説明

タービン冷却系統制御装置、タービン冷却系統、及びタービン冷却系統制御方法

【課題】適切な量の冷媒を供給することのできる、タービン冷却系統制御装置、タービン冷却系統、及びタービン冷却系統制御方法を提供する。
【解決手段】給水ポンプから第1給水ラインを介して水が供給される第1ドラムの圧力を、データとして取得するドラム圧力取得部と、前記第1給水ラインに設けられたI弁の開度を制御する、I弁制御部とを具備し、前記第1給水ラインは、第2給水ラインが分岐する第1部分と、前記第1部分よりも下流側に位置し前記第2給水ラインが合流する第2部分とを有し、前記第2給水ラインには、ガスタービンを冷却する熱交換器が熱的に接続され、前記I弁は、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、前記I弁制御部は、前記第1ドラムの圧力に基づいて、前記I弁の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン冷却系統制御装置、タービン冷却系統、及びタービン冷却系統制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンでは、燃焼器で燃焼されて生成される燃焼ガスにより、タービンが回転する。ガスタービンの温度は、燃焼ガスに曝されることにより、上昇する。温度上昇によるガスタービンの損傷を防ぐために、熱交換器による冷却が行われる。熱交換器には冷媒が供給される。ガスタービンと冷媒との間で熱交換が行われ、この熱交換によりガスタービンが冷却される。
【0003】
特許文献1(特許第3975748)及び特許文献2(特開平7−189740)には、圧縮機からの気体をタービンに供給することにより、タービンを冷却することが記載されている。
【0004】
一方、特許文献3(特開2001−329806)には、冷却媒体として、ガスタービン車室の空気と蒸気とが切り替えられて使用される、ガスタービンが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3975748号公報
【特許文献2】特開平7−189740号公報
【特許文献3】特開2001−329806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスタービンを冷却するために要求される冷媒の量は、ガスタービンで発生する熱量に依存する。ガスタービンの負荷に応じて、適切な量の冷媒が供給されることが望まれる。
【0007】
従って、本発明の目的は、適切な量の冷媒を供給することのできる、タービン冷却系統制御装置、タービン冷却系統、及びタービン冷却系統制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための最良の形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明に係るタービン冷却系統制御装置は、給水ポンプ(14)から第1給水ライン(31)を介して水が供給される第1ドラム(13)の圧力を、データとして取得するドラム圧力取得部(25−1)と、第1給水ライン(31)に設けられたI弁(26)の開度を制御する、I弁制御部(25−2)とを具備する。第1給水ライン(31)は、第2給水ライン(32)が分岐する第1部分(33)と、第1部分(33)よりも下流側に位置し第2給水ライン(32)が合流する第2部分(34)とを有する。第2給水ライン(32)には、ガスタービン(1)を冷却する熱交換器(19)が熱的に接続されている。I弁(26)は、第1部分(33)と第2部分(34)との間に設けられている。I弁制御部(25−2)は、第1ドラム(13)の圧力に基づいて、I弁(26)の開度を制御する。
【0010】
上述のタービン冷却系統制御装置は、更に、ガスタービン(1)の負荷に基づいて、第2給水ライン(32)に設けられたD弁(27)の開度を制御する、D弁制御部(25−3)を具備し、I弁制御部(25−3)は、第1部分(33)と第2部分(34)との間の差圧が一定になるように、I弁(27)の開度を制御することが好ましい。
【0011】
第1ドラム(13)は、排熱回収ボイラ(5)と熱的に接続され、ガスタービン(1)は、排ガスが廃熱回収ボイラ(5)に導かれるように、廃熱回収ボイラ(5)と連結されていることが好ましい。
【0012】
第1ドラム(13)は、蒸気タービン(2)と連結され、蒸気タービン(2)に蒸気を供給することが好ましい。
【0013】
蒸気タービン(2)には、低圧蒸気を供給する低圧ドラムと、高圧蒸気を供給する高圧ドラムとが連結されており、第1ドラム(13)は、その高圧ドラムであることが好ましい。
