説明

タンパク質リフォールディング条件設定キット

【課題】BEA構造のゼオライトによるリフォールディング法を適用する場合に用いるタンパク質リフォールディング条件設定キットを提供する。
【解決手段】BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤と、変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる溶液成分と、リフォールディング制御因子としてのタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、塩類、タンパク質変性剤、又は金属イオンの1種以上を含む組み合わせと、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管もしくは試験プレートと、を構成要素として含み、同時並行的に、複数の条件による試験を行うことを可能とするタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【効果】上記リフォールディング条件設定キットを用いることは、High−throughputのタンパク質リフォールディング スクリーニング手法及びシステムを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性タンパク質の機能賦活操作・工程に使用される試薬・物質・材料等の使用条件を簡便かつ迅速に設定するための、ゼオライトを用いたタンパク質リフォールディング スクリーニング メソド(High−throughput protein refolding screening method using zeolite)によるタンパク質リフォールディング スクリーニング システム、すなわち、「タンパク質リフォールディング条件設定キット」に関するものであり、更に詳しくは、高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質をリフォールディングさせ、該タンパク質固有の本来機能を賦活・再生させる操作・工程において用いられる試薬・物質・材料等の使用条件について、最適ないし好適なリフォールディング条件を簡便かつ迅速に設定することを可能にするタンパク質リフォールディング スクリーニング システムとしての「タンパク質リフォールディング条件設定キット」に関するものである。尚、本明細書では、ゼオライトを用いたハイスループットのタンパク質リフォールディング スクリーニング メソド及びシステムを、タンパク質リフォールディング条件設定キットと表記することとする。
【0002】
本発明は、例えば、生化学品、医薬品製造の技術分野において、大腸菌等の遺伝子発現系を利用して生産した高次構造未形成タンパク質を、リフォールディングさせ、該タンパク質の本来の機能・活性を賦活させるための最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することが可能な新しい高効率のタンパク質リフォールディング スクリーニング システムであるタンパク質リフォールディング条件設定キット、及びそれにより設定された条件を利用した新しい機能賦活方法に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
生体内で実際的に作用し、働くのは遺伝子ではなく、それらから作られるタンパク質である。したがって、タンパク質の機能・構造の解明・解析は、例えば、病気の治療や創薬に直結し、極めて重要である。このため、種々のタンパク質を様々な方法で合成・生産し、それらの構造を調べ、生体内における作用機構と役割を解明することが活発に行われている。そして、今や、タンパク質の機能は、それらを構成するアミノ酸の配列・鎖長のみならず、それらの取る秩序だった立体構造(高次構造)によって決まることは周知のこととなっている。
【0004】
タンパク質の合成は、一般には、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の発現系を用いて行われる。昆虫細胞や哺乳動物細胞による合成では、得られるタンパク質は、高次構造が制御され、秩序だった立体構造を取り、可溶性である場合が多い。しかし、これらの方法は、分離精製の操作が非常に煩雑であり、目的のタンパク質を得るまでに時間がかかり、コスト高となるばかりか、得られるタンパク質の量も極めて少ないという欠点がある。
【0005】
これに対して、大腸菌によるタンパク質合成は、操作が簡単で、目的タンパク質を得るのにさして時間を要せず、コストもさほどかからない。このため、現在は、目的タンパク質の合成を担う遺伝子コードを組み込ませた大腸菌を用いる方法が、タンパク質合成の主流となっており、生産プロセスも確立されつつある。
【0006】
ところが、ヒト等の高等生物のタンパク質を大腸菌発現系で合成した場合、アミノ酸の結合順序や数、すなわちアミノ酸鎖長に関しては、設計どおりのタンパク質が得られるものの、その立体構造には秩序がなく、高次構造が制御されていないタンパク質、すなわちアミノ酸鎖が縺れ絡まった、いわゆるインクルージョンボディと呼ばれる不溶性タンパク質が得られる。
【0007】
この不溶性タンパク質のインクルージョンボディは、当然のことながら、欲する機能・性能を持たず、活性を示さない。このため、大腸菌による生産プロセスでは、インクルージョンボディを解きほぐし、高次構造を整え、秩序だった立体構造を持つ可溶性タンパク質に変換する操作、すなわちインクルージョンボディのリフォールディング(巻き戻し)が必要である。
【0008】
この種のリフォールディングは、大腸菌による生産タンパク質のみならず、熱履歴等、ある種の原因で失活したタンパク質の再生にも応用でき、極めて重要な技術である。したがって、従来から、このリフォールディングについては、盛んに研究され、種々の方法が提案されている。
【0009】
しかし、それらのほとんどは、バッチによる方法であり、リフォールディング率が低いうえに、ある限定されたタンパク質、特に、分子量の低い特定タンパク質に対して、偶発的に好ましい結果が得られたに過ぎないことが多く、現在、このリフォールディングは、種々のタンパク質に適用可能な一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的で経済的な方法とはなっていない。
【0010】
このような状況下で、本発明者らは、ゼオライト等の無機酸化物によるバイオポリマーの選択吸着現象を研究し(非特許文献1参照)、この過程で、ゼオライトベータへの吸脱着で不活性タンパク質が活性化することを見出し、ゼオライトベータを用いた不活性タンパク質の機能賦活方法(特許文献1−4、及び非特許文献2参照)を開発するに至った。
【0011】
しかしながら、特許文献1−4、及び非特許文献2に記載の方法は、変性剤により変性状態となって可溶化しているタンパク質を、変性剤中で、BEA構造のゼオライトに吸着させた後、変性剤を除去し、洗浄を行った後、BEA構造のゼオライトに変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる、リフォールディングバッファーと呼ばれる溶液成分に、多様性が存在し、個別のタンパク質毎に、最適ないし好適条件、すなわち溶液成分の最適ないし好適値が異なるという問題点を有していた。
【0012】
また、リフォールディングバッファーにおける有効成分には、純水成分の他、pH調整剤を必須構成成分とし、更に、リフォールディング制御因子としての、タンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、多価アルコール、糖アルコール、キレート剤、アルギニン、NaCl等の、塩類、タンパク質変性剤、金属イオン等があることが分かっている。しかし、これらの各成分の濃度の違いを含めた、最適ないし好適条件の検討には、極めて多くの手間や時間がかかり、その結果、実際上、検討可能な範囲が大きく限定されるという問題があった。
【0013】
更には、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤についても、そのケイ素とアルミニウムの比を変化させたり、NHもしくはNaフォームにしたゼオライトであるか否かにより、リフォールディングの効率が変化することが明らかとなっており、その最適ないし好適条件の検討にも、極めて手間や時間がかかり、その結果、実際上、検討可能な範囲が大幅に限定されるという問題があった。
【0014】
このように、BEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法は、有効な手法であり、多種多様なタンパク質のリフォールディング法として適用できる反面、その最適ないし好適条件の検討には、極めて多くの手間や時間がかかることが大きな問題となっていた。
【0015】
そこで、当技術分野においては、鎖長の長短を問わず、種々の高次構造未形成並びに変性・失活タンパク質に適用可能な、一般性、普遍性の高い、しかも低コストで、高効率、かつスケールアップ容易で、高性能なBEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法における最適ないし好適条件を、簡便かつ迅速に設定することができるタンパク質リフォールディング スクリーニング システム、すなわちタンパク質リフォールディング条件設定方法ないしキットを開発することが急務の課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−29531号公報
【特許文献2】特開2005−192452号公報
【特許文献3】特開2005−220121号公報
【特許文献4】特開2005−281267号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Chem.Eur.J.,Vol.7(2001)1555−1560
【非特許文献2】Anal.Biochem.,Vol.348(2006)307−314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整えて、活性なタンパク質とする、BEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法において、そのリフォールディング法の最適ないし好適条件、特に、リフォールディングバッファーの最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定できる、タンパク質リフォールディング スクリーニング システムとしてのタンパク質リフォールディング条件設定キットを構築することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0019】
本発明は、BEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法の最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することができるタンパク質リフォールディング条件設定キットを提供することを目的とするものである。また、本発明は、鎖長の長短を問わず、種々の高次構造未形成並びに変性・失活タンパク質に適用可能な、一般性、普遍性の高い、しかも低コストで、高効率、かつスケールアップ容易で、高性能なBEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法に適用できる、ハイスループットのタンパク質リフォールディング スクリーニング システムとしてのタンパク質リフォールディング条件設定技術に関する新技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整えて活性型にするタンパク質のリフォールディング操作・工程を実施する際に、好適なリフォールディング条件を簡便かつ迅速に導き出すことができるタンパク質リフォールディング条件設定キットであって、
タンパク質変性剤により変性状態となって可溶化しているタンパク質を、変性剤中で吸着する担体として機能するBEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤を必須構成成分とし、
該BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤に、変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる溶液成分である、純水成分又はpH調整剤を必須構成成分とし、更に、リフォールディング制御因子としてのタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、塩類、タンパク質変性剤、又は金属イオンの1種以上を含む組み合わせから構成され、
更に、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、を構成要素として含み、同時並行的に、複数の条件による試験を行うキット製品であることを特徴とするタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(2)BEA構造ゼオライトの骨格構造が、酸素と、それ以外の1種又は2種以上の元素からなる、あるいは、ケイ素と酸素又はケイ素とアルミニウムと酸素のみからなる、前記(1)に記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(3)BEA構造ゼオライトが、NHもしくはNaフォームにしたゼオライトである、前記(1)又は(2)に記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(4)BEA構造ゼオライトが、粉末状態もしくは粒子状に造粒されている、前記(1)から(3)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット
(5)BEA構造ゼオライトが、粉末状態もしくは粒子状で、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートに固定化されている、前記(1)から(4)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(6)BEA構造ゼオライトを造粒するための糊料、あるいは、一体型試験管、もしくは試験プレートに固定化するための糊料が、タンパク質に悪影響を与えない材料である、前記(1)から(5)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(7)タンパク質変性剤が、塩酸グアニジン、又は尿素である、前記(1)から(6)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(8)pH調整剤が、トリスアミノメタン三塩酸塩(Tris−HCl)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、又はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−ジンエタンスルホン酸(HEPES)である、前記(1)から(7)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(9)タンパク質S−S架橋形成制御剤が、シスチン、システイン、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、又はチオフェノールである、前記(1)から(8)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(10)リフォールディング制御因子が、ポリエチレングリコール(PEG20K、PEG3350、PEG800、PEG200)、Ficol170、Ficol1400、アルギニン、EDTA、NaCl、ポリ燐酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロース、グルコース、グリセロール、イノシトール、シクロデキストリン、アミロース、Dextran T−500、Tween20、Tween40、Tween60、NP−40、SB3−14、SB12、CTAB、又はTriton X−100のうちの1種以上により構成される、前記(1)から(9)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(11)分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートが、96穴マイクロプレート、又はそれ以上の穴数を有するマイクロプレートであり、各試験管、もしくはプレート上の穴に対して、おのおの異なる構成の溶液が注入されていることにより、同時並行的に複数の条件による試験を行うことができる、前記(1)から(10)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(12)上記キットが、一連の操作を、自動ないし半自動で行う自動タンパク質リフォールディング条件設定装置である、前記(1)から(11)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
(13)溶液成分の基本構成成分、ゼオライトが分注もしくは固定されたマイクロプレート、及び操作法を記載した取り扱い説明書を一組のパッケージとして組み合わせた、前記(1)から(12)のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【0021】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明者らは、先に、BEA構造のゼオライトの吸着性能を利用した汎用性のあるタンパク質リフォールディング手法を開発した(特許文献1−4及び非特許文献2)。本手法には、該手法に関する特許文献及び非特許文献に開示されているように、処理時間が短く、かつ処理方法がタンパク質の違いに依存しないという利点がある。本手法では、アミノ酸鎖を一旦引き延ばしてゼオライトに吸着させ、その後、剥離剤を用いることで、リフォールディングを起こさせる。剥離剤に用いるバッファー組成の調整をするのみで、多様なタンパク質に対応させることが可能であり、このことは、上記特許文献及び非特許文献の開示から自明であるといえる。したがって、本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいても、タンパク質の違いに依存しないという利点があり、タンパク質の種類に制限されることなく、多様なタンパク質に対応させることが可能である。
【0022】
本手法では、例えば、まず、大腸菌に目的タンパク質を強制発現させると、「発現」(発現ステップ)したタンパク質の大部分が、不溶性の不活性型タンパク質として蓄積される。細胞を破壊した後、遠心分離を行うことにより、不溶性のタンパク質が高純度で「回収」(回収ステップ)される。次に、回収したインクルージョンボディを、タンパク質の変性剤である塩酸グアニジン等を含むバッファーで「可溶化」(可溶化ステップ)し、可溶化したタンパク質を含むタンパク質溶液とBEA構造のゼオライトを混合し、タンパク質をBEA構造のゼオライトに「吸着」(吸着ステップ)させる。
【0023】
ゼオライトは、固体であることから、タンパク質を吸着したゼオライトを、少量のバッファーで「洗浄」(洗浄ステップ)するだけで、簡単に塩酸グアニジン等を除去することができ、最終的に、溶出用の添加剤を含むバッファーと混合する。タンパク質が「溶出」(溶出ステップ)される際に、リフォールディングが起こり、活性のあるタンパク質を得ることができる。図3に、不活性タンパク質のゼオライトによるリフォールディング手順を示す。
【0024】
この手法に、汎用性を付与するためには、多様なタンパク質に対する適用性の確保が重要である。そこで、本発明では、簡便かつ迅速なリフォールディング条件の設定が行えるスクリーニング手法及びシステムを構築することに成功した。具体的には、溶出用の添加剤を含むバッファーの性状が重要であり、基本成分である、ポリエチレングリコールの濃度やpHの設定条件等を簡便かつ迅速に設定できるスクリーニング手法及びシステムを確立した。また、ゼオライト担体をカラム化し、連続処理できるようなスクリーニング手法及びシステムを構築した。本発明は、このようなスクリーニング手法及びシステムにより、タンパク質の機能解明の研究のインフラ技術としての展開、及びタンパク質の大量生産システムの構築を可能とするものである(図4)。
【0025】
本発明の不活性タンパク質の機能賦活の最適ないし好適条件を探索するタンパク質リフォールディング条件設定キットの対象となるタンパク質は、BEA構造のゼオライトによるタンパク質のリフォールディング手法自体が、タンパク質の違いに依存しないという利点があることから、高次構造が整っていない不活性なタンパク質全てであり、一般には、大腸菌等の発現系で得られる立体構造が無秩序なタンパク質、いわゆるインクルージョンボディ、あるいは熱履歴等の、ある種の原因で失活したタンパク質である。
【0026】
本発明のキットは、該タンパク質のBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤への吸着・脱離過程で、該タンパク質の立体構造をリフォールディングし、該タンパク質の本来の機能の賦活・付与を行うものである。該リフォールディング剤の能力は、通常、次のような操作で発揮され、換言すれば、次のような操作で、不活性タンパク質の機能賦活が行われる。
【0027】
まず、該タンパク質を、変性剤を含む溶液に分散溶解し、この後、該リフォールディング剤を含む溶液との混合や、該リフォールディング剤充填カラムへの注入により、該タンパク質を該リフォールディング剤に吸着させ、次いで、該リフォールディング剤から該タンパク質を脱着させる手順で行われる。
【0028】
該リフォールディング剤に吸着前のタンパク質の分散溶媒としては、一般には、それが大腸菌等の発現系で生産されること、タンパク質は、通常、水溶液中で使われることが多く、失活した場合でも、水溶液中にあることが多いこと、等から、好適には、水が用いられる。
【0029】
しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、該タンパク質と反応を起こさない溶媒、及び該タンパク質の立体構造を不本意な形に変えるものでなければ、基本的には問題はなく、このような場合は、それらの溶媒単独で、あるいは水と混合して用いることが可能である。この種の溶媒の典型例として、一価及び多価のアルコールや、糖類を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
該タンパク質の吸脱着は、一般には、インクルージョンボディ等の縺れ絡んだタンパク質鎖長を解きほぐし易くし、また、巻き戻り易くするために、変性剤や界面活性剤、pH調整剤、リフォールディング因子等の存在下、及び/又はタンパク質鎖長中に不本意に生成したS−S結合(架橋)を切断し、もしくは適切な架橋形成をさせるために、ある種のタンパク質S−S架橋形成制御剤の存在下で行われる。
【0031】
したがって、本発明のキットは、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤の他、変性剤やpH調整剤を必須構成成分として含み、更には、これらの他、リフォールディング剤からのタンパク質の脱着促進と、リフォールディング後の再インクルージョンボディ化を防ぐためのリフォールディング因子及び/又は界面活性剤、S−S架橋形成制御剤から構成される。
【0032】
本発明のキット中の変性剤の典型例としては、塩酸グアニジン、尿素が例示される。pH調整剤の典型例としては、例えば、トリスアミノメタン三塩酸塩(Tris−HCl)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、及びN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−ジンエタンスルホン酸(HEPES)等が挙げられる。しかし、これらに制限されるものではなく、同様な作用を持つものであれば同様に使用可能である。
