説明

タッチパネル用光導波路およびそれを用いたタッチパネル

【課題】光の出射側における光の集光能力が高く、位置検知性能に優れたタッチパネルを実現することのできるタッチパネル用光導波路およびそれを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】コア3と、このコア3を被覆した状態で形成されたオーバークラッド層4とを備えたタッチパネル用光導波路であって、光を出射するコア3の端部がレンズ部30に形成され、そのレンズ部30の平面視形状が、端面に向かうにつれて徐々に拡幅するテーパ部31と、その拡幅されたテーパ部31の先端側を外側に向かって楕円弧状に膨出させた楕円弧部32とからなり、上記楕円弧部32の長軸方向が上記テーパ部31の長手方向と一致する配置になっており、上記レンズ部30の長手方向の長さ(L)と、テーパ部31のテーパ角度(α)と、楕円弧部32を構成する楕円の長軸半径(a)とが、特定の条件を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用光導波路およびそれを用いたタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、指や専用のペン等で液晶ディスプレイ等の画面に直接触れることにより、機器を操作等する入力装置であり、その構成は、操作内容等を表示するディスプレイと、このディスプレイの画面での上記指等の触れ位置(座標)を検知する検知手段とを備えたものとなっている。そして、その検知手段で検知した触れ位置の情報が信号として送られ、その触れ位置に表示された操作等が行われるようになっている。このようなタッチパネルを用いた機器としては、金融機関のATM,駅の券売機,携帯ゲーム機等があげられる。
【0003】
上記タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段として、光導波路を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、そのタッチパネルは、光導波路を四角形のディスプレイの画面周縁部に設置し、そのディスプレイの画面の一側部に設置された光導波路から多数の光をディスプレイの画面と平行にかつ他側部に向かって出射し、それらの光を、他側部に設置された光導波路に入射させるようにしたものとなっている。この光導波路により、ディスプレイの画面上において、光を格子状に走らせた状態にしている。そして、この状態で指でディスプレイの画面に触れると、その指が光の一部を遮断するため、その遮断された部分を、入射側の光導波路で感知することにより、上記指が触れた部分の位置を検知することができる。
【0004】
ところで、光導波路の端面から直接空気中に出射した光は、そのままでは放射状に発散するため、この光の発散を抑制してできるだけ平行光に近づけて出射できるよう、光導波路のコアの端部をレンズ部にしたものが各種提案されている。本出願人も、そのコア端部を特殊な平面視形状のレンズ部にしたものを先に出願している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0201579号明細書
【特許文献2】特開2009−103902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の技術は、光導波路のコア端部におけるレンズ部を、テーパ部と円弧部とからなる特殊な平面視形状にしたものである。この構造によれば、上記テーパ部においてレンズ開始点からの光の広がりを抑え、円弧部において光を屈折させて平行光に近づけることができる。
【0007】
しかしながら、タッチパネルにおいて、ディスプレイの画面に触れた指の位置を、さらに高精度で検知させることが要求されており、この要求に応えるには、コア端部から出射される光の集光能力をさらに高める必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光の出射側における光の集光能力が高く、位置検知性能に優れたタッチパネルを実現することのできるタッチパネル用光導波路およびそれを用いたタッチパネルの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、コアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、光を出射するコアの端部が上記ディスプレイの画面の一側部に位置決めされるタッチパネル用光導波路であって、上記光を出射するコアの端部がレンズ部に形成され、そのレンズ部の平面視形状が、端面に向かうにつれて徐々に拡幅するテーパ部と、その拡幅されたテーパ部の先端側を外側に向かって楕円弧状に膨出させた楕円弧部とからなり、上記楕円弧部の長軸方向が上記テーパ部の長手方向と一致する配置になっており、上記レンズ部の長手方向の長さ(L)と、テーパ部のテーパ角度(α)と、楕円弧部を構成する楕円の長軸半径(a)とが、下記の条件(1)、(2)のいずれか一方を満たしているタッチパネル用光導波路を第1の要旨とする。
【0010】
【数1】

【0011】
