説明

タンク支持構造及び浮体構造物

【課題】タンク収容部が傾斜面や多段面を有する場合であっても、タンクの熱収縮や熱膨張に対応することができ、容積効率を向上させることができる、タンク支持構造及び浮体構造物を提供する。
【解決手段】収容部2の側面部に形成された傾斜面21と、傾斜面21上に配置された複数の支持基礎部22と、傾斜面21と対峙する部分を含むタンク3の底面部31に配置されるとともに支持基礎部22上に配置される複数の支持ブロック4と、を備え、支持ブロック4の支持基礎部22上に配置される支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持ブロック4を支持する支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点を通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面に平行な面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク支持構造及び浮体構造物に関し、特に、傾斜面や多段面を有するタンク収容部内において熱収縮や熱膨張するタンクを支持するためのタンク支持構造及び浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、LPG(液化石油ガス)、LNG(液化天然ガス)等の液体貨物を運搬又は貯蔵する運搬船や洋上浮体設備等の浮体構造物では、これらの液体貨物を収容するタンクを浮体構造物から独立させた独立タンク方式のものが広く使用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、コンテナ船、原油タンカー、一般貨物船、客船等の船舶の推進燃料として液化ガス(例えば、LNG)を使用する場合において、液化ガス燃料タンクを、前記液体貨物の場合と同様に、船体から独立させた独立タンク方式とすることが計画されている。
【0003】
また、航海中又は停泊中の浮体構造物には、波の影響により、上下に直線的に揺れるヒービング、左右に直線的に揺れるスウェイイング、前後に直線的に揺れるサージング、中央部を中心に頭尾が上下に振動するピッチング、中央部を中心に頭尾が左右に振動するヨーイング、中心線を軸に側部が上下に振動するローリング、の運動が生じ、実際にはこれらの運動が絡み合った複雑な運動が生じる。したがって、浮体構造物に対して相対移動可能な独立タンク方式のタンクでは、タンクを安定的に支持することが重要となる。
【0004】
例えば、特許文献1の図5及び図6には、ベアリングシート、フローティングチョック(アンチフローテーションチョック)及びローリングチョック(アンチローリングチョック)によって、タンクを支持する構造が開示されている。ここで、ベアリングシートは、タンクの垂直荷重を支持する支持構造であり、ローリングチョック(アンチローリングチョック)は、船体のローリングによりタンクが横方向に振れた場合の水平荷重を支持する支持構造であり、フローティングチョック(アンチフローテーションチョック)は、浸水時におけるタンクの浮き上がりを抑制する支持構造である。したがって、浮体構造物の自重及び上述した波の影響によって生じる浮体構造物の運動による荷重は、主に、ベアリングシート及びローリングチョック(アンチローリングチョック)によって支持される。そして、特許文献1に記載されたように、ベアリングシートは船体の底部に配置され、ローリングチョック(アンチローリングチョック)は船体の天井部及び底部に配置される。
【0005】
また、特許文献2の図14及び図15には、タンクの重さを支えるためのタンクの基部を支持する基部支持体と、タンク上に設けられたタンク支持面と、ホールド上に設けられ前記タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを備えており、前記各支持面がタンクの熱移動の方向に向かって延び、前記各支持面が、前記ホールドに対する前記タンクの横方向に移動を抑制するように水平方向と鉛直方向との間の中間の角度で延びるように構成された支持構造体が開示されている。なお、協働するタンク支持面とホールド支持面とは、熱移動の方向に沿って、タンクの基部の中心に向かう方向に向かって延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−177681号公報、図5及び図6
【特許文献2】特表2010−519480号公報、図14及び図15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したタンク支持構造では、タンクの垂直荷重は、収容部の底部に配置された支持部材により支持されている。したがって、タンク収容部が、船首部等の幅の狭い部分に配置される場合や、他の機器との配置関係からタンク底部を支持するのに十分な面積を確保できない場合には、上述したタンク支持構造を採用することができない。仮に、そのまま採用しようとすれば、面積の小さい収容部に合わせてタンクを設計せざるを得ず、容積効率が低下する、支持構造が複雑になる等の問題があった。
【0008】
特に、タンク内にLPGやLNG等の低温液化ガスが封入された場合、タンクは熱収縮や熱膨張することから、タンク支持構造は、タンクの熱収縮や熱膨張に対応できる構造でなければならない。