説明

タイヤ製造方法および装置

【課題】未稼働状態の巻回手段を減少させることで、ゴム品質の向上、エネルギーの効率利用を図る。
【解決手段】複数の巻回ステーションT1〜T4が設けられた巻回ステージCSにおいて、分配移送機構62により被巻回体12を巻回ステーションT1〜T4に対し一定のタクトタイムで順次移送するとともに、該巻回体12に対し巻回手段59によりゴムストリップを螺旋状に多数回同時に巻回する一方、その巻回が終了する度に該被巻回体12を分配移送機構62により一定のタクトタイムで次の巻回ステージISに移送するようにしたので、巻回ステージCSにおける巻回手段59は同時に作動することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被巻回体の周囲にゴムストリップを螺旋状に多数回巻回してタイヤの一部を構成するゴム部材を成形するようにしたタイヤ製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤ製造方法および装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【特許文献1】特開2004−174765号公報
【0003】
このものは、自身の軸線回りに回転可能な回転体と、一定のタクトタイムで回転体を複数の作業ステーションに順次移動させる無限軌道と、各作業ステーションに1台だけ設置され、該作業ステーションまで移動してきた回転体の周囲に、ゴムストリップを供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成する異なる種類のゴム部材、例えば、トップトレッドのベーストレッド部材、キャップトレッド部材またはサイドウォール部材等をそれぞれ成形する巻回手段とを備えたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のタイヤ製造方法および装置にあっては、各作業ステーションに1台だけ巻回手段を設置するようにしているため、製造するタイヤの種類、詳しくはゴム部材のゴム種に変更が生じた場合には、巻回手段から供給されるゴムストリップの種類(ゴム種)をタイヤの種類に応じて変更する必要があるが、この場合には、該巻回手段を含むタイヤ製造装置全体の作動を一旦停止した後、巻回手段から残ゴムを取り除いて廃棄する一方、対応するゴム種の未加硫ゴムを巻回手段に供給する必要があり、この結果、作業能率が低下するとともに、無駄なゴムが発生してしまうという課題があった。
【0005】
このような課題を解決するため、例えば、タイヤの種類の変更に応じてゴムストリップのゴム種が変更される作業ステーションに、巻回予定であるゴム種(互いに異なるゴム種)のゴムストリップを供給可能な複数台の巻回手段を設置し、現在製造中のタイヤに対応する1台の巻回手段からゴムストリップを被巻回体に供給することも考えられる。
【0006】
しかしながら、このようにすると、残りの巻回手段は、作動を停止させるか、あるいは、作動を継続している場合には行き場のないゴムストリップを再び巻回手段に戻すだけという未稼働状態(巻回作業を行っていない状態)で待機せざるを得ないため、ゴムが一時的に滞留してゴム部材のゴム品質が低下したりエネルギーロスが増大するという課題があった。
【0007】
この発明は、巻回手段の未稼働状態を減少させることで、ゴム品質の向上、エネルギーの効率利用を図ることができるタイヤ製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、自身の軸線回りに回転可能な被巻回体を、一定のタクトタイムで移動手段により複数の巻回ステージに順次移動させる一方、いずれの巻回ステージにおいても、該巻回ステージに設置された巻回手段から被巻回体の周囲にゴムストリップを供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成する異なる種類のゴム部材をそれぞれ成形するようにしたタイヤ製造方法において、少なくとも1つの巻回ステージに前記巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設けるとともに、前記移動手段の一部を構成する分配移送機構により前記巻回ステーションに対し前の巻回ステージから被巻回体を所定の順序で順次移送して、2以上の巻回ステーションで被巻回体に対しゴムストリップを同時に巻回する一方、ゴムストリップの巻回が終了する度に該被巻回体を次の巻回ステージに移送するようにしたタイヤ製造方法により、達成することができ、
【0009】
第2に、自身の軸線回りに回転可能な被巻回体と、一定のタクトタイムで被巻回体を複数の巻回ステージに順次移動させる移動手段と、各巻回ステージに設置され、該巻回ステージまで移動してきた被巻回体の周囲にゴムストリップを供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成する異なる種類のゴム部材をそれぞれ成形する巻回手段とを備えたタイヤ製造装置において、少なくとも1つの巻回ステージに前記巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設けるとともに、前記移動手段の一部を構成する分配移送機構により前記巻回ステーションに対し前の巻回ステージから被巻回体を所定の順序で順次移送して、2以上の巻回ステーションで被巻回体に対しゴムストリップを同時に巻回する一方、ゴムストリップの巻回が終了する度に該被巻回体を次の巻回ステージに移送するようにしたタイヤ製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、複数の巻回ステーションが設けられた巻回ステージにおいて、分配移送機構により被巻回体を前の巻回ステージから前記巻回ステーションに対し一定のタクトタイムで順次移送するとともに、2以上の巻回ステーションで被巻回体に対し巻回手段によってゴムストリップを同時に供給して螺旋状に多数回巻回する一方、ゴムストリップの巻回が終了する度に被巻回体を分配移送機構により一定のタクトタイムで次の巻回ステージに移送するようにしているため、前記巻回ステージにおいては複数台の巻回手段のうち、2台以上が同時に作動していることになり、巻回手段の未稼働状態が減少してゴム品質の向上、エネルギーの効率利用を図ることができる。
