説明

タッチスイッチの検出電極

【課題】 検出感度のバラツキを抑制することができるタッチスイッチの検出電極を提供する。
【解決手段】 タッチスイッチの検出電極は、トッププレートとそのトッププレートの裏面側に間隔をおいて設置されている基板40との間に配置される。また、タッチスイッチの検出電極を一方の電極とするコンデンサの静電容量に関する電気量を入力し、入力した電気量を処理し、その静電容量が変化したタイミングで出力を変える検出回路に接続される。タッチスイッチの検出電極は、基板40に固定されているとともに検出回路に接続されている固定電極42と、固定電極42とトッププレートの間に設置されている少なくとも1対のばね電極30を備えている。本発明のタッチスイッチの検出電極では、ばね電極30aとばね電極30bが反対向きに配置されることで、タッチスイッチの検出感度のバラツキを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接スイッチないしは非接触スイッチ等のタッチスイッチを構成する検出電極に関する。特に、トッププレートの表面に操作者が接触したか否を、トッププレートの裏面で検出する静電容量式のタッチスイッチの検出電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器やガス機器(以下では機器と呼ぶ)の中に、機器の外面に露出しているトッププレートを備えているものがある。トッププレートの裏面に近接スイッチないしは非接触スイッチを配置しておくと、トッププレートの表面に操作者が接触したか否を検出することができる。この方式によると、操作者はトッププレートの表面に触ることで機器を操作することができ、操作性がよい。以下、トッププレートの表面に触ったか否かを検出するものをタッチスイッチという。
【0003】
特許文献1に記載されているタッチスイッチの断面図を図9に模式的に示す。記号Aはトッププレートを示し、記号Bは検出電極を示し、記号Eは基板を示し、記号Fは検出回路を示している。検出電極Bは、固定電極Dを介して基板Eに固定されている。検出回路Fも基板Eに実装されている。
検出電極Bは、大地等の接地点との間で静電容量を持つ。その静電容量の値は、検出電極Bに向かい合う範囲(以下では接触範囲Gという)のトッププレートAの表面に人体の一部が置かれている場合と置かれていない場合とで変化する。静電容量の大きな変化を得るためには、検出電極BをトッププレートAの裏面に密着しておく必要がある。検出電極BとトッププレートAの間に空間があると、静電容量の絶対値が小さくなってしまい、接触範囲Gに人体の一部が置かれている場合と置かれていない場合での静電容量の変化量が小さくなってしまうからである。
【0004】
検出電極Bは、固定電極Dを介して検出回路Fに接続されている。検出回路Fは、静電容量の変化に伴って入力される電気量(例えば電圧値や電流値等)を処理することによって、その静電容量が接触範囲Gの表面に人体の一部が置かれているときの値と接触範囲Gの表面に人体の一部が置かれていないときの値との間で変化したタイミングで出力を変えることができる。検出回路Fの出力から、接触範囲Gの表面に人体の一部が置かれたタイミングや接触範囲Gの表面から人体の一部が離れたタイミング等を検出することができ、操作者が接触範囲Gに触れるタッチ操作をしたか否かを検出することができる。
【0005】
検出電極Bには操作者が触れることがない。検出電極Bと検出回路F等で構成されるスイッチは、非接触スイッチないし近接スイッチである。その近接スイッチ等は、操作者がトッププレートの表面に接触したか否かを検出する。操作者はトッププレートの表面に触れることでスイッチ操作をすることができる。近接スイッチ等とトッププレートでタッチスイッチが構成されている。
【0006】
検出回路Fは、一定の高さを備えている。また発光素子等のように、高さを有する電子部品Hが基板Eに実装されていることがある。そのために、基板EをトッププレートAの裏面に密着させることができない。タッチスイッチの場合、基板EをトッププレートAの裏面から間隔をおいて配置しなければならず、しかも、基板Eに固定されている検出電極BをトッププレートAの裏面に密着させなければならない。
【0007】
特許文献1に記載されているタッチスイッチの場合、厚みを有する導電性発泡体で検出電極Bを形成している。検出電極Bを、厚みを有する導電性発泡体で形成すれば、基板EをトッププレートAの裏面から間隔をおいて配置した場合でも、検出電極BをトッププレートAの裏面に密着させておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−241491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
