説明

ターゲットへ同時にRFおよびDC電力を用いる極めて均一なスパッタ堆積の方法

プラズマ促進物理蒸着反応器において、ワークピース全体にわたる堆積速度の半径方向分布の均一性を、RFおよびDC電力の両方をターゲットに印加し、RFおよびDC電力の電力レベルを別個に調整することによって向上させる。さらなる最適化は、ターゲットの上の磁石の高さを調整すること、ターゲットの上の磁石の軌道運動の半径を調整すること、および角度をつけたターゲットのエッジ面を設けることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超高集積回路の製作は、物理蒸着(PVD)を用いた金属膜の堆積を行うものである。通常は、ワークピースすなわち半導体ウェハ上に薄膜として堆積されるべき材料からなるターゲットが用意される。材料はたとえば、銅、チタン、タンタル、または他の金属、金属酸化物、金属窒化物とすることができる。たとえば1つのプロセスでは、ソースドレイン間チャネルの上に重なるHfOの非常に薄いゲート酸化物層を含む薄膜構造上に窒化チタンが堆積される。このようなプロセスは、ワークピースすなわちウェハ全体にわたって、堆積された膜厚の高度に均一な分布を達成する必要がある。現在はPVDプロセスは良好な均一性を得るために、通常は100mm未満の短いターゲットウェハ間隔、またはウェハ裏面バイアスに依存している。しかし多くのプロセス、特に前工程の用途のためのプロセスは、堆積時にプラズマ損傷が誘起されないことが必要である。短いターゲットウェハ間隔およびウェハバイアスは共に、ウェハ上にプラズマ損傷を生成することになる。110mmより長いターゲットウェハ間隔およびゼロワットのウェハバイアスの状態ではPVDプロセスは、膜厚の標準偏差が約6%にて300mmの直径のウェハ全体にわたって堆積された膜厚均一性を達成することができる。フィーチャサイズまたは限界寸法が32nm以下まで縮小されるのに従って、膜厚均一性の要件はより厳しくなり、膜厚の許容標準偏差は1%まで削減されつつある。現在のPVDプロセスは、高信頼度ベースでこのような高度の均一性を達成することはできない。
【0002】
従来のPVD反応器は、真空チャンバ、反応器チャンバ天井のスパッタターゲット(銅、チタン、タンタル、または他の望ましい金属)、天井の下で天井に面したワークピース(たとえば、半導体ウェハ)を保持するための支持台、ターゲットに結合された高電圧DC電源、および反応器チャンバ内にキャリアガス(たとえば、アルゴン)を導入するためのガス注入装置を含む。ターゲットへのDC電圧は、スパッタターゲット付近にプラズマを生じるようにキャリアガスをイオン化するのに十分なものである。回転磁石からなるマグネトロンアセンブリは、天井およびスパッタターゲットの上にあり、ターゲットのプラズマスパッタを生じるようにターゲット付近にプラズマを閉じ込めるのに十分高い磁界を生成する。ターゲットからスパッタされた材料は、ターゲット化学種の中性粒子とイオンの両方を含むことができ、スパッタされた材料の一部分は、薄膜としてワークピース上に堆積される。一部の場合には、ターゲットからスパッタされたイオンを引き付けるために、ワークピースにDCまたはRFバイアス電力を結合することができる。
【0003】
ターゲットは、マグネトロンによって覆われた領域で浸食される。堆積時にはマグネトロンは、ターゲット浸食を分散させ、ワークピース全体にわたって堆積を分散させるように、円または惑星運動にて天井の全体にわたって移動される。しかしワークピース全体にわたる堆積速度分布は、ワークピースの中心部で高く、縁部で低くなる傾向があり、均一性が制限され、それにより堆積された膜厚の最小偏差は5%を超える。
【発明の概要】
【0004】
チャンバ内のワークピース上にプラズマ促進物理蒸着を行う方法が提供される。ワークピース上に堆積されるべき材料または材料の前駆体のスパッタターゲットがチャンバ内に用意される。ワークピースは、チャンバ内でスパッタターゲットと向かい合うように支持される。磁石は、スパッタターゲットの上にある。方法は、チャンバ内にキャリアガスを導入するステップと、ターゲット付近にプラズマを発生し、それに対応してワークピース上にターゲットからの材料の堆積を生じるように、RF電力およびDC電力をターゲットに印加するステップとを含む。堆積は、ワークピース上への堆積速度の半径方向分布を有する。方法は、以下の
a.(a)半径方向分布の中央部高位型不均一性または、(b)半径方向分布の縁部高位型不均一性の1つを、DC電力の電力レベルに対するRF電力の電力レベルを増加することによって補正するステップと、
