説明

タッチパネル装置

【課題】小型かつ軽量で、回路の構成が簡単なタッチパネル装置を提供すること。
【解決手段】図1に示すタッチパネル装置1は、長方形または正方形をなす基板2と、弾性表面波を発生する送信部3と、弾性表面波を受信する受信部4と、弾性表面波を反射して、その伝搬方向を変化させる反射器5とを有している。このうち、送信部3は、基板2のX方向のタッチ位置を検出するための第1の弾性表面波を発生させるX方向送信部3Xと、X方向とほぼ直交するY方向のタッチ位置を検出するための第2の弾性表面波を発生させるY方向送信部3Yとで構成されている。このX方向送信部3XとY方向送信部3Yとは、電気的に接続され、バイアス電極を共有している。また、第1の弾性表面波の周波数と第2の弾性表面波の周波数とが異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器の液晶ディスプレイ等の表示装置に装着され、表示内容に応じて指先またはその他の物体をタッチ面に接触させることにより、接触位置を特定して電子機器の各種操作、入力等を行うタッチパネル装置が知られている。
タッチパネル装置の駆動方法には多種の方法が提案されているが、そのうちの1つとして、弾性表面波方式のタッチパネル装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
弾性表面波方式のタッチパネル装置は、基板上に弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を励振させた状態で、この基板上を指先や物体等で接触(タッチ)することによって生じる弾性表面波の強度変化を検出して、タッチ位置を検出する機能を有するものである。
このタッチパネル装置は、基板上に、この基板のX方向のタッチ位置を検出するための第1の弾性表面波を発生するX方向送信部と、X方向とほぼ直交するY方向のタッチ位置を検出するための第2の弾性表面波を発生するY方向送信部と、第1の弾性表面波を受信するX方向受信部と、第2の弾性表面波を受信するY方向受信部とが、それぞれ設けられている。
【0004】
そして、この基板の上面がタッチ面となり、指先等の接触によって第1の弾性表面波および第2の弾性表面波に減衰、すなわち強度変化が生じる。この強度変化をX方向受信部およびY方向受信部で受信して位置情報に変換することにより、指先等の接触位置を特定することができる。
このようなタッチパネル装置では、高周波電源からの動作電力の供給を、切替器により、X方向送信部とY方向送信部とに切り替えるよう構成されている。
【0005】
また、X方向受信部およびY方向受信部が弾性表面波を受信して発生させた電気信号は、切替器により、X方向成分の電気信号とY方向成分の電気信号とに分けられるよう構成されている。
しかしながら、このような構成では、少なくとも2つの切替器が必要になり、また、電力供給および電気信号伝送に用いる回路の構成が複雑化して、タッチパネル装置の小型化および軽量化が困難であるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−239322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、小型かつ軽量で、回路の構成が簡単なタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のタッチパネル装置は、タッチ面を有し、該タッチ面に接触する物体のタッチ位置を検出するタッチパネル装置であって、
長方形または正方形をなし、第1の弾性表面波および第2の弾性表面波を伝播する基板と、
該基板において、前記第1の弾性表面波を発生する第1の送信部と、
前記第1の弾性表面波とほぼ直交する方向に、前記第1の弾性表面波と周波数の異なる前記第2の弾性表面波を発生する第2の送信部と、
前記第1の弾性表面波を受信する第1の受信部と、
前記第2の弾性表面波を受信する第2の受信部と、
前記第1の弾性表面波を発生させ得る第1の周波数の高周波電圧を前記第1の送信部に印加するとともに、前記第2の弾性表面波を発生させ得る前記第1の周波数と異なる第2の周波数の高周波電圧を前記第2の送信部に印加する電力供給部と、
前記第1の受信部が受信した前記第1の弾性表面波の強度の経時変化と前記第2の受信部が受信した前記第2の弾性表面波の強度の経時変化とを検出する検出部と、
該検出部の検出結果に基づいて、前記タッチ位置を特定する機能を備える制御部とを有することを特徴とする。
これにより、X/Y切替器を省略することができ、小型かつ軽量で、回路の構成が簡単なタッチパネル装置を得ることができる。
【0009】
本発明のタッチパネル装置では、前記第1の送信部と前記第2の送信部とが、バイアス電極を共有していることが好ましい。
これにより、給電用配線の配線パターンの簡素化や、タッチパネル装置の設計の自由度を高めることができる。その結果、タッチパネル装置の額縁部の縮小化を図ることができ、タッチ有効領域の拡大を図ることができる。
【0010】
本発明のタッチパネル装置では、前記第1の受信部と前記第2の受信部とが、バイアス電極を共有していることが好ましい。
これにより、受信用配線の配線パターンの簡素化や、タッチパネル装置の設計の自由度を高めることができる。その結果、タッチパネル装置の額縁部の縮小化を図ることができ、タッチ有効領域の拡大を図ることができる。
【0011】
本発明のタッチパネル装置では、前記検出部により、前記第1の弾性表面波を検出する時間と前記第2の弾性表面波を検出する時間とが、時間分割されていることが好ましい。
これにより、第1の受信部からの電気信号と第2の受信部からの電気信号との混在を防止しつつ、タッチ位置の位置情報を確実に得ることができる。
本発明のタッチパネル装置では、前記第1の送信部および前記第2の送信部は、いずれも、弾性表面波素子で構成されていることが好ましい。
