半径方向外向きに傾斜している。この案内面36は、テーパー面である。この案内面36の傾斜角度は、コンテナー4の内周面10の傾斜角度と同等である。
【0024】
セグメント16の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセグメント16は、周方向に配列している。これらセグメント16は、リング状に配置されている。各セグメント16は、各セクターシュー14の半径方向内側に位置している。このモールド6では、全てのセグメント16は互いに同等の形状を有している。なお、セグメント16の、隣接するセグメント16に対する面38は、「分割面」と称されている。
【0025】
図5に示されているのは、セグメント16の断面である。この断面は、図3に示されたセグメント16のそれと同等である。この図5において、一点鎖線C2はこのセグメント16の中心線を表している。この中心線C2は、このセグメント16の外面40において、その幅の中心を通る。このセグメント16は、この中心線C2に対して左右対称の形状を呈している。図5中、点P2はこの中心線C2とこの外面40との交点を表している。本明細書では、この交点P2がセグメント16の中心である。
【0026】
セグメント16の外面40は、凸部42を有している。この凸部42は、この外面40の中心部分である。この凸部42は、この外面40の基準面44から突出している。この凸部42は、頂面46と、一対の斜面48とを備えている。この凸部42は、両斜面48の間の距離が頂面46の側からこの外面40の基準面44の側に向かって漸増するように構成されている。この凸部42の断面形状は、セクターシュー14に設けられた凹部24のそれと同等である。この凸部42に、セクターシュー14の凹部24は対応している。図示されていないが、この凸部42は上下方向に延在している。
【0027】
セグメント16の内面50は、キャビティ面52を有している。このモールド6では、複数のセグメント16が周方向に配列することにより、リング状のキャビティ面52aが形成される。このキャビティ面52aは、加硫工程においてローカバー8と当接しタイヤのトレッド面54を形成する。図示されていないが、キャビティ面52にはトレッド面54の溝に対応する山が設けられている。このモールド6では、全てのセグメント16は、キャビティ面52における山のパターンを除いて、互いに同等の形状を有している。
【0028】
このモールド6では、セグメント16の数は、通常3以上20以下である。典型的なモールド6において、セグメント16の数は、例えば8個又は9個である。それぞれのセグメント16が、それぞれのセクターシュー14に合わせられるので、このセクターシュー14の数はセグメント16のそれと同等である。したがって、このセクターシュー14の数は、通常3以上20以下である。典型的なモールド6において、セクターシュー14の数は、例えば8個又は9個である。サイドプレート18及びビードリング20は、実質的にリング状である。サイドプレート18及びビードリング20は、分割されていない。このモールド6は、いわゆる「割モールド」である。
【0029】
このモールド6では、セグメント16はセクターシュー14に固定されている。図6に示されているように、このモールド6では、一のセグメント16を一のセクターシュー14に固定するために、4本の螺子56が用いられる。このセクターシュー14には、貫通孔58が設けられている。このセグメント16には、穴60が設けられている。図示されていないが、このセグメント16の穴60には螺子56のねじ山に対応する溝が刻まれている。
【0030】
このモールド6では、次のようにしてセグメント16はセクターシュー14に固定される。セグメント16の凸部42が、セクターシュー14の凹部24に嵌め合わされる。螺子56が、貫通孔58に通される。この貫通孔58を通された螺子56は、穴60に嵌め合わされる。この螺子56が回され、セクターシュー14及びセグメント16が締め付けられる。この締め付けにより、セグメント16がセクターシュー14に固定される。本明細書では、この螺子56が締結部材である。このモールド6は、セグメント16をセクターシュー14に固定する締結部材をさらに備えている。
【0031】
このモールド6を用いてタイヤは、次のようにして製造される。予備成形によって、ローカバー8(未加硫タイヤ)が得られる。このローカバー8は、モールド6が開いておりブラダー(図示されず)が収縮している状態で、モールド6に投入される。この投入により、ブラダーはローカバー8の内側に位置する。ブラダーの内部にガスが充填され、このブラダーが膨張する。この膨張により、ローカバー8は変形する。モールド6が締められ、ブラダーの内圧が高められる。ローカバー8はブラダーによってモールド6のキャビティ面52aに押しつけられ、加圧される。この状態のローカバー8が、図2に示されている。同時にローカバー8は、加熱される。加圧と加熱とによりゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。ローカバー8が加圧及び加熱される工程は、加硫工程と称される。ブラダーに代えて、又はブラダーと共に、中子が用いられてもよい。