【0011】
また、前述のように2以上の巻回ステーションで被巻回体に対し同時に巻回が行われると、各巻回ステーションの巻回手段から被巻回体に供給されるゴムストリップの単位時間当たりの供給量は、巻回ステージに1台だけ巻回手段が設置されている場合のゴムストリップ供給量より低減することになり、これにより、各巻回ステーションにおける巻回手段をより小型、安価とすることができる。しかも、前述の各巻回ステーションの巻回手段から供給されるゴムストリップのゴム種が異なっている場合には、複数種類のタイヤを混流状態で同時に製造することができる一方、前述のゴムストリップを同一ゴム種とすることも可能で、この場合には1種類のタイヤを製造することができる。このように多種類の製造形態に容易に対応でき、タイヤ製造の自由度が高くなって多種少量生産に好適である。
【0012】
また、請求項3に記載のように構成すれば、各巻回手段から被巻回体に供給されるゴムストリップの単位時間当たりの供給量が、巻回ステージに1台だけ巻回手段が設置されている場合のゴムストリップ供給量を、巻回手段の台数で除した値まで均一に低減され、この結果、いずれの巻回手段も小型、安価とすることができる。さらに、請求項4に記載のように構成すれば、分配移送機構を構造簡単で小型とすることができる。
【0013】
また、請求項5に記載のように構成すれば、被巻回体を駆動部に固定するとともに、これら被巻回体、駆動部全体を移動させる場合に比較し、移動させるものの質量が小さくなって取り扱いが容易となるとともに、余分なエネルギーの使用を抑制することができる。さらに、請求項6に記載のように構成すれば、押出し直後の温度および粘着力の高いゴムストリップを被巻回体に供給することができるため、成形されたゴム部材の形状安定性を向上させることができる。
【0014】
また、トレッドのキャップ層は、タイヤの種類が変更されたとき、比較的頻繁にゴム種が変更されるため、請求項7に記載のように構成すれば、このような事態に容易に対処することができる。さらに、請求項8に記載のように構成すれば、タイヤの種類がどのように変更されても、この変更に応じた巻回手段が予め設置されているため、容易にこれに対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は床面上に設置された搬入ストック台であり、この搬入ストック台11上には複数の被巻回体12が載置されている。また、前記搬入ストック台11の後方には図示していない駆動部が設置され、この駆動部の回転軸により、外表面が加硫済タイヤ(製品タイヤ)の内表面と同一形状である略ドーナツ状の剛体コア13が内側から把持されている。そして、この剛体コア13は前記駆動部から回転駆動力を受けることで水平な軸線回りに回転することができる。
【0016】
ここで、前記剛体コア13は、周方向に密着状態で並べられた弧状を呈する複数個のコアセグメント16と、これらコアセグメント16内に挿入されるとともに、互いに螺合されることでコアセグメント16を両側から挟持する略円筒状の締結体17、18とから構成されている。また、前記コアセグメント16は、扇形をした扇形セグメントと、略台形状をした山形セグメントの2種類のセグメントから構成され、これら扇形、山形セグメントは周方向に交互に配置されている。
【0017】
そして、前述のように剛体コア13が駆動部から駆動力を受けて回転しているとき、該剛体コア13の周囲にゴム引きコード、ゴムストリップ、プライ等が編み上げらるとともに巻き付けられると、該剛体コア13の外側にビード、カーカス、ベルト等からなるタイヤ中間体20が形成される。前述した剛体コア13および該剛体コア13の外側に成形されたタイヤ中間体20との複合体は前述の被巻回体12を構成し、この被巻回体12は成形後、駆動部から取り外されて前記搬入ストック台11まで搬送される。なお、前記被巻回体は剛体コア13単体から構成されていてもよい。
【0018】
また、この発明においては、拡縮径可能な円筒状の成形ドラム上にカーカスを成形するとともに、ビードをセットしてグリーンケースを成形した後、ビード間の成形ドラムを拡径してカーカスを略円弧状に膨出変形させるとともに、該カーカスの外側にベルトを貼付けてタイヤ中間体を構成し、このタイヤ中間体と前記成形ドラムとの複合体により被巻回体を構成してもよい。なお、被巻回体は前述した成形ドラム単体から構成してもよい。
【0019】
図1、2、3、4において、前記搬入ストック台11の前方にはベース巻回ステージBSが設けられ、このベース巻回ステージBSにおける床面上には図示していない固定フレームが設置されている。23は固定フレーム上に支持された駆動機構であり、この駆動機構23は水平な下プレート24を有し、この下プレート24の上面には左右方向に延びる一対のガイドレール25が敷設されている。また、前記下プレート24の右端にはモータ26が取り付けられ、このモータ26の出力軸27にはガイドレール25に平行に延びるねじ軸28が連結されている。
【0020】
このねじ軸28は軸受29を介して下プレート24に回転可能に支持されるとともに、その途中がガイドレール25に摺動可能に支持された上プレート31に螺合している。この結果、前記モータ26が作動してねじ軸28が回転すると、上プレート31はガイドレール25にガイドされながら左右方向に移動する。前記上プレート31の上面には前後方向に延びる一対のガイドレール32が敷設され、また、前記上プレート31の後端には出力軸33を有するモータ34が取り付けられている。
【0021】
