説明

タンク支持緩衝部材

【課題】タンクと帯状部材との間に介装される緩衝部材の帯状部材への貼着作業を容易且つ確実に行い得るタンク支持緩衝部材を提供する。
【解決手段】タンクと帯状部材10との間に介装される緩衝部材20が、帯状部材の幅Waより大の幅Wbを有し、少なくとも一端面から長手方向に第1の距離Da離隔し、且つ帯状部材の幅に相当する所定位置Paまで、両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第1の対向切欠部21,21と、所定位置から長手方向に第2の距離Db以上離隔した所定範囲Dcに亘り、帯状部材の幅に相当する位置まで、両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第2の対向切欠部22,22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク支持緩衝部材に関し、特に、帯状部材によって車体に支持されるタンクと帯状部材との間に介装される緩衝部材が、帯状部材に予め貼着されるタンク支持緩衝部材に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクを車体に固定する一手段として、スチールバンド等の帯状部材が用いられ、その帯状部材と燃料タンクとの間にクッションゴムが介装されたものが知られている。例えば、下記の特許文献1には、「燃料タンクの振動が車体に伝達されることを効果的に抑えることができる燃料タンク支持構造を得る」ことを目的とし、「燃料タンクと車体側支持部との間に、弾性材から成る防振部材を配置した燃料タンク支持構造であって、前記防振部材は、前記車体側支持部に支持される基部と、前記基部から前記燃料タンク側に突設され、それぞれ前記基部との間に空隙を形成しつつ該基部に対し前記燃料タンクを支持する複数の防振部」を含む構成が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−116991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のクッションゴムは、衝撃あるいは振動を吸収する防振部材として機能すべく特殊な構造に形成されているが、支持対象のタンクに応じて種々の構造のクッションゴムが存在する。本願においては、これらのクッションゴムの構造は問わず、緩衝機能を有する部材として緩衝部材を対象とするものである。そして、特に、この緩衝部材が予めスチールバンド等の帯状部材に貼着されるタンク支持緩衝部材において、緩衝部材の貼着作業に着目したものである。例えば図8に示すように、車両用の水素タンク(一対のタンク1から成る)は車体2に支持されるが、このとき用いられる緩衝部材(図示せず)は、後述するように略矩形断面のクッションゴムであり、これがスチールバンド10に予め貼着されるように構成されている。
【0005】
このようなタンク支持緩衝部材においては、振動による緩衝部材のズレに対応すべく、緩衝部材の幅(例えば50mm)が帯状部材の幅(例えば40mm)より大に設定され、両側に出代(夫々5mm)が形成されているので、緩衝部材を帯状部材の中心線に沿って貼着する作業は容易ではない。このため、貼着時の位置合わせに多大の作業時間を要し、均一の品質を維持することは極めて困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、帯状部材によって車体に支持されるタンクと帯状部材との間に介装される緩衝部材が、帯状部材に予め貼着されるタンク支持緩衝部材において、帯状部材への緩衝部材の貼着作業を容易且つ確実に行い得るタンク支持緩衝部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、請求項1に記載のように、帯状部材によって車体に支持されるタンクと前記帯状部材との間に介装される緩衝部材が、前記帯状部材に予め貼着されるタンク支持緩衝部材において、前記緩衝部材が、前記帯状部材の幅より大の幅を有し、前記緩衝部材の長手方向の少なくとも一端面から長手方向に第1の距離離隔し、且つ前記帯状部材の幅に相当する所定位置まで、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第1の対向切欠部と、前記所定位置から前記緩衝部材の長手方向に第2の距離以上離隔した所定範囲に亘り、前記帯状部材の幅に相当する位置まで、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第2の対向切欠部を備えることとしたものである。
【0008】
上記タンク支持緩衝部材は、更に、請求項2に記載のように、前記緩衝部材の長手方向の少なくとも一端面の両側が略均等に切除され、前記帯状部材の幅に相当する長さに形成された端面を備えたものとするとよい。
【0009】
更に、請求項3に記載のように、前記緩衝部材の長手方向の両端面の両側が略均等に切除され、前記帯状部材の幅に相当する長さに形成された両端面と、前記緩衝部材の長手方向の中間部に、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第3の対向切欠部を備えたものとしてもよい。
【0010】
上記の各タンク支持緩衝部材において、更に、請求項4に記載のように、前記帯状部材の幅以下の幅を有し、前記緩衝部材の前記帯状部材への貼着面に前記緩衝部材の長手方向の全長に亘って付着される接着部材を備えたものとするとよい。
【0011】