弾性表面波素子は、発生させる弾性表面波の周波数特性等の条件を比較的容易に変更することができるため、異なる周波数の弾性表面波を容易に発生させることができる。また、弾性表面波素子は、それ自体の厚さを非常に薄くすることができるため、タッチパネル装置の薄型化および軽量化を図ることができる。
【0012】
本発明のタッチパネル装置では、前記弾性表面波素子は、厚膜状の圧電体層と、該圧電体層に電圧を印加する一対の電極とを備えることが好ましい。
このような構成の弾性表面波素子は、効率よく弾性表面波を発生させることができる。
本発明のタッチパネル装置では、前記弾性表面波素子は、前記厚膜状の圧電体層の結晶方位に応じて、互いに周波数の異なる弾性表面波を発生するものであることが好ましい。
これにより、同種の圧電材料で、かつ電極指の幅、間隔、厚さ等が同一になるように形成した弾性表面波素子であっても、結晶方位を異ならせることで、異なる発振周波数のものを得ることができる。このため、弾性表面波素子の製造工程の簡略化を図ることができ、これらの製造コスト、ひいてはタッチパネル装置の製造コストを削減することができる。
【0013】
本発明のタッチパネル装置では、前記弾性表面波素子は、前記厚膜状の圧電体層の結晶方位に応じて、SH波およびレイリー波を発生するものであり、
前記第1の送信部および前記第2の送信部のいずれか一方は前記SH波を発生し、他方は前記レイリー波を発生することが好ましい。
これにより、第1の送信部と第2の送信部において各電極パターンを等しくなるように設定した場合でも、互いに異なる周波数でかつ異なるモードの弾性表面波を発生させることができる。かかる構成においては、第1の送信部のIDTと第2の送信部のIDTを同じ製造条件で形成することができるため、形成後の各IDTの特性のバラツキが抑制されるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
本発明のタッチパネル装置では、前記厚膜状の圧電体層は、水晶を主材料として構成されていることが好ましい。
水晶は、多くの有用な結晶方位を有するため、多彩な発振モード(発振周波数)の弾性表面波を発生する素子を容易に得ることができる。また、熱伝導率が高く、高温下での熱安定性に優れているという利点もある。さらに、原材料が安価であるため、大型の結晶を入手し易いという側面もある。
【0015】
本発明のタッチパネル装置では、前記電力供給部は、前記第1の送信部および前記第2の送信部に印加する高周波電圧の周波数を、前記第1の周波数と前記第2の周波数とに変調させることにより、前記第1の送信部および前記第2の送信部を、互いに排他的に動作し得るよう制御することが好ましい。
これにより、従来、第1の送信部および第2の送信部に供給する動作電力を切り替える際に必要とされていた切替器を省略することができ、タッチパネル装置の製造コストの削減を図ることができる。
【0016】
本発明のタッチパネル装置では、さらに、前記第1の送信部および前記第2の送信部と、前記電力供給部とを接続する給電用配線と、
前記第1の受信部および前記第2の受信部と、前記検出部とを接続する受信用配線と、
前記基板の4つの辺のうち、前記第1の送信部が前記第1の弾性表面波を発生させる方向に平行な対向する2つの辺に沿って設けられ、前記第1の弾性表面波の伝播方向を変更する第1の反射器と、
前記2つの辺以外の対向する2つの辺に沿って設けられ、前記第2の弾性表面波の伝播方向を変更する第2の反射器とを有し、
前記第1の反射器および前記第2の反射器の少なくとも一方が、前記給電用配線または前記受信用配線と一体的に形成されていることが好ましい。
これにより、第1の反射器および第2の反射器を、基板の縁部側により接近させて形成することができるため、タッチ有効領域を拡大することができる。換言すると、タッチパネル装置の額縁部の幅を減少させ、設計自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のタッチパネル装置について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のタッチパネル装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明のタッチパネル装置の第1実施形態を示す概略図(平面図)、図2は、図1に示すタッチパネル装置のX方向送信部の部分拡大図、図3は、図2に示すX方向送信部のA−A線断面図、図4は、送信部から送信および受信部で受信された各弾性表面波の波形の一例を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1および図2中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」、下側を「手前」、上側を「奥」と言い、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0018】
図1に示すタッチパネル装置1は、基板2と、基板2上に設けられた送信部3と、受信部4と、反射器5と、基板2に対して送信部3、受信部4および反射器5を介して設けられたシート材8と、基板2の外部に設けられた外部装置10とを有している。
基板2は、長方形または正方形をなしている。
この基板2および後述するシート材8は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。これにより、タッチパネル装置1を介して、例えば、基板2のシート材8と反対側に設けられた表示装置等の表示内容を確認することができる。
【0019】
この表示装置としては、例えば、ブラウン管、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が挙げられる。また、表示内容としては、文字、数字、図形等の画像(動画および静止画の双方を含む)が挙げられる。
基板2の構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0020】
