説明

タンクローリの安全装置

【課題】エンジンと送液手段との運転・停止状態を関連させて制御することにより、液化ガスをタンクローリから貯槽に移送する際の安全性を高めることができるタンクローリの安全装置を提供する。
【解決手段】タンクローリのイグニッションキースイッチの位置を検出するスイッチ位置検出手段と、ポンプ又はガスコンプレッサを備えた送液手段の運転を制御する送液制御手段とを備え、該送液制御手段は、前記イグニッションキースイッチの位置がOFF位置であることを前記スイッチ位置検出手段が検出したときにのみ前記送液手段を運転可能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクローリの安全装置に関し、詳しくは、液化ガス、特に、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)のような可燃性の液化ガスを搬送して供給先の貯槽にポンプ又はガスコンプレッサを備えた送液手段により圧送するタンクローリの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性液化ガス、例えばLPGを搬送するタンクローリとして、供給先の貯槽にLPGを移送する際に、タンクローリの貯槽と供給先の貯槽とを送液手段を介してホースで接続するとともに、供給先の電源にコンセントプラグを接続して送液手段を構成するポンプ又はガスコンプレッサ駆動用モータの電源を供給するようにしたものが知られている。このようなタンクローリでは、送液手段を運転してタンクローリから貯槽へLPGを移送しているときにエンジンが運転されていると、LPGへの引火の危険性があるため、送液手段の運転中にはエンジンを停止させることが要求されている。
【0003】
一方、タンクローリにおける安全装置として、弁計器箱の扉が開いているとき、すなわち、LPGを移送しているときには全車輪にブレーキを作動させてタンクローリが発車できないようにした安全装置(例えば、特許文献1参照。)や、遠隔操作手段からの信号によって送液手段(液体荷下ろし手段)を駆動するとともに、タンクローリのドアを施錠するようにした安全装置(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開2001−206135号公報
【特許文献2】特開2005−306084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの安全装置を備えたタンクローリであっても、エンジンの運転・停止、送液手段の運転・停止は人為的に行うものであるから、可燃性液化ガスを移送する際にエンジンを停止させるのを忘れて送液手段を運転したり、送液手段が運転中であることを忘れてエンジンを始動してしまうおそれがあり、さらに、送液手段の運転中にエンジンを始動してタンクローリを発車させてしまうおそれもあった。
【0005】
そこで本発明は、エンジンと送液手段との運転・停止状態を関連させて制御することにより、液化ガスをタンクローリから貯槽に移送する際の安全性を高めることができるタンクローリの安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のタンクローリの安全装置は、積載した液化ガスを送出する送液手段を備えたタンクローリの安全装置において、該タンクローリのイグニッションキースイッチの位置を検出するスイッチ位置検出手段と、前記送液手段の運転を制御する送液制御手段とを備え、該送液制御手段は、前記イグニッションキースイッチの位置がOFF位置であることを前記スイッチ位置検出手段が検出したときにのみ前記送液手段を運転可能な状態にすることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明のタンクローリの安全装置は、前記送液手段を駆動する電源の供給の有無を判別する電源供給判別手段と、タンクローリのエンジンを制御する車体側電源制御手段とを備え、該車体側電源制御手段は、前記電源供給判別手段が電源供給無しと判別したときにエンジンを運転可能な状態とし、前記電源供給判別手段が電源供給有り判別したときにエンジンを停止又は始動不可の状態とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタンクローリの安全装置によれば、イグニッションキースイッチがOFF位置であるときにのみ送液手段を運転できるようにしているので、エンジンの運転状態(イグニッションキースイッチON位置)では送液手段を運転できず、また、送液手段の運転状態でイグニッションキースイッチをOFF位置以外のACC、ON、START位置に回すと送液手段が自動的に停止して液化ガスの移送を中止するので、エンジンと送液手段とが同時に運転状態になることはない。
【0009】