上記に加え、請求項5に記載のように、前記緩衝部材の幅より大の幅を有し、少なくとも前記緩衝部材の長手方向の全長に亘って前記接着部材に付着される離型紙を備えたものとするとよい。更に、前記離型紙は、前記緩衝部材の長手方向の中間部で分離しておくとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、請求項1に記載のタンク支持緩衝部材においては、第1の対向切欠部は幅方向の位置決めの基準に供し、第2の対向切欠部は、幅方向の位置決めの基準に供すると共に、帯状部材への貼着作業時の把持部に供することができるので、帯状部材への緩衝部材の貼着作業を容易且つ確実に行うことができる。尚、第1の対向切欠部はV字形状とし、第2の対向切欠部は、レーストラック形状を長手方向に二分した形状とするとよい。
【0013】
更に、請求項2に記載のように構成すれば、緩衝部材の端面の両側も位置決めの基準に供することができるので、帯状部材への緩衝部材の貼着作業を一層容易且つ確実に行うことができる。
【0014】
更に、請求項3に記載のように構成すれば、第3の対向切欠部は、幅方向の位置決めの基準に供すると共に、中間部の目安に供することができるので、特に湾曲した帯状部材の湾曲内側への緩衝部材の貼着作業が一層容易となる。尚、第3の対向切欠部はU字形状とするとよい。これにより、第1の対向切欠部と第3の対向切欠部との識別が容易となる。
【0015】
そして、請求項4に記載のように構成することにより、帯状部材への接着部材による緩衝部材の貼着作業が容易となる。しかも、緩衝部材が帯状部材に貼着された後に、帯状部材の外側に延在する緩衝部材には、接着部材が存在しないので、当該部分に塵埃等が付着することを防止することができる。
【0016】
更に、請求項5に記載のように構成すれば、緩衝部材に対し予め接着部材を付着しておく場合において、雰囲気温度が高くなっても、接着部材が外部に流れ出ることを防止することができる。更に、離型紙を、緩衝部材の長手方向の中間部で分離しておくこととすれば、緩衝部材を帯状部材に貼着する際、先ず半分の離型紙のみを除去して貼着することができ、貼着作業中に、残りの緩衝部材が他の部分に付着することを回避できるので、特に湾曲した帯状部材の湾曲内側への貼着作業が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1乃至図4に本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の特徴部分を示し、図5にその全体構成を示す。本発明の取付対象の水素タンクは、図8に示すように一対のタンク1が並設され、例えばスチールで形成されバンドと呼ばれる帯状部材10によって、車体2に支持されるように構成されている。本実施形態では、一対の帯状部材10がヒンジ11及びヒンジピン12によって連結され、端部に接合されたブラケット13を介して、車体2側のブラケット14に固定されている。タンク1と帯状部材10との間には、図1乃至図4に示すように、弾性部材で形成された緩衝部材20が介装されており、通常、ゴムで形成されているのでクッションゴムと呼ばれる。この緩衝部材20は、図5に示すように、例えばブチル系粘着剤の接着部材30によって帯状部材10に予め貼着されている。
【0018】
本実施形態の緩衝部材20は、図1に示すように、帯状部材10の幅Waより大の幅Wbを有し、緩衝部材20の長手方向の端面20aから長手方向に第1の距離Da離隔し、且つ帯状部材10の幅Waに相当する所定位置(図1にPaで示す)まで、緩衝部材20の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれ、第1の対向切欠部21,21が形成されている。これら第1の対向切欠部21,21は、幅方向の位置決めが容易なようにV字状に形成されているが、U字状としてもよい。また、所定位置Paから緩衝部材20の長手方向に第2の距離Db以上離隔した所定範囲Dcに亘り、帯状部材10の幅Waに相当する位置まで、緩衝部材20の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれ、第2の対向切欠部22,22が形成されている。これら第2の対向切欠部22,22は、レーストラック形状を長手方向に二分した形状に形成され、作業者の指に適合するように角部が円弧に形成されているが、別の形状としてもよい。更に、緩衝部材20の長手方向の一端面の両側が略均等に切除(所謂、面取り)されて、角部が傾斜面とされ、端面20aの幅が帯状部材10の幅Waに相当する長さに形成されている。
【0019】
上記の図1及び図2に示す緩衝部材20は、ヒンジ11側の帯状部材10の端部に接合されるものであるのに対し、図3及び図4は、ブラケット13側の帯状部材10の端部に接合される緩衝部材20の構成を示すものであるが、実質的に同じ構成である。即ち、図1における第1の距離Daに対し、図3に示すように、ブラケット13の長さに合わせて第1の距離がDd(>Da)に設定されている。
【0020】
更に、本実施形態の緩衝部材20は、図5及び図6に示すように、長手方向の両端面の両側が夫々略均等に切除されて、角部が傾斜面とされ、端面20a及び20bの幅が何れも帯状部材10の幅Waに相当する長さに形成されており、緩衝部材20の長手方向の中間部には、その両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれ、第3の対向切欠部23,23が形成されている。そして、本実施形態の接着部材30は、図5に示すように、貼着対象の帯状部材10の幅以下の幅を有し、緩衝部材20の帯状部材10への貼着面に緩衝部材20の長手方向の全長に亘って付着されている。尚、本実施形態の緩衝部材20には、上記貼着面と反対側のタンク支持面の長手方向に複数の溝20cが形成されている。
【0021】
上記の緩衝部材20は、図6に示すように、その幅Wbより大の幅Wcを有し緩衝部材20の全長より長い離型紙40が、緩衝部材20の長手方向の全長に亘って接着部材30に付着され、図6に示す状態で保管される。これにより、雰囲気温度が高くなっても、接着部材30は離型紙40内に留まり、外部に流れ出ることを防止することができる。
【0022】