【0032】
タイヤは、モールド6が開けられ、このモールド6から取り出される。モールド6が開けられる際、コンテナー4は上方に移動する。この移動により、セクターシュー14は、コンテナー4に対して下方へと相対移動する。この相対移動は、スライドキー12がキー溝34の内部をスライド移動することにより達成される。このモールド6では、コンテナー4の内周面10及びセクターシュー14の案内面36は、下方へいくほど拡径している。このため、この相対移動により、セクターシュー14が半径方向外側へと移動していく。セクターシュー14が半径方向外側へ移動することにより、隣り合ったセクターシュー14同士が離れる。
【0033】
前述したように、セグメント16はセクターシュー14に固定されている。このため、セクターシュー14が半径方向外側へ移動すると、セグメント16も半径方向外側へ移動する。セグメント16の半径方向外側への移動により、隣り合ったセグメント16同士が離れるとともに、セグメント16のキャビティ面52が、得られたタイヤのトレッド面54から離れる。コンテナー4及びセグメント16が上方に移動され、このタイヤが取り出される。
【0034】
図7には、モールド6の開閉に伴うセクターシュー14及びセグメント16の動きを説明するための断面図が示されている。この図7では、セクターシュー14及びセグメント16のみが示されている。前述したように、閉じられた状態のモールド6が開かれると、隣り合ったセグメント16同士が離間し、隣り合ったセクターシュー14同士も離間する(図7の上向き矢印Y1参照)。開かれたモールド6が閉じられる場合には、逆の動きが奏される。即ちこの場合、セクターシュー14は、コンテナー4に対して上方へと相対移動する。換言すれば、コンテナー4は、セクターシュー14に対して下方へと相対移動する。この相対移動により、セクターシュー14及びセグメント16は半径方向内側へ移動する。この半径方向内側への移動により、互いに離間しているセグメント16同士が近接していく。更に、互いに離間しているセクターシュー14同士が互いに近接していく(図7の下向き矢印Y2参照)。
【0035】
図7において、実線BLは半径方向に延在する直線である。図示されているように、セクターシュー14の中心P1及びセグメント16の中心P2は実線BL上に位置している。このモールド6では、締結部材としての螺子56の締め付けにより、凸部42が凹部24に嵌め合わされ、セクターシュー14の中心P1及びセグメント16の中心P2が半径方向において一致するように、セグメント16がセクターシュー14に対して配置されている。このセグメント16は、セクターシュー14の適正な位置で確実に固定される。このモールド6では、セグメント16はセクターシュー14に高精度で組み付けられている。
【0036】
このモールド6では、セグメント16の凸部42は、両斜面48の間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されている。セクターシュー14の凹部24は、両斜面30の間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されている。この凸部42の形状及び凹部24の形状は、セグメント16の適正な配置に寄与しうる。このモールド6では、セグメント16はセクターシュー14に高精度で組み付けられる。
【0037】
このモールド6では、一のセグメント16の分割面38とこの分割面38に隣接する他のセグメント16の分割面38との間には、隙間62が生じる。複数のセグメント16がリング状に配置されるので、このモールド6には、隙間62は複数生じる。各セグメント16がセクターシュー14に高精度で組み付けられているので、各隙間62の大きさは同等である。このモールド6には、過大な隙間62は生じない。このモールド6では、加硫工程における、隙間62へのゴム組成物の流入が抑えられる。このモールド6は、スピューの発生を防止する。
【0038】
このモールド6では、締結部材としての螺子56の締め付けにより各セグメント16が適正な位置に配置される。このため、このモールド6では、セグメント16同士の隙間62を調整するために、シムを用いる必要はない。このモールド6では、隙間62の調整が容易である。このモールド6は、タイヤ製造時のリードタイムを削減する。このモールド6は、タイヤの生産性に寄与する。
【0039】
