説明

タンパク質標識方法及び組成物

18F標識用試薬で18Fをタンパク質に効率的に導入できる様々な水溶性の補欠分子族を迅速に調製するためのモジュラープラットフォームが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
米国特許法施行規則第37条1.53(b)に基づき出願されたこの非仮出願は、出典明示により全体が援用される2009年2月27日出願の米国仮出願第61/156165号の米国特許法第119条第(e)項の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般にタンパク質に基をコンジュゲートし又は標識する方法に関する。本発明はまた新規な治療薬及び診断試験の研究及び臨床開発のための標識タンパク質、標識タンパク質を調製するために有用な中間体及び試薬にも関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質及びペプチドは細胞表面バイオマーカーの分子イメージングのために利用できる医療設備の大部分を占める。遺伝子操作により製造される標的タンパク質はPETイメージング剤として非常に魅力的であるが、一般的な18Fベースの補欠分子族での標識化は、長い合成時間、乏しい放射化学的収率、低い比活性のため問題がある。「理想的な」イメージング剤の開発は重要な目標であるが、実際には、多くのイメージング剤が、最初は潜在的な治療剤として又は標的のバイオロジーを探求するために開発されている既存のタンパク質、例えばモノクローナル抗体(Mab)及びその遺伝子操作断片から開発されている。PETイメージング剤は、診断アッセイ又はバイオマーカー試験において機能し、患者の選択を可能にし、治療剤候補に対する効能選択についての決定を知らせ、同じレセプター又は疾患経路を標的とする治療剤の臨床的恩恵を最大にしうる。予測バイオマーカー試験は特定の治療が有効である見込みがあるかどうかを予測するために治療前に実施される。予後バイオマーカーは疾患の結果に相関し、臨床試験計画及び治療、及びデータ解釈信頼レベルを改善しうる。
【0004】
Mab鋳型(イムノPET)からの陽電子放射断層撮影法(PET)イメージング剤の開発は、分子標的を局在化させ、定量するツールとしての見込みがあり、病理状態の非侵襲的臨床診断を増強しうる(van Dongen 等(2007) Oncologist 12;1379-89;Williams等(2001) Cancer Biother Radiopharm 16:25-35;Holliger 等(2005) Nat Biotechnol 23:1126-36)。PETイメージングシステムは、患者の組織中の陽電子放出同位体の分布に基づいて画像を作り出す。同位体は、典型的には、体内で容易に代謝されるかもしくは局在化される分子(例えば、グルコース)又は体内のレセプター部位に化学的に結合する分子に共有結合される陽子放射同位体元素、例えば、F−18、C−11、N−13、又はO−15等を含むプローブ分子を注射することにより、患者に投与される。ある場合には、同位体はイオン溶液として又は吸入により患者に投与される。小さな免疫PETイメージング剤、例えばFab抗体断片(50kDa)又はダイアボディ、Mabの共有的に結合されるV−V領域のペアード二量体55kDa(Shively等(2007) J Nucl Med 48:170-2)は、短い循環半減期を示し、組織への透過性が高く、注射から2から4時間後に最適な腫瘍集積比(tumor to background ratio)に達し、汎用性のある18F(109.8分)のような短い半減期の同位体の使用を容易にするので、特に有用でありうる。
【0005】
遺伝子操作により作られた標的タンパク質はPETイメージング剤として非常に魅力的であるが、従来の18Fベース補欠分子族での標識化は、長い合成時間、悪い放射化学的収率、低い比活性のため、18Fをタンパク質中に効率的に導入させ得る様々な水溶性補欠分子族の迅速な調製のためのモジュラープラットホームには問題がある。これらの抗体断片の高特異性での18FベースPETイメージングによってもたらされる感度と高分解能を組み合わせることは、新規な診断アッセイ及び治療薬の研究及び臨床開発に特に魅力的な方策である。現在の方法による18F標識タンパク質の生産は、比較的マイルドな水性反応条件が殆どのタンパク質の機構を保存するために必要とされるから、不十分である。タンパク質コンジュゲーションに使用される既存の18F標識された補欠分子族は、低い放射化学的収率、長い合成時間、及び低い比活性の幾つかの組み合わせによってしばしば制限される。18F標識タンパク質の作製方法の改善は、ヒトの分子イメージングの促進において、標的発現のレベル、不均一性及び発現経過のような臨床開発プロセスに取り組むのに貴重である。
【0006】
部位特異的コンジュゲーションは、結合部位から離れた部位の化学修飾を可能とし、生物学的活性の完全な維持を促進し、加えられる補欠分子族の可能な数についての制御を可能にするので、ランダムなアミノ修飾よりも望ましい。選択位置にシステインを含む遺伝子操作されたタンパク質が、部位特異的コンジュゲーションの開発のために研究されてきている(Junutula, J.R.等(2008) J Immunol Methods 332:41-52;米国特許出願公開第2007/0092940号)。補欠分子族による操作システイン残基上のチオール基の放射性核種標識化は、非反応性ジスルフィド型が優性であるプロテオーム内にシステインの存在が限定されるため、部位特異的な方法として有利である(Olafsen 等(2004) Protein Eng Des Sel 17:21-7;Tait 等(2006) J Nucl Med 47:1546-53;Li 等(2008) Bioconjug Chem 19:1684-8)。タンパク質工学法のPHESELECTORは、システイン置換に最適なアミノ酸位置を選択するためのファージディスプレイライブラリーを用いる(Junutula等 (2008) Nat Biotechnol 26:925-32;Junutula 等(2008) J Immunol Methods 332:41-52;米国特許出願第2007/0092940号)。PHESELECTOR法を使用して、タンパク質安定性及び結合親和性が維持される一方、望まれないジスルフィド結合の形成が最小化され、最適なコンジュゲーション効率が得られる。この方法は、利用できるシステイン(チオMab)を含む修飾されたMabを製造するのに使用され、それから反応性チオール基を有するFab断片(チオFab)が簡便に産生される。
【0007】
18F]FBEM(Cai 等(2006) J Nucl Med 47:1172-80)、[18F]FBAM(Berndt等(2007) Nucl Med Biol 34:5-15)、[18F]FBABM(Li等(2008) Bioconjug Chem 19:1684-8;Toyokuni等(2003) Bioconjug Chem 14:1253-9)、[18F]FBOM(Wuest等(2009)Amino Acids 36:283-295)、[18F]FDG−MHO(Wuest等(2008)Bioconjug Chem 19:1202-10)、及び[18F]FPyMe(de Bruin等(2005)Bioconjug Chem 16:406-20)のようなマレイミド基を含む補欠分子族は、チオール担持タンパク質に18Fを部位特異的に導入するため使用されてきた。これらの標識用試薬[18F]FBEM、[18F]FBAM、[18F]FBABM、及び[18F]FBOMは、芳香族前駆体18F−フルオロベンズアルデヒド([18F]FBALD)がアミノオキシ担持マレイミド前駆体にカップリングされる共通のプラットフォームから開発されている。しかし、芳香族及び([18F]FBOMを除く)脂肪族部分の存在は、これら補欠分子族の親油性を高め、潜在的に親水性環境内に存在するタンパク質チオール基とのコンジュゲーション効率を潜在的に制限する。更に、これらの補欠分子族は長い合成時間を必要とし、典型的には18F標識タンパク質の比較的低い放射化学的収率をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
タンパク質中に18Fを効率的に導入することが可能な様々な水溶性補欠分子族の迅速な調製のためのモジュラープラットフォームが提供される。
本発明の一態様は、標識用試薬とタンパク質を反応させて標識されたタンパク質を形成することを含むタンパク質の標識方法を含む。標識用試薬には、

