説明

タッチパネル及びタッチパネルの製造方法

【課題】
信号配線が形成された領域の幅を安価・安定的に狭くすることが可能なタッチパネル及びタッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】
透明基板13を射出成形するので、額縁領域Hに幅HWの狭い溝22を狭い間隔Kで精度よくかつ安定的に形成し、溝22内に信号配線16を形成することができる。つまり、図12に示すように、従来、基板10Bに、幅W、厚さTの信号配線16Aを形成していたのに対して、本実施形態では、信号配線16の幅HW及び信号配線16の間隔Kを狭くすることができる。この結果、複数の信号配線16が形成される額縁領域Hの幅を狭くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル及びタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネルは、透明電極膜や保護膜、光学膜が付加された各種のフィルムを数種類重ね合わせ製造されている。フィルムはロールTOロールの製法で製造される。
【0003】
図31は静電容量式のタッチパネル100を製造する方法の概念図である。この方法では、まず、フィルム101の表面に形成されている透明電極膜102の選択的除去を行うことにより、静電容量式のタッチパネル100において対向して配置される一対の透明電極103a,103bを形成する。次いで、各透明電極103a,103bそれぞれに接続される信号配線104a,104bを印刷する。そして、フィルム101上の一方の透明電極103bとその周囲を含む領域に粘着シート105を貼り付ける。次に、フィルム101から各透明電極103a,103bそれぞれの領域と周囲を含む領域を切り出し、これらを互いに貼り合わせる。これにより、表示部分に縦横にN×M個の容量素子が配列された静電容量式のタッチパネルが得られる。ここで、N,Mは、縦横の電極数(信号配線数)である。
【0004】
図32は抵抗膜式のタッチパネル200を製造する方法の概念図である。この方法では、まず、フィルム101の表面の透明電極膜102の選択的除去を行うことにより、抵抗膜式のタッチパネル200において対向して配置される電極膜109a、109bを形成する。次いで、電極膜109a、109bそれぞれに接続される引き出し電極110a、110bを印刷する。そして、短絡防止のためのドットスペーサー111の電極膜109aへの印刷や、引き出し電極110bの一部を覆う絶縁レジスト112の形成などを行った後に、フィルム101を打ち抜き、フィルム115、116を製造する。その後、スペーサー材117を介して、2枚のフィルム115、116を貼り合わせる。これにより、抵抗膜式のタッチパネル200が完成する。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4139091号公報(図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した技術では、静電容量式のタッチパネル100は2枚のフィルム106、107が必要であり、これらのフィルム106、107を精度良く貼り合わせる必要がある。
【0007】
抵抗膜式のタッチパネル200の場合、信号配線数は、図32に示すように4本〜5本である。これに対して、静電容量式のタッチパネル100の場合には、各々のフィルム106、107には、図31に示すようにそれぞれ、N本、M本の信号配線104a、104bが必要となる。この場合、分解能を向上させるために透明電極103a、103bの分割数を増やすことが望ましく、結果的に信号配線104a、104bの数が増える傾向にある。図33に示すように例えばN=6、M=10の場合、信号配線数として16本が必要になる。この他シールドのためのGNDが必要になる場合もある。
【0008】
以上のように、抵抗膜式に対して静電容量式のタッチパネルは信号配線の数が増え、これが結果的にタッチパネル100の表示領域以外の領域の増大を招く。
【0009】
図34において、一般的にタッチパネルの表示領域を囲む枠とタッチパネル外形の間の領域Hは額縁領域と呼ばれる。静電容量式のタッチパネル100は、上記の理由から、額縁領域のサイズが抵抗膜式のタッチパネル200に対して大きくなる。そこで、額縁寸法を小さくする方法が検討されている。
【0010】
額縁領域を小さくするためには、信号配線104aの幅h1と信号配線104a同士の間隔h2をできるだけ小さくすることが必要となる。信号配線104aの形成は、一般的にはスクリーン印刷などにより行うが、印刷品質上の限界や信号配線印刷部の密着性・配線抵抗等の制約で信号配線の幅を狭くすることが難しい。なお、図34に示す幅h3は、透明電極103aと、信号配線104aとの間隔であり、幅h4は、フィルム106の外形と信号配線104aとの間隔である。
【0011】
信号配線104aが形成された後に、図35に示すように切断刃118によりフィルム106の外形抜きを行うが、外形抜きを行う際のフィルム106の変形による信号配線ダメージを防ぐために配線部と外形抜き部にはある程度のマージンが必要となり、このマージンが額縁寸法を増大させる。
【0012】
加えて、2枚のフィルム106、107の貼り合わせを行う際の図36に示す貼りズレも考慮する必要があり、この貼りズレ量も額縁寸法を増大させる要因となり得る。
【0013】
一方、図32に示すように、従来の抵抗膜式のタッチパネル200は、2枚の平坦なフィルム115、116と外周部のみ所定の厚さ、幅を持つスペーサー材117の計3枚が最小単位であるが、スペーサー材117の幅を狭くすることが難しい。これは、スペーサー材117は粘着シートを打ち抜きなどにより枠形状に打ち抜いて形成されるが、幅が狭くなるにつれ形状維持が難しくなることが主な要因である。
【0014】
また、フィルム115、116の外周部に透明電極109からの引き出し電極110を形成する場合、フィルム115、116の外形に対する位置精度を確保するために各工程での位置出しを行う必要がある。このため、各工程の累積位置バラツキを考慮したマージンが必要となる。
【0015】
また、信号配線の形成は、一般的にはスクリーン印刷などにより行うが、印刷品質上の限界や配線印刷部の密着性・配線抵抗等の制約で信号配線幅を狭くすることが難しい。
【0016】
抵抗膜式のタッチパネル200は、最終的には2枚のフィルム115、116とスペーサー材117を所定の位置精度で重ね合わせ、スペーサー材117の粘着力により合体される。このため、この時の各部材の形状寸法のバラツキと位置決めバラツキを考慮したマージンが必要となる。