36は後端が前記出力軸33に連結され、前端が図示していない軸受を介して上プレート31に回転可能に支持された前後方向に延びるねじ軸であり、このねじ軸36の途中は前記ガイドレール32に摺動可能に支持された駆動部37に螺合している。この結果、前記モータ34が作動してねじ軸36が回転すると、駆動部37はガイドレール32にガイドされながら前後方向に移動する。前述した下プレート24、ガイドレール25、モータ26、ねじ軸28、上プレート31、ガイドレール32、モータ34、ねじ軸36は全体として、駆動部37を水平面内で二次元的に移動させる前記駆動機構23を構成する。
【0022】
前記駆動部37は前方に向かって水平に延びる回転軸40を有し、この回転軸40の前端部には周方向に離れて配置され複数の把持セグメント41からなる拡縮径可能な把持体42が設けられている。そして、前記被巻回体12がベース巻回ステージBSに搬入されるとともに、縮径状態の把持体42の外側に該被巻回体12の締結体17、18が嵌合されると、該把持体42は、拡径して締結体17の内周に当接し、被巻回体12を内側から強固に把持して駆動部37に装着するが、このとき、前記被巻回体12は自身の軸線回りに回転可能となる。この状態で前記駆動部37が作動すると、被巻回体12は回転軸40と一体となって軸線回りに回転される。
【0023】
44は搬入ストック台11の前方でベース巻回ステージBSの左方に設置されたベース移送機構であり、このベース移送機構44は1台の静置された産業用ロボットから構成され、そのマニピュレータ45は被巻回体12を把持あるいは把持から解放可能である。そして、このベース移送機構44は搬入ストック台11に載置されている1個の被巻回体12、詳しくは締結体17または18をマニピュレータ45によって把持した後、持ち上げながら反時計回りに約90度旋回し、その後、把持している被巻回体12をベース巻回ステージBSにおける把持体42の外側に嵌合する。この状態で把持体42が拡径すると、被巻回体12はベース移送機構44からベース巻回ステージBSの駆動部37に受け渡される。そして、前記ベース移送機構44はこのような搬入ストック台11から駆動部37への被巻回体12の移送を一定のタクトタイムで行う。
【0024】
47は前記ベース巻回ステージBSの床面上に設置された支持台であり、この支持台47は把持体42に把持された被巻回体12の右側に配置されている。この支持台47上には上下方向に延びる支持ポスト48が設置され、この支持ポスト48は図示していない駆動モータから駆動力を受けて鉛直軸回りに回転することができる。前記支持ポスト48の上部には図示していない駆動モータにより水平軸回りに回転する押出し機49が設けられ、この押出し機49は、例えば、ギアポンプ50と、該ギアポンプ50から供給された未加硫ゴムを連続的にゴムストリップ51として押出す押出しヘッド52とを有する。
【0025】
また、前記支持ポスト48には押出しヘッド52から押出された直後のゴムストリップ51をガイドしながら被巻回体12の周囲に押し付けて貼付ける圧着ローラ54およびガイドローラ55が回転可能に支持されている。そして、ベース巻回ステージBSに位置する被巻回体12が軸線回りに回転しているとき、駆動部37を駆動機構23によって水平面内で移動させることにより、被巻回体12の外表面と押出し機49との相対位置を一定に保持しつつ、支持ポスト48、押出し機49を鉛直軸回りに回転させて、押出し機49の押出しヘッド52から押出されたゴムストリップ51を被巻回体12の周囲、ここでは半径方向外側に供給すると、該ゴムストリップ51は被巻回体12の外側に螺旋状に多数回巻回され、タイヤの一部を構成するゴム部材56、ここではトップトレッドのベース層58を成形する。
【0026】
前述した固定フレーム、駆動機構23、駆動部37、支持台47、支持ポスト48、押出し機49、圧着ローラ54は全体として、ベース巻回ステージBSに設置され、該ベース巻回ステージBSまで移動してきた被巻回体12の周囲にゴムストリップ51を供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成するゴム部材56(ベース層58)を成形するベース巻回手段57を構成する。
【0027】
ここで、被巻回体12に巻回するゴムストリップ51は、押出し機から押出した後、一旦リールに巻き取り、必要に応じて該リールから巻き出したものであってもよい。この場合には、前記巻回手段を、駆動部、リールからゴムストリップを巻き出す巻き出し機構、および、該巻き出されたゴムストリップを幅方向にずらしながら被巻回体の周囲に供給して押し付けるガイド機構から構成すればよい。
【0028】
そして、前述のようにベース巻回手段57はゴムストリップ51を連続的に押出す押出し機49を有しているため、押出し直後の温度および粘着力の高いゴムストリップ51を被巻回体12に供給することができ、この結果、成形されたゴム部材56(ベース層58)の形状安定性を向上させることができる。なお、後述のキャップ層、サイド巻回手段も押出し機49を有しており、同様の効果を得ることができる。
【0029】
前記ベース巻回ステージBSの前方にはキャップ巻回ステージCSが設けられ、このキャップ巻回ステージCSには前後方向に延びる1本の直線上に等距離離れて複数、ここでは後方から前方に向かって順次配置され、製造するタイヤの種類数と同数である複数(ここでは4つ)の巻回ステーションT、即ち、第1、第2、第3、第4巻回ステーションT1、T2、T3、T4が設けられている。
【0030】
そして、前述したいずれの巻回ステーションTにおいても前述したベース巻回手段57と同様の構成をしたキャップ巻回手段59がそれぞれ設けられている。一方、前記ベース移送機構44の前方で前記4つの巻回ステーションTの左方には第1巻回ステーションT1から第4巻回ステーションT4まで前方に向かって延びる敷設台60が設置され、この敷設台60の上面には前後方向に延びる一対のガイドレール61が敷設されている。
【0031】
