説明

タッチパネル

【課題】各種電子機器に用いられるタッチパネルに関し、反りを防ぎ、視認性が良好で操作の確実なものを提供することを目的とする。
【解決手段】上基板1上面に上位相差板6と偏光板7を積重すると共に、この偏光板7上面に、上位相差板6と加熱収縮率が同等以下の補正板8を設けることによって、加熱収縮率の大きな偏光板7の上下を、加熱収縮率の小さな補正板8と上位相差板6で挟んで、高温高湿の状態で使用された場合の反りを防ぎ、視認性が良好で操作の確実なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やカーナビ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、液晶等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着して、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を視認しながら、指やペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の各機能の切換えを行うものが増えており、視認性に優れ操作の確実なものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図3を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0005】
図3は従来のタッチパネルの断面図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、2は同じく光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が各々形成されている。
【0006】
そして、下導電層4上面には絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層3の両端には一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0007】
また、5は額縁状のスペーサで、このスペーサ5の上下面に塗布形成された接着層(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0008】
さらに、6はポリカーボネート等のフィルムを延伸し複屈折性を持たせた1/4波長の上位相差板、7はヨウ素や染料を配向させたポリビニルアルコールの上下面にトリアセチルセルロース等が積層された偏光板で、この上位相差板6と偏光板7が上基板1上面に積重され貼付されて、タッチパネルが構成されている。
【0009】
そして、このように構成されたタッチパネルは、液晶表示素子等の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0010】
以上の構成において、タッチパネル背面の液晶表示素子の表示を視認しながら、偏光板7上面を指或いはペン等で押圧操作すると、偏光板7や上位相差板6と共に上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0011】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0012】
また、この時、上方からの太陽光や灯火等の外部光は、先ず、偏光板7を透過する際、X方向及びこれと直交するY方向の光波のうち、例えば、偏光板7がY方向の光波を吸収するものであった場合、X方向の直線偏光となって偏光板7から上位相差板6に入射する。
【0013】
次に、この光は1/4波長の上位相差板6を透過することによって、直線偏光が円偏光となって下導電層4で上方へ反射する。
【0014】
そして、この反射光が、再び1/4波長の上位相差板6を透過することによって、1/2波長ずれたY方向の直線偏光となって偏光板7に入射するが、偏光板7はX方向の光波だけを透過させるため、このY方向の反射光は偏光板7で遮断される。
【0015】
つまり、上方からタッチパネルに入射した外部光は、下導電層4で上方へ反射するが、この反射光は偏光板7で遮断され、操作面である偏光板7上面からは出射しないため、反射がなく視認性が良好で、背面の液晶表示素子等が見易いように構成されているものであった。
【0016】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2000−10732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、上基板1上面に上位相差板6と偏光板7を積重貼付することによって、外部光の反射を防ぎ視認性が良好なように形成されてはいるが、85℃24時間放置後の加熱収縮率が0.01%程度であるポリカーボネート等の上位相差板6と、ポリビニルアルコールにトリアセチルセルロース等を積層した加熱収縮率が0.5%前後の偏光板7を積重貼付しているため、周囲の環境が高温高湿の状態で使用された場合、この加熱収縮率の差によって、タッチパネルの上基板1中間部の下方への反りが生じ、上導電層3と下導電層4の接触が不安定なものになり易いという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高温高湿で使用時の反りを防ぎ、視認性が良好で操作の確実なタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、上基板上面に上位相差板と偏光板を積重すると共に、この偏光板上面に、上位相差板と加熱収縮率が同等以下の補正板を設けてタッチパネルを構成したものであり、加熱収縮率の大きな偏光板の上下を、加熱収縮率の小さな補正板と上位相差板で挟むことによって、高温高湿の状態で使用された場合の反りを防ぎ、視認性が良好で操作の確実なタッチパネルを得ることができるという作用を有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、上基板に代えて、上位相差板下面に上導電層を形成したものであり、上基板が不要となって構成部品数が少なくなるため、タッチパネルを安価に形成することができるという作用を有する。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、補正板を位相差板としたものであり,偏光板を通り直線偏光となったタッチパネル背面の液晶表示素子等の点灯光が、補正板によって円偏光となるため、例えば、偏光サングラス等をかけた状態でも、液晶表示素子等の視認が行い易くなるという作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、視認性が良好で操作の確実なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。
【0025】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0026】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0027】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図であり、同図において、1はポリエーテルサルホンやポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板、2はガラスまたはアクリル、ポリカーボネート等の光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が、スパッタ法等によって各々形成されている。
【0028】
そして、下導電層4の上面にはエポキシやシリコン等の絶縁樹脂によって複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層3の両端には銀やカーボン等の一対の上電極(図示せず)が、下導電層4両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0029】