b.(a)半径方向分布の中央部高位型不均一性または、(b)半径方向分布の縁部高位型不均一性の他方の1つを、RF電力の電力レベルに対するDC電力の電力レベルを増加することによって補正するステップと
の1つを行うステップをさらに含む。
【0005】
一実施形態では、半径方向分布の不均一性が少なくともほぼ最小化されるまで、上記のRFまたはDC電力レベルの調整が実行される。一実施形態では、ターゲットの上の磁石の高さを調整することによってターゲットが浸される磁力線の急峻性を調整することにより、半径方向分布均一性のさらなる最適化が得られる。別の実施形態では、ターゲットの上を磁石が回転される軌道運動の半径を調整することによって、半径方向分布均一性のさらなる最適化が得られる。他の実施形態では、半径方向分布の中央部高位型不均一性は、ターゲットの平坦な中央面に対して鋭角にターゲットのエッジ面に角度をつけることによって低減される。
【0006】
本発明の例示的実施形態が実現され詳細に理解できるように、上記で簡潔に要約した本発明のより具体的な説明が、添付の図面に示されるその実施形態を参照することによって得られよう。本明細書では本発明が不明瞭とならないように、いくつかの良く知られたプロセスについては論じないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】特定の実施形態の方法を実行するのに使用することができるプラズマ促進物理蒸着反応器の簡略化したブロック図である。
【図2A】図1の反応器におけるターゲットに対するマグネトロンの異なる位置を示す図である。
【図2B】図1の反応器のスパッタターゲットへの直流(DC)電力のみの印加時の薄膜堆積厚さの半径方向分布を示す、図2Aに対応するグラフである。
【図2C】図1の反応器のスパッタターゲットへの無線周波数(RF)電力のみの印加時の薄膜堆積厚さの半径方向分布を示す、図2Aに対応するグラフである。
【図3】第1の実施形態による、スパッタターゲットへのRFおよびDC電力の両方の印加時の、結果としての薄膜堆積厚さの半径方向分布を示すグラフである。
【図4A】図1の反応器で用いるための第1のマグネトロン構造を示す図である。
【図4B】(A)ターゲットにRF電力のみが印加された状態、および(B)ターゲットにDC電力のみが印加された状態での、図4Aのマグネトロンを用いて得られる膜厚の半径方向分布を示すグラフである。
【図5A】図1の反応器で用いるための第2のマグネトロン構造を示す図である。
【図5B】(A)ターゲットにRF電力のみが印加された状態、および(B)ターゲットにDC電力のみが印加された状態での、図5Aのマグネトロンを用いて得られる膜厚の半径方向分布を示すグラフである。
【図6】第2の実施形態による、天井の上のマグネトロンの高さをコントローラによって変化することができる、図1の反応器のマグネトロンアセンブリにおける変更を示す図である。
【図7A】ターゲットに近接して保持されたときの、スパッタターゲットとマグネトロンの力線との関係を示す図である。
【図7B】図7Aに対応するターゲット付近のイオン速度の角度分布を示すグラフである。
【図7C】図7Aに対応する薄膜堆積の瞬時半径方向分布を示す図である。
【図7D】図7Aに対応するマグネトロンの1回または複数回の回転にわたって平均化された薄膜堆積の平均半径方向分布を示す図である。
【図8A】ターゲットから離れて保持されたときの、スパッタターゲットとマグネトロンの力線との関係を示す図である。
【図8B】図8Aに対応するターゲット付近のイオン速度の角度分布を示すグラフである。
【図8C】図8Aに対応する薄膜堆積の瞬時半径方向分布を示す図である。
【図8D】図8Aに対応するマグネトロンの1回または複数回の回転にわたって平均化された薄膜堆積の平均半径方向分布を示す図である。
【図9A】他の実施形態による、コントローラによってマグネトロンの半径位置が小さな半径に設定された、図1の反応器に対する変更を示す図である。
【図9B】図9Aの小さな半径の設定の膜厚特性の中央部高位型半径方向分布を示すグラフである。
【図10A】コントローラによってマグネトロンの半径位置が大きな半径に設定された、図1の反応器に対する変更を示す図である。
【図10B】図9Aの大きな半径の設定の膜厚の中央部低位型半径方向分布特性を示し、さらに破線にて図9Aおよび10Aの異なるモードを時間平均することによって得られる結果としての分布を示すグラフである。
【図11A】図1の反応器にスパッタターゲットとして使用することができ、図11のスパッタターゲットは特に図1の反応器での薄膜堆積の均一性を改善するように整形された、スパッタターゲットの垂直断面図である。
【図11B】図11Aの整形されたターゲットを用いて得られる膜堆積の半径方向分布(実線)を、従来のスパッタターゲットを用いて得られる分布(破線)と比較した図である。