62は前記ガイドレール61に摺動可能に支持され前後方向に移動可能な分配移送機構であり、この分配移送機構62は前記ベース移送機構44と同一構造である1台の産業用ロボットから構成され、そのマニピュレータ63は前述のマニピュレータ45と同様に被巻回体12を把持あるいは把持から解放可能である。そして、この分配移送機構62は前述した一定のタクトタイムでベース移送機構44からゴム部材56(ベース層58)が巻回された被巻回体12を受け取った後、図示していない例えばねじ機構等の移動力付与機構から駆動力を受けて前方に移動して、予め決定されている所定の順序、ここでは第1、第2、第3、第4巻回ステーションT1、T2、T3、T4の順での繰り返しに従って全て(4つ)の巻回ステーションTに対し前記被巻回体12を順次移送し、該キャップ巻回ステージCSのキャップ巻回手段59に受け渡す。
【0032】
このようにして各巻回ステーションTのキャップ巻回手段59まで被巻回体12が移動してくると、該キャップ巻回手段59の押出し機49からゴムストリップ51が、回転している被巻回体12の周囲に同時に供給(大部分の時間で3つの被巻回体12に、若干の時間で4つの被巻回体12に同時に供給)されて螺旋状に多数回巻回され、タイヤの一部を構成する、前述のベース層58とは異なる種類のゴム部材56、ここではトップトレッドのキャップ層64を成形する。このとき、前述した第1、第2、第3、第4巻回ステーションT1、T2、T3、T4におけるキャップ巻回手段59、詳しくは押出し機49からは、製造するタイヤの種類に対応して異なるゴム種のゴムストリップ51が押出されるため、各巻回ステーションTにおいて成形されるゴム部材56はゴム種の異なったものとなる。
【0033】
ここで、同時に製造するタイヤの種類が巻回ステーションTの数より少ないときには、該タイヤの種類と同数の巻回ステーションTにのみ、例えば2つまたは3つの巻回ステーションT(キャップ巻回手段59)に被巻回体12を移送してゴムストリップ51を巻回するようにしてもよく、2以上の巻回ステーションTに移送して巻回すればよい。このときには、被巻回体12が移送されない巻回ステーションTでキャップ巻回手段59の作動を停止、または、押出し機49から押出されたゴムストリップ51を再び押出し機49に戻すようにする。
【0034】
なお、この実施形態においては、前述のキャップ巻回ステージCSに設けられた巻回ステーションTの数を、該キャップ巻回ステージCSにおいて巻回予定であるゴム種の種類数(タイヤの種類数)と同数としたが、キャップ巻回ステージCSにおいて巻回予定であるゴム種の種類数より多くしてもよく、要するに、巻回予定であるゴム種の種類数以上とすればよい。このようにすれば、タイヤの種類がどのように変更されても、この変更に応じたキャップ巻回手段59が予め設置されているため、容易にこれに対処することができるとともに、いずれかの巻回ステーションTにおいて複数のゴム種から構成されたゴム部材56(キャップ層64)を成形することも可能となる。
【0035】
そして、巻回ステーションTにおいて被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回が終了すると、巻回が終了する度に分配移送機構62は巻回の終了した被巻回体12をキャップ巻回手段59から受け取って前方に移送するが、この移送の間隔を前記タクトタイムと同一としている。ここで、複数台のキャップ巻回手段59が設置されているキャップ巻回ステージCSにおいて、前述のように一定のタクトタイムで被巻回体12を受け取るとともに送り出すためには、各キャップ巻回手段59における巻回開始から巻回終了までの巻回時間を、1台のキャップ巻回手段59がキャップ巻回ステージCSに設置されている場合の巻回時間に、作動中のキャップ巻回手段59の台数を乗じた程度まで長くする必要がある。
【0036】
このためには、キャップ巻回ステージCSに設置されている複数のキャップ巻回手段59から被巻回体12に供給されるゴムストリップ51の単位時間当たりの供給量を、1台のキャップ巻回手段59がキャップ巻回ステージCSに設置されている場合の単位時間当たりの供給量より低減すればよい。ここで、前述のように単位時間当たりの供給量を低減させるには、前記キャップ巻回手段59(押出し機49)からのゴムストリップ51の吐出速度を低減したり、あるいは、前記キャップ巻回手段59(押出し機49)から吐出されるゴムストリップ51の断面積を低減したり、また、吐出速度および断面積を共に低減させることが考えられ、例えば、キャップ巻回ステージCSにおいて4台のキャップ巻回手段59が同時作動しているような場合には、単位時間当たりの供給量を略 1/4に低減させればよい。
【0037】
この結果、前述のようにキャップ巻回ステージCSにおいては、キャップ巻回手段59の押出し機49からゴムストリップ51が被巻回体12の周囲に同時に供給(大部分の時間で3つの被巻回体12に、若干の時間で4つの被巻回体12に同時に供給)されることになる。そして、このように各巻回ステーションTのキャップ巻回手段59から供給されるゴムストリップ51の単位時間当たりの供給量を、キャップ巻回ステージCSに1台だけ巻回手段が設置されている場合のゴムストリップの単位時間当たりの供給量より低減させれば、各巻回ステーションTにおけるキャップ巻回手段59を小型、安価とすることができる。
【0038】
ここで、複数の巻回ステーションTが設けられたキャップ巻回ステージCSに設置されている複数のキャップ巻回手段59から被巻回体12に供給されるゴムストリップ51の単位時間当たりの供給量を、いずれのキャップ巻回手段59においても等量とすれば、各キャップ巻回手段59から被巻回体12に供給されるゴムストリップ51の単位時間当たりの供給量が、キャップ巻回ステージCSに1台だけ巻回手段が設置されている場合の単位時間当たりのゴムストリップ供給量を、キャップ巻回手段59の台数で除した値まで均一に低減され、この結果、いずれのキャップ巻回手段59もより小型、安価とすることができる。
【0039】