【0033】
また、本発明のキット中のリフォールディング因子や界面活性剤の典型例としては、ポリエチレングリコール(PEG20K、PEG3350、PEG800、PEG200)、Ficol170、Ficol1400、アルギニン、EDTA、NaCl、ポリ燐酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロース、グルコース、グリセロール、イノシトール、シクロデキストリン、アミロース、Dextran T−500、Tween20、Tween40、Tween60、NP−40、SB3−14、SB12、CTAB、及びTriton X−100等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、同様な作用を持つものであれば同様に使用可能である。
【0034】
不本意に生成したS−S架橋を切断し、本来の構造に戻すS−S架橋形成制御剤としては、安価で入手し易いことから、通常は、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチン、システイン、あるいはチオフェノールが用いられる。しかし、これらに限定されるものではなく、同様な作用を有するものであれば同様に使用可能である。
【0035】
タンパク質鎖長が解きほぐれやすい場合や、不本意にS−S架橋が生成しない場合は、当然のことながら、変性剤や界面活性剤、及び/又は防止剤を必ずしも使う必要がなく、これらは、常に必須とは限らず、状況に応じて適宜選択して、キットとして付加的に用いられる。また、キットを構成する成分の量は、それを用いるときの状況に応じて適宜決定される。
【0036】
本発明のキットは、通常は、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤、塩酸グアニジン(変性剤)及びトリスアミノメタン三塩酸塩(Tris−HCl)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)(pH調整剤)から構成される。更には、前記リフォールディング因子のタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、多価アルコール、糖アルコール、キレート剤、アルギニン、NaCl等の塩類、タンパク質変性剤、金属イオンのうち、必要なものを付加的に追加することができる。
【0037】
一般に、本キットによる、リフォールディング操作・工程中のタンパク質の脱着過程では、通常、該キット中の試剤、すなわちフォールディング因子や界面活性剤による置換吸着が行われる。しかし、基本的には、該タンパク質の脱着後の機能賦活を阻まない操作であれば、いかなる操作も適用可能であり、特に限定されるものではない。したがって、pH変化、温度変化等も用いることができ、これらと置換吸着を併用することもできる。
【0038】
ところで、置換吸着の際、該タンパク質の脱着を促す物質として、従来から、カラムクロマトグラフィーの溶離では、ハロゲン化アルカリ等の塩が頻繁に用いられており、これらの併用で、顕著な効果が得られる場合がある。また、リフォールディングが完了したタンパク質が、再度、凝集を起こさないようにする効果がある物質として、アルギニンが用いられており、これらの併用で、顕著な効果が得られる場合がある。
【0039】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットを構成するBEA構造のゼオライト(通称ゼオライトベータ、Zeorite Beta)は、β−ゼオライトとも呼ばれ、典型例として、例えば、通常の市販BEA構造ゼオライト、文献の記載(Zeorites,Vol.11(1991)202を参照)に従って、自前で合成・調製したBEA構造のゼオライト、それらを焼成して得られるBEA構造のゼオライトが挙げられる。
【0040】
更に、該ゼオライトの有する空間中に、アンモニウムや種々の脂肪族及び/又は芳香族アンモニウムがあるBEA構造のゼオライト、該ゼオライトを形成する骨格ケイ素の一部が他の金属に変わった骨格置換BEA構造ゼオライト、前記アンモニウム含有骨格置換BEA構造ゼオライト等が挙げられる。BEA構造のゼオライトの骨格構造を持つものであれば、基本的には、該機能・能力を有しており、使用可能であり、該リフォールディング用カラム充填剤及びカラムを構成するBEA構造のゼオライトとして、その製造方法や性状が特段に限定されるものではない。
【0041】
しかしながら、本発明のリフォールディング用カラム充填剤及びカラムを構成するBEA構造のゼオライトの機能・能力は、不活性並びに変性タンパク質の該ゼオライトへの接触、すなわち吸着・脱離で発揮され、この際には、BEA構造のゼオライト表面と対象タンパク質との間の親和性が重要となる。
【0042】
また、該タンパク質の吸着・脱離は、その分散溶媒、分散溶媒中の変性剤や界面活性剤、並びにリフォールディング因子、更には、分散溶媒のpH等で影響される場合が多く、対象とするタンパク質及びそれを含む溶液の成分状況等に応じて、本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットのリフォールディング性能は、それを構成する前述の種々のBEA構造のゼオライトによって、多少変わることがある。
【0043】
総じて言えば、アンモニウム類もしくはNaを含むBEA構造のゼオライトより構成されるリフォールディング用カラム充填剤は、それを含まないものよりも、高いリフォールディング性能を示す。したがって、該リフォールディング用カラム充填剤及びカラムとしては、アンモニウム類もしくはNaを含むBEA構造のゼオライト及びアンモニウム類もしくはNaを含む骨格置換BEA構造ゼオライトで構成されるものが好ましい。
【0044】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットの、BEA構造のゼオライトに含有されるべきアンモニウム類としては、該ゼオライトの有する空間中に留まり易いアンモニウム類、例えば、アンモニウムイオン、アルキル基が、メチル、エチル、プロピル及びブチル等の、モノ、ジ、トリ及びテトラアルキルアンモニウムイオン、更には、5員環、6員環及7員環の脂肪族アミン及び芳香族アミンのアンモニウムイオンが挙げられる。
【0045】
具体的には、例えば、ピペリジュムイオン、アルキルピペリジュムイオン、ピリジニウムイオン、アルキルピリジウムイオン、アニリンイオン、N−アルキルアニリンイオン等を挙げることができる。基本的には、BEA構造のゼオライトの有する細孔中に入ることが可能なアンモニウム類であれば、いずれでもよく、ここに例示したアンモニウム類に限定されるものではない。
【0046】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットのBEA構造のゼオライトの骨格を形成する元素は、一般には、ケイ素と酸素、あるいはケイ素と酸素とアルミニウムであるが、ケイ素やアルミニウムの一部が他の元素に置換したBEA構造のゼオライト及びその細孔中に前記アンモニウム類を含む置換BEA構造ゼオライトも、基本的には、不活性タンパク質の活性賦活機能を有する。BEA構造のゼオライトの骨格ケイ素あるいはアルミニウムと置換可能なものの典型としては、例えば、ホウ素、燐、ガリウム、錫、チタン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等を挙げることができる。
【0047】
しかし、これらに留まるものではなく、基本的に、BEA構造のゼオライトの構造を破壊しないものであれば、いずれでもよい。また、その置換量に関しても、BEA構造のゼオライトの構造を破壊しない量であれば、置換量は、いかなる量でもかまわず、該置換BEA構造ゼオライトは、不活性、あるいは変性タンパク質のリフォールディング機能を発揮するタンパク質リフォールディング条件設定キットとなり得る。
【0048】
このように、BEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法においては、リフォールディング剤としてのBEA構造のゼオライトにも、また、変性状態でBEA構造のゼオライトに吸着したタンパク質を溶出するために用いる溶液成分にも、多種多様な条件の設定ができる。これらの最適ないし好適条件設定を、簡便かつ迅速に行うために、本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットは、しばしば大きな利便となる。
【0049】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいては、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤に、変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる溶液成分に、純水成分の他、pH調整剤を必須構成成分とし、更に、リフォールディング制御因子としてのタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、多価アルコール、糖アルコール、キレート剤、アルギニン、NaCl等の、塩類、タンパク質変性剤、金属イオンのうち1種以上を含む組み合わせとする。
【0050】
更には、その濃度を変更した条件設定の中から、最適ないし好適条件を設定するために、あらかじめ、もしくは評価の前に、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、例えば、96穴マイクロプレート、もしくはそれ以上の穴数を有するマイクロプレート、もしくはそれに類似又は機能を同じくするものに対し、各試験管、もしくはプレート上の穴に対して、おのおの異なる構成の溶液を注入することにより、同時並行的に、複数の条件による試験を行うことができる。
【0051】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいては、キット構成試剤間の反応等、特に問題や支障が起きない場合は、キット構成試剤の幾つかを、あらかじめ合わせておき、一つの試剤としておくこともできる。例を挙げれば、Tris−HCl、ハロゲン化アルカリ、すなわち、例えば、塩化ナトリウム、リフォールディング因子、すなわち、例えば、ポリエチレングリコールのPEG20K、PEG3350、PEG800、PEG200のうちの1種及びアルギニンからなる溶液をリフォールディングバッファーとして一纏めにし、本発明のキット構成試剤の一つにすることも可能である。
【0052】
したがって、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、例えば、96穴マイクロプレートに注入する、純水成分の他、pH調整剤を必須構成成分とし、更に、リフォールディング制御因子としてのタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、多価アルコール、糖アルコール、キレート剤、アルギニン、NaCl等の、塩類、タンパク質変性剤、金属イオンのうち1種以上を含む組み合わせとする。更には、その濃度を変更した各種溶液を、あらかじめ用意し、付属させておくことも可能であり、あるいは各成分毎の溶液を所定の作業により混合し、評価の前に準備することも可能である。
【0053】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいては、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤のケイ素とアルミニウムの比を変化させたり、NHもしくはNaフォームにしたゼオライトに変更したりした条件設定で、あらかじめ、もしくは評価の前に条件設定された、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートを用いることが可能である。
【0054】
例えば、96穴マイクロプレート、もしくはそれ以上の穴数を有するマイクロプレート、もしくはそれに類似又は機能を同じくするものに対し、各試験管、もしくはプレート上の穴に対して、おのおの異なる構成のBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤を注入もしくは固定化しておくことにより、同時並行的に、複数の条件による試験を行うことが可能となる。
【0055】
BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤の、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、例えば、96穴マイクロプレートへの分注は、比較的効率の悪い操作であることから、あらかじめ各試験管、もしくはプレート上の穴に対して、おのおの異なる構成のBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤を注入もしくは固定化しておくことが好ましい。
【0056】
例えば、本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいて用いるBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤が、粒子状に成形され、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートに分注されていれば、遠心分離等の操作を行わなくても、最適ないし好適条件を、同時並行的に検討することができる。
【0057】
また、本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットにおいて用いるBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング剤が、粉末状態で、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートに固定化されていれば、遠心分離等の操作を行わなくても、最適ないし好適条件を、同時並行的に検討することができる。
【0058】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットの機能を利用して、キットに対する作業を、自動で行うことのできる、自動タンパク質リフォールディング条件設定装置として、利用することも可能である。
【0059】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットは、利便性ないしは操作性を向上させるために、バッファー類等の溶液成分の基本構成材料と、ゼオライトが既に分注もしくは固定されたマイクロプレート等と、更には、操作法を記載した取り扱い説明書、マニュアル等を、一組のパッケージとした、リフォールディングキット形態で供給し、ハイスループットでリフォールディング条件の最適ないし好適化をすることが可能であり、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング法を簡便に利用することが可能となる(図5)。
【0060】
本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キットは、効率的なBEA構造のゼオライトからなるリフォールディング法を適用する場合の、最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することができるため、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング法の有するスケールアップの容易性との相乗効果により、タンパク質の種類を問わず、大量で広範な不活性タンパク質に対しても、それら本来の機能を賦活させることが可能である。
【0061】
本発明では、例えば、大腸菌の発現系によるタンパク質合成プロセスと本発明のタンパク質リフォールディング条件設定キット、更には、BEA構造のゼオライトからなるリフォールディング法の有するスケールアップの容易性との相乗効果により、高次構造が制御されて、該タンパク質固有の本来の機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセスを提案・確立することができるので、本発明のキット並びに変性タンパク質の機能賦活方法は、例えば、生化学品製造、医薬品製造にとって極めて有用であり、その技術的、経済的効果は計り知れないものがある。
【0062】
本発明では、不活性タンパク質の機能を賦活する手法として有効なBEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法において、試薬・物質・材料等の使用条件を最適ないし好適条件を簡単な操作で迅速に設定することを可能とするものである。本発明は、高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化し失活したタンパク質をリフォールディングさせ、該タンパク質固有の本来機能を賦活・再生させる操作・工程において用いられる試薬・物質・材料等の使用条件を効率的に設定し、最適ないし好適なリフォールディング条件を簡便かつ迅速に設定することを可能にするものである。本技術について、後記する表7に、タンパク質リフォールディング技術における従来方法との比較を示す。
【0063】
従来、大腸菌等の発現系で得られるタンパク質は、一般には、立体構造が無秩序であり、該タンパク質の持つ本来の機能・物性を持たず、活性を示さないという問題があったが、本発明は、上記タンパク質に代表される不活性タンパク質の機能・活性を賦活させるBEA構造のゼオライトを用いたリフォールディング法における最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することを可能とする、所定の機能・活性を有するタンパク質へと再生させるための革新的タンパク質製造・生産技術の効率的運用を可能とするものである。
【発明の効果】
【0064】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)広範な不活性タンパク質に対して、それらの本来の機能を賦活させる、BEA構造ゼオライト(ゼオライトベータ・β−ゼオライト)によるリフォールディング法を適用する場合の、最適ないし好適なリフォールディング条件を簡便かつ迅速に設定するための、ハイスループットのタンパク質リフォールディング スクリーニング方法及びシステムとしての、リフォールディング条件設定キットを提供することができる。
(2)大腸菌等の発現系で産生された高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質に対して、それら本来の機能を賦活させるBEA構造ゼオライトを用いたリフォールディング法を適用する場合の最適ないし好適条件を選定することができる。
(3)インクルージョンボディのタンパク質に対して、BEA構造ゼオライトによるリフォールディング法を適用する場合の、最適ないし好適条件を選定することができる。
(4)BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤のケイ素とアルミニウムの比を変化させたり、NHもしくはNaフォームにしたゼオライトに変更することにより、BEA構造ゼオライトによるリフォールディング法を適用する際のリフォールディング剤の条件について、最適ないし好適条件を、同時並行的に検討することができる。
【0065】
(5)BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤に、変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる溶液成分に、純水成分、pH調整剤の他、リフォールディング制御因子としての含まれる成分について、最適ないし好適条件を、同時並行的に検討することができる。
(6)分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、例えば、96穴マイクロプレート、もしくはそれ以上の穴数を有するマイクロプレート、もしくはそれに類似又は機能を同じくするものの条件について、最適ないし好適条件を、同時並行的に検討することができる。
(7)BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤を、粉末状態もしくは粒子状にして、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートに分注することで、遠心分離等の操作を省略することができる。
【0066】
(8)本発明のキットは、作業を、自動で行うことのできる、自動タンパク質リフォールディング条件設定システム及び装置として、利用することができる。
(9)溶液成分の基本構成材料と、ゼオライトが既に分注もしくは固定されたマイクロプレートと、更には、操作法を記載した取り扱い説明書等を一組のパッケージとした形態の、キットを提供することができる。
(10)BEA構造ゼオライトによるリフォールディング法の有するスケールアップの容易性との相乗効果により、タンパク質の種類を問わず、広範な不活性タンパク質に対して、それらの本来の機能を賦活させることができ、高次構造が制御されて、該タンパク質固有の本来の機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセスを確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】蛍光強度を測定した結果を示す。
【図2】酵素活性を測定した結果を示す。
【図3】不活性タンパク質のゼオライトによるリフォールディング手順の説明図を示す。
【図4】BEA構造のゼオライトによるタンパク質リフォールディング条件設定キット及び装置の一例の説明図を示す。
【図5】リフォールディングキットの一例の説明図を示す。
【図6】作成したリフォールディングマトリックスを示す。
【図7】作成したリフォールディングマトリックスを示す。
【図8】作成したリフォールディングマトリックスを示す。
【図9】ゼオライトの種類による影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら制約を受けるものではない。
【実施例1】
【0069】
本実施例では、96穴ディープウェルプレートを用いたタンパク質リフォールディング条件設定キットにより、96通りの条件による、GFP(Green fluorescent protein)のリフォールディング条件を調べた。
【0070】
(1)キットの構成
キットには、930NHA(東ソー製);NH型(NHフォーム)であるゼオライトを用いた。このゼオライトが、96穴ディープウェルプレートの各穴に、30mgずつ、分注されたものを用意し、これに、96穴ディープウェルプレート用キャップを付属として用いた。
【0071】
表1に、検討したリフォールディングに及ぼすバッファー成分について示す。本実施例で用いたタンパク質リフォールディング条件設定キットは、表1に示す各成分の影響を調べるために構築したものである。具体的には、pH調整剤の違いにより、pHに関しては、6.5,7.5,8.0,8.5の4条件について同時に検討できること、塩類については、NaCl 500mMの有無について検討できること、添加物については、グリセロール 20%(v/v)、塩酸グアニジン 1Mのそれぞれについて、その添加の有無について検討できること、を要件として構成した。
【0072】
また、界面活性剤については、Tween20 0.2%(v/v)の添加の有無について検討できること、S−S架橋形成制御剤(Redox reagent)については、2−メルカプトエタノール 10mM、及び、システイン 10mM + シスチン 1mMの添加の有無について、同時に検討することができること、を要件として構成した。
【0073】
【表1】