図8には、コンテナー4のスライドキー12及びセクターシュー14のキー溝34のVIII-VIII線に沿った断面が示されている。図8中、一点鎖線CAはスライドキー12の幅方向における中心線である。図示されているように、スライドキー12はこの中心線CAに対して左右対称の形状を呈している。このスライドキー12の側面64は、上下方向に対して傾斜している。このスライドキー12は、両側面64の間の距離が上側から下側に向かって漸減するように構成されている。この一点鎖線CAは、キー溝34の中心線でもある。図示されているように、キー溝34はこの中心線CAに対して左右対称の形状を呈している。このキー溝34の側壁66は、上下方向に対して傾斜している。このキー溝34は、両側壁66の間の距離が上側から下側に向かって漸減するように構成されている。このモールド6では、このキー溝34の側壁66の傾斜角度は、スライドキー12の側面64の傾斜角度と同等である。
【0040】
図示されているように、モールド6が閉じられた状態において、スライドキー12の側面64はキー溝34の側壁66に当接する。この当接は、セクターシュー14のコンテナー4に対する周方向への動きを防止する。このモールド6では、セクターシュー14がコンテナー4に高精度で組み付けられる。この組み付けは、セグメント16の適正な配置に寄与しうる。このモールド6では、各セグメント16の間に過大な隙間62は生じない。加硫工程における、隙間62へのゴム組成物の流入が抑えられるので、このモールド6はスピューの発生を効果的に防止する。この観点から、このスライドキー12の側面64の、このスライドキー12の長手方向に対する勾配は、3mm/1000mm以上が好ましく、10mm/1000mm以下が好ましい。このキー溝34の側壁66の、このキー溝34の長手方向に対する勾配は、3mm/1000mm以上が好ましく、10mm/1000mm以下が好ましい。
【0041】
図9は、本発明の他の実施形態に係るタイヤ用加硫装置68の一部が示された断面図である。図9において、両矢印Yで示された方向が加硫装置68の周方向である。この紙面に対して垂直な方向が、この加硫装置68の上下方向である。
【0042】
この加硫装置68は、コンテナー70及びタイヤ用モールド72を備えている。このモールド72は、複数のセクターシュー74及び複数のセグメント76を備えている。図示されていないが、このモールド72は、複数のセクターシュー74及び複数のセグメント76以外に、上下一対のサイドプレート及び上下一対のビードリングを備えている。この加硫装置68は、このセクターシュー74及びセグメント76以外の構成は、図1に示された加硫装置2のそれと同等である。
【0043】
セクターシュー74の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセクターシュー74は、リング状に配置されている。これらセクターシュー74は、コンテナー70の内周面78に沿って周方向に配列している。各セクターシュー74は、コンテナー70の半径方向内側に位置している。
【0044】
図10に示されているのは、セクターシュー74の断面である。この断面は、図9に示されたセクターシュー74のそれと同等である。この図10において、一点鎖線C3はこのセクターシュー74の中心線を表している。このセクターシュー74は、この中心線C3に対して左右対称の形状を呈している。図10中、点P3はこの中心線C3とこのセクターシュー74の内面80との交点を表している。本明細書では、この交点P3がこのセクターシュー74の中心である。
【0045】
セクターシュー74の内面80は、凸部82を有している。この凸部82は、この内面80の中心部分である。この凸部82は、この内面80の基準面84から突出している。この凸部82は、頂面86と、一対の斜面88とを備えている。この凸部82は、両斜面88の間の距離が頂面86から半径方向外向きに漸増するように構成されている。図示されていないが、この凸部82は上下方向に延在している。
【0046】
セクターシュー74の外面90は、キー溝92及び案内面94を有している。図示されていないが、キー溝92はこのモールド72の上側から下側に向かって半径方向外向きに傾斜して延在している。図示されているように、このキー溝92の断面形状は、略T字状である。この断面形状は、コンテナー70のスライドキー96の断面形状に対応している。このモールド72では、このキー溝92にこのスライドキー96が挿入される。
【0047】
案内面94は、キー溝92の縁から周方向に拡がっている。図示されていないが、案内面94は上下方向に対して傾斜している。この案内面94は、上側から下側に向かって半径方向外向きに傾斜している。この案内面94は、テーパー面である。この案内面94の傾斜角度は、コンテナー70の内周面78の傾斜角度と同等である。
【0048】