が含まれ、ここで、n及びmは独立して2から12の整数から選択される。
【0009】
本発明の一態様には、標識用試薬の作製方法が含まれる。
本発明の一態様には、


から選択される標識されたタンパク質が含まれる。
【0010】
本発明の一態様には、標識されたタンパク質と一又は複数の薬学的に許容可能な担体、流動促進剤、希釈剤、又は賦形剤を含有する薬学的組成物が含まれる。
【0011】
本発明の一態様には、標識されたタンパク質を動物に投与し、標識されたタンパク質の存在をイメージングによってインビボで検出することを含むイメージング方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[18F]FPEGMAを使用してFab断片を放射標識するための例示的な合成経路を示す。PEG=2−12エチルオキシ単位
【図2】[18F]FPEGMAを使用してFab断片を放射標識するための例示的な合成経路を示す。
【図3】中間体2及び4の合成を示す。試薬:i.NaH、臭化プロパルギル;ii.マレイミド、PPh、DIAD;iii.TsCl、ピリジン;iv.TBAHCO、[18F]フッ化物
【図4】[18F]FPEGMA5の合成及び[18F]FPEGMA−チオ4D5Fab6を得るためのチオFabの放射標識を示す。試薬:v.CuSO・HO、BPDS、アスコルビン酸ナトリウム;vi.リン酸緩衝液pH8
【図5】(a)コントロール動物(下段)と比較した17−AAG治療(上段)前(1日目)及び後(1日目)での動物の代表的なマイクロPET画像(腫瘍の冠状切片)を示す。(b)処置前後の腫瘍組織中での18F−4D5チオFabの取り込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(例示的な実施態様の詳細な説明)
本発明のある実施態様を詳細に参照するが、その例を添付の構造及び式で例証する。本発明を列挙する実施態様に関連して説明するが、それらは本発明をその実施態様に限定することを意図するものではないことは理解されよう。それどころか、本発明は特許請求の範囲によって定まる本発明の範囲に含まれうるあらゆる代替例、変形例、及び均等物を包含することが意図される。当業者であれば、本発明の実施において使用されうるここに記載のものと同様な又は均等な多くの方法及び材料が分かるであろう。本発明は記載された方法及び材料に決して限定されるものではない。
【0014】
特に別に定義しない限り、ここで使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有し、Singleton等, (1994)“Dictionary of Microbiology and Molecular Biology”, 2版, J. Wiley & Sons, New York, NY;及びJaneway, 等(2001) “Immunobiology”, 5版, Garland Publishing, New Yorkに従っている。商品名がここで使用される場合、本出願人は商品名の製剤、ジェネリック医薬品、及び商品名の製品の活性な薬学的成分を独立に含むものである。
【0015】
定義
他の記載がなければ、次の用語及び語句は次の意味を有するものである:
「タンパク質」は直鎖状に配置され、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル及びアミノ基間のペプチド結合によって互いに接合されたアミノ酸から構成される有機化合物である。タンパク質は生物学的な巨大分子であり、酵素及び抗体を含む。多くのタンパク質は代謝、細胞シグナル伝達、免疫反応、細胞接着、細胞周期作用に非常に重要であり、又は筋肉及び細胞骨格におけるように、構造的な又は機械的な機能を有している。例示的なタンパク質の機能的クラスには、抗体、非抗体代替結合タンパク質(Binz 等(2005) Nature Biotechnology 23(10):1257-1268;Skerra, A. (2007) Current Opin. in Biotech. 18:295-304)、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、又は増殖因子が含まれる。
【0016】
「抗体」は最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、二重作用Fabs、及び他の抗体断片を包含する。抗体はマウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来でありうる。抗体は特定の抗原を認識し結合することができる免疫系によって産生されるタンパク質である。(Janeway等 (2001) "Immunobiology", 5版, Garland Publishing, New York)。標的抗原は、一般に、複数の抗体のCDRによって認識されるエピトープとも呼ばれる数多くの結合部位を有している。異なったエピトープに特異的に結合する各抗体は異なった構造を有している。よって、一つの抗原は一を越える対応の抗体を有しうる。抗体は、また、完全長免疫グロブリン分子又は完全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、つまり、対象の標的の抗原又はその一部に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を含み、かかる標的は、限定しないが、癌細胞又は自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を産生する細胞を含む。腫瘍関連細胞表面抗原ポリペプチド、つまり腫瘍関連抗原(TAA)は、抗体ベース療法を介して破壊の目的で癌細胞を特異的にターゲティングすることを可能にする。ここに開示された免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブラスでありうる。免疫グロブリンは、如何なる種からも誘導されうる。しかし、一態様では、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、又はウサギ由来を含む任意の種から誘導されうる。
【0017】
本発明の方法に有用な治療用モノクローナル抗体には、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標), Genentech社, Carter 等(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA,89:4285-4289;米国特許第5725856号);抗CD20抗体、例えばキメラ抗CD20「C2B8」(米国特許第5736137号);リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、オクレリズマブ、2H7抗体(米国特許第5721108号;国際公開第04/056312号)又はトシツモマブ(ベキサール(登録商標))のキメラ化又はヒト化変異体;抗IL−8(St John等(1993)Chest, 103:932,及び国際公開第95/23865号);抗VEGF抗体、例えばヒト化及び/又は親和性成熟抗VEGF抗体、例えばヒト化抗VEGF抗体huA4.6.1ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),Genentech社, Kim等(1992)Growth Factors 7:53-64,国際公開第96/30046号、国際公開第98/45331号);抗PSCA抗体(国際公開第01/40309号);抗CD40抗体、例えばS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開第00/75348号);抗CD11a(米国特許第5622700号;国際公開第98/23761号;Steppe等(1991)Transplant Intl. 4:3-7;Hourmant等(1994) Transplantation58:377-380);抗IgE(Presta等(1993) J. Immunol. 151:2623-2632;国際公開第95/19181号);抗CD18(米国特許第5622700号;国際公開第97/26912号);抗IgE、例えばE25、E26及びE27(米国特許第5714338号;米国特許第5091313号;国際公開第93/04173号;米国特許第5714338号);抗Apo−2レセプター抗体(国際公開第98/51793号);抗TNF−α抗体、例えばcA2(レミケード(登録商標))、CDP571及びMAK−195(米国特許第5672347号;Lorenz等(1996)J. Immunol. 156(4):1646-1653;Dhainaut等(1995) Crit. Care Med. 23(9):1461-1469);抗組織因子(TF)(欧州特許0420937B1号);抗ヒトα4β7インテグリン(国際公開第98/06248号);抗EGFR、キメラ化又はヒト化225抗体(国際公開第96/40210号);抗CD3抗体、例えばOKT3(米国特許第4515893号);抗CD25又は抗tac抗体、例えばCHI−621シムレクト(登録商標)及びゼナパックス(登録商標)(米国特許第5693762号);抗CD4抗体、例えばcM−7412抗体(Choy等(1996)Arthritis Rheum 39(1):52-56);抗CD52抗体、例えばCAMPATH−1H(Riechmann等(1988) Nature 332:323-337);抗Fcレセプター抗体、例えばGraziano等(1995)J. Immunol. 155(10):4996-5002におけるようなFcガンマRIに対するM22抗体;抗癌胎児抗原(CEA)抗体、例えばhMN−14(Sharkey等(1995) Cancer Res. 55(23Suppl):5935s-5945s;乳房上皮細胞に対して検出される抗体、huBrE−3、hu−Mc3及びCHL6(Ceriani等(1995)Cancer Res. 55(23):5852s-5856s;and Richman等(1995)Cancer Res. 55(23 Supp)が含まれる:5916s-5920s);結腸癌細胞に結合する抗体、例えばC242(Litton等(1996) Eur J. Immunol.26(1):1-9);抗CD38抗体、例えばAT13/5(Ellis等(1995) J. Immunol. 155(2):925-937);抗CD33抗体、例えばHu M195(Jurcic等(1995)Cancer Res55(23 Suppl):5908s-5910s及びCMA−676又はCDP771;抗CD22抗体、例えばLL2又はLymphoCide(Juweid 等(1995) Cancer Res 55(23 Suppl):5899s-5907s); 抗EpCAM抗体、例えば17−1A(パノレックス(登録商標));抗GpIIb/IIIa抗体、例えばアブシキシマブ又はc7E3Fab(レオプロ(登録商標));抗RSV抗体、例えばMEDI−493(シナジス(登録商標));抗CMV抗体、例えばプロストビル(PROTOVIR)(登録商標);抗HIV抗体、例えばPRO542;抗肝炎抗体、例えば抗HepB抗体オスタビル(OSTAVIR)(登録商標);抗CA125抗体OvaRex;抗イディオタイプのGD3エピトープ抗体BEC2;抗αvβ3抗体ビタキサン(VITAXIN)(登録商標);抗ヒト腎細胞癌抗体、例えばch−G250;ING−1;抗ヒト17−1A抗体(3622W94);抗ヒト直腸結腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドに対する抗ヒトメラノーマ抗体R24;抗ヒト扁平細胞癌(SF−25);及び抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗HLADR抗体Oncolym(Lym−1)がある。
【0018】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般には、その抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ、線状抗体、Fab発現ライブラリーによって生産される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、ECD(細胞外ドメイン)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原、単鎖抗体分子に免疫特異的に結合する上記の何れかのエピトープ結合断片;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0019】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab’)2抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。抗体断片の他の化学結合もまた知られている。
【0020】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対してのものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対したものである。それらの特性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体で汚染されないで合成されうる点で有利である。「モノクローナル」との形容は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の性質を示し、抗体を何か特定の方法で生産することを必要としていると解されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等(1975) Nature 256:495に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得、あるいは組換えDNA法によって作製されうる(米国特許第4816567号を参照)。「モノクローナル抗体」は、また、例えばClackson等(1991) Nature, 352:624-628;Marks等(1991) J. Mol.biol.,222:581-597に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0021】
「システイン操作抗体」は、一又は複数の遊離システインアミノ酸を導入することにより野生型又は親抗体を操作した抗体である。「遊離システインアミノ酸」は、親抗体中に操作されたシステインアミノ酸残基であり、チオール官能基(−SH)を持ち、分子間又は分子内ジスルフィド架橋として対とならないか又は一部とならない。遊離アミノ酸は抗体の重鎖、軽鎖又はFc領域中にありうる。操作されたシステイン残基(「遊離システインチオール」)はチオール反応性標識用試薬と反応性である。システイン操作抗体はFAB抗体断片(チオFab)及び発現された完全長IgGモノクローナル(チオMab)抗体(米国特許出願公開第2007/0092940号;国際公開第2008/141044号、これらの内容は出典明示により援用される)を含む。チオFab及びチオMab抗体を、新たに導入されたシステインチオールにおいてチオール反応性リンカー試薬及び薬剤リンカー試薬とコンジュゲートさせ、抗体薬剤コンジュゲートを調製する。
【0022】
「PEG」は、エチレンオキシドのポリマーであるポリ(エチレングリコール)の断片を意味し、2又はそれ以上のエチレンオキシ単位(-CHCHO-)を含む。
【0023】
標識用試薬の合成
本発明は、18Fをタンパク質に効率的に導入することができる様々な水溶性補欠分子族の迅速な調製のためのモジュラープラットホームを含む(Gill等(2009)Jour. Med. Chem. 52(19):5816-5825)。このプラットホームの有用性は、2工程のワンポット合成で迅速に製造される標識用試薬[18F]FPEGMA5とチオール特異的補欠分子族とによって実証される(図1)。加えて、水溶解度とその結果の水性条件下でのタンパク質との[18F]FPEGMAのコンジュゲーション効率を促進させるために、ポリエチレングリコール(PEG)ベースの「構築ブロック」を使用した。[18F]FPEGMA5は4D5チオFabでの補欠分子族として評価され、得られたコンジュゲート(18F−4D5チオFab)は、Hsp90阻害剤によって調節されるヒト腫瘍異種移植マウスモデルでのHER2発現レベルの造影剤としてインビボで確認された(Smith-Jones等(2006) J Nucl Med 47:793-6;Smith-Jones等(2004)Nat Biotechnol 22:701-6)。
【0024】
例示的な実施態様[18F]FPEGMA5の有用性は、チオール特異的ブロモアセトアミド化合物[18F]FPEGBA、アミノ特異的N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)化合物[18F]FPEGNHS、アジド特異的化合物[18F]FPEG−プロパルギル、及びアルキン特異的化合物[18F]FPEGNを含む、考えられうる(図3)様々な18F標識された補欠分子族及び標識用試薬を実証している。例えばマイケル付加のアクセプターとしてのビニルスルホン、更なる硫黄アルキル化試薬としてのクロロ−及びヨードアセトアミドのような、他のチオール特異的官能性を18F標識された補欠分子族及び標識用試薬に利用しうる。リジン及びタンパク質の他のアミノ基を標識するためのアミノ特異的官能基は、テトラフルオロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、N−ヒドロキシサクシンイミド、及びスルホヒドロキシサクシンイミドのような様々な活性化カルボン酸エステルを含む。
【0025】
有用な合成手順は、しばしば「クリックケミストリー」とも称される1,3-双極子環化付加反応によりアジド及びアルキン中間体から標識用試薬を調製する銅(I)触媒アジド-アルキン環化付加反応(CuAAC)である。タンパク質のような生体分子に見出されるものを含む殆どの官能基へのCuAACの速やかな反応速度及び直交性は、生成物の1,2,3-トリアゾリル基を形成する高い収率と安定性を促進する。よって、CuAACは、アジド及びアルキン官能基を含むヘテロ二官能性前駆体をカップリングさせる強力な方法を提供する。
【0026】
クリックケミストリーは、その生物学的な標的に対して極めて高い親和性を示す、PETイメージング用トレーサーとしてのタンパク質にコンジュゲートする標識用試薬を設計する機会を提供する。クリックケミストリーは、図1、2及び4で例示される化学合成へのモジュラーアプローチである。クリックケミストリー技術は、例えばその全体が出典明示によりここに援用される次の文献に記載されている:Kolb 等(2001) Angew. Chem. Int. Ed. 40:2004-2021;Kolb 等(2003) Drug Discovery Today 8:1128-1137;Rostovtsev 等(2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596-2599;Tornoe 等(2002) Jour. of Org. Chem. 67:3057-3064;Wang 等(2003) Jour. of the Am. Chem. Soc. 125:3192-3193;Lee 等(2003) Jour. of the Am. Chem. Soc. 125:9588-9589;Lewis 等(2002) Angew. Chem., Int. Ed. 41:1053-1057;Manetsch 等(2004) Jour. of the Am. Chem. Soc. 126:12809-12818;Mocharla 等(2005) Angew. Chem. Int. Ed. 44:116-120;Whiting 等(2006) Angew. Chem. 118:1463-1467;Whiting 等(2006) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 45:1435-1439。
【0027】
一例は、銅触媒Cu(MeCN)PF(実施例5)を用いた2工程のワンポット合成(図1)で素早く製造されたマレイミド担持補欠分子族[18F]FPEGMA5である。CuSO、CuI、CuBr、CuOTf(米国特許第7375234号)を含む様々な他の銅触媒をトリアゾールの形成に用いることができる。銅触媒は水和又は溶媒和形態でありうる。使用される銅試薬は、アスコルビン酸ナトリウムのような還元試薬の存在下でのCu種、例えば銅ワイヤー、Cu塩、又はCuII塩でありうる。PEGが2から12のエチレンオキシ基(-CHCHO-)のポリエチレンオキシ単位である二官能性のアジド-トシレート中間体N-PEG-OTs、例えば、23-アジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコス-1-イルp-トルエンスルホネート3(実施例3)は、18Fアニオンでフッ素化され、23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4(実施例4)によって例示される放射化学中間体N-PEG-18Fを生成する。加えて、水溶解度と、その結果得られる水性条件下でのタンパク質との[18F]FPEGMA5のコンジュゲーション効率を促進するため、ポリエチレングリコール(PEG)をベースとする「構築ブロック」を使用した。[18F]FPEGMA5は4D5チオFabとの補欠分子族として評価し、得られたコンジュゲート(18F−4D5チオFab6)は、Hsp90阻害剤によって調節されるヒト腫瘍異種移植マウスモデル中におけるHER2発現レベルのイメージング剤としてインビボで実証された(Smith-Jones等(2006)J Nucl Med 47:793-6;Smith-Jones 等(2004) Nat Biotechnol 22:701-6)。
【0028】
18F]FPEGMAの合成に対しての考慮事項は、PEG鎖を持つ水溶性構築ブロックの使用、マイクロ波によって促進する加熱、CuAAC系を介した反応物質のカップリング、及び続く確認と共に4D5チオFabのようなタンパク質への[18F]FPEGMA5の部位特異的な反応の最適化を含む。親水性補欠分子族は4D5チオFab及び他の親水性タンパク質と優れたコンジュゲーション動態と効率をもたらす。従って、PEG鎖を持つ構築ブロックを、それらが18Fの求核性取込みに必要とされる有機溶媒中における溶解度を損なわずに水への溶解性を改善するので、研究した。本発明の補欠分子族は[18F]FBALDプラットフォームから得られた化合物より更に水溶性である。例えば、計測された[18F]5(−2.41±0.09)のlogPは、[18F]FBOMに対して報告された値から3単位で、[18F]FPEGMAから5単位を越える(Wuest等(2009)AminoAcids36:283-295)。4D5チオFab及びおそらく一般には親水性タンパク質へのコンジュゲートにおける水溶性補欠分子族の利点は、匹敵する条件下で[18F]FBAMと比較して[18F]5は優れたコンジュゲーション効率をもたらしたという知見により実証された。
【0029】
マイクロ波加熱は[18F]4の収率を改善し、一般的な加熱条件と比較して[18F]5の総合成時間を低減した。溶媒加熱の有意な促進が、3の18Fフッ素化、TBAHCO又はK222/KCO溶離液からの水の共沸除去、及び方法A及びBに対する[18F]のアルミナ処理後のアセトニトリルの蒸発中に観察された。一般の放射化学に使用されるマイクロ波加熱のそのような利点は一般的であろう。しかしながら、重要な警告は、高いマイクロ波電力(50W以上)又は温度(100℃以上)が使用される場合、共沸による水の除去の間に、K222/KCO分解が観察されたことである。従って、一般的な加熱条件と比較してそれに匹敵する蒸発時間と匹敵するかより優れた18Fフッ素化収率をもたらす穏やかなマイクロ波加熱条件が、K222/KCO溶離剤から水を共沸的に除去するために必要とされる。
【0030】
アジド及びアルキン担持前駆体試薬をカップリングし標的用試薬[18F]5を製造するのに使用されるCuAAC法は、観察された反応速度、転換効率、及び純度に基づいて選択した(実施例5)。方法Aで観察される[18F]5の低い純度は、20分の反応時間にわたる水性条件下におけるマレイミドベース化合物の不安定に起因する場合がある。CuAAC反応速度とタンパク質コンジュゲーションでの直交性を改善するための触媒として確立された2つの二座配位子BPDS及びTBTAを使用した(Lewis等(2004)J Am Chem Soc 126:9152-3;Rodionov等(2007)J Am Chem Soc 129:12705-12;Rodionov等(2007)J Am Chem Soc 129:12696-704)。BPDSを方法Aの反応系に加えたときに[18F]5に対して観察される純度の劇的な改善は、水性条件下での[18F]5の分解を制限する方法Bの短い反応時間から生じうる。これは、[18F]5の経時的な分解が方法Aと方法Bの間で一般に比較できたという知見によって補強される。方法A及びBにおいて、TBAHCOはK222/KCOよりも18F標識分解産物を有意に減少させたが、これは水性条件下における塩基性試薬に対するマレイミドの感受性に起因する。CuAACの前にアルミナ処理が含められた場合に観察された[18F]5の改善された純度は、生成物の塩基への感受性を更に示している。
【0031】
方法Bにおいて観察された反応時間及び純度の改善にもかかわらず、有機溶媒中で実施されたCuAAC反応は[18F]5の安定性を促進するであろう。これは方法Cの研究を促し、方法Cを無水アセトニトリル中で実施したが、そこでは[18F]5は安定であり、2,6−ルチジンのような塩基性試薬に耐えさえした。しかしながら、続く[18F]5の分解を防ぐために、CuAAC反応を、0.01%のトリフルオロ酢酸を含む水でクエンチした。この例では、方法Cは方法Aに比べて有意に高い純度と、方法Bに匹敵する純度をもたらす。更に、[18F]FPEGNHSのようなより水性の不安定な補欠分子族では、方法Cは方法A及びBに比べて有意に高い純度をもたらした。
【0032】
方法B及びCでは匹敵する収率が[18F]4又は[18F]FPEGを使用して得られた。[18F]FPEGに対して観察された限られた水溶解性は方法Cを区別した。加えて、方法Cは18Fフッ素化及びCuAAC反応工程の間にアルミナ処理を必要としない。従って、方法Cは、様々な18Fで標識された補欠分子族の製造のための一貫した放射化学プロセスの開発を容易にする一般的な放射化学用途によく適応しうる。これは自動化に対して強い意味を持ち得、[18F]SFBでの場合のように、特定の補欠分子族に対して合成モジュールをとっておく必要性を排除しうる。
【0033】
方法Cの緻密化は[18F]5の最適化及び4D5チオFabの検証の後になされたので、方法Bを主として[18F]5の生産のために用いた。しかしながら、方法Cでは、方法Bに匹敵する収率で[18F]5と18F−4D5チオFabを提供することが確認された。よって、方法B及びCは共に[18F]5を用いた18F標識タンパク質の調製に有用であり、他の放射性核種を使用する広範囲の放射化学の用途に適している場合がある。
【0034】
CuAAC反応の直交性は共通の反応プラットフォームからの様々な18F標識された補欠分子族の開発を容易にする。官能基選択性及び中間体鎖構造のような特定の性質を改変することによって、幾つかの補欠分子族はタンパク質及び潜在的にはペプチド中に18Fを導入することが可能である(図5)。[18F]5に加えて、方法Cを用いて、商業的に入手可能な前駆体N-PEG-NHSからアミノ特異的補欠分子族[18F]FPEGNHS13を4D5チオFabにコンジュゲートした。安定性を確保し、[18F]FPEGNHSの収率を促進することに加えて、本発明の標識は、ランダムなアミノ特異的修飾の免疫反応特性の減少を制限しうる。例えば、タンパク質結合部位内の[18F]FPEGNHSの立体障害は、より小さい中間体鎖を持つ構築ブロックを使用することによって減少されうる。従って、[18F]FPEGNHSは、アミノ特異的コンジュゲーションを実施するための[18F]SFBの代替である。更に、チオール特異的ブロモアセトアミドアナログ[18F]FPEGBAは、方法Bを使用するタンパク質の標識に有用である。
【0035】
チオール特異的ブロモアセトアミド化合物[18F]FPEGBA、アミノ特異的N−ヒドロキシサクシニミド(NHS)化合物[18F]FPEGNHS、アジド特異的化合物[18F]FPEG−プロパルギル、及びアルキン特異的化合物[18F]FPEGNを含む様々な18F標識された補欠分子族が利用可能である。
【0036】
詳細な合成プロトコル及び分析データは実施例に提示される。図3及び実施例は、18F標識された補欠分子族の製造に一般的に有用である標識用中間体TsO−PEG−N3、TsO−PEG−N7、及びTsO−PEG−N8、及び[18F]5([18F]FPEGMA)の合成に特異的な前駆物質プロパルギル−PEG−マレイミド2の調製の概要を示す。化合物3は商業的に入手できるピリジン中のHO-PEG-N及び塩化トシルから25%の収率で合成した。化合物7及び8は、DMF中で等量モルのNaN及び適切なPEG-ジトシレートを110℃に加熱することによって、それぞれ収率30%及び19%で合成した。ヘキサエチレングリコールからの2の合成は2つの工程が必要とした;ウィリアムソンエーテル合成を、等量モルのNaH及び臭化プロパルギルを使用して用い、54%の収率のプロパルギル-PEG-OH1を得、過剰のマレイミドとのPPh/DIAD媒介光延反応によって25%の収率で2を得た。
【0037】
アジド試薬N-(20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコシル)-2-ブロモアセトアミド9及びN-(20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコシル)-2-ヨードアセトアミド9aは、20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコサン-1-アミン(NH−PEG−N)から調製した。9及び9aのブロモアセチル及びヨードアセチル基は各々システインチオール基のようなタンパク質の所定の求核性官能基と反応性であり、アジドタンパク質中間体を形成する。アジドタンパク質中間体は、式:

