説明

タクトスイッチ

【課題】 押圧加減に応じた多様なスイッチング機能を最適なクリック操作によって実現できるとともに、薄型化及び製造が容易なタクトスイッチを提供することである。
【解決手段】 基板22と、この基板22上に形成される固定接点23と、この固定接点23の上方に配置される可動接点24とを備えたタクトスイッチ21において、前記基板22に凹部27を設け、この凹部27内に前記固定接点23とこの固定接点23の上面に配置した感圧導電センサ28とを収容した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧式のスイッチング機能を備えたタクトスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の一般的なタクトスイッチ11の断面構造を示したものである。このタクトスイッチ11は、中央部に固定接点13が形成された四角形状の基板12と、前記固定接点13上に配置される導電性の板状バネからなる可動接点14と、スペーサ部材15を介して前記可動接点14上を覆うシート材16とを備えて構成されている。このタクトスイッチ11は、小型化及び薄型化が進む携帯電話機をはじめとする各種の電子機器のタッチパネルに多く採用されている。
【0003】
上記構造のタクトスイッチ11は、可動接点14上に配置されているシート材16を押圧することで単純なオン/オフ機能のみを実現するように構成されている。このような単純なオン/オフ機能以外に2段スイッチングなどの多様なスイッチング機能を付加させるためには、別途感圧導電体を組み込むなどして構成する場合がある。
【0004】
前記感圧導電体を組み込んだ構成のスイッチの構成例としては、特許文献1に開示されているように、前記感圧導電体を上方向に凸となるように湾曲させたドーム状の可動接点の裏面側に形成している。このような構成にすることで、可動接点を基板側に押圧する際の押圧加減に応じて感圧導電センサの抵抗値が変化するため、多様なスイッチング機能を得ることができる。
【0005】
また、特許文献2には、基板上に形成された固定接点上に接触させて配置した厚膜状の感圧導電体を備えたスイッチの構造が開示されている。このスイッチは、前記感圧導電体を直接押圧する力加減や押圧する位置に応じてスイッチング抵抗値やスイッチング方向を変化させるように構成されている。
【特許文献1】特開平9−213168号公報
【特許文献2】特開2003−242849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示したスイッチにあっては、感圧導電体が可動接点の裏面側に配置されているため、感圧導電体の厚みによって固定接点との間のストローク範囲が狭くなってしまう。このようなストローク範囲が狭まることで、前記可動接点を押圧する際のクリック感が損なわれ、確実なクリック操作を阻害する要因となる。また、凸状に湾曲した可動接点の裏面側に感圧導電体を形成するのは容易ではなく、厚み等も制限されるため、スイッチの薄型化や製造上の困難性を有したものとなっている。
【0007】
一方、特許文献2に示した構造のスイッチにあっては、湾曲した板状バネからなる可動接点のようなクリック感が得られず、携帯電話のキースイッチなどに採用するには不向きである。また、固定接点に接触する感圧導電体の形状や厚みによってスイッチング抵抗値やスイッチング方向が規定されるため、前記感圧導電体自体の設計を正確にしなければならないといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、押圧加減に応じた多様なスイッチング機能を最適なクリック操作によって実現できるとともに、薄型化及び製造が容易なタクトスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のタクトスイッチは、基板と、この基板上に形成される固定接点と、この固定接点の上方に配置される可動接点とを備えたタクトスイッチにおいて、前記基板に凹部を設け、この凹部内に前記固定接点とこの固定接点の上面に配置した感圧導電センサとを収容したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るタクトスイッチによれば、基板に設けた凹部内に固定接点を形成し、この固定電極上に感圧導電センサを配置した構造となっているため、可動接点の押圧加減によって抵抗値が変化する多様なスイッチング機能を限られたスペース内で実現することが可能となった。また、前記可動接点が感圧導電センサに接触するまでのストロークの幅を確保することができるので、適度なクリック感を得ることができるとともに、安定したスイッチング操作を行うことができる。
