説明

タンパク質を安定化、保護及び可溶化させるための方法及びキット

本発明は、タンパク質を安定化又は可溶化させるための方法及びキットであって、タンパク質と糖ポリマー誘導体を接触させ、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではないことを特徴とする方法及びキットに関する。イヌリン誘導体及びグルコシド誘導体は、本発明の方法及びキットにおいて使用するのに適した糖ポリマー誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の立体配座を安定化させるため、凝集及び/又は分解からタンパク質を保護するため、並びに/或いはタンパク質の可溶性を改善するための方法、キット及び試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の生物学的機能は、その3次元構造に依存する。タンパク質は、ポリペプチドと呼ばれるアミノ酸の線状鎖として形成される。in vivoでは、細胞内の適切な状態において、線状ポリペプチド鎖がフォールディングされ、これはシャペロンと呼ばれるタンパク質によって助長される可能性があるプロセスである。成熟したフォールディング状態のタンパク質は、原型構造として知られる活性のある3次元の立体配座を有する。この構造は、水素結合、静電性及び疎水性相互作用などの弱い力に依存する。これらの力はタンパク質の環境によって影響されるので、環境の変化が、タンパク質の変性及び/又は分解並びに機能の消失をもたらす構造破壊を引き起こす可能性がある。タンパク質のプロセシング中及びタンパク質の保存時に、このような問題に遭遇する。
【0003】
遺伝的工学処理によるタンパク質の生成は、封入体としての非活性状態のタンパク質凝集体の蓄積をもたらすことが多い。宿主細胞から単離及び精製した後、タンパク質又は封入体は非フォールディング状態(変性状態)にし、且つ後に、タンパク質がそれらの原型構造及び生物活性を取り戻すように、リフォールディング状態(再生状態)にしなければならない。
【0004】
伝統的なタンパク質フォールディング法は、変性剤希釈又はカラム系手法に関する。変性タンパク質は一般に、変性剤を希釈することによってリフォールディングされる。これはタンパク質分子の疎水性部分の崩壊を誘導し、それを行う際に、タンパク質は分子のコア中のその疎水性部分を保護する。あいにく、疎水性部分の崩壊時に、タンパク質は常に原型の生物活性がある立体配座を形成するわけではなく;2つの競合反応、リフォールディングと凝集が起こる。タンパク質凝集の誘導因子は、表面に曝されている疎水性アミノ酸残基であることが示唆される。凝集は望ましくなく、機能性、原型タンパク質の収率を低下させる。リフォールディングは一次反応(速度=K*[prot])として知られているが、凝集反応は高濃度においてリフォールディングより助長される、何故なら凝集反応は高次反応(n)(速度=K’*[prot])だからである。タンパク質リフォールディングとタンパク質凝集の割合は、タンパク質濃度に強く依存する。プロセスの規模では、この濃度依存性は増大した凝集をもたらす可能性があり、したがってリフォールディング収率を低下させる可能性がある。これは、タンパク質溶液中での不完全な混合型によるものである可能性がある。大きなタンパク質分子をプロセシングすることは非常に難しい、何故ならそれらの分子は小さな変性剤分子よりもゆっくりと拡散し、それによって非常に局在したタンパク質濃度及び低い変性剤濃度を含む微環境、即ちタンパク質リフォールディングよりタンパク質凝集を助長する環境を形成するからである。
【0005】
ジスルフィド結合を有するタンパク質に関して、原型タンパク質は成熟中に「成熟状態」であることを必要とすることが多く、非原型ジスルフィド結合を有する非凝集モノマータンパク質分子が最初に作製される可能性があり;次いでタンパク質特異的な酸化還元型結合を使用することによって、ジスルフィド結合が混合し、タンパク質は原型ジスルフィド結合を有する機能性タンパク質分子に成熟する。
【0006】
リフォールディングプロセスは通常、「リフォールディング助剤」の存在下においてバッファー中に変性タンパク質分子を分散させて、再生を増大させることを含む。フォールディング助剤は通常、フォールディング中間体の溶解度を増大させる、且つ/又はフォールディング反応と凝集反応の相対反応速度を変える。ポリエチレングリコール及びさまざまな糖、例えばスクロース、グルコース、N−アセチルグルコサミン、及び界面活性剤、例えばChaps、Tween、SDS、ドデシルマルトシドが、リフォールディング助剤として使用されてきている(De Bemadez Clark(1998)「現在のバイオテクノロジーの見解(Current Opinion Biotechnol.)9、157〜163」)。
【0007】
α、β及びγシクロデキストリン(CD)は幾つかの酵素の安定化、可溶化及び親和性による精製において有用であることが報告されてきているが、これらのCDとタンパク質の間の性質及び相互作用、並びに生物活性に対するそれらの影響は依然明らかではない。α、β及びγシクロデキストリンはいずれも界面活性剤不在下(Sharma et el、EP0871651、米国特許第5,728,804号)、及び界面活性剤含有リフォールディング環境(Geillman & Rozema、米国特許第5,563,057号)でのタンパク質のリフォールディングを助長するための人工シャペロンとして使用されてきている。シクロデキストリンは、多数のグルコース残基から構成される環状オリゴ糖である。シクロデキストリンは、環構造内の糖残基の数に従い分類され、α−シクロデキストリンは6個のグルコース残基を有し、β−シクロデキストリンは7個のグルコース残基を有し、及びγ−シクロデキストリンは8個のグルコース残基を有する。シクロデキストリンを誘導体化によって修飾して、誘導体を生成することができる。
【0008】
シクロデキストリンの内腔は疎水性であり、一方で外側表面は親水性である。疎水性の内側部分は、乏しい可溶性の薬剤を被包することができる。親水性の外側部分は可溶化を助長し、したがってシクロデキストリンは医薬品配合物中の有用なアジュバントである。
【0009】
EP0094157及び米国特許第4,659,696号(Hirai et al)は、親水性で、生理的活性がある(フォールディング、原型)ペプチドとシクロデキストリン誘導体の物理的混合物から本質的になる医薬組成物中でのα−、β−、及びγ−シクロデキストリン誘導体の使用を記載しており、この組成物は剤形の均質な混合物である。
【0010】
EP0437678B1、米国特許第5,730,969号及び米国特許第5,997,856号(Hora)は、特定のシクロデキストリン誘導体:ヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、グルコシル、マルトシル、並びにβ−及びγ−シクロデキストリンのマルトトリオシル誘導体を使用してポリペプチド、特にタンパク質を可溶化及び/又は安定化させるための方法を記載しており;ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン誘導体が好ましい。ポリペプチド、場合によってはタンパク質、及び前述の特定のシクロデキストリン誘導体を含む水性及び凍結乾燥組成物も開示されている。
【0011】
EP0871651及び米国特許第5,728,804号(Sharma et el)は、非フォールディング状態又は凝集状態のタンパク質を再生するのに有効な量のシクロデキストリンを用いて、界面活性剤を含まない水性培地中で前記非フォールディング状態又は凝集状態のタンパク質を再生するための方法に関するものである。この場合、タンパク質は凝集を最少にするように選択した低い濃度、好ましくは約0.05mg/mlで存在し、シクロデキストリンを含むリフォールディング用バッファー中で自発的にリフォールディングする。リフォールディング後、シクロデキストリンは透析によって除去される。
【0012】
米国特許第5,563,057号(Gellman及びRozema)は、線状アルキル無極性成分を有する界面活性剤、例えばCTAB及びTriton(登録商標)−X100(オクトキシノール−9)をミスフォールディング状態の酵素に加えて、酵素−界面活性剤複合体を形成させ、次いでそれをシクロデキストリンと接触させて、酵素に第2の活性状態の立体配座をとらせることによって、ミスフォールディング状態の配置から第2原型の活性状態の配置に酵素をリフォールディングするための方法を記載している。
【0013】
Hinrichs et al(2001)、「国際医薬ジャーナル(International Journal of Pharmaceutics)」、215、163〜174は、非誘導体化状態のイヌリン、イヌリンSC95(DPn/DPw=5.5/6.0)、イヌリンRS(DPn/DPw=14.2/19.4)、及びイヌリンEXL608(DPn/DPw23.0/26.2)を使用して、凍結乾燥及びその後の乾燥タンパク質の保存中の分解からアルカリホスファターゼを保護することを記載している。
【0014】
WO96/41870(Gombac et al)は、コラゲナーゼを安定化させるための、イソマルト及び/又はイヌリン(非誘導体化状態)を含む凍結、乾燥又は凍結乾燥水溶性コラゲナーゼ組成物を記載している。
【0015】
イヌリンは、ポリフルクトースの鎖から一般になるD−フルクタンであり、その中でフルクトース単位は大部分は互いに結合しているか、又はβ(2−1)結合によってのみ結合している。その大部分が1つのグルコシル単位中の末端であるポリフルクトース鎖の多分散系混合物として、一般にイヌリンは天然に存在する。イヌリンは植物から抽出される細菌合成から得ることができるか、又はスクロースから始める酵素による合成によってin vitroで作製することができる。細菌によって生成されるイヌリンは、植物源由来のイヌリンより分枝状であり、より大きな分子量(約2,000〜約20,000,000までの範囲)を一般に有し、一方植物源由来のイヌリンは、一般に約600〜約20,000の範囲の分子量を有する、線状又はわずかに分枝状のポリフルクトース鎖、或いはその混合物から一般に構成される。
【0016】
Gがグルコシル単位を表し、Fがフルクトシル単位を表し、nが炭水化物鎖中で互いに結合したフルクトシル単位の数を表す整数である、一般式GF.n又はF.nによって、末端炭水化物単位に応じてイヌリンを表すことができる。1個のイヌリン分子中の糖単位(フルクトース及びグルコース単位)の数、即ち前述の式中のnの値は、(DP)によって表される重合度として表される。おそらく存在する単糖グルコース(G)及びフルクトース(F)、並びに二糖スクロース(GF)を考慮せずに、イヌリン組成物中に存在するイヌリン分子の合計数で割った、所与の前記イヌリン組成物中の糖単位(G及びF単位)の合計数に対応する値である、(DP)によって表されるパラメータ(数)平均重合度を使用することも多い。平均重合度(DP)は、例えばL.De Leenheer(Starch、46(5)、193〜196、(1994)、及び「有機素材としての炭水化物(Carbohydrates as Organic Raw Materials)、Vol.III、p.67〜92、(1996)」によって記載された方法によって決定することができる。
【0017】
イヌリンは植物源から、主にチコリー(Cichorium intybus)の根及びキクイモ(Helianthus tuberosus)の塊茎から一般に調製され、その中でイヌリンは、新鮮な植物物質に対して約10〜20%w/wの濃度で存在し得る。植物源由来のイヌリンは通常、2〜約100の範囲の重合度(DP)を有する線状及びわずかに分枝状の多糖鎖の多分散系混合物である。例えばEP0769026及びEP0670850中に記載されたのと同様に、知られている技法に従い、イヌリンを前記植物部分から容易に抽出し、精製且つ場合によっては分別して、不純物、単糖及び二糖並びに望ましくないオリゴ糖を除去し、さまざまな等級のイヌリンを提供することができる。
【0018】
典型的には約6〜約40の範囲の(DP)を有するイヌリンが市販されている。チコリー由来のイヌリンは、例えばOrafti(Tienen、ベルギー)からRAFTILINE(登録商標)としてさまざまな等級で入手可能である。典型的なRAFTILINE(登録商標)等級には、(約10の(DP)を有し合計約8重量%までのグルコース、フルクトース及びスクロースを含む)RAFTILINE(登録商標)ST、(約10の(DP)を有するが合計1重量%未満のグルコース、フルクトース及びスクロースを含む)RAFTILINE(登録商標)LS、及び(少なくとも23の(DP)、一般に約25の(DP)を有し、且つグルコース、フルクトース及びスクロースをほとんど含まない)RAFTILINE(登録商標)RTM.HPがある。Inutec(登録商標)N25、25のDPを有する非誘導体化状態のイヌリンはOraftiから入手可能である。
【0019】
通常(DP)<10として定義される低い重合度を有するイヌリンは、イヌロ−オリゴ糖、フルクト−オリゴ糖又はオリゴフルクトースと一般に名付けられる。オリゴフルクトースはイヌリンの部分的な(好ましくは酵素による)加水分解によって従来の方法で得ることができ、当技術分野でよく知られている技法に従いスクロースから酵素によるin vitro合成によって得ることもできる。例えばOrafti、(Tienen、ベルギー)からのRAFTILOSE(登録商標)、例えばオリゴフルクトースの約95重量%の平均含有率を有し、2〜7の範囲の重合度(DP)を有し、且つ合計約5重量%のグルコース、フルクトース及びスクロースを含むRAFTILOSE(登録商標)P95として、幾つかの等級のオリゴフルクトースが市販されている。
【0020】