(上式中、nは2から12の整数である)
を持つ18F−PEG−アルキン試薬と、銅触媒の存在下で反応し、標識されたタンパク質を形成しうる。
【0038】
マイクロ波促進求核性18Fフッ素付加。 テトラブチルアンモニウム炭酸水素塩(TBAHCO)を[18F]FPEG、[18F]FPEG、及び[18F]FPEG([18F]4)の求核性フッ素付加のための相間移動触媒としてKryptofix222及びKCO(K222/KCO)に対して選択した。TBAHCOはK222/KCOと比較して高い熱安定性を示したので、高温でのマイクロ波加熱で水の供沸除去を5分以内促進した。加えて、マイクロ波加熱は、アセトニトリル中の[18F]4に対して3分の高い18Fフッ素付加効率(89.0±1.4%、n=5)をもたらし、収率は[18F]FPEGNに対して観察されたものに匹敵した。しかしながら、フッ素付加及び蒸発加熱工程において使用された温度での化合物の揮発性のために、[18F]FPEGの収率の僅かな減少が見られたが、再封可能な反応容器の蓋を使用することにより解消される問題である。
【0039】
18F]5の調製。 3つの触媒系を、CuAAC反応(表1)を用いて[18F]4及び2のコンジュゲーションに対して評価した。Cuの供給源としてCuSO・5HO及びアスコルビン酸ナトリウム(Glaser等(2007)Bioconjug Chem 18:989-93)を用いる方法A(実施例5)は、79.3%の転換効率及び65.7%の純度で所望の生成物を20分で生じせしめた。観察された長い反応時間及び限られた純度は、CuAAC反応を加速することのできるリガンドの研究を促した。方法Bは、Cuリガンド、バソフェナントロリンジスルホネート(BPDS)を方法Aに加え、これが反応時間を1分まで劇的に減らし、転換効率を96.5%まで増加させ、純度を88.7%まで改善した。方法A及びBでは、[18F]4の合成をK222/KCOと比較してTBAHCOによって触媒し、また[18F]4をCuAAC反応前にアルミナNライトカートリッジで精製した場合に18F標識された分解産物の形成が減少した。
【0040】
方法Cは、例えばCuの供給源としてCu(MeCN)PF、Cuリガンドとしてトリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾ-ル-4-イル)メチル]アミン(TBTA)、塩基触媒として2,6-ルチジン(Lewis等(2004)J.Am.Chem.Soc.126:9152-9153;Chan等(2004)Org.Lett.6:2853-2855)のようなアセトニトリル互換性試薬を用いる。方法Cを使用して、反応時間(5分未満)、18F標識された分解産物の形成(10%)、及び転換効率(100%)は方法Bに匹敵していた。更に、CuAAC反応前の[18F]4のアルミナ精製は[18F]5の純度に影響せず、結果として、方法Cには含まれなかった。
【0041】
SPE処理後、方法Bは、[18F]5を、59±4%の収率、94%の放射化学純度、47±1分(n=5)における5.1±1.5Ci/mmolの比活性(19F標識された5のHPLC標準曲線に対して決定)でもたらした。19F標識された標準とのHPLC共溶出と分解産物のLC/MS分析によって、[18F]5の同一性を確認した。[18F]5の親油性(logP)(−2.41±0.09)は、発表された方法(Rodionov等(2007) J Am Chem Soc 129:12705-12)に一致してpH7.4で測定した。
【0042】

