タンパク質凝集の阻害物質
本発明は概して、シヌクレインの凝集を阻害または逆転させるジアミノフェノチアジン化合物の使用に関し、そしてこの目的のための(例えばパーキンソン病の処置のための)薬剤の製造でのその使用に関する。凝集したシヌクレインを検出または標識する関連方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に、パーキンソン病(PD)などの神経変性疾患に関連するα−シヌクレインタンパク質の凝集およびこのような凝集を調節できるジアミノフェノチアジン化合物に関する。
【0002】
発明の背景
パーキンソン病は、一般的なヒト神経変性運動障害であり、高齢者人口の1%に影響を及ぼしている(Kapurniotu (2004) Chemistry & Biology 11, pp 1476-1478による議論を参照)。PDの主な臨床症状は、運動緩徐、静止時振戦、筋固縮およびバランス困難である。PDは、ドーパミン作動性ニューロンの顕著な、そして進行性の変性によって、そして黒質および脳の他の領域における線維性細胞質内封入体(レビ小体[LB])およびジストロフィー性神経突起(レビ神経突起[LN])の存在によって神経病理学的に特徴付けられる(Recchia et al. (2004) FASEB J 18: 617-626)。
【0003】
ドーパミンニューロンの消失は、PDの主な臨床症状に確かに関連しているが、この多因性疾患の原因および病原はもちろんのこと、関連する「シヌクレイノパチー」の原因および病原もなお大部分は不明である。
【0004】
LBおよびLNの両方の主成分は、α−シヌクレインの線維性凝集である。α−シヌクレインは、膜結合プロセスおよびシナプス可塑性で役割を果たすように考えられ、学習および発育プロセスに関連している、広範に発現された神経シナプス前タンパク質である。LBおよびLNの形成の(単数または複数の)機構およびPDとのそれらの関連はまだ理解されていないが、いくつかの証拠が、α−シヌクレイン線維化がPDと関連していることと、α−シヌクレイン線維化が毒性を引き起こすことを示唆している(例えばMasliah et al., Science, 287:1265-1269 (2000); Feany et al., Nature 404:394-8 (2000))。
【0005】
α−シヌクレインに加えて、β−シヌクレインも神経変性シヌクレイノパチーに関与している。ヒトβ−シヌクレインは、α−シヌクレインに78%相同性である134残基神経タンパク質である。αおよびβ−シヌクレインは、3個の同様に配置されたチロシン残基を持つ保存C末端を共有する。α−シヌクレイン含有LBおよびLNに加えて、LBによるPDおよび認知症の展開は、これらの疾患の発症および進行においてα−シヌクレインに加えてβ−シヌクレインを巻き込む、海馬における新規なαおよびβ−シヌクレイン陽性病変の出現を伴う(Galvin et al. 1999)。β−シヌクレインがα−シヌクレインの線維化を制御して、おそらくα−シヌクレインの凝集を最小限に抑えるシャペロンとして作用することが指摘されている(Hashimoto et al. 2001; Uversky et al. 2002; Park and Lansbury, 2002)。したがって、β−シヌクレインのレベルの低下は、PD病因の考えられる因子として見なされてきた(Uversky et al. 2002)。
【0006】
それゆえ、シヌクレイン凝集の阻害または逆転は、治療的に有益であると考えられる。
【0007】
Li et al. (2004) Chemistry & Biology 11: pp 1513-1521は、抗生物質リファンピシンによるα−シヌクレイン線維化の阻害、および原線維の脱凝集について論じている。
【0008】
Zhu et al. (2004) Journal of Biological Chemistry 279, 26: pp 26846-26857は、フラボノイドのバイカレインによるα−シヌクレイン線維化の阻害、および原線維の脱凝集について論じている。
【0009】
このような凝集の阻害物質に関係すると言われる他の刊行物が当分野に多数ある。これらとしては、"Compositions for inhibiting the aggregation pathway of alpha-synuclein" (US6780971 - 2004-08-24); "Polyhydroxylated aromatic compounds for the treatment of amyloidosis and alpha-synuclein fibril diseases" (US2004152760 - 2004-08-05); Peptide and peptide derivatives for the treatment of alpha-synuclein related diseases (WO2004009625 - 2004-01-29); Proanthocyanidins for the treatment of amyloid and alpha-synuclein diseases (EP1377287 - 2004-01-07); Methods for preventing neural tissue damage and for the treatment of alpha-synuclein diseases (CN1440420T - 2003-09-03)が挙げられる。
【0010】
しかしながらシヌクレイン凝集を阻害できることが先に既知でなかった化合物の供給は、当分野への寄与を与えることが理解されるであろう。
【0011】
発明の開示
本発明者らは、シヌクレインタンパク質の凝集を阻害するためにジアミノフェノチアジン化合物が使用されうることを初めて証明した。
【0012】
簡潔には、発明者らは2つの形のα−シヌクレインを発現させて精製して、そして自己集合および原線維形成のアッセイにそれらを使用した。α−シヌクレインの切断型(tsyn)は、原線維形成で特に有効であることが見出され、このような集合tsynはチオフラビンTの蛍光を高めることが示された。発明者らは、他の化合物と同様にジアミノフェノチアジンの原線維破壊活性をアッセイした。ジアミノフェノチアジンは、集合α−シヌクレインを1μM未満に破壊することが見出された。
【0013】
シヌクレイン結合についての固相アッセイも考案され、これを、チオニニウムクロリドなどのジアミノフェノチアジン、およびフラボンが結合を阻害することを示すために使用した。
【0014】
当業者によって理解されるように、本開示に照らして、これらの結果は特に、シヌクレイン凝集に関連する疾患(例えばPDおよび本明細書で議論するその他の疾患)の根底にある原因の処置におけるこのような化合物の有用性を証明する。
【0015】
Piotrowski, G. (1936) "The treatment of parkinsonian tremor. Medical Record, 144:322-323"は、メチレンブルー(メチルチオニニウムクロリド−MTC)を使用する4個体の試験でのパーキンソン振戦の症状軽減を報告した。MTCは、1または2mg/kg用量で静脈内投与した。8グレイン(=518mg)/日の経口投与は、副作用のため中止した。振戦に対する報告された効果は強力でなく、限定された時間のみ続いたが、別の症状(固縮)は大きな影響を受けなかった。チオニンによる別の試験は結果を与えなかった。したがって、開示の要点は、副交感神経作用を有することが既知であったMTCが特に、パーキンソン病の1つの症状、すなわち「パーキンソン振戦」に限定された効果を有したことである。
【0016】
対照的に、本発明は、疾患の症状出現よりも根底にある疾患プロセス自体を目的とする処置に関する。
【0017】
ジアミノフェノチアジンは、タウタンパク質凝集を阻害することと、PHFの構造を破壊して、PHFコアのタンパク質分解安定性を逆転させることとが先に示されている(WO 96/30766, F Hoffman-La Rocheを参照)。このような化合物は、アルツハイマー病およびレビ小体病を含む種々の疾患の処置における使用について開示された。
【0018】
加えて、WO 02/055720 (The University Court of the University of Aberdeen)は、特に多様なタンパク質凝集疾患の処置のためのジアミノフェノチアジンの還元型の使用について考察しているが、開示は主にタウオパシー(tauopathies)に関連している。
【0019】
WO 2005/030676 (The University Court of the University of Aberdeen)は、放射性標識フェノチアジン、ならびに例えばタウオパシーの診断および治療でのそれらの使用について考察している。
【0020】
しかしながら、これらの刊行物のいずれも、特にα−シヌクレイン凝集の阻害または逆転のためのジアミノフェノチアジン、特に非還元型の使用を具体的に開示していない。
【0021】
ジアミノフェノチアジン化合物
本発明は、次の式の1つを有する、ある一定のジアミノフェノチアジン化合物およびその類似体、ならびにその製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物(本明細書ではまとめて「ジアミノフェノチアジン」または「ジアミノフェノチアジン化合物」と称する)に関する:
【0022】
【化3】
【0023】
式(1)は、還元型の化合物を示すが、式(2)、(3)、および(4)それぞれは酸化型の化合物を示している。
【0024】
一実施形態において、化合物は、式(1)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0025】
一実施形態において、化合物は、式(2)または(3)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0026】
一実施形態において、化合物は、式(4)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0027】
上記の構造のそれぞれ1つが、多くの等価の共鳴構造のうちのただ1つであり、そのすべてがその代表的な構造によって含まれるものとする。例えば、構造(4)は、多くの等価の共鳴構造のうちのただ1つであり、その一部は以下に示されており、そのすべてが構造(4)によって含まれることが意図される:
【0028】
【化4】
【0029】
炭素環元素置換基
上の式のそれぞれ1つにおいて、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−SH;−SR;
−NO2;
−C(=O)R;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR;−C(=O)NR2;−C(=O)NRN1RN2;
−NH2;−NHR;−NR2;−NRN1RN2;
−NHC(=O)H;−NRC(=O)H;−NHC(=O)R;−NRC(=O)R;
−R;
より独立して選択され;
各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NRN1RN2において、独立して、RN1およびRN2はそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する。
【0030】
RN1およびRN2が、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する、基−NRN1RN2の例としては、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、ピロリル、および置換型、例えばN置換型、例えばN−メチルピペラジノが挙げられる。
【0031】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−R
より独立して選択される。
【0032】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−R
より独立して選択される。
【0033】
一実施形態において、各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0034】
一実施形態において、各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択される。
【0035】
一実施形態において、各Rは、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
一実施形態において、各Rは、−Meおよび−Etより独立して選択される。
【0036】
一実施形態において、C1〜6アルキル基は、C1〜4アルキル基である。
一実施形態において、C2〜6アルケニル基は、C2〜4アルケニル基である。
一実施形態において、C3〜6シクロアルキル基は、C3〜4シクロアルキル基である。
【0037】
非置換脂肪族C1〜6アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル、ネオ−ペンチル、ヘキシル、イソ−ヘキシルなどが挙げられる。
【0038】
非置換脂肪族C2〜6アルケニル基の例としては、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、ブテン−3−イルなどが挙げられる。
【0039】
非置換C3〜6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロプロピル−メチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、C6〜10カルボアリール基は、C6カルボアリール基である。
一実施形態において、C5〜10ヘテロアリール基は、C5〜6ヘテロアリール基である。
一実施形態において、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル基は、C6カルボアリール−C1〜2アルキル基である。
【0041】
非置換C6〜10カルボアリール基の例としては、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0042】
非置換C5〜10ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、チエニル、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルが挙げられる。
【0043】
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチルが挙げられる。
【0044】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR’;
−SH;−SR’;
−NO2;
−C(=O)R’;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR’;−C(=O)NR’2;−C(=O)NR’N1R’N2;
−NH2;−NHR’;−NR’2;−NR’N1R’N2;
−NHC(=O)H;−N’RC(=O)H;−NHC(=O)’R;−N’RC(=O)’R;
−R’;
より独立して選択され;
各R’は:
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;より独立して選択され;
各基−NR’N1R’N2において、R’N1およびR’N2は独立して、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する。
【0045】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−R’
より独立して選択される。
【0046】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0047】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0048】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0049】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0050】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、−Meおよび−Etより独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0051】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0052】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−H、−Me、および−Etより独立して選択される。
【0053】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−Hおよび−Meより独立して選択される。
【0054】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち4つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち2つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち1つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれが、−Hである。
【0055】
アミノ基
上の式のそれぞれ1つでは、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりであり;あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0056】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが独立して、Rについて上で定義したとおりであり;あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0057】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0058】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0059】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0060】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが:
非置換脂肪族C1〜6アルキル;;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0061】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0062】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0063】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0064】
別の例で、一実施形態において、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、および−Etより独立して選択される(例えば、−NR3NAR3NAが、−NH2、−NHMe、−NMe2、−NHEt、−NEt2、または−NMeEtである)。
【0065】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される(例えば、−NR3NAR3NAが、−NH2、−NHMe、またはNMe2である)。
【0066】
まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりであり;あるいはR7NAおよびR7NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0067】
例えば、一実施形態では、各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが独立して、Rについて上で定義したとおりであり;あるいはR7NAおよびR7NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0068】
一実施形態において、−NR3NAR3NBおよび−NR7NAR7NBは、どちらも存在する場合、同じである。
【0069】
一実施形態において、−NR3NAR3NBおよび−NR7NAR7NBは、どちらも存在する場合、異なる。
【0070】
上の式のそれぞれ1つでは、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりである。
【0071】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、独立してRについて上で定義したとおりである。
【0072】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される。
【0073】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される。
【0074】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0075】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0076】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0077】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0078】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0079】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−H、−Me、および−Etより独立して選択される(例えば、=NR3NCは、=NH、=NMe、または=NEtである)。
【0080】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−Hおよび−Meより独立して選択される(例えば、=NR3NCは、=NHまたは=NMeである)。
【0081】
まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCは独立してR3NCについて上で定義したとおりである。
【0082】
窒素環原子の置換基
また、まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、RN10は、存在する場合、独立してR3NC(またはR7NC)について上で定義したとおりである。
【0083】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−Hおよび非置換脂肪族C1〜6アルキルより独立して選択される。
【0084】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−H、−Me、およびEtより独立して選択される。
【0085】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−Hおよび−Meより独立して選択される。
【0086】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、独立して−Hである。
【0087】
対イオン
X−は、存在する場合、1つ以上のアニオン性対イオンであり、電気的中性を達成する。
【0088】
適切なアニオン性対イオンの例は、見出し「塩」のもとで以下考察する。
【0089】
一実施形態において、X−は、独立してハロゲンアニオン(すなわちハライド)である。
一実施形態において、X−は、独立して、Cl−、Br−、またはI−である。
一実施形態において、X−は、独立してCl−である。
【0090】
一実施形態において、X−は、独立してNO3−である。
【0091】
組合せ
上記の実施形態の妥当と思われる組合せはすべて、各組合せが個々にそして明示的に引用されているかのように本明細書に開示される。
【0092】
異性体
ある一定の化合物は、1つ以上の特定の幾何、光学、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー、アトロプ、立体異性、互変異性、配座、またはアノマー形に存在し、シスおよびトランス形;EおよびZ形;c、t、およびr形;エンドおよびエキソ形;R、S、およびメソ形;DおよびL形;およびl形;(+)および(−)形;ケト、エノール、およびエノラート形;シンおよびアンチ形;向斜および背斜形;αおよびβ形;アキシャルおよびエクリトリアル形;舟、いす、ねじれ、エンベロープ、および半いす形、およびその組合せが挙げられ、以下集合的に「異性体」(または「異性形」)と呼ぶが、これらに限定されない。
【0093】
互変異性形に関して、以下考察されるものを除いて、本明細書で使用するような「異性体」という用語から、特に除外されるものは、構造(structural)(または構造、constitutional)異性体(すなわち単に空間における原子の位置によってではなく、原子間の結合が異なる異性体)であることに注意すること。例えば、メトキシ基、−OCH3への言及は、その構造異性体、ヒドロキシメチル基、−CH2OHへの言及として解釈されない。同様に、オルト−クロロフェニルへの言及は、その構造異性体メタ−クロロフェニルへの言及として解釈されない。しかしながら、構造のクラスへの言及は、そのクラスに含まれる構造上異性の形を含むであろう(例えば、C1〜7アルキルは、n−プロピルおよびイソプロピルを含む;ブチルは、n−、イソ−、sec−、およびtert−ブチルを含む;メトキシフェニルは、オルト−、メタ−、およびパラ−メトキシフェニルを含む)。
【0094】
上記の除外は、例えば次の互変異性対におけるように、互変異性形、例えば、ケト、エノールおよびエノラート形には関係しない:ケト/エノール(下に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミドアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシ−ニトロ。
【0095】
【化5】
【0096】
「異性体」という用語に1つ以上の同位体置換が特に含まれることに注意のこと。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)を含むいずれの同位体形でもよい;Cは、11C、12C、13C、および14Cを含むいずれの同位体形でもよい;Oは、16Oおよび18Oを含むいずれの同位体形でもよい;などである。
【0097】
特にことわりのない場合、特定の化合物への言及は、(全体または部分的に)ラセミおよびその他の混合物を含む、このようなすべての異性体形を含む。このような異性体形の調製(例えば不斉合成)および分離(例えば分別結晶化およびクロマトグラフィー手段)の方法は、当分野で既知であるか、あるいは本明細書で教示されている方法、または既知の方法を既知の方式で適合させることによって容易に得られる。
【0098】
塩類
化合物の対応する塩、例えば製薬的に許容される塩を調製、精製、および/または処理することは好都合または所望でありうる。製薬的に許容される塩の例としては、Berge et al., 1977, "Pharmaceutically Acceptable Salts," J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19において考察されている。
【0099】
例えば、化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性である官能基(例えば、−COOHが、−COO−でありうる)を有する場合、塩は適切なカチオンで形成されうる。適切な無機カチオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属、ならびにAl+3などの他のカチオンが挙げられる。適切な有機カチオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、アンモニウムイオン(すなわちNH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられる。ある適切な置換アンモニウムイオンは、エチルアミン、ジエチルアミン、ジクロロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびに、リジンおよびアルギニンなどのアミノ酸より由来するアンモニウムイオンである。一般的な4級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0100】
化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性である官能基(例えば、−NH2が、−NH3+でありうる)を有する場合、塩は適切なアニオンで形成されうる。適切な無機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下の無機酸、すなわち塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸に由来するアニオンが挙げられる。
【0101】
適切な有機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下の有機酸、すなわち2−アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および吉草酸に由来するアニオンが挙げられる。適切なポリマー有機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下のポリマー酸、すなわちタンニン酸、カルボキシメチルセルロースに由来するものが挙げられる。
【0102】
また、化合物は、混合塩(すなわち塩、または別の塩と組合せた化合物)の形で供給されうる。例えば、塩化メチル−チオニウム塩化亜鉛混合塩(MTZ)は、塩化メチル−チオニウム(MTC)、塩化物塩、および別の塩、塩化亜鉛との混合塩である。このような混合塩は、「およびその製薬的に許容される塩」という用語によって含まれるものである。
【0103】
特にことわりがない場合、特定の化合物への言及は、その塩の形態も含む。
【0104】
水和物および溶媒和物
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、および/または処理することは、好都合または望ましいであろう。「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、化合物、化合物の塩)および溶媒の錯体を意味するために従来の意味で本明細書で使用される。溶媒が水である場合、溶媒和物を、水和物、例えば、1水和物、2水和物、3水和物と好都合に称することができる。
【0105】
特にことわりがない場合り、特定の化合物への言及は、その溶媒和物の形態も含む。
【0106】
いくつかの好適な例
いくつかの好適なジアミノフェノチアジンは、以下、およびその製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物を含む:
【0107】
【表2】
【0108】
一実施形態において、ジアミノフェノチアジンは、MTC、ETC、DEMTC、DEETC、チオニン、および塩化トロニウム(トルイジンブルーOとしても既知)より選択される。
【0109】
本発明の好適な化合物は、本明細書に記載されるアッセイにおいて、高い活性を示す化合物である。
【0110】
凝集の阻害
本発明のすべての治療的および他の局面において、ジアミノフェノチアジンが実質的に酸化された形態、例えば少なくとも50、60、70、80、90、95、99、または100%の酸化形であることが好ましい。
【0111】
したがって、本発明の第1の態様において、例えば細胞においてシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集を阻害するためのジアミノフェンチアジンの使用を開示する。
【0112】
凝集は、神経変性および/または臨床的認知症として表される疾患状態の状況においてでありうる。
【0113】
別の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体の処置または治療方法での、例えばシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防の方法での使用のためにジアミノフェノチアジンを提供する。
【0114】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集であって、神経変性および/または臨床的認知症として表される疾患状態に関連する凝集を阻害する薬剤、例えばシヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防のための薬剤の製造におけるアミノフェノチアジンの使用を提供する。
【0115】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防の方法であって、シヌクレインの凝集を阻害するために、ジアミノフェノチアジン、またはそれを含む治療組成物の予防的または治療的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0116】
別の態様において、本発明は、哺乳類の脳においてシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集であって、後述するような疾患状態に関連する凝集を調節する方法を提供し、該処置はその処置が必要な前記哺乳類にジアミノフェノチアジンの予防的または治療的有効量を投与する工程を含む。
【0117】
別の態様において、本発明は、哺乳類の脳におけるシヌクレイン、特にα−シヌクレイン凝集体の産生を阻害する方法を提供し、該処置は上記のとおりである。
【0118】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレイン凝集に関連する疾患の、それに罹患した哺乳類における処置のための薬物製品を提供し、該薬物製品は、薬物製品が前記疾患の処置用であることがラベル表示された、またはそのことを示すラベルが付いた容器を含み、該容器は、少なくとも1つの製薬的に許容される賦形剤と、活性成分としての、上に記載されたものより選択される単離された純ジアミノフェノチアジン化合物を含む1つ以上の投薬単位を含有する。
【0119】
ジアミノフェノチアジンは、処置される状態または疾患に応じて、単独で、あるいは他の処置と同時にまたは連続的のいずれかで組合せて投与されうる。特に、関連するタンパク質凝集反応の他の阻害物質と共にジアミノフェノチアジンを使用または処方することが望ましいことがある。
【0120】
好ましい組合せは、上述のジアミノフェノチアジン化合物のいずれか1つ以上と、処置される哺乳類のドーパミンレベルを調節する化合物である。このようなさらなる化合物としては、levo−DOPAおよびドーパミン作動性アゴニスト、例えばロピニロールが挙げられる(例えば、Olanow, C.W. 2004, The scientific basis for the current treatment of Parkinson's disease, Ann. Rev. Med. 55:41-60を参照)。
【0121】
それぞれの場合、哺乳類は好ましくはヒトである。
【0122】
リガンド
