説明

タクシーの配車案内システム

【課題】タクシーの配車システムを利用して簡便に、且つ迅速に目標移動体の捜索、保護等を行うことが出来るようにする。
【解決手段】タクシーの配車案内システムは、配車基地において自社タクシーと契約者から通報を受けた目標移動体の位置情報をGPSの電波受信によりそれぞれ取得する手段と、目標移動体に近くにいる空車の自社タクシーに目標移動体の位置を連絡してそこに向かうよう指示する手段と、タクシーにおいて自車の位置情報をGPSの電波受信により検知すると共に、配車基地から連絡を受けた目標移動体に向けて道案内する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自社タクシーと目標移動体との位置情報をそれぞれ取得し、自社タクシーを目標移動体に向けて配車し、案内するタクシーの配車案内システムに関し、特に、契約者の求めに応じて徘徊する傾向のある認知症の人やペット等を探して保護するのに好適なタクシーの配車案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線式の非常通報装置や、非常通報機能を有する携帯電話機などの携帯端末を安全確認の対象者に携帯させ、非常事態が発生したときには携帯端末の非常通報スイッチを操作すれば、非常信号が所定の監視装置に自動的に送信されるようにした非常通報システムは既に知られている。
【0003】
さらに最近では、携帯端末にGPS(Global Positioning System:全世界測位システム)を使用した位置検知システムを搭載し、GPSからの電波の受信により携帯端末の位置情報を得て、その位置情報を基地局に送信するシステムも運用されている。このシステムでは、契約者の求めに応じて携帯端末の位置情報をネットワークを通して知らせ、さらに必要があるときは、保護に向かうという措置を講じることが可能である。
【0004】
最近の高齢化社会に伴い、徘徊傾向がある認知症患者の捜索、保護をシステム化する要請が高まっている。また、最近のペットブームに伴い、行き先の分からなくなったペットの捜索、保護をシステム化する要請も高まっている。これら捜索、保護が要請される目標は移動体であり、且つ自ら意思表示や捜索要請行動がとれないものであり、これらの保護者や飼い主が警備会社と契約し、必要に応じて契約者が警備会社に捜索、保護要請を行うというシステム化が図られている。
【0005】
しかしながら、警備会社ではそのために多くの人員や車両を用意しなければならず、人件費や設備の面で負担が大きい。また、市中に散在する警備車両で捜索、保護対象である目標移動体に急行したとしても、目標移動体を捕捉する時間がある程度かかってしまう。
【特許文献1】2005−45743号公報
【特許文献2】2001−76289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来のGPSによる位置検知システムを使用し、目標移動体を捜索し、保護するシステムにおける課題に鑑み、当該システムに加えてタクシーの配車システムを利用して簡便に、且つ迅速に目標移動体の捜索、保護等を行うことが出来るようにしたタクシー配車案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の目的を達成するため、契約者が指定した目標移動体にGPSを使用した位置検知システムを携行させ、必要に応じてGPSからの電波受信により、契約者から要請があった目標移動体の位置情報を取得すると共に、タクシーの配車システムを利用してその目標移動体の近くにいる空車のタクシーに指示し、そのタクシーに搭載するナビゲーションシステムを利用して情報取得した目標移動体の位置に向かわせ、速やかにその捜索、保護出来るようにしたものである。
【0008】
そのために本発明によるタクシーの配車案内システムは、配車基地において自社タクシーと契約者から通報を受けた目標移動体の位置情報をGPSの電波受信によりそれぞれ取得する手段と、目標移動体に近くにいる空車の自社タクシーに目標移動体の位置を連絡してそこに向かうよう指示する手段と、タクシーにおいて自車の位置情報をGPSの電波受信により検知すると共に、配車基地から連絡を受けた目標移動体に向けて道案内する手段とを有する。
【0009】
このシステムでは、タクシー会社が配車基地においてGPSを使用して自車の位置情報を取得したり、顧客からタクシーの呼び出しがあったとき、その直近にいる空車のタクシーに配車基地から配車指令を行う配車システムをほぼそのまま利用することが出来る。この配車システムにGPSを使用して目標移動体の位置情報を得るシステムを加えれば、容易に運用することが出来る。また、配車基地で待機中のタクシーと市中を走行する空車のタクシーの何れかのうち、近いタクシーを目標移動体の捜索と保護に向かわせることが出来るので、目標移動体の捜索と保護を短時間に行える。
【0010】
配車基地の端末は、自社タクシーの位置情報を取得する手段に加え、当該タクシーの実車、支払、空車、迎車の何れかのステータスの情報を取得してディスプレイに表示する機能を有する。これにより、契約者から目標移動体の捜索と保護が要請されたとき、その目標移動体の捜索、保護に向かうことが出来る直近のタクシーをすぐ検索することが可能となる。また、配車基地に居て空車であるタクシーについては、待機中であるタクシーであることが分かる。
