説明

タッチパネル部材、透明電極層付き基板、基板積層型タッチパネル部材、および、上記タッチパネル部材または上記基板積層型タッチパネル部材を用いた座標検出装置

【課題】
光反射のために設けられる光学調整層を単層とした上で、タッチパネル部材におけるパターニングされた透明電極層の視認を防止し、または低減させることができ、しかも、塗工手段という簡易な方法によっても形成可能な光学調整層を備えるタッチパネル部材、および上記タッチパネル部材の製造方法、および、上記タッチパネル部材を備える座標検出装置を提供する。
【解決手段】
透明基材の一方面側上に、少なくとも1層の透明電極層を備え、上記透明基材と、上記透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間にシロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明基材の最も近い位置に備わる透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率となるよう、タッチパネル部材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル部材、透明電極層付き基板、および、上記タッチパネル部材または上記基板積層型タッチパネル部材を用いた座標検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置と座標検出装置を組み合わせた、入力デバイスとしてのタッチパネルが注目を集めている。タッチパネルでは画面の表示に合わせてキーの機能を変化させることが可能であり、限られたスペースでより多彩な情報入力が可能になる。また、表示画面に直接触れて入力することから、より直感的な操作が可能となる利点も有する。さらにキーボードの機能をもタッチパネル化することにより、装置の躯体自体を小さくできるといったメリットを享受できる。これらの利点は、特に限られた面積で入力を行う必要がある携帯端末で有効であり、事実、携帯電話、携帯音楽再生装置などを中心に搭載機種が増加している。さらに最近では、パーソナルコンピュータの画面にも採用され、ますますその用途は拡大傾向にある。
【0003】
タッチパネルの方式にはその作動原理から、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波表面弾性波方式、電磁誘導方式などが挙げられる。それぞれの方式でメリット、デメリットがあり、用途に応じて使い分けがなされているのが現状である。このうち、静電容量方式は、指先でタッチパネルに触れた際の電気容量の変化を検出することにより、座標情報を取り込む方式で、多点検出が可能なことから複雑な操作が可能であり、最近になって特に普及が進んでいる。
【0004】
ここで、特に、静電容量方式や抵抗膜方式などの入力媒体への接触または接触に近い動作を電気的に検出する方式に用いられるタッチパネル部材は、任意のパターンで形成される、ITO(Indium Tin Oxides)やATO(Antimony Tin Oxides)などの透明電極層を備えることが一般的である。このような透明電極層を備えるタイプのタッチパネル部材では、透明電極層のパターンの有る場所と無い場所とで屈折率差による光の反射率の差が大きく、タッチ面側から透明電極層のパターンが視認可能となってしまうという課題があった。
【0005】
上記課題に対し、透明電極層のパターンの有る場所と無い場所とで屈折率差による光の反射率の差を小さくするために、種々の試みが行なわれている。例えば下記に示す特許文献1では、透明基材と、透明導電体からなる第1〜第3薄膜層を備える多層反射防止膜付透明基材を備えるタッチパネル部材の発明(以下、「従来発明1」ともいう)が開示されている。従来発明1における多層反射防止膜付透明基材では、透明基材と第1〜第3薄膜層とにおいて特定の屈折率の関係を考慮することにより、光の干渉により反射を抑えることが試みられている。
【0006】
また、下記に示す特許文献2では、透明ガラス基板の片面に透明導電膜を形成したタッチパネルの基板用ガラスにおいて、透明ガラス基板表面に、該基板側から第1層目として、該基板より屈折率の高い透明酸化物膜、次いでその上の第2層目として、該基板より屈折率の低い透明酸化物膜を積層し、更に、その膜付基板の片面上に透明導電膜を形成してなる構成が採用されるタッチパネルの基板用低反射ガラスの発明(以下、「従来発明2」ともいう)が開示されている。従来発明2では、特定屈折率、膜厚の透明酸化物からなる複数の膜を形成し、光反射を低減することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2000−612956
【特許文献2】特開平11−53114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来発明1および2は、光反射を低減するために設けられる層の形成において以下の問題があった。即ち、特許文献1には、従来発明1において設けられる第1〜第3薄膜層は、所定の材料を用い、真空蒸着方法やスパッタ方法により好適に形成される旨、説明されている。また、特許文献2には、従来発明2において設けられる透明酸化物膜の形成方法の具体的開示として、膜形成原料を含むゾル溶液を調製し、浸漬手段によって、基板に透明酸化物膜を形成する浸漬方法が開示されている。上述する、従来発明1および従来発明2において好適に用いられる、真空蒸着方法、スパッタ方法、あるいは浸漬手段などはいずれも製造条件の調整が難しく、より簡易な方法が選択されることが望ましい。また特にスパッタ方法は、製膜時間がかかる上、形成される膜内に異物が混入する虞があり外観が不良となる場合があった。
【0009】
そこで本発明者は、光反射を防止可能な層を形成する主材料としてシロキサン樹脂を選択し、塗工手段によりタッチパネル部材内に、光反射防止可能な層を形成することを検討した。塗工手段は、簡易な手段であり製造条件の制限も受け難く、膜形成のための好ましい手段といえる。しかしながら、シロキサン樹脂を主成分とする膜形成材料を調製し、例えばスピンコート法などで基材面にシロキサン樹脂層を形成したところ、膜形成材料がスピンコート装置に付着しやすく、頻繁に装置の清掃を余儀なくされるため、実質的でないことがわかった。
【0010】
また、シロキサン樹脂層を部材内に設けると、信頼性試験時などにおいて、膜密着性がやや不足する傾向にあることがわかった。
【0011】
上記課題は、透明基材の一方面側上にパターニングされた透明電極層を備える透明電極層付き基板においても同様であり、透明基材上において透明電極層を構成する透明電極部を有する領域と有しない領域とで光の反射率が異なるため、透明電極層が肉眼で観察されてしまい問題であった。したがって、このようの透明電極層付き基板を積層させて構成される基板積層型タッチパネル部材においても、タッチ面側から、透明電極層が肉眼で観察されてしまい問題であった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、光反射のために設けられる光学調整層を単層とした上で、タッチパネル部材あるいは透明電極層付き基板におけるパターニングされた透明電極層の視認が防止または低減されるタッチパネル部材または透明電極層付き基板、および上記タッチパネル部材または透明電極層付き基板の製造方法、ならびに、上記タッチパネル部材または透明電極層付き基板を備える座標検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、
(1)透明基材の一方面側上に、少なくとも1層の透明電極層を備え、上記透明基材と、上記透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率であることを特徴とするタッチパネル部材、
(2)透明基材の一方面側上に、第一の透明電極層を備え、上記第一の透明電極層上に絶縁性層を備え、上記絶縁性層上に第二の透明電極層を備え、上記透明基材と上記第一の透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記第一の透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<第一の透明電極層の屈折率であることを特徴とする上記(1)に記載のタッチパネル部材、
(3)透明基材の一方面側上にパターニングされた透明電極層を備え、上記透明基材と上記透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率であることを特徴とする透明電極層付き基板、
(4)透明基材の一方面側上に透明電極層を備える透明電極層付き基板を2以上積層させてなるタッチパネル部材において、上記透明電極層付き基板の少なくとも1つが、上記(3)に記載の透明電極層付き基板であることを特徴とする基板積層型タッチパネル部材、
(5)透明基材の一方面側上に、少なくとも1層の透明電極層を備え、上記透明基材と、上記透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率であるタッチパネル部材と、上記タッチパネル部材のタッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路を備えることを特徴とする座標検出装置、
(6)透明基材の一方面側上に透明電極層を備える透明電極層付き基板を2以上積層し、上記透明電極層付き基板の少なくとも1つが、透明基材の一方面側上にパターニングされた透明電極層を備え、上記透明基材と上記透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率である基板積層型タッチパネル部材と、上記基板積層型タッチパネル部材のタッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路を備えることを特徴とする座標検出装置、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタッチパネル部材、または透明電極層付き基板によれば、使用者から観察または接触動作が行われる面側からの透明電極層のパターンの視認が良好に防止または低減される。また、本発明のタッチパネル部材は、シロキサン樹脂層を含む光学調整層を有しているが、タッチパネル部材の優れた膜密着性を維持することができる。
【0015】
また、本発明のタッチパネル部材、または透明電極層付き基板の製造方法によれば、塗工手段という簡易な方法によりタッチパネル部材内、または透明電極層付き基板内に光学調整層を形成することができるため、製造コストを抑えることができる。しかも塗工装置に対する光学調整層形成用塗工液の付着を、防止し、または低減させることができるため、種々の塗工装置を使用することができ、塗工装置選択の幅が広がり、また塗工装置の頻繁な清掃の実施を回避することが可能である。
【0016】