また、本発明は、そのなかでも特に、上記レンズ部の長手方向の長さ(L)と、楕円弧部を構成する楕円の長軸半径(a)および短軸半径(b)とが、下記の条件(3)、(4)を同時に満たすとともに、上記テーパ部のテーパ角度(α)が、下記の条件(5)を満たすものであるタッチパネル用光導波路を第2の要旨とする。
【0012】
【数2】

【0013】
さらに、本発明は、それらのなかでも特に、上記コアのレンズ部を覆うオーバークラッド層の端部が、第2のレンズ部に形成され、その第2のレンズ部の端面が、外側に向かって反る側面視略1/4円弧状曲面に形成され、上記コアのレンズ部における楕円弧部の平面視楕円弧状曲面の先端から上記第2のレンズ部の側面視略1/4円弧状曲面の曲率中心までの距離(L2 )と、上記側面視略1/4円弧状曲面の曲率半径(R2 )とが下記の条件(6)を満たしているタッチパネル用光導波路を第3の要旨とする。
【0014】
【数3】

【0015】
そして、上記第1〜第3のいずれかの要旨のタッチパネル用光導波路が、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、光を出射するコアの端部が上記ディスプレイの画面の一側部に位置決めされ、その出射光を入射させるコアの端部が上記ディスプレイの画面の他側部に位置決めされているタッチパネルを第4の要旨とする。
【0016】
本発明者は、前記課題を解決すべく、コアの端部のレンズ部の形状等について研究を重ねた。その結果、レンズ部を、端面に向かうにつれて徐々に拡幅するテーパ状に形成し、その拡幅されたテーパ部の先端側を外側に向かって楕円弧状に膨出させた形状にするとともに、上記レンズ部の長手方向の長さ(L)とテーパ角度(α)と楕円弧を構成する楕円の長軸半径(a)とが、上記条件(1)、(2)のいずれか一方を満たすようにすると、レンズ部の入り口に到達した光を、上記テーパ部において光の広がり角を効果的に低減させることができ、その状態で、上記楕円弧部から、より平行化された光を出射させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタッチパネル用光導波路は、いずれも、光を出射するコアの端部が、上記特定形状および特定寸法のレンズ部に形成されているため、コアの端部から出射される光が、上記レンズ部の屈折作用によって、その広がりが大幅に抑制され平行化されるようになっている。したがって、このタッチパネル用光導波路によれば、光の出射側における光の集光能力が高く、ごく限定された領域において高い精度で光の伝送を行うことができる。
【0018】
また、本発明のタッチパネル用光導波路を用いて得られるタッチパネルは、上述のとおり、光導波路のコア端部から出射される光の集光能力が高く、ごく限定された領域において高い精度で光の伝送を行うことができるため、指でディスプレイの画面に触れると、その指が触れた部分の位置を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のタッチパネル用光導波路の一実施の形態を示す模式的な平面図である。
【図2】(a)は上記タッチパネル用光導波路におけるコア端面の形状を説明する拡大平面図であり、(b)はそのX−X′拡大断面図である。
【図3】上記コア端面におけるレンズ部の形状説明図である。
【図4】上記タッチパネル用光導波路を用いたタッチパネルを模式的に示す斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は、上記タッチパネル用光導波路の製造方法におけるオーバークラッド層の形成工程を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明のタッチパネル用光導波路の他の実施の形態におけるコアの端部を模式的に示す拡大断面図である。
【図7】上記タッチパネル用光導波路の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図8】実施例品、比較例品における出射光の広がりの測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態であるタッチパネル用光導波路の平面図を示している。このタッチパネル用光導波路は、2つのL字形光導波路A,Bからなり、そのうちの一方のL字形光導波路Aが光を出射(図示の矢印参照)する側、他方のL字形光導波路Bが光を入射(図示の矢印参照)する側となっている。これら2つのL字形光導波路A,Bにおいては、いずれも、L字形に形成されたアンダークラッド層(基体)2の表面の所定部分に、光の通路である複数のコア3が、上記L字形の一端縁Aa,Bbから、そのL字形の内側〔ディスプレイ11(図4参照)の画面側〕端縁部に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成されている。なお、図において、コア3を破線で示しており、破線の太さがコア3の太さを示しているとともに、コア3の数を略して点々で図示している。
【0022】
そして、それらコア3を被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4が形成されている。また、光を出射する側のL字形光導波路Aに形成されたコア3の数と、光を入射する側のL字形光導波路Bに形成されたコア3の数とは、同数になっている。そして、上記各L字形の内側端縁部に位置する各コア3の端部が、図1において丸で囲われた部分Cの拡大図である図2(a)に示すような、特殊な平面視形状のレンズ部30に形成されている。
