説明

タンパク質アレイ及びその使用方法

本発明は、1000以上のヒトタンパク質を含むヒトタンパク質アレイを提供する。別の態様において、本発明は、酵素の基質を同定する方法であって、官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素によって結合及び/又は修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の結合または修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法を提供する。更なる態様において、発現が困難で且つ/又は非変性状態での単離が困難なヒトタンパク質を含む1000以上のヒトタンパク質のアレイの非変性条件下での作製方法が提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、多数のタンパク質の研究に関する。さらに詳細には、本発明は、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイを使用して実施されるタンパク質マイクロアレイ及び酵素アッセイに関する。
【0002】
本出願は、2004年9月15日に出願された米国仮出願第60/610,444号、2004年9月15日に出願された米国仮出願第60/610,446号、2004年10月18日に出願された米国仮出願第60/620,193号、2005年10月18日に出願された米国仮出願第60/620,233号、2005年2月15日に出願された米国仮出願第60/653,585号、2005年3月25日に出願された米国仮出願第60/665,486号のUSCの119条(e)に基づく優先権の恩典を主張し、各開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
「表1」のファイル名(サイズ3,427KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表1;「表2」のファイル名(サイズ7,350KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表2;「表3」のファイル名(サイズ4,037KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表3;「表9」のファイル名(サイズ849KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表9;「表10」のファイル名(サイズ2,046KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表10;「表11」のファイル名(サイズ1,316KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表11;「表13」のファイル名(サイズ2,278KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表13;「表18」のファイル名(サイズ945KB、2005年9月15日に作製)で含まれる表18は、すべて「コピー1」、「コピー2」と標識されて提出したCD上に含まれ、その全体が参照して本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ポストゲノム配列決定段階で、タンパク質の機能、修飾、及び調節を理解することは大変な作業である(Fieldsら、1999、Proc Natl Acad Sci.、96:8825(非特許文献1);Goffeauら、1996、Science、274:563(非特許文献2))。この理解が、新しく且つより有効な、ヒト疾患に対する診断アッセイ及び医療の開発を導くことになる。ヒトゲノムの配列決定がなされているが、ゲノムの機能発現から多数の分子、ヒトプロテオームを、解析に便利な形式で利用できるようにすることは、医学上の発見がなされる速度を大幅に高める可能性が高い。しかしながら、数千のヒトタンパク質を発現、単離、及びアレイ化させるのに、ハイスループット組換え法、特に真核発現系を用いたものを成功裡に採用できると例証されたことはない。これは特に、膜タンパク質など、発現が困難なタンパク質や、正しく折り畳まれた形態で単離するのが困難なタンパク質を含むマイクロアレイの場合にあてはまる。
【0005】
プロテインキナーゼと称される1つのサブセットのタンパク質は、他のタンパク質を修飾し、これによりその機能を調節する酵素であって、将来の医薬治療及び診断のために特に重要な標的である。細胞の形質導入を調節する事実上全てのプロセスにおけるプロテインキナーゼの重要性は、キナーゼ及びそれらの細胞性基質に対する、治療の標的としての潜在力を示している。キナーゼの基質特異性を同定することと、新しい基質の予測のためにこの情報を使用することによってキナーゼの生物学的諸相を解明するために、かなりの努力がなされてきている。今日までに用いられた検討法のいくつかとして、注釈付けされたリン酸化部位からのデータベースの構築、キナーゼ/ペプチド基質複合体の利用可能な構造からの基質配列パターンの予測、並びにペプチドライブラリー及びペプチドアレイのスクリーニングが挙げられる(Mac Beath G、及びSchreiber SL、Science、2000、289:1760−1763(非特許文献3);Zhu Hら、Science、2001、293:2101−2105(非特許文献4))。さらに近年になってなされている努力として挙げられるのは、質量分析法に基づく技術を使用してホスホプロテオームをマッピングする試みである。これらの研究は、キナーゼの生物学的諸相に関する情報をある程度提供してはいるものの、それらは、複雑さ、費用、感受性の欠如、非構造化ペプチドの使用や、さらには潜在性のある基質の呈示がスクリーニングで低いことにより、甚だしく限られている。キナーゼ及び/又はキナーゼ基質で、それらの三次元構造を保持した形態にあり、そして基質のリン酸化に影響を及ぼすこれらの基質及び化合物を同定するのに使用することができる立体配置にあるものを数多く提供する方法及び組成物が必要とされている。
【0006】
本願明細書の本欄及び他の何れの欄における何れの引用文献の引用又は識別も、かかる引用文献が本発明に対する従来の技術として利用できることを是認すると考えられるべきでない。さらに、本明細書で用いる欄の見出しは、読みやすくする目的のものに過ぎない。
【0007】
【非特許文献1】Fieldsら、1999、Proc Natl Acad Sci.、96:8825
【非特許文献2】Goffeauら、1996、Science、274:563
【非特許文献3】Mac Beath G、及びSchreiber SL、Science、2000、289:1760−1763
【非特許文献4】Zhu Hら、Science、2001、293:2101−2105
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は、基本的に、発現、単離、5000を超えるヒトタンパク質のマイクロアレイスポットの成功に基づくものであり、発現困難であり、非変性状態での単離も困難であると考えられるカテゴリの多数のタンパク質、例えば膜タンパク質、具体的には膜貫通タンパク質が含まれる。発現、単離、及びマイクロアレイスポットが成功しているタンパク質の少なくとも一部は、3次元構造を保持し、機能的である。本発明のある態様は、部分的に、官能化ガラス基板、具体的にはアクリレート官能基等のポリマーで官能化された基板に基づき、タンパク質マイクロアレイ、具体的にはキナーゼ基質同定アッセイを用いて行う酵素アッセイに特に有効である。
【0009】
本発明は、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来し、基板上に固定化された100ヒトタンパク質を含む、位置的にアドレス指定可能なアレイに関する。具体的な態様において、前記アレイは、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する500、1000、2500、又は5000ヒトタンパク質を含む。別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表15の膜タンパク質の100、又は表15の膜タンパク質の250を含む。更に別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表16の膜貫通タンパク質の50、又は表16の膜貫通タンパク質のすべてを含む。更に別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表17のGタンパク質結合受容体(GPCR)の25以上、又は表17のGPCRのすべてを含む。前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質は、500タンパク質/cm〜10000タンパク質/cmの密度でアレイ上に存在してよい。具体的な態様において、前記タンパク質は、非変性タンパク質、全長タンパク質、タグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である。
【0010】
タンパク質が固定化された前記基板は、官能化ガラススライドである。具体的な態様において、前記官能化ガラススライドは、アクリレート基を含むポリマーを含み、このポリマーはガラス表面を重層する。更に別の態様において、前記基板は、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)から入手できる官能化ガラスタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である。
【0011】
別の態様において、本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、(a)表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する1000以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにプローブを接触させる段階と、(b)前記プローブと前記アレイのタンパク質とのタンパク質間相互作用を検出する段階とを含む方法に関する。ある態様において、前記タンパク質は、真核生物細胞において生成され、非変性条件の下で分離される。別の態様において、前記タンパク質は全長タンパク質である。更に別の態様において、前記タンパク質は、GST又は6×Hisタグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である。
【0012】
本発明は、酵素の基質を同定する方法であって、官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素により修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法にも関する。前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記アレイ上の、陰性対照アッセイでの前記タンパク質を用いて得られるシグナルの2倍以上である前記タンパク質から生成されるシグナルの検出;又は、前記アレイ上のすべての陰性対照スポットのメジアンシグナル値より3標準偏差以上大きい前記タンパク質から生成されるシグナルの検出により同定できる。前記タンパク質を修飾する前記酵素活性は、化学基トランスフェラーゼ活性であってよい。別の態様において、前記酵素活性は、キナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ又はアセチラーゼ活性であってよい。
【0013】
別の態様において、酵素の基質を同定する方法は、小分子が存在する又は存在しない前記官能化ガラススライドに前記プローブを接触させる段階と、前記小分子が前記酵素による前記基質の酵素修飾に影響を与えるか否かを決定する段階とを更に含む。
【0014】
具体的な態様において、前記官能化ガラススライドは、ガラス表面を重層するポリマーを含む3次元多孔性表面を含む。別の態様において、前記ガラス表面を重層するポリマーはアクリレートを含む。前記官能化ガラス基板は、多官能性タンパク質特異的結合部位を含んでよい。具体的な態様において、前記基板は、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)から入手できる官能化ガラスタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である。
【0015】
別の態様において、官能化ガラススライド上の前記アレイは、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質の1000以上のヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される10000以上のタンパク質;又は、表2に列挙された配列でコードされるタンパク質の2500以上のヒトタンパク質を含む。前記アレイ上の前記タンパク質は、非変性条件下で生成され得る。前記アレイ上の前記タンパク質は、タグを含む非変性組換え融合タンパク質のように、真核生物細胞で生成される全長ヒトタンパク質であってよい。前記アレイ上の前記タンパク質は、表16の50以上の膜貫通タンパク質を含んでよい。
【0016】
本発明は、収益を得る方法であって、(a)官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素により修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法を行うことによって、1以上の酵素基質を同定するためのサービスを顧客に提供する段階を含む方法にも関する。
【0017】
本発明は、顧客の第1キナーゼ基質を同定する方法であって、(a)(i)第1キナーゼの特定を顧客から受領すること;(ii)官能化ガラス基板上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記第1キナーゼを反応条件下で接触させること;および(iii)前記第1キナーゼにより修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定することであって、前記第1キナーゼによる前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記第1キナーゼの基質であることの指標となることを含む、前記顧客にキナーゼ基質を同定するためのサービスへの接近手段を提供する段階と、(b)前記顧客に前記基質の同定を提供する段階とを含む方法にも関する。この方法は、第2キナーゼについて前記サービスを繰り返す段階を更に含む。ある態様において、100以上の固定化タンパク質は、第1哺乳類種に由来する。別の態様において、前記サービスは、官能化ガラス基板上に固定化され、第2哺乳類種由来の100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて繰り返される。方法は、前記基質を単離された形で前記顧客に提供する段階も更に含んでよい。方法は、前記基質を発現する細胞集団の任意の細胞を購入するための購入機能への接近手段を前記顧客に提供する段階も更に含んでよい。
【0018】
本発明は、タンパク質アレイを作製する方法であって、オープンリーディングフレーム集団の各オープンリーディングフレームをバキュロウイルスベクターにクローニングし組換えバキュロウイルスベクターを生成する段階であって、前記ベクターが融合タンパク質の発現を指示するプロモーターを含み、前記融合タンパク質がタグに連結されたオープンリーディングフレームを含む段階と、昆虫細胞を用いて、オープンリーディングフレーム集団の各々について生成した前記融合タンパク質を発現する段階と、前記タグによる親和性クロマトグラフィを用いて前記融合タンパク質を単離する段階と、基板上に単離された前記タンパク質をスポットする段階とを含む方法にも関する。ある態様において、前記細胞はsf9細胞である。別の態様において、前記タグはGSTタグである。前記タンパク質アレイは、1000の全長哺乳類タンパク質を含んでよい。任意に、前記タンパク質はヒトタンパク質である。更に、前記アレイは、表15の250以上の膜タンパク質、表16の50以上の膜貫通タンパク質、又は表17の25以上のGタンパク質結合受容体タンパク質を含んでよい。別の態様において、前記タンパク質は、ハイスループット方式で、非変性条件の下、発現され、単離され、スポットされる。
【0019】
本発明は、アクセス番号が表1、表3、表5、表6、表9、表11、又は表13に列挙された配列によってコードされ、基板上に固定化されたタンパク質に由来する100以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。本発明は、表10に列挙され基板に固定化されたグループのタンパク質の50%以上を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。
【0020】
本発明は、発現が困難且つ/又は非変性状態での単離が困難で、基板上に固定化された50以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。ある態様において、前記アレイは50のヒト膜貫通タンパク質を含む。前記膜貫通タンパク質は、表16に列挙された50の膜貫通タンパク質、又は表17に列挙された25のGタンパク質結合受容体を含んでよい。別の態様において、前記アレイは、100のヒト膜貫通タンパク質を含む。更に別の態様において、前記膜貫通タンパク質は、非変性膜貫通タンパク質である。更に別の態様において、1以上の膜貫通タンパク質は、翻訳後修飾を含む。
【0021】
発明の詳細な説明
タンパク質アレイ
本発明は、出願人が、5000以上のヒトタンパク質を含むタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを構築したことに部分的に基づく。本明細書に示す、位置的にアドレス指定可能なヒトタンパク質のアレイ(本明細書では、「タンパク質チップ」ともいう)は、タンパク質相互作用及び酵素活性などの活性の大域的解析や、これらのタンパク質相互作用及び活性に対する小分子及び他の被験分子の効果の解析のために使用することができる。本発明者らは、50を超える膜貫通タンパク質を包含した、タンパク質発現が困難であり、非変性状態では単離が困難と考えられるタンパク質のクラスの多くのヒトタンパク質を含め、数千のヒトタンパク質を非変性条件下において少なくとも19nMのレベルで、真核細胞で初めて成功裡に発現させている。本発明者は、続いて、GSTタグを用いてタンパク質を単離し、このタンパク質をマイクロアレイ化した。本発明者らは、発現されてアレイ化されたヒトタンパク質の少なくともいくつかは、それらの三次元構造を保持しているらしいことを、正しい三次元折り畳みを必要とするエピトープ特異的抗体を用い、且つ、やはり非変性条件下に実施される他の方法を使用してアレイ上で同定されるタンパク質−タンパク質間相互作用を確かめることによって確認している。
【0022】
「表1」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表1に、本発明の実施例1に開示のタンパク質生産及び単離方法を用いて本発明者らが発現及び単離しようとしたヒトタンパク質をコード化するコーディング配列を列記している。コンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表2には、表1のコーディング配列によってコード化されるタンパク質を含む、ヒトタンパク質をコード化しているコーディング配列と、表9、11、及び13のタンパク質をコード化しているコーディング配列の大多数に対して成功裡に実施されたと同様の方法でそのヒトオープンリーディングフレームインサートを取り出してpDEST20ベクターに挿入することができるクローンを本発明者らが得ている、さらなるコーディング配列との一致を示している。表3には、生産ロット4.1にて、実施例1に示す方法に従って、本発明者らが少なくとも19.2nMの濃度で発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化したタンパク質のコーディング配列を含めたリストを示す。表5及び7には、生産ロット4.1にて、実施例1に示す方法に従って成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化したタンパク質の濃度情報(表7、最終カラム(nM))を含むリストを示す。表6には、実施例1に示す方法を用いて発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、176のヒトキナーゼのリストを示す。表8には、実施例1に示す方法を用いて発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化したヒトキナーゼのリストを示す。表9及び11には、異なる生産ロット(それぞれ、4.1及び5.1)にて、実施例1に示す方法を用いて成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、タンパク質の配列を示す。表10には、生産ロット5.1にて、実施例1に示す方法を用いて成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、タンパク質と、タンパク質に対する遺伝子オントロジー(GO)情報を列記している。
【0023】
「表13」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表13に、生産ロット5.2として、本発明の実施例1に示すタンパク質生産、単離、及びマイクロアレイシステムを用いて、少なくとも19.2nMの濃度で発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した5034のヒトタンパク質に対するアミノ酸配列、受託番号、ORF識別子、及びFASTA見出しを示す。本願明細書と共に提出した表15には、実施例1に示す方法を用い、生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、「膜タンパク質」としてGOカテゴリーに分類された429のタンパク質を示す。本願明細書と共に提出した表16には、実施例1に示す方法を用いて生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、「膜貫通タンパク質」としてGOカテゴリーに分類された88のタンパク質を示す。本願明細書と共に提出した表17には、実施例1に示す方法を用い、生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、42のGタンパク質結合型受容体のリストを示す。「表18」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表18に、生産ロット5.2にて発現されたタンパク質に対する名称、識別子、及びマイクロアレイスポット時の濃度(「〜」の後に、「名称」欄で示す数)、さらにマイクロアレイの位置情報を示す。
【0024】
本発明は、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来し、基板上に固定化された100ヒトタンパク質を含む、位置的にアドレス指定可能なアレイに関する。具体的な態様において、前記アレイは、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する500、1000、2500、又は5000ヒトタンパク質を含む。別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表15の膜タンパク質の100、又は表15の膜タンパク質の250を含む。更に別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表16の膜貫通タンパク質の50、又は表16の膜貫通タンパク質のすべてを含む。更に別の態様において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、表17のGタンパク質結合受容体(GPCR)の25以上、又は表17のGPCRのすべてを含む。前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質は、500タンパク質/cm〜10000タンパク質/cmの密度でアレイ上に存在してよい。具体的な態様において、前記タンパク質は、非変性タンパク質、全長タンパク質、タグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である。
【0025】
タンパク質が固定化された前記基板は、官能化ガラススライドであり得る。具体的な態様において、前記官能化ガラススライドは、アクリレート基を含むポリマーを含み、このポリマーはガラス表面を重層する。更に別の態様において、前記基板は、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)から入手できる官能化ガラスタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である。
【0026】
別の態様において、本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、(a)表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する1000以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにプローブを接触させる段階と、(b)前記プローブと前記アレイのタンパク質とのタンパク質間相互作用を検出する段階とを含む方法に関する。ある態様において、前記タンパク質は、真核生物細胞において生成され、非変性条件の下で分離される。別の態様において、前記タンパク質は全長タンパク質である。更に別の態様において、前記タンパク質は、GST又は6×Hisタグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である。
【0027】
本発明は、酵素の基質を同定する方法であって、官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素により修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法にも関する。前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記アレイ上の、陰性対照アッセイでの前記タンパク質を用いて得られるシグナルの2倍以上である前記タンパク質から生成されるシグナルの検出;又は、前記アレイ上のすべての陰性対照スポットのメジアンシグナル値より3標準偏差大きい前記タンパク質から生成されるシグナルの検出により同定できる。前記タンパク質を修飾する前記酵素活性は、化学基トランスフェラーゼ活性であってよい。別の態様において、前記酵素活性は、キナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ又はアセチラーゼ活性であってよい。