また、5は額縁状で不織布やポリエステルフィルム等のスペーサで、このスペーサ5の上下面に塗布形成されたアクリルやゴム等の接着層(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0030】
さらに、6はポリカーボネート等のフィルムを延伸し複屈折性を持たせた1/4波長で可撓性の上位相差板、7はヨウ素や染料を吸着させ延伸・配向させたポリビニルアルコールの上下面に、トリアセチルセルロース等が積層された可撓性の偏光板で、この上位相差板6と偏光板7が上基板1上面に積重され、アクリル等の接着剤(図示せず)によって貼付されている。
【0031】
また、8はポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の補正板で、この補正板8が偏光板7上面に積重貼付されると共に、補正板8上面には光硬化性のアクリル等で光透過性のハードコート層9が設けられている。
【0032】
なお、ポリビニルアルコールにトリアセチルセルロース等が積層され、85℃24時間放置後の加熱収縮率が0.5%前後である偏光板7に対し、この上下面に積重貼付された補正板8と上位相差板6は、いずれも加熱収縮率が0.01%程度のポリカーボネート等で形成されている。
【0033】
つまり、加熱収縮率の大きな偏光板7の上下を、加熱収縮率がほぼ同等で小さな補正板8と上位相差板6で挟んだ構成となっている。
【0034】
また、10は上位相差板6と同様の下位相差板で、この下位相差板10が下基板2下面に貼付されて、タッチパネルが構成されている。
【0035】
そして、このように構成されたタッチパネルは、液晶表示素子等の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0036】
以上の構成において、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示を視認しながら、ハードコート層9上面を指或いはペン等で押圧操作すると、補正板8や偏光板7、上位相差板6と共に上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0037】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0038】
また、この時、上方からの太陽光や灯火等の外部光は、ハードコート層9と補正板8を通った後、先ず、偏光板7を透過する際、X方向及びこれと直交するY方向の光波のうち、例えば、偏光板7がY方向の光波を吸収するものであった場合、X方向の直線偏光となって偏光板7から上位相板6に入射する。
【0039】
次に、この光は1/4波長の上位相差板6を通過することによって、直線偏光が円偏光となって下導電層4で上方へ反射する。
【0040】
そして、この反射光は、再び1/4波長の上位相差板6を透過することによって、1/2波長ずれたY方向の直線偏光となって偏光板7に入射するが、偏光板7はX方向の光波だけを透過させるため、Y方向の直線偏光である反射光は偏光板7で遮断される。
【0041】
つまり、上方からタッチパネルに入射した外部光は、下導電層4で上方へ反射するが、この反射光は偏光板7で遮断され、操作面であるハードコート層9や補正板8上面からは出射しないため、反射がなく、背面の液晶表示素子等の良好な視認性が得られるように構成されている。
【0042】
これに対し、タッチパネル背面の液晶表示素子等の点灯光は、これをY方向の直線偏光としておけば、先ず1/4波長の下位相差板10、次に同じく1/4波長の上位相差板6を透過することによって、1/2波長ずれたX方向の直線偏光となって偏光板7に入射し、偏光板7や補正板8を透過して、操作面であるハードコート層9上面から出射する。
【0043】
つまり、液晶表示素子等からの点灯光は、下位相差板1と上位相差板6を透過することによって、X方向の直線偏光となり、1/2波長ずれただけでハードコート層9上面から出射されるため、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示は明確に視認することができる。
【0044】
なお、この時、補正板8を上位相差板6や下位相差板10と同様の位相差板としておけば、偏光板7を通り直線偏光となった液晶表示素子等からの点灯光が、補正板8によって円偏光となるため、例えば、X方向の直線偏光用の偏光サングラス等をかけた状態でも、点灯光の視認を行い易くすることができる。
【0045】
また、上述したように、上基板1上面に積重された上位相差板6や偏光板7、補正板8は、加熱収縮率の大きな偏光板7の上下を、加熱収縮率がほぼ同等で小さな補正板8と上位相差板6で挟んだ構成となっているため、周囲が高温高湿の状態で使用された場合にも、加熱収縮率の大きな偏光板7の反りを補正板8と上位相差板6で抑えることによって、全体の反りを防ぎ、確実な操作が可能なように構成されている。
【0046】
このように本実施の形態によれば、上基板1上面に上位相差板6と偏光板7を積重すると共に、この偏光板7上面に、上位相差板6と加熱収縮率が同等以下の補正板8を設けることによって、加熱収縮率の大きな偏光板7の上下を、加熱収縮率の小さな補正板8と上位相差板6で挟んで、高温高湿の状態で使用された場合の反りを防ぎ、視認性が良好で操作の確実なタッチパネルを得ることができるものである。
【0047】
また、図2の断面図に示すように、上基板1に代えて、上位相差板6下面に直接上導電層3を形成することによって、上基板1が不要となって構成部品数が少なくなるため、タッチパネルを安価に形成することができる。
【0048】
さらに、補正板8を位相差板とすることによって、偏光板7を通り直線偏光となったタッチパネル背面の液晶表示素子等の点灯光が、補正板8によって円偏光となるため、例えば、偏光サングラス等をかけた状態でも、点灯光の視認を行い易くすることができる。
【0049】
なお、以上の説明では、上基板1上面や上位相差板6、補正板8を、85℃24時間放置後の加熱収縮率が0.01%程度と小さなポリカーボネート等として説明したが、同じく加熱収縮率の小さな他の材料、例えば、加熱アニール処理されたポリエチレンテレフタレートやシクロオレフィンポリマー等を用いても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によるタッチパネルは、視認性が良好で操作の確実なものを提供することができるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同他の実施の形態による断面図
【図3】従来のタッチパネルの断面図
【符号の説明】
【0052】
1 上基板
2 下基板
3 上導電層
4 下導電層
5 スペーサ
6 上位相差板
7 偏光板
8 補正板
9 ハードコート層
10 下位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上導電層が形成された光透過性の上基板と、上面に上記上導電層と所定の空隙を空けて対向する下導電層が形成された光透過性の下基板と、上記上基板上面に積重された上位相差板と偏光板からなり、上記偏光板上面に、上記上位相差板と加熱収縮率が同等以下の補正板を設けたタッチパネル。
【請求項2】
上基板に代えて、上位相差板下面に上導電層を形成した請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
補正板を位相差板とした請求項1記載のタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−79149(P2006−79149A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259221(P2004−259221)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】