説明

タンク検査装置及びタンク検査方法

【課題】シール部材を設けた口金がライナーに組み付けられたタンクについて、簡単な構成で、シール部材の配置を検査することである。
【解決手段】タンク検査装置70は、ライナー30を軸方向周りに回転することができる回転台72と、その回転軸に対する口金10の偏心を測定する偏心測定装置74とを含む。口金10が組み付けられたライナー30を回転台に載せ、口金10の外周に偏心測定装置74をセットし、ライナー30をその中心軸周りに回転させる。偏心測定装置74によって検出される偏心量が予め定めた許容範囲Aを超えるときは、シール部材が口金の溝からはみ出していると判断される。また、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる場合には、ライナーと口金の間の隙間を検出することで、シール部材が口金の溝からはみ出していることを間接的に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンク検査装置及びタンク検査方法に係り、特に、シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査装置及びタンク検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池システムには燃料ガスとして水素を用い、高圧の水素が充填されたタンクから適当に減圧し、流量を制御して燃料電池セルに供給する。このような高圧ガス用タンクには、高圧ガスの出入りのための口金が取り付けられている。この口金は、タンク本体を構成するライナーと呼ばれる筒部材との間でガスが漏れないようにシール部材が設けられている。シール部材は、例えば口金に設けられる溝に配置されて、ライナーに口金と共に組みつけられるが、このシール部材が、ライナーと口金との間にきちんと配置されていないと、ガス漏れが生じる恐れがある。
【0003】
シール部材の配置を確認する方法として、特許文献1には、高圧の水素ガスが注入されるタンクであってアルミタンクの周囲に炭素繊維が配設されるタンクにおいて、口金とアルミタンクとの間が内側シール部材及び外側シール部材とでシールされる場合について、内側シール部材及び外側シール部材のシール不良を検出するいくつかの方法が述べられている。例えば、高圧のガスが注入されたタンクにおいて、内側シール部材と外側シール部材とタンク本体と口金との間に形成される隙間に一端が開口し、他端が外気側に開口する連通経路を口金に設け、連通経路の大気側端部に接続された圧力計によって、内側シール部材の不良等を検出することができる。
【0004】
また、特許文献2には、蒸気タービン等の回転機器の静止部に取り付けられるシール部と、ロータである回転体との間の間隙を測定する方法が開示されている。ここでは、静止部を上部静止部と下部静止部とに分けることができ、上部静止部がない上方開口状態において、回転体に加速度センサを取り付け、間隙測定スコープを回転体とシール部との間の間隙に対し垂直になるように設け、シール部が設けられる隔板を回転体に対し持ち上げて、シール部が回転体に接触したことを加速度センサで検出し、そのときの間隙測定スコープの測定値に基づいて、間隙の寸法が求められる。
【0005】
また、特許文献3には、一方の管の受口の内部に他方の管の挿口を挿入し、これら受口の内周面と挿口の外周面との間でシール材を圧縮して継手を形成するいわゆるスリップオンタイプ管継手において、シール材の位置ずれを遠隔操作で検出する検査装置が開示されている。ここでは、管継手の外周に対し取り外し可能に情報から装着される固定部材と、固定部材に対し管軸方向に移動可能な移動部材と、移動部材に取り付けられて、受口と挿口との間の隙間からシール材に当たるまで挿入されるゲージとを備える特別な検査装置を用い、自動的に移動部材を管軸方向に移動させ、そのときのゲージの挿入量を検出することで、受口と挿口との間の隙間におけるシール材の管軸方向の位置ずれを検査することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−291434号公報
【特許文献2】特開2000−249537号公報
【特許文献3】特開平06−249646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シール部材を設けた口金をタンクの構成要素であるライナーに組み付ける場合、組み付けの前に口金にシール部材がきちんと配置されているか否かは容易に確認ができる。ところが、一旦、シール部材が設けられた口金をライナーに組み付けてしまうと、組み付け作業中等にシール部材が溝からずれてしまっても、シール部材が口金に隠されてしまっているので、外部からは容易に確認ができない。そのために従来、上記のようにいくつかの方法が開示されているが、特許文献1の方法は、既に高圧ガスが注入されているタンクにおいて口金に設けられたシール部材についての検査方法であり、口金に複雑な構造を設け、さらに圧力計等を要する上に、高圧ガスを注入する前の状態においては検査をすることができず、またシール部材の正常な配置からのはみ出しを検知できない。また、特許文献3の方法は、特殊な遠隔検査装置を要し、特許文献2の方法は、上部静止部がない上方開口状態での検査方法である上に、シール部が設けられる隔板を回転体に対し持ち上げる操作を要し、またシール部の正常な配置からのはみ出しを検知できない。
【0008】
このように、従来技術では、シール部材を設けた口金がライナーに組み付けられ、外部からはシール部材の様子が確認できない状態において、シール部材の配置を確認するために複雑な構成を要する。
【0009】
本発明の目的は、シール部材を設けた口金がライナーに組み付けられたタンクについて、簡単な構成で、シール部材の正常な配置からのはみ出しを検査することができるタンク検査装置及びタンク検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタンク検査装置は、シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査装置であって、円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付け、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後で、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出するはみ出し検出手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、はみ出し検出手段は、口金とライナーとの間の隙間をタンクの内側から検出する隙間検出手段と、検出された隙間が予め任意に定めた隙間量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する判断手段と、を有することが好ましい。
