説明

タービン機械翼

タービン機械翼は、翼ブレード(21,31)を有しており、該翼ブレードは、回転方向(ω)で測定された、機械の半径方向における翼ブレードの積層ラインが有する傾斜角度(φ)が、流過通路(s)の高さに亘って変化し、ハブ(2)からハウジング(3)に向かって小さくなるように、湾曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載したタービン機械翼に関する。本発明はさらに、タービン機械特に蒸気タービンのロータとステータ、並びにこのような形式の翼を備えたタービン機械に関する。
【0002】
従来技術
タービン機械、特に捩られていない翼を備えたタービンにおいては、段の反動度は、翼幅に亘って局所的に平均的な設計反動度とは異なっている。反動度は、中央断面と比較してハブに向かって次第に小さくなっており、これに対してハウジングに向かって次第に大きくなっている。この場合、減少する反動度は、段の静翼列に亘っての圧力低下の相対的な増大を意味する。これに対して増大された反動度は、動翼列に亘っての圧力低下の相対的な増大を意味する。つまり、翼リングに亘っての圧力差は、それぞれ翼先端において大きい。この翼先端において漏れ損失は溢流によっていずれにしても大きくなり、圧力差に敏感に反応する。
【0003】
一方ではハブの静翼の翼先端に亘っての、また他方ではハウジングにおける動翼の翼先端に亘っての漏れの増大は、翼ブレードが純粋に半径方向の方向付けに対する傾斜角だけ傾けられることによって、生ぜしめられる。溢流損失は、例えば静翼の翼ブレードがその圧力側においてハブに向かって数度だけ傾斜せしめられることによって、減少される。それとは逆に、動翼の翼ブレードがその吸込み側においてハブに向かって数度だけ傾斜されていても、減少せしめられる。翼ブレードを傾斜させることによって、付加的に半径方向に方向付けられた、翼通路内の圧力領域(Druckfelder)が減少される。しかしながらそれによって、例えば静翼通路においてハウジングの領域内で、二次流領域がさらに主流(一次流)内に引き込まれ、これによって二次流損失が大きくなる。
【0004】
翼ブレードを傾斜させることによって、溢流損失は減少されるが、他方側では二次流損失が大きくなるので、この二次流損失の増大が、溢流損失の減少を過補償することになる。従って、翼ブレード傾斜によって、溢流損失の減少に関して比較的狭い実際の制限が設定されている。
【0005】
発明の開示
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のタービン機械を改良して、前記のような従来技術における欠点を避けることができるようなものを提供することである。本発明の課題は例えば、ハブ側の端部領域において翼ブレードを傾斜させることによる利点が利用され、外側の翼リング直径領域において翼ブレードを傾斜させることによる欠点が生じないようなタービン機械翼を提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に記載したタービン機械翼によって解決された。本発明は、翼ブレードを備えたタービン機械翼に関するものであって、この場合、翼ブレードは翼ブレード長手方向で翼付根から翼ヘッドに延在している。この場合、翼付根は、翼プラットフォームを有しており、この翼プラットフォームに翼ブレードが固定されている。翼ブレードはさらに、いわゆる積層ライン又は積み重ねライン(stacking line)を有している。この積層ラインは、静翼の実施例においては翼ブレード後縁部に規定されていて、動翼の実施例においては、翼ブレード長手方向に存在するすべての輪郭断面(Profilquerschnitt)の面重心点を互いに接続するラインとして規定されている。捩られた翼ブレードの積層ラインは、これを中心にして翼ブレードがひねられているか又は捩られているラインとして、或いはこれを中心にして翼ブレード延在方向で互いに連続するすべての翼ブレードプロフィール(翼ブレード輪郭)が捩られているラインとして解釈される。
【0007】
翼ブレード後縁部は、1実施例では、翼ブレードプロフィールの骨格ラインがそれぞれ翼ブレードプロフィールの下流側を通過する複数の点(ポイント)の集合として規定されている。
【0008】
