タンパク質断片又はペプチドカクテルとして送達される抗原を用いたワクチン接種によるサブドミナントエピトープを含むT細胞レパートリーの拡大
本発明は、適当なアジュバント中の所望の抗原のオーバーラップペプチド(例えば、2から20アミノ酸のオーバーラップを有する10から30merの合成ペプチド)のプールで免疫することによって、慢性疾患の予防又は治療のために重要な任意の所定の抗原のエピトープに対するドミナント及びサブドミナントな反応の広範な認識を誘導する簡便な方法を教示する。T細胞レパートリーが刺激されて、完全な分子が免疫のために使用される際に認識され、かつ、慢性感染によって誘導されるイムノドミナントエピトープを含むだけでなく、多数のサブドミナントエピトープに対する非常に広範かつバランスのとれた反応も誘導する。結果として生じるサブドミナントエピトープに対するT細胞反応は、イムノドミナントエピトープに対してのみ集中して反応を誘導する慢性疾患に対する防御にとって重要である。本発明の主要な利点は、サブドミナントエピトープの正確な位置及び性質並びにヒトの集団における認識についての事前の知識は必要としないながらも、T細胞レパートリーを拡大させ、それにより、数種の免疫ドミナントエピトープからワクチンに関連する多数のエピトープまで、ワクチン接種によって刺激される特異的なT細胞によって認識されるエピトープの総数を拡大する点である。液性免疫によって調節される慢性疾患のために、ペプチド混合物によって刺激されるヘルパーT細胞反応が、抗体反応の最大の誘導のために全長のタンパク質によって簡便に追加免疫されてよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、持続性ウイルス、又は寄生虫によって生じる慢性感染などの疾患の慢性期の間に発現されるタンパク質或いは悪性腫瘍において発現されるタンパク質のアミノ酸配列全体にわたるオーバーラップペプチドのペプチド混合物を含む、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患に対するワクチン、その様なワクチンの製造方法、並びに慢性疾患の予防及び治療方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
現在ワクチンが利用可能な限られた数の疾患と比較して、非常に多数の疾患は、これまでに広範な試みによって効果的なワクチンが開発されている。これらの感染症並びにガンの多数についての一般的な特徴は、それらはゆっくりと発症し、宿主の免疫反応の存在と対峙しながら数年に亘って持続する慢性疾患として現れることである。当該疾患は、多くの場合において、免疫的な病理を生じさせる場合があり、ある場合、例えばクラミジアスラコマティス(Clamydia thracomatis)の場合は、不妊症を生じさせる卵管の炎症性瘢痕などのヒトの疾患の直接の原因である。マイコバクテリウムツベルクローシス(M,tuberculosis)感染(TB)などの疾患については、ワクチンが存在するが(BCG)、前記ワクチンは疾患の急性発現を妨げる可能性があるものの、細菌は消滅せず、慢性的又は潜在的な疾患が確立する。TBは本質的に3つの段階を通じて進行する。急性期では、細菌量が最大となり低減を始める時点である、感染を制御することが可能な程度まで免疫反応が増大する時点まで、細菌が臓器において増殖する。この後に、細菌量が低いレベルで安定的に維持される慢性的又は潜在的な段階が確立する。この段階において、マイコバクテリウムツベルクローシスは、活発な分裂から数年持続するゆっくりとした分裂又は分裂を起こさない持続段階に移行する。しかしながら、あるTBの場合では、感染が突然再活性化し、顕在的な疾患が現れるであろう。この再活性化を生じさせる因子は殆ど知られていない。クラミジアなどの他の場合において、感染しても無症候のままである可能性があるが、継続する炎症過程が不妊症などの後の臨床症状を生じさせる。
【0003】
これらの異なる多数の疾患に対する免疫反応は、液性及び細胞性免疫(CMI)反応成分の双方を含む。CMI反応は、病原体に由来するエピトープ及びT細胞抗原の階層に対するものである。エピトープは、7から9アミノ酸(MHC I)及び12から15アミノ酸(MHC II)のアミノ酸長である(非特許文献1)。慢性的なウイルス及び細菌疾患、例えば、HIV、TB、並びにガンでは、エピトープ反応の階層が、数種のイムノドミナントエピトープへと経時的に変化して、次第にT細胞反応全体の大部分を構成するが、MHCクラスI又はII抗原提示分子に結合する潜在能力を有する多数の他のエピトープはサブドミナント又は潜在的であり、検出レベル付近又はそれ以下のレベルにおけるT細胞反応を生じさせる(非特許文献2から6)。保護的であると報告されている(非特許文献7)サブドミナントエピトープに対する(ドミナントエピトープによる競合作用なしでの)ワクチン接種によって誘導される場合には、エピトープが自然な感染の間に実際に発現しており、侵入している病原体に対するエフェクター細胞によって認識され得ることを示す。イムノドミナントエピトープに対する反応と比較して、そのような反応が利点を有する可能性があることは、エスケープミュータントがイムノドミナントエピトープを欠くため免疫系に認識されないHIVにおける研究において示唆されており、現在のワクチン開発において大きな関心を集めている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Paul, W. 1999. Fundamental Immunology, fourth edition, Lippincott-Raven.
【非特許文献2】Sette, A., and J. Fikes. 2003. Curr Opin Immunol 15:461.
【非特許文献3】van der Most, R. G., K. Murali-Krishna, J. G. Lanier, E. J. Wherry, M. T. Puglielli, J. N. Blattman, A. Sette, and R. Ahmed. 2003. Virology 315:93.
【非特許文献4】Crowe, S. R., S. J. Turner, S. C. Miller, A. D. Roberts, R. A. Rappolo, P. C. Doherty, K. H. Ely, and D. L. Woodland. 2003. J Exp Med 198:399.
【非特許文献5】Wherry, E. J., J. N. Blattman, K. Murali-Krishna, R. van der Most, and R. Ahmed. 2003. J Virol 77:4911.
【非特許文献6】Kamath, A. B., J. Woodworth, X. Xiong, C. Taylor, Y. Weng, and S. M. Behar. 2004. J Exp Med 200:1479.
【非特許文献7】Olsen, A. W., P. R. Hansen, A. Holm, and P. Andersen. 2000. Eur J Immunol 30:1724.
【非特許文献8】McMichael, A. J., and R. E. Phillips. 1997.. Annu Rev Immunol 15:271.
【非特許文献9】Mowat et al 1991, Immunology 72(3):317-22
【非特許文献10】Lustig et al 1976, Cell Immunol 24(1):164-7
【非特許文献11】Wille-Reece, U., C. Y. Wu, B. J. Flynn, R. M. Kedl, and R. A. Seder. 2005. J.Immunol. 174:7676.6
【非特許文献12】Thompson J., et al Nucleic Acids Res 1994 22:4673-4680
【非特許文献13】Ravn, P. et al 1999. J.Infect.Dis. 179:637-645
【非特許文献14】Stryhn, A., et al 1996 Eur. J. Immunol. 26:1911-1918
【非特許文献15】Harboe, M., et al 1998 Infect. Immun. 66:2; 717-723
【非特許文献16】Krogh, TN, Berg, T, & Hojrup, P. (1999). Anal. Biochem. 274, 153-162
【非特許文献17】Gosselin et al., 1992. J. Immunol. 149: 3477-3481
【非特許文献18】Babu et al. 1995. Vaccine 13:1669-76.
【非特許文献19】Davidsen et al (2005). Biochim Biophys Acta. 1718: 22-31.
【非特許文献20】Munoz et al (2004). Int J Pharm 269:177-84.
【非特許文献21】Kirby & Gregoriadis. 1984. 2 : 979-984.
【非特許文献22】Pick U. 1981. Arch. Biochem. Biophys. 212: 186-194.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワクチン設計においてサブドミナントT細胞エピトープを利用することは、これまでは、2つの主要な阻害要因:(i)各種の異なるHLA複合体を有する個人によって認識される個々のエピトープのバリエーションにより、広範なヒトの集団をカバーする多数の各種の異なるエピトープが必要である事;(ii)免疫学的アッセイ(例えば、ELISPOT)の検出レベル付近又はそれ以下に過ぎない低いレベルのT細胞反応が認められるサブドミナントエピトープを同定する必要がある事によって妨げられていた。
【0006】
Olsen et al(非特許文献7)は、ESAT6の1つのサブドミナントエピトープに基づくワクチンはTBに対する保護が可能であることを開示した。しかしながら、ESAT6の領域全体にわたるオーバーラップペプチドの混合物は、当該研究では使用されなかった。
【0007】
WO01016163では、HLA遺伝子型にかかわらずT細胞を活性化するペプチドからなるペプチド混合物を含むウイルスに対するワクチンが開示されている。当該出願は、遺伝子的に広範なヒトの集団のワクチン接種に適用する際に広範にカバーすることが可能なB型肝炎由来のペプチド混合物を使用して、単独のペプチドで免役する際に認められるノンレスポンダーを避けることを開示している。当該発明は、本発明において教示するような慢性疾患に対する予防及び治療のためのワクチン接種に関連する、サブドミナントT細胞エピトープに対するT細胞のペプチドによる拡大は教示していない。
【0008】
WO03011331では、プライムブーストワクチンが開示されている。ドミナントエピトープに対する反応の増大及びサブドミナントエピトープに対する反応の低減を妨げることが、一連のエピトープをコードするDNA又はウイルスベクターによって達成される。プライミングの段階の後に、エピトープは別個の構築物で個々に使用されるか又は別個のビヒクルで運ばれて、単独のポリエピトープDNA又はウイルス構築物として投与されるのとは対照的に反応をブーストする。対照的に、本発明は、プライミングのために6から20のアミノ酸がオーバーラップしているペプチド混合物において、タンパク質全体にわたる多数のアミノ酸配列を使用し、任意にアジュバントを加えたサブユニットワクチンとして又は液性反応の最大の誘導のためのウイルス送達システムで発現されるタンパク質全体でブーストする。
【0009】
慢性疾患では、エピトープ反応の階層が経時的に変化して、数種のみのドミナントエピトープのみに対する反応を構築することが一般的に認められる。しかしながら、サブドミナントエピトープに対する反応は保護的であることが実証されており(非特許文献7)、これらのエピトープに対する反応は慢性疾患自体によっては促進されないため、慢性疾患は、ドミナントエピトープ及びより重要なサブドミナントエピトープの双方を含む広範なエピトープに対する免疫反応を誘導する発明にとっての明白な標的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、任意の所定の抗原に対するドミナント及びサブドミナントな反応の広範な認識を誘導するワクチンを開示する。前記ワクチンは、適当なアジュバント中に所望の抗原のオーバーラップ断片を含む。それによりT細胞レパートリーは拡大され、完全な分子を免役に使用する際に認識されるか又は慢性感染自体に誘導されるイムノドミナントエピトープを含むだけでなく、多数のサブドミナントエピトープに対する非常に広範かつバランスのとれた反応を誘導する。本発明の主な利点は、サブドミナントエピトープの正確な位置及び性質並びにヒトの集団におけるそれらの認識についての事前の知識を必要としないながらも、T細胞レパートリーを拡大し、それによってワクチン接種によってプライムされる標的特異的T細胞の総数を数種のイムノドミナントエピトープから多数のエピトープまで拡大することである。本発明によって教示するように、サブドミナントエピトープに対する広範な反応を用いて慢性疾患を標的とすることは、これらの疾患に対する免役を劇的に役立てる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】A:ESAT−6オーバーラップペプチドの概観;B:Δ15−ESAT−6のアミノ酸配列。
【図2】脾細胞におけるESAT6及びΔ15ESAT6の免役原性。F1(Balb/cxC57BL/6)マウスの群は、DDA/TDB中の生理食塩水、ESAT6、又はΔ15ESAT6のいずれかを用いて、二週間の間隔で3回皮下にワクチン接種した。最後のワクチン接種の三週間後に、脾細胞を、1μg/mlのESAT6、Δ15ESAT6、又はESAT6配列をカバーする13のオーバーラップペプチド(図中にP1−P13と示しており、図1にも示している)の1つを用いた刺激後のIFN−γ分泌についてのELISAによって分析した。
【図3】ESAT6及びΔ15ESAT6の保護効果。F1(Balb/cxC57BL/6)マウスの群は、生理食塩水、BCG、又はESAT6若しくはΔ15ESAT6を含むDDA/TDBのいずれかを用いて、二週間の間隔で3回皮下にワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、悪性のマイコバクテリウムツベルクローシスでマウスを攻撃した。当該攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した。
【図4】TB10.4オーバーラップペプチドP1−P9。
【図5】組換えTB10を用いたワクチン接種後のP1−P9の個々のペプチドを用いたin vitro刺激。DDA/TDB中のDDA/TTD−TB10.4を用いて三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の2週間後に血液から細胞を回収し、0.5μg/mlの所定のペプチドで刺激した。
【図6】個々のペプチドを用いたワクチン接種後のTB10−4ペプチドP1−P9の認識。DDA/TDB中の個々のTB10.4ペプチドを用いて三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収し、前記ワクチン接種に使用したものと同一のペプチドを0.5μg/ml用いて刺激した。IFN−γの分泌をELISAによって測定した。
