説明

タービン翼植込み部の超音波検査方法および装置

【課題】単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能であるタービンロータの翼植込み部の超音波検査方法および装置を提供することにある。
【解決手段】超音波の送受信および超音波ビームを電子走査するフェーズドアレイ探触子15および制御信号処理部20と送受信部40とを有する超音波探傷器と、フェーズドアレイ探触子を把持し周方向に走査するスキャナ11と、超音波探傷器による検査結果を表示する表示部34とを備える。フェーズドアレイ探触子15を用いて、翼植込み部のフック肩部の曲率半径よりも、超音波ビームの集束径が大きくなるように超音波を緩く集束するビームパターンの超音波を送受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電用タービンロータ翼植込み部の健全性を超音波で検査するタービン翼植込み部の超音波検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用タービンロータの翼植込み部の健全性を確認するには、タービンホイールから動翼を抜き取り、翼植込み部を目視できる状態で、浸透探傷法(PT法)や磁分探傷法(MT法)で検査する方法が適用されてきた。ただし、翼抜き取り作業には時間を要するため、翼を抜き取る必要のない超音波探傷法(UT法)で、ロータ翼植込み部の健全性を確認する方法が提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−78491号公報
【特許文献2】特開2009−244079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、欠陥エコーだけでなく遮蔽による形状エコー低下にも着目して、欠陥の検出またはサイジングを行うものである。ただし、超音波ビームの集束については言及していない。特許文献1の出願時点では、フェーズドアレイ探触子を用いたUT法は未だ一般的ではなく、ある程度の発散角を持って超音波ビームを送信する単一素子の探触子を想定しているものと推察する。
【0005】
特許文献2は、フェーズドアレイ探触子を用いた翼植込み部の超音波検査で、欠陥エコー強度と形状エコー強度の両方に着目するものである。フェーズドアレイ探触子を用いる主目的は、電子走査で超音波ビームの屈折角を変化させるためと推察される。ビームの集束性については本文中では明言されていないが、図中には欠陥の発生起点にビームが点集束するように示されている。欠陥エコーの検出感度を向上させたいという観点を優先させているものと推察する。
【0006】
ここで、タービンロータの翼植込み部の超音波検査に点集束ビームを適用した場合、欠陥検出性は向上するが、サイジングには不向きになるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能であるタービンロータの翼植込み部の超音波検査方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、タービンホイールの側面から翼植込み部に向けて、軸方向には垂直の向きで、径方向には斜角の向きで超音波を送受信し、前記翼植込み部のフックコーナー部を起点とする周方向欠陥を探傷する超音波検査方法であって、フェーズドアレイ探触子を用いて、前記翼植込み部のフック肩部の曲率半径よりも、超音波ビームの集束径が大きくなるように超音波を緩く集束するビームパターンの超音波を送受信するようにしたものである。
かかる方法により、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、超音波受信波形の伝播時間から、前記フックコーナー部を起点とした欠陥がある場合に発生する欠陥エコーと、前記フックコーナー部に割欠陥がある場合に、欠陥で超音波が遮蔽されてエコー強度が低下する前記フック肩部の形状エコーと、前記フックコーナー部の欠陥の有無とは無関係な前記フック立ち上がり部の形状エコーと、を抽出し、それぞれのエコー強度を独立して求めるようにしたものである。
【0010】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記フックコーナー部を起点とした欠陥からの欠陥エコー強度と、前記フック肩部の形状エコー強度で除算して両者の比を算出し、その除算結果から割れの有無を判定するようにしたものである。
【0011】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記除算結果と、予め作成しておいた除算結果と欠陥寸法の関連性と、を比較して欠陥寸法を求めるようにしたものである。
【0012】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記フック立ち上がり部の形状エコー強度が一定の値となるように探傷感度を調整して、超音波を送受信するようにしたものである。
【0013】
(6)上記(1)において、好ましくは、複数のフックを持つ翼植込み部を検査する場合に、少なくとも最下段のフック立ち上がり部から最上段のフック肩部までの範囲について、超音波ビームを径方向に電子的に走査しながら、前記フェーズドアレイ探触子を周方向に機械的に走査するようにしたものである。
【0014】
(7)上記(1)において、好ましくは、複数のフックを持つ翼植込み部を検査する場合に、フック1段分の立ち上がり部から肩部までの範囲について、超音波ビームを径方向に電子的に走査しながら、前記フェーズドアレイ探触子を周方向に機械的に走査することを、前記フックの段数分だけ繰り返すようにしたものである。
【0015】
(8)上記(7)において、好ましくは、被検査フックコーナー部への超音波ビームの屈折角が45°になるように、被検査フックによって超音波送受信位置を変更するようにしたものである。
【0016】
(9)上記(8)において、好ましくは、タービンロータの構造上の制約で、前記被検査フックコーナー部への超音波ビームの屈折角が45°の直線経路がとれない場合には、直線経路がとれる範囲で屈折角が45°に近くなるような超音波送受信位置とするようにしたものである。
【0017】
