説明

タンク形真空遮断器

【課題】運転状態でも真空度低下検出が可能であるとともに、リアルタイムに真空度低下検出および警報出力が可能なタンク形真空遮断器を提供する。
【解決手段】大地電位とされた外部タンク10内に真空インタラプタ20が収納されたかつ真空インタラプタ20の固定電極22a側の端を覆う固定側シールド30aを備えたタンク形真空遮断器1であって、真空インタラプタ20のセラミック筺体21の固定電極22a側の端を密封する固定側金属栓23aの外面に取り付けられたかつセラミック筺体21内の真空度が低下すると固定側シールド30aから先端が突出して外部タンク10との間に放電を発生させる針状電極41を備えた真空度低下検出装置40と、真空遮断器1に取り付けられたかつ外部タンク10と針状電極41との間に発生した放電を検出するための放電検出アンテナ51とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状電極による放電現象を捉えて真空インタラプタの真空度低下を検出するのに好適なタンク形真空遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、72kVクラス以上のタンク形真空遮断器100(以下、「真空遮断器100」と称する。)は、図6に示すように、低圧SF6ガスまたは高圧乾燥空気が充填された外部タンク110内にセラミック製の真空インタラプタ120を収納している構造となっている。
【0003】
ここで、外部タンク110は、接地されており、大地電位とされている。
【0004】
真空インタラプタ120は円筒状のセラミック筺体121内に固定電極122aと可動電極122bとが収納されており、セラミック筺体121の両端は導電性の固定側金属栓123aおよび可動側金属栓123bで密封されている。
【0005】
固定電極122aは固定側主回路導体124aを介して固定側金属栓123aに直接接続されており、また、外部の固定側主回路(不図示)は固定側主回路導体124aを介して固定側金属栓123aに直接接続されている。
可動側金属栓123bの中央部には、可動側主回路導体124bを貫通させるための導体貫通孔が形成されており、また、外部の可動側主回路(不図示)は可動側主回路導体124bを介して可動電極122bに直接接続されている。
【0006】
可動側金属栓123bには導体貫通孔が形成されているため、セラミック筺体121内はインタラプタベローズ125によって真空に保たれている。また、可動側金属栓123bはインタラプタベローズ125を介して可動側主回路導体124bと電気的に接続されている。
【0007】
セラミック筺体121内では、可動側金属栓123bと電気的に接続されたインタラプタ内部シールド126で固定電極122aおよび可動電極122bが覆われており、真空インタラプタ120の中心部の電界傾度を緩やかにしている。
また、真空インタラプタ120の両端は固定側シールド130aおよび可動側シールド130bによって覆われており、真空インタラプタ120の両端部の電界傾度を緩やかにしている。
【0008】
固定側金属栓123a、固定側主回路導体124aおよび固定側シールド130aは、金属製材料(アルミ製や銅製の導体に銀鍍金など)で構成されており、電気的に同電位となっている。
同様に、可動側金属栓123b、可動側主回路導体124bおよび可動側シールド130bは、金属製材料で構成されており、電気的に同電位となっている。
【0009】
このように構成された真空遮断器100では、真空インタラプタ120は外部タンク110内に収納されているために外部から目視できないので、真空インタラプタ120の不具合(破損など)を容易に判断することができない。
【0010】
また、真空インタラプタ120の真空が破壊されると、真空遮断器100の遮断性能が無くなるため、通常の負荷電流の遮断さえ不可能となる。そのため、真空インタラプタ120の真空度を把握することは重要であり、運転状態で真空インタラプタ120の真空度低下を検出する装置がオプションで設定されている。
【0011】
なお、下記の特許文献1には、真空度チェック用の停電および高圧電源装置を不要とし、真空度の判定を容易に実施し、メンテナンス作業等のコストを低減するように、真空バルブの開極時に真空バルブ内の接触子間に発生するアーク光のスペクトルを検出して電気信号を出力する検出部と、電気信号に基づいて、スペクトルが絶縁ガスの輝線スペクトルを示すときに真空度が低下したことを判別して警報信号を出力する信号処理回路部とを設け、信号処理回路部を主回路とは非接触関係で設置した、真空遮断器の真空度監視装置が開示されている。