α−シヌクレインの凝集を阻害できる、本明細書で考察されるジアミノフェノチアジン化合物は、α−シヌクレイン(または凝集α−シヌクレイン)のリガンドまたは標識として作用することもできるだろう。したがって、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物はリガンド、例えばシヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインのリガンドである。
【0123】
このようなジアミノフェノチアジン化合物(リガンド)は、他の化学基、例えば検出可能な標識、例えば安定および不安定な検出可能同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、抗原基、治療部分、または予後、診断または治療用途を補助しうる他のいずれの部分を包含しうる、それらにコンジュゲートされうる、それらによってキレート化されうる、またはそうでなければそれらと結合しうることができる。
【0124】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、化合物が1つ以上(例えば1、2、3、4など)の同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、抗原基、または治療部分を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合されるというさらなる制限を伴う。
【0125】
一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、標識、例えばα−シヌクレイン(または凝集α−シヌクレイン)の標識であるのと同様にリガンドであり、1つ以上の(例えば1、2、3、4など)の検出可能な標識を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合される。
【0126】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、化合物が1つ以上(例えば1、2、3、4など)の検出可能な標識を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合されるというさらなる制限を伴う。
【0127】
一実施形態において、検出可能な標識は、安定な検出可能な同位体、不安定な検出可能な同位体、放射性同位体(例えば99Tc)、陽電子放出原子(例えば11C、18F)、磁気共鳴標識(例えば19F)、染料、蛍光基、または抗原基であるか、またはそれを包含する。
【0128】
標識ジアミノフェノチアジン化合物(例えば、α−シヌクレインまたは凝集α−シヌクレインに結合したとき)は、いずれの適切な手段によっても描出または検出されて、当業者は、当分野で既知であるようないずれの適切な検出手段も使用されうることを理解するであろう。
【0129】
例えば、ジアミノフェノチアジン化合物(リガンド標識)は、陽電子放出原子(例えば、11C)(例えば、1個以上のアルキル基置換基、例えば、メチル基置換基の炭素原子として)を包含して、当分野で既知であるように陽電子放射型断層撮影法(PET)を使用して化合物を検出することによって、適切に検出されうる。
【0130】
例えば、一実施形態においてジアミノフェノチアジン化合物は、上のように定義されるが、ジアミノフェノチアジン化合物の環原子炭素の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が陽電子放出炭素原子、例えば11Cであり;および/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)の炭素原子の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が陽電子放出炭素原子、例えば11Cであるというさらなる制限を伴う。
【0131】
一実施形態において、置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)の炭素原子の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)は、陽電子放出炭素原子、例えば11Cである。
【0132】
一実施形態において、置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)は、−11CH3である。
【0133】
このようなジアミノフェノチアジン化合物の例(すなわち、PETによって検出可能な陽電子放出原子を包含する)は、以下を含む:
【0134】
【化6】
【0135】
これらのおよび同様の11C標識ジアミノフェノチアジンを調製する適切な方法は、例えばWO 02/075318(図11a、11b、12を参照)およびWO 2005/030676に示されている。
【0136】
あるいは、またはさらに、ジアミノフェノチアジン化合物は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、例えば99Tc)にキレートされるキレート基(例えば、錯体またはキレート形成によって別の分子または原子またはイオンへのコンジュゲーションに適切な部分)(例えば、放射性同位体キレート基、例えば、テクネチウムキレート基、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸基)にコンジュゲートされうる。
【0137】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)が、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、例えば、99Tc)をキレート化できるキレート基(例えば、テクネチウムキレート基、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸基)である、またはそれを包含するというさらなる制限を伴う。
【0138】
あるいは、またはさらに、ジアミノフェノチアジン化合物は、磁気共鳴標識(例えば、19F)を包含することができるので、MRI撮像に適切でありうる(例えば、Higuchi et al. Nat Neurosci. 2005 Apr; 8(4):527-33を参照)。
【0139】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が、磁気共鳴標識(例えば、19F、例えば、−19F、−C(19F)3など)である、またはそれを包含するというさらなる制限を伴う。
【0140】
したがって、一態様において、本発明は、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程を含む、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインを標識する方法を提供する。
【0141】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程と、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に結合した前記化合物の存在および/または量を検出する工程とを含む、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインを検出する方法を提供する。
【0142】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノパシーに罹患したと考えられる対象(患者)における、シヌクレイノパシーの診断または予後評価の方法であって、
(i)対象に、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれに結合されたジアミノフェノチアジン化合物)を導入する工程と、
(ii)対象の脳内でシヌクレインまたは凝集シヌクレインに結合した前記化合物の存在および/または量を決定する工程と;
(iii)(ii)で行った決定の結果を対象の疾患状態と相関させる工程と、
を含む方法を提供する。
【0143】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノシーの診断または予後評価の方法で使用するための、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物)を提供する。
【0144】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノパシーの診断または予後の方法で使用するための診断または予後試薬の製造方法における、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物)の使用を提供する。
【0145】
当業者は、ジアミノフェノチアジンリガンド/標識を直接投与する代わりに、同じ対象に存在する、または同じ対象に投与される活性剤による活性形(例えば結合形、標識形)への変換のために、それらが前駆体の形態で投与されうることを理解するであろう。
【0146】
疾患
本発明が関与する疾患状態は、シヌクレイノパシーである。
【0147】
当業者が認識しているように、シヌクレイノパシーという用語は、ニューロンおよびグリアの選択的集合の細胞質において、特にシヌクレイン含有包含物の存在が疾患にとって疾病特徴的である、シヌクレインタンパク質、特にα−シヌクレインの線維状凝集体により特徴付けされる神経変性障害の群を名づけるために使用される。
【0148】
これは、シヌクレイン含有包含物が他の病状に加えて存在する、または存在しない非シヌクレイノパシー障害とは区別されるべきである。
【0149】
シヌクレイノパシーは現在、以下の障害、すなわちパーキンソン病(PD)、レビ小体による認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、薬物誘発パーキンソニズム(例えば1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン[MPTP]またはロテノンなどの殺虫剤によって生じる)、および純粋自律神経不全(PAF)より成る。
【0150】
レビ小体が見出されうる非シヌクレイノパシー障害は、以下、すなわちアルツハイマー病、ピック/前頭側頭認知症、クロイツフェルト−ヤコブ病、毛細血管拡張性運動失調、大脳皮質基底核変性症、ジストニア、進行性核上性麻痺、神経軸索ジストロフィー、亜急性硬化性汎脳炎、筋萎縮性側索硬化症、ALS認知症グアム合併症(ALS-dementia Guam complex)、メージュ症候群およびハレルフォルデン−シュパッツ病(HSD)(脳内鉄による神経変性)を含む。LBは、多様な神経変性疾患において普通に発生する。研究は、神経LB中のα−シヌクレインの原線維の形態が、根底にある疾患とは無関係に基本的な類似性を示すことを指摘している。
【0151】
パーキンソン病は、MSA(100,000あたり4)と比較して、高い罹患率(100,000あたり約100)を有する。
【0152】
DLBは、以前存在した他の複数のものを含む共通名として採用された(McKeith, I. G. et al. (1996). "Consensus guidelines for the clinical and pathologic diagnosis of dementia with Lewy bodies (DLB): report of the consortium on DLB international workshop. Neurology, 47, 1113-1124."Neurology 47: 1113-1124)。これらは、レビ小体型の老年性認知症、アルツハイマー病のレビ小体変形、皮質性レビ小体認知症およびレビ小体認知症を含む。MSAは、シャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症および線条体黒質変性症を含む。DLBは、アルツハイマー病の次に、高齢者において2番目に一般的な認知症の形であると報告されている。
【0153】
パーキンソン病は、黒質におけるLBを特徴とするが、それらは皮質にも見出されうる。DLBは、皮質LBのより頻繁な発生を特徴とする。MSAでは、グリア細胞質封入体(GCI)と呼ばれる線維状封入体が、主に乏突起膠細胞に見出される。LBの成分フィラメントの性質は、2つの知見が主成分を確証する1997年まで不明であった:(i)α−シヌクレインのミスセンス突然変異が、まれな型の家族性PDを引き起こすことが見出された(Polymeropoulos, M. H. et al. (1997). "Mutation in the α-synuclein gene identified in families with Parkinson's disease." Science 276: 2045-2047)および(ii)特発性PDおよびDLBにおけるLBおよびLNは、α−シヌクレインに対して免疫反応性であることが見出された(Spillantini, M. G. et al. (1997). "α-Synuclein in Lewy bodies." Nature 388: 839-840)。組み換えα−シヌクレインは、生体外でフィラメントを形成しうる。該タンパク質は、自然のままの折り畳まれていないタンパク質である。それが凝集する疾患において、それはβ−シート構造の原線維を形成する。
【0154】
好ましくは、本発明の化合物は、PD、PAF、MSAおよびHSDより選択されるシヌクレイノパシーに関して使用される。
【0155】
対象の選択
本明細書で開示するリガンドは、診断または予後の方法の一部として使用されうる。それは処置のための患者を選択するために、あるいは対象に投与された処置または治療薬、例えば、α−シヌクレイン関連の阻害物質の有効性を評価するために使用される。
【0156】
方法に適切な対象は、従来の因子に基づいて選択されうる。したがって、患者の初期の選択は、経験のある臨床医による厳密な評価;補助研究所および他の調査によって可能である限り、非AD診断の除外;神経病理学的に検証されたバッテリを使用する認知機能のレベルの客観的評価のいずれか1つ以上を含みうる。
【0157】
投薬単位、化合物の製剤および投与
本明細書に記載する化合物、組成物または薬剤の投与は、好ましくは「予防的有効量」または「治療的有効量」であり(場合によっては、予防が治療と見なされうるが)、これは個体への利点を示すのに十分である。
【0158】
リガンドでは、量は、シヌクレイノパシーに罹患している患者において検出可能な結合を生じさせるであろう診断的有効量となるであろう。
【0159】
薬剤では、実際の投与量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置される疾患の性質および重症度によるであろう。処置の処方、例えば投薬量などの決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に既知の他の因子を考慮に入れる。
【0160】
典型的には、哺乳類はヒトであるが、動物での使用(例えば試験目的、または動物治療目的で)も本発明に含まれる。
【0161】
本発明のフェノチアジンの例は当分野で既知であり、標準テキストで言及されるプロセスによって製造されうる(例えば、Merck Manual, Houben-Weyl, Beilstein E III/IV 27, 1214 ff, J. Heterocycl. Chem 21, 613 (1984)など)。上の式の化合物、その製薬的に許容される塩、または提供されたアッセイで定義される特性を有する他の化合物は、(例えば、製薬調製物の形での)毒性についてのさらなる試験の後に、薬剤として使用されうる。
【0162】
メトヘモグロビン血症の処置および躁うつ病の予防を含む、広範囲の医療適応症でのメチレンブルーの従来の製薬的使用が記載されており(Naylor (1986) Biol. Psychiatry 21, 915-920)、全身投与後のCNS侵入について記載されている(Muller (1992) Acta Anat., 144, 39-44)。アズールAおよびBの産生は、メチレンブルーの正常な代謝分解生成物として発生する(Disanto and Wagner (1972a) J. Pharm. Sci. 61, 598-602; Disanto and Wagner (1972b) J. Pharm. Sci. 61 1086-1094)。薬剤の投与は非経口的に、例えば、経口的に錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、エマルジョン剤または懸濁剤の形で)、経鼻的に(例えば、鼻腔用スプレーの形で)または経直腸的に(例えば、坐剤の形)で実施されうる。しかしながら、投与は、非経口的に、例えば筋肉内または静脈内に(例えば、注射液剤の形)も実施されうる。
【0163】
組成物は、上の構成成分に加えて、製薬的に許容される賦形剤、保存剤、可溶化剤、増粘物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、またはコーティング剤を含みうる。このような物質は非毒性であるべきであり、有効成分の有効性を妨害すべきではない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路によって変化しうる。技法およびプロトコルの例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences", 16th edition, Osol, A. (ed.), 1980に見出すことができる。
【0164】
組成物が、製薬組成物に処方される場合、その投与は非経口的に、例えば経口的に粉剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、エマルジョン剤または懸濁剤の形で、経鼻的に(例えば、鼻腔用スプレーの形で)または経直腸的に(例えば、坐剤の形)実施されうる。しかしながら、投与は、非経口的に、例えば筋肉内に、静脈内に、皮膚に、皮下的に、または腹腔内に(例えば注射液剤の形で)も実施されうる。
【0165】
したがって、例えば、製薬組成物が錠剤の形である場合、それはゼラチンまたは補助剤などの固体担体を含みうる。錠剤、コーティング錠、糖衣錠および硬ゼラチンカプセルの製造では、活性化合物およびその製薬的に許容される酸付加塩は、製薬的に不活性な無機または有機賦形剤と共に加工されうる。ラクトース、トウモロコシ、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などは、例えば、錠剤、糖衣錠および硬ゼラチンカプセル剤のこのような賦形剤として使用されうる。軟ゼラチンカプセルの適切な賦形剤は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。組成物が液体製薬製剤の形であるとき、それは一般に水、石油、動物または植物油、鉱油または合成油のような液体担体を含むであろう。生理食塩溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液あるいはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールも含まれうる。液剤およびシロップ剤製造用の適切な賦形剤は例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、トリハロースなどである。注射用液剤に適切な賦形剤は、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロールおよび植物油などである。静脈内、皮膚または皮下注射、あるいは脳へのカテーテル内輸液では、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形であろう。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸加リンガー注射液などの、等張性ビヒクルを使用する適切な液剤を十分に調製することができる。保存料、安定剤、緩衝剤および/または他の添加剤は、必要に応じて含まれうる。
【0166】
本明細書において、リガンドとしての化合物の使用は、同様の担体または組成物を利用しうる。
【0167】
したがって、ジアミノフェノチアジン(例えば、MTC)がヒトまたは動物の体の処置または治療方法で使用される本発明の態様において、その方法は好ましくは、ジアミノフェノチアジンの有効量の経口での投与を包含するであろう。
【0168】
好ましくは、薬剤は経口投与に適しており、好ましくは固体投薬単位形である。
【0169】
好ましくは、投薬量は経口投与されるであろう。好ましくは、投薬量は400、300、200、または100mgの1日総用量に等しいか、それ未満であろう。例えば、投薬量は、10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、または130mg t.i.d.(1日3回)の投薬単位より成りうる。
【0170】
あるいはまた、投薬量は、10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg b.i.d.(1日2回)より成りうる。
【0171】
好ましくは、処置は少なくとも2、3、または4週間以上継続される。
【0172】
これらの投薬量に関する説明書は、書面の形で本発明の薬物製品の容器の表面または内部に含まれうる。
【0173】
投薬が静脈内である場合、ジアミノフェノチアジンがMTCでないことが好ましい。
【0174】
本明細書で行ういずれの相互参照の開示も、本開示を補足するために当業者によって必要とされる限り、本明細書によって特に本明細書に組み入れられる。
【0175】
本発明はここで、以下の非制限的な図面および実施例を参照して更に説明されるであろう。これらに照らして、本発明の他の実施形態を当業者は思い付くであろう。
【0176】
実施例
化学的合成
【0177】
以下の合成は、例示の目的のためのみに提供され、本明細書で記載されたように、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0178】
合成1
エチル−チオニニウムクロリド(ETC)
【化7】
【0179】
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(5g、30.4mmol)を、ジエチルエーテル(25cm3)に溶解し、塩酸(6cm3、10M)を加え、混合物を濃縮して、赤色/褐色の固体として標記化合物(7.22g、100%)を得た。δH(250 MHz; D2O): 7.68 (4H, m, ArH), 3.69 (4H, q, 7.32, NCH2), 1.11 (6H, t, 7.32, CH3); δC (62.9 MHz; D2O): 12.1 (CH3), 56.4 (NCH2), 126.8 (ArC), 127.6 (ArC), 135.5 (ArC), 139.1 (ArC)。
【0180】
エチル−チオニニウムクロリド
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(7.22g、30.4mmol)を、水(250cm3)に溶解し、pHをHClで1.6に調整し、硫化ナトリウム(>60%)(3.95g、30.4mmol)を分けて加えた。懸濁液を、硫化ナトリウムがすべて溶解するまで撹拌した。水(200cm3)中の塩化鉄(III)(27.15g、100mmol)の溶液を調製して、溶液の半分を混合物に加えた。明黄色から青色に即時の色変化が生じた。次に、残りの塩化鉄(III)溶液を加える前に、溶液を1時間通気した。混合物を5℃に冷却し、濾過し、明緑色のスラッジを除去した。HCl水溶液(15cm3、6M)を濾液、続けて塩化ナトリウム(60g)に加えて、濾過する前に懸濁液を5分間撹拌して、固体の生成物を得て、それをDCMに溶解し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、紫色/緑色の固体(1.28g、22%)を得た。この紫色/緑色の固体を分取C18逆相カラム上に乗せて、水(1L)で、または黄色が消えるまで洗浄した。生成物をMeOH/HCl(pH2)でカラムから洗浄し、濃縮して、粘着性状の紫色の固体として標記化合物(0.64g、11%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 1.26(12H, t, 6.5, CH3), 3.56 (8H, q, 6.5, NCH2), 7.01 (2H, s, ArH), 7.20 (2H, d, 9.25, ArH), 7.54 (2H, d, 9.25, ArH); m/z (ESI) 340.2 (100%, [M-Cl]+)。
【0181】
合成2
1,9−ジメチル−メチル−チオニニウムクロリド(DMMTC)
【化8】
【0182】
3−メチル−N,N−ジメチルフェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、水(100cm3)を加えて、温度を氷浴で5℃に下げた。この冷却された溶液に、注意深く硫酸(98%、22.5g)を加えた。この溶液に、3−メチル−N,N−ジメチルアニリン(10g、74mmol)、次に亜硝酸ナトリウム(5.6g、81.4mmol)を加えて、溶液を室温で1時間撹拌した。鉄(Fe)くず(12.8g、229mmol)を加えて、混合物をさらに2時間撹拌した。溶液を濾過し、次に飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、有機物を酢酸エチル(3x100cm3)中に抽出した。抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。油状物をジエチルエーテル(100cm3)に溶解し、濃塩酸(50cm3)を加えた。溶液を蒸発乾固して、明黄褐色の固体として標記化合物(10g、60%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2849 (CH), 2821 (CH), 2543 (CH), 2444 (CH), 1586 (C=N), 1487 (CH), 1445 (CH), 1415 (CH), 1138 (CH); δH (250 MHz; D2O): 7.59 (1H, s, ArH), 7.50 (2H, s, ArH), 3.24 (6H, s, CH3), 2.39 (3H, s, CH3); dC(62.9 MHz; D2O) 18.9 (CH3), 48.8 (CH3), 122.1 (ArC), 126.2 (ArC), 127.6 (ArC), 133.7 (ArC), 137.4 (ArC), 144.4 (ArC)。
【0183】
ジメチルメチルチオニニウムクロリド
500cm3丸底フラスコに、3−メチル−N,N−ジメチル−フェニレン−ジアミン二塩酸塩(0.9g、4.03mmol)を加え、それを、硫化ナトリウム(>60%)(0.52g、4.03mmol)を加える前に塩酸水溶液(50cm3、3M)に溶解した。塩化鉄(III)六水和物(7.26g、27mmol)を水(50cm3)に溶解し、この溶液の半分を反応混合物に注ぐと、即時に青色を呈した。次に、残りの塩化鉄(III)水溶液を加える前に、溶液を2時間通気した。混合物を5℃に冷却し、濾過した;沈殿物を沸騰水(60cm3)に溶解し、濾過し、冷却した。塩酸(10cm3、6M)を、冷却した溶液に加え、次にそれを濾過し、紫色/青色の固体として標記化合物(0.22g、16%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2926 (CH), 1604 (C=N), 1535, 1496, 1444 (CH), 1404 (CH), 1315 (CH), 1185 (CH);δH (250 MHz; DMSO): 7.29 (2H, s, ArH), 7.23 (2H, s, ArH), 3.29 (12H, s, CH3), 2.55 (6H, s, CH3); δC (62.9 MHz; DMSO): 18.9 (CH3), 41.5 (CH3), 105.7 (ArC), 118.7 (ArC), 133.6 (ArC), 134.5 (ArC), 147.2 (ArC), 154.2 (ArC); 分析、C18H22N3S.3H2Oとしての計算値: C, 51.98; H, 6.74; N, 10.11; S, 7.70. 実測値: C, 52.03; H, 6.59; N, 10.05; S, 7.66.
【0184】
合成3
1,9−ジエチル−メチル−チオニニウムクロリド(DEMTC)
【化9】
【0185】
N,N−ジメチル−m−エチルアニリン
100cm3丸底フラスコに、3−エチルアニリン(10g、82.5mmol)、エタノール(15cm3)、炭酸ナトリウム(11.81g、111.4mmol)を加えた。ヨウ化メチル(31.63g、222mmol)を滴下した。次に、混合物を45℃で10時間加熱してから、室温に冷却して水(100cm3)を加えた。混合物をジエチルエーテル中に抽出して(3x100cm3)、抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、明黄色の油状物として標記化合物(4.68g、38%)を得た。νmax (neat)/cm-1: 3045 (CH), 2960 (CH), 2920 (CH), 2891 (CH), 2797 (CH), 1597 (C=N), 1494 (CH), 1438 (CH), 1352 (CH), 1225 (CH);δH (250 MHz; CDCl3): 7.22 (1H, t, 7.75, ArH), 6.63 (3H, m, ArH), 2.97 (6H, s, NCH3), 2.63 (2H, q, 7.5, CH2), 1.27 (3H, t, 7.5, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 15.8 (CH3 ), 29.5 (NCH2), 40.8 (NCH3 ), 110.3 (ArC), 112.4 (ArC), 116.5 (ArC), 129.1 (ArC), 145.3 (ArC), 150.9 (ArC).
【0186】
N,N−ジメチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、N,N−ジメチル−m−エチルアニリン(4.68g、31.3mmol)、水(100cm3)および塩酸(8.5cm3、37%)を加え、溶液を5℃に冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム(2.46g、3.57mmol)の水溶液(80cm3)を、アニリン混合物に滴下して、3時間室温で撹拌した。鉄(Fe)くず(5.24g、94mmol)および塩酸(8.5cm3、37%)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液を重炭酸ナトリウム溶液でpH7に調整してから酢酸エチル(3x50cm3)中に抽出した。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。油状物をエタノール(100cm3)およびジエチルエーテル(80cm3)に溶解し、塩酸(7cm3、37%)を注意深く加え、明黄褐色の固体として標記化合物(7.42g、72%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2976 (CH), 2894 (CH), 2859 (CH), 2753 (CH), 1583 (C=N), 1508 (CH), 1486 (CH), 1459 (CH), 1183 (CH);δH (250 MHz; D2O): 7.66 (1H, s, ArH), 7.56 (2H, s, ArH), 3.29 (6H, s, NCH3), 2.74 (2H, q, 7.5, CH2), 1.25 (3H, t, 7.5, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 15.5 (CH3) 25.6 (NCH2), 48.9 (NCH3), 122.1 (ArC), 124.6 (ArC), 128.1 (ArC), 132.6 (ArC), 143.3 (ArC), 144.9 (ArC).
【0187】
1,9−ジエチルメチルチオニニウムクロリド
N,N−ジメチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(1.3g、5.5mmol)を水(50cm3)に溶解し、溶液をpH1.6に調整した。次に、硫化ナトリウム>60%(0.71g、5.5mmol)をピンク色の溶液に分けて加えた。懸濁液に、塩化鉄(III)の水溶液(2.23g、水50cm3中に8.2mmol)を加えると、紫色に即時の色変化をした。次に、塩化鉄(III)溶液(2.23g、水50cm3中に8.2mmol)の第二の分割量を加える前に、溶液を1時間通気した。濾過および水で沈殿物を洗浄する前に、溶液を5℃に冷却した。濾液に塩化ナトリウム(50g)を加え、溶液を10分間撹拌し、生成物が塩析されるにつれて、溶液の色は赤色/紫色に変化した。懸濁液を濾過し、硫酸マグネシウム上で乾燥する前に、固体をジクロロメタン(100cm3)およびメタノール(10cm3)に溶解した。濾過し、濃縮すると、緑色の固体として標記化合物(0.15g、15%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 3408 (CH), 2613 (CH), 1606 (C=N), 1399 (CH), 1316 (CH);δH (250 MHz; D2O): 6.55 (2H, s, ArH), 6.23 (2H, s, ArH), 2.92 (12H, s, NCH3), 2.56 (4H, q, 7.5, CH2), 0.99 (6H, t, 7.5, CH3); (ESI), 340.4 (100%, [M - Cl]+)。場合により、溶離液として10%メタノール:90%ジクロロメタンと、シリカ40−63μ 60Åを使用して、フラッシュカラムクロマトグラフィーを行って塩化鉄残留物を除去した。
【0188】
合成4
1,9−ジメチル−エチル−チオニニウムクロリド(DMETC)
【化10】
【0189】
N,N−ジエチル−3−メチル−4−フェニレンジアミン二塩酸塩(10.74g、50mmol)を水(400cm3)に溶解し、pHを1.6に調整し、次にそれを硫化ナトリウム(>60%)(3.90g、50mmol)に加えた。塩化鉄(III)(20.28g、75mmol)を水溶液(175cm3)として加えると、黄色から深青色に即時の色変化が得られた。混合物を1時間通気してから、塩化鉄(III)水溶液(20.28g、175cm3中75mmol)の第二のアリコートを加えた。濾過の前に、溶液を5℃に冷却して、その温度で1時間維持した。濾液に塩化ナトリウム(200g)を加え、濾過して、青色/紫色の固体として粗生成物を得た。粗固体をカラムクロマトグラフィーにより精製して(溶離液は、10% MeOH、90% DCMであり、シリカ40−63μ 60Åを使用する)、緑色/紫色の固体として標記化合物(0.80g、4%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2971 (CH), 2921 (CH), 2865 (CH), 1600 (C=N), 1412 (CH), 1326 (CH); δH (250 MHz; D2O): 6.62 (2H, s, ArH), 6.39 (2H, s, ArH), 3.30 (8H, q, NCH2), 1.89 (6H, s, ArCH3), 1.09 (12H, t, CH3);δC(62.9 MHz; D2O) 12.6 (CH3 ), 18.0 (CH3), 46.2 (NCH2), 103.6 (ArC), 117.1 (ArC), 132.3 (ArC), 133.9 (ArC), 147.3 (ArC), 151.9 (ArC); m/z (ESI) 368.1 (100%, [M-Cl]+).
