説明

タンパク質の能力の改良方法

本発明はある関心の対象となる環境条件においてタンパク質の動作を最適化するためにタンパク質を操作する方法を提供する。ある実施の態様において、本発明は特定の環境条件においてその触媒活性を最適化するために酵素を操作する方法を提供する。ある好ましい実施の態様において、本発明は酵素(例えば、金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ)の表面電荷及び/又は表面電荷分布を変え、当初の又は親酵素と比較して洗剤製剤において改良された能力を示す酵素変異体を得る方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は2007年6月6日に出願された米国仮特許出願第60/933,307号、第60/933,331号 及び第60/933,312号の優先権の利益を主張するものであり、これらの出願はその全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明はある関心の対象となる環境条件においてタンパク質の動作を最適化するためにタンパク質を操作する方法を提供する。ある実施の態様において、本発明は特定の環境条件においてその触媒活性を最適化するために酵素を操作する方法を提供する。ある好ましい実施の態様において、本発明は酵素(例えば、金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ)の表面電荷及び/又は表面電荷分布を変え、当初の又は親酵素と比較して洗剤製剤において改良された能力を示す酵素変異体を得る方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
その自然の環境外で機能するタンパク質の特性はしばしば次善のものである。例えば、酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等)はしばしば洗濯洗剤において繊維から汚れを落とすために用いられ、その洗剤は典型的には複雑な活性成分の組み合わせを含む。事実、殆んどの洗浄用製品は、界面活性剤系、漂白剤、ビルダー、汚れ抑制剤、汚れけん濁剤、汚れ剥離剤、光学的光沢剤、軟化剤、分散剤、染料転移抑止化合物、研磨剤、殺菌剤、及び香水並びに洗剤用酵素を含む。この様に、昨今の洗剤の多様さに関わらず、一部は、酵素の能力が次善のものに留まるため汚れによっては完全に取除くのが困難なものが多くある。酵素の開発で多くの研究がされているにも関わらず、特定の用途及び条件下で用いるタンパク質を得るためにタンパク質を操作する方法が求められる。事実、その商業上の応用においてその能力を最適化するために、その静電特性を急速にかつシステマチックに調整するための方法が求められる。洗剤溶液中で改良された活性、安定性、溶解性を得るために、これらに限定されるものではないが、特に、リパーゼ、アミラーゼ、クチナーゼ、マンナーゼ、オキシドレダクターゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及び他の酵素を含み工業的に有用な酵素を操作する方法が求められる。
【発明の概要】
【0004】
本発明はある関心の対象となる環境条件においてタンパク質の動作を最適化するためにタンパク質を操作する方法を提供する。ある実施の態様においては、本発明は特定の環境条件においてその触媒活性を最適化するために酵素を操作する方法を提供する。ある好ましい実施の態様において、本発明は酵素(例えば、金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ)の表面電荷及び/又は表面電荷分布を変え、当初の又は親酵素と比較して洗剤製剤において改良された能力を示す酵素変異体を得る方法を提供する。
【0005】
ある実施の態様において、本発明はタンパク質、特に酵素において電化置換の方法(charge substitution)を提供する。ある好ましい実施の態様においては、本発明は改良された洗濯能力を持つ酵素を生成する方法を提供する。本発明は他のタンパク質のみならず、種々の酵素を操作する場合に用いることができる。特に、本発明は洗浄(例えば、洗濯、食器、硬い表面を持つ物など)を含み、産業で用いられる改良された酵素の開発で使用されるがこれに限定されるものではない。しかし、本発明は特定の酵素又はタンパク質に限定することを意図するものではない。
【0006】
本発明は親金属プロテアーゼに比べて改良された洗濯能力を持つ中性金属プロテアーゼ変異体を作る方法を提供し以下を含む:親中性金属プロテアーゼの一以上の位置のアミノ酸残基を置換し親に比べてより強いプラス又はマイナスの電荷を持つ中性金属プロテアーゼを生成する。ある特に好ましい実施の態様においては、本発明の方法はさらに変異体の洗濯能力を試験して、汚れを落とす親と変異体の能力を比較し、親の洗濯能力が1.0とすると、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成することを含む。更なる実施の態様においては、本発明は改良された洗濯能力を持つ変異体を生成する方法を提供する。ある実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼは野生成熟形態の中性金属プロテアーゼである。ある他の実施の態様においては、変異体はバチルス科(Bacillaceae)中性金属プロテアーゼに由来する。ある好ましい実施の態様においては、変異体はバチルス属(Bacillus)中性金属プロテアーゼに由来する。ある特に好ましい実施の態様においては、洗濯能力は6.5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある好ましい実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある他の好ましい実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼ中の一以上の位置は約50%より大きい溶媒接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある他の好ましい実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼ中の一以上の位置は約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。
【0007】
本発明はまた親中性金属プロテアーゼに比べて改良された洗濯能力を持つ中性金属プロテアーゼ変異体を生成する方法を提供し以下を含む:親中性金属プロテアーゼの一以上の位置のアミノ酸残基を置換し、親に比べてより強いプラスの電荷又はより小さいマイナスの電荷を持つ中性金属プロテアーゼを生成し;親中性金属プロテアーゼの一以上の位置でアミノ酸残基を置換し、親と比べてより大きいマイナスの電荷を持ち、又はより小さいプラスの電荷を持つ中性金属プロテアーゼ変異体を生成する。ある好ましい実施の態様においては、この方法はさらに汚れを除去するために親と変異体との能力を比べることにより変異体の洗濯能力を試験することを含み、その場合親の洗濯能力が1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成する。更なる実施の態様においては、この方法は改良された洗濯能力を持つ変異体を生成することを含む。このためのステップは任意の好適な順序で実施できると考える。ある実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼは野生成熟形態の中性金属プロテアーゼである。ある他の実施の態様においては、変異体はバチルス科(Bacillaceae)中性金属プロテアーゼに由来する。ある好ましい実施の態様においては、変異体はバチルス属(Bacillus)中性金属プロテアーゼに由来する。ある特に好ましい実施の態様においては、洗濯能力は6.5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある好ましい実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある代替的好ましい実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼの一以上の位置は約50%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある別の好ましい実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼ中の一以上の位置は約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、そしてある別の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は塩基性アミノ酸残基により置換される。ある実施の態様においては、種々の置換の組み合わせが提供される。他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換される。さらに他の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換される。さらに他の実施の態様においては、親中性金属プロテアーゼ中の少なくとも一つのアミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、親と比べて同じ電荷を持つ中性金属プロテアーゼを生成する。本発明は特定の置換の組み合わせに限定されるものではない。また置換は特定の順序で実施されねばならないものではない。
【0008】
本発明は親セリンプロテアーゼに比べて改良された洗濯能力を持つセリンプロテアーゼ変異体を作る方法を提供し、以下を含む:親セリンプロテアーゼの一以上の位置のアミノ酸残基を置換し、親に比べてより大きいプラスの電荷を持ち又はより大きいマイナスの電荷を持つセリンプロテアーゼ変異体を生成する。ある特に好ましい実施の態様においては、この方法はさらに汚れを除去するために親と変異体との能力を比べることにより変異体の洗濯能力を試験することを含み、その場合親の洗濯能力が1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成する。更なる実施の態様においては、この方法は改良された洗濯能力を持つ変異体を生成する方法を提供する。ある実施の態様においては、親セリンプロテアーゼは野生成熟形態のセリンプロテアーゼである。ある他の実施の態様においては、変異体はバチルス科(Bacillaceae)セリンプロテアーゼに由来する。ある好ましい実施の態様においては、変異体はバチルス属(Bacillus)セリンプロテアーゼに由来する。ある特に好ましい実施の態様においては、洗濯能力は6.5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある好ましい実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある代替的好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼの一以上の位置は約50%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある別の好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼ中の一以上の位置は約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。
【0009】
本発明はまた親セリンプロテアーゼに比べて改良された洗濯能力を持つセリンプロテアーゼ変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:親セリンプロテアーゼの一以上の位置のアミノ酸残基を置換し、親に比べてより強いプラスの電荷又はより小さいマイナスの電荷を持つセリンプロテアーゼを生成し;親セリンプロテアーゼの一以上の位置でアミノ酸残基を置換し、親と比べてより大きいマイナスの電荷を持ち又はより小さいプラスの電荷を持つセリンプロテアーゼ変異体を生成する。ある好ましい実施の態様においては、この方法はさらに汚れを除去するために親と変異体との能力を比べることにより変異体の洗濯能力を試験することを含み、その場合親の洗濯能力を1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成する。更なる実施の態様においては、この方法は改良された洗濯能力を持つ変異体を生成することを含む。このためのステップは任意の好適な順序で実施できると考える。ある実施の態様においては、親セリンプロテアーゼは野生成熟形態のセリンプロテアーゼである。ある他の実施の態様においては、変異体はクロコッカス亜種(Micrococcineae)セリンプロテアーゼに由来する。ある好ましい実施の態様においては、変異体はセルロモナス(Cellulomonas)セリンプロテアーゼに由来する。ある特に好ましい実施の態様においては、洗濯能力は6.5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある好ましい実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある代替的好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼの一以上の位置は、約50%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある別の好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼ中の一以上の位置は、約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、さらにある別の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は塩基性アミノ酸残基により置換される。ある実施の態様においては、種々の置換の組み合わせが提供される。他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換される。さらに他の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸により置換される。さらに他の実施の態様においては、親セリンプロテアーゼ中の少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、親と比べて同じ電荷を持つ中性金属プロテアーゼ変異体を生成する。本発明は特定の置換の組み合わせに限定されるものではない。また置換は特定の順序で実施されねばならないものではない。
【0010】
本発明はまた親セリンプロテアーゼに比べて改良された洗濯能力を持つセリンプロテアーゼ変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:親セリンプロテアーゼの一以上の位置のアミノ酸残基を置換し、親に比べてより強いプラスの電荷又はより小さいマイナスの電荷を持つセリンプロテアーゼを生成し;親セリンプロテアーゼの一以上の位置でアミノ酸残基を置換し、親と比べてより大きいマイナスの電荷を持ち又はより小さいプラスの電荷を持つセリンプロテアーゼ変異体を生成し、そしてこれらのステップにより生成されたセリンプロテアーゼを得る。更なる実施の態様においては、この方法は汚れを除去するために親と変異体との能力を比べることにより変異体の洗濯能力を試験することを含み、その場合親の洗濯能力を1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成する。更なる実施の態様においては、この方法は改良された洗濯能力を持つ変異体を生成することを含む。このためのステップは任意の好適な順序で実施できると考える。ある実施の態様においては、親セリンプロテアーゼは野生成熟形態のセリンプロテアーゼである。ある他の実施の態様においては、変異体はクロコッカス亜種(Micrococcineae)セリンプロテアーゼに由来する。ある好ましい実施の態様においては、変異体はセルロモナス(Cellulomonas)セリンプロテアーゼに由来する。ある特に好ましい実施の態様においては、洗濯能力は6.5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある好ましい実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある代替的好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼの一以上の位置は、約50%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある別の好ましい実施の態様においては、親セリンプロテアーゼ中の一以上の位置は、約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ位置である。ある好ましい実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、さらにある別の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は塩基性アミノ酸残基により置換される。ある実施の態様においては、種々の置換の組み合わせが提供される。他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換される。さらに他の実施の態様においては、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸により置換される。さらに他の実施の態様においては、親セリンプロテアーゼ中の少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、親と比べて同じ電荷を持つ中性金属プロテアーゼ変異体を生成する。本発明は特定の置換の組み合わせに限定されるものではない。また置換は特定の順序で実施されねばならないものではない。
【0011】
本発明は親タンパク質と比べて改良された能力を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:親タンパク質の一以上の位置の少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親タンパク質に比べてより強いプラス、より強いマイナス、より弱いプラス又はより弱いマイナスの電荷を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を作り出す。ある実施の態様においては、修飾は、置換、付加及び/又は欠失を含み、他の実施の態様においては、修飾は化学的修飾を含む。ある実施の態様においては、タンパク質は酵素である。ある特に好ましい実施の態様においては、酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである。あるさらに特に好ましい実施の態様においては、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ又は中性金属プロテアーゼである。ある別の実施の態様においては、少なくとも一つのタンパク質変異体の能力は少なくとも一つの関心の対象である試験により評価される。更なる実施の態様においては、関心のある少なくとも一つの試験は基質結合、酵素抑制、発現レベル、洗剤安定性、熱安定性、反応速度、反応の範囲、熱活性、でんぷん液化、エステル加水分解、酵素漂白、洗濯能力、バイオマス分解、溶解度、キレート安定性及び/又は糖化の測定を含む。さらに別の実施の態様においては、少なくとも一つのタンパク質変異体は親タンパク質に比べて、少なくとも一つの関心の対象である試験において改良された能力を示す。
【0012】
本発明は親酵素と比べて改良された能力を持つ少なくとも一つの酵素変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:親酵素の一以上の位置の少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素に比べてより強いプラス、より強いマイナス、より弱いプラス又はより弱いマイナスの電荷を持つ少なくとも一つの酵素変異体を生成することである。ある実施の態様においては、修飾は置換、付加及び/又は欠失を含み、他の実施の態様においては、修飾は化学的修飾を含む。ある実施の態様においては、本方法は、酵素変異体及び親酵素の能力指数を提供するために、さらに酵素変異体及び親酵素の洗濯能力を試験することを含む。ある実施の態様においては、酵素変異体の能力指数は1.0よりも大きい値であり、親酵素の洗濯能力は1.0の能力指数である。ある特に好ましい実施の態様においては、本方法はさらに改良された洗濯能力を持つ酵素変異体を生成することを含む。ある別の実施の態様においては、酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである。ある好ましい実施の態様においては、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ又は中性金属プロテアーゼである。ある特に好ましい実施の態様においては、プロテアーゼはバチルス(Bacillus)由来のプロテアーゼである。さらに別の実施の態様においては、洗濯能力は5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある他の実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある他の実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ冷水液体洗剤で試験される。ある実施の態様においては、置換の位置は、約25%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である。ある別の実施の態様においては、置換の位置は約50%又は約65%より大きい、溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である。
【0013】
本発明は親酵素と比べて改良された能力を持つ酵素変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:a) 親酵素の一以上の位置の少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素に比べてより強いプラス、より強いマイナス、より弱いプラス又はより弱いマイナスの電荷を持つ第一の酵素変異体を生成すること、及びb) 親酵素の一以上の位置の少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素に比べてより強いプラス、より強いマイナス、より弱いプラス又はより弱いマイナスの電荷を持つ第二の酵素変異体を作り出すことである。ある実施の態様においては、修飾は置換、付加及び/又は欠失を含み、他の実施の態様においては、修飾は化学的修飾を含む。ある別の実施の態様においては、ステップは複数の酵素変異体を生成するために繰り返される。ある他の実施の態様においては、親酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである。ある好ましい実施の態様においては、プロテアーゼは中性金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼである。ある特に好ましい実施の態様においては、親酵素はバチルス(Bacillus)プロテアーゼである。
【0014】
ある他の実施の態様においては、本方法は、酵素変異体及び親酵素の洗濯能力を試験することを含み、そして親と変異酵素の洗濯能力試験での汚れを除去する能力を比べることを含む。その場合親酵素の洗濯能力を1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異体は1.0より大きい値を達成する。ある実施の態様においては、本方法は親酵素と比べて改良された洗濯能力を持つ酵素変異体を生成することを含む。ある好ましい実施の態様においては、親酵素はセリンプロテアーゼである。ある特に好ましい実施の態様においては、セリンプロテアーゼはバチルス(Bacillus)由来のセリンプロテアーゼ又はセルロモナス(Cellulomonas)セリンプロテアーゼである。さらに別の実施の態様においては、洗濯能力は5から12.0のpHを持つ粉末又は液体洗剤組成物で試験される。ある他の実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ液体洗濯洗剤で試験される。ある他の実施の態様においては、洗濯能力は塩基pHを持つ冷水液体洗濯洗剤で試験される。ある他の実施の態様においては、置換の位置は約25%より大きい、溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である。ある別の実施の態様においては、置換の位置は約50%又は約65%より大きい、溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である。
【0015】
ある実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換され、他の実施の態様においては、少なくとも一つの酸性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換され、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換され、少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換され、及び/又は、親酵素中の少なくとも一つの中性アミノ酸残基は少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、親酵素に比べて同じ電荷を持つ酵素変異体を生成する。所望により、任意の好適な置換の組み合わせは本発明において使用可能であると考える。
【0016】
本発明はまた親タンパク質と比べて改良された能力を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成する方法を提供し、以下を含む:親タンパク質の一以上の位置の少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親タンパク質に比べてより強いプラス、より強いマイナス、より弱いプラス又はより弱いマイナスの電荷を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成することであり、そして一以上の位置は約25%より大きい、溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ。ある実施の態様においては、一以上の位置は、親タンパク質及び少なくとも一つの追加のタンパク質を含む相同タンパク質配列のアミノ酸アラインメント中で非保存性である。ある実施の態様においては、親タンパク質は酵素である。
【0017】
ある特に好ましい実施の態様においては、酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである。
【0018】
ある別の実施の態様においては、改良された能力は基質結合、酵素抑制、発現、洗剤中の安定性、熱安定性、反応速度、反応の範囲、熱活性、でんぷん液化、バイオマス分解、糖化、エステル加水分解、酵素漂白、洗濯能力、溶解度、キレート安定性及び/又は繊維修飾を含む。ある別の実施の態様においては、修飾は置換、添加、及び/又は欠失を含み、他の実施の態様においては、修飾は化学的修飾を含む。ある実施の態様においては、少なくとも一つの置換は親タンパク質と比べて0、−1、又は−2のネット電荷の変化を含み、他の実施の態様においては、少なくとも一つの置換は親タンパク質と比べて+1、又は+2のネット電荷の変化を含む。さらにある実施の態様においては、親タンパク質中の少なくとも一つの置換は親タンパク質に比べて0、−1、又はー2のネット電荷の変化を含み、親タンパク質中の少なくとも一つの更なる置換は親タンパク質と比べて+1、又は+2のネット電荷の変化を含む。ある他の実施の態様においては、タンパク質変異体は親タンパク質と比べて+1、又は+2のネット電荷の変化を含み、他の実施の態様においては、タンパク質変異体は親タンパク質に比べて0、−1、又はー2のネット電荷の変化を含む。ある他の実施の態様においては、置換の位置は約50%又は約65%より大きい、溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1AはASP変異体の相対的血液、ミルク、インク(BMI)ミクロスオッチ活性(最良の能力を持つものに関して正規化された)を、AATCC液体洗剤(クロ三角)及び相当するpH及び伝導率(5mM HEPES pH8.0NaCl)の緩衝液(白丸)中で測定した野生型ASPと比較したネット電荷の変化の関数として表したものである。同様に、図1Bは相対的BMIのミクロスオッチ活性をASP組み合わせ電荷ライブラリー(combinatorial charge library (CCL))の野生型と比較したネット電荷の変化の関数として表したものである。
【図2】図2はASP変異体の相対的BMIミクロスオッチ活性(最良の能力を持つものに関して正規化された)を、5mM HEPES pH8.0NaClの各濃度(2.5 mM (白丸), 16 mM (灰色丸)及び100 mM (黒丸))中で測定した野生型ASPと比較したネット電荷の変化の関数として表したものである。
【図3】図3Aは北アメリカ洗濯洗剤のFNA CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。同様に図3Bは北アメリカ洗濯洗剤のGG36 CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。
【図4】図4Aは西ヨーロッパ液体洗濯洗剤中のFNA CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。同様に図4Bは西ヨーロッパ液体洗濯洗剤中のGG36 CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。
【図5】図5Aは日本の粉せっけん洗剤中のFNA CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。同様に図5Aは日本の粉せっけんのGG36 CCLのBMI洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。
【図6】図6Aは自動食器洗い洗浄洗剤でのFNA CCLの焼いた卵黄に対する洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。同様に図6Bは自動食器洗い洗浄洗剤中でのGG36 CCLの焼いた卵の洗浄能力を電荷の変化の関数として表す。
【図7】図7AはAmyS-S242Q CCLのBODIPYでん粉での特定の酵素活性を電荷の変化の関数として表す。同様に図7Bは親AmyS酵素との関係での、電荷の変化のラダーの−12から+4に亙るAmySの表面電荷変異体のコーンスターチ液化後の粘度を表す。
【図8】図8はバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)でのASP変異体の発現レベルを野生型ASPと比較したネット電荷の変化の関数として表す。
【図9】図9はFNA変異体のLAS/EDTA安定性を親FNAとの関係でネット電荷の変化の関数として表す。
【図10】図10はASP変異体の熱安定性を野生型ASPと比較したネット電荷の変化の関数として表す。
【図11】図11は第一AmyS電荷ラダーの熱安定性を野生型AmySと比較した電荷の変化の関数として表す。
【図12】図12は第一AmyS電荷ラダーの米でん粉の洗浄活性をpHの関数として示す。
【0020】
pH 3.0-4.25は200 mM Naギ酸塩 + 0.01% Tween-80によるものである。pH 4.25-5.5は200 mM Na酢酸塩 + 0.01% Tween-80によるものである。データは滴定曲線に適合し、それぞれが単一のpKa値を持つ。
【図13】図13は、図13に於いて決定されたpKa値を野生型AmySと比較した電荷の変化に対してプロットしたものを表す。
【発明の一般的な説明】
【0021】
本発明はある関心の対象となる環境条件においてタンパク質の動作を最適化するためにタンパク質を操作する方法を提供する。ある実施の態様においては、本発明は特定の環境条件においてその触媒活性を最適化するために酵素を操作する方法を提供する。ある好ましい実施の態様において、本発明は酵素(例えば、金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ)の表面電荷及び/又は表面電荷分布を変え、当初の又は親酵素と比較して洗剤製剤において改良された能力を示す酵素変異体を得る方法を提供する。
【0022】
プロテアーゼ スブチリシンは洗濯洗剤で使用される主要な酵素であり、世界で恐らく最も広く使用されている。ほぼ20年前、表面静電効果によりスブチリシンの触媒活性を調節することができることが知られている(例えば、Russell及びFersht, Nature 328:496-500 [1987]を参照)。より最近になり、スブチリシンのネット電荷を変化させる変異が洗剤の洗濯能力に劇的な効果を与えることが観察された(例えば、EP Patent No. 0 479 870 Blを参照願いたい。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。この有利な効果はスブチリシンのpI(等電点)を洗浄液のpHの方向に動かすことによると信じられていた。しかし、後の研究の結果、この結論は必ずしも全ての場合に適用されるものではないことが判明した(例えば、米国特許第6,673,590 Blを参照。この文献は参照により本明細書に組み入れられる)。この特許が示す様に、スブチリシンの電荷の変異の効果は洗剤の濃度に極めて大きく依存し、変異は親スブチリシンのpIを下げ、それにより低い洗剤濃度でより効果的な酵素を提供し、変異はまたpIを上昇させ、それにより高い洗剤濃度でより効果的な酵素を提供する。洗濯液中の洗剤濃度は世界の地域により非常に大きく変わるため、これは非常に役立つ。このようにスブチリシンの洗濯能力に対する最適のpIがあり、それは洗濯液中のpH及び洗剤濃度に依存することが当業者に明らかになって来た。さらに洗濯洗剤中のスブチリシンの活性を向上させるための努力について記述されている(米国特許出願公開公報第 2005/0221461を参照)。驚くことには、親スブチリシンと同じネット静電電荷を持つスブチリシン変異体は、高い及び低い洗剤濃度両方の洗濯条件下で洗濯能力を向上させることが判明した。
【0023】
特に断らない限り、本発明においてはタンパク質操作、分子生物学、微生物学、及び組み換えDNAで通常使用される従来の技術を用い、これらの技術は当業者の常識の範囲内にある。その様な技術は当業者に知られており、また当業者に知られている多くの書籍及び参考文献に記載されている。本明細書に記載の全ての特許、特許出願、論文及び刊行物は参照により本明細書に組み入れられる。
【0024】
本明細書において、他の意味を持つものとして規定しない限り、本明細書の全ての技術及び科学用語はこの発明が関係する技術分野の当業者により通常理解されると同じ意味を持つ。本明細書に記載のこれらの方法と同様又は同等な方法及び材料は、本発明の実施に使用することができるが、本明細書では好ましい方法及び材料が記載されている。したがって、以下に続いて定義される用語は明細書を全体として考察することにより、より完全に把握することができる。
【0025】
また、本明細書で使用する単数を表わす「a」「an」及び「the」は、文意より明確に異なる意味に解せられない限りその複数形をも含む。他に断らない限り、各々、核酸は左から右へ5’ から3’の方向へ記載され;アミノ酸配列は左から右へ、アミノ基からカルボキシ基の方向に記載される。本発明は記載された特定の方法論、手順、及び試薬に限定されるものではないことを理解するべきである。これらは当業者により使用される状況により変わりうるからである。
【0026】
本明細書を通じ記載されている各最大限界数値は、その下限数値が本明細書に記載されている様に、各下限値を含んでいることを意図している。本明細書を通じ記載されている各最小限界数値は、その上限限界値が本明細書に記載されている様に、各上限値を含んでいることを意図している。本明細書を通じ記載されている各数値範囲は、そのより狭い数値範囲が、全て本明細書に記載されている様に、その様なより広い数値範囲内にある各狭い数値範囲を含む。
【0027】
更に、本明細書に記載の各見出しは、本発明の種々の特徴又は実施の態様を限定するものではなく、本発明は明細書を全体として考察することにより把握することができる。したがって、これに直ちに続く定義は明細書を全体として考察することにより更に十分に理解される。しかし、本発明の理解の促進を図るために、多数の用語を以下に定義する。