【0012】
下記の特許文献2には、真空バルブの真空度調査のために停電をとる必要がなく、高圧電源装置も必要とせず、常時真空度の監視を容易に実施するように、真空遮断器の壁面の一部に開孔部を設け、この開孔部にアンテナを樹脂封止した密封端子をその出力端子を樹脂面から導出させて外部から気密に取り付け、真空バルブに主回路の電圧が印加された状態で真空バルブ内の真空度が所定値より低下したときに真空バルブ内部で発生する放電によって放出されるマイクロ波帯の電磁波を検出し、この電磁波信号から真空度低下によって発生した信号のみを選別し、この選別信号によって警報を出力するとともに真空度低下が発生した遮断器の電気的開閉操作を停止させるロック機能を動作せる出力信号を出力する信号処理回路部を設けた真空度監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−306279号公報
【特許文献2】特開平7−318447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、真空遮断器100には一般的に真空監視装置が設置されていないため、真空インタラプタ120が真空破壊しても、定期点検時に真空遮断器100の開極間に試験電圧を印加して初めて真空破壊が判明することになるとともに、この状態で真空遮断器100が事故遮断しても遮断できないという問題があった。
また、事故遮断でなくても通常の開路操作を行うことで真空インタラプタ120本体が破壊される可能性もあり、最悪の場合には、当該電力系統が全停電することもあるという問題があった。
【0015】
運転状態で真空度低下を検出できる装置は、真空度低下過程において開極間の耐電圧が最小となるポイント(パッシェンカーブの底)で発生する真空インタラプタ120からの放電現象を検出して真空度低下を判断する方式であるが、真空遮断器100が運転停止している状態(課電されていない状態)で真空破壊した場合は検出できない可能性がある(すなわち、課電状態において真空度低下した場合に検出可能であり、真空度低下した状態で電圧印加した場合は検出できない可能性がある)という問題があった。
また、運転状態で真空度低下を監視する装置は、高額な上、装置が電子機器であることから10〜15年間隔の装置更新が必要であるという問題があった。
【0016】
本発明の目的は、運転状態でも真空度低下検出が可能であるとともに、リアルタイムに真空度低下検出および警報出力が可能なタンク形真空遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のタンク形真空遮断器は、大地電位とされた外部タンク(10)内に真空インタラプタ(20)が収納された、かつ、該真空インタラプタの固定電極(22a)側の端を覆う固定側シールド(30a)を備えたタンク形真空遮断器(1)であって、前記真空インタラプタのセラミック筺体(21)の前記固定電極側の端を密封する固定側金属栓(23a)の外面に取り付けられた、かつ、該セラミック筺体内の真空度が低下すると前記固定側シールドから先端が突出して前記外部タンクとの間に放電を発生させる針状電極(41)を備えた真空度低下検出装置(40)と、前記真空遮断器に取り付けられた、かつ、前記外部タンクと前記針状電極との間に発生した放電を検出するための放電検出アンテナ(51)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記真空度低下検出装置が、導電性物質の材料から構成されており、前記針状電極が、前記固定側金属栓を介して前記固定電極と電気的に接続されていてもよい。
前記固定側金属栓に、前記セラミック筺体内と前記真空度低下検出装置内とを連通するための連通用貫通孔が形成されており、前記固定側シールドに、前記針状電極の先端を突出させる針状電極突出孔が形成されていてもよい。
前記真空度低下検出装置が、底面を形成するベローズベースに前記連通用貫通孔と繋がった連通孔が形成されたベローズケース(43)と、下端が前記ベローズベースの内面に固定されるとともに上端が板状のピストン栓(46)に固定された、かつ、該ベローズベースおよび該ピストン栓と共に前記セラミック筺体内と連通するベローズ空間を形成するための真空度低下検出ベローズ(44)と、該真空度低下検出ベローズと前記ベローズケースの側面との間に取り付けられた、かつ、該真空度低下検出ベローズを引き伸ばすためのベローズ伸縮スプリング(45)と、前記針状電極と前記ピストン栓との間に設けられた、かつ、一端が該ピストン栓に常時押し付けられた、かつ、前記真空度低下検出ベローズの伸縮方向と略垂直方向に該針状電極を直線的に動かすためのベルクランク(47)とを備えてもよい。