また、本発明の座標検出装置は、使用者が接触または接触に近い動作を行なうタッチ面において、内部に設けられる透明電極層のパターンの視認が良好に防止または低減されるため、優れた表示品質あるいは使用感を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のタッチパネル部材の一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明のタッチパネル部材の一実施態様を示す概略断面図である。
【図3】第一の透明電極層、第二の透明電極層の一積層態様を示す上面概略図である。
【図4】第一の透明電極層、第二の透明電極層の一積層態様を示す上面概略図である。
【図5】(A)〜(C)は、本発明の透明電極付き基板を用いた本発明の基板積層型タッチパネル部材の実施態様を示す概略断面図である。
【図6】本発明の座標検出装置の一実施態様を説明する説明図である。
【図7】(A)〜(C)は、本発明のタッチパネル部材を用いた、タッチパネル付表示装置の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[タッチパネル部材]
以下に、本発明のタッチパネル部材について図面を用いて説明する。尚、本発明のタッチパネル部材は、特定のタッチパネル方式に限定されず使用することが可能であるが、静電容量方式あるいは抵抗膜方式のタッチパネルに好ましく用いることができ、特に静電容量方式のタッチパネル部材として好ましく用いることができる。
【0019】
尚、本発明の基板積層型タッチパネル部材の実施形態については、別途、後述する。
【0020】
(実施態様1)
図1は、本発明の一実施態様を示すタッチパネル部材1を、透明基材に対し略鉛直方向に切断した際の概略断面図である。以下に示す概略断面図も同様に切断されたものである。タッチパネル部材1は、透明基材2上に、光学調整層3が積層され、次いで、光学調整層3上に複数の透明電極部4がパターン形成されてなる透明電極層5が積層され、透明電極層5を覆って表面保護層7が設けられて構成される。光学調整層3は、透明基材2上において、少なくとも透明電極層5の形成予定領域を含んで形成される。図1に示すように透明基材2上の略全面に設けても良い。さらに、タッチ面への接触または接触に近い状態により発生する電気信号を外部回路に送付し易くするために、透明電極層5を構成する透明電極部4の端部の少なくとも一方側には、取出し配線6が設けられてよい。
【0021】
尚、本発明において、光学調整層は、透明基材と、該透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間に備わる層であるが、透明電極層として透明電極層5のみを備えるタッチパネル部材1の態様では、透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層とは、透明電極層5を意味する。一方、透明電極層を2層以上備える態様の本発明のタッチパネル部材では、後述する実施態様2に例示するとおり、基材上に積層される複数の透明電極層のうち、透明基材と該透明基材に最も近い位置に積層される透明電極層との間に光学調整層が設けられる。
【0022】
本発明において、光学調整層3の屈折率は、透明基材2の屈折率よりも大きく、且つ、透明電極層5の屈折率よりも小さく設計される。この結果、透明基材2と透明基材2に最も近い位置に備わる透明電極層5との間の光の反射を防止あるいは抑制することができ、タッチパネル部材1のタッチ面側からの透明電極層5の視認を良好に防止または低減させることができる。
【0023】
図1に示すタッチパネル部材1では、単層の光学調整層3が設けられた態様を示した。このように本発明の一つの態様として、所期の目的を解決するために設けられる光学調整層を単層とすることができ、光学調整層形成工程が1回ですみ、製造コストを抑えることが可能であるなどの点で望ましい。ただし上述は本発明を限定するものではなく、光学調整層の屈折率が、透明基材の屈折率よりも大きく、且つ、透明電極層の屈折率よりも小さく設計される範囲において、光学調整層を2層以上に設けてもよい。このとき、少なくとも隣り合う光学調整層同士の屈折率は、上記範囲内において異なる屈折率を示してよい。このように光学調整層を複数層設けてもよいことは、後述する本発明のタッチパネル部材あるいは本発明の透明電極付き基板においても同様である。
【0024】
尚、本発明における透明基材、光学調整層、透明電極層の屈折率は、分光エリプソメトリー法によって測定される。測定において露光する光の波長は、すべて550nmとする。
【0025】
透明基材2は、光透過性の、シート、フィルム、板、膜などであって、タッチパネル部材の基材となり得るものであれば、適宜選択して使用してよい。透明基材2を構成する材料は、ガラス、樹脂などであってよい。たとえば、光透過性の樹脂によって形成される透明樹脂フィルムを透明基材2として用いる場合、光透過可能な絶縁性フィルムであれば特に限定されることなく適宜選択可能である。上記透明樹脂フィルムの例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などのポリエチレンフィルム、あるいはポリエーテルサルフォンフィルム(PESフィルム)などのポリエステルフィルムの他、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるフィルムを挙げることができるが、これに限定されない。また、上記透明樹脂フィルムとして、TACフィルムやCOPフィルムを用いてもよい。ガラス系の透明基材の屈折率は、一般的に1.5〜1.6の範囲であり、プラスチック系の透明基材の屈折率は、一般的に1.3〜1.7の範囲である。透明基材2の厚みは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜決定してよいが、一般的には、10μmから1500μm程度である。
【0026】
透明電極層5は、一般的なタッチパネル部材に設けられる透明電極層を構成しうる材料を適宜選択して形成することができる。透明電極層を構成する材料としては、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)などの酸化インジウム系透明電極材料、あるいは、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(ATO)等の透明導電膜形成材料、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子材料等が挙げられる。尚、後述する二層の透明電極層を備える態様の本発明のタッチパネル部材、あるいは基板積層型タッチパネル部材において、ブリッジ形状パターンで形成される透明電極層は、透明性の低い、あるいは実質的に透明性のない金属材料で形成してもよいが、本発明ではこれも含めて、便宜上、透明電極層という。上記材料を用いて形成される透明電極層の屈折率の範囲は、概ね、1.5〜2.4程度である。尚、本発明において透明電極層5の屈折率という場合には、透明電極層5を構成する複数の透明電極部4を構成する材料の屈折率と同意であり、上述に例示する透明電極層5の構成材料の中でも、ITOであれば屈折率が2.1〜2.2、IZOであれば屈折率が1.9〜2.4であって本発明の透明電極層として好ましい屈折率が示されるため、好適な構成材料といえる。透明電極層5の厚みは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜決定してよいが、一般的には、10nm〜500nm程度である。
【0027】
光学調整層3は、光透過性であって、且つ、形成される透明基材2の屈折率よりも大きく、且つ、透明電極層5の屈折率よりも小さい屈折率を示す材料で形成する。具体的には、透明電極層5は、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含み、且つ、その屈折率が、透明基材2の屈折率よりも大きく、且つ、透明電極層5の屈折率よりも小さい屈折率を示す材料で形成する。光学調整層3の屈折率は、透明基材2の屈折率と透明電極層5の屈折率を勘案して決定されるが、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む場合に、その屈折率は、1.4〜2.0程度に調整可能である。光学調整層3の厚みは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜決定してよいが、一般的には、30nm〜100nm程度であることが好ましい。光学調整層3の膜厚を30nm以上とすることによって、良好な膜形成性が示され易い。一方、光学調整層3の膜厚の上限値は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の課題を解決する観点では特に制限を有しない。ただし、デバイスとしての透過率を望ましい程度に維持するためには、光学調整層30膜厚を100nm以下とすることが望ましい。また、光学調整層を複数層で構成する場合においても、それぞれの光学調整層の膜厚は特に限定されないが、一般的にはそれぞれの光学調整層の膜厚が、上記好ましい範囲内であってよい。
【0028】
本発明においてシロキサン樹脂は、光学調整層3を構成する主たる材料であり、Si−O−Si結合を含む樹脂化合物であり、シロキサン樹脂自体の屈折率は1.3〜1.7である。望ましい屈折率を示し得る範囲において、さらに、任意の置換機や他元素が樹脂の一部において置換されていてもよい。本発明の材料において主たる材料という場合には、構成材料のうちの50重量%を超える含有量の材料を意味するが、望ましくは、光学調整層3におけるシロキサン樹脂の含有量は、光学調整層3の構成材料を100重量%としたときに50重量%〜99重量%、より好ましくは90重量%〜99重量%、程度とすることにより、所望の屈折率を得やすい。尚、光学調整層3は、1種のシロキサン樹脂を含んで構成されてもよく、あるいは、異なる構造式で表わされる2種以上のシロキサン樹脂を含んで構成されてもよい。例えば、側鎖が異なる2種以上のシロキサン樹脂を任意に組み合わせて、光学調整層3が構成されてもよい。また、光学調整層を複数層で構成する場合に、それぞれの光学調整層におけるシロキサ樹脂の含有率は、同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
光学調整層3は、シロキサン樹脂に加えて、アクリル樹脂が含有される。アクリル樹脂が含有されることによって、光学調整層3を塗工手段により透明基材2上に積層形成する際に、シロキサン樹脂を含有する光学調整層3形成原料が塗工装置に付着することを好適に防止し、または低減させることができる。例えば、塗工手段としては、スピンコート法が例示されるが、スピンコート法であれば、光学調整層3を簡便に形成することができる上、屈折率が均一で、表面粗さRaを0〜2nm未満、好ましくは0〜1nmとすることを可能とし平坦性の高い光学調整層を形成することができる。また、スピンコート法などの塗工方法であれば、形成される光学調整層3内に異物が混入する程度がスパッタリング手法に比べて低減し、外観の良好なタッチパネル部材を提供可能である。また、光学調整層3にアクリル樹脂を含有させることにより、光学調整層3の膜密着性を向上させることが可能である。例えば、光学調整層3を形成後、後工程で他の層を形成する際のパターニングやエッチングなどの工程時のマージンを広くとることが可能となり、また、完成品の信頼性試験における膜信頼性を向上させることが可能である。
