タービンハウジング
【課題】内側ハウジングとこの内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングにおいて、タービンの効率の低下を防ぐことを可能にする。
【解決手段】タービンハウジング10は、内側ハウジング24と、該内側ハウジング24を隙間Gを介して覆う外側ハウジング26とを備えていて、前記内側ハウジング24はスクロール室S2の軸方向中間部分に内側分割部P1を有し、前記外側ハウジング26は前記スクロール室S2の軸方向中間部分に外側分割部P2を有している。タービンハウジング10では、前記隙間Gを保ったまま、前記内側ハウジング24と前記外側ハウジング26とを前記スクロール室S2の軸方向中間部分において連結する連結部材42を、前記内側分割部P1および前記外側分割部P2に挟みつつ接合している。
【解決手段】タービンハウジング10は、内側ハウジング24と、該内側ハウジング24を隙間Gを介して覆う外側ハウジング26とを備えていて、前記内側ハウジング24はスクロール室S2の軸方向中間部分に内側分割部P1を有し、前記外側ハウジング26は前記スクロール室S2の軸方向中間部分に外側分割部P2を有している。タービンハウジング10では、前記隙間Gを保ったまま、前記内側ハウジング24と前記外側ハウジング26とを前記スクロール室S2の軸方向中間部分において連結する連結部材42を、前記内側分割部P1および前記外側分割部P2に挟みつつ接合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービンハウジングに係り、特に、内側ハウジングとこの内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ過給機のタービンハウジングとしては鋳造製のものが一般的である。これに対して、鋼板のプレス成形品により作製されるタービンハウジングも例えば特許文献1により提案されている。このものは、耐熱薄板鋼板で作製された内側ハウジングと外側ハウジングとが備えられ、内側ハウジングを隙間を介して外側ハウジングにより覆う構造となっている。このタービンハウジングにおいては、外側ハウジングと内側ハウジングとが、所定の間隔をおいて金属メッシュからなる複数の係止部材により、その大部分が互いに離隔するように保持されている。
【0003】
さらには、特許文献2には、鋼板のプレス成形品により作製されるタービンハウジングの他の一例が開示されている。このものにおいては、外側ハウジングにより隙間を介して被包される内側ハウジングが半割状となるように分割形成され、その半割状に分割形成されたもの同士はスライド可能な状態で組み合わされて開閉可能となるようにされている。これら内側ハウジングと外側ハウジングとの間には、その間の隙間を所定間隔で保持するためにSUSメッシュが介在されている。
【0004】
一方、スクロール室に向けて突出した部材を有するタービンハウジングも提案されている。例えば、特許文献3には、鋳造製のタービンハウジングの内壁面にセラミック断熱層を介して薄板成形体を配置し、通路面積が異なるタービンスクロールを形成するようにタービンハウジングからノズル部まで伸長した平板を設け、これによりスクロール室を二分割するようにしたタービンハウジングが開示されている。このものでは、薄板成形体と平板との接合部を、タービンハウジング作製時の鋳造により溶解させ、それらを一体的に融合するようにしている。また、特許文献4には、タービンハウジング本体の左右部分により挟持した仕切板をその左右部分と共に溶接するようにしたタービンハウジングが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−293779号公報
【特許文献2】特開2002−349275号公報
【特許文献3】特開昭63−111234号公報
【特許文献4】実開昭64−51734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
間に隙間のある二重殻構造を有するタービンハウジングにおいては、排気ガスの熱による膨張や収縮により内側ハウジングが熱疲労等するのを低減するべく、例えば、内側ハウジングを構成する部材の端部などを自由にスライド可能にするのが好ましい。一方、このようにすると、長い間の使用により内側ハウジングにそのような膨張や収縮が繰り返し生じることで、内側ハウジングと外側ハウジングとの位置関係にずれが生じ、それらの間の隙間の大きさなどが変化する虞がある。このような事態が生じると、タービンの効率を高性能に維持するのは難しくなる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、内側ハウジングとこの内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングにおいて、タービンの効率の低下を防ぐことを可能にするタービンハウジングを提供することを目的とする。
【0008】
なお、上記特許文献3および上記特許文献4に記載のものは、共に、間に隙間のある二重殻構造を有するタービンハウジングではない。すなわち、それらにおいてはスクロール室の外側に隙間が保たれない。したがって、それらは上記問題点を解消するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るタービンハウジングは、内側ハウジングと、該内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、前記内側ハウジングはスクロール室の軸方向中間部分に内側分割部を有し、前記外側ハウジングは前記スクロール室の軸方向中間部分に外側分割部を有し、前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとを前記スクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材を、前記内側分割部および前記外側分割部に挟みつつ接合するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとをスクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材が、前記内側分割部および前記外側分割部にて挟みつつ接合されるので、所定の間隔を保ちつつ外側ハウジング内に内側ハウジングが連結部材を介して固定される。その結果、内側ハウジングがスライド可能な自由な部分を有している状態で、排気ガスの熱によって内側ハウジングに膨張や収縮が繰り返し生じても、内側ハウジングと外側ハウジングとの位置関係はずれることが防止される。すなわち、それらの間の隙間の大きさなどは変わらずに保たれることになる。したがって、タービンの効率の低下を防ぐことが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記連結部材は、プレート状である。連結部材はプレート状であるので、内側分割部や外側分割部に挟まれて接合されると、スクロール室の軸方向中間部分の広範囲にわたって外側ハウジング内に内側ハウジングがしっかりと固定されることになる。
【0012】
さらに、この場合、前記連結部材は、前記内側ハウジングの内方に延び、軸方向に二分割するように前記スクロール室を仕切り、該スクロール室をツインスクロール形状になすようにしても良い。これにより、容易に、且つ安価に、ツインスクロール形状のスクロール室を有するタービンハウジングを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。なお以下の実施形態に係るタービンハウジングは、車両用ターボ過給機のラジアル形タービンに適用されるものである。
【0014】
図1から図4に、第一実施形態のタービンハウジング10の外観図を示す。図1はタービンハウジング10の右側面図であり、図2はその左側面図であり、図3はその正面図であり、図4はその背面図である。図1および図2に白抜き矢印で排気ガスの流れを示す。エンジン(図示せず)からの排気ガスは、図1、2中下方の入口12からタービンハウジング10内に入り、タービンハウジング10内で直角に向きを変え、タービン軸方向に沿って出口14からタービンハウジング10外に排出される。入口12付近には入口側フランジ部16が設けられ、入口側フランジ部16はエンジン側の排気管または排気マニホールド(図示せず)との接続に利用される。出口14付近には出口側フランジ部18が設けられ、出口側フランジ部18はその下流側の排気管(図示せず)との接続に利用される。またセンターハウジング20(図6参照)との接続に利用されるセンターフランジ部22も設けられている。
【0015】
タービンハウジング10の断面図を図5および図6に示す。図5は、図1におけるA−A線に沿った断面図、換言すると、タービン軸Lに直交する面で切断した断面図である。なお、図5には、内側ハウジング24と、外側ハウジング26と、そして入口側フランジ部16を示している。図6は、図3のB−B線に沿った断面図、換言すると、タービン軸Lを含む面で切断した断面図である。
【0016】
これらの図から理解されるように、タービンハウジング10は、ともにプレス成形可能な板金製の内側ハウジング24および外側ハウジング26を備え、いわゆる二重殻構造とされている。内側ハウジング24は、ハウジング内部の排気ガスの流路を実質的に区画形成する。外側ハウジング26は、内側ハウジング24を隙間Gを介して覆い、内側ハウジング24を保護すると同時に断熱し、且つタービンハウジング10としての剛性を高める役割も担う外殻ないし構造体をなしている。内側ハウジング24によって主として区画される排気ガスの流路は、上流側から順に、入口12、助走室S1、スクロール室S2、タービンホイール室S3、出口室S4および出口14とから構成されている。スクロール室S2の半径方向内側にタービンホイール室S3が形成され、タービンホイール室S3にはタービンホイール28(図6参照)が回転可能に収容される。
【0017】
ただし、本第一実施形態では、後述するように、入口12は第一入口12aと第二入口12bとからなり、助走室S1は第一助走室S1aと第二助走室S1bとからなり、またスクロール室S2は第一スクロール室S2aと第二スクロール室S2bとからなっている。
【0018】
図6に示されるように、センターハウジング20の一端にタービンハウジング10のセンターフランジ部22が接続固定される。この固定には図示されるような断面コ字状且つリング状の締結具30が用いられる。センターハウジング20の他端には図示しないコンプレッサハウジングが接続固定され、コンプレッサハウジングには、タービン軸32によりタービンホイール28と同軸連結されたコンプレッサホイールが収容される。
【0019】
本第一実施形態の内側ハウジング24は、第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36と、第一助走部材38と、そして第二助走部材40との四つの部材から分割形成されている。第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36とは、後述するプレート状部材42を間に挟みつつ接合される(図6参照)。これにより、第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36との内側にスクロール室S2が区画形成される。一方、本第一実施形態では、スクロール室S2の上流側に連通する助走室S1が第一助走部材38と第二助走部材40との2つの部材により区画形成される。
