説明

タンパク質のミスフォールディングおよび凝集の制御因子ならびにその制御因子の使用の方法

ポリヌクレオチド分子および該分子によってコードされるタンパク質、タンパク質凝集で特徴付けられる神経学的障害の診断用および治療用の方法が提供される。遺伝子は、アルファ−シヌクレインといった凝集し易いタンパク質のミスフォールディング、および続く凝集に影響し、パーキンソン病のようにタンパク質の凝集が関連する神経学的疾病の診断および治療に意味を有することが本願に記載される。本願に記載される遺伝子の、RNAiを用いた発現のノックダウンは、タンパク質凝集のC. elegansモデルにおいて、アルファ−シヌクレインタンパク質凝集をもたらす。神経毒6−OHDAへの曝露またはアルファ−シヌクレインの過剰発現後のドーパミン作動性神経保護はまた、タンパク質の過剰発現によって提供されてよい。タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関連する遺伝子の知識は、パーキンソン病といった神経変性疾病を治療するための新規の治療的および神経保護化合物の開発のための、診断的スクリーニング法、変異分析および薬剤設計情報を開発するための強力な手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の凝集を調節する神経保護タンパク質(neuroprotective proteins)をコードするポリヌクレオチド分子およびその使用の方法に関する。より明確には、本発明は、タンパク質のミスフォールディングおよびドーパミン作動性神経変性を防ぐための、ポリヌクレオチド分子およびそれにコードされる神経保護タンパク質の使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2005年2月25日に提出された米国仮特許出願60/656,334、2005年11月21日に提出された60/738,761、および2005年12月12日に提出された60/749,910の利益を主張する。これらの出願は、本願に援用される。
【0003】
神経細胞の機能不全およびダメージは、毒性があって凝集し易いタンパク質により引き起こされる可能性があり、多くの神経学的障害は、そのような症状によって特徴づけられる。これらには、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー症、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン増大病(polyglutamine expansion disease)、脊髄小脳変性症(spincocerebellar ataxia)、球脊髄性筋萎縮症、海綿状脳症、タウオパシー(tauopathy)、ハンチントン舞踏病、またはジストニアといった障害が含まれる。これらの障害の原因となる、毒性があって凝集し易いタンパク質をコードする遺伝子およびそのタンパク質が同定された。正常な代謝酵素は、合成および分解による永久のサイクルを作りだすことでタンパク質を再利用する。これらの遺伝子における変異は、ミスフォールディングしたタンパク質の異常な蓄積および分解をもたらす。これらのミスフォールディングしたタンパク質は、神経細胞がダメージを受けていることを表す、神経細胞の封入(inclusions)およびプラークをもたらすことが知られている。それゆえ、細胞性の機構の理解およびそのようなミスフォールディングタンパク質の減少、阻害および回復に必要な分子手段の同定が重要である。そのうえ、神経細胞の生存におけるタンパク質のミスフォールディングおよび凝集の影響を理解することは、これらの障害に対する合理的で効果的な治療の開発を促すと予想される。
【0004】
パーキンソン病は、肢の震え、緩慢な動作または動作の消失、肢の硬直、足をひきずる歩行、および前屈みの姿勢で特徴付けられる神経学的障害である。その他の症状には、うつ、性格の変化、痴呆、睡眠障害、言語障害、または性的困難を含む。これらの症状は、進行的によりひどくなる。その病徴は、縫線核および青斑核における第2の変性を伴う、基底核、特に黒質における神経細胞の変性に起因する。この神経細胞の変性は、一般に、タンパク質アルファ−シヌクレイン(alpha−synuclein)のミスフォールディングおよび続く凝集に関係する。黒質における神経細胞の変性は、神経伝達物質ドーパミンの減少を引き起こし、神経伝達が不足し、運動技術の重篤な低下をもたらす。
【0005】
アルファ−シヌクレインの変異体は、ミスフォールディングの傾向を増大させ、その他のタンパク質を同様に凝集に取り込ませると考えられている。タンパク質分解酵素の欠損もまた、タンパク質の蓄積、凝集に寄与し、細胞の恒常性を変化させる可能性がある。これらの凝集はレビ小体として知られ、主にアルファ−シヌクレインで構成されている。これらは、レビ小体を伴うパーキンソン病、痴呆およびその他の神経変性疾患の病理学的特徴を構成する。レビ小体は、アルツハイマー患者にみられるベータ−アミロイドプラークと同様のものである。実際、アルファ−シヌクレインはまた、アルツハイマーに関連したプラークの最も大きな構成成分である。パーキンソン病の脳におけるレビ小体の存在は、ドーパミン作動性ニューロンの減少および引き続く運動制御の減少と一致している。神経原線維濃縮体におけるアルファ−シヌクレインの存在はまた、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上麻痺、および大脳皮質基底核変性症(Corticobasal Degeneration)と関係している。
【0006】
神経変性障害に関する主な障害は、臨床的病徴が明らかになるときまで、神経細胞の変性に寄与する神経細胞の環境が進行していることを、患者が気づかないということである。臨床的病徴の表面化するころには、すでに神経細胞のはなはだしい減少が生じており、神経細胞の環境は、神経細胞の生存にとって著しく悪くなっている。タンパク質凝集または神経細胞の減少の信頼のおける早期検出方法が無い場合、これらの変性疾患は、神経細胞の減少がすでに起こったために治療が役に立たない状態または不要な状態になるまで、認識されずに進行してしまう。そのうえ、たとえ信頼できる早期の検出方法が利用できても、現在の治療法は、これらの変性疾患の長期治療には効果が無く、新規の薬剤および治療方法が必要である。
【0007】
神経細胞が著しく破壊される前の早い段階にてこれらの障害を診断するための改善された方法を開発し、ならびに薬剤の設計および開発のためのモデル系を提供するために、異常なタンパク質凝集に対する分子機構およびタンパク質制御因子の理解が必要である。タンパク質凝集に関係する特定の遺伝子および遺伝子産物を標的とする化合物は、モデル系を使用すると、スクリーニングできおよび開発できる可能性がある。異常なタンパク質のミスフォールディングおよび凝集に対する、より効果的な治療が開発されるまで、神経変性の機構を理解し、および、神経細胞の減少を予防または減弱させる可能性のある神経保護化合物を開発することも必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、神経細胞の機能不全、神経変性またはタンパク質のミスフォールディングおよび凝集によって特徴付けられる神経学的障害の診断的および治療的方法における使用のための、ポリヌクレオチド分子および該分子にコードされるタンパク質の新規の使用方法に向けられる。特に、凝集を起こしやすいタンパク質のミスフォールディングおよび引き続く凝集に影響し、タンパク質凝集に関係する神経学的疾患の診断および治療にとって意味を有する多くの遺伝子が本願に記載される。本願に記載される遺伝子は、RNAiスクリーニング(RNAi screen)においてノックダウンされた場合に、タンパク質の、特にアルファ−シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集の増大をもたらす。この作用に関係する遺伝子の知識は、新規の治療的なおよび神経保護の化合物の開発のための、診断的スクリーニング方法、変異分析および薬剤設計情報を開発するための力強い手段を提供する。これらの方法は、タンパク質のミスフォールディングを減少させもしくは予防し、または神経保護を提供するように、多くのタンパク質の活性を調節することを含む。これらは、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質を含む。
【0009】
従って、本発明の目的は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関係した神経学的障害の検出および治療のための方法および組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、特に、アルファ−シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集を原因とするパーキンソン病または障害の検出および治療のための方法および組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関係する遺伝子における、発現レベルの変化または1以上の変異によって特徴付けられる、ヒトにおける神経変性障害の存在または非存在を検出する方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、その他の神経細胞の遺伝子における変異または多型を検出する方法であって、該遺伝子が、該遺伝子の神経解剖学的な発現と一致した、哺乳類における明確な臨床的病徴を生じさせる特定の表現型の付与に関連がある遺伝子である方法を提供することである。
【0013】
本発明のその他の目的は、ヒトにおけるタンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関係した神経学的障害の診断方法を提供することである。好ましくは、障害の存在または非存在を診断する方法;ヒトにおいて、障害が進行する可能性または進行する傾向を予想する方法が、本願において提供される。
【0014】
本発明のその他の目的は、神経細胞の疾病に対する感受性を増大させるタンパク質凝集に関係する、神経細胞の遺伝子における変異または多型を同定する方法を提供する。
【0015】
本発明の別の目的は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集を減少、阻害、回復、または防ぐ化合物を、該化合物の存在下におけるタンパク質のミスフォールディングおよび凝集の量と、該化合物の非存在下におけるタンパク質のミスフォールディングおよび凝集の量とを比較することによってスクリーニングする方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、神経変性を減少、阻害、回復、または防ぐ化合物を、該化合物の存在下における神経変性の量と、該化合物の非存在下における神経変性の量とを比較することによってスクリーニングする方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、タンパク質の凝集を促進する症状に感受性のある神経細胞に対して神経保護を提供する治療的化合物、またはタンパク質のミスフォールディングおよび凝集を阻害もしくは減弱化する化合物、またはタンパク質の凝集を可溶化する化合物を設計および開発する方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、タンパク質の凝集の結果としての細胞の機能障害を減少、抑止、軽減、回復、または防ぐ方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、治療の必要な動物においてタンパク質のミスフォールディングおよび凝集を減少させるための、または神経保護を提供するための、有効的量の組成物にて医薬製剤を提供することである。
【0020】
本発明はまた、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集を促進する症状に感受性のある神経細胞に対して神経保護を提供するポリヌクレオチド分子およびそれにコードされるポリペプチドを使用する方法に向けられる。
【0021】
本発明の別の目的は、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に関連した神経学的疾病を治療するための薬剤を作製する方法を提供する。
【0022】
本発明の別の目的は、神経学的疾病を治療する新規の治療法のスクリーニングに使用するための、遺伝子組み換え動物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、ヒトから得られたサンプル中における遺伝子の変異を検出するための、1以上の薬剤を含む、ヒトにおける神経変性障害の存在または非存在を診断するためのキットを提供することである。
【0024】
本発明のこれらのおよびその他の目的、特徴および利点は、以下の開示される実施態様の詳細な説明および添付される特許請求の範囲を精査することで明らかとなるだろう。
【発明の詳細な説明】
【0025】
本発明は、本願に含まれる以下の特定の実施態様の詳細な説明を参照することで、より容易に理解される。本発明は、一定の実施態様の特定の詳細に関係して記載されているが、そのことが、そのような詳細が本発明の範囲を限定するものと見なすべきであることを意図しているわけではない。本願で言及される参考文献は、その全体が本願に援用される。
【0026】
神経細胞は、変異の毒性効果またはミスフォールディングしたタンパク質に対して特に脆弱である。望まれないタンパク質および潜在的に毒性を持つタンパク質の処理のための正常な細胞の機構の理解に基づき、本発明は、ミスフォールディングまたは凝集したタンパク質の神経細胞に対する効果を打ち消す独特の方法および組成物を提供する。変異体またはミスフォールディングしたタンパク質は、神経細胞へのダメージ、変性または死をもたらす可能性があるが、また、神経細胞は生存するが、細胞機能が損なわれ、神経学的疾病の臨床症状の発生に至るような神経細胞の機能不全を引き起こす可能性がある。
【0027】
本願の明細書および特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から異なることが明らかでないかぎり、複数のものへの言及を含む。
【0028】
以下の議論は、とりわけヒトの患者に向けられるものの、その教えは、表Iによるタンパク質を発現する何れの動物にも適用可能であると理解されるべきである。本願にて定義される「哺乳類」という用語は、単孔類および有袋類を含むあらゆる脊椎動物を指す。哺乳類種の例は、霊長類(例えば、ヒト、サル、チンパンジー、ヒヒ)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、モルモット、ハムスター)および反芻動物(例えば、ウシ、ウマ)を含む。
【0029】
本発明の範囲における「治療」は、パーキンソン病を含むがこれに限定されない、神経変性疾病といった異常に関連した病徴または分子的現象を減少、阻害、回復、または予防することを含む。好ましくは、タンパク質の凝集、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集の結果としての細胞の機能不全ならびにタンパク質凝集関連疾病が治療されてよい。
【0030】
「神経学的障害」は、神経細胞の変性および/または減少によって特徴付けられる臨床的症状を含む。筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー症、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭骨痴呆(frontotemporal dementia)、ポリグルタミン増大病(polyglutamine expansion diseases)、脊髄小脳変性症、球脊髄性筋萎縮症、海綿状脳症、タウオパシー、ハンチントン舞踏病、ジストニア等が、これらの障害に含まれる。
【0031】
本願にて使用される「線虫(worm)」という用語は、モデル生物が線形動物門由来である本発明によるタンパク質凝集の研究に使用されるモデル系を指す。特定の線形動物Caenorhabditis elegansまたはC. elegansは、この意味に含まれる。