【0028】
別の態様において、酵素の基質を同定する方法は、小分子が存在する又は存在しない前記官能化ガラススライドに前記プローブを接触させる段階と、前記小分子が前記酵素による前記基質の酵素修飾に影響を与えるか否かを決定する段階とを更に含む。
【0029】
具体的な態様において、前記官能化ガラススライドは、ガラス表面を重層するポリマーを含む3次元多孔性表面を含む。別の態様において、前記ガラス表面を重層するポリマーはアクリレートを含む。前記官能化ガラス基板は、多官能性タンパク質特異的結合部位を含んでよい。具体的な態様において、前記基板は、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)から入手できるタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である。
【0030】
別の態様において、官能化ガラススライド上の前記アレイは、表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質の1000以上のヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される10000以上のタンパク質;又は、表2に列挙された配列でコードされるタンパク質の2500以上のヒトタンパク質を含む。前記アレイ上の前記タンパク質は、非変性条件下で生成され得る。前記アレイ上の前記タンパク質は、タグを含む非変性組換え融合タンパク質のように、真核生物細胞で生成される全長ヒトタンパク質であってよい。前記アレイ上の前記タンパク質は、表16の50以上の膜貫通タンパク質を含んでよい。
【0031】
本発明は、収益を得る方法であって、(a)官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素により修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法を行うことによって、1以上の酵素基質を同定するためのサービスを顧客に提供する段階を含む方法にも関する。
【0032】
本発明は、顧客の第1キナーゼ基質を同定する方法であって、(a)(i)第1キナーゼの特定を顧客から受領すること;(ii)官能化ガラス基板上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記第1キナーゼを反応条件下で接触させること;および(iii)前記第1キナーゼにより修飾された前記アドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定することであって、前記第1キナーゼによる前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記第1キナーゼの基質であることの指標となることを含む、前記顧客にキナーゼ基質を同定するためのサービスへの接近手段を提供する段階と、(b)前記顧客に前記基質の同定を提供する段階とを含む方法にも関する。方法は、第2キナーゼについて前記サービスを繰り返す段階を更に含み得る。ある態様において、100以上の固定化タンパク質は、第1哺乳類種に由来する。別の態様において、前記サービスは、官能化ガラス基板上に固定化され、第2哺乳類種由来の100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて繰り返される。方法は、前記基質を単離された形で前記顧客に提供する段階も更に含んでよい。方法は、前記基質を発現する細胞集団の任意の細胞を購入するための購入機能への接近手段を前記顧客に提供する段階も更に含んでよい。
【0033】
本発明は、タンパク質アレイを作製する方法であって、オープンリーディングフレーム集団の各オープンリーディングフレームをバキュロウイルスベクターにクローニングし組換えバキュロウイルスベクターを生成する段階であって、前記ベクターが融合タンパク質の発現を指示するプロモーターを含み、前記融合タンパク質がタグに連結されたオープンリーディングフレームを含む段階と、昆虫細胞を用いて、オープンリーディングフレーム集団の各々について生成した前記融合タンパク質を発現する段階と、前記タグによる親和性クロマトグラフィを用いて前記融合タンパク質を単離する段階と、基板上に単離された前記タンパク質をスポットする段階とを含む方法にも関する。ある態様において、前記細胞はsf9細胞である。別の態様において、前記タグはGSTタグである。前記タンパク質アレイは、1000の全長哺乳類タンパク質を含んでよい。任意に、前記タンパク質はヒトタンパク質である。更に、前記アレイは、表15の250以上の膜タンパク質、表16の50以上の膜貫通タンパク質、又は表17の25以上のGタンパク質結合受容体タンパク質を含んでよい。別の態様において、前記タンパク質は、ハイスループット方式で、非変性条件の下、発現され、単離され、スポットされる。
【0034】
本発明は、アクセス番号が表1、表3、表5、表6、表9、表11、又は表13に列挙された配列によってコードされ、基板上に固定化されたタンパク質に由来する100以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。本発明は、表10に列挙され基板に固定化されたグループのタンパク質の50%以上を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。
【0035】
本発明は、発現が困難且つ/又は非変性状態での単離が困難で、基板上に固定化された50以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにも関する。別の態様において、前記アレイは50のヒト膜貫通タンパク質を含む。前記膜貫通タンパク質は、表16に列挙された50の膜貫通タンパク質、又は表17に列挙された25のGタンパク質結合受容体を含んでよい。別の態様において、前記アレイは、100のヒト膜貫通タンパク質を含む。更に別の態様において、前記膜貫通タンパク質は、非変性膜貫通タンパク質である。更に別の態様において、1以上の膜貫通タンパク質は、翻訳後修飾を含む。
【0036】
発現が困難なタンパク質であり且つ非変性状態での単離が困難なタンパク質には、従前、発現及び天然の型で単離するためには特別な状態が必要と考えられていたタンパク質が含まれる。例えば、膜に関連するタンパク質、具体的には膜貫通タンパク質のようなタンパク質は、従前、発現及び天然の型で単離するためには特別な状態が必要と考えられていた。
【0037】
別の態様において、本発明は、基板上に固定化された、表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。表1は、「表1」のファイル名で、ともに提出したCD上にコンピュータ読み取り可能な形で提供される。
【0038】
別の態様において、本発明は、基板上に固定化された、表2に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。表2は、「表2」のファイル名で、ともに提出したCD上にコンピュータ読み取り可能な形で提供される。
【0039】
ある態様において、本発明は、基板上に固定化された、表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される少なくとも3500、4000、4500、5000、7500、10,000、又は実質的にすべてのヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される最大で3500、4000、4500、5000、7500、10,000、又は実質的にすべてのヒトタンパク質;表2に列挙された配列でコードされる少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、or 5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質;表2に列挙された配列でコードされる最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又は5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質;表3に列挙された配列でコードされる少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;表3に列挙された配列でコードされる最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表5、表7、又は表9に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表5、又は表7に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表6又は表8に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表6又は表8に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、又はすべてのヒトタンパク質;表10に列挙された少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、17500、又はすべてのタンパク質;表10に列挙された最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、17500、又はすべてのタンパク質;表9及び/又は表11に列挙された少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのタンパク質;表9及び/又は表11に列挙された最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのタンパク質;表13に列挙された少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてのタンパク質;又は、表13に列挙された最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてのタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。
【0040】
ある態様において、本発明のアレイは、少なくとも1、典型的には少なくとも25、50、100、200、300、又は400の、発現困難で非変性状態での単離が困難なタンパク質を含む。好ましくは、これらタンパク質は、非変性状態でアレイ化される。例えば、例示的な態様において、前記アレイは、表15の膜タンパク質の400以上又はすべて、表16の膜貫通タンパク質の50以上又はすべて、及び/又は表17のGPCRの25以上又はすべてを含む。
【0041】
ある態様において、本発明は、表10に列挙されたタンパク質のグループの、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。ある態様において、本発明は、表10に列挙されたタンパク質のグループの、最大で5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。各グループは、具体的な機能的側面を有するタンパク質を提供する。表10に列挙されるグループは、遺伝子オントロジー、生物学的方法、挙動、未知の生物学的プロセス、細胞コミュニケーション、細胞間シグナリング、シグナルトランスダクション、発達、細胞分化、胎児発達、成長、細胞増殖、形態形成、遺伝子発現の調節、再生、生理的プロセス、細胞死、細胞増殖および/またはメンテナンス、細胞ホメオスタシス、細胞組織および生物発生、細胞質組織及び生物発生、細胞小器官組織および生物発生、細胞骨格組織及び生物発生、細胞増殖、細胞周期、輸送、イオン輸送、タンパク質輸送、死、代謝、アミノ酸及び誘導体代謝、生合成、タンパク質生合成、炭水化物代謝、異化、補酵素及び補綴グループ代謝、電子伝達、エネルギー経路、脂質代謝、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび代謝、DNA代謝、転写、タンパク質代謝、タンパク質生合成、タンパク質修飾、続発性代謝、生命の刺激への応答、内因性刺激への応答、外部刺激への応答、非生物刺激への応答、細胞成分、細胞、外部的封入構造、細胞表面膜、細胞壁核酸、細胞内、染色体、核染色体、細胞質、細胞質小嚢、細胞骨格、シトソル、細胞質網状構造、エンドソーム、ゴルジ装置、微小管組織中心、ミトコンドリア、ペルオキシゾーム、リボソーム、空胞、リソソーム、核、核染色体、核膜、核小体、核質、リボソーム、核膜、原形質膜、未知の細胞成分、細胞外、細胞外マトリックス、細胞外間隙、非局在化、分子機能、酸化防止剤活性、結合、カルシウムイオン結合、炭水化物結合、脂質結合、核酸結合、DNA結合、クロマチン結合、転写制御因子活性、RNA結合、翻訳因子活性、核酸結合、ヌクレオチド結合、タンパク質結合、細胞骨格タンパク質結合、アクチン結合、受容体結合、触媒活性、ヒドロラーゼ活性、ヌクレアーゼ活性、ペプチダーゼ活性、リンタンパク質ホスファターゼ活性、キナーゼ活性、プロテインキナーゼ活性、トランスフェラーゼ活性、酵素調節因子活性、未知の分子機能、運動活性、シグナルトランスデューサ活性、受容体活性、受容体結合、構造分子活性、転写レギュレータ活性、翻訳レギュレータ活性、翻訳因子活性核酸結合、輸送体活性、電子輸送体活性、イオンチャネル活性、神経伝達物質輸送体活性である。
【0042】
ある態様において、本発明は、表10のタンパク質のグループの、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、100、又はすべてを有するタンパク質マイクロアレイを提供する。ある態様において、本発明は、表10のタンパク質のグループの、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、又は100以上、又はすべてを有するンパク質マイクロアレイを提供する。
【0043】
更に、本発明は、表10に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なタンパク質マイクロアレイを提供する。更に、本発明は、表10に列挙されるタンパク質のグループの最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なタンパク質マイクロアレイを提供する。
【0044】
更に、本発明は、表9、表11、及び/又は表13に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なタンパク質アレイを提供する。更に、本発明は、表9、表11、及び/又は表13に列挙されるタンパク質のグループの最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なタンパク質マイクロアレイを提供する。例示的態様におけるタンパク質は、非変性で、全長で、且つ/又は組換え融合タンパク質であり、好ましくはGSTタグ等のタグを含み、任意に1以上、好ましくは100以上が翻訳後修飾を含む。例示的態様において、前記タンパク質は、非天然TAGストップコドンを含む。ある例示的態様において、前記アレイは、10以上のヒト自己抗体、好ましくは非変性自己抗体を含む。
【0045】
ある態様において、前記アレイは、3000、3500、4000、5000、6000、7000、8000、9000、又は10000以下のタンパク質を含む。別の態様において、本発明は、固体支持体上に固定化され、ヒトゲノムから発現される少なくとも3500、4000、4500、5000、7500、10,000、又は実質的にすべてのヒトタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。別の関連態様において、本発明は、固体支持体上に固定化され、ヒトゲノムから発現される少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のヒトタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。タンパク質のアイソフォーム及び変異体は、このパーセント決定において1タンパク質とみなされる。この態様のある側面において、前記ヒトタンパク質は、固体支持体上に固定化され、表1及び/又は表2に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する1000以上のタンパク質を含む。ある例示的実施例において、前記アレイは機能タンパク質アレイである。
【0046】
ここで提供される位置的にアドレス指定可能なアレイは、典型的には、タンパク質の高密度の位置的にアドレス指定可能なアレイであって、500タンパク質/cm以上の密度、1000タンパク質/cm以上の密度、2000タンパク質/cm以上の密度、3000タンパク質/cm以上の密度、5000タンパク質/cm以上の密度、10000タンパク質/cm以上の密度を含み、ある側面において、密度は500タンパク質/cm〜5000タンパク質/cmである。ある側面において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、ヒトタンパク質の1又は複数のクラスの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、50、75、100、又はすべての要素を含む。複数のクラスには、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、又は25クラスが含まれる。典型的には、任意のクラスの5要素以下を含むアレイとして、機能タンパク質の5クラス以上がアレイ上に存在する。クラスは、分子機能、生物プロセス、または細胞成分に従って関連する遺伝子産物のグループであってよい。このような関係は、例えば、ワールドワイドウェブgeneontology.orgで入手でき、その全体が参照して援用される遺伝子オントロジー系を用いて構築できる。例えば、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、異なる10以上の分子機能オントロジーに基づくタンパク質の分類の1以上の要素を含んでよい。ある側面において、前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、各公知の分子機能オントロジーに基づくヒトタンパク質の分子機能、生物プロセス、及び/又は細胞成分の分類について、ヒトタンパク質の1以上の要素を含む。
【0047】
ここで提供される位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質は、典型的には、非変性条件下で生成される。更に、例示的例において、前記タンパク質は、全長タンパク質であり、追加的タグ配列を含んでよい。従って、ある側面におけるタンパク質は、全長組換え融合タンパク質である。このため、本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、複数の融合タンパク質を含み各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイにプローブを接触させる段階であって、前記融合タンパク質が第1タグ及び生物のゲノム核酸によってコードされるタンパク質配列を含む段階と、タンパク質及びプローブの相互作用を検出する段階とを含む方法を包含する。前述したように、ある態様において、2つのタグはHis又はGSTである。
【0048】
タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを使用する方法も提供される。本発明のタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、例えば、タンパク質間相互作用を同定するため、結合タンパク質を同定するため、又は酵素活性を同定するために使用できる。本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、複数の融合タンパク質を含み各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイにプローブを接触させる段階と、前記アレイ上での前記プローブのタンパク質への結合を検出する段階とを含み、前記複数のタンパク質は、表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される少なくとも3500、4000、4500、5000、7500、10,000、又は実質的にすべてのヒトタンパク質;表2に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又は5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質;又は、ヒトゲノムから発現されるヒトタンパク質の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%;のうちの1つを含む方法を包含する。
【0049】
本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、複数の融合タンパク質を含み各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイにビオチン化タンパク質の試料を接触させる段階と、蛍光標識のような検出可能な標識に結合されたストレプトアビジンに前記アレイを接触させる段階と、前記アレイ上での蛍光が発生する位置を検出する段階を含み、前記蛍光は、ビオチン化タンパク質と前記アレイ上のタンパク質との相互作用の指標となる方法も提供する。前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、タンパク質マイクロアレイである。
【0050】
本発明は、結合タンパク質を検出する方法であって、複数の融合タンパク質を含み各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイにビオチン化タンパク質を接触させる段階と、蛍光標識のような検出可能な標識に結合されたストレプトアビジンに前記アレイを接触させる段階と、前記アレイ上での蛍光が発生する位置を検出する段階を含み、前記蛍光は、ビオチン化タンパク質と前記アレイ上のタンパク質との相互作用の指標となる方法も提供する。前記位置的にアドレス指定可能なアレイは、タンパク質マイクロアレイである。ビオチン化タンパク質又はビオチン化タンパク質の試料は、インビトロ又はインビボでビオチン化できる。例えば、ビオチン化タンパク質は、商業的に入手できる製品を用いてビオチン化できる。ある例において、ビオチン化タンパク質は、「Bioease tag」(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて、インビボでビオチン化される。
【0051】
本発明は、複数の融合タンパク質を含み各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイであって、前記複数のタンパク質は、既知のヒト遺伝子の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%によってコードされる1以上のタンパク質を含むアレイを包含する。ここで、遺伝子に由来するタンパク質アイソフォーム及びスプライス変異体は1タンパク質とみなされる。
【0052】
位置的にアドレス指定可能なアレイは、目的のプローブ又はタンパク質の各々は、固体支持体上の公知の位置にあり、それにより、前記アレイ上での位置から各プローブ又はタンパク質構成を同定できる構成を提供する。従って、アレイ上の各タンパク質は、前記アレイ上の位置から各タンパク質を同定できるように、好ましくは、前記固体支持体上での既知の位置、設定された位置に位置する。
【0053】
本発明の、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質としては、全長のタンパク質、全長のタンパク質の一部、及びペプチドで、組換え過剰発現、大きなタンパク質の断片化、又は化学合成によって調製できるものが挙げられ、特定の実例では、タンパク質は全長の組換え融合タンパク質などといった全長のタンパク質である。タンパク質は、例えば、酵母、細菌、昆虫、ヒト、又はマウス、ラット、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ及びウマなどのヒト以外の哺乳動物に由来する細胞で過剰発現させることができる。タンパク質は、未変性でも又は変性されたものでもありうるが、好ましくは未変性か若しくは少なくとも非変性条件下に単離されたものである。さらに、タンパク質は、例えば細菌での発現によるものや酵素処理によるものなど、翻訳後修飾のないものでありえ、又は真核細胞での発現によるものなど、翻訳後修飾を含むものでもありうる。さらには、天然又は合成タンパク質に付着された規定ドメインを含む融合タンパク質を使用することができる。タンパク質アレイのタンパク質は、チップの固体支持体に付けられる前に精製することができる。また、精製されたプロテオームのタンパク質を精製することもでき、又は位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイへの付着の間にさらに精製することもできる。
【0054】
本発明の位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイに使用される固体支持体は、シリコン、ガラス、石英、ポリイミド、アクリル、ポリメチルメタクリレート(LUCITE(登録商標)、Lucite International、サウサンプトン、英国)、セラミック、ニトロセルロース、非晶質シリコンカーバイド、ポリスチレンなどの材料、及び/又は微細加工、マイクロリソグラフィー、若しくは鋳造に好適な他の材料から構築することができるが、これらに限定されることはない。例えば、固体支持体は、親水性マイクロタイタープレート(例えば、MILLIPORE(商標)、Millipore社、ビルリカ、マサチューセッツ州)又はニトロセルロースが被覆されたガラススライドでありうる。タンパク質(及びDNA)の位置的にアドレス指定可能なアレイを作るための、ニトロセルロースが被覆されたガラススライドが(例えば、ニトロセルロース系ポリマーを被覆したガラススライド(カタログ番号10484 182)を販売しているSchleicher&Schuell(キーン、ニューハンプシャー州)から)市販されている。
【0055】
例示的態様において、アレイのタンパク質は官能化ガラス基板上に固定化される。この態様は、特にキナーゼ活性などの酵素活性を測定するための方法、又はキナーゼ基質同定方法などといった、酵素基質を同定するための方法に係る実施形態に特に有用である。特定の実施形態において、ガラススライドはエポキシシラン(例えば、Schott−Nexterion and Erie Scientificより入手可能)で官能化させることができる。