【0020】
内側ハウジング24は、スクロール室S2のタービン軸Lの方向の中間部分(以下、「軸方向中間部分」と称し得る。)に分割部P1を有していて、この分割部P1でスクロール室S2を形成する第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とは分割される。第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とのタービン軸Lに沿った分割位置は、スクロール室S2の最外径位置付近であり、スクロール室S2を半割りするような位置である。概ねタービン軸Lに直交する面上に位置する分割部P1は、第一内側ハウジング部材34の第一内側分割部34Pと、第二内側ハウジング部材36の第二内側分割部36Pとからなっていて、後で詳述するプレート状部材42がこれらの間、すなわち分割部P1に挟まれて接合されている(図6参照)。以下、本明細書において、内側ハウジング24における分割部P1を、「内側分割部」と称する。なお、第一内側ハウジング部材34は第二内側ハウジング部材36よりもタービン軸Lの方向の出口先端側に位置される。
【0021】
第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とは、それぞれ金属の板材料をプレス成形することで作製される。すなわちそれらは板金製であるので、これらの作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされ、外側ハウジング26をなす金属板材料よりも薄いものが使用される。第一内側ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36の金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。
【0022】
図5に示されるように、内側ハウジング24には、助走室S1からスクロール室S2への排気ガスの流路を形作るように、舌片状のタングTが設けられている。当該タングTは、図7に示されるように、第一および第二内側ハウジング部材34、36に形成された凸平面状のタング部44、46を、プレート状部材42を介して、互いの対向面44a、46aで接合させ、溶接等により固定して形成される。そのようにして接合されるプレート状部材42の端部は、タング部44、46の嵌め合いが良好に行われるような段形状にされている(図7参照)。図5の断面図にプレート状部材42を重ねて示した図、すなわち対向面44aにプレート状部材42を当接させた図を図8に示す。図8から、プレート状部材42はスクロール室S2を軸方向に二分割することが明らかである。
【0023】
内側分割部P1に挟まれて接合される連結部材として、本第一実施形態では、上記プレート状部材42が用いられている。プレート状部材42は、環状であり、外側ハウジング26から外部にわずかに突出する大きさを有すると共に、中央付近にタービンホイール28の外径、すなわちその回転輪郭の径よりも若干大きな径の貫通孔42aを有している。したがって、図6に示すように、タービンハウジング10内にタービンホイール28が収容された状態で、貫通孔42a内には、タービンホイール28が回転可能に位置される。プレート状部材42は、スクロール室S2の軸方向中間部分の内側分割部P1に挟まれ、タービン軸Lにほぼ直交する面上に延在するように取り付けられる。プレート状部材42は、内側ハウジング24の内方に延びている。プレート状部材42は、スクロール室S2とタービンホイール室S3との境に位置する、縮径したノズル部S5にまで内方に延びている。したがって、プレート状部材42は、軸方向に二分割するようにスクロール室S2を仕切り、スクロール室S2をツインスクロール形状になす。すなわち、スクロール室S2は、タービン軸Lに概ね直交する面で二分割されて、二つのスクロール室S2a、S2bから構成されることになる。なお、二つのスクロール室S2a、S2bは、プレート状部材42と第一内側ハウジング部材34とによって形成される第一スクロール室S2aと、プレート状部材42と第二内側ハウジング部材36とによって形成される第二スクロール室S2bとである。
【0024】
なお、本第一実施形態のプレート状部材42には、前記隙間Gがプレート状部材42で完全に2つの領域に隔てられないように、連通孔42bが設けられている(図8参照)。図8では、連通孔42bは3つ設けられているが、本発明は連通孔42bの数を制限しない。なお、連通孔42bは設けられなくても良い。
【0025】
プレート状部材42は、金属板材料からなっている。そして、プレート状部材42は、上記形状にすべく打ち抜き加工が施されて作製されていて、概ね湾曲することなくプレート状に保たれている。したがって、プレート状部材42は、安価に作製される。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされるが、内側ハウジング24をなす金属板材料よりも厚いのが好ましい。この金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。
【0026】
第一助走部材38と第二助走部材40とは、それぞれ管状部材となっている。図9にタービンハウジング10に取り付けられた入口側フランジ部16を図1の入口側の白抜き矢印の向きに見たところを示すように、入口12は2つの第一入口12aと第二入口12bとからなっている。本第一実施形態では、これら第一入口12aと第二入口12bとのそれぞれに、第一助走室S1aと第二助走室S1bとが連通されるように、第一助走部材38と第二助走部材40とが配置される。さらに、上記の如く、プレート状部材42によって分けられた二つのスクロール室S2a、S2bのそれぞれに、第一助走室S1aと第二助走室S1bとが連通されるように、第一助走部材38と第二助走部材40とが配置される。第一助走部材38および第二助走部材40は、それぞれ上記第一ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36内に嵌め込まれて、その嵌合部同士は接合される。本第一実施形態では、二つの入口12a、12bと、二つのスクロール室S2a、S2bとは、ほぼ90°回転された位置関係を有するので、第一助走部材38と第二助走部材40とはそれぞれ90°捻られた形状にされる(図2および図5等参照)。
【0027】
第一助走部材38と第二助走部材40との管状部材は、それぞれ長手方向にほぼ半割にされたプレス成型品である部材が互いに接合されることで作製される。すなわちそれらは板金製であり、その作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされ、第一内側ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36をなす金属板材料とほぼ同じ厚さのものが使用される。第一助走部材38と第二助走部材40の金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。なお、第一助走部材38と第二助走部材40とは、それぞれ、管状の部材を捻って加工することで作製されても良いし、管状の部材に流体圧を作用させて成形する流体圧成形(例えば、ハイドロフォーミング)によって作製されても良い。
【0028】
本第一実施形態の外側ハウジング26は、第一外側ハウジング部材48と、第二外側ハウジング部材50とから分割形成されている。それらは、上記プレート状部材42を間に挟みつつ接合される。外側ハウジング26は、内側ハウジング24と同様、軸方向中間部分に分割部P2を有している。すなわち、外側ハウジング26を第一外側ハウジング部材48と第二外側ハウジング部材50とにする、そのタービン軸Lに沿った分割位置は、スクロール室S2の最外径位置付近であり、スクロール室S2を半割りするような位置である。タービン軸Lにほぼ直交する面上に位置する上記分割部P2は、第一外側ハウジング部材48の第一外側分割部48Pと第二外側ハウジング部材50の第二外側分割部50Pとからなっている。上記プレート状部材42はこれらの間に挟まれて接合される。以下、本明細書において、当該外側ハウジング26における分割部P2を、上記内側ハウジング24の内側分割部P1に対して、「外側分割部」と称する。なお、第一外側ハウジング部材48は第二外側ハウジング部材50よりもタービン軸Lの方向の出口先端側に位置される。
【0029】
第一外側ハウジング部材48と第二外側ハウジング部材50とは、それぞれ金属の板材料をプレス成形することで作製される。すなわちそれらは板金製であるので、これらの作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、内側ハウジング24よりも厚くされ、例えば1.5mmから2.5mmとされる。外側ハウジング26の金属板材料も、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはフェライト系ステンレス鋼が用いられる。なお、本発明に係る外側ハウジング26はこのような構成、寸法、材料等に限定されるものではない。ただし外側ハウジング26はタービンハウジング10の外殻であるため、ある一定以上の強度、剛性を有することが必要とされる。
【0030】
上記のように、連結部材としての上記プレート状部材42は、内側ハウジング24の内側分割部P1に挟まれると共に、外側ハウジング26の外側分割部P2にも挟まれて接合される。そして、プレート状部材42は、スクロール室S2にまで内方に延在すると共に、外側ハウジング26にまで外方に延在する。本第一実施形態では、外側ハウジング26から外方へ突出する端部を有する程度にまで、プレート状部材42は外方に延びている。プレート状部材42は、スクロール室S2の外周部分に位置する内側ハウジング24と外側ハウジング26との間に形成される隙間Gを横断して内側分割部P1と外側分割部P2とに挟まれて接合されている。その結果、プレート状部材42により内側ハウジング24と外側ハウジング26とは連結される。したがって、内側ハウジング24と外側ハウジング26との位置関係、およびそれらの間の隙間Gは一定に保たれることになる。
【0031】
図5および図10に示されるように、入口側フランジ部16は例えば厚肉(5mmから15mm)の金属板材料のプレス加工により作製される。ここで入口側フランジ部16には外側ハウジング26の入口側端部52が挿入されて溶接等により固定される。なお入口側フランジ部16には、外側ハウジング26の入口側端部52を位置決めするための段部54が設けられている。
【0032】