(10)上記(8)において、好ましくは、フック段数分の回数だけ分割して収録した検査結果を、同一の画面上に同時に表示するようにしたものである。
【0018】
(11)上記(1)において、好ましくは、前記フェーズドアレイ探触子から送受信する超音波ビームのパターンが探触子の中心軸に対して対称的となるように、前記フェーズドアレイ探触子とシューを組み合わせて斜角超音波を送受信するようにしたものである。
【0019】
(12)また、上記目的を達成するために、本発明は、超音波の送受信および超音波ビームを電子走査するフェーズドアレイ探触子および制御信号処理部と送受信部とを有する超音波探傷器と、前記フェーズドアレイ探触子を把持し周方向に走査する走査手段、前記超音波探傷器による検査結果を表示する手段とを備え、タービンホイールの側面から翼植込み部に向けて、軸方向には垂直の向きで、径方向には斜角の向きで超音波を送受信し、前記翼植込み部のフックコーナー部を起点とする周方向欠陥を探傷するとともに、前記フェーズドアレイ探触子を用いて、前記翼植込み部のフック肩部の曲率半径よりも、超音波ビームの集束径が大きくなるように超音波を緩く集束するビームパターンの超音波を送受信するようにしたものである。
かかる構成により、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0020】
(13)上記(12)において、好ましくは、前記フック肩部の曲率半径と超音波ビームの集束径を比較するために、超音波の周波数・フェーズドアレイ探触子の素子数・素子ピッチ・焦点距離の値から、音場計算で超音波ビーム径を算出する算出手段と、該算出手段により算出したビーム径を表示する表示手段とを備えるようにしたものである。
【0021】
(14)上記(12)において、好ましくは、前記フック立ち上がり部からのエコーと、前記フックコーナー部からのエコーと、前記フック肩部からのエコーを独立して抽出する3つ以上の時間ゲートと、それぞれのゲート内のエコー強度を求める強度算出手段を備えるようにしたものである。
【0022】
(15)上記(12)において、好ましくは、前記フックコーナー部のエコー強度と、前記フック肩部のエコー強度を除算して両者の比を求める比算出手段と、予め作成しておいた除算結果と欠陥寸法の関連性を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された除算結果と欠陥寸法の関連性と、前記比算出手段により算出された除算結果とを用いて、欠陥寸法を求めて表示する算出表示手段とを備えるようにしたものである。
【0023】
(16)上記(12)において、好ましくは、前記フェーズドアレイ探触子の周方向の走査位置を正確に測定記録するための測定記録手段と、フック段数分の回数だけ分割して収録した検査結果を重ね合わせる重ね合わせ手段と、該重ね合わせ手段により重ね合わせた結果を表示する表示手段とを備えるようにしたものである。
【0024】
(17)上記(12)において、好ましくは、検査するタービンホイールの形状に合わせてシューを交換できる方式で、フェーズドアレイ探触子とシューを組合せることができる手段を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、タービンロータの翼植込み部の超音波検査において、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの概略形状を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置で用いるスキャナの構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの3段フックからなる翼植込み部の形状を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置における超音波ビームの集束性とエコー強度の関連性の説明図である。
【図5】超音波検査装置においてシューを用いない場合と用いた場合のビーム内の強度不均一性の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置を用いて翼植込み部のフック1段分を検査する際の判定・操作手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、2段フックを検査するときの超音波ビームの入射位置を決める際に参照する画面表示の例の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、2段フックを検査するときの超音波ビームの入射位置を決める際に参照する画面表示の例の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が無い場合の探傷結果の例の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が有る場合の探傷結果の例の説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、周方向への機械走査中の、エコー強度とエコー強度比の変化の例の説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、1段フックを検査する場合に超音波ビームの屈折角を45°とする直線経路がとれない場合の探傷条件設定方法の説明図である。
【図14】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、1段フックを検査する場合に超音波ビームの屈折角を45°とする直線経路がとれない場合の探傷条件設定方法の説明図である。
【図15】本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、3回の走査で検査した結果のうち、ある周方向角度θの検査結果のBスコープ像を同時に表示した画面例の例の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【図18】本発明の第4の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜図15を用いて、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの概略形状について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの概略形状を示す斜視図である。