【0032】
正しいフォールディングには、考えられる全ての、しかし不正確な、高次構造の集まりから1つの特定の構造をタンパク質に想定することを要する。ポリペプチドが適切な構造をとることに失敗することは、細胞の機能および生存度にとって主要な脅威となる。ミスフォールディングしたタンパク質は、それ自身にとっておよびそれ自身が毒性を持つ可能性があり、および、非常に重篤なまたは致死的な結果をもたらし得る凝集を形成する可能性がある。従って、ミスフォールディングしたタンパク質の有害な効果から細胞を保護するように、精巧なシステムが進化した。
【0033】
本発明の範囲における「タンパク質」は、全長タンパク質、相同体、グリコシル化により改変されたタンパク質、タンパク質断片、スプライスバリアント、機能的等価変異体(functionally equivalent variants)、変異体(mutants)および実質的に野生型タンパク質と同一の機能を保持するそれらの保存的置換体(conservative substitutions)を含む。
【0034】
本発明の範囲における「タンパク質の凝集」は、少なくとも2つのタンパク質が、どちらか一方のポリペプチドに脱溶媒和の状態を引き起こすように互いに接触している現象を含む。このことはまた、ポリペプチドの本来の機能または活性の減少を含んでよい。
【0035】
本発明の範囲における「タンパク質凝集関連疾病」は、神経変性障害を含むあらゆる疾病、障害、および/または苦痛、タンパク質凝集関連障害を含む。
【0036】
定義ならびに基本的な技術を実行するための方法および手段を含む分子生物学の標準的教科書が言及され、これは本発明に包含される。例えば、Sambrookらによる「分子クローニング:研究室マニュアル、第3版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition)」(Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001))、Ausebelら(編集)による「分子生物学の現代的プロトコール(Current Protcols in Molecular Biology)」(John Wiley & Sons, New York (2001))およびこれらに引用される様々な参考文献が参照される。
【0037】
本発明は、タンパク質のミスフォールディング/凝集および神経保護に関連するタンパク質をコードする多くのポリヌクレオチドを提供する。いくつかの候補遺伝子は、現在までに未知の機能または未知の活性を有した仮想のタンパク質をコードする。しかしながら、本発明は、これらのタンパク質の少なくとも1つの共通した機能または活性が、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集の予防であることを証明した。RNAiを用いてこれらのタンパク質の活性を減少させると、タンパク質のミスフォールディングおよびアルファ−シヌクレイン凝集が、C. elegansモデルにおいてもたらされた。これらのタンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチドの、発現および/または活性を減少させる変化はまた、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集をもたらすであろう。
【0038】
これらのタンパク質の幾つかは、また、ドーパミンを含む神経細胞といった神経細胞に対し神経保護を提供する。従って本発明は、ドーパミンを含む神経細胞の神経保護のための、本願に記載されるポリヌクレオチドの使用を含む、神経変性疾病における治療的処置の新規の方法を提供する;従って、本発明は、パーキンソン病の治療法を開発するための別の方法を提供する。ドーパミン作動性神経細胞に神経保護特性を付与するタンパク質をコードする遺伝子は、遺伝子およびタンパク質療法、抗体療法の開発のために、ならびにドーパミン神経細胞の神経保護を提供する新規の薬剤の設計およびスクリーニングにおいて使用することができる。同様に、これらの分子における変化は、有害な条件下において、神経細胞にダメージを与えおよび死をもたらす傾向がある。これらの遺伝子によってコードされるタンパク質は、UPS構成成分、オートファジー機構の構成成分、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質を含む。これらのタンパク質の一覧は表Iに提供される。
【表1−1】

【表1−2】

本発明の状況において、「単離された」または「精製された」は、その自然の環境から分離されたことを意味し、また、その他の混入するタンパク質、ポリペプチド、および/またはしばしば細胞抽出液中にみられるその他の生物学的物質が実質的に取り除かれたことを意味する。
【0039】
本発明の状況において、「ポリヌクレオチド」は、一般にポリリボヌクレオチドおよびポリデオキシリボヌクレオチドに関し、これらは、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAとなりうる。ポリヌクレオチド分子は、遺伝子およびタンパク質をコードするRNAまたは非修飾RNAまたはDNAを含んでよい。
【0040】
表Iに示される分子は、C. elegansオープンリーディングフレーム(ORF)識別名(identifier)の名称で挙げられているが、本発明は、C. elegansの配列のみに限定されるべきではない。表Iに挙げられる分子のその他の種の相同体、特にヒト相同体が本発明における使用に検討される。C. elegansの配列ならびに相当するヒト遺伝子およびタンパク質が、本願において提供される。相当するC. elegansの核酸およびタンパク質配列、ならびにヒト核酸およびタンパク質配列が、表IIにおいて提供される。
【表2−1】

【表2−2】

当業者は、ヒト以外の生物もそのような遺伝子を含んでいることを理解するであろう(例えば、真核生物;より明確には、哺乳類(好ましくは、ゴリラ、アカゲザル、およびチンパンジー)、齧歯類、線虫(好ましくは、C. elegans)、昆虫(好ましくは、D. melanogaster)、鳥類、魚類、酵母および植物)。本発明は、表Iに挙げられたタンパク質をコードする、上述した生物から単離された核酸分子を含むが、それに限定されないよう意図される。
【0041】
これらの多くの遺伝子は、進化上の保存性の度合いが著しく、このことは、種間のタンパク質の高い相同性を示している。例えば、ヒトHSPC117は、C. elegansのF16A11.2に相同的であり、ならびにDrosophila melanogaster (SEQ ID NO: 69及び70)、Danio rerio (SEQ ID NO: 71及び72)、ウシ(SEQ ID NO: 73及び74)、マウス(SEQ ID NO: 75及び76)、およびラット(SEQ ID NO: 77及び78)の遺伝子/タンパク質にも相同的である。これら全ての配列は、E値が本質的にゼロであり、このことは、この遺伝子が進化を通して高度に保存されていることを実証している。構造上の相同性の程度が高いことを考慮すると、これらの配列は、適切なレベルで発現された場合に、神経変性、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集を減少させるという、同様の機能を有しているであろう。
【0042】
本発明による単離された核酸分子はまた、化学的に合成された核酸分子を含む。例えば、遺伝子の発現産物をコードするヌクレオチド配列を伴う核酸分子を設計することが可能であり、必要であれば、より小さな適切な断片に分割することが可能である。そして、核酸分子、または分割された断片のそれぞれに対応するオリゴマーを合成することができる。そのような合成オリゴヌクレオチドは、合成的に作製することが可能であり(Matteucci et al., 1981, J Am. Chem. Soc. 103:3185−3191)または自動DNA合成装置を用いて作製することが可能である。オリゴヌクレオチドは、合成的にまたはクローニングにより得られたものとすることが可能である。必要であれば、オリゴヌクレオチドの5’末端は、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン酸化することが可能である。オリゴヌクレオチドの5’末端のリン酸化は、例えば放射性同位体(通常32P)を5’末端に付加することによって、特定のオリゴヌクレオチドを標識する方法を提供する。続いて、オリゴヌクレオチドは、アニーリングおよびT4リガーゼ等によるライゲーションに供することが可能である。
【0043】
そのうえ、表IIの配列に由来する、プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって作製されたDNA配列は、本発明において有用である。そのようなオリゴヌクレオチドは典型的に、少なくとも15ヌクレオチドの長さを有している。
【0044】
対応する方法において、表Iに挙げられたタンパク質からもたらされる、アミノ酸配列およびその使用が、本発明において検討される。
【0045】
核酸配列に関係して「〜から実質的に成る」とは、これ以降明細書および特許請求の範囲の目的のために、第3塩基の縮重(third base degeneracy)に関連した核酸の置換を意味するよう使用される用語である。当業者に理解されるように、第3塩基の縮重があるために、ほとんど全てのアミノ酸は、コードするヌクレオチド配列における1を越えるトリプレットコドンによって表すことが可能である。さらに、マイナーな塩基対の変化は、コードされるアミノ酸配列にバリエーション(保存的置換)をもたらす可能性があり、そのような変化によって、実質的に遺伝子産物の生物学的活性が変化することは予想されない。従って、本願において開示されるようなタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列は、わずかに配列が修飾されてよく(例えば、トリプレットコドンにおけるヌクレオチドの置換)、それでもなお、同一のアミノ酸配列のそれぞれの遺伝子産物をコードするものであってよい。
【0046】
本願で使用される、ポリヌクレオチドの配列における「変化(alterations)」は、遺伝子のノックアウトまたはノックダウンに起因する増加または減少といったように、配列の発現レベルの違いを意味する。野生型タンパク質によって付与される適切なタンパク質のフォールディングおよび神経保護に影響する、配列自体における違いをも含む。そのような変化は、ポリペプチド分子またはタンパク質の発現の増加または減少、変異、切断(truncations)および欠失を含む。従って、ユビキチン−プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質またはそれらの断片をコードするポリヌクレオチド分子とハイブリダイズするDNA配列は、本発明の構成要素である。
【0047】
当業者は、ハイブリダイゼーションを用いてDNA配列を同定するための手順を見つけるだろう。そのような手順は、専門家によって、特に、Boehringer Mannheim GmbHから出版されるハンドブック「フィルターハイブリダイゼーションのためのDIGシステムユーザーガイド(The DIG System Users Guide for Filter Hybridization)」(Manheim、ドイツ、1993)およびLieblらによる文献(International Journal of Systematic Bacteriology 41: 255−260(1991))にて見つけることができる。ハイブリダイゼーションは、厳密な条件のもと行われる。つまり、プローブとターゲット配列、すなわちプローブで処理したポリヌクレオチドとが少なくとも70%同一であるハイブリッドのみが形成される。洗浄の工程を含むハイブリダイゼーションの厳密性は、緩衝液の組成、温度および塩濃度の違いに影響され、またはそれらによって決定される。ハイブリダイゼーションの反応は、好ましくは、洗浄の工程と比較して、相対的に低い厳密性のもと行われる(Hybaid Hybridisation Guide, Hybaid Limited, Teddington UK, 1996)。
【0048】
例えば、約50℃−68℃の温度の5xSSC緩衝液をハイブリダイゼーション反応に使用することができる。プローブはまた、プローブの配列と少なくとも70%が同一のポリヌクレオチドとハイブリダイズできる。これは、例えば、温度を約50℃から68℃に設定し、塩濃度を2xSSCに下げ、および、任意に、続いて0.5xSSCに下げることによって達成することができる(The DIG System User‘s Guide for Filter Hybridization、Boehringer Mannheim, Manheim、ドイツ、1993)。任意に、塩濃度を0.1xSSCに下げることも可能である。使用するプローブの配列と、例えば、少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%から95%同一であるポリヌクレオチド断片を、ハイブリダイゼーション温度を50℃から68℃まで約1から2℃ずつ段階的に上げることで単離することができる。ハイブリダイゼーションにおける更なる手段は、いわゆるキットの形で市販のものが入手可能である(例えば、DIG Easy Hyb from Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、ドイツ、カタログ番号1603558)。
【0049】
「変異」とは、娘細胞および恐らく次の世代に伝達され得る遺伝物質における何れかの検出可能な変化であり、変異細胞または変異個体を生じさせる。変異は、1以上のデオキシリボヌクレオチドの、化学的もしくは物理的構成、変異性、複製、表現型の機能、または組換えに影響を与える、何れかの(または、組み合わせによる)検出可能で、不自然な(unnatural)変化でありうる;ヌクレオチドは、付加され、欠失され、置換され、反転され、または反転しておよび反転せずに新たな位置に移されうる。本願で使用される「変異」という用語はまた、本願に記載されるタンパク質の1つをコードする核酸配列における何れかの修飾を意味しうる。例えば、変異は、点変異または1以上のヌクレオチドの付加、欠失、挿入および/または置換、またはそれらの何れかの組み合わせを意味しうる。変異は、ミスセンスまたはフレームシフト変異となりうる。修飾は、例えば、保存的または非保存的、天然または人為的(unnatural)でありうる。さらに、タンパク質のNおよび/またはC末端における変化は、実質的にその機能を損なうことはできず、またはその機能を安定化することさえできることが知られている。このことに関する情報は、専門化による文献、特に、Ben−Bassatらの文献(Journal of Bacteriology 169:751−757(1987))、O’Reganらの文献(Gene 77:237−251(1989))、Sahin−Tothらの文献(Protein Sciences 3:240−247(1994))、Hochuliらの文献(BioTechnology 6:1321−1325(1988))ならびに遺伝学および分子生物学の既知の教科書にて見つけられる。変異は、表IIに挙げられたポリヌクレオチドに対応するポリヌクレオチド分子またはその断片とのハイブリダイゼーションによって単離することが可能である。
【0050】
本発明はまた、タンパク質のミスフォールディングの予防に向けられるタンパク質といった、多くのポリペプチド分子を用いる方法およびその使用方法が意図される。タンパク質は表Iに記載され、アミノ酸配列は表IIに挙げられる。これらのタンパク質は、このましくは、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはその他の混入化合物の混入のない、実質的に純粋な状態に精製または単離される。
【0051】
本願で使用される、タンパク質における「変化(alterations)」は、適したタンパク質のフォールディングを助け、野生型タンパク質により付与される神経保護を提供するタンパク質の能力の変化を意味している。そのような変化は、例えば、タンパク質の発現における変化、タンパク質の配列における変異およびあるいはスプライスされた形態を含んでよいが、タンパク質の活性を変えるその他の変化も意図される。