【0056】
好ましい実施形態において、官能化ガラススライドは、アクリレート官能基を含み任意にセルロースを含むポリマーで官能化することができる。さらに、これらの好ましい実施形態において、官能化ガラス基板は、ガラス表面を被覆するポリマー含む三次元多孔性表面を備えた基板となりうる。ガラス表面を被覆するポリマー含む三次元多孔性表面は、特定の態様において、一般的にその中でタンパク質をネスト化させる。表面は典型的には、機能性タンパク質に特異的な複数の結合部位を含んでいる。実例において、表面は疎水性を有する。これらの実施形態の特に好ましい態様において、基板はFull Moon Biosystems、サニーベール、カリフォルニア州より入手可能なタンパク質スライドI又はタンパク質スライドII(カタログ番号25、25B、50、又は50B)である。ある態様において、前記基板は、Full Moon Biosystems社からの「Protein slides II」(カタログ番号25、25B、50、又は50B)である。他の側面において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、「Corning UltraGAPS」(Corning社、カタログ番号40015)、「GAPS II」 (Corning,社 カタログ番号40003)、「Super Epoxy slides」 (TeleChem社)、ニッケル錯体被覆スライド(例えば、Greiner Bio−One社.、Longwoo社、FL、又はXenopore社、Hawthorne社、NJより入手可能)、又は低ノイズアルデヒドスライド(Microsurfaces社、Minneapolis、MNより入手可能)のような基板を利用する。
【0057】
従って、ある態様において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、固体支持体の表面に適用される複数のタンパク質を含み、タンパク質が適用される部位の密度は、少なくとも100部位/cm、1000部位/cm、10,000部位/cm、100,000部位/cm、又は1,000,000部位/cmである。単離されたタンパク質試料の各々は、前記アレイ、典型的にはマイクロアレイ上の、好ましくは別々の部位に適用される。チップ上の各部位における前記タンパク質の密度は公知である。典型的には、単離タンパク質の複製が、前記アレイ上のスポットに適用される。
【0058】
数百又は数千のタンパク質のアレイを生産するためには、遺伝情報を数百又は数千の純粋なタンパク質へ変換することが必要であった。本明細書に記載の実施例に示すように、少数のタンパク質に対してこの内容のものを同時に生産するのに必要な基本技術は多年にわたり実施されているが、数千の機能性タンパク質のクローニング、発現、精製、及びマイクロアレイ化のための本明細書に開示のハイスループット方法は独創的なものである。この方法を用いて、3400を超える組換えヒト融合タンパク質をコード化しているオープンリーディングフレームをクローニングし、発現させ、精製してアレイ化した。ヒトcDNAは、ゲートウェイエントリーベクターへクローニングし、完全に配列を検証し、GST及び/又は6XHis−融合体としてハイスループットバキュロウイルス系システムで発現させ、そして親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。適切な対照と並べて、精製タンパク質を官能化ガラススライド上でアレイ化させた。
【0059】
従って、本発明は、タンパク質アレイを作製する方法であって、オープンリーディングフレーム集団の各オープンリーディングフレームをバキュロウイルスベクターにクローニングし組換えバキュロウイルスベクターを生成する段階であって、前記ベクターがタグに連結されたオープンリーディングフレームを含む融合タンパク質の発現を指示するプロモーターを含む段階と、昆虫細胞を用いて、オープンリーディングフレーム集団の各々について生成した前記融合タンパク質を発現する段階と、前記タグによる親和性クロマトグラフィーを用いて前記融合タンパク質を単離する段階と、基板上に単離された前記タンパク質をスポットする段階とを含む方法を提供する。
【0060】
ある側面において、前記タンパク質は、哺乳類タンパク質、例えばヒトタンパク質であり、好ましくは表9、表11、及び/又は表13のタンパク質の少なくとも100、200、250、500、1000、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてであり、タグ付き融合タンパク質として、好ましくは真核生物系で組換え発現され、より好ましくは非変性条件下で単離される。好ましい側面において、前記アレイは、発現が困難で且つ非変性状態での単離が困難な50以上のタンパク質を含み、例えば膜タンパク質、具体的には膜貫通タンパク質であり、少なくとも一部はGPCRであってよい。例示的態様において、前記タンパク質は、少なくとも1、5、10、15、16、17、18、19、又は19.2 nMの濃度で発現される。更に、前記タンパク質の40μL以上が発現されてよく、好ましくはタンパク質の100μL又は200μL以上が発現される。本発明の方法に従って、タンパク質合成を促進する誘導プロモーターを有する任意の発現コンストラクトが使用できる。好ましくは、前記発現コンストラクトは、細胞型に応じて、形質転換に使用できるよう調整される。発現コンストラクトと宿主細胞との相性は当分野において公知であり、その変異体の使用も本発明に包含される。ある例示的態様において、前記発現コンストラクトは、バキュロウイルスコンストラクトである。
【0061】
バキュロウイルスベクターのプロモーターが、タグに連結したオープンリーディングフレームを含む融合タンパク質の発現を導くように、バキュロウイルスベクターへとオープンリーディングフレームをクローニングする方法は知られている。オープンリーディングフレームは、ゲノムDNA及びcDNAを含む、事実上何れの供給源からでもクローニングすることができる。特定の態様において、オープンリーディングフレームはタグと共に枠内に入るようにベクターへとクローニングされる。特定の態様において、複数のオープンリーディングフレームは、1以上のサブユニットオープンリーディングフレーム産物を含む複合体が昆虫細胞において形成されるようにベクターへとクローニングされ、そしてその多蛋白複合体のタンパク質の少なくとも1つにあるタグを使用して精製される(例えば、Bergerら、Nature Biotechnology、22、1583−1587(2004)を参照のこと)。
【0062】
種々のタグ(すなわち、典型的には化合物に対する親和性を備えた異種ドメイン)が、当該技術分野において知られており、これを使用することができる。従って、例示的な実施形態において、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質は、固体支持体の表面に付着される化合物、又は例えば親和性クロマトグラフィーを使用してタンパク質を精製するのに使用される化合物に対する親和性を備えた少なくとも1つの異種ドメインを有する融合タンパク質として発現される。融合タンパク質を前記固体支持体(即ち、結合相手として作用する)上に結合するのに有用な化合物には、特に限定されないが、ウシ膵臓トリプシン抑制因子、グルタチオン―S―トランスフェラーゼ、Protein Aまたは抗原、マルトース結合タンパク質、ポリヒスチジン(例えばHisX6タグ)およびアビジン/ストレプトアビジンのそれぞれに結合する、トリプシン/無水トリプシン、グルタチオン、イムノグロブリンドメイン、マルトース、ニッケルまたはビオチン及びその誘導体が含まれる。例えば、タンパク質A、タンパク質G、及びタンパク質A/Gは、哺乳類イムノグロブリン分子、特にIgGのFc部分に結合できるタンパク質である。これらタンパク質は、例えば、「Sepharose」(登録商標)支持体に共有結合して、Fcドメインを含みタグを有する融合タンパク質を精製する有効な方法を提供できる。
【0063】
本発明のある側面において、2以上のタグが前記タンパク質に存在し、その一方は精製において有用であり、他方は固定化において有用である。ある例示的側面において、前記タグは、Hisタグ、GSTタグ、又はビオチンタグである。前記タグがビオチンタグであるとき、タグは、商業的に入手できる試薬(Invitrogen社、Carlsbad、CA)を用いて、インビトロ又はインビボでタンパク質に結合できる。前記タグがインビボでタンパク質と結合する場合、「Bioease」タグ(Invitrogen社、Carlsbad、CA)が使用できる。
【0064】
ある例において、真核生物細胞(例えば、酵母細胞)は、真核生物タンパク質を合成するために好ましく使用できる。更に、安定的な形質転換を受容でき、目的の形質転換体を含む細胞の同定及び単離のための選択マーカーを有する真核生物細胞が好ましい。代替的に、遺伝子産物が欠乏する真核生物宿主細胞に、その欠乏を補う発現コンストラクトで形質転換してもよい。設計されたウイルス、原核生物、又は真核生物のタンパク質の発現に有用な細胞は、当分野において公知であり、そのような細胞の変異体は当分野の当業者によって理解できる。細胞には、酵母、昆虫、及び哺乳類細胞が含まれる。ある態様において、トウモロコシ細胞が組換えヒトタンパク質の生産に使用される。
【0065】
例えば、Invitrogen社のInsectSelectシステム(カールズバッド、カリフォルニア州、カタログ番号K800−01)などの、高品位タンパク質の発現を簡素化してウイルスストックを作製及び増幅させる必要性を排除する、非溶解性の単一ベクター昆虫発現系を使用することができる。この系で例示されるベクターは、pIB/V5−His TOPO TAベクター(カタログ番号K890−20)である。ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)産物は、製造業者が示したプロトコルを用いてこのベクターに直接クローニングでき、発現したタンパク質を精製するのに有用なN−末端ヒスチジンタグと共にそのタンパク質を発現させることができる。昆虫細胞における別の真核細胞発現系である、BAC−TO−BAC(商標)システム(Invitrogen(商標)、カールズバッド、カリフォルニア州)を使用することもできる。相同組換を使用するのではなく、BAC−TO−BAC(商標)システムは、大腸菌における部位特異的転位に依存することで組換えバキュロウイルスを作製するものである。遺伝子発現は、活性の高いポリヘドリンプロモーターによって駆動され、よって感染昆虫細胞で細胞タンパク質の25%までを提示することができる。別の態様では、BaculoDirect(商標)バキュロウイルス発現系(Invitrogen(商標))が使用される。
【0066】
ある態様において、各オープンリーディングフレームは、まず、「Gateway」(商標)エントリーベクターのような組換えクローニングベクターにクローニングされ、次いでバキュロウイルスベクターにシャトルされる。これらのクローニング及びシャトル実験を実施するための方法が、当該技術分野において知られている。オープンリーディングフレームは、部分的に又は完全に配列決定され、その配列をヒト遺伝子の公的又は私的データベースから入手可能な配列と比較することによって、配列の完全性が維持されていることの確証が得られる。
【0067】
特定の例では、オープンリーディングフレームをゲートウェイエントリーベクター(Invitrogen)にクローニングするか、又はpDEST20(Invitrogen)に直接クローニングすることができる。他の態様において、エントリーベクター及び/又はpDEST20ベクターは、例えばBssIIを用い、組換え反応前か又は反応中に直線化される。特定の態様において、pDEST20ベクターにクローニングされたオープンリーディングフレームは、DH10Bac細胞に直接トランスフェクトすることができる。あるいは、ベクターをpDEST20の重要な機能性エレメントで構築し、DH10Bac細胞に直接トランスフェクトするのに使用することができる。対象のオープンリーディングフレームは、例えば、制限酵素切断及びライゲーションを用いてベクターに直接クローニングすることができる。
【0068】
システムは、バキュロウイルスでオープンリーディングフレームを発現させるのに利用できる。例えば昆虫細胞が、この発現のために一般的に使用される。培養で生育されうる何れの宿主細胞も、対象のタンパク質を合成するのに使用することができる。好ましくは、対象のタンパク質を過剰生産でき、タンパク質の適切な合成、折り畳み、及び翻訳後修飾をもたらすことのできる宿主細胞が使用される。好ましくは、かかるタンパク質プロセッシングは、インビボのものを表す、インビトロの分子相互作用の特徴付けを行うアッセイに有用な、エピトープ、活性部位、結合部位等を形成する。
【0069】
特定の例示的な実施形態において、宿主細胞は昆虫宿主細胞である。種々の昆虫細胞が市販されている(例えば、Invitrogenを参照されたい)。細胞は、例えば、Hi−5細胞(バージニア大学、組織培養施設より入手可能)、sf9細胞(Invitrogen)、又はSF21細胞(Invitrogen)でありうる。特定の例示的な実施形態において、昆虫細胞はsf9細胞である。特定の実施形態において、真核細胞の融合タンパク質を合成するのに酵母培養物が使用され、一つの態様において、酵母ピキア・パトリスが使用される。特に少量の培地にて行う場合、タンパク質合成を効率よく誘導するには、新鮮な培養物を用いるのが好ましい。また、酵母培養物の過剰生育を防ぐように留意するのが好ましく、また、精製のために充分なタンパク質を生じさせるためには、約3ml以下の酵母培養物が好ましい。培養物の通気を良くするために、全容量をいくつかの小容量に分割することができる(例えば、0.75ml培養物を4つ調製して、3mlの全容量とすることができる)。
【0070】
細胞は、次いで誘導剤(例えば、ガラクトース)と接触させて、採取する。誘導細胞は、冷(すなわち、4℃〜約15℃)水で洗浄して細胞がさらに成長するのを停止し、次いで、培地を除去して、タンパク質精製のために誘導細胞をそれぞれプレコンディショニングすべく、冷(すなわち、4℃〜約15℃)溶解用緩衝液で洗浄する。タンパク質の精製の前に、誘導細胞はタンパク質の分解を防ぐために凍結保存することができる。具体的な実施形態では、タンパク質の分解を防止又は阻止するために、誘導細胞を−80℃の半乾燥状態で保存する。
【0071】
細胞は、何らかの機械的装置を使用して、1つのアレイから別のアレイに移すことができる。例えば、生育培地を含むアレイに、自動ハンドリングシステム(例えば自動ピペット)を使用して、対象の細胞を接種することができる。特定の実施形態において、寒天を含有する生育培地を含む96ウェルのアレイに、96−プロンガー(pronger)を使用して酵母細胞を接種することができる。同様に、1つのアレイから別のアレイへの液体(例えば、試薬)の移送は、自動化液体ハンドリングデバイス(例えば、Q−FILL(商標)、Genetix、英国)を使用して成し遂げることができる。
【0072】
タンパク質は、細胞周期の何れの時点でも細胞から採取することができるが、タンパク質合成が増強される対数期の間に細胞を単離するのが好ましい。例えば、酵母細胞は、OD600=0.3からOD600=1.5の間、好ましくはOD600=0.5からOD600=1.5の間で採取することができる。特定の実施形態において、タンパク質は中間対数期の後の時点で細胞から採取される。採取した細胞は、後から処置するために凍結しておくことができる。
【0073】
採取した細胞は、機械的な力、酵素消化、及び化学的処理を含む、当該技術分野において知られている種々の方法によって溶解することができる。溶解の方法は、宿主細胞の型に好適なものとするべきである。例えば、新鮮なプロテアーゼインヒビターを含有する溶解用緩衝液を、細胞壁を破壊する物質(例えば、砂、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ)と共に酵母細胞に加え、その後振盪機(例えば、ボルテクサ、ペイントシェーカ)を用いて混合物を激しく振盪する。
【0074】
具体的な実施形態において、ジルコニアビーズを酵母細胞に接触させ、ボルテックス処理による機械的破壊によって細胞を溶解させる。さらなる実施形態において、高密度アレイ形式の酵母細胞の溶解は、ペイントシェーカを用いて成し遂げられる。ペイントシェーカは、少なくとも18の96ウェル筐体を3層、しっかりと保定することができるプラットフォームを有しており、これによって培養物のハイスループット処理が可能になる。さらに、ペイントシェーカは完全に解凍する前でも培養物を激しく攪拌し、この結果タンパク質の分解を極力抑えながらも細胞が効率良く破壊されることになる。実際に、鏡検によって調べると、2分間の振盪で90%を上回る酵母細胞を溶解できている。
【0075】
得られる細胞の残屑は、遠心分離によって対象のタンパク質及び/又は他の分子から分離することができる。さらに、ハイスループットでタンパク質試料の純度を高めるのに、好ましくは非タンパク質結合固体支持体上のフィルターを用いて、タンパク質が濃縮した上清を濾過することができる。対象のタンパク質を含む可溶性画分を不溶性画分から分離するのに、タンパク質分解を低減又は回避するため、フィルタープレートを使用するのが非常に好ましい。さらに、タンパク質の収量を高めるために、細胞の残屑を含む画分に対してこれらの工程を繰り返すのが好ましい。
【0076】
タンパク質は次いで、当該技術分野において知られている種々のアフィニティ精製法を用い、タンパク質が濃縮した細胞上清から精製することができる。親和性タグで、融合タンパク質調製物をその親和性タグに対する結合パートナーに接触させることによって融合タンパク質のアフィニティ精製に有用となるものとして、カルモジュリン、トリプシン/アンヒドロトリプシン、グルタチオン、イムノグロブリンドメイン、マルトース、ニッケル、又はビオチン及びその誘導体で、それぞれカルモジュリン結合タンパク質、ウシ膵臓トリプシンインヒビター、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(「GSTタグ」)、抗原又はプロテインA、マルトース結合タンパク質、ポリ−ヒスチジン(「Hisタグ」)、及びアビジン/ストレプトアビジン、に結合するものが挙げられるが、これらに限定されることはない。他の親和性タグとして、例えば、myc又はFLAGを挙げることができる。融合タンパク質は適切な結合化合物(すなわち、グルタチオンビーズなどの結合パートナー)を用いてアフィニティ精製し、そして、例えば非タンパク質結合フィルター上で結合タンパク質を含む複合体を捕獲することにより単離することができる。タンパク質の一方の端部(例えば、カルボキシ末端)に1つの親和性タグを配置し、且つそのタンパク質の他方の端部(例えば、アミノ末端)に第二の親和性タグを配置すると、全長のタンパク質の精製に役立てることができる。
【0077】
特定の実施形態において、融合タンパク質はGSTタグを有し、そのタンパク質をグルタチオンビーズに接触させることによってアフィニティ精製される。さらなる実施形態において、融合タンパク質が付着したグルタチオンビーズは、フィルタープレートを用いずに96ウェルの筐体中で洗浄でき、試料の取扱いを簡素化して試料の相互汚染を防ぐことができる。
【0078】
さらに、溶出用緩衝液を用いて結合化合物(例えば、グルタチオンビーズ)から融合タンパク質を溶出させて、望ましいタンパク質濃度とすることができる。具体的な実施形態において、30mlの溶出用緩衝液を用いてグルタチオンビーズから融合タンパク質を溶出させて、望ましいタンパク質濃度とすることができる。
【0079】
最終的に顕微鏡のスライド上にスポットされることになる精製タンパク質のため、グルタチオンビーズを精製タンパク質から分離する。固体支持体上に精製タンパク質をスポットするのに使用される、位置的にアドレス指定可能なアレイピンの途絶を回避するために、全てのグルタチオンビーズが除去されるのが好ましい。好ましい実施形態において、好ましくは非タンパク質結合固体支持体を含むフィルタープレートを用いて、グルタチオンビーズが精製タンパク質から分離される。精製タンパク質を含む溶出液の濾過で、90%を超えるタンパク質の回収率が得られるべきである。
【0080】
溶出用緩衝液は、例えば、15%〜50%のグリセロール、好ましくは約25%のグリセロールなど、高粘度の液体を含むのが好ましい。グリセロール溶液は、溶液中のタンパク質を安定化し、且つ位置的にアドレス指定可能なアレイヤーを用いるプリント工程の際にタンパク質溶液が脱水するのを防止する。
【0081】
溶出用緩衝液は、例えば、0.02〜2%のTriton−100、好ましくは約0.1%のTriton−100などの、非イオン性界面活性剤を含有する液体を含むのが好ましい。界面活性剤は、精製の際にタンパク質の溶出を促進し、また溶液中のタンパク質を安定化する。
【0082】
精製タンパク質は、タンパク質を安定化し、試料の乾燥を防ぐ培地中で保存するのが好ましい。例えば、精製タンパク質は、例えば、15%〜50%のグリセロール、好ましくは約40%のグリセロールなど、高粘度の液体中で保存することができる。凍結/解凍のサイクルによって引き起こされるタンパク質活性の損失を避けるよう、精製タンパク質を含む試料を分割するのが好ましい。
【0083】
当業者であれば、精製プロトコルは、所望されるタンパク質純度のレベルを制御すべく調整可能であることを理解できる。場合によって、対象のタンパク質と会合する分子を単離するのが望ましい。例えば、二量体、三量体、又は高次ホモタイプ若しくはヘテロタイプの複合体であって過剰生産した対象のタンパク質を含むものを、本明細書に示す精製方法、又はその変法を用いて単離することができる。さらに、会合分子は、当該技術分野において知られている方法(例えば、質量分析法)を使用して、個々に単離及び同定することができる。
【0084】
典型的には、オープンリーディングフレームから発現されたタンパク質が単離及び精製されることを確認するために、精度管理工程が実施される。例えば、発現タンパク質を検出するために、タグに対する抗体を使用してイムノブロッティングを実施することができる。さらに、オープンリーディングフレームに基づいて予想されるサイズと、発現タンパク質のサイズとを比較するためにアルゴリズムを使用することができ、予想サイズの所定パーセンテージ以内に入っていないサイズのタンパク質(例えば、そのタンパク質の予想サイズの10%、20%、25%、30%、40%、又は50%以内に入っていないもの)は拒絶できる。
【0085】
単離されたタンパク質は、当該技術分野において知られている種々の方法を使用してアレイ化することができる。一つの実施形態において、タンパク質は固体支持体上にプリントされる。単離タンパク質をスポットするために、接触及び非接触プリントの双方を使用することができる。具体的な態様において、各タンパク質は、「OMNIGRID(商標)」(GeneMachines社、San Carlos、CA)、及びTelechem社(Sunnyvale、CA)から入手できるもの等のクイル型ピンを用いて基板上にスポットされる。更なる態様において、前記タンパク質は、親和性タグを用いて固体支持体に結合される。タンパク質を精製するのに使用されるものと異なる親和性タグを使用することが好ましく、これは、タンパク質アレイを構築する際にさらなる精製が成し遂げられるからである。
【0086】
従って、更なる態様において、前記タンパク質は、前記固体支持体に直接結合される。別の更なる態様において、前記タンパク質は、リンカーを介して前記固体支持体に結合される。具体的な態様において、前記タンパク質は、Hisタグを介して前記固体支持体に結合される。別の具体的な態様において、前記タンパク質は、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン「GPTS」)リンカーを介して前記固体支持体に結合される。具体的な態様において、前記タンパク質は、Hisタグを介して前記固体支持体に結合され、この固体支持体は平坦な表面を含む。好ましい態様において、前記タンパク質は、Hisタグを介して前記固体支持体に結合され、この固体支持体はニッケル被覆ガラススライドを含む。更なる態様において、前記タンパク質は、ビオチンタグを介して前記固体支持体に結合され、この固体支持体はストレプトアビジン被覆ガラススライドを含む。具体的な態様において、前記タンパク質は、インビボで特異的部位をビオチン化される。ある例示的態様において、インビボでビオチン化されたタンパク質上の前記特異的部位は、BioEaseタグ(Invitrogen社)である。
【0087】
本発明の、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイは、それらの物理的寸法で限定されるものではなく、有用な如何なる寸法も有しうる。好ましくは、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイは、自動化技術に適合するアレイ形式を有しており、これによって迅速なデータ解析が可能になる。ある態様においては、タンパク質形式の位置的にアドレス指定可能なアレイは、実験室設備及び/又は解析ソフトウェアと互換性がある。例示的な態様において、位置的にアドレス指定可能なアレイはタンパク質マイクロアレイであり、標準的な顕微鏡スライドの大きさである。別の好ましい態様において、位置的にアドレス指定可能なアレイは、質量分析器の試料チャンバーに格納されるように設計されたタンパク質マイクロアレイである。
【0088】
本発明は、位置的にアドレス指定可能なアレイを作製する方法であって、固体支持体の表面に、表1又は表2の100以上のタンパク質を、各タンパク質が前記固体支持体上の異なる位置にあるように結合させる段階を含み、前記タンパク質が第1タグを含む方法にも関する。ある側面において、前記タンパク質は第2タグを含む。二重タグタンパク質を用いる利点には、高度に精製されたタンパク質が得られること、及び細胞夾雑物からタンパク質を精製し、このタンパク質を固体支持体へ結合する方式をストリームライン化できることが含まれる。具体的な態様において、前記第1タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼタグ(「GSTタグ」)であり、前記第2タグはポリヒスチジンタグ(「Hisタグ」)である。
【0089】