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、タンク収容部が傾斜面や多段面を有する場合であっても、タンクの熱収縮や熱膨張に対応することができ、容積効率を向上させることができる、タンク支持構造及び浮体構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、浮体構造物に形成された収容部に搭載されるタンクのタンク支持構造において、前記収容部の側面部に形成された傾斜面又は多段面と、該傾斜面又は該多段面上に配置された複数の支持基礎部と、前記傾斜面又は前記多段面と対峙する部分を含む前記タンクの底面部に配置されるとともに前記支持基礎部上に配置される複数の支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックの前記支持基礎部上に配置される支持ブロック底面と、前記支持基礎部の前記支持ブロックを支持する支持面とは、前記支持ブロックのそれぞれにおける前記タンクとの二つの接触点を結ぶ線分と、前記タンクの不動点を通り前記線分に平行な直線と、を含む平面に平行な面を有する、ことを特徴とするタンク支持構造が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されるとともにタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物において、前記タンクは、前記収容部の側面部に形成された傾斜面又は多段面と、該傾斜面又は該多段面上に配置された複数の支持基礎部と、前記傾斜面又は前記多段面と対峙する部分を含む前記タンクの底面部に配置されるとともに前記支持基礎部上に配置される複数の支持ブロックと、を備え、前記支持ブロックの前記支持基礎部上に配置される支持ブロック底面と、前記支持基礎部の前記支持ブロックを支持する支持面とは、前記支持ブロックのそれぞれにおける前記タンクとの二つの接触点を結ぶ線分と、前記タンクの不動点を通り前記線分に平行な直線と、を含む平面に平行な面を有するタンク支持構造により、前記収容部に搭載されている、ことを特徴とする浮体構造物が提供される。
【0012】
上述したタンク支持構造及び浮体構造物において、前記収容部の底面中央部に配置された係止基礎部と、前記タンクの底面中央部に配置されるとともに前記係止基礎部上に配置される係止ブロックと、を有し、前記不動点は、前記係止基礎部に前記係止ブロックを係止させることによって形成されていてもよい。さらに、前記不動点は、前記浮体構造物の中心線方向に沿って少なくとも一つの前記係止基礎部が配置され、前記中心線方向と垂直な幅方向に沿って少なくとも一つの前記係止基礎部が配置されることによって、前記中心線方向と前記幅方向との交点に形成されるようにしてもよい。
【0013】
前記二つの接触点のうち少なくとも一つは、前記不動点から最も離れた前記支持ブロックと前記タンクとの接触点であってもよい。また、前記支持面は、傾斜方向に前記支持ブロック底面よりも幅広に形成されていてもよい。
【0014】
前記タンクの底面部は、前記傾斜面又は前記多段面と対峙する部分の面積が、前記収容部の底面部と対峙する部分よりも大きく形成されていてもよい。また、前記タンクは、前記支持ブロックを係止する枠体部を有していてもよい。また、前記タンクは、下方に向かって突出した脚部を備え、該脚部に前記支持ブロックが配置され、前記脚部を前記タンクの一部として前記支持ブロック底面及び前記支持面を形成するようにしてもよい。また、前記タンクは、前記浮体構造物の中心線方向に沿って一定の幅を有する側壁部又は浮体構造物の中心線方向に沿って幅が変化する側壁部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係るタンク支持構造及び浮体構造物によれば、収容部の側面部が傾斜面又は多段面を有し、支持ブロック底面及び支持面が支持ブロックとタンクとの二つの接触点を結ぶ線分とタンクの不動点を通り前記線分に平行な直線を含む平面に平行な面を有するように形成されていることから、タンク収容部が傾斜面や多段面を有する場合であっても、傾斜面や多段面に沿ってタンクの底面部を配置することができ、容積効率を向上させることができる。また、支持ブロック底面及び支持面がタンクの熱収縮や熱膨張に沿って移動する方向に形成されていることから、タンクの熱収縮や熱膨張に追従しながらタンクを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図1(a)に示したタンク支持構造を有する浮体構造物の全体構成図、である。
【図2】タンク支持構造の説明図であり、(a)は拡大図、(b)は作用説明図、である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、を示している。
【図4】本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。
【図5】平行タンクにおける不動点を示す図であり、(a)は奥行きの幅が広い場合、(b)は奥行きの幅が狭い場合、(c)は二つの接触点と不動点との位置関係、を示している。
【図6】テーパータンクにおける不動点を示す図であり、(a)は奥行きの幅が広い場合、(b)は奥行きの幅が狭い場合、(c)は二つの接触点と不動点との位置関係、(d)は二つの接触点と不動点との位置関係の変形例、を示している。
【図7】本発明の第六実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は浮体構造物の全体構成図、(b)は浮体構造物の全体構成平面図、(c)は図7(b)におけるC−C断面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1〜図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は図1(a)に示したタンク支持構造を有する浮体構造物の全体構成図、である。図2は、タンク支持構造の説明図であり、(a)は拡大図、(b)は作用説明図、である。
【0018】
本発明の第一実施形態にタンク支持構造は、図1(a)に示したように、浮体構造物1に形成された収容部2に搭載されるタンク3のタンク支持構造であって、収容部2の側面部に形成された傾斜面21と、傾斜面21上に配置された複数の支持基礎部22と、傾斜面21と対峙する部分を含むタンク3の底面部31に配置されるとともに支持基礎部22上に配置される複数の支持ブロック4と、を備え、支持ブロック4の支持基礎部22上に配置される支持ブロック底面41と、支持基礎部22の支持ブロック4を支持する支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点Fを通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面Sに平行な面を有する。すなわち、平面Sは、第一接触点Cから直線Lfに下ろした垂線Lcと、第二接触点C′から直線Lfに下ろした垂線Lc′と、を含むこととなる。なお、線分CC′、不動点F、直線Lf、垂線Lc′及び平面Sの位置関係については、図5(c)を用いて後述する。ここで、タンク3は、浮体構造物1の中心線方向Lmに沿って一定の幅を有する側壁部35を備えた、いわゆる平行タンクであるものとする。