【0030】
光学調整層3におけるシロキサン樹脂とアクリル樹脂との含有比率は、シロキサン樹脂が50重量%を上回る範囲において本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜決定してよいが、光学調整層3におけるシロキサン樹脂およびアクリル樹脂の総量を100重量%としたときに、シロキサン樹脂:アクリル樹脂=80重量%:20重量%〜99重量%:1重量%程度の比率で含有されることが望ましい。かかる範囲に示されるアクリル樹脂の含有量によって、塗工手段により光学調整層を形成する際に、光学調整層形成用塗工液が塗工装置に付着することを良好に防止し、または低減させることができる。またアクリル樹脂を1重量%以上含有することによって、光学調整層3の膜密着性向上効果が有意に発揮されるため好ましい。尚、光学調整層を複数層で構成する場合に、それぞれの光学調整層におけるアクリル樹脂の含有率は、同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
本発明においてアクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体を含み、より具体的には、ポリメチルアクリレートなどのポリアクリレート類、ポリメチルメタクリレートなどのポリメタクリレート類などを用いることができる。ただし、本発明におけるアクリル樹脂はこれに限定されず、本発明の趣旨に逸脱しない範囲において、従来公知のアクリル樹脂を適宜選択して使用することができる。
【0032】
光学調整層3には、上述するシロキサン樹脂およびアクリル樹脂に加え、さらにTiO、ZrO、SnO、Al、Taなどの任意成分が1種以上含有されていてもよい。このような任意成分を含有させることによって、光学調整層3に所望の屈折率が発揮されるよう調整することが容易である。
【0033】
タッチパネル部材1は、透明電極層5を覆って積層される表面保護層7を任意で設けてよい。表面保護層7は、適度な硬度を示すことが可能な透明性樹脂から形成することができる。上記透明性樹脂としては、透明性のアクリル樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。あるいは、粘着層を介して、保護フィルムを貼り付け、これを表面保護層7としてもよい。表面保護層7の厚みは、特に限定されず、透明電極層を保護することが可能な範囲で、薄く形成されることが一般的であるが、事後的な静電気による破壊などを考慮して、絶縁耐圧が200Vから500V程度となるように設定されることが望ましい。表面保護層7は、全可視光領域での透過率が高く、ほぼ無色透明な樹脂として形成されるが、若干ながら可視光領域の短波長領域に吸収帯を有するため、わずかに黄色く着色する場合があり、膜厚が大きいほど着色が強くなる傾向にある。このような着色は、タッチパネル部材において好ましくない。また、膜厚を大きく設定するほど、露光の際の回折光の影響により露光エリアが増大し、結果としてパターン太りを招いて解像度が悪化するといった問題も発生し得る。したがって、上記着色の問題および解像度の悪化を回避するために、表面保護層7は、絶縁耐圧を満足する範囲で必要最低限の膜厚で形成されることが好ましい。具体的には、表面保護層7の厚みは、0.5μm以上3.0μm未満の厚さで形成されることが好ましい。表面保護層7を設けることによって、タッチパネル部材1の搬送時あるいは使用時などにおける透明電極層5の損傷を防止することができる。
【0034】
尚、図示はしないが、本発明のタッチパネル部材は、表面保護層を有しない態様も含む。例えば、タッチパネル部材1において、表面保護層7が設けられない場合には、タッチパネル部材1の透明基材2と反対側の表面は、透明電極層5と、光学調整層3であって透明電極層5と重複しない領域とが露出していてもよい。あるいは、本発明のタッチパネル部材は、表面保護層を設け、さらに、該表面保護層上に透明樹脂フィルム、カバーガラス、偏光板などの任意の層の少なくともいずれかを積層してもよい。
【0035】
タッチパネル部材1には、一般的には取出し配線6が設けられてよい。透明電極層5は実質的に表示視認領域である、所謂アクティブエリア内に設けられ、一方、取出し配線6は、一般的にはアクティブエリア外に形成される。透明電極層5と取出し配線6との接続を確保するために、透明電極層5の端部をアクティブエリア外に伸長させて、取出し配線と接続させてもよい。
【0036】
取出し配線6を構成する導電材料は、一般的には光透過性の有無を問わず、高い導電性を有した銀や銅などの金属材料が用いられる。より具体的には、取出し配線を構成する金属物質としては、金属単体や、金属の複合体や、金属と金属化合物の複合体のほか、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、モリブデン・アルミニウム・モリブデンの3層構造体(Mo−Al−Mo)などを挙げることができ、金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロム/クロム積層体などを例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(Au・Pd・Cu)などを例示することができる。なお、金属配線には、上記したような金属物質に適宜樹脂組成物が混在してもよい。取出し配線6をフォトリソグラフィ手法により形成する場合には、厚みは、一般的には、10nm〜1000nm程度、幅寸法は、一般的には、5μm〜200μm程度に形成することができ、スクリーン印刷などの印刷により形成する場合には、厚みは、一般的には、5μm〜20μm程度、幅寸法は、一般的には、20μm〜300μm程度に形成することができる。
【0037】
(実施態様2)
図2は、本発明の異なる実施態様を示すタッチパネル部材13を、透明基材に対し略鉛直方向に切断した際の、概略断面図である。タッチパネル部材13は、透明基材2と光学調整層3との間に任意で設けられるアンダーコート層8を備え、また、透明電極層として、透明基材2に最も近い位置に備わる透明電極層10に加えて、透明電極層10に対応するようパターン形成された透明電極層12を備え、且つ、透明電極層10と透明電極層12との間に絶縁性層14を備える以外は、タッチパネル部材1と同様に構成される。
【0038】
タッチパネル部材13における透明基材2は、タッチパネル部材1に用いられるものと同様の基材を用いることができるため、ここでは説明を割愛する。
【0039】
透明基材2と光学調整層3との間に設けられるアンダーコート層8は、透明基材2と光学調整層3との膜密着性をより良好なものとするために設けられる任意の層である。アンダーコート層8は、構成材料として、透明性のある樹脂、たとえばアクリル樹脂を主成分としてなる材料を用いて形成することができる。またSiONなどを用いてスパッタ法によりアンダーコート層8を形成してもよく、特に透明基材2として透明樹脂フィルムを用いる場合には、透明基材2のガスバリヤ性を向上させ、且つ、透明基材2界面における外光反射を抑制するという観点では、上記SiONにより形成されるアンダーコート層8を備えることが好ましい。アンダーコート層8の厚みは、特に限定されないが、一般的には、30nm〜100nm程度である。
【0040】
タッチパネル部材13における光学調整層3は、その屈折率を、透明基材2よりも大きく、且つ、2層に積層される透明電極層10、12のうち、透明基材2に最も近い位置に備わる透明電極層10の屈折率よりも小さく設計されること以外は、タッチパネル部材1おける光学調整層3と同様の部材および同様の方法で構成することができる。そのため、ここではこれ以上の説明を割愛する。
【0041】
タッチパネル部材13における透明電極層は、光学調整層3上に設けられる、複数の透明電極部9からなる透明電極層10と、透明電極層10上において絶縁性層14を介して設けられる、複数の透明電極部11からなる透明電極層12の2層から構成される。また、透明電極部9の端部には取出し配線6が接続されている。一方、図示省略するが、透明電極層12を構成する複数の透明電極部11の端部にも、取出し配線16が設けられてもよい。取出し配線6の態様は、タッチパネル部材の積層電極パターンにおいて実施可能な態様であれば、特に限定されず、任意選択で実施することができる。透明電極層10および透明電極層12は、対応する所定のパターンで積層形成されてタッチパネル部材の積層電極を構成する。タッチパネル部材13の好ましい使用態様としては、透明基材2とは反対面側であるタッチ面において、導体が接触した領域、または接触に近い状態となった領域を静電容量の発生により感知することが可能なように2層の透明電極層10、12がパターン形成されてよく、静電容量式タッチパネルに好適に用いることができる。あるいは、タッチパネル部材13を抵抗膜方式のタッチパネルに用いてもよい。
【0042】
実施態様2として例示するとおり、本発明のタッチパネル部材は、透明電極層として透明基材の一方側面に、2層以上に積層される透明電極層を備えてもよく、かかる態様では、積層される透明電極層間には、絶縁体として機能する絶縁性層が設けられることが一般的である。また、2層以上の透明電極層が設けられる本発明のタッチパネル部材では、透明基材の最も近くに位置する透明電極層の屈折率が、光学調整層の屈折率より大きくなるよう設計される。
【0043】
透明電極層10および透明電極層12は、所定のパターン、即ち、タッチパネル部材に積層される透明電極層として、タッチ面において接触または接触に近い状態である領域を感知することが可能なパターンであれば、いずれのパターンで形成されてもよい。上記所定のパターンは、タッチパネルの作動原理によって大別される方式によって異なり、本発明のタッチパネル部材の使用が予定されるタッチパネルの方式に適したパターンを適宜採用してよい。以下には、静電容量方式のタッチパネルに適した透明電極層のパターンを例に説明する。
【0044】