本明細書に示す方法において使用されるタンパク質マイクロアレイは、固体支持体の表面に複数のタンパク質を付着させることによって生産でき、ここで各タンパク質は固体支持体上の異なる位置にあり、タンパク質は少なくとも1つのタグを含んでいる。二重タグ付きタンパク質を用いることの利点として、高度に精製されたタンパク質を得る性能や、細胞の残屑からタンパク質を精製してそのタンパク質を固体支持体に付着させる、合理化した方法が提供されることが挙げられる。タグは、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼタグ(「GSTタグ」)、ポリヒスチジンタグ(「Hisタグ」)、又はビオチンタグである。ビオチンタグは、インビボ又はインビトロでタンパク質に結合できる。インビボのビオチン化を使用するとき、インビボのビオチン化を検出するためのペプチドをタンパク質に融合できる。例えば、「Bioease」(商標)タグが使用できる。ある態様において、ビオチンタグは、タンパク質マイクロアレイ基板上へのタンパク質の固定化、及び/又は、位置的にアドレス指定可能な位置の基板に固定化される前に組換え融合タンパク質を単離することに使用できる。具体的な態様において、前記第1タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼタグ(「GSTタグ」)であり、前記第2タグはポリヒスチジンタグ(「Hisタグ」)である。更なる態様において、GSTタグ及びHisタグは、タンパク質のアミノ末端に結合される。代替的に、GSTタグ及びHisタグは、タンパク質のカルボキシ末端に結合される。
【0090】
酵素基質の同定方法
本明細書に示すタンパク質アレイ、及びタンパク質アレイの製造方法は、ヒトタンパク質について例証されている。しかしながら、その方法は、1つの種から哺乳動物のタンパク質アレイを、又は単一のアレイ上にいくつかの種からのものを作るのに、何れの哺乳動物種に対しても使用することができることは理解されるであろう。代替的に、マウス、ラット、ウサギ、サル等のような哺乳類の1以上に由来する、少なくとも100、200、250、500、1000、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてを含むタンパク質アレイ及びその作製方法が提供される。タンパク質は、例えば、表9、表11、及び/又は表13のタンパク質のオーソログであってよい。例示的態様において、前記アレイおよびアレイの作製方法は、ヒトタンパク質のような発現が困難で且つ非変性状態での単離が困難なタンパク質の、25、50、100、200、250、300、400、又はそれ以上を含むタンパク質アレイ及びその作製方法が提供される。タンパク質は、例えば、表15、表16、及び/又は表17のヒトタンパク質の哺乳類オーソログであってよい。多くの発現困難なタンパク質の保存された構造を本発明と組み合わせて、表15、16、及び17のタンパク質並びに天然の型で単離するのも困難である他の発現困難なタンパク質であって表9、表11、及び/又は表13に列記するタンパク質のうちに存在するものについて示すことによって、ハイスループットの方法が何れかの哺乳動物種由来のこれらのタンパク質を発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化するのに使用可能なことが確証されることは理解されるであろう。例示的態様において、多数のタンパク質を発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化するための、本明細書に示すハイスループットの方法は、天然の型で単離するのが困難である発現困難なタンパク質と、同じ生産バッチでこのカテゴリーに一緒に入らないタンパク質との双方をアレイ化するのに使用することができる。例えば、非変性条件下での単離が困難で発現も困難な少なくとも25、50、100、200、300、又は 400のタンパク質は、同様の発現、単離、及びマイクロアレイ条件下でこのカテゴリに属さない、少なくとも100、200、250、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、90000、又は10,000のタンパク質で処理されてよい。
【0091】
別の態様において、本発明は、酵素の基質を同定する方法であって、官能化ガラススライドに固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、前記酵素によって結合及び/又は修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記タンパク質の結合又は修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法を提供する。接触は、典型的には、試験酵素の有効な反応条件下で行われる。前記の発明の背景の項目で論じた基質同定の検討法に限度があるのにひきかえ、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイの利点として挙げられるのは、試薬の消費量が低いこと、結果の解釈が迅速であること、及び実験条件を容易に制御できることである。位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイでの検討法の別の主たる利点は、酵素と基質との関係について数多くのタンパク質を迅速且つ同時にスクリーニングできることである。ヒトタンパク質等のある種のタンパク質の少なくとも100、200、250、500、具体的には少なくとも1000、2000、2500、3000、4000、5000、実質的にすべて、又はすべてを含むタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを用いれば、原理的には、単一実験において、タンパク質修飾酵素の基質のすべてを決定できる。更に、酵素基質決定を行うための優れたスライド化学を含む方法が提供される。
【0092】
ある側面において、酵素活性は、例えば、キナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ、アセチラーゼ活性、その他の化学基転移酵素活性である。特定の例示的な実施形態における、位置的にアドレス指定可能なアレイのタンパク質は、同じ種に由来するものであるが、例外的にありうるのは、その方法が正しく行われたことを確認するため、及び/又はデータ解析を円滑にするために、位置的にアドレス指定可能なアレイ上に配される対照のタンパク質である。別の態様において、本発明は、酵素による基質の酵素修飾に影響を与える薬剤又は薬剤候補のような小分子を同定する方法であって、複数のタンパク質、例えば100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記薬剤又は薬剤候補を段階と、前記酵素によって結合及び/又は修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、前記酵素による前記タンパク質の結合又は修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる方法を提供する。ある側面において、この方法で使用される位置的にアドレス指定可能なアレイは、本発明のタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイである。
【0093】
ある側面において、前記酵素による前記タンパク質の結合又は修飾は、(1)陰性対照アッセイでの前記タンパク質を用いて得られるシグナルの2倍以上である、且つ/又は、(2)前記アレイ上のすべての陰性対照スポットのメジアンシグナル/ノイズ値より3標準偏差以上大きい、アレイ上のシグナルを検出することによって同定される。
【0094】
酵素の基質を同定するために提供される態様において、本発明は、特に限定されないが、ガラススライドのような表面が平坦な固体支持体を含むタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する。高密度なタンパク質アレイを、タンパク質の存在、量、及び/又は機能性についてのアッセイがハイスループットにて行うことができるように、例えばガラススライド上に作製することができる。
【0095】
ある態様において、位置的にアドレス指定可能なアレイ上に固定化されたタンパク質は、タンパク質間の距離が250μm〜1mmとなるように離間され、好ましい態様において、各タンパク質スポット間の距離は275μm〜1mmであり、例示的な例において距離は275μmである。
【0096】
酵素基質決定用のガラス基板には、アクリレート官能基を含み、任意にはセルロースを含むポリマーで官能化されたものが含まれる。更なる態様において、ガラススライドは、エポキシシラン(例えば、Schott−Nexperion and Erie Scientific社より入手できる)で官能化されてよい。官能化ガラス基板は、アクリレート官能基を含むポリマーで任意にセルロースを含むものなどの、ポリマー被覆ガラス表面を有する三次元多孔性表面を備える基板でありうる。ポリマー重層ガラス表面を含む3次元多孔性表面は、ある態様において、典型的にはタンパク質が吸着されることを可能にする。この表面は、典型的には、多官能性タンパク質特異的結合部位を含む。例示的例における表面は疎水性である。ある例示的態様において、基板は、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)より入手できる「Protein slides I」又は「Protein slides II」(カタログ番号25、25B、50、又は50B)のような、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイ基板である。ある態様において、基板はFull Moon Biosystems社より入手できる「Protein slides II」(カタログ番号25、25B、50、又は50B)である。他の側面において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、「Corning UltraGAPS」(Corning社、カタログ番号40015)、「GAPS II」 (Corning,社 カタログ番号40003)、「Super Epoxy slides」 (TeleChem社)、ニッケル錯体被覆スライド(例えば、Greiner Bio−One社.、Longwoo社、FL、又はXenopore社、Hawthorne社、NJより入手可能)、又は低ノイズアルデヒドスライド(Microsurfaces社、Minneapolis、MNより入手可能)のような基板を利用する。
【0097】
理論により限定されるべきでないが、特定の実例におけるガラススライドにはポリマーをで構成される官能化表面を備えたものが用いられ、ここでそのポリマーを作るモノマーの比率は、そのポリマーが充分な疎水性を有して適切な結合が可能となるように、但しタンパク質変性を起こすほど疎水性になり過ぎないように調整される。ある側面において、ここで提供される基質のプロファイリング方法は、異なる官能化ガラス基板を用いて繰り返され、すべてのキナーゼ基質が同定されることの保証を助ける。さらに、ガラス基板にスポットされた未知のタンパク質を分析する実験を進める前に、官能化ガラス基板は、所定のキナーゼを用いて試験することができ、キナーゼがその所定の官能化ガラス基板上で基質をリン酸化することの確証が得られる。キナーゼが自己リン酸化する場合、これを所定の官能化ガラス基板上に直接スポットして、これが基質に適合しうることの確証を得ることができる。
【0098】
ある側面において、自己リン酸化することが知られるキナーゼが、反応が成功したことを保証し且つ/又はアレイ上での位置を同定する対照としてアレイ上にスポットされる。
【0099】
複数のタンパク質は、酵母、哺乳類、イヌ科、ウマ科、又はヒトのような1又は複数種の生命体に由来する。更に、複数のタンパク質は、表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;表1に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される少なくとも3500、4000、4500、5000、7500、10,000、又は実質的にすべてのヒトタンパク質;表2に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、又は5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質;表2に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、or 5000、6000、7000、7500、又はすべてのヒトタンパク質;表3に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;表3に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表5又は表7に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表5又は表7に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表6又は表8に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、少なくとも10、20、25、50、75、100、150、又はすべてのヒトタンパク質;アクセス番号が表6又は表8に列挙された配列によってコードされるタンパク質に由来する、最大で10、20、25、50、75、100、150、又はすべてのヒトタンパク質;ヒトゲノムから発現される少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%;表10に列挙されるタンパク質の少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、17500、又はすべてのヒトタンパク質;表10に列挙されるタンパク質の最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、17500、又はすべてのヒトタンパク質;表9及び/又は表11に列挙されるタンパク質の少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべて;表9及び/又は表11に列挙されるタンパク質の最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべて;表13に列挙されるタンパク質の少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべて;又は、表13に列挙されるタンパク質の最大で10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべて;のいずれかを含む。
【0100】
ある態様において、複数のタンパク質は、表10に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はすべてのヒトタンパク質のいずれかを含んでよい。ある態様において、複数のタンパク質は、表10に列挙されるタンパク質のグループの最大で5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はすべてのヒトタンパク質のいずれかを含んでよい。各グループは、具体的な官能性側面を有するタンパク質を与える。表10に列挙されたグループは、遺伝子オントロジー、生物学的方法、挙動、未知の生物学的方法、細胞コミュニケーション、細胞細胞シグナリング、シグナル形質導入、発達、細胞分化、胚発達、成長、細胞増殖、形態形成、遺伝子発現の調節、再生、生理的方法、細胞死、細胞増殖および/または保守、細胞ホメオスタシス、細胞組織および生物発生、細胞質組織及び生物発生、細胞小器官組織および生物発生、細胞骨格組織及び生物発生、細胞増殖、細胞周期、輸送、イオン輸送、タンパク質輸送、死、代謝、アミノ酸および誘導体代謝、生合成、タンパク質生合成、炭水化物代謝、異化、補酵素および補綴グループ代謝、電子伝達、エネルギー経路、脂質代謝、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよび核酸代謝、DNA代謝、転写、タンパク質代謝、タンパク質生合成、タンパク質修飾、二次代謝、生命刺激に対する応答、内因性刺激に対する応答、外部刺激に対する応答、非生物的刺激に対する応答、細胞成分、細胞外部封入構造、細胞表面膜、細胞壁、細胞内、染色体、核染色体、細胞質、細胞質小嚢、細胞骨格、シトソル、細胞質網状構造、エンドソーム、ゴルジ装置、微小管組織中心、ミトコンドリア、ペルオキシゾーム、リボソーム、液胞、リソソーム、核、核染色体、核膜、核小体、核質、リボソーム、核膜、原形質膜、未知の細胞成分、細胞外、細胞外マトリックス、細胞外間隙、非局在化、分子的結合、酸化防止剤活性、結合、カルシウムイオン結合、炭水化物結合、脂質結合、核酸結合、DNA結合、クロマチン結合、転写制御因子活性、RNA結合、翻訳因子活動、核酸結合、ヌクレオチド結合、タンパク質結合、細胞骨格タンパク質結合、アクチン結合、受容体結合、触媒活性、ヒドロラーゼ活性、ヌクレアーゼ活性、ペプチダーゼ活性、リンタンパク質ホスファターゼ活性、キナーゼ活性、タンパク質キナーゼ活性、転移酵素活性、酵素調節活性、未知の分子機能、運動活性、シグナルトランスデューサ活動、受容体活性、受容体結合、構造分子活性、転写調節活性、翻訳調節活性、翻訳因子活性、核酸結合、輸送体活性、電子輸送体活性、イオンチャネル活性、神経伝達物質輸送体活性である。
【0101】
ある態様において、複数のタンパク質は、表10に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、100、又はすべて、又は最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、75、または少なくとも100、又はすべて;表10に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;表10に列挙されるタンパク質のグループの最大で 2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質;表11に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;表11に列挙されるタンパク質のグループの最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、又はすべてのヒトタンパク質;表13に列挙されるタンパク質のグループの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてのヒトタンパク質;表13に列挙されるタンパク質のグループの最大で2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、又はすべてのヒトタンパク質;のいずれかを含んでよい。
【0102】
本明細書に示すマイクロアレイのタンパク質の実数値は、マイクロアレイのタンパク質の上限及び下限の数値と異なりうることが理解される。例えば、表1に列記する配列によってコード化される24のタンパク質を含むマイクロアレイは本発明に包含されることになるが、これは表1に列記する配列によってコード化される、20より多く且つ25未満のタンパク質をマイクロアレイが包含するためである。
【0103】
本明細書に示す、位置的にアドレス指定可能なアレイのタンパク質は、通常は非変性条件下に生産される。本発明のさらに具体的な態様において、本明細書に示す位置的にアドレス指定可能なアレイのタンパク質は未変性である。さらに、実例におけるタンパク質は全長のタンパク質であり、付加的なタグ配列を含みうる。従って、ある態様におけるタンパク質は、全長組換え融合タンパク質である。
【0104】
本発明のある具体的な態様において、各タンパク質は、表7又は表8に列挙された各々の濃度でマイクロアレイ上にプリントされる。
【0105】
ある態様において、本発明のマイクロアレイは、1又は複数の対照タンパク質を含む。ある態様において、前記マイクロアレイは、表12に列挙される対照タンパク質の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13を含む。別の態様において、前記マイクロアレイは、表9又は表18に列挙される対照タンパク質の最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13を含む。
【0106】
【表12】

【0107】
別の態様において、キナーゼ基質、例えばタンパク質アレイがある種のすべてのタンパク質を含むときにはその種のすべての基質は、例えば、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイにキナーゼを接触させ、標識リン酸の存在下、当分野で公知の方法を用いてリン酸化相互作用物を検出することによって同定できる。代替的に、ある種における実質的にすべてのキナーゼは、本発明のタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイにリン酸化できる基質を接触させ、例えばリン酸化されたアミノ酸に特異的な抗体を用いて、リン酸化された基質の存在及び/又はレベルをアッセイすることによって同定できる。別の態様において、ある種における実質的にすべてのキナーゼ阻害剤は、本発明のタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイにキナーゼ及びその基質を接触させ、チップ上での前記タンパク質の非存在下でのリン酸化レベルに比べ、前記基質のリン酸化が減少しているか否かを決定することによって同定できる。
【0108】
キナーゼ活性に対する検出方法は当該技術分野において知られており、放射活性標識(例えば、33P−ATP及び35S−g−ATP)、ホスホアミノ酸に結合する蛍光抗体プローブ、又はリン酸塩に結合する蛍光色素(例えば、ProQ Diamond(Invitrogen))の使用が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0109】
同様に、1つの種におけるあらゆるホスファターゼ、及びホスファターゼのインヒビターを同定するために、アッセイを行うことができる。例えば、放射活性標識したリンのタンパク質への取り込みが1つのアッセイでキナーゼ活性を示すのに対し、別のアッセイは放射活性標識したリンの培地への遊離を測定してホスファターゼ活性を示すのに使用することができる。
【0110】
本発明の位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイを使用して、酵素反応を実施し、酵素活性を測定することができる。具体的な態様において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイ上のタンパク質の酵素活性を調節する試験化合物が同定できる。例えば、化合物又は化合物の混合物を酵素反応混合物とインキュベートし、これによってシグナルを(例えば、酵素活性に伴い蛍光を発する基質から)生じさせることにより、酵素活性のレベルの変化を検出及び定量することができる。被験化合物の有無の差を、特徴付けることができる。さらに、酵素活性に対する化合物の効果の差は、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイ内の試料への、及びチップ間でのそれらの相対的な効果を比較することによって検出することができる。
【0111】
酵素基質を同定する方法のある側面において、この方法は、酵素に結合された位置的にアドレス指定可能なアレイ上にタンパク質を固定化するために使用される単離タンパク質試料の一部に基質を接触させることにより、第2の位置的にアドレス指定可能なアレイ上にタンパク質を固定化することで固定化タンパク質の濃度を推測する段階と、第2の位置的にアドレス指定可能なアレイ上の固定化タンパク質の濃度を決定する段階とを更に含む。この態様では、酵素に接触させる、位置的にアドレス指定可能なアレイにタンパク質が欠如していることによって、基質同定方法で陰性の結果が不可知にもたらされることがないという点が保証される。このことは、細胞培養方法を並行して用いて少なくとも100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、又は10,000の異なるタンパク質を発現させ、位置的にアドレス指定可能なアレイにタンパク質を高密度で固定化する並行処理方法において特に重要である。
【0112】
第2の位置的にアドレス指定可能なアレイの基質は、典型的には、酵素に接触した位置的にアドレス指定可能なアレイの基質と異なる。ある例示的な例において、第2の位置的にアドレス指定可能なアレイ内のタンパク質は、ニトロセルロース基板上に固定化される。更に、本発明のこの側面において、第1の位置的にアドレス指定可能なアレイは、典型的には、ポリマー重層ガラス表面を含む3次元多孔性表面を有する官能化ガラス基板であり、例えば、Full Moon Biosystems社(Sunnyvale、CA)より入手できる「Protein slides I」又は「Protein slides II」が含まれる。
【0113】
単離されたタンパク質試料中のタンパク質は、一般的に例えば融合タンパク質などとして、タグに結合される。固定化タンパク質の濃度は、位置的にアドレス指定可能な第2のタンパク質マイクロアレイの基板上に、一連の異なる濃度のタグ及び/又はタグに結合させた対照タンパク質を固定化することによって定量することができ、ここでタグ及び/又は対照タンパク質は、既知の異なる濃度のタグ又は対照タンパク質を含む溶液に由来するものである。位置的にアドレス指定可能な第2のアレイに固定化されるタンパク質を、次いでタグに結合する第一の特異的結合対メンバーに接触させて、そのタンパク質のタグ、及び位置的にアドレス指定可能な第2のアレイの一連のタグ又は対照タンパク質への第一の特異的結合対メンバーの結合のレベルを使用して、位置的にアドレス指定可能な第2のアレイのタンパク質の濃度を定量するための標準曲線を構築する。すなわち、標的タンパク質のタグへの第一の特異的結合対メンバーの結合のレベルと、既知の異なる濃度の固定化タグ又はタグを含む対照タンパク質への第一の特異的結合対メンバーの結合のレベルを用いて、タンパク質の濃度を定量する。例示的な実施形態において、濃度は、3次曲線フィッティング法を用いて定量される。
【0114】
対照タンパク質及び標的タンパク質のタグの数は一般的にわかっている。例えば対照タンパク質及び標的タンパク質は、タンパク質1分子につき1つのタグ分子を含みうる。従って、その方法は一般的に、マイクロアレイ上の一連の位置に、既知の異なる濃度の一連のタグ付き対照タンパク質を固定化させて、タグ付き対照タンパク質の一連のスポットを準備することを含む。例えば、タグに対する蛍光標識抗体を用いてプローブ探索をした後、一連のタグ付き対照タンパク質スポットに対して得られるシグナルが、標準曲線を作成するために使用され、これを1以上の標的ポリペプチドの濃度を定量するために使用する。例示的な実施形態において、タグはグルタチオン−S−トランスフェラーゼである。
【0115】
例えば、スポット列上のタグ化対照タンパク質は、約0.001ng/ul〜約10μg/ul、約0.01ng/ul〜約1μg/ul、約0.025ng/ul〜約100 ng/ul、約0.050ng/ul〜約75ng/ul、約0.075ng/ul〜約50ng/ul、約0.1ng/ul〜約25ng/ulの濃度で存在してよい。具体的な態様において、スポット列上のタグ化対照タンパク質は、約0.1ng/μl〜約12.8ng/μlの濃度で存在してよい。