【0012】
また、隙間検出手段は、タンクの内側より隙間を観察する撮像装置であることが好ましい。あるいは、隙間検出手段は、所定の厚さを有する隙間ゲージを用いてタンクの内側から隙間を検出することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るタンク検査装置において、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出する偏心検出手段と、検出された偏心が予め任意に定めた偏心量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する判断手段と、を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るタンク検査方法は、シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査方法であって、円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付ける組付工程と、組付により、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態の下で、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出するはみ出し検出工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るタンク検査方法は、シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査方法であって、円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付け、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後で、ライナーをその中心軸周りに回転する回転工程と、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出する偏心検出手段を用いて、ライナーを回転したときの口金の偏心を検出する偏心検出工程と、検出された偏心のデータに基づいて、シール部材が口金の溝よりはみ出しているか否かを判断する判断工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、タンク検査装置は、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出するはみ出し検出手段を有する。口金が取り付けられるタンクのライナー
の構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる場合と、見ることができない場合とがあるが、いずれの場合でも、はみ出し検出手段は、口金の溝からシール部材がはみ出していることを間接的に検出する。
【0017】
ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる前者の場合、はみ出し検出手段は、口金とライナーとの間の隙間をタンクの内側から検出し、検出された隙間が予め任意に定めた隙間量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する。したがって、簡単な構成で、シール部材の正常な配置からのはみ出しを検査することができる。
【0018】
隙間検出手段は、タンクの内側より隙間を観察する撮像装置であるので、シール部材が口金の溝からはみ出していることを容易に検出できる。隙間検出手段は、所定の厚さを有する隙間ゲージを用いてタンクの内側から隙間を検出する場合も、同様に、シール部材が口金の溝からはみ出していることを容易に検出できる。
【0019】
ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができない後者の場合、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出し、検出された偏心が予め任意に定めた偏心量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する。したがって、簡単な構成で、シール部材の正常な配置からのはみ出しを検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、タンクは、車両に搭載される燃料電池に用いられる高圧水素タンクとするが、それ以外の用途のタンクでもよい。また、そのタンクは、ライナーと呼ばれる心材に樹脂強化繊維を巻き付けるフィラメントワインディング法によって形成されるものとするが、ライナーに口金が取り付けられる構造であれば、タンクの製造方法及び構成はそれ以外のものであってもよい。
【0021】
タンクの検査装置等の説明の前に、シール部材が設けられる口金と、口金が取り付けられるライナーについて、図1と図2を用いて説明する。図1はシール部材が設けられた口金10の斜視図、図2は、ライナー30と口金10の関係を示す図である。
【0022】
図1に示される口金10は、タンクの構成要素であるライナー30のガス出入口用の開口部32(図2参照)に取り付けられる栓形状を有する部材で、例えば、バルブ等の部品が取り付けられる接続部材である。口金10は、栓形状を有する口金本体12の軸方向に貫通する穴を有する。ここでは図1に下側開口14が、図2に上側開口15が示されている。この穴には、ガスの出入を制御するために必要なバルブ等が取り付けられる。かかる口金本体12としては、適当な金属材料、または適当な強度を有するプラスチック材料を所定の形状に成形したものを用いることができる。