翼ブレードの傾斜角度は、例えばTraupel:"Thermische Turbomaschine"Band 1, 4. Auflage, Springer-Verlag 2001(トラウペル著:「熱タービン機械」、第1巻、第4版、シュプリンガー出版2001)に記載されているように、これを中心にしてタービン機械におけるタービン翼の翼ブレードが半径方向から出発して傾斜している角度として規定されている。この場合、傾斜はタービン機械の横断面、及び周方向において行われる。捩られた翼ブレードにおいては、積層ラインにおける傾斜角度が測定され、しかも、組み込み周方向と組み込み半径方向とから成る、組み込み半径方向を有する平面における積層ラインの投影図によって得られるような角度として測定される。この場合の翼においては、積層ラインは、傾斜角度が翼ブレード長手方向に沿って変化するように湾曲されている。この場合、翼ブレード長手方向に沿った傾斜角度φの変化は、本発明によれば2つの異なる領域で行われ、この場合第1の領域は、相対的な翼長さ0.7±0.1まで達していて、7±3゜の範囲の傾斜角度(φ)を有しており、この第1の領域に続く第2の領域が、相対的な翼長さ1まで達していて、この第2の領域の終わりにおいて傾斜角度(φ)が0±2゜である。ハブからハウジングに向かっての、φの変化は小さい。
【0009】
翼のための組み込み方向を規定するために、次の点が考慮される。タービン機械翼は、タービン機械に使用するために、タービン機械内における翼の機能を保証する十分に規定された幾何学的なパラメータを有している。この場合、タービン機械翼の幾何学形状、及び特にタービン機械翼の翼ブレードの幾何学形状は、特別に組み込み状態に合わせられている。これによって、提供された組み込み状態は、予めタービン機械翼自体の特徴と見なされる。何故ならば、タービン機械翼の設計は組み込み状態に合わせられているからである。従って、タービン機械翼自体を考慮した場合、軸方向に貫流される軸流式のタービン機械において流れ方向に応じて、タービン機械翼の半径方向における組み込み半径方向、タービン機械の周方向における組み込み周方向、及びタービン機械の軸方向における組み込み軸方向に関する状態が、予め明らかにされている。このような理由により、翼のための傾斜角度も規定され得る。この傾斜角度は、Traupel:"Thermische Turbomaschine"Band 1, 4. Auflage, Springer-Verlag 2001, S.326, Abb.7.3.2(トラウペル著:「熱タービン機械」、第1巻、第4版、シュプリンガー出版2001、第326頁、図7.3.2)によれば、組み込み半径方向と組み込み周方向とによって形成された平面において規定されている。ここに記載されたタービン機械翼の実施例では、翼ブレードは2次元的に湾曲されていて、組み込み半径方向と組み込み周方向とから成る平面にある。
【0010】
タービン機械翼の実施例では、傾斜角度は、積層ラインと翼プラットフォームとが交差する角度の補角としても規定される。
【0011】
本発明は、捩られた翼ブレードを備えた翼によっても、又は捩られていない翼ブレードを備えた翼によっても実現される。
【0012】
捩られていない翼ブレードとは、準線としての翼ブレードプロフィールに沿った母線の並列的な移動による厳密に幾何学的な規定に従って得られる翼ブレードのことである。この場合、母線は、真っ直ぐであっても又は曲げられていても良いが、翼ブレードプロフィールに沿った母線の平行移動において、母線の各点は、同じ方向に同じだけずらされる。準線に沿った移動において、母線は純粋に直進的に移動し、回転運動を行うことはない。この場合、曲げられた母線は、曲げられているが捩られていない翼ブレードを規定する。
【0013】
タービン機械翼の所望の組み込み状態に関連して、翼ブレードはハブ側の端部とハウジング側の端部とを有している。本発明の1実施例によれば、傾斜角度は、翼ブレードのハブ側の端部領域で、ハウジング側の端部の領域における傾斜角度よりも大きい。
【0014】
これによって、翼付根と翼ヘッドとを有するタービン機械の静翼が特徴付けられ、この場合、翼付根は翼ブレードのハウジング側の端部に配置されていて、翼ヘッドは翼ブレードのハブ側の端部に配置されており、これによって、翼ヘッドの領域における傾斜角度(7±3°)が、翼付根の領域おける傾斜角度(この領域の端部において0±2°)よりも大きいことを特徴としている。翼付根と翼ヘッドとを有し、この場合翼付根が翼ブレードのハブ側の端部に配置されていて、翼ヘッドが翼ブレードのハウジング側の端部に配置されているタービン機械動翼は、翼付根の領域における傾斜角度(7±3°)が、翼ヘッドの領域における傾斜角度(この領域の端部において0±2°)よりも大きいことを特徴としている。著しく異なる傾斜角度を有する2つの領域間の境界は、相対的な翼長さ0.7±0.1において存在する。
【0015】