【0028】
定義
本明細書で用いる「プロテアーゼ」(protease)及び「タンパク質分解活性」(proteolytic activity)はペプチド又はペプチド結合を持つ基質を加水分解する能力を示すタンパク質又はペプチドを言う。タンパク質分解活性を測定するための多くの知られた手順が存在する(例えば、Kalisz,「微生物プロチナーゼ」(Microbial Proteinases)Fiechter (編纂), Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology, [1988]を参照)。例えば、タンパク質分解活性は比較アッセイにより確認しても良く、それにより市販の基質を加水分解するプロテアーゼの各能力を分析する。その様なプロテアーゼ及びタンパク質分解活性の分析で有用な代表的な基質はジメチル カゼイン(Sigma C-9801), 牛のコラーゲン (Sigma C-9879), 牛のエラスチン(Sigma E- 1625)及び牛のケラチン (ICN Biomedical 902111)を含むがこれに限定されるものではない。これらの基質を使用する熱量アッセイは技術分野で良く知られている(例えば、WO 99/34011及び米国特許第6,376,450号を参照願いたい。両文献は参照により本明細書に組み入れられる。)pNAアッセイ(例えば、Del Mar他、Anal Biochem, 99:316-320 [1979]を参照願いたい)はまた、勾配溶離中に回収される部分の活性酵素濃度を決定するのに用いることが出来る。このアッセイは、酵素が可溶合成基質、スクシニルーアラニンーアラニンープロリンーフェニルアラニンーp−ニトロアニリド(sAAPF-pNA)を加水分解するに連れてp−ニトロアニリンが放出される速度を測定する。加水分解反応から黄色の生成される速度が分光光度計において410nm波長で測定され、これは活性酵素濃度に比例する。さらに280nmでの吸光測定は全タンパク質濃度の決定に用いることができる。活性酵素/全タンパク質の比率は酵素純度を示す。
【0029】
本明細書で用いる、「ASPプロテアーゼ」(ASP protease)、「Aspプロテアーゼ」(Asp protease)及び「Asp」は、本明細書及び米国特許出願第10/576,331号に記載のセリン プロテアーゼを指す。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。ある好ましい実施の態様においては、Aspプロテアーゼは、本明細書において、セルロモナス種(Cellulomonas strain)69B4から得られる69B4プロテアーゼとして設計されたプロテアーゼである。この様に、好ましい実施の態様においては、「69B4プロテアーゼ」(69B4 protease)の用語は配列番号8で提供されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸を持つセルロモナス種(Cellulomonas strain)69B4(DSM 16035)に由来する天然発生成熟プロテアーゼを指す。他の実施の態様においては、本発明はASPプロテアーゼの部分を提供する。
【0030】
「セルロモナス プロテアーゼ 同族体」(Cellulomonas protease homologue)の用語はセルロモナス種69B4又はその様な天然発生プロテアーゼをコードするポリヌクレオチド配列に由来する成熟プロテアーゼと実質的に同一のアミノ酸配列を持つ天然発生プロテアーゼを指し、そのプロテアーゼはその様な核酸によりコードされるセリンプロテアーゼの機能的特徴を保持している。ある実施の態様においては、これらのプロテアーゼの相同体は「セルロモナジン」(cellulomonadin)と呼ばれる。
【0031】
本明細書で用いる「ASP変異体」(ASP variant)、「ASP プロテアーゼ変異体」(ASP protease variant)及び「69B プロテアーゼ変異体」(69B protease variant)は野生型ASP,特にその機能において類似するプロテアーゼに関して使用されるが、そのアミノ酸配列において、野生型プロテアーゼの配列と異なる変異を持つ。
【0032】
本明細書で用いる「セルロモナスssp」(Cellulomonas ssp)は セルロモナダセアエ科(Family Cellulomonadaceae) 、マイクロコッカス亜目 (Suborder Micrococcineae)、アクチノミセターレス目(Order Actinomycetales)
アクチノバクテリア網(Class Actinobacteria)のメンバーとして分類されるグラム陽性細菌であるセルロモナス属内の全ての種を指す。セルロモナス属は分類状の再編成を受けていると認められる。この様に、属は再分類された種を含むことが予定されている。
【0033】
本明細書で用いる「ストレプトマイセスssp」(Streptomyces ssp)は「ストレプトマイセス」属内の全ての種を指し、それはストレプトマイセス科(Family Streptomycetaceae)、ストレプトマイセス亜目(Suborder Streptomycineae)、アクチノミセターレス目、アクチノバクテリア網のメンバとして分類されるグラム陽性細菌である。ストレプトマイセス属は分類上の再編成を受けることが知られている。このように、属は再編成された種を含むことが予定されている。
【0034】
本明細書で用いる「バチルス属」(genius Bacillus)は当業者に知られている「バチルス属」(genius Bacillus)属の範囲内の全ての種を含み、バチルス スブチリス (Bacillus subtilis)、バチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス レンツス(Bacillus lentus)、バチルス ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス ステアロテルモフィルス (Bacillus stearothermophilus)、バチルス アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルスクラウシ(Bacillus clausii)、バチルス ハロジュランス(Bacillus halodurans)、バチルス メガテリウム(Bacillus megaterium)バチルス コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス ランツス(Bacillus lantus)、バチルス ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)を含むがこれに限定されるものではない。Bacillus属は分類上の再編成を受けることが知られている。バチルス属は、これに限定されるものではないが、現在「ゲオバチルス ステアロテルモフィルス」(Geobacillus stearothermophilus)と呼ばれているバチルス ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のような有機体を含み、分類上の再編成を受けた種を含むと考えられる。酸素の存在下において耐性のある内生胞子を生産することがバチルス属を規定する特徴と考えられる。この特徴はまた最近命名されたアリシクロバチルス(Alicyclobacillus), アンフィバチルス(Amphibacillus), アネウリニバチルス(Aneurinibacillus), アノキシバチルス(Anoxybacillus), ブレビバチルス(Brevibacillus), フィロバチルス(Filobacillus), グラシリバチルス(Gracilibacillus), ハロバチルス(Halobacillus), パエニバチルス(Paenibacillus), サリバチルス(Salibacillus), テルモバチルス(Thermobacillus), ウレイバチルス(Ureibacillus), ビルギバチルス(Virgibacillus)に当てはまる。
【0035】
「ポリヌクレオチド」(polynucleotide)及び「核酸」(nucleic acid)の用語は本明細書において相互交換的に用いられ、任意の長さのポリマー形式のヌクレオチドを指し、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを問わない。これらの用語は単一鎖、二重鎖、又は三重鎖DNA、ゲノムDNA, cDNA, RNA, DNA-RNAハイブリッド又はプリン及びピリミジン塩基を含むポリマー又は他の天然の、化学的、生物学的に修飾された、非天然の、又は誘導体ヌクレオチド塩基を含むがこれに限定されるものではない。以下に挙げるものはポリヌクレオチドの非限定的例である:遺伝子、遺伝子断片、染色体断片、EST, エクソン、イントロン、mRNA, tRNA, rRNA, リボザイム, cDNA, 組み換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の分離RNA、核酸プローブ及びプライマである。ある実施の態様においては、ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドの様な修飾されたヌクレオチド及びヌクレオチドアナログ、ウラシル、他の糖、及びフロロリボース、チオエートのような連結基及びヌクレオチド分枝を含む。他の実施の態様においては、ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断される。
【0036】
本明細書で用いる「DNA構築体」(DNA construct)及び 「形質転換DNA」(transforming DNA)は相互交換的に用いられ、宿主細胞又は有機体に配列を導入するために用いるDNAを指す。このDNAはインビトロでPCRにより又は技術分野で知られた任意の好適な技術によって生成することができる。ある特に好ましい実施の態様においては、このDNA構築体は関心の対象の配列(例えば、入って来る配列(incoming sequence)として)を含む。ある実施の態様においては、配列は制御要素(例えば、プロモータ等)の様な追加要素に動作可能にリンクされている。DNA構築体はさらに選択可能なマーカーを含んでも良い。それはさらに、ホモロジーボックスが側面に付いた入ってくる配列を含む。更なる実施の態様においては、形質転換DNAは末端に加えられた他の非相同配列を含む(例えば、スタッファ配列又は側面)。ある実施の態様においては、入ってくる配列の末端は閉じられており、そのため、形質転換DNAは閉じた円を形成する。形質転換配列は野生型、突然変異した又は修飾されたものであっても良い。ある実施の態様においては、DNA構築体は宿主細胞染色体に相同な配列を含む。他の実施の態様においては、DNA構築体は非相同配列を含む。DNA構築体がインビトロで組立てられると、それは1)非相同配列を宿主細胞の所望の標的配列に挿入する、及び/又は2)宿主細胞染色体の領域に突然変異を起させる(例えば、内在性配列を非相同配列で置換する)及び/又は3)標的遺伝子を欠失させる、及び/又は宿主に複製型プラスミドを導入する。
【0037】
本明細書で用いる「発現カセット」(expression cassette)及び「発現ベクター」(expression vector)はある標的細胞中の特定の核酸の転写を認める一連の特定された核酸要素(nucleic acid element)を持つ組み換え又は合成により生成された核酸構築体を指す。組み換え発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアのDNA、プラスチドDNA、ウイルス、又は核酸断片に組み入れることができる。典型的には、発現ベクターの組み換え発現カセット部分は、他の配列の中でも、転写される核酸及びプロモータを含む。好ましい実施の態様においては、発現ベクターは宿主細胞に非相同DNA断片を組み入れ及び発現させる能力を持つ。多くの原核生物及び真核生物発現ベクターは市場で調達可能である。好適な発現ベクターを選択することは当業者の常識の範囲にある。「発現カセット」(expression casette)の用語は本明細書において「DNA構築体」及びその文法的同等体と相互交換的に用いられる。適当な発現ベクターを選択することは当業者の常識の範囲内にある。
【0038】
本明細書で用いる、「ベクター」(vector)は核酸を一以上の細胞型に導入する様に設計されたポリヌクレオチド構築体を指す。ベクターはクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、カセット等を指す。ある実施の態様においては、ポリヌクレオチド構築体は、好適な宿主細胞でDNAの発現をすることのできる好適なプロ配列(例えば、分泌腺など)に動作可能にリンクされているプロテアーゼ(例えば、前駆体又は成熟プロテアーゼ)をコードするDNA配列を含む。
【0039】
本明細書で用いる「プラスミド」(plasmid)はクローニングベクターとして用いられる環状二重鎖(ds)DNA構築体を指し、このプラスミドはある新核生物又は原核生物中の染色体外自己複製遺伝子要素を形成し又は宿主染色体に一体化する。
【0040】
細胞に核酸配列を導入することについて本明細書で用いられる「導入される」(introduced)は核酸配列を細胞に転写するのに好適な任意の方法を指す。導入のためのその様な方法は原形質融合、トランスフェクション、形質転換、接合及び軽質導入を含むがこれに限定されるものではない(例えば、Ferrari他、「遺伝子」(Genetics)、Hardwood 他 (編纂), 「バチルス」(Bacillus)、Plenum Publishing Corp., 57-72ページ [1989]参照)。
【0041】
本明細書で用いる「形質転換された」(transformed)及び「安定的に形質転換された」(stably transformed)は非天然(非相同)ポリヌクレオチド配列がそのゲノムに一体化され又は少なくとも2世代に亙り維持されるエピソーププラスミドとしての細胞を指す。
【0042】
本明細書で用いる「選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列」(selectable marker-encoding nucleotide sequence)の用語は宿主細胞で発現が可能であり、選択可能なマーカーの発現は発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択剤の存在下で又は必須栄養素が存在しない中で成長する能力を与える、ヌクレオチド配列を指す。
【0043】
本明細書で用いる、「選択可能なマーカー」(selectable marker)又は「選択マーカー」(selective marker)の用語は、ベクターを含むこれらの宿主の選択を容易にする宿主細胞中で発現することが可能な核酸(例えば、遺伝子)を指す。これらの選択可能なマーカーの例には、抗菌剤を含むが、これに限定されるものではない。このように「選択可能なマーカー」は、宿主細胞が関心の対象となる、入ってくるDNAを取り上げた、又は他のある反応が起きた兆候を示す遺伝子を言う。典型的には選択可能なマーカーは、外因性DNAを含む細胞を、形質転換中に外因性配列を受容していない細胞から区別する宿主細胞に抗菌剤耐性を与え、又は代謝上の利益を与える遺伝子を指す。「居住する選択可能なマーカー」(residing selectable marker)は形質転換される、微生物の染色体にあるマーカーである。居住する選択可能なマーカーは形質転換DNA構築体上の選択可能なマーカーとは異なる遺伝子をコードする。選択可能なマーカーは当業者に良く知られている。上に述べた様に、好ましくはマーカーは抗菌剤耐性マーカーである(例えば、ampR; phleoR; specR ; kanR; eryR; tetR; cmpR; 及びneoR (例えば、Guerot-Fleury, Gene, 167:335- 337 [1995); Palmeros他、Gene 247:255-264 [2000];及びTrieu-Cuot他、Gene, 23:331-341, [1983]を参照)のが良い。本発明で有用な他のマーカーは、トリプトファンの様な栄養要求性マーカー、β―ガラクトシダーゼの様な検出マーカーを含むがこれに限定されるものではない。
【0044】
本明細書で用いる「プロモータ」(promoter)は下流遺伝子の転写を指示するように機能する核酸配列を指す。好ましい実施の態様においては、プロモータは標的遺伝子を発現させる宿主細胞に適している。プロモータは他の転写及び翻訳調整核酸配列(これは「制御配列」(control sequences)とも呼ばれる)とともにある遺伝子を発現させるのに必要である。一般的に転写及び翻訳調整配列には、プロモータ配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終了配列、翻訳開始及び終了配列、及びエンハンサ又は活性配列を含むがこれに限定されるものではない。
【0045】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係におかれた場合、「動作可能にリンクされている」(operably linked)。例えば、分泌リーダー(例えば、シグナル ペプチド)をコードするDNAは、もしポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAと動作可能にリンクされており;プロモータ又はエンハンサは、配列の転写に影響する場合は、コード配列に動作可能にリンクされており;リボソーム結合部位は、翻訳を促進するような位置にある場合、コード配列と動作可能にリンクされている。一般的に、「動作可能にリンクされている」はリンクされているDNA配列が連続しており、そして分泌リーダーの場合は連続しかつ読取相にあることを意味する。しかし、エンハンサは連続である必要はない。リンクは適当な制限部位での結紮により行われる。もしその様な部位がない場合は、従来の慣例に従い合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0046】
本明細書で用いる「遺伝子」(gene)はポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、DNAセグメント)を指し、個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)のみならずコード領域に先行し及び続く領域を含む。
【0047】
本明細書で用いる、「相同遺伝子」(homologous genes)は、異なるが通常関連している種の一対の遺伝子を言い、これらの種は互いに対応し、及びお互いに同一又は非常に類似している。この用語は遺伝子複製によって分離された遺伝子(例えば、パラロガス遺伝子)のみならず、種分化(speciation:すなわち、新しい種の開発)(例えば、オルソロガス遺伝子)によって分離された遺伝子を含む。
【0048】
本明細書で用いる、「オルソログ」(ortholog)及び「オルソロガス遺伝子」(orthologous gene)は種分化によって共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)より進化した異なる種の遺伝子を言う。典型的には、オルソログは進化の過程で同じ機能を保持する。オルソログの同定は新しく配列決定されたゲノムでの遺伝子機能を予測する信頼される方法として用いられる。
【0049】
本明細書で用いる、「パラログ」(paralog)及び「パラロガス遺伝子」(paralogous gene)はゲノム内で複製されることにより関連する遺伝子を言う。オルソログが進化の過程で同じ機能を保持するのに対し、パラログは、その幾つかの機能は元の機能としばしば関連するものであるが、新しい機能を発展させる。
【0050】
パラロガス遺伝子の例には、これらは全てセリンプロテナーゼであり、同じ種内で一緒に生じるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びトロンビンをコードする遺伝子を含むがこれに限定されるものではない。
【0051】
本明細書で用いる「相同」(ホモロジー)(homology)は配列の類似又は同一性、好ましくは同一であるのが良いが)を指す。この相同は技術分野で知られている標準的技術により決められる(例えば、Smith及びWaterman, Adv. Appl. Math., 2:482 [1981]; Needleman及びWunsch, J. MoI. Biol., 48:443 [1970]; Pearson及びLipman, Proc. Natl. Acad .Sci. USA, 85:2444 [1988]; Wisconsin Genetics Software Package中のGAP, BESTFIT, FASTA, 及びTFASTAの様なプログラム, Genetics Computer Group, Madison, WI;及びDevereux 他、Nucl. Acid Res., 12:387-395 [1984)を参照)。
【0052】
本明細書で用いる「類似配列」(アナログ配列)(analogous sequence)は、遺伝子の機能が親遺伝子に基づくものと実質的に同じであるものを指す(例えば、セルロモナス種(Cellulomonas strain)69B4タンパク質)。さらに、類似遺伝子は親遺伝子の配列と少なくとも45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95%, 97%, 98%, 99% 又は100%同じ配列を含む。代替的に類似配列は親遺伝子(例えば、セルロモナス種69B4タンパク質)領域に見られる遺伝子の70から100%の配列アラインメントを持ち、及び/又は親遺伝子を含む染色体中(例えば、セルロモナス種(Cellulomonas strain)69B4染色体)の遺伝子とアラインされた領域に少なくとも5−10の遺伝子を持つ。更なる実施の態様においては、一以上の上記の特性が配列に適用される。類似配列は配列アラインメントにおける既知の方法により決定される。本明細書に述べる様に配列アラインメントで用いられる他の方法もあるが、通常用いられるアラインメント方法はBLASTである。
【0053】
有用なアルゴリズムの一つの例はPILEUPである。PILEUPは漸進的、ペアーワイズ アラインメント(progressive, pair-wise alignment)を用いた群の関連配列から多配列アラインメントを作る。またアラインメントを作るために用いられたクラスター関係を示すツリー(tree)をプロットすることもできる。PILEUPはFeng及びDoolittleの漸進的アラインメント法を簡素化したものを用いる (Feng及びDoolittle, J. MoI. Evol., 35:351-360 [1987])。この方法はHiggins及びSharpにより記述されているもの(Higgins及びSharp, CABIOS 5:151-153 [1989])と類似する。有用なPILEUPパラメータは3.00のデフォールト ギャップ ウエイト、0.10のデフォールト ギャップ レングスウエイト、及び加重エンドギャップを含む。
【0054】
他の有用なアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムであり、Altschul他(Altschul他、J. MoI. Biol., 215:403-410 [1990];及びKarlin他、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 90:5873-5787 [1993))により記述されている。特に有用なBLAST プログラムはWU-BLAST-2 プログラムである(Altschul他, Meth. Enzymol., 266:460-480 [1996]を参照)。WU-BLAST-2は幾つかのサーチパラメータを用いるが、その大半はデフォールト値に設定される。調整可能なパラメータは以下の値に設定される:重複範囲=1、重複画分= 0.125、言語閾値(word threshold (T)) = 11。HSP S及びHSP S2 パラメータは動値であり、特定の配列の組成及び関心の対象となる配列が調査される特定のデータベースの組成に依存するプログラム自体により決定される。しかし、これらの値は感度を高めるように調整しても良い。%アミノ酸配列による同一性の値は一致する同一の残基の数をアラインされる領域中の「より長い」配列の残基の全数によって除して決定される。「より長い」配列はアラインされる領域中に最も確かな残基(mostr actuacl residue)を持つものである(アラインメント数値を最大にする様にWU-Blast-2により導入されたギャップは考慮されない)。
【0055】
宿主細胞「パーセント(%)核酸配列の同一性」(percent (%) nucleic acid sequence identity)は、開始配列のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセントとして定義される。好ましい方法は、重複範囲及び重複画分をそれぞれ1及び0.125のデフォールトパラメータに設定したWU-BLAST-2のBLASTNの基準を用いる。
【0056】
本明細書で用いる、「ハイブリッドする」(hybridization)は、技術分野で知られている様に、核酸の鎖が塩基ペアーを通して相補鎖と結合するプロセスを言う。
【0057】
2つの配列が中程度から高度に厳格(stringency)なハイブリッド条件及び洗濯条件でお互いに特異的にハイブリッドする場合は、核酸配列は参照核酸配列に「選択的にハイブリッド可能である」(selectively hybridizable)と考えられる。ハイブリッド条件は核酸結合複合体又はプローブの溶融温度(Tm)に基づく。例えば、「最も厳格」(maximum stringency)は典型的には約Tm−5℃(プローブのTmより5℃低い);「高度に厳格」(high stringency)は、Tmより5-10℃低い;「中程度に厳格」(intermidiate stringency)はプローブのTmより約10-20℃低い;「低度に厳格」(low stringency)はTmより約20-25℃低い。
【0058】
機能的には、「最も厳格」条件は、ハイブリッドプローブを用いて厳格な同一性又は厳格な同一性に近い同一性を持つ配列を同定するのに用いても良く、中程度に厳格又は低度に厳格なハイブリッドはポリヌクレオチド配列の相同を同定又は検出するのに用いることができる。
【0059】
中程度又は高度に厳格なハイブリッド条件は技術分野で良く知られている。高度に厳格な条件の例には50%ホルムアルデヒド中、約42℃、5X SSC, 5X デンハート溶液, 0.5% SDS及び100 μg/ml 変性キャリアー DNA、続いて2X SSC 及び0.5% SDS中で室温で2度洗浄し、さらに0.1 X SSC 及び 0.5% SDSで、420Cで2度洗浄するハイブリッドを含む。中程度に厳格な条件は、20%ホルムアルデヒド、5 x SSC (150mM NaCl, 15 mM クエン酸3ナトリウム)、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.6), 5 x デンハート溶液、10% 硫酸デキストラン及び20 mg/ml 変性せん断した鮭の精液DNAを含む溶液中で37℃で一夜培養し、続いて約37−50℃でIx SSC でフィルターを洗浄することを含む。当業者は、プローブ長さ等の様な要素を用いるため必要に応じて、温度、イオン強度等の調整する方法を知っている。
【0060】
本明細書で用いる「組み換え体」(recombinant)の用語は、非相同核酸配列の導入により修飾された細胞又はベクター、又はその様に修飾された細胞から誘導された細胞を含む。したがって、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然(非組み換え)型の中に同一の型がない遺伝子を発現させ、又はそうでなければ異常に発現された又は人の意図的な干渉により低発現し又は発現しない天然の遺伝子を発現させる。
【0061】
「組み換え」(Recombination)、「組み換えること」(recombining)及び「組み換えられた」(recombined)核酸を生成することは一般的に、その集合(assembly)がキメラ遺伝子を作る2以上の核酸断片の集合を作ることである。
【0062】
ある好ましい実施の態様において、突然変異DNA配列は少なくとも一つのコドンで部位飽和突然変異誘発により生成される。他の好ましい実施の態様においては、部位突然変異誘発は2以上のコドンで実行される。さらに他の実施の態様においては、突然変異DNA配列は、野生型配列と50%より大きい、55%より大きい、 60%より大きい、 65%より大きい、 70%より大きい、 75%より大きい、80%より大きい、 85%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、又は98%より大きい相同性を持つ。他の実施の態様においては、突然変異DNAはインビボで通常知られている任意の突然変異手順、例えば、放射、ニトロソグアジニン等を用いて生成される。そして所望のDNA配列が分離され本明細書に記載の方法に用いられる。
【0063】
本明細書で用いる「標的配列」(target sequence)は、入ってくる配列が宿主細胞ゲノムに挿入されることが所望される、その配列をコードする宿主細胞中のDNA配列を指す。ある実施の態様においては、標的配列は機能的野生型遺伝子又はオペロンをコードし、他の実施の態様において標的配列は機能的突然変異遺伝子又はオペロン又は非機能的遺伝子又はオペロンをコードする。
【0064】
本明細書用いる「フランキング配列」(flanking sequence)は以下に説明する配列の上流又は下流の任意の配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cにおいて, 遺伝子BはA及びC遺伝子配列が両側面に沿っている)。ある好ましい実施の態様においては入ってくる配列はそれぞれの側にホモロジーボックスが側面に沿っている。他の実施の態様においては、入ってくる配列及びホモロジーボックスは両側にスタッファ配列が沿うユニットを含む。ある実施の態様においては、フランキング配列は一つの末端にのみ存在する(3’又は5’)が、好ましい実施の態様においては、それはその側面に沿う配列の何れの側にも存在する。ある実施の態様においては、フランキング配列は一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施の態様においては、それが沿う配列の何れの側にも存在する。
【0065】
本明細書で用いる「スタッファ配列」(stuffer sequence)はホモロジーボックス(典型的にはベクター配列)に沿う任意の追加のDNAを指す。しかし、この用語は任意の非相同DNA配列を含む。理論に捕われるわけではないが、スタッファ配列は細胞がDNAの取り込みを開始するための重要でない標的を提供する。
【0066】
本明細書で用いる、「増幅」(amplification)及び「遺伝子増幅」(gene amplification)は、特定のDNA配列が不釣合いに複製され、増幅された遺伝子がゲノムに当初存在したよりも多いコピー数で存在するプロセスを言う。ある実施の態様においては、薬剤(例えば、抑制可能な酵素の抑制剤)の存在下で成長によって細胞を選択することにより、薬剤の存在下で成長に必要な遺伝子製品をコードする内生遺伝子を増幅するか、又はこの遺伝子製品をコードする外因性(すなわち、投入された)配列を増幅することによるかのいずれか、又はその双方となる。
【0067】
「増幅」(amplification)は鋳型特異性(template specificity)を含む核酸の複製の特異な場合である。これは非特異的鋳型複製(すなわち、複製は鋳型に依存するが、特定の鋳型に依存するものではない)と対比されるべきである。ここでの鋳型特異性は、複製が忠実であるかどうか(すなわち、適正なポリヌクレオチド配列の合成)及びヌクレオチド(リボ−又はデオキシリボ−)特異性とは区別される。鋳型特異性は、しばしば「標的」(target)特異性と呼ばれる。標的配列は、これらが他の核酸から選定されるという意味で「標的」である。増幅技術は、主にこの選定をするために設計されたものである。
【0068】
本明細書で用いる、「共増幅」(co-amplification)は、単一細胞に他の遺伝子配列(すなわち、発現ベクターに含まれる一以上の非選択性遺伝子)と共に増幅マーカーを導入し、細胞が増幅可能なマーカー及び他の非選択的遺伝子配列を増幅する様に、適当な選択圧を与えることを言う。増幅可能なマーカーは物理的に他の遺伝子配列にリンクされても良く、又は代替的に、その一つは増幅可能なマーカーを含み、他は非選択的マーカーを含む2つの別々のDNA が同じ細胞に導入されても良い。
【0069】
本明細書で用いる、「増幅可能なマーカー」(amplifiable marker)、「増幅可能な遺伝子」(amplifiable gene)及び「増幅ベクター」(amplification vector)は、適当な成長条件でその遺伝子を増幅させる、遺伝子又は遺伝子をコードするベクターを言う。
【0070】
「鋳型特異性」(template specificity)は酵素を選択することにより殆んどの増幅技術によって実現される。増幅酵素は、それらが使用される条件下で、異種の核酸の混合物中の核酸の特異の配列のみを処理する酵素である。例えば、
Qβ レプリカーゼの場合, MDV-I RNAがレプリカーゼの特異鋳型である(例えば、 Kacian 他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:3038 [1972]を参照)。他の核酸はこの増幅酵素によっては複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモータに厳格な特異性を持つ(Chamberlin他、Nature 228:227 [1970]を参照)。T4 DNAリガーゼの場合、この酵素は、結紮接合点でオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質及び鋳型間にミスマッチのある場合2つのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを結紮しない(Wu 及びWallace, Genomics 4:560 [1989]を参照)。最後に、Taq 及びPfuポリメラーゼは、高温で機能するという能力のため、プライマにより画され(bounded)、それにより規定される配列に高い特異性を示すことが判明しており、高温はプライマが標的配列とハイブリッドするのに都合が良いが、非標的配列とハイブリッドするにはそうはならない熱力学条件を作り出す。
【0071】
本明細書で用いる、「増幅可能な核酸」(amplifiable nucleic acid)は、任意の増幅方法により増幅される核酸を言う。「増幅可能な核酸」は通常「サンプル鋳型」(sample template)を含むと考えられる。
【0072】
本明細書で用いる、「サンプル鋳型」(sample template)は、「標的」(target)(以下に定義される)の存在が分析されるサンプルに由来する核酸を言う。対照的に、「バックグラウンド鋳型」(background template)は、サンプル中に存在し、又は存在しないサンプル鋳型と異なる核酸について用いられる。バックグラウンド鋳型は殆んどの場合偶然による。それはキャリーオーバーの結果であるか、又はサンプルから精製されて除去される核酸汚染物質の存在によるものである。例えば、検知されるべき有機体以外の有機体からの核酸は、テストサンプル中にバックグラウンドとして存在することもある。
【0073】
本明細書で用いる、「プライマ」(primer)は、精製された制限消化の様に自然に生成されるか、合成により生成されるかを問わず、核酸鎖に相補的なプライマ伸長製品の合成が誘発される条件下に置かれる場合、合成の開始点として作動することができる(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼの様な誘発剤の存在下及び好適な温度及びpHで)オリゴヌクレオチドを言う。。プライマは、増幅で最大の効果を得るためには好ましくは単一鎖であるのが良いが、代替的に、二重鎖であっても良い。もし、二重鎖の場合は、プライマはまず、伸長製品を得るために使用する前に、その鎖を分離する処理がなされる。好ましくは、プライマはオリゴデキシリボヌクレオチドであるのが良い。プライマは誘発剤の存在下で伸長製品の合成を準備するために十分長くなければならない。プライマの正確な長さは、温度、プライマソース及び使用法を含み数多くの要因に依る。
【0074】