これに対し、外側ハウジング26の入口側端部52の内側には、内側ハウジング24の入口側端部56が単にスライド可能に嵌め合わされるだけであり、これにより内側ハウジング24と外側ハウジング26との熱変形差が吸収されるようになっている。即ち、タービン運転時は内側ハウジング24が排気ガスの熱を直接受け、高温となるため、内側ハウジング24の方が外側ハウジング26より熱膨張量が大きい。このときの熱膨張差が、外側ハウジング26の入口側端部52に対する内側ハウジング24の入口側端部56のスライド移動により吸収される。これにより内側ハウジング24内の流路の形状が保たれると共に、内側ハウジング24に作用する応力が緩和されるようにしている。いわばこのスライド部は熱膨張差を吸収するための内側ハウジング10のための逃げである。このようなスライド部は後述する出口側にも設けられ、このタービンハウジング10では入口側と出口側との少なくとも二箇所で内側ハウジング24はスライド可能に支持される。このスライド部では、微視的に見れば、部材間の境界に隙間があり、この隙間を排気ガスが微量ながら通過する。この点については後に詳しく述べる。入口側の隙間が図10に誇張してG1で示され、この隙間G1はメインの隙間Gに連通される。隙間G1は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。
【0033】
さらに、図6に示されるように、外側ハウジング26はセンターフランジ部22に溶接等により接続固定される。しかしながら、本第一実施形態では内側ハウジング24のセンター側端部58はセンターフランジ部22の内側端面60に固定されずに接触しているのみである。したがって、タービンハウジング10では、センターフランジ側でも内側ハウジング24は外側ハウジング26やセンターフランジ部22に対してスライド可能に支持される。それ故、本第一実施形態のタービンハウジング10では入口側と出口側と、そしてセンターフランジ側の三箇所で内側ハウジング24がスライド可能に支持されることになる。なお、内側ハウジング24は、センターフランジ側で、外側ハウジング26およびセンター側フランジ部22の少なくともいずれかに接合されても良い。
【0034】
タービンハウジング10の出口側では、外側ハウジング26の出口側端部62に出口管64を介して出口側フランジ部18が取り付けられている(図6参照)。外側ハウジング26の出口側端部62は、全体として円筒状をなすと共に、その末端部62aが縮径されるようクランク状に成形され、その末端部62aの外側に出口管64の一端部が嵌められ、溶接等により固定されている。出口管64の他端部はプレス加工等により直角に曲げられ、そこに平板リング状の出口側フランジ部18が溶接等により固着される。出口側フランジ部18は管材を切断したり鋳造したりすることによって作製できる。これら出口管64および出口側フランジ部18により出口室S4および出口14が形成される。
【0035】
さらに本第一実施形態のタービンハウジング10は、タービンホイール28のシュラウド部28aを取り囲むためのシュラウド部材66を備えている。シュラウド部材66は、円筒状に形成され、その上流側部分66aがタービンホイール28のシュラウド部28aのシュラウド曲線に倣うようなフレア形状とされている。シュラウド部材66の下流側端部66bは、外側ハウジング26の末端部62aの内側に嵌め入れられて、全周に亘って溶接等により固定される。これによりシュラウド部材66はタービン軸L上に中心を持ち、外側ハウジング26の円筒状の出口側端部62と同軸に配置されるようになる。
【0036】
上記シュラウド部材66は管材からなり、この管材をプレス加工にて曲げ成形することにより容易に且つ安価に作製できる。タービンホイール28のシュラウド部28aと、シュラウド部材66との間のクリアランス(チップクリアランス)は、タービン効率に影響を及ぼすため重要である。そこでこのチップクリアランスを高精度に保つため、そのシュラウド部28aに対向するシュラウド部材66の表面は機械加工により高精度に仕上げられる。ただし曲げ成形のみで精度が得られる場合は機械加工を省略しても良い。シュラウド部材66をなす管材の厚さは、機械加工を行う場合は加工代を見込んで内側ハウジング24よりも厚くされ(例えば1.5mmから3.0mm程度)、機械加工を行わない場合は内側ハウジング24よりも厚くされるかまたは同等とされる。なお、シュラウド部材66の厚さを大きくするとその剛性が高くなり、運転中の熱変形が抑制される。シュラウド部材66の内側には高温の排気ガスが通過するので、シュラウド部材66は耐熱性、耐食性に優れた材料、例えばステンレス鋼で作製される。このシュラウド部材66の内側方向にタービンホイール室S3が形成される。
【0037】
このようにして外側ハウジング26にシュラウド部材66を組み付けると、外側ハウジング26とシュラウド部材66との間にリング状の隙間G2が形成される。この隙間G2は、シュラウド部材66の出口側端部66bと外側ハウジング26の末端部62aとの固着部即ち閉止部により、タービンホイール28の出口側即ち出口室S4および出口14に対し閉止され、他方、タービンホイール28の上流側即ちスクロール室S2に対しては開放されることとなる。この隙間G2に、内側ハウジング24の出口側端部68が挿入されている。内側ハウジング10の出口側端部68は、縮径したノズル部S5を形成する、第一内側ハウジング部材34のスクロール室形成部34aから出口側に向かって突出形成され、全体として円筒状に形成されると共に、シュラウド部材66の外周面に沿う湾曲形状とされている。そして出口側端部68の先端部が隙間G2に挿入されている。この挿入部において出口側端部68はスライド可能であり、即ち、出口側端部68の内周面がシュラウド部材66の外周面に対しスライド可能であり、出口側端部68の外周面が外側ハウジング26の出口側端部62の内周面に対しスライド可能である。
【0038】
こうして、内側ハウジング24の出口側端部68がタービン軸Lの方向にスライド可能に支持され、内側ハウジング24と外側ハウジング26との熱変形差を吸収するスライド支持部が、タービン出口側にも形成されることになる。このスライド支持部においても、微視的に見れば部材間の境界に隙間がある。この隙間は、図11に誇張して示されるように、出口側端部68と外側ハウジング26との間の隙間G3、および出口側端部68とシュラウド部材66との間の隙間G4である。隙間G3、G4は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。出口側端部68と前記閉止部との間にも軸方向の比較的大きな隙間G5があり、この隙間G5により出口側端部68の移動が十分許容される。
【0039】
結局、図11に示されるように、隙間G3、G5、G4によりUターン状の流路が形成され、この流路は、内側ハウジング24と外側ハウジング26との間のメインの隙間Gにその上流端が連通接続されると共に、その下流端がタービンホイール28のリーディングエッジ部28b直前のスクロール室S2に連通接続される。
【0040】
次に、上記第一実施形態のタービンハウジング10に関し、その作用および効果について詳述する。
【0041】
ターボ過給機の運転時、エンジンからの排気ガスは、入口12からタービンハウジング10内へ入り、助走室S1、スクロール室S2を順に経てタービンホイール室S3に入り、ここでタービンホイール28を回転駆動する。その後、出口室S4を経て出口14から排出される。タービンホイール28の回転駆動によりコンプレッサホイールが回転駆動され、エンジンへ空気が過給されることとなる。
【0042】
一方、図10に示した隙間G1から、微量ながら排気ガスが隙間Gに流入する場合がある。この排気ガスは、図11に矢印で示されるように、出口側の隙間G2に到達し、隙間G3、G5、G4を順に経てタービンホイール28の上流側に戻される。隙間G2がタービンホイール28の出口側に対し閉止されているので、隙間Gに流入した排気ガスがタービンホイール28(シュラウド部28aの外周面とシュラウド部材66の内周面との間)を通過せずに出口室S4側へ漏れ出すことはない。一方、この隙間G2がタービンホイール28の上流側に開放されているので、隙間Gに流入した排気ガスは全てタービンホイール28の駆動に供される。結局、隙間Gに流入した排気ガスを無駄にすることなく全て回収してタービンホイール28の駆動に利用できるので、タービン効率の低下を防止することが可能となる。
【0043】
なお、センターハウジング側でも、内側ハウジング24のセンター側端部58はスライド可能にされているが、内側ハウジング24のセンター側端部58とセンター側フランジ部22との間から仮に排気ガスが漏れることがあっても、そのスライド部分はノズル部S5に位置するので、この排気ガスは適切にタービンホイール28に至ることになる。
【0044】
また、シュラウド部材66は、管材を適宜加工して作られるので、容易且つ安価に作製することができる。もっともシュラウド部材には管材以外からなっても良く、例えば鋳造品であってもよい。シュラウド部材66は、その出口側端部66bでのみ固定されており、反対側の上流側端部は熱伸縮可能である。これによりシュラウド部材66の熱応力も緩和できる。また、シュラウド部材66は軸対称な円筒状であるため熱変形も軸対称となり、つまり拡縮径するのみである。よってチップクリアランスを全周に渡り良好に維持することが可能となる。さらに、シュラウド部材66は内側ハウジング24とは別個の部材であるから、内側ハウジング24が熱変形の繰り返し等でたとえ劣化してもその影響はシュラウド部材66には及ばず、チップクリアランスに影響を及ぼさない。したがって内側ハウジング24の劣化に伴うタービン性能の低下を回避することができる。
【0045】
上記の如く、隙間G2に挿入された内側ハウジング24の出口側端部68は移動可能であり、それ故、内側ハウジング24が排気ガスからの熱により膨張することとなっても、その出口側端部68が移動する(つまり逃げる)ことにより、内側ハウジング24への応力が緩和され、タービンハウジング10の劣化は抑制される。即ち、仮にその出口側端部68が外側ハウジング26等に固定され拘束されていれば、内側ハウジング24が熱膨張するときの応力によりタービンハウジング10の劣化は早まるであろう。また、内側ハウジング24の出口側端部68がタービン軸L方向に移動して内側ハウジング24の熱膨張や熱収縮を緩衝するため、内側ハウジング24の半径方向の張り出しは抑制される。たとえ内側ハウジング24の半径方向内側への張り出しが生じることがあっても、強固なシュラウド部材66がタービンホイール28の周囲に存在し、タービンホイール28を保護するので、内側ハウジング24のタービンホイール28への干渉は確実に防止される。
【0046】
同様に、タービンハウジング10の入口側にも内側ハウジング24のためのスライド支持部があるので、内側ハウジング24の熱膨張時における応力が、内側ハウジング24の助走室方向への伸びにより緩和され、タービンハウジング10の劣化は抑制される。もちろん、センターフランジ側でも同様である。
【0047】
さらに、タービンハウジング10は上記の如く二重殻構造とされている。このため、タービンハウジングを一体の鋳造品とする場合に比して、ハウジングの肉厚(本第一実施形態の場合、内側ハウジング24と外側ハウジング26との合計肉厚)を薄くできる。また、隙間Gによって断熱効果が発揮されて、内側ハウジング24の内部から外部への散熱が抑制される。したがって、タービンハウジング10内で排気ガスから熱が奪われることが抑制され、より高温の排気ガスがタービンハウジング10から排出されることとなる。タービンハウジング10の下流側に排気浄化用の触媒がある場合には、エンジン冷間始動後における触媒の早期活性化に貢献できる。加えて、ハウジングの肉厚が薄くされるので、過給機の軽量化も達成されることとなり、ひいては燃費向上にもつながることとなる。内側ハウジング24と外側ハウジング26との間の隙間Gにセラミックウールなどの部材を充填した場合には、その空間を埋めると同時に内側ハウジング24の変形を抑制でき、さらには隙間Gへの排気ガスの流入も抑制することが可能となり、比較的厳しい使用条件下(排気ガス温度が高温の場合など)においてもタービン性能の低下が抑制される。