【図12】一実施形態による方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にするために、可能な場合は図に共通な同一の要素を指定するために、同一の参照番号を用いている。一実施形態の要素および特徴は、さらに詳述することなく他の実施形態に有利に組み込み得ることが企図されている。しかし本発明は他の等しく効果的な実施形態に通じ得るので、添付の図面は本発明の例示的実施形態のみを示ししたがってその範囲を限定すると理解されるべきでないことに留意されたい。
【0009】
図1を参照すると、PEPVDプロセスを行うための反応器は、円筒形の側壁102、天井104、および床部106によって囲まれた真空チャンバ100からなる。ワークピース支持台108は、天井104に面してワークピースすなわちウェハ110を保持するために、チャンバ床部106の上に支持される。ガス分配リング112は、側壁102を貫通して延びる複数のガス注入開口部114を有し、プロセスガス供給源116から流量制御弁118を通じて供給される。真空ポンプ120は、圧力制御弁122を通じてチャンバ100を排気する。スパッタターゲット124は、天井104に支持される。DC電源126は、RF阻止フィルタ128を通じてターゲット124に結合される。RF電力発生器130も、RFインピーダンス整合器131を通じてスパッタターゲット124に結合される。プロセスコントローラ132は、DC電源126およびRF電力発生器130の出力電力レベルを制御する。天井104の上にあるマグネトロン134は、スパッタターゲットの上に位置合わせされる。中心軸138および惑星軸140を含む回転アクチュエータ136は、軌道半径によって特性化される連続する軌道運動を行うように、天井の上でマグネトロン134の(任意選択で)2軸回転を容易にする。プロセスコントローラ132は、(上述のように)DCおよびRF電源126、130の出力電力レベル、ならびにプロセスガス供給源116、ガス流量弁118、真空ポンプ圧力制御弁122、およびマグネトロン回転アクチュエータ136を含む反応器のすべての側面を制御することができる。
【0010】
図2Aは、ターゲット124に対する回転マグネトロン134の瞬時位置を示し、図2Bは、ターゲット124にDC電力のみが印加されたときに得られる、対応する薄膜堆積厚さ(または等価的に速度)の瞬時半径方向分布を示す。180°回転後のもう1つの瞬時マグネトロン位置は、図2Aの破線で示され、対応する瞬時薄膜分布は、DC電力のみの場合に図2Bに破線で示される。図2Cは、結果としてのマグネトロンの複数の回転にわたって平均化された薄膜分布を示す。結果としての平均化された分布(図2C)は、瞬時分布(図2B)の不均一性により中央部高位型となる。典型的には、中央部高位型不均一性は、少なくとも5%または6%またはそれより大きな分布の標準偏差に相当する。
【0011】
図3は(実線にて)、スパッタターゲット124にRF電力のみが印加されたときに得られる膜堆積厚さの半径方向分布を示す。図3の実線で示されるRF電力供給時の膜分布と、図2CのDC電力供給時の膜分布は相補的である。このことを明らかに示すために、図2CのDC電力供給時の膜分布は、図3に点線で再現している。図3は、RFおよびDC電力の両方をターゲット124に印加することができ、コントローラ132によるDCおよびRF出力電力レベルの適切な調整によってDCおよびRF電力供給時の膜分布の合計(図3の破線)は高度に均一になり、それによりDCおよびRF電力の両方をターゲットに印加することによって均一な膜厚分布を生じるという、発明者らの発見を示している。発明者らは、組み合わせられた分布の偏差は1%以下にすることができることを発見しており、これは均一性において5倍または6倍の改善となる。一実施形態では、RFおよびDC電力は、同時にターゲット124に印加される。別の実施形態では、RF電力は交互の間隔で印加され、DC電力は残りの時間間隔の間に印加される。コントローラ132は、結果としての膜厚の半径方向分布(図3の破線)の均一性を最大化するようにRFおよびDC出力電力レベルを調整する。
【0012】
図4Aは、図1のマグネトロンにおける第1の磁気的配置を示し、N極およびN極の周りの環状のS極は円対称をもたらす。図4Bには、ターゲット124にRF電力のみ(実線)、およびDC電力のみ(破線)を印加した状態での図4Aのマグネトロンを用いて得られるワークピース上の堆積された膜厚の半径方向分布が示される。
【0013】