なお、前述の表示装置が有する透明基板を、基板2として用いるようにしてもよい。この場合、基板2をタッチパネル装置1と表示装置とが共用することになるため、タッチパネル装置1に表示装置を含めた全体の部品点数を削減して軽量化を図ることができる。また、表示内容を含む光が透過する基板の枚数が減少するため、タッチパネル装置1における光の透過率を高めることもできる。
【0021】
図1に示す基板2は、平面視で長方形をなしており、弾性表面波が伝播する媒体となるものである。
この基板2の角部付近には、送信部3および受信部4が設けられている。
このうち、送信部3は、基板2のX方向のタッチ位置を検出するための弾性表面波(第1の弾性表面波)をX方向とほぼ直交するY方向に発生させるX方向送信部(第1の送信部)3Xと、基板2のY方向のタッチ位置を検出するための弾性表面波(第2の弾性表面波)をX方向に発生させるY方向送信部(第2の送信部)3Yとで構成されている。
【0022】
本実施形態では、X方向送信部3XとY方向送信部3Yとは、それぞれ、基板2の左側縁部の両端付近に設けられている。
図2および図3に示すX方向送信部3Xは、弾性表面波素子で構成され、基板2上に順に積層された平板状の下部電極31、圧電体層32、および、下部電極31と対をなすIDT(櫛歯状またはすだれ状をなす上部電極)33を有している。このような構成の弾性表面波素子は、IDT33の電極指同士の間隔を比較的広くしても、効率よく弾性表面波を発生させることができる。
【0023】
このようなX方向送信部3Xは、下部電極31とIDT(Interdigital Transducer)33との間に高周波電圧を印加することにより、圧電体層32の表面に逆圧電効果による変位を生じさせ、第1の弾性表面波を発生するものである。
下部電極31の構成材料としては、例えば、Al、Cu、W、Mo、Ti、Au、Y、Pb、Sc、Crまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば積層体として)用いることができる。
IDT33は、図3に示すように、ほぼ等間隔で設けられた複数の電極指331を備えている。この電極指331の幅、厚さ、隣接する電極指331同士の間隔d、後述する圧電体層32の組成、結晶方位等を設定することにより、X方向送信部3Xから発生する第1の弾性表面波の周波数特性等を所望のものに調整することができる。
【0024】
また、IDT33の電極指331の数は、特に限定されないが、10〜100本程度が好ましく、40〜80本程度がより好ましい。IDT33では、一般に、電極指331の数に対応して、エネルギーの散逸量が変化する。具体的には、電極指331の数が多いほど、エネルギー散逸量が小さくなり、逆に、電極指331の数が少ないほど、エネルギー散逸量が大きくなる。このため、電極指331の数を前記範囲内とすることにより、エネルギー散逸量を確実に低減させるとともに、十分な振幅の弾性表面波を発生させ、タッチパネル装置1の検出感度の低下を防止することができる。また、IDT33の占める面積の最適化を図ることができ、十分な面積のタッチ有効領域を確保することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、電極指331同士はほぼ等間隔に設けられているが、間隔が変化する部分があってもよい。
また、IDT33は、前述の下部電極31と同様の材料で構成される。
圧電体層32は、圧電特性を有しており、下部電極31とIDT33との間に、高周波電圧が印加されることにより、その逆圧電効果によって表面付近に変位を生じる機能を有するものである。また逆に、圧電体層32に変位が生じると、圧電効果によって下部電極31とIDT33との間に電位差を生じる。
【0026】
そして、圧電体層32に印加する高周波電圧の周波数(第1の周波数)が、下部電極31、圧電体層32およびIDT33の各種条件によって定められるX方向送信部3Xの共振条件を満足すると、X方向送信部3Xから第1の弾性表面波の定在波を特に効率よく発生することができる。
このような圧電体層32としては、例えば、薄膜またはバルク(厚膜状)の形態をなすものが挙げられる。以下、圧電体層32を、その形態毎に順次説明する。
【0027】
I.圧電体層32が薄膜で構成されている場合
かかる構成は、圧電体層32の構成材料に、大型の単結晶を得ることが困難な圧電材料を用いる場合に、好適に適用される。このため、多種多様の圧電特性(例えば、弾性表面波の伝播速度等)を有する圧電材料を用いることにより、X方向送信部3Xの発振周波数をより広範囲に調整することができる。
【0028】
具体的な圧電材料としては、例えば、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、その他、各種のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、酸化亜鉛、窒化アルミニウムおよびチタン酸ジルコン酸鉛のうちの少なくとも1種を主材料とするものが好ましい。このような材料は、均一な結晶の薄膜を比較的容易に形成可能なものである。また、これらの材料は、弾性表面波の伝播速度が比較的速いものであるため、応答速度の速いタッチパネル装置1を得ることができる。
このような圧電体層32の平均厚さは、特に限定されないが、1〜20μm程度であるのが好ましく、2〜10μm程度であるのがより好ましい。これにより、タッチパネル装置1のタッチ位置の検出に必要十分な振幅を有する弾性表面波を得ることができる。
【0029】
II.圧電体層32がバルクで構成されている場合
かかる構成は、圧電体層32の構成材料に、大型の単結晶を容易に得られる圧電材料を用いる場合に、好適に適用される。
バルク(単結晶)の圧電材料は、その切り出し角を設定することにより、異なる結晶方位の圧電体層32を得ることができる。圧電体層32は、その圧電特性が結晶方位に応じて異なるため、結晶方位を選択することによって同種の圧電材料であっても異なる圧電特性を有するものが得られる。これにより、同種の圧電材料で、かつ電極指の幅、間隔、厚さ等が同一になるように形成した弾性表面波素子であっても、結晶方位を異ならせることで、異なる発振周波数のものを得ることができる。このため、X方向送信部3Xの製造工程の簡略化を図ることができ、これらの製造コスト、ひいてはタッチパネル装置1の製造コストを削減することができる。