【0028】
タービンロータ1は、ロータシャフト2とロータホイール3を組合せた構造をしている。ロータホイール3の外周の翼植込み部5には、動翼4が植え込まれている。本実施形態では、動翼4を抜き取らずに、ロータホイール3側の翼植込み部5の健全性を検査するために超音波検査を適用する。
【0029】
次に、図2を用いて、本実施形態による超音波検査装置で用いるスキャナの構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置で用いるスキャナの構成図である。図2(A)は、ロターシャフトの軸方向から見た図であり、図2(B)はロータシャフトの軸に沿った断面方向から見た図である。
【0030】
スキャナ11は、タービンロータ3の形状に倣って、超音波探触子15を保持・走査するものである。スキャナ11は、ロータシャフト2の円筒面に吸着して走行するための磁気車輪12と、ロータホイール3に吸着してホイール側面に倣うための磁気車輪13を備えている。スキャナ11に取付けたフェーズドアレイ探触子15は、ホイール3の片側面から超音波を斜角で送信し、対面側の翼植込み部5を検査する。フェーズドアレイ探触子15を取付けた台座は、ボールネジ14で径方向位置(シャフト面からの高さ)の設定が変更できる。一旦、設定した径方向位置は、スキャナ11を周方向に走行走査させても同じ位置(シャフト面からの高さ)を保持できる。また、スキャナ11は、シャフト面上の走行距離を計測し、超音波検査している周方向角度θを算出するためのエンコーダ17を備えている。
【0031】
次に、図3を用いて、本実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの3段フックからなる翼植込み部の形状について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の検査対象であるタービンロータの3段フックからなる翼植込み部の形状を示す断面図である。
【0032】
翼植込み部5は、1段フック,2段フック,3段フックの3段からなるフックを備えている。フックをさらに分割したときの各部は様々な名称で呼ばれることがあるが、ここでは、それぞれ、立ち上がり部51、コーナー部52、肩部53と称する。
【0033】
フェーズドアレイ探触子15とシュー19を組合せて対面側の2段フックへ向けて超音波を送信すると、一点鎖線55に示すフック立ち上がり部51からの形状エコーと、点線57に示すフック肩部53からの形状エコーを受信することができる。また、フックコーナー部52に欠陥54がある場合には、実線56に示す欠陥エコーも受信できる。
【0034】
ここで、翼植込みの2段フックを超音波で検査する場合について説明する。まず、翼植込み部が健全で、欠陥54が存在しないときには、一点鎖線55に示す経路のフック立ち上がり部の形状エコー、および、点線57に示す経路のフック肩部の形状エコーを受信できる。これに対し、フックコーナー部に欠陥54が存在する場合には、実線56で示すような経路の欠陥エコーを受信すると同時に、欠陥54によって点線57で示す伝播経路の一部が遮蔽されるため、フック肩部の形状エコー強度が低下する。
【0035】
次に、図4を用いて、本実施形態による超音波検査装置における超音波ビームの集束性とエコー強度の関連性について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置における超音波ビームの集束性とエコー強度の関連性の説明図である。
【0036】
図4において、図の左半分は、比較例として試験体101の底面で点集束するようなビーム102を用いた場合の説明図であり、右半分は、本実施形態により試験体101の底面で緩く集束するようなビーム103を用いた場合の説明図である。
【0037】
試験体101の底面で点集束するようなビーム102を考えた場合、欠陥の大きさが異なっても、ビームのほぼ全体が欠陥で反射するので、欠陥寸法が欠陥105aのように小さくても、欠陥105dのように大きくても、欠陥105a,105b,105c,105dの大きさに関わらず、ほぼ同じ大きさのエコー106a,106b,106c,106dを受信できる。すなわち、タービンロータの翼植込み部の超音波検査に点集束ビームを適用した場合、欠陥検出性は向上する。しかし、エコー106a,106b,106c,106dの大きさは、結果の大きさに関わらず同じであるため、サイジングには不向きである。
【0038】
それに対して、本実施形態におけるように、試験体101の底面で緩く集束するようなビーム103を使用した場合について説明する。緩くとはいえ、超音波ビームを集束させているので、欠陥の検出性は向上する。また、ビームの欠陥の大きさに応じた部分(104a,104b,104c,104d)が反射するので、欠陥寸法がビームより小さい場合にはエコー(107a,107b,107c)の強度は欠陥の大きさに対応する。(ただし、欠陥の大きさがビーム径以上の場合(105c,105d)では、エコー強度は飽和する。)すなわち、緩く集束したビームの場合、欠陥の検出性は単一素子センサより向上し、サイジングも可能となる。
【0039】
図3に示したような翼植込み部形状を考えた場合、欠陥54の発生位置はフックコーナー部52となり、欠陥で遮蔽される形状エコーの反射位置とはフック肩部53の曲率のついた部分となる。実線56と点線57で示すように、フック肩部53までの路程の方がフックコーナー部52までの路程より長いので、フックコーナー部52でのビーム径がフック肩部53より小さくなることはない。また、フック肩部53からの形状エコーが得られるのは肩の曲率のついた部分である。フック肩部53でのビーム径を肩の曲率Rより大きくすれば、反射エコー強度は飽和しない。同時に、欠陥が発生するフックコーナー部でのビーム径も十分に大きくなるので、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0040】