【0190】
合成5
1,9−ジエチル−エチル−チオニニウムクロリド(DEETC)
【化11】
【0191】
N,N−ジエチル−m−エチルアニリン
100cm3丸底フラスコに、3−エチルアニリン(5.0g、41.3mmol)、エタノール(7.5cm3)、炭酸ナトリウム(5.9g、55.7mmol)を加えた。ヨウ化エチル(17.38g、111.4mmol)を滴下した。次に、混合物を45℃で12時間加熱した後、室温に冷却し、水(50cm3)を加えた。混合物をジエチルエーテル(3x50cm3)中に抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、明黄色の油状物として標記化合物(7.03g、96%)を得た。δH (250 MHz; CDCl3): 7.20 (1H, dd, 9, 7.25, ArH), 6.60 (3H, m, ArH), 3.43 (4H, q, 7, NCH2), 2.69 (2H, q, 7.25, CH2), 1.32 (3H, t, 7.5, CH3), 1.23 (6H, t, 7, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 12.7 (CH3 ), 15.8 (CH3 ), 29.5 (CH2), 44.4 (NCH3 ), 109.4 (ArC), 111.4 (ArC), 115.1 (ArC), 129.2 (ArC), 145.4 (ArC), 147.9 (ArC).
【0192】
N,N−ジエチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、N,N−ジエチル−m−エチルアニリン(5g、28.2mmol)、水(50cm3)および塩酸(9cm3、37%)を加え、溶液を5℃に冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム(2.14g、31.0mmol)の水溶液(20cm3)を、アニリン混合物に滴下し、1時間、低温度で撹拌した。鉄(Fe)くず(4.72g、84.6mmol)および塩酸(9cm3、37%)を加え、混合物を30℃以下で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液を重炭酸ナトリウム溶液でpH7に調整した後、酢酸エチル(3x50cm3)中に抽出した。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、褐色の油状物を得た。粗油状物をカラムクロマトグラフィーにより精製して(溶離液は、酢酸エチルであり、シリカ40−63μ 60Åを使用する)、褐色の油状物としてフェニレンジアミン(2.2g、41%)を得た。油状物をジエチルエーテル(50cm3)に溶解し、塩酸を加え(2.5cm3、37%)、溶液を濃縮し、明褐色の固体として標記化合物(2.76g、41%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 7.50 (3H, m, ArH), 3.59 (4H, q, 7.25, NCH2), 2.69 (2H, q, 7.5, CH2), 1.20 (3H, t, 7.5, CH3), 1.03 (6H, t, 7.25, CH3); δC (62.9 MHz; D2O): 12.1 (CH3), 15.5 (CH3), 25.5 (CH2), 56.3 (NCH2), 123.9 (ArC), 126.0 (ArC), 127.9 (ArC), 133.1 (ArC), 139.4 (ArC), 143.3 (ArC).
【0193】
1,9−ジエチル−エチルチオニニウムクロリド
N,N−ジエチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(2g、7.5mmol)を水(75cm3)に溶解し、溶液をpH1.6に調整した。次に、ピンク色の溶液を硫化ナトリウム(>60%)(1.35g、10.4mmol)に分けて加えた。懸濁液に塩化鉄(III)(4.22g、水35cm3中15.6mmol)の水溶液を加える場合には、紫色への即時の色変化があった。次に、溶液を1時間通気した後、塩化鉄(III)溶液(4.22g、水35cm3中15.6mmol)の第二の分割量を加えた。溶液を5℃に冷却した後、濾過し、沈殿物を水で洗浄した。また、沈殿物をエタノールで洗浄し、エタノールを濃縮して、粘着性状の紫色の固体を得た。水溶性濾液に塩化ナトリウム(50g)を加え、溶液を10分間撹拌し、それにより、生成物が塩析するにつれて、色が赤色/紫色に変化した。懸濁液を濾過し、固体がジクロロメタン(100cm3)およびメタノール(10cm3)に溶解した後に硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過し、エタノール可溶性生成物で濃縮し、紫色の固体として標記化合物(0.06g、3%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 6.73 (2H, s, ArH), 6.48 (2H, s, ArH), 3.45 (8H, brdq, NCH2), 2.46 (4H, q, 7.5, CH2), 1.17 (12H, brdt, CH3), 0.93 (6H, t, 7.5, CH3); m/z (ESI) 396.2 (100%, [M-Cl]+)。場合により、溶離液として10%メタノール:90%ジクロロメタンと、シリカ40−63μ 60Åを使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーを行って塩化鉄残留物を除去した。
【0194】
合成6
エチル−チオニニウムクロリド 塩化亜鉛 複塩(ETZ)
【化12】
【0195】
H2O(100cm3)およびH2SO4(濃、「98%」、1cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(5.0g、30.4mmol)の撹拌した混合物を、非還元ZnCl2溶液(ZnCl2、7.60g、Na2Cr2O7・2H2Oを伴うH2O 15cm3中の55mmol、100mg)で処理して、赤みを帯びた反応混合物を生成した。Al2(SO4)3・16H2O溶液(5.80g、H2O 10cm3中9.2mmol)、Na2S2O3・5H2O溶液(8.0g、H2O 10cm3中32.2mmol)およびNa2Cr2O7・2H2O(8.7g、H2O 15cm3中29.2mmol)の1/3溶液を加え、その後温度を40℃に迅速に上昇させた。N,N−ジエチルアニリンの溶液(3.0g、濃HCl中20.1mmol、4cm3)を加え、続けて残りのNa2Cr2O7・2H2O溶液を加えた。暗緑色の沈殿物が観察された。温度を急速に75℃に上昇させ、その後、活性化されたMnO2のスラリー(3.80g、H2O 5cm3中44.7mmol)を加えた。温度を85℃に上げて、その温度で30分間撹拌した。沈殿物を伴う青色の溶液が観察された。反応混合物を50℃に冷却し、H2SO4(濃、11cm3)をゆっくり加えた。反応物をさらに20℃に冷却し、減圧濾過し、沈殿物を回収し、次にそれをブライン(飽和塩水)で洗浄した。この黒色の固体をH2O(250cm3)に100℃で再溶解し、冷却し、続けて減圧濾過をして、不溶性物質を除去した。濾液をZnCl2(4g)およびNaCl(23g)で処理し、冷蔵庫に16時間放置し、その後、得られた沈殿物を減圧濾過により回収し、ブライン(30cm3)で洗浄し、減圧オーブン中で3時間乾燥し、さびた赤色の粉末として標記化合物(5.7g、71%)を得た。δH (250 MHz, D2O): 1.20 (12H, br t, CH3), 3.50 (8H, br q, CH2), 6.80 (2H, s, ArH), 7.05 (2H, br d, ArH) 及び 7.30 (2H, br d, ArH).。例えば、Fierz-David and Blangley, 1949, "F. Oxazine and Thiazine Dyes," in: Fundamental Processes of Dye Chemistry, published by Interscience (London, UK), pp. 308-314を参照。
【0196】
合成7
メチル−チオニニウムヨージド(MTI)
【化13】
【0197】
メチル−チオニニウムクロリド(2.00g、6.25mmol)を水(50cm3)に溶解し、ヨウ化カリウム(1.56g、9.4mmol)を撹拌下加えた。沈殿物が形成され、それを濾過し、固体を沸騰水(50cm3)から再結晶して、微細な緑色の針状晶として標記化合物(1.98g、77%)を得た。δH (250 MHz; DMSO): 7.88 (2H, br d, ArH), 7.49 (4H, br s, ArH), 3.37 (12H, s, CH3)。C16H18N3SIについての分析値:C, 46.72; H, 4.41; N, 10.22; S, 7.80; I, 30,85;実測値:C, 46.30; H, 4.21; N, 10.14; S, 7.86; I, 29.34。
【0198】
合成8
メチル−チオニニウムヨージド ヨウ化水素 混合塩(MTI.HI)
【化14】
【0199】
メチル−チオニニウムヨージド(0.50g、1.22mmol)をメタノール(20cm3)に溶解して、ヨウ化メチル(1.90g、13.37mmol)を撹拌下加えた。さらにヨウ化メチル(0.42g、6.69mmol)を加える前に、混合物を18時間加熱還流し、混合物を再度加熱還流し、8時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、濾過し、個体を得たが、それをメタノールで洗浄して、青銅の緑色の固体として標記化合物(0.30g、46%)を得た。δH (250 MHz; DMSO): 7.82 (2H, d, J = 8.5, ArH), 7.42 (4H, s, ArH), 3.34 (12H, s, CH3). δC (62.9 MHz; DMSO): 153.8 (ArC), 137.9 (ArC), 134.9 (ArC), 133.5 (ArC), 119.1 (ArC), 118.8 (ArC), 106.9 (ArC), 106.6 (ArC), 41.1 (NCH3).
【0200】
合成9
エチル−チオニニウムヨージド(ETI)
【化15】
【0201】
塩酸水溶液(0.5M、200cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(10.0g、61mmol)の撹拌した混合物を、水酸化ナトリウム水溶液(10%)でpH2に調整した。Na2S2O3.5H2O水溶液(16.65g、H2O 20cm3中67mmol)を加える前に、ジアミン溶液を5℃に冷却した。Na2Cr2O7.2H2Oの水溶液(7.27g、H2O 35cm3中24mmol)を混合物に15分にわたって滴下して、黒色の懸濁液を得た。この懸濁液を5℃で1時間撹拌した(pH=8.07、T=3.7℃)。懸濁液に加える前に、N,N−ジエチルアニリン(8.25g、61mmol)、H2SO4(6g)および水(10cm3)の溶液を5℃に冷却した。次に、Na2Cr2O7.2H2Oの水溶液(19.09g、H2O 50cm3中64mmol)を、20分にわたって混合物に滴下して、濃い暗緑色の懸濁液を得た。濾過前に、混合物を5℃で2時間撹拌した(pH=6.75、T=6°C)。得られた緑紫色の固体を水(2x50cm3)で洗浄した。固体を塩酸水溶液(300cm3、pH2)中にスラリーにして、22℃でpH=6.37の懸濁液を得た。懸濁液にCuSO4(1.52g、6.1mmol)を加えて、混合物を90℃に加熱すると、深青色の溶液を形成した。この温度で1時間撹拌後、混合物を25℃に冷却して濾過した。固体を水(2x50cm3)で洗浄し、濾液をT=25℃、塩酸(5M)で、pH6.33からpH2.00に調整した。深青色の溶液を80℃に加熱し、ヨウ化カリウム(14g)を加え、冷却すると、橙紫色の沈殿物が沈殿した。濾過して紫色の粉末(8.8g、31%)を得て、それを熱エタノール(400cm3)から再結晶化して、微細な紫色の針状晶として標記化合物を得た。融点211℃;νmax (KBr)/cm-1: 3574 (CH), 3484 (CH), 3028 (CH), 2965 (CH), 1662 (C=C), 1539 (CH), 1474 (CH), 1346 (CH);δC (62.9 MHz, CDCl3): 1.33 (12H, t, 7, CH3), 3.72 (8H, q, 7, NCH2), 7.23 (2H, d, 9.75, ArH), 7.41 (2H, s, ArH), 7.83 (2H, d, 9.75, ArH);δH (62.9 MHz, CDCl3):152.4, 138.8, 135.7, 135.2, 118.3, 106.4, 46.8, 13.2.
【0202】
合成10
エチル−チオニニウムヨージド ヨウ化水素 混合塩(ETI.HI)
【化16】
【0203】
エチル−チオニニウムヨージド(2.00g、4.28mmol)をエタノール(100cm3)に溶解し、ヨウ化エチル(27.35g、175mmol)を撹拌下加えた。混合物を18時間加熱還流し、次に室温に冷却し、沈殿物を得て、それを濾過し、エタノールで洗浄し、青銅色の固体として標記化合物(1.02g、40%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 7.90 (2H, br d, ArH), 7.42 (4H, s, ArH), 2.45 (8H, br q, NCH2), 1.23 (12H, br t, CH3).
【0204】
合成11
エチル−チオニニウムニトラート(ETN)
【化17】
【0205】
塩酸水溶液(0.5M、200cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(10.0g、61mmol)の撹拌した混合物を、水酸化ナトリウム水溶液(10%)でpH2に調整した。Na2S2O3・5H2O水溶液(16.65g、H2O 20cm3中67mmol)を加える前に、ジアミン溶液を5℃に冷却した。Na2Cr2O7・2H2Oの水溶液(7.27g、H2O 35cm3中24mmol)を混合物に15分にわたって滴下して、黒色の懸濁液を得た。懸濁液を5℃で1時間撹拌した(pH=8.07、T=3.7℃)。懸濁液に加える前に、N,N−ジエチルアニリン(8.25g、61mmol)、H2SO4(6g)および水(10cm3)の溶液を5℃に冷却した。次に、Na2Cr2O7・2H2Oの水溶液(19.09g、H2O 50cm3中64mmol)を、20分にわたって混合物に滴下して、濃い暗緑色の懸濁液を得た。濾過前に、混合物を5℃で2時間撹拌した(pH=6.75、T=6°C)。得られた緑紫色の固体を水(2x50cm3)で洗浄した。固体を塩酸水溶液(300cm3、pH2)中にスラリーにして、22℃でpH=6.37である懸濁液を得た。懸濁液にCuSO4(1.52g、6.1mmol)を加え、混合物を90℃に加熱すると、深青色の溶液を形成した。この温度で1時間撹拌後、混合物を25℃に冷却して濾過した。固体を水(2x50cm3)で洗浄し、濾液をT=25℃、塩酸(5M)で、pH6.33からpH2.00に調整した。深青色の溶液を80℃に加熱し、硝酸ナトリウム(50g)を加え、穏やかに撹拌しながら25℃にゆっくり冷却した。生成物を緑色の針状晶(6.80g、28%)として濾過した。δH (250 MHz, CDCl3): 1.36 (12H, t, 7, CH3), 3.72 (8H, q, 7, NCH2), 7.23 (2H, d, 9.5, ArH), 7.39 (2H, s, ArH), 7.89 (2H, d, 9.5, ArH); δH (62.9 MHz, CDCl3): 152.5, 138.8, 135.7, 135.6, 118.1, 106.4, 46.6, 12.9.
【0206】
生物学的試験
方法
α−シヌクレインタンパク質の精製
E.coliでのα−シヌクレインの発現のために2つのプラスミドを構築した。α−シヌクレインのコア凝集ドメイン(アミノ酸31〜109)は、Niキレート化カラムでの精製を可能にするN末端ポリヒスチジンタグ(tsyn)を用いて発現させた。全長α−シヌクレイン(syn)は、タグなしで発現させ、DEAEセファロースでのイオン交換クロマトグラフィーで精製し、一部の場合ではその後、CM−セファロースでの精製を行った。どちらのタンパク質でも、30〜50%硫酸アンモニウムカットを取ることによって、最初に細菌抽出物を濃縮した。カラムから溶離したタンパク質を20mM CAPS、pH9.5または20mM Tris.HCl、pH7.5、50mM NaCl(詳細については表1を参照)で透析し、−70℃で貯蔵した。
【0207】
フィラメント集合のための蛍光アッセイ
α−シヌクレインタンパク質(tsynまたはfsyn)は、原線維形成を誘発するために混合しながら、図の凡例に示した回数で37℃にてインキュベートした。一部の場合では、原線維形成を向上させるために50μg/mlヘパリンを含めた。
【0208】
サンプル10μlを次に、一部の場合では1μM、または0.2または5μMのチオフラビンTまたはプリムリンを加えて、水で100μlに希釈した。蛍光励起スペクトルは、発光波長480nmで、Varian Carey Eclipse蛍光分光光度計によって96ウェルプレートにて測定した。励起スペクトルは、tsynなしで測定したシグナルおよびスペクトルから測定したピークシグナルについて補正した。データは化合物なしで測定した値に正規化し、化合物の濃度に対して正規化された蛍光のプロットからP50値を測定した。
【0209】
シヌクレイン−シヌクレイン結合のELISAアッセイ
固相アッセイを使用して、α−シヌクレインの自己会合を測定した。炭酸塩緩衝液(pH8.5)で希釈したtsynをアッセイプレートに結合させ、全長α−シヌクレイン(fsyn)を水相に添加した。水相結合緩衝液は50mMリン酸Na、pH6.0、20mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。結合したfsynは、tsynを認識しない市販抗体(211)を使用して検出した。
【0210】
実施例1 α−シヌクレインの精製
図1は、SDS−PAGEによって分析し、クマシーブルーで染色した、tsynの精製によるサンプルを示す。Niアフィニティカラムは、非常に効率的な精製を与えた;最終精製タンパク質(図1のtsyn−8)は、95%超の純度であり、細菌培養物750mlからタンパク質44mgの収量であった。
【0211】
図2は、DEAE−セファロースでのfsynの精製を示す。この方法を使用する最終タンパク質は、あまり純粋でなかった(図2のfsyn−9)。
【0212】
図3は、DEAE−セファロースと、それに続くCM−セファロースでのfsynの精製を示す。この方法は、純度>95%のタンパク質を生成するが、収率は低い(DEAEセファロース単独の85mgと比較してタンパク質12mg)。
【0213】
α−シヌクレインのいくつかの異なる調製物を後述するアッセイで使用して、その精製の簡単な詳細事項を表1にまとめて示す。
【0214】
【表3】
【0215】
熱処理によって調製したタンパク質は、アッセイでは不活性であった。DEAEイオン交換クロマトグラフィーによって調製したタンパク質は、活性であった。したがって、CM−またはSP−セファロースでのさらなる精製工程を実施した。CM−セファロースが最も清浄な調製物を与えるが、SP−セファロースよりも収率が低いことが見出された。これらの調製物を結合活性について比較した(実施例9を参照)。表1は、これらの実験に使用したシヌクレイン調製物をまとめて示している。
【0216】
実施例2 蛍光によるシヌクレイン集合のアッセイ
α−シヌクレインの集合および原線維形成がチオフラビンTの蛍光を強化することが報告されている。我々は、チオフラビンTの、そしてさらにプリムリンの蛍光に対するα−シヌクレインの効果について試験した。タンパク質は、50μg/mlヘパリンを用いて、または用いずに37℃でのインキュベーションによって集合を誘発させ、サンプルを種々の時点で1μMチオフラビンTまたはプリムリンでアッセイした。
【0217】
図4は、tsynおよびfsyn調製物の集合の時間経過を示す。ヘパリンの非存在下では、どちらのタンパク質によってもチオフラビンT蛍光のごくわずかな出現がある(図4A、4B)。ヘパリンの非存在下では、tsynタンパク質によって20〜30時間にわたるプリムリンシグナルの出現があり、ヘパリンの存在下では、プリムリンシグナルの出現の遅滞期はないが、蛍光の最終的な程度は、ヘパリンを用いても、用いなくても同様である(図4A)。ヘパリンは、tsynでチオフラビンTシグナルの出現をプリムリンと同様の程度まで刺激する(図4A)。ヘパリンの非存在下では、fsynについてチオフラビンTおよびプリムリンシグナル両方の非常にゆっくりとした出現がある。ヘパリンの存在下では、両方のフルオロフォアを持つシグナルの出現があるが、tsynで見られるよりも長い遅滞期を伴う(図4B)。プリムリンシグナルの出現での遅滞期は、チオフラビンTのそれよりも短いが、チオフラビンTシグナルの最終的な程度はプリムリンのそれよりも大きい(図4B)。プリムリンとチオフラビンTとの間のシグナルの差は、これらの2つのフルオロフォアがシヌクレインの異なる集合状態を検出していることを示し、プリムリンが、チオフラビンTによって検出される原線維形成前の早期の前駆集合状態を検出するという概念と一致している。
【0218】
実施例3 MTCおよびETCによる原線維破壊のアッセイ
蛍光効果は、集合したα−シヌクレインに対する化合物MTCおよびETCの効果をアッセイするのに使用した。
【0219】
図5は、集合tsynによって誘起されたチオフラビンTまたはプリムリンのどちらかの蛍光シグナルに対するMTCおよびETCの効果を示し、トレースからのピーク蛍光値は、図7Aの化合物の濃度の関数として示されている。図6は、集合fsynによって誘起されたチオフラビンTまたはプリムリンのどちらかの蛍光シグナルに対するMTCおよびETCの効果を示し、トレースからのピーク蛍光値は、図7Bの化合物の濃度の関数として示されている。図7のグラフから測定したp50値を表2にまとめる。
【0220】
【表4】
【0221】
チオフラビンTおよびプリムリン蛍光に対する化合物の効果は、原線維の破壊よりもむしろ蛍光リガンドの競合のためでありうる。効果が競合による場合のみにP50がフルオロフォア濃度に依存するので、このことを試験するために、フルオロフォアの3つの異なる濃度で実験を実施した。1つの実験によるデータを図8に示し、すべての実験からの平均P50を表3に示す。フルオロフォア濃度の25倍の差にわたって測定されたP50値には有意差はなく、化合物の効果が原線維破壊のためであることを示している。
【0222】
【表5】
【0223】
実施例4 in vitroでのα−シヌクレイン凝集体の集合に対する化合物の効果
集合したα−シヌクレイン凝集体に影響を及ぼすのはもちろんのこと、MTCは、プリムリンの結合の競合によって決定されたように、α−シヌクレインの凝集体への集合も阻害する。tsynおよびfsynからの凝集体の集合のための最適条件が決定され、MTCの阻害効果を図(新しい図A)に示す。tsyn(20mM Tris.HCl、pH7.5+50μg/mlヘパリン中1mg/ml)は37℃で24時間にわたって集合させた。MTCは、5μMを超える濃度(○、白丸)でのtsyn集合を阻害する。fsynは、fsynの濃度が2mg/mlで、インキュベーションが120時間である場合を除いて、同じ条件下で集合した。MTCは、tsynよりもfsynによってより大きい阻害効果を示し、阻害はfsynによって0.05μMにて生じる(●、黒丸)。
【0224】
MTCおよびETCによるα−シヌクレイン凝集の阻害(fsyn;上記のようにプリムリンアッセイを使用)は、DEMTCおよびDEETCによって観察された阻害と匹敵するか、それ以上であった。これらすべての化合物は50μMの濃度にて集合を完全に阻害した。
【0225】
【表6】
【0226】
チオフラビンTも、fsyn集合を監視するために使用した。チオフラビンTシグナルの発生はプリムリンシグナルより遅いが、より高いレベルに到達して、凝集の形成よりもむしろ原線維の伸長を知らせているように思われる。集合の後期の段階(160時間)でチオフラビンTシグナルが水平域に達したときに、チオフラビンTシグナルはプリムリンシグナルよりもMTCによる阻害に対して感受性であり、著しい効果が0.05μMにて見られた。これを図12に示す。
【0227】
実施例5 固相ELISAアッセイによるα−シヌクレイン結合のアッセイ
2つのα−シヌクレインタンパク質は、結合アッセイにも使用した。tsynは、固相で結合され、全長fsynは水相に添加した。tsynを認識しないα−シヌクレインのC末端エピトープに対する抗体を使用して、結合したfsynを定量した。
【0228】
図9は、tsyn−13に結合するfsyn−20の水相および固相結合曲線を示す。fsyn20の結合は〜5μMで水平となり、tsyn−13結合は〜2μMで水平となる。これらの濃度を使用して、シヌクレイン−シヌクレイン結合に対する種々の塩化チオニニウムおよびフラボンの効果を試験した。
【0229】
阻害曲線を図10に示し、曲線から計算したB50値を表4にまとめる。
【0230】
結合アッセイで試験したすべてのフラボンは良好な阻害活性を有するが、これに対して塩化チオニニウムのほとんど、すなわちMTC、ETC、DMMTC、DEMTC、DMETC、DEETC、チオニンおよび塩化トロニウムは活性であるが、その他、例えばアズールAおよびアズールBは不活性である。
【0231】
表5 シヌクレイン−シヌクレイン結合の阻害のP50およびB50値。ヘパリン(50μg/ml)を含む20μM Tris.HCl(pH 7.5)中で集合させて、2つのフルオロフォア(1μM)、チオフラビンTまたはプリムリンのどちらかによってアッセイした1μg/ml tsyn−16を用いて測定されたP50。20mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を使用して、1μM tsyn−16(固相)および5μM fsyn−20(水相)を用いて測定したB50。
【表7】
【0232】
実施例6 α−シヌクレイン凝集の細胞ベースのアッセイ
細胞ベースのアッセイは、N末端シグナル配列(SSfsyn)を含む全長α−シヌクレインを発現するように組み換えられたマウス神経芽腫細胞株NIE−115を利用して、タンパク質の膜への取り込みを目標とした(WO02/059150)。細胞がジブチリル環状AMP(dbcAMP)(1mM)によって分化されたときに、α−シヌクレインタンパク質の発現が増加した。
【0233】
α−シヌクレインタンパク質が、種々の抗α−シヌクレイン抗体を使用して免疫ブロットによって検出された。これらは、tsyn内のエピトープ(α−シヌクレインの残基31〜109)を認識するmAb(BD Biosciences Cat No.610787)を含んでいた。α−シヌクレインに加えて、mAb42はより大きい分子量のタンパク質も非特異的に反応する(タンパク質は他の抗α−シヌクレイン抗体によって認識されない)。このタンパク質は、細胞におけるこのタンパク質のレベルが細胞密度と相関しているので、細胞数の推定値として使用した。これらの細胞によって薬物を試験し、阻害活性(EC50)は、α−シヌクレインの非特異性バンドに対する比がdbcAMPのみで処置した細胞の値の50%に低下した薬物濃度を決定することによって計算した。
【0234】
dbcAMPおよび薬物を加えるタイミングを変えて、細胞収集前に細胞が薬物+dbcAMPの存在下に放置される時間の長さも変えた。DEETCについての代表的な結果を図13に示す。
【0235】
MTCは、細胞がMTCおよびdbcAMPの存在下に2日間より長く放置されたときに阻害性があった。最も有効な化合物は、nM範囲で阻害したDEETCであった;DEMTC、DMETCおよびETCも阻害活性を示す(表6)。フラボン、ラムネチンも阻害性であった。
【0236】
【表8】
【0237】
実施例7 細胞ベースのアッセイにおけるα−シヌクレインの切断および凝集
dbcAMPを使用してDH60.21 NIE細胞を分化させたときに、mAb 42(α−シヌクレインのコアを認識)またはmAb 211(α−シヌクレインのC末端エピトープを認識)を使用して検出されたように、SSFsynの発現の増加があった。加えて、約15および16kDaの2つのより低い分子量のバンドが生成された。後者はシグナル配列のないFsynに相当しうる。これらの2つのタンパク質の大きいほうがこれらの抗体の両方によって検出されたが、15kDaバンドはせいぜい、mAb 211を使用してごく弱く検出された。代表的な例は図14に示す。このことは、これがC末端切断されたタンパク質であることを示唆する。FSynより大きい見かけの移動度を持つさらなる22kDaバンドが観測されたが、mAb 211ではなく、mAb 42のみを使用して観測された(図14)。SSFsynバンドに対する22kDaの比は、使用した抗体に応じて有意に異なっていた(p<0.001;表7)。このことはN末端およびC末端の両方で切断された凝集シヌクレインの存在を示唆する。この22kDaバンドは、SSFsynによって形質移入されたSH−SY5Y神経芽腫細胞でも観測された。
【0238】
【表9】
【0239】
SSFsynを発現する細胞を蛍光顕微鏡で検査したときに、凝集タンパク質を示唆する粒状性質の物質を含む、大量発現が観察された(図15)。更に細胞中で観測された凝集体は、凝集タンパク質に結合するフルオロフォアである、プリムリンによって同時に認識された(図16)。このことはα−シヌクレイン凝集がSH−SY5Y神経芽腫細胞の分化後に生じることを示す他の研究を確証させる(Hasegawa et al. 2004; Brain Res. 1013:51-59)。
【0240】
実施例8 α−シヌクレインオリゴマー集合に対する、およびin vitroのαシヌクレイン結合に対するMTCの効果
表5のシヌクレインアッセイにおけるP50およびB50測定の結果を参照すると、塩化チオニニウムは一般にシヌクレインアッセイでフラボンより低いP50を有するが、フラボンの一部は塩化チオニニウムに匹敵する低いB50を有することがわかる。このことは、両方のクラスの化合物がシヌクレインの自己凝集反応を阻害するのに有効であるが、塩化チオニニウムのみが事前に形成された凝集体を破壊する能力を有することを示唆する。
【0241】
MTCの活性のさらなるアッセイとして、その効果をtsynの集合の時間経過にわたって測定した(図17)。図17に示すように、MTCの非存在下には〜2時間の集合前の遅滞期がある。蛍光シグナルは、4〜5時間でピークに達して、次に20時間にわたって徐々に低下する。蛍光の出現の時間経過は、2つのフルオロフォアで同様である。低濃度のMTC(0.05μM)の存在下で、集合開始前の遅滞期は1時間に短縮され、24時間後の最終蛍光シグナルはより高い。特に、プリムリンでは、最大蛍光はチオフラビンTと比較して、プリムリンで高い。0.5μM MTCの存在下では、集合は対象よりも低速であるが、最終蛍光レベルは対照よりも高い。5μM MTCでは、最初の4〜5時間にわたる集合の時間経過は対照と類似しているが、次に蛍光のより迅速な低下があるものの、最終蛍光レベルは対照と同様である。50μM MTCにおいて、実験の時間経過にわたって集合はない。図17のデータは、シヌクレインの集合に対してMTCが複雑な効果を有することを示す;低濃度では(シヌクレイン:MTCのモル比は、2000:1)、MTCは集合をある程度まで明らかに刺激するが、これに対して高濃度では(シヌクレイン:MTCの最高モル比は2:1)、MTCは集合を完全に阻害する。理論に縛られたくはないが、MTCは凝集の阻害を可能にするには不十分であるが、凝集を促進するために1個を超えるシヌクレイン分子への化合物の結合を可能にする低いモル比にて、リガンド架橋効果を与えることが推測される。