また、バルクの圧電体層32は、複数の発振モードで弾性表面波を発振し得るものが好ましい。これにより、タッチパネル装置の動作に好適な発振モードの弾性表面波を容易に選択することができる。
【0030】
弾性表面波の発振モードとしては、例えば、レイリー波、SH波、ラム波、クリーピング波等が挙げられる。このうち、X方向送信部3Xに用いる圧電体層32は、その結晶方位に応じてレイリー波およびSH波を発生し得るものが好ましい。そして、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yのいずれか一方が、SH波を発生し、他方がレイリー波を発生するよう構成されることが好ましい。これにより、両者のIDT33の電極パターンを等しくなるように設定した場合でも、互いに異なる周波数でかつ異なるモードの弾性表面波を発生させることができる。かかる構成においては、X方向送信部3XのIDT33とY方向送信部3YのIDT33を同じ製造条件で形成することができるため、形成後の各IDT33の特性のバラツキが抑制されるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
また、これらの発振モードは、比較的安定したモードであるため、タッチパネル装置1で用いる弾性表面波として好適なものである。
このような圧電材料としては、例えば、水晶、サファイア、ホウ酸リチウム、リン酸アルミニウム、酸化テルル、ニオブ酸カリウム、その他、各種のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、水晶を用いるのが好ましい。水晶は、多くの有用な結晶方位を有するため、多彩な発振モード(発振周波数)の弾性表面波を発生する素子を容易に得ることができる。また、熱伝導率が高く、高温下での熱安定性に優れているという利点もある。さらに、原材料が安価であるため、大型の結晶を入手し易いという側面もある。
【0032】
また、この場合、圧電体層32の平均厚さは、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、タッチパネル装置1のタッチ位置の検出に必要十分な弾性表面波の振幅を得ることができる。
Y方向送信部3Yは、上記のようなX方向送信部3Xと同様の構成とされる。すなわち、Y方向送信部3Yは、基板2上に順に積層された下部電極31、圧電体層32およびIDT33を有している。
そして、このY方向送信部3Yにおいても、X方向送信部3Xと同様に、圧電体層32に印加する高周波電圧の周波数(第2の周波数)が、下部電極31、圧電体層32およびIDT33の各種条件によって定められるY方向送信部3Yの共振条件を満足すると、Y方向送信部3Yから第2の弾性表面波の定在波を特に効率よく発生することができる。
【0033】
本発明では、X方向送信部3Xに印加する高周波電圧の周波数(第1の周波数)と、Y方向送信部3Yに印加する高周波電圧の周波数(第2の周波数)とが異なるように(周波数が変調するように)構成されている。そして、X方向送信部3Xの前記共振条件を満足するような第1の周波数、および、Y方向送信部3Yの前記共振条件を満足するような第2の周波数のいずれかの周波数の動作電力(高周波電圧)を、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yに供給(印加)することにより、X方向送信部3XとY方向送信部3Yに動作電力を切り替えることなく、これらを選択的に動作させることができる。
【0034】
換言すれば、動作電力の周波数を、第1の周波数と第2の周波数のいずれかに設定することにより、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yを、互いに排他的に弾性表面波を発生させるよう制御することができる。これにより、従来、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yに供給する動作電力を切り替える際に必要とされていたX/Y切替器を省略することができ、タッチパネル装置1の製造コストの削減を図ることができる。
【0035】
なお、X方向送信部3XとY方向送信部3Yは、互いに電気的に独立していてもよいが、好ましくは図1に示すように、給電用配線6を介して両者が電気的に接続され、バイアス電極を共有しているのが好ましい。これにより、給電用配線6の配線パターンの簡素化や、タッチパネル装置1の設計の自由度を高めることができる。その結果、タッチパネル装置1の額縁部の縮小化を図ることができ、タッチ有効領域の拡大を図ることができる。
【0036】
また、この給電用配線6は、導電性を有する各種の材料で構成されるが、特に、下部電極31またはIDT33と同様の材料で構成され、下部電極31またはIDT33と一体的に形成されているのが好ましい。これにより、後述するタッチパネル装置1の製造工程において、給電用配線6と下部電極31またはIDT33とを同時に形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0037】
受信部4は、X方向送信部3Xから発生した第1の弾性表面波を受信するX方向受信部(第1の受信部)4Xと、Y方向送信部3Yから発生した第2の弾性表面波を受信するY方向受信部(第2の受信部)4Yとで構成されている。
本実施形態では、X方向受信部4XとY方向受信部4Yとは、それぞれ、基板2の手前側縁部の両端付近に設けられている。
【0038】
X方向受信部4XおよびY方向受信部4Yは、それぞれ、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yと同様の構成を有している。すなわち、X方向受信部4XおよびY方向受信部4Yは、それぞれ、基板2上に順に積層された平板状の下部電極31、圧電体層32およびIDT33を有している。