なお、単一素子の探触子より超音波ビームの集束性を悪くすると欠陥の検出性が悪くなる。本実施形態において、超音波ビームを緩く集束するとは、フックコーナー部でのビーム径が肩部の曲率Rより大きく、単一素子よりはビームが集束している範囲を意味する。また、欠陥検出性を重視した場合には、肩部の曲率Rと同じビーム径が最適となる。サイジングを重視する場合には、サイジング上限値と同じビーム径が最適となる、検査時間短縮を重視する場合には、電子走査無しでフック立ち上がり部とフックコーナー部とフック肩部の3つのエコーが受信できる大きさのビーム径が最適となる。
【0041】
また、図4の模式図で超音波ビームの集束性とエコー強度の関連性を考察する前提として、超音波ビーム内に著しい強度の不均一は無い、ということがある。
【0042】
ここで、図5を用いて、超音波検査装置においてシューを用いない場合と用いた場合のビーム内の強度不均一性について説明する。
図5は、超音波検査装置においてシューを用いない場合と用いた場合のビーム内の強度不均一性の説明図である。
【0043】
図5(A)は超音波検査装置においてシューを用いない場合であり、図5(B)はシューを用いた場合である。
【0044】
図5(A)に示すように、試験体101にフェーズドアレイ探触子15を直接接触させた場合、垂直ビーム111よりも、斜角ビーム112のほうが、ビーム内の強度不均一性が大きくなる。
【0045】
一方、図5(B)に示すように、探触子15とシュー19を組合せると、ビーム内の強度不均一性が小さい斜角ビームを入射することができる。
【0046】
したがって、本実施形態においては、フェーズドアレイ探触子をロータホイール側面に直接接触させるのではなく、探触子とシューを組合せた状態でホイール側面から超音波を斜角入射するようにしている。
【0047】
次に、図6〜図15を用いて、本実施形態による超音波検査装置の構成及び動作について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置の構成を示すブロック図である。図7は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置を用いて翼植込み部のフック1段分を検査する際の判定・操作手順を示すフローチャートである。
【0048】
なお、本実施形態では、3段フックの翼植込み部を検査する場合に、フック1段分ずつを検査する。これにより、超音波波形の収録・信号処理に時間を要する装置でも検査ができるという特徴がある。
【0049】
本実施形態の超音波検査装置は、パソコン等で構成する制御信号処理部20と、電子部品を搭載した基板等で電子回路を構成する送受信部40と、図2にて説明したスキャナ11とを備えている。
【0050】
操作者は、キーボードやマウスからなる設定手段21を用いて探傷条件を設定し、設定条件記憶部22に記憶させる。探傷条件設定作業では、まず、ロータ材の音速、フックコーナー部の曲率Rを入力する(図7の手順F11)。次に、超音波の周波数、フェーズドアレイ探触子の素子数、素子ピッチ等の探触子の条件を入力する(図7の手順F12)。さらに、シュー材の音速、角度等、シューの条件を入力する(図7の手順F13)。これらの入力データは、設定条件記憶部22から遅延パターン作成記憶部23に自動伝達され、シミュレータ24の計算に利用される。操作者は、ここからシミュレータ24の表示画面をみながら超音波ビームの入射位置を決める(図7の手順F14)。
【0051】
ここで、図8及び図9を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、2段フックを検査するときの超音波ビームの入射位置を決める際に参照する画面表示の例について説明する。
図8及び図9は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、2段フックを検査するときの超音波ビームの入射位置を決める際に参照する画面表示の例の説明図である。
【0052】
図8に示す表示画面において、操作者が、2段フックの欠陥発生候補としてフックコーナー部をマウスでクリックすると、マーカー61が画面上に表示されると同時に、欠陥の検出感度が最良となる屈折角45°の伝播経路も点線62として表示される。操作者は、点線62で示される経路に障害が無いことを確認し(図7の手順F15)、点線62とホイール側面の交点をクリックする。
【0053】
その結果、表示画面は図9のように変化し、超音波の入射位置を示すマーカー63が表示されると同時に、フック立ち上がり部への伝播経路65、コーナー部への伝播経路66、肩部への伝播経路67も画面上に表示される。操作者は、まず幾何的な焦点位置を肩部にしたケースを検討するため、伝播経路67とフック肩部の交点をマウスでクリックすると(図7の手順F16)、幾何焦点のマーカー64aが表示される。シミュレータ24は音場計算を行い、肩部でのビーム径の算出結果を表示箇所76に表示する。操作者は、肩部でのビーム径76と肩部の曲率Rの値75を比較し(図7の手順F17)、ビーム径の方が大きい場合には探傷条件の設定を完了する(図7の手順F18)。ビーム径76のほうが小さい場合には、幾何焦点の位置を、位置64bや位置64cに変更し、肩部でのビーム径76が肩部での曲率Rより大きくなるまで探索を行う。また、画面上には超音波ビーム入射の径方向位置71、肩部までの路程72、肩部への屈折角74、幾何焦点の距離74も表示しているので、操作者はこれらの値を確認しながら探傷条件を探索することができる。
【0054】
探傷条件の設定を完了したら、スキャナ11のボールネジ14を操作してフェーズドアレイ探触子15の高さを調整し、超音波ビーム入射の径方向位置が設定条件と同一にする。
【0055】
図6の遅延パターン制御部25は、作成・記録した設定条件の遅延パターンで送信回路41を制御する。送信回路41で発信した信号は、アンプ42で増幅し、コネクタ43、探傷ケーブル16を経由してフェードアレイ探触子15を駆動する。径方向に超音波ビームを電子走査し、翼植込み部5からの反射波をフェードアレイ探触子15で受信し、探傷ケーブル16とコネクタ43を経由してアンプ44で増幅する。増幅した信号は遅延メモリ45で時間差つけて記憶し、加算回路26で受信波形を合成し、探傷結果記憶部28に記憶する(図7の手順F21、図7の手順F22)。
【0056】