【0052】
その他の実施態様において、ポリペプチドは、表IIに示されるアミノ酸配列またはその変異体もしくは種のバリエーションを有する;またはそれらと少なくとも70%の同一性、さらには少なくとも80%の同一性、もしくはさらには少なくとも90%の同一性(好ましくは、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性またはそれらと少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の類似性)、またはそれらと少なくとも6つの隣接するアミノ酸(好ましくは、それらと少なくとも10、15、20、25、または50の隣接するアミノ酸)を有する。
【0053】
本発明のタンパク質は、グリコシル化された形態で、ならびにグリコシル化されない形態で提供されてよい。グリコシル化タンパク質またはその断片の作製は、当該分野において既知であり、典型的に、真核細胞における、ペプチドをコードする組換えDNAの発現を含む。同様に、原核細胞(例えば、細菌)において、ペプチドをコードする組換えDNAを発現させて、グリコシル化されていないペプチドを得ることは当該分野において既知である。糖タンパク質の炭水化物成分を変化させるこれらおよびその他の方法は、Ajit Varkiの編集による「糖生物学の基本(Essentials of Glycobiology)」(1999)(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載されており、この文献は、本願に援用される。
【0054】
ポリペプチド分子はまた、表Iに挙げられるタンパク質ためのポリペプチド配列から本質的に成ると意図される。
【0055】
本発明のタンパク質は、1以上の保護されたアミノ酸残基を含んでよい。保護されたアミノ酸は、官能基が既知の方法によって保護基で保護されたアミノ酸であり、様々な保護されたアミノ酸が、市販されて利用可能である。タンパク質またはその断片はまた、1以上の修飾されたアミノ酸を含んでよい。そのようなアミノ酸のリストは、その全体が本願に援用される米国特許出願2003/0235823にて見ることが可能である。
【0056】
アミノ酸配列のバリエーションが導入される部位は前もって決められるものの、変異自体は、前もって決める必要はない。例えば、望まれる活性に関する特定のポリペプチドの働きを最適化するため、ランダムな変異を、ポリペプチドの標的コドンまたは領域に導入することが可能であり、発現される変異体は、最適で望ましい活性でスクリーニングすることが可能である。既知の配列を有するDNAにおいて、予め決めた部位に置換変異を起こす技術は周知であり、例えば、部位特異的突然変異誘発がある。
【0057】
アミノ酸配列の欠失は、一般的に、約1から30残基、より好ましくは1から10残基にわたる。アミノ酸配列の挿入は、1残基から本質的に長さの制限されていないポリペプチドの、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内の挿入を含む。配列内の挿入(すなわち、完全なタンパク質配列内での挿入)は、一般的に、約1から10残基、より好ましくは1から5残基にわたる。
【0058】
変異体の第3のグループは、ポリペプチド分子における少なくとも1つのアミノ酸残基、および好ましくはただ1つのアミノ酸が除去され、異なる残基がその位置に挿入されたものである。
【0059】
機能的または免疫学的同一性における実質的変化は、保存性のより低い置換を選択することによって為され、すなわち、a)例えば、シートまたはらせん構造といった、置換の領域におけるポリペプチドのバックボーンの構造、b)標的部位における分子の電荷または疎水性、またはc)側鎖の大きさ、を維持すること対する効果をより著しく変化させる残基を選択することによって為される。保存的置換は、置換するアミノ酸(天然に生じたまたは修飾されたもの)が置換されるアミノ酸に構造的に関係しており、すなわち置換されるアミノ酸とほぼ同じサイズおよび電気的特性を有しているような置換である。従って、置換されるアミノ酸は、本来のアミノ酸と同一または類似した官能基を側鎖に有しているだろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は当該分野において周知である。以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換となるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0060】
さらなる置換は、以下によるものを含んでよい:
a)グリシンおよび/またはプロリンが、もう一方のアミノ酸によって置換され、または欠失もしくは挿入される;
b)親水性残基、例えば、セリルまたはスレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに対して置換する;
c)システイン残基が、他の何れかの残基に対して置換する;
d)陽性側鎖、例えば、リジル、アルギニル、またはヒスチジルを有する残基が、陰性電荷、例えば、グルタミルまたはアスパルチルを有する残基に対して置換する;または
e)大きな側鎖、例えば、フェニルアラニンを有する残基が、そのような側鎖を有しないもの、例えばグリシンに対して置換する。
【0061】
いくつかの欠失、挿入および置換は、タンパク質の特性にラジカルな変化をもたらさないことが予想される。置換の効果は、本願で開示されるモデルといった動物モデルならびに生化学的およびin vivoスクリーニングアッセイを用いて、日常的に評価できるということが、当業者に理解されるだろう。
【0062】
一実施態様において、本発明は、抗体反応を誘発するために、表Iに記載されるタンパク質のエピトープを用いる方法に関する。抗原性エピトープ断片を選択する方法は、当該分野において周知である(Sutcliffe et al., 1983, Science. 219:660−666)。本発明による、抗原性エピトープを有すペプチドおよびポリペプチドは、ポリペプチドを特異的に認識する免疫応答を生じさせるのに有用である。本発明による、抗原性エピトープを有しているペプチドおよびポリペプチドは、表Iに挙げられたタンパク質のアミノ酸配列のバリアントのタンパク質の少なくとも4アミノ酸(好ましくは、6、7、9、10、12、15または20アミノ酸)を含み、DNAにおける変異によって作製することが可能である。そのようなバリアントは、例えば、表IIに示されるアミノ酸配列内の残基からの欠失、またはその挿入もしくは置換を含む。最終的な構築物(construct)が望ましい活性を有している限り、最終的な構築物に到達するために、欠失、挿入、および置換の何れかの組み合わせを行うことも可能である。一実施態様において、本願に記載されるタンパク質は、野生型のまたは変化した形態のタンパク質に対応するポリペプチド配列に特異的な抗体を作製するために使用される。抗体は、プローブとして使用してよく、または予防的もしくは治療的処置のために使用してよい。
【0063】
本発明は、ミスフォールディングおよびタンパク質の凝集に関したタンパク質をスクリーニングする方法を提供する。例えば、表Iに挙げられる配列は、ヒトアルファ−シヌクレイン::GFP融合タンパク質を過剰発現する遺伝子組換え線虫株(transgenic nematode line)を用いたRNAiライブラリーのスクリーニングが由来であった。GFP、RFP、BFP、YFPおよびルシフェラーゼといったその他のレポーター分子もまた、アルファ−シヌクレインとの融合タンパク質として発現させてよい。その他の凝集しやすいタンパク質は、その他の神経学的疾病のタンパク質のミスフォールディングおよび凝集の研究のため、同じような方法で過剰発現させてよく、前記その他の神経学的疾病のタンパク質とは、例えば、アルツハイマー病におけるタウおよびベータアミロイドタンパク質、ハンチントン舞踏病における変異型ハンチンチン(huntingtin)、筋萎縮性側索硬化症におけるSOD1および神経フィラメント、および球脊髄性筋萎縮症における変異型アンドロゲン受容体などであるが、これらに限定されない。特にパーキンソン病に関しては、アルファ−シヌクレインの過剰発現は、線虫C. elegansにおいて蛍光顕微鏡により観察可能なアルファ−シヌクレインの視覚的凝集の形成をもたらす。遺伝子発現は、unc−54プロモーターに制御され、容易な可視化のために体壁(body wall)に発現される。TOR−2は、アルファ−シヌクレインが過剰発現するC. elegansにおいて、タンパク質の凝集を減少させることが示されたタンパク質である。アルファ−シヌクレイン::GFP+TOR−2を含む遺伝子組換え線虫株は、ミスフォールディングおよびタンパク質の凝集に関係した候補遺伝子のRNAiスクリーニングのために使用してよい。TOR−2によるミスフォールディングおよびタンパク質の凝集の同様な抑制が、ポリグルタミン依存性タンパク質凝集に対して以前に報告された(Caldwell et al. Hum Mol Genet. 2003 Feb 1;12(3):307−19)。この遺伝子組換え生物は、遺伝子発現をRNAiノックダウンしたときにアルファ−シヌクレインの凝集を回復させる遺伝子を探すために、アルファ−シヌクレイン::GFP+TOR−2を含む線虫の体壁筋(body−wall muscles)におけるRNAiフィーディング(RNAi feeding)を用いた迅速なスクリーニング方法を提供する。C. elegans遺伝子のライブラリーは、RNAiを用いる日常的な実験でスクリーニングし、再現性を有して、アルファ−シヌクレインの凝集に対する遺伝子ノックダウンの効果を判定してよい。一般的に、タンパク質凝集と関連があると評価される標的遺伝子では、アッセイするアルファ−シヌクレイン::GFP+TOR−2生物の約80%において、凝集する表現型が生じる。相同的な配列は、NCBI BLASTデータベースを用いて決定してよい(NCBI, National Library of Medicine, NlH, Bethesda, MD)。
【0064】
別の実施態様において、本発明による遺伝子は、神経細胞に神経保護特性を付与するタンパク質をコードする。本願における技術によると、C. elegans遺伝子ライブラリーは、候補遺伝子が神経細胞に保護を与えるかどうかを決定するため、スクリーニングに供することが可能である。例えば、神経毒6−OHDAによる処理は、C. elegansモデルにおいてドーパミン作動性神経細胞の減少を起こさせる。選択された遺伝子を過剰発現させると、6−OHDA処理によって引き起こされるドーパミン作動性神経細胞の減少が抑制される。6−OHDAによる処理は、活性酸素種の形成によってダメージおよび死をもたらす。従って、6−OHDA処理は、活性酸素種の形成に関した神経学的疾病に対する神経保護をアッセイするモデルを提供する。同様に、神経学的疾病モデルは、神経学的疾病に関係した凝集しやすいタンパク質を発現するものが作製されてよい。例えば、C. elegansのドーパミン神経細胞におけるヒトアルファ−シヌクレインの過剰発現は、パーキンソン病の神経変性の側面を再現しており、これらの動物は、それらが加齢するたびに次第にドーパミン神経の消失を示す(Cao et al., J Neurosci. 2005 Apr 13;25(15):3801−12)。この状況において、遺伝子組換え線虫は、特定の化合物および遺伝子の神経保護機能を同定するためのモデルの代表となる。
【0065】
標的遺伝子を過剰発現するC. elegansは、神経特異的プロモーターの制御によって、GFP、RFP、BFP、ルシフェラーゼ等といった蛍光タンパク質を発現する遺伝子組換え線虫を出発点として、作製される。神経特異的プロモーターは、当該分野において日常的に利用可能であり、神経伝達物質合成酵素および神経伝達物質輸送体、例えばチロシン水酸化酵素、ドーパミンベータ水酸化酵素、ドーパミン輸送体、セロトニン輸送体、小胞性アセチルコリン輸送体等の発現を調節するプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0066】
別の実施態様において、本発明は、厳密なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件のもと核酸にハイブリダイズする上述した核酸分子または少なくともその断片に対応するDNAまたはRNA分子を含むサンプルから、関係のある核酸の存在を特異的に決定するための、核酸プローブの使用の方法に関する。
【0067】
ある応用において、本願に記載されるポリヌクレオチドの検出は、神経変性疾病に関係したタンパク質のミスフォールディングまたは凝集の存在またはそのような傾向の指標とするための、診断上のアッセイに取り込んでよい。好ましい一実施態様において、本発明は、RNAおよびDNA断片と優先的にハイブリダイズする10から1000ヌクレオチド(好ましくは、10から500、10から100、10から50、10から35、20から1000、20から500、20から100、20から50、または20から35)から成る単離された核酸プローブに関し、前記核酸プローブは、以下のなかの1以上のものと少なくとも90%同一なポリヌクレオチド配列を含む核酸分子由来の、少なくとも10の連続したヌクレオチド(好ましくは、15、18、20、25、または30)から成るヌクレオチド配列であり、またはそのようなヌクレオチド配列に相補的である:表IIに挙げられるもの由来のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;上記の何れかのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列;および上述した何れかのヌクレオチド配列。
【0068】
本発明によるハイブリダイゼーションプローブは、放射線標識、蛍光標識、ビオチン/アビジン標識、化学発光標識等といった標準的標識技術による検出のために標識することが可能である。ハイブリダイゼーションの後、プローブは既知の方法を用いて可視化することが可能である。
【0069】
別の実施態様において、本発明は、サンプル中の核酸の存在を検出する方法であって、ハイブリダイゼーションが生じるような特異的なハイブリダイゼーション条件のもと、サンプルを上述の核酸プローブと接触させ、核酸分子の結合したプローブの存在を検出することによる方法に関する。当業者は、上述したような当該分野において既知の技術に従って核酸プローブを選択するだろう。試験されるサンプルには、ヒト組織由来のRNAまたはDNAサンプルが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明による核酸プロービング(probing)法に適した試験サンプルは、例えば、細胞もしくは細胞の核酸抽出物、または生物学的液体を含む。上述の方法にて使用されるサンプルは、アッセイの構成、検出方法およびアッセイに使用する組織、細胞、または抽出物の性質に基づいて異なるだろう。細胞の核酸抽出物を作製する方法は、当該分野において周知であり、使用する方法に適合したサンプルを得るために容易に適応させることが可能である。
【0071】
方法は、ミスフォールディング/凝集に関係したタンパク質または神経保護を提供するタンパク質における変化を検出することによる、神経学的疾病の診断のために提供される。これらの方法において、個人由来の組織サンプルは、ユビキチン−プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質における変化が分析され、変化の存在は、神経学的疾病の傾向、またはその存在を意味する。本願で使用される、「組織」は、個人由来の生物学的サンプルを意味する。そのサンプルの例は、細胞、個人の細胞のサンプル、血液、リンパ液、唾液といった体液のサンプル(細胞がサンプル中に存在しても、または存在していなくてもよい)を含むがこれらに限定されない。
【0072】