さまざまなイヌリン誘導体、及びイヌリン誘導体を調製するための方法は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,647号(Stevens et al)中に記載されている。
【0021】
ポリフルクトース骨格において疎水性アルキル鎖で誘導体化させたイヌリン、例えばInutec(登録商標)SP1(SP1)がOrafti(Tienen、ベルギー)から市販されている。
【0022】
デンプンは、生分解性の貯蔵多糖として多くの植物中に多量に存在する、よく知られている炭水化物である。デンプン分子は、α−1,4グルコシル−グルコシル結合によって互いに結合しそれによって(アミロースと呼ばれる)線状鎖デンプン構造を形成する、又はα−1,4及びα−1,6グルコシル結合によって結合しそれによって分枝点にα−1,6グルコシル−グルコシル結合を有する(アミロペクチンと呼ばれる)分子状鎖デンプン構造を形成する、D−グルコシル単位から構成されるポリマーである。植物源に応じて主に線状構造又は主に分枝状構造を有するポリマー分子の多分散系混合物として、デンプンは天然に存在する。デンプンは前記構造を有する分子の多分散系混合物として、天然に存在する可能性もある。重合度(DP)、即ちデンプン分子中の互いに結合したグリコシル単位の数は大きく変わる可能性があり、それは主に植物源及び採取時間に依存する。
【0023】
グリコシル単位間の結合は加水分解、熱及びせん断力に敏感である。酸加水分解、酵素加水分解、熱処理又はせん断によって、或いは前記処理の組合せによって、本明細書でデンプン加水分解生成物と一般的に呼ぶさまざまなデンプン誘導体を調製するために、この現象は産業上利用されている。デンプンの源、加水分解触媒、加水分解条件、熱処理及び/又はせん断条件に応じて、本質的にグルコースから構成される生成物から、グルコースシロップと一般に呼ばれる生成物を経てマルトデキストリン及びデキストリンと一般に呼ばれる生成物の範囲まで、広くさまざまなデンプン加水分解生成物を得ることができる。デンプン加水分解生成物は、当技術分野ではよく知られている。
【0024】
D−グルコース(デキストロース)は強い還元力を示す。デンプン加水分解生成物は、D−グルコシル鎖から構成されるD−グルコース、オリゴマー(DP<10)及び/又はポリマー(DP>10)分子から構成される多分散系混合物であり、これらもオリゴマー及びポリマー分子上のD−グルコース及び還元糖単位(実質的に末端グルコシル単位である)の存在から生じる還元力を示す。
【0025】
結果として、所与のデンプン生成物から始まり、加水分解の程度が大きくなるほど、より多くの分子(モノマーD−グルコース、オリゴマー及び残りのポリマー分子)が加水分解生成物中に存在し、したがってデンプン加水分解生成物のより高い還元力が得られる。したがって、デンプン加水分解生成物の還元力は、さまざまなデンプン加水分解生成物を区別及び指定するための、顕著な選択の特徴となっている。還元力はデキストロース当量(D.E.)として表され、これは乾燥物質100グラム当たりのD−グルコース(デキストロース)のグラム数に形式上相当する。100のD.E.を定義に従い有するD−グルコースでは、そのD.E.は所与の生成物中の乾燥生成物ベースでのD−グルコース及び還元糖単位(デキストロースとして表す)の量を示す。したがってD.E.は、実際デンプンの加水分解の程度の測定値でもあり、さらにデンプン加水分解生成物中のグルコースポリマーの平均分子量の相対的指標でもある。
【0026】
D−グルコースから本質的に構成される加水分解生成物以外に、デンプン加水分解生成物のD.E.は1〜約96の範囲である可能性があり、D.E.に基づいた広くさまざまな等級のデンプン加水分解生成物が市販されている。
【0027】
20を超えるD.E.を有する加水分解生成物は、一般にグルコースシロップと呼ばれる。47までのD.E.を有するグルコースシロップを、従来の技法によって、例えばスプレー乾燥によって乾燥させて、最大約5wt%の湿気を含む粉末形のいわゆる「乾燥グルコースシロップ」を得ることができる。
【0028】
20以下のD.E.を有する加水分解生成物は、一般にマルトデキストリン及びデキストリンと呼ばれる。その製造プロセスは通常最後にスプレー乾燥工程を含み、最大約5wt%の湿気を含む粉末形でもこれらの加水分解生成物を生成する(wt%は重量%を示す)。
【0029】
グルコースシロップ、マルトデキストリン及びデキストリンは、よく知られている方法に従って調節された加水分解条件下において、さまざまなデンプン源から大規模に工業的に生成される。得られるさまざまな等級のデンプン加水分解生成物は、それらのデンプン供給源物質、及び製造法の指標(例えば、マルトデキストリン/デキストリン)と組合せることが多いそれらのD.E.値によって通常定義される。
【0030】
幾つかの規制には従うが、用語「マルトデキストリン」はトウモロコシデンプン由来の生成物を称するものとし、本明細書で使用する用語マルトデキストリンはトウモロコシデンプンの加水分解生成物に限られないが、任意の供給源由来のデンプンから得られる20以下のD.E.を有するデンプン加水分解生成物を本明細書では示す。
【0031】
デンプンの典型的な市販の供給源はトウモロコシ、ジャガイモ、タピオカ、コメ、モロコシ及びコムギである。しかしながら、本発明と組合せて使用するのに適したデンプン加水分解生成物は、前記供給源由来のデンプンに限られず、それらは任意の供給源由来のデンプンから得られるデンプン加水分解生成物に及ぶ。
【0032】
グルコースシロップ、マルトデキストリン及びデキストリンはよく知られており、市販されている。例えば、グルコースシロップ及びマルトデキストリンの生成、性質及び適用例は、文献「Starch Hydrolysis Products,Worldwide Technology,Production and Applications、Weinheim VCH Publishers Inc.(1992)中の総説記事中に記載されてきている。さらに、Roquette社からの技術文献「GLUCIDEX Brochure8/09.98」ではマルトデキストリンを記載し、乾燥グルコースシロップが記載され、さまざまな等級が販売用に提供されている。
【0033】
プロセシング中及び保存時にタンパク質の安定性を調節することは、多くの産業、特に医薬及びバイオテクノロジー産業において問題として認識されている。タンパク質が遭遇する難点はタンパク質の製造を困難にし、低い収率をもたらし、プロセスを不経済にする可能性がある。タンパク質は、プロセシング中にタンパク質の分解及び機能の消失をもたらす可能性がある条件に曝されるので、したがってタンパク質プロセシングの方法を改善して、タンパク質を保護しタンパク質の損傷又は消失を最少にする必要性が存在する。さらに、タンパク質の溶解度を改善しタンパク質の凝集を低下させる必要性が存在する。プロセシングを高いタンパク質濃度で行い、それによって体積を低下させることができるように、溶液中でのタンパク質プロセシングに関する方法を改善する要求がさらに存在する。残念ながら、凝集は一般に高いタンパク質濃度で刺激され、高い局所タンパク質濃度の領域は大きな反応容器中では除去するのは困難である。界面活性剤又はカオトロピック剤を使用してタンパク質の溶解度を保つことができるが、界面活性剤は下流プロセシング中に除去するのは非常に困難であり、使用する化学物質に関して他の欠点が存在する、例えば変性剤塩酸グアニジンは毒性であり、タンパク質生成用機器のステンレス鋼製容器及びパイプを腐食する。変性剤尿素にタンパク質を長時間曝すことは、アミノ酸の修飾、例えばカルバミル化をもたらす可能性がある。界面活性剤及び可溶化剤、アルギニンなどは、タンパク質研究所で使用される最も一般的な分析技法(例えばBradfordアッセイ、SDS−PAGEゲル、RP−HPLC)の幾つかには不適合である。このような汚染を排除するためのバッファー交換が考えられるが、未知の希釈又はサンプルの消失をもたらし、タンパク質凝集を引き起こす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明によって処理される問題は、立体配座の変化に対してタンパク質を安定化させ(例えば、変性状態の立体配座、又は原型立体配座にタンパク質を保つ)、それによってタンパク質の凝集を減少させ、タンパク質の溶解性を改善し、分解に対してタンパク質を保護することを含む。本発明はさらに、タンパク質が変性状態又は原型の非凝集形で溶液中に保たれ、容器又は他のタンパク質分子への粘着を減らし、凝集する傾向を低下させるように、タンパク質の溶解性を改善しようとするものである。
【0035】
本発明の目的は、現在の方法に関する欠点を軽減するように、タンパク質プロセシングの方法、特にタンパク質フォールディング、精製、濃縮及び/又は保存に関する方法において使用することができるタンパク質を安定化させるため、保護するため、及び可溶化するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
第1の態様では本発明は、タンパク質を安定化させる方法であって、タンパク質と糖ポリマー誘導体を接触させ、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではないことを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
好ましい安定化法では、タンパク質と糖ポリマー誘導体を水溶液中で接触させる。安定化法は、水溶液の乾燥、脱水、蒸発、又は凍結乾燥(凍結乾燥)をさらに含むことができる。
【0038】
本発明の安定化法では、タンパク質を立体配座の変化に対して安定化させる。タンパク質は変性形で安定化させることができ、非フォールディング状態又は部分的にフォールディング状態であってよく、或いは原型の立体配座で安定化させることができる。原型立体配座のタンパク質に関する方法では、タンパク質を変性に対して安定化させる。
【0039】
本発明の安定化法では、タンパク質を凝集に対して安定化させる。本発明の安定化法は、タンパク質を分解に対して保護するためにも有用である。
【0040】
第2の態様では本発明は、タンパク質を可溶化させる方法であって、タンパク質と糖ポリマー誘導体を接触させ、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではないことを特徴とする方法を提供する。
【0041】
本発明の安定化法及び可溶化法は、タンパク質のプロセシング法、特にタンパク質をフォールディングする方法を含むか又はそれからなる方法において有用である。本発明の安定化法及び可溶化法は、1つ又は複数のタンパク質精製工程、例えば透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及び/又はクロマトグラフィーを含む、タンパク質のプロセシング法において使用することができる。
【0042】
第3の態様では本発明は、糖ポリマー誘導体の使用であって、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではなく、凝集、立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるための使用を提供する。
【0043】
本発明によれば、糖ポリマー誘導体を使用して、原型タンパク質の変性又は変性(非フォールディング状態又は部分的にフォールディング状態の)タンパク質の再生などの、立体配座の変化に対してタンパク質を安定化させ、タンパク質を所望の配置に保つのを助ける。糖ポリマー誘導体は、例えば熱、電磁放射、せん断応力、タンパク質分解による、或いは還元、酸化、又はカルバミル化などの化学修飾による分解に対してタンパク質を安定化させるように働く。本発明の方法では、糖ポリマー誘導体を使用して、水溶液中でタンパク質を安定化させることができ、或いは例えば水溶液の乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥(凍結乾燥)によって生成した乾燥形でタンパク質を安定化させることができる。
【0044】
第4の態様では本発明は、糖ポリマー誘導体の使用であって、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではない、タンパク質を可溶化させるための使用を提供する。
【0045】
本明細書で使用する用語「タンパク質」は、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド及びオリゴペプチドを含む。タンパク質は合成又は天然に存在するものであってよく、化学合成によって、或いは組換え又は非組換え法によって得ることができる。DNA組換え又は成熟技法を使用して、タンパク質を生成することができる。タンパク質はin vivo、完全な動物中、或いは真核生物又は原核生物細胞中で生成することができ;或いは、例えば大腸菌溶解物、小麦麦芽エキス、又はウサギ網状赤血球を使用する無細胞in vitro翻訳などのin vitro法を使用して、タンパク質を発生させることができる。無細胞in vitro翻訳法は、in vitro転写後、例えばファージ又はリボソームディスプレイ後に使用することができる。
【0046】
変性タンパク質は、完全に変性状態、又は部分的に変性状態、或いはタンパク質が非フォールディング状態のタンパク質及び/又は部分的にフォールディングリフォールディング状態の中間体などの、非原型の形であるように再生状態にすることができる。変性タンパク質を含む水溶液又は乾燥サンプルは、1つ又は複数のこれらの形を含み得る。原型タンパク質は、フォールディング状態の機能的な立体配座である。幾つかのタンパク質は水溶液中に、或いは乾燥サンプル中に、汚染した凝集体及び/又は封入体の形で存在する可能性もある。
【0047】