ここで、図10を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が無い場合の探傷結果の例について説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が無い場合の探傷結果の例の説明図である。
【0057】
図10(A)に示すように、探触子15とシュー19から緩く集束した超音波ビームを送信し、2段フックが探傷できるようにビームをセクタスキャンする。ビームが82の位置にあるときには、受信波形は、図10(B)に示す画面例83aのような特徴を示す。なお、画面例83aの中には、フック立ち上がり部の形状エコーに対応する時間ゲート34、フックコーナー部の欠陥エコーに対応する時間ゲート35、フック肩部からの形状エコーに対応する時間ゲート36が表示されている。これらのゲート36は、シミュレータ24の路程評価結果に基づいて、ゲート発生回路31で算出したものである。ビームが図10(A)の位置82にあると、肩部からの形状エコー39aの強度は大きく、立ち上がり部からの形状エコー37aは小さい。コーナー部には欠陥が無いのでコーナー部のエコー38aは小さい。
【0058】
図10(A)に示すビームが位置81にあるときの受信波形は、図10(C)に示す画面例83bに示すように、立ち上がり部からの形状エコー37bは大きく、コーナー部からのエコー38bや肩部からのエコー39bは小さい。
【0059】
超音波ビームをセクタスキャンした結果を、各路程でのエコー強度の最大値を表示するように合成すると、図10(D)に示す画面例83cのように立ち上がり部の形状エコー37cと肩部の形状エコー39cは大きく、コーナー部の欠陥エコー38cは小さい。また、セクタスキャンの結果をBスコープで表示すると、図10(E)に示す画面例83dのように、着目する検査範囲86の中でフック立ち上がり部でのインジケーション87aとフック肩部のインジケーション89aが表示される。
【0060】
次に、図11を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が有る場合の探傷結果の例について説明する。
図11は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、翼植込み部に欠陥が有る場合の探傷結果の例の説明図である。
【0061】
図11(A)に示すように、ビームが位置82にあるときには、受信波形は、図11(B)に示す画面例83dのような特徴を示す。コーナー部に欠陥54があるのでコーナー部のエコー38dの強度は大きくなり、肩部からの形状エコー39dは欠陥54の遮蔽の影響を受けるので強度が低下する。立ち上がり部からの形状エコー37aは小さいままである。
【0062】
図11(A)に示すように、ビームが81の位置にあるときの受信波形は、図11(C)に示す画面例83eに示すように、立ち上がり部からの形状エコー37eは大きく、コーナー部からのエコー38eや肩部からのエコー39bは小さい、という特徴は欠陥の有無に関わらず同じである。
【0063】
超音波ビームをセクタスキャンした結果を、各路程でのエコー強度の最大値を表示するように合成すると、図11(D)に示す画面例83fのようにコーナー部のエコー38fの強度は大きくなり、肩部からの形状エコー39fの強度は低下する。立ち上がり部からの形状エコー37fの強度は欠陥の有無には影響されない。また、セクタスキャンの結果をBスコープで表示すると、図11(E)に示す画面例84dのように、フック立ち上がり部でのインジケーション87dとフック肩部のインジケーション89dに加えて、フックコーナー部のインジケーション88dも表示される。
【0064】
このような収録波形から、図6に示したエコー強度算出部32は、ゲート発生回路31が発生する、図10(B)や図11(B)に示したゲート34,35,36内のエコー強度を自動算出する。さらに、エコー強度比算出部33は、ゲート35内のエコー強度をゲート36内のエコー強度で除算し、コーナー部の欠陥エコーと肩部の形状エコーの強度比を算出する。これらの探傷結果を、表示部34に表示し、記録部35に記録する(図7の手順F22)。
【0065】
上述したように、径方向への超音波ビームの電子走査を繰り返している状態で、スキャナ11を周方向へ機械走査する(図7の手順F23)。エンコーダケーブル18を経由して信号変換部27が受信したエンコーダ信号からスキャナ11の走行距離を算出し、収録ピッチに相当する距離を周方向走査する度に、波形収録、信号処理、結果表示を行う(図7の手順F24,F25)。
【0066】
次に、図12を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、周方向への機械走査中の、エコー強度とエコー強度比の変化の例について説明する。
図12は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、周方向への機械走査中の、エコー強度とエコー強度比の変化の例の説明図である。
【0067】
画面90には、周方向への機械走査中の、エコー強度とエコー強度比の変化が示される。表示例の上段には、フック立ち上がり部からの形状エコーの強度変化91、フックコーナー部からの欠陥エコーの強度変化92、フック肩部からの形状エコーの強度変化93の変化を示している。立ち上がり部の形状エコーは欠陥の有無に関わらず一定のはずであり、フック立ち上がり部形状エコー91のエコー高さに大きな変動があるときには検査装置の不具合を疑わなければならない。このため表示画面上には、立ち上がり部形状エコー91の正常範囲の上限94aと下限94bが表示してあり、操作者が検査装置の不具合にすぐに気がつくようにしている。表示画面の後半で、コーナー部欠陥エコー92の強度が増大し、肩部形状エコー93の強度が低下していることから、2段フックのコーナー部に欠陥が存在していると判断できる。コーナー部欠陥エコー92と肩部形状エコー93の強度比95の変化をみれば、欠陥の存在はいっそう判断しやすくなる。しきい値96を予め定めておけば、欠陥検出の自動判断も可能になる。また、エコー強度比算出部33には、欠陥サイズとエコー強度比の関連性を予め求めて記憶されており、エコー強度比から欠陥の寸法を評価することもできる。
【0068】
また、エコー強度比算出部33は、探傷感度を調整することができる。すなわち、図3に一点鎖線55に示した経路のフック立ち上がり部51の形状エコーの強度に着目して、これが一定の値となるよう、超音波を送受信するように制御する。