一実施態様において、本方法は、サンプル中のユビキチン−プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質の検出を必要とし、免疫複合体が形成される条件下にてサンプルを上述の抗体(またはタンパク質)と接触させること、ポリペプチドに結合する抗体の存在を検出することを含む。特異的に結合する抗体またはタンパク質は、検出可能な標識に融合されていてよい。具体的には、本方法は、本発明による1以上の抗体と試験サンプルとをインキュベートすること、および抗体が試験サンプルに結合するかをアッセイすることを含む。サンプル中のタンパク質のレベルまたは活性の、正常なレベルと比較した場合の変化は、特異的な疾病を示し得る。
【0073】
さらなる実施態様において、本発明は、サンプルにおいて表Iによるタンパク質に特異的な抗体を検出する方法に関係し、これは、免疫複合体が形成される条件下でサンプルと表Iによるタンパク質とを接触させること、および抗体に結合したタンパク質またはタンパク質に結合した抗体の存在を検出することを含む。詳細には、本方法は、本発明による1以上のタンパク質と試験サンプルとをインキュベートし、および抗体が試験サンプルと結合したかをアッセイすることを含む。
【0074】
抗体と試験サンプルとをインキュベートするための条件は変動する。インキュベーションの条件は、試験に使用する構成、使用する検出方法、およびアッセイに使用する抗体のタイプおよび性質に依存する。当業者は、一般に
使用可能な免疫学的アッセイの構成(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着検定法、オークタロニー法に基づく拡散(diffusion based Ouchterlony)、またはロケット免疫蛍光アッセイ(rocket immunofluorescent assays))が、本発明による抗体の使用に容易に適用できることが理解できるであろう(Chardによる「ラジオイムノアッセイおよび関連技術の導入(An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques)」(Elsevier Science Publishers、アムステルダム、オランダ)(1986); Bullockらによる「免疫細胞化学の技術(Techniques in Immunocytochemistry)」(Academic Press、オーランド、フランス、Vol.1(1982)、Vol.2(1983)、Vol.3(1985)); Tijssenによる「免疫測定法の実践と理論:生化学および分子生物学における研究技術(Practice and Theory of enzyme Immunoassays: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology)」(Elsevier Science Publishers、アムステルダム、オランダ(1985)))。
【0075】
本発明による免疫学的アッセイ試験サンプルは、細胞、細胞のタンパク質もしくは膜抽出物、または血液、血清、血漿もしくは尿といった生物学的液体を含む。上述の方法に使用される試験サンプルは、アッセイの構成、検出方法の性質およびアッセイするサンプルとして使用する組織、細胞または抽出物に基づいて異なる。細胞のタンパク質抽出物または膜抽出物の作製のための方法は、当該分野において周知であり、システムへの使用が可能なサンプルを得るために、容易に適用することが可能である。
【0076】
請求される発明は、凝集し神経学的疾病を起こすタンパク質を測定することが可能な、幾つかの適したアッセイを利用する。適したアッセイは、免疫学的方法、例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、化学蛍光アッセイ等を包含する。
【0077】
幾つかの好ましい実施態様において、免疫学的技術は、モノクローナルおよび/またはポリクローナル抗体、およびそれらの混合物を含む抗体カクテル(すなわち、1以上の抗体)を用いて、表Iによるタンパク質のレベルを検出する。例えば、これらの免疫学的技術は、マウスモノクローナルおよびウサギポリクローナルといった、ポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体の混合物を利用できる。
【0078】
当業者は、単離されたおよび/または組換えタンパク質またはその一部もしくは断片といった、適した抗原(合成ペプチドといった、合成した分子を含む)に対する抗体を産生することが可能である。一実施態様において、抗体は、表Iのリストによる単離されたおよび/または組換えタンパク質またはその一部もしくは断片(すなわちペプチド)に対して、またはこれらの組換えタンパク質の1つを発現する宿主細胞に対して、産生される。加えて、形質移入された細胞といった、組換えタンパク質を発現する細胞は、抗原として使用可能であり、またはタンパク質に結合する抗体のスクリーニングにおいて使用可能である。
【0079】
本方法によると、アッセイは、生物学的サンプル中のタンパク質のレベルまたは濃度を決定することが可能である。タンパク質の量の決定において、アッセイは、抗体とタンパク質との複合体の形成に適した条件下で、試験するサンプルとタンパク質に対して特異性を有する抗体とを混合すること、および複合体の形成を(直接的にまたは間接的に)検出または測定することを含む。サンプルは、特定のサンプル(例えば、全血、組織抽出物、血清)および選択するアッセイの構成に適した方法によって得るまたは作製することが可能である。例えば、全血の採取に適した方法は、静脈穿刺または留置動脈ライン(indwelling arterial line)からの血液採取である。血液を採取する容器は、CACD−A、ヘパリン、またはEDTAといった抗凝血剤を含むことができる。サンプルおよび抗体を結合させる(combine)方法、ならびに複合体の形成を検出する方法はまた、アッセイの構成と矛盾しないように選択される。適した標識は、放射性、蛍光性または化学発光標識などのように直接的に;または酵素標識およびビオチンのようなその他の抗原性または特異的結合パートナーおよびコロイド金といった標識を用いて間接的に検出できる。そのような標識の例は、フルオレセイン、ローダミン、CY5、APCといった蛍光標識、ルシフェラーゼといった化学発光標識、32P、125I、131Iといった放射性標識、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびアルカリ性フォスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、ビオチン、アビジンといった酵素標識、スピン標識等が含まれる。複合体中の酵素の検出はまた、二次抗体によって免疫学的に行うことができる。ここにおいて、二次抗体が検出される。従来の方法またはその他の適した方法にて、抗体を直接的にまたは間接的に標識することが可能である。
【0080】
その他の実施態様において、表Iに挙げられた化合物は、ヒトの神経性の疾病をもたらす遺伝子の変異の存在または非存在を検出することを包含する、診断方法およびスクリーニング方法のために使用してよい。例えば、本発明による診断方法およびスクリーニング方法は、家族歴に基づき表Iによるタンパク質の発現レベルの変化に関連する疾病を発症するリスクの疑いのあるヒト患者、またはこれらのタンパク質に関連した疾病と診断されることが望ましい患者において、神経細胞の遺伝子における変異または多型性の存在または非存在を診断することに特に有用である。
【0081】
別の実施態様において、本願に記載されるポリヌクレオチドは、変異体の存在または野生型配列の非存在または個人を神経学的障害に罹りやすくする配列のスクリーニングのためのマイクロアレイに発展させることが可能である。マイクロアレイは、個人由来の組織サンプルにおける、遺伝子の発現の変化を検出するために、本願に記載される野生型の配列または変化した配列を含んでよい。アレイは、本願にて提供される配列または断片およびサンプル中の相補配列に対して特異的に結合する配列の変異体の全てを含んでよい。アレイはまた、神経学的障害に罹りやすくさせるまたはそのような障害の存在を示す野生型遺伝子の発現において、増大または減少を決定するために使用してよい。何れの場合も、組織サンプル由来の相補的配列の検出を可能にするために、完全な配列の代表的な量がアレイに提供される。ポリヌクレオチドのアレイまたはマイクロアレイは、一般的に、DNA、RNA、PNA、およびcDNAといった核酸であるが、また、標的分子に特異的に結合することができるタンパク質、ポリヌクレオチド、オリゴ糖、細胞、組織およびその何れかの組み合わせを含んでよい。マイクロアレイにおけるスクリーニングは、アレイ上の核酸配列に対して特異的である、検出可能な標識の使用を含んでよい。そのようなスクリーニングは、例えば、点状(spotted)マイクロアレイにより、または製造者の説明書(および本質的に、Schenaらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614−10619,1996)およびHellerらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150−2155,1997)に記載される)に従って、Affymetrix社(Santa Clara, Calif.)の断片DNAマイクロアレイ技術を用いて行ってよい。遺伝子発現の分析におけるマイクロアレイの使用は、Fritzらの文献(Science 288:316, 2000; “Microarray Biochip Technology”)、L Shi(www.Gene−Chips.com)により、一般的に参照される。マイクロアレイ分析を行うためのシステムおよび試薬は、Affymetrix, Inc.(サンタクララ、カリフォルニア); Gene Loglc Inc.(コロンビア、メリーランド); HySeq Inc.(サニーヴェール、カリフォルニア); Molecular Dynamics Inc.(サニーヴェール、カリフォルニア); Nanogen(サンディエゴ、カリフォルニア);およびSynteni Inc.(フリーモント、カリフォルニア)(Incyie Genomics(パロアルト、カリフォルニア)により入手される)といった会社から商業的に入手できる。
【0082】
本願において互換的に使用される「マイクロアレイ」および「アレイ」は、集中化した位置における、核酸配列の集合の配置を意味する。アレイは、例えば、ガラススライドといった固体基体またはニトロセルロース膜といった半固体基体の表面上に配置させることができる。核酸配列は、DNA,RNAまたはそれらの何れかの組み合わせとすることができる。当該分野において既知であるように、マイクロアレイは、基体(表面)上の特定の位置に固定された異なるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの集合を意味する。アレイは、紙、ガラス、プラスティック(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、シリコン、光ファイバー、ポリスチレンといった素材にて組み立てられる基体またはその他の何れかの適した固体もしくは半固体担体上に形成され、平面状(例えば、ガラス平面、シリコンチップ)または三次元状(例えば、ピン、ファイバー、ビーズ、粒子、マイクロタイターウェル、キャピラリー)の配置で形成される。アレイを形成するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、(i)写真食刻技術(photolithographic techniqus)を用いたin situ合成(例えば、高密度オリゴヌクレオチドアレイ)(Fodorら、Science (1991), 251:767−773; Peaseら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1994), 91:5022−5026; Lockhartら、Nature Biotechnology (1996), 14:1675;米国特許第5,578,832号;第5,556,752号;および第5,510,270号参照);(ii)ガラス、ナイロンまたはニトロセルロース上における、中程度から低い密度のスポッティング/プリンティング(spotting/printing)(例えば、cDNAプローブ)(Schenaら、Science (1995), 270:467−470, DeRisiら、Nature Genetics (1996), 14:457−460; Shalonら、Genome Res. (1996), 6:639−645; および Schenaら、Proc, Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1995), 93:10539−11286);(iii)マスキング(masking)(MaskosおよびSouthern、Nuc. Acids. Res. (1992), 20:1679−1684)および(iv)ナイロンまたはニトロセルロースハイブリダイゼーション膜上でのドットブロッティング(例えば、Sambrookら、Eds., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Vol. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory (Cold Spring Harbor, N.Y.)参照)を含む多くの方法によって基体に付着させてよい。
【0083】
一実施態様において、マイクロアレイは、神経学的障害の診断に対するアレイの作製において、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn/Fe輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質に関連した配列を含む。
【0084】
別の実施態様において、本発明は、表Iによるタンパク質の活性を刺激または減少させる化合物のスクリーニングの方法に関する。これらのタンパク質はまた、in vitroで発現させ、スクリーニングアッセイのために精製してよく、またはタンパク質のミスフォールディング/凝集および神経毒性のための動物モデルにおいて発現させてよい。ランダムなスクリーニングのために、ペプチド、炭水化物、医薬品等といった薬剤が無作為に選択され、タンパク質に対してそれらが結合する能力またはタンパク質の活性を刺激する/減少させる能力がアッセイされる。そのような方法は、タンパク質を発現する細胞と、試験する化合物とのインキュベートを含み;およびタンパク質のATP結合に対する化合物の効果を測定することにより細胞のタンパク質の活性アッセイすることを含む。何れの細胞も、それがタンパク質の機能的形態を発現し、タンパク質の活性が測定可能である限り、上述のアッセイに使用してよい。好ましい発現細胞は、真核細胞または生物である。そのような細胞は、当該分野において既知の日常的な手順を用いて、タンパク質をコードするDNA配列を含むよう修飾することが可能である。あるいは、当業者は、タンパク質をコードするmRNAを直接細胞に導入することができる。
【0085】
別の実施態様において、本発明は、変化したタンパク質の発現または異常な活性を打ち消すことができる医薬品(例えば、薬剤)のスクリーニングに関する。好ましくは、神経細胞のカルチャーは、本願に記載されるベクター技術を用いて、タンパク質の変異体の過剰発現のために使用される。神経細胞の形態およびタンパク質の分布における変化が評価され、定量の手段が使用される。このバイオアッセイは、次に、表現型を回復させることができる薬剤のスクリーニングとして使用される。(上述したアンタゴニストおよびアゴニストを含む、)表Iによるタンパク質に対するリガンドを用いて、本発明はさらに、細胞におけるタンパク質の活性を調節するための方法を提供する。一般に、タンパク質の活性を抑えるまたは刺激することが確認された薬剤(アンタゴニストおよびアゴニスト)は、その化合物が、in vivoにてタンパク質を発現させる細胞に接触できるように処方することができる。そのような細胞とそのような化合物との接触は、in vivoにおけるタンパク質の活性の調節をもたらす。
【0086】
候補化合物は、小分子化合物、ペプチド化合物、ペプチド擬態(peptide mimetics)、抗体、抗体断片、抗体誘導体、核酸分子、ホルモン等といった従来の分類の治療剤(therapeutics)から選択してよい。