本発明の方法中で使用するのに適した糖ポリマー誘導体は、適切な濃度及び適切な条件で、溶液中で非原型、非フォールディング状態又は部分的にフォールディングした可溶状態に変性タンパク質を保つことができる誘導体である。用語「糖ポリマー誘導体」は、α−、β−又はγ−シクロデキストリン及びそれらの誘導体は除外する。1つ、又は複数の(即ち混合物の)糖ポリマー誘導体を、本発明の方法又は使用中で用いることができる。適切な糖ポリマー誘導体は、疎水性アミノ酸側鎖を保護する、或いは実質的なタンパク質電荷又は水素結合特性を変えることができる誘導体である。本明細書で使用する用語「糖ポリマー誘導体」は、3個以上の単糖単位を含むポリマー及びオリゴマー糖分子を含む。糖ポリマー誘導体は、線状又は非線状両親媒性の糖ポリマー誘導体であってよい。
【0048】
本発明の方法中で使用する糖ポリマー誘導体は、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タゴトース、キシルロース及びリブロースからなる群から選択される1つ又は複数の糖を含むことができる。これらの糖類の中では、グルコース、フルクトース、マンノース及び/又はガラクトースが、4つの最も一般的で単純な(モノマー)糖単位である。糖ポリマー誘導体は、デキストラン、セルロース、アミロース、デンプン、プルラン、マンナン、キチン、キトサン、イヌリン、レバン、キシラン、シクロデキストリン(ただし、それはα−、β−又はγ−シクロデキストリンではないものとする)、シクロアミロース又はその誘導体であってよい。適切な糖ポリマー誘導体は、その全容が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,202,433号及び米国特許第5,204,457号中に開示されている。
【0049】
両親媒性の糖ポリマーは、原型及び/又は変性タンパク質と疎水性相互作用することができる。適切な置換基を用いた糖ポリマーの誘導体化は、両親媒性及びタンパク質との相互作用の強度を増大させる。本発明の方法、使用及びキットで使用する糖ポリマー誘導体に適した置換基には、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、1〜25個の炭素原子を有するハロアルキル基、3〜9個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数のアリール基で置換された1〜25個の炭素原子を有するアルキル基を含むアラルキル基、2〜25個の炭素原子を有する脂肪酸基並びに1〜25個の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択される置換基がある。炭水化物分子当たり1つ又は複数の置換基が存在してよい。アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アラルキル、脂肪酸及びポリオール基は、直鎖又は分枝鎖状の基であってよい。置換基は2〜25個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル及びアルキニル基から選択されることが好ましく、置換基は3〜22個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル及びアルキニル基から選択されることがより好ましく、置換基は3〜18個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル及びアルキニル基から選択されることが最も好ましい。
【0050】
糖ポリマー誘導体は、3個以上の糖単位を含む環状糖ポリマー誘導体であってよく、糖ポリマー誘導体は、α−、β−又はγ−シクロデキストリンを除いたシクロデキストリン誘導体などのグルコサンであってよい。
【0051】
糖ポリマー誘導体が、グルコサンなどの環状糖ポリマー誘導体、例えばシクロデキストリン誘導体であるとき、タンパク質を安定化させるために本発明の方法において使用する濃度は、好ましくは存在するタンパク質の100〜10,000倍のモル濃度、より好ましくは存在するタンパク質の100〜5,000倍のモル濃度、さらにより好ましくは存在するタンパク質の100〜2,000倍のモル濃度、さらに好ましくは存在するタンパク質の500〜1,500倍のモル濃度、最も好ましくは存在するタンパク質の約1,000倍のモル濃度である。
【0052】
本発明の方法及び使用では、糖ポリマー誘導体は、3個以上の単糖単位を含む線状又は分枝状糖ポリマー誘導体、フルクトサンなど、例えばイヌリン誘導体、又はグルコシドヒドロカルビル誘導体などのグルコシドであることが好ましい。好ましい誘導体には、本明細書に記載する式(I)のイヌリン誘導体及び式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体がある。式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体は、デンプン加水分解生成物のヒドロカルビルウレタンであることが好ましく、本明細書で定義する式(III)の単位から構成される式(IIa)のグルコシドヒドロカルビル誘導体であることが特に好ましい。
【0053】
イヌリン誘導体又はグルコシドヒドロカルビルは、約3〜500、3〜250又は3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは10〜50、さらにより好ましくは15〜40、さらに好ましくは20〜30、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の重合度を有することが適切である。イヌリン誘導体又はグルコシドヒドロカルビル誘導体は、1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基、例えば1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、1〜25個の炭素原子を有するハロアルキル基、3〜9個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数のアリール基で置換された1〜25個の炭素原子を有するアルキル基を含むアラルキル基、2〜25個の炭素原子を有する脂肪酸基並びに1〜25個の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択される無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化されることが好ましい。1つ又は複数の無極性ヒドロカルビル基は、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、並びに2〜25個の炭素原子、好ましくは3〜22個、及び最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基から選択されることが好ましい。無極性ヒドロカルビル基は1〜25個、好ましくは3〜22個、及び最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、且つ/或いは無極性ヒドロカルビル基は2〜25個、好ましくは3〜22個、及び最も好ましくは3〜18個の炭素原子有するアルケニル基又はアルキニル基であってよい。
【0054】
本明細書に記載する方法及び使用に適した糖ポリマー誘導体は、0.01〜3.0又は0.02〜3.0、好ましくは0.05〜1.0、最も好ましくは0.05〜0.5の糖単位当たりの平均置換度を典型的には有する。好ましいイヌリン誘導体は、0.01〜3.0、又は0.02〜3.0、好ましくは0.02〜1.0又は0.05〜1.0、最も好ましくは0.05〜0.5又は0.03〜0.3の範囲の糖単位当たりの平均置換度を典型的には有する。好ましいグルコシドヒドロカルビル誘導体は、0.01〜2.0、好ましくは0.02〜1.0、より好ましくは0.03〜0.3の範囲の置換度を一般に有する。
【0055】
好ましい態様では本発明では、イヌリン誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、タンパク質を安定化させる方法を提供する。タンパク質とイヌリン誘導体は、水溶液中で接触させることが好ましい。水溶液中でタンパク質を安定化させる方法は、水溶液を乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥(凍結乾燥)させて、乾燥タンパク質/イヌリン誘導体組成物を生成することをさらに含むことができる。タンパク質を一定の長さの時間保存する場合、(及び原型、機能性である場合)、乾燥はタンパク質の立体配座、完全性の維持を助長するのに特に有用である。このような方法では、タンパク質をイヌリン誘導体によって立体配座の変化に対して安定化させる。安定化させるタンパク質は変性タンパク質の形、又は原型の立体配座であってよい。変性タンパク質は凝集に対して安定化させ、原型タンパク質は変性に対して安定化させる。変性タンパク質と原型タンパク質の両方を分解に対して保護する。
【0056】
他の好ましい態様では本発明では、イヌリン誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、タンパク質を可溶化させる方法を提供する。非原型配置のタンパク質を安定化させるための方法であって、非原型立体配座のタンパク質の水溶液に、タンパク質のフォールディングを阻害するのに充分な濃度のイヌリン誘導体を提供することを含む方法も提供する。本発明はさらに、原型立体配座のタンパク質を安定化させるための方法であって、原型立体配座のタンパク質の水溶液、原型立体配座のタンパク質を維持するのに充分な濃度のイヌリン誘導体を提供することを含む方法を提供する。
【0057】
タンパク質のフォールディングを阻害するのに充分な糖ポリマー誘導体、例えばイヌリン誘導体の濃度は、変性タンパク質の再生を遅らせる濃度である。適切な濃度では、糖ポリマー誘導体が存在しない場合に起こる回復より遅い構造の回復がある、何故なら糖ポリマー誘導体は、タンパク質を非原型配置に保つのを手助けするからである。糖ポリマー誘導体の存在は、誘導体が存在しない場合に観察されるリフォールディング率と比較して、リフォールディング率を低下させる。所与の立体配座(変性状態又は原型)の所与のタンパク質を安定化させるためのイヌリン誘導体の濃度は、温度、溶液状態、タンパク質濃度及びタンパク質自体などのさまざまな要因に依存する。適切な濃度は当業者によって容易に決定することができる。
【0058】
タンパク質を安定化させるためのイヌリン誘導体の濃度は一般に、タンパク質のモル濃度の約0.1〜約1000倍、好ましくはタンパク質のモル濃度の約0.5〜約500、約1〜約300、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約30、約1〜約25、又は約1〜約20倍の範囲内にある。典型的にはイヌリン誘導体は、約0.002mg/ml〜約100mg/ml、好ましくは約0.01mg/ml〜約50mg/ml、約0.02mg/ml〜約10mg/ml又は約0.25〜2.5mg/mlの濃度で溶液中に存在する。水溶液中のイヌリン誘導体の濃度の上限は、溶液中のそのイヌリン誘導体の溶解度によって決定される。
【0059】
イヌリン誘導体を使用してタンパク質を安定化させ保護する本発明の方法は、タンパク質のプロセシング法、例えば透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及びクロマトグラフィーなどの1つ又は複数のタンパク質精製工程を含むタンパク質フォールディング法及び/又はプロセシング法において有用である。
【0060】
本発明は、立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるためのイヌリン誘導体の使用を提供し、本発明を使用して、水溶液中又は乾燥形でタンパク質を安定化させることができる。
【0061】
本発明の方法及び使用中で使用するのに適したイヌリン誘導体は、Inutec(登録商標)SP1(Orafti、ベルギー)である。
【0062】
本発明の方法又は使用に好ましいイヌリン誘導体は、式(I)の化合物であって、
G(O−CO−NH−R−[F(O−CO−NH−R(I)
上式で、
Gが末端グルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよい単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aが0〜4の整数であり;
Fが、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいフルクトシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つフルクトシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく、
bが末端フルクトシル単位に関して0〜3及び0〜4の整数であり;
nが2〜499、好ましくは2〜249、2〜99、2〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式F(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式F(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度が0.01〜3.0である化合物である。
【0063】
又はRがアルキル基である場合、それは1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルキル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0064】
