説明

タービンエンジンの冷却を促進するシステム及びガスタービンエンジン

【課題】ガスタービンエンジンに関し、より詳細には、一体化されたタービンノズル及びシュラウド組立体を冷却するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】エンジン組立体はノズル組立体を含み、このノズル組立体は、内側バンドと、冷却流体を傾斜放出角αで配向するように構成された複数の冷却孔508を有する後方フランジ504及び半径方向内表面522を含む外側バンド183と、内側バンド及び外側バンド間で延びる少なくとも1つの翼形ベーン510とを備える。 また、シュラウド内表面138とシュラウド組立体前縁133とを含むシュラウド組立体110を更に備えることもできる。シュラウド組立体前縁が、外側バンド183後方フランジ504とシュラウド組立体前縁との間に定められたギャップ182の中心線555に対して傾斜角度βで冷却空気を放出するように構成された複数の冷却孔181を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンエンジンに関し、より詳細には、一体化されたタービンノズル及びシュラウド組立体を冷却するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの効率を高める1つの公知の方法では、タービン作動温度を高めることが必要とされる。しかしながら、作動温度が高くなると、特定のエンジン構成部品の熱限界を超える可能性があり、結果として耐用年数の短縮及び/又は材料破壊を生じることになる。更に、構成部品の熱膨張及び熱収縮が増大すると、構成部品の間隙及び/又は嵌合関係に悪影響を及ぼす可能性がある。その結果、従来型の冷却システムは、このような構成部品の冷却を促進して、高温の作動温度に曝されたときの潜在的に損傷をもたらす結果となるのを回避するためにスタービンエンジン内に組み込まれてきた。
【0003】
冷却の目的で圧縮機からのメイン空気流から抽気することが知られている。エンジンの運転効率の維持を容易にするために、抽気される冷却空気の容積は通常、メイン空気流全体の小さな割合に限定される。従って、これにより、構成部品の温度を安全限度内に維持するのを容易にするために、冷却空気を最大限効率で利用することが必要となる。
【0004】
例えば、高温に曝される1つの構成部品は、燃焼器から延びる高圧タービンノズルの直ぐ下流側に配置されるシュラウド組立体である。シュラウド組立体は、高圧タービンのロータの周りで円周方向に延び、従って高圧タービンを通って流れるメインガス流の外側境界(流路)の一部を形成する。ガスタービンエンジンの効率は、タービンブレードの半径方向外表面とシュラウド組立体の半径方向内表面との間で測定されるタービンブレード先端間隙の変動により悪影響を受ける可能性がある。エンジンの過渡運転の間、タービンブレード先端間隙は、タービンロータブレード及びシュラウド組立体の半径方向の変位の差の関数である。タービンロータは通常、固定シュラウドシステムよりも大きな質量を有し、従って、タービン作動中、タービンロータは通常、シュラウド組立体よりも遅い熱応答を有する。ロータブレードの半径方向変位とシュラウド組立体の半径方向変位との差が過度に大きい場合には、ブレード先端間隙が大きくなり、これによりエンジン効率の低下を生じる可能性がある。
【0005】
更に、エンジン作動中、高圧タービンノズル外側バンドの後縁と、隣接するシュラウドセグメントの前縁との間にギャップが形成されることがある。限定ではないが、ノズル漏出流及び/又はパージ流を含む冷却空気がギャップに入り、高圧タービン内を通って導かれるメインガス流に流入する。冷却空気は一般に、外側バンド後縁内に位置付けられ、軸方向に整列した冷却孔の列によって提供され、該冷却孔は、シュラウド前縁の前方面に配向されて、端面の冷却及びギャップのパージを促進する。公知のノズル外側バンド後縁及びシュラウド前縁は、単純な90°コーナーを有するので、ギャップは、メインガス流に直接開口している。エンジン作動中、メインガス流がノズルベーンを貫流するときに円周方向のガス圧変化がベーン後縁から下流側で生じる可能性がある。この円周方向のガス圧変化は、外側バンドとシュラウドセグメントとの間のギャップへの局所的な高温ガスの吸込みを引き起こす可能性がある。その結果、ギャップを貫流する冷却空気は、下流側シュラウドセグメントを効果的に冷却することができない。
【特許文献1】米国特許第6,984,100号公報
【特許文献2】米国特許第6,779,597号公報
【特許文献3】米国特許第6,485,255号公報
【特許文献4】米国特許第6,431,832号公報
【特許文献5】米国特許第6,431,820号公報
【特許文献6】米国特許第6,398,488号公報
【特許文献7】米国特許第6,354,795号公報
【特許文献8】米国特許第6,340,285号公報
【特許文献9】米国特許第5,511,945号公報