【0019】
前記浮体構造物1は、図1(b)に示したように、浮力により水上に支持される本体部5と、本体部5に形成されるとともにタンク3が搭載される収容部2と、を有する。図示した浮体構造物1は、例えば、自立角型方式のLNG船である。なお、浮体構造物1は、自立角型のタンク3を有する船舶であれば、石油輸送船、LPG船、ケミカルタンカー等であってもよいし、自立角型方式のLNG洋上浮体設備(例えば、FPSO)であってもよい。また、浮体構造物1は、推進燃料である液化ガス(例えば、LNG)を貯蔵する液化ガス燃料タンクを有する、コンテナ船、原油タンカー、一般貨物船、客船等の船舶であってもよい。
【0020】
図1(a)に示したタンク支持構造の断面図は、例えば、図1(b)におけるA−A断面図である。船首部(例えば、A−A線部)における船体(本体部5)は、船底部の幅が狭くなるように形成されており、図1(a)に示したように、収容部2は傾斜面21を有し、略V字形状の側面を有する。また、収容部2は、タンク3の下部に配置される略水平面を構成する底面部23を有し、底面部23の略中央部(底面中央部)には、タンク3を水平方向に支持する係止基礎部24が配置されている。
【0021】
係止基礎部24は、例えば、タンク3の垂直荷重を支持する支持台24aと、浮体構造物1の長手方向に延びる中心線に沿って支持台24aに形成された一対の突起部24bと、を有する。係止基礎部24は、突起部24bにより係止ブロック6を拘束することによって、タンク3の中心線方向Lmの移動を許容しつつ水平方向(タンク幅方向)の移動を規制し、直線Lf上の不動点Fを形成する。また、係止基礎部24は、少なくともタンク3の幅方向の熱伸縮に対応できるように構成されていればよい。さらに、係止基礎部24は、浮体構造物1のローリングによる水平荷重を支持可能に構成されていてもよい。なお、図示しないが、収容部2の底面部23には、係止基礎部24の両隣にタンク3の垂直荷重を支持する複数の支持基礎部を配置するようにしてもよいし、従来のタンク支持構造と同様に、アンチフローテーションチョックやタンク3の上部にアンチローリングチョックを配置するようにしてもよい。
【0022】
図1(a)に示したように、例えば、船首部に形成された収容部2は、底面部23の面積が小さく、底面部23に配置された係止基礎部24では、タンク3の垂直荷重を支持することができず、係止基礎部24の両隣に支持基礎部を配置した場合も同様である。また、収容部2は、底面部23と比較して大きな面積を有する傾斜面21を有する。したがって、タンク3の底面部31も、傾斜面21と対峙する部分(傾斜部31a)の面積が、収容部2の底面部23と対峙する部分(水平部31b)よりも大きく形成されている。本発明は、収容部2の傾斜面21を利用してタンク3の垂直荷重を支持することができるようにしたものである。
【0023】
前記タンク3は、例えば、石油、LPG、LNG等の液体貨物を収容するタンクである。ここでは、LNGを収容する場合を想定している。LNGは、気体の天然ガスを約−160℃以下の温度に冷却して液体にしたものであり、低温に維持する必要がある。そこで、タンク3の外周には、パネル状の断熱材(図示せず)が張り巡らされている。かかるタンク3は、船体(本体部5)から独立して建造された独立タンクであり、収容部2の内部に載置される。なお、タンク3は、コンテナ船、原油タンカー、一般貨物船、客船等の通常の船舶において、推進燃料としての液化ガス(例えば、LNG)を貯蔵する液化ガス燃料タンクであってもよい。
【0024】
図2(a)に示したように、収容部2の傾斜面21に支持基礎部22が形成されており、支持基礎部22の表面には支持面22aが形成されている。また、タンク3の底面部31における傾斜部31aは、収容部2の傾斜面21と略平行な傾斜面を有している。かかるタンク3の底面部31(傾斜部31a)には、支持ブロック4を係止する枠体部32が配置されている。また、タンク3の底面部31における水平部31bは、収容部2の底面部23と略平行な水平面を有している。かかるタンク3の底面部31(水平部31b)には、係止ブロック6を係止する枠体部33が配置されている。枠体部32,33は、支持ブロック4の外周を囲う環状に形成されており、下方が開放された凹部を有している。
【0025】
支持ブロック4及び係止ブロック6は、例えば、角型の木材により構成され、枠体部32,33に押し込まれることにより嵌合され係止される。また、支持ブロック4は、支持基礎部22の支持面22aに接触する支持ブロック底面41と、タンク3の底面部31(傾斜面)に接触する支持ブロック上面42と、を有する。なお、支持ブロック4には、従来の支持ブロックと同様のものを適宜使用することができ、例えば、ゴムや樹脂等の熱伝導率が低く弾性力を有する素材により構成されたものや、これらの素材を角材の表面に固定したものを使用してもよいし、固定金具により枠体部33に固定するようにしてもよい。
【0026】
タンク3は、収容物によって熱収縮や熱膨張することになるが、不動点Fは、タンク3の底面部31(水平部31b)における船体中心軸M上の点となる。すなわち、不動点Fは、タンク3が熱収縮や熱膨張する場合であっても位置がずれない点である。したがって、タンク3の壁面上の点は、全て不動点Fに向かって熱収縮したり熱膨張したりすることとなる。
【0027】
ここで、図2(a)に示したように、支持ブロック4とタンク3との第一接触点Cからタンク3の不動点Fを通る直線Lf上に垂線Lcを下ろせば、第一接触点Cは熱収縮及び熱膨張する際に、図2(a)に示した断面への投影において、垂線Lc上に沿って移動することとなる。第一接触点Cは、例えば、不動点Fから最も離れた支持ブロック4とタンク3との接触点に設定される。第一接触点Cは、支持ブロック4とタンク3との接触点であれば、支持ブロック上面42のどの点(例えば、中間点や最も近い点等)を設定するようにしてもよいが、不動点Fから離れるほどタンク3が熱収縮や熱膨張した場合における移動距離が長いことを鑑みれば、第一接触点Cは不動点Fから最も離れた支持ブロック上面42上の点に設定するとよい。また、第二接触点C′は支持ブロック上面42の第一接触点Cを含む辺上の端点に設定するとよい。