【0023】
なお、このレンズ部30は、図2(a)のX−X′断面図である図2(b)に示すように、平板状になっており、他のコア3の部分と同様の厚みで、アンダークラッド層2とオーバークラッド層4との間に層状に挟まれた配置になっている。
【0024】
上記レンズ部30〔図2(a)に戻る〕は、その平面視形状が、端面に向かうにつれて徐々に拡幅するテーパ部31(図において斜線で示す部分)と、その拡幅されたテーパ部31の先端側を外側に向かって楕円弧状に膨出させた楕円弧部32(図において斜め格子で示す部分)とを組み合わせた形状になっている。ただし、上記楕円弧部32は、その長軸方向が、上記テーパ部31の長手方向と一致する配置になっている。
【0025】
そして、上記レンズ部30の長手方向の長さ(L)と、テーパ部31のテーパ角度(α)と、楕円弧部32を構成する楕円(図において鎖線Pで示す)の長軸半径(a)とが、下記の条件(1)、(2)のいずれか一方を満たすよう設定されている。
【0026】
【数4】

【0027】
上記条件式(1)、(2)は、以下の考え方によって導出されたものである。すなわち、下記の式(β)が成り立つ楕円レンズ(図3参照、F,F′:焦点、a:長軸半径、b:短軸半径)において、その出射側から遠い方の焦点Fに点光源を配置すると、そこから出射される光は平行化されることが知られている。
【0028】
【数5】

【0029】
そこで、光が出射されるコア3端部のレンズ部30においても、上記式(β)に従い、楕円弧状にすることが望まれるが、光導波路の場合、レンズ部30まで光を伝送する導波路が、通常15〜50μm程度の幅を有しており、焦点Fからずれた位置から出射される光が上記特性に当てはまらず、平行光化されない。この傾向は、レンズ部30全体のサイズが小さいときほど、レンズ部30の入り口部の幅の影響が大きくなり、逆にレンズ部30のサイズが大きくなると、相対的にレンズ部30の入り口部の影響が小さくなる。このため、本発明では、上記レンズ部30において、テーパ部31のテーパ角度(α)を限定し光の広がり角を低減することによって、あたかも点光源から光が出射されたかのように光の行路を限定するとともに、その先端側において特定の楕円弧部32を設けることによってその集光能力を高めるようにしたのである。ただし、上記各条件(1)、(2)における具体的な値については、本発明者が実験を繰り返し行って求めたものである。
【0030】
そして、この考え方に基づき、とりわけ、上記レンズ部30の長手方向の長さ(L)と、楕円弧部を構成する楕円の長軸半径(a)および短軸半径(b)とが、下記の条件(3)、(4)を同時に満たすとともに、上記テーパ部のテーパ角度(α)が、下記の条件(5)を満たすものは、とりわけ集光性能に優れているため、高い解像度が要求される15インチ以上の画面サイズのタッチパネル用の光導波路やペン入力が必要なタッチパネル用の光導波路に適用することが好適である。
【0031】
【数6】

【0032】
なお、上記考え方は、光の進行方向が逆の場合でも同様に適用することができることから、この実施の形態では、入射側のコア3の端面においても、出射側のコア3と同様の、特殊な平面視形状のレンズ部30が形成されている(図示を省略)。
【0033】
したがって、上記特殊な平面視形状のレンズ部30を出射側と入射側のそれぞれに備えた光導波路によれば、コア3の端部から出射される光が、上記レンズ部30の屈折作用によって、その広がりが大幅に抑制され平行化され、逆にコア3の端部から入射される光が、上記レンズ部30の屈折作用によって、さらに集光されるため、ごく限定された領域において高い精度で光の伝送を行うことができる。
【0034】
上記特殊な光導波路A、Bは、例えば図4に示すようなタッチパネル10の四角形のディスプレイ11の画面を囲むようにして、その画面周縁部に沿って設置される。そして、光Wを出射する側のL字形光導波路Aの一端縁Aaでは、コア3に光源(図示せず)が接続され、光Wを入射する側のL字形光導波路Bの一端縁Bbでは、コア3に検出器(図示せず)が接続される。より詳しく説明すると、図4の状態では、光Wを出射するコア3の端部〔図2(a)に示すレンズ部30〕が、ディスプレイ11の画面周縁のL字状部(一側部)Dに位置決めされ、光Wを入射するコア3の端部が、ディスプレイ11の画面周縁の、上記L字状部Dに対向するL字状部(他側部)Eに位置決めされている。そして、光Wを出射するコア3の端面、すなわちレンズ部30の楕円弧部32の膨出した曲面と、光Wを入射するコア3の端面〔出射側と同様の、レンズ部30の楕円弧部32の膨出した曲面〕とが、対面した状態になっている。なお、図において、コア3を破線で示しており、破線の太さがコア3の太さを示しているとともに、コア3の数を略して図示している。また、理解し易くするため、コア3から出射して対面するコア3に入射する多数の光のうちの一部の光Wのみを示している。
【0035】