傾斜角度を有する翼ブレードが配置されているということは、翼ブレードの圧力側と吸込み側とが組み込み半径方向で、内方に方向付けられているか又は外方に配置されている、ということである。タービン機械静翼の実施例において、積層ラインつまり翼後縁部は、翼ヘッドの領域内において翼ブレードのハブ側端部で、翼ブレードの圧力側組み込み半径方向で内方に、つまりハブ側に向かって方向付けられている形式で、湾曲されている。静翼の圧力側は、つまり翼ヘッドの領域内で少なくとも翼後縁部において翼プラットフォームから離れる方向に方向付けられている。静翼の翼ブレードは、後縁部領域において圧力側に向かって凸状に曲げられている。つまり湾曲のアーチが圧力側に向いている。静翼の別の実施態様によれば、積層ラインは付根領域に延在している。つまり翼ブレードのハウジング側の端部において、少なくとも半径方向に方向付けられているか、又は圧力側が後縁部領域において組み込み半径方向で外方に、つまりハウジング側に又は翼プラットフォームに向かって方向付けられている。タービン動翼の実施例によれば、積層ラインは、翼付根の領域で、つまり翼ブレードのハブ側の端部において、翼ブレードの吸込み側が最大の断面厚さの領域において組み込み半径方向で内方に、つまりハブ側に向かって方向付けられている。動翼の吸込み側は、翼付根の領域内において少なくとも最大の断面厚さ領域で翼プラットフォームに向かって方向付けられている。動翼の翼ブレードは、最大の断面厚さ領域において吸込み側に向かって凸状に湾曲されている。つまり湾曲のアーチが吸い込み側に向いている。動翼の実施態様によれば、積層ラインはヘッド領域に延在、つまり翼ブレードのハウジング側の端部において少なくとも半径方向に延在しているか、又は翼ブレードの吸込み側が組み込み半径方向で外方に向かって、つまりハウジング側に又は翼プラットフォームとは反対側に方向付けられている。
【0016】
前記構造のタービン機械翼は、例えば、軸方向に貫流される翼列のための翼として適している。1実施例によれば、このタービン機械翼は、蒸気タービン、特に高圧又は中圧蒸気タービンのための翼として構成されている。前記構造によれば、0.60〜0.95の範囲のハブ・先端比を有するタービンに使用されるタービン翼において、非常に有利な作用が得られる。
【0017】
前記形式のタービン機械翼は、タービン機械、特にガス又は蒸気タービンのステータ(この場合、ステータは、前記構造の静翼を備えた少なくとも1つの翼列を有している)に使用するのに適しているか、又はタービン機械例えばガスタービン又は蒸気タービンのロータ(この場合、ロータは、前記形式のタービン機械動翼を備えた少なくとも1つの翼列を有している)に使用するのに適している。
【0018】
タービン機械例えばガスタービン又は蒸気タービン、特に高圧若しくは中圧蒸気タービンは、前記構造形式のロータ及び/又はステータを有している。このようなタービン機械は、1実施例では、1つのタービン段を有しており、このタービン段の静翼若しくは動翼は、湾曲された翼ブレードを備えた前記形式のタービン機械翼である。
【0019】
図面の簡単な説明
本発明を以下に図示の実施例を用いて具体的に説明する。
【0020】
図1は、タービン機械の概略図、
図2は、上記形式のタービン機械の動翼の斜視図、
図3及び図4は、図2の動翼を別の方向から見た図、
図5は、上記形式のタービン機械のための静翼、
図6及び図7は、図5に示した静翼を別の方向から見た図、
図8は、上記形式の翼を備えたタービン機械の横断面図の一部、並びに翼ブレード長手方向の傾斜角度の特性曲線を示す。
【0021】
本発明をわかり易くするために、不必要な部材は省かれている。図示の実施例は純粋に教示的なものであって、請求項に記載した発明に限定されるものではない。
【0022】
発明を実施するための最良の形態
以下の実施例においては、見やすくするためにねじられていない翼ブレードを備えた翼が図示されている。ねじられた翼を一般化することは当業者において容易に行われていることであり、この場合、翼ブレードの積層ラインは、ねじられていない翼ブレードからねじられた翼ブレードへの移行部においてそれぞれ変化せずに維持されるように定義される。
【0023】
図1には、タービン例えば高圧蒸気タービン1が概略的に示されている。例示されたタービンにおいては、作動流体が左から右に貫流する。タービンは、ロータとステータとを有している。ロータは、特に軸2と動翼21とを有している。ステータは、特にハウジング3と静翼31とを有している。タービンの各段は、それぞれ1つの静翼リングと、この静翼リングの下流に配置された1つの動翼リングとを有している。静翼31と軸2との間、並びに静翼21とハウジング3との間にギャップが設けられており、このギャップを介して漏れ流が使用されずに溢流し、それによってエネルギー転換の効率が低下する。このような漏れ損失は、小さい範囲内においても、またシュラウドを有する翼列においても生じる。このような漏れ損失は、ギャップの範囲内の翼リングを介しての圧力低下が大きければ大きい程、大きい。