説明

タイヤ表面形状測定装置及びタイヤ表面形状測定方法

【課題】サイドウォール面の厚みやトレッド面の幅が様々に異なるタイヤのそれぞれに対して、同一の画像分解能で且つ高い精度で表面形状を検出する。
【解決手段】タイヤ表面形状測定装置において、タイヤの表面に照射されたライン光を撮像する撮像面が設けられた撮像素子9と、撮像面に結像したライン光の像が全て含まれるように、撮像面上にライン光の像の長手方向長さを備えた有効撮像領域Aを設定する撮像領域設定手段と、設定された有効撮像領域Aから予め定められた所定数の測定信号を抽出する画素データ抽出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの表面に照射されたライン光を撮像し、ライン光を含む撮像画像から抽出した測定信号に基づいてタイヤの表面形状を測定するタイヤ表面形状測定装置及びタイヤ表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤを製造するにあたって、最終工程となる加硫工程後の形状検査では、タイヤの表面形状の検査が行われている。近年、この形状検査は、レーザ光源とそのレーザ光による像を撮像するCCDカメラやCMOSカメラ等とを用いたセンサユニットを備える形状測定装置を用いて自動化されている。
この形状測定装置によるレーザ光を用いた形状検査では、シート状のレーザ光(ライン光)をタイヤ表面であるトレッド面やサイドウォール面に照射して、当該面上に光切断線を形成する。その後に、この光切断線をCCDカメラやCMOSカメラ等の撮像手段で撮像し、撮像した光切断線に光切断法を適用することでタイヤ表面の三次元形状を測定し検査する。
【0003】
例えば、サイドウォール面の三次元形状の測定では、このようにして得られた三次元形状から文字やロゴマークなどに起因する正常な凹凸形状を除去することで、サイドウォール面の微細な凹凸不良も正確に検出し検査している。
ところで、近年の乗用車用タイヤの開発は、従来のタイヤに比べて、トレッド面が幅広となると同時にサイドウォール面が薄くなる方向に進んでいる。つまり、トレッド面の幅とサイドウォール面の厚みの差が大きくなる方向に開発が進んでいるといえる。さらに、近年においては、タイヤサイズの展開が多岐にわたっており、形状測定装置が対応しなくてはならないタイヤのサイズ及び形状は増加する傾向にある。
【0004】
これに対応して様々なサイズ及び形状を有するタイヤを検査するために、形状測定装置としては、多様なサイズのタイヤを取り付けるための構成や、取り付けられたタイヤのサイズ及び形状に合わせてセンサユニットの位置を変更するための構成が工夫されている。
特許文献1は、上述の形状検査に用いられる外観・形状検出装置を開示している。特許文献1に開示の外観・形状検出装置は、被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と、上記スリット光の照射部を撮影するエリアカメラと、上記投光手段及び撮影手段と被検体とを相対的に移動させる手段と、上記エリアカメラの画素データから上記被検体の座標を算出する手段とを備えるとともに、上記エリアカメラの画素データから上記被検体の輝度とを算出する手段と、上記算出された輝度に基づいて上記被検体の外観を検出する手段とを設けて、被検体の形状と外観とを同時に検出するようにしたことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−240521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、近年の乗用車用タイヤの開発は、トレッド面の幅とサイドウォール面の厚みの差が大きくなる方向に進んでおり、タイヤサイズの展開も多岐に亘っている。このことは、形状測定装置のセンサユニットが、様々な厚みのサイドウォール面や様々な幅のトレッド面を撮像しなくてはならないことを意味している。
タイヤサイズが変わることでサイドウォール面の厚みやトレッド面の幅が様々に異なると、サイドウォール面及びトレッド面上に形成される光切断線の長さも様々に異なることとなる。しかし、常に所定の検査精度でタイヤの形状を検出するためには、タイヤサイズが変わった場合においても、実際に形成される光切断線の長さに関わりなく撮像画像内で可能な限り一定の長さとなるように、光切断線を撮像する必要がある。