【0028】
いま、垂線Lcを含み浮体構造物1の中心線方向Lm(紙面に垂直な方向)に延びる平面を考える。この平面は、二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)が同じ高さ(水平位置)であって、線分CC′が側壁部35と平行に設定される場合、線分CC′及び直線Lfを含む平面Sと一致し、その断面図は垂線Lcと一致する。そして、支持基礎部22の支持面22a及び支持ブロック4の支持ブロック底面41は、垂線Lcを含む平面と平行な面(断面図は直線Lpと一致する)となるように形成される。すなわち、垂線Lcと直線Lpとは互いに平行な関係を有している。
【0029】
また、支持ブロック4は、支持基礎部22の支持面22aを摺動するため、支持面22aは、垂線Lc方向(すなわち、傾斜方向)に支持ブロック底面41よりも幅広に形成されている。具体的には、支持ブロック4の支持ブロック底面41は垂線Lc方向に幅Wbを有し、支持基礎部22の支持面22aは垂線Lc方向に幅Wsを有し、Ws>Wbの関係を有している。さらに、支持ブロック4の支持ブロック底面41は中心線方向Lmに幅Wb′を有し、支持基礎部22の支持面22aは中心線方向Lm方向に幅Ws′を有し、Ws′>Wb′の関係を有していてもよい(図5(c)参照)。
【0030】
かかるタンク支持構造によれば、支持ブロック4を介してタンク3の少なくとも垂直荷重を支持基礎部22で支持することができ、タンク3の収容部2が傾斜面21を有する場合であっても、傾斜面21に沿ってタンク3の底面部31(傾斜部31a)を配置することができ、容積効率を向上させることができる。なお、かかる実施形態において、支持ブロック4及び支持基礎部22によりタンク3の水平荷重を支持できる場合には、いわゆるアンチローリングチョックを省略するようにしてもよい。
【0031】
また、タンク3は、熱収縮又は熱膨張した場合、図2(b)に示したように、移動することとなる。ここで、熱収縮した場合を実線、熱膨張した場合を一点鎖線で表示している。タンク3の底面部31は、不動点Fに向かって熱収縮又は熱膨張し、結果として、タンク3の幅方向に伸縮した形状となる。このとき、支持ブロック4は、支持ブロック上面42が枠体部33によって拘束されていることから、図示したように、実線又は一点鎖線の間で移動することとなり、支持ブロック底面41は支持基礎部22の支持面22a上を摺動する。このように、支持ブロック底面41及び支持面22aがタンク3の熱収縮や熱膨張に沿って移動する方向に形成されていることから、タンク3の熱収縮や熱膨張に追従しながらタンク3を支持することができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造について、図3及び図4を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、を示している。図4は、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。図3及び図4に示したタンク3は、第一実施形態と同様に平行タンクであるものとする。なお、上述した第一実施形態のタンク支持構造と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
図3(a)に示した第二実施形態に係るタンク支持構造は、タンク3が、下方に向かって突出した脚部34を備え、脚部34に支持ブロック4が配置され、脚部34をタンク3の一部として支持ブロック底面41及び支持面22aを形成するようにしたものである。タンク3の形状によっては、底面部31の傾斜部31aから鉛直方向下方に突出した脚部34を溶接して配置し、脚部34の下面を略水平面とすることにより、支持ブロック上面42を略水平面に形成することができ、支持ブロック4を容易に成形することができる。また、支持ブロック4を係止する枠体部33は、脚部34の下面又は側面に配置される。なお、脚部34は、例えば、タンク3を形成する素材と同質の素材により構成される。
【0034】
かかる第二実施形態では、脚部34をタンク3の一部とみなして、上述した第一実施形態と同様の方法により、支持ブロック底面41及び支持面22aの形状が設定される。すなわち、支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点Fを通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面Sに平行な面、すなわち、二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)が同じ高さ(水平位置)であって、線分CC′が側壁部35と平行に設定される場合、垂線Lcを含み、中心線方向Lmに延びる平面に平行な面(断面図は直線Lpと一致する)を有するように形成される。
【0035】
さらに、支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、第一接触点Cと不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面(この平面は平面Sと一致する)に平行な面を有する、と言い換えることもできる。
【0036】
図3(b)に示した第三実施形態に係るタンク支持構造は、収容部2の側面部に形成された多段面25と、多段面25上に配置された複数の支持基礎部22と、を有するものである。収容部2が多段面25を有する場合には、図示したように、タンク3の底面部31は、多段面25と対峙する部分(多段部31c)を有する。例えば、多段面25を下段から上段に向かって、第一段差部25a、第二段差部25b、・・・と設定した場合、各段差部に支持基礎部22を配置してもよいし、設計上必要な箇所の段差部にのみ支持基礎部22を配置するようにしてもよい。