而して、上記のように形成された緩衝部材20を帯状部材10に貼着するに当たっては、図7に示すように第2の対向切欠部22,22が把持され、先ず、緩衝部材20の端面20aが帯状部材10の先端に合致すると共に、端面20aの両側が帯状部材10の両側に合致するように、位置決めされる。次に、第1の対向切欠部21,21のV字状切欠の先端が帯状部材10の両側に合致するように、幅方向の位置決めを行いつつ、緩衝部材20が帯状部材10に貼着される。このように、第1の対向切欠部21,21を幅方向の位置決めの基準に供することができる。更に、第2の対向切欠部22,22は幅方向の位置決めの基準に供することができると共に、帯状部材10への貼着作業時の把持部に供することができるので、帯状部材10への貼着作業を容易且つ確実に行うことができる。
【0023】
また、本実施形態の緩衝部材20には、第3の対向切欠部23,23が形成されており、緩衝部材20を帯状部材10に貼着する際に、幅方向の位置決めの基準に供することができると共に、緩衝部材20の中間部の目安に供することができる。従って、長尺の緩衝部材20を帯状部材10に貼着する作業が容易となり、特に湾曲した帯状部材10の湾曲内側への貼着作業が一層容易となる。
【0024】
前述のように、本実施形態の接着部材30は帯状部材10の幅以下の幅に形成されているので、帯状部材10への緩衝部材20の貼着作業が容易であり、緩衝部材20が帯状部材10に貼着された後に、帯状部材10の外側に延在する緩衝部材20には、接着部材30が存在しないので、当該部分に塵埃等が付着することを防止することができる。
【0025】
更に、図示は省略するが、離型紙40を、緩衝部材20の長手方向の中間部で分離しておくこととすれば、緩衝部材20を帯状部材10に貼着する際、先ず半分の離型紙のみを除去して貼着することができ、残りの緩衝部材が他の部分に付着することを回避できるので、特に図7及び図8に示すように湾曲した帯状部材10の湾曲内側への貼着作業が一層容易となる。尚、本発明に係るタンク支持緩衝部材の取付対象は水素タンクあるいは車両用に限るものではなく、種々の気体あるいは流体タンクの支持に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の一部を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の一部を示す正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の他の部分を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の他の部分を示す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態において緩衝部材に離型紙が貼着された平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るタンク支持緩衝部材の帯状部材への貼着作業状況を示す斜視図である。
【図8】本発明の適用対象であるタンクの支持構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 タンク
2 車体
10 帯状部材
11 ヒンジ
13,14 ブラケット
20 緩衝部材
21 第1の対向切欠部
22 第2の対向切欠部
23 第3の対向切欠部
30 接着部材
40 離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材によって車体に支持されるタンクと前記帯状部材との間に介装される緩衝部材が、前記帯状部材に予め貼着されるタンク支持緩衝部材において、前記緩衝部材が、前記帯状部材の幅より大の幅を有し、前記緩衝部材の長手方向の少なくとも一端面から長手方向に第1の距離離隔し、且つ前記帯状部材の幅に相当する所定位置まで、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第1の対向切欠部と、前記所定位置から前記緩衝部材の長手方向に第2の距離以上離隔した所定範囲に亘り、前記帯状部材の幅に相当する位置まで、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第2の対向切欠部を備えたことを特徴とするタンク支持緩衝部材。
【請求項2】
前記緩衝部材の長手方向の少なくとも一端面の両側が略均等に切除され、前記帯状部材の幅に相当する長さに形成された端面を備えたことを特徴とする請求項1記載のタンク支持緩衝部材。
【請求項3】
前記緩衝部材の長手方向の両端面の両側が略均等に切除され、前記帯状部材の幅に相当する長さに形成された両端面と、前記緩衝部材の長手方向の中間部に、前記緩衝部材の両側面から内側に向かって略均等に切り欠かれた第3の対向切欠部を備えたことを特徴とする請求項2記載のタンク支持緩衝部材。
【請求項4】
前記帯状部材の幅以下の幅を有し、前記緩衝部材の前記帯状部材への貼着面に前記緩衝部材の長手方向の全長に亘って付着される接着部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のタンク支持緩衝部材。
【請求項5】
前記緩衝部材の幅より大の幅を有し、少なくとも前記緩衝部材の長手方向の全長に亘って前記接着部材に付着される離型紙を備えたことを特徴とする請求項4記載のタンク支持緩衝部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−149337(P2009−149337A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328403(P2007−328403)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000242965)堀江金属工業株式会社 (15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】