【0048】
さらに、連結部材として、本第一実施形態では、プレート状部材42が設けられていることで、外側ハウジング26内に、内側ハウジング24がしっかりと固定される。それ故、上記の如く、外側ハウジング26に対して内側ハウジング24の各種端部56、58、68を自由端部にして、スライド可能に支持しても、外側ハウジング26内の所望の位置から内側ハウジング24がずれることが防止される。したがって、内側ハウジング24に、排気ガスの熱により加熱されて膨張し、その後エンジンの停止などに伴い冷やされて収縮することが繰り返し生じても、内側ハウジング24と外側ハウジング26との間の隙間Gばかりでなく、上記隙間G1〜G5などの各種のクリアランス(チップクリアランス)を、長い間、所定の間隔に保つことが可能になる。このように連結部材であるプレート状部材42を設けたことで、内側ハウジング24と外側ハウジング26との相対的な位置関係は、内側ハウジング24に膨張および収縮が繰り返し生じても、変化なく維持されるので、タービンハウジング10の劣化はさらに抑制され、タービンハウジング10の性能を長い期間にわたって高性能に保つことが可能になる。つまり、タービンの効率の低下を防ぐことが可能になる。したがって、このタービンハウジング10を有するタービンは、そのタービンハウジング10が高性能を発揮することで、信頼性が向上する。
【0049】
なお、このように、本第一実施形態では、連結部材をプレート状部材としたが、プレート状部材は上記の如く板金を用いて作製されるので、連結部材を設けてもタービンハウジングが低コストに保たれる。さらに、プレート状部材42は、折曲げ部などの応力集中部位がないので、この部材を起点にタービンハウジング10の劣化が生じることはない。なお、さらに信頼性を向上するべく、例えば、上記の如き段形状、すなわちタング部44、46との嵌め合い位置決めのための段形状をプレート状部材42に設けなくても良い。
【0050】
また、上記の如きタービンハウジング10では、入口12、助走室S1、およびスクロール室S2が各二つずつ形成され、これにより第一入口12a、第一助走室S1a、第一スクロール室S2aにより区画形成される第一流路Saと、第二入口12b、第二助走室S1b、第二スクロール室S2bにより区画形成される第二流路Sbとの2つの流路が形成される。これらの流路Sa、Sbは、エンジンの運転状態に対応させて開通される。例えばエンジン回転が低回転であるときには、上記第一流路Saを用いて排気ガスがタービンホイール28に導かれ、エンジン回転が高回転であるときには、上記第一流路Saおよび上記第二流路Sbの両流路を用いて排気ガスがタービンホイール28に導かれるように、第二入口12bよりも上流側に設けられる制御バルブ(不図示)は開閉制御される。なお、このように、本第一実施形態では、その制御バルブをタービン上流側に配置することとしたが、タービンの中、例えば第二助走部材40内に配置することとしても良い。
【0051】
以上、本発明に係るタービンハウジングを第一実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第一実施形態では連結部材を上記プレート状部材42としたが、本発明は種々の形態の連結部材を含むものである。連結部材は、内側分割部P1および外側分割部P2に挟まれて接合され、これにより隙間Gを保ちつつ、外側ハウジング26と内側ハウジングを連結すれば良い。
【0052】
また、上記第一実施形態では、内側ハウジング24を第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36と、第一助走部材38と、そして第二助走部材40との四つの部材で構成することとしたが、内側ハウジング24は、第一内側ハウジング部材34と、そして第二内側ハウジング部材36とにより構成されても良い。この様な場合に、上記第一実施形態の如く、スクロール室S2を軸方向に2分割してツインスクロール形状にするのであれば、助走室S1を軸方向に二分割するように上記プレート状部材42を入口12近傍まで延出しても良い。これにより、第一流路Saや第二流路Sbが形成されるのは上記第一実施形態と同じであるが、助走室S1aの入口と出口とが、並びに助走室S1bの入口と出口とがそれぞれ90°捻れることなく連通することになる。
【0053】
ところで、スクロール室S2をツインスクロール形状にしないのであれば、スクロール室S2にまで延出されない連結部材が備えられるのが良い。このような連結部材を有するタービンハウジング110を本発明の第二実施形態として次に説明する。このタービンハウジング110は、上記第一実施形態のタービンハウジング10と、連結部材が主として異なり、また、それに伴い入口12、助走室S1、およびスクロール室S2が各一つずつ形成されることが相違する。以下、相違点について主に説明し、共通点については図中同一符号を付して説明を省略する。なお、本第二実施形態のタービンハウジング110の外観は、図1から図4に表した上記第一実施形態の外観と概ね同じである。図12は図1のA−A線断面相当図に対応する図(第一実施形態の図8に相当する図)であり、図13は図3のB−B線断面相当図である。
【0054】
タービンハウジング110は、連結部材として、馬蹄形状部材112を備えている。馬蹄形状部材112は、入口12近傍まで延出され、軸方向中間部分にて分割された第一内側ハウジング部材134および第二内側ハウジング部材136からなる内側ハウジング124の内側分割部P3と、外側ハウジング26の外側分割部P2とに挟まれて接合される。馬蹄形状部材112は、概ね隙間Gを横断するように延在するが、馬蹄形状部材112は、スクロール室S2にはほとんど延出されず、単に内側分割部P3と外側分割部P2との間に延在し、それらに挟まれつつ接合されている。そして、馬蹄形状部材112は、概ね内側ハウジング124内に延出しないようにされるので、助走室S1で不連続である。したがって、この変形例のタービンハウジング110では、入口12、助走室S1、そしてスクロール室S2は各1つとなっている。
【0055】
なお、図12の馬蹄形状部材112は、タングTの部分には及んでいない。タングTは第一内側ハウジング部材134と第二内側ハウジング部材136とが互いに嵌合して接合されることで形成されるので、排気ガスを適切に助走室S1からスクロール室S2へ導くことが可能である。ただし、本発明は、上記第一実施形態のプレート状部材42の如く、馬蹄形状部材112がタングTにまで延出されることを排除するものではない。
【0056】
次に、さらに別の連結部材を備えるタービンハウジング210を本発明の第三実施形態として説明する。このタービンハウジング210は、上記第二実施形態のタービンハウジング110と、連結部材が相違し、これに伴って外観がわずかに異なる。ここでは、図1のA−A線断面相当図に対応する図として、図14にタービンハウジング210の断面図を示し、相違点のみについて説明して、他の説明は省略する。
【0057】
タービンハウジング210は、連結部材として、複数の棒状部材212を備えている。複数の棒状部材212は、上記第二実施形態の内側ハウジング124と概ね同じ内側ハウジング224の内側分割部P4と、外側ハウジング26の外側分割部P2とに挟まれて接合される。棒状部材212は、断面円形であり、ステンレス製である。複数の棒状部材212は、スクロール室S2にはほとんど延出されず、隙間Gを横断するように位置付けられている。図14では明らかにしていないが、内側分割部P4と外側分割部P2には、棒状部材212が嵌まる半円形の凹部214、216がそれぞれに設けられていて、棒状部材212はその凹部214、216に挟まれて接合されることになる。これに伴い、図示しないが、タービンハウジング210の外観において、棒状部材212の外側端部212aが認められることになる。
【0058】
なお、棒状部材212の断面は、円形に限らず、正方形、長方形、多角形であっても良い。また図14では4本の棒状部材212が示されているが、その数は8本、12本などいくつでも良い。しかしながら、棒状部材212の間隔は等間隔であることが望ましい。
【0059】
以上、本発明を上記第一から第三実施形態に基づいて説明したが、本発明はそれらに限定されない。
【0060】
例えば、上記第一実施形態においてはシュラウド部材66と外側ハウジング26とを直接固定して隙間G2の閉止部を形成するようにしたが、この閉止部の構造は様々なものが考えられ、例えば、シュラウド部材66と外側ハウジング26との間に他の部材(例えば出口管64)を介装し、これら3部材をまとめて固着して閉止部を形成するようにしてもよい。また本発明に係るタービンハウジングは例えば斜流タービンや可変容量タービン等の他のタービン形式にも適用できる。
【0061】
なお、内側ハウジング24、124、224と外側ハウジング26との間には、その間の隙間Gの良好な維持や内側ハウジング24、124、224の形状保持、断熱等のため、SUSメッシュやセラミックウールなどの耐熱性、耐食性、可撓性に優れた充填部材が全体的または部分的に配設されても良く、それらが配設される場合には例えばそれらは外側ハウジング26の内側に固定されるのが好ましい。
【0062】
なお、上記では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第一実施形態に係るタービンハウジングの右側面図である。
【図2】図1に示したタービンハウジングの左側面図である。
【図3】図1に示したタービンハウジングの正面図である。
【図4】図1に示したタービンハウジングの背面図である。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図6】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図7】第一助走部材および第二助走部材を省いた、図5のC−C線に沿ったタング部の拡大模式図である。
【図8】図5の断面図に、プレート状部材を重ねたところを示す図である。
【図9】入口の外観図である。
【図10】図8のE部の拡大図である。
【図11】図6のD部の拡大図である。
【図12】第二実施形態に係るタービンハウジングの、図1のA−A線断面相当図に対応する図である。
【図13】図12のタービンハウジングの、図3のB−B線断面相当図である。
【図14】第三実施形態のタービンハウジングの、図12に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10、110、210 タービンハウジング
42 プレート状部材
112 馬蹄形状部材
212 棒状部材
【技術分野】
【0001】
本発明はタービンハウジングに係り、特に、内側ハウジングとこの内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ過給機のタービンハウジングとしては鋳造製のものが一般的である。これに対して、鋼板のプレス成形品により作製されるタービンハウジングも例えば特許文献1により提案されている。このものは、耐熱薄板鋼板で作製された内側ハウジングと外側ハウジングとが備えられ、内側ハウジングを隙間を介して外側ハウジングにより覆う構造となっている。このタービンハウジングにおいては、外側ハウジングと内側ハウジングとが、所定の間隔をおいて金属メッシュからなる複数の係止部材により、その大部分が互いに離隔するように保持されている。