【0014】
本発明にかかるタービン冷却系統は、上記タービン冷却系統制御装置と、第1部分(33)で第1給水ライン(32)から分岐し、第2部分(34)で第1給水ライン(31)に合流する第2給水ライン(32)と、第2給水ライン(32)に熱的に接続され、ガスタービン(1)を冷却する熱交換器(19)とを具備する。
【0015】
本発明に係るタービンシステムは、上記タービン冷却系統と、このタービン冷却系統により冷却されるガスタービン(1)とを具備する。
【0016】
上記のタービンシステムは、更に、第1ドラム(13)により生成された蒸気が供給される蒸気タービン(2)を具備することが好ましい。
タービンシステム。
【0017】
本発明に係るタービン冷却系統制御方法は、給水ポンプ(14)から第1給水ライン(31)を介して水が供給されるドラム(13)の圧力を、データとして取得するステップと、第1給水ライン(31)に設けられたI弁(26)の開度を制御するステップとを具備する。第1給水ライン(31)は、第2給水ライン(32)が分岐する第1部分(33)と、第1部分(31)よりも下流側に位置し第2給水ライン(32)が合流する第2部分(34)とを有している。第2給水ライン(32)は、ガスタービン(1)を冷却する熱交換器(19)と熱的に接続される。I弁(26)は、第1部分(33)と第2部分(34)との間に設けられている。I弁(26)の開度を制御するステップは、ドラム(13)の圧力に基づいて、I弁(26)の開度を制御するステップを含んでいる。
【0018】
I弁の開度を制御するステップは、第1部分(33)と第2部分(34)との間の差圧が一定になるように、I弁(26)の開度を制御するステップを含んでいることが好ましい。
【0019】
上述のタービン冷却系統制御方法は、更に、ガスタービン(1)の負荷をデータとして取得するステップと、ガスタービン(1)の負荷に基づいて、第2給水ライン(32)に設けられたD弁(27)の開度を制御するステップとを具備することが好ましい。
【0020】
上述のタービン冷却系統制御方法において、ドラム(13)は、蒸気タービン(2)と連結され、蒸気タービン(2)に蒸気を供給することが好ましい。
【0021】
上述のタービン冷却系統制御方法において、ドラム(13)は、排熱回収ボイラ(54)と熱的に接続され、ガスタービン(1)は、排ガスが廃熱回収ボイラ(5)に導かれるように、廃熱回収ボイラ(5)と連結されていることが好ましい。
【0022】
本発明に係るタービン冷却系統制御プログラムは、上述のタービン冷却系統制御方法を、コンピュータにより実行するためのプログラムである。
【0023】
本発明に係る他のタービンシステムは、蒸気を生成するドラム(13)と、ドラム(13)に給水ライン(31、32)を介して給水する給水ポンプ(14)と、給水ライン(に介装された熱交換器(19)と、熱交換器(19)によって冷却されるガスタービン(1)とを具備する。
【0024】
このタービンシステム(1)は、更に、ドラム(13)により生成された蒸気が供給される蒸気タービン(2)を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、適切な量の冷媒を供給することのできる、タービン冷却系統制御装置、タービン冷却系統、及びタービン冷却系統制御方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタービンシステム50を示す概略図である。このタービンシステム50は、蒸気タービン2と、ガスタービン1と、廃熱回収ボイラ5と、冷却系統36と、冷却系統制御装置25を備えている。
【0027】
ガスタービン1と蒸気タービン2とは、回転軸(ロータ)が同一となるように接続されている。その回転軸には、発電機24が連結されている。その回転軸が、ガスタービン1及び蒸気タービン2により回転することで、発電機24が発電する。
【0028】
ガスタービン1は、空気圧縮機15と、タービン17と、燃焼器16とを備えている。空気圧縮機15は、空気を吸い込んで圧縮し、燃焼器16に供給する。燃焼器16には、燃料ガスが供給される。燃焼器16は、燃料ガスと圧縮空気とを燃焼させ、燃焼ガスを生成する。その燃焼ガスは、タービン17に供給され、タービン17を回転させる。タービン17に供給された燃焼ガスは、排ガスとして、タービン17から廃熱回収ボイラ5に導かれる。排ガスは、廃熱回収ボイラ5で熱交換された後、排気される。
【0029】
