説明

タッチパネル

【課題】ノイズを低減して高精度でタッチ位置を検出可能な静電容量方式のタッチパネルを提供する。
【解決手段】第1の方向に設けられる複数の走査電極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に設けられる複数の検出電極と、前記各走査電極に、順次1走査期間毎に駆動電圧を入力する手段1と、前記それぞれの検出電極で検出される検出信号に、ホワイトノイズを重畳する手段2と、前記それぞれの検出電極で検出された、ホワイトノイズが重畳された検出信号から容量検出信号を検出し、当該検出した容量検出信号に基づき、タッチパネル上のタッチ位置を検出する手段3とを有する。前記手段2は、1走査期間内に前記駆動電圧が入力される走査電極に隣接する走査電極に、前記ホワイトノイズを入力する。前記ホワイトノイズの周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに係わり、特に、ノイズを低減して高精度でタッチ位置を検出することができる静電容量方式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
表示画面に使用者の指またはペンなどを用いてタッチ操作(接触押圧操作、以下、単にタッチと称する)して情報を入力する装置(以下、タッチセンサ又はタッチパネルとも称する)を備えた表示装置は、PDAや携帯端末などのモバイル用電子機器、各種の家電製品、現金自動預け払い機(Automated Teller Machine)等に用いられている。このようなタッチパネルとして、タッチされた部分の抵抗値変化を検出する抵抗膜方式、あるいは容量変化を検出する静電容量方式、または光量変化を検出する光センサ方式などが知られている。
静電容量方式のタッチパネルは、縦横二次元マトリクス状に配置した検出用縦方向の電極(X電極)と検出用横方向の電極(Y電極)とを設け、入力処理部で各電極の容量を検出する。タッチパネルの表面に指などの導体が接触した場合には、各電極の容量が増加するため、入力処理部でこれを検知し、各電極が検知した容量変化の信号を基に入力座標を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−125744号公報
【0004】
【特許文献2】特開2010−277443号公報
【0005】
【特許文献3】特開2010−267222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、タッチパネルに対して、薄型・軽量化、表示パネルとの一体化等の要求が強まってきており、表示パネルにタッチパネル機能を作りこむオンセル方式や、従来のガラス基板を薄い樹脂フィルムに置き換えるフィルム方式などが提案されている。この場合、検出電極とディスプレイとの距離が近くなるとともに、ディスプレイからのノイズを軽減するためのシールド電極(検出電極とディスプレイの間に設置)を設けることができないため、ノイズが増加する。
このように、従来のタッチパネルでは、その基板の裏側に表示パネルからのノイズを遮蔽するためのシールド電極が設けられていたが、前述した新しい方式では、薄さやの要求や構造上の制約によりシールド電極を設けることが難しい。
そのため、シールド電極を設けず、ノイズを除去する方法が、前述の特許文献1ないし特許文献3に開示されている。
前述の特許文献1では、ノイズを含んだアナログデータからノイズ信号を抽出し、このノイズデータを反転した信号を元のノイズを含んだアナログデータに加算することでノイズ成分のみをキャンセルしている。
しかながら、特許文献1に記載された方法では、検出すべき信号とノイズ信号の分離方法と正確なキャンセルのための振幅調整が困難であるという問題点があった。
【0007】
また、前述の特許文献2では、静電容量の変化に応じてタッチ検出電極から得られる検出信号Vdetに基づいて、物体の接触(近接)位置を検出する。このとき、検出回路において、ブランキング期間において所定の検出用パターン信号を供給することにより得られるノイズ検出信号を用いて、検出信号Vdetを補正して検出動作を行う。これにより、従来のようなシールド層を用いることなく、内部ノイズや外部ノイズの影響を低減しつつ検出動作を行うことができる。
さらに、前述の特許文献3では、静電容量の変化に応じてタッチ検出電極から得られる検出信号Vdetに基づいて、物体の接触位置を検出する。また、検出回路において、コモン駆動信号Vcomにおける極性反転前の検出信号Vdetを用いて、極性反転後における検出動作を行う。これにより、従来のようなシールド層を用いることなく、上記反転後ノイズの影響を取り除きつつ、極性反転後の検出動作を行うことができる。
しかながら、特許文献2または特許文献3に記載された方法では、検出期間が限定されるため十分なデータを得るために長い時間を要し、検出応答性が低下するという問題点があった。
そこで、表示パネルからのノイズを受けても検出精度を保てるような機能の実現が要望されている。
本発明は、前述の要望に基づき成されたものであり、本発明の目的は、ノイズを低減して高精度でタッチ位置を検出可能な静電容量方式のタッチパネルを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)第1の方向に設けられる複数の走査電極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に設けられる複数の検出電極と、前記各走査電極に、順次1走査期間毎に駆動電圧を入力する手段1と、前記それぞれの検出電極で検出される検出信号に、ホワイトノイズを重畳する手段2と、前記それぞれの検出電極で検出された、ホワイトノイズが重畳された検出信号から容量検出信号を検出し、当該検出した容量検出信号に基づき、タッチパネル上のタッチ位置を検出する手段3とを有する。