又はRがアルケニル基である場合、それは2〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルケニル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0065】
又はRがアルキニル基である場合、それは2〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルキニル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0066】
又はRがハロアルキル基である場合、それは1つ又は複数のハロゲン原子(例えばフッ素、塩素又は臭素原子)で置換された前に定義したアルキル基である。前記ハロアルキル基は1〜3個のハロゲン原子置換基を有することが好ましく、1〜3個のフッ素又は塩素原子置換基を有することがより好ましい。前記ハロアルキル基は3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0067】
又はRがシクロアルキル基である場合、それは3〜9個の炭素原子を有する環状アルキル基であり;前記シクロアルキル基は3〜7個の炭素原子を有することが好ましく、4〜6個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0068】
又はRがアリール基である場合、それは1つ又は複数の環中に6〜14個の炭素原子を有する芳香族基、例えばフェニル基又はナフチル基である。
【0069】
又はRがアラルキル基である場合、それは1つ又は複数の環中に6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数の芳香族基、例えばベンジル基又はトリフェニルメチル基で置換された、前に定義したアルキル基である。
【0070】
基R及びRはそれぞれ、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、並びに2〜25個、好ましくは3〜22個、及び最も好ましくは3〜18個の炭素原子の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基から選択することができる。1つ又は複数の基R及びRは、1〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有するアルキル基であってよく;1つ又は複数の基R及びRは、2〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基であることが適切である。アルキル基R及びRはそれぞれ、1〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有する線状アルキル基、又は3〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有する分枝状アルキル基であってよい。
【0071】
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度は、0.01〜3.0、又は0.02〜3.0、好ましくは0.02〜1.0又は0.05〜1.0、最も好ましくは0.05〜0.5又は0.03〜0.3の範囲にあることが適切である。式(I)の化合物は、例えばイヌリンN−n−カルバミン酸オクチル、イヌリンN−n−カルバミン酸ドデシル、及びイヌリンN−n−カルバミン酸オクタデシルからなる群から選択される、多分散系の線状又はわずかに分枝状のイヌリンN−アルキルウレタンであってよい。
【0072】
他の態様では本発明は、グルコシドヒドロカルビル誘導体などのグルコシド誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、タンパク質を安定化させるための方法を提供する。
【0073】
本発明の好ましい安定化法では、タンパク質とグルコシド誘導体、例えばグルコシドヒドロカルビル誘導体を水溶液中で接触させる。安定化法は、水溶液の乾燥、脱水、蒸発、又は凍結乾燥(凍結乾燥)をさらに含むことができる。
【0074】
本発明のこのような安定化法では、グルコシド誘導体(例えばグルコシドヒドロカルビル誘導体)が作用して、立体配座の変化に対してタンパク質を安定化させる。非フォールディング状態又は部分的にフォールディング状態であってよい変性形で、タンパク質を安定化させることができ、或いはタンパク質は原型の立体配座で安定化させることができる。グルコシド誘導体(例えばグルコシドヒドロカルビル誘導体)と原型の立体配座のタンパク質を接触させることを含む方法では、タンパク質を変性に対して安定化させる。本発明の安定化法では、適切にはグルコシドヒドロカルビル誘導体であるグルコシド誘導体による凝集に対して、タンパク質を安定化させる。グルコシド誘導体(例えばグルコシドヒドロカルビル誘導体)を使用する本発明の安定化法は、タンパク質を分解に対して保護するためにも有用である。
【0075】
さらに他の態様では本発明は、グルコシド誘導体(例えばグルコシドヒドロカルビル誘導体)とタンパク質を接触させることを特徴とする、タンパク質を可溶化させる方法を提供する。
【0076】
グルコシドヒドロカルビル誘導体などのグルコシド誘導体を使用する、本発明の安定化法及び可溶化法は、タンパク質プロセシングの方法、特にタンパク質をフォールディングする方法を含むか又はそれからなる方法において有用である。本発明のこのような安定化法及び可溶化法は、1つ又は複数のタンパク質精製工程、例えば透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及び/又はクロマトグラフィーを含むタンパク質プロセシングの方法において使用することができる。
【0077】
他の態様では本発明は、凝集、立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるための、グルコシドヒドロカルビル誘導体などのグルコシド誘導体の使用を提供する。
【0078】
本発明によれば、好ましくはグルコシドヒドロカルビル誘導体であるグルコシド誘導体を使用して、原型タンパク質の変性又は変性(非フォールディング状態或いは部分的にフォールディング状態)タンパク質の再生などの、立体配座の変化に対してタンパク質を安定化させ、タンパク質を所望の配置に保つのを助ける。グルコシド誘導体が作用して、例えば熱、電磁放射、せん断応力、タンパク質分解による、或いは還元、酸化、又はカルバミル化などの化学修飾による分解に対してタンパク質を安定化させる。本発明の方法では、グルコシド誘導体、グルコシドヒドロカルビル誘導体を使用して水溶液中で、或いは例えば水溶液の乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥(凍結乾燥)によって生成した乾燥形で、タンパク質を安定化させることができる。
【0079】
さらに他の態様では本発明は、タンパク質を可溶化させるためのグルコシド誘導体、適切にはグルコシドヒドロカルビル誘導体の使用を提供する。
【0080】
グルコシド誘導体はグルコシドヒドロカルビル誘導体であることが好ましく、さらに式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体であって、
[G(O−CO−NH−R(II)
上式で、
Gがグルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいグルコシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つそれぞれのグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aは末端グルコシル単位に関して0〜4、非分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜3、及び分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜2の整数であり;
nは3〜499、好ましくは3〜249、3〜99、3〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式G(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式G(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位当たりの平均置換度が0.01〜2.0であるグルコシドヒドロカルビル誘導体であることが好ましい。
【0081】
がアルキル基である場合、それは1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルキル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0082】
がアルケニル基である場合、それは2〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルケニル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0083】
がアルキニル基である場合、それは2〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルキニル基であり;それは3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0084】
がハロアルキル基である場合、それは1つ又は複数のハロゲン原子(例えばフッ素、塩素又は臭素原子)で置換された前に定義したアルキル基である。前記ハロアルキル基は1〜3個のハロゲン原子置換基を有することが好ましく、1〜3個のフッ素又は塩素原子置換基を有することがより好ましい。
【0085】
前記ハロアルキル基は3〜22個の炭素原子を有することが好ましく、3〜18個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0086】
がシクロアルキル基である場合、それは3〜9個の炭素原子を有する環状アルキル基であり;前記シクロアルキル基は3〜7個の炭素原子を有することが好ましく、4〜6個の炭素原子を有することが最も好ましい。
【0087】
がアリール基である場合、それは1つ又は複数の環中に6〜14個の炭素原子を有する芳香族基、例えばフェニル基又はナフチル基である。
【0088】
がアラルキル基である場合、それは1つ又は複数の環中に6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数の芳香族基、例えばベンジル基又はトリフェニルメチル基で置換された、前に定義したアルキル基である。
【0089】
好ましくは、1つ又は複数の基Rは、1〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状アルキル基であってよく、且つ/或いは1つ又は複数の基Rは、2〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基であってよい。それぞれのアルキル基Rは、1〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有する線状アルキル基、又は3〜25個、好ましくは3〜22個、最も好ましくは3〜18個の炭素原子を有する分枝状アルキル基であることが適切である。
【0090】
式(II)の化合物では、グルコシル単位当たりの平均置換度は0.01〜2.0、好ましくは0.02〜1.0、及び最も好ましくは0.03〜0.3である。
【0091】
式(II)の化合物は、多分散系の線状又は分枝状のグルコシドN−ヒドロカルビルウレタンであってよい。それぞれのグルコシル単位GはD−グルコシル又はL−グルコシル単位、好ましくはD−グルコシル単位であってよい。グルコシル単位は1,4−結合又は1,6−結合を介して結合することができ、且つ結合はそれぞれα−結合又はβ−結合であってよい。
【0092】
本発明の方法及び使用の好ましい実施形態では、前記式(II)の化合物はデンプン加水分解生成物のヒドロカルビルウレタンである。
【0093】
特に好ましいデンプン加水分解生成物のヒドロカルビルウレタンは、式(III)の単位であって、
G’(O−CO−NH−R(III)
上式で、
G’がデンプン加水分解生成物分子のグルコシル単位を表し、デンプン加水分解生成物が1〜47の範囲のデキストロース当量(D.E.)を有し、
が前に定義したヒドロカルビル基であり、且つ
bがグルコシル単位当たりのカルバミン酸ヒドロカルビル基の数を表し、基の数は置換度(DS)、即ち式(IIa)のグルコシドヒドロカルビルウレタンのグルコシル単位当たりのヒドロカルビル置換基の平均数として一般的に表し、前記DS値が0.01〜2.0の範囲である単位から構成される式(IIa)のグルコシドヒドロカルビル誘導体である。
【0094】
カルバミン酸基によって理論上置換することができる、対象グルコシド分子のグルコシル単位当たりのヒドロキシル基の数は、非末端、非分枝状グルコシル単位に関しては最大3であり、一方末端又は非末端の分枝状グルコシル単位に関しては、その数はそれぞれで4又は2ある。さらに、DSはグルコシル単位当たりの置換基の平均数を表すので、グルコシドN−カルバミン酸ヒドロカルビル(IIa)分子中には、カルバミン酸ヒドロカルビル基によって置換されていないグルコシル単位が存在する可能性があることは明らかである(したがって式(III)中の前記グルコシル単位に関するbはゼロである)。
【0095】