【0242】
実施例9 α−シヌクレイン固相結合アッセイの最適化
図18は、実施例1で記載したような各種のシヌクレイン調製物の結合曲線を示す。最良の結合は最も純粋な調製物であるsyn−10を使用して示され、最悪の結合は最も純度の低いsyn−14を使用して示された。このことは第2の精製工程が結合を阻害する汚染物質を除去することと、これが収率を低下させるとしてもタンパク質が第2のCM−セファロース工程によって精製されるべきであることとを示唆している。
【0243】
Syn−10は、3つの調製物のうちで最良の結合を示したが、最大結合程度は、まだかなり低い。tsynの2つの異なる固相調製物で試験を行うと、差は示されず、使用したtsynの濃度が最適であることが示された(データは示さず)。したがって、水相工程の異なる緩衝液条件を試験した。
【0244】
図19Aは、緩衝液、HEPESおよびMESがsynの結合を完全に無効にしたことを示す。図19Bは、pH7.0のTris緩衝液は、先に使用したpH7.5よりも良好な結合を可能にすることを示す。pH8.0のTrisは最悪の結合を与えたので、より低いpHはsyn結合にとってより良好であると思われる。Trisはより低いpHでは緩衝するために使用できないので、pH6.5での試験を可能にするためにリン酸緩衝液も試した。pH6.5のリン酸塩はpH7.0のリン酸塩よりも良好な結合を与えた。実験間の結合の変化にもかかわらず、これらの結果は、緩衝液の化学的性質が、pHと同様にsynの結合に影響を及ぼすことと、最良の緩衝液がTris、pH7.0であることとを示した。
【0245】
図18のデータは、固相結合アッセイでのsynの最良の精製方法はDEAEクロマトグラフィーと、続いてのCMクロマトグラフィーであることを示している。この方法で精製したsynの更に3つの調製物もTris(pH7.0)緩衝液中で試験した(図20)。結果は、調製物間の結合特徴に多少の変動があることを証明している。さらなる方法では、タンパク質を高pH緩衝液で透析した(syn−20)。このタンパク質の結合を図21のsyn−19と比較した。2μM後の結合の低下は高い非特異性結合のためであり、その値は結合から引かれる。syn−20は、syn−19より著しく良好な結合を示し、透析緩衝液の変化を確認した。
【0246】
変動を試み、そして低減するために、より低いpHでのリン酸緩衝液の使用についても調査した。図22Aは、pH6.0のリン酸緩衝液でアッセイしたfsyn−20はpH7.0のTrisまたはpH5.5のリン酸塩よりも良好な結合を与えることを示す。重要なことに、上昇したバックグラウンドのためにより高いfsyn濃度での曲線の低下はない。高いpH CAPSに対して透析した第2のfsyn調製物(fsyn−22)もpH6.0のリン酸緩衝液で試験を行い、fsyn−20への同様の結合を与えた(図22B)。最後の高いpH透析によって調製して、pH6.0のリン酸緩衝液でアッセイしたfsynは、固相阻害アッセイに使用した(実施例5)。
【0247】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】硫酸アンモニウム分別およびNiアフィニティクロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図2】硫酸アンモニウム分別およびDEAE−セファロースアニオン交換クロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図3】DEAE−セファロースアニオン交換およびCM−セファロースカチオン交換クロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図4】チオフラビンTおよびプリムリンの蛍光によって監視したtsynおよびfsynによる原線維形成の時間経過。1mg/mlのtsyn−8(A)および2mg/mlのfsyn−14(B)を、指示された場合には50μg/ml ヘパリンを加え、20mM Tris.HCl、pH 7.5中で37℃にて混合しながらインキュベートした。原線維の形成は、インキュベーション10μlを1μMチオフラビンTまたはプリムリン100μl全量に添加することによってアッセイして、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。フルオロフォア単独のシグナルは、励起ピーク(プリムリンでは420nm、チオフラビンTでは450nm)でのシグナルの測定前にスペクトルから差し引いた。
【図5】集合tsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。50μg/ml ヘパリンを加えた1mg/ml(〜95μM)のTsyn−13を37℃にて20時間インキュベートし、その後、アリコートをMTC(A、C)またはETC(B、D)と混合し、示された濃度(μM)を得、そして更に1時間インキュベートした。タンパク質10μlを1μMチオフラビンT(A、B)またはプリムリン(C、D)100μl全量に加えて、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。示されたトレースは、化合物を加えたフルオロフォアのシグナルを、フルオロフォアおよび化合物を加えたタンパク質のシグナルから差し引いた結果である。
【図6】集合fsyn−14によって誘発されたプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。50μg/ml ヘパリンを加えた2mg/ml(〜140μM)のタンパク質を37℃にて47時間インキュベートし、その後、アリコートをMTC(A、C)またはETC(B、D)と混合し、示された濃度(μM)を得、そして更に1時間インキュベートした。タンパク質10μlをプリムリン(C、D)100μl全量に加えて、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。示されたトレースは、化合物を加えたフルオロフォアのシグナルを、フルオロフォアおよび化合物を加えたタンパク質のシグナルから差し引いた結果である。
【図7】集合tsynまたはfsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。蛍光値は、tsyn−8では図5(A)またはfsyn−14では図6(B)に示すトレースから測定して、化合物なしで測定した値に正規化した。
【図8】チオフラビンTおよびプレムリンの各種濃度にてアッセイした、集合tsynまたはfsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。Tysn−16を集合させて、チオフラビンTおよびプリムリンが0.2、1または5μMであることを除いて、図5に記載したようにMTCまたはETCの効果についてアッセイした。バックグラウンド補正後のピーク蛍光値を、化合物なしで測定した値に正規化して、化合物の濃度の関数としてプロットした。MTC(A、B)またはETC(C、D)の効果はチオフラビンT(A、C)またはプリムリン(B、D)を用いて監視した。
【図9】水相fsynの固相tsynへの結合。0〜10μMのfsyn−20を、0〜2μMにて固相に結合したtsyn−13によってインキュベートし、結合したfsynを抗体211を使用して検出した。
【図10】シヌクレイン−シヌクレイン結合に対する化合物の効果。5μMの水相fsyn−10を、示した化合物の存在下で固相中1μMのtsyn−13でインキュベートした。
【図11】tsynおよびfsynからの凝集体の集合のための最適条件が決定され、MTCの阻害効果を示す。
【図12】チオフラビンTによるfsyn集合の監視。
【図13】NIE細胞におけるSSFsyn発現に対するDEETCの阻害作用。各薬物濃度(0〜100nM)を3通り実施した。dbcAMPおよび細胞を添加したDEETCは、mAb42の免疫ブロットによって2日後に分析した。
【図14】mAb 211ではなく、mAb 42によって検出されるさらなるタンパク質バンドの存在。レーン1、未処置;レーン2、3、4は、dbcAMPを用いて分化された3つの独立したプレート。
【図15】SSFsynを発現するNIE細胞中の凝集α−シヌクレイン。左パネル、SSFsyn細胞;右パネル、dbcAMP処置後の非形質移入、対照NIE−115細胞。
【図16】SSFsynを発現するNIE細胞中の凝集α−シヌクレイン。テキサスレッド標識抗−α−シヌクレインによって染色したSSFsyn細胞(左);右パネル、プリムリン標識;中央パネル、抗体およびプレムリン標識の同時局在を示す、マージされた画像。
【図17】tsynの重合に対するMTCの効果。20mM Tris.HCl pH7.5中の1mg/ml(95μM)のtsyn−16、50μg/ml ヘパリンを、示された濃度のMTCの存在下で、37℃にて混合しながらインキュベートした。サンプル(10μl)を種々の時間に採取して、1μMのチオフラビンT(上パネル)またはプリムリン(下パネル)のどちらかの蛍光に対するその効果についてアッセイした。
【図18】各種のsyn調合物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したような3つの異なるsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は、20mM Tris.HCl、50mM NaCl、pH7.5、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図19】異なる緩衝液におけるsyn−10の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13をsyn−10の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液はすべて20mMで、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンを含んでいた。
【図20】異なるsyn調製物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したようなsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は20mM Tris.HCl、pH7.0、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図21】異なるsyn調製物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したようなsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は20mM Tris.HCl、pH7.0、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図22】異なる緩衝液におけるfsynおよび20fsyn−22の結合曲線。 A.ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を20mM Tris pH7.0または50mM リン酸Na pH6.0または5.5中のfsyn−20の希釈系列によってインキュベートした。B.ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13をリン酸Na pH6.0中のfsyn−20またはfsyn−22の希釈系列によってインキュベートした。どちらの場合も、緩衝液は、50mM NaCl、0.05% Tween−20および1%魚皮ゼラチンを含んでいた。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般に、パーキンソン病(PD)などの神経変性疾患に関連するα−シヌクレインタンパク質の凝集およびこのような凝集を調節できるジアミノフェノチアジン化合物に関する。
【0002】
発明の背景
パーキンソン病は、一般的なヒト神経変性運動障害であり、高齢者人口の1%に影響を及ぼしている(Kapurniotu (2004) Chemistry & Biology 11, pp 1476-1478による議論を参照)。PDの主な臨床症状は、運動緩徐、静止時振戦、筋固縮およびバランス困難である。PDは、ドーパミン作動性ニューロンの顕著な、そして進行性の変性によって、そして黒質および脳の他の領域における線維性細胞質内封入体(レビ小体[LB])およびジストロフィー性神経突起(レビ神経突起[LN])の存在によって神経病理学的に特徴付けられる(Recchia et al. (2004) FASEB J 18: 617-626)。
【0003】
ドーパミンニューロンの消失は、PDの主な臨床症状に確かに関連しているが、この多因性疾患の原因および病原はもちろんのこと、関連する「シヌクレイノパチー」の原因および病原もなお大部分は不明である。
【0004】
LBおよびLNの両方の主成分は、α−シヌクレインの線維性凝集である。α−シヌクレインは、膜結合プロセスおよびシナプス可塑性で役割を果たすように考えられ、学習および発育プロセスに関連している、広範に発現された神経シナプス前タンパク質である。LBおよびLNの形成の(単数または複数の)機構およびPDとのそれらの関連はまだ理解されていないが、いくつかの証拠が、α−シヌクレイン線維化がPDと関連していることと、α−シヌクレイン線維化が毒性を引き起こすことを示唆している(例えばMasliah et al., Science, 287:1265-1269 (2000); Feany et al., Nature 404:394-8 (2000))。
【0005】
α−シヌクレインに加えて、β−シヌクレインも神経変性シヌクレイノパチーに関与している。ヒトβ−シヌクレインは、α−シヌクレインに78%相同性である134残基神経タンパク質である。αおよびβ−シヌクレインは、3個の同様に配置されたチロシン残基を持つ保存C末端を共有する。α−シヌクレイン含有LBおよびLNに加えて、LBによるPDおよび認知症の展開は、これらの疾患の発症および進行においてα−シヌクレインに加えてβ−シヌクレインを巻き込む、海馬における新規なαおよびβ−シヌクレイン陽性病変の出現を伴う(Galvin et al. 1999)。β−シヌクレインがα−シヌクレインの線維化を制御して、おそらくα−シヌクレインの凝集を最小限に抑えるシャペロンとして作用することが指摘されている(Hashimoto et al. 2001; Uversky et al. 2002; Park and Lansbury, 2002)。したがって、β−シヌクレインのレベルの低下は、PD病因の考えられる因子として見なされてきた(Uversky et al. 2002)。
【0006】
それゆえ、シヌクレイン凝集の阻害または逆転は、治療的に有益であると考えられる。
【0007】
Li et al. (2004) Chemistry & Biology 11: pp 1513-1521は、抗生物質リファンピシンによるα−シヌクレイン線維化の阻害、および原線維の脱凝集について論じている。
【0008】
Zhu et al. (2004) Journal of Biological Chemistry 279, 26: pp 26846-26857は、フラボノイドのバイカレインによるα−シヌクレイン線維化の阻害、および原線維の脱凝集について論じている。
【0009】
このような凝集の阻害物質に関係すると言われる他の刊行物が当分野に多数ある。これらとしては、"Compositions for inhibiting the aggregation pathway of alpha-synuclein" (US6780971 - 2004-08-24); "Polyhydroxylated aromatic compounds for the treatment of amyloidosis and alpha-synuclein fibril diseases" (US2004152760 - 2004-08-05); Peptide and peptide derivatives for the treatment of alpha-synuclein related diseases (WO2004009625 - 2004-01-29); Proanthocyanidins for the treatment of amyloid and alpha-synuclein diseases (EP1377287 - 2004-01-07); Methods for preventing neural tissue damage and for the treatment of alpha-synuclein diseases (CN1440420T - 2003-09-03)が挙げられる。
【0010】
しかしながらシヌクレイン凝集を阻害できることが先に既知でなかった化合物の供給は、当分野への寄与を与えることが理解されるであろう。
【0011】
発明の開示
本発明者らは、シヌクレインタンパク質の凝集を阻害するためにジアミノフェノチアジン化合物が使用されうることを初めて証明した。
【0012】
簡潔には、発明者らは2つの形のα−シヌクレインを発現させて精製して、そして自己集合および原線維形成のアッセイにそれらを使用した。α−シヌクレインの切断型(tsyn)は、原線維形成で特に有効であることが見出され、このような集合tsynはチオフラビンTの蛍光を高めることが示された。発明者らは、他の化合物と同様にジアミノフェノチアジンの原線維破壊活性をアッセイした。ジアミノフェノチアジンは、集合α−シヌクレインを1μM未満に破壊することが見出された。
【0013】
シヌクレイン結合についての固相アッセイも考案され、これを、チオニニウムクロリドなどのジアミノフェノチアジン、およびフラボンが結合を阻害することを示すために使用した。
【0014】
当業者によって理解されるように、本開示に照らして、これらの結果は特に、シヌクレイン凝集に関連する疾患(例えばPDおよび本明細書で議論するその他の疾患)の根底にある原因の処置におけるこのような化合物の有用性を証明する。
【0015】
Piotrowski, G. (1936) "The treatment of parkinsonian tremor. Medical Record, 144:322-323"は、メチレンブルー(メチルチオニニウムクロリド−MTC)を使用する4個体の試験でのパーキンソン振戦の症状軽減を報告した。MTCは、1または2mg/kg用量で静脈内投与した。8グレイン(=518mg)/日の経口投与は、副作用のため中止した。振戦に対する報告された効果は強力でなく、限定された時間のみ続いたが、別の症状(固縮)は大きな影響を受けなかった。チオニンによる別の試験は結果を与えなかった。したがって、開示の要点は、副交感神経作用を有することが既知であったMTCが特に、パーキンソン病の1つの症状、すなわち「パーキンソン振戦」に限定された効果を有したことである。
【0016】
対照的に、本発明は、疾患の症状出現よりも根底にある疾患プロセス自体を目的とする処置に関する。
【0017】
ジアミノフェノチアジンは、タウタンパク質凝集を阻害することと、PHFの構造を破壊して、PHFコアのタンパク質分解安定性を逆転させることとが先に示されている(WO 96/30766, F Hoffman-La Rocheを参照)。このような化合物は、アルツハイマー病およびレビ小体病を含む種々の疾患の処置における使用について開示された。
【0018】
加えて、WO 02/055720 (The University Court of the University of Aberdeen)は、特に多様なタンパク質凝集疾患の処置のためのジアミノフェノチアジンの還元型の使用について考察しているが、開示は主にタウオパシー(tauopathies)に関連している。
【0019】
WO 2005/030676 (The University Court of the University of Aberdeen)は、放射性標識フェノチアジン、ならびに例えばタウオパシーの診断および治療でのそれらの使用について考察している。
【0020】
しかしながら、これらの刊行物のいずれも、特にα−シヌクレイン凝集の阻害または逆転のためのジアミノフェノチアジン、特に非還元型の使用を具体的に開示していない。
【0021】
ジアミノフェノチアジン化合物
本発明は、次の式の1つを有する、ある一定のジアミノフェノチアジン化合物およびその類似体、ならびにその製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物(本明細書ではまとめて「ジアミノフェノチアジン」または「ジアミノフェノチアジン化合物」と称する)に関する:
【0022】
【化3】
【0023】
式(1)は、還元型の化合物を示すが、式(2)、(3)、および(4)それぞれは酸化型の化合物を示している。
【0024】
一実施形態において、化合物は、式(1)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0025】
一実施形態において、化合物は、式(2)または(3)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0026】
一実施形態において、化合物は、式(4)の化合物、その製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物より選択される。
【0027】
上記の構造のそれぞれ1つが、多くの等価の共鳴構造のうちのただ1つであり、そのすべてがその代表的な構造によって含まれるものとする。例えば、構造(4)は、多くの等価の共鳴構造のうちのただ1つであり、その一部は以下に示されており、そのすべてが構造(4)によって含まれることが意図される:
【0028】
【化4】
【0029】
炭素環元素置換基
上の式のそれぞれ1つにおいて、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−SH;−SR;
−NO2;
−C(=O)R;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR;−C(=O)NR2;−C(=O)NRN1RN2;
−NH2;−NHR;−NR2;−NRN1RN2;
−NHC(=O)H;−NRC(=O)H;−NHC(=O)R;−NRC(=O)R;
−R;
より独立して選択され;
各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NRN1RN2において、独立して、RN1およびRN2はそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する。
【0030】
RN1およびRN2が、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する、基−NRN1RN2の例としては、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、ピロリル、および置換型、例えばN置換型、例えばN−メチルピペラジノが挙げられる。
【0031】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−R
より独立して選択される。
【0032】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−R
より独立して選択される。
【0033】
一実施形態において、各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0034】
一実施形態において、各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択される。
【0035】
一実施形態において、各Rは、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
一実施形態において、各Rは、−Meおよび−Etより独立して選択される。
【0036】
一実施形態において、C1〜6アルキル基は、C1〜4アルキル基である。
一実施形態において、C2〜6アルケニル基は、C2〜4アルケニル基である。
一実施形態において、C3〜6シクロアルキル基は、C3〜4シクロアルキル基である。
【0037】
非置換脂肪族C1〜6アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル、ネオ−ペンチル、ヘキシル、イソ−ヘキシルなどが挙げられる。
【0038】
非置換脂肪族C2〜6アルケニル基の例としては、プロペン−1−イル、プロペン−2−イル、ブテン−1−イル、ブテン−2−イル、ブテン−3−イルなどが挙げられる。
【0039】
非置換C3〜6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロプロピル−メチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、C6〜10カルボアリール基は、C6カルボアリール基である。
一実施形態において、C5〜10ヘテロアリール基は、C5〜6ヘテロアリール基である。
一実施形態において、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル基は、C6カルボアリール−C1〜2アルキル基である。
【0041】
非置換C6〜10カルボアリール基の例としては、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0042】
非置換C5〜10ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、チエニル、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルが挙げられる。
【0043】
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチルが挙げられる。
【0044】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR’;
−SH;−SR’;
−NO2;
−C(=O)R’;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR’;−C(=O)NR’2;−C(=O)NR’N1R’N2;
−NH2;−NHR’;−NR’2;−NR’N1R’N2;
−NHC(=O)H;−N’RC(=O)H;−NHC(=O)’R;−N’RC(=O)’R;
−R’;
より独立して選択され;
各R’は:
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;より独立して選択され;
各基−NR’N1R’N2において、R’N1およびR’N2は独立して、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する。
【0045】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−R’
より独立して選択される。
【0046】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0047】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0048】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0049】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0050】
一実施形態において、任意の置換基(例えば、脂肪族C1〜6アルキル、脂肪族C1〜6アルケニル、C3〜6シクロアルキル、C6〜10カルボアリール、C5〜10ヘテロアリール、C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル上の)は、各R’が、−Meおよび−Etより独立して選択されることを除いて、上で定義するとおりである。
【0051】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0052】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−H、−Me、および−Etより独立して選択される。
【0053】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、−Hおよび−Meより独立して選択される。
【0054】
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち4つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち2つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のうち1つを除くすべてが、−Hである。
一実施形態において、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれが、−Hである。
【0055】
アミノ基
上の式のそれぞれ1つでは、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりであり;あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0056】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが独立して、Rについて上で定義したとおりであり;あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0057】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0058】
例えば、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0059】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0060】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが:
非置換脂肪族C1〜6アルキル;;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0061】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0062】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
より独立して選択されるか;
あるいはR3NAおよびR3NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0063】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0064】