【図7】TB10−4ペプチドP1−P9の保護能力。最後のワクチン接種の6週間後にマイコバクテリウムツベルクローシスを用いてエアロゾル経路によって攻撃されたワクチン接種後のマウスにおける細菌量(CFUにおけるlog10の保護として表される)。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した(*ワクチン接種していないマウスと比較してP<0.05、ANOVA及びTukey’s test)。
【図8】TB10−4ペプチド混合物を用いたワクチン接種後のTB10−4ペプチドP1−P9の認識。DDA/TDB−TB10.4ペプチド混合物で三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収して、上述のように0.5μg/mlペプチド又はTB10.4タンパク質を用いて刺激した。
【図9】マイコバクテリウムツベルクローシスに感染し、TB10.4又はTB10.4ペプチドでワクチン接種したマウスにおける細菌量。最初のワクチン接種の10週間後に悪性のマイコバクテリウムツベルクローシスを用いてエアロゾル経路で攻撃した、ワクチン接種していない対象と比較したワクチン接種したマウスにおける細菌量(CFUにおけるlog10で表わす)。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した(*P<0.05、ANOVA及びTurkey’s test)。
【図10】CT521オーバーラップペプチドの概観。
【図11】マウスに、ESAT−6ペプチド(P1−P13)の全ての混合物で2週間の間隔で三回ワクチン接種した。IFN−γの分泌によって測定される免疫反応を、ESAT−6ペプチドP1−P13の各々とともに血液細胞を培養することによって調べた。
【図12】マウスに、ESAT−6又はESAT−6ペプチド混合物(P1−P13)のいずれかを用いて2週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、マウスを、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路における攻撃に曝露した。攻撃の十週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患の慢性期の間に発現するタンパク質のアミノ酸配列全体にわたる隣接したオーバーラップペプチドからなるペプチド混合物を含む、前記慢性疾患に対するワクチンを開示する。
【0013】
本発明は、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患に対するワクチンのための当該ペプチドをコードする核酸及び/又は抗原タンパク質に由来するオーバーラップペプチドの混合物の使用を開示する。
【0014】
前記ペプチドは、10から30アミノ酸長、好ましくは12から20アミノ酸長であり、隣接したペプチドの重複が6から20アミノ酸、好ましくは10から12アミノ酸である。
【0015】
ペプチド混合物に係る抗原タンパク質は、疾患の慢性期の間に発現し、且つ、慢性疾患の場合に細胞性免疫反応を誘導するタンパク質から選択される。
【0016】
好ましくは、タンパク質は、細菌、例えば、悪性マイコバクテリア、マイコバクテリウムツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウムアフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウムボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウムレプラエ(Mycobacterium leprae)、若しくはクラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)、又はウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス、又は寄生虫、例えば、リーシュマニア又はマラリアを発生させる寄生虫であるプラスモディウムファルシパラム(Plasmodium falciparum)、又は悪性腫瘍において発現する分子から選択される。
【0017】
マイコバクテリウムツベルクローシスから選択されるタンパク質、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4、又はクラミジアトラコマティスから選択されるタンパク質、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、CT375、CT583、CT603、CT610、若しくはCT681、又はB若しくはC型肝炎ウイルスから選択されるタンパク質、又はプラスモディウムファルシパラムから選択されるタンパク質、例えば、Msp1、Msp2、Msp3、Ama1、GLURP、LSA1、LSA3、又はCSPが好ましいが、それらに限らない。
【0018】
本発明は、2つ又はそれ以上のタンパク質分解剤、例えば、タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、若しくはクロモトリプシン、又は化学剤、例えば、CNBr若しくはBNPS−スカトールを用いるタンパク質のタンパク質分解的切断による、本発明のペプチド混合物を調製するための方法も開示する。
【0019】
本発明のペプチド混合物は、慢性疾患、例えば、細菌、ウイルス、若しくは寄生虫感染又はガンに対するワクチンを調製するために使用されてよい。前記ワクチンは、アジュバントなどの送達系を任意に含んでよい。前記アジュバントは、好ましくは、カチオン性リポソーム、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド/トレハロースジベヘネート(DDA/TDB)に基づく。ワクチン接種に使用するペプチド混合物を事前に形成したリポソームと混合してよく、又は各ペプチドを事前に形成したリポソームと混合して、リポソームに配合された個々のペプチドを免疫接種前に混合してよい。
【0020】
ペプチド混合物中の各ペプチドは、免疫系からの個々の抗原提示細胞との最適な相互作用のためのペプチド混合物を製造する前にリポソームと個々に混合して、分子内の全ての可能性があるエピトープに対する最大の反応を確かにすることが好ましい可能性がある。
【0021】
本発明は、本発明のワクチンを動物に投与することを含む、ヒトを含む動物における慢性疾患の予防的又は治療的処置のための方法及びワクチンも開示する。任意に、前記予防的又は治療的処置は、アジュバント中のペプチド混合物に係る全長のタンパク質又はウイルス送達系において発現される全長のタンパク質を含む第二のワクチンを投与するか、或いはCMI及び液性反応を最適に追加免役するための純粋なDNAワクチンとして第二のワクチンを投与することによって追加免役する。
【0022】
本発明は、ポリペプチドの自己アジュバント効果を可能にするように、アミノ酸配列をCPGなどのTLRアゴニストに直接接合するか又は脂質付加しているワクチンも開示する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様は、上述のアジュバントを好適に用いる本発明のペプチド混合物を含むワクチンである。
【0024】
定義
慢性疾患
慢性疾患は、長期持続又は再発性の疾患である。慢性という用語は、その疾患の経過を意味するか、又は発症及び発展の速度を意味する。慢性的な経過は、再発的な経過とは区別される。再発性疾患は、寛解期を間に有して繰返し再発する。慢性感染は、細菌、例えば、とりわけマイコバクテリア種又はクラミジア種によって、ウイルス、例えば、肝炎ウイルス又はHIVによって、寄生虫、例えば、マラリアを生じさせる寄生虫若しくはリーシュマニアによって、或いはガン、糖尿病などの疾患によって生じ得る。
【0025】
ペプチド
本発明における用語「ペプチド」は、通常の意味を有するべきである。それは、アミノ酸残基がペプチド共有結合で結合している、タンパク質の一部又は断片である任意の長さのアミノ酸鎖である。
【0026】
前記ペプチドは、グリコシル化によって、脂質付加(例えば、非特許文献9に記載のようにパルミトイルオキシスクシンイミドを用いる化学的な脂質付加、PAM3Cysによる標識(非特許文献18)による脂質付加、又は非特許文献10に記載のようにドデカノイルクロリドを用いる脂質付加)によって、補欠分子族を含めることによって、或いは例えばヒスタグ又はシグナルペプチドなどの追加のアミノ酸を含有させるか又はTLRアゴニストに直接接合させる(非特許文献11に開示されているように)ことによって化学的に修飾されてよい。
【0027】
かくして、各ペプチドは特定のアミノ酸によって特徴付けられてよく、且つ、特定の核酸配列によってコードされてよい。その様な配列は、その様なポリペプチド配列が組換えポリペプチドにおける1つ又は複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加、又は欠失によって修飾され、且つ、本明細書に開示する任意の生物学的アッセイにおいて免役原性を依然として有する、組換え方法又は合成方法によるアナログ及び変異体を含むことが理解されるであろう。置換は、好ましくは「保存的」である。保存的置換は以下の表で規定される。第二のカラムの同じブロックにあり、好ましくは第三のカラムの同じラインにあるアミノ酸は、互いに置換されてよい。第三のカラムのアミノ酸は、一文字表記で表わしている。
【0028】
【表1】
【0029】
ペプチド混合物はタンパク質断片の液体混合物である。
【0030】
本発明の好ましいペプチド混合物は、マイコバクテリウムツベルクローシス由来のタンパク質、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4、クラミジアトラコマティス由来のタンパク質、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、若しくはCT375、又は肝炎ウイルス由来のタンパク質、又はプラスモディウムファルシパラム由来のタンパク質、例えば、momp、omp、msp1、msp3、ama1、又はglurpに基づく。融合分子、例えば、PCT/DK2006/000356にTBに対する関連するワクチン構築物として過去に開示しているような融合分子に基づくペプチド混合物又はタンパク質分解産物であってもよい。一般的には、慢性疾患に対するワクチンにおいて使用してよいCMI反応を誘導するタンパク質の全てのペプチド混合物が、ワクチンとして予防的又は治療的反応の増大を誘導するために使用されてよい。
【0031】
本明細書全体を通じて、背景として必要とされない限り、用語「含む(comprise)」は、言及する要素若しくは整数値又は要素若しくは整数値の群の包含を示すが、任意の他の要素又は整数値又は要素若しくは整数値の群の排除を示すものではない。
【0032】
T細胞エピトープの最小の長さは少なくとも6アミノ酸であると示されているが、その様なエピトープはより長いアミノ酸長で構築されるのが一般的である。したがって、本発明のポリペプチド断片は、少なくとも7アミノ酸残基、例えば、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24、及び少なくとも30アミノ酸残基であることが好ましい。そのため、本発明の重要な実施態様では、ポリペプチド断片が、50アミノ酸残基以下、例えば、40、35、30、25、及び20アミノ酸残基以下の長さを有することが好ましい。10から20アミノ酸の間の長さを有するペプチドがMHCクラスIIエピトープとして最も効果的であることが証明され、そのため、本発明の方法において使用するポリペプチド断片の特に好ましい長さが18、例えば、15、14、13、12、及び11アミノ酸残基であることが予測される。7から12アミノ酸残基の間の長さを有するペプチドがMHCクラスIエピトープとして最も効果的であることが証明され、そのため、本発明において使用するポリペプチド断片の特に好ましい長さが11、例えば、10、9、8、及び7アミノ酸残基であることが予測される。
【0033】
エピトープ
T細胞エピトープは、MHCクラスI又はIIのいずれかの背景において抗原提示細胞によって提示された後に、T細胞受容体によって特定のT細胞に認識されるアミノ酸配列であると解される。
【0034】
ドミナントエピトープは、タンパク質の一部である際に、高度にT細胞反応を誘導するアミノ酸配列であり、多くの場合において抗原に対する反応の大半は数種のドミナントT細胞エピトープに対するものである。
【0035】
サブドミナントエピトープは、タンパク質の一部である際に、強力なT細胞反応を誘導しないアミノ酸配列であるが、前記エピトープは免役原性であり、タンパク質から単離された際に顕著なT細胞反応を誘導し得る。
【0036】
オーバーラップポリペプチド又はタンパク質断片の混合物は、タンパク質全体にわたる6から20アミノ酸のオーバーラップを有する10から30merの混合物であると解される。
【0037】
変異体
本発明のポリペプチドの共通の特徴は、実施例に説明する免疫学的反応を誘導する能力である。置換、挿入、付加、又は欠失によって製造される本発明のポリペプチドの変異体も、本明細書に開示する任意のアッセイによって測定すると免疫原性であってよい。
【0038】
免役個体
免役個体は、感染が消滅又は調節されたヒト又は動物として規定される。
【0039】
免役反応
免疫反応は、以下の方法:
・in vitro細胞反応は、関連するサイトカイン、例えば、IFN−γの放出の誘導又は現在若しくは過去に悪性のマイコバクテリアに感染しているか若しくは関連するペプチド混合物で免役された動物若しくはヒトによるリンパ球の増殖の誘導によって測定される。前記誘導は、ペプチド混合物又は前記混合物の免疫原性部分の、1ウェルあたり2×105から4×105の細胞を含む懸濁物への添加によって実施する。前記細胞は、血液、脾臓、リンパ節、肝臓、又は肺のいずれかから単離され、ポリペプチド又はその免役原性部分の添加は、懸濁物1mlあたり20μg以下の濃度であり、刺激は2から5日で実施される。細胞増殖をモニターするために、細胞は放射標識チミジンでパルス標識して、インキュベートの16から22時間後に、液体シンチレーションカウントによって測定して増殖を検出する。ポジティブ反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応であると規定する。IFN−γの放出は、当業者によく知られたELISA法によって測定することができる。ポジティブな反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応である。IFN−γ以外のサイトカインは、ポリペプチドに対する免疫学的反応をモニターする際に関係し、例えば、IL−12、TNF−α、IL−4、IL−5、IL−10、IL−6、TGF−βであろう。他のより感度の高い免疫反応の検出方法は、IFN−γ産生細胞の発生頻度を測定するELISpot法である。抗ネズミIFN−γ抗体(PharMingen)で事前にコーティングされたELISpotプレート(MAHA,Millipore)において、血液、脾臓、又は肺から単離された種々の細胞(典型的には、1から4×105細胞/ウェル)を、20μg/ml以下の濃度のペプチド混合物又はその免役原性部分の存在下で24から32時間に亘ってインキュベートする。その後に、プレートをビオチン化抗IFN−γ抗体とインキュベートし、続いてストレプトアビジンアルカリホスファターゼとインキュベートする。IFN−γ産生細胞は、BCIP/NBT(Sigma)を添加し、関連する基質がスポットを生じることによって同定される。これらのスポットは、解剖顕微鏡を用いて係数されてよい。PCR技術の使用によって関連するサイトカインをコードするmRNAの存在を測定することも可能である。大抵の場合は、1つ又は複数のサイトカインが、例えば、PCR、ELISPOT、又はELISAを使用して測定されるであろう。特定のペプチド混合物によって誘導される当該サイトカインのいずれかの量における顕著な増大又は低減が、ポリペプチドの免疫学的活性の評価において使用されてよいことが当業者に理解されるであろう。