【0003】
さらには、特許文献2には、鋼板のプレス成形品により作製されるタービンハウジングの他の一例が開示されている。このものにおいては、外側ハウジングにより隙間を介して被包される内側ハウジングが半割状となるように分割形成され、その半割状に分割形成されたもの同士はスライド可能な状態で組み合わされて開閉可能となるようにされている。これら内側ハウジングと外側ハウジングとの間には、その間の隙間を所定間隔で保持するためにSUSメッシュが介在されている。
【0004】
一方、スクロール室に向けて突出した部材を有するタービンハウジングも提案されている。例えば、特許文献3には、鋳造製のタービンハウジングの内壁面にセラミック断熱層を介して薄板成形体を配置し、通路面積が異なるタービンスクロールを形成するようにタービンハウジングからノズル部まで伸長した平板を設け、これによりスクロール室を二分割するようにしたタービンハウジングが開示されている。このものでは、薄板成形体と平板との接合部を、タービンハウジング作製時の鋳造により溶解させ、それらを一体的に融合するようにしている。また、特許文献4には、タービンハウジング本体の左右部分により挟持した仕切板をその左右部分と共に溶接するようにしたタービンハウジングが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−293779号公報
【特許文献2】特開2002−349275号公報
【特許文献3】特開昭63−111234号公報
【特許文献4】実開昭64−51734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
間に隙間のある二重殻構造を有するタービンハウジングにおいては、排気ガスの熱による膨張や収縮により内側ハウジングが熱疲労等するのを低減するべく、例えば、内側ハウジングを構成する部材の端部などを自由にスライド可能にするのが好ましい。一方、このようにすると、長い間の使用により内側ハウジングにそのような膨張や収縮が繰り返し生じることで、内側ハウジングと外側ハウジングとの位置関係にずれが生じ、それらの間の隙間の大きさなどが変化する虞がある。このような事態が生じると、タービンの効率を高性能に維持するのは難しくなる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、内側ハウジングとこの内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングにおいて、タービンの効率の低下を防ぐことを可能にするタービンハウジングを提供することを目的とする。
【0008】
なお、上記特許文献3および上記特許文献4に記載のものは、共に、間に隙間のある二重殻構造を有するタービンハウジングではない。すなわち、それらにおいてはスクロール室の外側に隙間が保たれない。したがって、それらは上記問題点を解消するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るタービンハウジングは、内側ハウジングと、該内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、前記内側ハウジングはスクロール室の軸方向中間部分に内側分割部を有し、前記外側ハウジングは前記スクロール室の軸方向中間部分に外側分割部を有し、前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとを前記スクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材を、前記内側分割部および前記外側分割部に挟みつつ接合するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとをスクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材が、前記内側分割部および前記外側分割部にて挟みつつ接合されるので、所定の間隔を保ちつつ外側ハウジング内に内側ハウジングが連結部材を介して固定される。その結果、内側ハウジングがスライド可能な自由な部分を有している状態で、排気ガスの熱によって内側ハウジングに膨張や収縮が繰り返し生じても、内側ハウジングと外側ハウジングとの位置関係はずれることが防止される。すなわち、それらの間の隙間の大きさなどは変わらずに保たれることになる。したがって、タービンの効率の低下を防ぐことが可能になる。
【0011】
好ましくは、前記連結部材は、プレート状である。連結部材はプレート状であるので、内側分割部や外側分割部に挟まれて接合されると、スクロール室の軸方向中間部分の広範囲にわたって外側ハウジング内に内側ハウジングがしっかりと固定されることになる。
【0012】
さらに、この場合、前記連結部材は、前記内側ハウジングの内方に延び、軸方向に二分割するように前記スクロール室を仕切り、該スクロール室をツインスクロール形状になすようにしても良い。これにより、容易に、且つ安価に、ツインスクロール形状のスクロール室を有するタービンハウジングを形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。なお以下の実施形態に係るタービンハウジングは、車両用ターボ過給機のラジアル形タービンに適用されるものである。
【0014】
図1から図4に、第一実施形態のタービンハウジング10の外観図を示す。図1はタービンハウジング10の右側面図であり、図2はその左側面図であり、図3はその正面図であり、図4はその背面図である。図1および図2に白抜き矢印で排気ガスの流れを示す。エンジン(図示せず)からの排気ガスは、図1、2中下方の入口12からタービンハウジング10内に入り、タービンハウジング10内で直角に向きを変え、タービン軸方向に沿って出口14からタービンハウジング10外に排出される。入口12付近には入口側フランジ部16が設けられ、入口側フランジ部16はエンジン側の排気管または排気マニホールド(図示せず)との接続に利用される。出口14付近には出口側フランジ部18が設けられ、出口側フランジ部18はその下流側の排気管(図示せず)との接続に利用される。またセンターハウジング20(図6参照)との接続に利用されるセンターフランジ部22も設けられている。
【0015】
タービンハウジング10の断面図を図5および図6に示す。図5は、図1におけるA−A線に沿った断面図、換言すると、タービン軸Lに直交する面で切断した断面図である。なお、図5には、内側ハウジング24と、外側ハウジング26と、そして入口側フランジ部16を示している。図6は、図3のB−B線に沿った断面図、換言すると、タービン軸Lを含む面で切断した断面図である。
【0016】
これらの図から理解されるように、タービンハウジング10は、ともにプレス成形可能な板金製の内側ハウジング24および外側ハウジング26を備え、いわゆる二重殻構造とされている。内側ハウジング24は、ハウジング内部の排気ガスの流路を実質的に区画形成する。外側ハウジング26は、内側ハウジング24を隙間Gを介して覆い、内側ハウジング24を保護すると同時に断熱し、且つタービンハウジング10としての剛性を高める役割も担う外殻ないし構造体をなしている。内側ハウジング24によって主として区画される排気ガスの流路は、上流側から順に、入口12、助走室S1、スクロール室S2、タービンホイール室S3、出口室S4および出口14とから構成されている。スクロール室S2の半径方向内側にタービンホイール室S3が形成され、タービンホイール室S3にはタービンホイール28(図6参照)が回転可能に収容される。
【0017】
ただし、本第一実施形態では、後述するように、入口12は第一入口12aと第二入口12bとからなり、助走室S1は第一助走室S1aと第二助走室S1bとからなり、またスクロール室S2は第一スクロール室S2aと第二スクロール室S2bとからなっている。
【0018】
図6に示されるように、センターハウジング20の一端にタービンハウジング10のセンターフランジ部22が接続固定される。この固定には図示されるような断面コ字状且つリング状の締結具30が用いられる。センターハウジング20の他端には図示しないコンプレッサハウジングが接続固定され、コンプレッサハウジングには、タービン軸32によりタービンホイール28と同軸連結されたコンプレッサホイールが収容される。
【0019】
本第一実施形態の内側ハウジング24は、第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36と、第一助走部材38と、そして第二助走部材40との四つの部材から分割形成されている。第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36とは、後述するプレート状部材42を間に挟みつつ接合される(図6参照)。これにより、第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36との内側にスクロール室S2が区画形成される。一方、本第一実施形態では、スクロール室S2の上流側に連通する助走室S1が第一助走部材38と第二助走部材40との2つの部材により区画形成される。
【0020】
内側ハウジング24は、スクロール室S2のタービン軸Lの方向の中間部分(以下、「軸方向中間部分」と称し得る。)に分割部P1を有していて、この分割部P1でスクロール室S2を形成する第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とは分割される。第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とのタービン軸Lに沿った分割位置は、スクロール室S2の最外径位置付近であり、スクロール室S2を半割りするような位置である。概ねタービン軸Lに直交する面上に位置する分割部P1は、第一内側ハウジング部材34の第一内側分割部34Pと、第二内側ハウジング部材36の第二内側分割部36Pとからなっていて、後で詳述するプレート状部材42がこれらの間、すなわち分割部P1に挟まれて接合されている(図6参照)。以下、本明細書において、内側ハウジング24における分割部P1を、「内側分割部」と称する。なお、第一内側ハウジング部材34は第二内側ハウジング部材36よりもタービン軸Lの方向の出口先端側に位置される。
【0021】
第一内側ハウジング部材34と第二内側ハウジング部材36とは、それぞれ金属の板材料をプレス成形することで作製される。すなわちそれらは板金製であるので、これらの作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされ、外側ハウジング26をなす金属板材料よりも薄いものが使用される。第一内側ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36の金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。
【0022】