図5Aは、図1のマグネトロンの第2の磁気的配置を示し、一連のN極はインゲンマメ形境界の一方の半分に沿ってもたらされ、一連のS極はインゲンマメ形境界の他方の半分に沿ってもたらされる。図5Bには、(a)RF電力のみ(実線)および、(b)DC電力のみ(破線)をターゲット124に印加した状態で図5Aのマグネトロンを用いて得られるワークピース上の堆積された膜厚の半径方向分布が示される。図4Bと5Bとを比較することにより、(図4Aおよび5Aの)2つの磁石設計が交換された場合は、RFおよびDC電力を用いて得られる結果が逆になることが分かる。
【0014】
図6を参照すると、マグネトロン回転アクチュエータ136は、天井104およびスパッタターゲット124の上のマグネトロン134の高さを調整することができる昇降アクチュエータ150を追加的に含むことができる。図7Aに示されるようにマグネトロン134は、図4Aに示される円対称タイプのものとすることができる。マグネトロン134が図6の実線位置(すなわちターゲット124の近く)にあるときは、ターゲット124はマグネトロン134に最も近い浅い磁力線に浸される。その結果、イオン速度の角度分布は図7Bに示されるように広くなる。対応する瞬時薄膜分布速度は図7Cに示され、比較的広い分布を有する。結果としてのマグネトロン134の複数の回転にわたって平均化された分布は図7Dに示され、中央部高位型薄膜分布を有する。
【0015】
図8Aを参照すると、マグネトロン134が図6の破線位置(すなわち、ターゲット124の上の比較的遠く)にあるときは、ターゲット124はマグネトロン134から最も遠い急峻な垂直磁力線に浸される。その結果、図8Bに示されるようにイオン速度の角度分布は、垂直線を中心として狭くなる。対応する瞬時薄膜分布速度は図8Cに示され、狭い分布を有する。結果としてのマグネトロン134の複数の回転にわたって平均化された分布は図8Dに示され、明瞭な中央部低位型薄膜分布を有する。他の実施形態によれば、コントローラ132はマグネトロン昇降アクチュエータ150を管理し、マグネトロンの高さを変化させて、図7Dの中央部高位型分布と、図8Dの中央部低位型分布との間で薄膜分布を最適な均一性に調整することができる。
【0016】
図9Aを参照すると、図1のマグネトロンアセンブリはさらに、プロセッサ132の制御下でマグネトロン134の半径位置を変化させることができる半径位置アクチュエータ160を含み、プロセッサ132はターゲット124の連続する回転運動の軌道半径を決定する。図9Aでは半径位置は、ターゲットの円運動の最小軌道半径に対する最小限の半径に設定される。この設定では膜堆積分布は、マグネトロン134の複数の回転にわたって平均化されたときは中央部高位型となり、図9Bのグラフに示される。図10Aでは半径位置は、ターゲットの円運動の大きな軌道半径に対する大きな半径に設定される。この設定では膜堆積分布は、マグネトロン134の複数の回転にわたって平均化されたときは中央部低位型となり、図10Bのグラフに示される。一実施形態によれば、コントローラ132は、半径位置アクチュエータ160を用いてマグネトロン134の半径位置(すなわち、円運動の軌道半径)を変えることによって堆積される膜厚の半径方向分布を調整する。たとえばコントローラは、マグネトロンが大きなおよび小さな半径位置にて費やす時間の相対的な大きさを調整することにより、分布形状を調整することができる。その結果は、図9Bと10Bの半径方向分布の合計に対応し、図10Bに破線で示される極めて平らな(均一な)分布とすることができる。
【0017】
図11Aは、どのように図1のスパッタターゲット124を整形して、ワークピース上の膜堆積分布が中央部高位型となる傾向を低減できるかを示す。図1の実施形態ではスパッタターゲット124は、ターゲット124の平坦面127に対して直角な狭い側面125を有する。平坦面127は、全体的にワークピース110と平行である。図1では、すべて(または、ほぼすべて)のスパッタされた材料は、ターゲット平坦面127から発散し、したがって垂直方向を中心とする角度分布を有する。図11Aの変更されたターゲット224は、ターゲットの縁部からスパッタされた材料をワークピースの中心から離れるように向けることによって、ワークピース中心へのスパッタされた材料の流れを低減し、一方、ワークピース縁部へのスパッタされた材料の流れを増加する。図11Aの実施形態では、スパッタターゲット224は、平坦面226を取り囲む側面225を有する。任意選択でターゲット224はさらに、側面225を取り囲む環状の棚部227を含む。側面225は、ターゲット平坦面226に対して角度「A」に方向付けられる(傾斜される)。傾斜側面225は、ターゲット平坦面226の周囲と一致する内側円形エッジ225aと、棚部227と交わる外側円形エッジ225bとを有する。一実施形態では角度Aは15°であったが、角度Aは5°から50°、または3°から70°などの適当な範囲内で任意とすることができる。