導電性発泡体は、導電材料(金属やカーボン)と柔軟なゴムや樹脂との混合物から成るが、ゴムや樹脂の添加物の配合や発泡度合が製造条件や製造環境(温度、湿度等)の変化によって抵抗値等の特性がバラツキやすく、タッチスイッチの検出感度を一定に保つことが難しい。また導電性発泡体は、使用環境の変化によって特性が変化しやすく、タッチスイッチの検出感度を一定に保つことが難しい。さらに導電性発泡体は、経時的に特性が変化しやすく、タッチスイッチの検出感度を長期に亘って一定に保つことが難しい。
【0010】
本発明は上記の課題を解決する。すなわち本発明は、タッチスイッチの検出感度のバラツキを抑制することができる検出電極を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、タッチスイッチの検出電極に少なくとも1対のばね電極を用い、さらにその配置関係を工夫することによって、タッチスイッチの検出感度を一定に保つことに成功した。
本発明は、機器の外面に露出しているトッププレートとそのトッププレートの裏面側に配置されている基板との間に配置されているタッチスイッチの検出電極(以後、検出電極と略して呼ぶことがある)に関する。基板は、トッププレートから間隔をおいて配置されている。
さらに詳しくは、検出回路に接続して用いる検出電極に関する。その検出回路は、検出電極を一方の電極とするコンデンサの静電容量に対応する電気量を入力し、入力した電気量を処理することによって、その静電容量が変化したタイミングで出力を変化させる。
本発明の検出電極は、基板に固定されているとともに検出回路に接続されている固定電極と、固定電極とトッププレートの間に設置されている少なくとも1対のばね電極を備えている。各々のばね電極は、第1平板部と第2平板部と曲板部を備えている。第1平板部は、固定電極に密着している。第2平板部は、トッププレートの裏面に密着している。曲板部は、第1平板部と第2平板部の端部同士を接続しているとともに、第1平板部を固定電極に付勢し、第2平板部をトッププレートに付勢している。
本発明の検出電極では、固定電極とトッププレートの間に配置されている1対のばね電極の内の一方のばね電極と他方のばね電極が反対向きに配置されている。
【0012】
本発明では、検出電極にばね電極を用いる。ばね電極は弾性を有しており、トッププレートの裏面に密着するとともに、基板の固定電極に密着する。また、ばね電極は導電性を有しており、トッププレートの裏面側の電極部分と基板の固定電極の間を接続する。検出電極にばね電極を用いた場合でも、人体の一部がトッププレートの表面に置かれたか否かを検出することができる。
【0013】
ばね電極は、導電性発泡体に比べて、金属性であるため抵抗値が小さく、製造条件や製造環境の変化による特性のバラツキが小さい。また、使用環境の変化による特性の変化も小さい。さらに、特性の経年的変化も小さい。
検出電極にばね電極を用いることで、製造条件や製造環境や使用環境や経年的変化に起因する特性のバラツキを抑制することができ、タッチスイッチの検出感度を一定に維持しやすい。
【0014】
その一方において、検出電極にばね電極を用いた場合、ばね電極を構成している第2平板部とトッププレートの接触面積を十分に確保できない場合がある。
図4に示すように、トッププレートを構成するガラス・セラミック板112の裏面に接触する第2平板部136がガラス・セラミック板112に対して傾いている場合、第2平板部136の一部がガラス・セラミック板112と接触し、第2平板部136の全面がガラス・セラミック板112と接触する関係が得られない。そのため、第2平板部136とガラス・セラミック板112が接触する範囲Pの面積が、第2平板部136の全面が接触する場合の接触範囲S2(これが本来の操作範囲である)の面積に比べて狭くなる。第2平板部136が傾斜している場合、接触範囲S2の範囲内に、ガラス・セラミック板112と第2平板部136が接触する範囲Pと、ガラス・セラミック板112から第2平板部136が離れている範囲Qが混在してしまう。
【0015】