タービン段の静翼リング及び動翼リングにおける段圧低下の分配程度が反動度(Reaktionsgrad)である。その他の非常に有利な一般的な翼ブレード幾何学形状において、静翼リング及び動翼リングにおける圧力低下の分配程度は、翼ブレード長手方向に亘って変化する。従って静翼リングに亘っての圧力低下はハブ側で、つまり軸において上昇する。それと同時に、動翼に亘っての圧力低下はハブ側で、つまり軸においてハウジング側よりも小さい。つまり、静翼においても、また動翼においても、圧力差はそれぞれギャップにおいて計算上最大である。このような効果は、ハブ比が小さくなるにつれて大きくなる。この場合、ハブ比は、ハウジングの内径若しくは翼リングの外径に対する軸の直径の比として規定されている。
【0024】
図2には、前記形式の動翼が示されている。動翼21は、動翼ブレード22と動翼付け根23とを有している。動翼付け根23は、この実施例では、軸に翼を固定するためのクリスマスツリー形の固定エレメントを備えていて、プラットフォーム24を支持しており、このプラットフォーム24上に動翼ブレード22が配置されている。動翼付け根の形状は、本発明にとって重要ではない。動翼の幾何学形状は、動翼を使用することによって規定されている。従って、組み込み半径方向R、組み込み周方向Uと組み込み軸方向Lが規定されている。翼ブレードは、圧力側25と吸込み側26とヘッド側の端部27と付け根側の端部28とを有している。破線で示された積層ライン29は、積み重ねライン(stacking line)とも称呼され、翼ブレード長手方向に沿って配置された翼輪郭(翼プロフィール)の重心点を互いに接続する線に沿って延在している。タービン機械の軸に固定された、図示の形式の動翼において、翼ブレードの付け根側の端部28はハブ側の端部でもあり、これに対してヘッド側の端部はハウジング側の端部である。翼付け根の領域内において、積層ラインは、翼ブレードの吸込み側26が翼プラットフォーム24に向かって方向付けられるように、組み込み周方向で傾斜されているか、又は言い換えれば、翼ブレードの吸込み側が組み込み半径方向で内方に方向付けられている。図示の翼においては、この傾斜は、積層ラインがもっぱら組み込み周方向に傾けられているように、方向付けられている。また、翼ブレードは例えば、積層ラインが翼ヘッド27の領域内で純粋に半径方向に延在するように、曲げられている。積層ラインの傾斜及び曲げの幾何学形状、及びひいては翼ブレードの幾何学形状は、図3及び図4に示されている。この場合、図2に示された翼は、図3には、組み込み軸方向Lの方向で見た図が示されており、図4には、組み込み周方向Uの方向で見た図が示されている。図3には、傾斜角φが示されており、翼ブレード吸込み側に対して傾斜された積層ラインが翼プラットフォームと又はハブの接線と成す角度αが示されている。傾斜角度φは、翼ブレードの付け根側の端部又はハブ側の端部において最大であって(本発明によれば7゜±3゜の範囲内)、組み込み半径方向で減少する。この角度は、動翼ブレードのヘッド側の端部において、より小さく、例えば図示の実施例におけるようにゼロまでであるか、又は符号を変える。傾斜角度φは、この端部領域で有利には0±2゜である。積層ラインが翼プラットフォームと又はハブの接線と交差する角度αは、付け根側の端部で90゜より小さく、ヘッド側又はハウジング側の端部でより大きい。図4に関連して、積層ラインは、組み込み周方向Uと組み込み半径方向Rとから成る平面においてのみ湾曲されている。組み込み半径方向Rと組み込み軸方向Lとから成る平面においては、積層ライン29は湾曲されていない。
【0025】
提案された形式の静翼は、図5乃至図7に説明されている。静翼31は、翼ブレード32を有しており、この翼ブレード32は、プラットフォーム34を備えた翼付け根33上に配置されている。翼ブレードは、圧力側35と吸込み側36と、付け根側の端部38とヘッド側の端部37とを有している。積層ライン39は翼後縁部にある。図示の静翼においては、ヘッド側の端部が同時にハブ側の端部でもあって、このハブ側の端部は、タービン機械に組み込む際に軸に当接する。付け根側の端部は、ハウジング側の端部でもある。翼ヘッド37の領域内において、積層ラインは組み込み周方向において次のような傾斜を有している。即ち、翼ブレードの圧力側が、後縁部領域内で組み込み半径で内方に向かって、つまりハブに向かって方向付けられていて、これに対して翼ブレードが図示の実施例では付け根領域38内で半径方向に延在するように、傾斜されている。図6は、図5で符号VIによって示した方向から見た図である。この場合、翼ブレードの長手方向に沿って可変な、局所的な傾斜角は、符号φで示されている。積層ラインは、圧力側に向かって方向付けられていて、組み込み状態でハブの接線と角度βを成している。この角度は、翼ブレードのハブ側の端部において、90゜よりも小さく、ハウジング側又は付け根側の端部に向かって大きい。図7に示した図と、符号VIIで示した見る方向に関連して、曲げは、2次元的に組み込み周方向Uと組み込み半径方向Rとから成る平面にあることが明らかである。