廃熱回収ボイラ5内には、低圧節炭器7、中圧節炭器9、高圧節炭器8、低圧蒸発器18、中圧蒸発器10、及び高圧蒸発器11が配置されている。低圧蒸発器18には低圧ドラム6が接続されている。中圧蒸発器10には中圧ドラム12が接続されている。高圧蒸発器11には高圧ドラム13が接続されている。
【0030】
蒸気タービン2は、高圧タービン21、中圧タービン22、及び低圧タービン23を備えている。高圧タービン21には、高圧ドラム13で生成された高圧蒸気が供給される。中圧タービン22には、中圧ドラム12で生成された中圧蒸気が供給される。低圧タービン23には、低圧ドラム6で生成された低圧蒸気が供給される。高圧タービン21に供給された蒸気は、高圧タービン21を回転させた後、中圧タービン22に供給される。中圧タービン22に供給された蒸気は、中圧タービン22を回転させた後、低圧タービン23に供給される。低圧タービン23に供給された低圧蒸気は、低圧タービン23を回転させた後、排出される。低圧タービン23から排出された蒸気は、復水器3に導かれ、復水される。復水器3で生成された水は、低圧給水ポンプ4により、低圧節炭器7に導入される。低圧節炭器7を通過した水は、一部が低圧ドラム6に給水され、残りは高中圧給水ポンプに導かれる。図1には示されていないが、高中圧給水ポンプは、高圧給水ポンプ14と中圧給水ポンプとを有している。高圧給水ポンプ14は、高圧水を、高圧節炭器8を介して、高圧ドラム13に供給する。また、中圧給水ポンプは、中圧水を、中圧節炭器9を介して、中圧ドラム12に給水する。高圧ドラム13、中圧ドラム12、及び低圧ドラム6へ供給された水は、それぞれ、高圧蒸発器11、低圧蒸発器18、及び中圧蒸発器10により蒸気に変えられ、再び蒸気タービン2に供給される。
【0031】
冷却系統36は、TCAクーラ19(熱交換器)と、第2給水ライン32とを備えている。
【0032】
TCAクーラ19は、ガスタービン1を冷却するために設けられている。TCAクーラ19は、圧縮機15から吐出された空気の一部を吸込む。吸い込まれた空気は、TCAクーラ19において熱交換により冷却される。冷却された空気は、TCAクーラ19からタービン17のロータに送られる。これにより、タービン17のロータが冷却される。
【0033】
第2給水ライン32は、TCAクーラ19に対して冷媒(水)を供する為のラインである。第2給水ライン32により供給された冷媒は、TCAクーラ19が吸い込んだ空気との間で熱交換され、TCAクーラ19が吸い込んだ空気を冷却する。第2給水ライン32には、高圧給水ポンプ14から水が供給される。高圧給水ポンプ14から高圧節炭器8を介して高圧ドラム13へ接続されるラインが、第1給水ライン31と記載される。第2給水ライン32は、高圧給水ポンプ14と高圧節炭器8との間で、第1給水ライン31から分岐している。また、第2給水ライン32は、高圧節炭器8と高圧ドラム13との間で、第1給水ライン31に合流している。このような構成により、高圧給水ポンプ14から吐出された高圧水は、一部がTCAクーラ19に導かれ、熱交換によりTCAクーラ19が吸い込んだ空気を冷却する。TCAクーラ19にて空気を冷却した水は、高圧ドラム13に給水される。
【0034】
冷却系統制御装置25は、冷却系統36に供給される冷媒(水)の流量を制御する装置である。冷却系統制御装置25は、コンピュータにより実現される。すなわち、冷却系統制御装置25は、コンピュータのROM(Read Only Memory)等に格納された冷却系統制御プログラムがCPUにより実行されることにより、実現される。
【0035】
上述のタービンシステム50では、第2給水ライン32を介して高圧ドラム13に供給される水は、TCAクーラ19において熱を受け取った水である。高圧ドラム13において、水を蒸気に変えるためには、熱が必要である。本実施形態では、TCAクーラ19において熱を受け取った水が高圧ドラム13に供給されるため、高圧ドラム13で水を蒸気に変えるための熱量が節約される。すなわち、熱効率を高めることができ、有利である。
【0036】
一方で、タービンシステム50では、ガスタービン1の負荷により、発生する熱量が変化する。従って、TCAクーラ19に供給される冷媒の流量(すなわち第2給水ライン32の流量)は、ガスタービン1の負荷に応じて適切に制御される必要がある。そのため、本実施形態のタービンシステム50には、以下に述べるような工夫が施されている。
【0037】
図2は、冷却系統を示す概略図である。図2に示されるように、高圧給水ポンプ14と高圧ドラム13とは、第1給水ライン31により連結されている。第1給水ライン31には、第1部分33と第2部分34とが設けられている。第2給水ライン32は、第1部分33で第1給水ライン31から分岐し、TCAクーラ19を介して、第2部分34に接続されている。第2給水ライン32は、給水時の圧力損失が第1給水ライン31よりも大きくなるように、第1給水ライン31から分岐している。