【0116】
第1の位置的にアドレス指定可能なアレイ及び第2の位置的にアドレス指定可能なアレイ上に固定化されたタンパク質及び対照タンパク質の各タンパク質は、通常1以上のスポットにスポットされ、統計的に更に信頼できる測定値を与える。ある例において、濃度は、複数の標的タンパク質、例えば、少なくとも100、200、250、500、750、1000、2000、2500、5000、10,000、20,000、25、000、50,000、又は100,000の標的タンパク質について決定される。
【0117】
ここで提供される方法において、濃度は、典型的には、以下の式に適合する3次曲線を用いて決定される。
Y=a*X+b*X+c*X
【0118】
式中、Xはスポット相対強度であり、Yはスポットタンパク質濃度である。フィッティング式は、スライドにある他のプロテオームスポットを全て算出するために使用する。オープンソースソフトウェアのPolyfitを、この曲線フィッティングのために適用する。Y=a*X+b*X+c*X+d(d=0)のような設計他項を得るために、通常の方法でPolyfitを用いる代わりに、我々は二次用Polyfitを用いて新しい関数Y’=Y/X=a*X+b*X+cを作出し、係数a、b、cを得、次いでこのa、c、bを三次多項に対して用いる。
【0119】
対照スポットのタンパク質濃度は既知でありその強度はアップロード結果ファイルから得ることができるので、フィッティング曲線を作出することができ、その対応するフィッティング式は対照スポットの強度と濃度に基づくものである。3次曲線フィッティング法が適用される。
【0120】
タグ化対照上のタグは、更に詳説される親和性精製タグであってよい。親和性精製タグは、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼである。濃度の系列は、未知タンパク質の濃度を定量するための標準曲線及び関連式を構築するために用いられる、異なる既知濃度のタンパク質スポットの系列である。例えば、マイクロアレイは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、又は25の別々の濃度の系列を含むことができ、一系列の各々のタグ付きタンパク質は一般的に同じタグを含んでいるが、異なる系列のタグ付き対照タンパク質は異なるタグを含むことができる。従って、標的タンパク質に付着される、一系列で提示される何れかのタグでタグ付けされたタンパク質についてタンパク質濃度を定量するのに、複数の濃度系列を備えたマイクロアレイを使用することができる。換言すると、異なるタグで複数の濃度系列を備えたマイクロアレイによって、多くの異なるタグに対する標的タンパク質の濃度を定量するために使用することができる、強力なツールが提供される。
【0121】
本発明のある態様において、アレイ上のタンパク質濃度は、そのタンパク質がアレイ上に当初配置されたときにおける溶液中のタンパク質濃度を参照する。従って、標的タンパク質が固定化される際に接触及び検出が実施されるが、溶液中のその標的タンパク質の濃度は標準曲線を用いて求められる。このように、基質に接触される、位置的にアドレス指定可能なアレイのタンパク質についてのみならず、位置的にアドレス指定可能な第2のアレイについても、この方法で濃度の定量がもたらされる。
【0122】
標的タンパク質濃度の決定方法は、少なくとも10、15、20、25、50、75、100、200、250、500、750、1000、2000、2500、5000、10,000、20,000、25,000、50,000、100,000、200,000、250,000、500,000、750,000、1,000,000の標的タンパク質の濃度を決定するために使用できる。標的タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9 又は10のマイクロアレイ上にスポットされてよい。
【0123】
本明細書に示す方法の一態様において、等価液のタンパク質濃度算定を用いることによって、タンパク質濃度が定量される。マイクロアレイスライドの各ロットを、精製GSTタンパク質の既知濃度勾配と共にスポットする。代表的なアレイを、抗GST抗体でプローブ探索し、この結果生じるシグナルを用いて標準曲線を求める。次いでこの標準曲線を使用して、アレイにスポットしたタンパク質の、等価液タンパク質濃度を求める。サブアレイの全てに存在するGSTタンパク質勾配に対するシグナルの強度を用いて標準曲線を求め、これより全タンパク質の等価液濃度を推定する。この測定値は、アレイのタンパク質の絶対量ではないが、各タンパク質に対する溶液濃度の予測値を反映するものである。10ng/μlの「等価液濃度」を有するとして報告されたタンパク質について、スポットした量を用いてマイクロアレイのタンパク質の量を決定することができる。例えば、単一のスポットに、10pgのタンパク質をスポットすることができる。
【0124】
プロテオームアッセイを用いる方法
本発明は、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて、1以上の試料中のタンパク質の存在、量、及び/又は機能をアッセイする方法にも関する。本発明の、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイを使用して、大量の平行解析における化学反応及びアッセイを実施し、生物学的状態又は生物学的応答を特徴付け、またタンパク質の存在、量、及び/又は生物学的活性を調べることができる。
【0125】
本発明のタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて決定できる生物活性には、特に限定されないが、酵素活性(例えば、キナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ、アセチラーゼ活性、その他の化学基転移酵素活性)、核酸結合、ホルモン結合等が含まれる。本発明の、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイの使用に関連する方法には、高密度且つ小容量の化学反応が好都合でありうる。
【0126】
本発明の位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質に1以上のプローブを接触させると、当該技術分野において知られている種々の技術を用いて、タンパク質−プローブ間の相互作用をアッセイすることができる。例えば、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、化学発光又は蛍光を生じる標準的な酵素アッセイを用いてアッセイできる。種々の修飾が、非タンパク質基質、酵素色現像、質量分析での特定マーカー、又はオリゴヌクレオチドタグの増幅を用いて、光学発光、化学発光、又は蛍光によって検出できる。
【0127】
プローブは、当該技術分野において通例知られている方法によって、直接又は間接的にその結合が検出できるように、マーカーで標識又はタグ付けされる。エピトープタグ、ハプテン、及び親和性タグなどのタグ、抗体、標識等を含め(これらに限定されることはない)、当該技術分野で知られているいかなるマーカーでも、それが、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質(1種以上)をチップの固体基板に付着させるのに用いられた試薬又は親和性タグと同じでなければ使用できる。例えば、タンパク質アレイの、位置的にアドレス指定可能なアレイにタンパク質を付着させるためのリンカーとしてビオチンが使用されれば、その場合は位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質(1種以上)に存在しない別のタグ、例えばHis又はGSTが、プローブを標識してタンパク質−プローブ間の相互作用を検出するのに使用される。ある態様において、光学発光、化学発光、蛍光、又は酵素タグが使用される。別の態様において、質量分析での特定マーカーが使用される。更に別の態様において、増幅可能なオリゴヌクレオチド、ペプチド、又は分子質量標識が使用される。
【0128】
プローブを標識するために、当業者に公知の方法が使用できる。プローブは、特に限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、又は有機分子であってよい。標識は、特に限定されないが、ビオチン、アビジン、ペプチドタグ、又は有機小分子であってよい。標識は、インビボ又はインビトロにおいてプローブに結合できる。標識がビオチンであるとき、標識は、商業的に入手できる試薬(Invitrogen社、Carlsbad、CA)を用いて、インビトロ又はインビボでプローブに結合できる。例えば、プローブは、ビオチンがインビボで共有結合されるペプチドを含む融合タンパク質を用いて、インビボでビオチン標識されたタンパク質プローブであってよい。例えば、「Bioease」(商標)タグ(Invitrogen社、Carlsbad、CA)が使用できる。「BioEase」(商標)は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のオキサロ酢酸デカルボキシラーゼαサブユニット(Schwarz et al.、1988)のC末端(アミノ酸524−595)に由来する72ペプチドである。ビオチンはオキサロ酢酸デカルボキシラーゼαサブユニットに結合され、ペプチド配列決定により、タンパク質の561番目リジンにおけるビオチン単結合が同定された(Schwarz et al.、1988、The Sodium Ion Translocating Oxalacetate Decarboxylase of Klebsiella pneumoniae、J. Biol. Chem. 263、9640−9645、参照して全体を本明細書に援用する)。異種タンパク質に融合する場合、BioEase(商標)タグが双方とも必要であり、対象の組換えタンパク質のインビボでのビオチン化を容易にするのに充分である。細胞のビオチン化酵素による認識のためには、全体で72アミノ酸のドメインが必要である。細胞ビオチン化酵素及びビオチン化機構に関する更なる情報については、Chapman−Smith and Cronan、1999 (Chapman−Smith、A.、and J.E.Cronan、J. (1999). Molecular Biology of Biotin Attachment to Proteins、J. Nutr.129、477S−484S. 参照して全体を本明細書に援用する)を参照されたい。ある具体的態様において、標識は、共有結合を解してプローブに結合される。本発明の方法は、プローブ標識の検証を可能にし、より具体的な態様において、本発明の方法は、プローブ標識、即ちプローブ試料におけるプローブにおける標識された比率の定量化も可能にする。
【0129】
具体的な態様において、本発明は、タンパク質プローブ間相互作用を検出する方法であって、を含み、表1又は表2に列挙される配列によってコードされうタンパク質由来の100以上のヒトタンパク質を含み、各タンパク質が固体支持体上の異なる位置にある位置的にアドレス指定可能なアレイに標識化プローブ(例えば、標識化タンパク質)を接触させる段階と、前記標識化プローブと前記アレイ上のタンパク質との相互作用が生じる前記アレイ上の位置を検出する段階とを含む方法を提供する。
【0130】
従って、タンパク質プローブ間相互作用は、例えば、
1)放射性標識化リガンド、次いでオートラジオグファフィー及び/又はリン酸画像解析を用いる;
2)ハプテンを結合させ、蛍光標識又は酵素標識された抗体、又はビオチン又はストレプトアビジンのような高親和性ハプテンリガンドによって検出する;
3)質量分析;
4)原子間力顕微鏡;
5)蛍光局在法;
6)赤外線標識化合物又はタンパク質;
7)増幅可能なオリゴヌクレオチド、ペプチド、又は質量分析標識;
8)タンパク質の酵素活性の刺激又は阻害;
9)ローリングサークル型増幅検出法(Hatch et al.、1999、“Rolling circle amplification of DNA immobilized on solid surfaces and its application to multiplex mutation detection”、Genet. Anal. 15:35−40);
10)競合PCR(Fini et al.、1999、“Development of a chemiluminescence competitive PCR for the detection and quantification of parvovirus B 19 DNA using a microplate luminometer”、Clin Chem. 45:1391−6;Kruse et al.、1999、“Detection and quantitative measurement of transforming growth factor−beta 1 (TGF−betal) gene expression using a semi−nested competitive PCR assay”、Cytokine 11:179−85;Guenthner and Hart、1998、“Quantitative、competitive PCR assay for HIV−I using a microplate−based detection system”、Biotechniques 24:810−6);
11)比色分析法;
12)生物学的アッセイ(例えば、ウイルス力価)によって検出できる。
【0131】
具体的な態様において、タンパク質プローブ間相互作用は、直接質量分析によって検出される。更なる態様において、タンパク質及び/又はプローブの同定は、質量分析を用いて決定される。例えば、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質に結合されている1以上のプローブは、アレイから解離させ、そして質量分析法によって同定することができる(例えば、国際公開パンフレット第WO98/59361号を参照されたい)。別の例において、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質の酵素切断を検出することができ、切断されたタンパク質断片又は他の遊離化合物は質量分析法によって同定することができる。
【0132】
ある態様において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイ上の各タンパク質はプローブに接触され、タンパク質プローブ間相互作用が検出され、定量化される。別の態様において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイ上の各タンパク質は複数のプローブに接触され、タンパク質プローブ間相互作用が検出され、定量化される。例えば、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイは、複合体混合物(例えば、細胞抽出物)、完全細胞成分(例えば、細胞小器官)、全細胞、及びいくつかの供給源から集めたプローブを含めた(これらに限定されることはない)複数のプローブで同時にスクリーニングすることができる。タンパク質−プローブ間の相互作用は、その後検出及び定量される。本発明のアレイの位置的にアドレス指定可能な性質に一部起因して、すなわち、タンパク質チップの既知の位置にあるタンパク質の配置を介して、プローブの混合物を用いたアッセイから有用な情報を得ることができ、プローブが結合したタンパク質(「インタラクタ」)を特徴付けることができる。
【0133】
本発明の方法に従って、プローブは、細胞、細胞膜、亜細胞性細胞小器官、タンパク質含有細胞材料、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、小分子(すなわち500未満の分子量を有する化合物)、基質、薬剤または薬剤候補、受容体、抗原、ステロイド、リン脂質、抗体、イムノグロブリン領域、グルタチオン、マルトース、ニッケル、ジヒドロトリプシン、レクチンまたはビオチンであってよい。
【0134】
プローブは、タンパク質−プローブ間の相互作用を検出するよう、タンパク質アレイの接触に使用するためにビオチン化されうる。弱くビオチン化したタンパク質は、対象の生物学的活性維持している可能性が高い。よって、タンパク質の結合活性又は他の対象の生物学的活性を保持するよう、より穏やかなビオチン化手法が好ましい。従って、具体的な態様において、プローブタンパク質は、ビオチン転移化合物(例えば、Sulfo−NHS−LC−LC−Biotin;PIERCE(商標)、カタログ番号21338、USA)を用いて異なる程度までビオチン化される。
【0135】
位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイのタンパク質との小分子(すなわち、分子量が500以下の化合物)の相互作用は、ATP、GTP、cAMP、ホスホチロシン、ホスホセリン、及びホスホスレオニンなど(これらに限定されることはない)の小分子でプローブ探索することにより無細胞系でアッセイすることもできる。このようなアッセイで、対象の小分子と相互作用する種にある全てのタンパク質を同定することができる。目的の小分子には、特に限定されないが、医薬、薬剤候補、殺菌剤、除草剤、農薬、発癌物質および汚染物質が含まれてよい。本発明の方法に従ってプローブとして用いられる小分子は、好ましくは非タンパク質の有機化合物である。
【0136】
タンパク質キナーゼ基質のプロファイリングサービスビジネスの方法
別の態様において、タンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて1又は複数の酵素基質を同定するための製品又はサービスへのアクセスを顧客に提供することによって収益を得る方法が提供される。アクセスは、例えば、電話線、直接販売員接続、又はインターネットその他の広域ネットワークを通じて提供される。前記製品又はサービスにおけるタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイは、ある例示的な例において、酵母、動物、哺乳類、又はヒトのような単一種における少なくとも1000、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、10000、又はすべてを含んでよい。
【0137】
この態様の例示的な例に従う方法は、前記顧客に酵素基質を同定するためのサービスへの接近手段を提供する段階であって、前記サービスは、標的酵素の特定を顧客から受領することを含む段階と、官能化ガラス基板上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記標的酵素を反応条件下で接触させる段階と、前記酵素により結合及び/又は修飾された前記アドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階であって、前記酵素による前記タンパク質の結合又は修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる段階を含む段階と、前記基質の特定を前記顧客に提供する段階とを含む。
【0138】
例示的な側面において、この方法はキナーゼ基質を同定する。キナーゼ基質を同定する例示的な例のような態様において、前記アドレス指定可能なアレイ基板は、ガラス支持体を重層するポリマーを含む3次元多孔性表面を含む。
【0139】
この態様のサービスのある側面において、酵母Saccharomyces cerevisae由来の少なくとも1000、2000、2500、3000、4000、5000、6000、又は6280のタンパク質が、タンパク質のアドレス指定可能なアレイ上に固定化される。酵母Saccharomyces cerevisaeゲノム由来のタンパク質の大部分は、既にクローン化され、過剰発現され、精製され、化学修飾ガラススライド上にアドレス指定可能な形式でアレイ化されている(Zhu H、et al.、Science、2001)。別の側面において、ヒトタンパク質の少なくとも1000、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、10000、11000、125000、又はすべてが、タンパク質のアドレス指定可能なアレイ上に固定化される。
【0140】
本明細書に示すキナーゼ基質プロファイリング方法は、酵素の同じファミリー又はクラスの、異なる酵素を用いて繰り返し、本方法の第一の実施で同定された基質の特異性を確認することができる。更に、基質プロファイリング方法は、別の種に由来する少なくとも、1000、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、10000、11000、125000又はすべてのタンパク質を用いて繰り返される。例えば、この方法で使用される第一のアレイは酵母タンパク質アレイでありえ、そして第二のタンパク質アレイはヒトタンパク質アレイでありうる。さらに、キナーゼなどの酵素に対するインヒビターを、アレイを用いて分析して、基質の特異性を確認することができる。あるいは、基質が関与する反応を触媒する酵素の能力に影響を及ぼす被験化合物を同定するために、被験化合物をスクリーニングすることができる。最後に、基質プロファイリング方法で基質として同定された精製タンパク質を、キナーゼアッセイの開発での使用のために顧客に販売することができる。
【0141】
別の態様において、細胞集団を購入する方法であって、表1及び/又は表2に列挙される配列によってコードされるタンパク質に由来する100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを提供する段階と、100以上のタンパク質の1つを各々発現するクローン集団を購入するリンクを提供する段階とを含む方法が提供される。別の態様において、タグに結合され、表1又は表2に列挙される配列によってコードされるタンパク質に由来する少なくとも10、20、25、50、75、100、150、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000の単離タンパク質を含む融合タンパク質集団が提供される。ある側面において、100以上のタンパク質に結合されたタグは、100以上のタンパク質の各々について同一であり、例えば、Hisタグ又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)タグである。タグは、ある例示的態様において、共有結合によってタンパク質に結合される。
【0142】
一つの例において、キナーゼ及び化合物を、第1日に顧客から受け取る。キナーゼ基質プロファイリング(KSP)位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイ、例えば3000を超える酵母タンパク質を備えた位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイにて、33P−ATPの存在下に3種(0.1、1.0、及び10nM)の濃度のキナーゼをアッセイする。PKAなどのプロテインキナーゼを利用する陽性対照、及び33P−ATP単独からなる陰性対照を、平行して実施する。両対照実験を、確立されたパラメータに従って実施して、顧客のキナーゼの至適濃度を求める。キナーゼの至適濃度の定量から得られるデータの解析で、ノイズに対して3×標準偏差より強いシグナルを与えるほど充分にリン酸化されているタンパク質の数が明らかになる。さらに、そのデータの解析で、顧客のキナーゼに特異的であることが確認された(すなわち、PKAアッセイでは観察されない)タンパク質の数が示される。
【0143】
この態様の別の例示的態様に従った方法は、1以上の酵素基質を同定するための製品への接近手段を顧客に提供する段階を含み、前記製品は、少なくとも100、200、250、500、750、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、7500、8000、9000、10000、又はすべてのヒトタンパク質を含む高密度の位置的にアドレス指定可能なアレイである。
ある態様において、前記製品は、表1又は表2に列挙される少なくとも100、200、250、500、750、1000、1500、又はすべてのヒトタンパク質を含む高密度の位置的にアドレス指定可能なタンパク質アレイである。例示的な側面において、前記製品は、キナーゼ基質を同定するための製品として市場化される。ある例において、高密度の位置的にアドレス指定可能なアレイ上のヒトタンパク質は、官能化ガラススライド上に固定化される。
【0144】
基質のリン酸化に影響を与える分子を同定する方法
ある態様において、基質のリン酸化に影響を与える分子を同定する方法であって、前記分子が存在する又は存在しない1又は複数の基板にキナーゼを接触させる段階と、前記分子がキナーゼによる前記同定された基質のリン酸化に影響を与えるか否かを決定する段階とを含む方法が提供される。前記分子は、例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、又は炭水化物のような有機小分子又は生体分子であってよい。ある側面において、前記生体分子は、ホルモン、成長因子、又はアポトーシス因子である。
【0145】
キナーゼ、同定された基質、及びその分子を、有効反応条件(すなわち、その下で、同定された基質(1種以上)を当該分子の非存在下にキナーゼがリン酸化する反応条件)に接触させる。キナーゼによる基質のリン酸化を試験するための方法が多く知られていることは理解されるであろう。具体的な例として、「ProtoArray(商標)キナーゼ基質同定」という標題の例示的な実施形態で示したものなどといったアレイによる方法や、「ProtoArray(商標)キナーゼ基質同定」という標題の例示的な実施形態で「アレイで同定されたタンパク質基質の検証」という標題の欄に示す溶液系アッセイが挙げられる。キナーゼ−基質リン酸化のための溶液系アッセイには、被験分子及び放射活性標識付きATPなどの標識付きATPの存在下に、キナーゼと1以上の基質とがインキュベートされる。適当にインキュベーションした後、被験分子の存在下に基質がキナーゼによってリン酸化された否かが判定される。さらに、リン酸化のレベルを定量することができ、被験分子の非存在下のリン酸化のレベルと比較できる。
【0146】
その分子は、基質のリン酸化を部分的又は完全に阻害又は増強することによってリン酸化に影響を及ぼしうる。リン酸化は多くの生理学的関連プロセスで重要な役割を果たすことが知られているので、本方法は治療剤などの候補分子を同定するのに有用である。ある側面において、リン酸化への阻害又は刺激効果は、統計的方法を用いて決定でき、例えば影響が85%信頼度以上であると同定される。ある例示的な例において、影響は95%信頼度以上であると同定される。
【0147】