本明細書で用いる、「プローブ」(probe)は、精製された制限消化の様に自然に生成されるか、合成により、組み換えにより又はPCR増幅により生成されるかを問わず、関心の対象である他のオリゴヌクレオチドにハイブリッドすることができるオリゴヌクレオチドを言う。プローブは単一鎖であるか又は二重鎖であっても良い。プローブは特定の遺伝子配列の検出、同定及び単離に有用である。本発明で用いられる何れのプローブも任意の「レポーター分子」(reporter molecule)によりラベルを付されることが予定され、酵素(例えば、酵素ベースの組織化学的アッセイのみならずELISA)、蛍光、放射線、及び発光システムを含む検出システムで検出することができるが、これに限定されるものではない。本発明は特定の検出システム又はラベル方式に限定されるものではない。
【0075】
本明細書で用いる、「標的」(target)は、ポリメラーゼ連鎖反応との関係で用いる場合は、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマにより画された(bounded)核酸の領域を言う。したがって、「標的」は他の核酸配列から選定される。「部分」(segment)は標的配列内の核酸の領域として定義される。
【0076】
本明細書で用いる、「ポリメラーゼ連鎖反応」(polymerase chain reaction (PCR))は米国特許第4,683,195号, 第4,683,202号及び第4,965,188号に記載の方法を言う。これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる。この方法は、当業者に良く知られている様に、クローン又は精製をすることなくゲノムDNAの混合物中で標的配列のある部分の濃度を増大させる方法を含む。標的配列の所望の増幅部分が混合物中の主要な配列(濃度において)になるため、これらは「PCR増幅された」と言われる。
【0077】
本明細書で用いる、「増幅試薬」(amplification reagent)は、プライマ、核酸鋳型、及び増幅酵素を除く増幅に必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝剤等)を言う。典型的には、増幅試薬は他の反応成分と共に反応容器(テスト管、ミクロウエル等)に置かれ、そして収容される。
【0078】
PCRでは、ゲノムDNAにおいて特定の標的配列の単一コピーをいくつかの異なる方法により検出可能なレベルまで増幅することが可能である(例えば、標識を付したプローブとハイブリッドさせ;ビオチニル化したプライマを組み込み、続いてアビジン酵素と結合させることにより検出する;dCTP 又はdATPの様な 32P標識を付したデオキシヌクレオチド三リン酸を増幅された部分に組み込む)。ゲノムDNAの他に、任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列も適切なプライマ分子のセットによって増幅することができる。
【0079】
特に、PCRプロセス自身により作られた増幅部分は、それ自身続くPCR増幅のための効果的な鋳型である。
【0080】
本明細書で用いる、「PCR製品」(PCR product)、「PCRフラグメント」(PCR fragment)及び「増幅製品」(amplification product)はPCRの変性、アニーリング及び伸長の2以上のサイクルが終了した後の結果の化合物の混合物を言う。これらの用語は一以上の標的配列の一以上の部分が増幅された場合を含む。
【0081】
本明細書で用いる「RT-PCR」(RT-PCR)はRNA配列の複製及び増幅を言う。この方法では、逆転写は、PCRに結合され、その場合非常にしばしば米国特許第5,322,770号に記載の様に熱安定性ポリメラーゼを用いた一つの酵素を用いる手順による。同文献は参照により本明細書に組み入れられる。RT-PCRではRNA鋳型はポリメラーゼの逆転写酵素活性によりcDNAに変換され、そしてポリメラーゼの重合活性(すなわち、他のPCR方法の様に)を用いて増幅される。
【0082】
本明細書で用いる「制限エンドヌクレアーゼ」(restriction endonuclease)及び「制限酵素」(restriction enzyme)は細菌酵素を言い、そのそれぞれが特定ヌクレオチド配列において、又はその近辺で二重鎖DNAを切断する。
【0083】
「制限部位」(restriction site)はある制限エンドヌクレアーゼにより認識され開裂されるヌクレオチド配列を指し、しばしばDNA断片の挿入部位である。本発明のある実施の態様においては制限部位は操作され選択マーカー及びDNA構築体の5' 及び3'末端に挿入される。
【0084】
本明細書で用いる「染色体への組み込み」(chromosomal integration)は入ってくる配列が宿主細胞の染色体に導入されるプロセスを指す。形質転換するDNAの相同領域は染色体の相同領域とアラインする。続いて、ホモロジーボックスの間の配列は入ってくる配列によりダブル クロスオーバーで置換される(すなわち、相同的組み換え)。本発明のある実施の態様において、DNA構築体の不活性化染色体セグメントの相同部分はバチルス(Bacillus)染色体の固有の染色体領域の隣接する相同領域とアラインする。そして、固有の染色体領域はDNA構築体によりダブル クロスオーバーで取除かれる(すなわち、相同的組み換え)。
【0085】
「相同的組み換え」(Homologous recombination)は同一又は同一に近いヌクレオチド配列の部位で2つのDNA分子又はペア染色体の間のDNA断片の交換を言う。好ましい実施の態様においては、染色体の統合は相同的組み換えである。
【0086】
本明細書で用いる「相同配列」(Homologous sequence)は比較のために最も最適にアラインされた他の核酸又はポリペプチド配列と100%, 99%, 98%, 97%, 96%, 95%, 94%, 93%, 92%, 91%, 90%, 88%, 85%, 80%, 75%, 又は70%同一配列を持つ核酸又はポリペプチド配列を言う。ある実施の態様においては、85%から100%の同一の配列を持ち、他の実施の態様においては、 90%から100%の同一配列を持ち、そしてより好ましい実施の態様においては、95%から100%の同一配列を持つ。
【0087】
本明細書で用いる「アミノ酸」(amino acid)はペプチド又はタンパク質配列又はその一部を指す。「タンパク質」(protein)、「ペプチド」(peptide)及び「ポリペプチド」(polypeptide)の用語は相互交換的に用いられる。
【0088】
本明細書で用いる、「関心の対象のタンパク質」(protein of interest)及び「関心の対象のポリペプチド」は所望され及び/又は評価されるタンパク質/ポリペプチドを指す。ある実施の態様においては、「関心の対象のタンパク質」は「親タンパク質」(すなわち、出発タンパク質)である。ある実施の態様においては、親タンパク質はタンパク質操作/設計のための出発点として使用される野生型酵素である。ある実施の態様においては、関心の対象のタンパク質は細胞間で発現し、他の実施の態様においては、関心の対象のタンパク質は分泌ポリペプチドである。特に好ましい実施の態様においてはこれらの酵素は本明細書に記載のセリンプロテアーゼ及び金属プロテアーゼを含む。ある実施の態様においては、関心の対象のタンパク質はシグナルペプチドに融合された分泌ポリペプチドである(すなわち、分泌されるタンパク質上のアミノ末端伸張である)。殆んど全ての分泌タンパク質はアミノ末端タンパク質伸張を用い、それは細胞膜に渡り前駆体タンパク質を標的にし、且つ前駆体タンパク質の転座に決定的な役割を果す。この伸張は膜転写の間又はその直後にシグナルペプチダーゼによってタンパク質分解により除去される。
【0089】
本明細書で用いる「非相同タンパク質」(heterologous protein)は宿主細胞で自然に生成されることのないタンパク質又はポリペプチドを指す。非相同タンパク質の例には、プロテアーゼを含むヒドロラーゼの様な酵素を含む。ある実施の態様においてはタンパク質をコードする遺伝子は天然に生ずる遺伝子であり、他の実施の態様においては突然変異の及び/又は合成遺伝子が使用される。
【0090】
本明細書で用いる「相同タンパク質」(homologous protein)は、細胞中に自然に存在し、又は自然に生ずるタンパク質又はポリペプチドを言う。ある好ましい実施の態様においては細胞はグラム陽性細胞であり、特に好ましい実施の態様においては、細胞はバチルス(Bacillus)宿主細胞である。他の実施の態様においては、相同タンパク質はこれに限定されるものではないが、大腸菌、セルロモナス、バチルス、ストレプトマイセス トリコデルマ及びアスペルギルスを含む他の有機体により生成される天然のタンパク質である。本発明は組み換えDNA技術により相同タンパク質を生成する宿主細胞を含む。
【0091】
本明細書で用いる「オペロン領域」(operon region)は通常のプロモータから単一転写ユニットとして転写される隣接遺伝子のグループを含み、それにより同時制御される。ある実施の態様においては、オペロンは調節遺伝子を含む。もっとも好ましい実施の態様においては、RNAレベルで測定し高度に発現するが未知の又は不必要な機能を持ったオペロンが用いられる。
【0092】
本明細書で用いる「抗菌領域」(antimicrobial region)は抗菌タンパク質をコードする少なくとも一つの遺伝子を含む領域である。
【0093】
ポリヌクレオチドは、その天然の状態又は当業者に知られている方法により操作された場合、RNA、ポリペプチド又はその断片を生成するために転写され、及び/又は翻訳され得る場合、RNA又はポリペプチドを「コードする」(encode)すると言われる。その様な核酸のアンチセンス鎖はまたその配列をコードすると言われる。
【0094】
技術分野で知られている様に、DNAはRNAポリメラーゼにより転写され、RNAを生成することができるが、RNAは逆転写酵素により逆転写されDNAを生成することができる。この様にDNAはRNAをコードしその逆も起きうる。
【0095】
「制御セグメント」(regulatory segment)又は「制御配列」(regulatory sequence)又は「発現制御配列」(expression control sequence)はコードされたアミノ酸配列の発現を実行するためにポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードするDNAのポリヌクレオチド配列に動作可能にリンクされているDNAのポリヌクレオチド配列を指す。制御配列はアミノ酸をコードする動作可能にリンクされているポリヌクレオチド配列の発現を抑制し、抑止し又は促進することができる。
【0096】
「宿主株」(Host strain)又は「宿主細胞」(host cell)は本発明のDNAを含む発現ベクターに相応しい宿主を指す。
【0097】
酵素は、もし酵素が対応する野生型細胞で発現されるレベルよりもより高度のレベルで細胞で発現される場合、「過剰に発現される」(overexpressed)と言う。
【0098】
「タンパク質」(protein)及び「ポリペプチド」(polypeptide)は相互交換的に使用される。国際生化学分子生物学連合の命名法委員会の生化学命名法(JCBN)(IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (JCBN))により定めたアミノ酸の3文字コードが本明細書で用いられる。また、ポリペプチドは遺伝子コードの縮退のためより多いヌクレオチド配列によりコードされることもある。
【0099】
「プロ配列」(prosequence)はシグナル配列とプロテアーゼの分泌に必要な成熟プロテアーゼの間にあるアミノ酸配列である。プロ配列の開裂により成熟活性を持つプロテアーゼが生成される。
【0100】
「シグナル配列」(signal sequence)又は「シグナル ペプチド」(signal peptide)の用語は成熟した又は前駆体の形のタンパク質の分泌に参加するヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列を指す。シグナル配列のこの定義は機能的なものであり、タンパク質遺伝子のN-末端部分によりコードされる全てのこれらのアミノ酸配列を含むことを意味し、このアミノ酸配列はタンパク質の分泌に参加する。しかし例外がない訳ではないが、これらはしばしばタンパク質のN-末端部分又は前駆体タンパク質のN-末端部分に結合される。シグナル配列は内因性又は外因性であることもある。シグナル配列は通常タンパク質(例えば、プロテアーゼ)と関連し、又は他の分泌されたタンパク質をコードする遺伝子から生成されることもある。一つの代表的な外因性シグナル配列は、バチルス レンツス(Bacillus lentus)(ATCC 21536)のスブチリシンのシグナル配列の残りの部分に融合されるバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)のシグナル配列の第一の7つのアミノ酸残基を含む。
【0101】
「ハイブリッド シグナル配列」(hybrid signal sequence)はその配列の一部分が、発現される遺伝子のシグナル配列に融合される発現宿主から得られるシグナル配列を言う。ある実施の態様においては合成配列が用いられる。
【0102】
「実質的に同じシグナル活性」(substantially the same signal activity)の用語は、実質的に発酵培地にプロテアーゼの同じ分泌がなされることによって示される様に、シグナル活性を指し、例えば、発酵培地プロテアーゼのレベルは配列番号9のシグナル配列により提供される発酵培地中の分泌されたプロテアーゼのレベルの少なくとも50%, 少なくとも60%, 少なくとも70%, 少なくとも80%, 少なくとも90%, 少なくとも95%, 少なくとも98%である。
【0103】
タンパク質又はペプチドの「成熟」形の用語はタンパク質又はペプチドの最終機能形態を指す。例証すると、本発明のASPプロテアーゼの成熟した形は少なくとも配列番号8のアミノ酸配列を含む。一方本発明のNprEプロテアーゼの成熟した形は少なくとも配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0104】
タンパク質又はペプチドの「前駆体」(precursor)の形は、タンパク質のアミノ酸末端又はカルボニル末端に動作可能にリンクされているプロ配列を持つタンパク質の成熟形を指す。前駆体はまたプロ配列のアミノ酸末端に動作可能にリンクされている「シグナル」配列を持つこともある。前駆体はまた翻訳後活動に関係する追加のポリヌクレオチドを持つこともある(例えば、それから開裂されたポリヌクレオチドはタンパク質又はペプチドの成熟形を残す)。
【0105】
「天然発生酵素」(Naturally occurring enzyme)及び「天然発生タンパク質」(naturally occurring protein)は天然に見出される配列と同一の非修飾アミノ酸配列を持つ酵素又はタンパク質を指す。天然発生酵素は、天然の酵素、天然に発現された酵素又は特定の微生物に見出される天然の酵素を含む。
【0106】
「由来する」(derived from)及び「から得られる」(obtained from)の用語は問題となる有機体の株から生成され、又は生成されうる酵素(例えば、プロテアーゼ)のみならず、その様な株から分離された及びその様なDNA配列を含む宿主有機体中で生成されたDNAによりコードされる酵素を指す。さらにこの用語は合成及び/又はcDNA起源のDNA配列によりコードされ、問題となる酵素として識別される特徴を持つ酵素を指す。
【0107】
この定義の範囲内の「誘導体」(derivative)は誘導体が、野生型、天然、又は親の型と同様の目的に有用であるという限りにおいて、野生型、天然、又は親の型において観察される特徴的なタンパク質分解活性を通常持つ。機能的な酵素の誘導体は、親酵素の一般的特徴を持つ天然、合成又は組み換えにより生成されたペプチド又はペプチド断片を含む。
【0108】
「機能的誘導体」(functional derivative)の用語は、酵素をコードする核酸の機能的特徴を持つ核酸の誘導体を指す。核酸の機能的誘導体は、本発明の酵素をコードするが、天然、合成又は組み換えにより生成される核酸又は断片を含む。本発明の酵素をコードする野生型核酸は、技術分野で知られている遺伝子コードの縮退に基づく天然の対立遺伝子及び同族体を含む。
【0109】
2つの核酸又はポリペプチド配列について言う「同一」(identical)の用語は、以下の配列の比較又は解析アルゴリズムの一つを用いて測定され、最大の対応を生むようアラインされた場合に同一である2つの配列中の残基について言う。
【0110】
「最適のアラインメント」(optimal alignment)は最大%の同一性の評点を与えるアラインメントを言う。2つのアミノ酸、ポリヌクレオチド及び/又は遺伝子配列(適当である場合)に関する「パーセント配列同一性」(Percent sequence identity)、(「パーセント アミノ酸配列同一性」(percent amino acid sequence identity)、「パーセント遺伝子配列同一性」(percent gene sequence identity)及び/又は「パーセント核酸/ポリヌクレオチド配列同一性」(percent nucleic acid/polynucleotide sequence identity)は、配列が最適にアラインされた場合に2つの配列中の同一の残基のパーセントを言う。したがって、80%のアミノ酸配列が同一であるということは2つの最適にアラインされたポリペプチド配列中のアミノ酸の80%が同一であることを意味する。
【0111】
2つの核酸又はポリペプチドについて言う「実質的に同一」(substantially identical)の用語は、標準パラメータを用いたプログラム又はアルゴリズム(例えば、BLAST, ALIGN, 及びCLUSTAL)を用いて、参照配列と比べて、少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約75%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも約85%同一、好ましくは少なくとも約90%同一、好ましくは少なくとも約95%同一、最も好ましくは少なくとも約97%同一、好ましくは少なくとも約98%及び約99%同一の配列を持つポリヌクレオチド又はポリペプチドを言う。2つのポリペプチドが実質的に同一である一つの印は第一のポリペプチドが第二のポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。典型的に、保存アミノ酸置換によって異なるポリペプチドは免疫学的に交差反応する。したがって、例えば、2つのポリペプチドが保存置換のみが異なるポリペプチドの場合は実質的に第二ポリペプチドと同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である他の印は2つの分子がお互いに厳格な条件(例えば、中程度から高度に厳格な条件の範囲内)においてお互いにハイブリッドすることである。
【0112】
「分離された」(isolated)又は「精製された」(purified)はその元の環境(例えば、もし天然(自然)に発生する場合は自然環境)から取出された材料を言う。例えば、材料は、それが特別の組成物中で、天然に発生する又は野生型有機体に存在する、又は天然に発生する又は野生型有機体から発現して通常存在しない組成物と組み合わされたものよりも、より高い又は低い濃度で存在する場合「精製されている」と言う。例えば、生きている動物中で天然に発生するポリヌクレオチド又はポリペプチドは分離されていないが、天然のシステム中の共存する材料の一部又は全部から分離されている同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは分離されている。ある実施の態様においては、その様なポリヌクレオチドはベクターの一部であり、及び/又はその様なポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部であり、及びさらにその様なベクター又は組成物はその自然環境の一部でないと言う意味で分離されている。ある好ましい実施の態様において、例えば、もしそれが電気泳動ゲル又はブロットで本質的に一つのバンドを生成する場合は核酸又はタンパク質は精製されていると言われる。
【0113】
DNA配列について使用される場合、「分離された」(isolated)の用語は自然の遺伝子環境から取出されたDNA配列を言い、したがって、他の異質の又は望まれないコード配列を含まず、そして遺伝子的に操作されたタンパク質の生成システム内の使用に適した形である。その様な分離された分子はその自然環境から分離されたものであり、cDNA 及び遺伝子クローンを含む。本発明の分離されたDNA分子は、それが通常関連する他の遺伝子を含まないが、プロモータ又はターミネータのような天然に発生する5' 及び3'非翻訳領域を含んでも良い。関連する領域を同定することは当業者にとり明らかである(例えば、Dynan及びTijan, Nature 316:774-78, 1985を参照)。「分離されたDNA配列」(isolated DNA sequence)の用語は、代替的にまた「クローンされたDNA配列」(cloned DNA sequence)とも呼ばれる。
【0114】
タンパク質との関係で用いられる「分離された」(isolated)の用語は自然環境以外の条件に見出されるタンパク質を指す。ある好ましい形では、分離されたタンパク質は本質的に他のタンパク質、特に他の相同タンパク質を含まない。分離されたタンパク質はSDS-PAGEにより決定される、10%より高い純度、好ましくは20%より高い純度、さらに好ましくは30%より高い純度を持つ。本発明の他の特徴にはSDS-PAGEにより決定される高度に純粋な形のタンパク質(すなわち、40%より高い純度、60% より高い純度、80%より高い純度、 90%より高い純度、 95%より高い純度、97% より高い純度、さらに99%より高い純度)を含む。
【0115】
本明細書で用いる「組み合わせ突然変異誘発」(combinatorial mutagenesis)は開始配列の変異体ライブラリーが生成される方法を指す。これらのライブラリーでは、変異体は一組の所定の突然変異から選択される一又は幾つかの突然変異を含む。さらにこれらの方法はランダム突然変異を導入する方法を提供するが、ランダム突然変異は所定の一組の突然変異のメンバーではなかった。ある実施の態様においては、この方法は2000年10月26日出願された米国特許第09/699,250号に規定するものを含む。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。他の実施の態様においては、組み合わせ突然変異誘発法は商業的に入手可能なキット(例えば、QUIKCHANGE(登録商標)Multisite, Stratagene, La Jolla, CA)を含む。
【0116】
本明細書で用いる「突然変異体のライブラリー」(library of mutants)はそのゲノムの殆んどで同一であるが、一以上の遺伝子の異なる相同体を含む細胞集団を指す。その様なライブラリーは、例えば、改良された特質を持つ遺伝子又はオペロンを同定するために用いても良い。
【0117】
本明細書で用いる「開始遺伝子」(starting gene)は、本発明を用いて改良及び/又は改変される関心の対象のタンパク質をコードする関心の対象の遺伝子を指す。
【0118】
本明細書で用いる「変異体」(variant)は、前駆体タンパク質(例えば、「親」タンパク質)から一以上のアミノ酸の追加、置換、欠失により誘導されたタンパク質を指す。ある実施の態様においては、変異体は前駆体タンパク質に比べて電荷の変化を含む少なくとも一つの修飾を含む。ある好ましい実施の態様においては、前駆体タンパク質は野生型タンパク質である親タンパク質である。
【0119】
本明細書で用いる「多配列アラインメント」(multiple sequence alignment)及び「MSA」はアルゴリズム(例えば、Clustal W)を用いてアラインされる開始遺伝子の複数の同族体の配列を指す。
【0120】
本明細書で用いる「コンセンサス配列」(consensus sequence)及び「正準配列」(canonical sequence)の用語は特定のタンパク質又は関心の対象となる配列の全ての変異体が比較される原始型アミノ酸配列を指す。この用語はまた関心の対象となるDNA配列中に最もしばしば存在するヌクレオチドを記述する配列を指す。遺伝子の各位置に関しては、コンセンサス配列はMSA中のその位置に最も豊富なアミノ酸を作る。
【0121】
「コンセンサス突然変異」(consensus mutation)の用語は開始遺伝子の配列とコンセンサス配列の相違を指す。コンセンサス突然変異は開始遺伝子の配列とMSAから得られたコンセンサス配列を比較することにより同定される。ある実施の態様においては、コンセンサス突然変異は開始遺伝子に導入されるため開始遺伝子はコンセンサス配列により一層類似する。コンセンサス突然変異はまた、開始遺伝子中のアミノ酸を、開始遺伝子中のそのアミノ酸の頻度に比較してその位置のMSA中に、より頻繁に見出されるアミノ酸に変えるアミノ酸の変化を含む。したがって、コンセンサス突然変異の用語は、開始遺伝子のアミノ酸をMSA中のアミノ酸よりもより豊富なアミノ酸によって置換される全ての単一アミノ酸の変化を含む。
【0122】
本明細書で用いる「初期のヒット」(initial hit)の用語は、組み合わせコンセンサス突然変異ライブラリーをスクリーニングすることにより同定される変異体を指す。好ましい実施の態様においては、初期のヒットは、開始遺伝子に比べて改良された能力を持つ特徴がある。
【0123】
本明細書で用いる「改良されたヒット」(improved hit)の用語は強化された組み合わせコンセンサス突然変異ライブラリーをスクリーニングすることにより同定される変異体を指す。
【0124】
本明細書で用いる「改良する突然変異」(improving mutation)及び「能力を高める突然変異」(performance-enhancing mutation)は、それが開始遺伝子に導入される場合、改良された能力を生み出す突然変異を指す。ある好ましい実施の態様においては、これらの突然変異は本発明の方法のスクリーニング ステップの間に同定されたヒットの配列決定をすることにより同定される。殆んどの実施の態様において、ヒットにおいて頻繁に見出される突然変異誘発は、スクリーニングされていない組み合わせコンセンサス突然変異体ライブラリーと比べて改良する突然変異である。
【0125】
本明細書で用いる「効果を高めた組み合わせコンセンサス突然変異誘発ライブラリー」(enhanced combinatorial consensus mutagenesis library)はCCM突然変異誘発及びスクリーニングの初期の段階のスクリーニング及び/又は配列決定の結果の基づき設計され及び構築されたCCMライブラリーを指す。ある実施の態様においては、効果を高めたCCMライブラリーはCCMの初期の段階で得られた初期のヒットの配列に基づく。さらに他の実施の態様においては、効果を高めたCCMは、突然変異誘発及びスクリーニングの初期の段階の初期のヒットでしばしば観察される突然変異誘発である様に設計される。ある好ましい実施の態様においては、これは、初期のCCMライブラリーで使用される他のプライマと比べて、能力を低減する突然変異をコードするプライマを除去し、又は能力を増大させる突然変異をコードするプライマの濃度を増すことにより実現される。
【0126】
本明細書で用いる「能力を低減する突然変異」(performance-reducing mutation)はスクリーニングされていない組み合わせコンセンサス突然変異誘発ライブラリーに比べて、スクリーニングされたものから得られたヒットにおいて、より低い頻度で見られる組み合わせコンセンサス突然変異誘発ライブラリー中の突然変異を指す。ある好ましい実施の態様においては、スクリーニングプロセスは「能力を低減する突然変異」を含む大量の変異体を除去し及び/又は低減させる。
【0127】
本明細書で用いる「機能アッセイ」(functional assay)の用語はタンパク質活性の指標を提供するアッセイを言う。特に好ましい実施の態様においては、この用語はタンパク質がその通常の容量で機能する能力を分析するアッセイシステムを言う。例えば、酵素の場合、機能アッセイは反応を触媒作用する酵素の有効性を決定することを含む。
【0128】
本明細書で用いる「目標特性」(target property)の用語は改変される開始遺伝子の特性を指す。本発明はある特定の目標特性に限定することを意図するものではない。しかし、ある好ましい実施の態様においては、目標特性は遺伝子製品の安定性(例えば、変性、タンパク質分解又は他の分解要素に対する抵抗力)であり、他の実施の態様においては、生成宿主中の生成レベルが変えられる。事実、開始遺伝子の任意の特性は本発明において使用することが考慮されている。
【0129】
本明細書で用いる用語「特性」(property)又はその文法上の同等物は、核酸について言う場合、選択され又は検出され得る核酸の任意の特徴又は属性を言う。これらの特性には、ポリペプチドへの結合に影響を与える特性、特定の核酸を含む細胞についての特性、遺伝子転写に影響する特性(例えば、プロモータ強度、プロモータ認識、プロモータ制御、エンハンサー機能)、RNA処理に影響を与える特性(例えば、RNAスプライシング、RNA安定性、RNA配座、及び転写後修飾)、翻訳に影響を与える特性(例えば、レベル、制御、mRNAのリボソームタンパク質への結合、翻訳後の修飾)を含むがこれに限定されるものではない。例えば、核酸の転写因子の結合部位、ポリメラーゼ、制御因子等は所望の特徴を生成し又は望まれない特徴を同定する様に改変しても良い。
【0130】
本明細書で用いるポリヌクレオチドについて用いられる場合、用語「特性」(property)、「関心の対象である特性」(property of interest)又はその文法的な同等物は選択され又は検出され得るペプチドの任意の特徴又は属性を言う。これらの特性には、酸化安定性、基質特異性、触媒活性、熱安定性、アルカリ安定性、pH活性、タンパク質分解に対する抵抗力、KM, kcat, kcat/kM比、タンパク質折り畳み、免疫反応誘発、リガンド結合能力、受容体結合能力、分泌しうる能力、細胞表面上に表示される能力、オリゴマー化する能力、シグナルを発する能力、細胞増殖刺激能力、細胞増殖抑制能力、アポトーシス誘発能力、リン酸化又はグリコシル化により修飾される能力、疾病を治療する能力を含むがこれに限定されるものではない。
【0131】
本明細書で用いる「スクリーニング」(screening)の用語は技術分野で用いる通常の意味で用いられ、一般的に複数ステップ プロセスである。第一のステップでは突然変異核酸又はその変異ポリペプチドが提供される。第二のステップでは、突然変異核酸又はその変異ポリペプチドの特性が決定される。第三のステップでは、その突然変異核酸を生成するために、決定された特性が対応する親核酸、対応する天然発生のポリペプチドの特性又は開始材料の特性(例えば、初期配列)と比較される。
【0132】
改変された特性を持つ核酸又はタンパク質を得るためのスクリーニング手順は、突然変異核酸の生成が促進することを意図する修飾の対象である開始材料の特性によることは当業者に明らかである。したがって、当業者は、本発明はスクリーニングの対象を特定の特性に限定するものでなく以下に示す特性は単に例示に過ぎないことを理解するであろう。特定の特性をスクリーニングする方法は一般的に技術分野で明らかである。例えば、変化が改変(alteration)を意味する場合、突然変異の前後の結合、pH,特異性等を測定することができる。好ましくは、スクリーニングは複数のサンプルが同時にスクリーニングされることを含む高収率の処理が可能な方法で実行され、チップ、ファージ提示法、及び複数基質及び/又は測定器を用いるアッセイを含むがこれに限定されるものではない。
【0133】
本明細書で用いるスクリーニングは、ある実施の態様においては、関心の対象である変異体が変異体集団から濃縮される選択ステップを含む。これらの実施の態様の例には、変異体がその結合又は触媒特性に基づき変異体集団から捕捉されるファージ提示法、又は他の任意の提示法のみならず、宿主有機体に成長の利益を与える変異体の選択を含む。ある好ましい実施の態様においては、変異体のライブラリーはストレス(熱、プロテアーゼ、変性)に曝され、そして無傷の変異体はスクリーニングにより同定され又は選択され濃縮される。この用語は任意の好適な選択方法を含むものである。事実、本発明は特定のスクリーニング方法に限定されるものではない。
【0134】
本明細書で用いる「標的を定めたランダム化」(targeted randomization)の用語は、ランダム化された一又は幾つかの位置を持つ複数の配列を生成するプロセスを指す。ある実施の態様においては、ランダム化は完全に行われる(すなわち、全ての4つのヌクレオチド、A,T,G及びCはランダムの位置で起きる)。他の実施の態様においては、ヌクレオチドのランダム化は4つのヌクレオチドのサブセットに限定される。標的を定めたランダム化は関心の対象となる一又は幾つかのタンパク質をコードする、配列の一又は幾つかのコドンに適用することができる。発現すると、生成されたライブラリーは一以上のアミノ酸の位置が、ランダム化されたコドンのランダム化スキームにより決定された全ての20のアミノ酸、又はサブセットのアミノ酸の混合物を含むことのあるタンパク質集団を生成する。ある実施の態様においては、目標を定めたランダム化から得られる集団の個々のメンバーは、標的を定めた、又はランダムに挿入し、又は欠失したコドンのため、アミノ酸の数において異なる。さらに他の実施の態様においては、合成アミノ酸は生成されるタンパク質集団に含まれる。ある好ましい実施の態様においては、標的を定めたランダム化から得られる集団の大半のメンバーは開始遺伝子よりもコンセンサス配列により大きい配列相同性を示す。ある実施の態様においては、配列は関心の対象となる一以上のタンパク質をコードする。他の実施の態様においては、タンパク質は異なる生物学的機能を持つ。ある好ましい実施の態様においては、入ってくる配列は少なくとも一つの選択マーカーを含む。
【0135】
「修飾された配列」(modified sequence)又は「修飾された遺伝子」(modified gene)は、天然発生核酸配列の欠失、挿入、又は中断を含む配列を指し、相互交換的に用いられる。ある好ましい実施の態様においては、修飾された配列の発現生成物は短縮タンパク質(例えば、修飾が配列の欠失、又は中断である場合)である。ある特に好ましい実施の態様においては、短縮されたタンパク質は生物学的活性を維持する。他の実施の態様においては、修飾された配列の発現生成物は細長いタンパク質である(例えば、修飾は核酸配列中への挿入を含む)。ある実施の態様においては、挿入により短縮タンパク質となる(例えば、挿入がストップコドンを形成する場合)。この様に、挿入は、短縮タンパク質又は発現生成物として細長いタンパク質となることもある。
【0136】
本明細書で用いる「突然変異配列」(mutant sequence)及び「突然変異遺伝子」(mutant gene)は相互交換的用いられ、宿主細胞の野生型配列中に少なくとも一つのコドンの改変を持つ配列を言う。突然変異配列の発現生成物は野生型と比べて改変されたアミノ酸配列を持つタンパク質である。発現生成物は改変された機能的能力(例えば、強化された酵素活性)を持つこともある。
【0137】
「変異プライマ」(mutagenic primer)又は「変異オリゴヌクレオチド」(mutagenic oligonucleotide) (本明細書において相互交換的に使用される)は鋳型配列の一部に対応し、かつそれとハイブリッドすることの出来るオリゴヌクレオチド組成を指す。変異プライマについて言うと、そのプライマは鋳型核酸と厳密にマッチするものでなく、用いられるプライマ中の一のミスマッチ又は複数のミスマッチは核酸ライブラリーに所望の突然変異を導入するのに用いられる。本明細書で用いる「非変異プライマ」(non-mutagenic primer)又は「非変異オリゴヌクレオチド」(non-mutagenic oligonucleotide)は鋳型核酸と厳密にマッチするオリゴヌクレオチド組成を指す。本発明のある実施の態様においては、変異プライマのみが使用される。本発明の他の好ましい実施の態様においては、プライマは、変異プライマが含まれている少なくとも一つの領域で、またオリゴヌクレオチド混合物に非変異プライマも含まれる様に設計される。変異プライマ及び少なくとも一つの変異プライマに対応する非変異プライマの混合物を加えることにより、種々の組み合わせ突然変異パターンが生ずる核酸ライブラリーを生成することができる。例えば、変異核酸ライブラリーのメンバーの幾つかがある位置で親配列を維持し、他のメンバーはその様な部位で変異することを望む場合、非変異プライマはある残基の核酸ライブラリー内のある特定のレベルの非変異メンバーを得る能力を提供する。本発明の方法は、その塩基の長さが通常10-50塩基、より好ましくは約15-45塩基の間の変異及び非変異オリゴヌクレオチドを用いる。しかし、所望の突然変異誘発の結果を得るためには10塩基より短い又は50塩基より長いプライマを使用することが必要なこともある。対応する変異プライマ及び非変異プライマについて言うと、対応するオリゴヌクレオチドは同一の長さである必要はないが、追加される変異に対応する領域で重複があることが必要である。