また、前述のように構成すれば、前記キャップ巻回ステージCSにおいて複数台のキャップ巻回手段59のうち、2台以上が同時に作動している(ゴムストリップ51を押出している)ことになり、被巻回体12の未稼働状態が減少する。この結果、押出し機49の作動が停止して未加硫ゴムが滞留する事態が減少し、ゴム部材56のゴム品質が向上するとともに、押出し機49が作動しているときには、押し出されたゴムストリップ51を再び押出し機49に単に戻す事態が減少し、エネルギーの効率利用を図ることができる。しかも、各巻回ステーションTのキャップ巻回手段59から供給されるゴムストリップ51のゴム種が前述のように異なっている場合には、複数種類のタイヤを混流状態で同時に製造することができる。
【0040】
ここで、前記4台のキャップ巻回手段59を2台ずつに区分するとともに、片方の2台と残りの2台とから異なるゴム種のゴムストリップ51を押出して2種類のタイヤを同時に混流状態で製造するようにしたり、あるいは、4台全てのキャップ巻回手段59から同一ゴム種のゴムストリップ51を押出して1種類のタイヤを製造するようにすることもでき、これにより、多種類の製造形態に容易に対応でき、タイヤ製造の自由度が高くなって多種少量生産に好適である。また、トップトレッドのキャップ層64は、タイヤの種類が変更されたとき、比較的頻繁にゴム種が変更されるため、前述のように複数台のキャップ巻回手段59が設置されたキャップ巻回ステージCSにおいて成形されるゴム部材56をトップトレッドのキャップ層64とすれば、このような事態に容易に対処することができる。
【0041】
前記キャップ巻回ステージCS、詳しくは最前列に位置する第4巻回ステーションT4の前方には一側サイド巻回ステージISが設けられ、この一側サイド巻回ステージISには一側サイド巻回手段66が設置されている。ここで、前記一側サイド巻回手段66は前記ベース巻回手段57とほぼ同様の構造をしているが、この一側サイド巻回手段66においては、駆動部37が固定フレームに対し鉛直軸回りに回動可能であるとともに、該駆動部37を鉛直軸回りに回動させる図示していないモータが設置されている点で異なっている。
【0042】
また、前記敷設台60の前方で一側サイド巻回ステージISより左方には一側サイド移送機構67が設置され、この一側サイド移送機構67は前記ベース移送機構44と同一構造である1台の産業用ロボットから構成されるとともに、被巻回体12を把持あるいは把持から解放することができるマニピュレータ68を有する。そして、この一側サイド移送機構67は前記分配移送機構62から前述した一定のタクトタイムでゴム部材56(キャップ層64)が巻回された被巻回体12を受け取った後、一側サイド巻回ステージISの一側サイド巻回手段66に受け渡す。
【0043】
このようにして被巻回体12が一側サイド巻回手段66まで装着されると、該一側サイド巻回手段66の駆動部37はモータの作動により反時計回りに90度だけ回動し、その後、被巻回体12が駆動部37に駆動されて軸線回りに回転する。このとき、一側サイド巻回手段66の押出し機49からゴムストリップ51が、回転している被巻回体12の周囲に供給されて螺旋状に多数回巻回され、タイヤの一部を構成する、前述のベース層58、キャップ層64とは異なる種類のゴム部材56(被巻回体12の軸方向一側に巻回された一側サイドトレッド69)を成形する。次に、駆動部37を時計回りに90度だけ回動させて初期位置に復帰させるとともに、一側サイド移送機構67が巻回の終了した被巻回体12を一側サイド巻回手段66から取り出す。
【0044】
前記一側サイド巻回ステージISの前方には他側サイド巻回ステージTSが設けられ、この他側サイド巻回ステージTSには前記一側サイド巻回手段66と同一構造の他側サイド巻回手段70が設置されている。また、前記一側サイド移送機構67の前方で他側サイド巻回ステージTSより左方には他側サイド移送機構71が設置され、この他側サイド移送機構71は、前記ベース移送機構44と同一構造である1台の産業用ロボットから構成されるとともに、被巻回体12を把持あるいは把持から解放することができるマニピュレータ72を有する。
【0045】
そして、この他側サイド移送機構71は前記一側サイド移送機構67から前述した一定のタクトタイムでゴム部材56(一側サイドトレッド69)が巻回された被巻回体12を受け取った後、他側サイド巻回ステージTSの他側サイド巻回手段70に受け渡す。このようにして被巻回体12が他側サイド巻回手段70に装着されると、該他側サイド巻回手段70の駆動部37はモータの作動により反時計回りに90度だけ回動し、その後、被巻回体12が駆動部37に駆動されて軸線回りに回転する。
【0046】
このとき、他側サイド巻回手段70の押出し機49から押出され、一側サイド巻回手段66から押出されたゴムストリップ51とゴム種が同一であるゴムストリップ51が、回転している被巻回体12の周囲に供給されて螺旋状に多数回巻回され、タイヤの一部を構成する、前述のベース層58、キャップ層64、一側サイドトレッド69とは異なる種類のゴム部材56(被巻回体12の軸方向他側に巻回された他側サイドトレッド73)を成形し、グリーンタイヤ74とする。次に、駆動部37を時計回りに90度だけ回動させて初期位置に復帰させるとともに、他側サイド移送機構71が被巻回体12(グリーンタイヤ74)を他側サイド巻回手段70から取り出し、他側サイド移送機構71の前方に設置された搬出ストック台75上に移載する。なお、前記一側、他側サイド巻回手段66、70から押し出されるゴムストリップ51のゴム種は異なっていてもよい。
【0047】
前述したベース、分配、一側サイド、他側サイド移送機構44、62、67、71は全体として、一定のタクトタイムで被巻回体12を複数、ここでは4つの巻回ステージS、即ちベース、キャップ、一側サイド、他側サイド巻回ステージBS、CS、IS、TSに順次移動させる移動手段78を構成する。この結果、前記分配移送機構62は移動手段78の一部を構成することになる。そして、この分配移送機構62は、前記巻回ステーションTに対し前のベース巻回ステージBSから被巻回体12を所定の順序で順次移送して、2以上の巻回ステーションTで被巻回体12に対しゴムストリップ51を同時に巻回する一方、ゴムストリップ51の巻回が終了する度に被巻回体12を次の一側サイド巻回ステージISに移送することができる。