【0087】
一実施態様において、候補小分子化合物は、トポイソメラーゼII阻害剤、バクテリアカルシウムチャネル遮断剤、トランスペプチダーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成酵素阻害剤、およびナトリウムチャネル遮断剤を含んでよい。これらの分子は、本願に援用される米国仮特許出願60/738,761および60/749,910に開示されるように、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集を予防し、または神経保護を提供する。
【0088】
一実施態様において、トポイソメラーゼII阻害剤は、ロメフロキサシン(lomefloxacin)、シノキサシン、アムサクリン、エトポシド、テニポシド(teniposide)、オキソリニック酸(oxolinic acid)、ナリジクス酸、スラミン、メルバロン(merbarone)、ゲニステイン、エピルビシンHCl、エリプチシン(ellipticine)、ドキソルビシン、またはアウリントリカルボン酸(ATA)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0089】
別の実施態様において、細菌のトランスペプチダーゼ阻害剤は、アンピシリン、クロキサシリン、ピペラシリン、アモキシシリン、セファドロキシル、ジクロキサシリン、カルベニシリン、ペニシリン、メタンピシリン(metampicillin)、アモキシシリン、またはセフォキサチン(cefoxatin)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0090】
別の実施態様において、カルシウムチャネル遮断剤は、ニモジピン、ジプロテベリン(diproteverine)、ベラパミル、ニトレンジピン、ジルチアゼム、ミオフラジン(mioflazine)、ロペラミド、フルナリジン、ベプリジル(bepridil)、リドフラジン、CERM−196、R 58735、R−56865、ラノラジン(ranolazine)、ニソルジピン、ニカルジピン、PN200−1 10、フェロジピン、アムロジピン、R−(−)−202−791、またはR−(+) Bay K−8644を含んでよいが、これらに限定されない。
【0091】
別の実施態様において、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ナプロキセン、フルフェナミン酸、トルフェナム酸、フェンブフェン、ケトプロフェン、フェナセチン、ディピロン(dipyrone)、フルルビプロフェン、メクロフェナミド(meclofenamide)、ピロキシカム、またはインドメタシンを含んでよいが、これらに限定されない。
【0092】
別の実施態様において、葉酸合成酵素阻害剤は、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、スルファドキシン、ダプソン、トリメトプリム、ジアベリジン(diaveridine)、ピリメタミン、またはメトトレキセートを含むが、これらに限定されない。
【0093】
別の実施態様において、ナトリウムチャネル遮断剤は、リドカイン、ダイクロニンHCl(dyclonine HCl)、メキシリチン(mexilitine)、フェニトイン、ケタミン、フレカイニド、またはアマンタジンを含んでよいが、これらに限定されない。
【0094】
アッセイにおいてスクリーンニングされるその他の薬剤は、ペプチド、炭水化物、ビタミン誘導体、またはその他の医薬品であってよいが、これらに限定されない。これらの薬剤を、合理的な選択により、または例えばタンパク質もしくはリガンドのモデリング技術(好ましくはコンピューターモデリング)を用いる設計(design)により、ランダムに選択およびスクリーニングすることができる。
【0095】
表Iに記載される核酸配列およびタンパク質もまた、内在性の分子に対するアゴニスト、アンタゴニストまたは結合パートナーとして作用する、新規の化合物を設計するために使用してよい。ミスフォールディングおよびタンパク質の凝集に影響する、本願に記載されるスクリーニング方法によって同定される活性試験薬剤は、類似体化合物の合成のためのリード化合物として役立つ。典型的に、類似体化合物は、リード化合物に類似した電子配置および分子構造を有すよう合成される。類似体化合物の同定は、自己無撞着場(self−consistent field)(SCF)分析、立体配置相互作用(CI)分析、および正常モード動力学(normal mode dynamics)分析といった技術の使用を通して行うことができる。これらの技術を実行するためのコンピュータープログラムが利用可能である。Reinらの文献「受容体−リガンド相互作用のコンピューター補助によるモデリング(Computer−Assisted Modeling of Receptor−Ligand Interaction)」(1989)(Alan Liss, New York)が参照できる。
【0096】
一旦、類似体が作製されると、それらを、タンパク質の凝集を調節する能力が増大した類似体を同定するために、本願に開示される方法を用いてスクリーニングすることが可能である。そのような化合物は、次に、医薬品としての可能性が最大である化合物を同定するために、更なる分析に供することができる。あるいは、スクリーニング法によって活性を有することが示された類似体は、さらなる類似体の作製におけるリード化合物として役立たせることが可能である。そのようなさらなる類似体は、本願に記載の方法によってスクリーニングすることが可能である。スクリーニング、類似体の合成および再スクリーニングのサイクルは、複数回繰り返すことができる。
【0097】
あるいは、薬剤は、合理的に選択されまたは設計されてよい。本願に使用されるように、薬剤がタンパク質の立体配置に基づいて選択される場合、薬剤は、「合理的に選択されまたは設計される」と言う。
【0098】
定量的構造活性関係(QSAR)法は、化合物の化学的構造とその生物学的活性との間の関係を定量するために使用してよい。それぞれの化合物の分類は、化合物の分類に関係のある1以上の構造に関係した1以上の活性を同定する、構造活性関係(SAR)および/または定量的構造活性関係(QSAR)法を含む1以上の技術を用いて、広範囲な有効性について定量または評価してよい。それぞれの化合物の分類は、次に、合成可能性(synthesizability)、柔軟性、特許性、活性、毒性、および/または代謝といった因子に基づいて、優先順位をつけてよい。この場合、それぞれの特定の化合物の分類における全てのまたは付加的な1組の化合物がアッセイおよび分析される。いくつかの化合物の分類は非常に大きい可能性があるため、分類中の化合物の部分集合をアッセイおよび分析してよく、および、分類が、予め決めたレベルを超えた有効性を示し続ける場合は、残りのものもアッセイされるだろう。この方法はまた、本発明に使用される化合物の機能的類似体および化合物の分類を同定するだろう。機能的類似体の活性は、次に、C. elegansモデルを用いて確認し、神経保護ならびにタンパク質のミスフォールディングおよび凝集に対する作用をスクリーニングしてよい。
【0099】
コンピューターモデリング技術は、選択される分子の3次元原子構造の可視化およびその分子と相互作用すると考えられる新規の化合物の合理的な設計を可能とする。これらの方法は、神経保護ならびにタンパク質のミスフォールディングおよび凝集に対して作用することが知られる既知の小分子化合物の機能的類似体を探す方法を提供する。標的タンパク質に結合する化合物の3次元構造は、相互作用する部位を同定し、次にそれが、同様な結合特性を有する類似の化合物および機能的類似体の同定に使用されるだろう。3次元構築は、典型的に、選択された分子のX線結晶学的分析またはNMRイメージングによるデータに依存する。コンピューターグラフィックスシステムは、どのような新規化合物が標的分子に結び付くかの予測を可能にし、化合物および標的分子の構造を実験的に操作することで、結合特異性を完成させることが可能となる。一方または両方において小さな変化が生じた場合に、どのような分子−化合物相互作用が起こるかという予想は、メカニクスソフトウェア(mechanics software)および計算集中コンピューター(computationally intensive computers)(通常、分子設計プログラムとユーザーとの間における、ユーザーフレンドリーなメニュー方式インターフェースが結び付く)を必要とする。
【0100】
分子モデリングシステムの例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation,Waltham,Massである。CHARMmは、エネルギーの最小化および分子動力学機能を行う。QUANTAは、構築、グラフィックモデリングおよび分子構造の分析を行う。QUANTAは、互いに分子の挙動の相互作用構築、修飾、可視化、および分析を可能とする。
【0101】
多くの論文が、特定のタンパク質との薬剤の相互作用のコンピューターモデリングについて概説している。(SchneiderおよびFechnerによる、Nat Rev Drug Discov. 2005 Aug;4(8):649−63; Gunerによる、IDrugs. 2005 Jul;8(7):567−72;およびHanaiによる、Curr Med Chem. 2005;12(5):501−25.)化学薬品をスクリーニングし図示するその他のコンピュータープログラムは、BioDesign, Inc.(パサデナ、カリフォルニア)およびHypercube, Inc.(ケンブリッジ、オンタリオ)といった会社からのものが利用可能である。これらは、主に、特定のタンパク質に対して特異的である薬剤への適用のために設計されているものの、DNAまたはRNAの領域に特異的な薬剤の設計に、一旦その領域が同定されれば、適用可能である。結合を変化させることができる化合物の設計および産出に関して上に記載されているものの、天然の生成物または合成的化学薬品、および、阻害剤または活性剤となる化合物のための、タンパク質を含む生物学的に活性な物質を含む、既知の化合物のライブラリーをスクリーニングすることも可能である。この方法を用いて同定される化合物の活性は、C. elegansモデルを用いて確認し、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集に対する神経保護作用をスクリーニングしてよい。
【0102】
本発明はまた、予防的および治療的応用のための化合物のスクリーニングにおける使用のための、遺伝子組換え動物モデルを提供する。本発明による遺伝子組換え動物は、人為的手段により(すなわち、ヒトによる処置により)、この動物には本来生じない1以上の遺伝子、例えば、外来性遺伝子、遺伝子改変外因性遺伝子等が導入された動物である。導入遺伝子として知られる人為的に導入された遺伝子は、その動物と同種または異種の動物由来であってよいが、導入遺伝子によって付与される配置および/または染色体上の位置には、その動物において本来見つからないものである。
【0103】
導入遺伝子は、外来性DNA配列、すなわち、宿主動物のゲノムには通常見つからない配列を含んでよい。あるいは、または、加えて、導入遺伝子は、遺伝子発現の正常なin vivoにおけるパターンを変化させる目的で、または遺伝子によってコードされる内因性遺伝子産物の生物学的活性を変化させるもしくは無くす目的で、in vitroで再編成されたまたは変異を入れられた異常な内因性DNA配列を含んでよい(Watson, J. D.らによる、「組換えDNA第2版(Recombinant DNA, 2d Ed.)」(W. H. Freeman & Co., New York)(1992)、255−272ページ; Gordon, J. W.によるIntl. Rev. Cytol.(1989)115:171−229; Jaenisch, R.による、Science.(1989)240:1468−1474; Rossant, J.による、Neuron.(1990)2:323−334)。導入遺伝子は、前核注入、ES細胞導入(ES cell transfer)、ウイルス組み込み法、当業者に既知の全ての方法によって、組み入れられてよい。
【0104】
本発明の非ヒト動物は、内因性遺伝子が遺伝子組換え的に中断または変化された何れかの動物(ノックアウト動物)および/またはゲノムに、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn/Fe輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質の発現を行う1以上の導入遺伝子がゲノムに導入された何れかの動物を含んでよい。
【0105】
そのような非ヒト動物は、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、両生類、爬虫類等の脊椎動物を含む。好ましい非ヒト動物は、動物のうち非ヒト哺乳類種から選択され、最も好ましくは、ラットおよびマウスを含む齧歯類ファミリー由来の動物、最も好ましくはマウスである。
【0106】
疾病に罹りやすい、または導入遺伝子が疾病を引き起こしている、結果として生じる遺伝子導入非ヒト動物は、疾病を誘導する組成物の同定に使用してよく、および疾病を誘導することが知られるまたは疑われる組成物の病原性の可能性を評価するために使用してよく(Bems, A. J. M.,米国特許第5,174,986号)、その疾病の治療もしくはその症状の回復のために使用してよい組成物の評価に使用してよい(Scottらによる、WO 94/12627)。
【0107】
標的遺伝子は、これらの遺伝子組換え生物において、染色体に組み込まれ、標的タンパク質を過剰発現する。
【0108】
一実施態様において、本発明は、欠陥のあるタンパク質フォールディング機構または凝集しやすいタンパク質の発現による神経学的疾病に関連した、タンパク質のミスフォールディングおよび凝集の症状を表す、遺伝子組換え動物を提供する。変異型ハンチンチン、ベータ−アミロイド、タウ、アルファ−シヌクレイン、変異型アンドロゲン受容体、変異型SODI、変異型アタキシン(ataxin)等といったその他の凝集しやすいタンパク質が、その他の神経学的疾病のモデルに使用してよい。例として、一実施態様において、神経細胞特異的プロモーターを用いて神経細胞においてアルファ−シヌクレインタンパク質を過剰発現する遺伝子組換え生物が使用される。アルファ−シヌクレインの過剰発現は、ミスフォールディングしたタンパク質中間体、タンパク質凝集および神経細胞の変性をもたらす。この遺伝子組換え株は、標的遺伝子(その産物が、神経保護特性を付与し、アルファ−シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集の毒性効果を減少させるかどうかを決定するための、先行するRNAiスクリーニングにより同定された遺伝子)を過剰発現する生物との雑種であってよい。その他のモデルは、導入遺伝子が、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC1タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択される遺伝子の変化した形態であるものが使用される。変化は、発現の増大もしくは減少、または、神経学的疾病の症状をもたらすタンパク質の変異もしくはスプライシングされた形態を含んでよい。
【0109】
神経保護をアッセイするためのモデルにおいて、遺伝子組換え生物は、ドーパミンを含む神経細胞を破壊することが知られる6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)といった神経毒によって処理される。その他の神経毒もまた、このスクリーニング法のために使用してよく、当業者にとって既知である。神経細胞の形態は、毒に曝された後に、蛍光顕微鏡によって日常的にスクリーニングすることができる。
【0110】