デンプン加水分解生成物は一般に、グルコシド分子の多分散系混合物の形で現れる。したがって、グルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)を調製するための出発物質として、通常の場合通りこのような混合物を使用するとき、得られる生成物はグルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)の対応する多分散系混合物でもある。このような多分散系混合物は、本発明の方法及び使用において利用するためのグルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)の好ましい実施形態を構成する。
【0096】
前記グルコシド分子の多分散系混合物から構成され1〜47の範囲のD.E.を有する、市販等級のデンプン加水分解生成物は、グルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)を調製するのに非常に適している。
【0097】
典型的には、本発明のグルコシドN−ヒドロカルビルウレタン(IIa)の調製において使用するのに適したデンプン加水分解生成物は、例えばROQUETTE社から入手可能であるGLUCIDEX(登録商標)マルトデキストリン及びGLUCIDEX(登録商標)乾燥グルコースシロップ例えば、型1(D.E.最大5を基にしたジャガイモ)、型2(D.E.最大5を基にした青色メイズ)、型6(D.E.5〜8を基にした青色メイズ)、型9(D.E.8〜10を基にしたジャガイモ)のマルトデキストリン、並びに型12(D.E.11〜14)、型17(D.E.15〜18)及び型19(D.E.18〜20)のマルトデキストリン、並びに型21(D.E.20〜23)、型28E(D.E.28〜31)、型29(D.E.28〜31)、型32(D.E.31〜34)、型33(D.E.31〜34)、型38(D.E.36〜40)、型39(D.E.38〜41)、型40(D.E.38〜42)及び型47(D.E.43〜47)の乾燥グルコースシロップなどである。
【0098】
本発明のヒドロカルビルウレタン(IIa)のヒドロカルビル基、即ち本明細書で前に定義した式(III)中のR基は、好ましくは飽和C〜C22アルキル基、より好ましくは飽和C〜C18アルキル基、さらにより好ましくは飽和線状C〜C18アルキル基、最も好ましくは飽和線状C〜C18アルキル基である。典型的には、適切なアルキル基にはブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシル基がある。
【0099】
他の好ましい実施形態では、ヒドロカルビル基はC〜C22アルケニル基、好ましくはC〜C18アルケニル基、最も好ましくは線状C〜C18アルケニル基である。
【0100】
典型的には、適切なアルケニル基にはブテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル及びオクタデセニル基がある。
【0101】
本発明のウレタン(IIa)中では、式(III)の単位の全R基は同じであるか又は異なってよい。後者のウレタン(IIa)は、実際は前に定義した異なるR基を有する2個以上のイソシアネートの混合物である式R−NCOのイソシアネートと、デンプン加水分解生成物を反応させることによって、以下に記載する方法に従い容易に調製することができる。
【0102】
飽和アルキルイソシアネートは、例えば第1級又は第2級アルキル−アミンとホスゲンを反応させることによって、従来通りに調製することができる。不飽和アルキルイソシアネートは、アルケニル−アミンから同様に調製することができる。基RC=CH−が式(III)の基Rに対応し、且つRが水素又はアルキル基を表し、且つRがアルキル又はビニル基を表す式RC=CH−NCO(IV)の、α,β−不飽和アルキルイソシアネートは、K.Koenig et al.(Angew.Chem.、21(4)、334〜335(1979))によって開示されたのと同様に、アルデヒドRCH−CHOとMeC−NH2の縮合、次に(そのエナミン形と平衡状態で)生じたシッフ塩基とホスゲンの反応、及びMeC−Clの熱除去によって調製することができる。さらに、さまざまな不飽和アルキルイソシアネートが、特にDow Chemical Co.の米国特許第3,890,383号及び米国特許第3,803,062号中で開示されている。式R−N=C=O(前に定義したR)の多くのアルキルシアネートが市販されている。
【0103】
本発明によるグルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)は、式(III)のグルコシル単位当たり0.01〜2.0、好ましくは0.02〜1.0、及び最も好ましくは0.03〜0.3の範囲の置換度(DS)を有する。
【0104】
カルバミン酸ヒドロカルビルの1つ又は複数の置換基は、グルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)のグルコシル単位上のさまざまな位置に位置し得る。
【0105】
本発明のグルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)は、デンプン加水分解生成物、イソシアネート及び反応生成物に関して不活性である溶媒中に溶かして、例えばデンプン加水分解生成物と選択したヒドロカルビルイソシアネート又はヒドロカルビルイソシアネートの混合物を反応させることによって、ウレタン、単糖、二糖、及び多糖を調製するための従来の方法と同様に調製することができる。
【0106】
適切な溶媒には、反応性ヒドロキシル及びアミン基を含まない溶媒又は溶媒混合物、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN−メチルピロリドン(NMP)などがある。
【0107】
デンプン加水分解生成物とヒドロカルビルイソシアネートの間の反応は、無水条件下で行うことが好ましい。これを鑑みて、デンプン加水分解生成物及び溶媒は、それらをヒドロカルビルイソシアネートと接触させる前に、0.5wt%未満の含水率まで乾燥させることが好ましい。例えば乾燥空気流中でデンプン加水分解生成物を加熱すること、又は減圧下でデンプン加水分解生成物を加熱すること、又はデンプン加水分解生成物の溶液、反応用に選択した溶媒中から、場合によっては減圧下で共沸蒸留によって水を除去することなどを含めた、従来の技法によって乾燥を行うことができる。乾燥中に最高温度は、デンプン加水分解生成物及び溶媒の性質に応じて、如何なる分解又は副反応をも回避するために過剰になってはならない。好ましくは、前記温度は約80℃未満に保たなければならない。
【0108】
軽い攪拌〜激しい攪拌下において、適切な溶媒に溶かしたデンプン加水分解生成物と、非希釈形又は無水溶媒に溶かしたヒドロカルビルイソシアネートを接触させることによって、典型的には反応を行う。広い温度範囲、典型的には室温〜約80℃まで、又は温度が低い場合は反応混合物の還流温度で、好ましくは約60℃と約80℃の間の温度で反応を行うことができる。
【0109】
典型的にはデンプン加水分解生成物は、必要な場合は加熱下で適切な溶媒に溶かす。したがって、ヒドロカルビルイソシアネート(場合によっては同じ不活性溶媒又は他の不活性溶媒に溶けているが、前者の溶媒と混和性であることが好ましい)を、溶解グルコシドに攪拌下でゆっくり加える。グルコシドヒドロカルビルウレタン(IIa)の望ましい置換度は、反応物の割合を調節することによって得ることができる。ウレタンを形成するためのヒドロカルビルイソシアネートとアルコールヒドロキシル基の反応は定量反応なので、ウレタン(IIa)の置換度は、デンプン加水分解生成物のグルコシル単位当たりのヒドロカルビルイソシアネートの適切なモル比を選択することによって調節することができる。通常反応混合物は、一定時間、通常約30分〜約24時間攪拌しながら加熱して、試薬間の反応を終了させる。次いで反応混合物は、従来の技法によって、例えば通常は室温に冷却した後に、試薬を溶かすために使用する1つ又は複数の溶媒と混和性である溶媒であるが、グルコシドアルキルウレタン(IIa)が全く溶けないか或いは非常に少ししか溶けない沈殿溶媒に反応混合物を注ぐことにより、形成されたウレタン(IIa)を沈殿させることによって後処理する。次いでウレタン(IIa)を例えば濾過又は遠心分離によって反応混合物から物理的に単離し、ウレタン(IIa)が全く溶けないか或いは非常にわずかのみ溶ける適切な溶媒で洗浄し、任意の一般的な技法を使用して乾燥させる。
【0110】
本発明による望ましいウレタン(IIa)を合成するための他の好都合な方法は、W.Gerhardt、Abb.Dtsch.Akad.Wiss.ベルリン、KL.Chem.Geol.Biol、Vol1966(6)、24〜36、(1967)(C.A.、6S、14323)によって記載された方法と類似の形式で行うことができる。その方法は、ジメチルホルムアミド中での一点反応における、シアン酸カリウム及び選択したヒドロカルビルハロゲン化物、好ましくは臭化ヒドロカルビルを用いたデンプン加水分解生成物の変換を含む。
【0111】
本明細書に記載する糖ポリマー誘導体、特にイヌリン誘導体及びグルコシドヒドロカルビル誘導体の方法及び使用は、食料品、栄養補助食品、化粧品又は薬剤調製物中に使用されるタンパク質の安定化、保護及び可溶化に有益に適用することができる。この文脈において、特に相当量の糖ポリマー誘導体がタンパク質生成物中に存在する場合、非毒性糖ポリマー誘導体が通常使用される。タンパク質生成物中に高濃度の糖ポリマー誘導体の存在が望ましくない場合、したがって糖ポリマー誘導体はタンパク質から容易に分離することができる。
【0112】
本発明の方法及び使用は有用である、何故なら使用する糖ポリマー誘導体は、伝統的な変性剤、可溶化剤及び保護物質、例えば界面活性剤、アルギニン及び塩酸グアニジンより、はるかに低い程度でタンパク質分析技法に影響を与えるからである。
【0113】
糖ポリマー誘導体は一般にシャペロンタンパク質より安価であるので、したがって本発明は、特に従来技術の方法が不経済となる可能性がある工程のスケールアップにおいて、可溶性を維持又は改善するコスト効率の良い手段を提供する。
【0114】
本発明の方法では、タンパク質の下流工程を害さずに凝集が抑制される。
【0115】
本発明の方法は、保存時にタンパク質の安定性を高め、クロマトグラフィーによる精製を向上させ、タンパク質濃縮中の損失を最小にし、且つ透析中のタンパク質の凝集を低下させるのに適している。本発明を全てのタンパク質処理分野に適用して、収率を増大させ、溶液体積を減少させることができ、資金の出費が減らされ、生成工程の有効性を改善することができることを意味する。
【0116】
本発明の方法を実施するためのキットを提供し、キットは一般に、本明細書に記載する糖ポリマー誘導体、例えば1つ又は複数のイヌリン誘導体、及び/又は1つ又は複数のグルコシドヒドロカルビル誘導体、好ましくは1つ又は複数の式(I)のイヌリン誘導体、及び/又は1つ又は複数の式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体の供給物を、場合によっては他の試薬、バイアル、ピペットチップ及びスパンカラムなどの消耗品、及び/又はキットを使用するための教示書と一緒に含む。
【0117】
キットは、本発明の方法を実施する際に使用するのに適した、バッファー及び他の試薬を含むこともできる。
【0118】
本発明は、タンパク質、及び約3〜500、3〜250又は3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは10〜50、さらにより好ましくは15〜40、さらに好ましくは20〜30、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30の重合度を有するイヌリン誘導体を含む組成物も提供する。本発明の組成物において、イヌリン誘導体はInutec(登録商標)SP1であってよい。このような組成物において有用なイヌリン誘導体には、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、1〜25個の炭素原子を有するハロアルキル基、3〜9個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数のアリール基で置換された1〜25個の炭素原子を有するアルキル基を含むアラルキル基、2〜25個の炭素原子を有する脂肪酸基及び1〜25個の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択される、1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化された誘導体がある。
【0119】
このような組成物では、イヌリン誘導体は式(I)の化合物であってよく、したがって本発明は、タンパク質、及び式(I)のイヌリン誘導体であって、
G(O−CO−NH−R−[F(O−CO−NH−R(I)
上式で、
Gが末端グルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよい単位であり;
が1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基であり、且つグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aが0〜4の整数であり;
Fが、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいフルクトシル単位であり;
が1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基であり、且つフルクトシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
bが末端フルクトシル単位に関して0〜3及び0〜4の整数であり;