【0023】
口金本体12の下側、つまり下側開口14が設けられる部分において、外周に沿って円周状に設けられる2つの溝16,18は、シール部材を配置するためのくぼみである。シール部材は、ここでは3つ用いられている。すなわち、2つの溝のうち、上側、すなわち上側開口15に近い方の溝16には、外側シール部材20として、断面が円形で環状のオーリングが配置される。2つの溝のうち、下側、すなわち下側開口14に近い方の溝18には、内側シール部材22として、断面が円形で環状のオーリングが配置され、内側シール部材22よりも上方、つまり上側開口15の側に、バックアップシール部材24として、断面が矩形で環状の角形リングが配置される。バックアップシール部材24は、幅広の直方形断面の角形リングを1つ用いてもよく、正方形断面のリングを複数並べて配置して用いてもよい。これら3つのシール部材は、弾性を有するゴム材料で構成することができる。例えばプラスチックゴム製のオーリング、角形リングを用いることができる。
【0024】
図2は、ライナー30の開口部32に、口金10が組み込まれる様子を示す図である。ここでライナー30は、タンクの心材となる部材である。ここで、タンクとして燃料電池が搭載される車両に用いられる高圧水素タンクについて述べると、タンクはフィラメントワインディング方法によって作られる。具体的には、十分な強度を有する繊維、例えばカーボン繊維を用い、これに液状の樹脂を含浸させて、製品の形状を形作るライナーに巻き付け、樹脂を加熱硬化させることでタンクが作られる。口金10は、この心材となるライナー30に組み付けられる。
【0025】
ライナー30は、このように成形製品の形状を形作る芯材となるもので、例えば高圧タンクを成形する場合は、タンクの内径に対応する筒である。筒の材質は例えば硬質プラスチックまたはアルミニウム等の金属を用いることができる。筒の直径は、例えば30cm程度で、その肉厚は数mm程度のものを用いることができる。
【0026】
図2に示されるように、ライナー30は、ガス出入口用の開口部32を有し、その開口部32に、口金10が組み付けられる。組み付けには、適当な圧入手段が用いられる。この圧入によって、シール部材がライナー30の外側表面と、図1で説明した口金10の溝16,18との間で挟まれ圧縮され、これによって、口金10とライナー30との間がシールされる。この組み込み作業等で、シール部材が、溝16,18からずれてはみ出すと、シール不良となる。
【0027】
以下では、シール部材のはみ出しの検査について、2つの場合に分けて説明する。これは、口金が取り付けられるタンクのライナーの構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる場合と、見ることができない場合とである。最初に、前者の場合を説明し、次に後者の場合を説明する。
【実施例1】
【0028】
図3、図4は、ライナーのガス出入口用の開口部に口金を組み付けたときの口金本体12の下側開口14の付近の部分拡大断面図である。図3は、シール部材が適切に配置されている場合、図4はシール部材が溝からはみ出している場合の様子を示す。
【0029】
ライナー30のガス出入口用の開口部の部分は、図3、図4に示されるように、ライナー30の内側に向けて入り込んだ環状の口部31を有し、この口部31に口金本体12が圧入される。この圧入作業のあとでは、シール部材はライナー30の口部31の外側表面と口金本体12との間に挟まれて、外部からその状態が直接的に観察できなくなる。
【0030】
図3は、口金をライナーに組み付けた後でシール部材が適切に配置されている場合の断面図である。ここでは、3つのシール部材20,22,24がそれぞれ所定の溝の中に配置されたま間の状態で径方向に圧縮されている様子が示される。この場合には、ライナーと口金との間で、気体の漏れが発生しない。
【0031】
図4は、口金をライナーに組み付けた後でシール部材が溝からはみ出して配置されてしまった例の1つを示す断面図である。この例では、外側シール部材20が、本来的に配置されるべき溝16からはみ出している様子が示される。この場合には、ライナーと口金との間で、気体の漏れが発生する恐れがある。このようにシール部材が本来的に配置されるべき溝からはみ出すと、ライナー30と口金本体12との間に、通常よりも大きな隙間40が生じることになる。
【0032】
したがって、口金が取り付けられるタンクのライナーの構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる場合には、この隙間40を検出する隙間検出手段と、検出された隙間が、予め定めた隙間量より多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する判断手段を用いて、タンクを検査することができる。ライナー30は、タンクの心材となるものであり、例えば、円筒状部材であるときは、その円筒状の底の部分の開口から、隙間検出手段を挿入し、ライナー30の口部31をライナーの内側から、つまりタンクの内側に相当する位置から観察することができる。
【0033】
図5は、タンク検査装置50として、撮像装置52と画像解析装置54とを含んで構成する例を示す図である。ここで、撮像装置52が隙間検出手段に相当し、画像解析装置54が判断手段に相当する。撮像装置52は、ライナー30の口部31をライナー30の内部側から観察できる位置に配置される。撮像装置52としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラを用いることができ、画像解析装置54としては、画像表示解析ソフトを実行できるPC(Personal Computer)を用いることができる。
【0034】
図5におけるタンク検査装置50は、ライナー30と口金本体12との間の隙間を観察できる位置に撮像装置52が配置されるので、そのデータが画像解析装置54に伝送され、画像解析装置54のディスプレイ56に表示される。したがって、ディスプレイ56の表示から、検査員は、ライナー30と口金本体12のパターンを認識し、ディスプレイ56上のスケール等を用いて、ライナー30と口金本体12との間の隙間40の大きさを求めることができる。また、画像解析装置54は、例えば予め設定されたパターン認識方法によって、自動的にライナー30と口金本体12のそれぞれのエッジを検出し、隙間40の大きさを自動的に算出し、表示するものとすることもできる。また、この場合に、自動的に隙間40の大きさを予め定めた隙間量の閾値と比較し、求められた隙間量が閾値よりも大きいときに、シール部材が口金の溝からはみ出している、と判断し、その旨をディスプレイ56上などに表示するものとできる。