【0069】
探触子15の機械走査を継続し、スキャナ11がシャフト面上を1周走行して、探傷開始位置に戻ったら(図7の手順F24)、翼植込み部片側の2段フックの検査が完了する。また、翼植込み部3段フックを検査する場合には、2段フックの検査の場合と同様な手順で、図7に記載した判定・操作手順を示すフローチャートを繰り返す。
【0070】
次に、図13及び図14を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、1段フックを検査する場合に超音波ビームの屈折角を45°とする直線経路がとれない場合の探傷条件設定方法について説明する。
図13及び図14は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、1段フックを検査する場合に超音波ビームの屈折角を45°とする直線経路がとれない場合の探傷条件設定方法の説明図である。
【0071】
図7の手順F15の分岐がNoとなった場合、すなわち、1段フックを検査する場合に超音波ビームの屈折角を45°とする直線経路がとれない場合の、探傷条件設定方法について説明する。
【0072】
図13は、1段フックを検査するときの超音波ビームの入射位置を決める際に参照する画面表示の例である。操作者が、1段フックの欠陥発生候補としてフックコーナー部をマウスでクリックすると、マーカー61が画面上に表示されると同時に、欠陥の検出感度が最良となる屈折角45°伝播経路も点線62として表示される。操作者は、図13の画面を見て、点線62で示される経路には翼植込み溝の障害があるので直線経路がとれないと判断し(図7の手順F15:No)、点線62とホイール側面の交点より下側の部分をクリックする。
【0073】
その結果、表示画面は図14のように変化し、クリックした点に超音波の入射位置を示すマーカー63が表示されると同時に、フック立ち上がり部への伝播経路65、コーナー部への伝播経路66、肩部への伝播経路67も画面上に表示され、今度の経路には障害がないことを確認できる(図7の手順F15:Yes)。
【0074】
次に、幾何的な焦点位置を肩部にしたケースを検討するため、伝播経路67とフック肩部の交点をマウスでクリックすると(図7の手順F16)、幾何焦点のマーカー64aが表示される。シミュレータ24は音場計算を行い、肩部でのビーム径の算出結果を76に表示する。操作者は、肩部でのビーム径76の肩部の曲率Rの値75を比較し(図7の手順F17)、ビーム径の方が大きい場合には探傷条件の設定を完了する(図7の手順F18)。76のほうが小さい場合には、幾何焦点の位置を64bなどに変更し、肩部でのビーム径76が肩部での曲率Rより大きくなるまで探索を行う。このようにして探傷条件の設定を完了したあとは(図7の手順F18)、2段フックの検査の場合と同様な手順で(図7の手順F21〜図7の手順F25)、1段フックの健全性を検査する。
【0075】
以上のように、超音波ビームの送受信先を各段フックに設定し、スキャナ11を周方向に回転走行させるフック段数の数に応じて(3段フックの場合は3回転)行うと、翼植込み部片側の検査が完了する。
【0076】
次に、図15を用いて、本実施形態による超音波検査装置により、3回の走査で検査した結果のうち、ある周方向角度θの検査結果のBスコープ像を同時に表示した画面例の例について説明する。
図15は、本発明の第1の実施形態による超音波検査装置により、3回の走査で検査した結果のうち、ある周方向角度θの検査結果のBスコープ像を同時に表示した画面例の例の説明図である。
【0077】
図15(A)に示すように1段フックの走査を行い、図15(B)に示すように2段フックの走査を行い、図15(C)に示すように3段フックの走査を行う。そして、図15(D)は、3回の走査で検査した結果のうち、ある周方向角度θの検査結果のBスコープ像を同時に表示した画面例97を示す。スキャナ11の周方向位置θはエンコーダ17の信号から正確に評価できるので、別々に走査した各段フックの検査結果からでも、同じθの検査結果を選定して同一画面に表示することができる。
【0078】
片側の翼植込み部の検査が完了したら、スキャナ11をタービンホイール3の反対側に移動させて、今までと逆側に設置する。超音波ビームの送受信先を各段フックに設定し、スキャナ11を周方向に回転走行させる操作を3回行うと、翼植込み部の逆側溝が検査でき、タービンホイールの翼植え込み溝の検査が完了する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態により、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0080】
次に、図16を用いて、本発明の第2の実施形態による超音波検査装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波検査装置の構成は、図6に示したものと同様である。
図16は、本発明の第2の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【0081】
本実施形態では、3段フックの翼植込み部を検査する場合に、フック3段分を一気に検査する。超音波波形の収録・信号処理が短時間で行える検査装置を使用できる場合に翼植込み部検査の全体時間を短縮できる特徴がある。
【0082】
図16は、本実施形態における超音波ビームの電子走査の概要と検査結果のBスコープ表示例98を示している。図16(A)に示すような断面形状の翼植込み部を検査する場合、1段フックの肩部への超音波ビームの伝播経路が最も翼植込み溝による障害を受けやすい。したがって、図13に示したような画面表示を参照しながら、1段フック肩部への直線経路がとれるように超音波入射位置を決定する。また、1段フックの肩部への路程がもっとも長くなるので、図14に示したような画面表示を参照しながら、1段フック肩部でのビーム径が肩部の曲率Rより大きくなるように設定すれば、2〜3段フック肩部でのビーム径は肩部の曲率Rより自ずと大きくなる。
【0083】
図16(A)に示すように、探触子15とシュー19から緩く集束した超音波ビームを送信し、3段フック立ち上がり部から1段フック肩部までの範囲をセクタスキャンすると、1〜3段フックの立ち上がり部・コーナー部・肩部のエコーを全て受信し得る。