例えば、図3に示すように、図示省略する透明基材2上に整列する複数のダイヤ形状である透明電極部9が、x方向において、独立に整列する列と、x方向に直線状に連結された列とが交互に形成されて構成される透明電極層10が設けられ、透明電極層10上において、透明電極層10の独立に整列するダイヤ形状の透明電極部9をy方向に連結するための複数のブリッジ電極である透明電極部11からなる透明電極層12が、図示省略する絶縁性層14を介して積層形成されてよい。尚、本明細書において、透明電極層10のパターンをダイヤ形状パターン、透明電極層12のパターンをブリッジ形状パターン、これらの積層パターンを、ダイヤブリッジパターンともいう。図中、破線で囲まれる領域は、タッチ面側から視認可能なアクティブエリアを示す。本発明において2層の透明電極層10、12が積層形成されてなるパターンは、上述に限定されないが、特に図3に例示するダイヤブリッジパターンであって、透明基材2から遠い側の透明電極層12がブリッジ形状パターンとして形成される態様は本発明の効果が非常に良好に発揮されるため好ましい。本発明において、タッチ面側から入射される光の反射が良好に防止または低減されるのは、主として光学調整層3との間で屈折率の大小が規定される透明電極層10である。一方、図3に示すダイヤブリッジパターンでは、光学調整層3との間で屈折率の大小が規定されない透明電極層12のブリッジ形状パターンを構成する透明電極部11の表面面積の総量は、透明電極層10のダイヤ形状パターンを構成する透明電極部9の表面面積の総量よりも充分に小さい。そのため、透明電極層12におけるタッチ面側からの入射する光の反射の影響が少ないか、あるいは実質的にない。したがって、透明電極層10は光学調整層3の存在により、また、透明電極層12は表面面積の総量が充分に小さいことにより、いずれも光の反射が小さくなり、タッチ面側からの透明電極層10、12の視認が良好に防止または低減される。また、タッチ面が透明基材2の透明電極層10、12を有しない面側である場合にも、同様の効果が発揮される。ただし、2以上の透明電極層を備える態様の本発明は、上述するダイヤブリッジパターンが採用された場合であっても、光学調整層を設けない従来のタッチパネル部材と比較すれば、充分に光の反射を防止または抑制する効果が発揮され、透明樹脂層のパターンの視認を防止し、または抑制させる効果が発揮可能である。
【0045】
本発明のタッチパネル部材において、透明電極層が二層積層されてなる態様において、異なる積層態様の例を図4を示す。図示省略する透明基材上において、x方向に伸長する複数の帯状の透明電極部101がy方向に整列して形成されることにより構成される透明電極層102が設けられ、透明電極層102上において、y方向に伸長する複数の帯状の透明電極部103がx方向に整列して形成されることにより構成される透明電極層104が、図示省略する絶縁性層を介して積層形成されてよい。このとき一般的には、各透明電極部101、103の少なくとも一方の端部には、取出し配線105が設けられてよい。図中、破線で囲まれる領域は、タッチ面側から視認可能なアクティブエリアを示す。このように、帯状の透明電極部から構成される透明電極層の積層対応において、透明電極部101および103の幅方向の長さは特に限定されない。ただし、透明電極層104の表面面積の総量を小さくすることによって、透明電極層104の光の反射を低減させ、透明電極層104のタッチ面からの視認を防止あるいは低減させるという観点からは、透明電極部103の幅方向の長さが、透明電極部101の幅方向の長さ以下であることが望ましく、透明電極部103の幅方向の長さが、透明電極部101の幅方向の長さを下回ることがより望ましい。
【0046】
絶縁性層14は、タッチパネル部材において積層される2層の透明電極層の間における絶縁体として機能する層である。したがってタッチ面からの視認性を損なわない程度の透明性と適度な硬度を示す絶縁性の材料を用いて形成してよい。例えば、透明性のアクリル樹脂や、シロキサン樹脂を主成分とする材料により形成してよいが、これに限定されない。絶縁性層14の厚みは、特に限定されず、上述する表面保護層7の厚みについて説明する内容と同様に実施されることが好ましく、ここでは再度の説明を割愛する。ただし、絶縁性層14および表面保護層7の厚みは、同じであっても、異なっていてもよい。
【0047】
タッチパネル部材13は、透明電極層12を覆って積層される表面保護層7を任意で設けてよい。尚、タッチパネル部材13において、表面保護層7が設けられない場合には、タッチパネル部材13の透明基材2と反対側の表面は、透明電極層12と、絶縁性層14であって透明電極層12と重複しない領域とが露出していてもよい。タッチパネル部材13に設けられる表面保護層7は、タッチパネル部材1において説明する表面保護層7と同様に構成することができるため、その説明はここでは割愛する。
【0048】
[透明電極層付き基板]
(実施態様3)
次に、本発明の透明電極層付き基板について、図5(A)に図示される、基板積層型タッチパネル部材31に用いられる、透明電極層付きフィルム基板37を例に説明する。尚、本発明の透明電極層付き基板に用いられる透明基材は、上述に説明する透明基材と同様のものを用いることができる。例えば、本発明の透明電極層付きフィルムを積層させてタッチパネル部材を構成することを予定する場合には、タッチパネルの方式を勘案して透明基材を選択してもよい。具体的には、本発明の透明電極層付きフィルムを積層させて静電容量方式のタッチパネル部材を構成する場合には、透明基材としては透明樹脂フィルムが好適であり、また本発明の透明電極層付きフィルムを積層させて抵抗膜方式のタッチパネル部材を構成する場合には、透明基材としては、透明ガラス基材などを用いることが好適であるが、透明基材の選択は上述に限定されず任意である。以下においては、透明基材として、透明樹脂フィルムを用いた態様を例に説明する。尚、本明細書において、透明基材として透明樹脂フィルムを用いる透明電極付き基板を、「透明電極付きフィルム基板」と呼ぶ場合がある。
【0049】
透明電極層付きフィルム基板37は、透明樹脂フィルム32上にシロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層33を備え、光学調整層33上に複数の透明電極部34がパターン形成されてなる透明電極層35を備え、さらに透明電極層35を覆って透明保護層36を備えて構成される。ここで、光学調整層33の屈折率は、透明樹脂フィルム32の屈折率よりも大きく、且つ、透明電極層35の屈折率よりも小さい。上述のとおり構成される本発明の透明電極層付きフィルム基板37は、透明樹脂フィルム32の透明電極層35を備える面側から、あるいは、透明樹脂フィルム32の透明電極層35を備えない面側から、観察された際に、透明電極層35のパターンの視認が防止または低減される。したがって、透明電極層付きフィルム基板37を備える任意の部材において、使用者に透明電極層35の視認を防止または低減することができる。
【0050】
透明樹脂フィルム32は、上述する透明基材の説明において含まれる透明樹脂フィルムと同様のものを用いることができるため、ここでは説明を割愛する。
【0051】
透明電極層付きフィルム基板37は、透明樹脂フィルム32上に直接に光学調整層33が設けられる態様が採用されるが、本発明の透明電極層付き基板は、これに限定されるものではなく、透明樹脂フィルムと光学調整層との間に、任意の層がさらに設けられていてもよい。任意の層としては、例えば、上述するアンダーコート層などが挙げられるがこれに限定されない。
【0052】
光学調整層33は、上述するタッチパネル部材の発明において説明する光学調整層と同様に構成することができるため、ここでは説明を割愛する。
【0053】
複数の透明電極部34がパターン形成されてなる透明電極層35は、上述するタッチパネル部の発明において説明する透明電極層と同様に構成することができる。また、透明電極層35のパターンも任意であって、透明電極層付きフィルム基板37の利用が予定される部材、パネル、あるいは装置などに適したパターンを採用してよい。ただし、本発明の基板積層型タッチパネル部材31のように、透明電極層付きフィルム基板37に、さらに透明電極層付きフィルム基板40を積層させることを予定する場合には、積層される透明電極層付きフィルム基板40における透明電極層39のパターンを勘案し、透明電極層35のパターンを決定することが一般的である。
【0054】
透明保護層36は、透明電極層35を保護するために設けられる任意の層である。透明保護層36は、上述する表面保護層と同様に構成することができるため、ここでは説明を割愛する。
【0055】
[基板積層型タッチパネル部材]
(実施態様4−1)
次に、本発明の透明電極層付き基板を用いる本発明の基板積層型タッチパネル部材について図5を用いて説明する。図5(A)に示す基板積層型タッチパネル部材31は、本発明の透明電極層付きフィルム基板37、40を、粘着層41を介して積層させて貼り合わせることによって構成される。透明電極層付きフィルム基板40は、透明電極層35の代わりに、複数の透明電極部38がパターン形成されてなる透明電極層39を備えること以外は、上述で説明する透明電極層付きフィルム基板37と同様に形成することができる。透明電極層35と、透明電極層39とは互いに対応するようパターニングされており、透明電極層35と39とによってタッチパネル部材の積層電極が構成される。
【0056】
粘着層41は、透明電極層付きフィルム基板37の透明保護層36表面、あるいは透明保護層36を設けない場合には透明電極層35表面と、透明電極層付きフィルム基板40の透明基材32の露出面とを貼り合わせて固定することができ、タッチパネル部材の透過率を良好に維持できる層であればよい。粘着層41は、例えば、透明性のアクリル接着剤などを透明電極層付きフィルム基板37の透明保護層36表面、あるいは透明保護層60を設けない場合には透明電極層35表面および/または透明電極層付きフィルム基板40の透明基材32の露出面に塗布して、2枚のフィルムを位置合わせして積層させることによって形成することができる。
【0057】
尚、基板積層型タッチパネル部材31では、透明電極層付きフィルム基板37、40を、粘着層41を介して積層させて貼り合わせる態様を示した。しかし、本発明において、透明電極付き基板を積層させて基板積層型タッチパネルを構成する態様はこれに限定されない。例えば、2枚の透明電極付き基板を重ね合わせ、2枚の透明基材の周縁の任意の箇所を留め合わせて基板積層型タッチパネル部材を構成してもよい。このとき、積層される透明電極付き基板の対向面は、一部または全面が直接に当接していてもよいし、上記対向面間に任意の層を備えていてもよいし、あるいは、上記対向面間に空気層を備えていてもよい。
【0058】
基板積層型タッチパネル部材31を構成する透明電極層付きフィルム基板37、40は、いずれも光学調整層33を備えるため、基板積層型タッチパネル部材31を、透明電極層付きフィルム基板40における透明保護層36側から目視した場合であっても、透明電極層付きフィルム基板37における透明樹脂フィルム32側から目視した場合であっても、透明電極層35および39の視認が防止または低減される。
【0059】
(実施態様4−2)