(2)(1)において、前記手段2は、1走査期間内に前記駆動電圧が入力される走査電極に隣接する走査電極に、前記ホワイトノイズを入力する。
(3)(1)または(2)において、前記ホワイトノイズの周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段4を有する。
(4)(1)ないし(3)の何れかにおいて、前記手段3は、前記それぞれの検出電極で検出された、ランダム信号が重畳された検出信号に対して、所定の閾値を設け、それに対する大小を判定する手段31と、前記手段31での判定結果に基づき、大、または小の状態を示す信号を生成する手段32と、前記手段32で生成された信号を、1走査期間に同期して積分して、前記容量検出信号を検出する手段33とを有する。
【0009】
(5)第1の方向に設けられる複数の走査電極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に設けられる複数の検出電極と、前記各走査電極に、順次1走査期間毎に駆動電圧を入力する手段1と、前記それぞれの検出電極で検出される検出信号に、周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号を重畳する手段2と、前記それぞれの検出電極で検出された、周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号が重畳された検出信号から容量検出信号を検出し、当該検出した容量検出信号に基づき、タッチパネル上のタッチ位置を検出する手段3とを有する。
(6)(5)において、前記手段2は、1走査期間内に前記駆動電圧が入力される走査電極に隣接する走査電極に、前記周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号を入力する。
(7)(5)または(6)において、前記周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号の周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段4を有する。
(8)(5)ないし(7)の何れかにおいて、前記手段3は、前記それぞれの検出電極で検出された、周波数成分が一定でランダム信号が重畳された検出信号に対して、所定の閾値を設け、それに対する大小を判定する手段31と、前記手段31での判定結果に基づき、大、または小の状態を示す信号を生成する手段32と、前記手段32で生成された信号を、1走査期間に同期して積分して、前記容量検出信号を検出する手段33とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、ノイズを低減して高精度でタッチ位置を検出可能な静電容量方式のタッチパネルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルが搭載されるタッチパネル付きディスプレイの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルを説明するための図である。
【図3】シールド電極の機能を説明するための図である。
【図4】従来の静電容量方式のタッチパネルの検出手順を説明するための図であり、タッチパネルへの入力がない場合の検出手順を説明するための図である。
【図5】従来の静電容量方式のタッチパネルの検出手順を説明するための図であり、タッチパネルへ入力がある場合の検出手順を説明するための図である。
【図6】従来の静電容量方式のタッチパネルの検出手順における、ノイズの影響を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの検出手順を説明するための図である。
【図8】本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの検出手順において、ノイズの影響が除去できることを説明するための図である。
【図9】本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの他の例を示す平面図である。
【図10】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの断面構造を示す断面図である。
【図11】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの断面構造を示す断面図である。
【図12】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図である。
【図13】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図である。
【図14】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図である。
【図15】図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
[実施例]
図1は、本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルが搭載されるタッチパネル付きディスプレイの概略構成を示す図である。
図1において、106は、本実施例の静電容量方式のタッチパネルである。タッチパネル106は、後述するように、容量検出用のX電極と、Y電極を有する。
