説明

タービン建屋の免震構造

【課題】タービン発電機が設置される共通支持台盤の剛性を確保しつつその板厚を低減し、地震などでのロッキングの発生を防止することができるタービン建屋の免震構造を提供することにある。
【解決手段】タービン建屋50内に収納されたタービン発電機60が共通支持台盤51上に支持され、共通支持台盤51が上下方向で免震されると共に、タービン建屋50が水平方向で免震されたタービン建屋の免震構造であって、共通支持台盤51上にトラス構造10が設けられると共に、トラス構造10とタービン建屋50の間に上下方向に移動可能なスライド機構20が設けられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンおよび発電機などのタービン発電機が設置されるタービン建屋の免震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタービン建屋の免震構造として、例えば、タービンおよび発電機などのタービン発電機を収納するタービン建屋と、タービン発電機を支持する共通支持台盤とを備え、共通支持台盤下部とタービン建屋との境界部分に免震機構が設置された構造のものがある。このような、従来のタービン建屋の免震構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、従来のタービン建屋の免震構造の他例として、タービン発電機を収納するタービン建屋と、タービン発電機を支持する共通支持台盤とを備え、共通支持台盤下部とタービン建屋との境界部分に免震構造が設置されると共に、共通支持台盤の内部または共通支持台盤とタービン建屋との間に制振機構が設置された構造のものがある。このような、従来のタービン建屋の免震構造は、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−155692号公報(例えば、第1頁右欄第19行〜第2頁右上欄第18行、第3,4図など参照)
【特許文献2】特開2007−16599号公報(例えば、段落[0025]−[0030],[0044]、[図1]−[図3],[図11]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のタービン建屋の免震構造においては、タービンや発電機などタービン発電機の重量物を共通支持台盤のみで支持しており、共通支持台盤の剛性を確保するため、共通支持台盤の板厚が極めて大きかった。
【0006】
また、上述した従来のタービン建屋の免震構造においては、地震時に上下・水平の並進方向に対しては免震性能を発揮するものの、ロッキング(回転方向)に対する検討・対策が考慮されていないため、ロッキングが生じると、免震性能が設計値より悪化する可能性があった。
【0007】
以上のことから、本発明は前述した課題を解決するために為されたものであって、タービン発電機が設置される共通支持台盤の剛性を確保しつつその板厚を低減し、地震などでのロッキングの発生を防止することができるタービン建屋の免震構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン建屋の免震構造は、
タービン建屋内に収納されたタービン発電機が共通支持台盤上に支持され、前記共通支持台盤が上下方向で免震されると共に、前記タービン建屋が水平方向で免震されたタービン建屋の免震構造であって、
前記共通支持台盤上にトラス構造が設けられると共に、前記トラス構造と前記タービン建屋の間に上下方向に移動可能なスライド機構が設けられる
ことを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン建屋の免震構造は、前述した発明に係るタービン建屋の免震構造であって、
前記トラス構造が、前記共通支持台盤の外縁部に配置される
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン建屋の免震構造は、前述した発明に係るタービン建屋の免震構造であって、
前記スライド機構が、ジャッキボルトにより支持される
ことを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン建屋の免震構造は、前述した発明に係るタービン建屋の免震構造であって、
前記スライド機構が、車輪と、前記車輪を回転可能に支持する車輪支持具とを備える
ことを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する本発明に係るタービン建屋の免震構造は、前述した発明に係るタービン建屋の免震構造であって、
前記車輪支持具が、トラス構造をなしている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タービン発電機が設置される共通支持台盤上にトラス構造を設けたことで、共通支持台盤の剛性を確保しつつその板厚を低減することができる。トラス構造とタービン建屋の間に上下方向に移動可能なスライド機構を設けたことで、地震などでの共通支持台盤の挙動が上下方向のみとなり、ロッキングの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造を説明するための図であって、図1Aにその全体を示し、図1Bに図1Aの囲み線の拡大を示す。
【図2】本発明の第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造を説明するための図であって、タービン建屋の天井板を除いた状態の平面を示す。
【図3】本発明の第2の実施例に係るタービン建屋の免震構造を説明するための図であって、図3Aにその全体を示し、図3Bに図3Aの囲み線の拡大を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るタービン建屋の免震構造を実施するための形態について、各実施例にて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造について、図1A、図1B、および図2を参照して具体的に説明する。