キナーゼ及び同定された基質は、「ProtoArray(商標)キナーゼ基質同定」という標題の、例示的な実施形態に開示している。これらには、固定化アレイによる形式又は溶液系アッセイにて同定された基質が含まれている。特に関連性があるのは、「ProtoArray(商標)キナーゼ基質同定」という標題の例示的な実施形態で要約するような、アレイによる形式と溶液系で検証される研究の双方で確証がとれた基質である。例えば、キナーゼがCK2キナーゼである場合、基質は、BC001600、BC014658、BC004440、NM_015938、BC016979、及び/又はNM_001819であり、例示的な例において、基質はBC001600、BC014658、BC004440、及び/又はNM_015938である。キナーゼがタンパク質キナーゼAである場合、基質は、NM_004331、NM_023940、BC000463、BC032852、NM_014326、BC002520、BC033005、NM_006521、BC034318、BC047393、NM_003576、NM_138808、NM_014310、BC020221、NM_014012、BC002493、BCOl 1526、NM_032214、及び/又はNM_138333である。キナーゼがタンパク質キナーゼAである例示的な例において、基質は、NM_023940、BC000463 BC032852、BC002520、BCO33OO5、NM_006521、BC034318、BC047393、BC020221、NM_014012、BC002493、BCOl 1526、NM_032214、及び/又はNM_138333である。キナーゼがLCKである例において、基質は、BC003065、NM_005207、BC020746、NM_004442、NM_004935、及び/又はNM_003242である。キナーゼがLCKである具体的な実施例において、基質はBC003065である。
【0148】
一つの態様において、基質のリン酸化に影響を及ぼす分子を同定するための方法は、マイクロタイターアッセイである。例えば、マイクロタイターアッセイにおいて、同定された基質、関連キナーゼ及び1以上の被験分子をマイクロタイタープレートのウェル内で合わせて、リン酸化のレベルを測定し、被験分子を含まない対照反応と比較することができる。リン酸化のレベルが高ければ、その被験分子は同定された基質のリン酸化を刺激し、リン酸化のレベルが低ければ、その被験分子は同定された基質のリン酸化を阻害する。
【0149】
細胞系の方法も、同定された基質リン酸化レベルをモジュレートすることのできる化合物を同定するのに使用できる。かかるアッセイは、基質発現レベル又は遺伝子活性に直接影響を及ぼす化合物も同定することができる。このような方法を介して同定される化合物は、例えば、その基質が関与する疾病又は障害を処置するための方法で利用することができる。
【0150】
ある態様において、アッセイは、同定された基質の膜結合形態又はその生物学的活性部分を細胞表面に発現する細胞が被験分子に接触され、前記基質への前記被験分子の結合能力が決定される細胞系アッセイである。別の態様において、基質は細胞質性である。細胞は、例えば、酵母細胞又は哺乳類由来の細胞である。被験化合物の基質への結合能の定量は、同定された基質又はその生物学的活性部分への被験化合物の結合を、複合体中の標識付き化合物を検出することにより定量できるように、例えば、被験化合物を放射性同位体又は酵素標識とカップリングさせることによって成し遂げることができる。例えば、被験化合物は125I、35S、14C、又は3Hで、直接的又は間接的のいずれかにて標識付けすることができ、その放射性同位体は電波放射の直接計数によって、又はシンチレーション計数によって検出される。あるいは、被験分子は、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はルシフェラーゼで酵素的に標識付けすることができ、その酵素標識は、適切な基質の産物への変換を定量することによって検出される。好ましい態様において、アッセイは、同定されたキナーゼ基質の膜結合形態又はその生物学的活性部分を細胞表面に発現する細胞を、前記基質に結合する公知分子に接触させてアッセイ混合物を形成する段階と、前記アッセイ混合物を被験分子に接触させる段階と、前記基質への前記被験分子の相互作用能力を決定する段階とを含み、前記基質への前記被験分子の相互作用能力の決定は、前記公知分子に比べ、前期被験分子が前記基質又はその生物学的活性部分に優先的に結合する能力を決定することを含む。
【0151】
別の態様において、アッセイは、同定された基質の膜結合形態又はその生物学的活性部分を細胞表面に発現する細胞が適切なキナーゼ及び1又は複数の被験分子に接触され、前記被験分子が前記同定された基質のリン酸化に影響を与える能力が決定される細胞系アッセイである。別の態様において、基質は細胞質性である。細胞は、例えば、酵母細胞又は哺乳類由来の細胞である。好ましい態様において、アッセイは、同定されたキナーゼ基質の膜結合形態又はその生物学的活性部分及び適切なキナーゼを発現する細胞を接触させてアッセイ混合物を形成する段階と、前記アッセイ混合物を1又は複数の被験分子に接触させる段階と、前記基質のリン酸化レベルを調節する前記被験分子の能力を決定する段階とを含む。
【0152】
別の側面において、被験分子の存在下で前記基質をリン酸化すると同定されたキナーゼによる同定されたキナーゼのリン酸化についてKmが決定される。Kmは、被験分子の非存在下に同定された基質のリン酸化に対する既知のKmと比較される。Kmの変化は、キナーゼによって同定された基質のリン酸化に被験分子が影響を及ぼすことを示唆している。
【0153】
特定の態様において、被験分子が、本発明にてキナーゼによって同定された基質のリン酸化に影響を及ぼして、同定された基質をリン酸化するか否かの判定は、間接法を用いて実施する。例えば、様々な細胞成分及びプロセスに対する影響を同定でき、例えば細胞増殖に対する影響を判定することができる。
【0154】
ある側面において、被験分子は抗体又はそのフラグメントである。被験分子が小分子である場合、それは有機分子又は無機分子(例えば、ステロイド、医薬)でありうる。小分子は、500ダルトン未満の分子量を有する非ペプチド化合物であると考えられる。
【0155】
本発明の本実施形態は、本発明の方法によって同定される基質のリン酸化のレベルをモジュレートする分子のための化学ライブラリーをスクリーニングするのに、非常に好都合である。化学ライブラリーは、ペプチドライブラリー、ペプチド模倣薬ライブラリー、化学的合成ライブラリー、例えばファージディスプレーライブラリー、インビトロ翻訳系ライブラリー、その他の非ペプチド合成有機ライブラリー等の組換えライブラリーであってよい。
【0156】
例示的なライブラリーは、いくつかの供給源(ArQuIe社、Tripos/PanLabs社、ChemDesign社、Pharmacopoeia社)より商業的に入手できる。場合によって、これらの化学ライブラリーは、メンバー化合物が付着する基板上のライブラリーの各メンバーの実体をコード化するコンビナトリアル戦略を用いて作製され、かくして有効なモジュレーターである分子の直接的且つ迅速な同定が可能となる。このように、多くのコンビナトリアル検討法では、化合物のプレート上の位置がその化合物の組成を特定化する。また、一つの実施例において、単一のプレート位置は、対象の相互作用を含むウェルへの施用によってスクリーニングすることができる1〜20の化学物質を有してもよい。こうして、もしモジュレーションが検出されれば、小相互作用対及び相互作用対の小さなプールを、モジュレーション活性についてアッセイすることができる。このような方法によって、多くの候補分子をスクリーニングすることができる。
【0157】
使用に好適な多くの多様性ライブラリーが当該技術分野において知られており、本発明に従って試験されるべき化合物を準備するのに用いることができる。あるいは、ライブラリーは標準法を用いて構築することができる。化学(合成)ライブラリー、組換え発現ライブラリー、又はポリソーム系ライブラリーは、使用できるライブラリーの例示的な型である。
【0158】
ライブラリーは拘束的か若しくは半硬質(ある程度の構造上の剛性を有している)、又は線状若しくは非拘束的でありうる。ライブラリーは、cDNA若しくはゲノム発現ライブラリー、ランダムペプチド発現ライブラリー若しくは化学合成ランダムペプチドライブラリー、又は非ペプチドライブラリーでありうる。発現ライブラリーは、アッセイが起こる細胞へ導入され、そこでライブラリーの核酸が発現されてそれらがコード化するタンパク質を生産する。
【0159】
ある態様において、本発明で使用できるペプチドライブラリーは、インビトロで化学的に合成できるライブラリーであってよい。このようなライブラリーの例は、各ペプチドの第1及び第2の残基が独立して特異的に定義された遊離ヘキサペプチドの混合物を開示するHoughten et al.、1991、Nature 354:84−86;固体相分離合成スキームが、集団の各ビーズがアミノ酸残基の単一ランダム配列を固定化するペプチドのライブラリーを製造する「1ビーズ1ペプチド」手法を開示するLam et al.、1991、Nature 354:82−84;分離合成およびTバッグ合成法を開示するMedynski、1994、Bio/Technology 12:709−710;及びGallop et al.、1994、J. Medicinal Chemistry 37(9): 1233−1251において与えられる。他の例において、コンビナトリアルライブラリーが、Ohlmeyer et al.、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10922 10926; Erb et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422 11426; Houghten et al.、1992、Biotechniques 13:412; Jayawickreme et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614 1618; or Salmon et al.、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708 11712の方法に従って、使用するために調製されてよい。PCTWO 93/20242公報、及びBrenner and Lerner、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381 5383は、各化学ポリマーライブラリーの要素の同定子を含む「コード化されたコンビナトリアル化学ライブラリー」を記述する。
【0160】
好ましい態様において、スクリーンされたライブラリーは、ランダムペプチドファージディスプレーライブラリーであって、ランダムペプチドが束縛(例えば、ジスルフィド結合による)されている生物学的発現ライブラリーである。
【0161】
更に、より一般的には、構造的に束縛された有機多様(例えば、非ペプチド)ライブラリーも使用できる。例として、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えば、Bunin et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 : 4708 4712を参照)が使用できる。
【0162】
使用できる配座束縛ライブラリーは、特に限定されないが、酸化環境において、ジスルフィド結合によって架橋してシステインを形成する不変システイン残基、修飾ペプチド(例えば、組み込まれたフッ素、金属、同位体標識がリン酸化されている)、1又は複数の非天然発生アミノ酸を含むペプチド、非ペプチド構造、及びγカルボキシグルタミン酸の相当部分を含むペプチドを含むものである。
【0163】
非ペプチド、例えばペプチド誘導体(例えば、1又は複数の非天然発生アミノ酸を含む)のライブラリーも使用できる。これらの他の例は、ペプトイドライブラリー(Simon et al.、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367 9371)である。ペプトイドは、アルファ炭素にでなく骨格のアミノ窒素に付着する天然型の側鎖を有する、非天然アミノ酸のポリマーである。ペプトイドはヒト消化酵素によって容易に分解されることはないので、薬物用途に好都合に、より容易に適用されうる。ペプチドのアミド官能基が過メチル化されて化学的に形質転換されたコンビナトリアルライブラリーが産生されている、使用可能なライブラリーの別の例は、Ostreshら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:11138−11142によって報告されている。非ペプチドライブラリーの別の例示的な例は、ベンゾジアゼピンライブラリーである。例えば、Bunin et al.、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 : 4708−4712を参照されたい。
【0164】
本発明に従ってスクリーニングされうるペプチドライブラリーのメンバーは、20種の天然アミノ酸を包むものに限定されない。特に、化学合成ライブラリー及びポリソーム系ライブラリーは、20種の天然アミノ酸以外にもアミノ酸を用いることを(ライブラリーの生産時に使用するアミノ酸の前駆体プールにそれらを含めることによって)可能とする。具体的な態様において、ライブラリー要素は、1又は複数の非天然又は非伝統的アミノ酸又は環状ペプチドを含む。非伝統的アミノ酸には、特に限定されないが、共通アミノ酸のD−異性体、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸;γ−Abu、ε−Ahx、6−アミノヘキサン酸;Aib、2−アミノイソ酪酸;3−アミノプロピオン酸;オルニチン;ノルロイシン;ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t―ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β―アラニン、例えばβ―メチルアミノ酸、Cα―メチルアミノ酸、Nα―メチルアミノ酸、フルオロアミノ酸、及び一般的なアミノ酸アナログのような設計アミノ酸が含まれる。更に、アミノ酸は、D体(右旋性)又はL体(左旋性)であってよい。
【0165】
本発明の別の実施形態において、基質のリン酸化のレベルをモジュレートする薬剤を同定するために、コンビナトリアルケミストリーを用いることができる。コンビナトリアルケミストリーは、数十万の化合物を含むライブラリーを作出することができ、その多くが構造的に類似していてもよい。ハイスループットスクリーニングプログラムは、既知の標的に対する親和性につき、これらの膨大なライブラリーをスクリーニングすることができるが、より小規模であるが最高の化学的多様性を提供するライブラリーをもたらす新しい検討法が開発されている(例えば、Matter、1997、Journal of Medicinal Chemistry 40:1219−1229参照)。
【0166】
Kayら、1993、Gene、128:59−65(Kay)は、従前のライブラリーの何れのものよりも長い、全体としてランダムな配列のペプチドをコード化するペプチドライブラリーを構築する方法を開示している。Kayに開示されるライブラリーは、約20アミノ酸の鎖長を超える、全体が合成されたランダムペプチドをコード化している。かかるライブラリーは、リン酸化モジュレーターを同定するために有効にスクリーニングされうる(1996年3月12日付けの米国特許第5,498,538号、1994年8月18日のPCTWO 94/18318公報も参照)。
【0167】
ペプチドライブラリーの種々の型に関する包括的な総説は、Gallop et al.、1994、J. Med. Chem. 37:1233−1251において発見できる。
【0168】
関連する態様において、本発明は、分子ライブラリーのような一連の分子をスクリーニングすることによる本発明の方法によって同定されたキナーゼ基質のリン酸化レベルを増加又は減少させる化合物を同定するための、スクリーニング方法を更に提供する。以上を実施するために使用されうるスクリーニング方法は、当該技術分野において広く知られている。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する以下の文献:Parmley and Smith、1989、Adv. Exp. Med. Biol. 251:215−218;Scott and Smith、1990、Science 249:386−390;Fowlkes et al.、1992、BioTechniques 13:422−427;Oldenburg et al.、1992、Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:5393− 5397;Yu et al.、1994、Cell 76:933−945;Staudt et al.、1988、Science 241:577−580;Bock et al.、1992、Nature 355:564−566;Tuerk et al.、1992、Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:6988−6992;Ellington et al.、1992、Nature 355:850−852;米国特許第5,096,815号;米国特許第5,223,409号;米国特許第5,198,346号;Rebar and Pabo、1993、Science 263:671−673;及び国際公開WO94/18318を参照されたい。
【0169】
別の態様において、同定された基質と相互作用する分子を同定する方法が提供される。本実施形態によって、同定された基質をリン酸化するものとして本発明にて同定されたキナーゼによって同定された基質のリン酸化に影響を及ぼす機会の多い分子が同定された。同定された基質と相互作用する化合物を同定するのに用いられるアッセイの原理には、同定された基質と被験化合物との反応混合物を、当該二成分を、こうして形成された複合体に相互作用(例えば結合)させるのに充分な時間、条件下に、調製することが含まれ、一過性の複合体で、反応混合物中で除去及び/又は検出できるものを提示することができる。これらアッセイは、種々の方法で行うことができる。例えば、このようなアッセイを行う一つの方法には、同定された基質又は被験物質を固相上に固着させ、固相上に固着した基質遺伝子産物/被験化合物複合体を反応の終点で検出する工程が含まれる。かかる方法の一実施形態において、同定された基質が固体表面に固着され、固着されていない被験化合物を直接的又は間接的のいずれかで標識付けするとよい。同定された基質に結合するそれらの被験化合物は次いで、後述する方法を含め当該技術分野において知られている方法を用いて、基質のリン酸化のレベルをもたらす能力についてさらに試験することができる。
【0170】
実際には、固相としてマイクロタイタープレートを利用するのが好都合でありうる。固着成分は、非共有又は共有的付着により固定化されてもよい。非共有的付着は、単に固体表面をタンパク質の溶液で被覆して乾燥させることによって成し遂げうる。あるいは、固定化抗体、好ましくはモノクローナル抗体で、固定化されるべき基質タンパク質に対して特異的なものを、固体表面にタンパク質を固着させるのに使用してもよい。表面を前もって調製し、保存しておいてもよい。
【0171】
アッセイを行うために、固着された成分を含む被覆表面に非固定化成分を添加する。反応が完了した後、形成された複合体が何れも固体表面上に固定化されたままになるような条件下に、未反応成分を(例えば、洗浄により)除去する。固体表面に固着された複合体の検出は、多くの方法で成し遂げることができる。前もって固定化されていない成分が予め標識付けされる場合、表面に固定化された標識の検出により、複合体が形成されたことが示唆される。前もって固定化されていない成分が予め標識付けされない場合、表面に固着された複合体を検出するために、間接標識、例えば、前もって固定化されていない成分に対して特異的な標識付き抗体(この抗体は、次に、直接標識付けするか、又は標識付き抗Ig抗体で間接的に標識付けされうる)を使用することができる。
【0172】
あるいは、反応を液相にて行うことができ、その反応産物は未反応成分から分離して、例えば、同定された基質遺伝子産物又は溶液中で形成された何れかの複合体を固着する被験化合物に対して特異的な固定化抗体、及び固着された複合体を検出する可能性のある複合体の他の成分に対して特異的な標識付き抗体を用いて複合体を検出することができる。
【0173】
タンパク質−タンパク質間相互作用を検出するのに好適な方法の何れでも、キナーゼ−基質間相互作用を含め、同定された基質−タンパク質間相互作用を同定するために用いうる。基質と相互作用して、基質リン酸化のレベルを抑制又は増大させるタンパク質は、同定された基質が関与する、癌を含めた疾患及び障害の処置のための潜在性がある治療をもたらすであろう。同定された基質と相互作用するタンパク質はまた、そのような疾患及び障害の診断に使用することもできる。
【0174】
用いうる従来の方法として挙げられるのは、共免疫沈降、架橋、及び勾配又はクロマトグラフィー用カラム(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)による共精製である。これらのような手法を利用することで、同定された基質と相互作用する細胞内タンパク質の単離が可能となり、これを本明細書において基質遺伝子産物と称することがある。一旦単離されれば、このような細胞内タンパク質を同定することができ、次に標準技術と併せて、それと相互作用するさらなるタンパク質を同定するのに使用することができる。例えば、同定された基質と相互作用する細胞内タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分は、当業者によく知られた、エドマン分解技術(例えば、Creighton、1983、Proteins:Structures and Molecular Principles、W.H.Freeman&Co.、ニューヨーク、34−49頁を参照のこと)を介するなどの技術を用いて確認することができる。得られたアミノ酸配列は、かかる細胞内タンパク質をコード化している遺伝子配列をスクリーニングするのに用いることができるオリゴヌクレオチド混合物の作製のためのガイドとして使用してもよい。スクリーニングは、例えば標準ハイブリダイゼーション又はPCR技術によって成し遂げてもよい。オリゴヌクレオチド混合物の作製及びスクリーニングのための技術は、よく知られている(例えば、Ausubel、supra.、and PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications、1990、Innis、M. et al.、eds. Academic Press、Inc.、New York参照)。
【0175】
さらに、基質タンパク質と相互作用するタンパク質をコード化する遺伝子の同時同定がなされる方法を採用してもよい。これらの方法としては、例えば、標識付き基質タンパク質を用いて発現ライブラリーをプローブ探索すること、λgt11ライブラリーの抗体プローブ探索のよく知られた技術と同様に基質タンパク質を使用することが挙げられる。
【0176】
インビボでタンパク質相互作用を検出する一方法である、二重ハイブリッドシステムを用いることができる。この系は既に記述され(Chien et al.、1991、supra)、Clontech社(Palo Alto、CA)より商業的に入手できる。
【0177】
キット
本発明はまた、本発明のヒトタンパク質のアレイを含み位置的にアドレス指定可能な、且つ/又は本発明の方法を行うために用いられるキットも提供する。かかるキットはさらに、1以上の容器に、タンパク質又は分子の生物学的活性をアッセイするのに有用な試薬、タンパク質−プローブ間相互作用をアッセイするのに有用な試薬、及び/又は1以上のプローブ、タンパク質若しくは他の分子を含むとよい。タンパク質又は他の分子の生物学的活性をアッセイするのに、又はプローブとタンパク質若しくは他の分子との間の相互作用をアッセイするのに有用な試薬は、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイに添付されるか、又は位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイの1以上のウェル内に入れられるプローブと共に適用されうる。このような試薬は、液状又は固体状でありうる。試薬は、タンパク質又は他の分子、及び対象のアッセイを実施するのに必要とされるプローブの一方または両方を含んでもよい。
【0178】
別の実施形態において、キットは、タンパク質又は他の分子の酵素活性などの生物学的活性をアッセイするのに有用な、試薬(1種以上)又は反応混合物を含みうる。キットは一般的に、位置的にアドレス指定可能なタンパク質のアレイ、及びタンパク質又は分子の生物学的活性をアッセイするための液状反応混合物を入れる1以上の容器を含む。
【0179】
本発明は、本発明の例示として与えられる以下の非限定的な実施例を参照してより良く理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の好ましい態様をより完全に例示するために提示される。しかしながら、これら実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈してはならない。
【0180】
実施例1
3000以上のヒトタンパク質を有するタンパク質マイクロアレイの作製方法
本実施例は、多数のヒトタンパク質のタンパク質マイクロアレイを作るのに用いることができる方法を例証する。
【0181】
ヒトタンパク質のクローニング、発現、精製及びアレイ化
A. クローニング
クローニング実験の設計、手順及びプロトコル
本実施例にて実施したクローニング、発現、精製、及びアレイ化は全て、データベース及びワークフロー管理システムにリンクさせ、遺伝子配列から、プリントされたタンパク質アレイの検証への進行を、双方が組織化及び追跡するようにした。コーディング配列を増幅してゲートウェイエントリーベクターpENTR221へのクローニングに適切な末端を備えた断片を生産する既知の設計パラメータを使用して、プライマー対を自動的に設計した。
【0182】