タッチパネル106は、表示装置101の前面に設置される。従って、表示パネル101に表示された画像を使用者が見る場合には、表示画像がタッチパネル106を透過する必要があるため、タッチパネル106は光透過率が高いことが望ましい。
タッチパネル106のX電極とY電極は、配線107によってタッチパネル制御部108に接続される。
タッチパネル制御部108は、Y電極を走査電極として、順次駆動パルス(駆動電圧)を印加し、X電極を検出電極とすることで、各電極交点における電極間容量を測定し、各電極間の交点の容量値によって変化する容量検出信号から入力座標を演算して求める。
タッチパネル制御部108は、I/F信号109を用いて、入力座標をシステム制御部105に転送する。
システム制御部105は、タッチ操作によりタッチパネル106から入力座標が転送されると、そのタッチ操作に応じた表示画像を生成して、表示制御信号104として表示制御回路103に転送する。
表示制御回路103は、表示制御信号104により転送される表示画像に応じて表示信号102を生成し、表示パネル101に画像を表示する。
【0013】
なお、表示パネルとしては、タッチパネル106を用いることができるものであれば良く、液晶表示パネルに限らず、有機発光ダイオード素子や表面伝導型電子放出素子を用いる表示パネル、あるいは、有機EL表示パネルなども使用可能である。
表示パネル101として、液晶表示パネルを使用する場合、液晶表示パネルの観察者側とは反対側の面下に配置されたバックライト(図示せず)を備える。ここで、液晶表示パネルは、例えばIPS方式、TN方式、VA方式等の液晶表示パネルが用いられている。
良く知られているように、液晶表示パネルは、対向して配置された2枚の基板が貼り合わされて形成されており、2枚の基板の外側には偏光板が設けられている。
【0014】
図2は、本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルを説明するための図であり、同図(a)は、平面図である。
図2(a)に示すように、本実施例のタッチパネル106は、容量検出用のX電極202と、Y電極201を有する。ここでは、例えば、X電極202を5本、Y電極201を7本で図示しているが、電極数はこれに限らない。
図2(b)、図2(c)は、図2(a)のA−B切断面に沿った断面構造を示す断面図である。図2(b)は、シールド電極205を備える構造の断面図を、図2(c)は、シールド電極205を備えない構造の断面図を示す。
図2(b)、図2(c)において、206は、ガラス基板やPETフィルム等で構成されるタッチパネル基板であり、図2に示すタッチパネル106は、タッチパネル基板206上に、Y電極201、層間絶縁膜203、X電極202、保護膜203が順次積層されて構成される。図2(b)では、タッチパネル基板206の表示パネル側の面にシールド電極205が形成される。
図3は、シールド電極205の機能を説明するための図である。
シールド電極205は、通常、グランド電位(GND)302に接続されている。このため、図3(a)に示すように、タッチパネル106が、シールド電極205を備える構造の場合、表示パネル101から放射されるノイズ303は遮蔽され、タッチパネル検出機能に影響しない。
しかしながら、図3(b)に示すように、タッチパネル106が、シールド電極205を備えない構造の場合は、表示パネル101からのノイズ303が、Y電極201などに到達し検出性能を劣化させる。
【0015】
図4は、従来の静電容量方式のタッチパネル106の検出手順を説明するための図であり、タッチパネル106への入力がない場合の検出手順を説明するための図である。
図4(a)は、平面図であり、図4(a)に示すように、Y電極201をY1〜Y7、X電極202をX1〜X5とする。また、図4(b)は波形図であり、図4(b)に示す波形図において横軸は時間、縦軸は振幅を示す。
図4(b)に示すように、Y1〜Y7のY電極201に対して、1検出期間毎に、順次駆動電圧(駆動パルス)401が入力される。これに対して、X1〜X5のX電極202で検出される検出信号402の波形は、駆動電圧の入力に同期して変化するようになる。図4では、タッチパネル106への入力がないので、X1〜X5のX電極202で検出される検出信号の振幅に大きな変化は発生しない。
図5は、従来の静電容量方式のタッチパネル106の検出手順を説明するための図であり、タッチパネル106へ入力がある場合の検出手順を説明するための図である。
図5(a)は、平面図、図5(b)は波形図であり、図5(b)に示す波形図において横軸は時間、縦軸は振幅を示す。
図5(a)に示すように、タッチパネル106に対して、破線円501で示す位置に入力があったとする。
図4で説明したように、Y1〜Y7のY電極201に対して、1検出期間毎に、順次駆動電圧(駆動パルス)401が入力される。これに対して、X1〜X5のX電極202で検出される検出信号402の波形には、入力501の位置、つまりY3のY電極とX3のX電極、即ち、Y3−X3の交点を中心に信号振幅の変化が見られるようになる。この変化を抽出して処理することで入力座標が得られる。
【0016】
図6は、従来の静電容量方式のタッチパネル106の検出手順における、ノイズの影響を説明するための図である。図6は、図5(b)に示す、X3のX電極202の検出信号402を抜き出して図示したものである。
図6(a)は、表示パネル101からのノイズ(図の303)がない場合を図示している。図6(a)の場合、検出信号402に対して閾値601を設定し、その値との関係から容量検出信号602を算出することができる。この図6(a)の場合、閾値を下回る成分が、容量検出信号602の振幅となっている。