【0007】
ここで特許文献1に開示の外観・形状検出装置を用いた場合、タイヤサイズや、サイドウォール面の厚み及びトレッド面の幅などに合わせて、センサユニットの撮影距離(ワーキングディスタンス)を適切に調整し、様々に長さが異なる光切断線を撮像画像内で一定の長さとなるように捉える努力が必要となる。
しかし、特許文献1に開示の外観・形状検出装置では、センサユニットの撮影距離を変更するための構成が存在していないので、様々なサイズのタイヤに対応して撮影距離を変更することは困難である。また、撮影距離を変更できるとしても、オペレータが常に最適な撮影距離となるようにセンサユニットの位置を調整するのは困難を伴う。そこで、最適な撮影距離となるようにセンサユニットの位置を調整できなかった場合でも、撮像された光切断線から高い分解能で表面形状を検出できる技術が望まれている。
【0008】
本発明は、以上述べた問題に鑑み、サイドウォール面の厚みやトレッド面の幅が様々に異なるタイヤのそれぞれに対して、同一の分解能で且つ高い分解能で表面形状を検出することができるタイヤ表面形状測定装置及びタイヤ表面形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係るタイヤ表面形状測定装置は、タイヤの表面に照射されたライン光を撮像し、該ライン光の撮像画像から抽出した測定信号に基づいて前記タイヤの表面形状を測定するタイヤ表面形状測定装置において、前記タイヤの表面に照射されたライン光を撮像する撮像面が設けられた撮像手段と、前記撮像面に結像したライン光の像が全て含まれるように、前記撮像面上に前記ライン光の像の長手方向長さを備えた有効撮像領域を設定する撮像領域設定手段と、前記設定された有効撮像領域から予め定められた所定数の測定信号を抽出する画素データ抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記撮像領域設定手段は、前記有効撮像領域を矩形として撮像面上に設定すると共に前記ライン光の像に沿った両端間の距離を前記矩形の長辺の長さとするように構成されているとよい。
また、本発明に係るタイヤ表面形状測定方法は、タイヤの表面に照射されたライン光を撮像面を用いて撮像し、該ライン光の撮像画像から抽出した測定信号に基づいて前記タイヤの表面形状を測定するタイヤ表面形状測方法において、前記撮像面に結像したライン光が全て含まれるように、前記撮像面上にライン光の長手方向長さを備えた有効撮像領域を設定する撮像領域設定工程と、前記設定された有効撮像領域から予め定められた所定数の測定信号を抽出する画素データ抽出工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記撮像領域設定工程は、前記有効撮像領域を矩形として撮像面上に設定すると共にライン光に沿った両端間の距離を前記矩形の長辺の長さとするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイドウォール面の厚みやトレッド面の幅が様々に異なるタイヤのそれぞれに対して、高い分解能で表面形状を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態によるタイヤ表面形状測定装置の構成を示す概略図であり、(a)は小さなタイヤの表面形状を測定している状態を示し、(b)は大きなタイヤの表面形状を測定している状態を示している。
【図2】タイヤ表面形状測定装置が備えるセンサユニットにおけるライン光照射手段及びカメラの三次元配置を示す模式図である。
【図3】タイヤのトレッド面と撮像カメラとの撮像面上での位置関係と、有効撮像領域とを示す図であり、(a)は小さなタイヤの場合を示し、(b)は大きなタイヤの場合を示している。
【図4】小さなタイヤのトレッド面を測定した場合におけるものであり、(a)は、光切断線と有効撮像領域の関係を表す模式図であって、(b)は、トレッド面における輝度値分布を示す図である。
【図5】大きなタイヤのトレッド面を測定した場合におけるものであり、(a)は、光切断線と有効撮像領域の関係を表す模式図であって、(b)は、トレッド面における輝度値分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態によるタイヤ表面形状測定装置1の構成を説明する。