前記真空度低下検出装置が、前記ベルクランプの他端が取り付けられた、かつ、前記針状電極の末端部が固定された針状電極取付部材(41b)と、前記針状電極の末端部を前記針状電極取付部材に固定する個所を変えることにより該針状電極の先端の前記固定側シールドからの突出量を調整するための針状電極調整ナット(41a)とをさらに備えてもよい。
前記放電検出アンテナが、前記固定側シールドに形成された前記針状電極突出孔と前記外部タンクとの間に設置されており、前記外部タンクに、該外部タンクの外側に設置される可搬型の放電検出装置(52)に前記放電検出アンテナを接続するためのアンテナ接続端子が形成されていてもよい。
前記放電検出アンテナが、前記タンク形真空遮断器が備える主回路ブッシングの下端部に設置されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタンク形真空遮断器は、以下に示す効果を奏する。
(1)運転状態で真空度低下の検出が可能
運転状態でも真空度低下検出が可能であり、真空度低下検出装置を常時設置することでリアルタイムに真空度低下検出および警報出力が可能である。
(2)高額で寿命の短い放電検出装置を真空遮断器単位で設置することを不要とする形態が可能
放電検出装置を可搬式とし、巡視時や簡易な点検時、事故遮断時など不具合が予想される時にのみ接続する方法を採用することで、高額で寿命の短い放電検出装置を真空遮断器単位で設置する必要がなくなり、コスト低減を図ることができる。
(3)真空インタラプタの完全真空破壊時でも検出が可能
真空インタラプタの真空破壊時に一時的に通過するパッシェンの底部分を通過する瞬間を検出する方法ではなく、機械的に針状電極による放電現象から真空度低下を検出する方法であるため、真空度が低下した真空遮断器を再充電した場合でも検出が可能である。
(4)真空度低下検出装置の真空遮断器本体と同程度の寿命が可能
真空度低下検出装置は、機械的な装置であるため、使用による経年で劣化する要素が少なく、真空遮断器本体の寿命まで修理を不要とすることができる。
(5)既設の真空遮断器への適用が可能
既設の真空遮断器の真空インタラプタを細密点検等で針状電極を有する真空インタラプタに交換することにより、真空度低下検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例によるタンク形真空遮断器1の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示した真空度低下検出装置40の構成を説明するための図である。
【図3】図1に示した真空インタラプタ20の真空破壊時の真空度低下検出装置40の状態を示す図である。
【図4】電界傾度が大きな電極(針対平板電極)間の間隙距離対電圧の関係を示すグラフである。
【図5】図1に示した真空インタラプタ20の真空保持時および真空破壊時の放電について説明するための図である。
【図6】従来の真空遮断器100の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記の目的を、真空インタラプタのセラミック筺体内の真空度が低下すると固定側シールドから先端が突出して外部タンクとの間に放電を発生させる針状電極を備えた真空度低下検出装置をセラミック筺体の固定電極側の端を密封する固定側金属栓の外面に取り付けるとともに、外部タンクと針状電極との間に発生した放電を検出するための放電検出アンテナを真空遮断器に取り付けることにより実現した。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明のタンク形真空遮断器の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の一実施例によるタンク形真空遮断器1(以下、「真空遮断器1」と称する。)は、図1に示すように、以下に示す点で、図6に示した従来の真空遮断器100と異なる。
(1)固定側金属栓23aの外面(固定側電極22aと反対側の面)に、セラミック筺体21内の真空度低下を検出するための真空度低下検出装置40が固定されている。