【0138】
ある実施の態様においては、プライマは事前に規定された比率で添加される。例えば、結果のライブラリーが、添加されるプライマの量を調整することにより、かなりのレベルの、ある特定の変異体を持ち、同じ又は異なる部位でより少ない異なる量の変異体を持つことを所望する場合、所望の偏ったライブラリーを生成することが可能である。代替的に、より少量の又はより多量の非変異プライマを加えることにより、変異体核酸ライブラリー中に対応する変異が起こる頻度を調整することができる。
【0139】
本明細書で用いる「隣接変異」(contiguous mutation)は同じオリゴヌクレオチドプライマ内に現れる変異を言う。例えば、隣接変異体はお互いに隣合わせており又は近接していることもあるが、それらは同じプライマによって結果の変異鋳型核酸に導入される。
【0140】
本明細書で用いる「非隣接変異」(discontiguous mutation)は別々のオリゴヌクレオチドプライマに現れる変異を言う。例えば、非隣接変異は別個に準備されたオリゴヌクレオチドプライマにより結果の変異鋳型核酸に導入される。
【0141】
「野生型配列」(wild-type sequence)又は「野生型核酸配列」(wild-type nucleic acid sequence)及び「野生型遺伝子」(wild-type gene)は、本明細書では相互交換的に用いられ、天然に存在し又は宿主細胞中で自然発生的に生じる配列を指す。ある実施の態様においては野生型配列はタンパク質組み換え計画の開始点である関心の対象である配列を言う。野生型配列は相同タンパク質又は非相同タンパク質をコードすることもある。相同タンパク質はインターベンションなしに宿主細胞が生成するタンパク質である。非相同タンパク質は、インターベンションがない場合には宿主細胞は生成しないタンパク質である。
【0142】
「酸化に安定的」(oxidation stable)の用語はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件下で、例えば、漂白剤又は酸化剤に曝され又は接触している条件で、ある一定の時間に亘りある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、漂白剤又は酸化剤とある一定の時間、例えば、少なくとも1分、3分、5分、8分、12分、16分、20分等の間接触した後にそのタンパク質分解活性を少なくとも約50%, 約60%, 約70%, 約75%, 約80%, 約85%, 約90%, 約92%, 約95%, 約96%, 約97%, 約98%,又は約99%を維持する。
【0143】
「キレート剤に安定的」(chelator stable)の用語はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件下で、例えば、キレート剤に曝され又は接触している条件で、ある一定の時間に亘りある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、キレート剤とある一定の時間、例えば、少なくとも10分、20分、40分、60分、100分等の間接触した後にそのタンパク質分解活性の少なくとも約50%, 約60%, 約70%, 約75%, 約80%, 約85%, 約90%, 約92%, 約95%, 約96%, 約97%, 約98%,又は約99%を維持する。
【0144】
「熱に安定的」(thermally stable)及び「熱安定的」(thermostable)は、タンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスにおいて存在する条件(例えば、変更された温度に曝されて)下で、プロテアーゼがある一定の時間に亘りある特定の温度に曝された後にある特定量の酵素活性を維持する本発明のプロテアーゼについて言う。変更された温度には、高い又は低い温度を含む。ある実施の態様においては、プロテアーゼは、変更された温度にある一定の時間、例えば、少なくとも60分、120分、180分、240分、300分等の間曝した後にそのタンパク質分解活性の少なくとも約50%, 約60%, 約70%, 約75%, 約80%, 約85%, 約90%, 約92%, 約95%, 約96%, 約97%, 約98%,又は約99%を維持する。
【0145】
酸化、キレート剤、熱及び/又はpH安定的プロテアーゼについて用いる場合、「安定性の強化された」(enhanced stability)の用語は、他のセリンプロテアーゼ(例えば、スブチリシン プロテアーゼ)及び/又は野生型酵素に比べて、長時間に亘りより高いタンパク質分解活性が維持されることを言う。
【0146】
酸化、キレート剤、熱及び/又はpH安定的プロテアーゼについて用いる場合、「安定性の低下した」(diminished stability)の用語は他のセリンプロテアーゼ(例えば、スブチリシン プロテアーゼ)及び/又は野生型酵素に比べて、長時間に亘りタンパク質分解活性の維持の程度が低いことを言う。
【0147】
本明細書で用いる「洗浄用組成物」(cleaning composition)は、特に断らない限り、顆粒状又は粉末状汎用又は「強力」(heavy-duty)洗濯剤、特に洗浄洗剤;液体、ゲル、又はペースト状汎用洗濯用剤、特にいわゆる強力液タイプ;液状のきめ細かい織物用洗剤;手洗い用食器洗い用洗剤又は軽質食器洗い用洗剤、特に高泡立ちタイプの食器洗い用洗剤;家庭用及び業務用の種々の錠剤、顆粒、液体及びすすぎ補助タイプを含む機械洗い食器洗い用洗剤;抗菌性手洗いタイプ、洗浄用石鹸、うがい薬、入れ歯洗浄剤、車又はカーペット用シャンプー、フロ洗浄剤を含む液体洗浄剤及び殺菌剤;ヘアシャンプー、及びヘアリンス;シャワーゲル及び泡バス及び金属洗浄剤を含み、並びに漂白用添加剤及び「汚染物用棒」(stain stick)又は事前処理タイプの様な洗浄補助剤を含む。
【0148】
特に断らない限り、本明細書に記載の成分又は組成物のレベルはすべて、その活性レベルに関して言うものであり、不純物、例えば、市販の商品に存在する残留溶媒又は副生物を除いたものである。
【0149】
酵素成分の重量は全活性タンパク質に基づく。全てのパーセント及び比率は、特に示さない限り重量に基づき計算される。全てのパーセント及び比率は、特に示さない限り全組成に基づき計算される。
【0150】
「洗浄活性」(cleaning activity)はタンパク質分解、加水分解、洗浄又は本発明の他のプロセスの間に存在する条件下でプロテアーゼにより達成される洗浄能力を指す。ある実施の態様においては、洗浄能力は、汚れを標準の洗濯条件に付した後に、種々のクロマトグラフィー、分光光度計又は他の数量測定法によって決定される、草、血液、ミルク、又は卵のタンパク質の様な酵素に反応する汚れに関する種々の洗浄アッセイにより決定される。代表的なアッセイには、実施例に記載の方法及びWO 99/34011及び米国特許第6,605,458号(両文献は参照により本明細書に組み入れられる)に記載のものを含むがこれに限定されるものではない。
【0151】
プロテアーゼの「洗浄に効果的な量」(cleaning effective amount)は上で述べたプロテアーゼの量を言い、特定の洗浄組成物において所望のレベルの酵素活性を達成する量である。その様な効果的な量は当業者により容易に確認され、また多くの要因、例えば、使用される特定のプロテアーゼ、洗浄方法、洗浄組成物中の特定の組成物、液体又は乾燥(例えば、粒状、棒状)組成物が必要か等に基づく。
【0152】
本明細書で用いる「洗浄添加材料」(cleaning adjunct material)は特定のタイプの所望の洗浄組成物及び製品の形(例えば、液体、粒状、粉末、棒状、ペースト、霧状、錠剤、ゲル、又は泡組成物)のために選択される任意の液体状、固体状又は気体状材料を指し、その材料はまた好ましくは組成物中で用いられるプロテアーゼ酵素と適合性のあるものが良い。ある実施の態様においては粒状組成物は「コンパクト」な形のものであり、他の実施の態様においては液体組成物は「濃縮された」形である。
【0153】
洗浄活性について言う場合「強化された能力」(enhanced performance)及び「改良された洗濯能力」(improved wash performance)の用語は、標準の洗濯サイクル及び/又は複数の洗濯サイクルの後に通常の評価により決定される、ある酵素に反応する汚れ、例えば、卵、ミルク、草、血液の汚れに対する向上し又は増大した洗浄活性を言う。
【0154】
洗浄活性について言う場合「低減した能力」(diminished performance)の用語は標準の洗濯サイクルの後に通常の評価により決定される、ある酵素に反応する汚れ、例えば、卵、ミルク、草、血液の汚れに対する低減し又は低下した洗浄活性を言う。
【0155】
洗浄活性について言う場合「相対的能力」(comparative performance)は、比較プロテアーゼ(例えば、商業的に入手可能なプロテアーゼ)の少なくとも60%, 少なくとも70%, 少なくとも80% 少なくとも90% 少なくとも95%の洗浄活性を指す。洗浄能力は本発明のプロテアーゼを、標準の洗濯サイクル条件を経た後に、通常の分光光度計又は他の分析測定法によって決定される、血液、ミルク、及び/又はインク(BMI)の様な酵素に反応する汚れに関する種々の洗浄アッセイにより他のプロテアーゼと比較することにより決定することができる。
【0156】
本明細書で用いる「低洗剤濃度」(low detergent concentration)系は洗濯水中に約800ppmより低い洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。日本の洗剤は
通常低洗剤濃度系であると考えられる。その理由は日本の洗剤は洗濯水中に通常約667 ppmの洗剤成分を含むからである。
【0157】
本明細書で用いる「中程度の洗剤濃度」(medium detergent concentration)系は洗濯水中に約800ppmから約2000ppmの間の洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。北米の洗剤は通常洗濯水中に約975ppmの洗剤成分が存在するため、一般的に中程度の洗剤濃度系と考えられる。ブラジルの洗剤は通常洗濯水中に約1500ppmの洗剤成分を含む。
【0158】
本明細書で用いる「高洗剤濃度」(high detergent concentration)系は洗濯水中に約2000ppmより大きい洗剤成分が存在する場合の洗剤を含む。ヨーロッパの洗剤は通常洗濯水中に約3000−8000ppmの洗剤成分を含むため一般的に高洗剤濃度系と考えられる。
【0159】
本明細書で用いる「繊維洗浄組成物」(fabric cleaning composition)は、洗浄用添加組成物及び汚れた繊維(例えば、衣服、リンネル、及び他の繊維材料)を浸し及び/又は事前処理するのに適した組成物を含む、手洗い及び/又は機械洗い洗浄組成物を含む。
【0160】
本明細書で用いる「非繊維洗浄組成物」(non-fabric cleaning composition)は、食器洗浄用組成物、口内洗浄組成物、入れ歯洗浄組成物、パーソナル洗浄組成物を含む非織物(すなわち、非繊維)表面洗浄組成物を含むがこれに限定されるものではない。
【0161】
本明細書で用いる洗浄組成物の「コンパクト」(compact)な形のものはその密度、及び組成については無機充填塩の量に最も反映される。無機充填塩は粉末形の洗剤組成物に従来用いられる成分である。従来の洗剤組成物では、充填塩は主要な分量、典型的には全組成物の重量の17-35%存在する。対照的にコンパクトな組成物では、充填塩は全組成物の15%を超えない量で存在する。ある実施の態様においては、充填塩は組成物の重量の10%を超えない、より好ましくは5%を超えない量で存在する。ある実施の態様においては無機充填塩は硫酸塩及び塩化物のアルカリ及びアルカリ土類金属塩から選択される。好ましい充填塩は硫酸ナトリウムである。
【発明の詳細な説明】
【0162】
本発明は関心の対象である、ある環境条件下でその能力を最適化するタンパク質の操作方法を提供する。ある実施の態様においては、本発明はある特定の環境条件で触媒活性を最適化する酵素を操作する方法を提供する。ある好ましい実施の態様においては、本発明は、開始又は親酵素に比べて洗剤製剤で改良された能力を示す酵素変異体を得るために酵素(例えば、金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼ)のネット表面電荷及び/又は表面電荷分布を変える方法を提供する。
【0163】
ある好ましい実施の態様においては、本発明は少なくとも一つの洗剤製剤において改良された洗濯能力を持つ少なくとも一つの変異体中性金属プロテアーゼ及び/又は変異セリンプロテアーゼを含む方法及び組成物を提供する。ある特に好ましい実施の態様において、本発明はバチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)中性金属プロテアーゼの変異体を提供する。他の特に好ましい実施の態様において、本発明はセルロモナス ボゴリエンシス(Cellulomonas bogoriensis)分離株69B4セリンプロテアーゼ変異体を提供する。本発明はこれに限定されるものではないが、特に洗浄、漂白及び殺菌を含む応用に適している。さらに本発明は不都合な環境条件下でその触媒活性を最適化する酵素の操作方法を提供する。特に本発明は洗剤製剤で改良された能力を示す酵素変異体を得るために金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼのネット表面電荷及び/又は表面電荷分布を変える方法を提供する。
【0164】
多くのタンパク質及び酵素は、洗濯洗剤に含まれると変性に非常に反応し及び不可逆的変性を受ける。界面活性剤を水中でのイオン(電荷)特性により分類すると、洗濯洗剤はアニオン性、カチオン性及び非イオン性界面活性剤を含むことが知られている。これらの成分はタンパク質分子の表面電荷と相互に反応し、タンパク質の変性(例えば、構造及び機能の消失)をもたらす。
【0165】
2つのプロテアーゼ、ASP(セリンプロテアーゼ)及びNprE(中性金属プロテアーゼ)は、LASのような界面活性剤を含む洗剤製剤に置かれると非常に不安定となる。LASはアニオン性界面活性剤であり、全体のマイナス電荷がタンパク質表面のアミノ酸のプラスに荷電した側鎖との反応を高める。その様な静電相互反応は、静電相互反応の安定性を弱め又は乱すことによりタンパク質の固有の安定性に影響する。安定性を失ったタンパク質は開かれて(unfold)不活性となる。
【0166】
プロテアーゼ表面の、電荷を帯びた残基の分布は洗濯能力に大きく影響することが判明した。本発明のタンパク質操作法は、洗剤製剤中のプロテアーゼのその能力を向上させるため、プロテアーゼのネット表面電荷及び/又は表面電荷分布を最適化することにより一以上の特性において効果的に最適化するものである。
【0167】
本発明の方法を例示するものとして金属プロテアーゼ及びセリンプロテアーゼが使用されるが、本発明はこれらの特定の酵素に限定されるものではない。事実、本発明では種々の酵素及び他のタンパク質を使用することができる。
【0168】
簡潔に言うと、本発明のある実施の態様においては本方法は関心の対象である酵素中の多くのアミノ酸残基に部位評価ライブラリー(Site Evaluation Library)を生成し、及び関心の対象である特性について変異酵素をアッセイすることを含む。これにより関心の対象となる特性について、最適の電荷の変化(親酵素との比較で)のみならず有益な、中立の及び有害な突然変異を同定することが可能になる。ある代替的な実施の態様においては、全ての残基の電荷を走査して、各部位(例えば、中性残基をプラス及び/又はマイナス電荷に、及び荷電残基を反対の電荷を持つ及び/又は中性残基に突然変異させる)において電荷を変える突然変異を生ずる変異体を生成する。
【0169】
ある更に好ましい実施の態様においては、この方法は組み合わせ「電荷バランスのとれた」(charge-balanced)ライブラリーを生成することを含み、このライブラリーは所望の方向に酵素の電荷を変える有利な突然変異、及び反体の方向に電荷を変える有利な又は中立の突然変異を含み、そして電荷バランスのとれたライブラリーの関心の対象となる特性をアッセイすることを含む。この様に酵素の表面電荷及び表面電荷分布は同時に最適化され、複数の特性において改良された酵素変異体を同定することが可能である。
【0170】
本発明の方法はプロテアーゼのみならず種々の種類の酵素(例えば、アミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ、クチナーゼ、マンナーゼ、リパーゼ等)の能力を改良することができる。事実、本発明は特定の酵素又は酵素の種類を限定するものでない。さらに本発明は特定の表面電荷及び電荷分布を必要とする非酵素タンパク質特性の最適化に用いることができる(例えば、発現、細胞―表面結合、調剤の容易性等)。
【0171】
I. 改良された特性を持つASP変異体の生成
部位評価ライブラリー(Site Evaluation Libraries(SELs))は成熟タンパク質の各アミノ酸が殆んどの他のアミノ酸により置換されているASPのために構築された(米国特許出願第10/576,331号及びWO 2005/052146を参照願いたい。これらの文献はSELに関係するものとして参照により本明細書に組み入れられる)。能力を向上させる単一の突然変異はその後組み合わされその能力が再試験された。続くSELの分析及び突然変異の組み合わせデータは分子の表面電荷の変化により汚れの除去能力が極めて大きく減衰していることを示した。
【0172】
洗剤中のASPの汚れ除去能力に対する表面電荷の効果を決定した後、ASP分子の表面電荷を計画的に変化させるように規定のライブラリーが設計され変異体の効果が決定された。液体TIDE中の洗濯能力を向上させるために、野生型に比べたASP分子の電荷の変化が抑制された(例えば、+2から−2の範囲であり、最適の能力約0から−1で生じる)。したがって、改良された変異体の組み合わせは、この加算がこれらの条件下でASPの全電荷の変化の制限を越える場合でも加算的ではない(例えば、−2未満又は+2より大きい)。これまでに認識されていない電荷の変化の制限を決定することにより、向上した能力を得るための最適な電荷を持つ分子を生成する突然変異ライブラリーの設計を可能となる。
【0173】
組み合わせ「電荷バランスのとれた」(charge−balanced)ライブラリーが設計され、構築され及びスクリーニングされた(米国特許出願第11/583,334号を参照願いたい。本文献は電荷バランスのとれたライブラリーに関するものについて参照により本明細書に組み入れられる)。殆んどの可能な組み合わせ(230/256の可能な変異体)においてライブラリーは4つの有利なマイナス電荷突然変異及び4つの非有害プラス電荷突然変異(マイナス電荷変異をバランスさせるため)を含む。ライブラリーは多くの特性に付いてスクリーニングされ、酵素変異体は関心の対象となる一以上の特性において高い活性を持つことが確認された。
【0174】
ある実施の態様においては、最適の電荷がある酵素について決定されると、最適な電荷/電荷分布を持つ酵素変異体を同定するため天然の分離株のスクリーニングも実施される。
【0175】
II.改良された能力を持つNprE変異体の生成
ASPについて採られたアプローチが次に完全に異なるプロテアーゼ骨格に拡大された。NprEのSELが生成され、洗剤中の汚れ除去能力がスクリーニングされた(例えば、米国特許出願第11/581,102号を参照願いたい。本文献はSELに関わる部分について参照により本明細書に組み入れられる)。極めて改良されたBMI洗浄能力を持つ突然変異体が同定された。全ての改良された突然変異体がNprE分子にプラスの電荷を与えた。電荷のバランスのとれたアプローチがNprEのネット表面電化及び表面電荷分布を最適化するために使用された。NprEの場合、分子の全体の電荷が野生型タンパク質のそれよりもよりプラスである場合に、洗濯能力は極めて大きく向上した。BMIでの最適の洗濯能力は、タンパク質上の電荷が野生型タンパク質に比べて+1又は+2である場合に得られた。
【0176】
III. 有益な酵素変異体の生成のための一般的な方法
本明細書に記載の様に、BMIミクロ材料見本アッセイでの洗濯能力及び酵素の表面の全体の電荷の間の関係が決定された。本発明の方法は種々の酵素及びタンパク質(例えば、アミラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ、クチナーゼ、マンナーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ及び他の酵素)の能力を向上させるために使用することができる。加えて、これらの方法は、これに限定されるものではないが、発現、熱安定性、界面活性剤及び/又はキレート剤での安定性、及び、pHと活性の関係を含むタンパク質の望ましい他の特性を向上させるために使用することができる。
【0177】
簡潔に言えば、溶媒に約35%より多く、好ましくは約50%より多く、最も好ましくは約65%より多く露出している野生型酵素の表面にあるアミノ酸残基が同定され、各野生型残基が複数の他の天然発生アミノ酸により置換される部位評価ライブラリーが生成される。さらに、一以上の特性において改良された能力を示す変異酵素のネットの電荷の変化がこの構造―機能の関係を規定するものとして注目される。更なる実施の態様においては、ある酵素について最適の電荷が決定されると天然の分離されたものは、最適の電荷及び最適の電荷分布を持つ酵素変異体を同定するためにスクリーニングされる。
【0178】
実験
以下の実施例は本発明のある好ましい実施の態様及び特徴を示し及び説明するために提供するものであって本発明の範囲を限定するものでとして理解してはならない。
【0179】
以下に開示される実験においては、以下の略称が用いられる:
℃(摂氏度);rpm(分当り回転数);HO(水);HCL(塩酸);aa及びAA(アミノ酸);bp(塩基ペア);kb(キロベースペア);kD(キロダルトン)gm(グラム);μg及びug(ミクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μl及びυl(ミクロリットル);ml (ミリリットル); mm (ミリメータ); nm (ナノメータ); μm 及び um (ミクロメータ); M (モルの); mM (ミリモルの); μM及び uM (ミクロモルの); U (単位); V (ボルト); MW (分子量); sec (秒); min(s) (分); hr(s) (時間); MgCl2 (塩化マグネシウム); NaCl (塩化ナトリウム); OD280 (280 nmの光学濃度); OD405 (405 nmの光学濃度); OD600 (600 nmの光学濃度); PAGE (ポリアクリルアミド ゲル電気泳動法); EtOH (エタノール); PBS (リン酸緩衝生理食塩水 [150 mM NaCl, 10 mM リン酸ナトリウム緩衝液, pH 7.2]); LAS (ラウリル硫酸ナトリウム); SDS (ドデシル硫酸ナトリウム); Tris (トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン); TAED (N,N,N'N'-テトラアセチルエチレンジアミン); BES (スルホンポリエステル); MES (2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物; f.w. 195.24; Sigma # M-3671); CaCl2 (無水塩化カルシウム; f.w. 110.99; Sigma # C-4901); DMF (N,N-ジメチルフォルムアミド, f.w. 73.09, d = 0.95); Abz-AGLA-Nba (2-アイノベンゾイル-L- アラニルグリシル-L-ロイシル-L-アラニノ-4-ニトロベンジルアミド, f.w. 583.65; Bachem # H-6675, VWR catalog # 100040-598); SBGl % ("Super Broth with Glucose"; 6 g Soytone [Difco], 3 g イースト抽出、6 g NaCl, 6 g グルコース);pHは、技術分野で知れらている方法を用いて殺菌前にNaOHによって7.1に調整された;
; w/v (重量対容積); v/v (容積体容積); Npr及びnpr (中性金属プロテアーゼ); SEQUEST(登録商標) (SEQUEST データベースサーチプログラム、, University of Washington); Npr及びnpr (中性金属プロテアーゼ遺伝子); nprE 及びNprE (バチルス アミロリケファシエンス中性金属プロテアーゼ); PMN (精製されたMULTIFECT(登録商標)金属プロテアーゼ); MTP (マイクロタイタープレート);MS (質量分光法); SRI (汚れ除去指数); TIGR (ゲノム調査機構(The Institute for Genomic Research)
, Rockville, MD); AATCC (米国繊維化学者・色彩技術者協会(American Association of Textile and Coloring Chemists)); Procter & Gamble (Procter & Gamble, Inc., Cincinnati, OH); Amersham (Amersham Life Science, Inc. Arlington Heights, IL); ICN (ICN Pharmaceuticals, Inc., Costa Mesa, CA); Pierce (Pierce Biotechnology, Rockford, IL); EMPA (スイス材料検査及び試験協会(Eidgenossische Material Prufungs und Versuch Anstalt), St. Gallen, Switzerland); CFT (材料試験センター(Center for Test Materials)、Vlaardingen, The Netherlands); Amicon (Amicon, Inc., Beverly, MA); ATCC (American Type Culture Collection, Manassas, VA); Becton Dickinson (Becton Dickinson Labware, Lincoln Park, NJ); Perkin-Elmer (Perkin-Elmer, Wellesley, MA); Rainin (Rainin Instrument, LLC, Wobura, MA); Eppendorf (Eppendorf AG, Hamburg, Germany); Waters (Waters, Inc., MiIf ord, MA); Geneart (Geneart GmbH, Regensburg, Germany); Perseptive Biosystems (Perseptive Biosystems, Ramsey, MN); Molecular Probes (Molecular Probes, Eugene, OR); BioRad (BioRad, Richmond, CA); Clontech (CLONTECH Laboratories, Palo Alto, CA); Difco (Difco Laboratories, Detroit, MI); GIBCO BRL 又はGibco BRL (Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD); Epicentre (Epicentre Biotechnologies, Madison, WI); Zymo Research (Zymo Research Corp., Orange, CA); Integrated DNA Technologies (Integrated DNA Technologies, Inc., Coralville, IA): New Brunswick (New Brunswick Scientific Company, Inc., Edison, NJ); Thermoelectron (Thermoelectron Corp., Waltham, MA); BMG (BMG Labtech, GmbH, Offenburg, Germany); Finnzymes (Finnzymes OY, Finland) Qiagen (Qiagen, Inc., Valencia, CA); Invitrogen (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA); Sigma (Sigma Chemical Co., St. Louis, MO); DuPont Instruments (Asheville, NY); Global Medical Instrumentation or GMI (Global Medical Instrumentation; Ramsey, MN); MJ Research (MJ Research, Waltham, MA); Infors (Infors AG, Bottmingen, Switzerland); Stratagene (Stratagene Cloning Systems, La Jolla, CA); Roche (Hoffmann La Roche, Inc., Nutley, NJ); Ion Beam Analysis Laboratory (Ion Bean Analysis Laboratory, The University of Surrey Ion Beam Centre (Guildford, UK); TOM (Terg-o-Meter); BMI (blood, milk, ink); BaChem (BaChem AG, Bubendorf, Switzerland); Molecular Devices (Molecular Devices, Inc., Sunnyvale, CA); MicroCal (Microcal, Inc., Northhampton, MA); Chemical Computing (Chemical Computing Corp., Montreal, Canada); NCBI (National Center for Biotechnology Information); GE Healthcare (GE Healthcare, UK).
実施例1
アッセイ
以下に記載のアッセイが以下に述べる実施例で実施された。以下に記載の手続きからの逸脱部分については実施例に記載する。これらの実験では反応の終了後に形成された製品の吸光度の測定に分光光度計を用いた。材料見本の反射率の測定には反射率計を使用した。
【0180】
A.
96ウエル マイクロタイタープレート(MTP)でのタンパク質含有量決定のためのBCAアッセイ
これらのアッセイでは、MTPスケール上でプロテアーゼサンプル中のタンパク質濃度の決定にBCA (ビシンコニン酸; Pierce)アッセイが用いられた。このアッセイシステムでは使用された化学品及び試薬溶液は:
BCA タンパク質アッセイ試薬及びPierce Dilution 緩衝液 (50 mM MES, pH 6.5, 2mM CaCl2, 0.005% TWEEN(登録商標)-80)である。
【0181】
使用された機器はSpectraMAX (type 340) MTP リーダーであり、MTPはCostar (type 9017)製であった。
【0182】
テストでは、200 μl BCA試薬が各ウエルにピペットで採られ、続いて20 μl希釈緩衝液が加えられた。十分攪拌後にMTPは37℃で30分培養された。空気の泡が除去され、各ウエル内の溶液の吸光度(OD)が562nmで計測された。
【0183】
タンパク質濃度を決定するため、このサンプルの計測数値よりノイズ数値が差し引かれた。OD562値がタンパク質標準(精製タンパク質)についてプロットされ、標準曲線が得られた。サンプルのタンパク質濃度が標準曲線から推定された。
【0184】
B.プロテアーゼの能力をテストするためのミクロ材料見本
このアッセイで使用した洗剤は酵素を含んでいなかった。使用した機器はEppendorf Thermomixer及びSpectraMAX (type 340:分子装置) MTPリーダーであった。MTPはCostar (type 9017)製であった。
【0185】
洗剤の調製((TIDE(登録商標) 2X Ultra, Clean Breeze液体洗濯洗剤 (Procter & Gamble); 米国洗濯条件)
Milli-Q水が6 gpgの硬度(Ca/Mg=3/1)に調製され、0.78 g/1 TIDE(登録商標)2X Ultra, Clean Breeze洗剤が加えられた。洗剤は製剤中に存在する全ての酵素を不活性にするために1時間95℃で事前に予備加熱された。洗剤溶液は15分攪拌された。その後5 mM HEPES(遊離酸)が加えられ、pHが8.2に調整された。
【0186】
ミクロ材料見本
0.25インチ円状直径のミクロ材料見本はCFT Vlaardingenから得た。材料見本を切断する前に、織物(EMPA 116)が水で洗濯された。一つのミクロ材料見本が各96ウエルマイクロタイタープレートの各ウエルに置かれた。
【0187】
試験方法
所望の洗剤溶液が上に述べた様に生成された。Thermomixerを25°Cで平衡させた後、190 μlの洗剤溶液がMTPのミクロ材料を含む各ウエルに加えられた。この混合物に10 μlの希釈酵素溶液が添加され、最終酵素濃度がlμg/ml(BCAアッセイにより決定)とした。MTPはテープでシールされ培養器に30分間置かれ、1400rpmで攪拌された。適当な条件下で培養するのに続いて、各ウエルから100 μlの溶液が採られ新たなMTPに移された。新しいMTPを含む各ウエル100 μlの溶液はMTP SpectraMaxリーダーを用いて405nmで読み取られた。ミクロ材料見本及び洗剤を含むが酵素を含まない実験対照(コントロール)及び何も含まない対照(ブランク コントロール)も含んでいた。
【0188】
米デンプン ミクロ材料アッセイ
米デンプンアッセイはアミラーゼの能力の試験である。洗剤が本明細書に記載の様に準備された。使用した装置はNew Brunswick Innova 4230 振動器/培養器及びSpectraMAX (タイプ340) MTP リーダーである。MTPはCorning (タイプ3641)より入手した。オレンジ着色材料見本を含む古い米デンプン(CS-28)は試験材料センター(Center for Test Materials) (Vlaardingen, Netherlands).より入手した。0.25インチ円形のミクロ材料見本を切る前に繊維は水で洗浄された。2つのミクロ材料見本が各96ウエル マイクロタイタープレートの各ウエルに置かれた。試験洗剤は20℃(北米)及び40℃(ヨーロッパ)で平衡にされた。
【0189】
190 μlの洗剤溶液がミクロ材料を含むMTPの各ウエルに加えられた。この混合物に10 μlの希釈酵素溶液が添加された。MPTは粘着ホイルでシールされ1時間培養器に置き、所望の試験温度(通常20℃又は40℃)で750 rpmで撹拌された。培養に続いて各ウエルから150 μl溶液が新しいMTPに移された。洗浄を数値化するため、このMTPをSpectraMAX MTPリーダーを用いて488nmで計測した。ミクロ材料見本及び洗剤を含むが酵素を含まない実験対照(コントロール)及び何も含まない対照も含んでいた。
【0190】
酵素の能力の計算
得られた吸光度は空試験値(すなわち、酵素の存在しない場合のミクロ材料見本を培養した後に得た)に対比し修正された。得られた吸光度は試験された酵素の加水分解活性の測定値を与えるものであった。
【0191】
H.洗剤の熱による不活性
市販の洗剤配合の熱による不活性化は、非酵素成分の特性を維持しつつ、何れのタンパク質成分の酵素活性をも破壊する。したがって、この方法は本発明の酵素変異体の試験をするために、市販の洗剤を用いるのに好適である。北米(NA)及び西欧(WE)の高密度液体洗濯(HDL)洗剤で、熱不活性は事前に重量を測定した液体洗剤(ガラス瓶中の)を95℃の温浴バスに2時間置いて行った。北米(NA)及び日本(JPN)の高密度顆粒洗濯(HDG)洗剤の熱不活性の培養時間は8時間であり、西欧(WE)HDG洗剤では5時間であった。NA及びWE自動食器洗い(ADW) 洗剤の熱不活性のための培養時間は8時間であった。洗剤はその地域のスーパマーケットから購入した。不活性のパーセントを正確に決定するために、加熱しない及び加熱した洗剤の両方を共にアッセイした。洗剤は溶解後5分以内に。酵素活性はsuc-AAPF-pNAアッセイにより試験した。
【0192】
熱不活性洗剤中の酵素活性の試験のため、洗剤の希釈標準溶液が熱不活性の備蓄から作られた。水の硬度(6 gpg又は12 gpg)の水及び緩衝液の適量が所望の条件(表1−1)に合う様に洗剤溶液に加えられた。溶液は瓶を撹拌及び逆さにして混合された。
【数1】