さらに、送液手段に電源が供給されているとき、すなわち、液化ガス供給先の電源にコンセントプラグを接続したときに、エンジンが運転中の場合は自動的にエンジンを停止させ、また、送液手段に電源が供給されているときは、イグニッションキースイッチを操作してもエンジンを始動することができないようにすることにより、電源にコンセントプラグを接続した状態では、エンジンを始動してタンクローリを発車させることができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は送液手段としてポンプを使用した本発明のタンクローリの安全装置における動作例を示すフローチャート、図2はタンクローリの説明図、図3は安全装置の一例を示すブロック図、図4はイグニッションキースイッチの位置と、コンセントプラグからの電源供給の有無との関連を説明するための説明図である。
【0011】
まず、図2及び図3に示すように、タンクローリ11には、エンジンと送液手段との運転・停止状態を関連させて制御する安全装置12が設けられており、安全装置12には、イグニッションキースイッチ13の位置を検出するスイッチ位置検出手段21と、送液手段、例えばポンプ14の運転を制御する送液制御手段22と、ポンプ14を駆動する電源の供給の有無を判別する電源供給判別手段23と、タンクローリ11の電源を制御する車体側電源制御手段24とが設けられている。
【0012】
ポンプ14は、液化ガス供給先の電源に接続されるコンセントプラグ15から供給される電源でポンプ駆動用モータを運転することにより液化ガスを送出するものであって、ポンプ14の始動及び停止は、ポンプ操作盤16に設けられたポンプ運転スイッチを操作することによって行われる。また、タンクローリ11のエンジンの始動及び停止は、周知のように、イグニッションキースイッチ13をON位置からSTART位置に回すことによってエンジンが始動し、イグニッションキースイッチ13をOFF位置に戻すことによってエンジンが停止するとともにイグニッションキーを着脱できる状態になる。
【0013】
スイッチ位置検出手段21は、イグニッションキースイッチ13の位置がOFF位置にあるか否かを検出し、OFF位置にあるという信号、あるいは、それ以外のACC位置、ON位置、START位置にあるという信号のいずれか一方の信号又は両方の信号を安全装置12に信号を出力する。
【0014】
送液制御手段22は、安全装置12において、前記スイッチ位置検出手段21からイグニッションキースイッチ13の位置がOFF位置にある信号を受けたとき、あるいは、ACC位置、ON位置、START位置にあるという信号を受けていないときに、ポンプ14を運転可能とするものであって、送液制御手段22がポンプを運転可能と判断したときに、ポンプ操作盤16のポンプ運転スイッチを操作することにより、ポンプ14を始動できるようになっている。
【0015】
電源供給判別手段23は、前記コンセントプラグ15が液化ガス供給先の電源に接続されて電源が供給されたこと、あるいは、電源が供給されていないことを判別するものであって、この電源供給判別手段23が電源供給状態であると判別し、かつ、前記スイッチ位置検出手段21がイグニッションキースイッチ13のOFF位置を検出したときに、送液制御手段22がポンプ14を運転可能と判断する。
【0016】
車体側電源制御手段24は、電源供給判別手段23が電源供給状態であると判別したときには、イグニッションキースイッチ13をACC位置、ON位置、START位置に切り換えても、車体側配線13aへの電流を遮断する。さらに、イグニッションキースイッチ13がON位置にあるエンジン運転中にコンセントプラグ15を電源に接続し、電源供給判別手段23が電源供給状態になったと判別したときには、車体側電源制御手段24がエンジンを停止させる。なお、本形態例では、車体側電源制御手段24とスイッチ位置検出手段21とを一体化させた状態となっている。
【0017】
安全装置12は、図1に示すような手順でポンプ14の運転の可否、タンクローリ11のエンジンの運転の可否を判定する。まず、ステップ101で、スイッチ位置検出手段21からの信号に基づいてイグニッションキースイッチ13の位置を判定する。ステップ101でイグニッションキースイッチ13がOFF位置にあると判定したときには、ステップ102に進み、電源供給判別手段23によりコンセントプラグ15からの電源供給の有無を判定する。このステップ102で電源供給が無いと判定したときにはステップ101に戻り、電源供給があると判定したときにはステップ103に進み、送液制御手段22が送液手段を運転可能と判断してポンプ操作盤16のポンプ運転スイッチへの操作回路を開通させ、ポンプ運転スイッチを投入することによってポンプ14を始動することが可能となる。ポンプ14の運転中は、ステップ101,ステップ102及びステップ103を繰り返してポンプ14の運転を継続することができる。
【0018】