次に、図5Bに示す、本発明の基板積層型タッチパネル部材48について説明する。基板積層型タッチパネル部材48は、本発明の透明電極層付きフィルム基板44と、光学調整層を備えない透明電極層付きフィルム基板47とを粘着層41を介して積層させて貼り合わせることによって構成される。透明電極層付きフィルム基板44は、透明電極層35の代わりに、複数の透明電極部42がパターン形成されてなる透明電極層43を備えること以外は、上述で説明する透明電極層付きフィルム基板37と同様に形成することができる。一方、透明電極層付きフィルム基板47は、光学調整層を備えず、透明樹脂フィルム32の屈折率と透明電極層46の屈折率との大小関係はなんら規定されず、且つ、透明電極層35の代わりに、複数の透明電極部45がパターン形成されてなる透明電極層46を備えること以外は、上述で説明する透明電極層付きフィルム基板37と同様に形成することができる。透明電極層43と透明電極層46とは互いに対応するようパターニングされており、透明電極層43と透明電極層46とによって基板積層型タッチパネル部材48の積層電極が構成される。また粘着層41は、基板積層型タッチパネル部材31における粘着層41と同様であり、また、粘着層41以外の手段で2つの基板を積層させてよいことも上述と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0060】
基板積層型タッチパネル部材48を構成する透明電極層付きフィルム基板44は、光学調整層を備える。そのため、基板積層型タッチパネル部材48を、透明電極層付きフィルム基板47における透明保護層36側から目視した場合であっても、透明電極層付きフィルム基板44における透明樹脂フィルム32側から目視した場合であっても、透明電極層43の視認が防止または低減される。したがって、基板積層型タッチパネル部材48は、2層の透明電極層のうちの少なくとも一方については、肉眼での視認が防止または低減されるという効果が発揮される。特に、透明電極部42の表面面積の総量に対し、透明電極部45の表面面積の総量が充分に小さくなるパターンを採用する態様の本発明では、基板積層型タッチパネル部材48を、透明電極層付きフィルム基板47における透明保護層36側から目視した場合であっても、透明電極層付きフィルム基板44における透明樹脂フィルム32側から目視した場合であっても、透明電極層46が視認され難い。したがって、かかる態様では、透明電極層43および透明電極層46のいずれも視認が防止または低減される効果が発揮されるため好ましい。基板積層型タッチパネル部材48において、上記好ましい効果を発揮させることを可能とする透明電極層の積層パターンとしては、例えば図3に示すダイヤブリッジパターンであって、ブリッジ形状パターンが透明電極層46において実施される態様が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
(実施態様4−3)
図5Cに示す、本発明の基板積層型タッチパネル部材55は、透明電極層付きフィルム基板44および47の積層順を入れ替えた以外には、基板積層型タッチパネル部材48と同様に構成される。また、透明電極層43および透明電極層46の視認を防止または低減させる効果についても基板積層型タッチパネル部材48と同様である。
【0062】
以上に説明する本発明の基板積層型タッチパネル部材31、48、55は、2枚の透明電極付き基板を用い、一方の透明電極付き基板の透明基材とは反対面側と、他方の透明電極付き基板の透明基材面側とを対面させる向きで積層させる態様を示した。しかし、本発明の基板積層型タッチパネル部材はこれに限定されない。即ち、本発明の積層型タッチパネル部材は、2枚の透明電極付き基板を用い、一方の透明電極付き基板の透明基材とは反対面側と、他方の透明電極付き基板の透明基材とは反対面側とを対面させる向きで積層させる態様も含まれる。
【0063】
[タッチパネル部材の製造方法]
以下に、本発明のタッチパネルおよび透明電極付き基板の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)について説明する。本発明の製造方法は、透明基材の一方面側上に、直接又は間接に、塗工手段により、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層形成用塗工液を塗工して光学調整層を形成し、その後、上記光学調整層上に直接または間接に所望のパターンでなる透明電極層を形成することを特徴とする。ここでは、上述する実施態様2のタッチパネル部材13を例に本発明の製造方法を説明する。
【0064】
透明基材2を準備する。透明基材2は、何ら前処理をせず、あるいは、超純水を用いて界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄する等の任意の前処理を施したものを使用してよい。
【0065】
透明基材2上に、直接または間接に光学調整層3を製造する。本発明の製造方法では、任意で、光学調整層3を形成する前に、透明基材2上に直接にアンダーコート層8などの任意の層を形成してもよい。アンダーコート層8の積層方法は特に限定されないが、たとえば、上述するアンダーコート層構成材料を適当な溶媒に混合させた塗工液を透明基材2上に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することによって形成することができる。塗工手段は、アンダーコート層8の構成材料を、透明基材2面に略均一な膜厚で塗工が可能な塗工方法であればいずれの方法を採用しても良く、例えば、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。またアンダーコート層8は、選択される材料によってはスパッタ法などの塗工方法以外の方法によって形成することも可能である。
【0066】
次に、光学調整層3を形成するが、そのために予めに光学調整層3を形成するための光学調整層形成用塗工液を調製する。光学調整層形成用塗工液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)、あるいはPEGMEAと他の液との混合液などの適当な液にシロキサン樹脂、およびアクリル樹脂を混合し、さらに任意で、添加成分を混合して調製される。シロキサン樹脂、アクリル樹脂および任意の添加成分は、上述する本発明のタッチパネル部材において説明するものと同様であり、本発明の趣旨を逸脱せず、形成される光学調整層の屈折率が、使用される透明基材の屈折率よりも大きく、透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層の屈折率よりも小さくなるよう調製可能であれば適宜決定してよい。
【0067】
尚、後述するとおり、光学調整層形成用塗工液を透明基材面に直接または間接に塗工して塗膜を形成した後、該塗膜を露光処理してもよい。上記露光処理を実施する場合には、光学調整層形成用塗工液としては、特に感光性シロキサン樹脂材料を調製する。
具体的には、上記感光性シロキサン樹脂材料は、構成樹脂としてシロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む、電離放射線で硬化可能なシロキサン樹脂材料であってよい。
中でも、特許第3821165号に開示される放射線硬化性樹脂組成物にさらにアクリル樹脂を含有させた組成物、即ち、シロキサン樹脂(ただし、フェノール基を有する水性塩基可溶性シリコン含有ポリマーを除く。)光酸発生剤又は光塩基発生剤、ならびに、上記シロキサン樹脂を溶解可能であり、非プロトン性溶媒(即ち、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルジオキサン、などの当該公報請求項1に列挙されるエーテル系溶媒を1種以上含む非プロトン性溶媒)を含有してなり、放射線の照射により硬化する放射線硬化性組成物に、さらにアクリル樹脂を加え、本発明における光学調整層形成用塗工液として好適に用いることができる。
あるいはまた、特許第3758669号に開示される放射線硬化性樹脂組成物、即ち、シロキサン樹脂、露光する工程で使用される特定波長の放射線を照射することにより、酸性活性物質を放出する光酸発生剤、又は塩基性活性物質を放出する光塩基発生剤、アクリル樹脂、上記シロキサン樹脂成分を溶解可能な溶媒、及び、上記特定波長の放射線を照射しても酸性活性物質及び塩基性活性物質を放出しない硬化促進触媒を含有してなる放射線硬化性組成物に、さらにアクリル樹脂を加え、本発明の光学調整層形成用塗工液として好適に用いることができる。
尚、電離放射線で硬化可能なシロキサン樹脂の例としては、下記一般式(1)で表される化合物を加水分解縮合して得られる樹脂等が挙げられる。
(式1) RSiX4−n (1)
(式中、Rは、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
【0068】
上述のとおり調製した、光学調整層形成用塗工液を、アンダーコート層8面に塗工する。塗工方法は、光学調整層形成用塗工液を、対象となる基材面に略均一な膜厚で塗工が可能な塗工方法であればいずれの方法を採用しても良く、例えば、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。特に、スピンコート法は、塗工方法として汎用される方法でありながら、均質な塗膜を形成し易く、またシロキサン樹脂を含む塗膜を形成する方法としても好適である。しかも、本発明の製造方法に用いられる光学調整層形成用塗工液には、アクリル樹脂を含有させており、該光学調整層形成用塗工液がスピンコート装置などの塗工装置に付着することを良好に防止し、または低減させることができる。そのため、塗工装置の清掃の頻度を落とすことができる。尚、光学調整層を2層以上積層して構成する場合にも、形成手段は上記塗工方法で実施するが、各光学調整層を形成する塗工方法は同じ方法であっても異なった方法であってもよい。
【0069】
光学調整層形成用塗工液を用いて形成された塗膜は、次いで、適当な手段で乾燥することが望ましい。乾燥手段は、特に限定されず、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいはこれらの組み合わせなど、一般的に塗工液を用いて形成された塗膜を乾燥する手段として公知の乾燥手段により実施することができる。上記塗膜は、加熱乾燥により、あるいは乾燥後に、さらに加熱することによって硬化させてもよい。
【0070】
光学調整層形成用塗工液として、感光性シロキサン樹脂材料を用いる場合、感光性シロキサン樹脂材料を対象となる基材面に塗工して形成された塗膜を、乾燥した後に、さらに露光処理を行うことが望ましい。具体的には、上記塗膜を乾燥後、適当な温度で加熱(プリベーク)し、次いで紫外線などの電離放射線を照射して露光し塗膜を硬化させ、次いで、必要に応じて加熱(ポストベーク)することによって、感光性シロキサン樹脂を含む、光学調整層を形成することができる。尚、感光性シロキサン樹脂材料に含まれるシロキサン樹脂は、加熱工程における加熱温度を、約200℃〜約500℃程度の範囲から適宜決定できる。好ましい態様としては、感光性シロキサン樹脂材料を用いた場合、プリベーク時には、80〜120℃程度の温度で加熱して樹脂を半硬化させ、ポストベーク時において、約200℃〜約300℃程度の温度範囲において加熱することができる。上記加熱工程における加熱温度は、光学調整層にアクリル樹脂が残存可能な温度に設定することに留意する。