【0011】
また、前記基板に凹部を設け、この凹部内に形成される固定電極と一体化することで、感圧導電センサの組み込みや位置決めが容易となり、製造工数及び製造コストの低減化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るタクトスイッチの実施形態を詳細に説明する。図1乃至図3に示すように、本発明のタクトスイッチ21は、四角形状の基板22と、この基板22上に配置される固定接点23、感圧導電センサ28、可動接点24とからなるキースイッチ部とで構成されている。
【0013】
図2に示したように、前記基板22は、ガラスエポキシ等の樹脂材からなり、四隅にスルーホール状の端子電極29、中央部に円形状の凹部27が設けられている。この凹部27内には、前記端子電極29と導通する電極パターン(図示せず)が延びており、略中心部に固定接点23が設けられている。この固定接点23は、印刷によって形成された電極膜である。固定接点23の上には、凹部27内に嵌り込むような円形状の感圧導電センサ28が配置される。この感圧導電センサ28は、通常のオン/オフのみによる単純なスイッチング機能のみならず、オフ状態からオン状態に至るアナログ的な中間値を検出することができる。このアナログ的な中間値は、前記感圧導電センサ28の表面に接触する可動接点24の押圧力や押圧点の移動などによって変化する抵抗値である。
【0014】
本実施形態の感圧導電センサ28は、一定した面抵抗率の面状抵抗体(膜抵抗器)の間に感圧導電ゴムを挟み込んだ構造となっており、押圧を検知できるタッチセンサあるいは押す強さでクリック動作を行うことができるポインティングデバイスとして使用することができる。前記膜抵抗器には相対する2辺にそれぞれ電極が設置されており、また、上下の膜抵抗器では電極対が直交する向きになっている。この感圧導電センサに荷重が加えられると、上側の面状抵抗体から下側の面状抵抗体への電流分布が生じ、荷重の重心位置、および感圧導電ゴムの抵抗変化量から荷重の総和が算出される。
【0015】
前記感圧導電センサ28は、図3に示したように、その形状及び大きさに合わせて形成された凹部27内に下面が位置決めされ、上面が前記凹部27の上端面と面一か、あるいは僅かに沈み込むような位置に収容される。なお、本実施形態では、円形状の感圧導電センサ28に合わせて円形状の凹部27を形成したが、前記感圧導電センサ28が四角形状であれば、凹部27もこれに合わせて四角形状に形成される。
【0016】
前記感圧導電センサ28の上方に配置される可動接点24は、感圧導電センサ28の上方を覆う薄く弾力性を有したステンレス(SUS)や黄銅等の導電性の金属材による板状バネによって形成されている。本実施形態では、略四角形状の板状バネを使用したが、円形状あるいは円形状で対面がDカットされたものなども使用可能で、特に形状自体については問わない。この可動接点24は、通常、前記感圧導電センサ28の表面に接触しないように上方に僅かに膨らんだ状態に成形され、外周部がスペーサ部材25によって前記基板22上に位置決めされる。また、前記可動接点24の上には、感圧導電センサ28を外部からの湿気や微小な埃等の侵入を防止して安定した抵抗値を得るための防湿性のシート材26で覆われる。このシート材26は、前記スペーサ部材25の上端面に接着剤を介して密着させている。なお、前記シート材26は、前記基板22上に発光素子等の光源を備えて構成される場合は、透光性を有して形成される。
【0017】
上記構成のタクトスイッチ21は、図示しないマザーボード上に基板22の四隅に形成されている端子電極29を直接表面実装し、リフロー処理などによってハンダ接合される。
【0018】
次に、上記構造におけるタクトスイッチ21の作用効果について説明する。クリック操作によって生じる押圧力が前記シート材26の上から可動接点24に一定以上かかると、この可動接点24の頂上部の裏面が感圧導電センサ28の表面(面状抵抗体)に接触する。この接触によって、最初に前記基板22に形成されている2極以上の端子電極29間の抵抗値を測定する。この抵抗値は、オフ(オーバーロード)又は無限大状態から前記可動接点24が感圧導電センサ28の表面に接触した時点から数Ω〜数百KΩの抵抗値を検出し、さらに押し込むと、感圧導電ゴムが有する抵抗値の変化によって、アナログ的な抵抗曲線が得られ、複数の抵抗値を検出することができる。その後、クリック操作によって前記可動接点24にかかっている押圧力を解除すると、可動接点24及び感圧導電センサ28が有する弾性力によって元のオフ状態に復帰する。