nが2〜499、好ましくは2〜249、2〜99、2〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式F(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式F(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度が0.01〜3.0であるイヌリン誘導体を含む組成物を提供する。
【0120】
本発明のこの態様による組成物では、式(I)の化合物は多分散系の線状又はわずかに分枝状のイヌリンN−アルキルウレタンであってよく、イヌリンN−n−カルバミン酸オクチル、イヌリンN−n−カルバミン酸ドデシル及びイヌリンN−n−カルバミン酸オクタデシルからなる群から選択することができる。
【0121】
本発明による組成物はタンパク質、及び式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体であって、
[G(O−CO−NH−R(II)
上式で、
Gがグルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいグルコシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つそれぞれのグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aは末端グルコシル単位に関して0〜4、非分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜3、及び分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜2の整数であり;
nは3〜499、好ましくは3〜249、3〜99、3〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式G(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式G(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位当たりの平均置換度が0.01〜2.0であるグルコシドヒドロカルビル誘導体を含むことができる。
【0122】
本発明の組成物では、イヌリン誘導体又はグルコシドヒドロカルビル誘導体のモル濃度は一般に、タンパク質のモル濃度の約0.1〜約1000倍、好ましくはタンパク質のモル濃度の約0.5〜約500、約1〜約300、約1〜約100、約1〜約50、約1〜約30、約1〜約25、又は約1〜約20倍の範囲内にある。組成物は液体、例えば水溶液形であってよく、或いは乾燥形であってよい。好ましい実施形態では組成物は、例えば注射、摂取、吸入又は局所施用による投与に適している可能性がある水溶液形であるか、或いは適切な液体(滅菌蒸留水、生理食塩水、又は薬剤として許容可能なバッファーなど)中での還元用、例えば注射、摂取、吸入又は局所投与による投与用の乾燥形である医薬組成物である。
【0123】
本発明による組成物は、ヒト及び/又は動物の疾患の診断、治療、予防又は調査において使用するのに適している。本発明による医薬組成物は、例えばインシュリン、エリスロポイエチンなどの治療用タンパク質、抗体又は抗体断片を含むことができる。医薬組成物は、免疫処置用の抗原タンパク質を含むことができる。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
変性リゾチームの希釈中の、タンパク質の安定化及び保護、凝集の抑制
試験タンパク質、メンドリ卵白リゾチーム(Fluka、#62971)を、変性バッファー、8Mの尿素、0.1Mのトリス−HCl、32mMのDTT、pH8.2中に15mg/mlの濃度で溶かした。タンパク質は一晩4℃で変性させた。次いで変性タンパク質を、さまざまな濃度のInutec(登録商標)SP1(アルキル−イヌリン)を含む0.1mMのトリス−HCl、5mMのGSSG、pH8.2の溶液中に20倍に希釈した。室温で15分のインキュベーション後に492nmでの光の吸収(A492)により、溶液の濁度を測定することによって凝集を調べた。これらの結果は図1及び2中に示す。
【0125】
(実施例2)
変性クエン酸シンターゼの希釈中の、タンパク質の安定化及び保護、凝集の抑制
試験タンパク質、ブタ心臓のクエン酸シンターゼ(Sigma、#C3260)を、変性バッファー、8Mの尿素、0.1Mのトリス−HCl、32mMのDTT、pH8.2中に溶かした。この溶液を調製して、限外濾過装置(Vivaspin500PES、10kDaのMWCO、Fisher、#FDP875010X)を使用して最終濃度5mg/mlのタンパク質を得て、変性バッファーへのバッファー交換を実施した。タンパク質は一晩4℃で変性させた。次いで変性タンパク質を、さまざまな濃度のアルキル−イヌリンを含む0.1mMのトリス−HCl、5mMのGSSG、pH8.2の溶液中に20倍に希釈した。室温で15分のインキュベーション後に492nmでの光の吸収(A492)により、溶液の濁度を測定することによって凝集を調べた。これらの結果は図3及び4中に示す。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】変性タンパク質を希釈するために使用した溶液中のアルキル−イヌリン濃度の関数として、タンパク質の凝集を示す図である。最終的なリゾチーム濃度は0.75mg/mlであった。y軸はA492の測定値(凝集)を示し、x軸はmg/mlでアルキル−イヌリン濃度を示す。
【図2】変性タンパク質を希釈するために使用した溶液中のアルキル−イヌリン濃度の関数として、タンパク質の凝集の相対的低下を示す図である。最終的なリゾチーム濃度は0.75mg/mlであった。y軸は凝集の低下率を示し、x軸はmg/mlでアルキル−イヌリン濃度を示す。
【図3】変性タンパク質を希釈するために使用した溶液中のアルキル−イヌリン濃度の関数として、タンパク質の凝集を示す図である。最終的なクエン酸シンターゼ濃度は0.25mg/mlである。y軸はA492の測定値(凝集)を示し、x軸はmg/mlでアルキル−イヌリン濃度を示す。
【図4】変性タンパク質を希釈するために使用した溶液中のアルキル−イヌリン濃度の関数として、タンパク質の凝集の相対的低下を示す図である。最終的なクエン酸シンターゼ濃度は0.25mg/mlであった。y軸は凝集の低下率を示し、x軸はmg/mlでアルキル−イヌリン濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を安定化させる方法であって、タンパク質と糖ポリマー誘導体を接触させ、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではないことを特徴とする方法。
【請求項2】
タンパク質と糖ポリマー誘導体を水溶液中で接触させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥によって水溶液を乾燥させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質を立体配座の変化に対して安定化させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
タンパク質が変性タンパク質である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
タンパク質が原型の立体配座である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質を変性に対して安定化させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質を凝集に対して安定化させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
タンパク質を分解に対して保護する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
タンパク質を可溶化させる方法であって、タンパク質と糖ポリマー誘導体を接触させ、前記糖ポリマー誘導体がα−β−又はγ−シクロデキストリンではないことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の方法を含む、タンパク質のプロセシング法。
【請求項12】
タンパク質をフォールディングする方法を含むか又はそれからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1つ又は複数のタンパク質精製工程を含む、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質精製工程が透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及びクロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
糖ポリマー誘導体の使用であって、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではなく、凝集、立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるための使用。
【請求項16】
水溶液中でタンパク質を安定化させるための、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
乾燥形でタンパク質を安定化させるための、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
糖ポリマー誘導体の使用であって、前記糖ポリマー誘導体がα−、β−又はγ−シクロデキストリンではない、タンパク質を可溶化させるための使用。
【請求項19】
糖ポリマー誘導体がエリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タゴトース、キシルロース及びリブロースからなる群から選択される1つ又は複数の糖を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項20】
糖ポリマー誘導体がデキストラン、セルロース、アミロース、デンプン、プルラン、マンナン、キチン、キトサン、イヌリン、レバン、キシラン、シクロデキストリン又はシクロアミロースである、請求項19に記載の方法又は使用。
【請求項21】
糖ポリマー誘導体が3個以上の単糖単位を含む環状糖ポリマー誘導体である、前記請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項22】
環状糖ポリマー誘導体がグルコサンである、請求項21に記載の方法又は使用。
【請求項23】
環状糖ポリマー誘導体がシクロデキストリン誘導体である、請求項21又は22に記載の方法又は使用。
【請求項24】
糖ポリマー誘導体のモル濃度がタンパク質のモル濃度の約10〜約10,000倍の範囲にある、請求項21から23までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項25】
糖ポリマー誘導体が3個以上の単糖単位を含む線状又は分枝状糖ポリマー誘導体である、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項26】
糖ポリマー誘導体がフルクトサン又はグルコサンである、請求項25に記載の方法又は使用。
【請求項27】
糖ポリマー誘導体がイヌリン誘導体である、請求項26に記載の方法又は使用。
【請求項28】
糖ポリマー誘導体がグルコシド誘導体である、請求項26に記載の方法又は使用。
【請求項29】
イヌリン誘導体又はグルコシド誘導体が約3〜約500、約3〜約250、約3〜約100、約3〜約50、約10〜約50、約15〜約40、又は約20〜約30の重合度を有する、請求項28に記載の方法又は使用。
【請求項30】
糖ポリマー誘導体が1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、前記請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項31】
糖ポリマー誘導体が、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、1〜25個の炭素原子を有するハロアルキル基、3〜9個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数のアリール基で置換された1〜25個の炭素原子を有するアルキル基を含むアラルキル基、2〜25個の炭素原子を有する脂肪酸基並びに1〜25個の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択される1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、前記請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項32】
1つ又は複数の無極性ヒドロカルビル基が、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、並びに2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基から選択される、請求項30又は請求項31に記載の方法又は使用。
【請求項33】
無極性ヒドロカルビル基が1〜25個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項30から32までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項34】
無極性ヒドロカルビル基が2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基である、請求項30から33までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項35】