セグメント76の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセグメント76は、周方向に配列している。これらセグメント76は、リング状に配置されている。各セグメント76は、各セクターシュー74の半径方向内側に位置している。
【0049】
図11に示されているのは、セグメント76の断面である。この断面は、図9に示されたセグメント76のそれと同等である。この図11において、一点鎖線C4はこのセグメント76の中心線を表している。このセグメント76は、この中心線C4に対して左右対称の形状を呈している。なお、図11中、点P4はこの中心線C4とこのセグメント76の外面98との交点を表している。本明細書では、この交点P4がセグメント76の中心である。
【0050】
セグメント76の外面98は、凹部100を有している。この凹部100は、この外面98の中心部分である。この凹部100は、この外面98の基準面102から窪んでいる。この凹部100は、底面104と、一対の斜面106とを備えている。この凹部100は、両斜面106の間の距離がこの底面104の側から半径方向外向きに漸増するように構成されている。この凹部100の断面形状は、セクターシュー74に設けられた凸部82のそれと同等である。図示されていないが、この凹部100は上下方向に延在している。
【0051】
セグメント76の内面108は、キャビティ面110を有している。このモールド72では、複数のセグメント76が周方向に配列することにより、リング状のキャビティ面110aが形成される。このキャビティ面110aは、加硫工程においてローカバーと当接しタイヤのトレッド面を形成する。図示されていないが、キャビティ面110にはトレッド面の溝に対応する山が設けられている。このモールド72では、全てのセグメント76は、キャビティ面110における山のパターンを除いて、互いに同等の形状を有している。
【0052】
このモールド72では、図1に示された加硫装置2のモールド6と同様にして、セグメント76はセクターシュー74に固定される。
【0053】
図9において、実線BLは半径方向に延在する直線である。図示されているように、セクターシュー74の中心P3及びセグメント76の中心P4は実線BL上に位置している。このモールド72では、締結部材の締め付けにより、凹部100が凸部82に嵌め合わされ、セクターシュー74の中心P3及びセグメント76の中心P4が半径方向において一致するように、セグメント76がセクターシュー74に対して配置される。このセグメント76は、セクターシュー74の適正な位置で確実に固定される。このモールド72では、セグメント76はセクターシュー74に高精度で組み付けられている。
【0054】
前述したように、このモールド72では、セグメント76の凹部100は、両斜面106の間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されている。セクターシュー74の凸部82は、両斜面88の間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されている。この凹部100の形状及び凸部82の形状は、セグメント76の適正な配置に寄与しうる。このモールド72では、セグメント76はセクターシュー74に高精度で組み付けられている。
【0055】
図示されていないが、このモールド72では、複数のセグメント76がリング状に配置されるので、隙間112は複数生じる。各セグメント76がセクターシュー74に高精度で組み付けられているので、各隙間112の大きさは同等である。このモールド72には、過大な隙間112は生じない。このモールド72では、加硫工程における、隙間112へのゴム組成物の流入が抑えられる。このモールド72は、スピューの発生を防止する。
【0056】
このモールド72では、締結部材の締め付けにより各セグメント76が適正な位置に配置される。このため、このモールド72では、セグメント76同士の隙間112を調整するために、シムを用いる必要はない。このモールド72では、隙間112の調整が容易である。このモールド72は、タイヤ製造時のリードタイムを削減する。このモールド72は、タイヤの生産性に寄与する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0058】
[実施例]
図1から図7に示された構成を備えた加硫装置を準備し、この加硫装置用いてタイヤを製造した。この加硫装置では、モールドのセグメントは、その外面に凸部を備えている。このモールドのセクターシューは、その内面にこの凸部に対応する凹部を備えている。このモールドでは、締結部材の締め付けによりこの凸部が凹部に嵌め合わされ、セグメントがセクターシューに固定されている。組み付けられた状態において、このセグメントの中心P2は半径方向においてセクターシューの中心P1と一致している。