【0084】
このときのBスコープ像は、図16(B)の表示例98に示すようになる。このように径方向への超音波ビームの電子走査を繰り返している状態で、第1の実施形態と同様にスキャナ11を周方向へ機械走査する。スキャナ11が周方向へ1回転走行すると翼植込み部片側の検査が完了する。スキャナ11をタービンホイール3の反対側に移動させて、スキャナ11を周方向に1回転走行させるとタービンホイールの翼植え込み溝の検査が完了する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態により、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0086】
また、超音波波形の収録・信号処理が短時間で行える検査装置を使用できる場合には、翼植込み部検査の全体時間を短縮できる。
【0087】
次に、図17を用いて、本発明の第3の実施形態による超音波検査装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波検査装置の構成は、図6に示したものと同様である。
図17は、本発明の第3の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【0088】
本実施形態では、フック1段分が一気に検査できる程度に超音波ビームを極めて緩く絞り、径方向の電子走査(セクタスキャン)無しで翼植込み部を検査する方法である。開口の大きな超音波探触子が必要となるが、第1の実施形態や第2の実施形態と比較して、検査時間を著しく短縮できる特徴がある。
【0089】
図17は、第3の実施例によって翼植込み部の2段フックを検査するときの超音波ビーム送受信の概要と検査結果のBスコープ表示例84gを示す。
【0090】
図17(A)に示すように、開口の大きな探触子15gとそれに適合したシュー19gから、2段フックの立ち上がり部・コーナー部・肩部からのエコーを受信し得るようなビーム径の超音波を送受信する。このときのBスコープ像は、図17(B)に示す表示例84gのようになる。径方向への電子走査(セクタスキャン)を不要にできるので、収録波形の数を減らすことができる。この状態で、第1の実施形態と同様にスキャナ11を周方向へ機械走査する。超音波ビームの送受信先を各段フックに設定し、スキャナ11を周方向に1回転走行とさせる操作を3回行うと、翼植込み部片側の検査が完了する。片側の翼植込み部の検査が完了したら、スキャナ11をタービンホイール3の反対側に移動させて、今までと逆側に設置する。超音波ビームの送受信先を各段フックに設定し、スキャナ11を周方向に回転走行させる操作を3回行うと、翼植込み部の逆側溝が検査でき、タービンホイールの翼植え込み溝の検査が完了する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態により、単一素子の探触子を使用したときよりも欠陥検出性を向上させながら、欠陥サイジングも可能となる。
【0092】
また、翼植込み部検査の全体時間をさらに短縮できる。
【0093】
次に、図18を用いて、本発明の第4の実施形態による超音波検査装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による超音波検査装置の構成は、図6に示したものと同様である。
図18は、本発明の第4の実施形態による超音波検査装置による検査方法の例の説明図である。
【0094】
第1〜第3の実施形態の検査対象は、図17(A)に示すようなテーパーの無いホイールであったが、本実施形態では、図17(B)に示すようなテーパーの有るホイールを検査対象としている。検査装置のハード構成上は、第1〜第3の実施形態で用いたテーパー無しホイール3用のシュー19を、テーパー有りホイール3b用のシュー19bに変更だけでも対応できる。テーパーの有無により、ビームの屈折角や検査対象フックまでの路程が変化するが、図6に示す検査装置の遅延パターン作成記憶部23に記憶する遅延パターンなどの書き換え操作により、第1〜第3の実施形態と同等の方法でテーパー有りホイールの検査が可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1…タービンロータ
2…シャフト
3…ホイール
4…動翼
5…翼植込み部
11…スキャナ
12,13…磁気車輪
14…ボールねじ
15…フェーズドアレイ探触子
17…エンコーダ
19…シュー
20…制御・信号処理部
21…設定手段
22…設定条件記憶部
23…遅延パターン作成・記憶部
24…シミュレータ
25…遅延パターン制御部
26…加算回路
27…信号変換部
28…探傷結果記憶部
31…ゲート発生回路
32…エコー強度算出部
33…エコー強度比算出部
34…表示部
35…記憶部
40…送受信部
41…送信回路
45…遅延メモリ
51…フック立ち上がり部
52…フックコーナー部
53…フック肩部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールの側面から翼植込み部に向けて、軸方向には垂直の向きで、径方向には斜角の向きで超音波を送受信し、前記翼植込み部のフックコーナー部を起点とする周方向欠陥を探傷する超音波検査方法であって、
フェーズドアレイ探触子を用いて、前記翼植込み部のフック肩部の曲率半径よりも、超音波ビームの集束径が大きくなるように超音波を緩く集束するビームパターンの超音波を送受信することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査法において、
超音波受信波形の伝播時間から、前記フックコーナー部を起点とした欠陥がある場合に発生する欠陥エコーと、前記フックコーナー部に割欠陥がある場合に、欠陥で超音波が遮蔽されてエコー強度が低下する前記フック肩部の形状エコーと、前記フックコーナー部の欠陥の有無とは無関係な前記フック立ち上がり部の形状エコーと、を抽出し、それぞれのエコー強度を独立して求めることを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波検査法において、