このような光伝送が、図4に示す2つのL字形光導波路A,Bの間で行われるため、図示のように、タッチパネル10のディスプレイ11の画面上では、上記2つのL字形光導波路A,Bにより、光Wが横方向の発散を抑制された状態で格子状に走った状態となる。したがって、この状態で指でディスプレイ11の画面に触れると、上記出射する光と入射する光の集光能力が高いため、上記指が触れた部分の位置を、より正確に検知することができる。
【0036】
なお、上記L字形光導波路A,Bの寸法等は、タッチパネル10のディスプレイ11の大きさに対応するよう設定すればよく、例えば、縦と横の長さは、それぞれ30〜300mm程度、L字形の線幅は、50μm〜2mm程度に設定される。また、光を出射する(光を入射する)コア3の数も、ディスプレイ11の画面に表示される操作内容の数等によって対応するよう設定すればよく、例えば、20〜300本程度に設定される。
【0037】
つぎに、本発明のタッチパネル用光導波路の製造方法の一例について説明する。なお、この説明において参照する図5(a)〜(d)は、図2(a),(b)に示すレンズ部30およびその周辺部分を中心に図示している。
【0038】
まず、上記タッチパネル用光導波路A,B(図1参照)を製造するための、平板状の基台1〔図5(a)参照〕を準備する。この基台1の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。また、基台1の厚みは、例えば、20μm(フィルム状)〜5mm(板状)の範囲内に設定される。
【0039】
ついで、図5(a)に示すように、上記基台1上の所定領域に、アンダークラッド層2の形成材料である、感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布する。このワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。そして、それを50〜120℃×10〜30分間の加熱処理により乾燥させる。これにより、アンダークラッド層2に形成される感光性樹脂層2aを形成する。
【0040】
つぎに、上記感光性樹脂層2aを照射線により露光する。上記露光用の照射線としては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 、好ましくは、50〜3000mJ/cm2 である。
【0041】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、80〜250℃、好ましくは、100〜200℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行う。これにより、上記感光性樹脂層2aをアンダークラッド層2に形成する。アンダークラッド層2(感光性樹脂層2a)の厚みは、通常、通常、1〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは、5〜30μmの範囲内に設定される。
【0042】
ついで、図5(b)に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、コア3に形成される感光性樹脂層3aを形成する。この感光性樹脂層3aの形成は、図5(a)で説明した、アンダークラッド層2に形成される感光性樹脂層2aの形成方法と同様にして行われる。なお、このコア3の形成材料は、得られるコア3が、上記アンダークラッド層2および後記のオーバークラッド層4〔図5(d)参照〕よりも屈折率が大きくなるような材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層2、コア3、オーバークラッド層4の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0043】
ちなみに、本発明において、上記アンダークラッド層2および後記のオーバークラッド層4の屈折率(波長850nmにおける屈折率、以下同じ)は1.45〜1.55となるよう調整することが好適であり、上記コア3は、それより大きい屈折率であって1.50〜1.60となるよう調整することが好適である。
【0044】
つぎに、上記感光性樹脂層3aの上方に、コア3のパターン(レンズ部30を含む)に対応する開口パターンが形成されている露光マスクを配置し、この露光マスクを介して上記感光性樹脂層3aを照射線により露光した後、加熱処理を行う。この露光および加熱処理は、図5(a)で説明したアンダークラッド層2の形成方法と同様にして行われる。
【0045】
つづいて、現像液を用いて現像を行うことにより、図5(c)に示すように、上記感光性樹脂層3a〔図5(b)参照〕における未露光部分を溶解させて除去し、アンダークラッド層2上に残存した感光性樹脂層3aをコア3のパターンに形成する。このとき、コア3の一端部は、レンズ部30の形状になっている。上記現像は、例えば、浸漬法,スプレー法,パドル法等が用いられる。また、現像液としては、例えば、有機系の溶媒,アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像液および現像条件は、感光性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0046】