【0074】
本実施例で用いた基本的な溶液(バッファー)類の構成は、以下のようにした。
1.変性バッファー:20mM Tris−HCl pH7.5,6M 塩酸グアニジン,0.5M NaCl,10mM 2−メルカプトエタノール
2.洗浄バッファー:1mM Tris−HCl pH7.5
【0075】
3.pH6.5基本バッファー:125mM MES−Na(pH6.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000,1.25M アルギニン、2.5mM EDTA
4.pH7.5基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH7.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000,1.25M アルギニン、2.5mM EDTA
【0076】
5.pH8.0基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH8.0),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000,1.25M アルギニン、2.5mM EDTA
6.pH8.5基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH8.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000,1.25M アルギニン、2.5mM EDTA
【0077】
塩類、添加物、界面活性剤、S−S架橋形成制御剤の構成は、8M 塩酸グアニジン、5M NaCl、66.7%(v/v)グリセロール、10%(v/v)Tween20、200mM L−システイン−HCl、200mM シスチン、182mM 2−メルカプトエタノール、とした。
【0078】
(2)使用する器具
使用する器具の構成は、8連ピペット(20μl)、8連ピペット(300μl)、8連ピペット(1250μl)、12連ピペット(300μl)、リザーバー、とした。尚、リザーバーは、キットの付属としてセットすることも可能とした。
【0079】
(3)方法
まず、96条件のリフォールディングバッファーの準備を行った。以下に示す手順で、リフォールディングバッファー作製用の96穴ディープウェルプレートに、各種バッファーを分注した。表2に、96穴マイクロプレートを用いたときの各穴のバッファー成分を示す。以下の手順により、表2に示すような、96通りの異なる構成のリフォールディングバッファーを準備し、これを用いて、96通りのリフォールディング条件の同時検討を行った。
【0080】
【表2】