【0193】
アミラーゼ活性決定のためのBodipy(有機ホウ素色素)デンプンアッセイ
BodipyデンプンアッセイをEnzChek(登録商標)Ultra Amylase Assay Kit (E33651, Invitrogen)を使用して行った。DQ デンプン基質の1 mg/mL原液が100 μLの50mM、pH4.0の酢酸ナトリウム中の凍結乾燥された基質を含む小瓶の内容量を溶解することにより作られた。小瓶が約20秒撹拌され、暗室に、室温で置かれ、溶解するまで時々混合された。900 μLのアッセイ緩衝液 (2.6 mM CaCl2 pH 5.8を含む50 mM酢酸ナトリウム)が加えられそして小瓶は約20秒撹拌された。基質溶液は4℃で使用可能になるまで、暗室に、室温で保存された。アッセイのため、DQ基質の希釈標準溶液100 μg/mLがアッセイ緩衝液中の1 mg/mL基質溶液から作られた。190 μLの100 μg/mL基質溶液が96-ウエル平底ミクロタイタープレートの各ウエルに添加された。10 μLの酵素サンプルがウエルに加えられ、800 rpmでサーモミキサーを用いて30秒混合された。緩衝液及び基質のみを含む(酵素を含まない)ブランクサンプルがアッセイに含まれていた。蛍光強度の変化率が蛍光ミクロタイタープレートリーダーで25℃で5分間測定された(励起:485nm、蛍光:520nm)。
【0194】
K.アミラーゼによるデンプン密度の減少の決定
このアッセイではコーンデンプン基質溶液の粘度の減少が粘度計により測定された。30%コーンデンプン基質スラリーがコーン粉乾燥固形物によりバッチモードで蒸留水で新たに作られ硫酸を用いてpH5.8に調整された。各運転毎に50グラムのスラリー(15グラム乾燥固形物)が重量が計測され10分間事前培養され70℃まで暖められた。アミラーゼを加え75rpmの回転速度で回転させると温度は直ちに70℃から85℃に上昇した。スラリー及びアミラーゼの温度が85℃に達すると、温度は一定に保たれ粘度がさらに30分モニターされた。
【0195】
実施例2
バチルス スブチリス (Bacillus subtilis)中のNprEプロテアーゼの生成
この実施例では、バチルス スブチリスでNprEを生成する実験についてのべる。特にバチルス スブチリスにpUBnprEプラスミドを形質転換するために用いられる方法について述べる。特に形質転換は技術分野で知られた方法で実施された(例えば、WO 02/14490及び米国特許出願第11/581,102号を参照。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。以下に記載するDNA配列(バチルス アミロリケファシエンス由来のnprE リーダー, nprE プロ(pro)及びnprE成熟DNA配列)はNprE前駆体タンパク質をコードする:
【数2】