【0011】
配車基地とタクシーは相互に無線により自車の位置情報、ステータス情報、目標移動体の位置情報を配信する機能を有する。これにより、配車基地とタクシーとでそれぞれ取得した情報の共有が可能となり、迅速且つ適切な配車が可能となる。よって、目標移動体の捜索と保護が適切に行える。
【発明の効果】
【0012】
以上説明した通り、本発明によれば、タクシー会社が普段利用している配車システムに若干のシステム変更を加えるだけで、既存の人員、設備を利用して行方不明の人やペットの捜索、保護に対応することが出来る。普段はタクシーとして運用に当てている乗務員と車両をそのまま使えるので、人員や車両の重複投資にならず、経済的にも有利に運用することが可能である。また、市中に展開しているタクシーを目標移動体の捜索、保護に当たらせることが出来るので、迅速に対応することも出来る。加えて、タクシーであるから、契約者を乗客として搭乗させて捜索、保護を行うことも出来るので、より安心感のあるサービスを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、GPSを使用したタクシーの位置情報取得システムを使用したタクシーの配車システムを利用し、行き先が分からなくなった人やペットの捜索、保護を容易にするシステムを構築し、前記の目的を達成するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明によるタクシー配車案内システムの概念を示すものである。図1に示すように、タクシー配車案内システムはタクシーの配車基地1とタクシー3とで運用される。後で説明するように、タクシー3にはGPS5、5…により自車の位置情報を得るための手段として、例えばカーナビゲーションシステムが搭載される。また、無線通信機が搭載され、その無線機により自車の位置情報が配車基地1の配車システムに送られる。後で説明するように配車基地1は、無線通信機と自車のタクシー3から無線通信により送られてくる自車位置情報により、タクシー3の車両番号毎の位置情報を把握し、表示するシステムとが備えられている。また配車基地には、待機中のタクシーを駐車しておく車庫が備えられており、これは構造物の無い単なる駐車スペースを含む。
【0015】
捜索、保護の対象となる目標移動体4a、4bは、例えば、徘徊傾向のある認知症を患っている人、子供、ペット等である。これらの目標移動体4a、4bには、GPSによりそれらの位置情報を得るための携行端末が例えば衣服、首輪、その他の携行品に取り付けられる等して装着されている。この携行端末はバッテリーの電源が電力を供給し得る限り、常時GPSによりそれらの位置情報を得ることが出来、この位置情報がネットワークを通して配車基地1の端末に送られる。
【0016】
図2は、配車基地の端末構成を示す概念図である。ネットワークに接続された端末用のコンピュータ7を中心として構成され、ディスプレイ、キーボード、マウス等の入力装置、ハードコピーを出力するプリンタ等の周辺機器を備えている。さらに、無線機6が備えられ、この無線機6で得られた情報が符合化され、データとしてコンピュータ7に取り込まれる。
【0017】
図3は、タクシー3の運転席前のダッシューボード11を示すものである。このダッシュボード11には、当該タクシーの運行記録をするタコメータ機能、賃走時の料金計算と表示、レシート発行等を行うタクシー用のドライブレコーダ12が備えられている。このドライブレコーダ12は、当該タクシーの運行を全て記録する他、当該タクシーの状態、つまり乗客が居ない「空車」、指定の場所に乗客を迎えに行く「迎者」、乗客を載せて目的の場所へ走行中の「実車」、目的の場所で乗客から支払いを受けている「支払」の状態を表示するステータスを表示板13を表示する。表示板13の前記ステータス表示を切り替えるのもこのドライブレコーダ12の操作盤で行う。また、このドライブレコーダ12は、当該タクシーが迎者や実車の時、走行距離、時間等からタクシー料金を計算し、その時々の料金がドライブレコーダ12の料金表示パネルに表示される。このドライブレコーダ12は無線機能を有し、配車基地との間で無線通信による通話が可能である他、当該タクシーの前記の空車、迎者、実車、支払の状態を配車基地に送信することが出来る。
【0018】
さらに、タクシー3には、ナビゲーションシステム14が搭載されており、このナビゲーションシステム14はタクシーに搭載したGPSアンテナ16でGPSからの電波を受信し、自車の位置情報を取得する機能を有する。このナビゲーションシステム14は、内蔵する記録メディアに地図情報を格納している。この地図は前記位置情報と共に、ダッシュボード11に設けられたディスプレイ15に表示する。地図は自車の位置情報を中心として当該タクシーの走行に伴ってその地図の中心が刻々移動するよう表示され、タクシーの位置情報は地図上に表示される。
【0019】
このナビゲーションシステム14は、搭乗員が入力した目的地へ地図上及び音声により道案内するナビゲーション機能を有する。さらに、このナビゲーションシステム14により得られた当該タクシーの位置情報が前記ドライブレコーダ12の無線機能により配車基地に送信され、配車基地の端末によりその位置情報がディスプレイにより地図上に表示される。
【0020】