【0081】
1. 110μlずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
2. 22μlずつのddHOを、12連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートのA,C,E,Gの列の1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0082】
3. 138μLずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,3,4,5,7,9,10,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
4. 330μlずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,4,5,7,8,10,11行のA,B,C,D,E,F,G,Hに加えた。
【0083】
5. 440μlずつの上記3のpH6.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのA,B列の1,2,3,4,5,6行及びA,B列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
6. 440μlずつの上記4のpH7.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのC,D列の1,2,3,4,5,6行及びC,D列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0084】
7. 440μlずつの上記5のpH8.0基本バッファーを、8連ピペットに(1250μL)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのE,F列の1,2,3,4,5,6行及びE,F列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
8. 440μlずつの上記6のpH8.5基本バッファーを、8連ピペットに(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのG,H列の1,2,3,4,5,6行及びG,H列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0085】
9. 110μlずつの上記8の5M NaClを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの7,8,9,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
10. 22μlずつの上記10の10%(v/v)Tween20を、12連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートのB,D,F,H列の1,2,3,4,5,6,7,8,9,10、11,12行に加えた。
【0086】
11. 138μlずつの上記7の8M 塩酸グアニジンを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの2,5,8,11行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
12. 330μlずつの上記9の66.7%(v/v)グリセロールを、8連ピペット(1250μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの3,6,9,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0087】
13. 55μlずつの上記11の200mM L−システイン−HClを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの4,5,6,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
14. 5.5μlずつの上記12の200mM シスチンを、8連ピペット(20μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの4,5,6,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0088】
15. 60.5μlずつの上記13の182mM 2−メルカプトエタノールを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,7,8,9行のA,B,C,D,E,F,G,Hに加えた。
16. キャップをして、転倒、混和後、4℃、3000rpmにて、1分間遠心した。
【0089】
次に、評価すべきGFPについては、6Mの塩酸グアニジン等で、変性溶解したGFP溶液を、濃度1mg/mLで、各96穴に1mLずつ注入するために、96mL以上用意した。ゼオライト30mgが、各穴に分注され、96穴ディープウェルプレートの各穴に、1mLの上記1の変性バッファーを加えて、平衡化した。
【0090】
3,000rpmで、5分遠心分離して、上清を捨てた。各穴に、1mg/mLの変性GFPを1mL加え、96穴ディープウェルプレートに、しっかりとフタをし、上下反転させて、ゼオライトを十分に懸濁した後、ローテーターで、1時間回転させて、ゼオライトにGFPを吸着させた。
【0091】
96穴ディープウェルプレートを、3,000rpmで、5分遠心分離して、上清を捨て、上記2の洗浄バッファー 1mLで、計5回洗浄し、5回目の洗浄で、上清を除いた後、更に、3,000rpmで、1分、遠心分離して、残っている液をできるだけ除いた。この状態で、湿潤したゼオライトと、それに吸着した変性GFPが残っていることになり、これを、条件検討用の96穴ディープウェルプレートとした。
【0092】
先に準備した、96通りのリフォールディングバッファーの入った、リフォールディングバッファー作製用の96穴ディープウェルプレートの各穴から、それぞれ、1mLのリフォールディングバッファーを、条件検討用の96穴ディープウェルプレートに移し替えるように加えた。この操作は、12連のピペットで、あるいは8連のピペットで行った。各穴に、フタをして、ボルテックスで混合した。4℃で、一晩回転させてリフォールドさせた。3,000rpmで、5分、遠心分離して、上清の活性測定を行った。
【0093】
活性測定は、CORONA Microplate Reader SH−8000を用いて、Ex:486nm,Em:511nmで、蛍光強度を測定した。可溶性GFP溶液を、リフォールディングバッファーで希釈して、0,1.875,3.75,7.5,15,30,60μg/mLのときの蛍光強度を測定し、検量線を作成した。
【0094】
Refolding sampleは、そのまま測定した。活性の高かったrefolding sample、及びstandard(変性GFP)を、TCA沈澱してから、BCA法で、タンパク濃度を測定し、回収率及び活性回復率を算出した。
【0095】
(4)結果
その結果を、図1に示す。図1は、蛍光強度を測定した結果をまとめたものである。表3に、蛍光強度を測定した数値結果を示す。表4に、活性の高かったC1,C7,E1,E4,E7,E10,G1,G4,G7,G10,H3及びH9のタンパク濃度を測定し、回収率、及び活性回復率を算出した結果を示す。
【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
E7及びE10の回収率、活性回復率が、最も良好であった。E7とE10は、条件がほぼ同じであり、E7のバッファーのRedox reagentである2−メルカプトエタノールを、Cysteine/Cystineに変更したものが、E10である。
【0099】
GFPは、S−S結合がないこともあるが、S−S架橋形成制御剤(Redox reagent)については、2−メルカプトエタノール 10mM、及び、システイン 10mM + シスチン 1mMの効果に差がないことが分かる。GFPのリフォールディングの最適条件は、以下のとおりであり、回収率は、38.8%、及び活性回復率は、26.9%であった。
【0100】
(GFPのリフォールディング条件)
pH8.0
0.5M アルギニン
0.5% ポリエチレングリコール 20000
0.5M NaCl
10mM 2−メルカプトエタノールもしくは、10mM システイン + 1mM シスチン
2.5mM EDTA
【実施例2】
【0101】
本実施例では、96穴ディープウェルプレートを用いたタンパク質リフォールディング条件設定キットにより、96通りの条件による、GK(グルコキナーゼ)のリフォールディング条件を調べた。
【0102】
(1)キットの構成
キットには、930NHA(東ソー製);NH型(NHフォーム)に固定しているゼオライトを用いた。このゼオライトが、96穴ディープウェルプレートの各穴に30mgずつ、分注されたものを用意した。これに、96穴ディープウェルプレート用キャップを付属としてセットした。
【0103】
表5に、検討したリフォールディングに及ぼすバッファー成分について示す。本実施例で用いたタンパク質リフォールディング条件設定キットは、表5に示す各成分の影響を調べるために構築したものである。具体的には、pH調整剤の違いにより、pHに関しては、6.5,7.5,8.0,8.5の4条件について同時に検討できること、塩類については、NaCl 500mMの有無について検討できること、添加物については、グリセロール 20%(v/v)、塩酸グアニジン 1Mのそれぞれについて、その添加の有無が検討できること、を要件として構成した。
【0104】
界面活性剤については、Tween20 0.2%(v/v)の添加の有無について検討できること、S−S架橋形成制御剤(Redox reagent)については、DTT 1mM、及び、システイン 10mM + シスチン 1mMの添加の有無について、同時に検討することができること、を要件として構成した。
【0105】
【表5】