【0196】
上の配列において太字は成熟NprEプロテアーゼをコードするDNAを示し、標準フォントはリーダー配列(nprE リーダー)を示し、下線部分はプロ配列(nprE プロ)を示す。以下(配列番号2)に示すアミノ酸配列(NprEリーダー, NprE プロ及びNprE成熟DNA配列)は完全長NprEタンパク質に対応する。この配列では下線部分はプロ配列を示し太字は成熟NprEプロテアーゼを示す。

【数3】

【0197】
成熟NprE配列は配列番号3として記載する。この配列はこの明細書に記載する変異体ライブラリーを生成するベースとして用いられた。

【数4】

【0198】
pUBnprE発現ベクターは、2つの特異プライマを用いて、PCRによりバチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)の染色体DNAからnprE遺伝子を増幅することにより構築された。
【0199】
オリゴAB 1740:
【数5】

【0200】
オリゴAB 1741:
【数6】

【0201】
PCRはPhusion High Fidelity DNAポリメラーゼを用いて熱サイクラー上で実施された(フィンザイム(Finnzyme))。PCR混合物は10 μl 5x緩衝液(Finnzymes Phusion)、lμl 10mM dNTP, 1.5μl DMSO, 各プライマーlμl、lμl Finnzymes Phusion DNA ポリメラーゼ, lμl 染色体DNA 溶液50ng/μl, 34.5 μl MiIIiQ 水を含んでいた。使用されたPCR手順は以下の通りである:
PCR手順:
1) 30 秒98℃;
2) 10秒98℃;
3) 20秒55℃;
4) 1 分 72℃;
5) 2 から4のステップを25サイクル;
6) 5 分72°C.;
この結果1.9 kb DNA断片が生成され、このDNA断片はBgIII及びBcII DNA制限酵素を用いて消化された。複数コピーバチルスベクターpUBl10 (例えば、Gryczan, J. Bacterid., 134:318-329 [1978]を参照)はBamHIにより消化された。PCR断片xBgIIIxBcII はその後pUB110 x BamΗIベクター中で結紮され
pUBnprE発現ベクターを形成した。
【0202】
pUBnprE はバチルス スブチリス(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK)株に形質転換された。バチルス スブチリスへの形質転換はWO 02/14490に記載の様に実施された。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。pUBnprEベクターを宿すバチルス スブチリス形質転換体の選択的成長は、20 mg/L ネオマイシンにより、25 ml MBD媒体(定義されたMOPSベースの媒体)を含む振とうフラスコでなされた。MBD媒体は、NH4Cl2, FeSO4 及びCaCl2が塩基媒体から除かれたこと、3 mM K2HPO4 が用いられたこと、及び塩基媒体に60 mM 尿素、75 g/Lグルコース、及び1 % ソイトン(soytone)が追加されたことを除いては本質的に技術分野で知られた方法により生成されたNeidhardt他, J Bacteriol, 1 19: 736-747 [1974]を参照)。また、微量栄養素は、100X原液として、1リットル中に400 mg FeSO4 .7H2O, 100 mg MnSO4 .H2O, 100 mg ZnSO4.7H2O, 50mg CuCl2.2H2O, 100 mg CoCl2.6H2O, 100 mg NaMoO4.2H2O, 100 mg Na2B4O7.10H2O, 10 mlの1M CaCl2,及び10 ml の0.5 Mクエン酸ナトリウムを含むものであった。
【0203】
培養液は培養器/振とう器(Infors)で37℃で3日間培養された。この培養により、プロテアーゼアッセイにより示されたタンパク質分解活性を持つ分泌NprEプロテアーゼが生成された。ゲル分析がNuPage Novex 10% Bis-Tris ゲル (Invitrogen, Cat.番号NP0301BOX)を用いて実施された。分析のためのサンプルを準備するため、2容量の上澄が、1容量の1M HCl、1容量の4xLDS サンプル緩衝液 (Invitrogen, Cat.No. NP0007)、及び1% PMSF (20 mg/ml)と混合され、その後に70℃で10分加熱された。
【0204】
その後、各サンプル25 μLが、10 μLのSeeBlue プラス2 つの事前に染色された標準(Invitrogen, Cat.No.LC5925)と共にゲルに導入された。この結果は、この実施例に記載のNprEクローン戦略は、バチルス スブチリス中で活性を持つNprEを生成するのに適していることを明確に示した。
【0205】
実施例3
バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)におけるASPプロテアーゼの生産
この実施例では、バチルス スブチリスで69B4 プロテアーゼ(また本明細書で「ASP」、「Asp」及び「ASP プロテアーゼ」及び「Aspプロテアーゼ」とも言う)を生成するための実験についてのべる。特にこの方法はpHPLT-ASP-Cl-2プラスミドをバチルス スブチリスに形質転換するために用いられる。形質転換は技術分野で知られた方法で実施された(例えば、WO 02/14490及び米国特許出願第11/583,334号を参照。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)中でのASPの発現を最適にするために合成DNA配列がDNA2.0により生成され、これらの発現実験で用いられた。バチルス(Bacillus)種の使用に適したコドンを持つ以下に記すDNA配列(合成ASP DNA配列)は野生型ASP前駆体タンパク質をコードする:
【数7】

【0206】
上の配列では、太字は成熟ASPプロテアーゼをコードするDNAを、標準フォントはリーダー配列(ASPリーダー)、及び下線を付したものはN末端及びC末端プロ配列を示す。以下に示すアミノ酸配列(配列番号:7)は完全長ASP配列に対応する。この配列では、下線を付したものはプロ配列を、太字は成熟ASPプロテアーゼを示す。
【数8】

【0207】
成熟ASP配列は配列番号8として記載する。この配列は本明細書に記載の変異体ライブラリーを作るベースとして用いられた。
【数9】

【0208】
Asp配列カセットはpXX-Kpnlベクターで構築され、続いてバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)でASPを発現させるpHPLTベクターにクローンされた。pXX-Kpnlベクターは発現を進めるaprEプロモータ(バチルス スブチリス (Bacillus subtilis))、cat遺伝子、及びバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)でコピー数を増幅する重複aprEプロモータを持つpUCベースのベクターである。bla遺伝子は大腸菌で選択的成長を可能にする。
【0209】
KpnIは、aprEプロモータ領域の下流で、リボソーム結合部位に導入されると、HindIII部位とともにpXX-KpnIでAsp配列カセットのクローンを可能にする。pHPLT の誘導体であるpHPLT-EBS2c2 (Solingen他、Extremophiles 5:333-341 [2001])はバチルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)の熱安定的アミラーゼLAT プロモータ(PLAT)を含み、ASP発現構築体をクローンするXbaI及びHpaI 制限部位が続く。Asp発現カセットは、25 Asp C末端シグナルペプチドアミノ酸に融合した5スブチリシンAprE N末端シグナルペプチドアミノ酸より構築されたハイブリッド シグナルペプチド(配列番号9)をコードするDNAを含むpXX-KpnI ベクター中でクローンされた。
【数10】

【0210】
ハイブリッドASPシグナルペプチドは以下のDNA配列によりコードされる。
【数11】

【0211】
pXX-KpnI ベクターでクローンされたAsp発現カセットは大腸菌中に形質転換された(Electromax DHlOB, Invitrogen, Cat.No. 12033-015)。使用されたプライマ及びクローン戦略を以下に記す。続いて、発現カセットがこれらのベクターからクローンされpHPLT発現ベクターに導入されバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK)株に形質転換された。pHPLTでのAsp発現カセットクローニングのプライマ及びクローン戦略についても以下に述べる。
【0212】
プライマはMWG及びInvitrogenから入手した。Invitrogen Platinum Taq DNA polymerase High Fidelity (Catalog No. 1 1304-029)がInvitrogen指示の手順に従いPCR増幅(0.2 μM プライマ, 25から30サイクル)に使用された。Asp発現カセット及び宿主ベクターのリガーゼ反応が付着端の一般的クローンについて推奨される手順によりInvitrogen T4 DNA Ligase (Cat. No. 15224-025)を用いて完了した。
【0213】
Asp遺伝子の発現がバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)株(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK)で調査された。
【0214】
pHPLT-ASP-Cl-2プラスミドがバチルス スブチリス(Bacillus subtilis) (ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK))に転換された。形質転換は技術分野で知られている(例えば、WO 02/14490を参照。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0215】
pHPLT-ASP-Cl-2ベクターを持つバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK))形質転換細胞の選択的成長が、0.5 g/1 CaCl2に代わって0.97 g/1 CaCl2.6H2Oを用い及び20 mg/Lネオマイシンを用いて、25 ml Synthetic Maxatase Medium (SMM)を含む振とうフラスコで実施された(米国特許第5,324,653号を参照。本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。この成長によりタンパク質分解活性を持つ分泌されたASPが生成された。ゲル分析はNuPage Novex 10% Bis-Tris ゲル(Invitrogen, Catalog No. NP030 IBOX)を用いて行った。分析のためのサンプルを準備するため2容量の浮遊物が1容量のIM HCl、1容量の4xLDSサンプル緩衝液(Invitrogen, Catalog No. NP0007)及び1% PMSF (20 mg/ml)と混合され、続いて70°Cで10分加熱された。その後、各サンプル25 μLが10 μLのSeeBlue プラス2つの事前に汚染されたタンパク質標準(Invitrogen, Cat.No.LC5925)と共にゲルに乗せられた。この結果はこの実施例に示すaspクローニング戦略はバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)での活性Aspの生産に適していることを明確に示す。
【数12】




【0216】
実施例4
部位評価ライブラリー(Site Evaluation Libraries(SELs))及び部位飽和突然変異誘発ライブラリー(Site-Saturation Mutagenesis Libraries (SSMLs))の生成
この実施例においてはnprE及びasp SELsの構築で使用される方法が記述される。
【0217】
A.nprE SELsの生成
上に述べたnprE発現カセットを含むpUBnprEベクターがテンプレートDNAとして使用された。このベクターは独特のBglII制限部位を含み、これは部位評価ライブラリー構築(site evaluation library construction)において使用された。端的に言えば、nprE部位評価ライブラリーを構築するために、3つのPCR反応が実施され、その2つは突然変異生成PCRであり、突然変異させた関心の対象のコドンを成熟nprE DNA配列に導入し、3つ目のPCRは、成熟nprE配列に所望の突然変異されたコドンを含むUBnprE発現ベクターを構築するために、2つの突然変異PCRを融合させるために用いる。
【0218】
突然変異誘発の方法は、コドン−特異の突然変異アプローチに基づくものであり、特異DNAトリプレット中で全ての可能な突然変異を同時に生成するが、特異にデザインされたトリプレットDNA配列NNS (N=A,C,T又は G、S=C 又はG)を囲む25から45のヌクレオチドの長さを持つ前進(forward)及び逆(reverse)オリゴヌクレオチド プライマーを用いて実施された。NNSは突然変異されるコドンの配列に対応し、そしてその特異nprE成熟コドンにヌクレオチドをランダムに組み入れることを保証するものであった。
【0219】
プライマー名称に記載の数は特異nprE成熟コドンの位置に対応する。評価された部位は以下を含む:4, 12, 13, 14, 23, 24, 33, 45, 46, 47, 49, 50, 54, 58, 59, 60, 65, 66, 87, 90, 96, 97, 100, 186, 196, 211, 214, 228 及び280。プライマ配列の代表的なリストは米国特許出願第11/581,102号に記載されており、本文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0220】
部位評価ライブラリーを構築するために使用される追加の2つのプライマーは、BglII制限部位に隣接して位置するpUBnprE DNA配列の一部分と共に
BglII制限部位を含んでいた。これらのプライマーは、Invitrogen (脱塩、50 nmol スケール)により生成された。
【0221】
pUB-BgIII-FW GTC AGTC AGATCTTCCTTCAGGTTATGACC (配列番号15);及びpUB-BgIII-RV GTCTCGAAGATCTGATTGCTTAACTGCTTC (配列番号 16)。
【0222】
各SELの構築は、pUB-BgIII-FWプライマー及び特異nprE逆突然変異誘発プライマーを用いて2つの主PCR増幅により開始された。第2のPCRではpUB-BgIII−Rvプライマー及び特異nprE前進突然変異誘発プライマー(前進及び逆突然変異プライマーのための同等nprE 成熟コドンの位置)が使用された。
【0223】
成熟nprE配列中での突然変異の導入は、Phusion High-Fidelity DNA Polymerase (Finnzymes; Cat. no. F-530L)を用いて実施された。全てのPCRはポリメラーゼとともに供給されたFinnzymesに示す手順により実施された。主PCRの条件は:
主PCR1:
pUB-BgIII-FW プライマー及び特異NPRE 逆突然変異誘発プライマー −共に1 μL (10 μM) ;
主PCR2:
pUB-BgIII-FW プライマー及び特異NPRE 前進突然変異誘発プライマー −共に1 μL (10 μM) ;及び
5 x Phusion HF 緩衝液 10 μL
10 mM dNTP混合物 1 μL
Phusion DNAポリメラーゼ 0.75 μL (2 単位/ μL)
DMSO, 100% l μL
pUBnprE テンプレートDNA l μL (0.1 - l ng/ μL)
精製された, オートクレーブ水 50 μLまで
PCRプログラムは以下の通りであった:
30秒98℃, 30x (10 秒 98℃, 20 秒 55℃, 1,5分 72℃)及び5 分72℃、PTC-200 Peltier 熱サイクル(MJ Research)で実施。
【0224】
PCRの実験により、約2から3 kBの2つの断片が生成され、これらは関心の対象であるNprE成熟コドンの周囲に約30ヌクレオチド塩基が重なるものである。断片は、前記の2つの断片及び前進及び逆行BglIIプライマーを用いて第3のPCR反応で融合された。この融合PCRは以下の溶液を用いて実施された:
pUB-BgIII-FW プライマー及び pUB-BgIII-RV プライマー−共に1 μL (10 μM)及び
5 x Phusion HF 緩衝液 10 μL
10 mM dNTP混合物 1 μL
Phusion DNAポリメラーゼ 0.75 μL (2 単位/ μL)
DMSO, 100% 1 μL
主PCR 1 反応ミックス 1 μL
主PCR 2 反応ミックス 1 μL
精製された, オートクレーブ水 50 μLまで
PCR融合プログラムは以下の通り:
30秒98℃, 30x (10 秒 98℃, 20 秒 55℃, 2.40分 72℃)及び5 分72℃、PTC-200 Peltier 熱サイクル(MJ Research)で実施された。
【0225】
増幅された線状6.5 Kb断片は、Qiaquick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen, Cat. no. 28106)を用いて精製され、融合断片の両端に付着端を生成するためにBgIII制限部位で消化された:
- 35 μL 精製線状DNA 断片
- 4 μL REACT(登録商標)3緩衝液 (Invitrogen)
- 1 μLBglII, 10 単位/ml (Invitrogen)
反応条件:1時間、30℃
BgIIIによる消化及びQiaquick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen, Cat. No. 28106)を用いて精製された断片の結紮により、所望の突然変異を含む環状及び多重結合DNAが生成された:
- 30μL 精製BglII消化DNA 断片
- 8 μL T4 DNAリガーゼ緩衝液 (Invitrogen(登録商標)Cat. No. 46300-018)
- 1 μL T4 DNA リガーゼ, 1 単位/μL (Invitrogen(登録商標)Cat. no. 15224-017)
反応条件:16-20時間、16℃
その後、結紮された混合物はバチルス スブチリス(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK)株に形質転換された。バチルス スブチリスへの形質転換は、WO 02/14490に記載の様に実施された。本文献は参照により本明細書に組み入れられる。各ライブラリーについて、96単一コロニーが採取され、配列分析(BaseClear)及びスクリーニングの目的のために、ネオマイシン及び1.25 g/L イーストエキスを含むMOPS媒体中で成長させた。各ライブラリーは最大19 nprE部位特異変異体を含んでいた。
【0226】
変異体は、バチルス スブチリスSEL形質転換体を96ウエルMTPで20 mg/L ネオマイシン及び1.25 g/Lイーストエキスを含むMBD媒体中で37℃の温度68時間成長させることにより生成された。
【0227】
B.Asp SSMLの生成
この実施例では、Aspの部位飽和突然変異誘発ライブラリー(SSML)を起させるための実験を行う。各部位飽和変異ライブラリーはpHPLT- ASP-c 1-2発現ベクターを持つ96Bスブチリス(ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK))クローンを含んでいた。このベクターは、Aspハイブリッド シグナル ペプチド及びAsp N末端プロ及び成熟タンパク質をコードする合成DNA配列よりなるAsp発現カセットを含み、以下に述べるタンパク質(シグナルペプチド及び前駆体プロテアーゼ)の発現及び成熟Aspプロテアーゼの分泌を可能にすることが判明した。
【数13】

【0228】
189Asp部位飽和突然変異誘発ライブラリー(SSMLs)の構築はpHPLT-ASP-Cl-2ベクターを鋳型として完成された。この実験で用いられた突然変異誘発プライマは、突然変異されるAsp成熟配列のコドンに対応する位置に3重DNA配列コードNNS (N = A, C, T又はG;及びS = C又はG)を持ち、及びその位置にヌクレオチドをランダムに組み入れることを保証するものである。各SSMライブラリーの構築はpHPLT-BgIII-FWプライマ及び特異的逆方向突然変異誘発プライマ、及びpHPLT-BgIII-RVプライマ及び特異的順方向突然変異誘発プライマ(突然変異誘発プライマと同じ位置)を用いて2つのPCRの増幅で始まった。特異的順及び逆方向プライマ配列の代表的なリストについては、WO 2005/052146に記載されており、それがプライマ配列に関係している部分について本明細書に組み入れられる。pHPLT-BgIII- FWプライマは配列番号18:(GCAATCAGATCTTCCTTCAGGTTATGACC) として; 及びpHPLT-BgIII-RV プライマについては、配列番号19:GCATCGAAGATCTGATTGCTTAACTGCTTC) として規定する。
【0229】
プラチナTaq DNA DNA polymerase High Fidelity (Invitrogen. Catalog No. 11304-029) が製造者により提供された手順に従いPCR増幅(0.2 μM プライマ, 20から30サイクルまで)に使用された。端的に言うと、両方の特異的PCR混合物の、両方とも同じコドンを標的とする、1 μL の増幅されたDNA断片がpHPLT-BgIII-FW及びpHPLT-BgII-RVプライマと共に48 μLの新しいPCR反応溶液に加えられた。この融合PCR増幅(22サイクル)は、特異的Asp成熟コドンがランダムに変異しそして両端に独特のBgIII制限部位を持つ線状pHPLT-ASP-cl-2 DNAを生み出した。このDNA断片の精製(Qiagen PCR 精製キット、Catalog No. 28106)、それをBgIlIで消化、さらに精製ステップを経て、そして結紮反応(Invitrogen T4 DNA リガーゼ(Catalog No. 15224-025))により円形及び多重DNAを生成し、そのDNAはその後バチルス スブチリス (Bacillus subtilis) (ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA-comK))に形質転換された。各ライブラリーについて、37℃で一夜培養した後、96の単一コロニーを20 mg/Lネオマイシンを含み、Heart Infusion寒天プレートから採取し20 mg/ml ネオマイシン及び1.25 g/L イースト抽出物を含むMOPS媒体で4日間37℃、で成長させた(WO 03/062380を参照。本明細書に記載の抽出媒体については、本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0230】
配列分析(BaseClear)及びプロテアーゼ発現がスクリーニング目的のため各コロニーについて決定された。ライブラリー番号は1から189の範囲にわたり、各番号はランダムに変異された成熟Asp配列のコドンを表す。選択の後各ライブラリーは最大19 のAspプロテアーゼ変異体を含んでいた。
【0231】
実施例5
部位特異的突然変異誘発法による変異プロテアーゼの生成
この実施例では、QUICKCHANGE(登録商標)多部位特異的突然変異誘発法キット(Stratagene)を用いて、nprE SELを生成する方法について述べる。本明細書に記載のこれらの方法は関心の対象となる他の酵素のSELの生産に適している(例えば、Asp)。
【0232】
上の実施例4の様に、nprE発現カセットを含むpUBnprEベクターはnprE SEL及びNprE変異体生成のためのテンプレートDNAソースとしての役目を果たした。二つの方法の主な違いは、この方法では、相補的部位特異突然変異プライマーを用いて全ベクターの増幅をすることが必要であることである。
【0233】
材料
pUBnprEベクターを含むバチルス株
Qiagen Plasmid Midi Kit (Qiagen cat # 12143)
容易に溶解するリゾチーム(Ready-Lyse Lysozyme)(エピセンターcat # Rl802M)
dam メチラーゼ キット(New England Biolabs cat # M0222L)
チモクリーン ゲルDNA(Zymoclean Gel DNA )回収キット(Zymo Research cat # D4001)
nprE部位特異的突然変異プライマー、100nモルスケール、5'リン酸化され、PAGEにより精製されたもの(Integrated DNA Technologies, Inc.)
QuikChange(登録商標)複数部位特異的突然変異キット(Stratagene cat # 200514)
MJ Research PTC-200 Peltier 熱サイクラー (Bio-Rad Laboratories)
1.2% 寒天E-ゲル (Invitrogen cat # G5018-01)
TempliPhi 増幅キット(GE Healthcare cat # 25-6400-10)
コンピテントバチルス スブチリス細胞 (ΔaprE, ΔnprE, oppA, ΔspoIIE, degUHy32, ΔamyE::(xylR,pxylA- comK)
方法
一つの突然変異(上の実施例4及び米国特許出願第11/581,102号に記載の様に、nprE SELにより同定されるものであり、本文献は参照により本明細書に組み入れられる)を含むpUBnprEプラスミドを得る為に、関心の対象となる各バチルス株単一コロニーが5ml LB + l0ppm ネオマイシン管(例えば、開始培養液)に植菌するために用いられた。培養液は37℃で、225rpmで6時間振とうさせて成長させた。その後、100 mlの新しいLB + l0ppmネオマイシンが1mlの開始培養液により植菌された。
【0234】
この培養液は、225rpmで振とうさせつつ37℃で一夜成長させた。この培養に続いて、細胞ペレットを得るために十分な遠心分離を行うことにより細胞ペレットが収集された。細胞ペレットは10 ml 緩衝液Pl (Qiagen Plasmid Midi Kit)中で再けん濁された。その後l0ulのReady-Lyse Lysozymeが再けん濁細胞ペレットに添加され、37℃で30分間培養された。細胞培養液の増加させるため10ml の緩衝液P2及びP3を使用してQiagen Plasmid Midi Kitの手順が続けられた。単一nprE変異体を含む各pUBnprEプラスミドがバチルス(Bacillus)から分離された後各プラスミドの濃度が決定された。プラスミドはその後、製造者の指示に従いdam Methylase Kit (New England Biolabs)を用いてdamメチル化され一つの管当り約2 ug のpUBnprEプラスミドがメチル化された。チモクリーン ゲルDNA(Zymoclean Gel DNA)回収キットがdam メチル化されたpUBnprE プラスミドを精製し及び濃縮するために用いられた。dam メチル化されたpUBnprEプラスミドは数値化され、その後各50ng/ulの作業濃度に希釈された。
【0235】
混合された部位特異突然変異誘発プライマが各反応のため別個に準備された。例えば、pUBnprE T14R プラスミドを鋳型ソースとして用いて、混合された部位特異突然変異誘発プライマ管は10 μl のnprE-S23R, 10 μl nprE-G24R, 10 μl nprE-N46K, and 10 μl nprE-T54R (全てのプライマは各10 μM)を含むことになる。QuikChange Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(多部位特異突然変異誘発キット)(Stratagene)を用いたPCR反応が以下の製造者指示に従い実施された(例えば、一つの突然変異を含む1 μl damメチル化されたpUBnprE プラスミド(50 ng/μl), 2 μl nprE 部位特異突然変異誘発プライマ(10 μM), 2.5 μl 10x QuikChange Multi Reaction 緩衝液, 1 μl dNTP Mix, 1 μl QuikChange Multi 酵素ブレンド(2.5U/μl),及び17.5 μl 蒸留加圧滅菌水で全反応混合物量は25 μlとなる)。
【0236】
nprE変異体ライブラリーは、以下の条件を用いて増幅された:95°C, 1分 (第一のサイクルのみ), 続いて95℃で1分, 55℃ で1分, 65℃で13.5分及びサイクルを23度繰り返した。
【0237】
反応生成物は4℃で一夜保存された。その後、反応混合物は、以下の製造者の手順を用いてDpnl 消化処理が行われ (QuikChange 複数部位特異的突然変異キット(Multi Site-Directed Mutagenesis Kit)を用いて)親 pUBnprE プラスミドが消化された(すなわち、1.5μl Dpnl 制限酵素が各管に加えられ、37℃で3時間培養され; 2μl のDprcl-消化PCR 反応が1.2% E-ゲル上で分析され、PCR 反応が機能しており、親テンプレートが分解されていることが確認された。)その後、製造者の定める手順に従い、TempliPhiローリングサークル増幅法が、nprE多変異体のライブラリーサイズを大きくするため、多量のDNAを生成することに用いられた(すなわち、1μl Dpnl で処理されたQuikChange PCR Multi Site-Directed Mutagenesis) PCR, 5μl TempliPhi サンプル緩衝液, 5μl TempliPhi 反応緩衝液及び0.2μl TempliPhi 酵素ミックス、11μl までの全反応量; 30℃で3 時間培養)TempliPhi 反応物は200μl の添加により希釈され、オートクレーブ水を加えて、短時間攪拌した)。
【0238】
その後、1.5μlの希釈TempliPhi材料がコンピテントバチルス スブチリス細胞中に形質転換され、及びnprE 多変異体がLA + l0ppm ネオマイシン + 1.6% スキムミルクプレートを用いて選択された。コロニーが取出され、そして異なるnprE変異体ライブラリーの組み合わせを同定するために配列決定された。
【0239】
表5−1はこれらの実験で用いられたプライマの名称、及び配列を表す。統合されたDNA技術により全てのプライマが合成された(100nmスケール、5’リン酸化、及びPAGE精製による)。更なる突然変異誘発プライマについては米国特許出願第1 1/581,102号に記載があり、本文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【数14】