【0017】
以上のように、従来の抵抗膜式のタッチパネルでは表示部分に対する外周部の幅を減らすことが難しい。一方で、図37に示すように表示領域120の周りの狭い額縁領域121に対する要求は高い。例えば1mm以下の額縁領域の幅Hを実現するために各工程、各部材の改善検討が進められているが、これを安価にかつ安定的に実現する事は難しい。
【0018】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、信号配線が形成された領域の幅を安価・安定的に狭くすることが可能なタッチパネル及びタッチパネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係るタッチパネルは、第1の透明基板と、第1の配線と、第1の透明電極とを有する。上記第1の透明基板は、射出成形により形成され、第1の面に第1の溝を有する。上記第1の配線は、上記第1の溝に設けられている。上記第1の透明電極は、上記第1の透明基板の上記第1の面に設けられ、上記第1の配線と接続されている。
【0020】
本発明では、第1の透明基板の第1の面に射出成形により第1の溝が形成されているので、幅の狭い第1の溝を精度よくかつ安定的に形成することができ、第1の配線が形成されている領域の幅を安価・安定的に狭くすることができる。
【0021】
上記第1の透明基板は、上記第1の透明電極が設けられた第1の表示領域と、上記第1の表示領域の周りの第1の配線領域とを有し、上記第1の溝は上記第1の配線領域に形成されているようにしてもよい。
【0022】
これにより、タッチパネルの第1の配線領域に形成される第1の配線の幅を狭くし、第1の配線領域の幅を狭くすることができる。第1の配線が複数配置される場合に特に効果的である。
【0023】
上記第1の透明基板は、上記第1の面の反対側の第2の面に第2の溝を更に有し、当該タッチパネルは、上記第2の溝に設けられた上記第2の配線と、上記第1の透明基板の上記第2の面に設けられ、上記第2の配線と接続された第2の透明電極とを更に具備するようにしてもよい。
【0024】
これにより、第1の透明基板の両面に幅の狭い第1の配線と第2の配線とを形成することができる。つまり、第1の透明基板一枚でタッチパネルを製造することができる。
【0025】
上記第1の溝は、上記第1の面から突出する複数の第1の凸部により形成され、かつ上記第2の溝は、上記第2の面から突出する複数の第2の凸部により形成されているようにしてもよい。これにより、隣り合う凸部の間に幅の狭い溝を形成し、この溝に配線を配置することができる。
【0026】
射出成形により形成され、第3の面に第3の溝を有する第2の透明基板とを更に具備し、上記第2の透明基板は、上記第2の透明電極が設けられた第2の表示領域と、上記第2の表示領域の周りの第2の配線領域とを有し、上記第1の透明基板及び上記第2の透明基板のうち少なくとも一方の上記配線領域の溝の形成面が上記表示領域の透明電極の形成面から突出され、上記第1の透明基板と上記第2の透明基板とは、上記第1の透明電極と上記第2の透明電極とが隙間を挟んで対向するように上記第1の配線領域と上記第2の配線領域で結合されているようにしてもよい。
【0027】
これにより、第1の透明電極と上記第2の透明電極とが隙間を挟んで対向するので、抵抗膜式のタッチパネルを構成することができる。例えばユーザが第1の透明基板又は第2の透明基板にタッチしていないときには、第1の透明電極と、第2の透明電極とが接触しないが、ユーザが第1の透明基板又は第2の透明基板をタッチしたときには、第1の透明電極と、第2の透明電極とが接触し、第1の透明電極、第2の透明電極の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を第1の配線又は第2の配線を介して外部で検出することができる。
【0028】
上記第1の溝は、上記第1の面から突出する複数の第1の凸部により形成され、かつ上記第3の溝は、上記第3の面から突出する複数の第3の凸部により形成されているようにしてもよい。これにより、隣り合う凸部の間に幅の狭い溝が配置される。
【0029】
本発明に係るタッチパネルの製造方法は、第1の面に第1の溝を有する第1の透明基板を射出成形することを含む。上記第1の透明基板の第1の面の上記第1の溝とは異なる領域に第1の透明電極が形成される。上記第1の溝に第1の配線を設けることで、上記第1の透明電極と上記第1の配線とが接続される。
【0030】
本発明では、第1の透明基板の第1の面に射出成形により第1の溝が形成するので、幅の狭い第1の溝を精度よくかつ安定的に形成することができ、第1の配線が形成されている領域の幅を安価・安定的に狭くすることができる。
【0031】
上記射出成形時に、上記第1の透明基板の上記第1の透明電極が設けられた第1の表示領域の周りの第1の配線領域に上記第1の溝を形成するようにしてもよい。
【0032】
上記射出成形時に、上記第1の透明基板の上記第1の面とは反対側の第2の面に第2の溝を形成し、上記第2の溝に上記第2の配線を設け、上記第1の透明基板の上記第2の面に、上記第2の配線と接続するように第2の透明電極を設けるようにしてもよい。
【0033】
上記射出成形時に、上記第1の面から突出する複数の第1の凸部を形成することにより上記第1の溝を形成し、かつ上記第2の面から突出する複数の第2の凸部を形成することにより上記第2の溝を形成するようにしてもよい。
【0034】
射出成形により、第2の透明基板の第2の透明電極が設けられる第2の表示領域の周りの第2の配線領域の第3の溝の形成面を、上記第2の透明電極の形成面から突出するように形成し、上記第1の透明電極と上記第2の透明電極とが隙間を挟んで対向するように上記第1の配線領域と上記第2の配線領域で第1の透明基板と第2の透明基板とを結合するようにしてもよい。
【0035】
上記第1の透明基板の射出成形時に、上記第1の面から突出する複数の第1の凸部を形成することにより上記第1の溝を形成し、かつ上記第2の透明基板の射出成形時に、上記第3の面から突出する複数の第2の凸部を形成することにより上記第3の溝を形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明によれば、タッチパネルの信号配線が形成された領域の幅を安価・安定的に狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の概略を示す平面図である。
【図2】図1に示す電子機器の側面図である。
【図3】電子機器のタッチパネルの透明基板の平面図、側面図及び底面図である。