上記現像後、コア3のパターンに形成された残存感光性樹脂層3a中の現像液を加熱処理により除去する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×5〜30分間の範囲内で行われる。これにより、上記コア3のパターンに形成された残存感光性樹脂層3aを、コア3に形成する。コア3(感光性樹脂層3a)の厚みは、通常、20〜150μmの範囲内に設定され、好ましくは、40〜100μmの範囲内に設定される。また、コア3の幅(レンズ部30が形成されている部分以外の幅)は、通常、8〜50μmの範囲内に設定され、好ましくは、10〜25μmの範囲内に設定される。
【0047】
そして、図5(d)に示すように、上記コア3を被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4に形成される感光性樹脂層4aを形成する。この感光性樹脂層4aの形成は、図5(a)で説明した、アンダークラッド層2に形成される感光性樹脂層2aの形成方法と同様にして行われる。その後も、アンダークラッド層2の形成方法と同様に露光,加熱処理等を行い、オーバークラッド層4を形成する。オーバークラッド層4(感光性樹脂層4a)の厚み(コア3の表面からの厚み)は、通常、100〜1000μmの範囲内に設定され、好ましくは、200〜600μmの範囲内に設定される。
【0048】
ついで、基台1をアンダークラッド層2から剥離する。この剥離方法としては、例えば、真空吸引ステージ(図示せず)上に、基台1の下面を当接させ、基台1をエア吸着により固定する。ついで、オーバークラッド層4の上面を真空吸着機(図示せず)で吸着し、その状態でその吸着部分を持ち上げる。これにより、オーバークラッド層4とともに、コア3とアンダークラッド層2とを接着させた状態で、タッチパネル用光導波路のアンダークラッド層2を基台1から剥離する。ここで、基台1とアンダークラッド層2との間の接着力は、その材料から、オーバークラッド層4とコア3およびアンダークラッド層2との間の接着力ならびにコア3とアンダークラッド層2との間の接着力よりも弱く、上記のようにすることにより、簡単に剥離することができる。
【0049】
その後、上記2つのL字形光導波路A,Bとなる部分を、刃型を用いた打ち抜き等により切断する。これにより、図1に示す2つのL字形光導波路A,Bからなるタッチパネル用光導波路が得られる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、出射側のコア3と入射側のコア3の双方の端面において、上記特殊な平面視形状のレンズ部30を設けたが、本発明の、上記特殊なレンズ部30は、少なくとも出射側のコア端面に設けられていればよい。すなわち、入射側においては、異なる構成の集光レンズ等を組み合わせることができるからである。
【0051】
また、上記実施の形態では、コア3の端部のレンズ部30をオーバークラッド層4内に位置決めしたが、レンズ部30の先端部分ないし全体は、オーバークラッド層4で覆うことなく、露出させてもよい。
【0052】
図6は、本発明のタッチパネル用光導波路の他の実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路は、上記実施の形態において、コア3のレンズ部30の前方を覆うオーバークラッド層4の端部が、第2のレンズ部40に形成されている。この第2のレンズ部40の端面は、外側に向かって反る側面視略1/4円弧状曲面41に形成されている。その第2のレンズ部40の寸法は、コア3の端部のレンズ部30の先端(楕円弧部32の平面視楕円弧状曲面の先端)から側面視略1/4円弧状曲面41の曲率中心Mまでの距離(L2 )と、側面視略1/4円弧状曲面41の曲率半径(R2 )とが下記の条件(6)を満たすように設定される。それ以外は、上記実施の形態と同様であり、同様の部分は同じ符号を付している。
【0053】
【数7】

【0054】
そして、コア3の端部のレンズ部30から出射された光(横方向の発散が抑制された光)Wは、オーバークラッド層4の端部の上記第2のレンズ部40の屈折作用により、縦方向(アンダークラッド層2と直角な面に沿う方向)の発散が抑制される。また、その光Wを受光する際には、その光Wは、第2のレンズ部40の屈折作用により、縦方向に絞って集束され、その状態で、コア3の端面(楕円弧部32の平面視円弧状曲面)からコア3内に入射する(このとき、光Wは、横方向に絞って集束される)。このため、光伝送効率は高くなり、タッチパネル10(図2参照)において、指検知の正確性をより向上させることができる。
【0055】
このようなタッチパネル用光導波路の製造方法は、コア3を形成するまでは、上記実施の形態と同様にして、図5(a)〜(c)に示すように形成される。その後のオーバークラッド層4の形成は、まず、図7に示すように、オーバークラッド層4(図6参照〕の表面形状(第2のレンズ部40を含む)と同形状の型面を有する凹部が形成された、石英(紫外線等の照射線を透過させる材料)製の成形型50を用い、その凹部の開口面を基台1の表面の所定位置に位置決めし密着させる。ついで、上記成形型50に形成された注入口51から、上記凹部の型面と、基台1,アンダークラッド層2,コア3の各表面とで囲まれる空間(成形空間S)に、オーバークラッド層4に形成される感光性樹脂を充填する。そして、上記成形型50を通して、上記実施の形態と同様にして、紫外線等の照射線により露光し、脱型後、加熱処理等を行い、オーバークラッド層4(第2のレンズ部40を含む)を形成する(図6参照)。その後は、上記実施の形態と同様の工程を経て、タッチパネル用光導波路が製造される。