・in vitro細胞反応が、生細菌、細菌細胞の抽出物、培養濾過物のいずれかをIL−2を添加して10から20日に亘って使用して誘導されたT細胞株であって、免役した固体又は感染したヒトに由来するT細胞株の使用によって測定されてもよい。その誘導は、1ウェルあたり1×105細胞から3×105細胞を含有するT細胞株に対して、懸濁物1mlあたり20μg以下のペプチドを添加し、インキュベートを2から6日まで実施することによって実施する。IFN−γの誘導又は他の関連するサイトカインの放出は、ELISAによって検出される。T細胞の刺激は、上述のように放射活性標識したチミジンを使用して細胞増殖を検出することによって観察されてもよい。双方のアッセイについて、ポジティブな反応は、バックグラウンド+2標準偏差を超える反応である。
・in vitro細胞反応は、悪性細菌に臨床的に感染又は無症状感染している個体に対して、100μg以下のポリペプチド又はその免役原性部分の皮内注射又は局所投与パッチ後のポジティブDTH反応として測定されてよく、ポジティブな反応は注射又は投与の72から96時間後に少なくとも5mmの直径を有する。
・in vitro液性反応は、免役又は感染した個体における特定の抗体反応によって測定される。抗体の存在は、ペプチド混合物又は免役原性の部分がニトロセルロース膜又はポリスチレン表面のいずれかに吸着されるウエスタンブロット又はELISA技術によって測定されてよい。好ましくは、血清は、PBSで1:10から1:100に希釈し、吸着されたペプチド混合物に添加し、1から12時間にわたってインキュベートを実施する。標識した二次抗体の使用によって、特定の抗体の存在が、例えばポジティブ反応がバックグラウンド+2標準偏差を超える反応であるELISAによってODを測定することによって或いはウエスタンブロットにおける視覚的な反応によって決定され得る。
・他の関連するパラメータは、アジュバント中のペプチド混合物によるワクチン接種後又はDNAワクチン接種後に誘導される動物モデルにおける保護の測定である。適切な動物モデルは、感染させた霊長類、モルモット、又はマウスを含む。誘導された保護は、ワクチン接種していない動物と比較すると標的組織における細菌量が低減していること、ワクチン接種していない動物と比較すると生存時間が長期化していること、並びにワクチン接種していない動物と比較すると体重減少が低減していることから読み出されるであろう。
の1つによってモニターされてよい。
【0040】
調製方法
一般的には、抗原及びその様な抗原をコードするDNA配列は、各種の手法のいずれか1つを使用して調製してよい。ペプチド混合物は、ペプチド断片が約100未満のアミノ酸、一般的には50未満のアミノ酸を有する際は、合成によって製造されてよく、当業者によく知られた技術、例えば、アミノ酸が連続的に付加してアミノ酸鎖が成長する市販の固相技術を使用して産生されてよい。
【0041】
DNAワクチン接種に関して、本発明で規定されるペプチド混合物をコードするプラスミドDNAの構築及び調製において、宿主株、例えば大腸菌(E.coli)が使用されてよい。次いで、プラスミドDNAは、興味のあるプラスミドを有する宿主株の培養物から調製し、例えばエンドトキシン除去工程を含むQiagen Giga−Plasmid column kit(Qiagen,Santa Clarita,CA,USA)を使用して精製してよい。DNAワクチン接種に使用するプラスミドDNAはエンドトキシンを含まないことが好ましい。
【0042】
抗原のプロテアーゼ消化
一連のオーバーラップペプチドが、例えば大腸菌において組換えタグ付加タンパク質として発現され得る完全なタンパク質のタンパク質分解的切断、それに続くカラムクロマトグラフィー、例えば金属キレートクロマトグラフィーによる精製によって製造されてよい。異なる断片を生成することによってオーバーラップペプチドカクテルを得る2又はそれ以上のタンパク質分解剤が選択されてよい。タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、又はキモトリプシンが使用されてよく、或いは化学剤、例えば、CNBr又はBNPS−スカトールが使用されてよい。切断部位の数及び生成される断片の長さは、タンパク質のアミノ酸配列及び特定の切断剤、例えば、アスパラギン酸及びシステイン酸残基のN末端側であるAsp−N加水分解酵素タンパク質によって決定される。V−8プロテアーゼは、重炭酸アンモニウム緩衝液(pH7.8)中でグルタミン酸のカルボキシル末端側で切断する。タンパク質分解酵素については、切断前にビーズにタンパク質分解酵素を結合させてよく(非特許文献16)、当該結合は、ビーズの遠心分離によって切断の完了後に酵素を除去することを可能にする。代替的には、プロテアーゼは、クロマトグラフィー法、例えば、ゲル濾過又は逆相HPLCによって消化混合物から除去されてよい。タンパク質の消化後に、消化物の質量分析を実施して、タンパク質の切断が予測したように起こっているかを確認する。最後に、2つの消化混合物をあわせて、オーバーラップペプチドの混合物を形成させる。
【0043】
タンパク質ワクチン
組換えタンパク質を用いるワクチン接種は、当該タンパク質中の限られた数のドミナントペプチドエピトープに対するT細胞反応を誘導するであろう。対照的に、タンパク質のアミノ酸配列全体にわたるオーバーラップペプチドの混合物を用いるワクチン接種は、ドミナントペプチドエピトープ及びサブドミナントペプチドエピトープの双方である多数のエピトープに対するT細胞反応を生じさせるであろう。
【0044】
本発明は、本発明に係るペプチド混合物を含むワクチン組成物に関する。その様なワクチン組成物の最適な性能を確実にするために、免疫学的及び製薬学的に許容される担体、ビヒクル、又はアジュバントを含むことが好ましい。
【0045】
本発明のペプチド混合物が動物によって認識される効果的なワクチンは、予防又は治療用ワクチンとして与えられた際に、ワクチン接種していない動物と比較して、動物モデルにおいて標的組織中の細菌量を低減し、生存時間を長期化し、及び/又は感染性微生物による攻撃後の体重減少を軽減することが可能であろう。
【0046】
適切なビヒクルは、希釈剤及び懸濁剤からなる群から選択される。アジュバントは、好ましくは、DDA、Quil A、polyI:C、水酸化アルミニウム、フロイント不完全アジュバント、IFN−γ、IL−2、IL−12、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、TDB、及びムラミールジペプチド(MDP)からなる群から選択される。
【0047】
アジュバントは、抗原に対する免疫反応を非特異的に促進する物質として規定される。アジュバントの性質に依存して、細胞性免疫反応、液性免疫反応、又はそれら2つの双方が促進されてよい。免疫反応の促進が非特異的であるために、同一のアジュバントが異なる抗原と共に使用されて、異なる標的に対する反応を促進してよく、例えば、マイコバクテリウムツベルクローシスに由来する抗原を用いてマイコバクテリウムツベルクローシスに対する免役を促進するか、又は腫瘍由来の抗原を用いて特定種の腫瘍に対する免役を促進することが当該技術分野においてよく知られている。
【0048】
「リポソーム」は、水性の中心部を覆う1つ又は複数の脂質二重層から作られる閉じた小胞構造として規定される。各脂質層は、各々が疎水性の「テール」領域と親水性の「ヘッド」領域とを有する2つの脂質単分子層からなる。二重層では、脂質単分子層の疎水性「テール」が二重層の内側に配向し、親水性「ヘッド」が二重層の外側に配向する。リポソームは、各種の物理化学性質、例えば、サイズ、脂質組成、表面電荷、流動性、及び二重層膜の数を有してよい。脂質二重層の数によって、リポソームは、単独の脂質二重層を含む単層ベシクル(UV)又は各々が水の層によって次の層から分離されている2以上の同心二重層を含む多層ベシクル(MLV)として分類されてよい。水溶性化合物はリポソームの水性相/中心部に取り込まれ、反対に親油性化合物は脂質二重膜の中心部に取り込まれる。
【0049】
ワクチン接種に使用されるペプチド混合物は上述の事前に形成したリポソームと混合してよく(参照によって本明細書に取り込むWO2006002642)、又は各ペプチドを同様に事前に形成したリポソームと混合し、次いで、リポソームに配合された各ペプチドを免役前に混合する。
【0050】
リポソームの標準的な調製方法は、有機溶媒に脂質を溶解し、次いで、乾燥するまで蒸発させて薄い脂質膜を試験管の内部に残存させることによる。乾燥した脂質膜を、次いで、適当な量の水性相中で水和させて、その混合物を脂質の相転位温度より高い温度に加熱し、「膨張」させる。結果として得られる多層ベシクル(MLV)からなるリポソームは、試験管を振盪することによって分散される。
【0051】
ペプチド又はペプチド混合物のリポソームに対する相互作用についての各種の異なる原理が存在する。1つの方法は、ペプチドを事前に形成したリポソームとインキュベートすることによる、ペプチドとリポソームとの(静電気的相互作用又は疎水性相互作用による)表面相互作用である(非特許文献19)。ペプチドをリポソームの表面に化学的な架橋によって(例えば、非特許文献20に開示されているように)共有結合させることも可能である。加えて、前記ペプチドは、各種の異なる方法によってリポソーム中に取り込まれてよい。1つの方法は、脂質膜に直接ペプチドを添加して、その後に再水和することである。他の方法は、脂質膜からのリポソームの再水和に用いる緩衝液にペプチドを添加することである。加えて、ペプチドは、凍結乾燥に続いて凍結乾燥したリポソームを再水和することによってペプチドを取り込む脱水−再水和方法(非特許文献21)によって取り込まれてよい。代替的には、抗原は、Pick(非特許文献22)及びBally et alによって米国特許第4,975,282号に開示されている凍結融解技術を用いて取り込まれる。当該技術では、小胞をタンパク質抗原と混合し、液体窒素中における即時凍結と関連する脂質の主な相転位温度超の温度における加温とを繰り返す。例えば洗浄及び遠心分離によって、小胞を更に処理して、任意の取り込まれなかった抗原を除去してよい。
【0052】
最後に、ペプチド混合物を、2つの方法でリポソームによって送達させてよい。ペプチドは、リポソームと相互作用させる前に混合するか、又は上述のようにリポソームと個々のペプチドとの相互作用後に混合してよい。
【0053】
ペプチドは、脂質膜又は凍結乾燥した形態のものからリポソームの再水和をするのに使用する緩衝液にペプチドを添加することによって、リポソーム中に取り込まれてもよい。
【0054】
ポリペプチドは、グリコシル化によって、脂質付加(例えば、Mowat et al.1991に開示されているようなパルミトイルオキシスクシンイミドを用いる化学的脂質付加、PAM3Cysを用いる標識(非特許文献18)、又はLustig et al.1976に開示されているドデカノイルクロリドを用いること)によって、補欠分子族を含めることによって、又はTLRアゴニストに直接接合させることによって(例えば、Seder 2006に開示されているように)修飾されてもよい。
【0055】
活性成分としてペプチド配列を含有するワクチンの調製は、一般的に当該技術分野において既知であり、参照によって本明細書に取り込む米国特許第4,608,251号;第4,601,903号;第4,599,231号;及び第4,599,230号が例示される。
【0056】
ワクチンに対するアジュバント効果を達成する他の方法は、薬剤、例えば、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム、糖の合成ポリマー(Carbopol)、熱処理によるワクチン中のタンパク質凝集、ペプシン処理(Fab)抗体を用いる再活性化によるアルブミンへの凝集、クリプトスポリジウム・パルバムなどの細菌細胞又はエンドトキシン又はグラム陰性菌の脂質多糖成分の混合物、モノオレイン酸マンニド(Aracel A)などの生理学的に許容される油小胞におけるエマルション、或いはブロック置換体として用いられるパーフルオロカーボン(Fluosol−DA)の20%溶液を含むエマルションの使用を含む。サイトカインなどの免疫調節物質又はポリI:Cなどの合成IFN−γインデューサーを、上述のアジュバントと組み合わせて使用してもよい。
【0057】
アジュバント効果を達成するために、(参照によって本明細書に取り込む)非特許文献17に記載の技術を使用してもよい。簡潔に言うと、本発明の抗原などの関連する抗原が、単球/マクロファージ上のFcγ受容体に対する抗体(又は抗原結合抗体断片)に接合されてよい。
【0058】
ワクチンは、治療上の有効量かつ免役原性であるような量で、剤形に適合する様式で投与されてよい。投与すべき量は、例えば、免疫反応を開始する個体の免疫系の能力を含む治療しようとする患者並びに所望の保護の程度に依存する。適切な用量範囲は、1回のワクチン接種あたり数百マイクログラムの活性成分の桁であり、好ましい範囲は約0.1μgから1000μg、例えば、約1μgから300μgの範囲、特に約10μgから50μgの範囲である。初期投与及び追加の接種の適切な投薬計画は変化してもよいが、典型的には初期投与に続いて次の接種又は他の投与である。
【0059】
適用の様式は広範に変化してよい。ワクチン投与の従来の方法の任意のものを利用してよい。これらは、固体の生理学的に許容されるベース又は整理学的に許容される分散剤における経口的な適用、注射などによる非経口的な適用を含むと解される。ワクチンの用量は、投与経路に依存し、ワクチン接種しようとするヒトの年齢並びにそれほど重要ではないがワクチン接種しようとするヒトの大きさに依存して変化するであろう。
【0060】
ワクチンは、従来は、注射によって、例えば皮下又は筋肉内のいずれかに非経口的に投与されている。投与の他の態様に適切な追加の製剤は坐剤を含み、ある場合には、経口製剤を含む。坐剤に関しては、従来のバインダー及びキャリアーとして、例えば、ポリアルカレングリコール又はトリグリセリドを含んでよく;その様な座剤は、0.5%から10%、好ましくは1から2%の範囲において活性成分を含有する混合物から形成されてよい。経口製剤は、その様な通常使用される賦形剤、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどを含んでよい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤、又は粉末剤の形態をとり、有利には10から95%の活性成分、好ましくは25から70%の活性成分を含有する。
【0061】
多くの場合において、ワクチンを多数回投与することが必要であろう。特に、ワクチン投与して、感染を予防し得る。感染を予防するために投与される際は、ワクチンは、感染の明確な臨床的兆候又は症状が現れる前に予防的に与えられる。現在のワクチン、例えばBCGが明らかに効果的ではあるが短期間の免疫反応を誘導するため、予防的ワクチンは、追加のワクチン接種として使用するために設計されてもよい。その様なワクチンは、保護の期間を長期化することを意図して、過去にワクチン接種をうけた個体に与えられる。
【0062】
個体が既に感染しているか又は感染している疑いがある場合には、過去のワクチン接種は原発性疾患に対する十分な免役を与えている可能性があるが、上述のように当該免役を追加免役することは、潜在的な感染に対する助けとはならないであろう。その様な場合には、前記ワクチンは、感染の潜伏期に対して有効なように設計された治療用ワクチンとして特に利点を有する。
【0063】