【特許文献10】米国特許第5,217,348号公報
【特許文献11】米国特許第4,949,545号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、エンジン組立体が提供される。本エンジン組立体は、内側バンドと、後方フランジ及び半径方向内表面を有する外側バンドとを含むノズル組立体を備える。後方フランジは、冷却流体を傾斜放出角で配向するように構成された複数の冷却孔を含む。エンジン組立体はまた、内側バンドと外側バンドとの間で延びる少なくとも1つの翼形ベーンを含む。
【0007】
別の態様において、ガスタービンエンジンが開示される。本エンジンは、内側バンドと、外側バンドと、内側バンド及び外側バンド間で延びる少なくとも1つの翼形ベーンとを含むノズル組立体を備える。外側バンドは、後方フランジと半径方向内表面とを含み、後方フランジは、冷却流体を傾斜放出角で配向するように構成された複数の冷却孔を含む。
【0008】
またここでは、ガスタービンエンジンを組み立てる方法が開示される。この方法は、少なくとも1つのタービンノズルセグメントをガスタービンエンジン内に結合する段階を含む。少なくとも1つのタービンノズルセグメントは、後方フランジと半径方向内表面とを含む外側バンドと内側バンドとの間で延びる少なくとも1つの翼形ベーンを含む。本方法はまた、前縁と半径方向内表面とを含む少なくとも1つのタービンシュラウドセグメントを少なくとも1つのタービンノズルセグメントの下流側に結合する段階と、各タービンノズル外側バンド後方フランジに誘導される冷却流体が前記少なくとも1つのタービンシュラウドセグメントの前縁に向けて傾斜放出角で配向されるように、前記少なくとも1つのタービンノズルセグメントと流れ連通して冷却流体源を結合する段階とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、高圧タービンノズルの後縁と、隣接するシュラウドセグメントの前縁との間に定められるギャップ内への高温ガスの吸込みを最小にするためのタービンシュラウド冷却システムを提供する。このタービンシュラウド冷却システムは、高圧タービンを貫流する高温ガス流と、タービンノズル及びシュラウドセグメント間に定められるギャップを貫流する冷却空気との間の障壁の形成を促進する。
【0010】
本発明は、航空機ガスタービンのシュラウド組立体の冷却に関わる本出願に際して以下で説明されるが、適切な変更によれば、本発明の冷却システム又は組立体はまた、限定ではないがノズル及び/又はベーンセクションなどの他のタービンエンジン構成部品の冷却を促進するのにも好適とすることができることは、当業者には明らかであり、本明細書で与えられる教示により導かれるはずである。
【0011】
図1は、例示的なシュラウド組立体の側面図であって、シュラウド組立体を貫流する高圧冷却空気流を概略的に示している。図2は、代替的なシュラウド組立体の側面図であって、シュラウド組立体を貫流する高圧冷却空気流を概略的に示している。エンジン過渡動作中のシュラウド組立体の熱応答及び/又はシュラウド組立体の変位の制御を容易にするために、例示的な実施形態において、タービンエンジン冷却組立体108は、ガスタービンエンジンの高圧タービンセクション112及び低圧タービンセクション114用のシュラウド組立体(全体が参照符号110で示す)を含む。タービンエンジン冷却組立体108は、限定ではないが、ノズルセクション及び/又はベーンセクションのようなガスタービンエンジンの他のセクションの冷却を容易にするのにも好適とすることができる点は、当業者には明らかであり、本明細書で与えられる教示により導かれるはずである。
【0012】
シュラウド組立体110は、シュラウドセグメント130の形態のタービンエンジン冷却構成部品を含む。各シュラウドセグメント130は、その円周方向前縁133において前方取付けフック132を含む。シュラウドセグメント130はまた、中央取付けフック134と、シュラウドセグメント130の円周方向後縁137に隣接する後方取付けフック136とを含む。
【0013】
複数のシュラウドセグメント130は、一般に公知の方式で円周方向に配置され、環状のセグメントシュラウドを形成する。シュラウドセグメント130は、高圧タービンブレード(図示せず)とシュラウドセグメント130の高圧タービンセクションの半径方向内表面138との間、及び低圧タービンブレード(図示せず)とシュラウドセグメント130の低圧タービンセクションの半径方向内表面140との間に環状間隙を定める。複数のセグメントシュラウド支持体144がシュラウドセグメント130を相互連結する。各シュラウド支持体144は、隣接するシュラウドセグメント130を円周方向に跨いでこれらを支持する。別の実施形態において、シュラウド支持体144は、2つのシュラウドセグメント130よりも少ないか又は多い、あらゆる適当な数のシュラウドセグメント130を支持するように変更される。例示的な実施形態において、シュラウド組立体110は、26個のシュラウドセグメント130及び13個のシュラウド支持体144を含むが、別の実施形態において、あらゆる適当な数のシュラウドセグメント130及び/又はシュラウド支持体144を利用することができる。