(2)固定側金属栓23aに、セラミック筺体21内と真空度低下検出装置40内とを連通するための連通用貫通孔が形成されている。
(3)固定側シールド30aに、真空度低下検出装置40の針状電極41(図2参照)の先端部を突出させるための針状電極突出孔が形成されている。
(4)固定側シールド30aに形成された針状電極突出孔の下方に、放電検出アンテナ51が取り付けられている。また、外部タンク10の下面に、放電検出アンテナ51を可搬型の放電検出装置52に接続するためのアンテナ接続端子が取り付けられている。
【0022】
なお、以下では、外部タンク10の内径を500mm、固定側シールド30aおよび可動側シールド30bの外径を300mmとし、外部タンク10と固定側シールド30a(導電部)との距離を100mmとして説明する。また、真空遮断器1の主回路大地間距離は、外部タンク10の内部ガスが低圧SF6ガスか高圧乾燥空気かで異なり、電界設計でも異なることから、一般的と考える100mmの大地間距離で説明する。
【0023】
真空低下検出装置40は、図2に示すように、針状電極41と、針状電極ガイド42と、ベローズケース43と、真空度低下検出ベローズ44と、ベローズ伸縮スプリグ45と、ピストン栓46と、ベルクランク47とを備える。
【0024】
ベローズケース43は中空の円柱状の形状を有し、ベローズケース43の底面を形成するベローズベースの中央部には、固定側金属栓23aの連通用貫通孔と繋がる連通孔が形成されている。
円筒形状の真空度低下検出ベローズ44の下端側はベローズベースの内面(ピストン栓46と対向する面)に溶接されており、また、真空度低下検出ベローズ44の上端は円板状のピストン栓46の内面(ベローズベースと対向する面)に溶接されている。
これにより、ベローズケース43のベローズベース、真空度低下検出ベローズ44およびピストン栓46によって囲まれた空間(以下、「ベローズ空間」と称する。)は、ベローズベースの連通孔および固定側金属栓23aの連通用貫通孔を介してセラミック筺体21内と連通されており、セラミック筺体21内の圧力と同圧に保たれるようにされている。
そのため、真空インタラプタ20の真空が保たれている場合には、真空度低下検出装置40のベローズ空間内も真空状態となっており、一方、真空インタラプタ20の真空が破壊されてセラミック筺体21内が外部タンク10内の圧力と同圧となれば、真空度低下検出装置40のベローズ空間内の圧力も外部タンク10内の圧力と同圧となる。
【0025】
真空度低下検出ベローズ44とベローズケース43の側面との間には、上端がピストン栓46の内面に固定されるとともに下端がベローズベースの内面に固定されたベローズ伸縮スプリング45が取り付けられている。
これにより、真空度低下検出ベローズ44には、ベローズ伸縮スプリング45によって真空度低下検出ベローズ44を引き伸ばす方向に応力が常にかかっている。
【0026】
ベローズケース43の上端は、ベルクランク47の下端部(ピストン栓46側の端部)が入り込める穴が開いたケース上部栓で止められており、ベローズ伸縮スプリング45によってピストン栓46が一定以上伸びない構造となっている。
【0027】
ベルクランク47の回転中心部(シャフト部)にはスプリング(不図示)が取り付けられており、ベルクランク47の下端をピストン栓46に常時押し付ける方向(針状電極41を引っ込める方向)に力を加えている。
【0028】
針状電極ガイド42は、中空の直方体形状を有し、末端部がベローズケース43のケース上部栓に取り付けられている。
針状電極ガイド42の先端面には、針状電極41の先端部を通すための針状電極ガイド孔が形成されている。
針状電極ガイド42の末端部内には、ベルクランク47の回転中心部および上端部が収納されており、また、ベルクランク47の上端部は針状電極取付部材41bの末端部に取り付けられている。
針状電極41の末端部は、針状電極取付部材41bの先端面に設けられた針状電極調整ナット41aで締め付けられて針状電極取付部材41bに取り付けられている。
これにより、真空度低下検出ベローズ44を伸縮させるとベルクランク47を介して針状電極41の先端部を真空度低下検出ベローズ44の伸縮方向と略垂直方向に直線的に動かすことができる構造となっており、真空度低下検出ベローズ44が縮んだ状態では針状電極41の先端が図1(a)に示すように固定側シールド30aから突出しない状態にすることができ、一方、真空度低下検出ベローズ44が伸びた状態では針状電極41の先端が図1(b)に示すように固定側シールド30aから突出した状態(針状電極41の先端の固定側シールド30aからの突出量は、針状電極調整ナット41aで針状電極41を固定する個所を変えることにより調整可能)にすることができる。