【0240】
この実施例はまたプロテアーゼ及びアミラーゼの両方について酵素電荷ラダー(enzyme charge ladder)及び組み合わせ電荷ライブラリー(combinatorial charge library)の生成について記載する。
【0241】
酵素電荷ラダー(Enzyme Charge Ladders)
関心の対象となる物理的特性の範囲に亘る多重タンパク質変異体が既存のライブラリーから選択され又は技術分野で知られている部位特異的突然変異誘発技術により生成される(例えば、米国特許出願第10/576,331号, 第11/581,102号, 及び第11/583,334号を参照)。この定義された一組のプローブタンパク質が関心の対象となる試験でアッセイされた。
【0242】
代表的なプロテアーゼ電荷ラダー変異体を次の表に示し、本明細書に記載の様にアッセイされた。この表では電荷の変化は野生型酵素と比較したものである。
【数15】




【数16】

【0243】
成熟FNAプロテアーゼのアミノ酸配列が本明細書に記載の変異体ライブラリーを作るためのベースとして用いられた。
【数17】

【数18】

【0244】
成熟GG36プロテアーゼのアミノ酸配列は本明細書に記載の変異体ライブラリーを作るためのベースとして用いられた。
【数19】

【0245】
代表的なアミラーゼ電荷ラダー変異体は次の表に示し、本明細書に記載の様にアッセイされた。この表では電荷の変化は野生型酵素と比較したものである。
【0246】
AmyS遺伝子の配列が表5−5に示す25電荷ラダー変異体の合成のためGene Oracle (Mountain View, CA)に提供された。Gene OracleはAmyS変異体を合成しpGov4ベクターにクローンし大腸菌に形質転換させた。寒天穿刺及びミニプレップから分離されたDNAが各変異体に供給された。
【0247】
変異体がPCR増幅されそしてpHPLTバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)発現ベクター中にクローンされた。
【数20】

【数21】

【0248】
成熟AmySアミラーゼのアミノ酸配列が本明細書に記載の変異体ライブラリーを作るためのベースとして用いられた。
【数22】

【数23】

【0249】
イタリックで示した置換アミノ酸を持つ成熟切断アミラーゼのアミノ酸配列が本明細書に記載の変異体ライブラリーを作るためのベースとして用いられた:
【数24】

【0250】
酵素組み合わせ電荷ライブラリー
バチルス レンツス スブチリシン(=GG36)(Bacillus lentus subtilisin)組み合わせ電荷ライブラリーの生成
コドンによる改良GG36遺伝子を持つpAC-GG36ciプラスミドが組み合わせ電荷ライブラリー(CCL)の生成のためにDNA 2.0 Inc. (Menlo Park, CA)に送られた。また形質転換のためバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)株(遺伝子型:ΔaprE, ΔnprE, ΔspoIIE, amyE::lRPxylAcomK-phleo)が提供された。さらに、表5−7に示すGG36プロテアーゼの4つの部位の各々において位置ライブラリー(positional library)の生成がDNA2.0 Inc.に依頼された。変異体はグリセロール原料として96ウエルプレートで供給された。
【0251】
GG36 CCLが4つの十分分布した、表面の露出した、活性部位の外で非電荷極性のアミノ酸残基を同定することにより設計された。これらの残基はSer-85, GIn- 107, Ser-182,及びAsn-242 (BPN 番号による残基87, 109, 188, 及び248)である。81員数の組み合わせライブラリー(G-1からG-81)が各部位において3つの可能性(野生型、アルギニン又はアスパラギン酸)の全てを組み合わせて作られた。
【数25】

【数26】

【数27】

【0252】
バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)スブチリシンBPN'-Y217L (=FNA) CCLの生成
FNA遺伝子を含むpAC-FNAreプラスミドがCCL生成のためDNA 2.0 Inc. (Menlo Park, CA)に送られた。形質転換のためこれらはバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)株(遺伝子型:ΔaprE, ΔnprE, ΔspoIIE, amyE::xylRPxylAcomK-phleo)とともに提供された。DNA 2.0 Inc.に対して表5−8に示す4つのFNAプロテアーゼ部位の各々に位置ライブラリーを生成するよう要請された。変異体は96ウエルプレートによりグリセロール原液として供給された。
【0253】
スブチリシンBPN'-Y217L組み合わせ電荷ライブラリー(combinatorial charge library)は活性部位の外の4つの良く分布した、表面が露出した、非電荷極性アミノ酸残基を同定し設計された。これらの残基はSer-87, Asn-109, Ser-188,及びSer-248である。81のメンバーの組み合わせライブラリー(F-1からF-81)が各部位で、3つの全ての可能性を組み合わせて作られた(野生型、アルギニン、又はアスパラギン)。
【数28】

【数29】

【0254】
バチルス ステアロテルモフィルス (Bacillus stearothermophilus)AmyS-S242Q CCLの生成
AmyS-S242QプラスミドDNAが形質転換されたバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)株(遺伝子型:ΔaprE, ΔnprE, amyE::xylRPxylAcomK-phleo)から分離され、CCL構築の鋳型としてDNA2.0 Inc.に送られた。 DNA 2.0 Inc. (Mountain View, CA) に対して表5−9に示すAmyS-S242Q (S242Q)アミラーゼの4つの部位の各々に、位置ライブラリーを生成する様要請された。変異体は96ウエルプレートでグリセロール原液として供給された。
【0255】
AmyS S242Q組み合わせ電荷ライブラリー(combinatorial charge library)は以下の4つの残基Gln-97, GIn 319, GIn 358,及びGIn 443を同定することにより設計された。4つの部位の、81のメンバーCCLが各部位で3つの可能性を全て組み合わせて作られた(野生型、アルギニン、又はアスパラギン)。
【数30】

【数31】

【0256】
実施例6
変異プロテアーゼの精製及び特徴
この実施例では、先行する実施例の形質転換されたバチルス スブチリス 由来のプロテアーゼを精製するために用いられる方法について述べる。
【0257】
37℃で36時間培養した後発酵培養液は回収され、12000rpmで遠心分離された(SORVALL(登録商標)遠心分離モデル RC5B)。分泌された中性金属プロテアーゼは培養液から分離され、BES (ポリエーテルスルホン酸) 10kDa 分画(cutoff)を持つAmiconろ過システム 8400を使って約10倍に濃縮された。
【0258】
濃縮された上澄は、pH 5.4の、10 mM NaClを含む2 5 mM MES緩衝液中で温度4℃で一夜透析された。透析物はその後、以下に記載のカチオン交換カラムPorous HS20 (全容量〜83 mL; 結合能力〜4.5g タンパク質/mL カラム; Waters)に投入された。カラムはpH 5.4の、10 mM NaClを含む2 5 mM MES緩衝液で事前平衡された。その後約200-300 mLのサンプルがカラムに装入された。結合されたタンパク質は、1 0-カラム容量の5.4から 6.2 の傾斜のpHのMES緩衝液を用いて溶出させた。タンパク質の溶出はpH 5.8から6.0の間であり、本明細書に記載の様にタンパク質分解活性及び10 % (w/v) NUPAGE(登録商標)SDS-PAGE (Novex)を用いて評価された。その後、中性プロテアーゼを含む部分が集められた。pHを5.8に調整する前にカルシウム及び塩化亜鉛が比率3:1で加えられた。タンパク質精製にはPerceptive Biosystems BIOCAD(登録商標)Vision (GMI)が使用された。
【0259】
10 % (w/v) NUPAG(登録商標)SDS-PAGEを用いて評価された精製されたタンパク質は、95%より高純度であり均質であることが確認された。典型的には精製調剤は、基質スクシニル-L-Ala-L-Ala-L-Pro-L- Phe-p-ニトロアニリド (Bachem)による標準セリンプロテアーゼアッセイを用いて評価した時、無視できるレベルのセリンプロテアーゼ活性を示した。タンパク質は、塩化亜鉛1 mM、塩化カルシウム及び40 % のプロピレングリコールを含むpH 5.8のMES緩衝液25 mMを用いて保存用に製剤された。
【0260】
実施例7
洗濯能力
本実施例は0.25 μg/mlの液体洗剤でのBMI(blood, milk, ink:血液、ミルク、インク)ミクロ材料見本アッセイによるNprE及びASP変異体の試験について記述する(BMI-TIDE(登録商標)2X 「Ultra Clean Breeze」能力アッセイ)。
【0261】
表7−1aは野生型(WT) NprE及び種々のNprE変異体について得たデータを纏めたものである。この表はアミノ酸の位置、置換、BMI洗浄能力、及びWT NprEと比べたネット電荷の変化を示す。
【0262】
表7−1bは、表7−1aに「AA」と表すNprE変異体に含まれる突然変異を纏めたものを表す。
【数32】

【数33】

【0263】
表7−2a及び表7−2bは野生型(WT) ASP及び種々のASP変異体についてのデータを纏めたものである。これらの表はアミノ酸の位置、置換、BMI洗濯能力、及びWT ASPと比べたネット電荷の変化を示す。
【数34】

【数35】

【0264】
このようにプロテアーゼの表面電化突然変異はそのBMI洗濯能力に影響を与え、タンパク質の表面電荷を最適化することによりその洗濯能力を高める。
【0265】
実施例8
LAS安定性
この実施例では0.06% LAS (ドデシル ベンゼン スルホン酸ナトリウム(dodecylbenzenesulfonate sodium))の存在下で試験用プロテアーゼを培養した後にLAS安定性を測定し、そして残留活性をAAPFアッセイにより決定した。
【0266】
試薬
(ドデシル ベンゼン スルホン酸ナトリウム塩(=LAS):Sigma D-2525 TWEEN(登録商標)-80: Sigma P-8074
TRIS緩衝液(遊離酸) Sigma T- 1378); 6.35 g が約960 mlの水に溶解された;; pHが4N HClにより8.2に調整された。TRISの最終濃度は52.5 mMである。
【0267】
LAS原液: MQ 水で10.5 % LASを準備する(=100 ml MQ 当たり10.5 g)。
TRIS緩衝液―100 mM / pH 8.6 (100mM Tris/0.005% Tween80)
TRIS-Ca緩衝液, pH 8.6 (100mM Tris/10mM CaC12/0.005% Tween80)
装置
平底MTP: Costar (#9017)
Biomek FX
ASYS マルチピペット
Spectramax MTP リーダー
iEMS 培養器/かくはん器
Innova 4330培養器/かくはん器
Biohit 複数チャネル ピペット
BMG Thermostar かくはん器
方法
10 μl の0.063% LAS溶液が52.5 mM Tris 緩衝液pH 8.2で準備された。AAPF
希釈標準溶液が1 ml の100 mg/ml AAPF原液 (DMSO中)を100 ml (100 mM) TRIS緩衝液pH 8.6に加えて準備された。浮遊物を希釈するため平底プレートに希釈緩衝液が満たされ一定分量の浮遊物が添加され十分混合された。希釈率は成長板のASP対照の濃度によるものであった(AAPF 活性)。望むタンパク質濃度は80 ppmであった。
【0268】
10μlの希釈浮遊物が190 μlの 0.063% LAS 緩衝液/ウエルに加えられた。MTPがテープで覆われ数秒振って、そして25℃の培養器(Innova 4230)に置かれて200 rpmで60分攪拌された。各ウエルの10 μl混合物を新しい190μl AAPF 希釈標準溶液を含むMTPに移すことにより10分培養した後当初活性(t=10分)が決定された。これらの溶液は十分混合され、そしてAAPF活性がMTPリ−ダー(5分間に及び25℃で20回計測)を用いて測定された。
【0269】
最終活性(t=60 分)が60分培養後に培養プレートから更に10 μl溶液を除去して決定された。その後AAPF活性が上に述べた様に決定された。その計算は以下の通りに行った:
%残留活性は[t-60値] * 100 / [t- 10値]。
【0270】
ある実施の態様においては、変異体を分析するための好ましい方法は関心の対象となるプロセス中の変異体と親タンパク質の自由エネルギーの差を用いるものである。あるプロセスについて、親酵素と比べたギッブス自由エネルギー(Gibbs Free Energy)の変化は以下の通りである:

ΔΔG = −RT In (kvariant/kparent)

ここで、kvariantは変異体酵素の速度定数(rate constant)であり、kparent は親酵素の速度定数であり、Rは理想気体の法則定数であり、Tは絶対温度である。殆んどのアッセイは真の自由エネルギーを決定できる様に構築されていない。したがって、見かけの自由エネルギー変化(ΔΔGapp )を次の通り定義する:
ΔΔGapp =−RT In (Pvariant/Pparent)

ここでPvariantは変異体の能力値及びPparentは同一条件による親酵素の能力値である。LASの安定性を示すΔΔGapp値を算出するために、野生型の残留活性は野生型分子の能力値(Pparent)を測定したものとして、変異体の残留活性は変異体分子の能力値(Pvariant)として定義される。マイナスのΔΔGapp値は変異体のLAS安定性の向上を示し、プラスのΔΔGapp値は変異体のLASの安定性の減少を示す。
【0271】
平均ΔΔGapp値が+2からー7の範囲において野生型酵素と比べたビン(bin)の電荷の変化について計算される。この分析より明らかな様に、ASP酵素のマイナス電荷を増大させるとLASに対する酵素の安定性が増す。
【数36】

【0272】
実施例9
この実施例では、イオン強度が変化する条件下で1.0 μg/ml AATCC HDL洗剤又は5 mM HEPES緩衝液中のBMI(血液、ミルク、インキ)ミクロ材料見本アッセイでのASP変異体の試験について記述する。また、洗濯及び自動食器洗いの両方の使用での、種々の市場条件(例えば、異なるpH,温度及び/又は水の硬度)を示す洗剤中のBMIミクロ材料見本及び焼き卵アッセイでのFNA 及びGG36変異体の試験について記述する。
【0273】
この実施例はさらにデンプン液化のみならず洗浄で使用する場合においてのアルファアミラーゼ変異体の試験について記述する。実施例1に記載の方法が使用された(「酵素能力アッセイ」(Enzyme Performance Assays)及び「コーンフォー加水分解」(Corn Four Hydrolysis)を参照)
図1Aに示す様に、AATCC HDL洗剤中のASPの洗浄能力について最適のネット電荷の変化がある。その能力はBMIミクロ材料見本アッセイ中で観察される相対的な洗浄能力について測定される。約1.0の値はこのアッセイで最高の洗浄能力を示す。図から明らかな様に、野生型に比べて極端にマイナス(−5)又はプラス(+3)の電荷の蓄積は洗浄能力を低下させる。野生型ASPと比較して−2を中心として、洗浄能力にとって明確に最適な電荷がある。
【0274】
これはタンパク質の物理的特性(例えば、ネット電荷)を最適化することにより、ある与えられた結果又は利益(例えば、液体洗濯洗剤中の洗浄能力)を向上させる例である。
【0275】
この限定された組のプローブタンパク質で同定された最適電荷は、図1Bに示す全ASP電荷組み合わせライブラリーを測定する場合に観察された最適電荷と一致する。したがって、プローブタンパク質を使用することにより全ライブラリーの挙動を予測することができる。
【0276】
Debye-Hueckel理論(Israelachivili, 「分子間及び表面張力」(Intermolecular and Surface Forces),第2版: 「コロイド系及び生物系での応用(With Applications to Colloidal and Biological Systems)第2版[1992])によると、静電相互作用は一定電位又は一定電荷にある相互作用種(interacting species)(酵素、基質、繊維及び洗剤)間の二層力の強さ、そのサイズ、及び周囲媒体の誘電率により主に決まる。洗剤製剤の様な複合媒体中の粒子の静電挙動の特徴を明らかにするためには、同じDebyeスクリーニング長さを持つ負荷低減環境中での相互作用で十分である。これは、洗濯条件下で洗剤のそれとマッチするpH及び伝導性を持つ緩衝液を選択することで実現された。図1Aに示す様に、この緩衝液中でASP電荷ラダーをスクリーニングすることにより、AATCC洗剤(黒丸)中でー2で観測された最適電荷を正しく予測していた。図2は、相対的なBMIの汚れの除去を、異なる量の中性電解質(この場合はNACLであるが)によりpH8.0とした5 mM HEPES緩衝液中で野生型ASPに比べた電荷の変化の関数として表す。この緩衝液に2.5 mM NaClを加えることにより典型的な北米の洗濯条件のpH及び伝導率にマッチする。より高い濃度のNACLの添加は日本及び欧州の洗濯条件であり、その高い水の硬度及び洗剤濃度のために特徴的にイオン強度がより大きい。この様に最適のASP電荷は溶液環境の関数である(例えば、洗剤製剤)。
【0277】
2つの特徴が直ちに明らかとなる。まず、同等のpH及び伝導率の環境負荷低減緩衝液中で、ある物理的特性を持つ限定された数のプローブタンパク質(例えば、電荷ラダーASP変異体)よりなるモデルシステムの使用により、洗剤条件でスクリーニングされた大きいASPライブラリーの挙動を予測することができる。事実、図1Aに示す2.5 mM NaClを含む緩衝液中で測定された最適電荷(白丸)は、北米の洗濯条件下でのAATCC洗剤中でスクリーニングされたこのASP電荷ラダーについて観測された最適電荷と同一である。次に、最適電荷の位置はイオン強度と強い関数関係にある。さらにNAClを加えることにより最適電荷を野生型ASPに比べてプラス電荷を持つ変異体の方にシフトさせる。端的に言えば、電荷ラダー タンパク質プローブの使用により、地理的に異なる市場を表わす製剤について異なる酵素変異体の能力を迅速に予測することができる。
【0278】
上に述べた観察結果はスブチリシンFNA及びGG36の様な他のセリンプロテアーゼにも当てはまる。例えば、図3A及び3Bは、TIDE 2X洗剤を用いた北米洗濯条件での洗浄の実施における各FNA及びGG36の最適電荷を示す。左のY軸はミクロ材料見本洗浄能力を表し、数値が高いほどより優れたBMI汚れ除去能力を持つことを示す。右側のY軸は親分子(塗つぶされていない符号)と比較した変異体の洗浄能力(塗りつぶされた符号)として定義された能力指標で表す。横方向の線はアッセイのノイズを含まない2又は3の標準偏差での能力指標を示す。FNA電荷組み合わせライブラリー(CCL)は親FNAに関して電荷の変化ゼロでの最適電荷を示し、GG36 CCLは親GG36に比べ電荷の変化ー2での最適電荷を示す。
【0279】
図4A, 4B, 5 A及び5Bは最適電荷の位置が、洗剤製剤、pH,温度及び水の硬度によるイオン強度及び洗剤濃度により決定される溶液環境の関数であることを示す。例えば、FNA CCLの最適電荷は北米の洗濯条件下のゼロから、西欧及び日本の洗濯条件下でのより大きいプラスの電荷に劇的にシフトする。さらに最適電荷が液体及び顆粒(粉末)洗濯洗剤製剤の何れにも観察される。同様に自動食器洗い(ADW)用の洗剤(例えば、Reckitt Benckiser Calgonit 40℃, 12 gpg, pH 10)中のFNA及びGG36 CCLの何れにおいても、図6A及び6Bに示す様に焼いた卵を酵素基質としたものに対して最適電荷が観測された。
【0280】
本発明の開発過程で示された様に、異なる洗剤中でのプロテアーゼ電荷変異体(例えば、ASP, GG36, FNA等)の洗剤能力は希釈標準溶液のpH及び伝導率に大きく影響される。最終の伝導率はイオン強度の尺度であり、水の硬度、洗剤濃度及び組成物に依存する。例えば、欧州及び北米ADW洗剤を使用し、pH10.6及び3.0 mS/cm伝導率で実施した場合、焼いた卵の汚れとGG36及びFNA変異体の洗浄能力に相関がある。特に電荷変異体の洗浄能力は、pH及び伝導率が同じ場合は良い相関関係を示す。この発見により、これらの結果を他のマッチするpH及び伝導率を持つ洗剤に当て嵌めて、ある洗剤を用いて酵素の効果をスクリーニングすることが可能となる。同様にこれらの結果を同様の実際のpH及び伝導率を持つ洗剤に当て嵌めて、マッチするpH及び伝導率の緩衝液中の酵素の能力をスクリーニングすることが可能となる。
【0281】
洗剤での応用において、アミラーゼ電荷変異体(例えば、AmyS-S242Q及びAmyTS23t,等)の洗浄能力にとり最適な電荷があり、それは希釈標準溶液のpH及び伝導率と強い相関を示す。特に本発明の開発により明らかになった様に、S242Qのプラス電荷変化の変異体は北米の洗濯条件下の米デンプンミクロ材料見本の洗浄で優れており(例えば、TIDA 2X)、他方AmyTS23tのマイナス電荷変化の変異体は西欧の濯条件下での米デンプンミクロ材料見本の洗浄に優れている。更に、これらの観測結果はでんぷん加水分解反応で使用されるアミラーゼについて当て嵌まる。図7Aに示す様に、プラスのS242Q変異体はBODIPYデンプン基質の加水分解のためのより高い特異的活性を示す。
【0282】
AmyS電荷ラダー変異体によるデンプン液化がコーンデンプンの液化に続いて最終粘度をモニターすることにより決定された。低粘度値はデンプンの多糖が分解したことを示唆する。図7Bに示す様に、液化に最適の電荷(例えば、-4から-2)が観察された。マイナスが余りに大きい(例えば、-12から-10)AmyS変異体は高い最終粘度を示し、プラスが余りに大きい(例えば、+ 6以上)変異体は更に高い最終粘度を示した(例えば、トルクに負荷が懸かりすぎ実験室器具の限界を超える)。
【0283】
実施例10
タンパク質の発現
この実施例ではタンパク質電荷とタンパク質の発現の関係を決定することについて述べる。
【0284】
14L醗酵槽スケールでのASP変異体の生産
ASPプロテアーゼ組み合わせ電荷ライブラリー変異体(R14I-N112E-T1 16E-R123F-R159F , R14I-N1 12E-T116E-R123F, R14I-N1 12E-T116E , R14I-N112E, R14I, R14I-D184T, R14I-D184T-T86K, 14I-T86K-D184T-A64K 及びR14I-T86K-D184T-A64K- Q81K)の生産レベルを比較のため、14Lスケールで一組の流加醗酵が実施され、その場合変異体の電荷は−5から +3に変化する。種培養を各変異体に対応する1mLのバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)グリセロール原料を含む600Lの培養媒体(LB培養液+ 1%グルコース+ 20 mg/Lネオマイシン)を含む2L邪魔板なし振とうフラスコに接種することにより成長させた。培養液は37℃で振とう培養器で175rpmで攪拌しながらOD550が0.8-1.5に達するまで培養した。その段階で全種培養が、温度、%表示の酸素溶解度、pH及び攪拌をモニターする統合制御機を備えた14L醗酵器に無菌で移された。排気ガスは組み込まれた質量分光光度計によりモニターされた。使用された醗酵媒体(7L)は硫酸マグネシウム、微量のミネラル及び20 mg/Lの追加のネオマイシンを含むリン酸塩ベースの緩衝液中の10%大豆ミールよりなるものであった。初期醗酵パラメータは次の様に設定された:温度37℃、pH 6.8 (運転中水酸化アンモニウムで調整された), 750 rpm で攪拌、40% DO (運転中空気及び攪拌を調節して維持)、11 slpm エアフロー及び圧力1 バール。発泡を制御するために必要に応じて消泡剤(Mazu DF204)が加えられた。
【0285】
pHすすぎを契機とする分当たり0.5から2.1gのグルコースの線状供給(linear feed)を10時間実施する流加バッチプロセスがプログラムされた(60%グルコース溶液を供給物として使用)。醗酵のサンプリングは4時間ごとに、全体の培養液の15mLを採り、以下について測定した:分光光度計による細胞密度(550nmでの吸光度)、ASP変異体の生産、グルコース、窒素、リン酸塩、及び全タンパク質。醗酵のための全運転時間は40から45時間であった。
【0286】
Aaa-Pnaアッセイを用いるASP変異体滴定量の測定
醗酵で得られたバチルス スブチリス (Bacillus subtilis)培養物のサンプルについて変異ASPプロテアーゼの生産アッセイを行った。生産された酵素について基質、N−スクシニル−-Ala-Ala-Ala-p-ニトロアニリド(N-succinyl- -Ala-Ala-Ala-p-nitroanilide (AAA-pNA))に対する活性がアッセイされた。このアッセイにより修飾されたプロテアーゼの生成を、加水分解及びN−ニトロアニリンの放出による405nmでの吸光度の増加により測定した(Estell 他、J Biol Chem, 260: 6518-6521 [1985])。醗酵物から一定量のバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)浄化浮遊物が100 mM Tris, 0.01 mM CaC12, 0.005% Triton X-100, pH 8.6を含む緩衝液中でアッセイされた。野生型ASPプロテアーゼ標準がg/L 醗酵培養液中で生産されるタンパク質の計算の較正曲線を生成するために用いられた。
【0287】
図8はバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)中のASP電荷ラダープローブ タンパク質の発現レベルを野生型ASPに対するネット電荷の関数として示す。この図より明らかな様に、野生型ASPに対する極端なマイナス(-5)又はプラス(+3)電荷の蓄積は発現レベルを下げる。ASP電荷ラダープローブ タンパク質を使用することによりある宿主有機体中の発現を向上させる最適のネット電荷を迅速に同定することが可能となる。この場合、野生型ASPに対するネット電荷が-2から+ 1のネット電荷の範囲は最適な発現レベルに対応する。ASPの最適電荷(-2)自体において見られる様に、極端な電荷の変化を持つ変異体に比べて発現が4倍近く向上していることが分かる。振とうフラスコレベルでのこれらの観察は14L醗酵スケールで確認された。表8−1は14L醗酵器中での2つの発現の測定値すなわち、40時間でのASP近似滴定量、及び発現曲線の直線部分から計算されたASPの生成を示す。振とうフラスコ滴定量を比較のため最後の欄に記載した。野生型ASPに対するネット電荷-2及び+ 1の範囲は醗酵スケールでの最適な発現レベルに対応する。これは全く異なる利益(この場合、組み合わせタンパク質の発現)を調整するためにタンパク質の物理的特性(この場合はネット電荷)を最適化する別の例である。
【数37】