【0043】
標識されたタンパク質の合成
ペプチド標識法はよく知られている。Haugland, 2003, Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Molecular Probes, Inc.;Brinkley, 1992, Bioconjugate Chem. 3:2;Garman, (1997) Non-Radioactive Labelling: A Practical Approach, Academic Press, London; Means (1990) Bioconjugate Chem. 1:2;Glazer 等(1975) Chemical Modification of Proteins. Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology (T. S. Work及びE. Work編) American Elsevier Publishing Co., New York;Lundblad, R. L.及びNoyes, C. M. (1984) Chemical Reagents for Protein Modification, Vols. I and II, CRC Press, New York;Pfleiderer, G. (1985) “Chemical Modification of Proteins”, Modern Methods in Protein Chemistry, H. Tschesche, Ed., Walter DeGryter, Berlin and New York;及びWong (1991) Chemistry of Protein Conjugation and Cross-linking, CRC Press, Boca Raton, Fla.);De Leon-Rodriguez 等(2004) Chem.Eur. J. 10:1149-1155;Lewis 等(2001) Bioconjugate Chem. 12:320-324;Li 等(2002) Bioconjugate Chem. 13:110-115;Mier 等(2005) Bioconjugate Chem. 16:240-237を参照のこと。
【0044】
記述された方法は迅速で効率的であり、18F放射標識されたタンパク質(18F−4D5TチオFab)を82分で総収率が11±3%及び比活性2.0±0.2Ci/μmolで生じせしめる(Gill等(2009)Jour. Med. Chem. 52(19):5816-5825)。18F−4D5チオFabは天然タンパク質の生物学的活性を保持し、Hsp90阻害剤17−AAGによって調節される異種移植腫瘍担持マウスモデル中のHER2発現のマイクロPETイメージングでインビボで成功裏に確認した。[18F]5及び4D5チオFabのコンジュゲーション効率を、タンパク質濃度、pH、及び時間の関数として試験した(表2)。タンパク質濃度及びpHが増加するにつれて、減少したコンジュゲーション時間と増加した効率が観察された。[18F]5の分解又は4D5チオFabの凝集における有意な増加はpH6.5に対してpH8では観察されなかった。
【0045】
本発明のタンパク質は、野生型又は親抗体の何れかの形の一又は複数のアミノ酸がシステインアミノ酸で置換されたシステイン操作抗体を含む。操作システインアミノ酸は遊離システイン酸であり、分子内又は分子間ジスルフィド単位の一部ではない。抗体の何れかの形態はそのように操作されうる、つまり変異される。例えば、親Fab抗体断片は、「チオFab」とここでは称されるシステイン操作Fabを形成するよう操作されうる。同様に、親モノクローナル抗体は「チオMab」を形成するように操作されうる。単一部位の変異がチオFabにおいて単一操作システイン残基を生じせしめる一方、IgG抗体の二量体という性質から、単一部位の変異はチオMabにおいて2個の操作システイン残基を生じせしめることに留意されなければならない。本発明のシステイン操作抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化又はキメラモノクローナル抗体、抗体の抗原結合断片、融合ポリペプチド及び細胞関連ポリペプチドに優先的に結合するアナログを含む。システイン操作抗体は、その野生型の親抗体対応物の抗原結合能を保持している。
【0046】
18F−チオFabの精製を、NAP−5脱塩カラム及びBio−Sep S−2000SEC−HPLCカラム(システムD)で実施した。NAP−5法は、特に低コンジュゲーション効率での反応に対して、4D5チオFabとの未コンジュゲート[18F]5の有意な共溶出をもたらした。Bio−Sep S−2000 SEC−HPLCにより18F−4D5チオFabを18F標識された凝集物及び[18F]5(及び18F標識された分解産物)から分離した。精製された最終精製物18F−4D5チオFabをHPLCシステムA、システムC及びTOF LC/MSで分析した。最適化されたコンジュゲーション法は、18F−4D5チオFabを、26±7%の収率、90%以上の放射化学純度、及び2.0±0.2Ci/μmol(n=5)の比活性で得た。総合成時間は合成開始から82±4分であり、総崩壊補正収率は11±3%であった。

【0047】
18F]FPEGMAの合成に対する前駆体であることに加えて(図1)、[18F]FPEG−プロパルギル及び[18F]FPEGNはCuAAC反応を介して直接タンパク質にコンジュゲートされうる(図2)。このアプローチ法は、18F標識されたタンパク質の合成を2つの放射化学の工程まで低減させ、部位特異的コンジュゲーションを実施する代替法を提供する。プロパルギル−PEG−マレイミド(2)のチオFabへの事前コンジュゲーションの後にBPDS/Cu(MeCN)OTf系(3:1,3mM BPDS)を使用する[18F]4及びプロパルギル−PEG−チオFab間の直接のCuAACを続け、15%までのコンジュゲーション効率が観察された。同様の方法を用いて、[18F]FPEG−プロパルギルをアジド−PEG修飾された架橋デキストラン酸化鉄(CLIO)ナノ粒子にカップリングさせ、多数のアジド部位が存在する結果として高いコンジュゲーション効率となった(Devaraj等(2009)"18F Labeled Nanoparticles for in Vivo PET-CT Imaging" Bioconjug Chem 10.1021/bc8004649)。[18F]4が安定であり、複数のアジド又はアルキン基を、交差反応性を潜在的に欠くタンパク質上に選択的に位置させうるため、この技術は、高比活性の18F標識されたタンパク質をもたらしうる。しかしながら、アスコルビン酸の存在下ではCuIIがタンパク質を分解させる傾向があるため(Devaraj等(2009)"18F Labeled Nanoparticles for in Vivo PET-CT Imaging"Bioconjug Chem 10.1021/bc8004649)、この方法は、酸素の厳格な除去、還元剤の使用、又はタンパク質切断を制限するためBPDSのようなCu安定化リガンドの使用を必要とする。最後に、[18F]FPEG−プロパルギル及び[18F]FPEGNは、18F標識されたペプチド開発のための18F標識された補欠分子族である。実際、プロパルギル担持補欠分子族[18F]FPy5yne(Inkster等(2008) Journal of Labelled compounds and Radiopharmaceuticals 51:444-452)は、最近、方法Cに類似したアジド修飾ペプチドを用いて評価されている。
【0048】
18F]5の4D5チオFabへの部位特異的コンジュゲーションは反応速度及び反応物安定性に対して最適化された。pH及びタンパク質濃度が増加するにつれて一般に減少するチオール担持タンパク質の安定性に関しては、表2を作成するために使用されたpH(6.5−8)及びタンパク質濃度(1−2mg/mL)の範囲にわたる4D5チオFabの二量体化及び凝集の増加は観察されなかった。しかしながら、チオール担持タンパク質の望まれないジスルフィド結合の形成はチオール基の接近性に依存するようである。4D5チオFabでは、最適なシステイン置換位置を選択するPHESELECTOR法は、長い時間にわたる高いpH及びタンパク質濃度の使用を可能にするチオール安定性を促進しうる。コンジュゲーション反応の間の[18F]5の安定性がpHに依存しないことが表2で試験された範囲にわたって観察され、これは、HPLCカラム又はSPEカートリッジから析出したシリカのような外部反応物質がコンジュゲーション反応系に入り、濃度依存的な形で[18F]5を分解させうることを意味している。従って、ガラス製品を洗浄し、適切な溶媒、HPLCカラム、及びSPEカートリッジを選択する場合には、十分な注意がなされなければならない。4D5チオFab及び[18F]5安定性の観察されたpH非依存性を考慮し、[18F]5の完全な分解が生じる前に高いコンジュゲーション効率を促進するために塩基性反応条件(pH8)が選択された。
【0049】
18F]FPEGMA5の安定性は、コンジュゲーション効率及び比活性に有意な影響を有している。[18F]5の4D5チオFabへのコンジュゲーション効率は、(各チオFabが一つの接近可能なチオール基を有しているので)4D5チオFabの全量に対するインタクトな5(18F及び19Fで標識された)の全量に依存する。インタクトな5の全量は、[18F]5の全活性、比活性、及び画分分解から計算される。例えば、さしあたりは[18F]5の分解がないと仮定すると、[18F]5に対する5Ci/mmol及び200mCiの報告された値は40nmolの全5を与える。従って、40nmolのチオール基(約2mgの4D5チオFab)が最大コンジュゲーション効率を得るために必要とされる;しかしながら、常套的な生産では1mgの4D5チオFabが使用されているため、予想されるコンジュゲーション効率は約50%である。26.7%の観察されたコンジュゲーション効率は、全4D5チオFabのうち約半分のみがコンジュゲートしたことを示しており、これは崩壊した18F−4D5チオFabの質量分析によって得られる未変性及びコンジュゲートされたピークの積分によって一般に確認される。予想されるコンジュゲーション効率から観察された偏差は、チオFabとのコンジュゲーションの間の制限試薬として使用される、[18F]5の分解の結果である。コンジュゲーション効率と比活性の更なる改善は、より高いタンパク質濃度、又はより安定なマレイミド構築ブロックの使用から達成しうる。
【0050】
18F標識されたタンパク質のイメージング
本発明の標識されたシステイン操作抗体は、例えば(i)MRI(磁気共鳴画像);(ii)マイクロCT(コンピュータ断層撮影);(iii)SPECT(単一光子放射型コンピュータ断層撮影法);(iv)PET(ポジトロン放出断層撮影) Chen等(2004) Bioconjugate Chem. 15:41-49;(v)バイオルミネセンス;(vi)蛍光;及び(vii)超音波のような生物医学的及び分子イメージングの様々な方法及び技術によって、イメージング生物マーカー及びプローブとして有用である。免疫シンチグラフィーは放射性物質で標識された抗体を動物又はヒト患者に投与し、抗体が局在化している身体の部位の写真を撮るイメージング方法である(米国特許第6528624号)。イメージングバイオマーカーは客観的に測定され、通常の生物学的過程、病原性過程又は治療的介入への薬理学的応答の指標として評価されうる。バイオマーカーは幾つかのタイプでありうる:タイプ0は疾患の天然の履歴マーカーであり、既知の疾患の指標、例えば関節リウマチにおける関節滑膜炎症のMRI評価と長期的に相関する;タイプIマーカーは、機序が臨床結果とは関係していない場合があるとしても、作用機序に従って介入の影響を捕らえる;タイプIIマーカーは、バイオマーカーの変化又はそれからのシグナルが、CTにより関節リウマチにおいて測定された骨びらんのような、標的応答を「確証する」臨床的恩恵を予測する代替エンドポイントとして機能する。よって、イメージングバイオマーカーは、(i)標的タンパク質の発現、(ii)治療薬の標的タンパク質への結合、つまり選択性、及び(iii)クリアランス及び半減期の薬物動態学的データについての薬物動力学(PD)的な治療上の情報を提供しうる。研究室ベースのバイオマーカーに対するインビボイメージングバイオマーカーの利点は、非侵襲的処置、数量化可能な、全身のアセスメント、反復投薬及びアセスメント、つまり複数時点、及び前臨床(小動物)から臨床(ヒト)結果への潜在的に伝達可能な効果を含む。幾つかの用途では、バイオイメージングは、前臨床研究における動物実験に取って代わり又はその数を最小にする。
【0051】
Hsp90標的治療法及びマイクロPETイメージング。マウスを17−AAG処置の一日前に18F−4D5チオFabによって決定した腫瘍取込み及び体積に従って2つの群に分けた(n=4)(Gill 等(2009) Jour. Med. Chem. 52(19):5816-5825)。17−AAGを0日目に処置群に投与した一方、コントロール群の動物は未処置のままにした。18F−4D5チオFabでのPETイメージングを1日目(最後の17−AAGの投与から14時間後)、5日目、及び7日目に実施した。治療1日前と治療1日後のコントロール動物と17−AAG処置動物の腫瘍の冠状切片を図5aに示す。コントロール及び1週間の期間にわたる治療群における平均腫瘍取込みを図5bに示し、選択組織と分泌臓器における取込みを表3に列挙する。1日目のPETイメージングは、コントロール群及び−1日目(P=0.00025)に計測された取込みと比較して、50%の腫瘍取込みの減少(P=0.00046)を示した(表3)。18F−4D5チオFabの腎クリアランスは、膀胱における有意な放射活性の蓄積及び腎皮質における高い取込みで優勢であった。肝胆道経路はまた大腸及び胆嚢での放射活性代謝物の蓄積に至るトレーサーの排出に寄与する一方、肝臓における放射活性の保持は比較的低かった。体重及び腫瘍サイズはイメージングの7日間、変化しなかった。
【0052】