【0029】
なお、真空度低下検出装置40は導電性物質の材料(アルミなど)から構成されている。また、真空度低下検出装置40は固定側金属栓23aの外面の下部に取り付けられている。
そのため、針状電極41は固定側金属栓23a(固定電極22a)と同電位となっており、放電電流も微小であることから、専用の導体(可撓導体など)は不要である。
【0030】
放電検出装置52は、可搬型のものであり、外部タンク10の下面に取り付けられたアンテナ接続端子を介して放電検出アンテナ51と接続可能とされている。
これにより、真空遮断器1の真空度が低下して真空度低下検出装置40の針状電極41の先端が固定側シールド30aから突出して針状電極41と外部タンク10との間に放電が発生すると、放電検出装置52によってこの放電発生を検出することができるので、真空インタラプタ20の真空度低下をリアルタイムで検出することができる。
また、放電検出装置52に、針状電極41と外部タンク10との間の放電発生を検出すると警報ランプを光らせたり警報音を鳴らせたりする警報発生手段を設けることにより、真空インタラプタ20の真空度低下の警報を出力させることができる。
【0031】
次に、真空度低下検出ベローズ44の動作について説明する。
なお、以下では、外部タンク10内の圧力は、外部タンク10の内部ガスが低圧SF6ガスの場合には1.2kg/cm2程度であり、外部タンク10の内部ガスが高圧乾燥空気の場合には6kg/cm2程度であるため、真空インタラプタ20の真空度低下時に真空度低下検出ベローズ44が伸び難い低圧SF6ガスの場合(ベローズ伸縮スプリング45のスプリング力を抑える必要がある条件でスプリング力=5kg)で説明する。
また、ベローズ伸縮スプリング45を縮めようとする力(圧力)は、真空度低下検出ベローズ44全体の外部への圧力となるが、説明を簡単にするため、真空度低下検出ベローズ44に掛る圧力は真空度低下検出ベローズ44の上面の表面積を使用して説明する。
【0032】
真空度低下検出ベローズ44の直径を28mmとすると、真空度低下検出ベローズ44の上面の表面積は約6cm2となる。また、外部タンク10内の圧力は1.2kg/cm2であるため、真空度低下検出ベローズ44の上面に加わる圧力差は1.2kg/cm2+大気圧(1kg/cm2)=2.2kg/cm2となる。
このため、ベローズ伸縮スプリング45を縮めようとする力は2.2kg/cm2×6cm2=13.2kgとなり、ベローズ伸縮スプリング45のスプリング力である5kg以上となることから、ベローズ伸縮スプリング45が圧縮された状態となる。
なお、実際にはベローズ伸縮スプリング45の側面にかかる圧力もベローズ伸縮スプリング45を縮める方向に作用するため、真空インタラプタ20の真空が保たれているときには、ベローズ伸縮スプリング45が伸びることはない。また、外部タンク10内が高圧乾燥空気である場合には、外部タンク10内の圧力は6kg/cm2程度と更に高いため、大きな力でベローズ伸縮スプリング45を圧縮することとなる。
【0033】
真空インタラプタ20の真空が破壊されると、外部タンク10内の圧力とセラミック筺体21内の圧力とが同圧となる。このため、真空度低下検出ベローズ44内の圧力は外部タンク10内の圧力と同圧となるため、圧力差によるスプリング圧縮力が無くなり、ベローズ伸縮スプリング45のスプリング力である5kgで真空度低下検出ベローズ44が伸び、ピストン栓46がベローズケース43の上端まで押し上げられる。
その結果、ベルクランク47は、図2図示右方向に回転して、針状電極41の先端を固定側シールド30aから突出させることとなる。
【0034】
次に、針状電極41の放電について説明する。
平板対平板電極のような電界傾度が緩やかな電極の場合には、電極間に電圧を印加していったとき、ある電圧以上となると、グロー放電から火花放電に移行することなく直接火花放電が発生してアーク放電へ移行する。しかし、針対平板電極のような電界傾度が大きい電極の場合には、電極間の電圧を上昇させていくと、針先端部の媒体がイオン化されて微小電流である暗流(μAオーダー)が流れ始め、グローコロナ(暈光)となり、更に電圧を上げていくと、ブラシコロナ(芒光)からストリーマコロナ(梯子)となり、やがて火花放電となりアーク放電に進展することは一般的に良く知られた現象である。