別の例で、一実施形態において、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、および−Etより独立して選択される(例えば、−NR3NAR3NAが、−NH2、−NHMe、−NMe2、−NHEt、−NEt2、または−NMeEtである)。
【0065】
別の例で、一実施形態では、各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される(例えば、−NR3NAR3NAが、−NH2、−NHMe、またはNMe2である)。
【0066】
まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりであり;あるいはR7NAおよびR7NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0067】
例えば、一実施形態では、各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが独立して、Rについて上で定義したとおりであり;あるいはR7NAおよびR7NBは、それらが結合される窒素原子と一緒になって、3〜7環原子を有する環を形成する。
【0068】
一実施形態において、−NR3NAR3NBおよび−NR7NAR7NBは、どちらも存在する場合、同じである。
【0069】
一実施形態において、−NR3NAR3NBおよび−NR7NAR7NBは、どちらも存在する場合、異なる。
【0070】
上の式のそれぞれ1つでは、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは独立して−Hであるか、またはRについて上で定義したとおりである。
【0071】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、独立してRについて上で定義したとおりである。
【0072】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される。
【0073】
例えば、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される。
【0074】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0075】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0076】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0077】
別の例で、一実施形態では、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される。
【0078】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される。
【0079】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−H、−Me、および−Etより独立して選択される(例えば、=NR3NCは、=NH、=NMe、または=NEtである)。
【0080】
別の例では、一実施形態において、各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCは、−Hおよび−Meより独立して選択される(例えば、=NR3NCは、=NHまたは=NMeである)。
【0081】
まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCは独立してR3NCについて上で定義したとおりである。
【0082】
窒素環原子の置換基
また、まったく同様に、上の式のそれぞれ1つでは、RN10は、存在する場合、独立してR3NC(またはR7NC)について上で定義したとおりである。
【0083】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−Hおよび非置換脂肪族C1〜6アルキルより独立して選択される。
【0084】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−H、−Me、およびEtより独立して選択される。
【0085】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、−Hおよび−Meより独立して選択される。
【0086】
例えば、一実施形態において、RN10は、存在する場合、独立して−Hである。
【0087】
対イオン
X−は、存在する場合、1つ以上のアニオン性対イオンであり、電気的中性を達成する。
【0088】
適切なアニオン性対イオンの例は、見出し「塩」のもとで以下考察する。
【0089】
一実施形態において、X−は、独立してハロゲンアニオン(すなわちハライド)である。
一実施形態において、X−は、独立して、Cl−、Br−、またはI−である。
一実施形態において、X−は、独立してCl−である。
【0090】
一実施形態において、X−は、独立してNO3−である。
【0091】
組合せ
上記の実施形態の妥当と思われる組合せはすべて、各組合せが個々にそして明示的に引用されているかのように本明細書に開示される。
【0092】
異性体
ある一定の化合物は、1つ以上の特定の幾何、光学、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピマー、アトロプ、立体異性、互変異性、配座、またはアノマー形に存在し、シスおよびトランス形;EおよびZ形;c、t、およびr形;エンドおよびエキソ形;R、S、およびメソ形;DおよびL形;およびl形;(+)および(−)形;ケト、エノール、およびエノラート形;シンおよびアンチ形;向斜および背斜形;αおよびβ形;アキシャルおよびエクリトリアル形;舟、いす、ねじれ、エンベロープ、および半いす形、およびその組合せが挙げられ、以下集合的に「異性体」(または「異性形」)と呼ぶが、これらに限定されない。
【0093】
互変異性形に関して、以下考察されるものを除いて、本明細書で使用するような「異性体」という用語から、特に除外されるものは、構造(structural)(または構造、constitutional)異性体(すなわち単に空間における原子の位置によってではなく、原子間の結合が異なる異性体)であることに注意すること。例えば、メトキシ基、−OCH3への言及は、その構造異性体、ヒドロキシメチル基、−CH2OHへの言及として解釈されない。同様に、オルト−クロロフェニルへの言及は、その構造異性体メタ−クロロフェニルへの言及として解釈されない。しかしながら、構造のクラスへの言及は、そのクラスに含まれる構造上異性の形を含むであろう(例えば、C1〜7アルキルは、n−プロピルおよびイソプロピルを含む;ブチルは、n−、イソ−、sec−、およびtert−ブチルを含む;メトキシフェニルは、オルト−、メタ−、およびパラ−メトキシフェニルを含む)。
【0094】
上記の除外は、例えば次の互変異性対におけるように、互変異性形、例えば、ケト、エノールおよびエノラート形には関係しない:ケト/エノール(下に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミドアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシ−ニトロ。
【0095】
【化5】
【0096】
「異性体」という用語に1つ以上の同位体置換が特に含まれることに注意のこと。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)を含むいずれの同位体形でもよい;Cは、11C、12C、13C、および14Cを含むいずれの同位体形でもよい;Oは、16Oおよび18Oを含むいずれの同位体形でもよい;などである。
【0097】
特にことわりのない場合、特定の化合物への言及は、(全体または部分的に)ラセミおよびその他の混合物を含む、このようなすべての異性体形を含む。このような異性体形の調製(例えば不斉合成)および分離(例えば分別結晶化およびクロマトグラフィー手段)の方法は、当分野で既知であるか、あるいは本明細書で教示されている方法、または既知の方法を既知の方式で適合させることによって容易に得られる。
【0098】
塩類
化合物の対応する塩、例えば製薬的に許容される塩を調製、精製、および/または処理することは好都合または所望でありうる。製薬的に許容される塩の例としては、Berge et al., 1977, "Pharmaceutically Acceptable Salts," J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19において考察されている。
【0099】
例えば、化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性である官能基(例えば、−COOHが、−COO−でありうる)を有する場合、塩は適切なカチオンで形成されうる。適切な無機カチオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類金属、ならびにAl+3などの他のカチオンが挙げられる。適切な有機カチオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、アンモニウムイオン(すなわちNH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられる。ある適切な置換アンモニウムイオンは、エチルアミン、ジエチルアミン、ジクロロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびに、リジンおよびアルギニンなどのアミノ酸より由来するアンモニウムイオンである。一般的な4級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0100】
化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性である官能基(例えば、−NH2が、−NH3+でありうる)を有する場合、塩は適切なアニオンで形成されうる。適切な無機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下の無機酸、すなわち塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸に由来するアニオンが挙げられる。
【0101】
適切な有機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下の有機酸、すなわち2−アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および吉草酸に由来するアニオンが挙げられる。適切なポリマー有機アニオンの例としては、これらに限定されるわけではないが、以下のポリマー酸、すなわちタンニン酸、カルボキシメチルセルロースに由来するものが挙げられる。
【0102】
また、化合物は、混合塩(すなわち塩、または別の塩と組合せた化合物)の形で供給されうる。例えば、塩化メチル−チオニウム塩化亜鉛混合塩(MTZ)は、塩化メチル−チオニウム(MTC)、塩化物塩、および別の塩、塩化亜鉛との混合塩である。このような混合塩は、「およびその製薬的に許容される塩」という用語によって含まれるものである。
【0103】
特にことわりがない場合、特定の化合物への言及は、その塩の形態も含む。
【0104】
水和物および溶媒和物
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、および/または処理することは、好都合または望ましいであろう。「溶媒和物」という用語は、溶質(例えば、化合物、化合物の塩)および溶媒の錯体を意味するために従来の意味で本明細書で使用される。溶媒が水である場合、溶媒和物を、水和物、例えば、1水和物、2水和物、3水和物と好都合に称することができる。
【0105】
特にことわりがない場合り、特定の化合物への言及は、その溶媒和物の形態も含む。
【0106】
いくつかの好適な例
いくつかの好適なジアミノフェノチアジンは、以下、およびその製薬的に許容される塩、水和物、および溶媒和物を含む:
【0107】
【表2】
【0108】
一実施形態において、ジアミノフェノチアジンは、MTC、ETC、DEMTC、DEETC、チオニン、および塩化トロニウム(トルイジンブルーOとしても既知)より選択される。
【0109】
本発明の好適な化合物は、本明細書に記載されるアッセイにおいて、高い活性を示す化合物である。
【0110】
凝集の阻害
本発明のすべての治療的および他の局面において、ジアミノフェノチアジンが実質的に酸化された形態、例えば少なくとも50、60、70、80、90、95、99、または100%の酸化形であることが好ましい。
【0111】
したがって、本発明の第1の態様において、例えば細胞においてシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集を阻害するためのジアミノフェンチアジンの使用を開示する。
【0112】
凝集は、神経変性および/または臨床的認知症として表される疾患状態の状況においてでありうる。
【0113】
別の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体の処置または治療方法での、例えばシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防の方法での使用のためにジアミノフェノチアジンを提供する。
【0114】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集であって、神経変性および/または臨床的認知症として表される疾患状態に関連する凝集を阻害する薬剤、例えばシヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防のための薬剤の製造におけるアミノフェノチアジンの使用を提供する。
【0115】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集に関連する神経変性疾患および/または臨床的認知症の処置または予防の方法であって、シヌクレインの凝集を阻害するために、ジアミノフェノチアジン、またはそれを含む治療組成物の予防的または治療的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0116】
別の態様において、本発明は、哺乳類の脳においてシヌクレイン、特にα−シヌクレインの凝集であって、後述するような疾患状態に関連する凝集を調節する方法を提供し、該処置はその処置が必要な前記哺乳類にジアミノフェノチアジンの予防的または治療的有効量を投与する工程を含む。
【0117】
別の態様において、本発明は、哺乳類の脳におけるシヌクレイン、特にα−シヌクレイン凝集体の産生を阻害する方法を提供し、該処置は上記のとおりである。
【0118】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン、特にα−シヌクレイン凝集に関連する疾患の、それに罹患した哺乳類における処置のための薬物製品を提供し、該薬物製品は、薬物製品が前記疾患の処置用であることがラベル表示された、またはそのことを示すラベルが付いた容器を含み、該容器は、少なくとも1つの製薬的に許容される賦形剤と、活性成分としての、上に記載されたものより選択される単離された純ジアミノフェノチアジン化合物を含む1つ以上の投薬単位を含有する。
【0119】
ジアミノフェノチアジンは、処置される状態または疾患に応じて、単独で、あるいは他の処置と同時にまたは連続的のいずれかで組合せて投与されうる。特に、関連するタンパク質凝集反応の他の阻害物質と共にジアミノフェノチアジンを使用または処方することが望ましいことがある。
【0120】
好ましい組合せは、上述のジアミノフェノチアジン化合物のいずれか1つ以上と、処置される哺乳類のドーパミンレベルを調節する化合物である。このようなさらなる化合物としては、levo−DOPAおよびドーパミン作動性アゴニスト、例えばロピニロールが挙げられる(例えば、Olanow, C.W. 2004, The scientific basis for the current treatment of Parkinson's disease, Ann. Rev. Med. 55:41-60を参照)。
【0121】
それぞれの場合、哺乳類は好ましくはヒトである。
【0122】
リガンド
α−シヌクレインの凝集を阻害できる、本明細書で考察されるジアミノフェノチアジン化合物は、α−シヌクレイン(または凝集α−シヌクレイン)のリガンドまたは標識として作用することもできるだろう。したがって、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物はリガンド、例えばシヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインのリガンドである。
【0123】
このようなジアミノフェノチアジン化合物(リガンド)は、他の化学基、例えば検出可能な標識、例えば安定および不安定な検出可能同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、抗原基、治療部分、または予後、診断または治療用途を補助しうる他のいずれの部分を包含しうる、それらにコンジュゲートされうる、それらによってキレート化されうる、またはそうでなければそれらと結合しうることができる。
【0124】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、化合物が1つ以上(例えば1、2、3、4など)の同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、抗原基、または治療部分を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合されるというさらなる制限を伴う。
【0125】
一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、標識、例えばα−シヌクレイン(または凝集α−シヌクレイン)の標識であるのと同様にリガンドであり、1つ以上の(例えば1、2、3、4など)の検出可能な標識を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合される。
【0126】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、化合物が1つ以上(例えば1、2、3、4など)の検出可能な標識を包含する、それらにコンジュゲートされる、それらによってキレート化される、またはそうでなければそれらと結合されるというさらなる制限を伴う。
【0127】
一実施形態において、検出可能な標識は、安定な検出可能な同位体、不安定な検出可能な同位体、放射性同位体(例えば99Tc)、陽電子放出原子(例えば11C、18F)、磁気共鳴標識(例えば19F)、染料、蛍光基、または抗原基であるか、またはそれを包含する。
【0128】
標識ジアミノフェノチアジン化合物(例えば、α−シヌクレインまたは凝集α−シヌクレインに結合したとき)は、いずれの適切な手段によっても描出または検出されて、当業者は、当分野で既知であるようないずれの適切な検出手段も使用されうることを理解するであろう。
【0129】
例えば、ジアミノフェノチアジン化合物(リガンド標識)は、陽電子放出原子(例えば、11C)(例えば、1個以上のアルキル基置換基、例えば、メチル基置換基の炭素原子として)を包含して、当分野で既知であるように陽電子放射型断層撮影法(PET)を使用して化合物を検出することによって、適切に検出されうる。
【0130】
例えば、一実施形態においてジアミノフェノチアジン化合物は、上のように定義されるが、ジアミノフェノチアジン化合物の環原子炭素の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が陽電子放出炭素原子、例えば11Cであり;および/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)の炭素原子の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が陽電子放出炭素原子、例えば11Cであるというさらなる制限を伴う。
【0131】
一実施形態において、置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)の炭素原子の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)は、陽電子放出炭素原子、例えば11Cである。
【0132】
一実施形態において、置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)は、−11CH3である。
【0133】
このようなジアミノフェノチアジン化合物の例(すなわち、PETによって検出可能な陽電子放出原子を包含する)は、以下を含む:
【0134】
【化6】
【0135】
これらのおよび同様の11C標識ジアミノフェノチアジンを調製する適切な方法は、例えばWO 02/075318(図11a、11b、12を参照)およびWO 2005/030676に示されている。
【0136】
あるいは、またはさらに、ジアミノフェノチアジン化合物は、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、例えば99Tc)にキレートされるキレート基(例えば、錯体またはキレート形成によって別の分子または原子またはイオンへのコンジュゲーションに適切な部分)(例えば、放射性同位体キレート基、例えば、テクネチウムキレート基、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸基)にコンジュゲートされうる。
【0137】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4など)が、検出可能な標識(例えば、放射性同位体、例えば、99Tc)をキレート化できるキレート基(例えば、テクネチウムキレート基、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸基)である、またはそれを包含するというさらなる制限を伴う。
【0138】
あるいは、またはさらに、ジアミノフェノチアジン化合物は、磁気共鳴標識(例えば、19F)を包含することができるので、MRI撮像に適切でありうる(例えば、Higuchi et al. Nat Neurosci. 2005 Apr; 8(4):527-33を参照)。
【0139】
例えば、一実施形態において、ジアミノフェノチアジン化合物は、上で定義したとおりであるが、置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つ(例えば1、2、3、4など)が、磁気共鳴標識(例えば、19F、例えば、−19F、−C(19F)3など)である、またはそれを包含するというさらなる制限を伴う。
【0140】
したがって、一態様において、本発明は、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程を含む、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインを標識する方法を提供する。
【0141】
別の態様において、本発明は、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程と、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)に結合した前記化合物の存在および/または量を検出する工程とを含む、シヌクレイン(または凝集シヌクレイン)、特にα−シヌクレインを検出する方法を提供する。
【0142】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノパシーに罹患したと考えられる対象(患者)における、シヌクレイノパシーの診断または予後評価の方法であって、
(i)対象に、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれに結合されたジアミノフェノチアジン化合物)を導入する工程と、
(ii)対象の脳内でシヌクレインまたは凝集シヌクレインに結合した前記化合物の存在および/または量を決定する工程と;
(iii)(ii)で行った決定の結果を対象の疾患状態と相関させる工程と、
を含む方法を提供する。
【0143】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノシーの診断または予後評価の方法で使用するための、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物)を提供する。
【0144】
別の態様において、本発明は、シヌクレイノパシーの診断または予後の方法で使用するための診断または予後試薬の製造方法における、シヌクレインまたは凝集シヌクレイン、特にα−シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物(例えば、検出可能な標識を包含する、それにコンジュゲートされた、それによってキレート化された、またはそうでなければそれと結合したジアミノフェノチアジン化合物)の使用を提供する。
【0145】
当業者は、ジアミノフェノチアジンリガンド/標識を直接投与する代わりに、同じ対象に存在する、または同じ対象に投与される活性剤による活性形(例えば結合形、標識形)への変換のために、それらが前駆体の形態で投与されうることを理解するであろう。
【0146】
疾患
本発明が関与する疾患状態は、シヌクレイノパシーである。
【0147】
当業者が認識しているように、シヌクレイノパシーという用語は、ニューロンおよびグリアの選択的集合の細胞質において、特にシヌクレイン含有包含物の存在が疾患にとって疾病特徴的である、シヌクレインタンパク質、特にα−シヌクレインの線維状凝集体により特徴付けされる神経変性障害の群を名づけるために使用される。
【0148】
これは、シヌクレイン含有包含物が他の病状に加えて存在する、または存在しない非シヌクレイノパシー障害とは区別されるべきである。
【0149】
シヌクレイノパシーは現在、以下の障害、すなわちパーキンソン病(PD)、レビ小体による認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、薬物誘発パーキンソニズム(例えば1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン[MPTP]またはロテノンなどの殺虫剤によって生じる)、および純粋自律神経不全(PAF)より成る。
【0150】
レビ小体が見出されうる非シヌクレイノパシー障害は、以下、すなわちアルツハイマー病、ピック/前頭側頭認知症、クロイツフェルト−ヤコブ病、毛細血管拡張性運動失調、大脳皮質基底核変性症、ジストニア、進行性核上性麻痺、神経軸索ジストロフィー、亜急性硬化性汎脳炎、筋萎縮性側索硬化症、ALS認知症グアム合併症(ALS-dementia Guam complex)、メージュ症候群およびハレルフォルデン−シュパッツ病(HSD)(脳内鉄による神経変性)を含む。LBは、多様な神経変性疾患において普通に発生する。研究は、神経LB中のα−シヌクレインの原線維の形態が、根底にある疾患とは無関係に基本的な類似性を示すことを指摘している。
【0151】
パーキンソン病は、MSA(100,000あたり4)と比較して、高い罹患率(100,000あたり約100)を有する。
【0152】
DLBは、以前存在した他の複数のものを含む共通名として採用された(McKeith, I. G. et al. (1996). "Consensus guidelines for the clinical and pathologic diagnosis of dementia with Lewy bodies (DLB): report of the consortium on DLB international workshop. Neurology, 47, 1113-1124."Neurology 47: 1113-1124)。これらは、レビ小体型の老年性認知症、アルツハイマー病のレビ小体変形、皮質性レビ小体認知症およびレビ小体認知症を含む。MSAは、シャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症および線条体黒質変性症を含む。DLBは、アルツハイマー病の次に、高齢者において2番目に一般的な認知症の形であると報告されている。
【0153】
パーキンソン病は、黒質におけるLBを特徴とするが、それらは皮質にも見出されうる。DLBは、皮質LBのより頻繁な発生を特徴とする。MSAでは、グリア細胞質封入体(GCI)と呼ばれる線維状封入体が、主に乏突起膠細胞に見出される。LBの成分フィラメントの性質は、2つの知見が主成分を確証する1997年まで不明であった:(i)α−シヌクレインのミスセンス突然変異が、まれな型の家族性PDを引き起こすことが見出された(Polymeropoulos, M. H. et al. (1997). "Mutation in the α-synuclein gene identified in families with Parkinson's disease." Science 276: 2045-2047)および(ii)特発性PDおよびDLBにおけるLBおよびLNは、α−シヌクレインに対して免疫反応性であることが見出された(Spillantini, M. G. et al. (1997). "α-Synuclein in Lewy bodies." Nature 388: 839-840)。組み換えα−シヌクレインは、生体外でフィラメントを形成しうる。該タンパク質は、自然のままの折り畳まれていないタンパク質である。それが凝集する疾患において、それはβ−シート構造の原線維を形成する。
【0154】
好ましくは、本発明の化合物は、PD、PAF、MSAおよびHSDより選択されるシヌクレイノパシーに関して使用される。
【0155】
対象の選択
本明細書で開示するリガンドは、診断または予後の方法の一部として使用されうる。それは処置のための患者を選択するために、あるいは対象に投与された処置または治療薬、例えば、α−シヌクレイン関連の阻害物質の有効性を評価するために使用される。
【0156】
方法に適切な対象は、従来の因子に基づいて選択されうる。したがって、患者の初期の選択は、経験のある臨床医による厳密な評価;補助研究所および他の調査によって可能である限り、非AD診断の除外;神経病理学的に検証されたバッテリを使用する認知機能のレベルの客観的評価のいずれか1つ以上を含みうる。
【0157】
投薬単位、化合物の製剤および投与
本明細書に記載する化合物、組成物または薬剤の投与は、好ましくは「予防的有効量」または「治療的有効量」であり(場合によっては、予防が治療と見なされうるが)、これは個体への利点を示すのに十分である。
【0158】
リガンドでは、量は、シヌクレイノパシーに罹患している患者において検出可能な結合を生じさせるであろう診断的有効量となるであろう。