cDNAからのPCR増幅は、偽性突然変異を最小限に抑えるために高忠実度ポリメラーゼを用いて、96ウェルプレートにおいて行った。得られた増幅産物は、CaliperAMS−90分析装置を用いて正しいサイズ又は予測サイズについて調べた。これらのデータは、各試料クローンに対して予測される遺伝子サイズとの自動的な比較用のデータベースにアップロードした。データ管理システムでは、Caliper解析の結果を用い、QCにパスしているPCR産物を統合するロボット式のリアレイを、pENTR221への組換えのクローニング用の単一プレートに自動的に導いた。全クローニング工程を、ロボット式の液体ハンドリング装置を用いて、バーコードを付けた96ウェルプレートにて行った。これらの工程には、固相DNA精製、BP組換えクローニング反応、及びコンピテントな大腸菌への形質転換が含まれていた。コロニー・ピッキング・ロボットを用いて、各形質転換体から4つのコロニーを拾った。PCR反応及び各反応のQCは、前記のように自動化された様式で各コロニーに対して行った。正しいサイズのPCR断片を含む2つのコロニーを、バーコードを付けた96ウェルプレートへロボットによって統合し、その産物Templiphi(商標)(Amersham Biosciences)を用いて自動化DNA配列決定用の鋳型を作出した。
【0183】
解析、解釈、及び評価
クローンのインサートの全長にわたり、それらの配列を検証した。1クローンの配列が、意図した遺伝子に対応していたか否か、何らかの有害な突然変異がなかったか、そしてORFが正しくベクター内に挿入されていたか否かを自動的に判定するために、高効率アルゴリズムのセットを用いた。これらの判定基準に該当するクローンのみを、タンパク質発現に供した。
【0184】
熟練技術者による手動の配列解析に対する、この自動化システムのベンチマーク試験によって、手動の解析では200クローンの解析に75時間を要し、これに対して自動化によると3分しか要しないことが明らかになった。結果をさらに検討すると、手動の解析でパスしたクローンのうち9つが実際は配列エラーを含んでおり、また手動の配列解析でパスしなかったクローンのうちの1つが実際は正しい配列を有していたことが示唆された。これに対して、自動化システムによれば、不適切にパスしたりしなかったりする配列はなかった。
【0185】
潜在的困難及び解決策
いくつかの配列が増幅しないのは、避けがたいことである。考えられる原因の1つは、PCRに用いられるオリゴヌクレオチドプライマーにおけるエラーである。この問題に対する最も簡単な解決は、増幅し損なうプライマーを再合成することである。非増幅の考えられる別の原因は、オリゴヌクレオチドの非特異性である。特異性はPCRプライマー設計ソフトウェアで至適化されるが、完全な特異性を常に得るのは不可能である。従って、これに対処するため、我々は「ネスト化プライマー」戦略を採用した。タンパク質又はキナーゼドメインの特異的PCRに先駆けて、フランキングプライマーによって鋳型を増幅させた。これにより、標的の鋳型の相対的な量が有効に増加し、非特異性の効果が最小限になった。
【0186】
B.ヒトタンパク質の発現及び精製
実験の設計、手順及びプロトコル
本プロジェクトのこの部分の目的は、タンパク質マイクロアレイの生産のために充分な量の組換えヒトタンパク質を生産することであった。我々は、タンパク質生産のために昆虫細胞系システムを用いる。昆虫細胞で発現される組換えタンパク質は、適切な折り畳みの頻度が高く、収率が高く、且つ翻訳後修飾(例えば、リン酸化及びグリコシル化)が哺乳動物細胞と類似している(ZhuHら、Science、2001、293:2101−2105;並びにSchweitzer B、及びKingsmore S.F.、Curr Opin Biotechnol、2002、13:14−19;Snyder Mら、Science、2003、300:258−260)。これらの望ましい特徴は、大腸菌で発現されたタンパク質とは対照的であり、かかるタンパク質は正しく折り畳まれず、且つ翻訳後修飾されていないことが多い。我々は、96ウェル形式にて哺乳動物のタンパク質を高効率に発現させるために、バキュロウイルス系システムを適用している。この方法を至適化することで、我々は96ウェルの昆虫細胞培養物から可溶性組換えタンパク質を得るのに常時80%以上の成功率を得ることができるようになっている。この成功率は、当該形式でこれまでに報告されていた42%の成功率よりも大幅に改善されたことを表す。
【0187】
タンパク質発現
バキュロウイルス系発現システムには、トランスポザーゼを含む大腸菌宿主におけるbacmidシャトルベクターの使用が含まれる。このため、使用したベクターはbacmidへ直接組み込むのに必要な配列と、さらにバキュロウイルスで駆動される過剰発現に必要とされる付加的なエレメント、抗生物質耐性マーカー、ポリヘドリンプロモーター、エピトープタグ(GST又は6Xhisの一方又は両方)、及びポリアデニル化シグナルを有する。これまでに報告されたクローニングプロセスにおけるとちょうど同じように、発現の待機行列に入ったcDNAのセット(複数)を作り、バーコードを付けた96ウェルプレートの単一の単位として処理した。選択したcDNA(及び対照)を、bacmid含有大腸菌株へ形質転換するために、ロボットによりリアレイ化した。形質転換の後、コロニーをロボットにより拾い、クローン化cDNAのbacmidへの正しい組込みを、PCR後のインハウスデータ解析システムによって自動的にチェックした。単離したbacmidDNAを昆虫細胞へトランスフェクトしたが、ここで連続的な昆虫細胞感染によって増殖して高力価に増幅されるコンピテントウイルス粒子が形成されると考えられる。増幅したウイルスのストックは何ヶ月にもわたって安定であり、複数回の別々の接種と、各々の増幅ラウンドからのタンパク質発現サイクルとを可能にするものである。増幅したウイルスストックの分割量を使用して、バーコードを付けた96深底ウェルプレートにて昆虫細胞培養物に感染させた。3日間生育させた後、発現タンパク質を含む昆虫細胞を採集して、精製用の調製液中で溶解させた。
【0188】
精製
本明細書に示すタンパク質の製造方法は、5000以上の異なるタンパク質が96ウェル方式にて1日で精製できるように、ハイスループットタンパク質精製プロセスを至適化及び自動化するものである。細胞溶解、親和性樹脂への結合、洗浄、及び溶出を含めたプロセスの全ての工程は、4℃で行った全自動化ロボット式プロセスに組込んだ。昆虫細胞は非変性条件下に溶解させて、溶解液はグルタチオン又はNi−NTA樹脂を含む96ウェルプレートに直接付した。洗浄後、未変性タンパク質を得るように設計した条件下に精製タンパク質を溶出させた。
【0189】
解析、解釈、及び評価
精製後、精製材料の試料を、激しく溶解及び変性させておいた細胞の分割量から得た粗製タンパク質試料と直接比較した。2つの試料セットをSDS−PAGEゲルで流して、ウエスタンブロットにより免疫検出した。ゲル像を電子的に捕獲して処理し、データベースにアップロードした各試料について検出した全てのタンパク質分子量の表を作製した。粗製及び精製タンパク質画分の双方に対するタンパク質サイジングデータを、正しい予測分子量の顕性バンドの有無について自動的に評点した。
【0190】
潜在的困難及び解決策
この方法を用い、一つの検証の実行で、発現に供された657クローンのうち632(96%)が粗溶解液ウェスタンQCにパスした。これら632のタンパク質のうち550(87%)が、精製後ウェスタンQCにパスした。この検証の実行により、バキュロウイルスのシステムを用いた組換えタンパク質の発現の高い成功率が明らかに示され、発現が観察されない希少な場合には、5’末端でなく3’に融合タグを用いてタンパク質を発現させることができる。これで発現又は精製に役立つかもしれないからである。総タンパク質の収量を高めるために採ることのできる追加の工程は、交代性の昆虫細胞を使用すること、感染の多重度を至適化すること、及びタンパク質収量に対する培養時間の効果を調べることである。
【0191】
C.多数のヒトタンパク質の位置的にアドレス指定可能なアレイの生成
実験設計、手順、及びプロトコル
数百ないし数千の精製された異なる機能性タンパク質をプリントしたマイクロアレイを日常的に作製した。これらのアレイは、タンパク質−タンパク質、タンパク質−脂質、タンパク質−DNA、及びタンパク質−小分子間の相互作用をマッピングすること、酵素基質の判定、転写後修飾の測定、及び生化学的アッセイの実施を含め、種々の用途に用いることができる。これらマイクロアレイの生産には、各タンパク質は少量だけしか必要でなく、数百のアレイをプリントするのに各タンパク質は1μgで充分である。各精製タンパク質の分割量を、マイクロアレイプリンティング用に至適化した緩衝液にて、マイクロアレイヤーに適合可能なバーコードを付けた384ウェルプレートにロボットによって分配した。陽性(例えば、蛍光性に標識付けされたタンパク質、ビオチン化タンパク質等)及び陰性(例えば、BSA)対照として用いたタンパク質のプレートと共に、これらのプレートの内容物は、48のクイル型ピンを備えたマイクロアレイヤーロボット(Telechem)を用いて1”×3”の顕微鏡スライドにスポットした。各タンパク質は、スポット同士の間隔を250μmとして二重にスポットした。試料のキャリーオーバーを防ぐため、各分配サイクル後にピンは念入りに洗浄して乾燥した。上限で10,000の異なるスポットを、各スライドに配置した。
【0192】
解析、解釈、及び評価
1回のプリンティング実行から作製したマイクロアレイの典型的なロットは、100枚のスライドが含まれていた。タンパク質の各々はエピトープ(例えば、GST又は6XHis)を用いてタグ付けされていたので、各プリンティングロットからの代表的なスライドは、このエピトープに対する標識付き抗体を用いて品質管理をした。何れのスライドも、エピトープタグを含む既知量のタンパク質の希釈系列でプリントした。標準曲線を求めて、各スポットに対するシグナル強度をタンパク質の沈着量に変換するソフトウェアを実行するコンピュータシステムであるProtoMine(商標)にQC画像をアップロードした。自動化装置を用いてスライド間及びロット間のスポット強度及び形態の可変性を求め、欠落しているスポットの数、及び対照スポットの存在を調べた。QC判定基準の定義セットにパスするスライドは、使用時まで−20℃で保存した。
【0193】
潜在的困難及び解決策
タンパク質マイクロアレイでの一つの潜在的な難題は、マイクロアレイ表面でのタンパク質の変性である。この問題を回避するために、我々は数千の異なるタンパク質をアレイ化するためのプリンティング条件及び緩衝液組成を至適化しており、また−20℃で保存した場合には少なくとも1年間の、これらのアレイの安定性と機能性を立証している。異なる表面上でタンパク質が異なる挙動をすることが時としてあるので、アレイをプリントする場合には、被覆膜(例えば、ニトロセルロース)、疎水性(例えば、ガンマ−アミノプロピルシラン)、及び共有(例えば、アルデヒド)成分を含め(これらに限定されることはない)、いくつかの異なるスライドのタイプを分析するべきである。時折起こる別の問題は、アレイの表面へのタンパク質の付着が不充分なことである。QCプロセスは、プリントし損なったタンパク質が同定されるように、我々にこの問題に対する警告を発するように設計されている。精製タンパク質のプリンティングに対する成功率は一般に95%以上ではあるが、必要ならプリントし損なったタンパク質はさらに濃縮して、いくつかのタンパク質がスライドに付着する可能性を高めることができる。
【0194】
「表13」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表13に、生産ロット5.2として、この実施例に示すタンパク質生産、単離、及びマイクロアレイ方法、およびGSTタグを用いて、少なくとも19.2nMの濃度で発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した5034のヒトタンパク質に対するアミノ酸配列、受託番号、ORF識別子、及びFASTA見出しを示す。意外にも、表15〜17に示すとおり、本発明者らは細胞質のタンパク質を含め発現された他のヒトタンパク質に使用したと同じハイスループット方法を用いて、膜貫通タンパク質及びGPCRを含めた膜タンパク質など、非変性状態では単離も困難である数多くの発現困難なタンパク質を、成功裡に発現させることができている本願明細書と共に提出した表15には、実施例1に示す方法を用い、生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、「膜タンパク質」として遺伝子オントロジー(GO)カテゴリー(ワールドワイドウェブのgeneontology.org,にて提供されており、参照して全体を援用する)に分類された429のタンパク質を示す。本願明細書と共に提出した表16には、実施例1に示す方法を用いて生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、「膜貫通タンパク質」としてGOカテゴリーに分類された88のタンパク質を示す。本願明細書と共に提出した表17には、実施例1に示す方法を用い、生産ロット5.2の一部として発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、42のGタンパク質結合型受容体のリストを示す。「表18」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表18に、生産ロット5.2にて発現されたタンパク質に対する名称、識別子、及びマイクロアレイスポット時の濃度(「〜」の後に、「名称」欄で示す数)、さらにマイクロアレイの位置情報を示す。
【0195】
表5及び7には、生産ロット4.1にて、実施例に示す方法に従って成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した1500以上のタンパク質の濃度情報(表7、最終カラム(nM))を含むリストを示す。表3には、生産ロット4.1にて、実施例1に示す方法に従って、本発明者らが少なくとも19.2nMの濃度で発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化したタンパク質のコーディング配列を含めたリストを示す。表6には、この実施例に示す方法を用いて発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、176のヒトキナーゼのリストを示す。表8には、この実施例に示す方法を用いて発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化したヒトキナーゼのリストを示す。表9及び11には、異なる生産ロット(それぞれ、4.1及び5.1)にて、この実施例に示す方法を用いて成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、タンパク質の配列を示す。表10には、生産ロット5.1にて、実施例1に示す方法を用いて成功裡に発現させ、単離し、そしてマイクロアレイ化した、タンパク質と、タンパク質に対する遺伝子オントロジー(GO)情報を列記している。「表1」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表1に、本発明の実施例1に開示のタンパク質生産及び単離方法を用いて本発明者らが発現及び単離しようとしたヒトタンパク質をコード化するコーディング配列を列記している。「表2」の名称を付けたファイルでコンパクトディスクにて本願明細書と共に提出した表1に、クローンから切除し発現ベクターにライゲートできるDNAによってコードされるタンパク質を含むヒトタンパク質をコードするコーディング配列の同定を含む。表4は、本発明のヒトタンパク質アレイを用いて同定したタンパク質相互作用の列記を与える。これら相互作用の同定は、ここで提供される方法を用いて発現させ、単離し、スポット化したタンパク質が、3次元構造を保持する非変性タンパク質であることを更に確立するものである。
【0196】
本発明のヒトタンパク質アレイが新規のタンパク質−タンパク質間相互作用を同定するのに使用できるのかを試験するために、我々は12のhis6−V5−bioEase−EK−ヒト融合体を発現させて精製した。これらのタンパク質の中には転写因子、プロテインキナーゼ、及び細胞周期調節因子があった。新規のタンパク質相互作用を明らかにするために、本実施例に提供した方法に基本的に従って、発現させ、単離し、そしてニトロセルローススライドにスポットした、およそ3300のヒトタンパク質を含むヒトタンパク質アレイに対してタンパク質をプローブ探索した。相互作用は検出用にAlexaFluor647(抗V5−AF647)に接合させた抗V5抗体を用いて明らかにした。これらの相互作用は、蛍光マイクロアレイスキャナで画像を得てマイクロアレイ解析ソフトウェアで表示することによって可視化した。試験したタンパク質全てにつき、アレイ上のタンパク質とのタンパク質相互作用が観察された。これらの相互作用は、陰性対照のスライドでは観察されない「有意なシグナル」と定義される。相互作用の数は6〜30の範囲に入っていた。
【0197】
観察された相互作用から、さらに検査をすべく19のタンパク質−タンパク質(表4)間相互作用の同定を行った。選択は、非常に強いシグナルを有していたか、又は文献に整合しているかの何れかの相互作用に基づくものとした。文献に整合している相互作用の例のいくつかとして挙げられるのは、1)チロシン3−モノオキシゲナーゼ/トリプトファン5−モノオキシゲナーゼ活性化タンパク質(YWHAB、IOH3955)と死亡関連プロテインキナーゼ2(DAPK2、NM014326)、2)カルシウム/カルモジュリン−依存性プロテインキナーゼI(CAMKl、IOH21059)とカルモジュリン様5(CALML5、BC039172)、及び3)CDC37相同体(CDC37、IOH6219)とサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2、NM_001798)の相互作用である。
【0198】
これらの相互作用が別の手段によって立証されうるか否かに対して取り組むために、his6−V5−bioEase−Ekhuman融合体をニトロセルロース被覆スライド上にスポットした。我々はその後、グルタチオン親和性クロマトグラフィーを用いて、対応するGST−融合体インタラクタを発現させて精製した。これらのGST−融合体は次いで、固定化されたhis6−V5−bioEase−EK−ヒト融合体を含むアレイをプローブ探索するのに用いた。固定化タンパク質はGSTタグを含んでいないので、我々は抗GST系検出戦略を採用した。
【0199】
観察が予測された18の相互作用のうち、13が実際に観察された。観察されなかった相互作用のいくつかは、プローブの濃度が極めて低い(0.03ng/μL)という事実に起因しているらしいと考えられた。全体として、抗V5−AlexaFluor647系検出を用いて検出した相互作用と、抗GST系検出を用いて相反性相互作用アッセイにて検出された相互作用との間の相関はおよそ80%であることが観察された(表5)。
【0200】
次に、発現タンパク質の量及びプリントされたスライドの数に関して生産規模にて、本実施例に従って製造された本発明のヒトタンパク質アレイの別のロット、並びに指定生産ロット4.1(ヒトProtoarray4.1(表9参照))が、タンパク質−タンパク質間相互作用を観察するのに成功裡に用いうることが確認された。そのために、HumanProtoarray4.1を4つのhis6−V5−bioEase−EK−ヒト融合体(CALM2、ATF2、CKNlB、及びCDC37)でプローブ探索した。プローブ全てに対して、予測される相互作用が観察された。CALM2がCAMKIV (NM.001744)と相互作用した。ATF2がBC029046/PAIP2と相互作用した。CDKNlBがBC005298/CDK7と相互作用した。CDC37がBC033035、NM_006658、およびNM_022720/DGCR8と相互作用した。
【0201】
タンパク質相互作用は、本発明のヒトタンパク質アレイを用いて観察した。プローブ(InvitrogenクローンID)、及びスライドに固定化したタンパク質(アレイタンパク質、MGC又はRefSeqと受入で注記)番号を列記する。
【0202】
【表4】

【0203】
タンパク質は、タンパク質相互作用実験用のニトロセルローススライド、及びキナーゼ基質プロファイリング実験用のFull Moonガラススライド(タンパク質スライドII、Full Moon Biosystems,Inc.より入手可能、サニーベール、カリフォルニア州)にスポットした。
【0204】
実施例2
タンパク質アレイ上でのキナーゼ基質アッセイ
本実施例は、本発明のタンパク質アレイを用いて実施したキナーゼ基質アッセイが、特異的基質リン酸化を同定することを例証するものである。本研究の一つの目的は、タンパク質アレイ上でキナーゼが特異的基質リン酸化を呈するのを立証することであった。
【0205】
材料及び方法
既知のキナーゼ基質の解析
pE/Y、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)及びクロスタイド(crosstide)をアルデヒド(Telekem)スライドに手でスポットして、γ33P−ATPを含む40nMのBIkでプローブ探索し、B)クロスタイド、ヒストン、bio−PKA、bio−PKCをSpotBot(Telekem)非接触アレイヤーでアルデヒドスライドにプリントして、γ33P−ATPを含む40nMのAkt3でプローブ探索した。BIk及びAkt3酵素は、UpstateSignalingSolutionsから購入した(BIk及びAkt3の製品資料には、それらの酵素が溶液アッセイにおいてpE/Y及びクロスタイドをそれぞれリン酸化すると述べられている)。
【0206】
ヒトタンパク質アレイの解析
1500のヒトタンパク質をアルデヒドスライドにスポットして、γ33P−ATP、γ33P−ATP及び40nM Akt3又は40nM BIk及びγ33P−ATPでプローブ探索した。γ33P−ATPのみのスライドでのシグナルは、主にスライドでの固定化キナーゼ自己リン酸化による。Akt3に対して基質は観察されなかったが、少なくとも4つの基質(赤色で囲み付記)がBIkに対して識別できた。
【0207】
結果
タンパク質マイクロアレイを用いて特異的基質リン酸化を試験するために、官能化ガラススライドにいくつかの一般的な基質をスポットした。これらのスライドは、次いでチロシンキナーゼ(BIk)及びセリン/スレオニンキナーゼ(Akt3)の2つのキナーゼでプローブ探索した。BIkは一般的な基質ポリE/Yをリン酸化し、Akt3は標準的な溶液アッセイでクロスタイドをリン酸化することが知られている。我々は、タンパク質アレイで、BIkがpE/Yを優先的にリン酸化し、Akt3はクロスタイドをリン酸化することを観察した。Akt3は、pE/Yをリン酸化しない。興味深かったのは、Akt3はクロスタイドよりも一般的な基質のヒストン、bio−PKA、及びbio−PKCの方を指向することであった。タンパク質マイクロアレイアッセイを用いてキナーゼの特異的基質リン酸化が立証されており、二次的ないくつかの潜在性基質を1つの実験でスクリーニングして同定することができるので、アッセイの用途は非常に明白である。最後に、シグナルの定量解析を、基質のランク付けに適用することができる。
【0208】
ガラススライドに固定化されたタンパク質に対して2つの市販の酵素が活性を有することを示すと仮定すると、GST融合体として昆虫細胞でクローニング、発現されて、グルタチオン親和性クロマトグラフィーにより精製され、そしてその後Omnigrid(Genemachines)非接触アレイヤーを用いてガラススライドに固定化されたホモサピエンスタンパク質が、外因的に加えたキナーゼに対する好適な基質アレイであるかどうかを試験することに決定した。40nMのAkt3及び40nMのBIkを、およそ1500のユニークなタンパク質を有するヒトタンパク質アレイに添加した。
【0209】
そのヒトタンパク質アレイに放射活性γ33P−ATPの溶液のみを添加すると、シグナルを有する数多くの固定化タンパク質が観察される。そのシグナルは、アレイでのキナーゼ自己リン酸化の結果であると考えられる。また、シグナルが単なるATP結合に起因する可能性も排除することはできない。キナーゼとして注記していないいくつかのタンパク質がATP反応性であると認められるのは興味深いことである。このデータは、タンパク質がアレイ上で実際に機能性を有することを強く結論付けるするものである。Akt3に対する基質リン酸化は全く観察されなかったが、BIkに対する基質は数多く観察された。従って、我々の、アレイでのタンパク質発現、精製及び固定化のプロセスによって、プロテインキナーゼ活性のハイスループット評価のための理想的な基質として作用する機能性タンパク質アレイが生産されることを我々は立証した。
【0210】
キナーゼでの基質アレイのプリンティング及びプローブ探索のための有効なプロトコルを開発して、我々はキナーゼの存在下にのみ観察されるシグナルは、2つの可能性、すなわち、基質のリン酸化又はキナーゼの自己リン酸化と、それに続く固定化された基質との相互作用に起因しうると判断した。固定化された基質のリン酸化を目的として濃縮するために、我々は、キナーゼでプローブ探索したアレイに対して変性を起こす洗浄を行うことによって、固定化タンパク質と相互作用する自己リン酸化キナーゼの発生が大幅に低減するであろうと判断した。Ultra GAPSへのタンパク質の固定化について、1M NaCl、1%TritonX−100、0.5%SDS、100mM HCL及び10mM NaOHを試験した。これらの処理のほとんどが、GST融合体の固定化に対する大きな効果を示さなかった。10mM NaOHが、タンパク質の固定化に有意に影響を及ぼす唯一の処理であった。特定の例示的な実施形態において、キナーゼアッセイに0.5%SDSでの洗浄を用いた。
【0211】
先ず、キナーゼ−基質アッセイに、TeleChemが販売しているアルデヒド被覆スライドを用いた。多くの製造供給元が、被覆された(すなわち、官能化した)ガラススライドを生産しており、我々はどの化学物質がノイズに対して最良のシグナルをもたらすかを判定するためにこれらの様々なスライドを評価した。従って、11種の異なるスライドを7社の異なる会社から購入した(表14)。次いで我々は、これらの化学物質に1000を超えるヒトタンパク質をプリントして、そのスライドをγ33P−ATPと共にキナーゼを用いてプローブ探索し、シグナル及びノイズ値に基づきそのスライドを定量的にランク付けした。多くのスライドが同様に作動し、シグナル及び/又はノイズにわずかしか差がないことが観察された。ほとんどの有効なスライドに2点のスコアを付けた。至適レベルがさらに低い化学物質には1点のスコアを付けたが、これは主にこれらのスライドが高いノイズを呈したためである。極めて高いノイズを呈した1枚のスライドは、Perkin Elmerが販売するMicromax Super Chip 1である。Corning製のUltra GAPSスライドは、タンパク質がノイズ比に対して良好なシグナルを呈したこと、そしてこのスライドが他のアッセイの型にも好適であることから、1つの特に有効なスライドであった。
【0212】
表1に要約し前記したとおり解析を実施した後、改良Full Moonガラススライド(タンパク質スライドII、Full Moon Biosystemsより入手可能、カタログ番号25、25B、50、又は50B)を得た。改良Full Moon官能化ガラススライドは、接触プリントされたタンパク質でのキナーゼアッセイにおける使用に特に有効であることが認められた。
【0213】
【表14】

【0214】
実施例3
基質プロファイルサービス