重要なことに、TB、ガン、肝炎、及びHIVなどの慢性疾患では、宿主と病原体との間の長期にわたる均衡が、多くの場合において、数少ないイムノドミナントエピトープに対する免疫反応を生じさせる。所定のタンパク質内の広範なエピトープに対する広範な均衡の取れた反応を誘導することは、限られた数のドミナントエピトープに対する反応のみを誘導するであろう組換えタンパク質を用いて免役することによって達成することができない。しかしながら、対照的に、本発明は、オーバーラップペプチド混合物を用いたワクチン接種が、所定のタンパク質内のサブドミナントエピトープを含む広範なエピトープに対するT細胞免役反応を誘導することを教示する。本発明及びサブドミナントエピトープに対する反応の誘導は、したがって、慢性疾患自体によって又は全長の組換え体の形態における所定のタンパク質を用いるワクチン接種によって誘導されない保護エピトープに対する免疫反応を誘導することが可能であるため、これらの疾患において特に利点を有する。従来の予防的ワクチン接種又は治療的様式における事後的な曝露によって、ペプチド混合ワクチン技術の適用は、慢性疾患に対する全長の分子に基づく従来のワクチンよりも優れており、かつ、より高い活性を有する。
【0064】
さらに、液性免役が重要な慢性疾患に関しては、同一のタンパク質に対する最適な広範なT細胞反応及び最大のB細胞反応を誘導することが可能である。この場合において、一次免役は、所定のタンパク質の配列全体に(隣接して)わたるオーバーラップペプチドの混合物を用いて実施され、アジュバント中に組換え形態における同一のタンパク質を含む第二のワクチンをもちいて追加免役が達成される。この方法では、ドミナントエピトープ及びサブドミナントエピトープの双方に対する広範なT細胞反応が、最大のヘルパーT細胞活性を可能にし、それによって非常に強力な抗体反応を可能にする。結果として生じる反応は、慢性疾患に対する使用において、同一の抗原に対する広範なT細胞反応及び最大の抗体反応である。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
ESAT−6
マイコバクテリウムツベルクローシスが発現している抗原ESAT−6がどの程度ドミナントエピトープ及びサブドミナントエピトープを含有するか試験するために、組換えタンパク質ESAT−6を用いて、二週間の間隔で三回、マウスにワクチン接種した。最後のワクチン接種の二週間後に血液から回収した細胞は所定のESAT−6ペプチド(図1A)を用いて刺激し、その後にELISAによって評価されるTFN−γの分泌を測定した。結果は、P1に特異的であり、かつ、より低い程度でP2に特異的であるIFN−γを産生するT細胞の誘導を示した。イムノドミナントエピトープであるP1のESAT6からの除去(アミノ酸1−15が欠失された構築物「Δ15−ESAT−6」を与える(図1B))は、新しいエピトープであるP2及び特にP3の免役による認識を生じさせた(図2)。これは、P1がドミナントエピトープであり、P2及びP3がサブドミナント(ではあるが免疫原性の)エピトープを構成することを示す。本発明者は、次いで、前記サブドミナントエピトープが、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護を与えることが可能であるかどうかを試験した。マウスは、生理食塩水、BCG、又はESAT若しくはΔ15ESAT6を含むDDA/TDBを用いて二週間の間隔で三回皮下にワクチン接種を受けさせた。最後のワクチン接種の六週間後に、マウスを、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いて攻撃した。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した。
【0066】
保護実験は、Δ15−ESAT−6はESAT−6よりも保護性があり(図3)、サブドミナントペプチド(エピトープ)であるP2及びP3が実際に、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に介在する免疫反応を誘導することが可能であることを示した。
【0067】
本発明者は、次いで、ESAT−6のオーバーラップペプチドの全ての混合物を用いるワクチン接種が、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種したマウスと比較して、P1−P13の広範な認識を誘導するかどうかを試験した。マウスを、前記ペプチドの混合物を用いて二週間の間隔で三回ワクチン接種し、免疫反応を、ESAT−6ペプチドであるP1−P13の各々と共に血液細胞を培養することによって調べた(図11)。結果として、組換えタンパク質であるESAT−6でワクチン接種するのとは対照的に、ESAT−6ペプチド混合物(P1−P13)を用いてワクチン接種するとペプチドの広範な認識を生じさせることが示された(図11)。
【0068】
組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種して誘導されるタンパク質と比較してESAT−6に対するより広範な反応がマイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に反映されるかどうかを試験するために、ESAT−6又はESAT−6ペプチド混合物のいずれかを用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路による攻撃にマウスを曝露した。攻撃の十週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【0069】
結果として、ESAT−6ペプチド混合物でワクチン接種したマウスは、ESAT−6のより広範な認識を示すだけでなく、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種したマウスと比較して、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により保護性を有していた(図12)。
【0070】
かくして、ESAT−6ペプチド混合物を用いるワクチン接種は、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種する際と比較して、ESAT−6エピトープのより広範な認識を生じさせ、次いでマイコバクテリウムツベルクローシスに対する顕著により高度な保護を誘導する。
【0071】
(実施例2)
TB10.4
本発明者は、次いで、マイコバクテリウムツベルクローシスによって発現される他のタンパク質であるTB10.4を分析した。組換えタンパク質であるTB10.4を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し、最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収して、0.5μg/mlの所定のTB10.4ペプチドを用いて刺激し(図4)、ELISAで評価されるIFN−γの分泌を測定した。結果として、TB10.4を用いたワクチン接種によって、P3特異的なT細胞が主に誘導されることが示された(図5)。したがって、P3はドミナントエピトープを構成する。
【0072】
(実施例3)
ペプチドP1、P2、P4、P5、P6、及びP9(並びにある程度においてP7及びP8)に反応するT細胞の欠如が、サブドミナントであるか又は免役原性ではない、これらのペプチドエピトープによるものであるかどうかを分析するために、本発明者は、次いで、個々のTB10.4ペプチド(P1−P9)を用いてワクチン接種した。ワクチン接種後に、ワクチン接種に用いたものと同一のペプチドを用いて、精製したリンパ球をin vitroで刺激し、IFN−γの分泌をELISAで測定した。結果として、他の(組換えタンパク質であるTB10.4でワクチン接種する際に)サブドミナントであるペプチドも強い免疫原性を有することが示された。特に、ペプチド1又は3或いはより低い程度においてP7、P8、又はP9を用いてワクチン接種することによって、特異的なT細胞反応が誘導された(図6)。
【0073】
加えて、サブドミナントペプチド、特にP1、P7、P8、P9の全てが、マイコバクテリウムツベルクローシスに対して保護性を有していた(図7)。ドミナントペプチドであるP3を用いたワクチン接種も顕著に保護を誘導した。
【0074】
(実施例4)
組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種の際にサブドミナントエピトープの存在を測定して、本発明者は、次いで、TB10.4のオーバーラップペプチドの全ての混合物を用いたワクチン接種が、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種したマウスと比較して、P1−P9のより広範な認識を生じるかどうかを試験した。全ての前記ペプチドの混合物を用いてマウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し、個々のTB10.4ペプチドであるP1−P9の各々と共に血液細胞を培養することによって、免疫反応を調べた(図8)。
【0075】
結果として、組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種と比較して、TB10.4ペプチド混合物(P1−P9)でワクチン接種することによって、より広範なペプチドの認識が誘導された。特に、P1、P3、及びP8は全て、強力に認識された(図8)。
【0076】
(実施例5)
組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種に誘導されるタンパク質と比較してTB10.4に対するより広範な反応がマイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に反映されるかどうかを試験するために、T10.4又はTB10.4ペプチド混合物を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路による攻撃にマウスを曝露した。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【0077】
結果として、TB10.4ペプチド混合物でワクチン接種したマウスは、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種したマウスと比較して、TB10.4のより広範な認識を示すだけでなく、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により保護性を有していた(図9)。かくして、TB10.4ペプチド混合物を用いてワクチン接種することによって、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種する際と比較して、TB10.4エピトープのより広範な認識が誘導され、次いで、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により高度な保護を誘導する。
【0078】
(実施例5)
組換えCT521又はCT521のオーバーラップペプチド混合物を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し(図10)、最後のワクチン接種の二週間後に血液から回収した細胞を、0.5μg/mlのCT521ペプチドの各々を用いて刺激した。ELISAによって評価されるIFN−γの分泌を測定して、CT521ペプチドの混合物を用いたワクチン接種が、組換えCT521タンパク質を用いるワクチン接種と比較してCT521のより広範な認識を生じさせるかどうかを試験した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、持続性ウイルス、又は寄生虫によって生じる慢性感染などの疾患の慢性期の間に発現されるタンパク質或いは悪性腫瘍において発現されるタンパク質のアミノ酸配列全体にわたるオーバーラップペプチドのペプチド混合物を含む、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患に対するワクチン、その様なワクチンの製造方法、並びに慢性疾患の予防及び治療方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
現在ワクチンが利用可能な限られた数の疾患と比較して、非常に多数の疾患は、これまでに広範な試みによって効果的なワクチンが開発されている。これらの感染症並びにガンの多数についての一般的な特徴は、それらはゆっくりと発症し、宿主の免疫反応の存在と対峙しながら数年に亘って持続する慢性疾患として現れることである。当該疾患は、多くの場合において、免疫的な病理を生じさせる場合があり、ある場合、例えばクラミジアスラコマティス(Clamydia thracomatis)の場合は、不妊症を生じさせる卵管の炎症性瘢痕などのヒトの疾患の直接の原因である。マイコバクテリウムツベルクローシス(M,tuberculosis)感染(TB)などの疾患については、ワクチンが存在するが(BCG)、前記ワクチンは疾患の急性発現を妨げる可能性があるものの、細菌は消滅せず、慢性的又は潜在的な疾患が確立する。TBは本質的に3つの段階を通じて進行する。急性期では、細菌量が最大となり低減を始める時点である、感染を制御することが可能な程度まで免疫反応が増大する時点まで、細菌が臓器において増殖する。この後に、細菌量が低いレベルで安定的に維持される慢性的又は潜在的な段階が確立する。この段階において、マイコバクテリウムツベルクローシスは、活発な分裂から数年持続するゆっくりとした分裂又は分裂を起こさない持続段階に移行する。しかしながら、あるTBの場合では、感染が突然再活性化し、顕在的な疾患が現れるであろう。この再活性化を生じさせる因子は殆ど知られていない。クラミジアなどの他の場合において、感染しても無症候のままである可能性があるが、継続する炎症過程が不妊症などの後の臨床症状を生じさせる。
【0003】
これらの異なる多数の疾患に対する免疫反応は、液性及び細胞性免疫(CMI)反応成分の双方を含む。CMI反応は、病原体に由来するエピトープ及びT細胞抗原の階層に対するものである。エピトープは、7から9アミノ酸(MHC I)及び12から15アミノ酸(MHC II)のアミノ酸長である(非特許文献1)。慢性的なウイルス及び細菌疾患、例えば、HIV、TB、並びにガンでは、エピトープ反応の階層が、数種のイムノドミナントエピトープへと経時的に変化して、次第にT細胞反応全体の大部分を構成するが、MHCクラスI又はII抗原提示分子に結合する潜在能力を有する多数の他のエピトープはサブドミナント又は潜在的であり、検出レベル付近又はそれ以下のレベルにおけるT細胞反応を生じさせる(非特許文献2から6)。保護的であると報告されている(非特許文献7)サブドミナントエピトープに対する(ドミナントエピトープによる競合作用なしでの)ワクチン接種によって誘導される場合には、エピトープが自然な感染の間に実際に発現しており、侵入している病原体に対するエフェクター細胞によって認識され得ることを示す。イムノドミナントエピトープに対する反応と比較して、そのような反応が利点を有する可能性があることは、エスケープミュータントがイムノドミナントエピトープを欠くため免疫系に認識されないHIVにおける研究において示唆されており、現在のワクチン開発において大きな関心を集めている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Paul, W. 1999. Fundamental Immunology, fourth edition, Lippincott-Raven.