【図4】図3に示すタッチパネルの透明基板のA−A’断面図である。
【図5】図1に示す電子機器の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】タッチパネルの透明基材の射出成形工程(ST501)を説明する図である。
【図7】透明基材に透明電極膜を形成する工程(ST502)を説明する図である。
【図8】透明電極膜を分割する工程(ST503)を説明するための図である。
【図9】透明基材の溝に信号配線を形成する工程(ST504)を説明する図である。
【図10】図9に示す信号配線を形成する工程の詳細を説明する図である。
【図11】加飾工程(ST505)〜FPC接続工程(ST508)の説明図である。
【図12】透明基板の額縁領域の形状を説明するための図である。
【図13】第1の変形例の透明電極膜の形成工程を説明する図である。
【図14】第2の変形例の透明基板の額縁領域の断面図である。
【図15】第3の変形例の信号配線を形成する工程を説明する図である。
【図16】第4の変形例の信号配線を形成する工程を説明する図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の概略を示す平面図である。
【図18】図17に示す電子機器の側面図である。
【図19】電子機器のタッチパネルの第1の透明基板の平面図、縦横断面図である。
【図20】図19に示す第1の透明基板のB−B’断面図である。
【図21】電子機器のタッチパネルの第2の透明基板の平面図、縦横断面図である。
【図22】図17に示す電子機器の製造工程を示すフローチャートである。
【図23】第1の透明基材を製造する工程(ST2201)を説明する図である。
【図24】透明電極膜を形成する工程(ST2202)を説明する図である。
【図25】信号配線を形成する工程(ST2203)を説明する図である。
【図26】第1と第2の透明基板の接合工程(ST2207)の説明図である。
【図27】第1の透明基板の額縁領域の形状を説明するための図である。
【図28】第5の変形例の透明電極膜の形成工程を説明する図である。
【図29】第6の変形例のタッチパネルを構成する基板の位置合わせを示す図である。
【図30】第7の変形例のタッチパネルの構成を示す断面図である。
【図31】従来の静電容量式タッチパネルの製造工程を説明するための図である。
【図32】従来の抵抗膜式タッチパネルの製造工程を説明するための図である。
【図33】図31に示す静電容量式タッチパネルの配線数を説明するための図である。
【図34】図31に示す静電容量式タッチパネルの額縁領域を示す図である。
【図35】図31に示すフィルムの切り出し工程を説明する図である。
【図36】図31に示す2枚のフィルムの貼り合わせのずれを説明する図である。
【図37】要求されるタッチパネルの額縁領域のサイズを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施の形態>
[電子機器の構成]
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器の概略を示す平面図、図2は図1に示す電子機器の側面図である。
電子機器1は、静電容量型のタッチパネル2と、タッチパネル2に接続されたフレキシブル回路基板(FPC:Flexible Printed Circuits)3とを備える。タッチパネル2とフレキシブル回路基板3とは、図2に示すように異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)6を介して接続されている。具体的には、基板10の一面側に設けられた異方性導電フィルム6に、基板10の他面側に形成された端子4がスルーホール5を介して接続されている。
【0039】
タッチパネル2は、図2に示すように基板10と、基板10の一面側に形成された保護コート層11と、基板10の他面側に形成された保護コート層12とを備える。基板10はその両面を保護コート層11、12により保護されている。
【0040】
[基板10の構成]
図3はタッチパネル2の基板10の平面図、側面図及び底面図である。
基板10は、後述するように射出成形により形成された略矩形状の透明基板13を備える。透明基板13は、基板10の基材である。透明基板13の材料としては、例えばポリカーボネート(PC)アクリル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリテチレンテフタレート(PET)、その他の樹脂を用いることが可能である。透明基板13の一面13A側には、矩形状の透明電極15が基板10の長手方向に配列して複数形成されている。透明電極15が配列された領域の周り付近には、配線領域としての矩形枠状の額縁領域Hが形成されている。額縁領域Hには、信号配線16、端子17が複数形成されている。信号配線16は、それぞれ透明電極15に接続されていると共に、端子17に接続されている。
【0041】
透明基板13の他面13B側には、矩形状の透明電極19が基板10の長手方向に直交する方向に配列して複数形成されている。透明電極19が配列された領域の周り付近には、矩形枠状の額縁領域Hが形成されている。額縁領域Hには、信号配線20、端子4が複数形成されている。信号配線20は、それぞれ透明電極19に接続されていると共に、端子4に接続されている。これらの複数の透明電極15と、透明電極19とにより複数の容量素子が形成される。
【0042】
図4は図3に示すタッチパネル2の基板10のA−A’断面図である。
透明基板13の一面13Aには、射出成形により形成された凹形状の溝22が複数形成されている。溝22は、基板10の一面13Aに対して凹んでいる。それぞれの溝22内には信号配線16が形成されている。複数の信号配線16のうち最も内側に形成された信号配線16は、透明電極15に接続されている。なお、他の信号配線16も同様にそれぞれ図4では図示しない別の透明電極15に接続されている。
【0043】
信号配線16の幅は、幅HW、厚さは厚さHTになっている。具体的には、幅HWと厚さHTとはほぼ同じ長さである。より具体的には、信号配線16の幅TWは0.05mmであり、厚さHTは0.05mmである。なお、幅HWと、厚さHTとは同じにする必要はなく、また、信号配線16の幅及び厚さは適宜変更可能であり、より狭い幅や厚い厚さにするようにしてもよい。信号配線16の底面、両側面は、凹形状の溝22の凹んだ面(3面P、Q、R)に密着している。隣合う溝22の間隔は、間隔Kとなっている。
【0044】
[電子機器1の製造方法]