【0018】
ターゲットからスパッタされた材料は、全体的に材料がスパッタされるターゲット表面に対して垂直な方向に放出される傾向がある。たとえば図1の簡単な平らなターゲット124からスパッタされた材料は、垂直(軸)方向を中心とする速度プロファイルを有する傾向がある。図11Aの整形されたターゲット224の場合は、平坦面226からスパッタされた材料は、垂直方向を中心とする速度プロファイルを有する傾向がある。しかし傾斜側面225からスパッタされた材料は、傾斜側面225に対して垂直、すなわち角度Aから約90°の方向を中心とする速度プロファイルを有する傾向がある。この方向は、ワークピース110の周縁部に向く。結果として、傾斜側面225からスパッタされた材料は、ワークピース周縁部での薄膜堆積に寄与し、それによってワークピース縁部での膜堆積を増加させる。これは、膜堆積分布が中央部高位型不均一性を有する傾向を緩和する。中央部高位型の膜分布不均一性が減少される程度は、傾斜側面225の角度Aの選択によって制御することができる。
【0019】
図11Bは、図11Aに対応し、図11Aの整形されたターゲット224を用いて得られる薄膜堆積厚さ分布(図11Bの実線グラフ)を、従来の平らなターゲット(たとえば、図1のターゲット124)を用いて得られる分布と比較したグラフである。従来のターゲットは不均一な(中央部高位型)分布をもたらし、一方、整形されたターゲット224は、より縁部高位型であり中央部高位型が弱められた改善された分布をもたらす。
【0020】
棚部227の厚さtは、棚部227がターゲット224の寿命の間にスパッタによって完全に浸食されないように十分なものである。以下では、いくつかの寸法が例示のみとして示され、実施形態は以下の寸法に限定されるものではなく、以下の範囲に制限されるものでもない。棚部厚さtは、0.25インチから1インチの適当な範囲内とすることができる。一実施形態では、厚さtは約0.3インチであった。平坦面226の領域でのターゲット厚さTは、約0.5インチから1.5インチの適当な範囲内とすることができる。一実施形態では、ターゲット厚さTは、0.77インチであった。傾斜面225の内側エッジ225aの直径は、約12インチ(300mm)のワークピース直径に対して約9インチから12インチの適当な範囲内とすることができる。一実施形態では、傾斜面225の内側エッジ225aは、約11インチの直径を有した。傾斜面225の外側エッジ225bの直径は、約12インチから15インチの適当な範囲内とすることができる。一実施形態では、傾斜面225の外側エッジ225bは、約14インチの直径を有した。棚部227の外側エッジ227aの直径は、約10インチから25インチの適当な範囲内とすることができる。一実施形態では、外側エッジ227aの直径は、約17インチから18インチの範囲内であった。
【0021】
図1〜3は第1の実施形態に関係し、そこではコントローラ132は、ターゲット124に印加されるRFおよびDC電力の相対的な大きさを調整することによって薄膜堆積分布を調整する。図6〜8は第2の実施形態に関係し、そこではコントローラ132は、ターゲット124の上のマグネトロン134の高さを調整することによって薄膜堆積分布を調整する。図9〜10は第3の実施形態に関係し、そこではコントローラ132は、マグネトロン134の半径位置を調整することによって薄膜堆積分布を調整する。図11A〜11Bは第4の実施形態に関係し、そこではワークピースの周縁部付近での材料の堆積を促進するためにスパッタターゲット表面の周縁部分が傾斜されすなわち角度をつけられる。これら4つの実施形態のいずれかまたはすべては、単一の反応器内で組み合わせることができる。たとえば1つの組合せでは、コントローラ132は、(a)ターゲットに印加されるRFおよびDC電力の比率を制御し(図1〜3)、かつ(b)ターゲットからのマグネトロン134の距離(図6〜8)および、(c)マグネトロンの半径位置(図9〜10)のいずれか(または両方)を制御する。コントローラ132は、堆積速度(すなわち堆積される膜厚)の半径方向分布の均一性を最適化するように、上記の調整のいずれかまたはすべてを同時に、または異なる時点で行うことができる。別の組合せでは、コントローラ132は、上記の調整の任意の1つまたはすべてを行うことができ、一方、反応器には図11Aに示されるタイプの整形されたターゲットが用意される。
【0022】