【0048】
なお、この発明においては、移動手段を、ベース巻回ステージBSの側方から他側サイド巻回ステージTSの側方まで延びる敷設台と、該敷設台に前後方向に移動可能に支持された下移動プレートと、該下移動プレートに左右方向に移動可能に支持された上移動プレートと、該上移動プレートに支持され、被巻回体を把持および把持から解放可能な把持爪とから構成してもよい。
【0049】
そして、この実施形態では分配移送機構62を、前述のように被巻回体12を把持および把持から解放可能で、複数の巻回ステーションTと前のベース巻回ステージBSおよび次の一側サイド巻回ステージISとの間で被巻回体12を移送可能な1台の産業用ロボットから構成しているため、分配移送機構62を構造簡単で小型とすることができる。
【0050】
また、この実施形態においては、前述のように複数の巻回ステーションT、および、該巻回ステーションTが設けられたキャップ巻回ステージCS以外の巻回ステージ、即ちベース、一側サイド、他側サイド巻回ステージBS、IS、TSにそれぞれ駆動部37を設置し、移動手段78から駆動部37に受け渡された被巻回体12を該駆動部37により軸線回りに回転させるようにしているため、被巻回体を駆動部に固定するとともに、これら被巻回体、駆動部全体を移動させる場合に比較し、移動させるものの質量が小さくなって取り扱いが容易となるとともに、余分なエネルギーの使用を抑制することができる。
【0051】
なお、前述の実施形態においては、巻回ステージSを4つ、即ち、ベース、キャップ、一側サイド、他側サイド巻回ステージBS、CS、IS、TSだけ設置したが、この発明においては、巻回ステージを2、3または5以上設置するようにしてもよい。さらに、前述の実施形態においては、キャップ巻回ステージCSにのみキャップ巻回手段59がそれぞれ設置された複数(4つ)の巻回ステーションTを設けるようにしたが、この発明においては、他の巻回ステージS、例えばベース巻回ステージBS、一側サイド巻回ステージISまたは他側サイド巻回ステージTSに、巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設けるようにしてもよく、要するに、少なくとも1つの巻回ステージに巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設ければよい。
【0052】
また、前述の実施形態においては、駆動部37を被巻回体12とともに駆動機構23により二次元的に(前後、左右方向に)移動させるとともに、押出し機49を有する支持ポスト48を鉛直軸回りに回転させながら、ゴムストリップ51を被巻回体12の周囲に巻回するようにしたが、この発明においては、駆動部37、被巻回体12を静置する一方、支持台47、支持ポスト48を二次元的に移動させるとともに、支持ポスト48を鉛直軸回りに回転させながら、ゴムストリップ51を被巻回体12の周囲に巻回するようにしてもよい。
【0053】
次に、前記実施形態1の作用を図5を参照しながら説明する。
今、時間t0であり、ベース巻回ステージBSにおいてベース巻回手段57の駆動部37に装着された被巻回体12が駆動部37に駆動されて回転を開始するとともに、ベース巻回手段57の押出し機49から該被巻回体12の周囲に対しゴムストリップ51の供給が開始され、ベース層58を成形するゴムストリップ51が被巻回体12の半径方向外側に巻回され始めたとする。
【0054】
このとき、キャップ巻回ステージCSの第1巻回ステーションT1におけるキャップ巻回手段59には被巻回体12は装着されておらず空となっているが、この第1巻回ステーションT1のキャップ巻回手段59に装着されるべき被巻回体12は、分配移送機構62により把持されながら第1巻回ステーションT1のキャップ巻回手段59に向かって移送されている。
【0055】
また、このとき、キャップ巻回ステージCSの第2、第3、第4巻回ステーションT2、T3、T4においては、キャップ巻回手段59の押出し機49から異なるゴム種のゴムストリップ51が、軸線回りに回転している被巻回体12の周囲にそれぞれ供給されているが、キャップ巻回手段59の駆動部37が水平面内で移動するとともに、支持ポスト48、押出し機49が鉛直軸回りに回転しているため、各ゴムストリップ51は被巻回体12の半径方向外側に螺旋状に次々と巻回され、キャップ層64を成形している。
【0056】
一方、一側、他側サイド巻回ステージIS、TSにおいては、一側、他側サイド巻回手段66、70の押出し機49からゴムストリップ51が、軸線回りに回転している被巻回体12の周囲にそれぞれ供給されているが、この一側、他側サイド巻回ステージIS、TSにおいても一側、他側サイド巻回手段66、70の駆動部37が水平面内で移動するとともに、支持ポスト48、押出し機49が鉛直軸回りに回転しているため、前記ゴムストリップ51は被巻回体12の軸方向両外側に螺旋状に次々と巻回され、一側、他側サイドトレッド69、73を成形している。その後、分配移送機構62は把持している被巻回体12を第1巻回ステーションT1のキャップ巻回手段59に受け渡した後、待機状態に復帰する。
【0057】
次に、時間t1となると、第1巻回ステーションT1において、被巻回体12が駆動部37に駆動されることで回転を開始するとともに、キャップ巻回手段59の押出し機49から該被巻回体12の周囲に対しゴムストリップ51の供給が開始され、キャップ層64を成形するゴムストリップ51が被巻回体12の半径方向外側に巻回され始める。この結果、全て(4つ)の巻回ステーションTにおいて被巻回体12に対し異なるゴム種のゴムストリップ51がそれぞれ供給されて同時に巻回されるようになる。
【0058】