次に、電子機器1の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図5は図1に示す電子機器1の製造工程を示すフローチャートである。なお、図6はタッチパネル2の透明基板13の射出成形工程(ST501)を説明する図、図7は透明基板13に透明電極膜を形成する工程(ST502)を説明する図、図8は透明電極膜を分割する工程(ST503)を説明する図、図9は透明基板13の溝22に信号配線16を形成する工程(ST504)を説明する図、図10は図9に示す信号配線16を形成する工程の詳細を説明する図、図11は加飾工程(ST505)〜FPC接続工程(ST508)の説明図である。
【0045】
まず、図6に示すように、射出成形金型25を用いて、透明基板13を製造する。このとき、透明基板13の一面13Aに、後に信号配線16が形成される溝22、後に端子17が形成される溝23を同時に形成すると共に、他面13Bに、後に信号配線20が形成される図示しない溝、後に端子4が形成される図示しない溝を同時に形成する(ST501)。なお、信号配線20が形成される図示しない溝、端子4が形成される図示しない溝は、それぞれ信号配線20、端子4に対応する位置に形成された断面が凹形状の溝である。
【0046】
ここで、射出成形(法)とは、軟化温度まで加熱したプラスティック樹脂に射出圧を加えて射出成形金型25に充填する製法であり、射出成形金型25の形状を精度よく転写することができる。
【0047】
射出成形後の冷却過程ではプラスティック樹脂の1次収縮が起こる。この1次収縮時の1次収縮量を見越して射出成形金型25の設計を行うことが重要である。例えば1次収縮が0.5%程度の場合、目標とする製品寸法に対して射出成形金型25の寸法は1/0.995≒1.005倍とする。
【0048】
次に、図7に示すように、スパッタ装置26を用いて、マスク27を介して、表示領域とほぼ対応する透明基板13の所定の領域に、透明電極膜15Aを形成する(ST502)。透明電極膜15Aは、例えば酸化インジウム及び酸化スズの化合物(ITO:Indium Tin Oxide)又は酸化インジウム及び酸化亜鉛の化合物により形成する。なお、この透明電極膜15Aの形成方法は、特に限定されず、例えば蒸着法などの真空プロセスを用いるたり、或いは塗布したりしてもよい。また、上述したITOの代わりに、ポニアニリン、バイトロン(PEDOT)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン等の導電性ポリマーを塗布してもよい。
【0049】
次いで、図8に示すように、レーザ光を透明電極膜15Aに照射することにより、透明電極膜15Aの所定の領域を除去する。これにより、透明電極膜15Aを分離し、複数の透明電極15を形成する(ST503)。
【0050】
次に、図9に示すように、スタンパ30を用いて、信号配線16、端子17となるインクを透明基板13の溝22、溝23内に転写することで、溝22、溝23内にインクを充填し、その後、所定のインク硬化処理を行う。具体的には、インクの硬化処理とは、インクの加熱や紫外線照射等のインクの硬化条件に合わせた硬化処理である。これにより、溝22内に信号配線16が形成され、溝23内に端子17が形成される(ST504)。このとき、信号配線16は、それぞれ透明電極15と端子17とに接続される。
【0051】
より具体的には、図10に示すように、凸型のスタンパ30にインク33を転写した後に、溝22にインク33を転写する。この転写されたインク33は溝22内でレベリングされ溝22内に充填される。充填されたインク33は、溝22の凹んだ面に密着するように広がる。なお、透明基板13の電極貫通が必要な場合には、予め形成されている穴(スルーホール5)に電極ペーストを充填しこれを硬化させる。
【0052】
次いで、図11に示すように、基板10の額縁領域Hに対応する領域を例えば黒色のインク31で加飾する(ST505)。なお、加飾工程(ST505)は、必要に応じて行われる。この加飾工程(ST505)では、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、フィルム転写等の一般的な印刷手法が選択できる。
【0053】
続いて、更に透明基板13の一面13Aに保護コート層12を形成する(ST506)。これにより、透明基板13の一面13A側が保護コート層12で覆われる。保護コート層11、12は、光学的な特性(反射低減やギラツキ低減)や防傷、防汚などのための層であり、保護コート層11、12は、単層でも多層でもよく要求特性に合わせて設けられる。
【0054】
次いで、透明基板13の一面13A側と同様にして、透明基板13の他面13B側に、透明電極19、信号配線20、端子4及び保護コート層11を形成する(ST507)。なお、保護コート層11、12の形成工程(ST506、ST507)は、必要に応じて行われる。
【0055】
そして、タッチパネル2と、フレキシブル回路基板3とを、異方性導電フィルム6等を介して接続する。これにより、電子機器1を製造する(ST508)。
【0056】
[作用等]
このように本実施形態によれば、透明基板13を射出成形するので、額縁領域Hに幅HWの狭い溝22を狭い間隔Kで精度よくかつ安定的に形成し、溝22内に信号配線16を形成することができる。つまり、図12に示すように、従来、基板10Bに、幅W、厚さTの信号配線16Aを形成していたのに対して、本実施形態では、信号配線16の幅HW及び信号配線16の間隔Kを狭くすることができる。この結果、複数の信号配線16が形成される額縁領域Hの幅を狭くすることができる。
【0057】
例えば信号配線16の幅HW=0.05mm、信号配線16の間隔K=0.05mmとして、額縁領域Hに5本の信号配線16(両側の額縁で計10本)を形成した場合、信号配線16に必要な額縁領域Hの幅は0.05×5+0.05×4=0.45mmで済む。なお、原理的にはより細い信号配線を形成することも可能である。
【0058】
また、図12に示すように、従来のように基板10Bの一面に信号配線16Aを印刷法により形成する場合、信号配線16Aの幅Wを狭くすると信号配線16Aの厚さTも薄くなり、信号配線16Aの抵抗が上昇する問題があった。これに対して、本実施形態では、予め形成された溝22内にインクを充填する方法を採るので、信号配線16の幅HWに対する厚さHT(高さ)を増やすことが可能で、細くかつ低抵抗の信号配線16を実現することができる。従来の印刷による場合、T/W<<1となる。これに対して、本実施形態では、図12に示すように厚さHT≒幅HWとすることも可能である。
【0059】