図6(b)は、表示パネル101からのノイズ(図の303)がある場合を図示している。図6(b)に示すように、表示パネル101からのノイズ(図の303)がある場合、X3のX電極202で検出される検出信号604は、もともとの信号レベルがノイズ603に埋もれてしまうため、閾値601の大小にかかわらず、本来の信号(検出信号602)が抽出されない信号となってしまう。
【0017】
[本実施例のタッチパネルの特徴]
本実施例は、静電容量式のタッチパネルにおいて、ノイズ低減を目的とし、X電極202で検出される検出信号に対して、意図的に注入したホワイトノイズ(周波数成分が一定で、振幅がランダムな信号)と、表示パネル101からのノイズとを確率的に共鳴させてSN比を改善することを特徴とする。
タッチパネル106が、表示パネル101から大きなノイズを受けている場合、X電極202で検出される検出信号はそのノイズに埋もれてしまう。つまり、X電極202で検出されるノイズの内部には、検出信号は含まれており、検出信号の大小は、X電極202で検出されるノイズに対して影響を与える。
このような信号に対して、ホワイトノイズを重畳すると、検出信号上のノイズとホワイトノイズは強めあったり打ち消しあったりする。この‘強めあう’、または‘打ち消す’は、確率的な現象と捉えられる。
さらに、検出信号が含まれている(または、比較的大きい)場合の強め合った結果が達する値は、検出信号が含まれていない(または、比較的小さい)場合のものに比べて高く(大きく)なる頻度が高くなる。これもまた確率的な現象である。このような確率的な現象を利用してノイズに埋もれた信号を抽出する信号処理は確立共鳴として知られている。
このように、本実施例の静電容量方式のタッチパネルでは、検出信号が、表示パネル101からのノイズに埋もれてしまうような状況において、確立共鳴によりSN比が向上するように、意図的にホワイトノイズを検出信号に加える。この後、閾値処理をすることで、閾値を超える状態の密度が含まれる信号の状態に対応するようにする。これにより、タッチパネルの検出性能が向上する。
そのため、シールド電極205が設けられないような場合にも、本実施例の信号処理によりノイズ低減が可能となるため、薄型、一体型の実現と検出性能実現の両立を図ることができる。
【0018】
図7は、本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの検出手順を説明するための図である。図7(a)は平面図、図7(b)は波形図であり、図7(b)に示す波形図において横軸は時間、縦軸は振幅を示す。
本実施例のタッチパネルの構造は、図2に示す従来のタッチパネルと同じである。本実施例では、Y1〜Y7のY電極201への入力は、駆動電圧(駆動パルス)401だけでなく、その後に、隣接するY電極201に駆動電圧が入力される期間(1検出期間)内は、ホワイトノイズ701を入力する。このホワイトノイズ701は、タッチパネル制御部108で生成される。
これにより、X1〜X5のX電極202で検出される検出信号402は、隣接するY電極201から入力されたホワイトノイズ702が重畳したものとなる。
なお、ホワイトノイズ701は、駆動電圧(駆動パルス)401が入力されるY電極201に隣接するY電極から入力する以外に、駆動電圧(駆動パルス)401が入力されるY電極201に隣接しないY電極から入力するようにしてもよい。
【0019】
図8は、本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの検出手順において、ノイズの影響が除去できることを説明するための図である。図8は、図7(b)に示す、X3のX電極202の検出信号402を抜き出して図示したものである。
図8(a)は、表示パネル101からのノイズ(図の303)がない場合を図示している。図8(a)の場合、検出信号402に対して閾値601を設定し、その値との関係から容量検出信号602を算出しようとしても、本来の検出信号に、注入したホワイトノイズ701が重畳した波形が測定される。このため、容量検出信号602は、閾値601の大小にかかわらず本来の信号が検出されない波形となってしまう。
図8(b)は、表示パネル101からのノイズ(図の303)がある場合を図示している。図8(b)の場合も、検出信号402に対して閾値601を設定し、その値との関係から容量検出信号602を算出しようとしても、注入するホワイトノイズ701が最適でない(たとえば、振幅が大きいなど)ときには、測定される信号603は、ノイズがより大きくなった状態の信号であり、検出される信号604の波形は本来の波形を示すものにはならない。
これに対して、図8(c)に示すように、注入するホワイトノイズ701を最適化した場合(即ち、注入するホワイトノイズ701の周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整し、最適化した場合)、測定される信号603は、確立共鳴現象により、ノイズ同士が相殺するケースと、強調するケースに2極化する。そのため、新たに閾値801を設定すると、状態を2値化することが可能である。これにより、信号802を検出することができる。この信号を、検出期間に同期する信号803が、Highレベルの時間領域に同期して積分を行うことで、信号804を得ることができる。この信号804は、本来の検出信号を示している。
なお、注入するホワイトノイズ701を最適化するために、タッチパネル制御部108内には、注入するホワイトノイズ701の周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段が設けられる。