【0035】
図6は、隙間検出手段として、所定の厚さを有する隙間ゲージ60を用いる例を示す図である。所定の厚さは、隙間40がこの厚さ以上であるときに、シール部材が口金の溝からはみ出している、と判断できる限界の厚みに設定される。隙間ゲージ60は、作業員が注意深く用いて、ライナー30と口金本体12との間に挿入できるときは、シール部材が口金の溝からはみ出しているものと判断することができる。
【0036】
また、所定の厚さを有する隙間ゲージ60を自動的に移動させることができ、移動のときに負荷がかかるとそれ以上移動できなくなることを検出できるゲージ移動検出装置をタンク検査装置として用いることができる。この場合には、ライナー30と口金本体12の境界の箇所にゲージが挿入できる位置にそのタンク検査装置を設定し、隙間ゲージ60を自動的に移動させて、その境界に隙間ゲージ60が移動して挿入できるか否かを検出する。そして、隙間ゲージ60がその境界に移動して挿入されることが検出されるときは、シール部材が口金の溝からはみ出しているものとして、その旨を表示することができる。
【0037】
このように、口金が取り付けられるタンクのライナーの構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができる場合には、ライナーと口金の間の隙間を検出することで、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後でも、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出することができる。
【実施例2】
【0038】
口金が取り付けられるタンクのライナーの構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができない場合には、ライナーに対する口金の偏心を検出することで、シール部材が口金の溝からはみ出していることを検出できる。
【0039】
図7は、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出することでタンクの検査を行うタンク検査装置70の様子を示す図である。このタンク検査装置70は、ライナー30を軸方向周りに回転することができる回転台72と、その回転軸に対する口金10の偏心を検出し、その偏心量が正常か異常かを表示する偏心測定装置74とを含んで構成される。
【0040】
回転台72は、上記のように、ライナー30を軸方向周りに回転する機能を有し、例えば、円筒状のライナー30の外周を対称的に支持する4つの回転ローラで構成することができる。回転ローラは、基準平面に対し平行な軸周りに回転可能で、図示されていない回転機構によって回転される。したがって、この4つの回転ローラの回転軸にライナー30の中心軸の方向を合わせるようにして載せ、図示されていない回転機構で回転ローラを所定方向に回転することで、ライナー30をその中心軸周りに回転することができる。この他の方法として、4つの回転ローラは単に軸受機構で支持されているものとし、これとは別に、ライナー30を回転させる回転機構を備えるものとすることもできる。この場合には、その回転機構によってライナー30がその中心軸周りに回転されることになる。
【0041】
偏心測定装置74は、口金10の外周に検出部が接触するように設定されて、口金10の変位を検出する機能を有する測定器である。かかる測定器の代表的なものとしては、ダイヤルゲージを上げることができるが、それ以外の変位検出装置を用いることができる。偏心測定装置74には、予め、口金10の変位の許容範囲Aを示す目印が設けられる。偏心測定装置74を電子式として、検出された変位量がその許容範囲以上となるときに、その旨を表示するものとできる。ここで、検出された変位量は、偏心量の2倍となることに注意する。その意味で、偏心測定装置74は、偏心検出手段の機能と、偏心量が適当か不適当かを判断する判断手段の機能を備えている。
【0042】
検出される偏心量の許容範囲Aが図4及び図5で説明した隙間40の閾値と同じとすれば、偏心量が許容範囲Aを超えるときに、シール部材が口金の溝からはみ出している、と判断することができる。
【0043】
ただし、ライナー30の外周についての真円度、及び、口金10の外周についての真円度が、それぞれ適当な範囲に入っていることが必要である。これらの真円度がそれぞれ適当な範囲に入っているときは、図3から図5で説明した隙間40が全くないときに、ライナー30の中心軸と口金10の中心軸とが同心でほぼ一致する。隙間40があると、ライナー30の中心軸に対し、口金10の中心軸がその隙間40の分だけ偏心する。このようにして、偏心測定装置74によって、ライナー30の中心軸に対する口金10の偏心を検出し、その検出量に基づいて、シール部材が口金の溝からはみ出しているか否かを判断できる。
【0044】
なお、このタンク検査装置70を用いる方法は、ライナー30を心材としてフィラメントワインディング法によってタンクについても適用が可能である。すなわち、そのタンクの外周についての真円度、及び、口金10の外周についての真円度が、それぞれ適当な範囲に入っている場合には、タンクの中心軸に対する口金10の偏心を検出して、シール部材の口金の溝からのはみ出しを検出することができる。
【0045】
図8は、ライナーの中心軸に対する口金の中心軸の偏心の検出によって、シール部材が口金の溝からはみ出しているか否かについてタンクを検査するタンク検査方法の手順を示すフローチャートである。ここで、図7で説明した符号を用いる。検査対象を特定するため、最初に、ライナー30、口金10を準備する(S10)。ここで、口金10の溝には、所定のシール部材が配置されている。次に、適当な圧入装置を用いて、口金10をライナー30に組み付ける(S12)。これによって検査対象の口金10が組み付けられたライナー30が出来上がる。その口金付きライナー30を回転台に載せる(S14)。そして、口金10の外周に偏心測定装置74をセットし(S16)、ライナー30をその中心軸周りに回転させる(S18)。そして、偏心測定装置74によって検出される偏心量が予め定めた許容範囲A以下か否かが判断され(S20)、偏心量が許容範囲A以下のときは正常とされ(S22)、偏心量が許容範囲Aを超えるときは、シール部材が口金の溝からはみ出していると判断される(S24)。