【0053】
18F]5から得た18F−4D5チオFabに対して観察される高い比活性は、4D5チオFabの総注射量を減少させることができ、これは特に低い細胞表面レセプター発現レベルの細胞に対するレセプター飽和及び標的取込みには重要であることが分かる。しかしながら、以下に検討される17−AAG調節の研究に対しては、腫瘍取込みは4D5チオFabの総投与量(30−120mg/動物)に依存しない。18F−4D5チオFabの用量依存的な腫瘍取込みは、適用される投与量でのレセプター飽和の潜在性を制限するBT474M1細胞株のHER2発現レベルが高いことが原因でありうる。
【0054】
4D5チオFabに対する[18F]5のコンジュゲーションの最適化後、得られた18F−4D5チオFabの生物学的な活性をスキャッチャード分析によって確認し、天然の4D5チオFabに比してコンジュゲートの親和性に有意な変化が観察されなかった。更に、PHESELECTOR法によって設計され、チオール-タンパク質のモデルとして用いられる4D5チオFabは、親4D5Fabの親和性(K=0.1nM)を保持していた。更なる生物学的な確証には、HSP90阻害剤17−AAGによって調節されるマウスモデルにおけるHER2過剰発現腫瘍異種移植の治療応答研究を含めた。
【0055】
HER2は膜貫通型レセプターの上皮由来増殖因子ファミリーのレセプターチロシンキナーゼであり、乳癌治療薬の開発のための重要な標的である。17−AAGは、HER2を含む広範囲の腫瘍性タンパク質の正確な折り畳み、安定性及び機能の原因である分子シャペロンHsp90を標的とする。HER2陽性腫瘍での17−AAGの影響は記載されている(Solit等(2002) Clin Cancer Res 8:986-93)。68Ga−DOTAコンジュゲートトラスツズマブ−F(ab’)68Ga−DCHF)での乳癌異種移植(BT474)マウスモデル中のHER2発現レベルに対する17−AAGの影響が研究されている(Smith-Jones等(2006)J Nucl Med 47:793-6;Smith-Jones 等(2004)Nat Biotechnol 22:701-6)。5日継続するHER2レベルの70%減少が観察され、12日後に処置前レベルに戻ったが、これは、68Ga−DCHFが18FDG PETより先に17−AAG処置に対する腫瘍応答をモニタリングできることを示唆している。しかしながら、68Gaの短い半減期(68分)は、F(ab)’の比較的長い血漿半減期とは理想的にはマッチせず、有意なシグナルの減少がPET取得前に必要とされる3時間内に本来的なものである。18Fとの組み合わせでの一価Fab断片の比較的短い血漿半減期(110分)は改善されたイメージング特性をもたらしうる(Williams等(2001)Cancer Biother Radiopharm 16:25-35)。
【0056】
HER2発現の観察された減少(図5)は、F(ab’)ベースのイメージング剤でのSmith−Jonesによって観察されたものに広くは匹敵していた。68Ga−DCHFを用いるSmith−Jones等によって観察された減少(70%)と比較して、17−AAG治療の1日後の18F−4D5チオFab腫瘍取込みにおける低い減少(50%)は、幾つかの原因に起因している。18F−4D5チオFabの速い腎排出は改善された腫瘍集積比をもたらすが、一価Fab断片は二価F(ab’)と比較して低いベースライン腫瘍取込みである。図5a(右側上段)に示されるトレーサーの非特異的取込み及び血管分布から生じる、Fab及びF(ab’)に対して類似した処置後の腫瘍取込みを仮定すると、トレーサー取込みの割合の差は、処置前の低い大きさのシグナルで化合物に対してバイアスされうる。これは、17−AAG治療後(1日目)の平均腫瘍取込み0.65±0.09%ID/gが表3に示されるように皮膚取込み0.50±0.05%ID/gにほぼ匹敵していたという観察によって補強される。加えて、17−AGGは水への溶解度が限られているため、製剤(超音波処理により調製される卵リン脂質ベースリポソームのエマルジョンからなる)は報告された作用強度を再現しない場合がある。これは実験でのHER2発現のリバウンドの早さを説明しうる(5日目で100%)。17−AAG処置後のシグナルの減少の大きさは以前観察されたものより僅かに少なかったが(Smith-Jones等(2006)J Nucl Med 47:793-6;Smith-Jones等(2004)Nat Biotechnol 22:701-6)、18F−4D5チオFab(図5)で得られた画像の質は68Ga−DCHFと比較して優れていた。Fab断片の速い腎排出及びその結果の腫瘍集積比の向上は、F(ab’)断片に比して腫瘍取込みの絶対的大きさの減少に打ち勝つ。これは、68Ga−DCHFでのイメージング前にほぼ3半減期より多いシグナルを与えたトレーサー投与後に、僅か2時間か又は約1半減期だけ、データの取得を容易にした。
【0057】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物又は製剤は、本発明の標識されたタンパク質、及び一又は複数の薬学的に許容可能な担体、流動促進剤、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0058】
薬学的組成物はバルク組成物と任意の薬学的に不活性な賦形剤、希釈剤、担体又は流動促進剤と共に標識されたタンパク質を含む一を越える(例えば2)薬学的に活性な薬剤からなる個々の投薬単位の両方を包含する。バルク組成物及びそれぞれ個々の投薬単位は、固定量の前述の薬学的に活性な役剤を含み得る。バルク組成物は個々の投薬単位に未だ形成されていない物質である。例示的な投薬単位は、錠剤、丸薬、カプセル等の経口投薬単位である。同様に、薬学的組成物を患者へ投与する方法は、バルク組成物及び個々の投薬単位の投与を包含することがまた意図される。
【0059】
薬学的組成物は、また、ここに記載されたものと同一であるが、一又は複数の原子が天然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換される本発明の同位体標識された化合物をまた包含する。特定された任意の特定の原子又は元素の全ての同位体が本発明の化合物、及びその用途の範囲にあると考えられる。本発明の化合物に導入することができる例示的な同位体は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123I及び125Iを含む。ある種の同位体標識された本発明の化合物(例えばH及び14Cで標識されたもの)は化合物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム標識(H)及び炭素−14(14C)同位体は、その調製及び検出性の容易性のために有用である。更に、重水素(H)のようなより重い同位体との置換は、より大なる代謝安定性から生じる所定の診断上の利点(例えば、増加したインビボ半減期又は減少した投薬必要量)をもたらし得、よってある状況下では好ましい場合がある。陽電子放出同位体、例えば15O、13N、11C及び18Fは、基質レセプター占有率を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)研究に有用である。同位体標識された本発明の化合物は、一般に、非同位体標識試薬を同位体標識試薬に置換することによって、ここでの実施例に開示されたものと同様の手順に従って調製することができる。
【0060】
適切な担体、希釈剤、及び賦形剤は、当業者によく知られており、炭水化物、ロウ、水溶性及び/又は膨張性ポリマー、親水性又は疎水性物質、ゼラチン、油、溶媒、水等の物質を含む。使用される特定の担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段及び目的に依存するであろう。溶媒は、一般的には、哺乳類に投与した際に安全(GRAS)であるように、当業者に認識されている溶媒に基づき選択される。一般的に、安全な溶媒は非毒性の水性溶媒、例えば水、及び水に溶解又は混和する非毒性の他の溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモホール(例えばCREMOPHOR EL(登録商標),BASF)及びその混合物が含まれる。また製剤は、一又は複数のバッファー、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、滑剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色料、甘味料、香料、フレーバー、及び薬物(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)を見栄え良く提供するための又は薬学的製品(すなわち、医薬)の製造を補助する他の既知の添加剤を含みうる。
【0061】
製剤は、常套的な溶解及び混合手順を使用して調製することができる。例えば、バルク薬剤物質(すなわち、本発明の化合物又は本化合物の安定化形態(例えばシクロデキストリン誘導体又は他の既知の錯化剤との複合体)を、上述した一又は複数の賦形剤の存在下で適切な溶媒に溶解させる。本発明の化合物は、典型的には薬学的投与形態に処方されることで、薬剤の投与量の制御、及び処方レジメンへの患者の薬剤服用順守が容易になる。
【0062】
適用される製薬用組成物(又は製剤)は、薬剤の投与に使用される方法に応じて、多様な方法で包装することができる。一般的に、流通用の物品は、適切な形態の製薬用製剤をそこに付与する容器を含む。適切な容器は当業者によく知られており、ビン(プラスチック又はガラス)、小袋、アンプル、プラスチック袋、金属製シリンダー等の材料が含まれる。また容器は、包装の内容物への軽率な接近を防止するための、不正開封防止が施されたアセンブリを含みうる。また、容器には、容器の内容物を記載するラベルが、そこに付与されている。またラベルは適切な警告を含むこともできる。
【0063】
本発明の化合物の薬学的製剤は、様々な投与経路及びタイプに対して調製されうる。例えば、所望の純度を有する標識されたタンパク質は、凍結乾燥された製剤、粉砕パウダー、又は水溶液において、場合によっては、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、賦形剤又は安定剤と混合されうる(Remington's Pharmaceutical Sciences (1995) 18版, Mack Publ. Co., Easton, PA)。製剤化は、周囲温度、適切なpH、及び所望の純度にて、生理的に許容可能な担体、すなわち使用される用量及び濃度でレシピエントに非毒性である担体と混合することにより、実施されうる。製剤のpHは、主として、化合物の特定の使用及び濃度に依存するが、約3から約8の範囲とすることができる。薬学的な製剤は滅菌されていることが好ましい。特に、インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。このような滅菌は、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。薬学的な製剤は通常、固体組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存することができる。
【0064】
本発明の薬学的な製剤は、良好な医療行為と一致した様式によって、すなわち、量、濃度、スケジュール、過程、ビヒクル及び投与経路で、用量決定され、投与されるであろう。この文脈で考慮される要因には、診断され又は処置されている特定の疾患、処置される特定の哺乳動物、患者個人の臨床状態、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医者に知られている他の要因が含まれる。投与される化合物の「薬学的に有効な量」は、このような考慮により支配され、疾患を診断し、予防し、寛解し、又は処置するのに必要な最小量である。
【0065】
一用量当たりに経口的に又は非経口的に投与される標識されたタンパク質の初期の薬学的に有効な量は、約0.01〜1000mg/kg、つまり一日当たり約0.1から20mg/kg患者体重の範囲であり、使用される化合物の典型的な初期の範囲は、0.3から15mg/kg/日である。標識されたタンパク質の投与量及び投与される化学療法剤の投与量は単位投与形態当たり各々約1mgから約1000mgの範囲でありうる。標識されたタンパク質及び化学療法剤の投与量は重量比が約1:50から約50:1、又は重量比が約1:10から10:1で投与されうる。
【0066】
許容できる希釈剤、担体、賦形剤及び安定剤は、用いられる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(商標)、CREMOPHOR EL(登録商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、活性な薬学的成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセルに、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に封入されうる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 第18版, (1995) Mack Publ. Co., Easton, PAに開示されている。
【0067】
薬学的製剤はここに詳細に記載する投与経路に適したものを含む。製剤は簡便には単位投薬形態で提供され得、薬学の分野でよく知られている方法の何れかによって調製することができる。技術及び製剤は一般にRemington's Pharmaceutical Sciences 18版(1995) Mack Publishing Co., Easton, PAに見出される。かかる方法は、活性成分を、一又は複数の補助成分を構成する担体と混合する工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液状担体又は細かに分断された固形担体又はその双方と均一かつ密に混合し、ついで必要ならば生成物を成形することにより、調製される。
【0068】
薬学的組成物は滅菌された注射用調製物の形態、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液でありうる。この懸濁液は、上に述べた適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、知られた技術に従って製剤化することができる。滅菌された注射用調製物はまた1,3-ブタンジオール溶液又は凍結乾燥粉末として調製したもののように、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の溶液又は懸濁液でありうる。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌固定化油を溶媒又は懸濁媒質として常套的に用いることができる。この目的に対して、合成のモノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定化油を用いることができる。また、オレイン酸のような脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。
【0069】
単一投薬形態をつくるために担体物質と組み合わされうる活性成分の量は宿主と特定の投与態様に応じて変わる。例えば、静脈注入を意図した水溶液は、約30mL/時の割合で適した量の注入が生じうるようにするために溶液1ミリリットル当たり約3から500μgの活性成分を含みうる。
【0070】
非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、バッファー、静菌剤及び意図したレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含みうる水性及び非水性滅菌注射用溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。
【0071】
製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用の滅菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即時混合注射溶液及び懸濁液は既に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好適な単位投薬製剤は、活性成分の、上に記載されたような毎日の投薬又は毎日の部分用量単位、又はその適切な画分を含むものである。
【0072】
標識されたタンパク質の代謝産物
この発明の範囲にまた入るものはここに記載される標識されたタンパク質のインビボでの代謝産物である。そのような産物は、例えば投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素分解等々から生じうる。従って、本発明は、本発明の化合物を、その代謝産物を生じるのに十分な時間、哺乳動物に接触させることを含む方法によって産生される化合物を含む標識されたタンパク質の代謝産物を含む。代謝産物の構造は常套的な方法、例えばMS、LC/MS又はNMR分析によって決定されうる。一般に、代謝産物の分析は当業者によく知られた一般的な薬剤代謝研究と同じ方法でなされる。代謝産物は、それらがインビボで見出される等がない限り、本発明の化合物の治療用投薬の診断アッセイにおいて有用である。
【0073】
製造品
本発明の他の実施態様では、疾患及び障害の診断に有用な標識されたタンパク質を含む製造品、又は「キット」が提供される。一実施態様では、キットは標識されたタンパク質を含む容器を含む。該キットは容器上に又は容器に付随してラベル又はパッケージ挿入物を更に含みうる。「パッケージ挿入物」なる用語は、診断製品の商業的パッケージに常套的に含まれる説明書であって、用法、用量、投与法、禁忌及び/又はこのような治療製品の使用に関する警告についての情報を含むものを指すために使用される。適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、標識されたタンパク質又はその製剤を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも一種の活性剤は標識されたタンパク質である。一実施態様では、ラベル又はパッケージ挿入物は異常な細胞増殖に起因する疾患の診断に使用可能な標識されたタンパク質を含む。ラベル又はパッケージ挿入物はまた組成物が他の疾患を治療するのに使用できること示しうる。あるいは、又は加えて、製造品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容可能なバッファーを含む第2の容器を更に含んでいてもよい。それは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含みうる。キットには標識されたタンパク質の薬学的な製剤の投与のための指示書も更に含む。
【実施例】
【0074】
Gill 等(2009) Jour. Med. Chem. 52(19):5816-5825 の方法及び試薬は出典明示によりここに明示的に援用する。
【0075】
溶媒及び化学薬品は、特記していないものは、Aldrich(Milwaukee,WI)から購入した。ヘテロ二官能性ポリエチレングリコールはIris Biotech(Marktredwitz,Germany)から購入し、N−PEG−NHSをQuanta Biodesign(Powell,OH)から購入した。卵黄リン脂質をAvanti Polarlipids(Alabaster,AL)から購入し、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)をInvivoGen(San Diego,CA)から入手した。次の逆相HPLCシステムを生成物の分析と精製に用いた。システムA:Phenomenex JupiterC18300A(150×4.6mm、5μm)、0.05%TFA+10−90%アセトニトリル、0−7分、20−90%アセトニトリル、7分、2mL/分;システムB:Phenomenex LunaC18(250×10mm、5μm)0.05%TFA+アセトニトリル、5mL/分;システムC:Phenomenex BioSep−SEC−S2000(300×4.60mm、5μm)50mMのPBS0.5ml/分;システムD:Phenomenex BioSep−SEC−S2000(300×7.80mm、5μm)20mMのPBS(pH7.2)1.0ml/分;システムE:AltimaC−18(100×22.0mm、5μm)0.05%TFA+10−60%アセトニトリル、0−30分、24mL/分。放射化学において使用される分析的及び半分取HPLCシステムは双方共、UV吸光及び放射能検出器(PMT)を備えていた。[18F]フッ化物はPETNET Solutions(PaloAlto,CA)から購入した。Oasis HLB PlusカートリッジはWaters(Milford,MA)から入手した。18Fトラップ&Releaseカラム(8mg)はORTG,Inc.(Oakdale、TN)から購入した。低分子量生成物の質量分析はOnyx MonolithicC18カラムを装備したPE Sciex API 150EX LCMSシステムで実施した。タンパク質のLC/MS分析は、拡張された質量範囲のTSQ Quantumトリプル四重極質量分析計(Thermo Electron)で実施した。試料に75℃に加熱したPRLP−S、1000Å、マイクロボアカラム(50mm×2.1mm、Polymer Laboratories)でクロマトグラフィーを施した。30−40%の線形勾配のB(溶媒A、水中0.05%のTFA;溶媒B、アセトニトリル中0.04%のTFA)を使用し、溶離剤を、エレクトロスプレー源を用いて直接イオン化した。データをXcaliburデータシステムによって集め、デコンボリューションをProMass(Novatia)を使用して実施した。NMRスペクトルは298KでBruker AvanceII500又はBruker AvanceII400分光計で記録した。H及び13Cの化学シフトはTMSに対して報告し、19F化学シフトは、−78.5ppmに標準化した外部基準としてTFAを使用して報告する。モデル521マイクロ波加熱器、共鳴装置(Skokie,IL)を放射化学反応に使用した。トリス-(ベンジルトリアゾリルメチル)アミン)としても知られているTBTA(トリス-[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル) メチル]アミンは、Cu(I)の安定化リガンドであるが、既に発表された手順に従って40%の収率で合成した(Lewis等(2004) J Am Chem Soc 126:9152-3)。Strata SDB−LカートリッジはPhenomenex(Torrance,CA)から購入した。
【0076】
実施例1 3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-オール(1)