また、本発明は、図3(a)に示すように、タッチパネル106が、シールド電極205を備える構造、あるいは、図3(b)に示すように、タッチパネル106が、シールド電極205を備えない構造のいずれの構造にも適用可能である。
【0020】
以下、本実施例の静電容量方式のタッチパネルに適用される他の静電容量方式のタッチパネルについて説明する。
図9は、本発明の実施例の静電容量方式のタッチパネルの他の例を示す平面図である。
図10、図11は、図9に示す静電容量方式のタッチパネルの断面構造を示す断面図であり、図10は、図9のA−A’線に沿った断面構造を示す断面図、図11は、図9のB−B’線に沿った断面構造を示す断面図である。
なお、図9において、6は配線、7は接続端子である。また、ARは有効タッチ領域であり、有効タッチ領域ARは、タッチパネル106を、指、あるいは、導電性のペンでタッチした時に、当該タッチを検出可能な領域を示す。
図9に示す静電容量方式のタッチパネルのタッチパネルは、タッチパネル基板15の観察者側の面上において、第2の方向(例えばY方向)に延在し、第2の方向と交差する第1の方向(例えばX方向)に所定の配列ピッチで並設される複数のX電極202と、この複数のX電極202と交差して第1の方向に延在し、第2の方向に所定の配列ピッチで並設される複数のY電極201とを有する。タッチパネル基板15としては、例えばガラス等の透明な絶縁性基板が用いられている。
複数のX電極202の各々は、細線部1aと、この細線部1aの幅よりも広い幅のパッド部1bとが、第2の方向に交互に複数配置された電極パターンで形成されている。複数のY電極201の各々は、細線部2aと、この細線部2aの幅よりも広い幅のパッド部2bとが、第1の方向に交互に複数配置された電極パターンで形成されている。
複数のY電極201及びX電極202が配置された領域が有効タッチ領域ARであり、この有効タッチ領域ARの周囲には、図9に示すように、複数のY電極201の各々と、複数のX電極202の各々と電気的に接続される複数の配線6が配置されている。
【0021】
複数のX電極202は、タッチパネル基板15の観察者側の面上に配置される。複数のY電極201のパッド部2bは、タッチパネル基板15の観察者側の面上に、X電極202とは分離して形成されている。
複数のY電極201の細線部2aは、タッチパネル基板15の観察者側の面上に形成された絶縁膜(PAS1)上に配置される。なお、複数のY電極201の細線部2aは、その上層に形成された保護膜(PAS2)で覆われている。
Y電極201の細線部2aは、X電極202の細線部1aと平面的に交差し、この細線部2aを挟んで隣り合う2つのパッド部2bに、Y電極201の細線部2aと、X電極202の細線部1aとの間の層間絶縁膜である絶縁膜(PAS1)に形成されたコンタクトホール12aを介してそれぞれ電気的に接続されている。
平面的に見たとき、Y電極201のパッド部2bは、隣り合う2つのX電極202の細線部1aの間に配置され、X電極202のパッド部1bは、隣り合う2つのY電極201の細線部2aの間に配置されている。
複数のX電極202及び複数のY電極201は、高い透過性を有する材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明性導電材料で形成される。また、配線6は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明性導電材料で形成される下層の透明導電層と、例えば、銀合金材料等から成る上層の金属層とで構成される。
【0022】
図12、図13は、図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図であり、図13は、図9のA−A’線に沿った断面構造を示す断面図、図14は、図9のB−B’線に沿った断面構造を示す断面図である。
図12、図13に示す静電容量方式のタッチパネルでは、複数のY電極201の細線部2aが、タッチパネル基板15の観察者側の面上に形成され、複数のX電極202の細線部1aおよびパッド部1bと、複数のY電極201のパッド部2bは、絶縁膜(PAS1)上に形成される。なお、複数のX電極202の細線部1aおよびパッド部1bと、複数のY電極201のパッド部2bは、その上層に形成された保護膜(PAS2)で覆われている。
Y電極201の細線部2aは、X電極202の細線部1aと平面的に交差し、この細線部2aを挟んで隣り合う2つのパッド部2bに、Y電極201の細線部2aと、X電極202の細線部1aとの間の層間絶縁膜である絶縁膜(PAS1)に形成されたコンタクトホール12aを介してそれぞれ電気的に接続されている。
平面的に見たとき、Y電極201のパッド部2bは、隣り合う2つのX電極202の細線部1aの間に配置され、X電極202のパッド部1bは、隣り合う2つのY電極201の細線部2aの間に配置されている。
【0023】
図14、図15は、図9に示す静電容量方式のタッチパネルの他の例の断面構造を示す断面図であり、図14は、図9のA−A’線に沿った断面構造を示す断面図、図15は、図9のB−B ’線に沿った断面構造を示す断面図である。
図14、図15に示す静電容量方式のタッチパネルでは、複数のX電極202の細線部1aとパッド部1bが、タッチパネル基板15の観察者側の面上に形成され、複数のY電極201の細線部2aとパッド部2bが、絶縁膜(PAS1)上に形成される。なお、複数のY電極201の細線部2aとパッド部2bは、その上層に形成された保護膜(PAS2)で覆われている。