そして、X方向受信部4Xは、基板2を伝播してきた第1の弾性表面波による圧電体層32の変位で生じる圧電効果に応じて、下部電極31およびIDT33の間に電気信号を発生させるものである。
【0039】
また、Y方向受信部4Yも、X方向受信部4Xと同様に、第2の弾性表面波による圧電体層32の変位で生じる圧電効果に応じて、電気信号を発生させるものである。
また、X方向受信部4Xは、X方向送信部3Xから発生した第1の弾性表面波を主に受信可能な周波数特性を有し、Y方向受信部4Yは、Y方向送信部3Yから発生した第2の弾性表面波を主に受信可能な周波数特性を有していることが好ましい。これにより、例えば、X方向受信部4Xに、第2の弾性表面波が不本意に到達した場合にも、この第2の弾性表面波の周波数が、X方向受信部4Xの周波数特性と異なるため、第2の弾性表面波をノイズとして受信してしまうのを防止することができる。
【0040】
このようなことから、X/Y切替器を省略した場合にも、基板2を伝播する弾性表面波の周波数に応じて、X方向受信部4XとY方向受信部4Yのいずれか一方で選択的かつ確実に弾性表面波を受信することができる。これにより、部品点数の削減を図り、タッチパネル装置1の製造コストの削減を図ることができる。
なお、X方向受信部4Xの周波数特性およびY方向受信部4Yの周波数特性は、それぞれ、IDT33が有する電極指331の幅、厚さ、隣接する電極指331同士の間隔、圧電体層32の組成、結晶方位等を設定することにより、X方向受信部4XおよびY方向受信部4Yが主に受信可能な周波数等の特性を所望のものに調整することができる。
【0041】
また、X方向受信部4XとY方向受信部4Yは、互いに電気的に独立していてもよいが、好ましくは図1に示すように、受信用配線7を介して両者が電気的に接続され、バイアス電極を共有しているのが好ましい。これにより、送信部3と同様に、受信用配線7の配線パターンの簡素化や、タッチパネル装置1の設計の自由度を高めることができる。これにより、タッチパネル装置1の額縁部の縮小化を図ることができ、タッチ有効領域の拡大を図ることができる。
【0042】
また、この受信用配線7は、前述の給電用配線6と同様の材料で構成されるが、特に、下部電極31またはIDT33と同様の材料で構成され、下部電極31またはIDT33と一体的に形成されているのが好ましい。これにより、後述するタッチパネル装置1の製造方法において、受信用配線7と下部電極31またはIDT33とを同時に形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
なお、本実施形態では、X方向送信部3X、Y方向送信部3Y、X方向受信部4XおよびY方向受信部4Yのいずれも弾性表面波素子で構成されている場合について説明したが、例えば、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yが弾性表面波素子で構成され、残りのものがその他の弾性表面波を発生する手段で構成されていてもよい。弾性表面波素子は、発生させる弾性表面波の周波数特性等の条件を比較的容易に変更することができるため、異なる周波数の弾性表面波を容易に発生させることができる。
【0043】
また、弾性表面波素子は、それ自体の厚さを非常に薄くすることができるため、タッチパネル装置の薄型化および軽量化を図ることができる。
また、弾性表面波を発生するその他の手段としては、例えば、基板2に対して横波および/または縦波を発生する振動を与え得る各種の振動子等が挙げられる。
基板2の各縁部には、それぞれ、反射器5が固定されている。
【0044】
反射器5は、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yから発生された弾性表面波の伝播方向を変更する機能を有するものである。
図1に示す反射器5は、基板2において、X方向送信部3Xが第1の弾性表面波を発生する方向(Y方向)にほぼ平行な2辺(基板2の左右の2辺)の縁部付近に設けられた一対の第1の反射器5X、5Xと、前記2辺以外の2辺(基板2の上下の2辺)の縁部付近に設けられた一対の第2の反射器5Y、5Yとを有している。
【0045】
これらの反射器5は、それぞれ、基板2の各縁部に対してほぼ45°傾斜した反射面を有する多数の反射素子が所定の間隔(ブラッグ反射の条件を満たす間隔)で配列して構成された反射素子群で構成されている。
このような反射器5は、それぞれ、第1の弾性表面波および第2の弾性表面波の伝播方向をほぼ90°変更する機能を有している。具体的には、一対の第1の反射器5X、5Xは、第1の弾性表面波の伝播方向を、それぞれほぼ90°変更し、最終的にはほぼ180°変更するよう構成されており、一対の第2の反射器5Y、5Yは、第2の弾性表面波の伝播方向を、それぞれほぼ90°変更し、最終的にはほぼ180°変更するよう構成されている。
【0046】
また、一対の第1の反射器5X、5Xと一対の第2の反射器5Y、5Yのうち、1回目の反射を担う第1の反射器5Xおよび第2の反射器5Yは、それぞれ、各反射素子の反射面に到達した弾性表面波のうち、一部を反射、残部を透過させるよう構成されている。これにより、弾性表面波は、各反射素子で分岐され、基板2のX方向およびY方向を、それぞれ均一に走査するように伝播することとなる。
【0047】
一方、2回目の反射を担う第1の反射器5Xおよび第2の反射器5Yは、それぞれ、各反射素子の反射面に到達した弾性表面波を反射させるとともに、前記反射面と反対側の面に到達した弾性表面波を透過させるよう構成されている。これにより、弾性表面波は、各反射素子で集約され、X方向受信部4XおよびY方向受信部4Yに向かうよう、その伝播方向が変更されることとなる。
【0048】