糖ポリマー誘導体がイヌリン誘導体であるとき、糖単位当たりの平均置換度が0.01〜3.0である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
イヌリン誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質を安定化させる方法。
【請求項37】
タンパク質とイヌリン誘導体を水溶液中で接触させることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥によって溶液を乾燥させることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
タンパク質を立体配座の変化に対して安定化させる、請求項36から38までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
タンパク質が変性タンパク質である、請求項36から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
タンパク質が原型の立体配座である、請求項36から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
タンパク質を変性に対して安定化させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
タンパク質を凝集に対して安定化させる、請求項36から42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
タンパク質を分解に対して保護する、請求項36から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
タンパク質とイヌリン誘導体を接触させることを特徴とする、タンパク質を可溶化させる方法。
【請求項46】
非原型配置のタンパク質を安定化させるための方法であって、非原型立体配座のタンパク質を含む水溶液に、タンパク質のフォールディングを阻害するのに充分な濃度のイヌリン誘導体を提供することを含む方法。
【請求項47】
原型立体配座のタンパク質を安定化させるための方法であって、原型立体配座のタンパク質を含む水溶液に、原型立体配座のタンパク質を維持するのに充分な濃度のイヌリン誘導体を提供することを含む方法。
【請求項48】
乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥によりこのようにして得られた溶液を乾燥させることをさらに含む、請求項47又は請求項48に記載の方法。
【請求項49】
イヌリン誘導体の濃度がタンパク質のモル濃度の約0.1〜約1000倍の範囲にある、請求項36から48までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
イヌリン誘導体が約0.002mg/ml〜100mg/mlの濃度で存在する、請求項36から49までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項36から50までのいずれか一項に記載の方法を含む、タンパク質のプロセシング法。
【請求項52】
タンパク質をフォールディングする方法を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
1つ又は複数のタンパク質精製工程を含む、請求項51又は請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記タンパク質精製工程が透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及びクロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるためのイヌリン誘導体の使用。
【請求項56】
水溶液中でタンパク質を安定化させるための、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
乾燥形でタンパク質を安定化させるための、請求項55又は請求項56に記載の使用。
【請求項58】
イヌリン誘導体が約3〜500、3〜250又は3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは10〜50、さらにより好ましくは15〜40、さらに好ましくは20〜30の重合度を有する、請求項36から57までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項59】
イヌリン誘導体が1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、請求項36から58までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
イヌリン誘導体が、線状アルキル誘導体、分枝状アルキル誘導体、芳香族基、ポリオール及び脂肪酸からなる群から選択される1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
イヌリン誘導体が式(I)の化合物であって、
G(O−CO−NH−R−[F(O−CO−NH−R(I)
上式で、
Gが末端グルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよい単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択され、且つグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aが0〜4の整数であり;
Fが、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいフルクトシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基を含む群から選択され、且つフルクトシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
bが末端フルクトシル単位に関して0〜3及び0〜4の整数であり、
nが2〜499、好ましくは2〜249、2〜99、2〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式F(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式F(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく、且つ
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度が0.01〜3.0である化合物である、請求項36から60までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
基R及びRがそれぞれ、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、並びに2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
1つ又は複数の基R及びRが1〜25個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項61又は請求項62に記載の方法。
【請求項64】
1つ又は複数の基R及びRが2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基又はアルキニル基である、請求項61から63までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
アルキル基R及びRがそれぞれ、1〜25個の炭素原子を有する線状アルキル基又は3〜25個の炭素原子を有する分枝状アルキル基である、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が1つ又は複数のハロゲン原子を有するハロアルキル基である、請求項61から65までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がシクロアルキル基である、請求項61から66までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアリール基である、請求項61から67までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアラルキル基である、請求項61から68までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度が0.02〜1.0である、請求項61から69までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
式(I)の化合物が多分散系の線状又はわずかに分枝状のイヌリンN−アルキルウレタンである、請求項61から70までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
式(I)の化合物がイヌリンN−n−カルバミン酸オクチル、イヌリンN−n−カルバミン酸ドデシル、及びイヌリンN−n−カルバミン酸オクタデシルからなる群から選択される、請求項61から71までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
イヌリン誘導体がInutec(登録商標)SP1である、請求項58から60までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
グルコシドヒドロカルビル誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質を安定化させるための方法。
【請求項75】
タンパク質とグルコシドヒドロカルビル誘導体を水溶液中で接触させることを特徴とする、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥によって溶液を乾燥させることをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
タンパク質を立体配座の変化に対して安定化させる、請求項74から76までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
タンパク質が変性タンパク質である、請求項74から77までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
タンパク質が原型の立体配座である、請求項74から77までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
タンパク質を変性に対して安定化させる、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
タンパク質を凝集に対して安定化させる、請求項74から80までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
タンパク質を分解に対して保護する、請求項74から80までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
グルコシドヒドロカルビル誘導体とタンパク質を接触させることを特徴とする、タンパク質を可溶化させる方法。
【請求項84】
非原型配置のタンパク質を安定化させるための方法であって、非原型立体配座のタンパク質を含む水溶液に、タンパク質のフォールディングを阻害するのに充分な濃度のグルコシドヒドロカルビル誘導体を提供することを含む方法。
【請求項85】
原型立体配座のタンパク質を安定化させるための方法であって、原型立体配座のタンパク質を含む水溶液に、原型立体配座のタンパク質を維持するのに充分な濃度のグルコシドヒドロカルビル誘導体を提供することを含む方法。
【請求項86】
乾燥、脱水、蒸発又は凍結乾燥によりこのようにして得られた溶液を乾燥させることをさらに含む、請求項84又は請求項85に記載の方法。
【請求項87】
グルコシドヒドロカルビル誘導体の濃度がタンパク質のモル濃度の約0.1〜約1000倍の範囲にある、請求項74から86までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
イヌリン誘導体が約0.002mg/ml〜100mg/mlの濃度で存在する、請求項74から87までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
請求項74から88までのいずれか一項に記載の方法を含む、タンパク質のプロセシング法。
【請求項90】
タンパク質をフォールディングする方法を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
1つ又は複数のタンパク質精製工程を含む、請求項89又は請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記タンパク質精製工程が透析、ダイアフィルトレーション、限外濾過及びクロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
立体配座の変化及び/又は分解に対してタンパク質を安定化させるための、グルコシドヒドロカルビル誘導体の使用。
【請求項94】
水溶液中でタンパク質を安定化させるための、請求項90に記載の使用。
【請求項95】
乾燥形でタンパク質を安定化させるための、請求項93又は請求項94に記載の使用。
【請求項96】