タイヤ形状検査装置1は、回転するタイヤT(タイヤT1及びタイヤT2)の表面に照射したライン光によって形成される光切断線Lsを撮像カメラ6によって撮像し、その撮像画像に基づいて光切断法による形状検出を行うことでタイヤT各部の高さを測定する。加えて、タイヤ形状検査装置1は、測定されたタイヤT各部の高さをそれぞれ対応する輝度値に置き換え、タイヤT表面の二次元画像(検査画像)を得る。
【0015】
図1(a)及び(b)に示すように、タイヤ表面形状測定装置1は、タイヤ回転機2、センサユニット3、エンコーダ4、及び画像処理装置5を備えている。図1(a)及び(b)は、同一のタイヤ表面形状測定装置1を示しているが、測定対象であるタイヤTだけが異なっている。図1(a)では、小さなサイズのタイヤT1が測定されている状態、図1(b)では、大きなサイズのタイヤT2が測定されている状態がそれぞれ示されている。
【0016】
タイヤ回転機2は、形状検出の対象であるタイヤTをその回転軸を中心に回転させるモータ等を備えた回転装置である。タイヤ回転機は、例えば60rpmの回転速度でタイヤTを回転させる。この回転中に、後述するセンサユニット3が、タイヤTの全周にわたる表面形状を検出(測定)する。
センサユニット3は、タイヤTの表面形状を検出するものであって、回転するタイヤTの表面にライン光(光切断線)を照射するライン光照射手段7、タイヤTの表面で反射した光切断線の像を撮像する撮像カメラ(撮像手段)6などを備えるユニットである。
【0017】
本実施形態では、タイヤTのトレッド面の形状検出に用いられるセンサユニット3a、及び2つのサイドウォール面の形状検出に用いられる2つのセンサユニット3b及び3cを備えている。センサユニット3aは、トレッド面に対向するように設けられ、センサユニット3b及び3cは、サイドウォール面に対向するように設けられている。
図2を参照しながら、センサユニット3に組み込まれたライン光照射手段7及び撮像カメラ6について説明する。
【0018】
ライン光照射手段7は、シート状のライン光を照射するライン光源を備えている。ライン光源は、例えばLEDやハロゲンランプ等で構成される。このライン光照射手段7から照射されるシート状のライン光によって、タイヤTの表面に1本の光切断線Lsが形成される。
撮像カメラ6は、カメラレンズ8と、例えばCCDやCMOSで構成されたエリアイメージセンサである撮像素子9とを備えている。撮像素子9は例えば1920×1080ピクセルの画素数を有している。
【0019】
図2に示すように、撮像カメラ6は、撮像素子9の撮像面上に投影された光切断線Lsの像v1を撮像することで、光切断線Lsの撮像画像を得る。
図1に戻り、エンコーダ4について説明する。タイヤ回転機2に設けられたエンコーダ4は、タイヤ回転機2の回転軸の回転角度、即ちタイヤTの回転角度を検出し、検出した回転角度を検出信号として出力するセンサである。その検出信号は、センサユニット3が備える撮像カメラ6の撮像タイミングの制御に用いられる。
【0020】
例えば、後述する画像処理装置5は、60rpmの速度で回転するタイヤTが所定の角度回転するごとにエンコーダ4から出力される検出信号を受信し、検出信号の受信タイミングに合わせて撮像が行われるようにセンサユニット3の撮像カメラ6を制御する。これにより、検出信号の受信タイミングに合った所定の撮像レート(撮像周波数)で撮像が行われる。
【0021】
画像処理装置5は、センサユニット3を制御して光切断線Lsを撮像すると共に、撮像された画像をフレームメモリを介して取り込み、取り込んだ画像に含まれる光切断線Lsからタイヤ表面の高さ分布を得る装置である。
画像処理装置5は、光切断線Lsを撮像するための「有効撮像領域A」を撮像カメラ6の撮像素子9の撮像面上に設定する撮像領域設定手段10と、設定された有効撮像領域Aに存在する画素データのみを撮像素子9から取り出す画素データ抽出手段11とを備えている。
【0022】
加えて、画像処理装置5は、取り込んだ画像に対して二値化処理を施すなどして光切断線Lsを抽出すると共に、得られた光切断線Lsから三角測量法の原理を基にタイヤ表面の高さ分布を得る形状検出手段12を有している。