【0106】
本実施例で用いる基本的な溶液(バッファー)類の構成は、以下のようにした。
1.変性バッファー:20mM Tris−HCl pH7.5,6M塩酸グアニジン,0.5M NaCl,10mM 2−メルカプトエタノール
2.洗浄バッファー:1mM Tris−HCl pH7.5
【0107】
3.pH6.5基本バッファー:125mM MES−Na(pH6.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000、1.25M アルギニン、5mM MgCl2
4.pH7.5基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH7.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000、1.25M アルギニン、5mM MgCl
【0108】
5.pH8.0基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH8.0),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000、1.25M アルギニン、5mM MgCl
6.pH8.5基本バッファー:125mM Tris−HCl(pH8.5),1.25%(w/v)ポリエチレングリコール20000、1.25M アルギニン、5mM MgCl
【0109】
塩類、添加物、界面活性剤、S−S架橋形成制御剤の構成は、8M 塩酸グアニジン、5M NaCl、66.7%(v/v)グリセロール、10%(v/v)Tween20、200mM L−システイン−HCl、200mM シスチン、18.2mM DTT、とした。
【0110】
(2)使用する器具
使用する器具の構成は、8連ピペット(20μl)、8連ピペット(300μl)、8連ピペット(1250μl)、12連ピペット(300μl)、リザーバー、とした。尚、リザーバーは、キットの付属としてセットすることも可能とした。
【0111】
(3)方法
まず、96条件のリフォールディングバッファーの準備を行った。以下に示す手順で、リフォールディングバッファー作製用の96穴ディープウェルプレートに、各種バッファーを分注した。表6に、96穴マイクロプレートを用いたときの各穴のバッファー成分を示す。この手順により、表6に示すような、96通りの異なる構成のリフォールディングバッファーが準備され、これを用いて、96通りのリフォールディング条件の同時検討を行った。
【0112】
【表6】

【0113】
1. 110μlずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
2. 22μlずつのddHOを、12連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートのA,C,E,Gの列の1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0114】
3. 138μLずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,3,4,5,7,9,10,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
4. 330μlずつのddHOを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,4,5,7,8,10,11行のA,B,C,D,E,F,G,Hに加えた。
【0115】
5. 440μlずつの上記3のpH6.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのA,B列の1,2,3,4,5,6行及びA,B列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
6. 440μlずつの上記4のpH7.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのC,D列の1,2,3,4,5,6行及びC,D列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0116】
7. 440μlずつの上記5のpH8.0基本バッファーを、8連ピペットに(1250μL)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのE,F列の1,2,3,4,5,6行及びE,F列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
8. 440μlずつの上記6のpH8.5基本バッファーを、8連ピペットに(1250μl)に6本のチップを付け、96穴ディープウェルプレートのG,H列の1,2,3,4,5,6行及びG,H列の7,8,9,10,11,12行に加えた。
【0117】
9. 110μlずつの上記8の5M NaClを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの7,8,9,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0118】
10. 22μlずつの上記10の10%(v/v)Tween20を、12連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートのB,D,F,H列の1,2,3,4,5,6,7,8,9,10、11,12行に加えた。
【0119】
11. 138μlずつの上記7の8M 塩酸グアニジンを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの2,5,8,11行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
12. 330μlずつの上記9の66.7%(v/v)グリセロールを、8連ピペット(1250μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの3,6,9,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0120】
13. 55μlずつの上記11の200mM L−システイン−HClを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの4,5,6,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
14. 5.5μlずつの上記12の200mM シスチンを、8連ピペット(20μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの4,5,6,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0121】
15. 60.5μlずつの上記13の182mM 2−メルカプトエタノールを、8連ピペット(300μl)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,7,8,9行のA,B,C,D,E,F,G,Hに加えた。
16. キャップをして、転倒、混和後、4℃、3000rpmにて、1分間遠心した。
【0122】
次に、評価すべきGKについては、6Mの塩酸グアニジン等で変性溶解したGK溶液を、濃度1mg/mLで、各96穴に、1mLずつ注入するために、96mL以上用意した。ゼオライト30mgが、各穴に分注され、96穴ディープウェルプレートの各穴に、1mLの上記1の変性バッファーを加えて、平衡化した。
【0123】
3,000rpmで、5分遠心分離して、上清を捨てた。各穴に、1mg/mLの変性GKを1mL加え、96穴ディープウェルプレートに、しっかりとフタをし、上下反転させて、ゼオライトを十分に懸濁した後、ローテーターで、1時間回転させて、ゼオライトにGKを吸着させた。
【0124】
96穴ディープウェルプレートを、3,000rpmで、5分遠心分離して、上清を捨て、上記2の洗浄バッファー 1mLで、計5回洗浄し、5回目の洗浄で、上清を除いた後、更に、3,000rpmで、1分遠心して、残っている液をできるだけ除いた。この状態で、湿潤したゼオライトとそれに吸着した変性GKが残っていることになり、これが、条件検討用の96穴ディープウェルプレートとした。
【0125】
先に準備した、96通りのリフォールディングバッファーの入った、リフォールディングバッファー作製用の96穴ディープウェルプレートの各穴から、それぞれ、1mLのリフォールディングバッファーを、条件検討用の96穴ディープウェルプレートに移し替えるように加えた。この操作は、12連のピペットで、あるいは8連のピペットで行った。各穴に、フタをして、ボルテックスで混合した。4℃で、一晩回転させて、リフォールドさせた。3,000rpmで、5分遠心分離して、上清の活性測定を行った。
【0126】
活性の測定は、以下の手順によった。まず、D−グルコースとATPの混合である反応基質が、GKによりD−グルコース6リン酸とADPになる反応により評価することし、以下のような、活性測定用の基質混合溶液を調製した。
(基質混合溶液)
100mM Tris−HCl pH7.0
2mM ATP
10mM MgCl
1mM DTT
500μM NADP
50mM D−グルコース
【0127】
引き続き、以下のような手順を行った。
1.リフォールディングしたサンプルを、10倍希釈した。
2.希釈したサンプルを、コーニング製のUV透過96穴プレートに分注した。
3.基質混合溶液を、200μlずつ、96穴プレートに分注し、CORONA Microplate Reader SH−8000を用いて、OD340を1分ごとに10分間測った(24サンプルずつ測った)。
【0128】
24サンプルずつ測る手順は、以下のようにした。1回目(A,B)(1〜12)、2回目(C,D)(1〜12)、3回目(E,F)(1〜12)、4回目(G,H)(1〜12)。
4.グラフの傾きを求めて活性を計算した。
【0129】
計算式を、以下に示す。
Units/mL enzyme=(ΔA340nm/min Sample−ΔA340nm/min Blank)(0.21mL)(df)/(6.22)(0.01)
ここで、6.22=Millimolar extintion coefficient of NADPH at 340nm、0.01=Volume(mL)of enzyme used、である。
【0130】
(4)結果
その結果を、図2に示す。活性が高かったのは、C2,D2,E2,F2,C8,D8,E8,F8の条件であることが分かる。
【0131】
回収率、活性回復率が、最も良好であったのは、F8の条件であるが、C2,D2,E2,F2,C8,D8,E8,F8の条件の共通項として、変性剤の塩酸グアニジンやS−S架橋形成制御剤の2−メルカプトエタノールが効果が大きいことが分かる。GKのリフォールディングの好適条件は、以下のとおりであり、回収率は52.0%、及び活性回復率は17%であった。
【0132】
(GKのリフォールディング条件)
pH8.0
0.5M アルギニン
0.5% ポリエチレングリコール 20,000
0.5M NaCl
0.2% Tween20
1M 塩酸グアニジン
5mM MgCl
1mM DTT
【0133】
【表7】