【0059】
[比較例1]
従来の加硫装置を準備し、この加硫装置を用いてタイヤを製造した。この加硫装置では、シムを用いてセグメント同士の隙間を調整しつつ、セグメントがセクターシューに組み付けられた。
【0060】
[比較例2]
従来の加硫装置を準備し、この加硫装置を用いてタイヤを製造した。この加硫装置では、シムを用いることなく、セグメントがセクターシューに組み付けられた。
【0061】
[組み付け時間の測定]
モールドの組み付け時間を計測した。その計測結果が、下記表1に、比較例1を100とした指数値で示されている。この数値が小さいほど、良好であることを示している。
【0062】
[外観観察]
製造した100本のタイヤの外観を目視で観察した。その観察結果が、下記表1に、スピューの発生が認められなかった場合を「G」で、スピューの発生が認められた場合を「NG」で示されている。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示されるように、実施例の加硫装置では、比較例の加硫装置に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明された方法は、種々のタイヤの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0066】
2、68・・・加硫装置
4、70・・・コンテナー
6、72・・・モールド
8・・・ローカバー
12、96・・・スライドキー
14、74・・・セクターシュー
16、76・・・セグメント
18・・・サイドプレート
20・・・ビードリング
24、100・・・凹部
34、92・・・キー溝
36、94・・・案内面
38・・・分割面
42、82・・・凸部
52、110・・・キャビティ面
56・・・螺子
62、112・・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えており、
このセグメントの外面が、凸部を備えており、
このセクターシューの内面が、この凸部に対応する凹部を備えており、
この締結部材の締め付けにより、この凸部がこの凹部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致するタイヤ用モールド。
【請求項2】
上記凸部が、頂面と、一対の斜面とを備えており、
この凸部が、両斜面間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されており、
上記凹部が、底面と、一対の斜面とを備えており、
この凹部が、両斜面間の距離が半径方向内向きに漸増するように構成されている請求項1に記載のタイヤ用モールド。
【請求項3】
その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えており、
このセグメントの外面が、凹部を備えており、
このセクターシューの内面が、この凹部に対応する凸部を備えており、
この締結部材の締め付けにより、この凹部がこの凸部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致するタイヤ用モールド。
【請求項4】
上記凹部が、底面と、一対の斜面とを備えており、
この凹部が、両斜面間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されており、
上記凸部が、頂面と、一対の斜面とを備えており、
この凸部が、両斜面間の距離が半径方向外向きに漸増するように構成されている請求項3に記載のタイヤ用モールド。
【請求項5】
予備成形によって、ローカバーが得られる工程、
その内面がキャビティ面を有するセグメントと、このセグメントの半径方向外側に位置するセクターシューと、このセグメントをこのセクターシューに固定する締結部材とを備えており、このセグメントの外面が凹部を備えており、このセクターシューの内面がこの凹部に対応する凸部を備えており、この締結部材の締め付けにより、この凹部がこの凸部に嵌め合わされ、このセグメントの中心がこのセクターシューの中心と半径方向において一致するタイヤ用モールドに、ローカバーが投入される工程
及び
このローカバーがモールド内で加圧及び加熱される工程
を含むタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−37191(P2011−37191A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188214(P2009−188214)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】