【非特許文献2】Sette, A., and J. Fikes. 2003. Curr Opin Immunol 15:461.
【非特許文献3】van der Most, R. G., K. Murali-Krishna, J. G. Lanier, E. J. Wherry, M. T. Puglielli, J. N. Blattman, A. Sette, and R. Ahmed. 2003. Virology 315:93.
【非特許文献4】Crowe, S. R., S. J. Turner, S. C. Miller, A. D. Roberts, R. A. Rappolo, P. C. Doherty, K. H. Ely, and D. L. Woodland. 2003. J Exp Med 198:399.
【非特許文献5】Wherry, E. J., J. N. Blattman, K. Murali-Krishna, R. van der Most, and R. Ahmed. 2003. J Virol 77:4911.
【非特許文献6】Kamath, A. B., J. Woodworth, X. Xiong, C. Taylor, Y. Weng, and S. M. Behar. 2004. J Exp Med 200:1479.
【非特許文献7】Olsen, A. W., P. R. Hansen, A. Holm, and P. Andersen. 2000. Eur J Immunol 30:1724.
【非特許文献8】McMichael, A. J., and R. E. Phillips. 1997.. Annu Rev Immunol 15:271.
【非特許文献9】Mowat et al 1991, Immunology 72(3):317-22
【非特許文献10】Lustig et al 1976, Cell Immunol 24(1):164-7
【非特許文献11】Wille-Reece, U., C. Y. Wu, B. J. Flynn, R. M. Kedl, and R. A. Seder. 2005. J.Immunol. 174:7676.6
【非特許文献12】Thompson J., et al Nucleic Acids Res 1994 22:4673-4680
【非特許文献13】Ravn, P. et al 1999. J.Infect.Dis. 179:637-645
【非特許文献14】Stryhn, A., et al 1996 Eur. J. Immunol. 26:1911-1918
【非特許文献15】Harboe, M., et al 1998 Infect. Immun. 66:2; 717-723
【非特許文献16】Krogh, TN, Berg, T, & Hojrup, P. (1999). Anal. Biochem. 274, 153-162
【非特許文献17】Gosselin et al., 1992. J. Immunol. 149: 3477-3481
【非特許文献18】Babu et al. 1995. Vaccine 13:1669-76.
【非特許文献19】Davidsen et al (2005). Biochim Biophys Acta. 1718: 22-31.
【非特許文献20】Munoz et al (2004). Int J Pharm 269:177-84.
【非特許文献21】Kirby & Gregoriadis. 1984. 2 : 979-984.
【非特許文献22】Pick U. 1981. Arch. Biochem. Biophys. 212: 186-194.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワクチン設計においてサブドミナントT細胞エピトープを利用することは、これまでは、2つの主要な阻害要因:(i)各種の異なるHLA複合体を有する個人によって認識される個々のエピトープのバリエーションにより、広範なヒトの集団をカバーする多数の各種の異なるエピトープが必要である事;(ii)免疫学的アッセイ(例えば、ELISPOT)の検出レベル付近又はそれ以下に過ぎない低いレベルのT細胞反応が認められるサブドミナントエピトープを同定する必要がある事によって妨げられていた。
【0006】
Olsen et al(非特許文献7)は、ESAT6の1つのサブドミナントエピトープに基づくワクチンはTBに対する保護が可能であることを開示した。しかしながら、ESAT6の領域全体にわたるオーバーラップペプチドの混合物は、当該研究では使用されなかった。
【0007】
WO01016163では、HLA遺伝子型にかかわらずT細胞を活性化するペプチドからなるペプチド混合物を含むウイルスに対するワクチンが開示されている。当該出願は、遺伝子的に広範なヒトの集団のワクチン接種に適用する際に広範にカバーすることが可能なB型肝炎由来のペプチド混合物を使用して、単独のペプチドで免役する際に認められるノンレスポンダーを避けることを開示している。当該発明は、本発明において教示するような慢性疾患に対する予防及び治療のためのワクチン接種に関連する、サブドミナントT細胞エピトープに対するT細胞のペプチドによる拡大は教示していない。
【0008】
WO03011331では、プライムブーストワクチンが開示されている。ドミナントエピトープに対する反応の増大及びサブドミナントエピトープに対する反応の低減を妨げることが、一連のエピトープをコードするDNA又はウイルスベクターによって達成される。プライミングの段階の後に、エピトープは別個の構築物で個々に使用されるか又は別個のビヒクルで運ばれて、単独のポリエピトープDNA又はウイルス構築物として投与されるのとは対照的に反応をブーストする。対照的に、本発明は、プライミングのために6から20のアミノ酸がオーバーラップしているペプチド混合物において、タンパク質全体にわたる多数のアミノ酸配列を使用し、任意にアジュバントを加えたサブユニットワクチンとして又は液性反応の最大の誘導のためのウイルス送達システムで発現されるタンパク質全体でブーストする。
【0009】
慢性疾患では、エピトープ反応の階層が経時的に変化して、数種のみのドミナントエピトープのみに対する反応を構築することが一般的に認められる。しかしながら、サブドミナントエピトープに対する反応は保護的であることが実証されており(非特許文献7)、これらのエピトープに対する反応は慢性疾患自体によっては促進されないため、慢性疾患は、ドミナントエピトープ及びより重要なサブドミナントエピトープの双方を含む広範なエピトープに対する免疫反応を誘導する発明にとっての明白な標的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、任意の所定の抗原に対するドミナント及びサブドミナントな反応の広範な認識を誘導するワクチンを開示する。前記ワクチンは、適当なアジュバント中に所望の抗原のオーバーラップ断片を含む。それによりT細胞レパートリーは拡大され、完全な分子を免役に使用する際に認識されるか又は慢性感染自体に誘導されるイムノドミナントエピトープを含むだけでなく、多数のサブドミナントエピトープに対する非常に広範かつバランスのとれた反応を誘導する。本発明の主な利点は、サブドミナントエピトープの正確な位置及び性質並びにヒトの集団におけるそれらの認識についての事前の知識を必要としないながらも、T細胞レパートリーを拡大し、それによってワクチン接種によってプライムされる標的特異的T細胞の総数を数種のイムノドミナントエピトープから多数のエピトープまで拡大することである。本発明によって教示するように、サブドミナントエピトープに対する広範な反応を用いて慢性疾患を標的とすることは、これらの疾患に対する免役を劇的に役立てる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】A:ESAT−6オーバーラップペプチドの概観;B:Δ15−ESAT−6のアミノ酸配列。
【図2】脾細胞におけるESAT6及びΔ15ESAT6の免役原性。F1(Balb/cxC57BL/6)マウスの群は、DDA/TDB中の生理食塩水、ESAT6、又はΔ15ESAT6のいずれかを用いて、二週間の間隔で3回皮下にワクチン接種した。最後のワクチン接種の三週間後に、脾細胞を、1μg/mlのESAT6、Δ15ESAT6、又はESAT6配列をカバーする13のオーバーラップペプチド(図中にP1−P13と示しており、図1にも示している)の1つを用いた刺激後のIFN−γ分泌についてのELISAによって分析した。
【図3】ESAT6及びΔ15ESAT6の保護効果。F1(Balb/cxC57BL/6)マウスの群は、生理食塩水、BCG、又はESAT6若しくはΔ15ESAT6を含むDDA/TDBのいずれかを用いて、二週間の間隔で3回皮下にワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、悪性のマイコバクテリウムツベルクローシスでマウスを攻撃した。当該攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した。
【図4】TB10.4オーバーラップペプチドP1−P9。
【図5】組換えTB10を用いたワクチン接種後のP1−P9の個々のペプチドを用いたin vitro刺激。DDA/TDB中のDDA/TTD−TB10.4を用いて三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の2週間後に血液から細胞を回収し、0.5μg/mlの所定のペプチドで刺激した。
【図6】個々のペプチドを用いたワクチン接種後のTB10−4ペプチドP1−P9の認識。DDA/TDB中の個々のTB10.4ペプチドを用いて三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収し、前記ワクチン接種に使用したものと同一のペプチドを0.5μg/ml用いて刺激した。IFN−γの分泌をELISAによって測定した。
【図7】TB10−4ペプチドP1−P9の保護能力。最後のワクチン接種の6週間後にマイコバクテリウムツベルクローシスを用いてエアロゾル経路によって攻撃されたワクチン接種後のマウスにおける細菌量(CFUにおけるlog10の保護として表される)。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した(*ワクチン接種していないマウスと比較してP<0.05、ANOVA及びTukey’s test)。
【図8】TB10−4ペプチド混合物を用いたワクチン接種後のTB10−4ペプチドP1−P9の認識。DDA/TDB−TB10.4ペプチド混合物で三回ワクチン接種したマウスに由来する細胞のin vitroにおけるIFN−γ反応。最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収して、上述のように0.5μg/mlペプチド又はTB10.4タンパク質を用いて刺激した。
【図9】マイコバクテリウムツベルクローシスに感染し、TB10.4又はTB10.4ペプチドでワクチン接種したマウスにおける細菌量。最初のワクチン接種の10週間後に悪性のマイコバクテリウムツベルクローシスを用いてエアロゾル経路で攻撃した、ワクチン接種していない対象と比較したワクチン接種したマウスにおける細菌量(CFUにおけるlog10で表わす)。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した(*P<0.05、ANOVA及びTurkey’s test)。
【図10】CT521オーバーラップペプチドの概観。
【図11】マウスに、ESAT−6ペプチド(P1−P13)の全ての混合物で2週間の間隔で三回ワクチン接種した。IFN−γの分泌によって測定される免疫反応を、ESAT−6ペプチドP1−P13の各々とともに血液細胞を培養することによって調べた。
【図12】マウスに、ESAT−6又はESAT−6ペプチド混合物(P1−P13)のいずれかを用いて2週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、マウスを、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路における攻撃に曝露した。攻撃の十週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患の慢性期の間に発現するタンパク質のアミノ酸配列全体にわたる隣接したオーバーラップペプチドからなるペプチド混合物を含む、前記慢性疾患に対するワクチンを開示する。
【0013】
本発明は、細菌、ウイルス、又は寄生虫感染或いはガンなどの慢性疾患に対するワクチンのための当該ペプチドをコードする核酸及び/又は抗原タンパク質に由来するオーバーラップペプチドの混合物の使用を開示する。
【0014】
前記ペプチドは、10から30アミノ酸長、好ましくは12から20アミノ酸長であり、隣接したペプチドの重複が6から20アミノ酸、好ましくは10から12アミノ酸である。
【0015】
ペプチド混合物に係る抗原タンパク質は、疾患の慢性期の間に発現し、且つ、慢性疾患の場合に細胞性免疫反応を誘導するタンパク質から選択される。
【0016】
好ましくは、タンパク質は、細菌、例えば、悪性マイコバクテリア、マイコバクテリウムツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウムアフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウムボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウムレプラエ(Mycobacterium leprae)、若しくはクラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)、又はウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス、又は寄生虫、例えば、リーシュマニア又はマラリアを発生させる寄生虫であるプラスモディウムファルシパラム(Plasmodium falciparum)、又は悪性腫瘍において発現する分子から選択される。
【0017】
マイコバクテリウムツベルクローシスから選択されるタンパク質、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4、又はクラミジアトラコマティスから選択されるタンパク質、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、CT375、CT583、CT603、CT610、若しくはCT681、又はB若しくはC型肝炎ウイルスから選択されるタンパク質、又はプラスモディウムファルシパラムから選択されるタンパク質、例えば、Msp1、Msp2、Msp3、Ama1、GLURP、LSA1、LSA3、又はCSPが好ましいが、それらに限らない。
【0018】
本発明は、2つ又はそれ以上のタンパク質分解剤、例えば、タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、若しくはクロモトリプシン、又は化学剤、例えば、CNBr若しくはBNPS−スカトールを用いるタンパク質のタンパク質分解的切断による、本発明のペプチド混合物を調製するための方法も開示する。
【0019】
本発明のペプチド混合物は、慢性疾患、例えば、細菌、ウイルス、若しくは寄生虫感染又はガンに対するワクチンを調製するために使用されてよい。前記ワクチンは、アジュバントなどの送達系を任意に含んでよい。前記アジュバントは、好ましくは、カチオン性リポソーム、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド/トレハロースジベヘネート(DDA/TDB)に基づく。ワクチン接種に使用するペプチド混合物を事前に形成したリポソームと混合してよく、又は各ペプチドを事前に形成したリポソームと混合して、リポソームに配合された個々のペプチドを免疫接種前に混合してよい。