グルコシドヒドロカルビル誘導体が約3〜500、3〜250又は3〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは10〜50、さらにより好ましくは15〜40、さらに好ましくは20〜30の重合度を有する、請求項74から95までのいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項97】
グルコシドヒドロカルビル誘導体が1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、請求項74から96までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
グルコシドヒドロカルビル誘導体が、1〜25個の炭素原子を有するアルキル基、2〜25個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、1〜25個の炭素原子を有するハロアルキル基、3〜9個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜14個の炭素原子を有するアリール基、6〜14個の炭素原子を有する1つ又は複数のアリール基で置換された1〜25個の炭素原子を有するアルキル基を含むアラルキル基、2〜25個の炭素原子を有する脂肪酸基並びに1〜25個の炭素原子を有するポリオールからなる群から選択される1つ又は複数の型の無極性ヒドロカルビル基によって誘導体化される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
糖ポリマー誘導体が式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体であって、
[G(O−CO−NH−R(II)
上式で、
Gがグルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいグルコシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つそれぞれのグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aは末端グルコシル単位に関して0〜4、非分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜3、及び分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜2の整数であり;
nは3〜499、好ましくは3〜249、3〜99、3〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式G(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式G(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位当たりの平均置換度が0.01〜2.0であるグルコシドヒドロカルビル誘導体である、請求項74から98までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が1〜25個の炭素原子を有する線状アルキル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルキル基から選択されるアルキル基である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が2〜25個の炭素原子を有する線状アルケニル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルケニル基から選択されるアルケニル基である、請求項99又は請求項100に記載の方法。
【請求項102】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が2〜25個の炭素原子を有する線状アルキニル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルケニル基から選択されるアルキニル基である、請求項99から101までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が1つ又は複数のハロゲン原子を有するハロアルキル基である、請求項99から102までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がシクロアルキル基である、請求項99から103までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアリール基である、請求項99から104までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアラルキル基である、請求項99から105までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
式(II)の前記化合物中において、グルコシル単位当たりの平均置換度が0.02〜1.0である、請求項99から106までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
式(II)の前記化合物が多分散系の線状又は分枝状のグルコシドN−ヒドロカルビルウレタンである、請求項99から107までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
式(II)の前記化合物がデンプン加水分解生成物のヒドロカルビルウレタンである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
式(II)の化合物が式(III)の単位であって、
G’(O−CO−NH−R(III)
上式で、
G’がデンプン加水分解生成物分子のグルコシル単位を表し、デンプン加水分解生成物が1〜47の範囲のデキストロース当量(D.E.)を有し、
が前に定義したヒドロカルビル基であり、且つ
bがグルコシル単位当たりのカルバミン酸ヒドロカルビル基の数を表し、基の数は置換度(DS)、即ち式(IIa)のグルコシドヒドロカルビルウレタンのグルコシル単位当たりのヒドロカルビル置換基の平均数として一般的に表し、前記DS値が0.01〜2.0の範囲である単位から構成されるグルコシドヒドロカルビル誘導体である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が1〜25個の炭素原子を有する線状アルキル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルキル基から選択されるアルキル基である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が2〜25個の炭素原子を有する線状アルケニル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルケニル基から選択されるアルケニル基である、請求項110又は請求項111に記載の方法。
【請求項113】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が2〜25個の炭素原子を有する線状アルキニル基、及び3〜25個の炭素原子を有する分枝鎖状アルケニル基から選択されるアルキニル基である、請求項110から112までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基が1つ又は複数のハロゲン原子を有するハロアルキル基である、請求項110から113までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数の前記R基がシクロアルキル基である、請求項110から114までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアリール基である、請求項110から115までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
式(II)の前記化合物中において、1つ又は複数のR基がアラルキル基である、請求項110から116までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
式(II)の前記化合物中において、DS値が0.02〜1.0である、請求項110から117までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
請求項1から118までのいずれか一項に記載の方法又は使用を実施するためのキット。
【請求項120】
1つ又は複数の式(I)のイヌリン誘導体及び/或いは1つ又は複数の式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体を含む、請求項119に記載のキット。
【請求項121】
タンパク質、及び式(I)のイヌリン誘導体であって、
G(O−CO−NH−R−[F(O−CO−NH−R(I)
上式で、
Gが末端グルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよい単位であり;
が1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基であり、且つグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aが0〜4の整数であり;
Fが、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいフルクトシル単位であり;
が1〜25個の炭素原子を有する線状又は分枝鎖状の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基であり、且つフルクトシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
bが末端フルクトシル単位に関して0〜3及び0〜4の整数であり;
nが2〜499、好ましくは2〜249、2〜99、2〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式F(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式F(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位又はフルクトシル単位当たりの平均置換度が0.01〜3.0であるイヌリン誘導体を含む組成物。
【請求項122】
式(I)の化合物が多分散系の線状又はわずかに分枝状のイヌリンN−アルキルウレタンである、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
式(I)の化合物がイヌリンN−n−カルバミン酸オクチル、イヌリンN−n−カルバミン酸ドデシル、及びイヌリンN−n−カルバミン酸オクタデシルからなる群から選択される、請求項121又は請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
タンパク質、及び式(II)のグルコシドヒドロカルビル誘導体であって、
[G(O−CO−NH−R(II)
上式で、
Gがグルコシル単位であって、その1つ又は複数のヒドロキシル基が式(O−CO−NH−R)の1つ又は複数の基で置換されていてよいグルコシル単位であり;
がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択されるヒドロカルビル基であり、且つそれぞれのグルコシル単位上に2個以上の(O−CO−NH−R)基が存在する場合、R基はそれぞれ同じであるか又は異なってよく;
aは末端グルコシル単位に関して0〜4、非分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜3、及び分枝状、非末端グルコシル単位に関して0〜2の整数であり;
nは3〜499、好ましくは3〜249、3〜99、3〜49、9〜49、14〜39、19〜29、又は19〜24の整数であり、
式G(O−CO−NH−Rのそれぞれの単位が式G(O−CO−NH−Rの任意の他の単位と同じであるか又は異なってよく;且つ
グルコシル単位当たりの平均置換度が0.01〜2.0であるグルコシドヒドロカルビル誘導体を含む組成物。
【請求項125】
イヌリン誘導体又はグルコシドヒドロカルビル誘導体のモル濃度が、タンパク質のモル濃度の約0.1〜約1000倍の範囲にある、請求項120から124までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項126】
水溶液である、請求項120から125までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項127】
乾燥形である、請求項120から125までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項128】
医薬組成物である、請求項120から127までのいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501639(P2008−501639A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508984(P2007−508984)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050057
【国際公開番号】WO2005/103067
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506355350)ノベシン リミテッド (2)
【Fターム(参考)】