なお、画像処理装置5は、例えばフレームメモリを備えたパーソナルコンピュータなどで構成されており、撮像領域設定手段10と画素データ抽出手段11とは、センサユニット3に内蔵された撮像カメラ6の制御部に指令を出しコントロールするものとなっている。
【0023】
図3〜図5を参照しながら、画像処理装置5の撮像領域設定手段10、画素データ抽出手段11について説明する。
撮像領域設定手段10は、撮像素子9の撮像面に結像したライン光の像、すなわち、撮像面に投影された光切断線Lsの像v1を全て含むように当該撮像面上に有効撮像領域Aを設定するものである。
【0024】
図3(a)は、小さいタイヤT1のトレッド面に形成された光切断線Lsと、撮像素子9の撮像面上に投影された光切断線Lsの像v1との対応関係を模式的に示している。図3(b)は、大きいタイヤT2のトレッド面に形成された光切断線Lsと、撮像面上の像v1との対応関係を模式的に示している。
図3(a)及び(b)において、カメラレンズ8からタイヤTのトレッド面までの撮像距離(ワーキングディスタンス)のそれぞれは、ほぼ同じである。しかし、タイヤTの大きさが異なると、光切断線Lsの長さが異なり、ひいては撮像面上の像v1の長さも異なることがわかる。
【0025】
例えば、図3、図4によると、タイヤが小さい場合は光切断線Lsが短くなり、撮像面上の像v1も短く(幅W1)なる。図3、図5によると、逆にタイヤが大きい場合は光切断線Lsが長くなり、撮像面上の像v1も長く(幅W2)なる。
撮像領域設定手段10は、このようにタイヤTによって長さが異なる像v1を全て含むように、像v1の長さに応じた大きさの有効撮像領域Aを撮像面上に設定する。
【0026】
図3(a)及び(b)の上部に斜線で示すように、有効撮像領域Aは、撮像面のうち光切断線Lsの像v1を撮像するために実際に用いられる画素の集合であり、撮像素子9の撮像面を正面視したときに矩形をなすように設定される。例えば、図3に示すように、撮像面における画素のX座標及びY座標の範囲(画素のアドレスの範囲)をそれぞれ決定し、X座標及びY座標(画素のアドレス)がそれらの範囲内にある画素の集合を有効撮像領域Aとすることで、長辺が像v1の長手方向に沿った矩形の有効撮像領域Aが設定できる。
【0027】
このX座標の範囲の上限と下限は、光切断線Lsの像v1の両端のX座標とすればよい。また、Y座標の範囲の上限は、像v1のY座標の最大値よりも十分に大きく、Y座標の範囲の下限は、像v1のY座標の最小値よりも十分に小さくなるように決めればよい。これによって、像v1の長さに合わせて有効撮像領域Aを設定することができ、有効撮像領域A内で確実に像v1を撮像することができる。
【0028】
画素データ抽出手段11は、撮像領域設定手段10により設定された有効撮像領域Aに存在する画素データ(画素の輝度データ)を撮像素子9から取り出す。
例を挙げれば、図4において有効撮像領域AがX×Y=1200×300ピクセルであった場合、画素データ抽出手段11は、撮像カメラ6の制御部に対して、有効撮像領域A内の画素データから、Y軸に沿って例えば3ピクセルごとに1ピクセル分の水平走査データを転送するように指示を出す。加えて、画素データ抽出手段11は、転送された水平走査データに対して、X軸に沿って例えば2ピクセルごとに1ピクセル分の画素データを外部へ転送するように指示を出す。すなわち、画素データ抽出手段11は、有効撮像領域Aに対して、予め定められた所定数の走査線として、水平方向走査線を100本、垂直方向走査線を600本設定し、有効撮像領域Aから測定信号としての画素データを抽出するものとなっている。
【0029】
このように抽出された画素データによって、図4の下段に示すような、光切断線Lsの幅W1にわたる輝度値分布が得られる。
もう一例を挙げると、図5において有効撮像領域AがX×Y=1800×400ピクセルであった場合、画素データ抽出手段11は、撮像カメラ6の制御部に対して、有効撮像領域A内の画素データから、Y軸に沿って例えば4ピクセルごとに1ピクセル分の水平走査データを転送するように指示を出す。加えて、画素データ抽出手段11は、転送された水平走査データに対して、X軸に沿って例えば3ピクセルごとに1ピクセル分の画素データを外部へ転送するように指示を出す。これによって、画素データ抽出手段11は、有効撮像領域Aに対して、水平方向走査線を100本、垂直方向走査線を600本設定し、画素データを抽出する。
【0030】
上述の画素データの抽出方法を一般化すると以下の通りである。