【0014】
各シュラウド支持体144は、前方セクション146、中央セクション148、及び後方セクション150を含み、それぞれが前方に突出したハンガ152、154、及び156を形成する。取付けフック132、134、及び136は、シュラウド支持体144がそれぞれのシュラウドセグメント130を支持するように、ハンガ152、154、及び156を溝内舌状部又はハンガ内フックの相互連結部において協働させることによって受けられる。
【0015】
シュラウド組立体110は、シュラウド支持体144を支持する環状シュラウドリング構造体158を含む。一実施形態において、シュラウドリング構造体158は、一体部品の連続した環状シュラウドリング構造体である。各シュラウド支持体144並びに各シュラウドセグメント130の半径方向位置は、シュラウドリング構造体158上に形成された2つの環状位置制御リング162及び164だけによって厳密に制御される。従来のシュラウドリング構造体とは異なり、シュラウド組立体110の重量の低減又は制限を促進するために、シュラウドリング構造体158は2つの位置制御リング162及び164だけを含む。中央セクション位置制御リング162は、軸方向前方に突出したハンガ166を含み、該ハンガ166は、第1の円周方向の溝内舌状部又はハンガ内フックの相互連結部において支持構造体中央セクション148によって形成された後方突出取付けフック167を受け入れ及び/又はこれと協働する。後方位置制御リング164は、軸方向前方に突出するハンガ168を含み、該ハンガ168は、第2の円周方向の溝内舌状部又はハンガ内フックの相互連結部において支持構造体後方セクション150の後方突出取付けフック169を受け入れ及び/又はこれと協働する。
【0016】
例示的な実施形態において、ハンガ166及び/又は168は、それぞれハンガ154及びハンガ156と直接軸方向で整列し、すなわち同じ半径方向平面内でほぼ整列して、シュラウド支持体144、従って対応するシュラウドセグメント130に提供される半径方向支持及び/又は半径方向位置制御を最大にするのを促進する。この整列の向きは、シュラウド支持組立体全体の剛性の増大を促進する。図2に示す別の実施形態において、ハンガ166及び/又はハンガ168は、それぞれハンガ154及びハンガ156とオフセットして軸方向に整列しており、すなわち同じ半径方向平面内では一般に整列していない。例示的な実施形態において、シュラウドリング構造体158は、その後端部において燃焼器ケース(図示せず)にボルト固定される。シュラウドリング構造体158は、燃焼器ケースの境界部において前縁133から離れて片持ち式にされる。従って、中央セクション位置制御リング162は、燃焼器後方フランジ(図示せず)から数インチ離れて位置付けられ、これによって燃焼器ケースにおける半径方向偏位のあらゆる非均一な円周方向ばらつきとは無関係にされる。
【0017】
例示的な実施形態において、高圧冷却空気170は、シュラウド組立体110の上流側に位置付けられた圧縮機(図示せず)から抽気される。圧縮機から抽気された高圧冷却空気170の第1の部分171は、高圧タービンセクション112の冷却を促進する。圧縮機から抽気された高圧冷却空気170の第2の部分172は、低圧タービンセクション114の冷却を促進する。図1を更に参照すると、第1の部分171及び第2の部分172に対応する方向矢印は、それぞれ高圧タービンセクションのアクティブ対流冷却域173を通る高圧冷却空気170の第1の部分171、及び低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186(後述する)内を通る高圧冷却空気170の第2の部分172の流路の少なくとも一部を示している。
【0018】
この実施形態において、高圧冷却空気170の第1の部分171は、第1のすなわち高圧のタービンセクションアクティブ対流冷却域173に流量調整される。より具体的には、高圧冷却空気170の第1の部分171は、シュラウド支持体144内に形成された少なくとも1つの高圧タービンセクション(HPTS)供給孔174を通って流量調整される。高圧冷却空気170の第1の部分171は、高圧タービンセクションアクティブ対流冷却域173内に位置付けられた平鍋形HPTS衝突バッフル175に衝突する。バッフル175は、シュラウド支持体144に結合され、従って、上側HPTSキャビティ又はプレナム176を少なくとも部分的に形成する。次に高圧冷却空気170の第1の部分171は、衝突バッフル175内に形成された複数の穿孔177を介して、シュラウドセグメント130内に定められた下側HPTSキャビティ又はプレナム178に冷却空気として流量調整され、ここで冷却空気は、シュラウドセグメント130の裏面179に衝突する。