また、このような反射器5においては、反射素子毎に反射される弾性表面波の経路長が異なるため、各反射素子で反射された弾性表面波は、この経路長差に応じた時間差を有して各受信部4X、4Yに到達することとなる。この時間差により、後述する検出部においてタッチ位置を特定する位置情報を得ることができる。なお、基板2の弾性表面波が伝播する領域が、タッチ位置を検出し得る領域、すなわち、タッチ有効領域となる。
この反射器5の構成材料としては、特に限定されないが、前述の給電用配線6および受信用配線7と同様の材料で構成される。
【0049】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1の反射器5Xと給電用配線6、および、第2の反射器5Yと受信用配線7が、それぞれ一体的に形成されている。これにより、第1の反射器5Xおよび第2の反射器5Yを、基板2の縁部側により接近させて形成することができるため、タッチ有効領域を拡大することができる。換言すると、タッチパネル装置1の額縁部の幅を減少させ、設計自由度を高めることができる。
【0050】
また、後述するタッチパネル装置1の製造工程において、給電用配線6および受信用配線7と第1の反射器5Xおよび第2の反射器5Yとを同時に形成することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
なお、これらの反射器と配線は分離していてもよく、または、いずれか一方とのみ一体的に形成されていてもよい。
【0051】
基板2、送信部3、受信部4および反射器5の上方には、シート材8が設けられている。
このシート材8は、通常は基板2と接触しないよう、スペーサ(図示せず)等により所定の間隔を保持した状態で設けられている。
本実施形態では、タッチパネル装置1を操作(タッチ)する際に、このシート材8の上面がタッチ面として機能する。これにより、シート材8が下方に撓み、シート材8が基板2と接触することで、基板2のタッチ位置に対応する部分を通過する弾性表面波を減衰させることができる。その結果、後述する検出部および制御部により、タッチ位置を特定することができる。
【0052】
また、シート材8は、弾性部材で構成されるのが好ましい。この弾性部材としては、具体的には、基板2の構成材料と同様の樹脂材料やガラス材料、またはこれらを組み合わせた材料等が挙げられる。
なお、このシート材8は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。この場合、基板2の上面をタッチ面として操作することができる。
また、シート材8の下面には、複数の突起(図示せず)が設けられていてもよい。
【0053】
外部装置10は、給電用配線6を介して送信部3に動作電力を供給する高周波電源(電力供給部)11と、受信用配線7を介して受信部4で発生した電気信号を受信する検出部12と、受信部4と検出部12との間に設けられ、前記電気信号を増幅する増幅部13と、検出部12が受信した電気信号の結果に基づいて、指先または物体等が接触した位置情報を算出する制御部14とを有する。
【0054】
高周波電源11は、少なくとも2種類の異なる周波数の高周波電圧を送信部3に印加することができるものである。これにより、前述のようにして、X方向送信部3XおよびY方向送信部3Yが互いに排他的に第1の弾性表面波および第2の弾性表面波を発生するよう制御される。
増幅部13は、受信部4が弾性表面波を受信して発生した電気信号を増幅し、検出部12において、指先または物体が接触したことによる電気信号の強度の変化率を相対的に増大させ、強度変化を捉え易くするものである。
【0055】
検出部12は、増幅部13で増幅された電気信号の強度の経時変化を検出する機能を有するものである。
制御部14は、高周波電源11および検出部12の各動作を制御し得るよう構成されている。これにより、高周波電源11の動作電力の供給、および、検出部12の電気信号受信の各動作を、所望のタイミングに制御することができる。
このタイミングは、一例として、検出部12により、第1の弾性表面波を検出する時間と、第2の弾性表面波を検出する時間とが、時間分割されるよう設定される。
【0056】
具体的には、まず、高周波電源11からX方向送信部3Xが第1の弾性表面波を発生させる条件を満足する高周波電圧を、X方向送信部3Xに印加する。これにより、X方向送信部3Xから第1の弾性表面波を発生させ、この第1の弾性表面波をX方向受信部4Xで受信する。この受信により得られた電気信号は、受信用配線7を介して、検出部12で検出する。
【0057】
次に、高周波電源11からY方向送信部3Yが第2の弾性表面波を発生させる条件を満足する高周波電圧を、Y方向送信部3Yに印加する。これにより、Y方向送信部3Yから第2の弾性表面波を発生させ、この第2の弾性表面波をY方向受信部4Yで受信する。この受信により得られた電気信号は、受信用配線7を介して、検出部12で検出する。
次に、再び、高周波電源11からX方向送信部3Xが第1の弾性表面波を発生させる条件を満足する高周波電圧を、X方向送信部3Xに印加する。このような動作を繰り返し行うことにより、X方向受信部4Xからの電気信号とY方向受信部4Yからの電気信号との混在を防止しつつ、タッチ位置の位置情報を確実に得ることができる。
また、制御部14は、この他に、検出部12が受信した電気信号の強度の経時変化に基づいて、タッチ位置の位置情報に変換する演算部(図示せず)を有している。そして、この位置情報が各種電子機器に伝送される。
【0058】
次に、上記のようなタッチパネル装置1の使用方法(作用)の一例について説明する。
[1] まず、高周波電源11から、X方向送信部3Xが第1の弾性表面波を発生させる条件を満足する第1の周波数の高周波電圧を、給電用配線6を介して下部電極31とIDT33との間に印加する。これにより、圧電体層32には、逆圧電効果による表面付近の歪みが生じ、主に間隔dに応じた波長の第1の弾性表面波を発生する。
ここでは、第1の弾性表面波の一例として、X方向送信部3Xから図4(a)に示すような波形のバースト波(弾性表面波)51が発生した場合について説明する。