図5に示されるように、内側ハウジング24には、助走室S1からスクロール室S2への排気ガスの流路を形作るように、舌片状のタングTが設けられている。当該タングTは、図7に示されるように、第一および第二内側ハウジング部材34、36に形成された凸平面状のタング部44、46を、プレート状部材42を介して、互いの対向面44a、46aで接合させ、溶接等により固定して形成される。そのようにして接合されるプレート状部材42の端部は、タング部44、46の嵌め合いが良好に行われるような段形状にされている(図7参照)。図5の断面図にプレート状部材42を重ねて示した図、すなわち対向面44aにプレート状部材42を当接させた図を図8に示す。図8から、プレート状部材42はスクロール室S2を軸方向に二分割することが明らかである。
【0023】
内側分割部P1に挟まれて接合される連結部材として、本第一実施形態では、上記プレート状部材42が用いられている。プレート状部材42は、環状であり、外側ハウジング26から外部にわずかに突出する大きさを有すると共に、中央付近にタービンホイール28の外径、すなわちその回転輪郭の径よりも若干大きな径の貫通孔42aを有している。したがって、図6に示すように、タービンハウジング10内にタービンホイール28が収容された状態で、貫通孔42a内には、タービンホイール28が回転可能に位置される。プレート状部材42は、スクロール室S2の軸方向中間部分の内側分割部P1に挟まれ、タービン軸Lにほぼ直交する面上に延在するように取り付けられる。プレート状部材42は、内側ハウジング24の内方に延びている。プレート状部材42は、スクロール室S2とタービンホイール室S3との境に位置する、縮径したノズル部S5にまで内方に延びている。したがって、プレート状部材42は、軸方向に二分割するようにスクロール室S2を仕切り、スクロール室S2をツインスクロール形状になす。すなわち、スクロール室S2は、タービン軸Lに概ね直交する面で二分割されて、二つのスクロール室S2a、S2bから構成されることになる。なお、二つのスクロール室S2a、S2bは、プレート状部材42と第一内側ハウジング部材34とによって形成される第一スクロール室S2aと、プレート状部材42と第二内側ハウジング部材36とによって形成される第二スクロール室S2bとである。
【0024】
なお、本第一実施形態のプレート状部材42には、前記隙間Gがプレート状部材42で完全に2つの領域に隔てられないように、連通孔42bが設けられている(図8参照)。図8では、連通孔42bは3つ設けられているが、本発明は連通孔42bの数を制限しない。なお、連通孔42bは設けられなくても良い。
【0025】
プレート状部材42は、金属板材料からなっている。そして、プレート状部材42は、上記形状にすべく打ち抜き加工が施されて作製されていて、概ね湾曲することなくプレート状に保たれている。したがって、プレート状部材42は、安価に作製される。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされるが、内側ハウジング24をなす金属板材料よりも厚いのが好ましい。この金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。
【0026】
第一助走部材38と第二助走部材40とは、それぞれ管状部材となっている。図9にタービンハウジング10に取り付けられた入口側フランジ部16を図1の入口側の白抜き矢印の向きに見たところを示すように、入口12は2つの第一入口12aと第二入口12bとからなっている。本第一実施形態では、これら第一入口12aと第二入口12bとのそれぞれに、第一助走室S1aと第二助走室S1bとが連通されるように、第一助走部材38と第二助走部材40とが配置される。さらに、上記の如く、プレート状部材42によって分けられた二つのスクロール室S2a、S2bのそれぞれに、第一助走室S1aと第二助走室S1bとが連通されるように、第一助走部材38と第二助走部材40とが配置される。第一助走部材38および第二助走部材40は、それぞれ上記第一ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36内に嵌め込まれて、その嵌合部同士は接合される。本第一実施形態では、二つの入口12a、12bと、二つのスクロール室S2a、S2bとは、ほぼ90°回転された位置関係を有するので、第一助走部材38と第二助走部材40とはそれぞれ90°捻られた形状にされる(図2および図5等参照)。
【0027】
第一助走部材38と第二助走部材40との管状部材は、それぞれ長手方向にほぼ半割にされたプレス成型品である部材が互いに接合されることで作製される。すなわちそれらは板金製であり、その作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされ、第一内側ハウジング部材34および第二内側ハウジング部材36をなす金属板材料とほぼ同じ厚さのものが使用される。第一助走部材38と第二助走部材40の金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。なお、第一助走部材38と第二助走部材40とは、それぞれ、管状の部材を捻って加工することで作製されても良いし、管状の部材に流体圧を作用させて成形する流体圧成形(例えば、ハイドロフォーミング)によって作製されても良い。
【0028】
本第一実施形態の外側ハウジング26は、第一外側ハウジング部材48と、第二外側ハウジング部材50とから分割形成されている。それらは、上記プレート状部材42を間に挟みつつ接合される。外側ハウジング26は、内側ハウジング24と同様、軸方向中間部分に分割部P2を有している。すなわち、外側ハウジング26を第一外側ハウジング部材48と第二外側ハウジング部材50とにする、そのタービン軸Lに沿った分割位置は、スクロール室S2の最外径位置付近であり、スクロール室S2を半割りするような位置である。タービン軸Lにほぼ直交する面上に位置する上記分割部P2は、第一外側ハウジング部材48の第一外側分割部48Pと第二外側ハウジング部材50の第二外側分割部50Pとからなっている。上記プレート状部材42はこれらの間に挟まれて接合される。以下、本明細書において、当該外側ハウジング26における分割部P2を、上記内側ハウジング24の内側分割部P1に対して、「外側分割部」と称する。なお、第一外側ハウジング部材48は第二外側ハウジング部材50よりもタービン軸Lの方向の出口先端側に位置される。
【0029】
第一外側ハウジング部材48と第二外側ハウジング部材50とは、それぞれ金属の板材料をプレス成形することで作製される。すなわちそれらは板金製であるので、これらの作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、内側ハウジング24よりも厚くされ、例えば1.5mmから2.5mmとされる。外側ハウジング26の金属板材料も、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼、好ましくはフェライト系ステンレス鋼が用いられる。なお、本発明に係る外側ハウジング26はこのような構成、寸法、材料等に限定されるものではない。ただし外側ハウジング26はタービンハウジング10の外殻であるため、ある一定以上の強度、剛性を有することが必要とされる。
【0030】
上記のように、連結部材としての上記プレート状部材42は、内側ハウジング24の内側分割部P1に挟まれると共に、外側ハウジング26の外側分割部P2にも挟まれて接合される。そして、プレート状部材42は、スクロール室S2にまで内方に延在すると共に、外側ハウジング26にまで外方に延在する。本第一実施形態では、外側ハウジング26から外方へ突出する端部を有する程度にまで、プレート状部材42は外方に延びている。プレート状部材42は、スクロール室S2の外周部分に位置する内側ハウジング24と外側ハウジング26との間に形成される隙間Gを横断して内側分割部P1と外側分割部P2とに挟まれて接合されている。その結果、プレート状部材42により内側ハウジング24と外側ハウジング26とは連結される。したがって、内側ハウジング24と外側ハウジング26との位置関係、およびそれらの間の隙間Gは一定に保たれることになる。
【0031】
図5および図10に示されるように、入口側フランジ部16は例えば厚肉(5mmから15mm)の金属板材料のプレス加工により作製される。ここで入口側フランジ部16には外側ハウジング26の入口側端部52が挿入されて溶接等により固定される。なお入口側フランジ部16には、外側ハウジング26の入口側端部52を位置決めするための段部54が設けられている。
【0032】
これに対し、外側ハウジング26の入口側端部52の内側には、内側ハウジング24の入口側端部56が単にスライド可能に嵌め合わされるだけであり、これにより内側ハウジング24と外側ハウジング26との熱変形差が吸収されるようになっている。即ち、タービン運転時は内側ハウジング24が排気ガスの熱を直接受け、高温となるため、内側ハウジング24の方が外側ハウジング26より熱膨張量が大きい。このときの熱膨張差が、外側ハウジング26の入口側端部52に対する内側ハウジング24の入口側端部56のスライド移動により吸収される。これにより内側ハウジング24内の流路の形状が保たれると共に、内側ハウジング24に作用する応力が緩和されるようにしている。いわばこのスライド部は熱膨張差を吸収するための内側ハウジング10のための逃げである。このようなスライド部は後述する出口側にも設けられ、このタービンハウジング10では入口側と出口側との少なくとも二箇所で内側ハウジング24はスライド可能に支持される。このスライド部では、微視的に見れば、部材間の境界に隙間があり、この隙間を排気ガスが微量ながら通過する。この点については後に詳しく述べる。入口側の隙間が図10に誇張してG1で示され、この隙間G1はメインの隙間Gに連通される。隙間G1は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。
【0033】
さらに、図6に示されるように、外側ハウジング26はセンターフランジ部22に溶接等により接続固定される。しかしながら、本第一実施形態では内側ハウジング24のセンター側端部58はセンターフランジ部22の内側端面60に固定されずに接触しているのみである。したがって、タービンハウジング10では、センターフランジ側でも内側ハウジング24は外側ハウジング26やセンターフランジ部22に対してスライド可能に支持される。それ故、本第一実施形態のタービンハウジング10では入口側と出口側と、そしてセンターフランジ側の三箇所で内側ハウジング24がスライド可能に支持されることになる。なお、内側ハウジング24は、センターフランジ側で、外側ハウジング26およびセンター側フランジ部22の少なくともいずれかに接合されても良い。
【0034】
タービンハウジング10の出口側では、外側ハウジング26の出口側端部62に出口管64を介して出口側フランジ部18が取り付けられている(図6参照)。外側ハウジング26の出口側端部62は、全体として円筒状をなすと共に、その末端部62aが縮径されるようクランク状に成形され、その末端部62aの外側に出口管64の一端部が嵌められ、溶接等により固定されている。出口管64の他端部はプレス加工等により直角に曲げられ、そこに平板リング状の出口側フランジ部18が溶接等により固着される。出口側フランジ部18は管材を切断したり鋳造したりすることによって作製できる。これら出口管64および出口側フランジ部18により出口室S4および出口14が形成される。