有効撮像領域Aが、X×Y=Px×Pyピクセルであり、抽出対象である水平方向走査線数をn本、同じく抽出対象である垂直方向走査線数をm本とする。
そのとき、画素データ抽出手段11は、撮像カメラ6の制御部に対して、有効撮像領域A内の画素データから、Y軸に沿って[Py/n]ピクセルごとに1ピクセル分の水平走査データを転送するように指示を出す。また、画素データ抽出手段11は、転送された水平走査データに対して、X軸に沿って[Px/m]ピクセルごとに1ピクセル分の画素データを外部へ転送するように指示を出す。
【0031】
なお、[Py/n]及び[Px/m]は、Py/n及びPx/mを、四捨五入又は切り捨てによって整数値としたものである。
図4と同じく、このように抽出された画素データによって、図5の下段に示すような、光切断線Lsの幅W2にわたる輝度値分布が得られる。
つまり本実施形態では、有効撮像領域Aの大きさが異なっても、この水平方向走査線の本数(上の例では100本)と、垂直方向走査線の本数(上の例では600本)を変化させずに一定とする。すなわち、小さいタイヤT1のトレッド面を計測する場合であっても、大きいタイヤT2のトレッド面を計測する場合であっても、走査線本数を同じとしている。それ故、サイドウォール面の厚みやトレッド面の幅が様々に異なるタイヤをタイヤ表面形状測定装置1に取り付けて測定を行ったとしても、一定の走査線本数による同一の画像分解能で且つ高い精度で表面形状を検出することが可能となる。
【0032】
なお、この走査線の本数(抽出本数)は、撮像素子9の撮像周波数を実現できる範囲内の値となるように決定される。
続いて、画像処理装置5の形状検出手段12は、画素データ抽出手段11で抽出した画素データ(輝度データ)により形成される光切断線Lsの画像に、三角測量法の原理を適用して、光切断線Lsが照射された部分(タイヤ表面上の1ライン部分)の高さ分布情報を得る。
【0033】
上述の構成を有する本実施形態のタイヤ表面形状測定装置1は、サイズの異なるタイヤT(タイヤT1及びタイヤT2)であっても、撮像領域設定手段10によって適切な大きさの有効撮像領域Aを設定し、画素データ抽出手段11によって有効撮像領域Aから撮像画像の画素データを抽出することができる。
図1、図4、及び図5を参照しながら、タイヤ表面形状測定装置1の動作について説明する。
【0034】
上述のように、タイヤ表面形状測定装置1は、タイヤT1のトレッド面の形状検出に用いられるセンサユニット3a、及び2つのサイドウォール面の形状検出に用いられる2つのセンサユニット3b及び3cを備えている。センサユニット3aは、トレッド面に対向するように設けられ、センサユニット3b及び3cは、サイドウォール面に対向するように設けられている。それぞれのセンサユニット3a、3b、3cは、タイヤT1の表面にライン光を照射するライン光照射手段7と、タイヤT1の表面で反射した光切断線Lsの像を撮像する撮像手段6を備えている。センサユニット3a、3b、3cからの3本のライン光は、互いにつながって、タイヤT1の表面で連続する一本のライン光となっていても、また不連続なライン光となっていてもよい。
【0035】
各センサユニット3a、3b、3c内に配備された撮像手段6での撮像画像はそれぞれ、画像処理装置5へ送られる。画像処理装置5が、撮像領域設定手段10と画素データ抽出手段11とを備えていることは前述した通りであり、センサユニット3a、3b、3cからの撮像画像の処理を行う。
ところで、センサユニット3a、3b、3cは、同時に作動させてもよく、異時に作動させてもよい。後述するように光切断線Lsの撮像状況により、どちらの作動形態を採用してもよい。
【0036】
まず、図4を参照してタイヤT1のトレッド面を測定するときの動作について説明する。
タイヤT1が、タイヤ表面形状測定装置1に取り付けられて回転を始め、所定の回転速度(例えば60rpm)になると、まず、センサユニット3aのライン光照射手段7が、タイヤT1のトレッド面にライン光を照射する。照射されたライン光は、タイヤT1のトレッド面に光切断線Lsを形成する。撮像カメラ6は形成された光切断線Lsを撮像し、撮像素子9の撮像面上に光切断線Lsの像v1を結ぶ。
【0037】