また、前記ステップ101でイグニッションキースイッチ13の位置がOFF位置以外のACC位置、ON位置、START位置にあると判定したときには、ステップ104に進み、前記ステップ102と同様に電源供給の有無を判定する。このステップ104で電源供給が無いと判定した場合にはステップ105に進み、車体側電源制御手段24がイグニッションキースイッチ13における車体側配線13aへの操作回路を開通させ、イグニッションキースイッチ13をSTART位置にすることによってエンジンを始動することができ、タンクローリ11を発車させることができる。
【0019】
一方、ステップ104で電源供給があると判定したときにはステップ106に進み、送液制御手段22が送液手段運転不可と判断してポンプ操作盤16のポンプ運転スイッチへの操作回路をカットする。これにより、ポンプ操作盤16のポンプ運転スイッチを投入してもポンプ14を始動することができず、ポンプ14が運転中の場合にはポンプ14を停止させる。さらに、ステップ107に進み、車体側電源制御手段24がイグニッションキースイッチ13における車体側配線13aへの操作回路をカットし、イグニッションキースイッチ13をACC位置、ON位置又はSTART位置にしても車体側配線13aへの電流が遮断され、エンジンが始動不可能な状態になり、また、エンジンが運転中であればエンジンを停止させる。
【0020】
このように、ステップ101でイグニッションキースイッチ13の位置を確認し、ステップ102及びステップ104でコンセントプラグ15からの電源供給を確認することにより、図4に示すように、イグニッションキースイッチ13がOFF位置で、かつ、コンセントプラグ15からの電源供給がある場合にのみポンプ14が運転可能な状態となり、コンセントプラグ15からの電源供給が無い場合にのみ、イグニッションキースイッチ13を操作することによってエンジンが始動可能となる。
【0021】
したがって、エンジン運転中には送液手段が運転不可となり、電源供給中(受電中)はエンジンが運転不可となるので、タンクローリに積載したLPGを供給先の貯槽に移送する際のLPGへの引火の危険性を解消することができ、液化ガス、特に、可燃性ガスをタンクローリから貯槽に移送するときの安全性の向上を図れる。
【0022】
なお、上記説明では、電源供給判別手段と車体側電源制御手段とを加えてより安全性を高めた例を説明したが、スイッチ位置検出手段と送液制御手段とによってポンプの運転を制御するだけでも安全性を高める効果が得られる。また、簡単な電気回路及び判定手段を負荷するだけであるから、使用中のタンクローリにも容易に適用することができる。さらに、送液手段には、ポンプに代えてガスコンプレッサを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のタンクローリの安全装置における動作例を示すフローチャートである。
【図2】タンクローリの説明図である。
【図3】安全装置の一例を示すブロック図である。
【図4】イグニッションキースイッチの位置と、コンセントプラグからの電源供給の有無との関連を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0024】
11…タンクローリ、12…安全装置、13…イグニッションキースイッチ、13a…車体側配線、14…ポンプ、15…コンセントプラグ、16…ポンプ操作盤、21…スイッチ位置検出手段、22…送液制御手段、23…電源供給判別手段、24…車体側電源制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載した液化ガスを送出する送液手段を備えたタンクローリの安全装置において、該タンクローリのイグニッションキースイッチの位置を検出するスイッチ位置検出手段と、前記送液手段の運転を制御する送液制御手段とを備え、該送液制御手段は、前記イグニッションキースイッチの位置がOFF位置であることを前記スイッチ位置検出手段が検出したときにのみ前記送液手段を運転可能な状態にすることを特徴とするタンクローリの安全装置。
【請求項2】
前記送液手段を駆動する電源の供給の有無を判別する電源供給判別手段と、タンクローリのエンジンを制御する車体側電源制御手段とを備え、該車体側電源制御手段は、前記電源供給判別手段が電源供給無しと判別したときにエンジンを運転可能な状態とし、前記電源供給判別手段が電源供給有り判別したときにエンジンを停止又は始動不可の状態とすることを特徴とする請求項1記載のタンクローリの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−237877(P2007−237877A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62045(P2006−62045)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】