【0035】
さらに本第一実施形態のタービンハウジング10は、タービンホイール28のシュラウド部28aを取り囲むためのシュラウド部材66を備えている。シュラウド部材66は、円筒状に形成され、その上流側部分66aがタービンホイール28のシュラウド部28aのシュラウド曲線に倣うようなフレア形状とされている。シュラウド部材66の下流側端部66bは、外側ハウジング26の末端部62aの内側に嵌め入れられて、全周に亘って溶接等により固定される。これによりシュラウド部材66はタービン軸L上に中心を持ち、外側ハウジング26の円筒状の出口側端部62と同軸に配置されるようになる。
【0036】
上記シュラウド部材66は管材からなり、この管材をプレス加工にて曲げ成形することにより容易に且つ安価に作製できる。タービンホイール28のシュラウド部28aと、シュラウド部材66との間のクリアランス(チップクリアランス)は、タービン効率に影響を及ぼすため重要である。そこでこのチップクリアランスを高精度に保つため、そのシュラウド部28aに対向するシュラウド部材66の表面は機械加工により高精度に仕上げられる。ただし曲げ成形のみで精度が得られる場合は機械加工を省略しても良い。シュラウド部材66をなす管材の厚さは、機械加工を行う場合は加工代を見込んで内側ハウジング24よりも厚くされ(例えば1.5mmから3.0mm程度)、機械加工を行わない場合は内側ハウジング24よりも厚くされるかまたは同等とされる。なお、シュラウド部材66の厚さを大きくするとその剛性が高くなり、運転中の熱変形が抑制される。シュラウド部材66の内側には高温の排気ガスが通過するので、シュラウド部材66は耐熱性、耐食性に優れた材料、例えばステンレス鋼で作製される。このシュラウド部材66の内側方向にタービンホイール室S3が形成される。
【0037】
このようにして外側ハウジング26にシュラウド部材66を組み付けると、外側ハウジング26とシュラウド部材66との間にリング状の隙間G2が形成される。この隙間G2は、シュラウド部材66の出口側端部66bと外側ハウジング26の末端部62aとの固着部即ち閉止部により、タービンホイール28の出口側即ち出口室S4および出口14に対し閉止され、他方、タービンホイール28の上流側即ちスクロール室S2に対しては開放されることとなる。この隙間G2に、内側ハウジング24の出口側端部68が挿入されている。内側ハウジング10の出口側端部68は、縮径したノズル部S5を形成する、第一内側ハウジング部材34のスクロール室形成部34aから出口側に向かって突出形成され、全体として円筒状に形成されると共に、シュラウド部材66の外周面に沿う湾曲形状とされている。そして出口側端部68の先端部が隙間G2に挿入されている。この挿入部において出口側端部68はスライド可能であり、即ち、出口側端部68の内周面がシュラウド部材66の外周面に対しスライド可能であり、出口側端部68の外周面が外側ハウジング26の出口側端部62の内周面に対しスライド可能である。
【0038】
こうして、内側ハウジング24の出口側端部68がタービン軸Lの方向にスライド可能に支持され、内側ハウジング24と外側ハウジング26との熱変形差を吸収するスライド支持部が、タービン出口側にも形成されることになる。このスライド支持部においても、微視的に見れば部材間の境界に隙間がある。この隙間は、図11に誇張して示されるように、出口側端部68と外側ハウジング26との間の隙間G3、および出口側端部68とシュラウド部材66との間の隙間G4である。隙間G3、G4は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。出口側端部68と前記閉止部との間にも軸方向の比較的大きな隙間G5があり、この隙間G5により出口側端部68の移動が十分許容される。
【0039】
結局、図11に示されるように、隙間G3、G5、G4によりUターン状の流路が形成され、この流路は、内側ハウジング24と外側ハウジング26との間のメインの隙間Gにその上流端が連通接続されると共に、その下流端がタービンホイール28のリーディングエッジ部28b直前のスクロール室S2に連通接続される。
【0040】
次に、上記第一実施形態のタービンハウジング10に関し、その作用および効果について詳述する。
【0041】
ターボ過給機の運転時、エンジンからの排気ガスは、入口12からタービンハウジング10内へ入り、助走室S1、スクロール室S2を順に経てタービンホイール室S3に入り、ここでタービンホイール28を回転駆動する。その後、出口室S4を経て出口14から排出される。タービンホイール28の回転駆動によりコンプレッサホイールが回転駆動され、エンジンへ空気が過給されることとなる。
【0042】
一方、図10に示した隙間G1から、微量ながら排気ガスが隙間Gに流入する場合がある。この排気ガスは、図11に矢印で示されるように、出口側の隙間G2に到達し、隙間G3、G5、G4を順に経てタービンホイール28の上流側に戻される。隙間G2がタービンホイール28の出口側に対し閉止されているので、隙間Gに流入した排気ガスがタービンホイール28(シュラウド部28aの外周面とシュラウド部材66の内周面との間)を通過せずに出口室S4側へ漏れ出すことはない。一方、この隙間G2がタービンホイール28の上流側に開放されているので、隙間Gに流入した排気ガスは全てタービンホイール28の駆動に供される。結局、隙間Gに流入した排気ガスを無駄にすることなく全て回収してタービンホイール28の駆動に利用できるので、タービン効率の低下を防止することが可能となる。
【0043】
なお、センターハウジング側でも、内側ハウジング24のセンター側端部58はスライド可能にされているが、内側ハウジング24のセンター側端部58とセンター側フランジ部22との間から仮に排気ガスが漏れることがあっても、そのスライド部分はノズル部S5に位置するので、この排気ガスは適切にタービンホイール28に至ることになる。
【0044】
また、シュラウド部材66は、管材を適宜加工して作られるので、容易且つ安価に作製することができる。もっともシュラウド部材には管材以外からなっても良く、例えば鋳造品であってもよい。シュラウド部材66は、その出口側端部66bでのみ固定されており、反対側の上流側端部は熱伸縮可能である。これによりシュラウド部材66の熱応力も緩和できる。また、シュラウド部材66は軸対称な円筒状であるため熱変形も軸対称となり、つまり拡縮径するのみである。よってチップクリアランスを全周に渡り良好に維持することが可能となる。さらに、シュラウド部材66は内側ハウジング24とは別個の部材であるから、内側ハウジング24が熱変形の繰り返し等でたとえ劣化してもその影響はシュラウド部材66には及ばず、チップクリアランスに影響を及ぼさない。したがって内側ハウジング24の劣化に伴うタービン性能の低下を回避することができる。
【0045】
上記の如く、隙間G2に挿入された内側ハウジング24の出口側端部68は移動可能であり、それ故、内側ハウジング24が排気ガスからの熱により膨張することとなっても、その出口側端部68が移動する(つまり逃げる)ことにより、内側ハウジング24への応力が緩和され、タービンハウジング10の劣化は抑制される。即ち、仮にその出口側端部68が外側ハウジング26等に固定され拘束されていれば、内側ハウジング24が熱膨張するときの応力によりタービンハウジング10の劣化は早まるであろう。また、内側ハウジング24の出口側端部68がタービン軸L方向に移動して内側ハウジング24の熱膨張や熱収縮を緩衝するため、内側ハウジング24の半径方向の張り出しは抑制される。たとえ内側ハウジング24の半径方向内側への張り出しが生じることがあっても、強固なシュラウド部材66がタービンホイール28の周囲に存在し、タービンホイール28を保護するので、内側ハウジング24のタービンホイール28への干渉は確実に防止される。
【0046】
同様に、タービンハウジング10の入口側にも内側ハウジング24のためのスライド支持部があるので、内側ハウジング24の熱膨張時における応力が、内側ハウジング24の助走室方向への伸びにより緩和され、タービンハウジング10の劣化は抑制される。もちろん、センターフランジ側でも同様である。
【0047】
さらに、タービンハウジング10は上記の如く二重殻構造とされている。このため、タービンハウジングを一体の鋳造品とする場合に比して、ハウジングの肉厚(本第一実施形態の場合、内側ハウジング24と外側ハウジング26との合計肉厚)を薄くできる。また、隙間Gによって断熱効果が発揮されて、内側ハウジング24の内部から外部への散熱が抑制される。したがって、タービンハウジング10内で排気ガスから熱が奪われることが抑制され、より高温の排気ガスがタービンハウジング10から排出されることとなる。タービンハウジング10の下流側に排気浄化用の触媒がある場合には、エンジン冷間始動後における触媒の早期活性化に貢献できる。加えて、ハウジングの肉厚が薄くされるので、過給機の軽量化も達成されることとなり、ひいては燃費向上にもつながることとなる。内側ハウジング24と外側ハウジング26との間の隙間Gにセラミックウールなどの部材を充填した場合には、その空間を埋めると同時に内側ハウジング24の変形を抑制でき、さらには隙間Gへの排気ガスの流入も抑制することが可能となり、比較的厳しい使用条件下(排気ガス温度が高温の場合など)においてもタービン性能の低下が抑制される。
【0048】
さらに、連結部材として、本第一実施形態では、プレート状部材42が設けられていることで、外側ハウジング26内に、内側ハウジング24がしっかりと固定される。それ故、上記の如く、外側ハウジング26に対して内側ハウジング24の各種端部56、58、68を自由端部にして、スライド可能に支持しても、外側ハウジング26内の所望の位置から内側ハウジング24がずれることが防止される。したがって、内側ハウジング24に、排気ガスの熱により加熱されて膨張し、その後エンジンの停止などに伴い冷やされて収縮することが繰り返し生じても、内側ハウジング24と外側ハウジング26との間の隙間Gばかりでなく、上記隙間G1〜G5などの各種のクリアランス(チップクリアランス)を、長い間、所定の間隔に保つことが可能になる。このように連結部材であるプレート状部材42を設けたことで、内側ハウジング24と外側ハウジング26との相対的な位置関係は、内側ハウジング24に膨張および収縮が繰り返し生じても、変化なく維持されるので、タービンハウジング10の劣化はさらに抑制され、タービンハウジング10の性能を長い期間にわたって高性能に保つことが可能になる。つまり、タービンの効率の低下を防ぐことが可能になる。したがって、このタービンハウジング10を有するタービンは、そのタービンハウジング10が高性能を発揮することで、信頼性が向上する。
【0049】
なお、このように、本第一実施形態では、連結部材をプレート状部材としたが、プレート状部材は上記の如く板金を用いて作製されるので、連結部材を設けてもタービンハウジングが低コストに保たれる。さらに、プレート状部材42は、折曲げ部などの応力集中部位がないので、この部材を起点にタービンハウジング10の劣化が生じることはない。なお、さらに信頼性を向上するべく、例えば、上記の如き段形状、すなわちタング部44、46との嵌め合い位置決めのための段形状をプレート状部材42に設けなくても良い。
【0050】