【0037】
かかる第三実施形態では、対峙する収容部2の多段面25及びタンク3の多段部31cは、略水平方向の面を有している。また、第一実施形態と同様に、支持ブロック底面41と支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)を結ぶ線分C1C1′,C2C2′と、タンク3の不動点Fを通り線分C1C1′,C2C2′に平行な直線Lf1,Lf2と、を含む平面S1,S2に平行な面、すなわち、二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)が同じ高さ(水平位置)であって、線分C1C1′,C2C2′が側壁部35と平行に設定される場合、直線Lc1,Lc2を含み、中心線方向Lmに延びる平面に平行な面(断面図は直線Lp1,Lp2と一致する)を有するように形成される。なお、支持ブロック4のそれぞれにおける二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)がそれぞれにおいて同じ高さ(水平位置)であって、線分C1C1′,C2C2′が側壁部35と平行に設定される場合、直線Lf1と直線Lf2とは一致する。
【0038】
さらに、ある位置における支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、第一接触点C1と不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C1′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面(この平面は平面S1と一致する)に平行な面を有し、他の位置における支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、第一接触点C2と不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C2′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面(この平面は平面S2と一致する)に平行な面を有する、と言い換えることもできる。なお、かかる第三実施形態では、図5(c)において、第一接触点CはC1に、垂線LcはLc1に、第二接触点C′はC1′に、垂線Lc′はLc1′に、平面SはS1に、読み替えるものとする。
【0039】
なお、図3(b)に示したように、収容部2の底面部23の面積が比較的広い場合には、タンク3の垂直荷重を支持する支持基礎部26を底面部23に配置し、タンク3の底面部31(水平部31b)に係止させた支持ブロック7を配置するようにしてもよい。
【0040】
図4(a)に示した第四実施形態に係るタンク支持構造は、浮体構造物1の船底部が幅広に形成された船体(本体部5)において、収容部2が多段面25を有する場合を想定したものである。すなわち、第四実施形態に係るタンク支持構造は、第三実施形態と同様に、収容部2の側面部に形成された多段面25と、多段面25上に配置された複数の支持基礎部22と、を有し、支持ブロック底面41と支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)を結ぶ線分C1C1′,C2C2′と、タンク3の不動点Fを通り線分C1C1′,C2C2′に平行な直線Lf1,Lf2と、を含む平面S1,S2に平行な面、すなわち、二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)が同じ高さ(水平位置)であって、線分C1C1′,C2C2′が側壁部35と平行に設定される場合、直線Lc1,Lc2を含み、中心線方向Lmに延びる平面に平行な面(断面図は直線Lp1,Lp2と一致する)を有するように形成される。なお、支持ブロック4のそれぞれにおける二つの接触点(第一接触点C1,C2及び第二接触点C1′,C2′)がそれぞれにおいて同じ高さ(水平位置)であって、線分C1C1′,C2C2′が側壁部35と平行に設定される場合、直線Lf1と直線Lf2とは一致する。
【0041】
さらに、ある位置における支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、第一接触点C1と不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C1′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面(この平面は平面S1と一致する)に平行な面を有し、他の位置における支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、第一接触点C2と不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C2′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面(この平面は平面S2と一致する)に平行な面を有する、と言い換えることもできる。なお、かかる第四実施形態では、図5(c)において、第一接触点CはC1に、垂線LcはLc1に、第二接触点C′はC1′に、垂線Lc′はLc1′に、平面SはS1に、読み替えるものとする。
【0042】
浮体構造物1は、船首部や船尾部以外の部分において、配管や他の船内機器の配置上の関係や積載する貨物の形状との関係から、図示したような多段面25を有する場合がある。特に、元々、収容部2の形状が限定された浮体構造物1にLNG等の液体貨物や推進燃料を貯蔵するタンク3を後から搭載する場合に多段面25が形成され易い。このように多段面25が形成された場合、従来では、収容部2の底面部23の面積がタンク3を支持するのに十分な大きさを有していないこともあり、タンク3の形状を収容部2の底面部23の面積に合わせて小さくしなければならず、容積効率を低下させる原因となっていた。また、収容部2に多段面25が形成されないように、浮体構造物1を設計する必要もあり、設計上の制約条件が増加し、配管や他の船内機器の配置に苦労したり、既存の浮体構造物1に新たにタンク3を設置する場合等に十分な容積の確保に苦労したりすることにもなっていた。