前記フックコーナー部を起点とした欠陥からの欠陥エコー強度と、前記フック肩部の形状エコー強度で除算して両者の比を算出し、その除算結果から割れの有無を判定することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波検査法において、
前記除算結果と、予め作成しておいた除算結果と欠陥寸法の関連性と、を比較して欠陥寸法を求めることを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波検査方法において、
前記フック立ち上がり部の形状エコー強度が一定の値となるように探傷感度を調整して、超音波を送受信することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波検査方法において、
複数のフックを持つ翼植込み部を検査する場合に、
少なくとも最下段のフック立ち上がり部から最上段のフック肩部までの範囲について、超音波ビームを径方向に電子的に走査しながら、前記フェーズドアレイ探触子を周方向に機械的に走査することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波検査方法において、
複数のフックを持つ翼植込み部を検査する場合に、
フック1段分の立ち上がり部から肩部までの範囲について、超音波ビームを径方向に電子的に走査しながら、前記フェーズドアレイ探触子を周方向に機械的に走査することを、前記フックの段数分だけ繰り返すことを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波検査方法において、
被検査フックコーナー部への超音波ビームの屈折角が45°になるように、被検査フックによって超音波送受信位置を変更することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波検査方法において、
タービンロータの構造上の制約で、前記被検査フックコーナー部への超音波ビームの屈折角が45°の直線経路がとれない場合には、直線経路がとれる範囲で屈折角が45°に近くなるような超音波送受信位置とすることを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項10】
請求項8に記載の超音波検査方法において、
フック段数分の回数だけ分割して収録した検査結果を、同一の画面上に同時に表示することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項11】
請求項1に記載の超音波検査方法において、
前記フェーズドアレイ探触子から送受信する超音波ビームのパターンが探触子の中心軸に対して対称的となるように、前記フェーズドアレイ探触子とシューを組み合わせて斜角超音波を送受信することを特徴とするタービン翼植込み部の超音波検査方法。
【請求項12】
超音波の送受信および超音波ビームを電子走査するフェーズドアレイ探触子および制御信号処理部と送受信部とを有する超音波探傷器と、前記フェーズドアレイ探触子を把持し周方向に走査する走査手段、前記超音波探傷器による検査結果を表示する手段とを備え、
タービンホイールの側面から翼植込み部に向けて、軸方向には垂直の向きで、径方向には斜角の向きで超音波を送受信し、前記翼植込み部のフックコーナー部を起点とする周方向欠陥を探傷するとともに、
前記フェーズドアレイ探触子を用いて、前記翼植込み部のフック肩部の曲率半径よりも、超音波ビームの集束径が大きくなるように超音波を緩く集束するビームパターンの超音波を送受信することを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波検査装置において、
前記フック肩部の曲率半径と超音波ビームの集束径を比較するために、超音波の周波数・フェーズドアレイ探触子の素子数・素子ピッチ・焦点距離の値から、音場計算で超音波ビーム径を算出する算出手段と、
該算出手段により算出したビーム径を表示する表示手段とを備えることを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。
【請求項14】
請求項12に記載の超音波検査装置において、
前記フック立ち上がり部からのエコーと、前記フックコーナー部からのエコーと、前記フック肩部からのエコーを独立して抽出する3つ以上の時間ゲートと、それぞれのゲート内のエコー強度を求める強度算出手段を備えることを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。
【請求項15】
請求項12に記載の超音波検査装置において、
前記フックコーナー部のエコー強度と、前記フック肩部のエコー強度を除算して両者の比を求める比算出手段と、
予め作成しておいた除算結果と欠陥寸法の関連性を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された除算結果と欠陥寸法の関連性と、前記比算出手段により算出された除算結果とを用いて、欠陥寸法を求めて表示する算出表示手段とを備えることを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。
【請求項16】
請求項12に記載の超音波検査装置において、
前記フェーズドアレイ探触子の周方向の走査位置を正確に測定記録するための測定記録手段と、
フック段数分の回数だけ分割して収録した検査結果を重ね合わせる重ね合わせ手段と、
該重ね合わせ手段により重ね合わせた結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。
【請求項17】
請求項12に記載の超音波検査装置において、
検査するタービンホイールの形状に合わせてシューを交換できる方式で、フェーズドアレイ探触子とシューを組合せることができる手段を備えることを特徴とするタービン翼植込み部用の超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−208978(P2011−208978A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74558(P2010−74558)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】