従来の印刷法により信号配線16Aを形成する場合、信号配線16Aの幅Wを狭くすると基板10Bと接触面積が減り密着力が低下し、信号配線16Aの密着強度が低下することが懸念されていた。本実施形態では、信号配線16は、溝22の凹んだ面(3面P、Q、R)に密着して設けられている。これにより、信号配線16の透明基板13への密着力を向上させることができる。
【0060】
また、従来では、図31に示すように、2枚のフィルム106、107を貼り合わせることで、タッチパネル100を製造していた。しかし、本実施形態では、1枚の透明基板13の一面13Aに図3に示す透明電極15と信号配線16と端子17とを形成し、他面13Bに透明電極19と信号配線20と端子とを形成しており、貼り合わせの必要がない。このため、製造工程数を減少させることができると共に、タッチパネル2の薄型化を図ることができる。
【0061】
図13は第1の変形例の透明電極膜15Aの形成工程を説明する図である。なお、本変形例以降では、上記第1の実施形態と同様の構成部材には同一の符号を付しその説明を省略し異なる箇所を中心的に説明する。
【0062】
上記第1の実施の形態では、図7に示すように、透明基板13の一面13Aに透明電極膜15Aを形成する例を示した。これに対して、本変形例では、第1の実施の形態に比べて、透明基板13の一面13Aに透明電極膜15Aを形成する代わりに、透明基板13の一面13Aに下地膜35を形成し、下地膜35の上に金属マスク36を介して透明電極膜15Aを形成する点が異なる。これにより、下地膜35には、金属マスク36で覆われた位置に、透明電極膜15Aが形成されない非成膜部37が形成される。
【0063】
このように本変形例によれば、透明基板13の一面13Aに下地膜35を形成しておき、下地膜35の上に透明電極膜15Aを形成するので、透明電極膜15Aの密着力を高めることができる。
【0064】
図14は第2の変形例の透明基板の額縁領域の断面図である。
上記第1の実施の形態では、射出成形により、図4に示すように、基板10の額縁領域Hに一面13Aから凹む凹形状の溝22を複数形成し、溝22内に信号配線16が充填されている例を示した。これに対して、本変形例では、射出成形により、複数の凸状部41が透明基板13’の一面13A’に直交する方向に突出して配列して形成されている。隣接する凸状部41の間には凹形状の溝22’が形成される。これらの溝22’内に信号配線16Aが充填して設けられている。信号配線16A間に凸状部41が位置する。複数の信号配線16Aのうち最も内側の信号配線16Aは、透明電極15に接続されている。なお、他の信号配線16Aも同様にそれぞれ図14では図示しない別の透明電極15に接続されている。
【0065】
このように本変形例によれば、射出成形により、透明基板13’の一面13A’の額縁領域Hに対応する領域に、複数の凸状部41が形成されているので、溝22’の幅HWと、凸状部41の幅K’とを狭くすることができる。従って、額縁領域H(の幅)を狭くすることができる。また、凸状部41の高さHTを高くすることができるので、凸状部41で形成される溝22’の3つの面に信号配線16Aを密着させ、信号配線16Aの密着力を向上させることができる。また、信号配線16Aの断面積を大きくし、信号配線16Aの抵抗を低減することができる。
【0066】
図15は第3の変形例の信号配線16を形成する工程を説明する図である。
上記第1の実施の形態では、スタンパ30により信号配線16を形成する例を示した。これに対して、本変形例では、スタンパ30の代わりに、インクジェット50により溝22内にインク滴51を導入し、その後、レベリングにより溝22内にインクを充填する。これにより、上記第1の実施形態と同様に、溝22内に信号配線16等を形成することができる。
【0067】
図16は第4の変形例の信号配線16を形成する工程を説明する図である。
上記第1の実施形態では、スタンパ30により信号配線16を形成する例を示した。これに対して、本変形例では、スタンパ30の代わりに、ディスペンサ55によりインク52を端子17が形成される溝23内に滴下し、毛細管力により溝22内にインク52を充填する。この結果、溝23内に端子17を形成し、溝22内に信号配線16を形成することができる。
【0068】
なお、図9、図15及び図16に示すインクの供給方法については、使用するインクの粘度に応じて、最適な方法を選択することが好ましい。具体的には、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等が適応可能である。インクの転写・充填が終了した後は、加熱や紫外線照射などのインクの硬化条件に合わせた硬化処理を行う。また、透明基板13の電極貫通が必要な場合には、予め形成されている穴(スルーホール)に電極ペーストを充填しこれを硬化させる。
【0069】
<第2の実施の形態>
図17は本発明の第2の実施の形態に係る電子機器の概略を示す平面図、図18は図17に示す電子機器の側面図である。
[電子機器の構成]
本実施形態の電子機器60は、抵抗膜型のタッチパネル61と、タッチパネル61に接続されたフレキシブル回路基板3とを備える。タッチパネル61の後述する端子70は、スルーホールを介してACF等の異方性導電フィルム6Aに接続され、異方性導電フィルム6Aがフレキシブル回路基板3の図示しない配線等に接続されている。
【0070】
タッチパネル61は、第1の基板62、第2の基板63、及びこれらの基板62,63同士を接続する接着剤64を備える。
【0071】
図19はタッチパネル61の第1の基板62の平面図、縦横断面図である。
第1の基板62は、射出成形により形成された矩形状の第1の透明基板58を備える。第1の透明基板58は、第1の基板62の基材である。第1の透明基板58の中央の領域には、例えばITO等からなる略矩形状の透明電極膜65が形成されている。第1の透明基板58の中央の領域は、ほぼ表示領域に対応する。第1の透明基板58の一面58Aのうち透明電極膜65の周りの配線領域としての額縁領域Hには、透明電極膜65に接続された一対の信号配線66が形成されている。信号配線66は、透明電極膜65の長手方向の一対の側縁に接続されていると共に、第1の透明基板58の一面58A側で引き回されて端子67に接続されている。
【0072】
第1の透明基板58の厚さTH1は、額縁領域Hの厚さTH2より薄い。つまり、図19に示すように第1の透明基板58は、矩形枠状の額縁領域Hに対応する位置に矩形枠状の厚肉部58Cを備える。すなわち、第1の透明基板58の額縁領域Hの溝22Bの形成面F1が表示領域の透明電極膜65の形成面F2から突出している。
【0073】