【0159】
薬剤では、実際の投与量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置される疾患の性質および重症度によるであろう。処置の処方、例えば投薬量などの決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に既知の他の因子を考慮に入れる。
【0160】
典型的には、哺乳類はヒトであるが、動物での使用(例えば試験目的、または動物治療目的で)も本発明に含まれる。
【0161】
本発明のフェノチアジンの例は当分野で既知であり、標準テキストで言及されるプロセスによって製造されうる(例えば、Merck Manual, Houben-Weyl, Beilstein E III/IV 27, 1214 ff, J. Heterocycl. Chem 21, 613 (1984)など)。上の式の化合物、その製薬的に許容される塩、または提供されたアッセイで定義される特性を有する他の化合物は、(例えば、製薬調製物の形での)毒性についてのさらなる試験の後に、薬剤として使用されうる。
【0162】
メトヘモグロビン血症の処置および躁うつ病の予防を含む、広範囲の医療適応症でのメチレンブルーの従来の製薬的使用が記載されており(Naylor (1986) Biol. Psychiatry 21, 915-920)、全身投与後のCNS侵入について記載されている(Muller (1992) Acta Anat., 144, 39-44)。アズールAおよびBの産生は、メチレンブルーの正常な代謝分解生成物として発生する(Disanto and Wagner (1972a) J. Pharm. Sci. 61, 598-602; Disanto and Wagner (1972b) J. Pharm. Sci. 61 1086-1094)。薬剤の投与は非経口的に、例えば、経口的に錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、エマルジョン剤または懸濁剤の形で)、経鼻的に(例えば、鼻腔用スプレーの形で)または経直腸的に(例えば、坐剤の形)で実施されうる。しかしながら、投与は、非経口的に、例えば筋肉内または静脈内に(例えば、注射液剤の形)も実施されうる。
【0163】
組成物は、上の構成成分に加えて、製薬的に許容される賦形剤、保存剤、可溶化剤、増粘物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、またはコーティング剤を含みうる。このような物質は非毒性であるべきであり、有効成分の有効性を妨害すべきではない。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路によって変化しうる。技法およびプロトコルの例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences", 16th edition, Osol, A. (ed.), 1980に見出すことができる。
【0164】
組成物が、製薬組成物に処方される場合、その投与は非経口的に、例えば経口的に粉剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、エマルジョン剤または懸濁剤の形で、経鼻的に(例えば、鼻腔用スプレーの形で)または経直腸的に(例えば、坐剤の形)実施されうる。しかしながら、投与は、非経口的に、例えば筋肉内に、静脈内に、皮膚に、皮下的に、または腹腔内に(例えば注射液剤の形で)も実施されうる。
【0165】
したがって、例えば、製薬組成物が錠剤の形である場合、それはゼラチンまたは補助剤などの固体担体を含みうる。錠剤、コーティング錠、糖衣錠および硬ゼラチンカプセルの製造では、活性化合物およびその製薬的に許容される酸付加塩は、製薬的に不活性な無機または有機賦形剤と共に加工されうる。ラクトース、トウモロコシ、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などは、例えば、錠剤、糖衣錠および硬ゼラチンカプセル剤のこのような賦形剤として使用されうる。軟ゼラチンカプセルの適切な賦形剤は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。組成物が液体製薬製剤の形であるとき、それは一般に水、石油、動物または植物油、鉱油または合成油のような液体担体を含むであろう。生理食塩溶液、デキストロースまたは他のサッカライド溶液あるいはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールも含まれうる。液剤およびシロップ剤製造用の適切な賦形剤は例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース、トリハロースなどである。注射用液剤に適切な賦形剤は、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロールおよび植物油などである。静脈内、皮膚または皮下注射、あるいは脳へのカテーテル内輸液では、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形であろう。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸加リンガー注射液などの、等張性ビヒクルを使用する適切な液剤を十分に調製することができる。保存料、安定剤、緩衝剤および/または他の添加剤は、必要に応じて含まれうる。
【0166】
本明細書において、リガンドとしての化合物の使用は、同様の担体または組成物を利用しうる。
【0167】
したがって、ジアミノフェノチアジン(例えば、MTC)がヒトまたは動物の体の処置または治療方法で使用される本発明の態様において、その方法は好ましくは、ジアミノフェノチアジンの有効量の経口での投与を包含するであろう。
【0168】
好ましくは、薬剤は経口投与に適しており、好ましくは固体投薬単位形である。
【0169】
好ましくは、投薬量は経口投与されるであろう。好ましくは、投薬量は400、300、200、または100mgの1日総用量に等しいか、それ未満であろう。例えば、投薬量は、10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、または130mg t.i.d.(1日3回)の投薬単位より成りうる。
【0170】
あるいはまた、投薬量は、10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg b.i.d.(1日2回)より成りうる。
【0171】
好ましくは、処置は少なくとも2、3、または4週間以上継続される。
【0172】
これらの投薬量に関する説明書は、書面の形で本発明の薬物製品の容器の表面または内部に含まれうる。
【0173】
投薬が静脈内である場合、ジアミノフェノチアジンがMTCでないことが好ましい。
【0174】
本明細書で行ういずれの相互参照の開示も、本開示を補足するために当業者によって必要とされる限り、本明細書によって特に本明細書に組み入れられる。
【0175】
本発明はここで、以下の非制限的な図面および実施例を参照して更に説明されるであろう。これらに照らして、本発明の他の実施形態を当業者は思い付くであろう。
【0176】
実施例
化学的合成
【0177】
以下の合成は、例示の目的のためのみに提供され、本明細書で記載されたように、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0178】
合成1
エチル−チオニニウムクロリド(ETC)
【化7】
【0179】
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(5g、30.4mmol)を、ジエチルエーテル(25cm3)に溶解し、塩酸(6cm3、10M)を加え、混合物を濃縮して、赤色/褐色の固体として標記化合物(7.22g、100%)を得た。δH(250 MHz; D2O): 7.68 (4H, m, ArH), 3.69 (4H, q, 7.32, NCH2), 1.11 (6H, t, 7.32, CH3); δC (62.9 MHz; D2O): 12.1 (CH3), 56.4 (NCH2), 126.8 (ArC), 127.6 (ArC), 135.5 (ArC), 139.1 (ArC)。
【0180】
エチル−チオニニウムクロリド
N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(7.22g、30.4mmol)を、水(250cm3)に溶解し、pHをHClで1.6に調整し、硫化ナトリウム(>60%)(3.95g、30.4mmol)を分けて加えた。懸濁液を、硫化ナトリウムがすべて溶解するまで撹拌した。水(200cm3)中の塩化鉄(III)(27.15g、100mmol)の溶液を調製して、溶液の半分を混合物に加えた。明黄色から青色に即時の色変化が生じた。次に、残りの塩化鉄(III)溶液を加える前に、溶液を1時間通気した。混合物を5℃に冷却し、濾過し、明緑色のスラッジを除去した。HCl水溶液(15cm3、6M)を濾液、続けて塩化ナトリウム(60g)に加えて、濾過する前に懸濁液を5分間撹拌して、固体の生成物を得て、それをDCMに溶解し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、紫色/緑色の固体(1.28g、22%)を得た。この紫色/緑色の固体を分取C18逆相カラム上に乗せて、水(1L)で、または黄色が消えるまで洗浄した。生成物をMeOH/HCl(pH2)でカラムから洗浄し、濃縮して、粘着性状の紫色の固体として標記化合物(0.64g、11%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 1.26(12H, t, 6.5, CH3), 3.56 (8H, q, 6.5, NCH2), 7.01 (2H, s, ArH), 7.20 (2H, d, 9.25, ArH), 7.54 (2H, d, 9.25, ArH); m/z (ESI) 340.2 (100%, [M-Cl]+)。
【0181】
合成2
1,9−ジメチル−メチル−チオニニウムクロリド(DMMTC)
【化8】
【0182】
3−メチル−N,N−ジメチルフェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、水(100cm3)を加えて、温度を氷浴で5℃に下げた。この冷却された溶液に、注意深く硫酸(98%、22.5g)を加えた。この溶液に、3−メチル−N,N−ジメチルアニリン(10g、74mmol)、次に亜硝酸ナトリウム(5.6g、81.4mmol)を加えて、溶液を室温で1時間撹拌した。鉄(Fe)くず(12.8g、229mmol)を加えて、混合物をさらに2時間撹拌した。溶液を濾過し、次に飽和炭酸水素ナトリウム溶液で中和し、有機物を酢酸エチル(3x100cm3)中に抽出した。抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。油状物をジエチルエーテル(100cm3)に溶解し、濃塩酸(50cm3)を加えた。溶液を蒸発乾固して、明黄褐色の固体として標記化合物(10g、60%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2849 (CH), 2821 (CH), 2543 (CH), 2444 (CH), 1586 (C=N), 1487 (CH), 1445 (CH), 1415 (CH), 1138 (CH); δH (250 MHz; D2O): 7.59 (1H, s, ArH), 7.50 (2H, s, ArH), 3.24 (6H, s, CH3), 2.39 (3H, s, CH3); dC(62.9 MHz; D2O) 18.9 (CH3), 48.8 (CH3), 122.1 (ArC), 126.2 (ArC), 127.6 (ArC), 133.7 (ArC), 137.4 (ArC), 144.4 (ArC)。
【0183】
ジメチルメチルチオニニウムクロリド
500cm3丸底フラスコに、3−メチル−N,N−ジメチル−フェニレン−ジアミン二塩酸塩(0.9g、4.03mmol)を加え、それを、硫化ナトリウム(>60%)(0.52g、4.03mmol)を加える前に塩酸水溶液(50cm3、3M)に溶解した。塩化鉄(III)六水和物(7.26g、27mmol)を水(50cm3)に溶解し、この溶液の半分を反応混合物に注ぐと、即時に青色を呈した。次に、残りの塩化鉄(III)水溶液を加える前に、溶液を2時間通気した。混合物を5℃に冷却し、濾過した;沈殿物を沸騰水(60cm3)に溶解し、濾過し、冷却した。塩酸(10cm3、6M)を、冷却した溶液に加え、次にそれを濾過し、紫色/青色の固体として標記化合物(0.22g、16%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2926 (CH), 1604 (C=N), 1535, 1496, 1444 (CH), 1404 (CH), 1315 (CH), 1185 (CH);δH (250 MHz; DMSO): 7.29 (2H, s, ArH), 7.23 (2H, s, ArH), 3.29 (12H, s, CH3), 2.55 (6H, s, CH3); δC (62.9 MHz; DMSO): 18.9 (CH3), 41.5 (CH3), 105.7 (ArC), 118.7 (ArC), 133.6 (ArC), 134.5 (ArC), 147.2 (ArC), 154.2 (ArC); 分析、C18H22N3S.3H2Oとしての計算値: C, 51.98; H, 6.74; N, 10.11; S, 7.70. 実測値: C, 52.03; H, 6.59; N, 10.05; S, 7.66.
【0184】
合成3
1,9−ジエチル−メチル−チオニニウムクロリド(DEMTC)
【化9】
【0185】
N,N−ジメチル−m−エチルアニリン
100cm3丸底フラスコに、3−エチルアニリン(10g、82.5mmol)、エタノール(15cm3)、炭酸ナトリウム(11.81g、111.4mmol)を加えた。ヨウ化メチル(31.63g、222mmol)を滴下した。次に、混合物を45℃で10時間加熱してから、室温に冷却して水(100cm3)を加えた。混合物をジエチルエーテル中に抽出して(3x100cm3)、抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、明黄色の油状物として標記化合物(4.68g、38%)を得た。νmax (neat)/cm-1: 3045 (CH), 2960 (CH), 2920 (CH), 2891 (CH), 2797 (CH), 1597 (C=N), 1494 (CH), 1438 (CH), 1352 (CH), 1225 (CH);δH (250 MHz; CDCl3): 7.22 (1H, t, 7.75, ArH), 6.63 (3H, m, ArH), 2.97 (6H, s, NCH3), 2.63 (2H, q, 7.5, CH2), 1.27 (3H, t, 7.5, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 15.8 (CH3 ), 29.5 (NCH2), 40.8 (NCH3 ), 110.3 (ArC), 112.4 (ArC), 116.5 (ArC), 129.1 (ArC), 145.3 (ArC), 150.9 (ArC).
【0186】
N,N−ジメチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、N,N−ジメチル−m−エチルアニリン(4.68g、31.3mmol)、水(100cm3)および塩酸(8.5cm3、37%)を加え、溶液を5℃に冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム(2.46g、3.57mmol)の水溶液(80cm3)を、アニリン混合物に滴下して、3時間室温で撹拌した。鉄(Fe)くず(5.24g、94mmol)および塩酸(8.5cm3、37%)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液を重炭酸ナトリウム溶液でpH7に調整してから酢酸エチル(3x50cm3)中に抽出した。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状物を得た。油状物をエタノール(100cm3)およびジエチルエーテル(80cm3)に溶解し、塩酸(7cm3、37%)を注意深く加え、明黄褐色の固体として標記化合物(7.42g、72%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2976 (CH), 2894 (CH), 2859 (CH), 2753 (CH), 1583 (C=N), 1508 (CH), 1486 (CH), 1459 (CH), 1183 (CH);δH (250 MHz; D2O): 7.66 (1H, s, ArH), 7.56 (2H, s, ArH), 3.29 (6H, s, NCH3), 2.74 (2H, q, 7.5, CH2), 1.25 (3H, t, 7.5, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 15.5 (CH3) 25.6 (NCH2), 48.9 (NCH3), 122.1 (ArC), 124.6 (ArC), 128.1 (ArC), 132.6 (ArC), 143.3 (ArC), 144.9 (ArC).
【0187】
1,9−ジエチルメチルチオニニウムクロリド
N,N−ジメチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(1.3g、5.5mmol)を水(50cm3)に溶解し、溶液をpH1.6に調整した。次に、硫化ナトリウム>60%(0.71g、5.5mmol)をピンク色の溶液に分けて加えた。懸濁液に、塩化鉄(III)の水溶液(2.23g、水50cm3中に8.2mmol)を加えると、紫色に即時の色変化をした。次に、塩化鉄(III)溶液(2.23g、水50cm3中に8.2mmol)の第二の分割量を加える前に、溶液を1時間通気した。濾過および水で沈殿物を洗浄する前に、溶液を5℃に冷却した。濾液に塩化ナトリウム(50g)を加え、溶液を10分間撹拌し、生成物が塩析されるにつれて、溶液の色は赤色/紫色に変化した。懸濁液を濾過し、硫酸マグネシウム上で乾燥する前に、固体をジクロロメタン(100cm3)およびメタノール(10cm3)に溶解した。濾過し、濃縮すると、緑色の固体として標記化合物(0.15g、15%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 3408 (CH), 2613 (CH), 1606 (C=N), 1399 (CH), 1316 (CH);δH (250 MHz; D2O): 6.55 (2H, s, ArH), 6.23 (2H, s, ArH), 2.92 (12H, s, NCH3), 2.56 (4H, q, 7.5, CH2), 0.99 (6H, t, 7.5, CH3); (ESI), 340.4 (100%, [M - Cl]+)。場合により、溶離液として10%メタノール:90%ジクロロメタンと、シリカ40−63μ 60Åを使用して、フラッシュカラムクロマトグラフィーを行って塩化鉄残留物を除去した。
【0188】
合成4
1,9−ジメチル−エチル−チオニニウムクロリド(DMETC)
【化10】
【0189】
N,N−ジエチル−3−メチル−4−フェニレンジアミン二塩酸塩(10.74g、50mmol)を水(400cm3)に溶解し、pHを1.6に調整し、次にそれを硫化ナトリウム(>60%)(3.90g、50mmol)に加えた。塩化鉄(III)(20.28g、75mmol)を水溶液(175cm3)として加えると、黄色から深青色に即時の色変化が得られた。混合物を1時間通気してから、塩化鉄(III)水溶液(20.28g、175cm3中75mmol)の第二のアリコートを加えた。濾過の前に、溶液を5℃に冷却して、その温度で1時間維持した。濾液に塩化ナトリウム(200g)を加え、濾過して、青色/紫色の固体として粗生成物を得た。粗固体をカラムクロマトグラフィーにより精製して(溶離液は、10% MeOH、90% DCMであり、シリカ40−63μ 60Åを使用する)、緑色/紫色の固体として標記化合物(0.80g、4%)を得た。νmax (KBr)/cm-1: 2971 (CH), 2921 (CH), 2865 (CH), 1600 (C=N), 1412 (CH), 1326 (CH); δH (250 MHz; D2O): 6.62 (2H, s, ArH), 6.39 (2H, s, ArH), 3.30 (8H, q, NCH2), 1.89 (6H, s, ArCH3), 1.09 (12H, t, CH3);δC(62.9 MHz; D2O) 12.6 (CH3 ), 18.0 (CH3), 46.2 (NCH2), 103.6 (ArC), 117.1 (ArC), 132.3 (ArC), 133.9 (ArC), 147.3 (ArC), 151.9 (ArC); m/z (ESI) 368.1 (100%, [M-Cl]+).
【0190】
合成5
1,9−ジエチル−エチル−チオニニウムクロリド(DEETC)
【化11】
【0191】
N,N−ジエチル−m−エチルアニリン
100cm3丸底フラスコに、3−エチルアニリン(5.0g、41.3mmol)、エタノール(7.5cm3)、炭酸ナトリウム(5.9g、55.7mmol)を加えた。ヨウ化エチル(17.38g、111.4mmol)を滴下した。次に、混合物を45℃で12時間加熱した後、室温に冷却し、水(50cm3)を加えた。混合物をジエチルエーテル(3x50cm3)中に抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、明黄色の油状物として標記化合物(7.03g、96%)を得た。δH (250 MHz; CDCl3): 7.20 (1H, dd, 9, 7.25, ArH), 6.60 (3H, m, ArH), 3.43 (4H, q, 7, NCH2), 2.69 (2H, q, 7.25, CH2), 1.32 (3H, t, 7.5, CH3), 1.23 (6H, t, 7, CH3);δC (62.9 MHz; CDCl3): 12.7 (CH3 ), 15.8 (CH3 ), 29.5 (CH2), 44.4 (NCH3 ), 109.4 (ArC), 111.4 (ArC), 115.1 (ArC), 129.2 (ArC), 145.4 (ArC), 147.9 (ArC).
【0192】
N,N−ジエチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩
250cm3丸底フラスコに、N,N−ジエチル−m−エチルアニリン(5g、28.2mmol)、水(50cm3)および塩酸(9cm3、37%)を加え、溶液を5℃に冷却した。次に、亜硝酸ナトリウム(2.14g、31.0mmol)の水溶液(20cm3)を、アニリン混合物に滴下し、1時間、低温度で撹拌した。鉄(Fe)くず(4.72g、84.6mmol)および塩酸(9cm3、37%)を加え、混合物を30℃以下で2時間撹拌した。懸濁液を濾過し、濾液を重炭酸ナトリウム溶液でpH7に調整した後、酢酸エチル(3x50cm3)中に抽出した。合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮し、褐色の油状物を得た。粗油状物をカラムクロマトグラフィーにより精製して(溶離液は、酢酸エチルであり、シリカ40−63μ 60Åを使用する)、褐色の油状物としてフェニレンジアミン(2.2g、41%)を得た。油状物をジエチルエーテル(50cm3)に溶解し、塩酸を加え(2.5cm3、37%)、溶液を濃縮し、明褐色の固体として標記化合物(2.76g、41%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 7.50 (3H, m, ArH), 3.59 (4H, q, 7.25, NCH2), 2.69 (2H, q, 7.5, CH2), 1.20 (3H, t, 7.5, CH3), 1.03 (6H, t, 7.25, CH3); δC (62.9 MHz; D2O): 12.1 (CH3), 15.5 (CH3), 25.5 (CH2), 56.3 (NCH2), 123.9 (ArC), 126.0 (ArC), 127.9 (ArC), 133.1 (ArC), 139.4 (ArC), 143.3 (ArC).
【0193】
1,9−ジエチル−エチルチオニニウムクロリド
N,N−ジエチル−m−エチル−p−フェニレンジアミン二塩酸塩(2g、7.5mmol)を水(75cm3)に溶解し、溶液をpH1.6に調整した。次に、ピンク色の溶液を硫化ナトリウム(>60%)(1.35g、10.4mmol)に分けて加えた。懸濁液に塩化鉄(III)(4.22g、水35cm3中15.6mmol)の水溶液を加える場合には、紫色への即時の色変化があった。次に、溶液を1時間通気した後、塩化鉄(III)溶液(4.22g、水35cm3中15.6mmol)の第二の分割量を加えた。溶液を5℃に冷却した後、濾過し、沈殿物を水で洗浄した。また、沈殿物をエタノールで洗浄し、エタノールを濃縮して、粘着性状の紫色の固体を得た。水溶性濾液に塩化ナトリウム(50g)を加え、溶液を10分間撹拌し、それにより、生成物が塩析するにつれて、色が赤色/紫色に変化した。懸濁液を濾過し、固体がジクロロメタン(100cm3)およびメタノール(10cm3)に溶解した後に硫酸マグネシウム上で乾燥した。濾過し、エタノール可溶性生成物で濃縮し、紫色の固体として標記化合物(0.06g、3%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 6.73 (2H, s, ArH), 6.48 (2H, s, ArH), 3.45 (8H, brdq, NCH2), 2.46 (4H, q, 7.5, CH2), 1.17 (12H, brdt, CH3), 0.93 (6H, t, 7.5, CH3); m/z (ESI) 396.2 (100%, [M-Cl]+)。場合により、溶離液として10%メタノール:90%ジクロロメタンと、シリカ40−63μ 60Åを使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーを行って塩化鉄残留物を除去した。
【0194】
合成6
エチル−チオニニウムクロリド 塩化亜鉛 複塩(ETZ)
【化12】
【0195】
H2O(100cm3)およびH2SO4(濃、「98%」、1cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(5.0g、30.4mmol)の撹拌した混合物を、非還元ZnCl2溶液(ZnCl2、7.60g、Na2Cr2O7・2H2Oを伴うH2O 15cm3中の55mmol、100mg)で処理して、赤みを帯びた反応混合物を生成した。Al2(SO4)3・16H2O溶液(5.80g、H2O 10cm3中9.2mmol)、Na2S2O3・5H2O溶液(8.0g、H2O 10cm3中32.2mmol)およびNa2Cr2O7・2H2O(8.7g、H2O 15cm3中29.2mmol)の1/3溶液を加え、その後温度を40℃に迅速に上昇させた。N,N−ジエチルアニリンの溶液(3.0g、濃HCl中20.1mmol、4cm3)を加え、続けて残りのNa2Cr2O7・2H2O溶液を加えた。暗緑色の沈殿物が観察された。温度を急速に75℃に上昇させ、その後、活性化されたMnO2のスラリー(3.80g、H2O 5cm3中44.7mmol)を加えた。温度を85℃に上げて、その温度で30分間撹拌した。沈殿物を伴う青色の溶液が観察された。反応混合物を50℃に冷却し、H2SO4(濃、11cm3)をゆっくり加えた。反応物をさらに20℃に冷却し、減圧濾過し、沈殿物を回収し、次にそれをブライン(飽和塩水)で洗浄した。この黒色の固体をH2O(250cm3)に100℃で再溶解し、冷却し、続けて減圧濾過をして、不溶性物質を除去した。濾液をZnCl2(4g)およびNaCl(23g)で処理し、冷蔵庫に16時間放置し、その後、得られた沈殿物を減圧濾過により回収し、ブライン(30cm3)で洗浄し、減圧オーブン中で3時間乾燥し、さびた赤色の粉末として標記化合物(5.7g、71%)を得た。δH (250 MHz, D2O): 1.20 (12H, br t, CH3), 3.50 (8H, br q, CH2), 6.80 (2H, s, ArH), 7.05 (2H, br d, ArH) 及び 7.30 (2H, br d, ArH).。例えば、Fierz-David and Blangley, 1949, "F. Oxazine and Thiazine Dyes," in: Fundamental Processes of Dye Chemistry, published by Interscience (London, UK), pp. 308-314を参照。
【0196】
合成7
メチル−チオニニウムヨージド(MTI)
【化13】
【0197】
メチル−チオニニウムクロリド(2.00g、6.25mmol)を水(50cm3)に溶解し、ヨウ化カリウム(1.56g、9.4mmol)を撹拌下加えた。沈殿物が形成され、それを濾過し、固体を沸騰水(50cm3)から再結晶して、微細な緑色の針状晶として標記化合物(1.98g、77%)を得た。δH (250 MHz; DMSO): 7.88 (2H, br d, ArH), 7.49 (4H, br s, ArH), 3.37 (12H, s, CH3)。C16H18N3SIについての分析値:C, 46.72; H, 4.41; N, 10.22; S, 7.80; I, 30,85;実測値:C, 46.30; H, 4.21; N, 10.14; S, 7.86; I, 29.34。
【0198】
合成8
メチル−チオニニウムヨージド ヨウ化水素 混合塩(MTI.HI)
【化14】
【0199】
メチル−チオニニウムヨージド(0.50g、1.22mmol)をメタノール(20cm3)に溶解して、ヨウ化メチル(1.90g、13.37mmol)を撹拌下加えた。さらにヨウ化メチル(0.42g、6.69mmol)を加える前に、混合物を18時間加熱還流し、混合物を再度加熱還流し、8時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、濾過し、個体を得たが、それをメタノールで洗浄して、青銅の緑色の固体として標記化合物(0.30g、46%)を得た。δH (250 MHz; DMSO): 7.82 (2H, d, J = 8.5, ArH), 7.42 (4H, s, ArH), 3.34 (12H, s, CH3). δC (62.9 MHz; DMSO): 153.8 (ArC), 137.9 (ArC), 134.9 (ArC), 133.5 (ArC), 119.1 (ArC), 118.8 (ArC), 106.9 (ArC), 106.6 (ArC), 41.1 (NCH3).