【0035】
図4に、電界傾度が大きな電極(針対平板電極)間の間隙距離対電圧の関係を示す。
66kVの真空遮断器1の場合には、主回路大地間に印加される電圧最大値(波高値)は66kV/31/2×21/2≒54kVとなる。この場合、針対平板電極では火花放電に移行しないためには、約6cm以上の絶縁距離が必要であることが分かる。また、本実施例による真空遮断器1の主回路(内部シールド)と対地間距離は真空保持時で100mm(10cm)であることから、約70kV以上となれば火花放電となることが分かる。
なお、図4のグラフでは絶縁媒体が空気で圧力が大気圧の条件であるが、絶縁媒体の圧力が上昇すると、火花放電に至る電圧は上昇するが、部分放電(グロー放電など)については大きな変化(大きく耐電圧が上昇するなど)がないことも一般的である。
【0036】
次に、真空保持時の放電について、高圧乾燥空気を絶縁媒体とした真空遮断器の場合を例として説明する。
図5(a)に、真空インタラプタ20の真空が保持されて針状電極41の先端が固定側シールド30aから突出していない状態を示す。
この状態では、主回路電位である固定側シールド30a(内部シールド)と大地電位である外部タンク10間の位置関係は同心円上の位置関係であり、平板対平板電極と同様の平等電界となる。このことから、一般的に知られている耐電圧値(30kV/1cmの耐圧)を有しており,300kV以上の耐電圧を有していることが分かる。また、実際にはメーカーで詳細な構造設計を行って電界傾度の最適化を行うことによって耐電圧性能を上げており、更に高い雷インパルス(350kV)に耐える設計となっている。
【0037】
次に、真空破壊時の放電について説明する。
図5(b)に、真空インタラプタ20の真空が破壊されて針状電極41の先端が固定側シールド30aから突出した状態を示す。
この状態では、針状電極41の先端が固定側シールド30aから突出しているため、針状電極41と外部タンク10との間(電極間)の関係は針対平板電極と同様の状態となるので、主回路大地間距離が90mmとなり、図4のグラフからグロー放電を開始するのは約10kVとなる。また、この状態(90mmの対地間距離)ではストリーマコロナ(梯子)が発生する状況となり、確実に部分放電が発生することが分かる。
【0038】
次に、実際の真空遮断器への適用について説明する。
以上では真空遮断器の一例として説明したが、実際には、外部タンクやシールド部を含め詳細な構造設計や電界解析を行って遮断器メーカーが小型化を図っている。また、部分放電検出もグロー放電など部分放電にまで進展しなくても暗流の状態で放電現象も検出可能となっている。
本実施例による真空遮断器1の真空度低下検出装置40は、放電現象を捉えて真空インタラプタ20の真空破壊を検出するのが目的であり、可能な限り部分放電を小さくすることが望ましいと言える。このため、遮断器設計や構造設計に応じて部分放電が検出できる最小限の針状電極41の先端の突出量に調整することで、真空度低下検出装置40が与える真空遮断器1への悪影響を抑えることが望ましい(すなわち、真空度低下時の針状電極41からの放電量が大きいと、雷侵入時に針状電極41から外部タンク10に向かって地絡事故となるおそれも考えられることから、放電検出が可能な最小限の放電量にすることで規定の耐電圧性能を維持させることが必要である)。
真空度低下検出装置40を採用することにより真空インタラプタ20の真空度低下時には確実に針状電極41から放電検出装置52で検出可能な放電を発せられることは、上述した説明から明らかである。
【0039】
以上の説明では、外部タンク10の下面に放電検出アンテナ51を設置したが、真空遮断器1が備える主回路ブッシング(外部タンク10の上面の両端部に1本ずつ取り付けられている。)の下端部に放電検出アンテナ51を設置してもよい。この場合でも、感度は低下するが、真空インタラプタ20の真空度低下を検出することができる。
【符号の説明】
【0040】
1,100 真空遮断器
10,110 外部タンク
20,120 真空インタラプタ
21,121 セラミック筺体
22a,122a 固定電極
22b,122b 可動電極
23a,123a 固定側金属栓
23b,123b 可動側金属栓
24a,124a 固定側主回路導体
24b,124b 可動側主回路導体
25,125 インタラプタベローズ
26,126 インタラプタ内部シールド
30a,130a 固定側シールド
30b,130b 可動側シールド