【0288】
* 14 L醗酵スケールでのバチルス スブチリス(Bacillus subtilis)でのASP変異体の発現及び振とうフラスコスケールでのピーク滴定量及び生産性
宿主細胞中でのタンパク質の発現及び分泌は発現されるタンパク質と多くの宿主タンパク質の相互反応を起す。発現されるタンパク質と宿主細胞タンパク質の最適な相互反応、特に津速反応はタンパク質の生成に必須である。この相互反応は発現されるタンパク質(又は宿主細胞タンパク質)の表面電荷/疎水性を修飾することにより適正化することができる。しかしながら、関係するその仕組みについての知識は本発明の実行及び使用するためには必要ではない。
【0289】
実施例11
LAS及びキレート安定性
この実施例ではアニオン性界面活性剤及びキレート剤の何れをも含む反応媒体でのタンパク質電荷及び安定性の関係を決定する。ストレスを加えられた及びストレスを加えられていないサンプルのプロテアーゼ活性を決定するために、suc-AAPF-pNAアッセイが使用された。
【0290】
使用された試薬は以下を含む:対照緩衝液:50 mM HEPES, 0.005% Tween-80, pH 8.0; 及び応力緩和緩液50 mM HEPES, 0.1% (w/v) LAS (ドデシルベンゼン−スルホン酸(dodecylbenzene-sulfonate), ナトリウム塩 Sigma D-2525), 10 mM EDTA, pH 8.0。酵素変異体(20 ppm)が1:20の比率で、対照又は応力緩和液を含む96ウエル非結合性平底プレートで希釈されそして混合された。対照プレートは室温で培養され、一方応力プレートは直ちに37℃にされ30−60分(試験される酵素の安定性による)置かれた。培養に続いて酵素活性がsuc-AAPF-pNAアッセイを用いて測定された。残りの又は残留活性の部分はストレスを加えたサンプルの反応速度を対照サンプルの反応速度で除したものに等しい。親酵素及び変異体は対照緩衝液中で60分安定である。
【0291】
図9は、80の変異体を含むライブラリーについて、LAS/EDTAの安定性を親FNAに対するネット電荷の変化の関数として示す。このライブラリーは実施例5に示す方法によって設計され、及び構築され、そして親FNAと比較したネット電荷の幾つかを含む。この図より明らかな様に、親FNAと比べたマイナス電荷(−4まで)の蓄積は組み合わされたLAS/キレート剤の安定性に有益である。これは、複合した液体洗濯環境でのタンパク質の安定性を向上せるためにタンパク質の物理的特性(この場合、ネット電荷)を最適化する例を示す。
【0292】
ASP 及びFNAについては、LAS/EDTAの安定性のためには電荷の依存関係がある。マイナス電荷を加えると安定性が増す。しかし、親よりも1又は2よりプラス電荷が増す場合でも、本発明によると親よりも同等又はより高い安定性をもたらす電荷変異の配置を見出すことができる。
【0293】
実施例12
熱安定性
この実施例はタンパク質の電荷と熱安定性の関係の決定について記述する。プロテアーゼアッセイは緩衝化培養浮遊物を加熱する前及び加熱した後のジメチルカゼイン(DMC)の加水分解に基づくものである。アミラーゼアッセイは培養浮遊物加熱する前及び加熱した後に、BODIPYデンプンの加水分解に基づくものである。これらのアッセイには実施例1に記載の化学品及び試薬溶液と同じものを用いた。
【0294】
プロテアーゼの熱安定性アッセイ
ろ過した培養浮遊物がPIPES緩衝液中20 ppmに希釈された(成長板で対照の濃度に基づく)。まず各10 μlの希釈された酵素サンプルが採られ、ジメチルカゼインアッセイでの初期活性が決定され、以下に述べる様に処理された。その後各50 μlの希釈された浮遊物がMTPの空のウエルに入れられた。MTPプレートはiEMS培養器/攪拌器HT(Thermo Labsystems)中において60℃及び400 rpmで90分培養された。プレートは氷上で5分冷却された。その後10 μlの溶液がウエル当たり200 μlジメチルカゼイン基質を含む新しいMTPに加えられ、培養の後最終活性が決定された。このMTPはテープで覆われ、数秒振動されそして攪拌されることなく炉に2時間、37℃で置かれた。
【0295】
サンプルの残留活性が何れも空試験値と対比して矯正された最終吸光度と当初吸光度の比率として表された。図10は熱安定性指数をSELライブラリーについて野生型ASPと比べたネット電荷の変化の関数として表す。より高い指数はより熱安定性のある変異体を示す。図から明らかな様に、野生型酵素と比べた極端なマイナス(-2)電荷又はプラス(+2)電荷の蓄積は熱安定性に有害になる。野生型ASPと比べたゼロネット電荷の変化を中心として熱安定性にとって明らかに最適な電荷が存在する。これは液体洗濯での使用における酵素の熱安定性を向上させるためのタンパク質の物理的特性(この場合は、ネット電荷)を最適化する例である。
【0296】
アルファーアミラーゼの熱安定性アッセイ
ろ過された培養浮遊物がTweenを含む50mM酢酸ナトリウム及び2 mM CaCl2 pH 5.8で続けて希釈された。各10 μlの希釈された培養浮遊物はBODIPY デンプンアッセイにより当初のアミラーゼ活性が決定された。各50 μlの希釈された培養浮遊物がVWR 薄型PCR 96 ウエルプレートに入れられた。30μLの鉱油が各ウエルに封止剤として加えられた。プレートはBioRad DNA engine Peltier Thermal Cycler中で95°Cで、親酵素の安定性によって30又は60分培養された。培養に続いて、プレートは4℃まで5分間冷却され、その後室温に保たれた。各10 μlのサンプルを新しいプレートに加え、実施例1に記載のBODIPY デンプンアッセイにより最終アミラーゼ活性が決定された。
【0297】
熱安定性の計算
サンプルの残留活性が何れも空試験値と対比して矯正された最終吸光度と当初吸光度の比率として表された。これらの観察はまたアミラーゼ荷電変異体でも行われた。図11は第一のAmyS電荷ラダーの残留活性を野生型と比べた電荷の変化の関数として示す。再び、野生型酵素に比べ極端にマイナス(-12) 又はプラス (+10)の電荷の蓄積は熱安定性に有害となる。これは液体洗濯での使用における酵素の熱安定性を向上させるためにタンパク質の物理的特性(この場合は、ネット電荷)を最適化する例である。
【0298】
実施例13
酵素のpH活性の調整
この実施例ではある反応において酵素のpH活性を最適化するために表面電化変異を用いることについて記載する。
【0299】
図12は、米デンプンミクロ材料見本の洗浄活性を実施例5の第一のAmyS電荷ラダーのpHの関数として示す。3.0から4.25のpHの範囲は0.01% Tween-80を含む200 mMギ酸ナトリウム中でのものであり、4.25から5.5のpHの範囲は0.01% Tween-80を含む200 mM酢酸ナトリウム中のものであった。データは滴定曲線に適合するものであり、それぞれは単一のpKa値を持つ。
【0300】
図13はAmyS触媒反応の見掛けのpKaを実施例5の第一のAmyS電荷ラダーの電荷の変化の関数として示す。これらのデータは、200 mM緩衝液中においても、アルファーアミラーゼのpH活性は表面電荷変異により極めて大きくシフトしうることを示す。これはスブチリシン(Russell 他、J MoI Biol, 193: 803-13 [1987]) 及びD-キシロース イソメラーゼ (Cha他、Mol Cell, 8: 374-82 [1998])の非常に低いイオン強度において報告されていたが、アルファーアミラーゼによって、それも驚くべきことに高いイオン強度においてさえ実現されたのは初めてのことであると信じられている。
【0301】
本願発明の特定の実施の態様が説明及び記載されているが、当業者であれば本願発明の精神及び範囲から外れることなく種々の改変及び修飾が可能であることは明らかであろう。したがって、特許請求の範囲においては本願発明の範囲にある全ての改変及び修飾を含むことを意図するものである。
【0302】
本明細書に記載の全ての特許、刊行物はこの発明が関係する技術分野の当業者の水準を示すものである。全ての特許、及び刊行物は、それらの各刊行物が明示的に特定して、又個別に参照により本明細書に組み入れられると同様に、此処に参照により組み入れられる。
【0303】
本願発明の好ましい実施の形態について記載されているが、当業者にとって開示された実施の形態に対して種々の修飾をすることは可能であり、またそれらの修飾されたものは本願発明の範囲にあることは明らかであろう。
【0304】
その技術分野の当業者であれば、本発明に固有のものに限らず、本発明を、本明細書に記載の目的を実施するために容易に改変されうることを、直ちに理解し、本明細書に記載の目的と利益を達成するであろう。本明細書に記載の組成物、方法は好ましい実施の形態の代表例であり、本発明の範囲を限定するものと解してはならない。本発明の範囲及び精神から離れることなく種々の置換、修飾を加えることは当業者にとって容易なことである。
【0305】
本明細書に説明により記載された発明は、特にそこで記載されていない要素、限定が含まれていない場合においても適切に実施しうると考える。用いられた用語、及び表現は記載のために用いられるもので、限定の意味に解してはならない。そのようは用語及び表現は、その特徴を持つ同等物及びその部分を除外するものではない、しかし、本発明の特許請求の範囲内において種々の修飾が可能であることを認識すべきである。このように、本発明は、好ましい実施の形態及び任意選択された特徴により特に開示されたものであるが、本明細書に開示された概念の、修飾及び変形は当業者により実施が可能であり、したがって、そのような修飾及び変形は特許請求の範囲に記載された、本発明の範囲内であると解される。
【0306】
本発明は、広く又一般的な表現により記載されている。一般的な開示に含まれるより狭い範囲の種類、亜属のグループの夫々もまた本発明の部分を構成する。したがって、これは、排除された材料が特に本明細書に記載されているか否かを問わず、その属からあるものを除外するという条件又は否定的限定を持つ本発明の一般的な記載についても同様に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親タンパク質に比べて改良された能力を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成する方法であって、親タンパク質の一以上の位置で少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親タンパク質と比べてより大きいプラス、より大きいマイナス、より小さいプラス、又はより小さいマイナスの電荷を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成することを含む前記方法。
【請求項2】
前記修飾することには置換、添加及び/又は欠失することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記修飾することには化学的に修飾することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が酵素である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記酵素がプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである、請求項4の方法。
【請求項6】
前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼ又は中性金属プロテアーゼである、請求項5の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つのタンパク質変異体は少なくとも一つの関心の対象である試験を用いて評価される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの関心の対象である試験は、基質結合、酵素抑制、発現レベル、洗剤安定性、熱安定性、反応速度、反応の範囲、熱活性、でんぷん液化、エステル加水分解、酵素漂白、洗濯能力、バイオマス分解、溶解度、キレート安定性及び/又は糖化の測定を含む、請求項7の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つのタンパク質変異体は、前記親タンパク質に比べて、関心の対象である試験において改良された能力を示す、請求項8の方法。
【請求項10】
親酵素に比べて改良された能力を持つ少なくとも一つの酵素変異体を生成する方法であって、親酵素の一以上の位置で少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素と比べてより大きいプラス、より大きいマイナス、より小さいプラス、又はより小さいマイナスの電荷を持つ酵素変異体を生成することを含む前記方法。
【請求項11】
前記修飾することには置換、添加及び/又は欠失することを含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記修飾することには化学的に修飾することを含む、請求項10の方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、さらに前記酵素変異体及び前記親酵素の洗濯能力を試験を行い、前記酵素変異体及び前記親酵素の能力指数を提供することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記酵素変異体の能力指数が1.0より大きい値を持ち前記親酵素の洗濯能力は1.0の能力指数である、請求項13の方法。
【請求項15】
請求項10の方法であって、さらに改良された洗濯能力を持つ変異酵素を生成することを含む方法。
【請求項16】
請求項10の方法であって、前記酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである前記方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、前記プロテアーゼはセリンプロテアーゼ又は中性金属プロテアーゼである方法。
【請求項18】
前記プロテアーゼがバチルス(Bacillus)由来のプロテアーゼである、請求項17の方法。
【請求項19】
前記洗濯能力が5から12.0のpHを持つ粉末又は液状洗剤組成物で試験される請求項13の方法。
【請求項20】
前記洗濯能力が塩基pHを持つ液状洗濯洗剤で試験される請求項13の方法。
【請求項21】
前記洗濯能力が塩基pHを持つ冷水液状洗剤で試験される、請求項13の方法。
【請求項22】
前記置換の位置は、約25%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である、請求項10の方法。
【請求項23】
前記置換の位置は約50%又は約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である、請求項10の方法。
【請求項24】
親酵素に比べて改良された能力を持つ酵素変異体を生成する方法であって、
a) 親酵素の一以上の位置で少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素と比べてより大きいプラス、より大きいマイナス、より小さいプラス、又はより小さいマイナスの電荷を持つ第一の酵素変異体を生成する;及び
b) 親酵素の一以上の位置で少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親酵素と比べてより大きいプラス、より大きいマイナス、より小さいプラス、又はより小さいマイナスの電荷を持つ第二の酵素変異体を生成する
ステップを含む前記方法。
【請求項25】
前記修飾することには置換、添加及び/又は欠失することを含む、請求項24の方法。
【請求項26】
前記修飾することには化学的に修飾することを含む、請求項24の方法。
【請求項27】
複数の酵素変異体を生成するために前記ステップが繰り返される、請求項24の方法。
【請求項28】
請求項24の方法であって、前記親酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである前記方法。
【請求項29】
前記プロテアーゼが中性金属プロテアーゼ又はセリンプロテアーゼである、請求項28の方法。
【請求項30】
前記親酵素がバチルス(Bacillus)由来のプロテアーゼである請求項24の方法。
【請求項31】
請求項24の方法であって、さらに、前記変異酵素と前記親酵素の洗濯能力を試験して、前記洗濯能力試験において汚れを除去する前記親酵素と前記変異酵素との能力を比較することを含み、その場合前記親酵素の洗濯能力を1.0とした場合、改良された洗濯能力を持つ変異酵素は1.0より大きい値を達成する、前記方法。
【請求項32】
請求項31の方法であって、さらに、親酵素と比べて改良された洗濯能力を持つ酵素変異体を生成することを含む前記方法。
【請求項33】
前記親酵素がセリンプロテアーゼである、請求項32の方法。
【請求項34】
前記セリンプロテアーゼがバチルス(Bacillus)由来のセリンプロテアーゼ又はセルロモナス(Cellulomonas)由来のセリンプロテアーゼである、請求項33の方法。
【請求項35】
前記洗濯能力が5から12.0のpHを持つ粉末又は液状洗剤組成物で試験される、請求項31の方法。
【請求項36】
前記洗濯能力が塩基pHを持つ液状洗濯洗剤で試験される、請求項31の方法。
【請求項37】
前記洗濯能力が塩基pHを持つ冷水液状洗剤で試験される、請求項31の方法。
【請求項38】
前記置換の位置は、約25%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ前記親酵素中の位置である、請求項25の方法。
【請求項39】
前記置換の位置は、約50%又は約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ前記親酵素中の位置である、請求項38の方法。
【請求項40】
少なくとも一つの酸性アミノ酸残基が少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項41】
少なくとも一つの酸性アミノ酸残基が少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項42】
少なくとも一つの中性アミノ酸残基が少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項43】
少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基が少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項44】
少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基が少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項45】
少なくとも一つの中性アミノ酸残基が少なくとも一つの酸性アミノ酸残基により置換されている、請求項25の方法。
【請求項46】
請求項25の方法であって、前記親酵素中の少なくとも一つの中性アミノ酸残基が少なくとも一つの中性アミノ酸残基により置換され、親酵素と比較して同じ電荷を持つ酵素変異体を生成する、前記方法。
【請求項47】
親タンパク質に比べて改良された能力を持つ少なくとも一つのタンパク質変異体を生成する方法であって、親タンパク質の一以上の位置で少なくとも一つのアミノ酸残基を修飾し、親タンパク質と比べてより大きいプラス、より大きいマイナス、より小さいプラス、又はより小さいマイナスの電荷を持つタンパク質変異体を生成し、前記一以上の位置は約25%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ前記方法。
【請求項48】
請求項47の方法であって、前記一以上の位置は前記親タンパク質及び少なくとも一つの追加タンパク質を含む相同タンパク質配列のアミノ酸アラインメント中の非保存性である、前記方法。
【請求項49】
前記親タンパク質は酵素である、請求項47の方法。
【請求項50】
前記酵素がプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、ポリエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、オキシダーゼ、トランスフェラーゼ、アルカラーゼ又はカタラーゼである請求項49の方法。
【請求項51】
前記改良された能力は、
基質結合、酵素抑制、発現、洗剤中の安定性、熱安定性、反応速度、反応の範囲、熱活性、でんぷん液化、バイオマス分解、糖化、エステル加水分解、酵素漂白、洗濯能力、溶解度、キレート安定性及び/又は繊維修飾から選択される一以上の特性における能力の増大を含む、請求項47の方法。
【請求項52】
前記修飾することには置換、添加及び/又は欠失することを含む、請求項47の方法。
【請求項53】
前記修飾することには化学的に修飾することを含む、請求項47の方法。
【請求項54】
前記少なくとも一つの置換は親タンパク質と比べて0、−1、又は−2のネット電荷の変化を持つ、請求項52の方法。
【請求項55】
前記少なくとも一つの置換は親タンパク質と比べて+1、又は+2のネット電荷の変化を持つ、請求項52の方法。
【請求項56】
前記親タンパク質中の少なくとも一つの置換は、0、−1、又はー2のネット電荷の変化を持ち、及び親タンパク質中の少なくとも一つの更なる置換は親タンパク質と比べて+1、又は+2の電荷の変化を持つ、請求項52の方法。
【請求項57】
前記タンパク質変異体は親タンパク質と比べて+1、又は+2のネット電荷の変化を持つ、請求項52の方法。
【請求項58】
前記タンパク質変異体は親タンパク質に比べて0、−1、又は−2のネット電荷の変化を持つ、請求項52の方法。
【請求項59】
前記置換の位置が、約50%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である、請求項52の方法。
【請求項60】
前記置換の位置が、約65%より大きい溶媒の接近可能な表面(SAS)を持つ親酵素中の位置である、請求項52の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−529842(P2010−529842A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511200(P2010−511200)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/007113
【国際公開番号】WO2008/153934
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508377015)ダニスコ・ユーエス・インク、ジェネンコー・ディビジョン (31)
【Fターム(参考)】