図20は図19に示す第1の基板62のB−B’断面図である。
第1の透明基板58の一面58Aの額縁領域Hに対応する位置には、凹形状の溝22Bが形成されている。溝22B内には、信号配線66が充填されていると共に、透明電極膜65の端縁部が延在して配置されている。溝22B内で、信号配線66と、透明電極膜65とが接続されている。信号配線66の幅は幅HW、厚さは厚さHTになっている。具体的には、幅HWは0.05mm、厚さHTは0.05mmになっている。幅HWと、厚さHTとがほぼ同じ長さになっている。なお、幅HWと、厚さHTとは同じにする必要はない。なお、本実施形態でも、第1の透明基板58の一面58Aに、一面58Aから突出する図示しない複数の凸状部を射出成形により成形し、これにより、これらの凸状部の間に凹形状部を形成し、この凹形状部に信号配線66を配置するようにしてもよい。
【0074】
図21はタッチパネル61の第2の基板63の平面図、縦横断面図である。
第2の基板63は、射出成形により形成された矩形状の第2の透明基板59を備える。第2の透明基板59の中央の領域に例えばITO等からなる略矩形状の透明電極膜68が形成されている。透明電極膜68が形成されている領域は、ほぼ表示領域に対応している。第2の透明基板59の一面59Aのうち透明電極膜68の周りの額縁領域Hには、信号配線69が形成されている。信号配線69は、透明電極膜68の長手方向に直交する方向に平行な透明電極膜68の一対の端縁に接続されている。信号配線69は、第2の透明基板59の一面59A側で引き回されて端子70に接続されている。信号配線69は、射出成形により第2の透明基板59の一面59Aに形成された溝内に配置されている。
【0075】
第2の透明基板59の厚さTH3は、額縁領域Hの厚さTH4より薄い。つまり、図21に示すように第2の透明基板59は、矩形枠状の額縁領域Hに対応する位置に矩形枠状の厚肉部59Cを備える。すなわち、第2の透明基板59の額縁領域Hの形成面F3が表示領域の透明電極膜68の形成面F4から突出している。透明電極膜65と透明電極膜68とが隙間を挟んで対向するように第1の透明基板58と、第2の透明基板59とが接合されている。
【0076】
[電子機器60の製造方法]
次に、第2の実施の形態の電子機器60の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0077】
図22は図17に示す電子機器60の製造工程を示すフローチャートである。なお、図23は第1の透明基板58を製造する工程(ST2201)を説明する図、図24は透明電極膜65を形成する工程(ST2202)を説明する図、図25は信号配線66を形成する工程(ST2203)を説明する図、図26は第1と第2の基板62、63の接合工程(ST2207)の説明図である。
【0078】
まず、図23に示すように、射出成形金型25Aを用いて、第1の透明基板58を形成する。このとき、第1の基板62の周縁部に厚肉部58Cを形成すると共に、第1の透明基板58の一面58Aに後に信号配線66が形成される溝71と、後に端子67が形成される溝72とを形成する(ST2201)。
【0079】
次に、図24に示すように、スパッタ装置26を用いて、マスク27を介して、表示領域とほぼ対応する所定の領域に、選択的に透明電極膜65を形成する(ST2202)。透明電極膜65は、例えばITO(Indium Tin Oxide)である。このとき、透明電極膜65が溝71内に入り込むようにする。
【0080】
次いで、図25に示すように、スタンパ30Aを用いて、信号配線66、端子67となるインクを第1の透明基板58の溝71、溝72内に転写することで、溝71、溝72内にインクを充填し、その後、所定のインク硬化処理を行う。これにより、溝71内に信号配線66が形成され、溝72内に端子67が形成される(ST2203)。このとき、信号配線66は、それぞれ透明電極膜65と端子67とに接続される。
【0081】
次いで、第1の透明基板58と同様に、射出成形により、図21に示す信号配線69が充填される溝や端子70が充填される溝や厚肉部59Cが形成された第2の透明基板59を形成する(ST2204)。
【0082】
続いて、第1の基板62と同様にして、第2の透明基板59に透明電極膜68を形成する(ST2205)。
【0083】
次いで、第1の基板62と同様にして、第2の透明基板59の一面59A側に、信号配線69、端子70を形成する(ST2206)。このとき、信号配線69を端子70に接続すると共に透明電極膜68に接続する。
【0084】
続いて、図26に示すように、第1の基板62と、第2の基板63とを、接着剤64を介して所定の圧着条件で圧着し、接着剤64の所定の硬化処理を行うことで、第1の基板62と第2の基板63とを一体化する(ST2207)。これにより、タッチパネル61が製造される。
【0085】
そして、タッチパネル61と、フレキシブル回路基板3とを、例えば異方性導電フィルム6を介して接続する。これにより、電子機器60を製造する(ST2208)。
【0086】
[作用等]
このように本実施形態によれば、第1の透明基板58を射出成形するので、額縁領域Hに幅HWの狭い溝22Bを精度良くかつ安定的に形成することができる。このため、溝22B内に幅HWの狭い信号配線66を形成することができる。つまり、図27に示すように信号配線66の幅HWを従来に比べて狭くすることができる。この結果、信号配線66が形成される額縁領域(の幅)Hの幅を狭くすることができる。
【0087】
また、第1の基板62の内面と、第2の基板63の内面との間の距離は、第1の基板62の表示領域の厚さTH3と厚肉部58Cの厚さTH4との差と、第2の基板63の表示領域の厚さTH3と厚肉部59Cの厚さTH4との差との和により決まる。これらの差の和=(TH4−TH3)+(TH4−TH3)の精度は、射出成形の成形精度に依存する。本実施形態では、射出成形により第1の透明基板58及び第2の透明基板59の厚さTH3、TH4の精度を向上させることができる。従って、第1の基板62の透明電極膜65の形成面F2と第2の基板63の透明電極膜68の形成面F4との間の距離の精度を安定させることができる。なお、第1の基板62及び第2の基板63の厚さTH3、TH4は、適宜変更可能である。
【0088】
また、図27に示すように、従来のように基板10Bの一面に信号配線16Aを印刷法により形成する場合、信号配線16Aの幅Wを狭くすると信号配線16Aの厚さTも薄くなり、信号配線16Aの抵抗が上昇する問題があった。これに対して、本実施形態では、予め形成された溝22B内にインクを充填する方法を採るので、信号配線66の幅HWに対する厚さHT(高さ)を増やすことが可能である。この結果、細くかつ低抵抗の信号配線66を実現することができる。従来の印刷による場合、T/W<<1となる。これに対して、本実施形態では、図27に示すように厚さHT≒幅HWとすることも可能である。