この場合、図5(B)に示すように、範囲Q内のガラス・セラミック板112の表面に人体52の一部が接触しても、ガラス・セラミック板112と第2平板部136の間に空間146が形成されているから、第2平板部136と接地点間の静電容量はそれほど増大しない。そのために、範囲Q内のガラス・セラミック板112の表面に人体52の一部が接触しても、操作者がしたタッチ操作を検出できないことがある。図7に、一枚のばね電極130を用いた場合の接触範囲S2を上面視して示す。この場合、接触範囲S2内であっても、範囲Pから遠く離れた位置(例えばポイントq)に接触すると、その接触による静電容量の変化が小さく、タッチ操作を検出できない。
検出電極にばね電極を用いた場合、操作者がタッチした位置によって、検出できたり検出できなかったりする恐れがある。
【0016】
本発明は、上記の問題をも解決する。本発明では、少なくとも1対のばね電極を固定電極とトッププレートの間に設置する。しかも、1方のばね電極と他方のばね電極が反対向きとなるように配置する。
本発明によれば、図6に接触範囲S2を上面視して示すように、範囲P(Pa,Pb)を接触範囲S2内に分散して配置する。そのため、図5(A)に模式的に示すように、操作者がタッチした位置が接触範囲S2内で変動しても、少なくとも一方のばね電極と接地点間の静電容量が大きく変化する関係が得られる。これによって、操作者がタッチした位置によって、検出感度がバラツクことを抑制することができる。
【0017】
各々のばね電極を側面視すると、第1平板部から曲板部を経て第2平板部に至るS字形状が観測されることが好ましい。ばね電極がS字形状をしていると、曲板部を用いて第1平板部を固定電極に確実に密着させることができるとともに、曲板部を用いて第2平板部をトッププレートに確実に密着させることができる。
【0018】
各々のばね電極の第1平板部が一体として形成されていることが好ましい。これによって、ばね電極を固定電極に載置する際に、ばね電極を一体として固定電極に載置することができ、固定電極の組付け効率を向上させることができる。また、各々のばね電極の第1平板部が一体として形成されている場合でも、曲板部及び第2平板部が別々に形成されていることで、上記のタッチスイッチの検出感度のバラツキを抑制する効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれは、タッチスイッチの検出感度のバラツキを抑制することができる。しかも、タッチ位置による誤検出の虞も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】加熱調理器10の上面図を示す。
【図2】加熱調理器10の断面図を示す。
【図3】ばね電極30と固定電極42の斜視図を示す。
【図4】タッチスイッチ120の断面図を示す。本発明の1つの課題を示す図である。
【図5】(A)は、タッチスイッチ20の拡大断面図を示す。(B)は、タッチスイッチ120の拡大断面図を示す。
【図6】タッチスイッチ20の上面図を示す。
【図7】タッチスイッチ120の上面図を示す。
【図8】ばね電極230と固定電極242の斜視図を示す。
【図9】特許文献1のタッチスイッチの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に説明する実施例の主要な特徴を整理する。
(特徴1) 一対のばね電極は、同一形状をしている。
(特徴2) 各々のばね電極を側面視すると、第1平板部から曲板部を経て第2平板部に至る形状が、U字形状である。
(特徴3) 各々のばね電極を側面視すると、第1平板部から曲板部を経て第2平板部に至る形状が、少なくとも1つのU字形状と少なくとも1つのS字形状を組み合わせた形状である。
(特徴4) タッチスイッチは、静電容量式のスイッチである。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1に、加熱調理器10の上面図を模式的に示す。加熱調理器10は、その表面全面にガラス・セラミック板12が設置されており、その中央部に加熱部14が形成されている。
図1に示すように、ガラス・セラミック板12の一部にタッチスイッチ20の接触範囲S2が確保されている。この加熱調理器10では、タッチスイッチ20を用いて、加熱調理器10への電源ON/OFFの切換え制御の他、加熱調理器10の運転/停止の切換え制御や運転出力制御を行っている。また、図1に示すように、加熱調理器10の一部に表示部24が形成されている。表示部24には、ガラス・セラミック板12の下方に発光素子が収容されており、加熱調理器10の制御状態に応じて発光素子から照射される光が変化する。調理者は表示部24を介して加熱調理器10の制御状態を確認することができる。
【0023】