例えば、このスクリーニング方法は、6−OHDAの侵襲からドーパミン作動性神経細胞を保護する能力で特徴付けられる1つの遺伝子産物を同定した。C.elegans遺伝子はM7.5(SEQ ID NO:41)と呼ばれ、ヒトのE1様遺伝子(SEQ ID NO:43)に相当する。この遺伝子は、ヒト、線虫、ウシ、ラット、およびマウスの配列でE値がゼロであり、高度な保存性を有する。従って、その他の種の相同体は、神経保護の提供において同様の機能を有するだろうと考えられる。M7.5の過剰発現は、神経毒6−OHDAに曝された後、ドーパミン神経細胞に神経保護を付与する。同様に、トルシン(torsin)タンパク質も、神経毒6−OHDAに曝された後、ドーパミン神経細胞に神経保護を付与する。(Caoら、J Neurosci. 2005 Apr 13;25(15):3801−12)。遺伝子組換え線虫は、その他の遺伝子または化合物の神経保護作用をスクリーニングするためのモデル系を提供する。
【0111】
本願で使用されるように、遺伝子操作によって、細胞が、通常細胞が産生しないまたは細胞が通常低いレベルで産生するタンパク質を作製するようにされたとき、細胞は、「所望のペプチドを発現するよう改変された」と言う。当業者は、ゲノムの、cDNAの、または合成配列の何れかを、真核細胞または原核細胞の何れかに導入しおよび発現させるための手段を容易に採用することが可能である。
【0112】
DNAといった核酸分子は、それが転写および翻訳調節情報を含む配列を含み、そのような配列が、ポリペプチドをコードする核酸配列に「実施可能につなげられた」場合に、ポリペプチドを「発現することができる」と言う。実施可能なつながりとは、そこにおいて調節DNA配列および発現させようとするDNA配列が遺伝子発現可能なように連結したつながりである。
【0113】
本願に記載される核酸分子およびタンパク質は、神経学的疾病の治療のための、治療上の標的を提供する。遺伝子またはタンパク質の欠損または欠陥に起因する神経学的疾病は、遺伝子またはタンパク質の機能の回復によって治療される可能性がある。そのような回復は、遺伝子治療を用いることで、または正常な遺伝子またはタンパク質の機能を回復する化合物を投与することによって、達成してよい。
【0114】
機能的なDNAは、そのような遺伝子にコードされるタンパク質が発現されるやり方および量にて、タンパク質の欠損または欠陥に起因する神経学的疾病に悩むまたは患うそのような患者を治療するのに十分な回数および量で、そのような患者の細胞に提供することが可能である。細胞から失われた遺伝子またはタンパク質を必要とするヒトの患者に、そのような送達を提供するための多くのベクター系が当該分野において既知である。例えば、レトロウイルスシステムが使用可能であり、特に修飾されたレトロウイルスシステムおよび特に単純ヘルペスウイルスシステムが使用可能である(Breakefield, X. O.らによる、New Biologist.(1991)3:203−218; Huang, Q.らによる、Experimental Neurology.(1992)115:303−316; WO93/03743; WO90/09441)。機能的なタンパク質をコードするDNA配列の送達は、障害の原因となる、欠けたまたは変異した遺伝子を効率的に置換するだろう。
【0115】
本発明の別の実施態様において、遺伝子は、細胞中で組換え遺伝子として発現し、その細胞は、哺乳類、好ましくは遺伝子治療が必要なヒトに移植することが可能である。個体に遺伝子治療を提供するために、遺伝子の全部または一部をコードする遺伝子配列がベクターに挿入され、宿主細胞に導入される。別の実施態様において、欠陥のあるまたは機能不全のタンパク質の発現は、RNAiを用いて減少させてよい。そのような方法は、Forteらによって概説されている(Curr Drug Targets. 2005 Feb;6(1):21−9)。
【0116】
遺伝子治療に適し得る疾病の例は、神経変性疾病または障害を含むが、これらに限定されない。そのような障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、ポリグルタミン病、タウオパシー、ハンチントン舞踏病、ジストニア、家族性筋萎縮性側索硬化症、ピック病、進行性核上麻痺、および皮質性変性症(cortical degenatration)を含む。
【0117】
遺伝子治療方法は、表Iによるタンパク質のコーディング配列を患者に導入するために使用することができる(Chattedee and Wongによる、Curr. Top. Microbiol. Immunol.(1996)218:61−73; Zhangによる、J. Mol. Med.(1996)74:191−204; Schmidt−WolfおよびSchmidt−Wolfによる、J. Hematotherapy.(1995)4:551−561; Saughnessyらによる、Seminars in Oncology.(1996)23:159−171; Dunbarによる、Annu. Rev. Med.(1996)47:11−20)。
【0118】
遺伝子治療において使用してよいベクターの例は、欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、またはその他のウイルスのベクターを含むが、これらに限定されない(Mulligan, R. C.による、Science.(1993)260:926−932)。遺伝子を保持するベクターを細胞に導入することができる手段は、マイクロインジェクション、電気穿孔法、形質導入、もしくはDEAE−デキストランを用いた形質移入、リポフェクション、リン酸カルシウム法、または当業者に既知のその他の方法を含むが、これらに限定されない(Sambrook, J.、Fritsch, E. F.、および Maniatis, T.による「分子クローニング、研究室マニュアル(Molecular Cloning. A Laboratory Manual)」(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor))。
【0119】
記載されるスクリーニング方法を用いて発見された治療化合物を含む、本発明による化合物は、神経学的疾病を治療するために投与してよい。一実施態様において、神経学的疾病の症状の治療、減少、または根絶のための治療的有効量の化合物を含む組成物が投与される。当業者はまた、何れかの特定の治療プロトコールのために投与される量は容易に決定することが可能であることが理解できるであろう。投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応等といった有害な副作用を引き起こすほど大きくあるべきではない。一般に、投与量は、個々の医師によって調節され、患者の性別および疾病の程度、必要あれば逆の徴候(counter indications)、ならびにその他のそのような変量によって変化するだろう。免疫活性化を提供するために本発明において使用される投与量は、約0.1μgから約500μgという量を含み、0.5、1.0、1.5、2.0、5.0、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、および450μgを含み、これらの間の全ての範囲および副範囲(sub−range)を含む。そのような量が単一投与量として投与されてよく、または、効果的な連続的追加投与量(subsequent booster doses)を含む療法(regimen)に従って投与されてよく、例えば、本発明による組成物は、一度に、または、数日、数週間、数月および/または数年の期間にわたって連続的に投与することができる。投与量は、医薬的に許容可能な担体中で投与されてよい。
【0120】
また、注射可能な製剤(溶液、懸濁液、乳濁液、使用する際に溶解する固体、等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液体、リポソーム封入剤(liposome inclusions)、軟膏剤、ゲル剤、外部散剤(external powders)、スプレー、吸入散剤(inhalating powders)、点眼剤、眼軟膏、坐薬、腟坐薬等といった投与形態は、投与形態に依存して適切に使用することが可能であり、および、本発明によるペプチドは、適宜に処方することができる。医薬的な製剤形態は、一般的に当該分野において既知であり、例えば、Hanschらの編集による、包括的医化学第5巻(Comprehensive Medical Chemstry, Volume 5)(Pergamon Press 1990)に記述されている。
【0121】
表Iによるタンパク質またはそのリガンドは、非経口的に、注射によって、またはある期間にわたる漸進的な灌流によって投与することが可能である。それは、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、くも膜下腔内に、または皮下に投与することが可能である。化合物が血液脳関門を通過することを保証するその他の方法もまた、化合物の投与に使用することが意図される。
【0122】
非経口的投与のための製剤は、無菌状態の、または、水性もしくは非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油といった植物油、およびオレイン酸エチルといった注射可能な有機酸エステルである。水性担体は、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液を含む。非経口的媒体(parenteral vehicles)は、塩化ナトリウム溶液、リンガーのブドウ糖および塩化ナトリウム溶液(Ringer’s dextrose and sodium chloride)、乳酸化リンガー液(lactated Ringer’s)、または不揮発性油を含む。静脈内媒体は、液体および栄養補充液、電解質補充液を含み、例えば、リンガーのブドウ糖溶液などに基づくものである。保存剤およびその他の添加剤はまた、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート化剤、不活性ガス等を検討することができる(Remington’s Pharmaceutical Science, 16th ed., Eds.: Osol, A., Ed., Mack, Easton PA(1980))。
【0123】
別の実施態様において、本発明は、タンパク質の活性を変化させるのに十分な量の表Iによるタンパク質またはそのリガンド、および医薬的に許容可能な希釈剤、担体、または賦形剤を含む医薬組成物に関する。適切な濃度および投与単位サイズは、上述されるように、当業者によって容易に決定することができる(Remington’s Pharmaceutical Science, 16th ed., Eds.: Osol, A., Ed., Mack, Easton PA(1980); WO 91/19008)。
【0124】
本発明に使用することができる医薬的に許容可能な担体は、医学分野において一般に使用される、賦形剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張剤、防腐剤、麻酔薬等を含むがこれらに限定されない。
【0125】
別の実施態様において、本発明は表Iによるタンパク質または該タンパク質のリガンド(アンタゴニストおよびアゴニストを含む)を、動物(好ましくは、哺乳類(より好ましくは、ヒト))に対して、該動物におけるタンパク質の変化したレベルに影響を与えるのに十分な量で投与する方法に関する。投与したタンパク質またはリガンドは、特異的に、タンパク質が関連する機能に影響する。その上、表Iのタンパク質は脳組織にて発現するため、タンパク質またはリガンドの投与は、脳におけるタンパク質のレベルまたは機能を変化させるために使用することができる。本方法によって治療してよい神経学的障害は、アルツハイマー症、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン増大病、タウオパシー、ハンチントン舞踏病、家族性筋萎縮性側索硬化症、ピック病、進行性核上麻痺(progressive supranuclear palsy)および皮質性変性症といったタンパク質凝集の障害を含む。
【0126】
別の実施態様において、本発明は、サンプル中に表Iに挙げられる核酸またはタンパク質が存在するかを検出するためのキットに関する。一実施態様において、キットは、変化したタンパク質を検出するためのまたは神経学的疾病の傾向もしくは存在を診断するための、試薬およびその使用のための説明書を含む。キットは、上述した核酸プローブを内部に配置している少なくとも1つの容器を含んでよい。好ましい実施態様において、キットはさらに、洗浄試薬および/またはハイブリダイズした核酸プローブの存在を検出することが可能な試薬を含むその他の容器を含む。検出試薬の例は、放射標識したプローブ、酵素プローブ(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および親和標識したプローブ(ビオチン、アビジン、またはストレプトアビジン)を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、キットは、PCR、ハイブリダイゼーションもしくは配列を基準としたアッセイ、または、マイクロアレイのような、それらの何れかの組み合わせを行うことによって、障害を検出するための1以上の試薬を含む。
【0127】
詳細には、区画化されたキット(compartmentalized kit)は、分離した容器に試薬が含まれる何れかのキットを含む。そのような容器は、小さなガラス製容器、プラスティック製容器またはプラスティック製もしくは紙製の一片(strips)を含む。そのような容器は、1つの区画から別の区画への試薬の効率的な移動を可能とし、サンプルおよび試薬が相互汚染するのを防ぎ、それぞれの溶液中の薬剤または溶液を、定量的な方法で、1つの区画から別の区画へと添加することが可能とする。そのような容器は、試験サンプルの受け入れが可能な容器、アッセイに使用されるプローブまたはプライマーを含む容器、洗浄試薬(例えば、リン酸緩衝食塩水、Tris緩衝液等)を含む容器、およびハイブリダイズしたプローブ、結合した抗体、増幅した産物等を検出するために使用される試薬を含む容器を含むだろう。
【0128】
当業者は、本発明に記載される核酸プローブは、当該分野において周知である、確立されたキット型式の1つに容易に取り込むことが可能であることを、容易に認識するだろう。
【0129】
本発明の別の実施態様において、キットは、表Iに挙げられるタンパク質の存在もしくは非存在を検出するために提供される;または表Iに挙げられるタンパク質の存在もしくは非存在に基づく、哺乳類における障害の発症の可能性を検出するために提供される。この特定のキットは、以前に記載した検出方法を実行するために、全ての必要な試薬を含む。
【0130】
例えば、キットは、上述の抗体を含む第1容器手段、および該抗体の結合相手および標識を含むコンジュゲート(conjugate)を含む第2容器手段を含むことができる。
【0131】
キットはまた、上述した第1容器手段、および好ましくは該タンパク質の結合相手および標識を含むコンジュゲートを含む第2容器手段を含んでよい。より明確には、診断用キットには、潜在的に感染した動物またはヒトの血清中の抗体を検出するために、上述したように表Iの一覧によるタンパク質を含む。
【0132】
別の好ましい実施態様において、キットはさらに、1以上の以下のものを含む、1以上のその他の容器を含む:洗浄試薬、および結合した抗体の存在を検出することが可能な試薬。検出試薬の例は、標識した二次抗体、または、代わりに、一次抗体が標識されている場合は、標識した抗体と反応する能力がある、発色団、酵素、もしくは抗体結合試薬を含むが、これらに限定されない。区画されたキットは、上述したように、核酸プローブキットのためであってよい。キットは、例えば、RIAキット、またはELISAキットとすることができる。
【0133】
当業者は、本発明に記載される抗体を、当該分野において周知の確立されたキット型式の1つの取り込むことが容易にできることを容易に理解するだろう。
【0134】
本発明は、特定の例によって、より詳細に記載されるだろう。以下の例は、例示の目的のために提供され、および本発明を何れの方法にも限定したり定義したりするものと意図されない。
【実施例】
【0135】
実施例1:RNAiを用いた、パーキンソン病におけるタンパク質凝集を制御する遺伝子のスクリーニング