【0089】
従来の印刷法により信号配線16Aを形成する場合、信号配線16Aの幅Wを狭くすると基板10Bと接触面積が減り密着力が低下し、信号配線16Aの密着強度が低下することが懸念されていた。本実施形態では、信号配線66は、溝22Bの凹んだ面(3面P、Q、R)に密着して設けられている。これにより、信号配線66の第1の透明基板58への密着力を向上させることができる。なお、第2の透明基板59についても、第1の透明基板58と同様の効果がある。
【0090】
また、従来、図32に示すように2枚のフィルム115、116を一体化するために、スペーサー材117が必要であった。スペーサー材117は、薄いフィルムであるため、幅を狭くするとその形状の維持が容易でない。このため、スペーサー材117の幅を狭くすることは困難であった。しかし、第2の実施形態では、第1の基板62、第2の基板63がそれぞれ厚肉部58C、59Cを備えるので、スペーサー材117が必要ない。第1の基板62と第2の基板63とを接着剤64を介して一体化すればよい。このため、第1の基板62、第2の基板63の外周縁部に位置する厚肉部58C、59Cの幅を狭くし、結果的に額縁領域Hの幅を狭くすることが可能となる。
【0091】
また、従来、図32に示すように、フィルム115、116及びスペーサー材117の3個の部品の貼り合わせが必要であったが、本実施形態では第1の基板62と第2の基板63との2個の部品を接着剤64を介して接続すればよい。つまり、タッチパネル61を製造するために必要となる部品数を減少させることができる。この結果、各部品の位置精度バラツキの影響を減らすことが可能となり、更に額縁領域Hを狭めることができると共に、貼り合せ工程も簡略化できる。
【0092】
図28は第5の変形例の透明電極膜の形成工程を説明する図である。
上記第1の実施の形態では、図7に示すように、透明基板13の一面13Aに透明電極膜15Aを形成する例を示した。これに対して、本変形例では、第1の実施の形態に比べて、透明基板13の一面13Aに透明電極膜15Aを形成する代わりに、透明基板58Dの一面58Eに下地膜35Aを形成し、マスク36Aを介して、下地膜35Aの上に透明電極膜65を形成する点が異なる。下地膜35Aは、透明基板58Dの一面58Eの全域に亘って形成されている。下地膜35Aの上には、透明基板58Dの薄肉部から厚肉部の一部に形成されている。下地膜35Aには、マスク36Aで覆われた位置に、透明電極膜65が形成されない非成膜部37Aが形成される。
【0093】
このように本変形例によれば、透明基板58Dの一面58Eに下地膜35Aを形成しておき、下地膜35Aの上に透明電極膜65を形成する。このため、透明電極膜65の密着力を高めることができる。
【0094】
本発明は、上述した実施形態や変形例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々更新を加え得ることは勿論である。
【0095】
例えば上記第1の実施の形態では、図8に示すように、レーザ光を透明電極膜15Aに照射することにより、透明電極膜15Aの所定の領域を除去し、透明電極膜15Aを分離し、複数の透明電極15を形成する例を示した。しかし、これに限定されず、例えばエッチング等により透明電極膜15Aを分離するようにしてもよい。
【0096】
図29は第6の変形例のタッチパネルを構成する基板の位置合わせ工程を示す図である。
上記第2の実施の形態では、図26に示すように、第1の基板62の厚肉部58Cと、第2の基板63の厚肉部59Cとを位置合わせし接着剤64により接続する例を示した。しかし、本変形例では、第1の基板80と第2の基板81との位置合わせ時に、第1の基板80及び第2の基板81を所定の位置に案内するための手段を備える点が異なる。
【0097】
具体的には、図29に示すように、第1の基板80は、その外周縁部に厚肉部80Cを備え、第2の基板81は、その外周縁部に厚肉部81Cを備える。第1の基板80の厚肉部80Cは、位置合わせ時に厚肉部81Cに対面する面に位置合わせ用凸状部83を備える。位置合わせ用凸状部83は、厚肉部81Cに向けて突出して形成されている。第2の基板81の厚肉部81Cには、位置合わせ時に、位置合わせ用凸状部83が嵌る位置合わせ用凹状部84が形成されている。
【0098】
第1の基板80の厚肉部80Cの位置合わせ用凸状部83は、射出成形により、厚肉部80C等と同時に精度よく形成される。また、第2の基板81の厚肉部81Cの位置合わせ用凹状部84は、射出成形により、厚肉部81C等と同時に精度よく形成される。
【0099】
このように本変形例によれば、第1の基板80と、第2の基板81とを位置合わせするときに、第1の基板80の位置合わせ用凸状部83を、第2の基板81の位置合わせ用凹状部84内に嵌めて位置合わせし、接合することができる。
【0100】
また、射出成形により、厚肉部80C等と同時に位置合わせ用凸状部83を形成し、同様に射出成形により、厚肉部81C等と同時に位置合わせ用凹状部84を形成することができる。従って、第1の基板80の射出成形工程時と同時に位置合わせ用凸状部83を形成したり、第2の基板81の射出成形工程と同時に位置合わせ用凹状部84を形成したりすることができる。
【0101】
なお、本変形例では、第1の基板80に位置合わせ用凸状部83が1個形成され、第2の基板81に位置合わせ用凹状部84が1個形成されている例を示した。しかし、位置合わせ時に互いに嵌り合う形状であれば、位置合わせ用凸状部83や位置合わせ用凹状部84の形状や形成位置や個数はこれに限定されない。また、第1の基板80と、第2の基板81とを位置合わせした後に、第1の基板80と、第2の基板81とを例えば超音波溶着や熱圧着により接合することも可能である。
【0102】
図30は第7の変形例のタッチパネルの構成を示す断面図である。
上記第2の実施の形態では、図26に示すように、外周縁部に矩形枠状の厚肉部58Cを備える第1の基板62と、外周縁部に矩形枠状の厚肉部59Cを備える第2の基板63とを接着剤64を介して接合する例を示した。しかし、本変形例では、第1の基板62及び第2の基板63のうち一方の透明基板に、外周縁部に厚肉部が形成されていない平板状の透明基板又は透明フィルムが用いられる点が異なる。本変形例では、例えば図30に示すように、平板状の基板(又はフィルム)62’と、第2に基板63とが図示しない接着剤により接合される。つまり、基板(又はフィルム)62’の外周縁部と、第2の基板63の厚肉部59Cとが図示しない接着剤等により接合される。