【実施例3】
【0134】
本実施例では、クレアチンキナーゼのリフォールディングを行った。
(1)クレアチンキナーゼのクローニング、発現
ヒトクレアチンキナーゼ遺伝子を含むESTクローン(clone ID:MHS1011−60128)は、Open biosystemsより購入した。このESTクローンを鋳型として、iProof High−Fidelity DNA ポリメラーゼを用いて、クレアチンキナーゼ遺伝子を増幅した。なお、プライマーとして、以下の配列のものを用いた。
フォワードプライマー:aaaaaaCATATGGCTGGTCCCTTCTCCC
リバースプライマー:aaaaaaGTCGACATGCTTGGTGTGGATGACAGG
【0135】
増幅された遺伝子を、pBluescriptII(SK+)ベクターに、クローニング後、DNA配列を確認した。正しい配列の入ったDNAを制限酵素NdeI及びXhoIで切断し、pET21aベクター(Novagen)にサブクローニングすることにより、発現クローンを作製した。この発現クローンを、BL21star(DE3)株にトランスフォームした。
【0136】
クレアチンキナーゼ発現コンストラクトを、30mLのLB−1.5%グルコース−100μg/mLアンピシリン培地で、37℃、1晩培養した。20mLの前培養液を2Lのターボブロス−1.5%グルコース−100μg/mLアンピシリン培地に移し、37℃で、OD600が0.6になるまで培養した。最終濃度が100μMになるように、IPTGを加え、更に、37℃で、4.5時間培養した。
【0137】
菌体を遠心して集め、更に、TBS(20mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl)で洗浄した。これを、80mLの0Mイミダゾールバッファー(20mM Tris−HCl pH7.5,0.5M NaCl)に懸濁し、液体窒素に浸けて、凍結後、−80℃で保存した。
【0138】
(2)クレアチンキナーゼの精製
凍結した菌体を溶解後、以下の試薬を加え、4℃で、30〜60分間インキュベートした。
(試薬)
100mM PMSF 800μL
1mg/mL Pepstatin A 80μL
1M MgCl 100μL
2U/μL DNaseI 100μL
50mg/mL Lysozyme 400μL
【0139】
ソニケーション後、28000×g、4℃で、15分間遠心して、上清(可溶性画分)と沈殿(インクルージョンボディ)に分けた。
【0140】
(3)可溶性画分の精製
可溶性画分を、0.45μmフィルターでろ過し、最終濃度が5mMになるように、500mMイミダゾールバッファー(0Mイミダゾールバッファー+500mMイミダゾール)を加えた。His−Trap HPカラム(5mL)2本を連結したAKTA10Sにロードし、5−500mMのイミダゾール勾配をかけて溶出させた。クレアチンキナーゼのピークフラクションを集め、Amicon Ultra−15(MWCF=10,000)で濃縮後、TBSで、4℃、1晩透析した。透析サンプルを遠心し、0.45μmフィルターでろ過後、タンパク質濃度を測定した。
【0141】
(4)変性クレアチンキナーゼの精製
インクルージョンボディを、30mLの0Mイミダゾールバッファー+0.5%TritonX−100で洗浄した。25mLの変性0Mイミダゾールバッファー(0Mイミダゾールバッファー+6M塩酸グアニジン)を加え、室温で1晩インキュベーションして、変性、溶解させた。100000×g、4℃で、45分間遠心して、不溶性物質を除いた後、0.45μmフィルターでろ過した。
【0142】
His−Trap HPカラム(5mL)2本を連結したAKTA10Sにロードし、0−500mMのイミダゾール勾配をかけて溶出させた。クレアチンキナーゼのピークフラクションを集め、Amicon Ultra−15(MWCF=10,000)で濃縮後、変性0Mイミダゾールバッファー+ 20mM 2−メルカプトエタノールで、4℃、1晩透析した。透析サンプルを遠心し、0.45μmフィルターでろ過後、タンパク質濃度を測定した。
【0143】
(5)リフォールディングの条件検討
リフォールディング条件検討マトリックスを作成し、バッファー条件について検討した。図6に、作成したマトリックスを示す。また、検討したバッファー条件について、以下の表に示した。
【0144】
【表8】

【0145】
(6)試薬
試薬として、以下の試薬を用いた。
(試薬)
Zelolite:HSZ930−NHA 30mg/well
pH7.5基本バッファー[500mM Tris−HCl(pH7.5),5%(w/v)PEG 20000,10mM EDTA]
pH8.5基本バッファー[500mM Tris−HCl(pH8.5),5%(w/v)PEG 20000,510mM EDTA]
【0146】
1% Tween20
1M NDSB256
5M 塩酸グアニジン(Gdn−HCl)
Salt(3M NaCl,1M KCl)
20mM DTT
2Mアルギニン(Arg)(pH7.5,pH8.5)
【0147】
(7)リフォールディングバッファーの作成
96穴ディープウェルプレートに、以下のように試薬を作成し、該試薬を分注した。
1)100μLずつのddHOを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,4行のA,B,C,D,E,F列に加えた。
2)500μLずつのddHOを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のA,D列に加えた。
【0148】
3)250μLずつのddHOを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のA,B,C列に加えた。
4)100μLずつのpH7.5基本バッファーを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3行のA,B,C,D,E,F列に加えた。
【0149】
5)100μLずつのpH8.5基本バッファーを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの4,5,6行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
6)500μLずつの1%(v/v)Tween20を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のB,E列に加えた。
【0150】
7)500μLずつの1M NDSB256を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のC,F列に加えた。
8)100μLずつのSalt(3M NaCl,1M KCl)を、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの2,5行のA,B,C,D,E,F列に加えた。
【0151】
9)100μLずつの5M塩酸グアニジンを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの3,6行のA,B,C,D,E,F列に加えた。
10)250μLずつの2Mアルギニン(pH7.5)を、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3行のD,E,F列に加えた。
【0152】
11)250μLずつの2Mアルギニン(pH8.5)を、8連ピペット(300μL)を用いて96穴ディープウェルプレートの4,5,6行のD,E,F列に加えた。
12)50μLずつの20mM DTTを、8連ピペットを用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6行のA,B,C,D,E,F列に加えた。
【0153】
(8)方法
ゼオライト(HSZ930 NHA)を、約30mgずつ、ディープウェルプレートに加えた。500μLの変性0Mイミダゾールバッファーを加え、平衡化した。0.3mgの変性クレアチンキナーゼを加え、1時間振盪してゼオライトに吸着させた。ディープウェルプレートを、2150×g、4℃で、5分間遠心して、ゼオライトを沈殿させた。
【0154】
上清を捨て、1mLの5mM Tris−HCl、pH7.5を加え、ゼオライトを再懸濁した。更に、遠心、再懸濁を6回繰り返すことにより、ゼオライトを洗浄した。遠心して上清を除いた後、0.6mLのリフォールディングバッファーを加え、最懸濁後、4℃で、1晩振盪した。ディープウェルプレートを、2150×g、4℃で、5分間遠心してゼオライトを沈殿させ、上清を、新しいディープウェルプレートに移した。回収したサンプルの活性測定及びタンパク質定量を行った。
【0155】
(9)活性測定
活性測定は、CKII−テストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いた。リフォールディングしたサンプルを、5μlずつ、96穴アッセイプレートに分注した。150μLの基質を分注し、570nmの吸光度の変化をプレートリーダー(Model 680 XR、バイオラッド)を用いて測定することにより、活性を求めた。
【0156】
(10)結果
測定結果を以下の表に示す。pH7.5(50mM Tris−HCl)、500mMアルギニン、0.5%(v/v)Tween20、500mM塩酸グアニジンの条件下で、回収率14%であった。更に、可溶性クレアチンキナーゼと比活性の比較を行ったところ、活性回復率51.1%であった。
【0157】
【表9】