次に、時間t2となると、他側サイド巻回ステージTSの被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(他側サイドトレッド73の成形)が終了してグリーンタイヤ74が成形され、被巻回体12の回転が停止する。その後、他側サイド移送機構71が他側サイド巻回手段70から被巻回体12(グリーンタイヤ74)を取出し、搬出ストック台75上に移載する。
【0059】
次に、時間t3となると、第2巻回ステーションT2の被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が終了し、該被巻回体12の回転が停止する。その後、分配移送機構62がガイドレール61にガイドされながら第2巻回ステーションT2近傍まで移動し、第2巻回ステーションT2のキャップ巻回手段59から被巻回体12を取り出した後、被巻回体12を把持しながら前方に移動する。
【0060】
次に、時間t4となると、一側サイド巻回ステージISの被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(一側サイドトレッド69の成形)が終了し、被巻回体12の回転が停止する。その後、一側サイド移送機構67が一側サイド巻回手段66から被巻回体12を取出す。ここで、時間t2から時間t5となるまでの間に、他側サイド移送機構71は、前述のように被巻回体12(グリーンタイヤ74)を搬出ストック台75上に移載した後、一側サイド巻回手段66から取り出された被巻回体12を一側サイド移送機構67から受け取るとともに、該被巻回体12を他側サイド巻回ステージTSの他側サイド巻回手段70に装着する。
【0061】
そして、時間t5となると、他側サイド巻回ステージTSの他側サイド巻回手段70により被巻回体12の回転が開始するとともに、他側サイド巻回手段70の押出し機49から被巻回体12の周囲にゴムストリップ51の供給が開始され、他側サイドトレッド73を成形するゴムストリップ51が被巻回体12に巻回され始める。また、この時間t5となったとき、ベース巻回ステージBSのベース巻回手段57に装着された被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(ベース層58の成形)が終了し、被巻回体12の回転が停止する。その後、ベース移送機構44がベース巻回手段57から被巻回体12を取出す。
【0062】
ここで、時間t4から時間t6となるまでの間に、一側サイド移送機構67は前述のように被巻回体12を一側サイド巻回手段66から取り出して他側サイド移送機構71に受け渡した後、前方限まで移動してきた分配移送機構62から被巻回体12を受け取って一側サイド巻回ステージISの一側サイド巻回手段66に装着する。その後、分配移送機構62は後方に向かって移動する。そして、時間t6となると、一側サイド巻回ステージISの一側サイド巻回手段66により被巻回体12の回転が開始するとともに、一側サイド巻回手段66の押出し機49から被巻回体12の周囲にゴムストリップ51の供給が開始され、一側サイドトレッド69を成形するゴムストリップ51が被巻回体12に巻回され始める。
【0063】
ここで、時間t5から時間t7となるまでの間に、ベース移送機構44は前述のようにベース巻回手段57から取り出した被巻回体12を分配移送機構62に受け渡した後、搬入ストック台11から被巻回体12を取り出してベース巻回ステージBSのベース巻回手段57に装着し、一方、分配移送機構62は受け取った被巻回体12を把持しながら前方に向かって移動する。そして、時間t7となると、第1ターンが終了し、時間t0に戻る。ここで、前述した時間t0から時間t7までの間の時間が前記タクトタイムである。
【0064】
次に、第2ターンが開始するが、この第2ターンでは時間t1において第2巻回ステーションT2のキャップ巻回手段59に装着された被巻回体12に対しキャップ層64を成形するゴムストリップ51の巻回が開始するとともに、時間t3において第3巻回ステーションT3のキャップ巻回手段59に装着された被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が終了する。その他の作動は前記第1ターンと同様である。
【0065】
次に、第3ターンにおいては、時間t1において第3巻回ステーションT3の被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が開始するとともに、時間t3において第4巻回ステーションT4の被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が終了し、第4ターンにおいては、時間t1において第4巻回ステーションT4の被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が開始するとともに、時間t3において第1巻回ステーションT1の被巻回体12に対するゴムストリップ51の巻回(キャップ層64の成形)が終了する。なお、このときのその他の動作は前記第1ターンと同様である。
【0066】
このような第1〜第4ターンが1サイクルとなり、以後、このサイクルが繰り返される。この際、被巻回体12は一定のタクトタイムで移動手段78により複数の巻回ステージS、ここではベース、キャップ、一側サイド、他側サイド巻回ステージBS、CS、IS、TSに順次移動される一方、いずれの巻回ステージSにおいてもベース、キャップ、一側サイド、他側サイド巻回手段57、59、66、70から被巻回体12の周囲にゴムストリップ51が供給されて螺旋状に多数回巻回され、異なる種類のゴム部材56、ここではベース層58、キャップ層64および一側、他側サイドトレッド69、73が成形される。
【0067】
また、前記キャップ巻回ステージCSにおいては、分配移送機構62により複数の巻回ステーションT、ここでは4つの第1、第2、第3、第4巻回ステーションT1、T2、T3、T4に対し、前のベース巻回ステージBSから被巻回体12を前記順序で順次移送して、2以上、ここでは全ての巻回ステーションTで被巻回体12に対しゴムストリップ51を同時に巻回する一方、ゴムストリップ51の巻回が終了する度に被巻回体12を巻回ステーションTから取り出して次の一側サイド巻回ステージISに移送している。その後、前記グリーンタイヤ74は加硫装置まで搬送された後、該加硫装置において加硫され、加硫済タイヤ(製品タイヤ)となる。