40 真空度低下検出装置
41 針状電極
41a 針状電極調整ナット
41b 針状電極取付部材
42 針状電極ガイド
43 ベローズケース
44 真空度低下検出ベローズ
45ベローズ伸縮スプリング
46 ピストン栓
47 ベルクランク
51 放電検出アンテナ
52 放電検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大地電位とされた外部タンク(10)内に真空インタラプタ(20)が収納された、かつ、該真空インタラプタの固定電極(22a)側の端を覆う固定側シールド(30a)を備えたタンク形真空遮断器(1)であって、
前記真空インタラプタのセラミック筺体(21)の前記固定電極側の端を密封する固定側金属栓(23a)の外面に取り付けられた、かつ、該セラミック筺体内の真空度が低下すると前記固定側シールドから先端が突出して前記外部タンクとの間に放電を発生させる針状電極(41)を備えた真空度低下検出装置(40)と、
前記真空遮断器に取り付けられた、かつ、前記外部タンクと前記針状電極との間に発生した放電を検出するための放電検出アンテナ(51)と、
を具備することを特徴とする、タンク形真空遮断器。
【請求項2】
前記真空度低下検出装置が、導電性物質の材料から構成されており、
前記針状電極が、前記固定側金属栓を介して前記固定電極と電気的に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1記載のタンク形真空遮断器。
【請求項3】
前記固定側金属栓に、前記セラミック筺体内と前記真空度低下検出装置内とを連通するための連通用貫通孔が形成されており、
前記固定側シールドに、前記針状電極の先端を突出させる針状電極突出孔が形成されている、
ことを特徴とする、請求項1または2記載のタンク形真空遮断器。
【請求項4】
前記真空度低下検出装置が、
底面を形成するベローズベースに前記連通用貫通孔と繋がった連通孔が形成されたベローズケース(43)と、
下端が前記ベローズベースの内面に固定されるとともに上端が板状のピストン栓(46)に固定された、かつ、該ベローズベースおよび該ピストン栓と共に前記セラミック筺体内と連通するベローズ空間を形成するための真空度低下検出ベローズ(44)と、
該真空度低下検出ベローズと前記ベローズケースの側面との間に取り付けられた、かつ、該真空度低下検出ベローズを引き伸ばすためのベローズ伸縮スプリング(45)と、
前記針状電極と前記ピストン栓との間に設けられた、かつ、一端が該ピストン栓に常時押し付けられた、かつ、前記真空度低下検出ベローズの伸縮方向と略垂直方向に該針状電極を直線的に動かすためのベルクランク(47)と、
を備えることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載のタンク形真空遮断器。
【請求項5】
前記真空度低下検出装置が、
前記ベルクランプの他端が取り付けられた、かつ、前記針状電極の末端部が固定された針状電極取付部材(41b)と、
前記針状電極の末端部を前記針状電極取付部材に固定する個所を変えることにより該針状電極の先端の前記固定側シールドからの突出量を調整するための針状電極調整ナット(41a)と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項4記載のタンク形真空遮断器。
【請求項6】
前記放電検出アンテナが、前記固定側シールドに形成された前記針状電極突出孔と前記外部タンクとの間に設置されており、
前記外部タンクに、該外部タンクの外側に設置される可搬型の放電検出装置(52)に前記放電検出アンテナを接続するためのアンテナ接続端子が形成されている、
ことを特徴とする、請求項3乃至5いずれかに記載のタンク形真空遮断器。
【請求項7】
前記放電検出アンテナが、前記タンク形真空遮断器が備える主回路ブッシングの下端部に設置されていることを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載のタンク形真空遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−216325(P2012−216325A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79408(P2011−79408)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】