【0038】
第2給水ライン32には、TCAクーラ19と第2部分34との間に、D弁27が設けられている。D弁27は、第2給水ライン32の流量を制御するために設けられている。また、第2給水ライン32は、D弁27の上流部分で分岐しており、E弁30を介して復水器に接続されている。
【0039】
一方、第1給水ライン31には、第1部分33と第2部分34との間に、I弁26が設けられている。I弁26は、第1部分33と第2部分34との間に差圧を発生させるために設けられている。第2給水ライン32は第1給水ライン31よりも圧力損失が大きいため、第1部分33と第2部分34との間に差圧が発生しなければ、第2給水ライン32には水が流れにくい。すなわち、D弁27だけで第2給水ライン32の流量を適切に制御することは困難である。ここで、I弁26を設けることにより、第1部分33と第2部分34との間に、差圧を発生させることができる。この差圧により、第2給水ライン32の流量をある程度の量に保つことができ、D弁27によって第2給水ラインの流量を適切に制御することが可能となる。尚、第1部分33と第2部分34との間の差圧がD弁27の開閉により受ける影響は、無視できるほど小さいものとする。
【0040】
尚、第1給水ライン31には、I弁26の他にも、第1部分33と第2部分34との間に、流量計35と、高圧節炭器8とが設けられている。
【0041】
冷却系統制御装置25は、I弁26及びD弁27の開度を制御することによって、第2給水ライン32の流量を調整する。
【0042】
以下に、冷却系統制御装置25の構成及び動作を詳述する。
【0043】
図3は、冷却系統制御装置25を示す機能ブロック図である。冷却系統制御装置25は、ドラム圧力取得部25−1と、I弁制御部25−2と、D弁制御部25−3と、GT負荷指令取得部25−4とを備えている。
【0044】
ドラム圧力取得部25−1は、高圧ドラム13に設けられた圧力センサ28から高圧ドラム13のドラム内圧力をデータとして取得し、I弁制御部25−2に通知する。
【0045】
GT負荷指令取得部25−4は、図示しないガスタービン1の制御装置から、ガスタービン1の負荷指令をデータとして取得し、D弁制御部25−3に通知する。
【0046】
I弁制御部25−2は、I弁26の開度を制御する為に設けられている。I弁制御部25−2は、第1部分33と第2部分34との間の差圧が所定の一定値となるように、I弁26の開度を制御する。
【0047】
D弁制御部25−3は、D弁27の開度を制御する為に設けられている。D弁制御部25−3は、関数発生器FX2と、関数発生器FX4とを備えている。
【0048】
関数発生器FX2は、第2給水ライン32の要求流量Q2を求めるために設けられている。既述のように、第2給水ライン32の要求流量Q2は、ガスタービンの負荷に応じて決まる。そこで、関数発生器FX2は、ガスタービン負荷指令と第2給水ライン要求流量Q2との関係を示す関数を発生させるように構成されている。D弁制御部25−3では、関数発生器FX2により、ガスタービン負荷指令に基づいて、第2給水ライン要求流量Q2(TCAクーラ19に要求される流量)が算出される。
【0049】
関数発生器FX4は、D弁27の開度を決定するために設けられている。第1部分33と第2部分34との差圧が一定であれば、第2給水ラインの流量とI弁27の開度との間に、1対1の関係が成り立つ。従って、関数発生器FX4は、第1部分33と第2部分34との差圧が所定の一定値であるという前提の下で、第2給水ラインの流量とI弁27の開度との関係を示す関数を発生させる。D弁制御部25−3では、関数発生器FX4により、第2給水ライン要求流量Q2に基づいて、D弁開度指令が算出される。D弁制御部25−3は、算出したD弁開度指令に基づいて、D弁27の開度を制御する。
【0050】
ここで、第1部分34と第2部分34との間の差圧が小さすぎると、第2給水ライン32の流量が十分に確保されず、D弁27によって第2給水ライン32の流量を制御することが難しくなる。その一方、その差圧が大きすぎると、高圧ドラム13への給水に支障が生じる。従って、第2給水ライン32の流量が適切に制御されるためには、第1部分33と第2部分34との間の差圧が正確に一定に保たれている必要がある。
【0051】
本実施形態では、第1部分34と第2部分34との間の差圧が正確に制御されるように、I弁制御部25−2の構成、動作が工夫されている。以下に、I弁制御部25−2について詳述する。
【0052】