【0059】
[2] X方向送信部3Xで発生したバースト波51は、図1の奥側に向かって進行し、第1の反射器5Xの反射素子群で、一部が反射され、残部が透過する。これにより、バースト波51は分岐され、弾性表面波52として、基板2のX方向(右方向)に伝播する。続いて、第1の反射器5Xで2回目の反射がなされる。これにより、反射された弾性表面波53は、図1の手前側に向かって進行し、X方向受信部4Xに到達する。このとき、シート材8の上面に指先または物体等が触れて(タッチして)いる場合には、例えば、図4(a)に示すような減衰54を含む受信波55が得られる。
X方向受信部4Xに到達した減衰54を含む受信波55は、圧電体層32の表面付近に、受信波55の強度(振幅)に応じた歪みを生じさせる。この歪みは、圧電体層32の圧電効果により、下部電極31とIDT33との間に電位差を発生させる。すなわち、受信波55は、X方向受信部4Xにおいて、その強度に応じた電気信号に変換される。
【0060】
[3] 次に、X方向受信部4Xで得られた電気信号は、受信用配線7および増幅部13を介して、検出部12に伝送される。検出部12では、X方向受信部4Xが受信した第1の弾性表面波の強度の経時変化を検出する。そして、この検出部12の検出結果に基づいて、制御部14が備える演算部によりタッチ位置を特定する。具体的には、例えば、図4(a)に示す受信波55の受信開始時刻から減衰54の受信時刻までの時間TをX方向の距離に変換し、タッチ位置のX座標を算出する。
【0061】
[4] 次に、Y方向送信部3Yが第2の弾性表面波を発生させる条件を満足する第2の周波数の高周波電圧を、給電用配線6を介して下部電極31とIDT33との間に印加する。これにより、Y方向送信部3Yから図4(b)に示すような波形のバースト波61が発生させる。
[5] 以下、X方向と同様に、図4(b)に示すような減衰64を含む受信波65が得られる。そして、検出部12では、Y方向受信部4Yが受信した第2の弾性表面波の強度の経時変化を検出し、時間Tからタッチ位置のY座標を算出することができる。
以上のようにして、タッチ位置の位置情報が得られ、この位置情報を用いて各種電子機器の操作等を行うことができる。
【0062】
<第2実施形態>
次に、本発明のタッチパネル装置の第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態のタッチパネル装置のX方向送信部の部分拡大図、図6は、図5に示すX方向送信部のA’−A’線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図5中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0063】
以下、これらの図を参照して本発明のタッチパネル装置の第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態のタッチパネル装置1は、送信部および受信部の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
本実施形態では、送信部3’は、基板2のX方向のタッチ位置を検出するための第1の弾性表面波をY方向に発生させるX方向送信部3X’と、Y方向のタッチ位置を検出するための第2の弾性表面波をX方向に発生させるY方向送信部とで構成されている。
【0064】
図5および図6に示すX方向送信部3X’は、弾性表面波素子で構成され、基板2上に順に積層されたIDT(櫛歯状電極)33’と圧電体層32’とを有している。このような構成の弾性表面波素子は、比較的強度の大きい弾性表面波を効率よく発生させることができる。
IDT33’は、図5および図6に示すように、ほぼ等間隔で併設された一対の櫛歯状の電極指332、333を2対備えている。この電極指332、333の各幅、各厚さ、隣接する電極指332と電極指333との間隔d、後述する圧電体層32’の組成、結晶方位等を設定することにより、X方向送信部3X’から発生する弾性表面波の発振周波数等の特性を所望のものに調整することができる。
【0065】
また、IDT33’の電極指332、333の数は、特に限定されないが、電極指332と電極指333の1本ずつで一対の電極指を形成する場合、5〜50対程度が好ましく、20〜40対程度がより好ましい。一対の電極指332、333の数を前記範囲内とすることにより、エネルギー散逸量を確実に低減させるとともに、十分な振幅の弾性表面波を発生させ、タッチパネル装置1の検出感度の低下を防止することができる。また、IDT33’の占める面積の最適化を図ることができ、十分な面積のタッチ有効領域を確保することができる。
【0066】
また、圧電体層32’は、前記第1実施形態の圧電体層32と同様の材料で構成される。
このような構成を有する本実施形態のタッチパネル装置1を使用する際には、電極指332と電極指333との間に、電極指332、333および圧電体層32’の各種条件によって定められるX方向送信部3X’の共振条件を満足するような第1の周波数の高周波電圧を印加する。これにより、X方向送信部3X’から、主に間隔dに応じた波長の第1の弾性表面波が発生する。
【0067】
なお、本実施形態では、電極指332と電極指333とがほぼ等間隔に設けられているが、間隔が変化する部分があってもよい。
以上、X方向送信部3X’を代表に説明したが、Y方向送信部、X方向受信部およびY方向受信部も、X方向送信部3X’と同様の構成である。
そして、本実施形態のタッチパネル装置1においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0068】
以上、本発明のタッチパネル装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、タッチパネル装置を構成する各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明のタッチパネル装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のタッチパネル装置の第1実施形態を示す概略図(平面図)である。