【0043】
しかしながら、上述した第四実施形態のタンク支持構造を採用することにより、収容部2が多段面25を有している場合であっても、収容部2の形状に合わせてタンク3の外形を設計し、多段面25でタンク3の底面部31(多段部31c)を支持することにより、容積効率を向上させることができ、設計上の制約条件を緩和することもできる。
【0044】
図4(b)に示した第五実施形態に係るタンク支持構造は、第四実施形態と同様に、収容部2が多段面25を有する場合に、タンク3の底面部31を多段に形成せず、傾斜させた場合(傾斜部31aを形成した場合)を想定したものである。このように、タンク3の底面部31の形状が収容部2の側面部である多段面25と形状が異なる場合には、例えば、タンク3の底面部31(傾斜部31a)に下方に向かって突出した脚部34を配置するようにすればよい。かかる脚部34を配置することにより、実質的に第四実施形態と同等のタンク支持構造を構成することができる。なお、タンク3の底面部31が傾斜面を有し、収容部2が多段面25を有する場合であっても、脚部34を配置せずに支持ブロック4を配置するようにしてもよい。
【0045】
上述した第一実施形態〜第五実施形態に係るタンク支持構造によれば、収容部2が傾斜面21や多段面25を有し、タンク3の垂直荷重を支持するのに十分な底面部23の面積が確保できない場合であっても、傾斜面21や多段面25を利用してタンク3の垂直荷重を支持することができ、タンク3の形状を傾斜面21や多段面25に沿って形成することができ、容積効率を向上させることができる。また、かかる実施形態を適宜組み合わせることにより、複雑な形状を有する収容部2においても、収容部2の形状に合わせた容積効率の高いタンク3を形成して配置することができる。
【0046】
ここで、不動点Fについて、図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、平行タンクにおける不動点を示す図であり、(a)は奥行きの幅が広い場合、(b)は奥行きの幅が狭い場合、(c)は二つの接触点と不動点との位置関係、を示している。図6は、テーパータンクにおける不動点を示す図であり、(a)は奥行きの幅が広い場合、(b)は奥行きの幅が狭い場合、(c)は二つの接触点と不動点との位置関係、(d)は二つの接触点と不動点との位置関係の変形例、を示している。なお、各図は本体部5の水平断面図を示しており、タンク3及び支持基礎部22については、説明の便宜上、破線で図示している。
【0047】
図5(a)〜(c)は、タンク3が平行な側壁部35を有する平行タンクである場合を示している。上述したように不動点Fは、係止基礎部24によって形成される。具体的には、図示したように、浮体構造物1の中心線方向Lmに沿って少なくとも一対の係止基礎部24が配置され、中心線方向Lmと垂直な幅方向Lwに沿って少なくとも一対の係止基礎部24が配置されることによって、中心線方向Lmと幅方向Lwとの交点に不動点Fが形成される。中心線方向Lmに沿って配置された係止基礎部24は、タンク3の中心線方向Lmの移動を許容しつつ幅方向Lwの移動を規制する。また、幅方向Lwに沿って配置された係止基礎部24は、タンク3の幅方向Lw方向の移動を許容しつつ中心線方向Lmの移動を規制する。
【0048】
図5(a)に示したように、側壁部35が浮体構造物1の中心線方向Lm(長手方向)に沿って一定の幅を有する場合には、不動点Fは一般的にタンク3の中心点に配置される。ただし、不動点Fは、浮体構造物1の種類や姿勢の取り方、タンク3の配置位置等によって、任意の位置に形成することができる。なお、係止基礎部24は、タンク3の回転及びタンク3の水平荷重を考慮して、中心線方向Lm及び幅方向Lwの各方向において、三つ以上配置するようにしてもよい。
【0049】
図5(b)に示したように、タンク3の奥行き方向(中心線方向Lm)の幅が狭い場合には、浮体構造物1の中心線方向Lmに沿って少なくとも一つの係止基礎部24を配置し、中心線方向Lmと垂直な幅方向Lwに沿って少なくとも一つ(図では一対)の係止基礎部24を配置することによって、中心線方向Lmと幅方向Lwとの交点に不動点Fを形成するようにしてもよい。このように、不動点Fは、タンク3の中心線方向Lm又は幅方向Lwの移動を規制する係止基礎部24により、任意の位置に設定することができる。このとき、図示したように、収容部2の傾斜面や多断面に対峙するタンク底面部31に配置される支持ブロック4を支持する支持基礎部22の一部又は全部を、係止基礎部24に置き換えるようにしてもよい。
【0050】
図5(c)に示したように、上述した第一実施形態〜第五実施形態における支持ブロック底面41と支持面22a(図1〜図4参照)とは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点Fを通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面Sに平行な面を有する。すなわち、平面Sは、第一接触点Cから直線Lfに下ろした垂線Lcと、第二接触点C′から直線Lfに下ろした垂線Lc′と、を含むこととなる。第一接触点C及び第二接触点C′が同じ高さ(水平位置)であって、線分CC′が側壁部35と平行な場合には、図示したように、直線Lfは中心線方向Lmと一致する。また、平面Sは、第一接触点Cと不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面と一致する。
【0051】