図2に、図1のII−II断面図を示す。加熱調理器10では、表面を覆うガラス・セラミック板12の裏面側に、ガラス・セラミック板12から間隔をおいて基板40が設置されている。基板40は下台50の表面に設置されている。基板40の接触範囲S2に対応する位置に、固定電極42が形成されている。ガラス・セラミック板12の接触範囲S2の裏面と固定電極42の間に一対のばね電極30(30a、30b)が配置されている。また、基板40の表示部24に対応する位置に、発光素子32が配置されている。基板40の接地点44が接地されている。
【0024】
図3に、一対のばね電極30と固定電極42の斜視図を示す。図3では理解のために、一対のばね電極30の間隔を広げて表示し、ガラス・セラミック板12の記載を省略する。図3に示すように、一対のばね電極30は同一形状のばね電極30aとばね電極30bで構成されており、固定電極42上に反対向きに配置されている。以後、添字a、bを付さないで説明を行う内容は、ばね電極30a、ばね電極30bに共通する特徴である。ばね電極30は、導電性を有している。また、ばね電極30は、固定電極42に接する第1平板部34とガラス・セラミック板12に接する第2平板部36と第1平板部34と第2平板部36を接続している曲板部38を有している。ばね電極30を側面視すると、第1平板部34から曲板部38を経て第2平板部36に至るS字形状が観測される。
【0025】
第1平板部34は、その端部で曲板部38と接続されている。そのため、曲板部38に対して第1平板部34の傾きを自由に設定することができる。また、第2平板部36は、その端部で曲板部38と接続されている。そのため、曲板部38に対して第2平板部36の傾きを自由に設定することができる。
また、曲板部38は弾性を有しており、曲板部38に対して第1平板部34の傾きが設定値から変化した場合に、その傾きを設定値に戻す力を第1平板部34に及ぼす。また、曲板部38に対して第2平板部36の傾きが設定値から変化した場合に、その傾きを設定値に戻す力を第1平板部36に及ぼす。曲板部38の弾性によって、第1平板部34が固定電極42に付勢され、第2平板部36がガラス・セラミック板12に付勢される。
【0026】
図2、3を用いてタッチスイッチ20の動作を説明する。
タッチスイッチ20では、ガラス・セラミック板12の接触範囲S2に人体52の一部が置かれると、絶縁体であるガラス・セラミック板12が導電体である人体52とばね電極30で挟まれたコンデンサが形成される。人体52とばね電極30は接地電位を通じて導通しており、人体52と第2平板部36の間に電圧が印加される。そのため、接触範囲S2に人体52が置かれたときと置かれないときによって、ガラス・セラミック板12と人体52と第2平板部36で構成されるコンデンサの静電容量が変化する。この静電容量の変化に伴って、第2平板部36と導通する固定電極42と接地点44との間の静電容量(つまり、ばね電極30と接地点との間の静電容量)も変化する。
基板40には、ばね電極30と接地点との間の静電容量の変化に伴って入力される電気量(例えば電圧値や電流値等)を処理することによって、その静電容量が変化したタイミングで出力を変える検出回路48が備えられている。
タッチスイッチ20では、検出回路48を用いて、ばね電極30と接地点44の間の静電容量が変化した場合に、その出力を変化させる。これによって、接触範囲S2に人体52が置かれたか否かによってその出力を変化させるスイッチが実現される。
【0027】
本実施例のタッチスイッチ20では、ガラス・セラミック板12と固定電極42の間の隙間に、弾性と導電性を有するばね電極30を設置する。図2に示すように、タッチスイッチ20では、基板40の表面側に検出回路48や発光素子32が配置されており、ガラス・セラミック板12の裏面から検出回路48や発光素子32を配置可能な間隔をおいて基板40を設置する。ガラス・セラミック板12と固定電極42の間の隙間に、弾性と導電性を有するばね電極30を設置することで、ばね電極30が検出電極として機能するとともに、検出した電気状態を固定電極へと伝達する配線として機能する。これによって、接触範囲S2に人体52が置かれたか否かによってばね電極30と接地点44との間の静電容量を変化させることができ、タッチスイッチ20をスイッチとして機能させることができる。
【0028】
本実施例のタッチスイッチ20では、ガラス・セラミック板12と固定電極42の間の隙間に、一対のばね電極30を設置するとともに、ばね電極30aとばね電極30bを反対向きに配置することで、接触範囲S2内におけるタッチスイッチ20の検出感度のバラツキを抑制する。