【図2】図1に示すタッチパネル装置のX方向送信部の部分拡大図である。
【図3】図2に示すX方向送信部のA−A線断面図である。
【図4】送信部から送信および受信部で受信された各弾性表面波の波形の一例を示す図である。
【図5】第2実施形態のタッチパネル装置のX方向送信部の部分拡大図である。
【図6】図5に示すX方向送信部のA’−A’線断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1……タッチパネル装置 2……基板 3……送信部 3X、3X’……X方向送信部 3Y……Y方向送信部 4……受信部 4X……X方向受信部 4Y……Y方向受信部 5……反射器 5X、5X……第1の反射器 5Y、5Y……第2の反射器 6……給電用配線 7……受信用配線 8……シート材 10……外部装置 11……高周波電源 12……検出部 13……増幅部 14……制御部 31……下部電極 32、32’……圧電体層 33、33’……IDT 331、332、333……電極指 51、61……バースト波 52、53……弾性表面波 54、64……減衰 55、65……受信波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ面を有し、該タッチ面に接触する物体のタッチ位置を検出するタッチパネル装置であって、
長方形または正方形をなし、第1の弾性表面波および第2の弾性表面波を伝播する基板と、
該基板において、前記第1の弾性表面波を発生する第1の送信部と、
前記第1の弾性表面波とほぼ直交する方向に、前記第1の弾性表面波と周波数の異なる前記第2の弾性表面波を発生する第2の送信部と、
前記第1の弾性表面波を受信する第1の受信部と、
前記第2の弾性表面波を受信する第2の受信部と、
前記第1の弾性表面波を発生させ得る第1の周波数の高周波電圧を前記第1の送信部に印加するとともに、前記第2の弾性表面波を発生させ得る前記第1の周波数と異なる第2の周波数の高周波電圧を前記第2の送信部に印加する電力供給部と、
前記第1の受信部が受信した前記第1の弾性表面波の強度の経時変化と前記第2の受信部が受信した前記第2の弾性表面波の強度の経時変化とを検出する検出部と、
該検出部の検出結果に基づいて、前記タッチ位置を特定する機能を備える制御部とを有することを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記第1の送信部と前記第2の送信部とが、バイアス電極を共有している請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記第1の受信部と前記第2の受信部とが、バイアス電極を共有している請求項1または2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記検出部により、前記第1の弾性表面波を検出する時間と前記第2の弾性表面波を検出する時間とが、時間分割されている請求項1ないし3のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記第1の送信部および前記第2の送信部は、いずれも、弾性表面波素子で構成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記弾性表面波素子は、厚膜状の圧電体層と、該圧電体層に電圧を印加する一対の電極とを備える請求項5に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記弾性表面波素子は、前記厚膜状の圧電体層の結晶方位に応じて、互いに周波数の異なる弾性表面波を発生するものである請求項6に記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記弾性表面波素子は、前記厚膜状の圧電体層の結晶方位に応じて、SH波およびレイリー波を発生するものであり、
前記第1の送信部および前記第2の送信部のいずれか一方は前記SH波を発生し、他方は前記レイリー波を発生する請求項6または7に記載のタッチパネル装置。
【請求項9】
前記厚膜状の圧電体層は、水晶を主材料として構成されている請求項6ないし8のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項10】
前記電力供給部は、前記第1の送信部および前記第2の送信部に印加する高周波電圧の周波数を、前記第1の周波数と前記第2の周波数とに変調させることにより、前記第1の送信部および前記第2の送信部を、互いに排他的に動作し得るよう制御する請求項1ないし9のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項11】
さらに、前記第1の送信部および前記第2の送信部と、前記電力供給部とを接続する給電用配線と、
前記第1の受信部および前記第2の受信部と、前記検出部とを接続する受信用配線と、
前記基板の4つの辺のうち、前記第1の送信部が前記第1の弾性表面波を発生させる方向に平行な対向する2つの辺に沿って設けられ、前記第1の弾性表面波の伝播方向を変更する第1の反射器と、
前記2つの辺以外の対向する2つの辺に沿って設けられ、前記第2の弾性表面波の伝播方向を変更する第2の反射器とを有し、
前記第1の反射器および前記第2の反射器の少なくとも一方が、前記給電用配線または前記受信用配線と一体的に形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−65800(P2007−65800A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248351(P2005−248351)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】