使用済み衝突冷却空気180などの高圧冷却空気の一部は、シュラウドセグメント前縁133又はその近傍で形成された複数の前方に向いた冷却開口181を介してプレナム178から出る。該冷却開口は、高圧タービンノズル外側バンド183とシュラウドセグメント前縁133との間に定められるギャップ182のパージを促進するように構成される。高圧冷却空気の一部184は、シュラウドセグメント130内に形成された複数の後方に向いた冷却開口185を介して流量調整されて、内表面138及び/又は140のフィルム冷却を促進する。冷却開口181から出る高圧冷却空気の使用済み衝突冷却空気180は、前縁133におけるシュラウド組立体110内への高温ガス噴出又は再循環の阻止又は制限を促進する。
【0019】
圧縮機から抽気された高圧冷却空気170の第2の部分172は、低圧タービンセクション114の冷却を促進する。この実施形態において、高圧冷却空気170の第2の部分172は、第2の又は低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186に流量調整される。より具体的には、高圧冷却空気170の第2の部分172は、シュラウド支持体144内に形成された少なくとも1つの低圧タービン供給孔187を介して流量調整される。高圧冷却空気170の第2の部分172は、低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186内に位置付けられた平鍋形低圧タービンセクション衝突バッフル188に衝突する。バッフル188は、シュラウド支持体144に結合され、従って、上側LPTSキャビティ又はプレナム189を少なくとも部分的に形成する。次いで、高圧冷却空気170の第2の部分172は、衝突バッフル188内に形成された穿孔190を介して下側LPTSキャビティ又はプレナム191に流量調整され、ここで高圧冷却空気は、シュラウドセグメント130の裏面192に衝突する。冷却空気193は、シュラウドセグメント130を通って形成された複数の後方に向いた冷却開口194を介してプレナム191から出て、下流側のシュラウドセグメント130の後縁137の半径方向内表面140のフィルム冷却を促進する。
【0020】
図1に示すように、高圧冷却空気170は、最初に、少なくとも高圧タービンノズル外側バンド183と中央セクション位置制御リング162を形成するシュラウドリング構造体158の一部との間に形成されたダクト204に配向される。高圧冷却空気170は、これがダクト204を通って配向されるときに、ダクト204内で第1の部分171と第2の部分172とに分離される。高圧冷却空気170の第1の部分171は、HPTS供給孔174を介してアクティブ対流冷却域173内とプレナム178内に流量調整されて、高圧タービンセクション112における衝突冷却を促進する。使用済み衝突冷却空気180は、シュラウドセグメント前縁冷却開口181を介してシュラウドセグメント130から出て、高圧タービンノズル外側バンド183及びシュラウドセグメント130間に形成されたギャップ182のパージを促進し、及び/又は高圧タービンセクション112の後端部205に形成された冷却開口185を介してシュラウドセグメント130から出て、シュラウドセグメント130の内表面138及び/又は140のフィルム冷却を促進する。
【0021】
高圧冷却空気170の第2の部分172は、シュラウド支持体144とシュラウドセグメント130との間、及び中央セクション位置制御リング162と後方位置制御リング164との間に少なくとも部分的に形成される第2のアクティブ対流冷却域186に配向される。高圧冷却空気170の第2の部分172は、低圧タービンセクション114の冷却を促進する。一実施形態において、高圧冷却空気170の第2の部分172は、シュラウド支持体144内に形成された複数の低圧タービン供給孔187を介して流量調整される。より具体的には、高圧冷却空気170の第2の部分172は、アクティブ対流冷却域186に直接流量調整されて、低圧タービンセクション114におけるシュラウドセグメント衝突冷却を促進し、その結果、冷却空気は、シュラウド支持体144とシュラウドリング構造体158との間、及び中央セクション位置制御リング162と後方位置制御リング164との間に非アクティブ対流冷却域211を形成する第3の領域210を迂回する。使用済み衝突冷却空気は、シュラウドセグメント130の後縁137又はその近傍に形成された冷却開口194を介してシュラウドセグメント130から出る。
【0022】
図1に示す流路においては、高圧タービンセクションアクティブ対流冷却域173及び/又は低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186は、直接且つアクティブに冷却される。低圧タービンセクション非アクティブ対流冷却域211は、非アクティブであり、すなわちどのような高圧冷却空気も非アクティブ対流冷却域211を貫流しない。従って、エンジン過渡動作中に生じる環境条件に対する非アクティブ対流冷却域211内の熱応答が低減及び/又は遅延される。その結果、中央セクション位置制御リング162及び/又は後方位置制御リング164の過渡変位も低減及び/又は遅延される。