図12は、上述の実施形態による方法を示す。方法は、図1のチャンバ100内へキャリアガスを導入するステップ(図12のブロック310)と、ターゲット124(図1)にRF電力およびDC電力を印加して(図12のブロック312)ターゲット124の付近にプラズマを発生し、ワークピース110上へのターゲット124からの材料の対応する堆積を生じるステップとを含む。第1の実施形態では、プラズマの分布の半径方向不均一性は、DC電力の電力レベルに対するRF電力の電力レベルを増加することによって補正される(図12のブロック314)。不均一性は、(a)半径方向分布の中央部高位型不均一性(図12のブロック314−1)または、(b)前記半径方向分布の縁部高位型不均一性(図12のブロック314−2)の場合がある。第2の実施形態では、プラズマの分布の半径方向不均一性は、RF電力の電力レベルに対するDC電力の電力レベルを増加することによって補正される(図12のブロック320)。不均一性は、(a)半径方向分布の中央部高位型不均一性(図12のブロック320−1)または、(b)前記半径方向分布の縁部高位型不均一性(図12のブロック320−2)の場合がある。
【0023】
図6に示された装置を用いた一実施形態では、ターゲットの上の磁石の高さを調整することにより、ターゲットが浸される磁力線の急峻性を調整することによってプラズマの半径方向分布均一性のさらなる最適化が得られる(図12のブロック330)。図9Aおよび10Aに示された装置を用いた別の実施形態では、ターゲットの上を磁石が回転される軌道運動の半径を調整することによって、半径方向分布均一性のさらなる最適化が得られる(図12のブロック332)。図11Aに示される他の実施形態では、半径方向分布の中央部高位型不均一性は、ターゲットの平坦な中央面に対してターゲット124のエッジ面225を鋭角に角度をつけることによって低減される(図12のブロック334)。
【0024】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、その基本的範囲から逸脱せずに、本発明の他の実施形態を考案することができ、その範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内のワークピース上にプラズマ促進物理蒸着を行う方法であって、
前記チャンバの天井付近に、前記ワークピース上に堆積されるべき材料または材料の前駆体を含むスパッタターゲットを用意するステップと、
前記ワークピースを、前記チャンバ内で前記スパッタターゲットと向かい合うように支持するステップと、
前記チャンバ内にキャリアガスを導入するステップと、
前記ターゲットの上に磁石を設けるステップと、
前記ターゲット付近にプラズマを発生させて、それに対応して前記ワークピース上に前記ターゲットからの材料の堆積を生じるように、RF電力およびDC電力を前記ターゲットに印加するステップであって、前記堆積が、前記ワークピース上への堆積速度の半径方向分布を有するステップと、
(A)(a)前記半径方向分布の中央部高位型不均一性および、(b)前記半径方向分布の縁部高位型不均一性の一方を、前記DC電力の電力レベルに対する前記RF電力の電力レベルを増加することによって補正する第1の補正するステップ、あるいは
(B)(a)前記半径方向分布の中央部高位型不均一性および、(b)前記半径方向分布の縁部高位型不均一性の他方を、前記RF電力の電力レベルに対する前記DC電力の電力レベルを増加することによって補正する第2の補正するステップ
を行うステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の補正するステップが、前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を補正するステップを含み、
前記第2の補正するステップが、前記半径方向分布の縁部高位型不均一性を補正するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RF電力の電力レベルを増加することを、前記半径方向分布の前記中央部高位型不均一性が少なくともほぼ最小化されるまで実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記DC電力の電力レベルを増加することを、前記半径方向分布の前記縁部高位型不均一性が少なくともほぼ最小化されるまで実行する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の補正するステップが、前記半径方向分布の縁部高位型不均一性を補正するステップを含み、