【0026】
図示の実施例において分かりやすくするために、傾斜角φは、一般的に誇張して大きく図示されている。典型的な形式で、前記翼の1実施例においては、ハウジングの領域内で小さくし、図示の実施例ではゼロにするか、又は負(マイナス)の値にまで減少させるために、翼ブレードのハブ側の端部における傾斜角度は、7±3゜の範囲内、有利には6〜8゜の範囲内である。この場合、φ=0±2゜であって、上記Traupel(トラウペル)著の例における定義に従って、翼ブレードがハブを基点にして回転方向に傾斜されている傾斜角、つまり静翼においては圧力側に向かって、動翼においては吸込み側に向かって、正(プラス)の角度として計算される。
【0027】
図8には、上記形式の翼を備えたタービン機械の概略的な横断面図並びに、翼ブレードの長手方向に亘っての傾斜角度φの実施例が示されている。図面では横断面図で、タービン機械の軸2と、ハウジング3と、それぞれ1つの動翼21及び静翼31の翼ブレードとが示されている。φによって、翼ブレードの傾斜角が示されていて、sによって、ハウジングと軸との間に形成された通路の高さSの半径方向座標が示されている。線図には、通路の高さに亘っての傾斜角の延在の例、及び翼ブレードの長手方向の延在の例が示されている。
【0028】
本発明によれば傾斜角度φは、相対的な翼長さ0.7±0.1(図8の線図では、ほぼ0.7±0.1の比S/Soに相当する)まで7±3゜、図8の実施例によれば約8゜であり、これに対して、それより長い相対的な翼長さでは傾斜角φは、相対的な翼長さ1において傾斜角度φ=0±2゜まで、より小さくなる。これによって、図8の下部に示した特性曲線は、明確に2つの範囲に分けられている。
【0029】
この実施例の枠内に、図示の実施例には明確に示されていない、請求項に記載された発明の別の実施態様が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】タービン機械の、一部破断した概略図である。
【図2】タービン機械の動翼の斜視図である。
【図3】図2の動翼を別の方向から見た図である。
【図4】図2の動翼を別の方向から見た図である。
【図5】タービン機械のための静翼斜視図である。
【図6】図5に示した静翼を別の方向から見た図である。
【図7】図5に示した静翼を別の方向から見た図である。
【図8】上記形式の翼を備えたタービン機械の横断面図の一部、並びに翼ブレード長手方向の傾斜角度の特性曲線である。
【符号の説明】
【0031】
1 蒸気タービン
2 軸
3 ハウジング
21 動翼
22 動翼ブレード
23 動翼付根
24 プラットフォーム
25 圧力側
26 吸込み側
27 翼ブレードのヘッド側又はハウジング側の端部
28 翼ブレードの付根側又はハブ側の端部
29 積層ライン
31 静翼
32 翼ブレード
33 翼付根
34 プラットフォーム
35 圧力側
36 吸込み側
37 翼ブレードのヘッド側又はハブ側の端部
38 翼ブレードの付根側又はハウジング側の端部
39 静翼ブレードの積層ライン
L 組み込み軸方向
R 組み込み半径方向
U 組み込み周方向
s 半径方向座標
o 翼幅
φ 傾斜角
α 吸込み側の傾斜した積層ラインとハブの接線との間の角度
β 圧力側の傾斜した積層ラインとハブの接線との間の角度
ω 回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン機械翼(21,31)であって、翼ブレード(22,32)と積層ライン(29,39)とを有しており、前記翼ブレードが、翼ブレード長手方向で翼付け根(23,33)から翼ヘッド(27,37)に延在しており、タービン機械翼が、組み込み半径方向(R)と組み込み周方向(U)と組み込み軸方向(L)とを有しており、この場合、前記組み込み周方向(U)と組み込み半径方向(R)とから成る、組み込み半径方向(R)を有する平面における積層ラインの投影図によって形成される角度としての傾斜角度が規定されている形式のものにおいて、
前記傾斜角度(φ)が翼ブレード長手方向に沿って変化していることを特徴とする、タービン機械翼。
【請求項2】
傾斜角度(φ)が、翼ブレード長手方向に沿って2つの異なる領域で変化しており、これら2つの領域のうちの第1の領域が、相対的な翼長さ0.7±0.1まで達していて、7±3゜の範囲の傾斜角度(φ)を有しており、この第1の領域に続く第2の領域が、相対的な翼長さ1まで達していて、この第2の領域の終わりにおいてなお傾斜角度(φ)が0±2゜である、請求項1記載のタービン機械翼。