また、他の位置における支持ブロック底面41と支持基礎部22の支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C2及び第二接触点C2′)を結ぶ線分C2C2′と、タンク3の不動点Fを通り線分C2C2′に平行な直線Lf2(線分C2C2′が側壁部35と平行に設定される場合、直線Lf2は直線Lfと一致する)と、を含む平面S2に平行な面を有する。すなわち、平面S2は、第一接触点C2から直線Lf2に下ろした垂線Lc2と、第二接触点C2′から直線Lf2に下ろした垂線Lc2′と、を含むこととなる。第一接触点C2及び第二接触点C2′が同じ高さ(水平位置)であって、線分C2C2′が側壁部35と平行な場合には、図示したように、直線Lf2は中心線方向Lmと一致する。また、平面S2は、第一接触点C2と不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C2′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面と一致する。
【0052】
なお、図5(c)において、支持ブロック4及び支持基礎部22は、説明の便宜上、左右四つずつ配置した場合を図示したが、支持ブロック4及び支持基礎部22の配置(行列数)及び個数は図示したものに限定されるものではない。
【0053】
図6(a)〜(d)は、タンク3が中心線方向Lmに傾斜した側壁部35を有するテーパータンクである場合を示している。上述したように不動点Fは、係止基礎部24によって形成される。具体的には、図示したように、浮体構造物1の中心線方向Lmに沿って少なくとも一対の係止基礎部24が配置され、中心線方向Lmと垂直な幅方向Lwに沿って少なくとも一対の係止基礎部24が配置されることによって、中心線方向Lmと幅方向Lwとの交点に不動点Fが形成される。中心線方向Lmに沿って配置された係止基礎部24は、タンク3の中心線方向Lmの移動を許容しつつ幅方向Lwの移動を規制する。また、幅方向Lwに沿って配置された係止基礎部24は、タンク3の幅方向Lw方向の移動を許容しつつ中心線方向Lmの移動を規制する。
【0054】
図6(a)に示したように、側壁部35が浮体構造物1の中心線方向Lm(長手方向)に沿って幅が変化する形状を有する場合には、不動点Fは、例えば、タンク3の中心点よりも幅広側(例えば、本体部5の後方側)に配置される。ただし、不動点Fは、浮体構造物1の種類や姿勢の取り方によって、任意の位置に形成することができる。
【0055】
テーパータンクの側壁部35は、一般的に、本体部5の形状に合わせて形成され、テーパー面であってもよいし、本体部5に沿って湾曲していてもよい。さらに、本体部5が図5(a)のように平行な形状を有する場合であっても、本体部5内の構造によっては、図6(a)に示したようなテーパータンクを使用するようにしてもよい。なお、係止基礎部24は、タンク3の回転及びタンク3の水平荷重を考慮して、中心線方向Lm及び幅方向Lwの各方向において、三つ以上配置するようにしてもよい。
【0056】
図6(b)に示したように、タンク3の奥行き方向(中心線方向Lm)の幅が狭い場合には、浮体構造物1の中心線方向Lmに沿って少なくとも一つの係止基礎部24を配置し、中心線方向Lmと垂直な幅方向Lwに沿って少なくとも一つ(図では一対)の係止基礎部24を配置することによって、中心線方向Lmと幅方向Lwとの交点に不動点Fを形成するようにしてもよい。このように、不動点Fは、タンク3の中心線方向Lm又は幅方向Lwの移動を規制する係止基礎部24により、任意の位置に設定することができる。このとき、図示したように、収容部2の傾斜面や多断面に対峙するタンク底面部31に配置される支持ブロック4を支持する支持基礎部22の一部又は全部を、係止基礎部24に置き換えるようにしてもよい。
【0057】
図6(c)に示したように、上述した第一実施形態〜第五実施形態において、タンク3がテーパータンクである場合には、支持ブロック4及び支持基礎部22は、例えば、タンク3の側壁部35に沿った向きに配置される。そして、支持ブロック底面41と支持面22a(図1〜図4参照)とは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点Fを通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面Sに平行な面を有する。すなわち、平面Sは、第一接触点Cから直線Lfに下ろした垂線Lcと、第二接触点C′から直線Lfに下ろした垂線Lc′と、を含むこととなる。また、平面Sは、第一接触点Cと不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面と一致する。
【0058】
図6(d)に示したように、支持ブロック4及び支持基礎部22は、中心線方向Lm及び幅方向Lwに沿った向きに配置するようにしてもよい。この場合も、図6(c)に示した配置と同様に、支持ブロック底面41と支持面22aとは、支持ブロック4のそれぞれにおけるタンク3との二つの接触点(第一接触点C及び第二接触点C′)を結ぶ線分CC′と、タンク3の不動点Fを通り線分CC′に平行な直線Lfと、を含む平面Sに平行な面を有する。すなわち、平面Sは、第一接触点Cから直線Lfに下ろした垂線Lcと、第二接触点C′から直線Lfに下ろした垂線Lc′と、を含むこととなる。第一接触点C及び第二接触点C′が同じ高さ(水平位置)であって、線分CC′が中心線方向Lmと平行な場合には、図示したように、直線Lfは中心線方向Lmと一致する。また、平面Sは、第一接触点Cと不動点Fとを結ぶ直線と、第二接触点C′と不動点Fとを結ぶ直線と、を含む平面と一致する。
【0059】
なお、図6(c)及び(d)において、支持ブロック4及び支持基礎部22は、説明の便宜上、図の右側に一つ配置した場合を図示したが、支持ブロック4及び支持基礎部22の配置(行列数)及び個数は図示したものに限定されるものではない。
【0060】
最後に、本発明の第六実施形態に係るタンク支持構造について、図7を参照しつつ説明する。ここで、図7は、本発明の第六実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は浮体構造物の全体構成図、(b)は浮体構造物の全体構成平面図、(c)は図7(b)におけるC−C断面図、である。なお、上述した第一実施形態のタンク支持構造と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0061】