【0023】
図2に示すように、高圧冷却空気170は、高圧タービンノズル外側バンド183と中央セクション位置制御リング162を形成するシュラウドリング構造体158との間に少なくとも部分的に形成されるダクト204に配向される。高圧冷却空気170は、第1の部分171と第2の部分172とに分離される。高圧冷却空気170の第1の部分171は、プレナム176及び178を少なくとも部分的に形成する高圧タービンセクションアクティブ対流冷却域173にHPTS供給孔174を介して流量調整され、高圧タービンセクション112におけるシュラウドセグメント衝突冷却を促進する。使用済み衝突冷却空気180は、シュラウドセグメント前縁冷却開口181を介してシュラウドセグメント130から出て、高圧タービンノズル外側バンド183及びシュラウドセグメント130間のギャップ182のパージを促進し、及び/又は高圧タービンセクション112の後端部205に形成された冷却開口185を介してシュラウドセグメント130から出て、内表面138及び/又は140のフィルム冷却を促進する。
【0024】
高圧冷却空気170の第2の部分172は、シュラウド支持体144及びシュラウドセグメント130間、並びに中央セクション位置制御リング162及び後方位置制御リング164間に少なくとも部分的に形成された低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186に配向されて、低圧タービンセクション114の冷却を促進する。一実施形態において、高圧冷却空気170の第2の部分172は、シュラウド支持体144を貫通して形成された複数の低圧タービン供給孔187を介して流量調整される。高圧冷却空気170の第2の部分172は、プレナム189及び191を少なくとも部分的に形成する低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186に直接流量調整されて、低圧タービンセクション114におけるシュラウドセグメント衝突冷却を促進する。使用済み衝突冷却空気193は、シュラウドセグメント130の後縁137又はその近傍に形成された冷却開口194を介してシュラウドセグメント130から出る。
【0025】
図1及び2に示すようなシュラウド冷却組立体は、それぞれの供給孔174及び供給孔187を介して高圧タービンセクションアクティブ対流冷却域173及び/又は低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域186に高圧冷却空気を直接配向する。
【0026】
図1及び2に示すようなシュラウド冷却組立体においては、高圧冷却空気は、低圧タービンセクション非アクティブ対流冷却域211を介して流量調整又は配向されない。その結果、低圧タービンセクション非アクティブ対流冷却域211を形成する構成部品は、従来のシュラウド冷却組立体内でアクティブ対流冷却域を形成する構成部品よりも、エンジン過渡動作中の温熱条件及び/又は環境に対して比較的遅く応答する。温熱条件及び/又は熱環境に対するこの遅い応答は、中央セクション位置制御リング162及び/又は後方位置制御リング164の比較的遅い過渡変位を促進する。
【0027】
従って、低圧タービンセクションシュラウドリング構造体を迂回することにより、図1及び図2に示す高圧冷却空気流路は、エンジン過渡動作中のシュラウドセグメントの過渡熱応答及び/又は変位の低減及び/又は遅延を促進する。より遅い応答は、ブレード先端間隙及びタービンエンジン効率の改善を促進する。
【0028】
図3は、タービンノズルバンド183、ギャップ182、及びシュラウドセグメント前縁133の拡大断面略図である。タービンノズル外側バンド183は、タービンノズルセグメント520の一部として含まれる。タービンノズルセグメント520は、一般に、図4に示す円周方向に離間された複数の翼形ベーン510を含む。ベーンは、半径方向外側バンド183と半径方向内側バンド(図示せず)との間に延びる。例示的な実施形態において、外側バンド183は、半径方向内表面522と後方フランジ504とを含む。後方フランジ504は、上流面506、後縁500、及び上流面506から後縁500まで延びる複数の冷却開口508を含む。冷却開口508は、冷却空気526をシュラウドセグメント前縁133に向けて誘導するのを促進し、更に、ギャップ内に移動した移動高温ガスのギャップ182のパージを促進するように配向される。
【0029】