このとき、光切断線Lsの周囲は暗いので光切断線Lsの像v1以外はほとんど撮像されない。よって、撮像カメラ6で撮像された画像には、像v1だけが撮像されており、撮像された像v1はそのままで直接的にトレッド面の形状及び幅を反映している、と考えることができる。
図4の上段に示すように、画像処理装置5の撮像領域設定手段10は、像v1の両端のX座標間の距離(幅)W1を長辺の長手方向長さとするように、撮像素子9の撮像面上に矩形の有効撮像領域Aを設定する(撮像領域設定工程)。
【0038】
有効撮像領域Aの設定後、画像処理装置5は、センサユニット3aにおける撮像素子9の撮像面の有効撮像領域Aだけを用いて、タイヤT1の全周にわたって光切断線Lsを撮像する。
画像処理装置5は、60rpmの速度で回転するタイヤT1が所定角度回転するごとに、エンコーダ4から出力される検出信号を受信する。検出信号の受信タイミングに合わせて、画像処理装置5は、センサユニット3aの撮像カメラ6を用いて光切断線Lsを撮像する。これにより撮像カメラ6は、検出信号の受信タイミングに合った所定の撮像周波数(例えば2kHz)で、タイヤT1の全周にわたってトレッド面の所定位置に形成された光切断線Lsを複数撮像し、撮像素子9の撮像面上に結ばれた光切断線Lsの像v1が複数得られる。
【0039】
続いて画素データ抽出手段11は、有効撮像領域Aで撮像された光切断線Lsの撮像画像から、所定本数(例えば、600本×100本)の走査線に対応する画素データ(予め定められた所定数の測定信号)を抽出し、フレームメモリに転送する(画素データ抽出工程)。
画像処理装置5は、トレッド面の撮像を終えると、センサユニット3bを動作させて、センサユニット3aによるトレッド面の撮像と同様の方法で、タイヤT1の上方のサイドウォール面の撮像を行う。センサユニット3bを用いた撮像によって、タイヤT1の全周にわたって上方のサイドウォール面の所定位置に形成された光切断線Lsを複数撮像し、撮像素子9の撮像面上に結ばれた光切断線Lsの像v1が複数得られる。
【0040】
上方のサイドウォール面の撮像が終われば、画像処理装置5は、センサユニット3cを動作させて、同様の方法で、タイヤT1の下方のサイドウォール面の撮像を行う。センサユニット3cを用いた撮像によって、タイヤT1の全周にわたって下方のサイドウォール面の所定位置に形成された光切断線Lsを複数撮像し、撮像素子9の撮像面上に結ばれた光切断線Lsの像v1が複数得られる。
【0041】
その後、形状検出手段12は、タイヤT1のトレッド面及び両サイドウォール面別に、画素データ抽出手段11で抽出されフレームメモリに転送された画素データ(輝度データ)により形成される複数の光切断線Lsの像v1に、三角測量法の原理を適用する。像v1に三角測量法を適用して、各光切断線Lsが照射された部分(タイヤ表面上の1ライン部分)の高さ分布情報が得られる。形状検出手段12は、各像v1から得られた高さ分布情報をタイヤT1の全周分つなぎ合わせて、タイヤT1のトレッド面、上方のサイドウォール面、及び下方のサイドウォール面の二次元画像(検査画像)を得る。
【0042】
上述のように、トレッド面、上方のサイドウォール面、及び下方のサイドウォール面には、光切断線Lsがそれぞれ1本ずつ形成される。タイヤT1の全周方向における各タイヤ面に形成された光切断線Lsの位置が同じであれば、図4及び図5に示す撮像面上に、隣接するタイヤ面に形成された光切断線Lsの端部が撮像される可能性がある。隣接する光切断線Lsの端部が撮像される場合は、上述のようにセンサユニット3a〜センサユニット3cを切り替えてタイヤT1を撮像する。
【0043】
隣接する光切断線Lsの端部が撮像されなければ、センサユニット3a〜センサユニット3cを同時に動作させることができる。
なお、各光切断線Lsは、タイヤT1の全周方向における同一の位置に形成される必要はなく、タイヤT1の全周方向において異なる位置に形成されてもよい。
次に、図5を参照してタイヤT1よりもサイズの小さいタイヤT2を測定するときの動作について説明する。
【0044】
図5に示すタイヤT2の測定方法は、タイヤT1に対する測定方法と同様である。画像処理装置5は、センサユニット3a〜センサユニット3cを順に切り替えて、タイヤT2のトレッド面、上方及び下方のサイドウォール面に形成された光切断線Lsの像v1を撮像する。