図7(b)に示したように、浮体構造物1の後部に配置された機関室の両脇には、前後方向に長くて幅方向に短い区画(収容部2)が配置されている。図7(a)に示したように、かかる区画(収容部2)の外殻を構成する本体部5は、底部が徐々に上方に傾斜する流線形状を有しており、区画(収容部2)は、本体部5の形状に沿うように、水平な底面と傾斜する底面とを有し、かかる区画(収容部2)に配置されるタンク3も、水平な底面と傾斜する底面とを有する。
【0062】
このように、本体部5の両側部に配置された収容部2にタンク3を個別に配置する場合には、図7(c)に示したように、第一実施形態におけるタンク3を二分割したような形状を有するタンク3を使用する。タンク3の底面部31は、収容部2の底面部23に対峙する水平部31bと、収容部2の側面に形成された傾斜面21に対峙する傾斜部31aと、を有する。このようにタンク3が本体部5の前後方向に長い形状を有する場合であっても、不動点Fは、タンク3の底面部31(水平部31b)に設定されるように係止基礎部24が配置される。特に、幅方向に狭いタンク3の場合には、例えば、図5(b)に示した奥行きの幅が狭い平行タンクを90度回転させた状態(中心線方向Lmと幅方向Lwを入れ替えた状態)と同様に係止基礎部24を配置するようにすればよい。
【0063】
上述した第六実施形態において、第一実施形態に係るタンク支持構造を基準に説明したが、第二実施形態〜第五実施形態に係る構成を適宜適用するようにしてもよい。
【0064】
なお、上述した第一実施形態〜第六実施形態の説明において、「垂直荷重」とは、浮体構造物1が静止水面上に支持されている場合に鉛直方向に作用する荷重を意味し、「水平荷重」とは、浮体構造物1が静止水面上に支持されている場合に水平方向に作用する荷重を意味する。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されず、収容部2が傾斜面21を有しタンク3が多段面を有する場合であっても本発明を適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 浮体構造物
2 収容部
3 タンク
4 支持ブロック
5 本体部
6 係止ブロック
21 傾斜面
22 支持基礎部
22a 支持面
24 係止基礎部
25 多段面
31 底面部
32,33 枠体部
34 脚部
35 側壁部
41 支持ブロック底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物に形成された収容部に搭載されるタンクのタンク支持構造において、
前記収容部の側面部に形成された傾斜面又は多段面と、該傾斜面又は該多段面上に配置された複数の支持基礎部と、前記傾斜面又は前記多段面と対峙する部分を含む前記タンクの底面部に配置されるとともに前記支持基礎部上に配置される複数の支持ブロックと、を備え、
前記支持ブロックの前記支持基礎部上に配置される支持ブロック底面と、前記支持基礎部の前記支持ブロックを支持する支持面とは、前記支持ブロックのそれぞれにおける前記タンクとの二つの接触点を結ぶ線分と、前記タンクの不動点を通り前記線分に平行な直線と、を含む平面に平行な面を有する、
ことを特徴とするタンク支持構造。
【請求項2】
前記収容部の底面中央部に配置された係止基礎部と、前記タンクの底面中央部に配置されるとともに前記係止基礎部上に配置される係止ブロックと、を有し、前記不動点は、前記係止基礎部に前記係止ブロックを係止させることによって形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項3】
前記不動点は、前記浮体構造物の中心線方向に沿って少なくとも一つの前記係止基礎部が配置され、前記中心線方向と垂直な幅方向に沿って少なくとも一つの前記係止基礎部が配置されることによって、前記中心線方向と前記幅方向との交点に形成される、ことを特徴とする請求項2に記載のタンク支持構造。
【請求項4】
前記二つの接触点のうち少なくとも一つは、前記不動点から最も離れた前記支持ブロックと前記タンクとの接触点である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項5】
前記支持面は、傾斜方向に前記支持ブロック底面よりも幅広に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項6】
前記タンクの底面部は、前記傾斜面又は前記多段面と対峙する部分の面積が、前記収容部の底面部と対峙する部分よりも大きく形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項7】
前記タンクは、前記支持ブロックを係止する枠体部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項8】
前記タンクは、下方に向かって突出した脚部を備え、該脚部に前記支持ブロックが配置され、前記脚部を前記タンクの一部として前記支持ブロック底面及び前記支持面を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項9】
前記タンクは、前記浮体構造物の中心線方向に沿って一定の幅を有する側壁部又は浮体構造物の中心線方向に沿って幅が変化する側壁部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項10】
浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されるとともにタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物において、
前記タンクは、請求項1〜請求項9のいずれかに記載のタンク支持構造により、前記収容部に搭載されている、ことを特徴とする浮体構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39866(P2013−39866A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176833(P2011−176833)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】