【0046】
このように、口金が取り付けられるタンクのライナーの構造から、ライナーと口金との間の組み付け部分を構造的に見ることができない場合には、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出することで、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後でも、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る実施の形態において、シール部材が設けられた口金の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、ライナーと口金の関係を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、シール部材が適切に配置されている場合を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、シール部材が溝からはみ出している場合の様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、タンク検査装置として、撮像装置と画像解析装置とを含んで構成する例を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、隙間検出手段として、所定の厚さを有する隙間ゲージを用いる例を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出することでタンクの検査を行うタンク検査装置の様子を示す図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出することでタンクの検査を行うタンク検査方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
10 口金、12 口金本体、14 下側開口、15 上側開口、16,18 溝、20 外側シール部材、22 内側シール部材、24 バックアップシール部材、30 ライナー、31 口部、32 開口部、40 隙間、50,70 タンク検査装置、52 撮像装置、54 画像解析装置、56 ディスプレイ、60 隙間ゲージ、72 回転台、74 偏心測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査装置であって、
円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付け、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後で、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出するはみ出し検出手段を有することを特徴とするタンク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタンク検査装置において、
はみ出し検出手段は、
口金とライナーとの間の隙間をタンクの内側から検出する隙間検出手段と、
検出された隙間が予め任意に定めた隙間量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する判断手段と、
を有することを特徴とするタンク検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のタンク検査装置において、
隙間検出手段は、タンクの内側より隙間を観察する撮像装置であることを特徴とするタンク検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載のタンク検査装置において、
隙間検出手段は、所定の厚さを有する隙間ゲージを用いてタンクの内側から隙間を検出することを特徴とするタンク検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載のタンク検査装置において、
ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出する偏心検出手段と、
検出された偏心が予め任意に定めた偏心量よりも多いときに、シール部材が口金の溝よりはみ出していると判断する判断手段と、
を有することを特徴とするタンク検査装置。
【請求項6】
シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査方法であって、
円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付ける組付工程と、
組付により、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態の下で、シール部材が、口金の溝からはみ出していることを間接的に検出するはみ出し検出工程と、
を含むことを特徴とするタンク検査方法。
【請求項7】
シール部材を設けた口金がライナーに組みつけられたタンクについてのタンク検査方法であって、
円周状に設けられた溝にシール部材を配置した口金をライナーに組み付け、シール部材の状態が外部からでは直接確認できない状態となった後で、ライナーをその中心軸周りに回転する回転工程と、
ライナーの中心軸に対する口金の偏心を検出する偏心検出手段を用いて、ライナーを回転したときの口金の偏心を検出する偏心検出工程と、
検出された偏心のデータに基づいて、シール部材が口金の溝よりはみ出しているか否かを判断する判断工程と、
を含むことを特徴とするタンク検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−64550(P2008−64550A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241592(P2006−241592)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】