撮像領域設定手段10は、像v1に合わせて、幅W1よりも短い幅W2の有効撮像領域Aを設定し、画素データ抽出手段11が、有効撮像領域Aで撮像された光切断線Lsの撮像画像から、所定本数(例えば、600本×100本)の走査線に対応する画素データ(予め定められた所定数の測定信号)を抽出し、フレームメモリに転送する。後は、タイヤT1に対する測定方法と同様の方法でタイヤT2のトレッド面、上方及び下方のサイドウォール面の二次元画像(検査画像)を得る。
【0045】
上述のとおり、本実施形態によるタイヤ表面形状測定装置1を用いれば、タイヤT1とタイヤT2のように、測定対象であるタイヤTのサイズが異なっても、撮像面上の像v1の長さに合わせて有効撮像領域Aを設定して、光切断線Lsの像v1を撮像することができる。
これに加えて、設定された有効撮像領域Aの長辺の長さ(像v1の長さ)にかかわらず、所定本数の走査線に対応する画素データを抽出するので、タイヤTのサイズが変わっても安定した高分解能でタイヤT2の検査画像を得ることができ、タイヤT2の表面形状を検出することができる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0047】
例えば、本発明の実施形態では、まず、撮像素子9の撮像面上に有効撮像領域Aを設定し、有効撮像領域Aで撮像された光切断線Lsの撮像画像から抽出された画素データを、フレームメモリ上に転送していた。しかし、これに限らず、有効撮像領域Aの設定前に、撮像素子9で撮像された撮像画像の全てをフレームメモリ上に転送してもよい。その後、フレームメモリに格納された撮像画像に有効撮像領域Aを設定して、画素データを抽出することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 タイヤ表面形状測定装置
2 タイヤ回転機
3 センサユニット
4 エンコーダ
5 画像処理装置
6 撮像カメラ
7 ライン光照射手段
8 カメラレンズ
9 撮像素子
10 撮像領域設定手段
11 画素データ抽出手段
12 形状検出手段
A 有効撮像領域
Ls 光切断線
T タイヤ
v1 像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの表面に照射されたライン光を撮像し、該ライン光の撮像画像から抽出した測定信号に基づいて前記タイヤの表面形状を測定するタイヤ表面形状測定装置において、
前記タイヤの表面に照射されたライン光を撮像する撮像面が設けられた撮像手段と、
前記撮像面に結像したライン光の像が全て含まれるように、前記撮像面上に前記ライン光の像の長手方向長さを備えた有効撮像領域を設定する撮像領域設定手段と、
前記設定された有効撮像領域から予め定められた所定数の測定信号を抽出する画素データ抽出手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ表面形状測定装置。
【請求項2】
前記撮像領域設定手段は、前記有効撮像領域を矩形として撮像面上に設定すると共に、前記ライン光の像に沿った両端間の距離を前記矩形の長辺の長さとするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ表面形状測定装置。
【請求項3】
タイヤの表面に照射されたライン光を撮像面を用いて撮像し、該ライン光の撮像画像から抽出した測定信号に基づいて前記タイヤの表面形状を測定するタイヤ表面形状測方法において、
前記撮像面に結像したライン光が全て含まれるように、前記撮像面上にライン光の長手方向長さを備えた有効撮像領域を設定する撮像領域設定工程と、
前記設定された有効撮像領域から予め定められた所定数の測定信号を抽出する画素データ抽出工程と、
を備えることを特徴とするタイヤ表面形状測定方法。
【請求項4】
前記撮像領域設定工程は、前記有効撮像領域を矩形として撮像面上に設定すると共に、ライン光に沿った両端間の距離を前記矩形の長辺の長さとすることを特徴とする請求項3に記載のタイヤ表面形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225795(P2012−225795A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94056(P2011−94056)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】