図4は、タービンノズル外側バンド183、外側バンド後方フランジ504、ギャップ182、及びシュラウド組立体前縁133の概略平面図である。より具体的には、図4に示すように、後方フランジ冷却開口508は、後方フランジ504を斜めに貫通して延び、シュラウドセグメント前縁開口181は、シュラウドセグメント前縁133を斜めに貫通して延びる。例示的な実施形態において、各ノズルセグメント520は、第1の側壁512と第2の側壁514とを含む少なくとも1つの翼形ベーン510を含む。例示的な実施形態において、第1の側壁512は凸状であり、各翼形ベーン510の負圧面を定め、第2の側壁514は凹状であり、各翼形ベーン510の正圧面を定める。側壁512及び514は、各翼形ベーン510の前縁516及び軸方向に離間された後縁518で互いに接合される。各翼形部後縁518は、それぞれの各翼形部前縁516から翼弦方向で下流側に離間される。第1及び第2の側壁512及び514はそれぞれ、半径方向内側バンド(図示せず)から半径方向外側バンド183にわたって長手方向すなわち半径方向外向きに延びる。
【0030】
各ベーン510は、前縁516から後縁518に向って翼形の輪郭(図示せず)を有する。高温燃焼ガスが翼形ベーン510の周りを流れるときに、側壁512に沿ったガスが加速されて低い静圧を生成し、側壁514に沿ったガスは減速されて高い静圧を生成する。エンジン作動中、高温燃焼ガスは、ベーン510とバンド183との間に誘導されて、内側バンド(図示せず)及び外側バンド183の表面上で側壁514から側壁512に向う1対の通路渦流を形成する。通路渦流は、スパン中間コア流からの高温燃焼ガスを内側バンド(図示せず)及び外側バンド183に向けて運ぶ。タービンノズル外側バンド後縁500には、円周方向に沿って周期的な圧力変動がある。通路渦流とシュラウド前縁133における円周方向圧力変動の組合せは、円周方向に周期的な局所ホットスポット550をシュラウド内表面138上に発生させることになる。時間の経過と共に、このようなホットスポット550は、エンジン組立体の全体性能を低下させ、及び/又はエンジンの耐久性を低くする可能性がある。
【0031】
冷却開口508は、後縁500に対して外側バンド後方フランジ504において斜めに配向され、冷却開口508から放出される冷却流は、矢印Aで示されるほぼ回転方向において放出角αで放出される。例示的な実施形態において、放出角αは傾斜しており、従って、タービン112及び114を通る燃焼ガスの流れと平行ではない。より具体的には、全ての冷却開口508は、同じ放出角αで斜めに配向される。或いは、開口508のいずれも冷却開口508が本明細書に記載するように機能することを可能にするあらゆる放出角αで不均一に斜めに配向することができる。例示的な実施形態において、開口508は、外側バンド後縁500全体にわたり円周方向に等距離に離間される。更に、例示的な実施形態において、開口508は、全て同じ大きさにされ、等しく斜め配向される。例示的な実施形態で示される冷却開口508は等しい大きさにされ、且つタービンノズル外側バンド183の後縁500にわたって均一に離間されているが、別の実施形態では、冷却開口508は、本明細書で記載されるように機能することを可能にするあらゆる大きさ、形状、又は向きを有することができる点を理解されたい。
【0032】
例示的な実施形態において、冷却開口181は、シュラウド組立体前縁133を貫通して延び、斜めに配向されて、ギャップ182の中心線555に対して測定した放出角βで冷却流体を放出する。例示的な実施形態において、放出角βは斜めであり、従って、開口181から放出される流れは、タービン112及び114内を通る燃焼ガス流と平行ではない。より具体的には、例示的な実施形態において、冷却開口181は、矢印Aの方向に放出角βで均等に斜めに配向される。或いは、開口181のいずれも本明細書で記載されるように機能することを可能にするあらゆる放出角βで不均一に斜めに配向してもよい。例示的な実施形態において、開口181は、シュラウド組立体前縁133にわたって円周方向に等距離に離間される。更に、例示的な実施形態において、開口181は、全て同じ大きさにされ、等しく配向されている。例示的な実施形態において示された冷却開口181は、同じ大きさにされ、シュラウド組立体110の前縁133にわたって均等に離間されているが、別の実施形態では、冷却開口181は、本明細書で記載されるように機能することを可能にするあらゆる大きさ、形状、又は向きを有することができる点は理解されたい。
【0033】
例示的な実施形態において、冷却開口508は各々、ギャップ182にわたって配置された冷却開口181のそれぞれと実質的に整列される。例示的な実施形態において、冷却開口508は、それぞれの冷却開口181と実質的に整列されるが、別の実施形態では、冷却開口508は、それぞれの冷却開口181と整列する必要はなく、冷却開口508及び181が本明細書で記載されるように機能することができる、それぞれの冷却開口181からのある距離だけオフセットさせてもよい。これに加えて、例示的な実施形態では、放出角α及びβは同じ大きさを有する。放出角α及びβは、例示的な実施形態においては同じ大きさを有すると説明したが、別の実施形態では、冷却開口508及び181は、それぞれ異なる角度α及びβで配向することができる点は理解されたい。