前記第2の補正するステップが、前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を補正するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記RF電力の電力レベルを増加することを、前記半径方向分布の前記縁部高位型不均一性が少なくともほぼ最小化されるまで実行する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記DC電力の電力レベルを増加することを、前記半径方向分布の前記中央部高位型不均一性が少なくともほぼ最小化されるまで実行する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記磁石と前記ターゲットとの間の距離を調整することによって前記半径方向分布を調節するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記調整することが、前記磁石と前記ターゲットとの間の距離を減少することによって前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を減少するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記調整することが、前記磁石と前記ターゲットとの間の距離を増加することによって前記半径方向分布の縁部高位型不均一性を減少するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記磁石が前記チャンバの外側で前記天井の上に配置され、前記調整することが前記天井に対して前記磁石を上昇および下降させるステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記調整することが、対称軸に対して浅い曲線を有する前記磁石の力線内の前記ターゲットの浸入を増加することによって前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を低減するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記調整することが、対称軸に対して急峻な曲線を有する前記磁石の力線内の前記ターゲットの浸入を増加することによって前記半径方向分布の縁部高位型不均一性を低減するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
軌道半径によって規定される軌道運動にて、前記ターゲットの上にあり全体的に前記ワークピースと平行な平面内で前記磁石を連続的に回転するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記磁石の前記軌道運動の前記軌道半径を増加することによって前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を低減するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ターゲットの前記軌道運動の前記軌道半径を減少することによって前記半径方向分布の縁部高位型不均一性を低減するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲットを、(a)前記ワークピースと平行でかつ前記ワークピースと向かい合う中央面と、(b)前記中央面と交差して前記中央面を取り囲むエッジ面とを備える中実な要素として用意するステップをさらに含み、さらに、前記エッジ面を前記中央面に対して90°未満の角度に方向付けることによって前記半径方向分布の中央部高位型不均一性を低減するステップを含み、前記エッジ面が半径方向に沿って外側に向く、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方向付けることが、前記エッジ面を3°〜70°に方向付けるステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記印加するステップが、前記ターゲットに前記RF電力および前記DC電力を、
(a)同時に、または
(b)交互シーケンスで
印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−530654(P2011−530654A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522201(P2011−522201)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052781
【国際公開番号】WO2010/017259
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】