【請求項3】
静翼の積層ラインが翼後縁部(39)に存在しており、動翼の積層ラインは、翼ブレード長手方向に存在するすべての輪郭断面の面重心点が互いに接続するライン(29)である、請求項1又は2記載のタービン機械翼。
【請求項4】
積層ライン(29,39)が、組み込み周方向(U)と組み込み半径方向(R)とから成る平面上で2次元的に曲げられている、請求項1から3までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項5】
翼ブレードがハブ側の端部(28,37)とハウジング側の端部(27,38)とを有しており、ハブ側の端部領域の傾斜角度が、ハウジング側の端部領域の傾斜角度よりも大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項6】
タービン機械の静翼(31)が翼付け根(33)と翼ヘッド(37)とを有しており、翼ヘッドの領域内において翼ブレードの圧力側(35)が組み込み半径方向で内方に向かって方向付けられており、積層ライン(39)が圧力側に向かって凸状に湾曲されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項7】
翼ブレードが付け根領域において少なくとも半径方向に延在しているか、又は翼ブレードが圧力側において組み込み半径方向で外方に向かって方向付けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項8】
タービン機械の動翼(21)が翼付け根(23)と翼ヘッド(27)とを有しており、翼付け根の領域において翼ブレードの吸込み側(26)が組み込み半径方向で内方に向かって方向付けられていて、積層ライン(29)が翼ブレード吸込み側で凸状に湾曲している、請求項1から7までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項9】
翼ブレードがヘッド領域において少なくとも半径方向に延在しているか、又は吸込み側において組み込み半径方向で外方に向かって方向付けられている、請求項8記載のタービン機械翼。
【請求項10】
翼ブレードが捩られていない翼ブレードであって、該翼ブレードは、翼ブレード圧力側と翼付け根のプラットフォーム(24,34)とが交差する角度が翼ブレード長手方向で変化するように湾曲されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項11】
軸方向に貫流される翼列のための翼として構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項12】
蒸気タービン翼として構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のタービン機械翼。
【請求項13】
タービン機械、殊に蒸気タービンのステータにおいて、請求項6又は7記載のタービン機械静翼を備えた少なくとも1つの翼列を有していることを特徴とする、タービン機械のステータ。
【請求項14】
タービン機械、殊に蒸気タービンのロータにおいて、請求項8又は9記載のタービン機械の動翼を備えた少なくとも1つの翼列を有していることを特徴とする、タービン機械のロータ。
【請求項15】
タービン機械、殊に蒸気タービンにおいて、請求項13に記載したステータを有していることを特徴とする、タービン機械。
【請求項16】
タービン機械、殊に蒸気タービンにおいて、請求項14に記載したロータを有していることを特徴とする、タービン機械。
【請求項17】
タービン機械、殊に蒸気タービンにおいて、請求項13に記載したステータと請求項14に記載したロータとを有していることを特徴とする、タービン機械。
【請求項18】
タービン機械、殊に蒸気タービンにおいて、請求項6又は7記載の静翼と、請求項8又は9記載の動翼とを備えた少なくとも1つのタービン段を有していることを特徴とする、タービン機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−545097(P2008−545097A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519921(P2008−519921)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063774
【国際公開番号】WO2007/003614
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】