また、上記の如きタービンハウジング10では、入口12、助走室S1、およびスクロール室S2が各二つずつ形成され、これにより第一入口12a、第一助走室S1a、第一スクロール室S2aにより区画形成される第一流路Saと、第二入口12b、第二助走室S1b、第二スクロール室S2bにより区画形成される第二流路Sbとの2つの流路が形成される。これらの流路Sa、Sbは、エンジンの運転状態に対応させて開通される。例えばエンジン回転が低回転であるときには、上記第一流路Saを用いて排気ガスがタービンホイール28に導かれ、エンジン回転が高回転であるときには、上記第一流路Saおよび上記第二流路Sbの両流路を用いて排気ガスがタービンホイール28に導かれるように、第二入口12bよりも上流側に設けられる制御バルブ(不図示)は開閉制御される。なお、このように、本第一実施形態では、その制御バルブをタービン上流側に配置することとしたが、タービンの中、例えば第二助走部材40内に配置することとしても良い。
【0051】
以上、本発明に係るタービンハウジングを第一実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第一実施形態では連結部材を上記プレート状部材42としたが、本発明は種々の形態の連結部材を含むものである。連結部材は、内側分割部P1および外側分割部P2に挟まれて接合され、これにより隙間Gを保ちつつ、外側ハウジング26と内側ハウジングを連結すれば良い。
【0052】
また、上記第一実施形態では、内側ハウジング24を第一内側ハウジング部材34と、第二内側ハウジング部材36と、第一助走部材38と、そして第二助走部材40との四つの部材で構成することとしたが、内側ハウジング24は、第一内側ハウジング部材34と、そして第二内側ハウジング部材36とにより構成されても良い。この様な場合に、上記第一実施形態の如く、スクロール室S2を軸方向に2分割してツインスクロール形状にするのであれば、助走室S1を軸方向に二分割するように上記プレート状部材42を入口12近傍まで延出しても良い。これにより、第一流路Saや第二流路Sbが形成されるのは上記第一実施形態と同じであるが、助走室S1aの入口と出口とが、並びに助走室S1bの入口と出口とがそれぞれ90°捻れることなく連通することになる。
【0053】
ところで、スクロール室S2をツインスクロール形状にしないのであれば、スクロール室S2にまで延出されない連結部材が備えられるのが良い。このような連結部材を有するタービンハウジング110を本発明の第二実施形態として次に説明する。このタービンハウジング110は、上記第一実施形態のタービンハウジング10と、連結部材が主として異なり、また、それに伴い入口12、助走室S1、およびスクロール室S2が各一つずつ形成されることが相違する。以下、相違点について主に説明し、共通点については図中同一符号を付して説明を省略する。なお、本第二実施形態のタービンハウジング110の外観は、図1から図4に表した上記第一実施形態の外観と概ね同じである。図12は図1のA−A線断面相当図に対応する図(第一実施形態の図8に相当する図)であり、図13は図3のB−B線断面相当図である。
【0054】
タービンハウジング110は、連結部材として、馬蹄形状部材112を備えている。馬蹄形状部材112は、入口12近傍まで延出され、軸方向中間部分にて分割された第一内側ハウジング部材134および第二内側ハウジング部材136からなる内側ハウジング124の内側分割部P3と、外側ハウジング26の外側分割部P2とに挟まれて接合される。馬蹄形状部材112は、概ね隙間Gを横断するように延在するが、馬蹄形状部材112は、スクロール室S2にはほとんど延出されず、単に内側分割部P3と外側分割部P2との間に延在し、それらに挟まれつつ接合されている。そして、馬蹄形状部材112は、概ね内側ハウジング124内に延出しないようにされるので、助走室S1で不連続である。したがって、この変形例のタービンハウジング110では、入口12、助走室S1、そしてスクロール室S2は各1つとなっている。
【0055】
なお、図12の馬蹄形状部材112は、タングTの部分には及んでいない。タングTは第一内側ハウジング部材134と第二内側ハウジング部材136とが互いに嵌合して接合されることで形成されるので、排気ガスを適切に助走室S1からスクロール室S2へ導くことが可能である。ただし、本発明は、上記第一実施形態のプレート状部材42の如く、馬蹄形状部材112がタングTにまで延出されることを排除するものではない。
【0056】
次に、さらに別の連結部材を備えるタービンハウジング210を本発明の第三実施形態として説明する。このタービンハウジング210は、上記第二実施形態のタービンハウジング110と、連結部材が相違し、これに伴って外観がわずかに異なる。ここでは、図1のA−A線断面相当図に対応する図として、図14にタービンハウジング210の断面図を示し、相違点のみについて説明して、他の説明は省略する。
【0057】
タービンハウジング210は、連結部材として、複数の棒状部材212を備えている。複数の棒状部材212は、上記第二実施形態の内側ハウジング124と概ね同じ内側ハウジング224の内側分割部P4と、外側ハウジング26の外側分割部P2とに挟まれて接合される。棒状部材212は、断面円形であり、ステンレス製である。複数の棒状部材212は、スクロール室S2にはほとんど延出されず、隙間Gを横断するように位置付けられている。図14では明らかにしていないが、内側分割部P4と外側分割部P2には、棒状部材212が嵌まる半円形の凹部214、216がそれぞれに設けられていて、棒状部材212はその凹部214、216に挟まれて接合されることになる。これに伴い、図示しないが、タービンハウジング210の外観において、棒状部材212の外側端部212aが認められることになる。
【0058】
なお、棒状部材212の断面は、円形に限らず、正方形、長方形、多角形であっても良い。また図14では4本の棒状部材212が示されているが、その数は8本、12本などいくつでも良い。しかしながら、棒状部材212の間隔は等間隔であることが望ましい。
【0059】
以上、本発明を上記第一から第三実施形態に基づいて説明したが、本発明はそれらに限定されない。
【0060】
例えば、上記第一実施形態においてはシュラウド部材66と外側ハウジング26とを直接固定して隙間G2の閉止部を形成するようにしたが、この閉止部の構造は様々なものが考えられ、例えば、シュラウド部材66と外側ハウジング26との間に他の部材(例えば出口管64)を介装し、これら3部材をまとめて固着して閉止部を形成するようにしてもよい。また本発明に係るタービンハウジングは例えば斜流タービンや可変容量タービン等の他のタービン形式にも適用できる。
【0061】
なお、内側ハウジング24、124、224と外側ハウジング26との間には、その間の隙間Gの良好な維持や内側ハウジング24、124、224の形状保持、断熱等のため、SUSメッシュやセラミックウールなどの耐熱性、耐食性、可撓性に優れた充填部材が全体的または部分的に配設されても良く、それらが配設される場合には例えばそれらは外側ハウジング26の内側に固定されるのが好ましい。
【0062】
なお、上記では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第一実施形態に係るタービンハウジングの右側面図である。
【図2】図1に示したタービンハウジングの左側面図である。
【図3】図1に示したタービンハウジングの正面図である。
【図4】図1に示したタービンハウジングの背面図である。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図6】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図7】第一助走部材および第二助走部材を省いた、図5のC−C線に沿ったタング部の拡大模式図である。
【図8】図5の断面図に、プレート状部材を重ねたところを示す図である。
【図9】入口の外観図である。
【図10】図8のE部の拡大図である。
【図11】図6のD部の拡大図である。
【図12】第二実施形態に係るタービンハウジングの、図1のA−A線断面相当図に対応する図である。
【図13】図12のタービンハウジングの、図3のB−B線断面相当図である。
【図14】第三実施形態のタービンハウジングの、図12に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10、110、210 タービンハウジング
42 プレート状部材
112 馬蹄形状部材
212 棒状部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ハウジングと、該内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、
前記内側ハウジングはスクロール室の軸方向中間部分に内側分割部を有し、
前記外側ハウジングは前記スクロール室の軸方向中間部分に外側分割部を有し、
前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとを前記スクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材を、前記内側分割部および前記外側分割部に挟みつつ接合するようにしたことを特徴とするタービンハウジング。
【請求項2】
前記連結部材は、プレート状であることを特徴とする請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記連結部材は、前記内側ハウジングの内方に延び、軸方向に二分割するように前記スクロール室を仕切り、該スクロール室をツインスクロール形状になすことを特徴とする請求項2に記載のタービンハウジング。
【請求項1】
内側ハウジングと、該内側ハウジングを隙間を介して覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、
前記内側ハウジングはスクロール室の軸方向中間部分に内側分割部を有し、
前記外側ハウジングは前記スクロール室の軸方向中間部分に外側分割部を有し、
前記隙間を保ったまま、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとを前記スクロール室の軸方向中間部分において連結する連結部材を、前記内側分割部および前記外側分割部に挟みつつ接合するようにしたことを特徴とするタービンハウジング。
【請求項2】
前記連結部材は、プレート状であることを特徴とする請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記連結部材は、前記内側ハウジングの内方に延び、軸方向に二分割するように前記スクロール室を仕切り、該スクロール室をツインスクロール形状になすことを特徴とする請求項2に記載のタービンハウジング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−278130(P2007−278130A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103443(P2006−103443)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】
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