【0056】
なお、上記各実施の形態では、アンダークラッド層2およびオーバークラッド層4の形成において、材料として感光性樹脂を用い、その形成を露光および現像により行ったが、それ以外であってもよい。例えば、材料としてポリイミド樹脂,エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用い、その熱硬化性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布等した後、加熱処理(通常、300〜400℃×60〜180分間)により硬化させてアンダークラッド層2,オーバークラッド層4を形成してもよい。
【0057】
また、上記各実施の形態では、感光性樹脂を用いてアンダークラッド層2を形成したが、それ以外でもよく、樹脂フィルムをアンダークラッド層2として用いてもよい。また、アンダークラッド層2に代えて、金属フィルム,金属薄膜が表面に形成された基板等を用い、その金属材の表面を、コア3内を伝播する光Wの反射面として作用させてもよい。
【0058】
また、上記各実施の形態では、タッチパネル用光導波路を2つのL字形光導波路A,Bからなるものとしたが、その2つのL字形光導波路A,Bをそれぞれの両端部で一体化した四角形の枠状としてもよい。その製造方法としては、上記タッチパネル用光導波路の製造方法において、2つのL字形に切断するのに代えて、四角形の枠状に切断することが行われる。
【0059】
また、上記タッチパネル用光導波路の製造方法において、基台1としてフィルム状のものを用いる場合には、そのフィルム状の基台1と共に上記L字形平板状に切断した後に、基台1とアンダークラッド層2とを剥離してもよいし、また、基台1を剥離することなくタッチパネル用光導波路とともに使用してもよい。
【0060】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0061】
〔実施例1〜16および比較例1〜9〕
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
エポキシ樹脂(ダイセル化学社製、EHPE3150)75重量部、エポキシ樹脂(日油社製、マープルーフG−0150M)25重量部、光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)4重量部を、溶剤(シクロヘキサノン:和光純薬社製)70重量部に溶解することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0062】
〔コアの形成材料〕
エポキシ樹脂(東都化成社製、YDCN−700−10)100重量部と、光酸発生剤(サンアプロ社製、CPI−200K)2重量部とを、溶剤(乳酸エチル)60重量部に溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0063】
〔タッチパネル用光導波路の作製〕
ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム〔100mm×100mm×188μm(厚み)〕の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、100℃×15分間の加熱処理を行うことにより、アンダークラッド層を形成した。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると15μmであった。また、このアンダークラッド層の、波長850nmにおける屈折率は、1.51であった。
【0064】
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料をスピンコート法により塗布した後、150℃×2分間の乾燥処理を行った。ついで、その上方に、模擬的に、レンズ部のみからなるコアを作製するために、それと同形状の開口パターンが形成された合成石英系のクロムマスク(露光マスク)を配置した。そして、その上方から、プロキシミティ露光法にて4000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った後、120℃×5分間の加熱処理を行った。つぎに、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×5分間の加熱処理を行うことにより、コアを形成した。
【0065】
このコア(レンズ部のみ)の寸法〔図8におけるレンズ部30′の長手方向の長さ(L)、テーパ部31′のテーパ角度(α),端面の楕円弧部32′の長軸半径a、短軸半径bは、その寸法に対応した開口パターンが形成された上記クロムマスク(露光マスク)を用いることにより、下記の表1〜表5に示す値に設定した(実施例1〜16,比較例1〜9)。上記各寸法は、SEM(電子顕微鏡)で測定した。また、このコアの厚みは50μm、レンズ部30′の開始端60の幅(図8におけるL0 )は15μm、波長850nmにおける屈折率は、1.57であった。