尚、本発明に関し、電離放射線とは、紫外線などを含む電磁波、及び電子線などを含み分子を重合し得るエネルギー量子を有する粒子線のいずれをも含む。また感光性、あるいは電離放射線硬化性、というときは、上記電離放射線により硬化可能であることを意味する。
【0071】
光学調整層3を形成した後、透明電極層10を形成する。透明電極層10の形成方法は特に限定されず、上述する本発明にタッチパネル部材における透明電極層を構成する材料を用い、一般的なタッチパネル部材における透明電極層の形成方法として公知の方法を適宜選択して実施することができる。例えば、フォトリソグラフィ法、あるいはスクリーン印刷法などの形成方法が一般的である。
【0072】
例えば、フォトリソグラフィ法により透明電極層10を形成する場合には、対象となる基材面、即ち、実施態様2では光学調整層3面に、透明電極層10の構成材料からなる膜を形成し、さらに、感光性材料を塗布して感光性膜を形成する。そして、複数の透明電極部9の形成パターンに対応した露光マスクを感光性膜上に配置し、露光光を照射して露光する。その後、露光マスクを取り除き、感光性膜を現像し、次いで、導電性膜をエッチングし、最後に、基材面に残る感光性膜を除去することにより、所望のパターンで形成される複数の透明電極部9からなる透明電極層10を形成することができる。ただし上述は、本発明の製造方法における透明電極層10の形成手段の一態様であって、透明電極層10の形成方法を限定するものではない。
【0073】
取出し配線6は、対象となる基材面、即ち、実施態様2では光学調整層3面において、透明電極層10のパターンにあわせて形成される。取出し配線6の形成は、透明電極層10の形成後、あるいは透明電極層10の形成前のいずれにおいて実施してもよい。一般的には、取出し配線6は、タッチ面側から視認可能なアクティブエリア外において、透明電極層10の端部と電気的に接続されるようパターニングされる。取出し配線6の形成は、上述する取出し配線を構成する材料を用い、タッチパネル部材における取出し配線の形成方法として公知の方法を適宜選択して実施することができる。例えば、フォトリソグラフィ法、あるいは印刷法などの印刷方法による形成方法が一般的である。上記印刷方法としては、スクリーン印刷法、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ノズルジェット法などの公知の印刷方法を適宜採用することができる。中でも、スクリーン印刷は、取出し配線を厚膜に形成することができ、且つ、高粘度インキを基材面に塗布できるためパターン形状を維持することが容易である等の観点で好ましい。一方、フォトリソグラフィ法は、薄膜形成、微細パターンの形成に優れる。
【0074】
例えば取出し配線6の形成方法として、スクリーン印刷法を選択する場合には、まず、光学調整層3側を上面にして、透明基材2を印刷機ステージに設置して固定し、所望の取出し配線6の形成パターンと同様のパターンが設けられたスクリーン版を用意し、基材とスクリーン版とを位置あわせする。そして、印刷機におけるスクレッパーからスクリーン版上に取出し配線形成用インキをコートさせ、次いで、スキージを移動させて、スクリーン版のパターンからインキを取出し配線6形成予定位置に転写させて、取出し配線を形成することができる。ただし上述は、本発明の製造方法において、取出し配線6の形成方法の一態様を示すものであって、取出し配線6の形成方法を限定するものではない。
【0075】
透明電極層10が形成された後、透明電極層12を形成する前に、絶縁性層14を形成する。絶縁性層14は、上述する絶縁性層の構成材料を準備し、該構成材料を、透明電極層10を覆って基材面上に塗工して塗膜を形成する。塗工方法は、絶縁性層を構成する材料を、基材面に略均一な膜厚で塗工が可能な塗工方法であればいずれの方法を採用しても良く、例えば、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。続いて、減圧乾燥、加熱乾燥あるいはこの組み合わせ等によって塗膜を乾燥し、塗膜中の樹脂材料を硬化させるためにさらに加熱して絶縁性層14を形成することができる。ただし、上述は本発明の製造方法において絶縁性層14の形成方法の一実施態様を示すものであって、絶縁性層14の形成方法を何ら限定するものではない。例えば、絶縁性層の構成材料として感光性材料が選択される場合には、上記塗膜を乾燥させた後、加熱工程に加え、露光工程を実施してもよい。
【0076】
絶縁性層14を形成した後、透明電極層12を形成する。透明電極層12の形成は、透明電極層10に対応するパターンであって、複数の透明電極部11が所定のパターンで形成されるようパターニングすること以外は、透明電極層10と同様に形成することができるため、ここでは説明を割愛する。また透明電極層12の端部に電気的に接続される取出し配線6を設ける場合についても、透明電極層12に対応するパターンでパターニングされること以外は、上述する透明電極層10の端部に電気的に接続される取出し配線6の形成方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0077】
表面保護層7は、透明電極層12上に任意で形成してよい。上述する表面保護層7の構成材料を準備し、透明電極層12を覆って基材表面に表面保護層7の構成材料を塗工して塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱し、また選択される材料によってはさらに露光工程を実施して、表面保護層7を形成することができる。表面保護層7の形成における乾燥、加熱、露光については、絶縁性層14の形成と同様の方法で実施することができる。また、表面保護層7として、透明樹脂フィルムを準備し、透明電極層12を覆って基材表面に粘着剤を塗布して粘着層を形成し、該粘着層上に上記透明樹脂フィルムを貼り付けて、表面保護層7を形成してもよい。
【0078】
以上に説明する本発明の製造方法は、本発明のタッチパネル部材13を例に説明したが、本発明の透明電極付き基板の製造方法についても、以上に説明する記載内において実施することができる。即ち、透明基材2上に直接または間接に、上述のとおり光学調整層3を形成し、その後、透明電極層10を形成することによって、本発明の透明電極付き基板を製造することができる。本発明の透明電極付き基板の製造方法においても、アンダーコート層などの任意の層を透明基材と透明電極層との間に形成する工程、および/または取出し配線を形成する工程を実施してもよい。また、本発明の透明電極付き基材の製造方法において、透明電極層を形成した後、上述する表面保護層7と同様の層を形成する工程を実施して、これを透明保護層形成工程としてもよい。
【0079】
[座標検出装置]
次に、本発明の座標検出装置について説明する。上述する本発明のタッチパネル部材または本発明の基板積層型タッチパネル部材を用い、透明電極層に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路とを備えることによって、本発明の座標検出装置を構成することができる。
【0080】
本発明の座標検出装置は、タッチ面側からの透明電極層の視認が良好に防止または低減される本発明のタッチパネル部材または本発明の基板積層型タッチパネル部材(以下の座標検出装置の説明においては、これらをあわせて、単に「タッチパネル部材」という場合がある)を備えるため、表示品質が向上し、また使用者の使用感を向上させることが可能である。
【0081】
本発明における検出回路は、タッチパネル部材におけるタッチ面の接触または接触に近い動作により発生する電気信号を検出することを可能とする回路である。
以下に、静電容量式のタッチパネル部材を用いる本発明の座標検出装置を例に説明する。上記座標検出装置は、タッチパネル部材のタッチ面に、指などの導体が接触するか、または接触に近い状態で接近した際に、その接触動作の行われた座標における静電容量の変化による交流電流の偏りを検出する検出回路と、上記検出回路より出力される静電容量の変化量より、所定の演算式に基づき、接触動作の行われた座標位置を計算する座標算出用演算回路とを備える。タッチパネル部材と検出回路とは、該タッチパネル部材における接触動作を電気信号として検知可能に接続されていればよい。例えば、透明電極層が絶縁性層を介して2層にパターン形成されている態様のタッチパネル部材を用いる場合には、透明基材側から、第一透明電極層、絶縁性層、第二透明電極層の順に構成され、第一透明電極層、および第二透明電極層の端部に設けられた取出し配線と、検出回路とが、フレキシブルプリント回路などの配線部材などによって電気的に接続される。
【0082】
図6に、本発明の座標検出装置の動作の流れの一実施態様を説明するための説明図を示す。図面左側に示すタッチパネル部材は、特に透明電極層について示す。具体的には、第1透明電極層を構成する、x方向に電流が流れる複数の第1透明電極部X1、X2、X3・・・と、第2透明電極層を構成する、y方向に電流が流れる複数の第2透明電極部Y1、Y2、Y3・・・とを備える。図面中央に示す検出回路における定電流源から、電流が、第1透明電極部X1、X2、X3・・・および第2透明電極部Y1、Y2、Y3・・・に供給される。このとき電流は、基準クロックによって指示される規定時間に基づき、高速スイッチ部におけるスイッチングの指示を受け各電極へ接続を切り替える切り替え部によって、絶えず定電流源から各電極へと流れる電流の接続のオン、オフが切り替えられてよい。
【0083】
タッチパネル部材のタッチ面において接触動作がないときには、基本的に交流電流は流れず、初期値ゼロの状態であるが、接触動作が行われると、静電容量の発生により交流電流が流れ、電圧降下が生じる。検出回路では、上述のとおり切り替えられながら断続的に各電極に電流が送られるとともに、電流の変化を検知する電流検出回路により各電極の電流により抵抗変化を検知するよう構成される。電流の変化による電圧降下量は、積分用コンデンサにおける増幅回路により増幅されて出力され、インパルスノイズを取り除くための低域通過フィルタを通過し、比較器において、基準電圧と積分用コンデンサで増幅された電圧を比較することで積分用コンデンサが基準電圧に達するまでの時間を認識する。検出回路により検出された電極の容量変化に基づく信号は、タッチ検出演算回路に送られ、所定の計算式により接触動作の行われた座標が算出される。尚、上述は、本発明の座標検出装置の一実施態様を説明するものであって、本発明の座標検出装置を限定するものではなく、本発明の座標検出装置の検出動作を実行する構成および動作の流れとしては、公知のタッチパネルセンサにおける接触動作を検出可能な回路を適宜選択して実施してよい。
【0084】
[タッチパネル部材の利用]