【0034】
作動中、冷却開口508及び181の斜めの向きは、これらを介して誘導される空気に対して時計方向すなわち接線方向の速度成分をもたらす。その結果、位置ずれした冷却孔を通る冷却空気を転向する際にエネルギー損失が殆ど無いので、冷却流のエネルギー増大が促進される。空気の時計方向モーメントは、ギャップ182内部の圧力分布の均衡を促進するので、ギャップ182内への高温ガスの吸込みが低減されるようになる。
【0035】
更に、タービンノズル組立体520の周囲の冷却開口508及び181の斜めの向き及び位置は、ギャップ182内への高温ガスの吸込みを低減するのを促進し、前縁133から下流側のシュラウド内表面138にわたるフィルム冷却の改善を促進する。冷却開口508及び181の向き及び位置は、冷却開口508及び181の長さの増大を促進し、従って、各外側バンド183及びシュラウド組立体110内における冷却開口508及び181の対流冷却能力を高める。
【0036】
上記のタービンノズルセグメント及びシュラウドセグメントは、タービンノズル外側バンドの後方フランジに沿って延び、タービンシュラウド組立体の前縁に沿って延びる複数の斜め配向の冷却孔を含む。より具体的には、これらの冷却孔は、外側バンドの後方フランジを貫通し、タービンシュラウド組立体の前縁を貫通して延びる。その結果、冷却空気は、後方フランジと前縁との間に形成されたギャップ内に配向され、ギャップ内への高温ガスの吸込みの低減を促進し、高温燃焼ガスに直接曝されるシュラウド内表面の区域への冷却空気の効率的な分布を促進する。従って、タービンノズルセグメント及びシュラウドセグメントは、低い作動温度で動作可能であり、その結果、タービンノズルセグメント及びシュラウドセグメントの耐久性及び有効寿命の延長を促進し、エンジンの運転コストが低減される。
【0037】
以上において、タービンノズルセグメント及びシュラウドセグメントの例示的実施形態が詳細に説明された。これらのセグメントは、本明細書に記載された具体的な実施形態に限定されず、各セグメントの構成要素は、本明細書に記載された他の構成要素と独立して別個に利用することができる。
【0038】
本発明を種々の具体的な実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば、本発明を請求項の精神及び範囲内で修正を実施することができる点は理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】シュラウド組立体を通る高圧冷却空気流を概略的に示している例示的なシュラウド組立体の側面図。
【図2】シュラウド組立体を通る高圧冷却空気流を概略的に示している代替のシュラウド組立体の側面図。
【図3】図1又は2に示すシュラウド組立体とタービンノズルとの間に定められたギャップの拡大概略断面図。
【図4】図3に示すシュラウド組立体及びタービンノズルの平面図。
【符号の説明】
【0040】
108 タービンエンジン冷却組立体
110 シュラウド組立体
112 高圧タービンセクション
114 低圧タービンセクション
130 シュラウドセグメント
132 前方取付けフック
133 シュラウドセグメント前縁
134 中央取付けフック
136 後方取付けフック
137 円周方向後縁
138 フィルム冷却シュラウド半径方向内表面
140 冷却半径方向内表面
144 シュラウド支持体
146 前方セクション
148 支持構造体中央セクション
150 支持構造体後方セクション
152 前方突出ハンガ
154 前方突出ハンガ
156 前方突出ハンガ
158 シュラウドリング構造体
162 中央セクション位置制御リング
164 後方位置制御リング
166 軸方向前方突出ハンガ
167 後方突出取付けフック
168 軸方向前方突出ハンガ
169 後方突出取付けフック
170 高圧冷却空気
171 第1の部分
172 第2の部分
173 高圧タービンセクションアクティブ対流冷却域
174 高圧タービンセクション(HPTS)供給孔
175 平鍋形HPTS衝突バッフル
176 上側HPTSキャビティ又はプレナム
177 穿孔
178 下側HPTSキャビティ又はプレナム
179 裏面
180 使用済み衝突冷却空気
181 前縁冷却孔
182 ギャップ
183 高圧タービンノズル外側バンド
184 部分
185 後方に配向された冷却孔
186 第2のすなわち低圧タービンセクションアクティブ対流冷却域
187 低圧タービン供給孔
188 平鍋形低圧タービンセクション衝突バッフル
189 上側LPTSキャビティ又はプレナム
190 穿孔
191 下側LPTSキャビティ又はプレナム
192 裏面
193 使用済み衝突冷却空気
194 後方に配向された冷却孔
204 ダクト
205 後端部
210 第3の領域
211 非アクティブ対流冷却域
500 外側バンド後縁
504 外側バンド後方フランジ