I弁制御部25−2は、関数発生器FX1と、減算器Δと、関数発生器FX3とを備えている。関数発生器FX1は、高圧ドラム13の圧力と高圧ドラム13に流入する水の流量Qtotalとの関係を示す関数を発生させる。関数発生器FX3は、I弁26の通過流量Q1とI弁の開度との関係を示す関数を発生させる。なお、関数発生器FX3が発生させる関数は、第1部分33と第2部分34との間の差圧が所定値であるという前提下における関数である。
【0053】
図4は、第1部分33と第2部分34との間の差圧が一定である場合における、I弁通過流量とI弁26の開度との関係を示すグラフである。差圧が一定であれば、I弁通過流量とI弁26の開度とは1対1で対応する。従って、I弁通過流量(以下、Q1とする)を求めることができれば、差圧が一定となるようにI弁26の開度を調整できると考えられる。ここで、本発明者らの知見によれば、高圧ドラム13に流れ込む水の流量(以下、Qtotalとする)が、高圧ドラム13の内部圧力によって決まる。図5は、高圧ドラム13の圧力と、流量Qtotalとの関係を示すグラフである。図5に示されるように、流量Qtotalは、高圧ドラム13の圧力によって一意に決まることが分かる。しかも、流量Qtotalは、高圧ドラム13の圧力を正確に反映している。この関係を利用することにより、高圧ドラム13の内部圧力から流量Qtotalを求めることができる。流量Qtotalは、I弁通過流量Q1と、第2給水ライン32の流量との和で表される。第2給水ライン32の流量が正確にコントロールされているとすれば、第2給水ライン32の実流量は、要求流量Q2に一致するはずである。従って、I弁通過流量Q1は、「Qtotal−Q2」として求めることができる。
【0054】
すなわち、I弁制御部25−2は、まず、関数発生器FX1を利用して、高圧ドラム13の内部圧力から、流量Qtotalを算出する。次に、I弁制御部25−2は、減算器Δにより、流量QtotalからFX2で求められた要求流量Q2を減算する。これにより、I弁26の通過流量Q1が求められる。次に、I弁制御部25−2は、関数発生器FX3を利用して、I弁通過流量Q1から、I弁開度指令値を算出する。I弁制御部25−2は、算出したI弁開度指令値に基づいて、I弁26の開度を調整する。これにより、I弁26の開度は、第1部分33と第2部分34との間の差圧が一定(所定値)となるように、制御される。
【0055】
I弁制御部25−2が上述のような動作を行うことで、I弁26の開度が精度良く制御される。これは、高圧ドラム13の圧力に基づいて、I弁26の通過流量Q1が求められているからである。この点について、以下に詳述する。
【0056】
単にI弁26の通過流量Q1を求めるのであれば、第1給水ライン31において第1部分33と第2部分34との間に設けられた流量計35(図2参照)を用いればよいと考えられる。しかし、流量計35は、その測定結果がノイズ的な挙動を示すことが多く、制御に用いるのは困難である。そのため、I弁26の通過流量Q1を正確に求めることは困難である。従って、第1部分33と第2部分34との間の差圧を一定に保つことも困難となり、第2給水ライン32の流量Q2を正確に制御することも困難となってしまう。
【0057】
一方で、ガスタービン1の負荷だけに基づいて、I弁26の開度を調整することも考えられる。すなわち、ガスタービン1の負荷が静的な状態であれば、廃熱回収ボイラ5の状態も一定となり、流量Qtotal及びI弁26の通過流量Q1も一定となる。そのため、ガスタービン1の負荷に基づいて、I弁26の開度を決定することができると考えられる。しかしながら、ガスタービン1の負荷が動的な場合には、廃熱回収ボイラ5の状態も変動し、I弁26の通過流量Q1も変動する。ガスタービン1の負荷変動は、すぐに廃熱回収ボイラ5の状態に反映されるわけではない。廃熱回収ボイラ5の状態に負荷の変動が反映されるまでには、時間を要する。従って、ガスタービン1の負荷が変動してから、その変動がI弁通過流量Q1に反映されるまでにも、時間を要する。その結果、ガスタービン1の負荷だけを利用してI弁26を制御した場合には、差圧を正確に一定に保つことが困難となり、第2給水ライン32流量Q2を正確に制御することも困難になってしまう。
【0058】
これに対して、高圧ドラム13の圧力は、高圧ドラム13に流れ込む水の流量Qtotalを正確に反映している。
【0059】
また、蒸気タービン2に蒸気を供給するためのドラムは、十分に大容量であり、その内部圧力は突発的な変動が少ない。また、その内部圧力は、タービンシステムの状態変化(たとえば、負荷変動による廃熱回収ボイラ5の温度変動)等に対して、比較的緩やかに反応する。すなわち、ドラム内圧力の測定結果には、ノイズの影響が少ない。これにより、差圧を正確に一定に保つことが可能となる。