【0068】
図6は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、前記キャップ巻回ステージCSに、前後方向に延びる2本の直線上にそれぞれ複数、ここでは2つの巻回ステーションT、例えば、一方の直線上に第1、第2巻回ステーションT1、T2を、他方の直線上に第3、第4巻回ステーションT3、T4を互いに等距離離して後方から前方に向かって順次設置するとともに、これら第1、第2巻回ステーションT1、T2と第3、第4巻回ステーションT3、T4との間に、分配移送機構62が摺動可能に支持された前後方向に延びる敷設台60、ガイドレール61を設置し、分配移送機構62によって被巻回体12を両側に振り分けながら移送するようにしている。そして、このようにすれば、キャップ巻回ステージCSの長さを短くすることができ、作業能率が向上するとともに、製造装置全体の小型化を図ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、タイヤを製造する産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施形態1を示す概略平面図である。
【図2】被巻回体近傍の子午線断面図である。
【図3】巻回手段近傍の平面図である。
【図4】図3のI−I矢視断面図である。
【図5】被巻回体に対するゴムストリップ巻回のタイムチャート図である。
【図6】この発明の実施形態2を示すキャップ巻回ステージ近傍の概略平面図である。
【符号の説明】
【0071】
12…被巻回体 37…駆動部
49…押出し機 51…ゴムストリップ
56…ゴム部材 57、59、66、70…巻回手段
62…分配移送機構 64…キャップ層
78…移動手段 S…巻回ステージ
T…巻回ステーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の軸線回りに回転可能な被巻回体を、一定のタクトタイムで移動手段により複数の巻回ステージに順次移動させる一方、いずれの巻回ステージにおいても、該巻回ステージに設置された巻回手段から被巻回体の周囲にゴムストリップを供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成する異なる種類のゴム部材をそれぞれ成形するようにしたタイヤ製造方法において、少なくとも1つの巻回ステージに前記巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設けるとともに、前記移動手段の一部を構成する分配移送機構により前記巻回ステーションに対し前の巻回ステージから被巻回体を所定の順序で順次移送して、2以上の巻回ステーションで被巻回体に対しゴムストリップを同時に巻回する一方、ゴムストリップの巻回が終了する度に該被巻回体を次の巻回ステージに移送するようにしたことを特徴とするタイヤ製造方法。
【請求項2】
自身の軸線回りに回転可能な被巻回体と、一定のタクトタイムで被巻回体を複数の巻回ステージに順次移動させる移動手段と、各巻回ステージに設置され、該巻回ステージまで移動してきた被巻回体の周囲にゴムストリップを供給して螺旋状に多数回巻回し、タイヤの一部を構成する異なる種類のゴム部材をそれぞれ成形する巻回手段とを備えたタイヤ製造装置において、少なくとも1つの巻回ステージに前記巻回手段がそれぞれ設置された複数の巻回ステーションを設けるとともに、前記移動手段の一部を構成する分配移送機構により前記巻回ステーションに対し前の巻回ステージから被巻回体を所定の順序で順次移送して、2以上の巻回ステーションで被巻回体に対しゴムストリップを同時に巻回する一方、ゴムストリップの巻回が終了する度に該被巻回体を次の巻回ステージに移送するようにしたことを特徴とするタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記複数の巻回ステーションが設けられた巻回ステージに設置されている複数の巻回手段から被巻回体に供給されるゴムストリップの単位時間当たりの供給量をいずれの巻回手段においても等量とした請求項2記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記分配移送機構は、被巻回体を把持および把持から解放可能で、複数の巻回ステーションと前および次の巻回ステージとの間で被巻回体を移送可能な1台のロボットである請求項2または3記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
前記複数の巻回ステーションおよび該巻回ステーションが設けられた巻回ステージ以外の巻回ステージにそれぞれ駆動部を設置し、移動手段から駆動部に受け渡された被巻回体を該駆動部により軸線回りに回転させるようにした請求項2〜4のいずれかに記載のタイヤ製造装置。
【請求項6】
前記巻回手段はゴムストリップを連続的に押出す押出し機を有する請求項2〜5のいずれかに記載のタイヤ製造装置。
【請求項7】
前記複数の巻回ステーションが設けられた巻回ステージにおいて成形されるゴム部材はトップトレッドのキャップ層である請求項2〜6のいずれかに記載のタイヤ製造装置。
【請求項8】
前記巻回ステージに設けられた巻回ステーションの数は、該巻回ステージにおいて巻回予定であるゴム種の種類数以上である請求項2〜7のいずれかに記載のタイヤ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−6534(P2009−6534A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168550(P2007−168550)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】