【0200】
合成9
エチル−チオニニウムヨージド(ETI)
【化15】
【0201】
塩酸水溶液(0.5M、200cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(10.0g、61mmol)の撹拌した混合物を、水酸化ナトリウム水溶液(10%)でpH2に調整した。Na2S2O3.5H2O水溶液(16.65g、H2O 20cm3中67mmol)を加える前に、ジアミン溶液を5℃に冷却した。Na2Cr2O7.2H2Oの水溶液(7.27g、H2O 35cm3中24mmol)を混合物に15分にわたって滴下して、黒色の懸濁液を得た。この懸濁液を5℃で1時間撹拌した(pH=8.07、T=3.7℃)。懸濁液に加える前に、N,N−ジエチルアニリン(8.25g、61mmol)、H2SO4(6g)および水(10cm3)の溶液を5℃に冷却した。次に、Na2Cr2O7.2H2Oの水溶液(19.09g、H2O 50cm3中64mmol)を、20分にわたって混合物に滴下して、濃い暗緑色の懸濁液を得た。濾過前に、混合物を5℃で2時間撹拌した(pH=6.75、T=6°C)。得られた緑紫色の固体を水(2x50cm3)で洗浄した。固体を塩酸水溶液(300cm3、pH2)中にスラリーにして、22℃でpH=6.37の懸濁液を得た。懸濁液にCuSO4(1.52g、6.1mmol)を加えて、混合物を90℃に加熱すると、深青色の溶液を形成した。この温度で1時間撹拌後、混合物を25℃に冷却して濾過した。固体を水(2x50cm3)で洗浄し、濾液をT=25℃、塩酸(5M)で、pH6.33からpH2.00に調整した。深青色の溶液を80℃に加熱し、ヨウ化カリウム(14g)を加え、冷却すると、橙紫色の沈殿物が沈殿した。濾過して紫色の粉末(8.8g、31%)を得て、それを熱エタノール(400cm3)から再結晶化して、微細な紫色の針状晶として標記化合物を得た。融点211℃;νmax (KBr)/cm-1: 3574 (CH), 3484 (CH), 3028 (CH), 2965 (CH), 1662 (C=C), 1539 (CH), 1474 (CH), 1346 (CH);δC (62.9 MHz, CDCl3): 1.33 (12H, t, 7, CH3), 3.72 (8H, q, 7, NCH2), 7.23 (2H, d, 9.75, ArH), 7.41 (2H, s, ArH), 7.83 (2H, d, 9.75, ArH);δH (62.9 MHz, CDCl3):152.4, 138.8, 135.7, 135.2, 118.3, 106.4, 46.8, 13.2.
【0202】
合成10
エチル−チオニニウムヨージド ヨウ化水素 混合塩(ETI.HI)
【化16】
【0203】
エチル−チオニニウムヨージド(2.00g、4.28mmol)をエタノール(100cm3)に溶解し、ヨウ化エチル(27.35g、175mmol)を撹拌下加えた。混合物を18時間加熱還流し、次に室温に冷却し、沈殿物を得て、それを濾過し、エタノールで洗浄し、青銅色の固体として標記化合物(1.02g、40%)を得た。δH (250 MHz; D2O): 7.90 (2H, br d, ArH), 7.42 (4H, s, ArH), 2.45 (8H, br q, NCH2), 1.23 (12H, br t, CH3).
【0204】
合成11
エチル−チオニニウムニトラート(ETN)
【化17】
【0205】
塩酸水溶液(0.5M、200cm3)中のN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(10.0g、61mmol)の撹拌した混合物を、水酸化ナトリウム水溶液(10%)でpH2に調整した。Na2S2O3・5H2O水溶液(16.65g、H2O 20cm3中67mmol)を加える前に、ジアミン溶液を5℃に冷却した。Na2Cr2O7・2H2Oの水溶液(7.27g、H2O 35cm3中24mmol)を混合物に15分にわたって滴下して、黒色の懸濁液を得た。懸濁液を5℃で1時間撹拌した(pH=8.07、T=3.7℃)。懸濁液に加える前に、N,N−ジエチルアニリン(8.25g、61mmol)、H2SO4(6g)および水(10cm3)の溶液を5℃に冷却した。次に、Na2Cr2O7・2H2Oの水溶液(19.09g、H2O 50cm3中64mmol)を、20分にわたって混合物に滴下して、濃い暗緑色の懸濁液を得た。濾過前に、混合物を5℃で2時間撹拌した(pH=6.75、T=6°C)。得られた緑紫色の固体を水(2x50cm3)で洗浄した。固体を塩酸水溶液(300cm3、pH2)中にスラリーにして、22℃でpH=6.37である懸濁液を得た。懸濁液にCuSO4(1.52g、6.1mmol)を加え、混合物を90℃に加熱すると、深青色の溶液を形成した。この温度で1時間撹拌後、混合物を25℃に冷却して濾過した。固体を水(2x50cm3)で洗浄し、濾液をT=25℃、塩酸(5M)で、pH6.33からpH2.00に調整した。深青色の溶液を80℃に加熱し、硝酸ナトリウム(50g)を加え、穏やかに撹拌しながら25℃にゆっくり冷却した。生成物を緑色の針状晶(6.80g、28%)として濾過した。δH (250 MHz, CDCl3): 1.36 (12H, t, 7, CH3), 3.72 (8H, q, 7, NCH2), 7.23 (2H, d, 9.5, ArH), 7.39 (2H, s, ArH), 7.89 (2H, d, 9.5, ArH); δH (62.9 MHz, CDCl3): 152.5, 138.8, 135.7, 135.6, 118.1, 106.4, 46.6, 12.9.
【0206】
生物学的試験
方法
α−シヌクレインタンパク質の精製
E.coliでのα−シヌクレインの発現のために2つのプラスミドを構築した。α−シヌクレインのコア凝集ドメイン(アミノ酸31〜109)は、Niキレート化カラムでの精製を可能にするN末端ポリヒスチジンタグ(tsyn)を用いて発現させた。全長α−シヌクレイン(syn)は、タグなしで発現させ、DEAEセファロースでのイオン交換クロマトグラフィーで精製し、一部の場合ではその後、CM−セファロースでの精製を行った。どちらのタンパク質でも、30〜50%硫酸アンモニウムカットを取ることによって、最初に細菌抽出物を濃縮した。カラムから溶離したタンパク質を20mM CAPS、pH9.5または20mM Tris.HCl、pH7.5、50mM NaCl(詳細については表1を参照)で透析し、−70℃で貯蔵した。
【0207】
フィラメント集合のための蛍光アッセイ
α−シヌクレインタンパク質(tsynまたはfsyn)は、原線維形成を誘発するために混合しながら、図の凡例に示した回数で37℃にてインキュベートした。一部の場合では、原線維形成を向上させるために50μg/mlヘパリンを含めた。
【0208】
サンプル10μlを次に、一部の場合では1μM、または0.2または5μMのチオフラビンTまたはプリムリンを加えて、水で100μlに希釈した。蛍光励起スペクトルは、発光波長480nmで、Varian Carey Eclipse蛍光分光光度計によって96ウェルプレートにて測定した。励起スペクトルは、tsynなしで測定したシグナルおよびスペクトルから測定したピークシグナルについて補正した。データは化合物なしで測定した値に正規化し、化合物の濃度に対して正規化された蛍光のプロットからP50値を測定した。
【0209】
シヌクレイン−シヌクレイン結合のELISAアッセイ
固相アッセイを使用して、α−シヌクレインの自己会合を測定した。炭酸塩緩衝液(pH8.5)で希釈したtsynをアッセイプレートに結合させ、全長α−シヌクレイン(fsyn)を水相に添加した。水相結合緩衝液は50mMリン酸Na、pH6.0、20mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。結合したfsynは、tsynを認識しない市販抗体(211)を使用して検出した。
【0210】
実施例1 α−シヌクレインの精製
図1は、SDS−PAGEによって分析し、クマシーブルーで染色した、tsynの精製によるサンプルを示す。Niアフィニティカラムは、非常に効率的な精製を与えた;最終精製タンパク質(図1のtsyn−8)は、95%超の純度であり、細菌培養物750mlからタンパク質44mgの収量であった。
【0211】
図2は、DEAE−セファロースでのfsynの精製を示す。この方法を使用する最終タンパク質は、あまり純粋でなかった(図2のfsyn−9)。
【0212】
図3は、DEAE−セファロースと、それに続くCM−セファロースでのfsynの精製を示す。この方法は、純度>95%のタンパク質を生成するが、収率は低い(DEAEセファロース単独の85mgと比較してタンパク質12mg)。
【0213】
α−シヌクレインのいくつかの異なる調製物を後述するアッセイで使用して、その精製の簡単な詳細事項を表1にまとめて示す。
【0214】
【表3】
【0215】
熱処理によって調製したタンパク質は、アッセイでは不活性であった。DEAEイオン交換クロマトグラフィーによって調製したタンパク質は、活性であった。したがって、CM−またはSP−セファロースでのさらなる精製工程を実施した。CM−セファロースが最も清浄な調製物を与えるが、SP−セファロースよりも収率が低いことが見出された。これらの調製物を結合活性について比較した(実施例9を参照)。表1は、これらの実験に使用したシヌクレイン調製物をまとめて示している。
【0216】
実施例2 蛍光によるシヌクレイン集合のアッセイ
α−シヌクレインの集合および原線維形成がチオフラビンTの蛍光を強化することが報告されている。我々は、チオフラビンTの、そしてさらにプリムリンの蛍光に対するα−シヌクレインの効果について試験した。タンパク質は、50μg/mlヘパリンを用いて、または用いずに37℃でのインキュベーションによって集合を誘発させ、サンプルを種々の時点で1μMチオフラビンTまたはプリムリンでアッセイした。
【0217】
図4は、tsynおよびfsyn調製物の集合の時間経過を示す。ヘパリンの非存在下では、どちらのタンパク質によってもチオフラビンT蛍光のごくわずかな出現がある(図4A、4B)。ヘパリンの非存在下では、tsynタンパク質によって20〜30時間にわたるプリムリンシグナルの出現があり、ヘパリンの存在下では、プリムリンシグナルの出現の遅滞期はないが、蛍光の最終的な程度は、ヘパリンを用いても、用いなくても同様である(図4A)。ヘパリンは、tsynでチオフラビンTシグナルの出現をプリムリンと同様の程度まで刺激する(図4A)。ヘパリンの非存在下では、fsynについてチオフラビンTおよびプリムリンシグナル両方の非常にゆっくりとした出現がある。ヘパリンの存在下では、両方のフルオロフォアを持つシグナルの出現があるが、tsynで見られるよりも長い遅滞期を伴う(図4B)。プリムリンシグナルの出現での遅滞期は、チオフラビンTのそれよりも短いが、チオフラビンTシグナルの最終的な程度はプリムリンのそれよりも大きい(図4B)。プリムリンとチオフラビンTとの間のシグナルの差は、これらの2つのフルオロフォアがシヌクレインの異なる集合状態を検出していることを示し、プリムリンが、チオフラビンTによって検出される原線維形成前の早期の前駆集合状態を検出するという概念と一致している。
【0218】
実施例3 MTCおよびETCによる原線維破壊のアッセイ
蛍光効果は、集合したα−シヌクレインに対する化合物MTCおよびETCの効果をアッセイするのに使用した。
【0219】
図5は、集合tsynによって誘起されたチオフラビンTまたはプリムリンのどちらかの蛍光シグナルに対するMTCおよびETCの効果を示し、トレースからのピーク蛍光値は、図7Aの化合物の濃度の関数として示されている。図6は、集合fsynによって誘起されたチオフラビンTまたはプリムリンのどちらかの蛍光シグナルに対するMTCおよびETCの効果を示し、トレースからのピーク蛍光値は、図7Bの化合物の濃度の関数として示されている。図7のグラフから測定したp50値を表2にまとめる。
【0220】
【表4】
【0221】
チオフラビンTおよびプリムリン蛍光に対する化合物の効果は、原線維の破壊よりもむしろ蛍光リガンドの競合のためでありうる。効果が競合による場合のみにP50がフルオロフォア濃度に依存するので、このことを試験するために、フルオロフォアの3つの異なる濃度で実験を実施した。1つの実験によるデータを図8に示し、すべての実験からの平均P50を表3に示す。フルオロフォア濃度の25倍の差にわたって測定されたP50値には有意差はなく、化合物の効果が原線維破壊のためであることを示している。
【0222】
【表5】
【0223】
実施例4 in vitroでのα−シヌクレイン凝集体の集合に対する化合物の効果
集合したα−シヌクレイン凝集体に影響を及ぼすのはもちろんのこと、MTCは、プリムリンの結合の競合によって決定されたように、α−シヌクレインの凝集体への集合も阻害する。tsynおよびfsynからの凝集体の集合のための最適条件が決定され、MTCの阻害効果を図(新しい図A)に示す。tsyn(20mM Tris.HCl、pH7.5+50μg/mlヘパリン中1mg/ml)は37℃で24時間にわたって集合させた。MTCは、5μMを超える濃度(○、白丸)でのtsyn集合を阻害する。fsynは、fsynの濃度が2mg/mlで、インキュベーションが120時間である場合を除いて、同じ条件下で集合した。MTCは、tsynよりもfsynによってより大きい阻害効果を示し、阻害はfsynによって0.05μMにて生じる(●、黒丸)。
【0224】
MTCおよびETCによるα−シヌクレイン凝集の阻害(fsyn;上記のようにプリムリンアッセイを使用)は、DEMTCおよびDEETCによって観察された阻害と匹敵するか、それ以上であった。これらすべての化合物は50μMの濃度にて集合を完全に阻害した。
【0225】
【表6】
【0226】
チオフラビンTも、fsyn集合を監視するために使用した。チオフラビンTシグナルの発生はプリムリンシグナルより遅いが、より高いレベルに到達して、凝集の形成よりもむしろ原線維の伸長を知らせているように思われる。集合の後期の段階(160時間)でチオフラビンTシグナルが水平域に達したときに、チオフラビンTシグナルはプリムリンシグナルよりもMTCによる阻害に対して感受性であり、著しい効果が0.05μMにて見られた。これを図12に示す。
【0227】
実施例5 固相ELISAアッセイによるα−シヌクレイン結合のアッセイ
2つのα−シヌクレインタンパク質は、結合アッセイにも使用した。tsynは、固相で結合され、全長fsynは水相に添加した。tsynを認識しないα−シヌクレインのC末端エピトープに対する抗体を使用して、結合したfsynを定量した。
【0228】
図9は、tsyn−13に結合するfsyn−20の水相および固相結合曲線を示す。fsyn20の結合は〜5μMで水平となり、tsyn−13結合は〜2μMで水平となる。これらの濃度を使用して、シヌクレイン−シヌクレイン結合に対する種々の塩化チオニニウムおよびフラボンの効果を試験した。
【0229】
阻害曲線を図10に示し、曲線から計算したB50値を表4にまとめる。
【0230】
結合アッセイで試験したすべてのフラボンは良好な阻害活性を有するが、これに対して塩化チオニニウムのほとんど、すなわちMTC、ETC、DMMTC、DEMTC、DMETC、DEETC、チオニンおよび塩化トロニウムは活性であるが、その他、例えばアズールAおよびアズールBは不活性である。
【0231】
表5 シヌクレイン−シヌクレイン結合の阻害のP50およびB50値。ヘパリン(50μg/ml)を含む20μM Tris.HCl(pH 7.5)中で集合させて、2つのフルオロフォア(1μM)、チオフラビンTまたはプリムリンのどちらかによってアッセイした1μg/ml tsyn−16を用いて測定されたP50。20mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を使用して、1μM tsyn−16(固相)および5μM fsyn−20(水相)を用いて測定したB50。
【表7】
【0232】
実施例6 α−シヌクレイン凝集の細胞ベースのアッセイ
細胞ベースのアッセイは、N末端シグナル配列(SSfsyn)を含む全長α−シヌクレインを発現するように組み換えられたマウス神経芽腫細胞株NIE−115を利用して、タンパク質の膜への取り込みを目標とした(WO02/059150)。細胞がジブチリル環状AMP(dbcAMP)(1mM)によって分化されたときに、α−シヌクレインタンパク質の発現が増加した。
【0233】
α−シヌクレインタンパク質が、種々の抗α−シヌクレイン抗体を使用して免疫ブロットによって検出された。これらは、tsyn内のエピトープ(α−シヌクレインの残基31〜109)を認識するmAb(BD Biosciences Cat No.610787)を含んでいた。α−シヌクレインに加えて、mAb42はより大きい分子量のタンパク質も非特異的に反応する(タンパク質は他の抗α−シヌクレイン抗体によって認識されない)。このタンパク質は、細胞におけるこのタンパク質のレベルが細胞密度と相関しているので、細胞数の推定値として使用した。これらの細胞によって薬物を試験し、阻害活性(EC50)は、α−シヌクレインの非特異性バンドに対する比がdbcAMPのみで処置した細胞の値の50%に低下した薬物濃度を決定することによって計算した。
【0234】
dbcAMPおよび薬物を加えるタイミングを変えて、細胞収集前に細胞が薬物+dbcAMPの存在下に放置される時間の長さも変えた。DEETCについての代表的な結果を図13に示す。
【0235】
MTCは、細胞がMTCおよびdbcAMPの存在下に2日間より長く放置されたときに阻害性があった。最も有効な化合物は、nM範囲で阻害したDEETCであった;DEMTC、DMETCおよびETCも阻害活性を示す(表6)。フラボン、ラムネチンも阻害性であった。
【0236】
【表8】
【0237】
実施例7 細胞ベースのアッセイにおけるα−シヌクレインの切断および凝集
dbcAMPを使用してDH60.21 NIE細胞を分化させたときに、mAb 42(α−シヌクレインのコアを認識)またはmAb 211(α−シヌクレインのC末端エピトープを認識)を使用して検出されたように、SSFsynの発現の増加があった。加えて、約15および16kDaの2つのより低い分子量のバンドが生成された。後者はシグナル配列のないFsynに相当しうる。これらの2つのタンパク質の大きいほうがこれらの抗体の両方によって検出されたが、15kDaバンドはせいぜい、mAb 211を使用してごく弱く検出された。代表的な例は図14に示す。このことは、これがC末端切断されたタンパク質であることを示唆する。FSynより大きい見かけの移動度を持つさらなる22kDaバンドが観測されたが、mAb 211ではなく、mAb 42のみを使用して観測された(図14)。SSFsynバンドに対する22kDaの比は、使用した抗体に応じて有意に異なっていた(p<0.001;表7)。このことはN末端およびC末端の両方で切断された凝集シヌクレインの存在を示唆する。この22kDaバンドは、SSFsynによって形質移入されたSH−SY5Y神経芽腫細胞でも観測された。
【0238】
【表9】
【0239】
SSFsynを発現する細胞を蛍光顕微鏡で検査したときに、凝集タンパク質を示唆する粒状性質の物質を含む、大量発現が観察された(図15)。更に細胞中で観測された凝集体は、凝集タンパク質に結合するフルオロフォアである、プリムリンによって同時に認識された(図16)。このことはα−シヌクレイン凝集がSH−SY5Y神経芽腫細胞の分化後に生じることを示す他の研究を確証させる(Hasegawa et al. 2004; Brain Res. 1013:51-59)。
【0240】
実施例8 α−シヌクレインオリゴマー集合に対する、およびin vitroのαシヌクレイン結合に対するMTCの効果
表5のシヌクレインアッセイにおけるP50およびB50測定の結果を参照すると、塩化チオニニウムは一般にシヌクレインアッセイでフラボンより低いP50を有するが、フラボンの一部は塩化チオニニウムに匹敵する低いB50を有することがわかる。このことは、両方のクラスの化合物がシヌクレインの自己凝集反応を阻害するのに有効であるが、塩化チオニニウムのみが事前に形成された凝集体を破壊する能力を有することを示唆する。
【0241】
MTCの活性のさらなるアッセイとして、その効果をtsynの集合の時間経過にわたって測定した(図17)。図17に示すように、MTCの非存在下には〜2時間の集合前の遅滞期がある。蛍光シグナルは、4〜5時間でピークに達して、次に20時間にわたって徐々に低下する。蛍光の出現の時間経過は、2つのフルオロフォアで同様である。低濃度のMTC(0.05μM)の存在下で、集合開始前の遅滞期は1時間に短縮され、24時間後の最終蛍光シグナルはより高い。特に、プリムリンでは、最大蛍光はチオフラビンTと比較して、プリムリンで高い。0.5μM MTCの存在下では、集合は対象よりも低速であるが、最終蛍光レベルは対照よりも高い。5μM MTCでは、最初の4〜5時間にわたる集合の時間経過は対照と類似しているが、次に蛍光のより迅速な低下があるものの、最終蛍光レベルは対照と同様である。50μM MTCにおいて、実験の時間経過にわたって集合はない。図17のデータは、シヌクレインの集合に対してMTCが複雑な効果を有することを示す;低濃度では(シヌクレイン:MTCのモル比は、2000:1)、MTCは集合をある程度まで明らかに刺激するが、これに対して高濃度では(シヌクレイン:MTCの最高モル比は2:1)、MTCは集合を完全に阻害する。理論に縛られたくはないが、MTCは凝集の阻害を可能にするには不十分であるが、凝集を促進するために1個を超えるシヌクレイン分子への化合物の結合を可能にする低いモル比にて、リガンド架橋効果を与えることが推測される。
【0242】
実施例9 α−シヌクレイン固相結合アッセイの最適化
図18は、実施例1で記載したような各種のシヌクレイン調製物の結合曲線を示す。最良の結合は最も純粋な調製物であるsyn−10を使用して示され、最悪の結合は最も純度の低いsyn−14を使用して示された。このことは第2の精製工程が結合を阻害する汚染物質を除去することと、これが収率を低下させるとしてもタンパク質が第2のCM−セファロース工程によって精製されるべきであることとを示唆している。
【0243】
Syn−10は、3つの調製物のうちで最良の結合を示したが、最大結合程度は、まだかなり低い。tsynの2つの異なる固相調製物で試験を行うと、差は示されず、使用したtsynの濃度が最適であることが示された(データは示さず)。したがって、水相工程の異なる緩衝液条件を試験した。
【0244】
図19Aは、緩衝液、HEPESおよびMESがsynの結合を完全に無効にしたことを示す。図19Bは、pH7.0のTris緩衝液は、先に使用したpH7.5よりも良好な結合を可能にすることを示す。pH8.0のTrisは最悪の結合を与えたので、より低いpHはsyn結合にとってより良好であると思われる。Trisはより低いpHでは緩衝するために使用できないので、pH6.5での試験を可能にするためにリン酸緩衝液も試した。pH6.5のリン酸塩はpH7.0のリン酸塩よりも良好な結合を与えた。実験間の結合の変化にもかかわらず、これらの結果は、緩衝液の化学的性質が、pHと同様にsynの結合に影響を及ぼすことと、最良の緩衝液がTris、pH7.0であることとを示した。
【0245】
図18のデータは、固相結合アッセイでのsynの最良の精製方法はDEAEクロマトグラフィーと、続いてのCMクロマトグラフィーであることを示している。この方法で精製したsynの更に3つの調製物もTris(pH7.0)緩衝液中で試験した(図20)。結果は、調製物間の結合特徴に多少の変動があることを証明している。さらなる方法では、タンパク質を高pH緩衝液で透析した(syn−20)。このタンパク質の結合を図21のsyn−19と比較した。2μM後の結合の低下は高い非特異性結合のためであり、その値は結合から引かれる。syn−20は、syn−19より著しく良好な結合を示し、透析緩衝液の変化を確認した。
【0246】
変動を試み、そして低減するために、より低いpHでのリン酸緩衝液の使用についても調査した。図22Aは、pH6.0のリン酸緩衝液でアッセイしたfsyn−20はpH7.0のTrisまたはpH5.5のリン酸塩よりも良好な結合を与えることを示す。重要なことに、上昇したバックグラウンドのためにより高いfsyn濃度での曲線の低下はない。高いpH CAPSに対して透析した第2のfsyn調製物(fsyn−22)もpH6.0のリン酸緩衝液で試験を行い、fsyn−20への同様の結合を与えた(図22B)。最後の高いpH透析によって調製して、pH6.0のリン酸緩衝液でアッセイしたfsynは、固相阻害アッセイに使用した(実施例5)。
【0247】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】硫酸アンモニウム分別およびNiアフィニティクロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図2】硫酸アンモニウム分別およびDEAE−セファロースアニオン交換クロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図3】DEAE−セファロースアニオン交換およびCM−セファロースカチオン交換クロマトグラフィーによるtsynの精製によるサンプル。サンプルは、15%SDS−PAGEによって、クマシーブルーで染色して分析した。
【図4】チオフラビンTおよびプリムリンの蛍光によって監視したtsynおよびfsynによる原線維形成の時間経過。1mg/mlのtsyn−8(A)および2mg/mlのfsyn−14(B)を、指示された場合には50μg/ml ヘパリンを加え、20mM Tris.HCl、pH 7.5中で37℃にて混合しながらインキュベートした。原線維の形成は、インキュベーション10μlを1μMチオフラビンTまたはプリムリン100μl全量に添加することによってアッセイして、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。フルオロフォア単独のシグナルは、励起ピーク(プリムリンでは420nm、チオフラビンTでは450nm)でのシグナルの測定前にスペクトルから差し引いた。
【図5】集合tsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。50μg/ml ヘパリンを加えた1mg/ml(〜95μM)のTsyn−13を37℃にて20時間インキュベートし、その後、アリコートをMTC(A、C)またはETC(B、D)と混合し、示された濃度(μM)を得、そして更に1時間インキュベートした。タンパク質10μlを1μMチオフラビンT(A、B)またはプリムリン(C、D)100μl全量に加えて、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。示されたトレースは、化合物を加えたフルオロフォアのシグナルを、フルオロフォアおよび化合物を加えたタンパク質のシグナルから差し引いた結果である。
【図6】集合fsyn−14によって誘発されたプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。50μg/ml ヘパリンを加えた2mg/ml(〜140μM)のタンパク質を37℃にて47時間インキュベートし、その後、アリコートをMTC(A、C)またはETC(B、D)と混合し、示された濃度(μM)を得、そして更に1時間インキュベートした。タンパク質10μlをプリムリン(C、D)100μl全量に加えて、励起スペクトルを発光波長480nmにて測定した。示されたトレースは、化合物を加えたフルオロフォアのシグナルを、フルオロフォアおよび化合物を加えたタンパク質のシグナルから差し引いた結果である。
【図7】集合tsynまたはfsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。蛍光値は、tsyn−8では図5(A)またはfsyn−14では図6(B)に示すトレースから測定して、化合物なしで測定した値に正規化した。
【図8】チオフラビンTおよびプレムリンの各種濃度にてアッセイした、集合tsynまたはfsynによって誘発されたチオフラビンTまたはプリムリンの蛍光に対するMTCおよびETCの効果。Tysn−16を集合させて、チオフラビンTおよびプリムリンが0.2、1または5μMであることを除いて、図5に記載したようにMTCまたはETCの効果についてアッセイした。バックグラウンド補正後のピーク蛍光値を、化合物なしで測定した値に正規化して、化合物の濃度の関数としてプロットした。MTC(A、B)またはETC(C、D)の効果はチオフラビンT(A、C)またはプリムリン(B、D)を用いて監視した。
【図9】水相fsynの固相tsynへの結合。0〜10μMのfsyn−20を、0〜2μMにて固相に結合したtsyn−13によってインキュベートし、結合したfsynを抗体211を使用して検出した。
【図10】シヌクレイン−シヌクレイン結合に対する化合物の効果。5μMの水相fsyn−10を、示した化合物の存在下で固相中1μMのtsyn−13でインキュベートした。
【図11】tsynおよびfsynからの凝集体の集合のための最適条件が決定され、MTCの阻害効果を示す。
【図12】チオフラビンTによるfsyn集合の監視。
【図13】NIE細胞におけるSSFsyn発現に対するDEETCの阻害作用。各薬物濃度(0〜100nM)を3通り実施した。dbcAMPおよび細胞を添加したDEETCは、mAb42の免疫ブロットによって2日後に分析した。
【図14】mAb 211ではなく、mAb 42によって検出されるさらなるタンパク質バンドの存在。レーン1、未処置;レーン2、3、4は、dbcAMPを用いて分化された3つの独立したプレート。
【図15】SSFsynを発現するNIE細胞中の凝集α−シヌクレイン。左パネル、SSFsyn細胞;右パネル、dbcAMP処置後の非形質移入、対照NIE−115細胞。
【図16】SSFsynを発現するNIE細胞中の凝集α−シヌクレイン。テキサスレッド標識抗−α−シヌクレインによって染色したSSFsyn細胞(左);右パネル、プリムリン標識;中央パネル、抗体およびプレムリン標識の同時局在を示す、マージされた画像。
【図17】tsynの重合に対するMTCの効果。20mM Tris.HCl pH7.5中の1mg/ml(95μM)のtsyn−16、50μg/ml ヘパリンを、示された濃度のMTCの存在下で、37℃にて混合しながらインキュベートした。サンプル(10μl)を種々の時間に採取して、1μMのチオフラビンT(上パネル)またはプリムリン(下パネル)のどちらかの蛍光に対するその効果についてアッセイした。
【図18】各種のsyn調合物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したような3つの異なるsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は、20mM Tris.HCl、50mM NaCl、pH7.5、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図19】異なる緩衝液におけるsyn−10の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13をsyn−10の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液はすべて20mMで、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンを含んでいた。
【図20】異なるsyn調製物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したようなsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は20mM Tris.HCl、pH7.0、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図21】異なるsyn調製物の結合曲線。ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を、示したようなsyn調製物の希釈系列によってインキュベートした。水相緩衝液は20mM Tris.HCl、pH7.0、50mM NaCl、0.05% Tween−20、1%魚皮ゼラチンであった。
【図22】異なる緩衝液におけるfsynおよび20fsyn−22の結合曲線。 A.ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13を20mM Tris pH7.0または50mM リン酸Na pH6.0または5.5中のfsyn−20の希釈系列によってインキュベートした。B.ELISAプレートに結合した1μMのTsyn−13をリン酸Na pH6.0中のfsyn−20またはfsyn−22の希釈系列によってインキュベートした。どちらの場合も、緩衝液は、50mM NaCl、0.05% Tween−20および1%魚皮ゼラチンを含んでいた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シヌクレインの凝集を阻害または逆転する薬剤の製造におけるジアミノフェノチアジン化合物の使用であって、該化合物が、次式:
【化1】
(式中、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−SH;−SR;
−NO2;
−C(=O)R;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR;−C(=O)NR2;−C(=O)NRN1RN2;
−NH2;−NHR;−NR2;−NRN1RN2;
−NHC(=O)H;−NRC(=O)H;−NHC(=O)R;−NRC(=O)R;
−R;
より独立して選択され;
各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NRN1RN2において、独立して、RN1およびRN2はそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基−NR3NAR3NBにおいて:
R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され; あるいは:R3NAおよびR3NBは、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基=NR3NCにおいて、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
存在する場合、各基−NR7NAR7NBにおいて:
R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
あるいは:R7NAおよびR7NBはそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基=NR7NCにおいて、R7NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル; 置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
RN10は、存在する場合:
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
X−は、存在する場合、電気的中性を達成するための1つ以上のアニオン性対イオンである)
で示される化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、ジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、式(2)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、式(3)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、式(4)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項5】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−R;
より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、
−H;
−R;
より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
各Rが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
各Rが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
Rの置換基が、存在する場合:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR’;
−SH;−SR’;
−NO2;
−C(=O)R’;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR’;−C(=O)NR’2;−C(=O)NR’N1R’N2;
−NH2;−NHR’;−NR’2;−NR’N1R’N2;
−NHC(=O)H;−N’RC(=O)H;−NHC(=O)’R;−N’RC(=O)’R;
−R’;
より独立して選択され;
各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NR’N1R’N2において、独立して、R’N1およびR’N2が、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する、
請求項1〜8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
Rの置換基が、存在する場合:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−R’
より独立して選択される、
請求項1〜8のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される、請求項9または10記載の使用。
【請求項12】
各Rが、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−H、−Me、および−Etより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれが、−Hである、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
各基−NR3NAR3NBにおいて、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、存在する場合、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキルであり;
あるいはR3NAおよびR3NBが、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する;
請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
各基−NR3NAR3NBにおいて、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、存在する場合、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項21】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
各基−NR7NAR7NBにおいて、R7NAおよびR7NBのいずれか1が、存在する場合、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
あるいはR7NAおよびR7NBが、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する
請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項24】
各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項25】
各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項26】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項27】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項28】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項29】
RN10が、存在する場合:
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項30】
RN10が、存在する場合、−Hおよび非置換脂肪族C1〜6アルキルより独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項31】
RN10が、存在する場合、−H、−Me、および−Etより独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項32】
RN10が、存在する場合、独立して−Hである、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項33】
X−が、存在する場合、場合によりCl−、Br−、またはI−より選択される、電気的中性を達成するための1つ以上のアニオン性対イオンである、請求項1〜32のいずれか一項記載の使用。
【請求項34】
化合物が次の化合物:
【表1】
ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項35】
シヌクレイン凝集の阻害または逆転のための、請求項1〜34記載のジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項36】
凝集が、神経変性および/または臨床的認知症として現れた疾患状態に関連している、請求項1〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
患者におけるシヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患状態および/または臨床的認知症の処置または予防のための薬剤の製造における、請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項38】
請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物、またはそれを含む治療組成物の予防的または治療的有効量を患者に投与して、シヌクレインの凝集を阻害する工程を含む、シヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患状態および/または臨床的認知症の処置または予防の方法。
【請求項39】
哺乳類の脳におけるシヌクレインの凝集を調節または阻害する方法であって、凝集が神経変性および/または臨床的認知症として現れた疾患状態に関連しており、前記処置が必要な前記哺乳類に請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物の予防的または治療的有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項40】
シヌクレイン凝集に関連する疾患状態に罹患した哺乳類におけるその疾患状態の処置のための薬物製品であって、薬物製品が前記疾患の処置用であることがラベル表示された、またはそのことを示すラベルが付いた容器を含み、それぞれが少なくとも1つの製薬的に許容される賦形剤と、活性成分としての請求項1〜34のいずれか記載の単離された純ジアミノフェノチアジン化合物を含む1つ以上の投薬単位を含有する、薬物製品。
【請求項41】
前記処置が、前記ジアミノフェノチアジン化合物を、処置される哺乳類のドーパミンレベルを調節する化合物と組合せて投与することを含む、請求項37〜40のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項42】
前記処置において、ジアミノフェノチアジン化合物が経口投与される、請求項37〜41のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項43】
400、300、200、または100mgに等しいかそれ以上の1日総用量が投与される、請求項37〜42のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項44】
約10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、または130mgの用量単位が1日3回投与される、請求項43記載の使用、方法、または製品。
【請求項45】
約10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mgの用量単位が1日2回投与される、請求項43記載の使用、方法、または製品。
【請求項46】
薬剤中のジアミノフェノチアジン化合物の総量の50%未満が式(1)の化合物であるか、またはその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、もしくは溶媒和物である、請求項1〜45記載の使用、方法、または製品。
【請求項47】
シヌクレイノパチー疾患状態の診断または予後評価で使用するための診断または予後試薬の製造方法における、凝集シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物の使用であって、前記ジアミノフェノチアジン化合物が、請求項1〜34のいずれか一項記載の化合物であり、1つ以上の同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、または抗原基を取込むか、それにコンジュゲートされるか、それとキレート化されるか、またはそれに関連付けされる、使用。
【請求項48】
ジアミノフェノチアジン化合物の少なくとも1個の環炭素原子が陽電子放出炭素原子であり、かつ/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が陽電子放出炭素原子である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
ジアミノフェノチアジン化合物の少なくとも1個の環炭素原子が11Cであり、かつ/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が11Cである、請求項47または請求項48記載の使用。
【請求項50】
置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が11Cである、請求項47〜49のいずれか一項記載の使用。
【請求項51】
次の化合物:
【化2】
ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項48記載の使用。
【請求項52】
凝集シヌクレインに請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程を含む、凝集シヌクレインを標識化する方法。
【請求項53】
凝集シヌクレインに請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程と、凝集シヌクレインに結合された前記化合物の存在および/または量を検出する工程とを含む、凝集シヌクレインを検出する方法。
【請求項54】
疾患に罹患していると考えられる患者におけるシヌクレイノパチーの診断または予後評価の方法であって:
(i)患者に請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を導入する工程と;
(ii)患者の脳内でシヌクレインまたは凝集シヌクレインに結合した前記化合物の存在および/または量を決定する工程と;
(iii)(ii)で行った決定の結果を患者の疾患状態と相関させる工程
を含む方法。
【請求項55】
患者または哺乳類がヒトである、請求項37〜45、または54のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項56】
疾患が、パーキンソン病(PD)、レビ小体による認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、薬物誘発パーキンソニズム;純粋自律神経不全(PAF)より選択される、請求項36〜45、または47〜51、または54のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項57】
疾患が、PD、PAF、MSAおよびHSDより選択される、請求項56記載の使用、方法、または製品。
【請求項58】
シヌクレインが、α−シヌクレインである、請求項1〜57のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項59】
シヌクレインが、β−シヌクレインである、請求項1〜57のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項1】
シヌクレインの凝集を阻害または逆転する薬剤の製造におけるジアミノフェノチアジン化合物の使用であって、該化合物が、次式:
【化1】
(式中、R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つは、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−SH;−SR;
−NO2;
−C(=O)R;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR;−C(=O)NR2;−C(=O)NRN1RN2;
−NH2;−NHR;−NR2;−NRN1RN2;
−NHC(=O)H;−NRC(=O)H;−NHC(=O)R;−NRC(=O)R;
−R;
より独立して選択され;
各Rは、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NRN1RN2において、独立して、RN1およびRN2はそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基−NR3NAR3NBにおいて:
R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され; あるいは:R3NAおよびR3NBは、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基=NR3NCにおいて、R3NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
存在する場合、各基−NR7NAR7NBにおいて:
R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
あるいは:R7NAおよびR7NBはそれらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成し;
存在する場合、各基=NR7NCにおいて、R7NCは、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル; 置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
RN10は、存在する場合:
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
X−は、存在する場合、電気的中性を達成するための1つ以上のアニオン性対イオンである)
で示される化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、ジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、式(2)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、式(3)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記化合物が、式(4)の化合物、ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項5】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、
−H;
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR;
−R;
より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、
−H;
−R;
より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
各Rが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
各Rが、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル
より独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
Rの置換基が、存在する場合:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR’;
−SH;−SR’;
−NO2;
−C(=O)R’;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−C(=O)NH2;−C(=O)NHR’;−C(=O)NR’2;−C(=O)NR’N1R’N2;
−NH2;−NHR’;−NR’2;−NR’N1R’N2;
−NHC(=O)H;−N’RC(=O)H;−NHC(=O)’R;−N’RC(=O)’R;
−R’;
より独立して選択され;
各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル;
より独立して選択され;
各基−NR’N1R’N2において、独立して、R’N1およびR’N2が、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する、
請求項1〜8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
Rの置換基が、存在する場合:
−F;−Cl;−Br;−I;
−OH;−OR;
−C(=O)OH;−C(=O)OR’;
−R’
より独立して選択される、
請求項1〜8のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
各R’が、
非置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;
非置換C6〜10カルボアリール;
非置換C5〜10ヘテロアリール;
非置換C6〜10カルボアリール−C1〜4アルキル
より独立して選択される、請求項9または10記載の使用。
【請求項12】
各Rが、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−H、−Me、および−Etより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
R1、R2、R4、R6、R8、およびR9のそれぞれが、−Hである、請求項1〜4のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
各基−NR3NAR3NBにおいて、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、存在する場合、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキルであり;
あるいはR3NAおよびR3NBが、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する;
請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
各基−NR3NAR3NBにおいて、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、存在する場合、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
各基−NR3NAR3NBにおいて、存在する場合、R3NAおよびR3NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項20】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項21】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
各基=NR3NCにおいて、存在する場合、R3NCが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜16のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
各基−NR7NAR7NBにおいて、R7NAおよびR7NBのいずれか1が、存在する場合、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル;
あるいはR7NAおよびR7NBが、それらが結合された窒素原子と一緒になって、3〜7個の環原子を有する環を形成する
請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項24】
各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項25】
各基−NR7NAR7NBにおいて、存在する場合、R7NAおよびR7NBのそれぞれ1つが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項26】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項27】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、−H、−Me、−Et、−nPr、および−iPrより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項28】
各基=NR7NCにおいて、存在する場合、R7NCが、−Hおよび−Meより独立して選択される、請求項1〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項29】
RN10が、存在する場合:
−H;
非置換脂肪族C1〜6アルキル;置換脂肪族C1〜6アルキル;
非置換脂肪族C2〜6アルケニル;置換脂肪族C2〜6アルケニル;
非置換C3〜6シクロアルキル;置換C3〜6シクロアルキル
より独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項30】
RN10が、存在する場合、−Hおよび非置換脂肪族C1〜6アルキルより独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項31】
RN10が、存在する場合、−H、−Me、および−Etより独立して選択される、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項32】
RN10が、存在する場合、独立して−Hである、請求項1〜28のいずれか一項記載の使用。
【請求項33】
X−が、存在する場合、場合によりCl−、Br−、またはI−より選択される、電気的中性を達成するための1つ以上のアニオン性対イオンである、請求項1〜32のいずれか一項記載の使用。
【請求項34】
化合物が次の化合物:
【表1】
ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項1記載の使用。
【請求項35】
シヌクレイン凝集の阻害または逆転のための、請求項1〜34記載のジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項36】
凝集が、神経変性および/または臨床的認知症として現れた疾患状態に関連している、請求項1〜35のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
患者におけるシヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患状態および/または臨床的認知症の処置または予防のための薬剤の製造における、請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物の使用。
【請求項38】
請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物、またはそれを含む治療組成物の予防的または治療的有効量を患者に投与して、シヌクレインの凝集を阻害する工程を含む、シヌクレイン凝集に関連する神経変性疾患状態および/または臨床的認知症の処置または予防の方法。
【請求項39】
哺乳類の脳におけるシヌクレインの凝集を調節または阻害する方法であって、凝集が神経変性および/または臨床的認知症として現れた疾患状態に関連しており、前記処置が必要な前記哺乳類に請求項1〜34のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物の予防的または治療的有効量を投与する工程を含む、方法。
【請求項40】
シヌクレイン凝集に関連する疾患状態に罹患した哺乳類におけるその疾患状態の処置のための薬物製品であって、薬物製品が前記疾患の処置用であることがラベル表示された、またはそのことを示すラベルが付いた容器を含み、それぞれが少なくとも1つの製薬的に許容される賦形剤と、活性成分としての請求項1〜34のいずれか記載の単離された純ジアミノフェノチアジン化合物を含む1つ以上の投薬単位を含有する、薬物製品。
【請求項41】
前記処置が、前記ジアミノフェノチアジン化合物を、処置される哺乳類のドーパミンレベルを調節する化合物と組合せて投与することを含む、請求項37〜40のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項42】
前記処置において、ジアミノフェノチアジン化合物が経口投与される、請求項37〜41のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項43】
400、300、200、または100mgに等しいかそれ以上の1日総用量が投与される、請求項37〜42のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項44】
約10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、または130mgの用量単位が1日3回投与される、請求項43記載の使用、方法、または製品。
【請求項45】
約10、20、30、40、50、60、60、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mgの用量単位が1日2回投与される、請求項43記載の使用、方法、または製品。
【請求項46】
薬剤中のジアミノフェノチアジン化合物の総量の50%未満が式(1)の化合物であるか、またはその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、もしくは溶媒和物である、請求項1〜45記載の使用、方法、または製品。
【請求項47】
シヌクレイノパチー疾患状態の診断または予後評価で使用するための診断または予後試薬の製造方法における、凝集シヌクレインを標識できるジアミノフェノチアジン化合物の使用であって、前記ジアミノフェノチアジン化合物が、請求項1〜34のいずれか一項記載の化合物であり、1つ以上の同位体、放射性同位体、陽電子放出原子、磁気共鳴標識、染料、蛍光マーカー、または抗原基を取込むか、それにコンジュゲートされるか、それとキレート化されるか、またはそれに関連付けされる、使用。
【請求項48】
ジアミノフェノチアジン化合物の少なくとも1個の環炭素原子が陽電子放出炭素原子であり、かつ/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が陽電子放出炭素原子である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
ジアミノフェノチアジン化合物の少なくとも1個の環炭素原子が11Cであり、かつ/または置換基R1、R2、R4、R6、R8、R9、R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、R7NC、およびRN10の少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が11Cである、請求項47または請求項48記載の使用。
【請求項50】
置換基R3NA、R3NB、R3NC、R7NA、R7NB、およびR7NCの少なくとも1つの炭素原子の少なくとも1個が11Cである、請求項47〜49のいずれか一項記載の使用。
【請求項51】
次の化合物:
【化2】
ならびにその製薬的に許容される塩、混合塩、水和物、および溶媒和物より選択される、請求項48記載の使用。
【請求項52】
凝集シヌクレインに請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程を含む、凝集シヌクレインを標識化する方法。
【請求項53】
凝集シヌクレインに請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を接触させる工程と、凝集シヌクレインに結合された前記化合物の存在および/または量を検出する工程とを含む、凝集シヌクレインを検出する方法。
【請求項54】
疾患に罹患していると考えられる患者におけるシヌクレイノパチーの診断または予後評価の方法であって:
(i)患者に請求項47〜51のいずれか一項記載のジアミノフェノチアジン化合物を導入する工程と;
(ii)患者の脳内でシヌクレインまたは凝集シヌクレインに結合した前記化合物の存在および/または量を決定する工程と;
(iii)(ii)で行った決定の結果を患者の疾患状態と相関させる工程
を含む方法。
【請求項55】
患者または哺乳類がヒトである、請求項37〜45、または54のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項56】
疾患が、パーキンソン病(PD)、レビ小体による認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、薬物誘発パーキンソニズム;純粋自律神経不全(PAF)より選択される、請求項36〜45、または47〜51、または54のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項57】
疾患が、PD、PAF、MSAおよびHSDより選択される、請求項56記載の使用、方法、または製品。
【請求項58】
シヌクレインが、α−シヌクレインである、請求項1〜57のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【請求項59】
シヌクレインが、β−シヌクレインである、請求項1〜57のいずれか一項記載の使用、方法、または製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2009−531404(P2009−531404A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502206(P2009−502206)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001105
【国際公開番号】WO2007/110629
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(507092584)ウイスタ・ラボラトリーズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】WISTA LABORATORIES LTD.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001105
【国際公開番号】WO2007/110629
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(507092584)ウイスタ・ラボラトリーズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】WISTA LABORATORIES LTD.
【Fターム(参考)】
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