水素化ナトリウムの鉱油中60%分散液(0.86g、21.4mmol)を少しずつ0℃の無水THF(40mL)中のヘキサエチレングリコール(5.5g、19.4mmol)の溶液に加えた。反応混合物を0℃で15分間攪拌した後、トルエン中80%(2.4mL、21.4mmol)の臭化プロパルギルを滴下して加えた。混合物を室温まで温め、3時間攪拌した。形成された臭化ナトリウムを濾過によって除き、溶媒を蒸発させた。粗生成物をメタノール/ジクロロメタン勾配0−100%を使用するSiOカラムで精製し、3.4g(54%)の1を無色の油として得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ2.45(t,J=2.4Hz,1H),2.74(bs,1H),3.61−3.71(m,24H),4.21(d,J=2.4Hz,2H);13CNMR(100.6MHz,CDCl):δ58.4,61.7,69.1,70.3−70.6,72.5,74.5,79.7;MS ESI(m/z):[M+H]1529に対する計算値,321.38;実測値321.4。
【0077】
実施例2 1-(3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-イル)-2,5-ピロールジオン(2)

アゾジカルボン酸ジイソプロピル(730μL、3.43mmol)を無水THF(20mL)中の3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-オール1(1000mg、3.12mmol)、トリフェニルホスフィン(900mg、3.43mmol)及びマレイミド(456mg、4.70mmol)の氷冷溶液に窒素雰囲気下で滴下して加えた(図3)。生じた茶色の溶液を室温まで温め、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗生成物をヘキサン/酢酸エチル勾配0−100%を使用するSiOカラムで精製して650mgの黄色油を得、これを続いて半分取HPLC(システムE)で精製して、トリフェニルホスフィン酸化物を含まない2を無色の油として310mg(25%)得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.43(t,J=2.36Hz,1H),3.60−3.72(m,24H),4.20(d,J=2.37Hz,2H),6.70(s,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ37.2,58.4,67.8,69.1,70.1,70.4−70.6,74.5,79.7,134.1,170.6;MS ESI(m/z):[M+H],C1930NOに対する計算値,400.19;実測値400.0
【0078】
実施例3 23-アジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコス-1-イルp-トルエンスルホナート(3)

ピリジン(4mL)中の23-アジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリイコサン-1-オールの溶液(800mg、2.02mmol)をピリジン(10mL)中の塩化トルエンスルホニル(771mg、4.04mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(100mg)の溶液に室温で滴下して加えた。混合物を24時間、室温で攪拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物を、ヘキサン/酢酸エチル0−100%勾配と、続いて酢酸エチル/メタノール勾配0−100%を使用するの勾配でSiOカラムで精製し、ついで半分取HPLC(システムE)で精製し、280mg(25%)の3を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.45(s,3H),3.38(t,J=5.02Hz2H),3.58−3.70(m,28H),4.16(t,J=5.00Hz,2H),7.34(d,J=8.4Hz,2H),7.80(d,J=8.4Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ21.6,50.7,68.7,69.2,70.0,70.5−70.8,128.0,129.7,133.1,144.7;MS ESI(m/z):[M+H]233910Sに対する計算値549.24;実測値549.9。
【0079】
実施例4 23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン(4)

23-アジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリイコサン-1-オール(500mg、1.26mmol)をDCM(2mL)に溶解させ、−10℃に冷却した。DAST(482μL、3.78mmol)を冷却溶液に徐々に加え、得られた混合物を−10℃で30分間攪拌した後、室温まで温め、更に20時間攪拌した。過剰のDASTをメタノール(5mL)でクエンチし、溶媒を続いて減圧下で蒸発させた。油性の残留物を水(3mL)に溶解し、NaHCOを使用してpHを5に調節した。粗生成物を半分取HPLC(システムE)で精製し、122mg(24%)の4を黄色油として得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ3.39(t,J=5.0Hz,2H),3.65−3.68(m,26H),3.75(dt,J=4.2Hz,29.6Hz,2H),4.56(dt,J=4.0Hz,47.5Hz,2H);13C NMR(125.7MHz,CDCl):δ50.8,70.1,70.4,70.5,70.7−70.8,70.9,83.2(d,J=169Hz);19F NMR(470.6MHz,CDCl):δ−225.9;MS ESI(m/z):[M+H]1633FOに対する計算値,398.2;実測値398.0。
【0080】
あるいは、[18F]4を調製するため、[18F]フッ化物を0.6mLのアセトニトリル/水1:1(v/v)中の10μLの1.3M TBAHCOを使用して4mLのv−バイアルにT&Rカートリッジから溶離させた。アルゴン流(600ccm)下で60W、120℃にてマイクロ波加熱することによって水を共沸除去し、続いて無水アセトニトリル(4×0.7mL)を加えた。アセトニトリル(0.6mL)に溶解した23-アジド-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコス-1-イルp-トルエンスルホナート3(2mg、3.6μmol)を加え、混合物を隔膜シール容器中で40W、120℃で3分間マイクロ波加熱し、[18F]23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4を得た。
【0081】
実施例5 1-(1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコス-23-イル)-4-(1-(2,5-ピロリドン-1-イル)-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサノナデカ-19-イル)-1,2,3-トリアゾール(5,FPEGMA)