【0017】
本実施例に係るタービン建屋の免震構造は、図1A、図1B、および図2に示すように、タービン建屋50と地盤Gとの間に設置される水平免震デバイス1を備えると共に、タービン建屋50内にて共通支持台盤51との間に設置される減衰付与機構2を備える。水平免震デバイス1は、例えば積層ゴムなどであり、タービン建屋50を水平方向で免震する水平方向免震手段をなしている。減衰付与機構2は、例えばばねユニット3や油圧シリンダユニット4などであり、共通支持台盤51を上下方向で免震する上下方向免震手段をなしている。共通支持台盤51上にはタービン発電機60が設置される。つまり、タービン建屋の免震構造は、タービン建屋50内に収容されたタービン発電機60が共通支持台盤51上に支持され、共通支持台盤51が上下方向で免震されると共に、タービン建屋50が水平方向で免震されており、タービンの3次元免震構造をなしている。タービン発電機60は、ガスタービン61、発電機68、および補機(図示せず)を備える。ガスタービン61は吸気ダクト62および排気ダクト65を備える。吸気ダクト62は、下部側吸気ダクト63と上部側吸気ダクト64を備える。排気ダクト65は、吸気ダクト62と同様、下部側排気ダクト66と上部側排気ダクト67を備える。
【0018】
共通支持台盤51は例えば平面視で長方形状をなしている。共通支持台盤51上には、上述のタービン発電機60の周りを囲うように、共通支持台盤51の外縁部に沿って、梁を使用したトラス構造10が設置される。トラス構造10は、直立柱体11、上部梁体14、傾斜柱体12,13を備える。直立柱体11は、共通支持台盤51上の四隅にて直立した状態で配置される。上部梁体14は、左右方向および前後方向にて隣接する直立柱体11の上部を接続して配置される。傾斜柱体12,13は、左右方向および前後方向にて隣接する直立柱体11,11間において、直立柱体11上部および共通支持台盤51と接続すると共に、端部同士が互いに接続して配置される。
【0019】
上部梁体14には、固定部材52,53を介して上部側吸気ダクト64および上部側排気ダクト67がそれぞれ固定される。上部側吸気ダクト64および上部側排気ダクト67はタービン建屋50の天井板を連通し当該タービン建屋2の上方へ延在する形状をなしている。上述の下部側吸気ダクト63は共通支持台盤51に接続される。下部側吸気ダクト63は上部側吸気ダクト64よりも小径をなしている。下部側吸気ダクト63の上端開口部63aが上部側吸気ダクト64内に配置される。上述の下部側排気ダクト66は共通支持台盤51に接続される。下部側排気ダクト66は上部側排気ダクト67よりも小径をなしている。下部側排気ダクト66の上端開口部66aが上部側排気ダクト67内に配置される。
【0020】
トラス構造10には、ジャッキボルト(支持具)26により支持されるスライド機構20が設けられる。スライド機構20は、上下方向に移動可能であって、例えば、トラス構造10の直立柱体11と当該直立柱体11に対向するタービン建屋50の側壁部50aとの間のそれぞれ設けられる。スライド機構20は、車輪21,21を回転可能に支持する車輪支持具22を具備する。車輪支持具22は、車輪支持片23と、車輪支持片23に連結部材24を介して固定された支持板体25とを備える。支持板体25の上面部側にはボルト穴25aが形成されている。ボルト穴25aにはジャッキボルト26の先端部が噛み合わされている。よって、ジャッキボルト26を回転することにより、スライド機構20の位置を調整することができると共に、スライド機構20の車輪21をタービン建屋50の側壁部50aに押し付けることができる。これにより、地震時などでの共通支持台盤51の挙動が上下方向のみとなり、共通支持台盤51のロッキング挙動を防止することができる。また、ジャッキボルト26によるスライド機構20押し付け時の反力をトラス構造10で兼用できる。
【0021】
以上説明したように、本実施例に係るタービン建屋の免震構造によれば、共通支持台盤51上にトラス構造10を設けたことで、共通支持台盤51全体の剛性を向上させることができ、共通支持台盤51の板厚を、共通支持台盤にトラス構造を設置しない従来のタービン建屋の免震構造の場合と比べて低減することができる。
【0022】
ダクト62,65をそれぞれ下部側ダクト63,66と上部側ダクト64,67で構成し、下部側ダクト63,66を共通支持台盤51に接続する一方、上部側ダクト64,67をトラス構造10に固定したことで、下部側ダクト63,66と上部側ダクト64,67の相対運動が上下方向だけに規定される。これにより、水平方向のダクト間の隙間D1,D2を、従来のタービン建屋の免震構造の場合と比べて小さくすることができる。この場合、圧力損失が大きくなるため、ダクトラップ長を長く・隙間を狭くすることで、下部側ダクト63,66と上部側ダクト64,67との間への漏れ防止カバーの設置を省略することができる。
【0023】
また、トラス構造10に歩廊などを設置することにより、ガスタービンの点検の際の足場を兼用することができ、点検時に新たに足場を組む必要がなくなる。つまり、保守性を向上させることができる。
【実施例2】
【0024】
本発明の第2の実施例に係るタービン建屋の免震構造について、図3Aおよび図3Bを参照して具体的に説明する。
本実施例は、上述した第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造が具備するスライド機構の構成を変更した構造であって、それ以外は第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造と同一部材を具備する。本実施例では、上述した第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造と同一部材には同一符号を付記している。
【0025】