【実施例4】
【0158】
本実施例では、MMP−3のリフォールディングを行った。
(1)MMP−3の発現
ヒトMMP−3発現コンストラクトは、松浦氏(産業技術総合研究所、東北センター)より譲渡されたものを用いた。MMP−3発現コンストラクトを30mLのLB−1.5%グルコース−100μg/mLアンピシリン培地で、37℃、1晩培養した。20mLの前培養液を2Lのターボブロス−1.5%グルコース−100μg/mLアンピシリン培地に移し、37℃で、OD600が0.6になるまで培養した。最終濃度が100μMになるようにIPTGを加え、更に、37℃で、4.5時間培養した。
【0159】
菌体を遠心して集め、更に、TBS(20mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl)で洗浄した。80mLの0Mイミダゾールバッファー(20mM Tris−HCl,pH7.5,0.5M NaCl)に懸濁し、液体窒素に浸けて、凍結後、−80℃で保存した。
【0160】
(2)変性MMP−3の精製
凍結した菌体を溶解後、以下の試薬を加え、4℃で、30〜60分間インキュベートした。
(試薬)
100mM PMSF 800μL
1mg/mL Pepstatin A 80μL
1M MgCl 100μL
2U/μL DNaseI 100μL
50mg/mL Lysozyme 400μL
【0161】
ソニケーション後、28000×g、4℃で、15分間遠心して、沈殿(インクルージョンボディ)を得た。インクルージョンボディを、30mLの0Mイミダゾールバッファー+0.5% Triton X−100で洗浄した。25mLの変性0Mイミダゾールバッファー(0Mイミダゾールバッファー+6M 塩酸グアニジン)を加え、室温で1晩インキュベーションして、変性、溶解させた。100000×g、4℃で、45分間遠心して、不溶性物質を除いた後、0.45μmフィルターでろ過した。
【0162】
His−Trap HPカラム(5mL)2本を連結したAKTA10Sにロードし、0−500mMのイミダゾール勾配をかけて溶出させた。ピークフラクションを集め、Amicon Ultra−15(MWCF=10,000)で濃縮後、0.1Mになるように、DTTを加えた。変性0Mイミダゾールバッファーで、4℃、1晩透析した。透析サンプルを遠心し、0.45μmフィルターでろ過後、タンパク質濃度を測定した。
【0163】
(3)リフォールディングの条件検討
リフォールディング条件検討マトリックスを作成し、バッファ条件について検討した。図7に、作成したマトリックスを示す。また、検討したバッファー条件について、以下の表に示した
【0164】
【表10】

【0165】
(4)試薬
試薬として、以下の試薬を用いた。
(試薬)
ゼオライト(HSZ930−NHA)30mg/well
pH6.0基本バッファー[500mM MES−Na(pH6.5),5%(w/v)PEG 20000,50mM CaCl,5mM Zn−Acetate]
【0166】
pH7.5基本バッファー[500mM Tris−HCl(pH7.5),5%(w/v)PEG 20000,50mM CaCl,5mM Zn−Acetate]
pH8.5基本バッファー[500mM Tris−HCl(pH8.5),5%(w/v)PEG 20000,50mM CaCl,5mM Zn−Acetate]
【0167】
1% Brij−35
1% Tween20
1M NDSB256
5M 塩酸グアニジン(Gdn−HCl)
Salt(3M NaCl,1M KCl)
20mM DTT
100mM還元型グルタチオン(GSH),20mM酸化型グルタチオン(GSSG)
2Mアルギニン(Arg)(pH6.0,pH7.5,pH8.5)
【0168】
(5)リフォールディングバッファーの作成
96穴ディープウェルプレートに、以下のように試薬を作成し、該試薬を分注した。
1)750μLずつのddHOを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のA,B列に加えた。
2)375μLずつのddH2Oを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,3,5,7,9,11行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0169】
3)150μLずつのpH6.5基本バッファーを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
4)150μLずつのpH7.5基本バッファーを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの5,6,7,8行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0170】
5)150μLずつのpH8.5基本バッファーを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの9,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
6)750μLずつの1%(v/v)Tween20を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,1011,12行のC,D列に加えた。
【0171】
7)750μLずつの1%(w/v)Brig−35を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,1011,12行のE,F列に加えた。
8)750μLずつの1M NDSB256を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,1011,12行のG,H列に加えた。
【0172】
9)150μLずつのSalt(2.4M NaCl,0.8M KCl)を、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のA,C,E,G列に加えた。
10)150μLずつの5M塩酸グアニジンを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のB,D,F,H列に加えた。
【0173】
11)375μLずつの2Mアルギニン(pH6.5)を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの2,4行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
12)375μLずつの2Mアルギニン(pH7.5)を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの6,8行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0174】
13)375μLずつの2Mアルギニン(pH8.5)を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの10,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
14)75μLずつの20mM DTTを、8連ピペットを用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,5,6,9,10行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
15)75μLずつの100mM還元型グルタチオン,20mM酸化型グルタチオンを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの3,4,7,8,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0175】
(6)方法
ゼオライトを、約30mgずつ、96穴ディープウェルプレートに加えた。500μLの変性0Mイミダゾールバッファーを加え、平衡化した。0.25mgの変性MMP−3を加え、1時間振盪して、ゼオライトに吸着させた。ディープウェルプレートを、2150×g、4℃、5分間遠心して、ゼオライトを沈殿させた。
【0176】
上清を捨て、1mLの5mM Tris−HCl、pH7.5を加え、ゼオライトを再懸濁した。更に、遠心、再懸濁を6回繰り返すことにより、ゼオライトを洗浄した。遠心して、上清を除いた後、1mLのリフォールディングバッファーを加え、最懸濁後。4℃で1晩振盪した。2150×g、4℃で、5分間遠心して、ゼオライトを沈殿させ、上清を、新しいディープウェルプレートに移した。回収したサンプルの活性測定及びタンパク質定量を行った。
【0177】
(7)活性測定
活性測定は、490 MMP−3 Assay Kit(SensoLyte社)を使用した。キットに付属のMMP−3 substrate 50μLを、Assay buffer 10mLに加え、アッセイ溶液を作製した。100μLずつ、96穴黒色アッセイプレートに分注した。リフォールディングサンプルを、ddH2Oで2倍希釈し、そのうち5μLを加えた。SH−8000マイクロプレートリーダー(コロナ電気株式会社)にて、励起波長340nm、放射波長490nmを測定することにより、活性を求めた。
【0178】
(8)結果
上記測定結果を、以下の表に示す。pH8.5(50mM Tris−HCl)、500mMアルギニン,5mM CaCl、0.5mM Zn−acetate、0.5%(w/v)PEG 20000、300mM NaCl、100mM KCl、500mM塩酸グアニジン、500mM NDSB256の条件下で、最大活性及び、21.8%の回収率を得た。また、比活性は、希釈法(Rosenfeld et al.,Geen,1994,139,p281−286)によって得られた値と比べて、3.7倍高かった。
【0179】
【表11】

【実施例5】
【0180】
本実施例では、抗ヒトアルブミン単鎖可変領域断片のリフォールディングを行った。
(1)抗ヒトアルブミン単鎖可変領域断片(HSAscFv)のクローニング、発現
ヒトアルブミンを認識するマウスIgG可変部位の遺伝子配列は、文献(P2000−139460A)を参考にした。該文献に示してあるH鎖及びL鎖のアミノ酸配列を、リンカー(GlyGlyGlyGlySer×3)でつないだ配列を、大腸菌のコドンに合わせたDNA配列である人工遺伝子として合成した。なお、人口遺伝子の合成は、オペロンバイオテクノロジー株式会社に依頼した。
【0181】
得られた遺伝子を制限酵素NdeI及びXhoIで切断し、pET28aベクター(Novagen)にサブクローニングすることにより、アミノ末端に6×ヒスチジンタグを持つ発現クローンを作製した。この発現クローンを、BL21star(DE3)株にトランスフォームした。
【0182】
HSAscFv発現コンストラクトを、50mLのLB−100μg/mLカナマイシン培地で、30℃、1晩培養した。20mLの前培養液を、2Lのターボブロス−100μg/mLカナマイシン培地に移し、37℃で、OD600が0.6になるまで培養した。最終濃度が1mMになるように、IPTGを加え、更に、37℃で、4.5時間培養した。菌体を遠心して集め、更に、TBS(20mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NhaCl)で洗浄した。80mLの0Mイミダゾールバッファー(20mM Tris−HCl pH7.5,0.5M NaCl)に懸濁し、液体窒素に浸けて、凍結後、−80℃で保存した。
【0183】
(2)変性HSAscFvの精製
凍結した菌体を溶解後、以下の試薬を加え、4℃で、30〜60分間インキュベートした。
(試薬)
100mM PMSF 800μL
1mg/mL Pepstatin A 80μL
1M MgCl 100μL
2U/μL DNaseI 100μL
50mg/mL Lysozyme 400μL
【0184】
ソニケーション後、遠心して、沈殿(インクルージョンボディ)を得た。インクルージョンボディを、30mLの0Mイミダゾールバッファー+0.5%(w/v)Triton X−100で洗浄した。25mLの変性0Mイミダゾールバッファー(0Mイミダゾールバッファー+6M塩酸グアニジン)を加え、室温で、1晩インキュベーションして溶かした。100000×g、4℃で、45分間遠心して、不溶性物質を除いた後、0.45μmフィルターでろ過した。
【0185】
His−Trap HPカラム(5mL)2本を連結したAKTA10Sにロードし、0−500mMのイミダゾール勾配をかけて溶出させた。ピークフラクションを集め、Amicon Ultra−15(MWCF=10,000)で濃縮した。変性0Mイミダゾールバッファー+20mM 2−メルカプトエタノールで、4℃、1晩透析した。透析サンプルを、遠心し、0.45μmフィルターでろ過後、タンパク質濃度を測定した。
【0186】
(3)リフォールディングの条件検討
リフォールディング条件検討マトリックスを作成し、バッファ条件について検討した。図8に、リフォールディングマトリックスを示す。検討したバッファー条件について、以下の表に示した。
【0187】
【表12】