本発明のタッチパネル部材または本発明の基板積層型タッチパネル部材(本段落以下に記載するタッチパネル部材の利用に関しては、これらをあわせて、単に「タッチパネル部材」という場合がある)の利用の例として、表示装置と組み合わせ用いる態様について説明する。本発明のタッチパネル部材は、タッチパネル付表示装置に組み合わされる部材として利用することができる。本発明のタッチパネル部材は、タッチ面側からの透明電極層の視認が良好に防止または低減されているため、表示装置と組み合わせた際に、高い表示品質の表示装置を提供可能である。
【0085】
本発明のタッチパネル部材を表示装置に組み合わせる態様は特に限定されないが、例えば、本発明のタッチパネル部材と、別途、製造された表示パネルとを用い、該表示パネルに本タッチパネル部材を搭載することによってタッチパネル付表示装置を構成することができる。上記タッチパネル付表示装置の例としては、図7(A)に示すとおり、透明基材111および透明基材112を備え、両基材間に表示媒体113を備える表示パネル114を用い、表示パネル114の表示側基材である透明基材111と、上述するタッチパネル部材13の透明基材2とを対面させ、接着層などを介して両者を貼り合わせてタッチパネル付表示装置115を構成することができる。表示媒体113としては、例えば液晶表示媒体、有機EL表示媒体などを挙げることができるがこれに限定されない。尚、本明細書において表示媒体とは、電気的な要素を含んで表示可能な媒体であって、紙媒体などは除かれる。上記表示媒体としては、例えば、駆動回路により電気信号が供給されるものなどを含む。
【0086】
また上記タッチパネル付表示装置の異なる例としては、本発明のタッチパネル部材の透明基材を、表示装置の基材の一方側として利用する、タッチパネル部材一体型のタッチパネル付表示装置を挙げることができる。即ち、図7(B)に示すとおり、本発明のタッチパネル部材13の透明基材2と、これに対面する表示装置側の透明基材112との間に表示媒体113を備えるタッチパネル付表示装置116を構成することもできる。タッチパネル付表示装置116の製造方法は特に限定されないが、例えば、タッチパネル部材13を作製し、次いで、任意で、さらに透明基材2の露出面側に、表示用の構成層を設け、これを表示側基板とし、対面する透明基材112と組み合わせ、透明基材2と透明基材112との間に液晶表示媒体や有機EL表示媒体を設けることによって製造することができる。本態様では、タッチパネル部材の透明基材が、表示装置パネルの一方側の基材としても用いられるため、基材数を少なくすることができ、装置の薄膜化および軽量化が図られる点で優れている。
【0087】
タッチパネル部材一体型のタッチパネル付表示装置116が、タッチパネル付液晶表示装置である場合には、透明基材2の図示省略する透明電極層が設けられた面とは反対面側において、さらに、液晶表示用の着色層、該着色層用保護層、表示用透明電極層、駆動用液晶材料配向膜などの任意の層を、いずれか、あるいは組み合わせて設けてよい。一方、透明基材112には、液晶表示用の画素電極を設け、これらを対面させて一定の距離を確保して組み合わせ、両基材間に設けられたスペースに駆動用液晶材料を充填して、タッチパネル付液晶表示装置を構成することができる。
【0088】
また、タッチパネル部材一体型のタッチパネル付表示装置116は、タッチパネル付有機EL表示装置であってもよい。かかる態様では、透明基材2および112を対面する透明基板とし、これら透明基板間に有機EL素子が設けられるとともに、透明基材2の有機EL素子とは反対面側に、透明電極層が備わる構成であってよい。即ち、タッチパネル付有機EL表示装置であるタッチパネル付表示装置116は、アウトセルの透明電極層を備える。
【0089】
タッチパネル部材一体型のタッチパネル付有機EL表示装置の異なる態様として、図7(C)に示されるタッチパネル付有機EL表示装置117を示す。タッチパネル付有機EL表示装置117は、透明基材2上に光学調整層3を備え、さらに複数の透明電極部9がパターン形成されてなる透明電極層10および複数の透明電極部11がパターン形成されてなる透明電極層12が絶縁性層14を介して設けられる本発明のタッチパネル部材を用い、透明基材112上に設けられる有機EL素子118に対し、透明電極層10および透明電極12が有機EL素子118側に位置するようにセル組みした装置である。即ち、タッチパネル付有機EL表示装置117は、インセルの透明電極層を備える。
【0090】
尚、本明細書において、本発明のタッチパネル部材あるいは本発明の基板積層型タッチパネル部材は、透明基材に対し、透明電極層が設けられている側、あるいは、透明電極層が設けられていない側のいずれをタッチ面としてもよく、いずれの面をタッチ面とした場合であっても、タッチ面側において、透明電極層の視認が良好に防止または低減される。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
(透明基材の準備)
まず、透明基材としてのガラス板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35、屈折率1.53)550mm×650mmを準備し、超純水を用いて界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。
【0092】
(光学調整層の形成)
上記透明基材上にポリシロキサン樹脂が主成分の組成物(VF−1000、東レ株式会社製)にアクリル樹脂(NN880、JSR株式会社製)を加えたものを調整し、この塗布液を、上述のガラス透明基材上に直接に、スピンコート法(スピンコート装置、東京応化工業株式会社製 TR50000)により塗工して塗膜を形成した。尚、上記塗布液は、ポリシロキサン樹脂100重量部に対しアクリル樹脂が50重量部配合される割合で調整した。引き続き減圧乾燥装置にて0.02torrまで減圧して溶剤を部分的に除去し、さらに80℃のホットプレート上に透明基材を下面側として設置し、180秒間加熱(プリベーク)して、完全に溶剤成分を除去した。その後高圧水銀ランプにより350nmで6000mJの露光量で露光処理した。
上述のとおり露光処理が終了した基板を加熱炉(アドバンテスト社製FUW210PA)中、大気雰囲気下で200℃15分間加熱(ポストベーク)して硬化させ、膜厚60nmの光学調整層を透明基材層上に形成した。上述のとおり形成した光学調整層の屈折率を分光エリプソメトリー法により測定したところ、屈折率は波長550nmで1.7であった。
尚、上記透明基材に、タッチパネル部材が50面取りできるよう設計して以下のとおり作製し、そのうちの任意の一面を実施例1とした。
【0093】
(取出し配線の製版)
外周配線部の抵抗を補助する金属配線として、APCを上記ガラス基板全面にスパッタにより30nmの厚さで製膜した。引き続き、ポジ感光性材料(AZマテリアルズ社製)を用い、フォトリソグラフィ法により、アクティブエリア外に取出し配線のパターンを焼き付けた。さらにエッチャントとしてリン酸、硝酸、酢酸系混合溶液を用い、不要部分を除去し、引き続いて不要となったポジ感光性材料を苛性ソーダで剥離して金属配線パターンを形成した。
【0094】
(第一の透明電極層の製膜)
次に取出し配線が製版された透明基材面上に、第一の透明電極層を形成するために、スパッタにより全面に30nmの厚さでITOを製膜した。そして、取出し配線と同様のポジ感光性材料を用いてフォトリソグラフィ法により、整列する複数のダイヤ形状が、x方向において、独立に整列する列と、x方向に直線状に連結された列とが交互に形成される、ダイヤ形状パターンからなる第一の透明電極層を形成した。ITOのエッチャントとしてはシュウ酸系溶液を用いた。尚、本実施例においてガラス基材上に形成する第一の透明電極層、および第二の透明電極層は、図3で示す積層態様を採用した。形成された透明電極層の屈折率を分光エリプソメトリー法により測定したところ、屈折率は550nmで1.84であった。
【0095】
(絶縁性層の製膜)
アクリル樹脂材料(JSR株式会社製、NN902番号)を、上述のとおり製膜した第一の透明電極層を備える透明基材上であって、該第一の透明電極層面に直接に、スピンコート法により塗工して塗膜を形成した。引き続き減圧乾燥装置にて0.02torrまで減圧して溶剤を部分的に除去し、さらに90℃のホットプレート上で45秒間加熱(プリベーク)して、完全に溶剤成分を除去した。基板を室温まで冷却した後、後工程で形成予定の第二の透明電極層であるITO配線のブリッジ部分にコンタクトホールを設置したパターンのフォトマスクを適用し、プロキシアライナーにより365nmで100mJの露光量で露光処理した。
上述のとおり露光処理が終了した塗膜面を、現像液としての無機アルカリ溶液(JSR社製 CD150−CR)でディップ現像し、未露光部分を除去してパターンを形成した。さらに露光後の基板は加熱炉(アドバンテスト社製FUW210PA)中、大気雰囲気下で230℃1時間加熱(ポストベーク)して硬化させ、膜厚1.5μmのパターニングされた絶縁性層を第一の透明電極層上に形成した。
【0096】
(第二の透明電極層の製膜)
さらに上記絶縁性層上に、ブリッジ部を構成する2層目の透明電極層を形成するために、ITOを用い、スパッタにより全面に50nmの厚さで製膜し、第一の透明電極層と同様にポジ感光性材料を用いフォトリソグラフィの手法により所定の位置に複数のブリッジが形成される、ブリッジ形状パターンからなる第二の透明電極層を形成した。
【0097】
(表面保護層の製膜)
絶縁性層を形成する際に調製したアクリル樹脂層と同様のものを用い、表面保護層用のパターン向けのフォトマスクに変更した以外は、絶縁性層と同様の製膜手法により、第二の透明電極層を形成した基材面に厚さ1.5μmの表面保護層を製膜した。以上のとおり、波長550nmで屈折率1.53の透明基材と、屈折率1.84の第一の透明電極層との間に、屈折率1.7であってシロキサン樹脂とアクリル樹脂とが含有されてなる光学調整層が設けられたタッチパネル部材を作製し、これを実施例1とした。
【0098】
(比較例1)
アクリル樹脂を用いないこと以外は実施例1における塗布液と同様の塗布液を調整し、これを用いて、実施例1と同様の方法で、光学調整層にアクリル樹脂が含有しないこと以外は実施例1と同様のタッチパネル部材を形成し、比較例1とした。光学調整層の屈折率は1.7であった。
【0099】
(比較例2)
実施例1において用いた光学調整層形成用塗工液の代わりに、酸窒化ケイ素をターゲットとして用い、マグネトロンスパッタリング法(天谷製作所製スパッタリング装置D301を使用)により、屈折率1.7、膜厚60nmの酸窒化ケイ素からなる光学調整層を形成したこと以外は、実施例1と同様にタッチパネル部材を形成し、これを比較例2とした。また、スパッタ条件として真空チャンバー内の圧力を0.2〜0.6Pa、窒素ガスと酸素ガスを50:50の割合で導入してSiON膜とした。
【0100】
(比較例3)
光学調整層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にタッチパネル部材を作製し、これを比較例3とした。
【0101】
(実施例2)
(透明基材の準備)
まず、透明基材として150mm×150mmの透明樹脂フィルム(東レ株式会社製 ルミラーT60、屈折率1.60)を準備した。