本実施例に係るタービン建屋の免震構造は、図3Aおよび図3Bに示すように、上述した第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造と同様、タービン建屋50内に収容されたタービン発電機60が共通支持台盤51上に支持され、共通支持台盤51が上下方向で免震されると共に、タービン建屋50が水平方向で免震されており、タービンの3次元免震構造をなしている。
【0026】
共通支持台盤51上には、タービン発電機60の周りを囲うように、共通支持台盤51の外縁部に沿って、直立柱体11と上部梁体14と傾斜柱体12,13とで構成されるトラス構造10が設置される。これにより、共通支持台盤51全体の剛性を向上させることができ、共通支持台盤51の板厚を、共通支持台盤にトラス構造を設置しない従来のタービン建屋の免震構造と比べて低減することができる。
【0027】
上述のタービン建屋の免震構造では、複数のジャッキボルト(支持具)39により支持されるスライド機構30がトラス構造10に設けられる。スライド機構30は、上下方向に移動可能であって、車輪31と、車輪31を支持する車輪支持具32とを備える。車輪支持具32は、タービン建屋側車輪支持片33と直立柱体側車輪支持片34と横支持体35と傾斜支持体37,38とを備える。タービン建屋側車輪支持片33は、車輪31を回転可能に支持し、タービン建屋50の側壁部50a近傍にて上下方向に延在する。直立柱体側車輪支持片34は、タービン建屋側車輪支持片33に対向配置され、直立柱体11近傍にて上下方向に延在する。横支持体35は、車輪31近傍にて、タービン建屋側車輪支持片33と直立柱体側支持片34とを接続する。傾斜支持体37,38は、横支持体35近傍にて、タービン建屋側車輪支持片33と直立柱体側支持片34とを斜め方向にて接続する。つまり、車輪支持具32はトラス構造をなしている。直立柱体側支持片34における横支持体35との接続箇所には、ボルト穴34aがそれぞれ形成される。ボルト穴34aにはジャッキボルト39の先端部が噛み合わされている。よって、ジャッキボルト39を回転することにより、スライド機構30の位置を調整することができると共に、スライド機構30の車輪31をタービン建屋50の側壁部50aに押し付けることができる。これにより、地震時などでの共通支持台盤51の挙動が上下方向のみとなり、共通支持台盤51のロッキング挙動を防止することができる。また、ジャッキボルト39によるスライド機構30を押し付け時の反力をトラス構造10で兼用できる。
【0028】
以上説明したように、本実施例に係るタービン建屋の免震構造によれば、上述した第1の実施例に係るタービン建屋の免震構造と同様、共通支持台盤51上にトラス構造10を設けたことで、共通支持台盤51全体の剛性を向上させることができ、共通支持台盤51の板厚を、共通支持台盤にトラス構造を設置しない従来のタービン建屋の免震構造の場合と比べて低減することができる。
【0029】
スライド機構30の車輪支持具32がトラス構造をなすため、ジャッキボルト39によるスライド機構30押し付け時の反力が、車輪支持具32がトラス構造ではない場合と比べて増加し、共通支持台盤51の剛性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によるタービン建屋の免震構造は、タービン発電機が設置される共通支持台盤の剛性を確保しつつその板厚を低減し、地震などでのロッキングの発生を防止することができるため、発電所などで有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 水平免震デバイス
2 減衰付与機構
3 ばねユニット
4 油圧シリンダユニット
10 トラス構造
11 直立柱体
12,13 傾斜柱体
14 上部梁体
20 スライド機構
21 車輪
22 車輪支持具
23 車輪支持片
24 連結部材
25 支持板体
26 ジャッキボルト
30 スライド機構
31 車輪
32 車輪支持具
33 タービン建屋側車輪支持片
34 直立柱体側車輪支持片
35 横支持体
37,38 傾斜支持体
39 ジャッキボルト
50 タービン建屋
51 共通支持台盤
52,53 固定部材
60 タービン発電機
61 ガスタービン
62 吸気ダクト
65 排気ダクト
68 発電機
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン建屋内に収納されたタービン発電機が共通支持台盤上に支持され、前記共通支持台盤が上下方向で免震されると共に、前記タービン建屋が水平方向で免震されたタービン建屋の免震構造であって、
前記共通支持台盤上にトラス構造が設けられると共に、前記トラス構造と前記タービン建屋の間に上下方向に移動可能なスライド機構が設けられる
ことを特徴とするタービン建屋の免震構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたタービン建屋の免震構造であって、
前記トラス構造は、前記共通支持台盤の外縁部に配置される
ことを特徴とするタービン建屋の免震構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたタービン建屋の免震構造であって、
前記スライド機構は、ジャッキボルトにより支持される
ことを特徴とするタービン建屋の免震構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載されたタービン建屋の免震構造であって、
前記スライド機構は、車輪と、前記車輪を回転可能に支持する車輪支持具とを備える
ことを特徴とするタービン建屋の免震構造。
【請求項5】
請求項4に記載されたタービン建屋の免震構造であって、
前記車輪支持具は、トラス構造をなしている
ことを特徴とするタービン建屋の免震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72260(P2013−72260A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213765(P2011−213765)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】