図4は、配車基地の端末のディスクプレイに表示される地図とタクシーの位置表示の例である。タクシーの位置表示17は、各タクシーに予め与えられた車両の識別符合、例えば車両番号と共に表示される。また、それぞれのタクシーのステータス、すなわち前記の空車、迎者、実車、支払の状態は、白色、黄色、赤色、緑色等の色分け表示される。
【0021】
さらに、図5に示すように、この配車基地の端末は、契約者と間で契約対象となっている人、ペット等の目標移動体4bが携行する端末がGPSからの電波により取得した目標移動体4bの位置情報をネットワークを通して取得することが出来る。この目標移動体4bの位置情報は、端末の入力操作により、契約対象となっている複数の目標移動体4bの中の特定の目標移動体4bを選択してディスクプレイに表示することが出来る。
【0022】
このようなシステムにより、サービスの提供は次のような手法で行われる。まず、契約者は予めGPSからの電波の受信により位置情報を取得出来る小形端末を人、ペット等の目標移動体4bに離れないように付けておく。目標移動体4bが移動し、その位置を契約者が知り得ない状態となったとき、契約者は必要に応じて自分のパソコン、携帯電話等の端末からネットワークを経由して配車基地の端末に接続し、IDコードやパスワードにより契約を確認のうえ、GPSの受信により配車基地の端末が取得した目標移動体4bの位置情報を取得し、参照する。その結果、自らが目標移動体4bを捜索、保護することが出来るときは、契約者自らがそれを行う。
【0023】
或いは、必要に応じて契約者は配車基地に電話回線を通して会話その他の伝達手段で連絡し、契約対象となっている目的移動体4bの捜索、保護を求める。配車基地1では、こらに応じて目的移動体4bの位置情報を端末のディスプレイに表示すると共に、その直近にある空車のタクシー3、3…を検索する、そして、空車の1台または複数台のタクシー3、3…に無線で目的移動体4bの位置情報を送信すると共に、そのタクシー3、3…に無線で目的移動体4bの捜索、保護を指令する。また、配車基地に居て待機中であるタクシーに目的移動体4bの捜索、保護を指令することもある。
【0024】
指令を受けたタクシー3、3…は、自車のナビゲーションシステムのディスプレイで目的移動体4bの位置情報を確認し、認識したうえで、その位置に向かって走行し、捜索、保護の行動をとる。この場合に、ナビゲーションシステムで目的移動体4bの位置情報を目的地と定め、ナビゲーションシステムによる道案内機能を使用して走行することも出来る。また、契約者が配車基地に要請したサービスとして、契約者を伴って目的移動体4bの捜索、保護をする場合は、目的移動体4bに向かう前に予め契約者が指定した自宅等の場所へ向かい、契約者を乗客として搭乗させながら目的移動体4bの捜索、保護をする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例によるタクシー配車案内システムの概念を示す図である。
【図2】同実施例による配車基地の端末構成を示す概念図である。
【図3】同実施例によるタクシーの運転席前のダッシューボードを示す概略図である。
【図4】同実施例による配車基地の端末のディスクプレイに表示される地図とタクシーの位置表示の例である。
【図5】同実施例による目標移動体の捜索、保護行動を示す概念図である。
【符号の説明】
【0026】
1 配車基地
2 配車基地の車庫
3 タクシー
4a 目標移動体
4b 目標移動体
5 GPS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自社タクシーと目標移動体との位置をそれぞれ検知し、自社タクシーを目標移動体に向けて配車し、案内するタクシーの配車案内システムであって、配車基地において自社タクシーと契約者から通報を受けた目標移動体の位置情報をGPSの電波受信によりそれぞれ取得する手段と、目標移動体に近くにいる空車の自社タクシーに目標移動体の位置を連絡してそこに向かうよう指示する手段と、タクシーにおいて自車の位置情報をGPSの電波受信により検知すると共に、配車基地から連絡を受けた目標移動体に向けて道案内する手段とを有することを特徴とするタクシーの配車案内システム。
【請求項2】
配車基地の端末は、自社タクシーの位置情報を取得する手段に加え、当該タクシーの実車、支払、空車、迎車の何れかのステータスの情報を取得してディスプレイに表示する機能を有することを特徴とする請求項1に記載のタクシーの配車案内システム。
【請求項3】
配車基地とタクシーは相互に無線により自車の位置情報、ステータス情報、目標移動体の位置情報を配信する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載のタクシーの配車案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−172116(P2007−172116A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366121(P2005−366121)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(505470166)有限会社CSKグリーンタクシー (1)
【Fターム(参考)】