506 上流面
508 後方フランジ冷却孔
510 翼形ベーン
512 第1の側壁
514 第2の側壁
516 翼形部前縁
518 翼形部後縁
520 タービンノズル組立体又はノズルセグメント
522 半径方向内表面
526 冷却空気
550 周期的局所ホットスポット
555 中心線
α 放出角
β 放出角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル組立体を備えたエンジン組立体であって、
前記ノズル組立体が、
内側バンドと、
後方フランジ(504)と半径方向内表面(522)とを含み、前記後方フランジが冷却流体(526)を傾斜放出角(α)で配向するよう構成された複数の冷却孔(508)を含む外側バンド(183)と、
前記内側バンドと前記外側バンドとの間を延びる少なくとも1つの翼形ベーン(510)と、
を含むことを特徴とするエンジン組立体。
【請求項2】
シュラウド組立体(110)を更に備え、
前記シュラウド組立体が、シュラウド内表面(138)とシュラウド組立体前縁(133)とを含み、前記シュラウド組立体前縁が、前記外側バンド(183)後方フランジ(504)と前記シュラウド組立体前縁との間に定められたギャップ(182)の中心線(555)に対して傾斜角度(β)で冷却空気を放出するように構成された複数の冷却孔(181)を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン組立体。
【請求項3】
前記外側バンド(183)の複数の冷却孔(508)の各々が、前記シュラウド組立体前縁(133)に定められた前記複数の冷却孔のそれぞれと実質的に整列されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン組立体。
【請求項4】
前記外側バンド(183)の複数の冷却孔(508)の各々と、前記シュラウド組立体(110)の複数の冷却孔の各々とが、前記タービンノズルセグメントの回転方向に対して斜め配向されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン組立体。
【請求項5】
前記外側バンド後方フランジ(504)の複数の冷却孔(508)が、前記外側バンド後方フランジと前記シュラウド組立体前縁(133)との間に定められたギャップ(182)内への高温ガスの吸込みの低減を促進する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン組立体。
【請求項6】
前記外側バンド後方フランジ(504)の複数の冷却孔(508)と前記複数のシュラウド組立体前縁冷却孔(181)とが、前記シュラウド内表面(138)のフィルム冷却を促進する、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジン組立体。
【請求項7】
前記外側バンド後方フランジ(504)の複数の冷却孔(508)が、前記複数のシュラウド組立体前縁冷却孔(181)の各々の放出角(β)とは異なる放出角(α)で配向された、
ことを特徴とする請求項4に記載のエンジン組立体。
【請求項8】
内側バンドと、外側バンド(183)と、前記内側バンド及び前記外側バンド間を延びる少なくとも1つの翼形ベーン(510)とを含むノズル組立体を備えたガスタービンエンジンであって、
前記外側バンドが、後方フランジ(504)と半径方向内表面(522)とを含み、前記後方フランジが、冷却流体(526)を傾斜放出角(α)で配向するように構成された複数の冷却孔(508)を含む、
ことを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項9】
シュラウド組立体(110)を更に備え、
前記シュラウド組立体が、シュラウド内表面(138)とシュラウド組立体前縁(133)とを含み、前記シュラウド組立体前縁が、前記外側バンド後方フランジ(504)と前記シュラウド組立体前縁との間に定められたギャップ(182)の中心線(555)に対して傾斜角度(β)で冷却空気(180)を放出するように構成された複数の冷却孔(181)を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載のガスタービンエンジン。
【請求項10】
前記複数の冷却孔(508)の各々が、前記シュラウド組立体前縁(133)に定められた前記複数の冷却孔(181)のそれぞれと実質的に整列されている、
ことを特徴とする請求項9に記載のガスタービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−138666(P2008−138666A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255375(P2007−255375)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】