アセトニトリル(0.1mL)に溶解したCu(MeCN)PF(7.5mg、0.02mmol)をアセトニトリル(0.2mL)中の1-(3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-イル)-2,5-ピロールジオン2(8.0mg、0.02mmol)、23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4(8.0mg、0.02mmol)、2,6-ルチジン(2.5μL、0.02mmol)及びTBTA(2.0mg、0004mmol)の溶液に室温で加えた。生じた混合物を22時間室温で攪拌した後、水で4mLまで希釈し、形成された沈殿物を濾過により除去した。生成物を含む濾過物を半分取HPLC(システムE)で精製して、7.5mg(47%)の5(FPEGMA)を無色の油として得た。H NMR(500MHz,CDCl):δ3.58−3.80(m.50H),3.87(t,J=4.5Hz,2H),4.53(t,J=5.0Hz,2H),4.55(dt,J=47.3,4.2Hz,2H),4.68(s,2H),6.70(s,2H),7.73(s,1H);13C NMR(125.7MHz,CDCl):δ37.2,50.3,64.7,67.9,69.5,69.7,70.2,70.6−70.7,70.9,83.2(d,J=169Hz),123.8,134.2,145.0,170.7;19FNMR(470.6MHz,CDCl):δ−225.8;MS ESI(m/z):[M+H]3562FO15に対する計算値,797.4;実測値797.4;HPLC(システムA)保持時間2.91分。
【0082】
(方法A) 別法では、[18F]5を調製するために、[18F]23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4をSep−PakアルミナNライトカートリッジ上を通過させ、アセトニトリル(0.5mL)ですすぎ、ほぼ蒸発乾固させ、30℃まで冷却した。アセトニトリル(0.2mL)に溶解させた化合物2(4mg、10.0μmol)を[18F]4に加え、続いて新たに調製した0.1mLのトリスバッファー(pH8)中のアスコルビン酸ナトリウム(7.5mg、40μmol)及びトリスバッファー(pH8)中のCuSO・5HO(2.2mg、8μmol)の溶液を図4におけるように加えた。得られた褐色・オレンジ溶液を室温で20分間攪拌し、続いてHOを0.1%のTFA(1mL)と共に加え、精製のためにHPLCループに移動させた。
【0083】
(方法B) 別法では、[18F]5を調製するために、[18F]23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4をSep−PakアルミナNライトカートリッジ上に通過させ、アセトニトリル(0.5mL)ですすぎ、ほぼ蒸発乾固させ、30℃まで冷却した。アセトニトリル(0.2mL)に溶解させた化合物2(4mg10.0μmol)を[18F]4に加え、続いて0.1mLのトリスバッファー(pH8)中の新たに調製したアスコルビン酸ナトリウム(7.5mg、40μmol)及びトリスバッファー(pH8)(0.2mL)中のCuSO・5HO(2.2mg、8μmol)及びバソフェナントロリンジスルホネート(BPDS)(4.4mg、8μmol)の混合物を加えた。得られた褐色・オレンジ溶液を室温で1分間攪拌し、続いてHOを0.1%のTFA(1mL)と共に加え、精製のためにHPLCループに移動させた。
【0084】
(方法C) 別法では、[18F]5を調製するために、[18F]23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4をほぼ蒸発乾固させ(アルミナ処理は不必要)、その後アセトニトリル(0.1mL)に溶解させた化合物2(4mg、10.0μmol)を加えた。次に、新たに調製したアセトニトリル(0.2mL)中のCu(MeCN)PF(3mg、8μmol)、TBTA(4.3mg、8μmol)及び25μLの2,6-ルチジンの混合物を加えた。得られた淡黄色溶液を10分間室温で攪拌し、100μLまで濃縮し、0.1%TFA(1mL)と共にHOで希釈し、精製のためにHPLCループに移動させた。
【0085】
粗生成物[18F]5を半分取HPLC(システムB)により、保持時間15−18分で精製した。収集した画分をHOで20mLまで迅速に希釈し、Phenomenex Strata−X60mgSPEカートリッジに充填し、生成物をカートリッジに捕捉させ、HO(10mL)で洗浄し、空気を流し、アセトニトリル(0.5mL)で1mLのv−バイアル中に溶出させ、30℃で600ccmアルゴンを用いてほぼ蒸発乾固させた。MS ESI(m/z):[M+H]3562FO15に対する計算値797.4;実測値797.4;HPLC(システムA)保持時間2.98分。
【0086】
水性条件下で[18F]5の分解を制限するために、放射化学工程の最適化をデザインしてCuAAC反応と固相抽出(SPE)からの回収との間の合成時間を最小とした。CuAAC反応系を0.1%のTFA水で迅速にクエンチし、HPLCを高流量(8mL/分)で実施し、[18F]5を迅速に充填し、SPEカートリッジから溶出させたときに[18F]5の改善された収率が観察された。[18F]5からの18F標識された分解産物の形成は
SPE樹脂床体積と共に増加し、長時間樹脂床上に該産物が残った場合に増加した。よって、[18F]5は小体積のPhenomenex Strata−X60mgカートリッジから速やかに溶出され、これが良好な回収率及び許容可能な不純物レベルをもたらした。
【0087】
実施例618F]FPEGMA−チオ4D5Fab(6)
4D5−チオFabを、過去に記載された手順(Junutula, J.R. 等(2008) J Immunol Methods 332:41-52;米国特許出願第2007/0092940号)と同様にして調製した。システイン置換を、部位特異的変異誘発によってトラスツズマブ(4D5、ハーセプチン)抗体コンストラクトの軽鎖のVal110位に導入した。発現されて精製された4D5−チオMabを25mMトリス(pH8.0)中の1mg/mLまで希釈し、酵素対抗体比が1:1000(wt:wt)のLys−C(Wako)を使用して37℃で1時間酵素的に消化させた。5μMのプロテアーゼ阻害剤トシル−L−リジンクロロメチルケトン(TLCK)で消化を停止し、50mMの酢酸ナトリウムバッファー及び0−300mMのNaCl 10CV勾配を使用して5mLのHi−トラップSP FFカラム(GE Healthcare)で陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。単離したチオFabをついで還元及び酸化手順によるコンジュゲーションのために調製し、Cys110に結合したジスルフィド付加物を除去した。先ず、タンパク質を25mのMMES,pH5.8、300mLのNaCl、及び5mMのEDTAを含むバッファー中の2mMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TECP)(Pierce)を加えることによって24時間かけて還元した。還元後、タンパク質を5mMのデヒドロアスコルビン酸(Sigma)を添加して酸化させ、S200カラム(GE Healthcare)、及び25mMのMES,pH5.8、300mMのNaCl、及び5mMのEDTAを含むバッファーを使用するゲル濾過によって精製した。単離したタンパク質をSDS−PAGE及び質量分析法によって分析し、タンパク質が適切に還元され、酸化されたことを確認した。
【0088】
100mMのリン酸ナトリウム(pH8)(2mg/mL)中の4D5チオFab(1.0mg、12.6nmol)を[18F]5に加え、試験管ロッカー上で10分間振とうさせた。粗生成物を半分取SEC-HPLCカラムによって精製し(システムD、10−12分の保持時間)、必要に応じて、アミコン10kDa膜で注入のために濃縮した。HPLC(システムA)保持時間3.3分;SEC HPLC(システムC)保持体積3.0mLで、6を得た。
【0089】
実施例7 5-アジド-3-オキサ-ペンチルp-トルエンスルホネート(7)

アジ化ナトリウム(0.47g、7.24mmol)をDMF(30mL)中のジエチレングリコールジトシレート(3g、7.24mmol)の溶液に加え、生じた混合物を110℃で5時間加熱した。反応混合物を冷却水(125mL)に注ぎ、生成物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、収集した有機抽出物を水(3×100mL)、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させた。粗生成物をSiOで溶離剤としてDCM/MeOH0−100%勾配で精製し、0.34g(16%)の7を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.45(s,3H),3.16(t,J=4.8Hz,2H),3.60(t,J=4.8Hz,2H),3.70(t,J=4.8Hz,2H),4.17(t,J=4.8Hz,2H),7.35(d,J=8Hz,2H),7.81(d,J=8Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ21.6,50.6,68.7,69.1,70.2,128.0,129.9,133.0,144.9;MS ESI(m/z):[M+H]1115Snに対する計算値,286.08;実測値286.1
【0090】
実施例8 11-アジド-3,6,9-トリオキサ-ウンデカニルp-トルエンスルホネート(8)

アジ化ナトリウムとテトラエチレングリコールジトシレートを実施例7pに従って反応させ、0.7g(19%)の8を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.44(s,3H),3.38(t,J=5.2Hz,2H),3.55−3.70(m,12H),4.16(t,J=5.2Hz,2H),7.34(d,J=8.4Hz,2H),7.78(d,J=8.4Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ21.6,50.7,68.7,68.8,69.2,70.0,70.6−70.7,127.9,129.8,133.1,144.7MS ESI(m/z):[M+H]1524Sに対する計算値,374.2;実測値374.2
【0091】
実施例9 N-(20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコシル)-2-ブロモアセトアミド(9,N-PEG-BA)

DCM(5mL)中の20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコサン-1-アミン(NH-PEG-N(0.5g、1.43mmol)とトリエチルアミン(0.2mL、1.43mmol)の溶液をDCM(10mL)中の臭化ブロモアセチル(0.190mL、2.15mmol)の冷却(0℃)溶液に滴下して加えた。冷浴を取り除き、混合物を90分間攪拌した。溶液を氷水(10mL)に注ぎ、DCM(2×10mL)で抽出した。収集した有機抽出物をブラインで洗浄し(2×10mL)、MgSOで乾燥させた。溶媒を蒸発させ、粗生成物をSiOでのフラッシュクロマトグラフィーを使用し溶離剤としてDCM/MeOH上の0−100%の勾配で精製して、0.66g(98%)の9を黄色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ3.39(t,J=4.8Hz,2H),3.47−3.51(m,2H),3.60(t,J=5.2Hz,2H),3.63−3.69(m,22H),3.88(s,1H),7.07(bs,1H),13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ29.1,40.0,50.6,69.4,70.0,70.4,70.6−70.7,165.8;MS ESI(m/z):[M+H]1632BrO,471.1に対する計算値,473.1;実測値471.0,473.0
【0092】
実施例9a N-(20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコシル)-2-ヨードアセトアミド(9a,N-PEG-IA)

DCM(5mL)中の20-アジド-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコサン-1-アミン(NH-PEG-N,0.5g,1.43mmol)及びヨード酢酸N-サクシニミジル(0.4g,1.43mmol)の溶液を室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、粗生成物を、0−100%のDCM/MeOH勾配を用いたSiOでのフラッシュクロマトグラフィーで精製して、0.44g(60%)の9aを黄色油として得た;MS ESI(m/z):[M+H]1632IOに対する計算値519.34;実測値519.4.H NMR(400MHz,CDCl):δ3.39(t,J=5.2Hz,2H),3.44−3.48(m,2H),3.58(t,J=5.2Hz,2H),3.63−3.69(m,22H),3.74(s,2H),7.10(bs,1H).13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ26.0,40.9,51.3,70.0,70.6−71.3,168.5不明瞭
【0093】
実施例10 3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-イルp-トルエンスルホネート(10,プロパルギル-PEG-OTs)