【0029】
図4に、ガラス・セラミック板112と固定電極142の間に、1つのばね電極130が設置されているタッチスイッチ120の断面図を示す。ガラス・セラミック板112と固定電極142の間のばね電極130が1つである他は図2に示すタッチスイッチ20と同じ構造を有している。
ガラス・セラミック板112と固定電極142の間の隙間にばね電極130を設置する場合、ばね電極130の縦幅とガラス・セラミック板112と固定電極142の間の距離の関係によっては、ばね電極130の第2平板部136がガラス・セラミック板112に対して傾く場合がある。また、ばね電極130では、曲板部138に対して第2平板部136の姿勢を自由に設定することができる。そのため、第2平板部136の初期姿勢によっては第2平板部136がガラス・セラミック板112に対して傾く場合がある。第2平板部136がガラス・セラミック板112に対して傾くと、第2平板部136の一部がガラス・セラミック板112と接触し、第2平板部136の全面でガラス・セラミック板112と接触しない。そのため、ガラス・セラミック板112と第2平板部136が接触する範囲Pの面積が、第2平板部136の全面が接触する場合の接触範囲S2の面積に比べて狭くなる。
【0030】
範囲Pの面積が接触範囲S2の面積に比べて狭くなると、ガラス・セラミック板112と第2平板部136が接触する範囲Pと、ガラス・セラミック板112から第2平板部136が離れている範囲Qが接触範囲S2内に混在する。図5(B)に、タッチスイッチ120の範囲Qに人体52の一部が接触した場合の図4の点線部を拡大した図を示す。図5(B)では、範囲Qにおいて、ガラス・セラミック板112と第2平板部136の間に空間146が形成されていることをわかりやすく表示している。空間146の誘電率はガラス・セラミック板112の誘電率にくらべて低い。そのため、範囲Qの静電容量は範囲Pの静電容量に比べて低くなり、範囲Qに人体52の一部が接触した場合でも、第2平板部136と接地点間の静電容量はそれほど増大しない。そのため、範囲Q内のガラス・セラミック板112の表面に人体52の一部が接触しても、操作者がしたタッチ操作を検出できないことがある。
【0031】
図7に、図4における接触範囲S2を上面視して示す。この場合、接触範囲S2内であっても、範囲Pから遠く離れた位置(例えばポイントq)に接触すると、その接触による静電容量の変化が小さく、タッチ操作を検出できない。検出電極にばね電極を用いた場合、操作者がタッチした位置によって、検出できたり検出できなかったりする恐れがある。
【0032】
本実施例のタッチスイッチ20では、ガラス・セラミック板12と固定電極42の間の隙間に、一対のばね電極30を設置するとともに、ばね電極30aとばね電極30bを反対向きに配置する。図6に、本実施例のタッチスイッチ20における接触範囲S2を上面視して示す。本実施例のタッチスイッチ20では、2つのばね電極30a、30bに対応して2つの範囲Pa、Pbが形成されている。また、ばね電極30aとばね電極30bが反対向きに配置されたことに対応して、範囲Pa、Pbが接触範囲S2の対角に配置されている。
【0033】
図5(A)に、タッチスイッチ20の接触範囲S2に人体52の一部が接触した場合の拡大断面図を模式的に示す。タッチスイッチ20では、接触範囲S2内で実際の範囲Pa、Pbが分散配置されているため、人体52の一部が接触範囲S2に接触した場合、人体52の一部が範囲Pa,Pbの少なくとも一方に接触する事象が実現される。そのため、本実施例のタッチスイッチ20では、少なくとも一方のばね電極と接地点間の静電容量が大きく変化する関係が得られる。ばね電極と接地点間の静電容量が大きく変化すると、操作者がしたタッチ操作を正確に検出することができる。
【0034】
本実施例のタッチスイッチ20では、操作者がタッチした位置によって、ばね電極と接地点間の静電容量が、タッチの前後においてわずかしか変化しないという事象の発生を防止する。これによって、操作者がタッチした位置によって、検出感度がバラツクことを抑制することができる。