図14、図15に示す静電容量方式のタッチパネルでは、X電極202とY電極201とをそれぞれ異なる層に形成したものであり、Y電極201の細線部2aは、X電極202の細線部1aと平面的に交差している。
平面的に見たとき、Y電極201のパッド部2bは、隣り合う2つのX電極202の細線部1aの間に配置され、X電極202のパッド部1bは、隣り合う2つのY電極201の細線部2aの間に配置されている。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1a,2a 細線部
1b,2b パッド部(個別電極)
6,107 配線
7 接続端子
15,206 タッチパネル基板、
101 表示パネル
103 表示制御回路
105 システム制御部
106 タッチパネル
108 タッチパネル制御部
201,Y1〜Y7 Y電極
202,X1〜X5 X電極
203,PAS2 保護膜
204,PAS1,PAS3 絶縁膜
205 シールド電極
AR 有効タッチ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に設けられる複数の走査電極と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に設けられる複数の検出電極と、
前記各走査電極に、順次1走査期間毎に駆動電圧を入力する手段1と、
前記それぞれの検出電極で検出される検出信号に、ホワイトノイズを重畳する手段2と、
前記それぞれの検出電極で検出された、ホワイトノイズが重畳された検出信号から容量検出信号を検出し、当該検出した容量検出信号に基づき、タッチパネル上のタッチ位置を検出する手段3とを有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記手段2は、1走査期間内に前記駆動電圧が入力される走査電極に隣接する走査電極に、前記ホワイトノイズを入力することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記ホワイトノイズの周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段4を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記手段3は、前記それぞれの検出電極で検出された、ランダム信号が重畳された検出信号に対して、所定の閾値を設け、それに対する大小を判定する手段31と、
前記手段31での判定結果に基づき、大、または小の状態を示す信号を生成する手段32と、
前記手段32で生成された信号を、1走査期間に同期して積分して、前記容量検出信号を検出する手段33とを有することを特徴と請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
第1の方向に設けられる複数の走査電極と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に設けられる複数の検出電極と、
前記各走査電極に、順次1走査期間毎に駆動電圧を入力する手段1と、
前記それぞれの検出電極で検出される検出信号に、周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号を重畳する手段2と、
前記それぞれの検出電極で検出された、周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号が重畳された検出信号から容量検出信号を検出し、当該検出した容量検出信号に基づき、タッチパネル上のタッチ位置を検出する手段3とを有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項6】
前記手段2は、1走査期間内に前記駆動電圧が入力される走査電極に隣接する走査電極に、前記周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号を入力することを特徴と請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記周波数成分が一定でランダムな振幅を有する信号の周波数成分、および振幅の少なくとも一方を調整する手段4を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記手段3は、前記それぞれの検出電極で検出された、周波数成分が一定でランダム信号が重畳された検出信号に対して、所定の閾値を設け、それに対する大小を判定する手段31と、
前記手段31での判定結果に基づき、大、または小の状態を示す信号を生成する手段32と、
前記手段32で生成された信号を、1走査期間に同期して積分して、前記容量検出信号を検出する手段33とを有することを特徴と請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記タッチパネルは、搭載される表示パネル側の面にシールド電極を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記タッチパネルは、搭載される表示パネル側の面にシールド電極を備えないことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−230471(P2012−230471A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97099(P2011−97099)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】