キナーゼ基質プロファイルサービス
本発明のキナーゼ供給方法は、図1に示すように行った。この第一工程は、キナーゼ基質を発見するための至適条件を決定することであった。これは、33P−ATPの存在下、3種の異なる濃度のキナーゼを酵母ProtoArray KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイとインキュベートすることによって成し遂げられる。アッセイに対する信頼性保証をもたらすべく、プロテインキナーゼPKAを利用する陽性対照、及び33P−ATP単独からなる陰性対照も平行して実行した。このデータ用いて、データ処理に必要な基準スポットの存在を維持しつつノイズレベルに対して最良のシグナルをもたらすキナーゼの濃度を定量した。
【0215】
材料及び方法
酵母タンパク質の発現
酵母プロテオームのコレクションは、Zhuら(2001)の報告のとおりにSnyderの研究室により作製された5800の酵母ORFの酵母クローンコレクションに由来するものであった。各クローンの一致度は、5’端配列決定を用いてProtometrixで検証した。さらに、各クローンによるGSTタグ付きタンパク質の発現を、ウエスタンブロッティング及び抗GST抗体での検出を用いて試験した。双方のQC基準をパスした4088のクローンは、長期保存用の96ウェル筐体へとリアレイ化した。各筐体内のウェルの1つも、陰性/混入対照として空のままにしておいた。凍結した酵母96ウェルストックをSC/URA生育プレートに穿刺して、30℃で2〜3日間インキュベートした。酵母細胞は、1mLのSC/URA/ラフィノースを含む96ウェル筐体に移し(1筐体あたり6の複製物)、4%ガラクトースで16時間誘導し、細胞をペレット化し、ガラス/ジルコニアビーズを添加して−80℃で凍結した。
【0216】
タンパク質精製
筐体を4℃で解凍し、Harbilペイントシェーカを用いてプロテアーゼインヒビターを含む50μLの溶解用緩衝液中で4回溶解させた(振盪時間:1分)。溶解液に、プロテアーゼインヒビターを含む600μLの緩衝液を添加し、ペイントシェーカを用いて溶解させて溶解液は遠心分離により明澄化した。75μLのグルタチオン−セファロース4B(AmershamPharmacia)を添加し、振盪しながら6℃で1時間インキュベートして、スラリーを96ウェルのPVDFフィルタープレート(Whatman)に移し、200μLのHEPES洗浄用緩衝液で3回洗浄した。タンパク質は75μLの溶出用緩衝液で溶出させて、384ウェルプレートに統合した。
【0217】
酵母ProtoArray(商標)KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイタンパク質の製造
前記のとおりにタンパク質を精製して、384ウェルのプレートに分配した。アレイ上のスポットの整合性を保証するために、対照タンパク質の4枚の384ウェルプレートを溶出用緩衝液にて調製した。プレートにバーコードを付け、封をして使用時まで−80℃で保存した。
【0218】
アレイ基板
アレイ基板は、タンパク質結合を促進する化学物質で誘導化された1”×3”のガラス顕微鏡スライドであった(Full Moon Biosystems、サニーベール、カリフォルニア州)。
【0219】
アレイ設計
アレイは、12288のスポットに対応するように設計されている。試料を48のサブアレイにプリントして(各4000μm2)、垂直と平行の両方向で等間隔になるようにした。酵母ProtoArray(商標)KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイについては、スポット同士の間隔を275μmとしてスポットをプリントした。サブアレイの迅速な同定を可能とするために、隣接するサブアレイ間には余分に500μmの間隙が有るようにする。
【0220】
アレイヤー
生産品アレイヤーは、48クイル型ピン(Telechem International、サニーベール、カリフォルニア州)を備えたGeneMachines OmniGrid 100(Genomic Solutions)であった。
【0221】
キナーゼ基質プロファイル
位置的にアドレス指定可能なアレイスライドを、プラスチックトレイにて穏やかに振盪しながら30mLのPBS/1%BSA中で4℃にて2〜3時間ブロッキングした。ブロッキング後に、アレイをブロッキング溶液から取り出し、キムワイプの上で穏やかにタッピングしてスライド表面から余分な液体を除いた。アレイを50mLの円錐管に入れて、その後33P−ATPを含有するキナーゼ緩衝液中0.1、1、若しくは10nMのキナーゼ溶液、又は33P−ATP単独のキナーゼ緩衝液(陰性対照)120μLを添加した。アレイをHybrislipで被覆し、円錐管に栓をして30℃のインキュベーターに1時間入れた。次いでチューブをインキュベーターから取り出し、0.5%SDSを含む水40mLをそのチューブに加えた。Hybrislipをチューブからピンセットを用いて取り出し、廃棄した。その後チューブに再び栓をし、数回穏やかに転倒混和した。室温で15分インキュベートした後、洗浄用緩衝液を廃棄し、0.5%SDSを含む水40mLをまたチューブに加えて15分インキュベートした。このインキュベーションの後、洗浄用緩衝液を廃棄し、40mLの水をチューブに加えて、室温にて15分インキュベートした。この洗浄用緩衝液を廃棄した後、アレイをスライドホルダに入れて、ミクロプレートロータを備えた卓上微量遠心機で2000RPMにて1分間回転させた。次いでアレイをX線フィルムカセットに入れて、透明プラスチックラップで覆い、その後ホスホイメージングスクリーンで覆った。ホスホロイメージングスクリーンへのアレイの露光は、ホスホルイメージャでの走査の前に18時間行った。
【0222】
データ解析
走査より作成したTIFFファイルは、AdobePhotoshopを用いて以下の通りに処理した。
1.各アレイに対応する1”×3”の固定方形領域を、各ファイルからクロップした。
2.データを反転した。
3.画像を2550x7650画素(制限比率)に変更した。
4.クロップ画像を新しいファイルに保存した。
【0223】
アレイ上の各スポットに対する画素強度を、GenePix6.0ソフトウェアを用いて得、そしてそのアレイのリストファイルにアレイの各ロットを供給した。アレイ全体に対する平均ノイズを、ノイズ減算のために使用した。局所ノイズの減算は適用しなかった。
【0224】
結果
最適化アッセイ
本研究の前段階相で、3種の異なる濃度の顧客のキナーゼを、33P−ATPの存在下に酵母ProtoArray(商標)KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイと共にインキュベートした。2つのタイプの対照アッセイも平行して実施した。陰性対照アッセイでは、酵母ProtoArray(商標)KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイを33P−ATP単独とインキュベートした。図2Aは、自己リン酸化する対照プロテインキナーゼ起源の各サブアレイ内の基準スポットの規則的なパターンを示す。酵母プロテオームコレクションの一部である、自己リン酸化する酵母キナーゼに由来するスポットの他の対も観察される。陽性対照アッセイでは、酵母ProtoArray(商標)KSPプロテオームの位置的にアドレス指定可能なアレイをプロテインキナーゼPKAとインキュベートした(図2B)。本実験からの画像は、図2Aに認められると同じ基準スポットのパターンを示す。しかしながら、かなりの数のさらなるタンパク質が、添加したPKAによるリン酸化の結果生じるシグナルを示す。特に注目すべきは挿入部に示す対照タンパク質であり、PKAによるこのタンパク質のリン酸化は、アッセイが適切に機能したことを示唆している。
【0225】
顧客のキナーゼを、0.1、1.0、及び10nMの濃度でアッセイした。作業濃度は、画像を生じさせる濃度を同定することによって選択したが、この場合、自己リン酸化からの陰性対照実験でも観察されなかった被試験キナーゼに対して特異的なスポットが観察できた。高すぎる濃度では、データの解釈を困難にするような高いノイズが生じた。
【0226】
1.0nMの濃度のキナーゼから得た画像がデータ解析に好適であることが見出された。全てのサブアレイ上の全スポットは、GenePix6.0ソフトウェア(データ示さず)を用いて位置付けすることができ、スポットからのシグナル強度の抽出が可能になった。被試験キナーゼに対して同定された特異的基質の例は、図3に示すサブアレイに明らかである。
【0227】
これらの強度のデータファイルは、陰性及び陽性対照アッセイに対する同様のファイルと共に、Invitrogenの顧客保護FTPサイトでのダウンロード用に使用可能である。これらのファイルのデータを解析するために、ProtoArray(商標)Prospector(Invitrogen.comのワールドワイドウェブで入手可能)を用いた。各スポットに対するシグナルは、アレイの陰性対照スポットの全てに対する画素強度中央値でスポット特徴画素強度中央値を割ることによって算出した。基質は以下のシグナルを有するアレイ上のタンパク質として定義される。(1)陰性対照(ATPのみ)アッセイにおける相当タンパク質よりも少なくとも2倍強い、及び(2)アレイ上の陰性対照スポット全てに対するシグナル/ノイズ中央値を超え3×標準偏差よりも強い。これらの定義を用いて、ProtoArray(商標)Prospectorで、顧客のキナーゼに対する基質であるタンパク質を同定した。これらのタンパク質の多くは、PKAによりリン酸化されているとの観察はなされず、これら基質が顧客のキナーゼに特異的であることを示唆していた。最も強いシグナルを示すアレイ上の200のタンパク質のグラフ解析を図4に示す。
【0228】
考察
本明細書に示すキナーゼ基質プロファイリングサービスにより、被試験キナーゼに対するかなりの数の基質が同定された。次の工程として考えられるのは、同じキナーゼと異なるキナーゼを用いたアッセイを繰り返して、同定された基質の特異性を確認することである。キナーゼ基質プロファイリングサービスにより、2000を上回るヒトタンパク質のアレイでのアッセイも提供される。さらに、キナーゼに対するインヒビターは、酵母又はヒトProtoArray(商標)のいずれかで分析することができる。最後に、基質プロファイリング法にて基質と同定された精製タンパク質は、キナーゼアッセイの開発用に顧客に販売できる。
【0229】
【表5】





































【0230】
【表6】




【0231】
【表7】



























【0232】
【表8】




【0233】
【表15】




















【0234】
【表16】





【0235】
【表17】



【0236】
引用文献
本発明の技術思想及び技術的範囲から離脱しない限りにおいて、種々の変更及び変形が可能であることは、当分野の当業者に明らかであろう。記述した具体的な態様は、例示のためにのみ提示したものであり、本発明は、請求の範囲の用語のみによって限定されず、そのような請求項に認められる均等物の全範囲に沿ったものとなる。このような変更は、請求項の範囲内において行われる。
【0237】
引用されたすべての特許文献及び非特許文献は、各文献又は特許もしくは特許公報が具体的且つ個別に全体として参照して援用されたと同程度に参照して全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】キナーゼ基質プロファイリングサービスのワークフローを示す。
【図2】A.陰性対照(自己リン酸化)、Yeast ProtoArray(商標)KSPプロテオーム位置的にアドレス指定可能なアレイを用いた実験、B.陽性対照(PKA)、Yeast ProtoArray(商標)KSPプロテオーム位置的にアドレス指定可能なアレイを用いた実験を示す。
【図3】試験キナーゼによる特異な基質のリン酸化。33P−ATPのみ(左)、33P−ATP及びPKA(中央)、33P−ATP及び試験キナーゼ(右)とともにインキュベートしたYeast ProtoArray KSPプロテオーム位置的にアドレス指定可能なアレイからの選択サブアレイを示す。
【図4】試験キナーゼによりリン酸化された上位200タンパク質。ダークグレイ線は、ノイズを越える3標準偏差を示す。ライトグレイ線は、ノイズを越える5標準偏差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来し、基板上に固定化された100のヒトタンパク質を含む、位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項2】
表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する500のヒトタンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項3】
表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する1000のヒトタンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項4】
表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する2500のヒトタンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項5】
表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する5000のヒトタンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項6】
表15の100の膜タンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項7】
表15の250の膜タンパク質を含む請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項8】
表16の50の膜貫通タンパク質を含む請求項7記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項9】
表16のすべての膜貫通タンパク質を含む請求項7記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項10】
表17の25以上のGタンパク質結合受容体(GPCR)を含む請求項7記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項11】
表17のすべてのGタンパク質結合受容体(GPCR)を含む請求項10記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項12】
タンパク質が、前記アレイ上に500タンパク質/cm〜10000タンパク質/cmの密度で存在する、請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項13】
前記タンパク質は非変性タンパク質である、請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項14】
前記タンパク質は全長タンパク質である、請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項15】
前記タンパク質は、タグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である、請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項16】
前記基板は官能化ガラススライドである、請求項1記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項17】
前記官能化ガラススライドはアクリレート基を含むポリマーを含み、このポリマーはガラス表面を重層する、請求項16記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項18】
前記基板は、Full Moon Biosystems社から入手できる官能化ガラスタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である、請求項17記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項19】
結合タンパク質を検出する方法であって、
(a)表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質に由来する1000以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイにプローブを接触させる段階と、
(b)前記プローブと前記アレイのタンパク質とのタンパク質間相互作用を検出する段階とを含む方法。
【請求項20】
前記タンパク質は、真核生物細胞において生成され、非変性条件の下で分離される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質は全長タンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質は、GST又は6×Hisタグを含む非変性全長組換え融合タンパク質である、請求項19記載の方法。
【請求項23】
酵素の基質を同定する方法であって、
官能化ガラススライド上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記酵素を接触させる段階と、
前記酵素により修飾された前記位置的にアドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定する段階とを含み、
前記酵素による前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記酵素の基質であることの指標となる、方法。
【請求項24】
前記官能化ガラススライドは、ガラス表面を重層するポリマーを含む3次元多孔性表面を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記3次元多孔性表面は、ガラス表面を重層するアクリレートを含むポリマーを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記官能化ガラス基板は、多官能性タンパク質特異的結合部位を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記基板は、Full Moon Biosystems社から入手できるタンパク質マイクロアレイ基板「Protein slides II」である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記酵素活性は、酵素活性を転移する化学基である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
前記酵素活性は、キナーゼ活性、プロテアーゼ活性、ホスファターゼ活性、グリコシダーゼ又はアセチラーゼ活性である、請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記酵素活性はキナーゼ活性である、請求項23記載の方法。
【請求項31】
小分子が存在する又は存在しない前記官能化ガラス基板に前記プローブを接触させる段階と、前記小分子が前記酵素による前記基質の酵素修飾に影響を与えるか否かを決定する段階とを更に含む請求項23記載の方法。
【請求項32】
前記酵素による前記タンパク質の修飾は、
(a)前記アレイ上の、陰性対照アッセイでの前記タンパク質を用いて得られるシグナルの2倍以上である前記タンパク質から生成されるシグナルの検出;又は、
(b)前記アレイ上のすべての陰性対照スポットのメジアンシグナル値より3標準偏差以上大きい前記タンパク質から生成されるシグナルの検出により同定される請求項23記載の方法。
【請求項33】
前記基板は位置的にアドレス指定可能なアレイを含み、このアレイは、
(i)表9、表11、及び表13に列挙されたタンパク質の1000以上のヒトタンパク質;
(ii)ヒトゲノムから発現される10000以上のタンパク質;又は、
(iii)表2に列挙された配列でコードされるタンパク質の2500以上のヒトタンパク質を含む、請求項23記載の方法。
【請求項34】
前記アレイ上の前記タンパク質は非変性条件下で生成される、請求項23記載の方法。
【請求項35】
前記アレイ上の前記タンパク質は、タグを含む非変性組換え融合タンパク質のように、真核生物細胞で生成される全長ヒトタンパク質である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記アレイ上の前記タンパク質は、表16の50以上の膜貫通タンパク質を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
収益を得る方法であって、a)請求項23記載の方法を行うことによって、1以上の酵素基質を同定するためのサービスを顧客に提供する段階を含む方法。
【請求項38】
顧客の第1キナーゼ基質を同定する方法であって、(a)以下の(i)〜(iii)を含む、前記顧客にキナーゼ基質を同定するためのサービスへの接近手段を提供する段階と、(b)前記顧客に前記基質の同定を提供する段階とを含む方法:
(i)第1キナーゼの特定を顧客から受領すること;
(ii)官能化ガラス基板上に固定化された100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイに前記第1キナーゼを反応条件下で接触させること;および
(iii)前記第1キナーゼにより修飾された前記アドレス指定可能なアレイ上のタンパク質を同定することであって、前記第1キナーゼによる前記タンパク質の修飾は、前記タンパク質が前記第1キナーゼの基質であることの指標となる。
【請求項39】
第2キナーゼについて前記サービスを繰り返す段階を更に含む請求項38記載の方法。
【請求項40】
100以上の固定化タンパク質は、第1哺乳類種に由来する請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記サービスは、官能化ガラス基板上に固定化され、第2哺乳類種由来の100以上のタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイを用いて繰り返される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記基質を単離された形で前記顧客に提供する段階を更に含む請求項38記載の方法。
【請求項43】
前記基質を発現する細胞集団の任意の細胞を購入するための購入機能への接近手段を前記顧客に提供する段階を更に含む請求項38記載の方法。
【請求項44】
タンパク質アレイを作製する方法であって、
オープンリーディングフレーム集団の各オープンリーディングフレームをバキュロウイルスベクターにクローニングし組換えバキュロウイルスベクターを生成する段階であって、前記ベクターが融合タンパク質の発現を指示するプロモーターを含み、前記融合タンパク質がタグに連結されたオープンリーディングフレームを含む段階と、
昆虫細胞を用いて、オープンリーディングフレーム集団の各々について生成した前記融合タンパク質を発現する段階と、
前記タグによる親和性クロマトグラフィを用いて前記融合タンパク質を単離する段階と、
基板上に単離された前記タンパク質をスポットする段階とを含む方法。
【請求項45】
前記細胞はsf9細胞である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記タンパク質アレイは、1000の全長哺乳類タンパク質を含む、請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記タンパク質はヒトタンパク質である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記タンパク質は、表15の250以上の膜タンパク質を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記タンパク質は、表16の50以上の膜貫通タンパク質を含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記タンパク質は、表17の25以上のGタンパク質結合受容体タンパク質を含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記タグはGSTタグである、請求項44記載の方法。
【請求項52】
前記タンパク質は、ハイスループット方式で、非変性条件の下、発現され、単離され、スポットされる、請求項48記載の方法。
【請求項53】
(i)アクセス番号が表1、表3、表5、表6、表9、表11、又は表13に列挙された配列によってコードされ、基板上に固定化されたタンパク質に由来する100以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項54】
表10に列挙されたグループのタンパク質の50%以上を含む位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項55】
発現が困難且つ/又は非変性状態での単離が困難である50以上のヒトタンパク質を含む位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項56】
50のヒト膜貫通タンパク質を含む請求項55記載の位置的にアドレス指定可能なアレイ。
【請求項57】
前記膜貫通タンパク質は、表16に列挙された50の膜貫通タンパク質を含む、請求項55記載のアレイ。
【請求項58】
前記膜貫通タンパク質は、表17に列挙された25のGタンパク質結合受容体を含む、請求項55記載のアレイ。
【請求項59】
前記アレイは100のヒト膜貫通タンパク質を含む、請求項55記載のアレイ。
【請求項60】
前記膜貫通タンパク質は非変性膜貫通タンパク質である、請求項55記載のアレイ。
【請求項61】
1以上の膜貫通タンパク質は翻訳後修飾を含む、請求項55記載のアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−515783(P2008−515783A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532467(P2007−532467)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/032981
【国際公開番号】WO2006/033972
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(507082529)プロトメトリックス インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】