【0103】
このように本変形例では、上記第2の実施形態と同様に、射出成形により形成された第2の基板63の厚肉部59Cの厚さを精度よく製造することができる。従って、第2の実施の形態とは異なる厚さのタッチパネルを精度よく製造することができる。
【符号の説明】
【0104】
H 額縁領域
1、60 電子機器
2、61 タッチパネル
10 基板
13、58D 透明基板
13A、58A、59A 一面
13B 他面
15、19 透明電極
16、20、66、69 信号配線
22、22’、22B、23、71 溝
25、25A 射出成形金型
35A…下地膜
41 凸状部
58 第1の透明基板
58C、59C、80C、81C 厚肉部
59 第2の透明基材
62、80 第1の基板
63、81 第2の基板
83 位置合わせ用凸状部
84 位置合わせ用凹状部
F1〜F4 形成面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により形成され、第1の面に第1の溝を有する第1の透明基板と、
前記第1の溝に設けられた第1の配線と、
前記第1の透明基板の前記第1の面に設けられ、前記第1の配線と接続された第1の透明電極と
を具備するタッチパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパネルであって、
前記第1の透明基板は、前記第1の透明電極が設けられた第1の表示領域と、前記第1の表示領域の周りの第1の配線領域とを有し、
前記第1の溝は前記第1の配線領域に形成されている
タッチパネル。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチパネルであって、
前記第1の透明基板は、前記第1の面の反対側の第2の面に第2の溝を更に有し、
当該タッチパネルは、
前記第2の溝に設けられた前記第2の配線と、
前記第1の透明基板の前記第2の面に設けられ、前記第2の配線と接続された第2の透明電極と
を更に具備するタッチパネル。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチパネルであって、
前記第1の溝は、前記第1の面から突出する複数の第1の凸部により形成され、かつ前記第2の溝は、前記第2の面から突出する複数の第2の凸部により形成されている
タッチパネル。
【請求項5】
請求項2に記載のタッチパネルであって、
射出成形により形成され、第3の面に第3の溝を有する第2の透明基板とを更に具備し、
前記第2の透明基板は、前記第2の透明電極が設けられた第2の表示領域と、前記第2の表示領域の周りの第2の配線領域とを有し、
前記第1の透明基板及び前記第2の透明基板のうち少なくとも一方の前記配線領域の溝の形成面が前記表示領域の透明電極の形成面から突出され、
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とは、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが隙間を挟んで対向するように前記第1の配線領域と前記第2の配線領域で結合されている
タッチパネル。
【請求項6】
請求項5に記載のタッチパネルであって、
前記第1の溝は、前記第1の面から突出する複数の第1の凸部により形成され、かつ前記第3の溝は、前記第3の面から突出する複数の第3の凸部により形成されている
タッチパネル。
【請求項7】
第1の面に第1の溝を有する第1の透明基板を射出成形し、
前記第1の透明基板の第1の面の前記第1の溝とは異なる領域に第1の透明電極を形成し、
前記第1の溝に第1の配線を設けることで、前記第1の透明電極と前記第1の配線とを接続する
タッチパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のタッチパネルの製造方法であって、
前記射出成形時に、前記第1の透明基板の前記第1の透明電極が設けられた第1の表示領域の周りの第1の配線領域に前記第1の溝を形成する
タッチパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のタッチパネルの製造方法であって、
前記射出成形時に、前記第1の透明基板の前記第1の面とは反対側の第2の面に第2の溝を形成し、
前記第2の溝に前記第2の配線を設け、
前記第1の透明基板の前記第2の面に、前記第2の配線と接続するように第2の透明電極を設ける
タッチパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のタッチパネルの製造方法であって、
前記射出成形時に、前記第1の面から突出する複数の第1の凸部を形成することにより前記第1の溝を形成し、かつ前記第2の面から突出する複数の第2の凸部を形成することにより前記第2の溝を形成する
タッチパネルの製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載のタッチパネルの製造方法であって、
射出成形により、第2の透明基板の第2の透明電極が設けられる第2の表示領域の周りの第2の配線領域の第3の溝の形成面を、前記第2の透明電極の形成面から突出するように形成し、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが隙間を挟んで対向するように前記第1の配線領域と前記第2の配線領域で前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とを結合する
タッチパネルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のタッチパネルの製造方法であって、
前記第1の透明基板の射出成形時に、前記第1の面から突出する複数の第1の凸部を形成することにより前記第1の溝を形成し、かつ前記第2の透明基板の射出成形時に、前記第3の面から突出する複数の第2の凸部を形成することにより前記第3の溝を形成する
タッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−182137(P2010−182137A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25762(P2009−25762)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】