【0020】
ペプチド混合物中の各ペプチドは、免疫系からの個々の抗原提示細胞との最適な相互作用のためのペプチド混合物を製造する前にリポソームと個々に混合して、分子内の全ての可能性があるエピトープに対する最大の反応を確かにすることが好ましい可能性がある。
【0021】
本発明は、本発明のワクチンを動物に投与することを含む、ヒトを含む動物における慢性疾患の予防的又は治療的処置のための方法及びワクチンも開示する。任意に、前記予防的又は治療的処置は、アジュバント中のペプチド混合物に係る全長のタンパク質又はウイルス送達系において発現される全長のタンパク質を含む第二のワクチンを投与するか、或いはCMI及び液性反応を最適に追加免役するための純粋なDNAワクチンとして第二のワクチンを投与することによって追加免役する。
【0022】
本発明は、ポリペプチドの自己アジュバント効果を可能にするように、アミノ酸配列をCPGなどのTLRアゴニストに直接接合するか又は脂質付加しているワクチンも開示する。
【0023】
本発明の好ましい実施態様は、上述のアジュバントを好適に用いる本発明のペプチド混合物を含むワクチンである。
【0024】
定義
慢性疾患
慢性疾患は、長期持続又は再発性の疾患である。慢性という用語は、その疾患の経過を意味するか、又は発症及び発展の速度を意味する。慢性的な経過は、再発的な経過とは区別される。再発性疾患は、寛解期を間に有して繰返し再発する。慢性感染は、細菌、例えば、とりわけマイコバクテリア種又はクラミジア種によって、ウイルス、例えば、肝炎ウイルス又はHIVによって、寄生虫、例えば、マラリアを生じさせる寄生虫若しくはリーシュマニアによって、或いはガン、糖尿病などの疾患によって生じ得る。
【0025】
ペプチド
本発明における用語「ペプチド」は、通常の意味を有するべきである。それは、アミノ酸残基がペプチド共有結合で結合している、タンパク質の一部又は断片である任意の長さのアミノ酸鎖である。
【0026】
前記ペプチドは、グリコシル化によって、脂質付加(例えば、非特許文献9に記載のようにパルミトイルオキシスクシンイミドを用いる化学的な脂質付加、PAM3Cysによる標識(非特許文献18)による脂質付加、又は非特許文献10に記載のようにドデカノイルクロリドを用いる脂質付加)によって、補欠分子族を含めることによって、或いは例えばヒスタグ又はシグナルペプチドなどの追加のアミノ酸を含有させるか又はTLRアゴニストに直接接合させる(非特許文献11に開示されているように)ことによって化学的に修飾されてよい。
【0027】
かくして、各ペプチドは特定のアミノ酸によって特徴付けられてよく、且つ、特定の核酸配列によってコードされてよい。その様な配列は、その様なポリペプチド配列が組換えポリペプチドにおける1つ又は複数のアミノ酸残基の置換、挿入、付加、又は欠失によって修飾され、且つ、本明細書に開示する任意の生物学的アッセイにおいて免役原性を依然として有する、組換え方法又は合成方法によるアナログ及び変異体を含むことが理解されるであろう。置換は、好ましくは「保存的」である。保存的置換は以下の表で規定される。第二のカラムの同じブロックにあり、好ましくは第三のカラムの同じラインにあるアミノ酸は、互いに置換されてよい。第三のカラムのアミノ酸は、一文字表記で表わしている。
【0028】
【表1】
【0029】
ペプチド混合物はタンパク質断片の液体混合物である。
【0030】
本発明の好ましいペプチド混合物は、マイコバクテリウムツベルクローシス由来のタンパク質、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4、クラミジアトラコマティス由来のタンパク質、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、若しくはCT375、又は肝炎ウイルス由来のタンパク質、又はプラスモディウムファルシパラム由来のタンパク質、例えば、momp、omp、msp1、msp3、ama1、又はglurpに基づく。融合分子、例えば、PCT/DK2006/000356にTBに対する関連するワクチン構築物として過去に開示しているような融合分子に基づくペプチド混合物又はタンパク質分解産物であってもよい。一般的には、慢性疾患に対するワクチンにおいて使用してよいCMI反応を誘導するタンパク質の全てのペプチド混合物が、ワクチンとして予防的又は治療的反応の増大を誘導するために使用されてよい。
【0031】
本明細書全体を通じて、背景として必要とされない限り、用語「含む(comprise)」は、言及する要素若しくは整数値又は要素若しくは整数値の群の包含を示すが、任意の他の要素又は整数値又は要素若しくは整数値の群の排除を示すものではない。
【0032】
T細胞エピトープの最小の長さは少なくとも6アミノ酸であると示されているが、その様なエピトープはより長いアミノ酸長で構築されるのが一般的である。したがって、本発明のポリペプチド断片は、少なくとも7アミノ酸残基、例えば、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24、及び少なくとも30アミノ酸残基であることが好ましい。そのため、本発明の重要な実施態様では、ポリペプチド断片が、50アミノ酸残基以下、例えば、40、35、30、25、及び20アミノ酸残基以下の長さを有することが好ましい。10から20アミノ酸の間の長さを有するペプチドがMHCクラスIIエピトープとして最も効果的であることが証明され、そのため、本発明の方法において使用するポリペプチド断片の特に好ましい長さが18、例えば、15、14、13、12、及び11アミノ酸残基であることが予測される。7から12アミノ酸残基の間の長さを有するペプチドがMHCクラスIエピトープとして最も効果的であることが証明され、そのため、本発明において使用するポリペプチド断片の特に好ましい長さが11、例えば、10、9、8、及び7アミノ酸残基であることが予測される。
【0033】
エピトープ
T細胞エピトープは、MHCクラスI又はIIのいずれかの背景において抗原提示細胞によって提示された後に、T細胞受容体によって特定のT細胞に認識されるアミノ酸配列であると解される。
【0034】
ドミナントエピトープは、タンパク質の一部である際に、高度にT細胞反応を誘導するアミノ酸配列であり、多くの場合において抗原に対する反応の大半は数種のドミナントT細胞エピトープに対するものである。
【0035】
サブドミナントエピトープは、タンパク質の一部である際に、強力なT細胞反応を誘導しないアミノ酸配列であるが、前記エピトープは免役原性であり、タンパク質から単離された際に顕著なT細胞反応を誘導し得る。
【0036】
オーバーラップポリペプチド又はタンパク質断片の混合物は、タンパク質全体にわたる6から20アミノ酸のオーバーラップを有する10から30merの混合物であると解される。
【0037】
変異体
本発明のポリペプチドの共通の特徴は、実施例に説明する免疫学的反応を誘導する能力である。置換、挿入、付加、又は欠失によって製造される本発明のポリペプチドの変異体も、本明細書に開示する任意のアッセイによって測定すると免疫原性であってよい。
【0038】
免役個体
免役個体は、感染が消滅又は調節されたヒト又は動物として規定される。
【0039】
免役反応
免疫反応は、以下の方法:
・in vitro細胞反応は、関連するサイトカイン、例えば、IFN−γの放出の誘導又は現在若しくは過去に悪性のマイコバクテリアに感染しているか若しくは関連するペプチド混合物で免役された動物若しくはヒトによるリンパ球の増殖の誘導によって測定される。前記誘導は、ペプチド混合物又は前記混合物の免疫原性部分の、1ウェルあたり2×105から4×105の細胞を含む懸濁物への添加によって実施する。前記細胞は、血液、脾臓、リンパ節、肝臓、又は肺のいずれかから単離され、ポリペプチド又はその免役原性部分の添加は、懸濁物1mlあたり20μg以下の濃度であり、刺激は2から5日で実施される。細胞増殖をモニターするために、細胞は放射標識チミジンでパルス標識して、インキュベートの16から22時間後に、液体シンチレーションカウントによって測定して増殖を検出する。ポジティブ反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応であると規定する。IFN−γの放出は、当業者によく知られたELISA法によって測定することができる。ポジティブな反応は、バックグラウンド+2標準偏差より大きい反応である。IFN−γ以外のサイトカインは、ポリペプチドに対する免疫学的反応をモニターする際に関係し、例えば、IL−12、TNF−α、IL−4、IL−5、IL−10、IL−6、TGF−βであろう。他のより感度の高い免疫反応の検出方法は、IFN−γ産生細胞の発生頻度を測定するELISpot法である。抗ネズミIFN−γ抗体(PharMingen)で事前にコーティングされたELISpotプレート(MAHA,Millipore)において、血液、脾臓、又は肺から単離された種々の細胞(典型的には、1から4×105細胞/ウェル)を、20μg/ml以下の濃度のペプチド混合物又はその免役原性部分の存在下で24から32時間に亘ってインキュベートする。その後に、プレートをビオチン化抗IFN−γ抗体とインキュベートし、続いてストレプトアビジンアルカリホスファターゼとインキュベートする。IFN−γ産生細胞は、BCIP/NBT(Sigma)を添加し、関連する基質がスポットを生じることによって同定される。これらのスポットは、解剖顕微鏡を用いて係数されてよい。PCR技術の使用によって関連するサイトカインをコードするmRNAの存在を測定することも可能である。大抵の場合は、1つ又は複数のサイトカインが、例えば、PCR、ELISPOT、又はELISAを使用して測定されるであろう。特定のペプチド混合物によって誘導される当該サイトカインのいずれかの量における顕著な増大又は低減が、ポリペプチドの免疫学的活性の評価において使用されてよいことが当業者に理解されるであろう。
・in vitro細胞反応が、生細菌、細菌細胞の抽出物、培養濾過物のいずれかをIL−2を添加して10から20日に亘って使用して誘導されたT細胞株であって、免役した固体又は感染したヒトに由来するT細胞株の使用によって測定されてもよい。その誘導は、1ウェルあたり1×105細胞から3×105細胞を含有するT細胞株に対して、懸濁物1mlあたり20μg以下のペプチドを添加し、インキュベートを2から6日まで実施することによって実施する。IFN−γの誘導又は他の関連するサイトカインの放出は、ELISAによって検出される。T細胞の刺激は、上述のように放射活性標識したチミジンを使用して細胞増殖を検出することによって観察されてもよい。双方のアッセイについて、ポジティブな反応は、バックグラウンド+2標準偏差を超える反応である。
・in vitro細胞反応は、悪性細菌に臨床的に感染又は無症状感染している個体に対して、100μg以下のポリペプチド又はその免役原性部分の皮内注射又は局所投与パッチ後のポジティブDTH反応として測定されてよく、ポジティブな反応は注射又は投与の72から96時間後に少なくとも5mmの直径を有する。
・in vitro液性反応は、免役又は感染した個体における特定の抗体反応によって測定される。抗体の存在は、ペプチド混合物又は免役原性の部分がニトロセルロース膜又はポリスチレン表面のいずれかに吸着されるウエスタンブロット又はELISA技術によって測定されてよい。好ましくは、血清は、PBSで1:10から1:100に希釈し、吸着されたペプチド混合物に添加し、1から12時間にわたってインキュベートを実施する。標識した二次抗体の使用によって、特定の抗体の存在が、例えばポジティブ反応がバックグラウンド+2標準偏差を超える反応であるELISAによってODを測定することによって或いはウエスタンブロットにおける視覚的な反応によって決定され得る。
・他の関連するパラメータは、アジュバント中のペプチド混合物によるワクチン接種後又はDNAワクチン接種後に誘導される動物モデルにおける保護の測定である。適切な動物モデルは、感染させた霊長類、モルモット、又はマウスを含む。誘導された保護は、ワクチン接種していない動物と比較すると標的組織における細菌量が低減していること、ワクチン接種していない動物と比較すると生存時間が長期化していること、並びにワクチン接種していない動物と比較すると体重減少が低減していることから読み出されるであろう。
の1つによってモニターされてよい。
【0040】
調製方法
一般的には、抗原及びその様な抗原をコードするDNA配列は、各種の手法のいずれか1つを使用して調製してよい。ペプチド混合物は、ペプチド断片が約100未満のアミノ酸、一般的には50未満のアミノ酸を有する際は、合成によって製造されてよく、当業者によく知られた技術、例えば、アミノ酸が連続的に付加してアミノ酸鎖が成長する市販の固相技術を使用して産生されてよい。
【0041】
DNAワクチン接種に関して、本発明で規定されるペプチド混合物をコードするプラスミドDNAの構築及び調製において、宿主株、例えば大腸菌(E.coli)が使用されてよい。次いで、プラスミドDNAは、興味のあるプラスミドを有する宿主株の培養物から調製し、例えばエンドトキシン除去工程を含むQiagen Giga−Plasmid column kit(Qiagen,Santa Clarita,CA,USA)を使用して精製してよい。DNAワクチン接種に使用するプラスミドDNAはエンドトキシンを含まないことが好ましい。
【0042】
抗原のプロテアーゼ消化
一連のオーバーラップペプチドが、例えば大腸菌において組換えタグ付加タンパク質として発現され得る完全なタンパク質のタンパク質分解的切断、それに続くカラムクロマトグラフィー、例えば金属キレートクロマトグラフィーによる精製によって製造されてよい。異なる断片を生成することによってオーバーラップペプチドカクテルを得る2又はそれ以上のタンパク質分解剤が選択されてよい。タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、又はキモトリプシンが使用されてよく、或いは化学剤、例えば、CNBr又はBNPS−スカトールが使用されてよい。切断部位の数及び生成される断片の長さは、タンパク質のアミノ酸配列及び特定の切断剤、例えば、アスパラギン酸及びシステイン酸残基のN末端側であるAsp−N加水分解酵素タンパク質によって決定される。V−8プロテアーゼは、重炭酸アンモニウム緩衝液(pH7.8)中でグルタミン酸のカルボキシル末端側で切断する。タンパク質分解酵素については、切断前にビーズにタンパク質分解酵素を結合させてよく(非特許文献16)、当該結合は、ビーズの遠心分離によって切断の完了後に酵素を除去することを可能にする。代替的には、プロテアーゼは、クロマトグラフィー法、例えば、ゲル濾過又は逆相HPLCによって消化混合物から除去されてよい。タンパク質の消化後に、消化物の質量分析を実施して、タンパク質の切断が予測したように起こっているかを確認する。最後に、2つの消化混合物をあわせて、オーバーラップペプチドの混合物を形成させる。
【0043】
タンパク質ワクチン
組換えタンパク質を用いるワクチン接種は、当該タンパク質中の限られた数のドミナントペプチドエピトープに対するT細胞反応を誘導するであろう。対照的に、タンパク質のアミノ酸配列全体にわたるオーバーラップペプチドの混合物を用いるワクチン接種は、ドミナントペプチドエピトープ及びサブドミナントペプチドエピトープの双方である多数のエピトープに対するT細胞反応を生じさせるであろう。
【0044】
本発明は、本発明に係るペプチド混合物を含むワクチン組成物に関する。その様なワクチン組成物の最適な性能を確実にするために、免疫学的及び製薬学的に許容される担体、ビヒクル、又はアジュバントを含むことが好ましい。