【0060】
また、高圧ドラム13の圧力は、低圧ドラム6及び中圧ドラム12と比較して、高圧である。従って、センサ28によって測定されるドラム内圧力の数値は、大きい。数値が大きいため、ノイズの大きさは小さくなる。この観点からも、ノイズの影響を少なくすることができ、大局的にI弁26の開度を制御することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、高圧ドラム13に対して、TCAクーラ19において熱を受け取った水が供給されるため、熱効率を高めることができる。
【0062】
また、高圧ドラム13の圧力に基づいてI弁26の開度が制御されるため、第1部分33と第2部分34との間の差圧を正確に一定に保つことができる。その結果、TCAクーラ19へ供給される冷媒の量を、ガスタービン1の負荷に応じて正確にコントロールすることができる。
【0063】
尚、本実施形態では、蒸気タービン2に対して、低圧ドラム6、中圧ドラム12、及び高圧ドラム13から蒸気が供給される場合について説明した。また、第2給水ライン32が、高圧給水ポンプ14から高圧ドラム13に接続されるライン(第1給水ライン)から分岐している場合について説明した。しかし、蒸気タービン2に対して、必ずしも圧力が異なる3つのドラムから蒸気が供給される必要はない。例えば、一つのドラムから蒸気が供給されるように構成されていてもよい。そして、TCAクーラ19が介装される第2給水ライン32は、その一つのドラムへ水を供給するラインから分岐し、そのラインに合流していてもよい。このような構成にすれば、ドラム内圧力の数値を大きくすることはできないが、熱効率の向上などの他の作用については享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】タービンシステムを示す概略図である。
【図2】冷却系統を示す概略図である。
【図3】冷却系統制御装置を示す機能ブロック図である。
【図4】I弁通過流量とI弁の開度との関係を示すグラフである。
【図5】高圧ドラムの圧力と流量Qtotalとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1 ガスタービン
2 蒸気タービン
3 復水器
4 低圧給水ポンプ
5 排熱回収ボイラ
6 低圧ドラム
7 低圧節炭器
8 高圧節炭器
9 中圧節炭器
10 中圧蒸発器
11 高圧蒸発器
12 中圧ドラム
13 高圧ドラム
14 高圧給水ポンプ
15 空気圧縮機
16 燃焼器
17 タービン
18 低圧蒸発器
19 TCAクーラ
21 高圧タービン
22 中圧タービン
23 低圧タービン
24 発電機
25 冷却系統制御装置
26 I弁
27 D弁
28 圧力測定センサ
29 弁
30 E弁
31 第1給水ライン
32 第2給水ライン
33 第1部分
34 第2部分
35 流量計
36 冷却系統
50 タービンシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ポンプから第1給水ラインを介して水が供給される第1ドラムの圧力を、データとして取得するドラム圧力取得部と、
前記第1給水ラインに設けられたI弁の開度を制御する、I弁制御部と、
を具備し、
前記第1給水ラインは、第2給水ラインが分岐する第1部分と、前記第1部分よりも下流側に位置し前記第2給水ラインが合流する第2部分とを有し、
前記第2給水ラインには、ガスタービンを冷却する熱交換器が熱的に接続され、
前記I弁は、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、
前記I弁制御部は、前記第1ドラムの圧力に基づいて、前記I弁の開度を制御する
タービン冷却系統制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたタービン冷却系統制御装置であって、
更に
前記ガスタービンの負荷に基づいて、前記第2給水ラインに設けられたD弁の開度を制御する、D弁制御部
を具備し、
前記I弁制御部は、前記第1部分と前記第2部分との間の差圧が一定になるように、前記I弁の開度を制御する
タービン冷却系統制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたタービン冷却系統制御装置であって、
前記第1ドラムは、排熱回収ボイラと熱的に接続され、
前記ガスタービンは、排ガスが前記廃熱回収ボイラに導かれるように、前記廃熱回収ボイラと連結されている