加熱調理器(特にトッププレートがフラットなコンロ)で使用されるタッチスイッチでは、本来ならば検出感度を高めるために、固定電極に相当する部分が検出電極の形態になるようにトッププレート(ガラス・セラミック板)に近接させて、この固定電極に相当する部分をトッププレートの裏面に両面テープで固定する構成がとられる。しかし、例えば鍋等が正規の載置位置(加熱部)よりずれてタッチスイッチの操作エリアにかかった場合、熱の影響により、両面テープが剥がれてタッチスイッチの機能が果せなくなることがある。また、検出回路の使用温度範囲(85℃)を超えてしまい、機器が動作しなくなることもある。本実施例のようにS字形状のばね電極30をガラス・セラミック板12と固定電極42の間に介在させることで、熱の影響によるタッチスイッチ20の検出感度の悪化を抑制することができ、安定した検出感度を有するタッチスイッチ20を得ることができる。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本実施例のタッチスイッチ20では、ばね電極30として、その断面がS字形状のばね電極を用いて説明をおこなったが、その断面がU字形状であってもよい。さらには、少なくとも1つのU字形状と少なくとも1つのS字形状を組み合わせた形状であってもよい。第1平板部34と第2平板部36を有し、第1平板部34と第2平板部36の端部同士を接続する曲板部38を備えた形状のばね電極であれば、その形状は限定されない。
【0036】
図8に示すように、ばね電極230aの第1平板部とばね電極230bの第1平板部が一体として形成されていてもよい。これによって、固定電極242にばね電極230を載置する際の組付け効率を向上させることができるとともに、ばね電極230aとばね電極230bの間隔を一定に保つことができる。
【0037】
また、ガラス・セラミック板12と固定電極42の間に設置されるばね電極30の数も2つに限定されるものではなく、3つ以上設置されてもよい。その場合、3つ以上設置された内の任意の2つのばね電極を選択した場合に、反対向きに配置されていれば、本発明の効果を得ることができる。
また、一対のばね電極30の形状は必ずしも同一である必要はない。異なる形状を用いた場合でも、その双方がガラス・セラミック板12と固定電極42の間に設置され得る場合には、本発明の効果を得ることができる。
【0038】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10 加熱調理器
12、112 ガラス・セラミック板
14 加熱部
20、120 タッチスイッチ
24 表示部
30、130、230 ばね電極
32 発光素子
34、134 第1平板部
36、136 第2平板部
38、138 曲板部
40 基板
42、142、242 固定電極
44 接地点
48 検出回路
50 下台
52 人体
146 空間
S2 接触範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の外面に露出しているトッププレートとそのトッププレートの裏面側にそのトッププレートから間隔をおいて設置されている基板との間に配置されているタッチスイッチの検出電極であり、
検出電極を一方の電極とするコンデンサの静電容量に対応する電気量を入力し、入力した電気量を処理することによって、前記静電容量が変化したタイミングで出力を変える検出回路に接続して用いるタッチスイッチの検出電極であり、
前記基板に固定されているとともに前記検出回路に接続されている固定電極と、
前記固定電極と前記トッププレートの間に配置されている少なくとも1対のばね電極を備えており、
各々のばね電極は、前記固定電極に密着する第1平板部と、前記トッププレートの裏面に密着する第2平板部と、前記第1平板部と前記第2平板部の端部同士を接続しているとともに前記第1平板部を前記固定電極に付勢して前記第2平板部を前記トッププレートに付勢する曲板部を備えており、
前記固定電極と前記トッププレートの間に配置されている1対のばね電極の内の一方のばね電極と他方のばね電極が反対向きに配置されていることを特徴とするタッチスイッチの検出電極。
【請求項2】
各々のばね電極を側面視すると、第1平板部から曲板部を経て第2平板部に至るS字形状が観測されることを特徴とする請求項1のタッチスイッチの検出電極。
【請求項3】
各々のばね電極の第1平板部が一体として形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチスイッチの検出電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−212101(P2010−212101A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57297(P2009−57297)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】