【0019】
本実施形態では、図3に示したように、前記感圧導電センサ28が基板22に形成されている凹部27の上端面と同じ高さになるように落とし込み配置されていることで、感圧導電センサ28の表面と可動接点24の頂上部との間に一定のストローク距離を保てることができる。このようなストローク距離を有することで、クリック操作を確実にするとともに、適度なクリック感を得ることができる。
【0020】
前記感圧導電センサ28は、感圧導電ゴムを一対の面状抵抗体によって挟み込んだ構造の他に、高抵抗の導電弾性樹脂に低抵抗の導電体粒子を含有するタイプと、導電体自体が蜂の巣状による構造体のタイプがあるが、いずれのタイプのものを使用することができる。いずれのタイプのものもクリック操作による加圧状態で抵抗値を下げるように構成されている。
【0021】
本実施形態のタクトスイッチ21は、通常のオン/オフを備えた単機能のスイッチと略同じ筐体や設置スペースの範囲内で、押圧加減で抵抗値が変化する多機能スイッチを構成することができる。このため、2段シャッターキーや電動ズーミング、ボリューム等の操作機能を備えたカメラなどに応用することができる。
【0022】
また、前記可動接点24を避けた基板22の角部に発光素子を配置した発光部を設けることで、照光機能を備えたタクトスイッチを構成することができる。例えば、この発光部は、発光素子と、この発光素子を覆う透光性の封止体とによって構成される。前記発光素子は、一又は二以上の発光ダイオード(LED)で構成され、前記基板22上の四隅の角部に近接したスペースに実装される。前記発光素子は、白色あるいは赤,青,緑等の単色発光の中から照明用途に合わせて選択され、発光強度に合わせて複数配置することができる。カラー発光に対応した構成とする場合は、赤,青,緑の3つの発光素子を配置させ、それぞれの発光素子に供給する電流値を調整することによって様々な発光効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るタクトスイッチの外観斜視図である。
【図2】上記タクトスイッチの分解斜視図である。
【図3】上記タクトスイッチの断面図である。
【図4】従来のタクトスイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
11 タクトスイッチ
12 基板
13 固定接点
14 可動接点
15 スペーサ部材
16 シート材
21 タクトスイッチ
22 基板
23 固定接点
24 可動接点
25 スペーサ部材
26 シート材
27 凹部
28 感圧導電センサ
29 端子電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成される固定接点と、この固定接点の上方に配置される可動接点とを備えたタクトスイッチにおいて、
前記基板に凹部を設け、この凹部内に前記固定接点とこの固定接点の上面に配置した感圧導電センサとを収容したことを特徴とするタクトスイッチ。
【請求項2】
前記感圧導電センサは、上面が前記凹部の上端より下方に位置するように収容される請求項1記載のタクトスイッチ。
【請求項3】
前記感圧導電センサは、感圧導電ゴムと、この感圧導電ゴムの上下面に接合される一対の面状抵抗体とを備え、上面側の面状抵抗体に接触する前記可動接点の押圧力に応じて抵抗値が変化する請求項1記載のタクトスイッチ。
【請求項4】
前記感圧導電センサは、上側の面状抵抗体の表面が前記凹部の縁面と面一となるように配置される請求項1又は3記載のタクトスイッチ。
【請求項5】
前記可動接点は、外周部を囲うスペーサ部材を介して前記基板上に固定され、防湿性のシート材によって被覆されている請求項1記載のタクトスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−15793(P2010−15793A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174046(P2008−174046)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】