タービン冷却系統制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたタービン冷却系統制御装置であって、
前記第1ドラムは、蒸気タービンと連結され、前記蒸気タービンに蒸気を供給する
タービン冷却系統制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたタービン冷却系統制御装置であって、
前記蒸気タービンには、低圧蒸気を供給する低圧ドラムと、高圧蒸気を供給する高圧ドラムとが連結されており、
前記第1ドラムは、前記高圧ドラムである
タービン冷却系統制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたタービン冷却系統制御装置と、
前記第1部分で前記第1給水ラインから分岐し、前記第2部分で前記第1給水ラインに合流する第2給水ラインと、
前記第2給水ラインに熱的に接続され、前記ガスタービンを冷却する熱交換器と、
を具備する
タービン冷却系統。
【請求項7】
請求項6に記載されたタービン冷却系統と、
前記タービン冷却系統により冷却されるガスタービンと、
を具備する
タービンシステム。
【請求項8】
請求項7に記載されたタービンシステムであって、
更に、
前記ドラムにより生成された蒸気が供給される蒸気タービン
を具備する
タービンシステム。
【請求項9】
給水ポンプから第1給水ラインを介して水が供給されるドラムの圧力を、データとして取得するステップと、
前記第1給水ラインに設けられたI弁の開度を制御するステップと、
を具備し、
前記第1給水ラインは、第2給水ラインが分岐する第1部分と、前記第1部分よりも下流側に位置し前記第2給水ラインが合流する第2部分とを有し、
前記第2給水ラインは、ガスタービンを冷却する熱交換器と熱的に接続され、
前記I弁は、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられ、
前記I弁の開度を制御するステップは、前記給水ドラムの圧力に基づいて、前記I弁の開度を制御するステップを含んでいる
タービン冷却系統制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたタービン冷却系統制御方法であって、
前記I弁の開度を制御するステップは、前記第1部分と前記第2部分との間の差圧が一定になるように、前記I弁の開度を制御するステップを含んでいる
タービン冷却系統制御方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載されたタービン冷却系統制御方法であって、
更に、
前記ガスタービンの負荷をデータとして取得するステップと、
前記ガスタービンの負荷に基づいて、前記第2給水ラインに設けられたD弁の開度を制御するステップと、
を具備する
タービン冷却系統制御方法。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれかに記載されたタービン冷却系統制御方法であって、
前記ドラムは、蒸気タービンと連結され、前記蒸気タービンに給水を行う
タービン冷却系統制御方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載されたタービン冷却系統制御方法であって、
前記ドラムは、排熱回収ボイラと熱的に接続され、
前記ガスタービンは、排ガスが前記廃熱回収ボイラに導かれるように、前記廃熱回収ボイラと連結されている
タービン冷却系統制御方法。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれかに記載されたタービン冷却系統制御方法を、コンピュータにより実行するための、タービン冷却系統制御プログラム。
【請求項15】
蒸気を生成するドラムと、
前記ドラムに給水ラインを介して給水する給水ポンプと、
前記給水ラインに介装された熱交換器と、
前記熱交換器によって冷却されるガスタービンと、
を具備する
タービンシステム。
【請求項16】
請求項15に記載されたタービンシステムであって、
更に、
前記ドラムにより生成された蒸気が供給される蒸気タービン、
を具備する
タービンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−112274(P2010−112274A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285963(P2008−285963)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】