【0045】
本発明のペプチド混合物が動物によって認識される効果的なワクチンは、予防又は治療用ワクチンとして与えられた際に、ワクチン接種していない動物と比較して、動物モデルにおいて標的組織中の細菌量を低減し、生存時間を長期化し、及び/又は感染性微生物による攻撃後の体重減少を軽減することが可能であろう。
【0046】
適切なビヒクルは、希釈剤及び懸濁剤からなる群から選択される。アジュバントは、好ましくは、DDA、Quil A、polyI:C、水酸化アルミニウム、フロイント不完全アジュバント、IFN−γ、IL−2、IL−12、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、TDB、及びムラミールジペプチド(MDP)からなる群から選択される。
【0047】
アジュバントは、抗原に対する免疫反応を非特異的に促進する物質として規定される。アジュバントの性質に依存して、細胞性免疫反応、液性免疫反応、又はそれら2つの双方が促進されてよい。免疫反応の促進が非特異的であるために、同一のアジュバントが異なる抗原と共に使用されて、異なる標的に対する反応を促進してよく、例えば、マイコバクテリウムツベルクローシスに由来する抗原を用いてマイコバクテリウムツベルクローシスに対する免役を促進するか、又は腫瘍由来の抗原を用いて特定種の腫瘍に対する免役を促進することが当該技術分野においてよく知られている。
【0048】
「リポソーム」は、水性の中心部を覆う1つ又は複数の脂質二重層から作られる閉じた小胞構造として規定される。各脂質層は、各々が疎水性の「テール」領域と親水性の「ヘッド」領域とを有する2つの脂質単分子層からなる。二重層では、脂質単分子層の疎水性「テール」が二重層の内側に配向し、親水性「ヘッド」が二重層の外側に配向する。リポソームは、各種の物理化学性質、例えば、サイズ、脂質組成、表面電荷、流動性、及び二重層膜の数を有してよい。脂質二重層の数によって、リポソームは、単独の脂質二重層を含む単層ベシクル(UV)又は各々が水の層によって次の層から分離されている2以上の同心二重層を含む多層ベシクル(MLV)として分類されてよい。水溶性化合物はリポソームの水性相/中心部に取り込まれ、反対に親油性化合物は脂質二重膜の中心部に取り込まれる。
【0049】
ワクチン接種に使用されるペプチド混合物は上述の事前に形成したリポソームと混合してよく(参照によって本明細書に取り込むWO2006002642)、又は各ペプチドを同様に事前に形成したリポソームと混合し、次いで、リポソームに配合された各ペプチドを免役前に混合する。
【0050】
リポソームの標準的な調製方法は、有機溶媒に脂質を溶解し、次いで、乾燥するまで蒸発させて薄い脂質膜を試験管の内部に残存させることによる。乾燥した脂質膜を、次いで、適当な量の水性相中で水和させて、その混合物を脂質の相転位温度より高い温度に加熱し、「膨張」させる。結果として得られる多層ベシクル(MLV)からなるリポソームは、試験管を振盪することによって分散される。
【0051】
ペプチド又はペプチド混合物のリポソームに対する相互作用についての各種の異なる原理が存在する。1つの方法は、ペプチドを事前に形成したリポソームとインキュベートすることによる、ペプチドとリポソームとの(静電気的相互作用又は疎水性相互作用による)表面相互作用である(非特許文献19)。ペプチドをリポソームの表面に化学的な架橋によって(例えば、非特許文献20に開示されているように)共有結合させることも可能である。加えて、前記ペプチドは、各種の異なる方法によってリポソーム中に取り込まれてよい。1つの方法は、脂質膜に直接ペプチドを添加して、その後に再水和することである。他の方法は、脂質膜からのリポソームの再水和に用いる緩衝液にペプチドを添加することである。加えて、ペプチドは、凍結乾燥に続いて凍結乾燥したリポソームを再水和することによってペプチドを取り込む脱水−再水和方法(非特許文献21)によって取り込まれてよい。代替的には、抗原は、Pick(非特許文献22)及びBally et alによって米国特許第4,975,282号に開示されている凍結融解技術を用いて取り込まれる。当該技術では、小胞をタンパク質抗原と混合し、液体窒素中における即時凍結と関連する脂質の主な相転位温度超の温度における加温とを繰り返す。例えば洗浄及び遠心分離によって、小胞を更に処理して、任意の取り込まれなかった抗原を除去してよい。
【0052】
最後に、ペプチド混合物を、2つの方法でリポソームによって送達させてよい。ペプチドは、リポソームと相互作用させる前に混合するか、又は上述のようにリポソームと個々のペプチドとの相互作用後に混合してよい。
【0053】
ペプチドは、脂質膜又は凍結乾燥した形態のものからリポソームの再水和をするのに使用する緩衝液にペプチドを添加することによって、リポソーム中に取り込まれてもよい。
【0054】
ポリペプチドは、グリコシル化によって、脂質付加(例えば、Mowat et al.1991に開示されているようなパルミトイルオキシスクシンイミドを用いる化学的脂質付加、PAM3Cysを用いる標識(非特許文献18)、又はLustig et al.1976に開示されているドデカノイルクロリドを用いること)によって、補欠分子族を含めることによって、又はTLRアゴニストに直接接合させることによって(例えば、Seder 2006に開示されているように)修飾されてもよい。
【0055】
活性成分としてペプチド配列を含有するワクチンの調製は、一般的に当該技術分野において既知であり、参照によって本明細書に取り込む米国特許第4,608,251号;第4,601,903号;第4,599,231号;及び第4,599,230号が例示される。
【0056】
ワクチンに対するアジュバント効果を達成する他の方法は、薬剤、例えば、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム、糖の合成ポリマー(Carbopol)、熱処理によるワクチン中のタンパク質凝集、ペプシン処理(Fab)抗体を用いる再活性化によるアルブミンへの凝集、クリプトスポリジウム・パルバムなどの細菌細胞又はエンドトキシン又はグラム陰性菌の脂質多糖成分の混合物、モノオレイン酸マンニド(Aracel A)などの生理学的に許容される油小胞におけるエマルション、或いはブロック置換体として用いられるパーフルオロカーボン(Fluosol−DA)の20%溶液を含むエマルションの使用を含む。サイトカインなどの免疫調節物質又はポリI:Cなどの合成IFN−γインデューサーを、上述のアジュバントと組み合わせて使用してもよい。
【0057】
アジュバント効果を達成するために、(参照によって本明細書に取り込む)非特許文献17に記載の技術を使用してもよい。簡潔に言うと、本発明の抗原などの関連する抗原が、単球/マクロファージ上のFcγ受容体に対する抗体(又は抗原結合抗体断片)に接合されてよい。
【0058】
ワクチンは、治療上の有効量かつ免役原性であるような量で、剤形に適合する様式で投与されてよい。投与すべき量は、例えば、免疫反応を開始する個体の免疫系の能力を含む治療しようとする患者並びに所望の保護の程度に依存する。適切な用量範囲は、1回のワクチン接種あたり数百マイクログラムの活性成分の桁であり、好ましい範囲は約0.1μgから1000μg、例えば、約1μgから300μgの範囲、特に約10μgから50μgの範囲である。初期投与及び追加の接種の適切な投薬計画は変化してもよいが、典型的には初期投与に続いて次の接種又は他の投与である。
【0059】
適用の様式は広範に変化してよい。ワクチン投与の従来の方法の任意のものを利用してよい。これらは、固体の生理学的に許容されるベース又は整理学的に許容される分散剤における経口的な適用、注射などによる非経口的な適用を含むと解される。ワクチンの用量は、投与経路に依存し、ワクチン接種しようとするヒトの年齢並びにそれほど重要ではないがワクチン接種しようとするヒトの大きさに依存して変化するであろう。
【0060】
ワクチンは、従来は、注射によって、例えば皮下又は筋肉内のいずれかに非経口的に投与されている。投与の他の態様に適切な追加の製剤は坐剤を含み、ある場合には、経口製剤を含む。坐剤に関しては、従来のバインダー及びキャリアーとして、例えば、ポリアルカレングリコール又はトリグリセリドを含んでよく;その様な座剤は、0.5%から10%、好ましくは1から2%の範囲において活性成分を含有する混合物から形成されてよい。経口製剤は、その様な通常使用される賦形剤、例えば、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどを含んでよい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤、又は粉末剤の形態をとり、有利には10から95%の活性成分、好ましくは25から70%の活性成分を含有する。
【0061】
多くの場合において、ワクチンを多数回投与することが必要であろう。特に、ワクチン投与して、感染を予防し得る。感染を予防するために投与される際は、ワクチンは、感染の明確な臨床的兆候又は症状が現れる前に予防的に与えられる。現在のワクチン、例えばBCGが明らかに効果的ではあるが短期間の免疫反応を誘導するため、予防的ワクチンは、追加のワクチン接種として使用するために設計されてもよい。その様なワクチンは、保護の期間を長期化することを意図して、過去にワクチン接種をうけた個体に与えられる。
【0062】
個体が既に感染しているか又は感染している疑いがある場合には、過去のワクチン接種は原発性疾患に対する十分な免役を与えている可能性があるが、上述のように当該免役を追加免役することは、潜在的な感染に対する助けとはならないであろう。その様な場合には、前記ワクチンは、感染の潜伏期に対して有効なように設計された治療用ワクチンとして特に利点を有する。
【0063】
重要なことに、TB、ガン、肝炎、及びHIVなどの慢性疾患では、宿主と病原体との間の長期にわたる均衡が、多くの場合において、数少ないイムノドミナントエピトープに対する免疫反応を生じさせる。所定のタンパク質内の広範なエピトープに対する広範な均衡の取れた反応を誘導することは、限られた数のドミナントエピトープに対する反応のみを誘導するであろう組換えタンパク質を用いて免役することによって達成することができない。しかしながら、対照的に、本発明は、オーバーラップペプチド混合物を用いたワクチン接種が、所定のタンパク質内のサブドミナントエピトープを含む広範なエピトープに対するT細胞免役反応を誘導することを教示する。本発明及びサブドミナントエピトープに対する反応の誘導は、したがって、慢性疾患自体によって又は全長の組換え体の形態における所定のタンパク質を用いるワクチン接種によって誘導されない保護エピトープに対する免疫反応を誘導することが可能であるため、これらの疾患において特に利点を有する。従来の予防的ワクチン接種又は治療的様式における事後的な曝露によって、ペプチド混合ワクチン技術の適用は、慢性疾患に対する全長の分子に基づく従来のワクチンよりも優れており、かつ、より高い活性を有する。
【0064】
さらに、液性免役が重要な慢性疾患に関しては、同一のタンパク質に対する最適な広範なT細胞反応及び最大のB細胞反応を誘導することが可能である。この場合において、一次免役は、所定のタンパク質の配列全体に(隣接して)わたるオーバーラップペプチドの混合物を用いて実施され、アジュバント中に組換え形態における同一のタンパク質を含む第二のワクチンをもちいて追加免役が達成される。この方法では、ドミナントエピトープ及びサブドミナントエピトープの双方に対する広範なT細胞反応が、最大のヘルパーT細胞活性を可能にし、それによって非常に強力な抗体反応を可能にする。結果として生じる反応は、慢性疾患に対する使用において、同一の抗原に対する広範なT細胞反応及び最大の抗体反応である。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
ESAT−6
マイコバクテリウムツベルクローシスが発現している抗原ESAT−6がどの程度ドミナントエピトープ及びサブドミナントエピトープを含有するか試験するために、組換えタンパク質ESAT−6を用いて、二週間の間隔で三回、マウスにワクチン接種した。最後のワクチン接種の二週間後に血液から回収した細胞は所定のESAT−6ペプチド(図1A)を用いて刺激し、その後にELISAによって評価されるTFN−γの分泌を測定した。結果は、P1に特異的であり、かつ、より低い程度でP2に特異的であるIFN−γを産生するT細胞の誘導を示した。イムノドミナントエピトープであるP1のESAT6からの除去(アミノ酸1−15が欠失された構築物「Δ15−ESAT−6」を与える(図1B))は、新しいエピトープであるP2及び特にP3の免役による認識を生じさせた(図2)。これは、P1がドミナントエピトープであり、P2及びP3がサブドミナント(ではあるが免疫原性の)エピトープを構成することを示す。本発明者は、次いで、前記サブドミナントエピトープが、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護を与えることが可能であるかどうかを試験した。マウスは、生理食塩水、BCG、又はESAT若しくはΔ15ESAT6を含むDDA/TDBを用いて二週間の間隔で三回皮下にワクチン接種を受けさせた。最後のワクチン接種の六週間後に、マウスを、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いて攻撃した。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌量(CFU)を肺において測定した。
【0066】
保護実験は、Δ15−ESAT−6はESAT−6よりも保護性があり(図3)、サブドミナントペプチド(エピトープ)であるP2及びP3が実際に、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に介在する免疫反応を誘導することが可能であることを示した。
【0067】
本発明者は、次いで、ESAT−6のオーバーラップペプチドの全ての混合物を用いるワクチン接種が、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種したマウスと比較して、P1−P13の広範な認識を誘導するかどうかを試験した。マウスを、前記ペプチドの混合物を用いて二週間の間隔で三回ワクチン接種し、免疫反応を、ESAT−6ペプチドであるP1−P13の各々と共に血液細胞を培養することによって調べた(図11)。結果として、組換えタンパク質であるESAT−6でワクチン接種するのとは対照的に、ESAT−6ペプチド混合物(P1−P13)を用いてワクチン接種するとペプチドの広範な認識を生じさせることが示された(図11)。
【0068】
組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種して誘導されるタンパク質と比較してESAT−6に対するより広範な反応がマイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に反映されるかどうかを試験するために、ESAT−6又はESAT−6ペプチド混合物のいずれかを用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、悪性マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路による攻撃にマウスを曝露した。攻撃の十週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【0069】