【0102】
(光学調整層の形成および透明樹脂層の製膜)
実施例1における光学調整層と同様の部材を用い、同様の形成方法で、上述で準備した透明樹脂フィルム上に、光学調整層を形成した。該光学調整層の屈折率は、1.63であった。次いで、該光学調整層上に、実施例1における第一の透明電極層と同様の部材を用い同様の形成方法で透明電極層を形成した。該透明電極層の屈折率は、1.84であった。
【0103】
最後に、上記透明電極層を覆って表面保護層を設けて、本発明の透明電極付きフィルム基板である実施例2を得た。尚、実施例2の表面保護層の部材および形成方法は、実施例1における表面保護層と同様とした。
【0104】
(比較例4)
光学調整層を設けなかったこと以外は、実施例2と同様に、透明電極付きフィルム基板を作成し、これを比較例4とした。
【0105】
(実施例3)
光学調整層を設けなかったこと、および、透明樹脂フィルム上に設ける透明電極を、実施例1における第二の透明電極層に変更したこと以外は、実施例2と同様に、透明電極付きフィルム基板を作成し、これを第二基板とした。また、実施例2の透明電極付きフィルム基板を第一基板とした。
【0106】
上記第二基板の透明基材の露出面側に透明アクリル樹脂を含む粘着フィルム(3M社製、8171J)を用いて第一基板の表面保護層面と、第二基板の透明基材面とを対面させ、第一基板における透明電極層のダイヤ形状パターンと、第二基板における透明電極層のブリッジ形状パターンとによりダイヤブリッジパターンが構成されるよう位置あわせし、上記接着層を介して第一基板および第二基板を積層させて、基板積層型タッチパネル部材を製造し、これを実施例3とした。尚、本発明の基板積層型タッチパネル部材では、任意で取出し電極を設けてよいが、実施例3ではこれを省略した。
【0107】
(透明電極層の視認評価)
視認評価1として、以上のとおり作製した実施例1〜3、比較例1〜4について、透明電極層のパターンの視認について目視で観察した。観察条件は、日中、室内灯下において、タッチパネル部材を、卓上に透明基材面を下にして設置し、タッチパネル部材表面から、距離20cm、タッチパネル部材表面からの角度、約45度から目視で観察し、以下のとおり評価した。評価結果は、表1に示す。
目視により透明電極層が視認されなかった・・・・・・良好
目視により透明電極層が視認された・・・・・・・・・不良
【0108】
視認評価2として、実施例1〜3、比較例1〜4について、入射光の反射率を測定し、透明電極層(実施例3については第一基板における透明電極層)のある領域とない領域とにおける反射率差を測定し、これよって透明電極層の視認防止効果が良好に発揮されているか否の評価を行なった。具体的には、透明電極層が形成されていない透明基材面側から(実施例3については第一基板の透明基材面側から)、可視光領域400−700nmの光を透明基材面に対し鉛直方向から入射させた場合の、第一の透明電極層のある領域とない領域とにおける反射率の差を、透明基材、光学調整層、透明樹脂層の屈折率を用いて算出し、以下のとおり評価した。
反射率差が4%以下であった・・・・・良好
反射率差が4%を上回った・・・・・・不良
【0109】
(製造方法対応評価)
スピンコート法により、実施例1、実施例2および比較例1について、実質的に良好にタッチパネル部材を形成することができるか否かを、以下のとおり評価した。
光学調整層形成塗工液がスピンコート装置に付着することなく、良好にタッチパネル部材を形成することができた・・・・・・良好
光学調整層形成塗工液がスピンコート装置に付着してしまい、タッチパネル部材をスピンコート法で形成することが実質的に不適あることが確認された・・・・・・不良
【0110】
(異物混入評価)
光学調整層形成後、次工程にうつる前に、形成された光学調整層に異物が混入し、外観不良が生じていないか否かを評価した。具体的には、形成された光学調整層の任意の箇所であって下記単位面積に相当する領域を10箇所選択し、選択箇所における最長径100μm以上の異物の数を、異物検査機(タカノ株式会社製 外観検査機)を用いてカウントし、1箇所当たりの異物数の平均値を算出し、以下のとおり評価した。
10cmにおける異物数の平均値が5個未満であった・・・・・外観良好
10cmにおける異物数の平均値が5個以上であった・・・・・外観不良
【0111】
(密着性評価)
実施例1および比較例1の密着性を以下のとおり評価した。即ち、実施例1および比較例1を、温度85℃、湿度85%の高温高湿槽に設置し、240時間経過後に取出して信頼性試験実施可能な状態とした。その後、JIS K 5600に準拠して、実施例1および比較例1の表面保護層表面に対して、格子状に1mm間隔で縦横方向それぞれに6カットし、5×5の格子目を設けた。このとき切り込みは光学調整層が切断される深さで行なった。次いで、幅25mm、長さ75mmの粘着テープ(幅25mmあたりの付着力10±1N)を用い、格子が設けられた領域内において、テープの長手方向が格子の何れかの辺に平行となるように貼り付け、指でこすり付けた。その後、粘着テープの端をつまみ上げ、該粘着テープの非粘着面と表面保護層面とが約60°となる角度で、0.5〜1秒かけて引き剥がした後の状態を以下のとおり評価した。
粘着テープの貼り付け面の面積を100%としたときにタッチパネル部材からの転写率が10%未満であった・・・・・・評価A
粘着テープの貼り付け面の面積を100%としたときにタッチパネル部材からの転写率が10%未満であった・・・・・・評価B
【0112】
以上の評価から、タッチ面側からの透明電極層の視認が防止または低減され、また、光学調整層に異物が混入による外観不良が発生しておらず、且つ、このような優れたタッチパネル部材を実質的に提供可能であるのは、実施例1のみであった。また、実施例1および比較例1について密着性を実施したところ、実施例1の方が、密着性が良好であった。この結果、シロキサン樹脂を含む光学調整層にアクリル樹脂が含有されることで膜の密着性が向上することが示された。
【0113】
【表1】

【符号の説明】
【0114】
1 タッチパネル部材
2 透明基材
3 光学調整層
4 透明電極部
5 透明電極層
6 取出し配線
7 表面保護層
8 アンダーコート層
9 透明電極部
10 透明電極層
11 透明電極部
12 透明電極層
13 タッチパネル部材
14 絶縁性層
31、48、55 基板積層型タッチパネル部材
32 透明樹脂フィルム
33 光学調整層
34、38、42、45 透明電極部
35、39、43、46 透明電極層
36 透明保護層
37、40、44 本発明の透明電極層付きフィルム基板
41 粘着層
47 従来の透明電極層付きフィルム基板
101 透明電極部
102 透明電極層
103 透明電極部
104 透明電極層
105 取出し配線
112 透明基材
113 表示媒体
114 表示パネル
115、116 タッチパネル付表示装置
117 タッチパネル付有機EL表示装置
118 有機EL素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方面側上に、少なくとも1層の透明電極層を備え、
上記透明基材と、上記透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、
上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率であることを特徴とするタッチパネル部材。
【請求項2】
透明基材の一方面側上に、第一の透明電極層を備え、上記第一の透明電極層上に絶縁性層を備え、上記絶縁性層上に第二の透明電極層を備え、
上記透明基材と上記第一の透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、
上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記第一の透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<第一の透明電極層の屈折率であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル部材。
【請求項3】
透明基材の一方面側上にパターニングされた透明電極層を備え、
上記透明基材と上記透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、
上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率である
ことを特徴とする透明電極層付き基板。
【請求項4】
透明基材の一方面側上に透明電極層を備える透明電極層付き基板を2以上積層させてなるタッチパネル部材において、
上記透明電極層付き基板の少なくとも1つが、請求項3に記載の透明電極層付き基板であることを特徴とする基板積層型タッチパネル部材。
【請求項5】
透明基材の一方面側上に、少なくとも1層の透明電極層を備え、
上記透明基材と、上記透明基材に最も近い位置に備わる透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、
上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率であるタッチパネル部材と、
上記タッチパネル部材のタッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、
上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路を備えることを特徴とする座標検出装置。
【請求項6】
透明基材の一方面側上に透明電極層を備える透明電極層付き基板を2以上積層し、
上記透明電極層付き基板の少なくとも1つが、
透明基材の一方面側上にパターニングされた透明電極層を備え、
上記透明基材と上記透明電極層との間に、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂を含む光学調整層を備え、
上記透明基材の屈折率と、上記光学調整層の屈折率と、上記透明電極層の屈折率と、の大小関係が、透明基材の屈折率<光学調整層の屈折率<透明電極層の屈折率である基板積層型タッチパネル部材と、
上記基板積層型タッチパネル部材のタッチ面に対し、直接または間接に行なわれる接触動作によって出力される電気信号を検出する検出回路と、
上記検出回路において検出された電気信号から上記接触動作の行なわれた接触位置の座標を算出する座標算出用演算回路を備えることを特徴とする座標検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203701(P2012−203701A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68386(P2011−68386)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】