【0066】
そして、上記コアを被覆するよう、上記アンダークラッド層の表面に、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布した後、2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、100℃×15分間の加熱処理を行うことにより、オーバークラッド層を形成した。このオーバークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると60μmであった。また、このオーバークラッド層の、波長850nmにおける屈折率は、1.51であった。
【0067】
その後、上記PENフィルムをアンダークラッド層から剥離し、光導波路(模擬品)を得た。
【0068】
〔出射光の広がり評価〕
得られた各光導波路(模擬品)のコアのレンズ部30′の開始端60(図8参照)に、波長850nmの光を入射させ、レンズ部30′の楕円弧部32′の先端から光を出射させた。そして、上記楕円弧部32′の端面先端から100mm前方に受光器61を配置し、受光した光の広がり幅を測定した。その結果、広がり幅が10mm以下のものを、集光性能が良好であるとして○、広がり幅が10mmより大きいものを、集光性能が不良であるとして×と評価し、下記の表1〜表5に併せて表記した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
その結果、実施例1〜16の光導波路(模擬品)は、比較例1〜9と比較して、出射光の広がりが大幅に抑制されていることがわかる。したがって、上記レンズ部の形状をコア端面に適用したタッチパネル用光導波路は、光を出射する側の光導波路と光を入射する側の光導波路との間で、高効率で光伝送を行うことができ、タッチパネルにおける指検知の正確性を、非常に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のタッチパネル用光導波路およびそれを用いたタッチパネルは、高い位置検知性能が必要とされるタッチパネルや、ペン入力によるタッチパネル等に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
3 コア
4 オーバークラッド層
30 レンズ部
31 テーパ部
32 楕円弧部
α テーパ角度
a 長軸半径
b 短軸半径
L レンズ部の長手方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、光を出射するコアの端部が上記ディスプレイの画面の一側部に位置決めされるタッチパネル用光導波路であって、上記光を出射するコアの端部がレンズ部に形成され、そのレンズ部の平面視形状が、端面に向かうにつれて徐々に拡幅するテーパ部と、その拡幅されたテーパ部の先端側を外側に向かって楕円弧状に膨出させた楕円弧部とからなり、上記楕円弧部の長軸方向が上記テーパ部の長手方向と一致する配置になっており、上記レンズ部の長手方向の長さ(L)と、テーパ部のテーパ角度(α)と、楕円弧部を構成する楕円の長軸半径(a)とが、下記の条件(1)、(2)のいずれか一方を満たしていることを特徴とするタッチパネル用光導波路。
【数1】

【請求項2】
上記レンズ部の長手方向の長さ(L)と、楕円弧部を構成する楕円の長軸半径(a)および短軸半径(b)とが、下記の条件(3)、(4)を同時に満たすとともに、上記テーパ部のテーパ角度(α)が、下記の条件(5)を満たすものである請求項1記載のタッチパネル用光導波路。
【数2】

【請求項3】
上記コアのレンズ部を覆うオーバークラッド層の端部が、第2のレンズ部に形成され、その第2のレンズ部の端面が、外側に向かって反る側面視略1/4円弧状曲面に形成され、上記コアのレンズ部における楕円弧部の平面視楕円弧状曲面の先端から上記第2のレンズ部の側面視略1/4円弧状曲面の曲率中心までの距離(L2 )と、上記側面視略1/4円弧状曲面の曲率半径(R2 )とが下記の条件(6)を満たしている請求項1または2記載のタッチパネル用光導波路。
【数3】

【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチパネル用光導波路が、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、光を出射するコアの端部が上記ディスプレイの画面の一側部に位置決めされ、その出射光を入射させるコアの端部が上記ディスプレイの画面の他側部に位置決めされていることを特徴とするタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−160163(P2012−160163A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207294(P2011−207294)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】