結果として、ESAT−6ペプチド混合物でワクチン接種したマウスは、ESAT−6のより広範な認識を示すだけでなく、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種したマウスと比較して、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により保護性を有していた(図12)。
【0070】
かくして、ESAT−6ペプチド混合物を用いるワクチン接種は、組換えタンパク質であるESAT−6を用いてワクチン接種する際と比較して、ESAT−6エピトープのより広範な認識を生じさせ、次いでマイコバクテリウムツベルクローシスに対する顕著により高度な保護を誘導する。
【0071】
(実施例2)
TB10.4
本発明者は、次いで、マイコバクテリウムツベルクローシスによって発現される他のタンパク質であるTB10.4を分析した。組換えタンパク質であるTB10.4を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し、最後のワクチン接種の二週間後に血液から細胞を回収して、0.5μg/mlの所定のTB10.4ペプチドを用いて刺激し(図4)、ELISAで評価されるIFN−γの分泌を測定した。結果として、TB10.4を用いたワクチン接種によって、P3特異的なT細胞が主に誘導されることが示された(図5)。したがって、P3はドミナントエピトープを構成する。
【0072】
(実施例3)
ペプチドP1、P2、P4、P5、P6、及びP9(並びにある程度においてP7及びP8)に反応するT細胞の欠如が、サブドミナントであるか又は免役原性ではない、これらのペプチドエピトープによるものであるかどうかを分析するために、本発明者は、次いで、個々のTB10.4ペプチド(P1−P9)を用いてワクチン接種した。ワクチン接種後に、ワクチン接種に用いたものと同一のペプチドを用いて、精製したリンパ球をin vitroで刺激し、IFN−γの分泌をELISAで測定した。結果として、他の(組換えタンパク質であるTB10.4でワクチン接種する際に)サブドミナントであるペプチドも強い免疫原性を有することが示された。特に、ペプチド1又は3或いはより低い程度においてP7、P8、又はP9を用いてワクチン接種することによって、特異的なT細胞反応が誘導された(図6)。
【0073】
加えて、サブドミナントペプチド、特にP1、P7、P8、P9の全てが、マイコバクテリウムツベルクローシスに対して保護性を有していた(図7)。ドミナントペプチドであるP3を用いたワクチン接種も顕著に保護を誘導した。
【0074】
(実施例4)
組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種の際にサブドミナントエピトープの存在を測定して、本発明者は、次いで、TB10.4のオーバーラップペプチドの全ての混合物を用いたワクチン接種が、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種したマウスと比較して、P1−P9のより広範な認識を生じるかどうかを試験した。全ての前記ペプチドの混合物を用いてマウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し、個々のTB10.4ペプチドであるP1−P9の各々と共に血液細胞を培養することによって、免疫反応を調べた(図8)。
【0075】
結果として、組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種と比較して、TB10.4ペプチド混合物(P1−P9)でワクチン接種することによって、より広範なペプチドの認識が誘導された。特に、P1、P3、及びP8は全て、強力に認識された(図8)。
【0076】
(実施例5)
組換えタンパク質であるTB10.4を用いたワクチン接種に誘導されるタンパク質と比較してTB10.4に対するより広範な反応がマイコバクテリウムツベルクローシス感染に対する保護に反映されるかどうかを試験するために、T10.4又はTB10.4ペプチド混合物を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種した。最後のワクチン接種の六週間後に、マイコバクテリウムツベルクローシスを用いたエアロゾル経路による攻撃にマウスを曝露した。攻撃の六週間後に、マウスを屠殺して、細菌数を肺において測定した。
【0077】
結果として、TB10.4ペプチド混合物でワクチン接種したマウスは、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種したマウスと比較して、TB10.4のより広範な認識を示すだけでなく、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により保護性を有していた(図9)。かくして、TB10.4ペプチド混合物を用いてワクチン接種することによって、組換えタンパク質であるTB10.4を用いてワクチン接種する際と比較して、TB10.4エピトープのより広範な認識が誘導され、次いで、マイコバクテリウムツベルクローシス感染に対して顕著により高度な保護を誘導する。
【0078】
(実施例5)
組換えCT521又はCT521のオーバーラップペプチド混合物を用いて、マウスを二週間の間隔で三回ワクチン接種し(図10)、最後のワクチン接種の二週間後に血液から回収した細胞を、0.5μg/mlのCT521ペプチドの各々を用いて刺激した。ELISAによって評価されるIFN−γの分泌を測定して、CT521ペプチドの混合物を用いたワクチン接種が、組換えCT521タンパク質を用いるワクチン接種と比較してCT521のより広範な認識を生じさせるかどうかを試験した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌、ウイルス、若しくは寄生虫感染、又はガンなどの慢性疾患に対するワクチンであって、前記疾患の慢性期の間に発現するタンパク質のアミノ酸配列全体にわたる隣接したオーバーラップペプチドからなるペプチド混合物を含む、ワクチン。
【請求項2】
前記微生物が細菌、ウイルス、又は寄生虫である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ペプチドが10から30アミノ酸長、好ましくは12から20アミノ酸長である、請求項1又は2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記隣接したペプチドのオーバーラップが6から20アミノ酸、好ましくは10から12アミノ酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項5】
前記タンパク質が、悪性のマイコバクテリア、例えば、マイコバクテリウムツベルクローシス、マイコバクテリウムアフリカヌム、マイコバクテリウムボビス、マイコバクテリウムレプラエ、若しくはクラミジアトラコマティスなどの細菌、又はウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス、又は寄生虫、例えば、リーシュマニア種又はマラリアを発生させる寄生虫であるプラスモディウムファルシパラム、又は悪性腫瘍において発現する分子から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記ペプチドが、マイコバクテリウムツベルクローシス、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4から、又はクラミジアトラコマティス、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、CT375、CT583、CT603、CT610、若しくはCT681から、又は肝炎ウイルスから、又はプラスモディウムファルシパラム、例えば、Msp1、Msp2、Msp3、Ama1、GLURP、LSA1、LSA3、若しくはCSPから選択されるタンパク質に由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項7】
アジュバントなどの送達系において送達される、請求項1から6のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
前記アジュバントがカチオン性リポソームに基づく、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記ペプチドがリポソームに取り込まれて送達される、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
1つ又は複数の前記ペプチドが脂質付加されている、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記ペプチド混合物中の各ペプチドが、混合物を製造する前に個々にリポソームに取り込まれるか又は混合されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
前記アジュバントがDDA/TDBである、請求項7から11のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項13】
前記ペプチド混合物が、2以上のタンパク質分解剤を用いるタンパク質のタンパク質分解的切断によって調製される、請求項1から7のいずれか一項に記載のワクチンの製造方法。
【請求項14】
前記タンパク質分解剤が、タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、若しくはキモトリプシンのうちから選択されるか、又は化学剤、例えば、CNBr又はBNPS−スカトールのうちから選択される、請求項13に記載のワクチンの製造方法。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のワクチンを動物に投与する工程を含む、ヒトを含む動物における慢性疾患を予防又は治療するための方法。
【請求項16】
前記予防又は治療が、アジュバント中の又は生送達系において発現される、ペプチド混合物によってわたられる全長のタンパク質を含む第二のワクチンを投与することによって追加免役される、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
細菌、ウイルス、若しくは寄生虫感染、又はガンなどの慢性疾患に対するワクチンであって、前記疾患の慢性期の間に発現するタンパク質のアミノ酸配列全体にわたる隣接したオーバーラップペプチドからなるペプチド混合物を含む、ワクチン。
【請求項2】
前記微生物が細菌、ウイルス、又は寄生虫である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ペプチドが10から30アミノ酸長、好ましくは12から20アミノ酸長である、請求項1又は2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記隣接したペプチドのオーバーラップが6から20アミノ酸、好ましくは10から12アミノ酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項5】
前記タンパク質が、悪性のマイコバクテリア、例えば、マイコバクテリウムツベルクローシス、マイコバクテリウムアフリカヌム、マイコバクテリウムボビス、マイコバクテリウムレプラエ、若しくはクラミジアトラコマティスなどの細菌、又はウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス若しくはC型肝炎ウイルス、又は寄生虫、例えば、リーシュマニア種又はマラリアを発生させる寄生虫であるプラスモディウムファルシパラム、又は悪性腫瘍において発現する分子から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記ペプチドが、マイコバクテリウムツベルクローシス、例えば、ESAT6、Ag85A、Ag85B、若しくはTB10.4から、又はクラミジアトラコマティス、例えば、CT184、CT521、CT443、CT520、CT521、CT375、CT583、CT603、CT610、若しくはCT681から、又は肝炎ウイルスから、又はプラスモディウムファルシパラム、例えば、Msp1、Msp2、Msp3、Ama1、GLURP、LSA1、LSA3、若しくはCSPから選択されるタンパク質に由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項7】
アジュバントなどの送達系において送達される、請求項1から6のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
前記アジュバントがカチオン性リポソームに基づく、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記ペプチドがリポソームに取り込まれて送達される、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
1つ又は複数の前記ペプチドが脂質付加されている、請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記ペプチド混合物中の各ペプチドが、混合物を製造する前に個々にリポソームに取り込まれるか又は混合されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
前記アジュバントがDDA/TDBである、請求項7から11のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項13】
前記ペプチド混合物が、2以上のタンパク質分解剤を用いるタンパク質のタンパク質分解的切断によって調製される、請求項1から7のいずれか一項に記載のワクチンの製造方法。
【請求項14】
前記タンパク質分解剤が、タンパク質分解酵素、例えば、トリプシン、V−8プロテアーゼ、AspN、若しくはキモトリプシンのうちから選択されるか、又は化学剤、例えば、CNBr又はBNPS−スカトールのうちから選択される、請求項13に記載のワクチンの製造方法。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のワクチンを動物に投与する工程を含む、ヒトを含む動物における慢性疾患を予防又は治療するための方法。
【請求項16】
前記予防又は治療が、アジュバント中の又は生送達系において発現される、ペプチド混合物によってわたられる全長のタンパク質を含む第二のワクチンを投与することによって追加免役される、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−541373(P2009−541373A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516901(P2009−516901)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000312
【国際公開番号】WO2008/000261
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(507419068)ステイテンス・セラム・インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000312
【国際公開番号】WO2008/000261
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(507419068)ステイテンス・セラム・インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
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