【0188】
(4)試薬
試薬として、以下の試薬を用いた。
(試薬)
ゼオライト(HSZ930−NHA)50mg/well
バッファー組成
pH6.0基本バッファー[200mM MES−Na(pH6.0),2%(w/v)PEG 20000]
pH7.5基本バッファー[200mM Tris−HCl(pH7.5),2%(w/v)PEG 20000]
pH8.5基本バッファー[200mM Tris−HCl(pH8.5),2%(w/v)PEG 20000]
【0189】
4M 塩酸グアニジン
Salt(2.4M NaCl,0.8M KCl)
8%(v/v)Tween20
160mM システイン、16mM シスチン
2M アルギニン(pH6.0,pH7.5,pH8.5)
【0190】
(5)方法
以下に示すように試薬を作成し、96穴ディープウェルプレートにバッファーを分注した。
1)100μLずつのddHOを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,5,6,9,10行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
2)100μLずつのddHOを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,3,5,7,9,11行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0191】
3)200μLずつのddHOを、12連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のA,B,C,D列に加えた。
4)400μLずつのddHOを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のA,B,E,F列に加えた。
【0192】
5)400μLずつのddHOを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のA,C,E,G列に加えた。
6)400μLずつのpH6.0基本バッファーを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0193】
7)400μLずつのpH7.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの5,6,7,8行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
8)400μLずつのpH8.5基本バッファーを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの9,10,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0194】
9)100μLずつの8%(v/v)Tween20を、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの3,4,7,8,11,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
10)200μLずつのSalt(2.4M NaCl,0.8M KCl)を、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のE,F,G,H列に加えた。
【0195】
11)400μLずつの2Mアルギニン(pH6.0)を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4行のC,D,G,H列に加えた。
12)400μLずつの2Mアルギニン(pH7.5)を、8連ピペット(1250μLを用いて、96穴ディープウェルプレートの5,6,7,8行のC,D,G,H列に加えた。
【0196】
13)400μLずつの2Mアルギニン(pH8.5)を、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの9,10,11,12行のC,D,G,H列に加えた。
14)400μLずつの4M塩酸グアニジンを、8連ピペット(1250μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12行のB,D,F,H列に加えた。
【0197】
15)100μLずつの160mM システイン、16mM シスチンを、8連ピペット(300μL)を用いて、96穴ディープウェルプレートの2,4,6,8,10,12行のA,B,C,D,E,F,G,H列に加えた。
【0198】
(6)方法
ゼオライトを、約50mgずつ、96穴ディープウェルプレートに加えた。500μLの変性0Mイミダゾールバッファーを加え、平衡化した。0.2mgの変性HSAscFvを加え、1時間、振盪して、ゼオライトに吸着させた。ディープウェルプレートを2150×g、4℃で、5分間遠心して、ゼオライトを沈殿させた。
【0199】
上清を捨て、1mLの5mM Tris−HCl、pH7.5を加え、ゼオライトを、再懸濁した。更に、遠心、再懸濁を5回繰り返すことにより、ゼオライトを洗浄した。遠心して上清を除いた後、1mLのリフォールディングバッファーを加え、最懸濁後、4℃で、1晩振盪した。2150×g、4℃、5分間遠心して、ゼオライトを沈殿させ、上清を新しいディープウェルプレートに移した。回収したサンプルのELISA及びタンパク質定量を行った。
【0200】
(7)活性測定
ELISAプレートを使用し、以下の試薬を用いた。
ヒト血清アルブミン(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)
ブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)
抗ヒスタグ抗体ペルオキダーゼコンジュゲート
【0201】
ELISAプレートに、50μLの10μg/mLヒト血清アルブミンを加え、4℃で、1晩結合させた。PBSでウェルを洗浄後、100μLの1%(w/v)ブロックエースを加え、室温で、2時間インキュベートした。50μLのリフォールディンさせたHSAscFvを0.4%(w/v)ブロックエースで20倍希釈したものを加え、室温で、1時間、インキュベーションした。PBSで、ウェルを洗浄後、50μLの抗ヒスタグ抗体ペルオキダーゼコンジュゲートを、0.4%(w/v)ブロックエースで、2000倍希釈したものを加え、室温で、1時間、インキュベートした。
【0202】
PBSで、ウェルを洗浄後、100μLの発色液(0.4mg/mLオルトフェニレジンジアミン、クエン酸−リン酸バッファー、0.3μL/mL過酸化水素)を加え、10分間発色させた。50μLの2M硫酸を加え、発色を終了させた。プレートリーダー(モデル680XL、バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社)を使用し、波長490nmの吸光を測定した。
【0203】
(8)結果
上記測定結果を以下の表に示す。pH8.5(50mM Tris−HCl),500mMアルギニン、0.5%(w/v)Tween20、0.5%(w/v)PEG20000の条件で、最も吸光が高かった。
【0204】
【表13】

【0205】
(9)ゼオライトの種類による影響
1)使用したゼオライト
使用したゼオライトについて、以下の表に示す。
【0206】
【表14】

【0207】
2)方法
各種ゼオライトを20mgずつ、2mLチューブに分注した。500μLの変性0Mイミダゾールバッファーを加え、平衡化した。0.2mgの変性HSAscFvを加え、1時間、振盪して、ゼオライトに吸着させた。21000×g、20℃で、1分間、遠心して、ゼオライトを沈殿させた。上清を捨て、1mLの5mM Tris−HCl、pH7.5を加え、ゼオライトを再懸濁した。
【0208】
更に、遠心、再懸濁を5回繰り返すことにより、ゼオライトを洗浄した。遠心して上清を除いた後、1mLの最適条件のリフォールディングバッファーを加え、最懸濁後、4℃で、1晩振盪した。21000×g、4℃で、10分間遠心して、ゼオライトを沈殿させ、上清を新しい1.5mLチューブに移した。回収したサンプルのELISA及びタンパク質定量を行った。
【0209】
(10)結果
その結果を図9に示す。回収率、ELISAともに、CP811E−150が最大であった。
【産業上の利用可能性】
【0210】
以上詳述したように、本発明は、タンパク質の機能賦活・回復方法で用いるタンパク質リフォールディング条件設定キットに係るものであり、本発明により、BEA構造ゼオライトによるリフォールディング法を適用する場合の最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することができ、BEA構造のゼオライトによるリフォールディング法の有するスケールアップの容易性との相乗効果により、タンパク質の種類を問わず、大量で、広範な不活性タンパク質に対しても、それらの本来の機能を賦活させることができる。本発明により、封入体としての活性のないタンパク質から、正しい立体構造及び活性を持った活性タンパク質を得るためのタンパク質リフォールディング条件設定キットを提供することができる。また、本発明は、他の方法と比べて、高効率でリフォールディングを行うことが可能な不活性タンパク質のBEA構造ゼオライトによるリフォールディング法を適用する場合の最適ないし好適条件を簡便かつ迅速に設定することが可能なタンパク質リフォールディング条件設定キットを提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整えて活性型にするタンパク質のリフォールディング操作・工程を実施する際に、好適なリフォールディング条件を簡便かつ迅速に導き出すことができるタンパク質リフォールディング条件設定キットであって、
タンパク質変性剤により変性状態となって可溶化しているタンパク質を、変性剤中で吸着する担体として機能するBEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤を必須構成成分とし、
該BEA構造ゼオライトからなるリフォールディング剤に、変性状態となって吸着しているタンパク質を、溶液中に解離させる溶液成分である、純水成分又はpH調整剤を必須構成成分とし、更に、リフォールディング制御因子としてのタンパク質S−S架橋形成制御剤、界面活性剤、塩類、タンパク質変性剤、又は金属イオンの1種以上を含む組み合わせから構成され、
更に、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレート、を構成要素として含み、同時並行的に、複数の条件による試験を行うキット製品であることを特徴とするタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項2】
BEA構造ゼオライトの骨格構造が、酸素と、それ以外の1種又は2種以上の元素からなる、あるいは、ケイ素と酸素又はケイ素とアルミニウムと酸素のみからなる、請求項1に記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項3】
BEA構造ゼオライトが、NHもしくはNaフォームにしたゼオライトである、請求項1又は2に記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項4】
BEA構造ゼオライトが、粉末状態もしくは粒子状に造粒されている、請求項1から3のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項5】
BEA構造ゼオライトが、粉末状態もしくは粒子状で、分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートに固定化されている、請求項1から4のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項6】
BEA構造ゼオライトを造粒するための糊料、あるいは、一体型試験管、もしくは試験プレートに固定化するための糊料が、タンパク質に悪影響を与えない材料である、請求項1から5のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項7】
タンパク質変性剤が、塩酸グアニジン、又は尿素である、請求項1から6のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項8】
pH調整剤が、トリスアミノメタン三塩酸塩(Tris−HCl)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、又はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−ジンエタンスルホン酸(HEPES)である、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項9】
タンパク質S−S架橋形成制御剤が、シスチン、システイン、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、又はチオフェノールである、請求項1から8のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項10】
リフォールディング制御因子が、ポリエチレングリコール(PEG20K、PEG3350、PEG800、PEG200)、Ficol170、Ficol1400、アルギニン、EDTA、NaCl、ポリ燐酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロース、グルコース、グリセロール、イノシトール、シクロデキストリン、アミロース、Dextran T−500、Tween20、Tween40、Tween60、NP−40、SB3−14、SB12、CTAB、又はTriton X−100のうちの1種以上により構成される、請求項1から9のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項11】
分割された複数の同容積の空間を有する一体型試験管、もしくは試験プレートが、96穴マイクロプレート、又はそれ以上の穴数を有するマイクロプレートであり、各試験管、もしくはプレート上の穴に対して、おのおの異なる構成の溶液が注入されていることにより、同時並行的に複数の条件による試験を行うことができる、請求項1から10のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項12】
上記キットが、一連の操作を、自動ないし半自動で行う自動タンパク質リフォールディング条件設定装置である、請求項1から11のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。
【請求項13】
溶液成分の基本構成成分、ゼオライトが分注もしくは固定されたマイクロプレート、及び操作法を記載した取り扱い説明書を一組のパッケージとして組み合わせた、請求項1から12のいずれかに記載のタンパク質リフォールディング条件設定キット。

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−46686(P2011−46686A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132506(P2010−132506)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年5月21日 インターネットアドレス「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/fulltext/122400426/main.html,ftx_abs」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構 産業技術研究助成事業(若手研究グラント)「ゼオライトを用いたタンパク質リフォールディング法の確立」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】