アルファ−シヌクレイン::GFPを過剰発現する遺伝子組換えC. elegans株をつくり、蛍光顕微鏡によってアルファ−シヌクレインの凝集の形成を視覚的に検出できるようにした。遺伝子発現はunc−54プロモーターで制御し、体壁に発現するよう誘導される。アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2を含む別の遺伝子組換え線虫を、タンパク質凝集に関係する候補遺伝子のRNAiスクリーニングのために使用した。アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2線虫におけるTOR−2が存在すると、体壁筋細胞におけるアルファ−シヌクレイン::GFP融合タンパク質の凝集が抑えられ、蛍光の拡散が生じる。TOR−2によるタンパク質凝集の同様な抑制が、以前に、ポリグルタミン依存性タンパク質凝集に関して報告されている(Caldwellら、Hum Mol Genet. 2003 Feb 1;12(3):307−19)。この遺伝子組換え生物は、アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2を含む線虫の体壁筋におけるRNAiフィーディング(RNAi feeding)を用いた迅速なスクリーニング法によって、ミスフォールディングの増大の原因となりRNAiによって欠乏させるとアルファ−シヌクレイン凝集を回復させる遺伝子を探すことを可能とする。
【0136】
アルファ−シヌクレインの凝集に対する遺伝子ノックダウンの効果を決定するため、RNAiを用いて、C. elegans遺伝子のライブラリーをスクリーニングした。18,000の細菌株によるこのRNAiライブラリーは、C. elegansでのゲノムワイドなRNAiスクリーニングにおける細菌フィーディング(bacterial feeding)での使用のために購入した(Sanger Centre、ケンブリッジ)。完全なC. elegansゲノムの広範なスクリーニングを行うよりも、ER関連分解(ERAD)、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)、オートファジー、パーキンソン病およびインタラクトーム(interactome)に関係した遺伝子の標的化ならびにマイクロアレイの共発現データにより、スクリーニングにて、タンパク質の凝集に影響する候補分子が同定された。
【0137】
簡潔には、標的遺伝子dsRNAを発現するE. coliの新鮮なカルチャーを、アンピシリンおよびテトラサイクリンを含むLB寒天培地で作製し、一晩増殖させた。休眠(dauer)アルファ−シヌクレイン::GFP線虫の新鮮なカルチャーおよび標的遺伝子を発現するE. coliの3mL細菌カルチャーを次の日に作製した。実験の日に、標的遺伝子ごとに1つの小さいプレートおよび1つの中程度のプレートをIPTGでコートし、次に、細菌カルチャーでコートした。それぞれの物質でコートするごとに、乾燥させる時間を設けた。5体のL4線虫を、それぞれの中程度のプレートに、約42時間、セ氏25度で、置いた。全てのオリジナルの成体線虫を、次に、小さいIPTG/細菌コートプレートに移し9時間置いた後、オリジナルの成体を焼き払った。36時間後、子孫を、結果的な表現型を示しているかを分析した。
【0138】
741を越える、可能性をもった遺伝子標的の群が、タンパク質凝集への関連性に基づいて選択され、最初のRNAiスクリーニングに供された。全ての陽性候補遺伝子を二度目のスクリーニングに供し、偽陽性のものを排除した。最初のおよび二度目のスクリーニングによって113の陽性遺伝子が得られた。凝集の存在のためのアルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2線虫を用いた、これらの741遺伝子の最初のスクリーニングにおいて同定された遺伝子の分布を図1bに示す。
【0139】
また、スクリーニング工程の全段階にて、DJ−1とPINK1との間のマイクロアレイ実験から、候補を同定した。89の候補のサンプルから、既知のパーキンソン病遺伝子DJ−1およびPINK1を共発現するものを選択した。候補分子のオーバーラップが図2aに示されている。2回のRNAiによるスクリーニングの後、オリジナルの89遺伝子から7つの陽性候補がアルファ−シヌクレイン凝集を変化させ、およびDJ−1およびPINK1の両方と共発現する。興味深いことに、2/7の陽性オーバーラップ遺伝子が、仮想(hypothetical)タンパク質をコードしている。
【0140】
加齢に対してより強い効果を示す候補を同定するため、複数回のRNAi分析(1遺伝子当り50体の線虫;2回の反復;80%を超える線虫が凝集の増大を示せば、陽性と判断)および、発生段階の動物における第2の、より厳密な、スクリーニングにより、ノックダウンされると再びヒトアルファ−シヌクレインのミスフォールディングを誘導する、表Iに挙げられた17の候補遺伝子が同定された。これらの遺伝子は、DJ−1、PINK1およびトルシンAのC. elegans相同体;4つのUPS構成成分(1つのE1リガーゼ、3つのE3リガーゼ)、オートファジー機構の4つの構成成分、1つの予想されるシャペロン、1つの転写因子、小胞輸送に関係する1つの遺伝子産物、およびこれまでに機能が知られていない3つの仮想タンパク質である。
【0141】
アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2線虫にて、候補の系統的なRNAiノックダウンに続いて凝集した状態へ復帰するものをスクリーニングすることで、変化する表現型が得られる。これらの表現型は、核周辺の凝集の一時的なクラスター形成を含む。
【0142】
これらの実験による発見は、日常的な実験による、アルファ−シヌクレインの凝集に関連したタンパク質の、信頼できるスクリーニング法を提供する。これらの実験の結果は、病理学的な表現型を引き起こす標的タンパク質内の変異を研究するための標的タンパク質の同一性を提供し、さらにまた、合理的な薬剤設計のためのタンパク質の標的を提供する。
【0143】
実施例2:6−OHDAへの曝露後における、候補遺伝子発現によるドーパミン神経細胞の神経保護
C. elegansは、正確に8つのドーパミン作動性神経細胞を有し、これらは、6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)、ドーパミン類似体、およびこれらの神経細胞において活性酸素種の形成をもたらす神経毒による処理によって、容易に認識可能な分解のパターンを示す。ドーパミン神経細胞における、ヒトトルシンAまたはC. elegans TOR−2のどちらかの過剰発現は、アルファ−シヌクレインの過剰発現または6−OHDA処理に続いて、劇的に神経細胞の変性を抑制することができる(Cao et al, J Neurosci. 2005)。
【0144】
タンパク質凝集のスクリーニングによるデータを、続く、ドーパミン作動性神経保護におけるこれらの遺伝子の潜在的な活性のための第3スクリーニングに優先順位をつけるために使用した。ドーパミン神経細胞中でGFPを発現する遺伝子組換え線虫を構築し、6−OHDAの曝露に続いて大規模に分析した(Nass et al 2002; Cao et al 2005)。曝露後2時間以内、典型的には6時間以内に表現型の変化が表れ、ほとんどのドーパミン神経細胞が完全に変性してしまう。RNAiスクリーニング由来の候補タンパク質をコードするcDNAを、ドーパミンプロモーター(dat−1)の調節の下流にクローン化し、これらの候補パーキンソン病関連遺伝子の何れかが、ドーパミン神経細胞内にて発現したとき、神経保護活性を示すかどうかを判定した。候補の野生型cDNAを、dat−1プロモーターベクターにクローン化し、線虫に注入し、および6−OHDAへの曝露後、神経保護をアッセイした。選択した候補遺伝子を、次に、パーキンソン患者のゲノムDNAのスクリーニングにおいて使用する。
【0145】
さらに、特異的に、候補PD遺伝子で神経保護の証拠をスクリーニングするために、線虫の新たな同質遺伝子系統を設計した。この新たな同質遺伝子系統は、ドーパミン神経細胞のみにおいてGFPを伴ってヒトアルファ−シヌクレインを過剰発現する染色体組み込み型導入遺伝子を含み、発生(development)および加齢(aging)の際にin vivoにて神経変性が評価される。この系統は、C. elegansの発生の成体段階の4日目に約30−40%の変性を示し、アルファ−シヌクレインの素因がドーパミン神経変性に影響する可能性のある、環境的/遺伝的要素の研究のための理想的なツールとなる。このアルファ−シヌクレイン株のドーパミン神経細胞にて相当するcDNAを過剰発現する動物を交雑させ、次に神経保護の証拠を調べることによって、RNAiスクリーニング陽性候補の系統的な評価を行った。この株はまた、アルファ−シヌクレイン依存性分解の小分子阻害剤のメディウムスループット(medium through−put)スクリーニングに使用してよい。
【0146】
材料及び方法
C. elegans株およびプロトコール
線虫を、標準的な方法を使用して取り扱った(Brenner, 1974)。Pdat−1::GFPを、Pdat−1::M7.5[株UA38(baEx38)]またはPdat−1::トルシンAのどちらか一方に、及びPdat−1::TOR−2を野生型C. elegans(N2 Bristol variety)に形質転換して、遺伝子組換え株を作製した。α−シヌクレイン過剰発現株の構築のために、Pdat−1::GFPおよびPdat−1::α−シヌクレイン[株UA18(baEx18)]をN2線虫に注入した。プラスミド構築物のそれぞれの組み合わせに対して、安定的な染色体外配列を発現する複数の線虫株を比較し、3つの代表する株を、6−OHDA実験以外の実験的分析に使用した。その際、安定した全株での最初の分析の後に、1つの代表する遺伝子組換え株を反復実験に使用した。
【0147】
プラスミドの構築および変異誘発
プラスミドを、Gateway(商標)テクノロジー(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア)を用いて構築した。具体的には、unc−54プロモーター領域を、Hind IIIおよびKpn Iを用いた二重の消化によってpPD30.38(Andrew Fire氏より得た)から切り出し、pRN200から増幅したdat−1プロモーター領域断片で置換した(Nass et al., 2002)。生成される新たなベクターを次に、Gateway(商標)テクノロジーを用いて、Gateway(商標)デスティネーション(destination)ベクター、pDEST−DAT−1に転換した。ヒトα−シヌクレインcDNAプラスミドはPhilipp Kahle氏より得た。Gateway(商標)エントリー(entry)ベクターを、M7.5(SEQ ID NO: 41)α−シヌクレイン、GFPをコードするPCR増幅によるcDNA断片を用いて、pDONR201またはpDONR221とのBP反応によって作製した。この後、全ての遺伝子を、それぞれのエントリーベクターとのLR反応によって、pDEST−DAT−1ベクターにクローン化した。
【0148】
免疫ブロッティングのための、C. elegans抽出物の作製
2つの100mm NGMプレート上でほとんどコンフルエントな状態になるまで、それぞれの遺伝子組換え株が成長した後、抽出物を作製した。M9緩衝液で洗浄して線虫を回収し、1.5ml微小遠心チューブにて、5,000xgで1分間遠心分離して、濃縮した。線虫のペレットを、0.5ml線虫溶解緩衝液(100mM Tris, pH 6.8, 2% SDS, 15% グリセロール)に再懸濁し、5分間煮沸して溶解した。このライセートを13,200xgで10分間、再び遠心分離し、上清を回収し、Centricon YM−10カラム(Millipore)を用いて、14,000xg、30分間で濃縮した。タンパク質の濃度は、ビシンコニン酸(bicinchoninic acid)タンパク質アッセイ(Sigma、セントルイス、ミズーリ)を用いて決定した。
【0149】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティング
SDS−PAGEおよびウエスタンブロッティングは、特に記載がない限り以前に記述された方法で行った(Caldwell et al., 2003)。TOR−2の検出には、1:800希釈のウサギ抗TOR−2一次抗体(Caldwell et al., 2003)および1:10,000希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ融合ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Amersham−Pharmacia、ピスカタウエイ、ニュージャージー)を使用した。アクチンの検出には、1:8,000希釈のマウス抗アクチン一次抗体(ICN)および1:10,000希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ融合ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Amersham−Pharmacia、ピスカタウエイ、ニュージャージー)を使用した。GFPの検出には、全量140μgのタンパク質をロードし、1:1000希釈のウサギ抗GFP一次抗体(Clontech、パロアルト、カリフォルニア)および1:10,000希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ融合ヤギ抗ウサギIgG二次抗体(Amersham−Pharmacia、ピスカタウエイ、ニュージャージー)を使用した。
【0150】
6−OHDA曝露および神経細胞変性の定量分析
妊娠中の成体を、2%次亜塩素酸ナトリウム、0.5M NaOHで処理し、胚を単離することにより、年齢を同調させた線虫を得た(LewisおよびFleming, 1995)。これらの胚を、25℃で30時間成育した。L3段階のときに、幼虫を、10分おきに穏やかに揺らして、10mM(または50mM)の6−OHDAおよび2mM(または10mM)アスコルビン酸で1時間インキュベートした(Nass et al., 2002)。次に、線虫を洗浄し、細菌(OP50)を播種したNGMプレートに広げ、6−OHDA曝露から2時間から72時間にわたる時点で評価した。
【0151】
6−OHDA処理の直後、導入遺伝子が組み込まれていない線虫を、蛍光解剖用顕微鏡のもと、GFPの存在を基準に選択し、OP50を播種した新鮮なNGMプレートに移した。それぞれの時点において、30−40体の線虫を2%アガロースパッドに供して、3mMレバミゾールで固定した。線虫を、Endow GFP HYQフィルターキューブ(Chroma)を備えた、Nikon Eclipse E800 落射蛍光(epifluorescence)顕微鏡で試験した。それぞれの分析において、線虫の頭部における4つのCEPドーパミン作動性神経細胞のみを評価した。4つ全てのCEP神経細胞が存在し、それらの神経細胞の作用が完全な状態であれば、線虫は「野生型」であると判断した;4つの神経細胞の樹状突起または細胞体の少なくとも1つが、記載するような欠陥があれば、線虫は、「樹状突起小疱形成(dendrite blebbing)」、「細胞体円形化(cell body rounding)」、または「細胞体喪失(cell body loss)」を有していると判断した。これらの実験は3回繰り返した。MetaMorph Software (Universal Imaging)によって操作されるCool Snap HQ CCDカメラ(Photometrics)によって保存した。
【0152】
アルファ−シヌクレインまたはCAT−2誘導型神経変性分析
α−シヌクレインおよびCAT−2遺伝子組換え株の7日齢動物を得るために、緑の蛍光を有する非組込みL1およびL2線虫を選択し、4日成体段階(孵化から約7日)まで成長させた。それぞれの選択された段階にて、30−40の線虫を、それぞれ非組込み株であるか分析し、導入遺伝子のそれぞれの組み合わせについて、少なくとも3つの安定株の平均を記録した。樹状突起の形態に関わらず、4つ全てのCEP細胞体が保存されていれば、その線虫は野生型であると判断した。