実施例3に従って3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-オール1と塩化トルエンスルホニルを反応させ、0.5g(47%)の10を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.42(t,J=2.4Hz,1H),2.45(s,3H),3.58−3.70(m,22H),4.16(t,J=5.0Hz,2H),4.20(d,J=2.4Hz,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),7.80(d,J=8Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ21.6,58.4,68.7,69.1,70.4−70.7,74.5,79.5,128.0,129.8,133.1,144.7;MS ESI(m/z):[M+H]2235Sに対する計算値,475.19;実測値475.2。
【0094】
実施例11 3,6,-ジオキサノン-8-イン-1-オール(11,プロパルギル-PEG-OH)

ジエチレングリコール(3.0g、28.1mmol)と臭化プロパルギルを実施例1に従って反応させ、1.2g(30%)の11を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.38(bs,1H),2.46(t,J=2.4Hz,1H),3.62(t,J=4Hz,2H),3.71−3.75(m,6H),4.22(d,J=2.4Hz,2H);MS ESI(m/z):[M+H]13に対する計算値,145.08;実測値145.3。
【0095】
実施例12 3,6,-ジオキサノン-8-イン-1-イルp-トルエンスルホネート(12,プロパルギル-PEG-OTs)

実施例3に従って3,6,-ジオキサノン-8-イン-1-オール11(1.2g、8.3mmol)と塩化トルエンスルホニルを反応させ、1.7g(68%)の12を無色の油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):δ2.44(t,J=2.4Hz,1H),2.45(s,3H),3.60−3.65(m.4H),3.70(t,J=4.8Hz,2H),4.15−4.18(m,4H),7.35(d,J=8.0Hz,2H),7.80(d,J=8Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ21.6,58.4,68.7,69.0,69.2,70.6,74.6,79.5,128.0,129.8,133.1,144.8;MS ESI(m/z):[M+H]1419Sに対する計算値,299.09;実測値299.1。
【0096】
実施例1318F]FPEGNHS(13)の放射化学合成

18F]フッ化物を、0.6mLのアセトニトリル/水1:1(v/v)中の10μLの1.3MのTBAHCO(重炭酸テトラ−n−ブチルアンモニウム)を使用してT&Rカートリッジから4mLのv−バイアル中に溶出させた。水をアルゴン流(600ccm)下で60W、120℃でマイクロ波加熱によって共沸的に除去した後、無水アセトニトリル(4×0.7mL)を加えた。アセトニトリル(0.6mL)に溶解させた3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-イルp-トルエンスルホネート(プロパルギル-PEG-OTs)10(2mg、4.2μmol)を加え、混合物を隔膜シールした容器内で40W、120℃で3分間マイクロ波加熱し、[18F]1-フルオロ-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン:

を得た。
【0097】
[18F] 1-フルオロ-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-インをほぼ蒸発乾固させ(アルミナ処理は不要)、その後アセトニトリル(0.1mL)中の4mg(10.0μmol)のN-PEG-NHS(Quanta Biodesign Ltd.)を加えた。次に、新たに調製したアセトニトリル(0.2mL)中のCu(MeCN)PF(3mg、8μmol)、TBTA(4.3mg、8μmol)及び25μLの2,6-ルチジンを加えた。生じた淡黄色の溶液を室温で10分間攪拌し、100μLまで濃縮し、HOと0.1%TFA(1mL)で希釈し、精製のためにHPLCループに移送した。粗生成物を半分取HPLC(システムB)によって保持時間15分で精製した。収集した画分を迅速に20mLまでHOで希釈し、Phenomenex Strata−X60mgSPEカートリッジに充填し、カートリッジに捕捉した生成物をHO(10mL)ですすぎ、空気を流し、1mLのv−バイアル内にアセトニトリル(0.5mL)で溶出させ、600ccmのアルゴンを用いて30℃でほぼ蒸発乾固させ、[18F]FPEGNHS13を得た。
【0098】
実施例14 CuAACによるプロパルギル修飾された4D5チオFabの直接の18F標識化
5倍過剰の1-(3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサヘニコス-20-イン-1-イル)-2,5-ピロールジオン2(0.4mg、1μmol)を4D5チオFab(10mg、0.2μmol、5mg/mL、50mMのリン酸ナトリウムpH7.2)に加え、37℃で1時間インキュベートした。溶液を10%酢酸でpH4〜5に調節し、100mMの塩化ナトリウムと共に50mMのトリスバッファーpH8を用いてHiTrap SP FFカラム(GE Healthcare)で陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。回収したプロパルギル修飾された4D5チオFab(100ug)のアリコートを乾燥[18F]23-アジド-1-フルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン4に加え、続いて脱気したバッファー(250uLトリス(pH8))中の1.2mgのBPDS及び20uLのアセトニトリル中の0.26mgのCu(MeCN)PFを加えた。大気中の酸素をアルゴンでの反応系から除外した。しかしながら、反応は10分経過すると濃い茶色から無色へ変わり、これは反応が酸素によってクエンチされ、更に厳密な脱気条件が必要とされることを示している。
【0099】
実施例15 動物モデル
6〜8週齢のベージュヌードXIDマウスをHarlan Sprague Dawley(Livermore、CA)から取得した。細胞播種の3日前に、マウス(皮下、左側腹部)に0.36mgの60日の徐放性の17β−エストラジオールペレット(Innovative Reseach of America)を移植し、血清エストロゲンレベルを維持した。50%のフェノールレッド非含有マトリゲル中、5×10のBT474のサブクローンのBT474M1細胞(California Pacific Medical Centerから入手)をマウスの乳腺脂肪パッドに播種した。動物の世話及び処置は、国際実験動物管理公認協会(AAALAC)によって公認されたジェネンテック社のアニマルケア及び使用委員会によって承認されたプロトコルに従った。
【0100】
実施例16 17−AAG製剤及び投与
DCM(5mL)中の卵黄リン脂質(0.5g)を500mLの丸底フラスコに移し、溶媒を蒸発させ、残留物を減圧下で16時間保存した。デキストロース(25mL)の5%(m/v)溶液を乾燥リン脂質に加え、混合物を室温で60分間超音波処理し、乳白色のエマルジョンを得た。17−AAG(25mg)をDMSO(1mL)に溶解し、そのアリコート(0.25mL)を卵黄リン脂質エマルジョン(4.8mL)と混合し、室温で15分間超音波処理した。生じたエマルジョンを、先に記載されたようにして(Smith-Jones等(2006) J Nucl Med 47:793-6;Smith-Jones等(2004) Nat Biotechnol 22:701-6)、24時間の期間にわたって3回の1mL用量(各々50mg/kg)を腹腔内注射で、調製から30分に投与した。17−AAGは17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシンであり、あるタイプの白血病又は固形腫瘍を持つ特定の若年患者の癌治療において研究されている物質である。17−AAGは、また[(3S,5S,6R,7S,8E,10R,11S,12E,14E)-21-(アリルアミノ)-6-ヒドロキシ-5,11-ジメトキシ-3,7,9,15-テトラメチル-16,20,22-トリオキソ-17-アザビシクロ[16.3.1]ドコサ-8,12,14,18,21-ペンタエン-10-イル]カルバメート(CAS登録番号75747-14-7)とも称される。
【0101】
実施例17 マイクロPETイメージング
マウスを3%のセボフルランで麻酔し、等張液(50−100μL)中の0.3−0.4mCiの18F−チオ4D5Fabを尾静脈カテーテルを介した静脈注射により接種させた。動物を通院まで温めたブランケット上で回復させた後、ケージに戻した。意識が回復して2時間後に、動物を3%のセボフルランで麻酔し、頭部を先に腹臥位でスキャナーベッドに置いた。体温を直腸プローブによって測定し、温かい空気で維持した。動的な60分スキャンを取得した。全身の画像再構成を最大事後確率アルゴリズム(MAP)を使用して得、最大値投影(MIP)をASIProソフトウェア(CTI分子イメージング)を用いてつくり出した。MAP再構成画像を使用し、ASIProソフトウェア(CTI分子イメージング)を用いて各対象臓器における定量的な活性レベルを得た。
【0102】
統計学的分析: Rソフトウェア・バージョン2.4.1(R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria)を用いてグラフを作成した。統計的有意性は両側スチューデントt検定を使用して決定し、0.05未満のp値を有意であると考えた;データは、特に記載のない場合は、平均値±s.e.m.で表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を標識化する方法において、

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]
から選択される標識用試薬を反応させることを含み、
タンパク質が抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン又は増殖因子から選択され、
それによって標識されたタンパク質が形成される方法。
【請求項2】
標識用試薬が、

である請求項1記載のタンパク質の標識方法。
【請求項3】
標識用試薬が、

である請求項1記載のタンパク質の標識方法。
【請求項4】
標識用試薬が、

である請求項1記載のタンパク質の標識方法。
【請求項5】
タンパク質が遊離システインチオールを含む請求項1記載のタンパク質の標識方法。
【請求項6】
タンパク質の遊離システインチオールが標識用試薬と反応する請求項1記載のタンパク質の標識方法。
【請求項7】

から選択される標識されたタンパク質を調製する方法であって、

から選択されるアルキン試薬を、抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、又は増殖因子から選択されるタンパク質と反応させて、

から選択されるアルキン−タンパク質を形成し、該アルキン−タンパク質を、銅触媒の存在下で、式:

を有する18F−PEG−アジド試薬と反応させることを含み、
ここで、n及びmが独立して2から12の整数から選択され;
それによって、標識されたタンパク質が形成される方法。
【請求項8】

から選択される標識されたタンパク質を調製する方法であって、

から選択されるアジド試薬を、抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、又は増殖因子から選択されるタンパク質と反応させて、

から選択されるアジド−タンパク質を形成し、該アジド−タンパク質を、銅触媒の存在下で、式:

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]
を有する18F−PEG−アルキン試薬と反応させることを含み、
それによって標識されたタンパク質が形成される方法。
【請求項9】
タンパク質が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体から選択される抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
抗体がFab断片である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Fab断片が4D5チオFabである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
銅触媒がCu(MeCN)PF又はCuSOである請求項1に記載の方法。
【請求項13】

から選択され、ここで、n及びmが独立して2から12の整数から選択される標識用試薬。
【請求項14】
式:

を有する請求項13に記載の標識用試薬。
【請求項15】
式:

を有する請求項13に記載の標識用試薬。
【請求項16】
式:

を有する請求項13に記載の標識用試薬。
【請求項17】

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択され;タンパク質は抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、及び増殖因子から選択される]
から選択される、標識されたタンパク質。
【請求項18】
標識されたタンパク質と一又は複数の薬学的に許容可能な担体、流動促進剤、希釈剤、又は賦形剤を含有し、
ここで、標識されたタンパク質が、

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]から選択され;タンパク質は抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、及び増殖因子から選択される、薬学的組成物。
【請求項19】
標識されたタンパク質を動物に投与し;
標識されたタンパク質の存在をインビボにおいてイメージングによって検出することを含んでなり、
ここで、標識されたタンパク質が

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]から選択され;タンパク質は抗体、インターフェロン、リンホカイン、サイトカイン、ホルモン、及び増殖因子から選択される、イメージング方法。
【請求項20】
標識されたタンパク質が抗原に結合する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物が腫瘍異種移植マウスモデルである請求項19に記載の方法。
【請求項22】
式:

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]
を有する標識用試薬を作製する方法であって、
式:

を有するマレイミド−PEG−アルキン試を、式:

[上式中、n及びmは独立して2から12の整数から選択される]
を有する18F−PEG−アジド試薬と銅触媒の存在下で反応させることを含み、それによって標識用試薬が形成される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519176(P2012−519176A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552145(P2011−552145)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025334
【国際公開番号】WO2010/099273
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】