【0153】
結果
候補由来の野生型cDNAを、遺伝子組換えC. elegansの神経保護アッセイにおける評価のための、ドーパミン発現ベクターにクローン化した。オートファジー関連遺伝子産物がRNAiによってノックダウンされると、アルファ−シヌクレインミスフォールディングを増大すること、ならびに、トルシンA相同体、TOR−2の両方が、特にC. elegansドーパミン神経細胞にて過剰発現される場合に、6−OHDA曝露からの劇的な神経保護を示すことの実証によって、このスクリーニング方法は確認された。DA神経細胞における野生型トルシン(Pdat−1::トルシンAおよびPdat−1::TOR−2)の過剰発現は、対照の成虫と比較して、10mMの濃度で少なくとも72時間の6−OHDAに対するDA神経細胞の抵抗性を有意に上昇させた。このスクリーニング方法はまた、6−OHDA侵襲からドーパミン作動性神経細胞を保護する能力で特徴付けられる遺伝子を同定した。C. elegans遺伝子は、M7.5(SEQ ID NO:41)と呼ばれ、ヒトE1様遺伝子(SEQ ID NO:43)に相当する。この遺伝子は、ユビキチン活性化E1酵素様タンパク質ファミリーのメンバーであり、オートファジーにおいて機能する。M7.5 cDNAを、GFP標識したドーパミン神経細胞にて過剰発現させ、6−OHDAの曝露に続く神経保護についてアッセイした。3体の独立したM7.5発現遺伝子組換え株を得た。これらの株3体全てが、6−OHDA誘導酸化ストレスに対するドーパミン神経細胞の劇的な保護を示した。DA神経細胞の神経保護におけるこのタンパク質の作用は、図3に示される。さらに研究を進めることで、発生(development)の早い段階で凝集を示すその他の候補と、動物世代(animal age)のみにて凝集を示すものとが区別されるだろう。
【0154】
実施例3:タンパク質の変化を検出するための、およびヒトにおいてパーキンソン病の傾向または存在を診断するための、顕微鏡を使用する方法
パーキンソン病マイクロアレイの製造
パーキンソン病マイクロアレイは、Affymetrix, Inc.によって使用される、点状マイクロアレイ、または高密度、オリゴヌクレオチドベースのプラットフォームといったような、標準的に市販されるマイクロアレイ技術を用いて作製される。中程度から大量の遺伝子および/または転写物が、分析、即ち発現(または応答)プロファイリングのために選択される。本発明の方法にてモニターすることが可能な核酸配列は、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information )によるGenBank. RTM.データベース(ワールドワイドウェブ、ncbi.nlm.nih.gov)に挙げられるもの、およびその他の公的または商業的データベース(例えば、NCBI EST配列データベース、EMBL Nucleotide Sequence Database; Incyte(パロアルト、カリフォルニア)のLifeSeq.TM.データベース、およびCelera(ロックヴィル、メリーランド)の“Discovery System”.TM.データベース)から提供される配列を含むが、これらに限定されない。本マイクロアレイはまた、表Iによるタンパク質の、ヒト相同体をコードする配列に相当する転写物を含む。アレイは、遺伝子/転写物に相当する全配列、または、サンプル中の遺伝子/転写物の検出を可能とするのに十分な特異性を提供する全配列の一断片もしくは複数の断片を含んでよい。SEQ ID NO:3、7、11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、または67およびそれらの組み合わせ、ならびにそれらの配列の変異体およびスプライスバリアントに相当する転写物または断片がマイクロアレイに含まれる。パーキンソン病に関係するその他の既知の遺伝子を含む、その他の配列がアレイに含まれる。酸化ストレスおよびタンパク質機能障害に関連する遺伝子の配列もまた、マイクロアレイに含まれる。というのは、これらの機構は、パーキンソン病において役割を持つことが知られているためである(Millerら、Neuroscientist. 2005 Dec;11(6):539−49)。SNPsといったパーキンソン病に関係するその他の遺伝子もまた、アレイに含んでよい(Maraganoreら、Am J Hum Genet. 2005 Nov;77(5):685−93)。アレイはまた、陽性対照および陰性対照を含んでよい。
【0155】
パーキンソン病マイクロアレイの使用
生検材料といった個人由来の組織サンプルを個人から採取し、マイクロアレイプローブを作製するための標準的な方法を用いて、サンプルを、標識化ポリヌクレオチドプローブとし、アレイにハイブリダイズし、結合しなかったプローブを洗い落とす。アレイを次に、通常のアレイスキャナーを用いてスキャンして、標識を検出し、野生型または変異体の遺伝子の存在または非存在(質的変化)ならびに患者のサンプル中における遺伝子の発現量の変化(量的変化)を決定する。標準的に市販されるデータマイニングソフトウェア(data mining software)を、分析および遺伝的プロファイルをクラスター分析するために使用する。
【0156】
マイクロアレイの使用による結果は、薬理ゲノミクスおよび予測医学における応用に有用である。複数の患者の遺伝的プロファイルは、症状の程度、疾病の発症および重症度と関連付けられ、パーキンソン病プロファイルのデータベースが編集される。患者のプロファイルもまた、L−DOPA療法といった現在の治療方法に応じて、患者と関連付けられる。新規の治療化合物の有効性もまた、早期の臨床試験の際の患者プロファイルと関連付けられ、新規治療に対する最適な遺伝的プロファイルが決定される。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1a】図1aは、アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2遺伝子組み換え線虫から陽性候補をスクリーニングした結果を表す図を提供する。
【図1b】図1bは、アルファ−シヌクレイン::GFP + TOR−2遺伝子組み換え線虫の第1スクリーニングによる陽性候補の分布を表す図を提供する。
【図2a】図2aは、DJ−1およびPINK1の共発現のマイクロアレイ実験によって同定された候補の重複を表す図を提供する。
【図2b】図2bは、表Iに挙げられる17の候補について、スクリーニングによるこれらの遺伝子の機能の分布から、その分類に有意な重複が存在することが実証されることを示す図を提供する。
【図3a】図3aは、動物世代(animals age)にわたる6−OHDAの曝露後の、ドーパミン神経細胞における神経保護に対する、C. elegans M7.5タンパク質の発現の効果を示すグラフを提供する。
【図3b】図3bは、ドーパミン神経細胞の6−OHDA誘導神経変性に対する、TOR−2とオートファジータンパク質M7.5との間の神経保護特性の比較を示すグラフを提供する。
【図4】図4は、ヒトアルファ−シヌクレインの過剰発現によって誘導されるドーパミン神経細胞の変性に対する、TOR−2およびオートファジータンパク質M7.5の神経保護能力を示すグラフを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第2のタンパク質のミスフォールディングまたは凝集のスクリーニングを行うことを含む、第1のタンパク質における変化を検出する方法であって、
ここにおいて、前記第1のタンパク質が、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択される方法。
【請求項2】
前記変化が、前記第1のタンパク質の発現の増大または減少を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変化が、前記第1のタンパク質における変異を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
個人由来の組織サンプル中の、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質の変化を検出することを含む、神経学的疾病を診断するための方法であって、
ここにおいて、変化が、神経学的疾病の傾向または存在を表す方法。
【請求項5】
さらに、in vivoまたはin vitroモデルにおいて、タンパク質のミスフォールディングまたは凝集の量を決定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が、野生型のまたは変化した形態の前記タンパク質に対して特異的な抗体によって検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が、野生型のまたは変化した形態の前記タンパク質に相当するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対して特異的な、検出可能な標識によって検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が、野生型のまたは変化した形態の前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して特異的なプローブを含むマイクロアレイによって検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
神経学的疾病を治療するための化合物のスクリーニングのための方法であって、
標的化合物と、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質とを接触させること、および
前記化合物が存在しない場合での前記タンパク質の活性における変化を検出することを含む方法。
【請求項10】
活性における前記変化が、前記タンパク質の発現の増大または減少を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、少なくとも1つの第2のタンパク質のミスフォールディングまたは凝集を検出することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
さらに、少なくとも1つの第2のタンパク質のミスフォールディングおよび凝集を減少させるために、神経学的疾病の動物モデルに前記化合物を投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
さらに、動物モデルにおける神経保護を提供するために、神経学的疾病の動物モデルに前記化合物を投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成酵素阻害剤、およびナトリウムチャネル遮断剤から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、葉酸合成酵素阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤およびナトリウムチャネル遮断剤から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
神経学的疾病を治療するための薬剤の製造における、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質の使用であって、ここにおいて、前記薬剤が、神経学的疾病の症状を治療するために有効な量の前記タンパク質を含む使用。
【請求項17】
治療を必要とする個人において、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択される第1のタンパク質の活性を変化させることを含む、神経学的疾病を治療するための方法。
【請求項18】
ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択される第2のタンパク質を発現するベクターを、治療を必要とする個人に投与することによって、前記第1のタンパク質の活性を変化させる、請求17に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質が、機能不全、変性または死から、神経細胞を保護する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
化合物が存在しない場合における前記第1のタンパク質の活性を変化させるための化合物を投与することによって、前記第1のタンパク質の活性を変化させる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記神経学的疾病が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー症、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン増大病(polyglutamine expansion disease)、脊髄小脳変性症(spincocerebellar ataxia)、球脊髄性筋萎縮症、海綿状脳症、タウオパシー(tauopathy)、ハンチントン舞踏病、またはジストニアから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記神経学的疾病に罹りやすい個人における症状の発生の前に、前記第1のタンパク質の活性を変化させる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物が、トポイソメラーゼII阻害剤、細菌性トランスペプチダーゼ阻害剤、カルシウムチャネル拮抗薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、葉酸合成酵素阻害剤、およびナトリウムチャネル遮断剤から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が医薬的に許容可能な担体中で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が、吸入的、経皮的、経口的、経直腸的、経粘膜的、経腸的または非経口的経路によって投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記神経学的疾病に罹りやすい個人における症状の発生の前に、前記化合物が投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
野生型動物における場合よりも活性が変化した、ユビキチン-プロテアソーム分解系タンパク質、オートファジータンパク質、分子シャペロン、転写因子、小胞輸送タンパク質、Mn2+/Fe2+輸送体、HSPC117タンパク質、アセチルコリン受容体サブユニット、DJ−1タンパク質およびPINK−1タンパク質から選択されるタンパク質を含む、遺伝子組換え動物。
【請求項28】
前記活性の変化が、前記タンパク質の発現の増大または減少を含む、請求項27に記載の遺伝子組換え動物。
【請求項29】
前記活性の変化が、前記タンパク質の配列における変異を含む、請求項27に記載の遺伝子組換え動物。
【請求項30】
請求項1、4、9、および17の何れか1項に記載の方法とともに使用するためのキット。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531019(P2008−531019A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557245(P2007−557245)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/007002
【国際公開番号】WO2006/091964
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(504474220)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アラバマ・フォー・アンド・オン・ビハーフ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・アラバマ (4)
【Fターム(参考)】